(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】インプラント用流体インターフェースシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20221216BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20221216BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
A61F2/44
A61L27/04
A61L27/56
(21)【出願番号】P 2019554383
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 US2018025351
(87)【国際公開番号】W WO2018183809
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-30
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518436928
【氏名又は名称】ナノハイブ メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー レイン
(72)【発明者】
【氏名】イアン ヘルマー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ディール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ティンリー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ディー シャピュイス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エフ サリバン
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0107786(US,A1)
【文献】特開2016-214866(JP,A)
【文献】特表2015-529150(JP,A)
【文献】特表2016-527982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147332(US,A1)
【文献】特開2016-163706(JP,A)
【文献】特表2015-506195(JP,A)
【文献】特表2012-500058(JP,A)
【文献】特表2008-532716(JP,A)
【文献】特開2007-167665(JP,A)
【文献】特開2004-130077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0002761(US,A1)
【文献】特開2006-263445(JP,A)
【文献】特開2005-110709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0129726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61L 27/04
A61L 27/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属格子を備え、外部表面を画定する本体と、
インプラント内に配置された第1のインターフェースチャネルと、
を備えるインプラントであって、
前記第1のインターフェースチャネルは、流体を輸送するように構成され、
前記第1のインターフェースチャネルは、第1の体積密度を有する体積を備え、
インプラント内の別の体積は、第2の体積密度を備え、
前記第1の体積密度は前記第2の体積密度より小さく、
前記第1のインターフェースチャネルは、前記インプラント上またはインプラント内の別の場所との流体連通を可能にするように構成される、インプラント。
【請求項2】
前記第1のインターフェースチャネルは、複数の分岐に流体的に接続される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記第1のインターフェースチャネルおよび分岐は、前記本体の輪郭に沿って構成される、請求項
2に記載のインプラント。
【請求項4】
ノードで接続された複数のストラットを含む繰り返し単位セル構造をさらに備え、前記第1のインターフェースチャネルは、単一単位セル内に少なくとも空隙の体積を備える、請求項
2または3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記分岐が、前記第1のインターフェースチャネルの縁部に沿った共有ストラットを有する単一単位セル内に少なくとも空隙の体積をさらに備え、開口部を画定する、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記外部表面上に配置され、前記第1のインターフェースチャネルと流体連通する、第1の流体インターフェースポートをさらに備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第1のインターフェースチャネルは、実質的に固体の表面を備える壁部分と、前記壁部分を通って延在する選択的に配置された細孔とを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第1のインターフェースチャネルは、前記外部表面の第1の領域からの第1の距離に配置され、前記外部表面の第1の領域からの第1の距離は、前記外部表面の第2の領域からの第2の距離の1.0倍より大きい、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記第1のインターフェースチャネルは、前記本体の別の部分または前記本体の外部表面と圧力差を生じるように構成される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前面、背面、右側面、左側面、および高さによって画定される環状リングを備え、金属格子をさらに備える本体と、
環状リング内に配置され、流体を輸送するように構成される第1のインターフェースチャネルと、
環状リングの外部表面に固定され、前記第1のインターフェースチャネルとの間の流体連通を可能にするように第1のインターフェースチャネルに接続される、第1のインターフェースポートと、
を備えるインプラントであって、
前記第1のインターフェースチャネルは、第1の体積密度を有する体積を備え、
前記インプラント内の別の体積は、第2の体積密度を備え、
前記第1の体積密度は前記第2の体積密度より小さく、
前記第1のインターフェースチャネルは、前記インプラント上またはインプラント内の別の場所との流体連通を可能にするように構成される、インプラント。
【請求項11】
前記環状リングは、内壁および外壁を有し、前記第1のインターフェースチャネルが前記内壁からの第1の距離および前記外壁からの第2の距離に配置され、前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きい、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
前記環状リングは、内壁および外壁を有し、前記第1のインターフェースチャネルが前記内壁からの第1の距離および前記外壁からの第2の距離に配置され、前記第2の距離は前記第1の距離よりも大きい、請求項10に記載のインプラント。
【請求項13】
前記インプラントは、繰り返し単位セル構造をさらに備え
、前記環状リングは内壁と外壁を有し、前記第1のインターフェースチャネルが前記内壁からの第1の距離に配置され、前記第1の距離は
単位セルの数によって測定され、前記第1の距離は
単位セル1つ以上
に相当する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項14】
前記インプラントは、繰り返し単位セル構造をさらに備え
、前記環状リングは内壁と外壁を有し、前記第1のインターフェースチャネルが前記外壁からの第1の距離に配置され、前記第1の距離は
単位セルの数によって測定され、前記第1の距離は
単位セル1つ以上
に相当する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項15】
前記環状リングの前面と背面との間に固定された横断アームをさらに備える、請求項10に記載のインプラント。
【請求項16】
前記横断アーム内に配置された第2のインターフェースチャネルをさらに備え、
前記第2のインターフェースチャネルは、第3の体積密度を有する体積を備え、
前記第3の体積密度は、第2の体積密度よりも小さく、
前記第2のインターフェースチャネルは、インプラント内の別の場所との流体連通を可能にするように構成され、前記第2のインターフェースチャネルは、横断アームの外部輪郭に沿う、請求項
15に記載のインプラント。
【請求項17】
前記第1のインターフェースチャネルの体積密度が半径方向に増加する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項18】
前記第1のインターフェースチャネルは、0nm以上50nm以下の平均粗さを有する表面をさらに備える、請求項1に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年4月1日出願の米国仮特許出願第62/480,388号、2017年4月1日出願の米国仮特許出願第62/480,383号、2017年4月1日出願の米国仮特許出願第62/480,393号および2018年1月19日出願の米国仮特許出願第62/619,260号に基づく優先権を主張するものであり、それらの全体を参照により本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医療用インプラントのための流体インターフェースシステムに関し、特に、格子または足場構造で構成されるインプラント内の、流体インターフェースシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
外科手術中および手術後において、血液であれ薬物であれ、流体を手術部位の領域に注入することが多くの場合有益である。手術中にさまざまな液体、ゲル、パテやその他の材料を使用することで、リスクを最小限に抑え、回復率を高めることができる。例えば、手術後に手術部位の血液と栄養素が増えると、回復率が高くなることが示されている。注入可能な液体の他の例は、骨髄吸引液(BMA)、幹細胞、多血小板血漿(PRP)、血液、液体/骨混合物、自家移植組織、同種移植組織、抗生物質、および他の生物学的薬剤または材料を含み得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、医療用インプラントのための流体インターフェースシステムを提供する。いくつかの態様では、本明細書に記載の流体インターフェースシステムは、インプラント内に配置された1つ以上の流体インターフェースチャネルを含み得、必要に応じて、流体リダイレクトチャネル、流体インターフェースポート、および流体を流体インターフェースポートに導くための対応する器具を含み得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムは、インプラントの内部に含まれる流体インターフェースチャネルで構成される。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネルは、流体の送達を最適化するために、直径、透過性または密度が異なってもよい。いくつかの実施形態では、流体は、インプラントの側面に位置する流体インターフェースポートを通って流体インターフェースチャネルに入ってもよい。
【0005】
本明細書に記載の流体インターフェースシステムのいくつかの実施形態は、格子構造、連続気泡構造または多孔質体積を備えるデバイスの開放体積に充填される材料または流体の均一性を高め得る。いくつかの実施形態では、そのようなデバイス全体にわたる組織成長を最大限にサポートするために、そのような構造全体にわたる材料の完全な分布を達成することが重要である。本明細書に記載の流体インターフェースシステムによって、アクセスが困難な手術部位の領域に流体を送達するための1つ以上の流体インターフェースチャネルを提供することができ、デバイス内の流体分布の均一性を高め得る。
【0006】
本明細書で説明する実施形態は、デバイス内またはデバイス近傍に流体を分配するために使用され得、デバイス内またはデバイス近傍に流体を引き込むためにも使用され得るため、「流体インターフェースシステム」と呼ばれる。開示された実施形態は、特に明記しない限り、いずれの態様でも使用され得る。当技術分野で知られている、本発明に適用可能な他の可能な態様があることを理解されたい。
【0007】
本明細書に記載の実施形態は医療用インプラント向けであるが、開示された構造は、流体の分配または輸送を必要とする体外の医療機器で使用される場合にも有益となり得る。流体の分配または輸送に対応するために本明細書に記載の1つ以上のシステムを含み得る他の医療機器には、経皮ポート、固定具/支柱またはドレーンが含まれるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図A1】隣接する単位セルの一部を構成する放射状ストラットとともに完全に変形した菱形十二面体構造を含む、単一の変形菱形十二面体単位セルの等角図である。
【
図A2】横方向から見たときの相互接続部の構成を示す、単一の変形菱形十二面体単位セルの側面図である。
【
図A3】中央の空隙が最長寸法法を使用して測定される、単一の変形菱形十二面体単位セルの側面図である。
【
図A4】最長寸法法を使用して相互接続部が測定される、単一の変形菱形十二面体単位セルの側面図である。
【
図A5】最大球法で測定される変形菱形十二面体単位セルの中央空隙の側面図である。
【
図A6】最大球法で測定される相互接続部の平面方向に垂直な方向から見た図である。
【
図A7】単一の放射状十二面体単位セルの等角図である。
【
図A8】単一の放射状の菱形十二面体単位セルの側面図である。
【
図A9】放射状の菱形十二面体単位セルで使用され得る単一ノードと単一ストラットの組み合わせの例の等角図である。
【
図A10】放射状の菱形十二面体単位セルで用いられ得る単一ノードと単一ストラットの組み合わせの例の側面図である。
【
図A11】弾性係数が約3GPaの格子で使用するように構成された単一ノードと単一ストラットの組み合わせの側面図であり、組み合わせの境界を画定する体積の角から見たものである。
【
図A12】弾性係数が約4GPaの格子で使用するように構成された単一ノードと単一ストラットの組み合わせの側面図であり、組み合わせの境界を画定する体積の角から見たものである。
【
図A13】弾性係数が約10GPaの格子で使用するように構成された単一ノードと単一ストラットの組み合わせの側面図であり、組み合わせの境界を画定する体積の角から見たものである。
【
図A14】組み合わせの境界と横方向の分離角度を定義する体積の角から見た単一のノードと2つの隣接するストラットの側面図である。
【
図A15】単一のノードと4つのストラットで構成されるサブ単位セルの等角図である。
【
図A16】上部サブ単位セルが反転され、下部サブ単位セルの頂部に固定された、スタック構成の2つのサブ単位セルの等角図である。
【
図A17】単一の単位セルを形成するために積み重ねられた8つのサブ単位セルの等角図である。
【
図1】インプラントでの使用に適合した本発明の第1の例示的な実施形態の頂部断面図であり、流体インターフェースチャネルの例示的な横方向の間隔を示す。
【
図2】第1のインプラントでの使用に適合した本発明の第1の例示的な実施形態の側面断面図であり、水平中心を垂直に通る断面であり、中央アームの上下壁からの中心流体インターフェースチャネルの垂直距離を示す。
【
図3】第1のインプラントでの使用に適合した本発明の第1の例示的な実施形態の側面断面図であり、
図1の線Aに沿って垂直に切断され、左アームの流体インターフェースチャネルの構成を示す。
【
図4】第2のインプラントでの使用に適合した本発明の第2の例示的な実施形態の側面断面図であり、
図1の線Aと同様の位置に沿って垂直に切断され、複数の枝に分かれた流体インターフェースチャネルの代替構成を示す。
【
図5】第3のインプラントでの使用に適合した本発明の第3の例示的実施形態の側面断面図であり、
図1の線Aと同様の位置に沿って垂直に切断され、複数の分岐を有する流体インターフェースチャネルの代替構成を示す。
【
図6】第4のインプラントでの使用に適合した本発明の第4の例示的な実施形態の底部断面図であり、流体インターフェースチャネルの横方向間隔および流体が横方向に連通する追加の連結チャネルの包含を示す。
【
図7】インプラントに含まれる例示的な流体インターフェースシステムの等角図であり、インプラント内に含まれる流体インターフェースシステムは破線で表されている。
【
図8】第5のインプラントでの使用に適合した本発明の第5の例示的な実施形態の側断面図であり、流体インターフェースチャネルの例示的な構成を示している。
【
図9】第1のインプラントでの使用に適合した本発明の第1の例示的な実施形態の斜視図であり、インプラントの前方の流体インターフェースポートの例示的な構成を示す。
【
図10】第6のインプラントでの使用に適合した本発明の第6の例示的な実施形態の側面断面図であり、
図1の線Aと同様の位置に沿って垂直に切断され、実質的に固体の壁および選択的に配置された細孔を有する流体インターフェースチャネルの代替構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
多くの状況において、時間の経過とともに骨付着または骨統合が可能なインプラントを使用することが望ましい。また、多くの状況において、生体組織に付着または統合が可能なインプラントを使用することも望ましい。骨付着または骨統合するインプラントの例として、頸椎、腰椎、および胸椎用の椎体間固定インプラント、椎体置換用、骨切除用ウェッジ、歯科用インプラント、骨幹、寛骨臼カップ、頭蓋顔面プレーティンツ、骨置換用ならびに骨折部プレーティングが有益に含まれ、これらに限定されない。多くの用途において、新しい骨の成長に負荷をかけ、その強度を高めることも望ましい。ウルフの法則によれば、骨はそれに加わる負荷に適応するため、負荷を受けた骨はより強くなり、負荷を受けていない骨はより弱くなる。
【0010】
いくつかの態様では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、骨統合および適切に負荷を受けた新しい骨成長を刺激するように構成されたインプラントが対象とされ得る。本発明の例示的なインプラントの多くは、インプラントの本体全体にわたって、強い骨付着および/または骨成長を有することが望ましい状況での使用に特に有用である。骨の成長がアタッチメントのみまたはインプラント全体に望ましいかどうかにかかわらず、本発明は、機械的間隔を提供できる独自の格子構造、新しい骨成長をサポートする足場、および新しい骨の成長に生理的な力を負荷できる弾性係数を含んでいる。結果として、本発明は、より強固な付着のためおよび/またはインプラントが骨統合した後により強い骨を得るために、より強くより健康な骨を成長させるインプラントを提供する。
【0011】
提示される本発明の例示的な実施形態は、全体的または部分的に格子から構成され得る。本明細書で使用される格子は、流体が開口部を介してある場所から別の場所に連通することを可能にする1つ以上の相互接続された開口部を有する、三次元材料を指す。三次元材料とは、三次元空間を埋める(つまり、高さ、幅、長さを持つ)材料を指す。格子は、さまざまな幾何学的形状を繰り返したり、ランダムな形状を繰り返したりなどを含む多くの手段で構築され得、相互接続された開口部を持つ材料を完成させることができる。格子の開口部とは、三次元材料の境界の内部にあり、その材料がない任意の領域である。したがって、格子の三次元境界内には、材料の体積部とその材料がない体積部とが存在する。
【0012】
格子の構造を提供する材料は、主材料と呼ばれる。格子の構造は、いかなる用途に対しても構造的な支持を提供する必要はなく、格子を備える開口部と相互接続部との構成を指す。格子の開口部は、空であっても、気体で満たされていても、液体で満たされていても、固体で満たされていても、もしくは流体および/または固体で部分的に満たされてもよい。相互接続部とは、開口部に関して、主材料がなく、少なくとも2つの場所をつなぐ領域を指す。相互接続部は、ある場所から別の場所に流体が通過できるように構成してもよい。
【0013】
格子は、その体積密度によって定義され得る。これは、特定の三次元材料の割合として表される主材料の体積と空隙の体積の比率を意味する。空隙の体積は、三次元材料の境界の体積と主材料の体積の差である。空隙の体積は、開口部の体積、相互接続部の体積、および/または存在する別の材料の体積を含み得る。例えば、体積密度が30%の格子は、特定の体積にわたって、30体積%の主材料と70体積%の空隙で構成される。体積密度が90%の格子は、特定の体積にわたって、90体積%の主材料と10体積%の空隙で構成される。体積密度が50%未満の三次元材料では、主材料の体積は空隙の体積よりも小さくなる。体積密度は空隙の体積を指すが、空隙は空隙のままである必要はなく、移植前、移植中、または移植後に、全体的または部分的に、流体または固体で満たされ得る。
【0014】
幾何学的パターンの繰り返しで構成される格子は、繰り返し単位セルの特性を使用して描写され得る。繰り返しの幾何学的格子の単位格子は、格子を形成するために繰り返され得る三次元形状である。繰り返し単位セルは、格子構造、または格子構造のすべてまたは一部を通じた格子パターンにわたって繰り返される、複数の同一の単位セルを指し得る。各単位セルは、特定の体積の主材料と特定の空隙体積、つまりスポット体積密度で構成されている。スポット体積密度は、わずかな部分単位セルまたは複数の単位セルを含んでもよい。多くの場合、スポット体積密度は材料の体積密度と一致するが、スポット体積密度を局所的に増加または減少させることが望ましい場合があり得る。
【0015】
単位セルは、さまざまなタイプの構造を含む多数の体積形状で構築され得る。単位セルは、格子構造または単位セル内の他のタイプの構造のサイズを制限するために、画定された空間の体積によって結合され得る。いくつかの実施形態において、単位セルは、立方体体積、直方体体積、六面体体積またはアモルファス体積を含み、これらに限定されない体積形状によって結合され得る。空間の単位格子体積は、角で交わる面の数に基づいて画定され得る。単位セル体積が立方体、直方体、または六面体体積である例では、単位セル体積は6つの面と8つの角を有し得、角は3つの面が交わる位置によって画定される。単位セルは、一部またはすべての領域で相互接続されていてもよく、一部またはすべての領域で相互接続されていなくてもよく、一部またはすべての領域で均一なサイズであってもよく、もしくは一部またはすべての領域で不均一なサイズであってもよい。繰り返しの幾何学的パターンを使用する、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単位セルは、単位セルの縁部を画定し単位セルの周りのノードで接合される多数のストラットによって、画定され得る。そのように画定された単位セルは、1つ以上の単位セル間で特定のストラットを共有し得るため、2つの隣接する単位セルは、両方のセルに共通のストラットによって画定された共通の平面壁を共有してもよい。繰り返しの幾何学的パターンを使用する、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単位セルは、ノードおよびそのノードから放射状に延在するいくつかのストラットによって画定され得る。
【0016】
本出願は、例示的な実施形態を説明するために体積密度を使用するが、セルサイズ、ストラットサイズまたはストラット剛性を含むがこれらに限定されない他の測定基準を使用して、それらを説明することも可能である。セルのサイズは、セルの直径、セルの幅、セルの高さ、およびセルの体積などを含みこれらに限定されない、複数の方法を使用して画定してもよい。ストラットのサイズは、ストラットの長さやストラットの直径などを含みこれらに限定されない、複数の手法を使用して画定してもよい。
【0017】
繰り返し幾何学的パターンは、予測可能な特性を提供し得るため、インプラントに含まれる格子構造での使用に有益である。菱形十二面体、ダイヤモンド、十二面体、正方形、五角形、六角形、八角形、シュテットストラット、トルニック八面体、斜方ストラット、その他の既知の幾何学的構造、および各形状の丸みを帯び、形状が強められ、形状が弱められ、または簡略化されたバージョンを含み、それらに限定されない多くの繰り返し幾何学形状を、格子の単位セルとして使用してもよい。
【0018】
格子は、構造部品または非構造部品としてインプラントに含まれてもよい。構造用途で使用される格子は、本明細書では、構造格子、耐荷重格子、または応力格子と呼ばれる場合がある。場合によっては、構造格子、耐荷重格子、または応力格子を単に格子と呼ぶ場合がある。繰り返し幾何学形状の単位格子、特に菱形十二面体は、重量の比に対する強度のために、理論的には構造格子での使用に適している。いくつかの実施形態において、本発明は、菱形十二面体格子の実際の強度と耐疲労性を高めるために、長方形または円形断面のストラットを使用せず、三角形セグメントで構成される変形ストラットを含む。本明細書のいくつかの実施形態は、格子の弾性係数および耐疲労性を変更するために、菱形十二面体の菱形面を画定する角度も変更する。三角形のセグメントを使用すると、菱形十二面体格子の理論的な強度値に近い、高い精度で予測可能な出力特性を持つ格子が提供される。
【0019】
構造格子用途において、格子の強度と弾性係数は体積密度で近似され得る。体積密度が増加すると、強度と弾性係数が増加する。他の多孔質構造と比較して、本発明の格子は、菱形十二面体、変形菱形十二面体または放射状十二面体単位セルの重量に対して強度が高いという利点を利用できるため、所定の体積密度に対してより高い強度および弾性係数を有する。
【0020】
骨または組織の成長をサポートするように構成されている場合、格子は足場と呼ばれ得る。三次元材料内に配置された開口部および相互接続部のサイズを制御することにより、骨または組織の成長をサポートするように格子を構成することができる。足場は、インプラントの表面で使用される場合、隣接する骨がインプラントに付着することを可能にする骨統合表面を提供してもよい。足場はまた、単なる表面付着よりさらに骨が成長することを可能にする経路を提供するように構成されてもよい。本明細書では、表面付着を目的とする足場を表面足場と呼ぶ。表面足場は、1つ以上の単位セルの深さとしてもよいが、インプラントの体積全体に延在しない。単なる表面付着を超えた成長をサポートすることを目的とした足場は、本明細書ではバルク足場と呼ばれる。足場は、構造部品または非構造部品としてインプラントに含まれていてもよい。構造用途に使用される足場は、本明細書では、構造足場、耐荷重足場、または応力足場と呼ばれる場合がある。いくつかの例では、構造足場、耐荷重足場、または応力足場は、単に足場と呼ばれる場合がある。いくつかの例では、足場という用語の使用は、骨または組織の成長をサポートするように構成された材料を指し、その材料は格子ではない。
【0021】
本明細書に記載される足場は、生物に見られる様々な種類の組織の付着または成長を促進するために使用され得る。前述のように、足場のいくつかの実施形態は、骨の付着および成長を促進するように構成されている。足場は、線維組織のような組織の他の領域の成長の付着を促進するようにも構成され得る。いくつかの実施形態では、足場は、複数の種類の組織の付着または成長を促進するように構成され得る。足場のいくつかの実施形態は、生体組織の近傍に、または生体組織に隣接して、埋め込まれるように構成される。生体組織の近傍には、他の層、材料、またはコーティングが足場と生体組織の間に位置する状況が含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、当技術分野で知られているものよりも大きい開口部および相互接続部を備えたバルク足場を使用する。骨単位の直径は約100μmの範囲であり得、骨単位の束が新しい骨の成長の最も強力な形態を提供するであろうという仮説がある。骨の直径が3mmを超える場合、骨は完全な固体と見なされるため、その値の約半分に等しい直径の骨単位の束は、足場内で成長した場合に有意な強度を提供するだろうという仮説がある。また、骨単位が不規則な形状で成長し、骨単位の断面積によってその強度を予測できるという仮説もある。直径3mmに成長した円柱骨単位は約7mm2の断面積を有し、直径1.5mmに成長した円柱骨単位は1.8mm2の断面積を有する。少なくとも1.8mm2の断面積を持つ不規則な形状の骨単位は、足場で成長した場合に著しい強度の利点を提供できるという仮説がある。
【0023】
直径または幅が300μm~900μmの間で、孔辺が理想的に600μmである、細孔または開口部が、骨成長のために最良の足場を提供することは、多くの当業者が指摘するところであろう。代わりに、本発明のいくつかの実施形態は、既知の範囲の約1.0~15.0倍の程度の直径または幅を有する(既知の範囲は300μm~900μmである)開口および相互接続部を含み、骨成長のための開口の断面積は0.07mm2から145mm2までとなる。いくつかの例では、直径または幅が100μm以上300μm以下の細孔または開口部が有益となり得る。いくつかの例では、既知の範囲の1.0~5.0倍の程度の直径の開口部と相互接続部が含まれる。当技術分野で知られているものよりもはるかに大きな開口部および相互接続部を使用すると、完全な骨単位および固体骨組織がバルク足場全体に形成され、新しい負荷可能な骨成長の血管新生が可能になると、少なくとも仮説が立てられている。いくつかの例では、これらの細孔は直径3mmまたは断面積約7mm2であってもよい。他の例では、細孔の直径は約1.5mmまたは断面積は約1.75mm2である。当技術分野で知られているより小さな直径の開口部および相互接続部のみの使用は、より小さな直径の開口部がバルク足場全体の血管新生の能力を制限するため、バルク足場への新しい骨成長の浸透を制限するという仮説がある。
【0024】
格子に関連する構造は、クローズドセル材料である。クローズドセル材料は、三次元材料の境界内に開口部が含まれるという点で格子に似ているが、クローズドセル材料は一般に、開口部または他の細孔を介した位置間の相互接続部がない。クローズドセル構造は、特定のセルの充填や、単位セルのストラット間の固体壁の使用などを含む、複数の方法を使用して実現されてもよい。クローズドセル構造は、セル構造とも呼ばれ得る。一部分では格子材料を有し、別の部分ではクローズドセル材料を有することが可能である。また、開口部間の特定の相互接続部のみに関して格子である、クローズドセル材料を有することも可能であり、またはその逆も可能である。本開示の焦点は格子にあるが、本明細書に開示される構造および方法は、本発明の概念内のクローズドセル構造での使用に容易に適合され得る。
【0025】
本発明で使用される格子は、様々な材料およびプロセスから製造され得る。骨成長の足場として使用される場合、格子は、直接、または生物活性表面処理の適用によって骨への付着を可能にする、生体適合性材料で作られることが望ましい。一例では、足場は埋め込み可能な金属で構成される。埋め込み可能な金属には、ジルコニウム、ステンレス鋼(316および316L)、タンタル、ニチノール、コバルトクロム合金、チタンおよびタングステン、ならびにそれらの合金が含まれ、これらに限定されない。埋め込み可能な金属で構成される足場は、付加的金属加工または3Dプリントプロセスを使用して製造してもよい。適切な生産プロセスには、直接金属レーザー焼結、選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、電子ビーム溶融、シート積層法、および指向性エネルギー堆積が含まれ、これらに限定されない。
【0026】
別の例では、本発明の格子は、生物活性コーティングを備えた埋め込み可能な金属で構成される。生物活性コーティングには、骨の成長を促進するコーティング、抗血栓コーティング、抗菌コーティング、疎水性または親水性コーティング、および疎血性、超疎血性、または親血性コーティングが含まれ、これらに限定されない。骨の成長を促進するコーティングには、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(HA)、ケイ酸塩ガラス、幹細胞誘導体、骨形成タンパク質、チタンプラズマスプレー、チタンビーズ、チタンメッシュが含まれ、これらに限定されない。抗血栓性コーティングには、低分子量フルオロオリゴマーが含まれ、これに限定されない。抗菌コーティングには、銀、有機シラン化合物、ヨウ素、窒化ケイ素が含まれ、これらに限定されない。超疎液性コーティングには、フッ化ナノチューブが含まれる。
【0027】
別の例では、格子は、任意の生物活性コーティングを備えたチタン合金から作られている。特に、Ti6Al4V ELI 鍛造合金(米国材料試験協会(ASTM)F136)は、足場に特に適したチタン合金である。Ti6Al4V ELI鍛造合金は医療目的に使用される業界標準のチタン合金だが、他のチタン合金が、本発明の様々な実施形態に適切であり得る。他のチタン合金は、非合金チタン(ASTM F67)、Ti6Al4V標準グレード(ASTM F1472)、Ti6Al7Nb鍛造合金(ASTM 1295)、Ti5Al2.5Fe鍛造(英国規格協会/国際標準化機構パート10)、CPおよびTi6Al4V標準グレードの粉末(ASTM F1580)、Ti13Nb13Zr 鍛造合金(ASTM F1713)、低弾性係数Ti-24Nb-4Zr-8SnおよびTi12Mo6Zr2Fe鍛造合金(ASTM F1813)を含み、これらに限定されない。
【0028】
チタン合金は生体適合性があり、骨に付着することができるため、足場に適した材料である。チタン合金にさまざまな表面処理を行うことにより、骨付着の程度を増減し得る。骨は研磨されたチタンにも付着するが、表面性状を有するチタンはより優れた骨付着を可能にする。チタンへの骨付着を増加させる方法は、鍛造またはフライス加工プロセス、サンドブラスト、酸エッチング、および生物活性コーティングの使用によってもよい。付加的金属加工または直接金属レーザー焼結などの3Dプリントプロセスで製造されたチタン部品は、骨付着を促進するために表面の粗さおよび気孔率を維持しながら、表面応力増加を低減し、表面形状を正規化し、表面酸化物層を改善するために、酸浴で処理することができる。
【0029】
加えて、チタンまたは他の合金は、ヘパリン、ヘパリン硫酸(HS)、グリコサミノグリカン(GAG)、コンドロイチン-4-硫酸(C4S)、コンドロイチン-6-硫酸(C6S)、ヒアルロン酸(HY)、およびカルシウム水溶液を有するまたは有しない他のプロテオグリカンで処理してもよい。そのような処理は、材料が製造前の形態(多くの場合粉末)である場合、または構造の製造後に行ってもよい。
【0030】
さまざまな構造、材料、表面処理、およびコーティングが説明されているが、繰り返し変形菱形十二面体(以下「MRDD」)単位セルを使用する格子は、剛性、強度、疲労抵抗、および骨の内部成長の条件の好ましい組み合わせを提供できると考えられている。いくつかの実施形態では、繰り返しMRDD格子は、チタンまたはチタン合金から構成される。定義上、一般的な菱形十二面体(以下「RDD」)は、12の菱形の側面を有する。格子で繰り返される場合、RDD単位セルは、14の頂点で交わる24個のストラットで構成される。24個のストラットは構造の12の平面を画定し、各平面の中央に開口部または相互接続部が配置され、単位セルの内部から単位セルの外部への連通を可能にする。
【0031】
本発明で使用されるMRDD単位セルB10の例は、
図A1から
図A5に示されている。
図A1は、隣接する単位セルの部分を含む放射状のストラットに沿った完全なMRDD構造を含む単一のMRDD単位セルB10の等角図である。
図A2は、横方向から見たときの相互接続部の構成を示す単一のMRDD単位セルB10の側面図である。MRDD単位セルB10の上面図または底面図は、
図A2に示される側面図と実質的に同じとなる。MRDD単位セルB10は、構造的特性と設計方法の両方が一般的なRDD形状と異なる。一般的なRDDは12個の面で構成され、各面は70.5度の鋭角と109.5度の鈍角を持つ同一の菱形である。ストラットは軸に基づいて割り当てされ、それぞれが14のノードまたは頂点の中心を通過するため、単位セルのサイズまたはストラットの直径が変更されても、一般的なRDDの菱形面の形状は変更されない。
【0032】
MRDDのいくつかの実施形態では、各ノードは、その境界を画定し、ストラットの遠位端に空間内の固定点を設ける、固定体積内に含まれる。MRDDまたはMRDDのサブ単位セルを含む固定体積は、立方体、直方体、六面体またはアモルファス体積を含むがこれらに限定されない様々な形状であり得る。一部の例では、6つの面と、3つの面が交わる位置によって画定される8つの角を有する固定体積を使用する。ストラットの向きは、その近位端のノード面の中心と、その遠位端のそのノード面に最も近い体積の角に基づき得る。各ノードは、八面体、より具体的には正双四角錐(すなわち、水平面で結合された四角錐と逆四角錐)であることが好ましい。各ノードは、直方体体積の中心に位置する場合、直方体体積の面に平行な正方形の面、6つの頂点を含み、6つの頂点のそれぞれが、直方体体積の6つの面のそれぞれに可能な限り近い位置に配置されるように向けられるのがより好ましい。体積内のノードの位置に関して中央に配置されているとは、体積の対向する壁から実質的に等距離の位置にノードを配置することを指す。いくつかの実施形態では、ノードは100%の体積密度を有し得、他の実施形態では、ノードは100%未満の体積密度を有し得る。四角錐ノードの各面は三角形であり得、各面はストラットの接続点を提供できる。
【0033】
ストラットはまた、実質的に同一である6つの伸長面と2つの端面とからなる伸長部を備える、八面体であり得る。伸長面は、第1の内角である角度A、および第2の内角である角度Bを有する二等辺三角形であり得、ここで角度Bは角度Aより大きい。端面は、第1の内角である角度Cと第2の内角である角度Dを有する、互いにほぼ相似の二等辺三角形であり得、ここで角度Dは角度Cより大きい。角度Cは角度Aより大きいことが好ましい。
【0034】
各ストラットのストラット方向は、ストラットの方向を定義する線またはベクトルであり、各ノード面の水平面に対して直交または非直交であり得る。本明細書で開示されるMRDDおよび放射状菱形十二面体構造では、ストラット方向は、ストラット端面の中心、ストラットに沿った質量中心、もしくは外縁部またはストラットの伸長部の面の間に延在する線を利用して定められ得る。ストラットの端面の中心間に延在する線を使用してストラットの方向を定義する場合、線は一般にストラットの底面または縁部に平行であり得る。ストラットの質量中心に沿って延在する線を利用してストラットの方向を定義する場合、線はストラットの底面または縁部に対して非平行であり得る。MRDDの八面体ノードは、ストラットの原点とサイズを変更することにより、体積密度を増減するように寸法を調整され得る。ただし、ストラットの遠位端は、各ノードの周囲に形成された固定体積の角で固定されているため、体積密度が変化すると、各ノードの面に対する角度が変化する。MRDD単位セルの体積密度が変化しても、各ノードの周囲に形成される固定体積の寸法は変化しない。
図A1では、MRDD単位セルB10の角の間に破線が引かれ、その境界を画定する立方体B11が示されている。
図A1のMRDD単位セルでは、単位セルの高さB12、幅B13、深さB14は実質的に同じであり、B11で画定される立方体領域を形作る。
【0035】
一部の実施形態では、ストラットのストラット方向は、ノードの中心と、ストラットが固定されているノード面に最も近い直方体体積の角と交差し得る。いくつかの実施形態では、ストラットのストラット方向は、ストラットが固定されるノード面に最も近い直方体体積の角と交差し得る。いくつかの実施形態では、直方体または六面体の面によって画定される基準面を使用して、ストラットのストラット方向を記述する。ストラットのストラット方向が基準面に基づいて定義される場合、参照面から0度~90度の間とすることができる。ストラットのストラット方向が基準面に基づいて定義される場合、それは基準面から8度~30度であることが好ましい。
【0036】
ストラットの向きを一端の可変のノード面とその遠位端の固定点に指数付けすることにより、結果として得られるMRDD単位セルは、一般的なRDDよりも小さな鋭角と大きな鈍角の菱形形状面とすることができる。MRDDの菱形形状の面は、対向する実質的に相似の2つの鋭角と対向する実質的に相似の2つの鈍角を有し得る。いくつかの実施形態では、鋭角は70.5度未満であり、鈍角は109.5度より大きい。いくつかの実施形態では、鋭角は0度~55度の間であり、鈍角は125度~180度の間である。いくつかの実施形態では、鋭角は8度~60度の間であり、鈍角は120度~172度の間である。鋭角が小さくなると、鈍角角から遠鈍角角を横切る方向の荷重に対する耐疲労性が高まる。鋭角が小さくなり、鈍角が大きくなると、MRDDのせん断強度を高め、耐疲労性が高まるように、ストラットの方向が定まる。菱形の角度を一般的なRDDから変更すると、せん断荷重が一部のストラットの軸方向をほぼ通過するようにかかり、せん断強度が上昇する。菱形の角度を一般的なRDDから変更すると、圧縮荷重による全体的なたわみも減少し、荷重下でのたわみに耐えることにより疲労強度が向上する。
【0037】
単位セルの12の相互接続部は、格子構造の中心に向かって配置されると、隣接する12の異なる単位セルに接続し、格子を通る連続した経路を提供する。MRDDの中央空隙および相互接続部のサイズは、本明細書で説明される最長寸法法を使用して定義してもよい。最長寸法法を使用すると、
図A3で示されているような最長寸法の測定を行うことにより、中央の空隙を定義できる。
図A3では、最長寸法は距離AAとしてラベル付けされる。距離AAは、垂直方向または水平方向(方向は紙面上の方向を参照のこと)で測定され得、この例においては実質的に同じとなる。相互接続部は、単位セルの側面、頂部、または底部から見たときの最長測定によって定義してもよい。
図A4では、最長寸法は距離ABとしてラベル付けされる。距離ABは、垂直方向または水平方向(方向は紙面上の方向を参照のこと)で測定され得る。
図A4の図は側面図だが、この例においては、上部または底部から見たときに単位セルが実質的に同じとなる。
【0038】
あるいは、中央の空隙および相互接続部のサイズは、本明細書で説明する最大球法によって定義され得る。最大球法を使用すると、中央の空隙は、ストラットと交差せずに中央の空隙内に収まり得る最大の球の直径によって定義できる。
図A5は、直径がBAの球を使用して中央の空隙のサイズを定義するために使用される最大球法の例である。相互接続部は一般に菱形で、サイズは開口部内に描かれた3つの円の長さと幅のサイズによって画定され得る。側面を定義する平面内に描かれる第一の円BB1は、開口部の中心に描かれ、ストラットと交差することなく収まり得る最大直径の円となる。第2の円BB2と第3の円BB3は、第1の円BB1と接し、ストラットと交差することなく収まり得る最大直径の円となるように描かれる。第1の円BB1の直径は相互接続部の幅であり、3つの円BB1、BB2およびBB3すべての直径の合計は相互接続部の長さを表す。この測定方法を使用すると、寸法の算出から菱形の開口部の鋭角部分が削除される。場合によっては、付加製造プロセスの制限のため、相互接続部の算出サイズから、菱形の開口部の鋭角部分を削除することが有益である。例えば、SLSマシンの解像度が12μmで、精度が5μm以内の場合、SLSマシンによって鋭角の角が丸くなり得、骨成長のために使用できなくなり得る。精度の低い付加プロセス装置で製造する格子を設計する場合、相互接続部のサイズをより適切に見積もるためにこの測定システムを用いることが役立つであろう。
【0039】
別の測定方法を使用すると、いくつかの例では、相互接続部の幅は約600μmで、相互接続部の長さは約300μmである。長さ600μm、幅300μmとすると、骨成長のための既知の孔サイズ内の開口部が提供され、約1.8mm2の表面積が提供され、高強度の骨成長が可能になる。別の実施形態は、直径が300μmの細孔の断面積の1.0倍~15.0倍の断面積を有する相互接続部を含んでもよい。他の実施形態は、直径が900μmの細孔の断面積の1.0倍~15.0倍の断面積を有する相互接続部を含んでもよい。
【0040】
MRDD単位セルはまた、格子構造に少なくとも2組の実質的に均一な細孔または開口のサイズを提供するという利点を有する。いくつかの実施形態において、細孔の第1セットは約200μm~900μmの幅を有し、細孔の第2セットは細孔の第1セットの幅の約1倍~15倍の幅を有する。いくつかの実施形態では、骨芽細胞の成長を促進するように細孔の第1のセットを構成することができ、骨単位の成長を促進するように細孔の第2のセットを構成することができる。骨芽細胞の成長を促進するサイズの細孔は、約100μm以上900μm以下の幅を有し得る。いくつかの実施形態では、骨芽細胞の成長を促進するサイズの細孔は、900μmを超える幅を有し得る。骨単位の成長を促進するサイズの細孔は、約100μm以上13.5mm以下の幅を有し得る。いくつかの実施形態では、骨単位の成長を促進する大きさの細孔は、13.5mmを超える幅を有し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、多数の実質的に均一なより大きい細孔、および多数の実質的に均一なより小さい細孔を含むことが有益であり、より大きい細孔の数は、より小さい細孔の数に対する比に基づいて選択される。例えば、いくつかの実施形態は、格子構造内の1~25個の小さな細孔ごとに1つの大きな細孔を有する。いくつかの実施形態は、好ましくは、8~12個の小さな細孔ごとに1つの大きな細孔を有する。いくつかの実施形態において、より大きい細孔およびより小さい細孔の数は、格子構造中の細孔の総数の割合に基づいて選択され得る。例えば、いくつかの実施形態は、細孔の総数の4%~50%のより大きい細孔と、細孔の総数の50%~96%のより小さい細孔とを含み得る。より好ましくは、いくつかの実施形態は、細孔の総数の約8%~13%の大きな細孔と、細孔の総数の約87%~92%のより小さい細孔とを含み得る。開示された2つのサイズの実質的に均一な細孔のセットとともに構築された格子は、骨芽細胞と骨単位の成長を同時に促進する格子構造を提供すると考えられている。
【0042】
MRDD単位セルはまた、単位セルの側面、頂部または底部から見たときの相互接続部のサイズによって画定されてもよい。MRDD単位セルは、側面、頂部または底部から見たときと同じ外観を持ち、ある側面図での測定は他の側面を表している。側面から見ると、
図A4のように、MRDD単位セルは、4つの明確な菱形の相互接続部を実質的に直角に示している。各相互接続部の面積は、各相互接続部の平面方向に垂直な方向から見た場合よりも、横方向から見た場合に小さくなる。しかし、横方向から見た場合の面積は、骨がその方向に成長するために利用可能な面積を表し得る。いくつかの実施形態では、頂部、底部、または横方向から見たときの相互接続部の面積に基づいて、単位セルおよび格子の特性に指数付けをすることが望ましい場合がある。
【0043】
本明細書に開示される格子構造のいくつかの実施形態では、中央空隙は相互接続部の長さまたは幅よりも大きい。繰り返しMRDD構造では各相互接続部のサイズが実質的に同じになり得るため、結果として得られる格子は、少なくとも2つの個別のサイズの開口部で構成され得る。いくつかの実施形態では、中央空隙の直径は相互接続部の長さの約2倍であることが好ましい。いくつかの実施形態では、中央空隙の直径は相互接続部の幅の約4倍であることが好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態では、中心空隙の直径と、相互接続部の長さまたは幅との比を変更して、特定の強度の構造格子を作成することができる。これらの実施形態では、構造格子の強度が増加するにつれて、中心空隙直径と、相互接続部の長さまたは幅との比が増加する相関関係がある。
【0045】
繰り返し放射状菱形十二面体(以下「RDDR」)単位セルを使用する格子は、剛性、強度、疲労抵抗、および骨成長の条件の好ましい組み合わせを提供できると考えられている。いくつかの実施形態では、繰り返しRDDR格子は、チタンまたはチタン合金から構成される。
図A7は、完全なRDDR構造を含む単一のRDDR単位セルB20の等角図である。
図A8は、単一のRDDR単位セルB20の側面図であり、横方向から見たときの相互接続部の構成を示している。RDDR単位セルB20の上面図または底面図は、A8に描かれた側面図と実質的に同じとなる。
【0046】
本明細書で使用される場合、RDDR単位セルB20は、12個の菱形形状構造を形成する放射状ストラットおよびその鏡像ストラットを備えた中央ノードで構成される三次元形状である。ノードは、八面体であることが好ましく、より具体的には四角錐(すなわち、水平面で結合された四角錐と逆四角錐)であることが好ましい。ノードの各面は三角形であることが好ましく、各面に固定されているのは、6つの三角形の切面と2つの端面で構成されているストラットであることが好ましい。各ストラットの中心軸は、各ノード面の平面に対して直交または非直交であり得る。中心軸はストラットの重心に沿っていてもよい。RDDRはまた、各面に1つのストラットが接続された中央ノードによっても特徴付けられ、8つのストラットが接続された四角錐のノードとなる。
【0047】
ノードとストラットの組み合わせの例を
図A9~A13に示す。
図A9は、単一のストラットB31が取り付けられた単一のノードB30の等角図である。ノードB30は、2つのピークが体積B32の頂部と底部に面するように配置された四角錐であり、ノードB30と任意に取り付けられたストラットB31の境界を定義する。ノードB30は、水平角が体積B32の側面に最も近い点に位置するように向けられている。ストラットB31は、ノードB30の面から体積B32の角まで延在しており、ノードに取り付られたストラットの境界を画定する。
図A9では、ストラットの中心軸は水平面から45度上にあり、ノードの平面は水平面から45度上にある。
【0048】
図A9は、八面体ストラットB31の詳細も示しており、
図A9では破線がストラットの隠れている縁部を表している。ストラットB31は、6つの実質的に相似した伸長面と2つの端面の伸長部を備えた八面体である。ストラットB31の伸長面B31a、B31b、B31c、B31d、B31eおよびB31fは、ストラットの、細長くやや円筒形である表面の外面を画定している。伸長面B31a、B31b、B31c、B31d、B31eおよびB31fのそれぞれは、第1の内角である角度A、および第2の内角である角度Bを有する二等辺三角形であり、角度Bは角度Aより大きい。ストラットB31はまた、互いに実質的に相似である二等辺三角形の2つの端面B31fおよびB31gを有する。B31fおよびB31gは第1の内角である角度C、および第2の内角である角度Dを有し、角度Dは角度Cより大きい。伸長面B31a、B31b、B31c、B31d、B31eおよびB31fの内角を端面B31fおよびB31gと比較すると、角度Cは角度Aより大きい。
【0049】
図A10は、体積B32で区切られたノードB30とストラットB31の組み合わせの側面図である。側面図では、立方体B32の高さとノードB30の高さを簡単に比較できる。
図A11~A13は、体積の壁や面からではなく、体積の角から見たノードとストラットの組み合わせの側面図であり、結果として得られる単位セルの体積密度を変更するために
図A9およびA10から組み合わせが変更されている。
図A11では、ノードB130の高さが体積B132の高さに比べて増大している。ストラットB131の遠位端は体積B132の角の位置によって固定されているため、ストラットB131は、接続されたノード面に対する角度を、非直交になるように変更しなければならない。ストラットB131の水平面からの角度が約20.6度であるノードB130とストラットB131の組み合わせは、弾性係数が約3GPaの格子構造に適している。
【0050】
図A12では、立方体B232の高さに対するノードB230の高さは、
図A11の比率よりも大きくなり、弾性係数が約4GPaの格子構造に適したノードB230とストラットB231の組み合わせとなる。ノードB230の高さが増加するにつれて、ストラットB231と水平面との間の角度は約18.8度まで小さくなる。ノードB230の高さが増加すると、ノード面のサイズも増大し、ストラットB231のサイズが増大する。ストラットB231の遠位端は体積B232の角に固定されているが、遠位端のサイズはノード面のサイズの増大に合わせて大きくなり、その長さに沿って実質的に均一なストラット直径を維持する。ノードとストラットのサイズが大きくなると、体積密度が増加し、弾性係数も同様である。
図A13では、体積B332の高さに対するノードB330の高さが
図A13の比率よりも大きくなり、弾性係数が約10GPaの格子構造に適したノードB330とストラットB331の組み合わせとなる。この構成では、ストラットB331と水平面との間の角度B333は約12.4度まで減少し、体積密度は前の例よりも増加する。単一ノードとストラットの例をコピーまたはミラーリングして、適切なサイズと特性の単位セルを作成し得る。例えば、ストラットと水平面の間の角度を25.8度に増大させると、12.3%の体積密度と約300MPaの弾性係数を持つ格子を作成できる。わかりやすくするために、例では単一のノードと単一のストラットを示したが、複数のストラットを各ノードに接続して適切な単位セルを作成してもよい。
【0051】
ノードの上半分または下半分の隣接ノード面から延在する隣接ストラットは、水平面からの角度と、隣接ストラットのストラット方向間の角度とによって画定される横方向の分離角度とを有している。MRDDおよびRDDR構造では、隣接ストラットは、関連する隣接ストラットに最も近い伸長部の外縁または伸長面を有する。本明細書で使用される横方向分離角度は、一般に、関連する隣接ストラットの最も近くへ延在するストラットの伸長部の外縁または伸長面の間の角度を指す。いくつかの実施形態では、ストラット端面の中心間で延在する線、またはストラットの質量中心によって定義される線によって画定される横方向分離角度は、隣接するストラットの同様の計算に関して使用できる。
【0052】
横方向分離角度は、ストラットの最も近い面または縁部と隣接するストラットとの間の角度である。横方向分離角度は、両方のストラット縁部を含む平面内で、ストラットの最も近い縁部と、隣接するストラットの最も近い縁部との間の最小角度として測定できる。横方向分離角度は、2つのストラット面に垂直な平面内で、ストラットの最も近い面と、隣接するストラットの最も近い面との間の角度として測定することもできる。ストラット縁部またはストラット面が画定されていない実施形態では、横方向分離角度は、あるストラットの最も近い部分と、隣接するストラットの最も近い部分との間の角度として測定できる。立方体体積の単位セルの場合、水平面からのストラット角度が小さくなると、横方向分離角度は90度に近づく。立方体体積の単位セルの場合、水平面からのストラット角度が増加すると、横方向分離角度は180度に近づく。いくつかの実施形態では、109.5度より大きい横方向分離角度を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、109.5度未満の横方向分離角度を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、約108度以上約156度以下の横方向分離角度を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、111度以上156度以下の横方向分離角度を有することがより好ましい。いくつかの実施形態では、108度以上120度以下の横方向分離角度を有することがより好ましい。いくつかの実施形態では、約111度以上120度以下の横方向分離角度を有することが最も好ましい。いくつかの実施形態では、128度以上156度以下の横方向分離角度を有することがより好ましい。
図A14は、キューブB432の角から見た側面図であり、2つの隣接するストラットB431およびB434が取り付けられ、横方向分離角度B443が定められた単一のノードB430が示されている。ストラットの最も近い縁部から、隣接するストラットの最も近い縁部まで測定すると、横方向分離角度B443は約116度である。
【0053】
いくつかの実施形態では、単位セルは、共に固定された複数のサブ単位セルから構築される。
図A15は、単一のノードと4つのストラットを備える例示的なサブ単位セルの等角図である。
図A16は、上部サブ単位セルが反転されて下部サブ単位セルの頂部に固定された、積層構造の2つのサブ単位セルの等角図である。
図A17は、単一のRDDR単位セルを形成するように積み重ねられた8つのサブ単位セルの等角図である。
【0054】
A15では、ノードB530は双四角錐であり、2つのピークが立方体体積B532の頂部および底部に面するように配置されている。いくつかの実施形態では、体積B532は、立方体体積、六面体体積、アモルファス体積、または1つ以上の非直交側面を有する体積であり得る。ピークは、4つの上面が交わる点と4つの下面が交わる点を指す。ノードB530は、水平頂点が立方体体積B532の側面に面するように配置されている。ストラットB531は、その近位端でノードB530面の下面に固定され、その遠位端で立方体体積のB532の最も近い角まで延在している。ストラットB531の遠位端は、サブ単位セルの特性を調整するためにノードB530のサイズが変更された場合でも、立方体体積B532に固定されたままであり得る。
【0055】
ストラットB531が固定されている面の反対側のノードB530の下面では、ストラットB534の近位端がノードB530に固定されている。ストラットB534は、その遠位端で立方体体積B532の最も近い角まで延在している。ストラットB535は、その近位端で、ストラットB531に固定されたノードB530の面から約90度水平方向に向けられた上部ノードB530の面に固定されている。ストラットB535は、その遠位端で立方体体積B532の最も近い角まで延在している。ストラットB535が固定されている面と反対側のノードB530の上面で、ストラットB536の近位端はノードB530に固定されている。ストラットB536は、その遠位端で立方体体積B532の最も近い角まで延在している。
【0056】
いくつかの実施形態では、ストラットB531およびB534~B536は、三角形の面を備えた八面体である。ノードB530の面に固定されたストラットの面は、ノードB530の面とほぼ同じサイズと向きとなり得る。立方体B532の最も近い角に固定されたストラット面は、ノードB530に固定され、実質的に平行な平面に向けられたストラット面と実質的に同じサイズであり得る。残りの6つの面は、第1の内角および第1の内角より大きい第2の内角を有する6つの実質的に相似の二等辺三角形であり得る。6つの実質的に相似の二等辺三角形は、それらの長辺に沿って、隣接する反転した実質的に相似の二等辺三角形に固定でき、三角形の端部を有するおおむね円筒である形状を形成する。
【0057】
サブ単位セルB540を形成する場合、ストラットB531およびB534~B536に固定された体積B532の各角に、8番目のノードB538を追加することが効果的であり得る。サブ単位セルB540を複製する場合、各ストラット端に接続された8番目のノードB538は、隣接するサブ単位セルの8番目のノードと結合され、隣接するサブ単位セルのストラット間に位置するノードを形成する。
【0058】
図A16は、いくつかの実施形態で使用されるクォーター単位セルB560を形成するために第2のサブ単位セルB640に固定された第1のサブ単位セルB540を示す。第2のサブ単位セルB640は、双四角錐である双四角錐ノードB630を備え、2つのピークが立方体の頂部および底部に面するように配向している。ノードB630は、水平頂点が立方体体積の側面に面するように配置されている。ストラットB635は、その近位端でノードB630面の下面に固定され、その遠位端で立方体体積の最も近い角まで延在している。ストラットB635が固定されている面と反対のノードB630の下面では、ストラットB636の近位端がノードB630に固定されている。ストラットB636は、その遠位端で立方体体積の最も近い角まで延在している。ストラットB634は、その近位端で、ストラットB635に固定されたノードB630の面から約90度横方向に向けられた上部ノードB630の面に固定されている。ストラットB634は、その遠位端で立方体体積の最も近い角まで延在している。ストラットB634が固定されている面と反対側のノードB630の上面では、ストラットB631の近位端がノードB630に固定されている。ストラットB631は、その遠位端で立方体体積の最も近い角まで延在している。
【0059】
図A16の実施形態では、第1のサブ単位セルB540は基準点として使用されるが、第2のサブ単位セルB640または別の点も、基準点として使用され得ることを理解されたい。第1のサブ単位セルB540が所定の位置に固定されると、第2のサブ単位セルB640が第1のサブ単位セルB640と実質的に相似になるように複製される。第2のサブ単位セルB640は、第1の単位セルB540の頂部に固定される前に、その中心軸を中心に回転される。
図A16では、第2のサブ単位セルB640を反転させて適切な回転を実現するが、中心軸を中心とした他の回転でも同じ結果を実現できる。第2のサブ単位セルB640に固定された第1のサブ単位セルB540は、複製して他のクォーター単位セルに横方向に取り付けて完全な単位セルを形成できるクォーター単位セルB560を形成する。
【0060】
あるいは、4つの実質的に相似のサブ単位セルの第1グループを横方向に固定して、上から見たときに正方形、長方形、または四角形となるように形成することにより、完全な単位セルを構築し得る。中心軸を中心に回転させた4つの実質的に相似のサブ単位セルの第2グループを横方向に固定して、上から見たときに正方形、長方形、または四角形となるように形成することもできる。サブ単位セルの第2グループは、同じ結果を得るために、横方向に固定する前に中心軸を中心として回転させるか、固定した後に反転させることができる。次に、第2グループが第1グループの頂部に固定され、完全な単位セルが形成される。
【0061】
図A17は、A15のサブ単位セルB540を複製して形成された完全な単位セルB770の例であり得る。ノードB530とストラットB531およびB534~B536と同様、サブ単位セルB540の境界を画定する体積B532が、明確にするために識別される。
図A17の完全な単位セルB770は、上述の方法を使用して、または本発明の概念内の態様を使用して形成することができる。
【0062】
所定の単位セルのノードから伸びる各ストラットは、ノードから放射状に延在し、水平面からの長さと角度が実質的に同じになり得る。各ストラットの端では、ストラットが鏡像化され、隣接するノード面から延びるストラットが菱形の開口部を形成する。ストラットはノード面に対して直交しない可能性があるため、2つの形状の菱形が発生する。この構成では、4つの菱形の第1グループが、垂直面に向けられたノードから放射状に延在している。ひし形の最初のグループの鋭角の角度は水平面からのストラット角度の2倍に等しく、鈍角の角度は180度から鋭角の角度を引いた値に等しくなる。また、この構成では、8つの菱形の第2のグループが放射状に延在しており、8つの菱形の第2のグループの一部は、4つの菱形の第1のグループを定義する隣接ストラット間の横方向分離角度内に収まる。菱形の第2のグループの鋭角の角度は、4つの菱形の第1のグループを定義する隣接するストラット間の横方向分離角度とほぼ同じであり得、鈍角の角度は180度から鋭角の角度を引いた値に等しくなり得る。足場の特性はまた、体積あたりの表面積によって説明されてもよい。1.0mm×1.0mm×1.0mmの立方体の場合、表面積は6.0mm2である。1.0mm3の構造が100%の体積密度の材料ではなく格子構造で構成される場合、体積あたりの表面積は大幅に増加し得る。低体積密度の足場では、体積密度が増加すると体積あたりの表面積が増加する。いくつかの実施形態では、30.1%の体積密度を有する足場は、1mm3あたり27.4mm2の表面積を有するであろう。いくつかの実施形態では、体積密度が27.0%に減少した場合、格子は1mm3あたり26.0mm2の表面積を有し、体積密度が24.0%に減少した場合、格子は1mm3あたり24.6mm2の表面積を有するであろう。
【0063】
本明細書に開示されるMRDDおよびRDDR構造はまた、所定の体積密度に対して特に高い弾性係数の利点をも有する。格子または足場として使用すると、適切な弾性係数と低い体積密度を備えたインプラントを実現し得る。体積密度が低いと、骨の内部成長に利用できるインプラントの体積が増加する。
【0064】
以下の表1に、さまざまな格子設計弾性係数の格子構成の例を示す。各例におおよその実測弾性係数が与えられ、製造プロセスを経た後のその格子の計算上の弾性係数を表す。本明細書に開示される格子構造およびインプラントは、いくつかの実施形態では設計弾性係数に、他の実施形態ではおおよその実測弾性係数に設計することができる。現在開示されている格子構造の1つの利点は、おおよその実測弾性係数が、以前に得られていたものよりもはるかに設計弾性係数に近いことである。テスト中、格子の一実施形態は、4.0GPaの設計弾性係数として設計された。テストを経て、格子の実測弾性係数は3.1GPaであり、実測弾性係数は、設計弾性係数の77%以内となった。
【0065】
各格子設計弾性係数に、体積密度、体積密度に対する設計弾性係数の比、表面積(mm2)、体積密度に対する表面積の比および格子設計弾性係数に対する表面積の比が与えられる。
【0066】
【0067】
本明細書に開示される実施形態のいくつかでは、必要なストラットの厚さは、所望の弾性係数から計算することができる。次の式を使用して、特定の弾性係数を実現するために必要なストラットの厚さを、いくつかのMRDDおよびRDDR構造について計算できる。
ストラットの厚さ=(-0.0035×(E2))+(0.0696×E)+0.4603
上の式において、「E」は弾性係数である。
弾性係数は、その値を達成するために必要なストラットの厚さを決定するために選択でき、または、事前に選択したストラットの厚さを使用して計算できる。ストラットの厚さはmm単位で表され、ストラットの直径を表す。ストラットの厚さは、事前に選択された弾性係数を使用して計算されてもよく、事前に選択されたストラットの厚さにおける弾性係数を決定するために選択されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、単位セルは、1つ以上の方向に引き伸ばされて、異方性特性を有する格子を提供し得る。単位セルが引き伸ばされると、一般に、伸びの方向に対して垂直な方向への弾性係数が低下する。伸び方向への弾性係数が増加する。相互接続部、開口部、および中央の空隙(存在する場合)内に含まれる新しい骨の成長の方向に対して垂直な方向に、セルを伸長することが望ましい。弾性係数の低い望ましい方向に対して垂直な方向にセルを伸長することにより、伸長方向のせん断強度が増加し、構造足場を設計するときに望ましい品質のセットが提供されるであろう。足場の全体的な剛性を共有すると、この効果が増加または減少し、1つ以上の方向の変動が可能になる。
【0069】
いくつかの実施形態では、サブ単位セルを画定する体積の高さへのノードの相対的な高さを制御することによって、サブ単位セルを設計してもよい。ノードの高さを制御することで、格子構造の最終的な特性及び外観に影響を与え得る。一般に、ノードの高さを増加させると、ストラットの厚さが増加し、体積密度が増加し、強度が増加し、結果として得られる格子の弾性係数が増加する。ノードの高さを増加させる場合、ノードの幅は、いくつかの実施形態では一定に保たれ得、または他の実施形態では変化し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、サブ単位セルは、サブ単位セルを画定する体積に対するノードの体積を制御することにより設計されてもよい。ノードの体積を制御することで、格子構造の最終的な特性と外観に影響を与え得る。一般に、ノードの体積を増加させると、ストラットの厚さが増加し、体積密度が増加し、強度が増加し、結果として得られる格子の弾性係数が増加する。ノードの体積を増加させる場合、一部の実施形態では、ノードの幅または高さを一定に保ち得る。
【0071】
以下の表2に、さまざまな格子設計弾性係数の格子構成の例を示す。おおよその実測弾性係数が各例に与えられ、製造プロセスを経た後のその格子の計算上の弾性係数を表す。本明細書に開示される格子構造およびインプラントは、いくつかの実施形態では設計弾性係数になるように、またいくつかの実施形態ではおおよその実測弾性係数になるように設計され得る。各格子設計弾性係数に、格子設計弾性係数、ノードの高さ、体積密度、ノード体積、体積密度に対するノード高さの比、格子設計弾性係数に対するノード高さの比およびノード体積に対する体積密度の比が与えられる。
【0072】
【0073】
開示された格子構造のいくつかの実施形態は、0.375GPa以上4GPa以下の弾性係数範囲内で提供される場合に特に有用である。いくつかの実施形態は、2.5GPa以上4GPa以下の弾性係数を有する格子構造を含むことがより好ましい。いくつかの実施形態は、体積密度が5%以上40%以下である格子構造を含む。いくつかの実施形態は、体積密度が30%以上38%以下の格子構造を含むことがより好ましい。
【0074】
本明細書に開示される格子構造は、低体積密度範囲および低弾性係数範囲に対して特に堅牢な荷重特性および疲労特性を有する。格子構造のいくつかの実施形態は、5Hzで最大5,000,000サイクルの静的および動的荷重において、300N以上15000N以下のせん断降伏荷重および圧縮降伏荷重を有する。いくつかの実施形態は、5Hzで最大5,000,000サイクルの静的および動的荷重において、300N以上15000N以下の圧縮せん断強度および軸方向荷重を有する。いくつかの実施形態は、5Hzで最大5,000,000サイクルの静的および動的荷重において、300N以上15000N以下のせん断強度および軸方向荷重を有する。いくつかの実施形態は、15Nmまでのねじり降伏荷重を有する。
【0075】
一例では、本発明の格子構造は、32%以上38%以下の体積密度、2.5GPa以上4GPa以下の弾性係数、および5Hzで最大5,000,000サイクルの静的負荷および動的負荷において300N以上15000N以下のせん断強度および軸方向荷重を有する。いくつかの例は、幅が約200μm~900μmの実質的に均一な開口部の第1セットと、第1セットの幅の約1~15倍の幅の実質的に均質な開口部の第2セットとを含み、第2セットの開口部の数は、第1セットの開口部の数に対して約1:8から1:12の比率で設けられる。
【0076】
開示された構造は、骨統合が求められていないか望ましくない用途で使用される場合にも利点を有し得る。構造上に成長阻害コーティングまたは成長阻害スキンを施すことにより、本明細書に開示される格子を使用して、骨成長のための足場を提供することなく構造的支持を提供し得る。これは、一時的なインプラントまたは一定期間後に除去することを目的とした医療機器で使用する際に望ましい場合がある。
【0077】
本発明は、医療用インプラントで使用するための流体インターフェースシステムを含む。本明細書に記載の流体インターフェースシステムは、インプラント内に配置された少なくとも1つまたは複数の流体インターフェースチャネルを含むことができる。流体インターフェースシステムは、必要に応じて、流体リダイレクトチャネル、流体インターフェースポート、および流体を流体インターフェースポートに向ける対応する器具を含む。本明細書に開示される例示的な実施形態は格子を含むことができるが、開示される発明は、非多孔性インプラント、大部分が非多孔性であるインプラント、または部分的に非多孔性であるインプラントでの使用に適合されてもよい。本明細書に示されているのは例示的な実施形態のみであり、流体インターフェースシステムの構成部品は、本明細書で表される本発明の概念内の異なるタイプの流体に対して変更または最適化され得ることを理解されたい。
【0078】
図1は、インプラント10での使用に適合した流体インターフェースシステム(以下、「インターフェースシステム」とする)の第1の例示的な実施形態である。
図1では、インプラント10は頂部から示されており、その垂直中心を通って水平に切断されている。
図1はまた、後に開示されるいくつかの断面図の位置を示す線Aを含む。線Aは非直交であり、様々な実施形態における流体インターフェースチャネルの内部構造を示すために左流体インターフェースチャネル31を横切る。
【0079】
インプラント10は、後方部分11と前方部分12を備える。後方部分11は、本体13に対して比較的高い体積密度のツール係合領域を含んでもよいが、しかしながら、いくつかの実施形態では、より低い体積密度の格子を含んでもよい。前方部分12は、体積密度が低い足場を備えてもよいが、しかしながら、いくつかの実施形態では、体積密度が高い実質的に固体の材料を備えてもよい。
【0080】
理解を明瞭におよび容易にするため、図内の方向は、前面、背面、右側面、左側面、頂部および底部としてあらわされている。インプラントの頂部と底部は、人間の脊椎に埋め込まれた場合、それぞれ上方向と下方向に対応し得る。前面という用語は、移植中に挿入されるときのインプラントの前縁を指し得る。背面という用語は、前面の反対側の端を指す。右側という用語は、上から見たときのインプラントの右側を指し、左側という用語は、右側の反対側を指す。これらの特定の方向基準は例示であり、本明細書で説明される例示的な方向を説明するために使用される。
【0081】
インプラント10の前方部分12は、さらに、3つの別個の伸長部、すなわち、一端で後方部分11に固定された左アーム13、中央アーム14および右アーム15、ならびにそれらの遠位端の前アーム16から構成される。インプラント10の構造は、左ルーメン17および右ルーメン18を画定し、左ルーメン17は、左アーム13、中央アーム14、後方部分11および前アーム16によって横方向に画定され、右ルーメンは、中央アーム14、右アーム15、後方部分11および前アーム16によって横方向に画定される。インプラント10では、左アーム13、中央アーム14、右アーム15および前アーム16は単一の材料で構成されるが、あるいは、後で取り付けられる別個の部分でもあり得る。いくつかの実施形態では、アーム13~16は、均一な等方性特性を有する構造足場、不均一な等方特性を有する構造足場、均一な異方性特性を有する構造足場、および/または不均一な異方性特性を有する構造足場を備える。いくつかの実施形態では、後方部分11と前方部分12は同じ材料で構成されているが、体積密度が異なる。いくつかの実施形態では、ルーメン17および18は、完全に別個であってもよく、または面外で連続していてもよい。
【0082】
インプラント10において、流体は、インプラント10の背面に位置する3つの流体インターフェースポートのうちの1つを通ってインターフェースシステムに侵入し得る。少なくとも部分的に連続気泡構造で構成される場合、流体は任意の外面を通ってインプラント10に侵入し得る。後方部分11は、左流体インターフェースポート21、中央流体インターフェースポート22、および右流体インターフェースポート23から構成される。インターフェースシステムの第1の例示的な実施形態では、3つの流体インターフェースポート21~23が示されているが、流体インターフェースポートの数は、インプラント10のサイズおよびインターフェースシステムの構成に基づいて増減させてもよい。単一の流体インターフェースポートのみを使用してインプラント内の流体を輸送してもよく、より多くの流体インターフェースポートをより大きなインプラントや低粘度の流体が輸送される領域で使用してもよい。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポートは設けられない。流体インターフェースポートのない実施形態では、毛細管作用または拡散を含みこれらに限定されない方法により、流体をインプラント体積の内外に輸送してもよい。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート21~23は、インプラント10の一部に自由に浮動し得る。
【0083】
インプラント10では、流体インターフェースポート21~23は、挿入ツールの対応するねじつき端部を受け入れるようにも構成されたねじ付き開口部である。本発明の第1の例示的な実施形態における流体インターフェースポート21~23の構成は、
図15の斜視図に示されている。流体インターフェースポート21~23内に含まれるねじ山は、挿入ツールのねじつき端部、流体インターフェースデバイスのねじ端、または流体の挿入または輸送を支援するように構成されたツールを受け入れるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、遮るもののない中心を有する中空の挿入ツールは、流体が挿入ツールの中空領域と流体インターフェースポート21~23との間で連通している間、インプラントの操作を可能にするために流体インターフェースポート21~23のねじ山と係合する。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポートは、インプラントの右側、前面、および/または左側に配置されるが、挿入ツールのねじ付き端部に対応するねじ山を含まない。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポートは、インプラントの右側、前面、および/または左側に配置され、挿入ツールのねじ付き端部に対応するねじ山を含む。いくつかの実施形態では、挿入アタッチメントはねじ切りされていない。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート21~23は、カニューレの部分回転を使用する1/4ロックメカニズムを使用して挿入ツールに取り付け、挿入ツールのピン、ウェッジまたはチップを係合するように構成される。他の実施形態では、挿入ツールを1つ以上の流体インターフェースポート21~23に一時的に取り付けるために、安全な取り付けのための手段が使用される。流体インターフェースポート21~23を通して流体を輸送するための挿入ツールが開示されているが、この目的のために構成された挿入ツールは、流体インターフェースポートから流体を挿入または除去する必要はない。例えば、シリンジを使用して、流体インターフェースポート21~23に流体を挿入または除去し得る。このようなデバイスは、汎用であってもよく、インターフェースポートで機能するように特別に設計または選択されていてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、流体が流体インターフェースポート21~23に入ると、流体インターフェースチャネルを介してインプラントの様々な領域に分配される。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート21~23から流体インターフェースチャネル31~33に流体を転送するために、流体リダイレクトチャネル24および25が必要である。流体リダイレクトチャネル24および25は、流体が流体インターフェースポートと流体インターフェースチャネル間で急速に向きを変える必要がある用途に役立つ。インプラント10は、流体インターフェースチャネルと流体インターフェースポートとの間で流体を方向転換するために、左流体リダイレクトチャネル24および右流体リダイレクトチャネル25を含み得る。インプラント10のインターフェースシステムにおいて、中央流体インターフェースチャネル32は、流体を方向転換させる必要なく中央流体インターフェースポート22に接続させ、したがって、インプラント10の中央での流体リダイレクトチャネルの使用を不要にする。
【0085】
本明細書に記載の流体インターフェースシステムを使用して、1つ以上の方向に単独に、または同時に流体を輸送できる。流体は重力によってインプラントに供給されてもよく、生理学的な力などによってインプラントに引き込まれたり、インプラントから引き出されたりしてもよい。いくつかの実施形態では、流体は、流体インターフェースポート21~23を介してインプラントに注入され得る。いくつかの実施形態において、流体は、流体インターフェースポート21~23を介してインプラントから除去され得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート21~23は、インプラントの内外で流体が自由に連通するための領域を提供することができる。
【0086】
インプラント10の例示的なインターフェースシステムは、左流体インターフェースチャネル31、中央流体インターフェースチャネル32、および右流体インターフェースチャネル33を含む。流体インターフェースチャネル31~33は、流体が流体インターフェースポート21~23または流体リダイレクトチャネル24および25(使用される場合)とインプラント10の内部体積との間を移動するための導管を提供する。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、インプラントの体積全体またはその表面に流体を輸送することができるインプラント内の空隙を含む。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、格子内のより低い体積密度の領域であり、これにより、格子構造の大部分よりも少ない抵抗で流体が通過できるようになる。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、周囲のインプラントとは異なる材料を含む。
【0087】
流体インターフェースチャネル31~33は、
図1~3に示されるように内部空隙を含んでもよい。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、インプラント10内に含まれる任意のサイズの空隙を備える。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、単一の格子単位セル内に含まれる空隙を含む。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、格子構造内に含まれる空隙を含む。いくつかの実施形態では、本体はMRDD格子構造を備え、MRDD格子構造において単一単位セルの中央空隙は流体インターフェースチャネルを備える。流体インターフェースチャネルに流体的に連通された空隙は、その流体インターフェースチャネルの一部、その流体インターフェースチャネルの分岐、または別個の流体インターフェースチャネルと見なされ得る。したがって、格子構造内の流体インターフェースチャネルは、インプラント10の別の部分に流体的に連通される単一の空隙と同じくらい小さくてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、インプラント10の別の部分の体積密度と比較して低い体積密度である体積部を備える。流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は、特定のタイプの流体に対してチャネル内の流体圧力を最適化するために変更され得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は0%である。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は0%より大きい。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は100%未満である。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は、インプラント10の別の部分の体積密度の0.95倍未満である。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は、インプラント10の別の部分の体積密度の0.75倍未満である。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33の体積密度は、インプラント10の別の部分の体積密度の0倍以上0.6倍以下である。
【0089】
流体インターフェースチャネル31~33は、流体インターフェースチャネルのパラメータを変えることにより、特定の流体の粘度および表面張力について最適化されてもよい。流体インターフェースチャネル31-33のパラメータは、直径、チャネル壁の透過性、チャネルの透過性または密度、チャネルに注入される材料の密度、デバイスと流体との間の表面張力、およびチャネルに注入された流体の粘度を含み、これらに限定されない。例えば、粘性の高い流体は、粘性の低い流体と比較して、より大きな直径のチャネル、より高い壁透過性、および/またはより低いチャネル密度を最適に利用し得る。低粘度流体を対象とするいくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、密度が低い領域であり、流体インターフェースチャネルの表面積を増加させ、インプラントの外面へのウィッキング効果を増加させる。低粘度流体を対象とするいくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は密度が低い領域であり、表面積を増加させ、流体インターフェースチャネルを比較的に負圧とし、インプラントの外側表面からのウィッキング効果と流体の流入とを増加させる。
【0090】
流体インターフェースチャネルについてのいくつかの潜在的なパラメータが与えられているが、他のパラメータまたは変数も適用可能であり、それらは単独でまたは複数で変更されてもよい。例えば、流体インターフェースチャネル31~33は、最適化目標を達成するために変化する直径のみを使用してもよいし、流体インターフェースチャネルは、最適化目標を達成するために変化する直径と壁透過性を使用してもよい。
【0091】
格子の一部または全体を含むインプラントで本発明の流体インターフェースシステムを使用する場合、流体インターフェースチャネル31~33は、有効となるために必ずしもインプラントの表面に到達する必要はない。格子構造は、それらを通して一定量の流体を分散させ得る。格子では、流体インターフェースチャネルは、インプラントの外部の手前で終端し得、流体は、流体インターフェースチャネルとインプラント表面との間の格子の層を通して分散し得る。固体の非多孔質表面を有するインプラントで本発明の流体インターフェースシステムを使用する場合、流体インターフェースチャネルは、通常、インプラントの表面で終端となるべきである。
【0092】
流体インターフェースチャネル31および33はまた、インプラント10の特定の場所に向かって、またはそこから離れて流体を優先的に輸送するように構成されてもよい。流体インターフェースチャネル31および33が流体を優先的に輸送する傾向は、流体インターフェースチャネルパラメータを使用して、流体インターフェースチャネルまたはインプラントの領域の流体圧力を増加または減少させ、流体圧力差を生成することによって達成され得る。流体圧力差を使用して、流体をより低い圧力領域に向かって移動させることができ、流体圧力差は設計された流体圧力差または外部から適用された流体圧力差に応じて達成され得る。外部から適用される流体圧力差は、インプラント内部の流体よりも高いまたは低い流体圧力の流体が流体インターフェースポート21~23と連通できるようにすることにより、インプラントに適用され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、インプラント10の外側を通して流体を送達する前に、ルーメン17および18に優先的に流体を送達するように構成され得る。インプラント10のインターフェースシステムのいくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、インプラントの外面と比較して、それぞれルーメン17および18の近くに優先的に配置される。このバイアスにより、過剰な液体がデバイスの外面から出るのではなく、ルーメンに浸透することができる。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33の壁は、流体をルーメン17および18に優先的に送達するためのルーメンからの距離と比較して、デバイスの外部表面から40%~70%離れている。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33の壁は、ルーメンからの距離と比較して、デバイスの外部表面から60%~63%離れている。いくつかの例では、流体インターフェースチャネル31および33の壁は、ルーメンからの距離と比較して、デバイスの外部表面から1.0倍より大きい距離だけ離れている。いくつかの例では、流体インターフェースチャネル31および33の壁は、移植片窓からの距離と比較して、デバイスの外面から1.0倍より大きく3.0倍までの距離だけ離れている。いくつかの例では、流体インターフェースチャネル31および33の壁は、移植片窓からの距離と比較して、デバイスの外部表面から約1.6倍離れている。いくつかの実施形態では、選択の規模は、流体の特性に応じて変わる。
【0094】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33の位置は、流体インターフェースチャネルの縁と外面との間に位置する格子単位セルの数に基づいて測定することができ、外面は、ルーメン17および18の壁を含むインプラントの任意の表面であり得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、ルーメン17および18の壁からの1つ以上の単位セルに配置される。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、インプラント10の外面からの1つ以上の単位セルに配置される。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、インプラント10の外側面からの1つ以上の単位セルに配置される。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、インプラント10の上部または下部外面からの1つ以上の単位セルに配置される。
【0095】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、ルーメンに最も近い流体インターフェースチャネルの側面上における、壁密度の減少、壁透過性の増加、および/またはチャネル直径の増加を利用することにより、インプラント10の外側を通して流体を送達する前に、ルーメン17および18に優先的に流体を送達するように構成され得る。これらの方法は、ルーメン壁に最も近い流体インターフェースチャネルの側面の壁密度を減らすか、ルーメン壁に最も近い流体インターフェースチャネル壁の壁透過性を増加させるか、またはルーメン壁に最も近い流体インターフェースチャネルの領域で流体インターフェースチャネル直径を増加させることで実現できる。これらの方法は、流体インターフェースチャネル31および33の壁を外壁よりもルーメン17および18の近くに物理的に配置する代わりに、またはそれと組み合わせて使用してもよい。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、それぞれのルーメン17および18に直接接続され、外壁を通して流体を分散させる前にルーメンで終端して流体をルーメンに導いてもよい。
【0096】
流体インターフェースチャネル31~33の位置または特性はまた、注入された流体にかかる重力を打ち消すように変更されてもよい。例えば、インプラント10のインプラントがその垂直方向に埋め込まれると予想される場合、流体インターフェースチャネル31~33は、インプラントの上面の近くに配置されるか、または予想される流体にかかる重力を打ち消すように、インプラントの上側に優先的に流体を送達するように構成され得る。重力に対抗するための優先方向は、移植中のインプラントの位置または移植後のインプラントの位置を含みこれらに限定されない、さまざまな位置に基づいて選択され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、ルーメン17および18への送達ではなく、インプラント10の外側の流体の送達を促進するように構成される。インターフェースチャネルをルーメン17および18よりも外側に物理的に配置すること、外壁に最も近い流体インターフェースチャネル側の壁密度を低減すること、外壁に最も近い流体インターフェースチャネル壁の壁透過性を増加させること、および/または外壁に最も近い流体インターフェースチャネルの領域における流体インターフェースチャネル直径を増加させることにより、流体を優先的にインプラント10の外部に向けてもよい。開示された流体送達の好ましい方法は、流体の好ましい方向に流体インターフェースチャネル特性を変更する行動をとることを伴うが、必要に応じて逆の行動をとってもよい。例えば、好ましい方向の壁の透過性を増加させる代わりに、好ましくない方向の壁の透過性を減少させ得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31および33は、インプラントの外側に直接接続されても、インプラントの外壁で終端してもよい。
【0098】
図2は、左側から見たインプラント10の側面断面図であり、水平中心を通って垂直に切断されている。中央アーム14は、流体インターフェースポート22から離れて延在するにつれて狭くなり、流体インターフェースチャネル32もその方向に狭くなる。流体インターフェースチャネル32は、中央アーム14の表面からの距離を維持するため、および/または流体インターフェースチャネル32内の一定の圧力を維持するために、流体インターフェースポート22から離れる方向に狭くなり得る。流体インターフェースチャネルに関連する狭小化は、断面積の減少を意味する。ある方向で狭くなっている流体インターフェースチャネルは、その方向で断面積が減少している。中央アーム14の表面へのチャネル圧力および分散特性はまた、表面までのチャネルの距離またはチャネルの直径以外のパラメータを変更することにより変更されてもよい。そのようなチャネルは、前部アーム16または前部アーム16に接続された分岐チャネルを満たすなど、流体をデバイスの奥深くに輸送するために適用されてもよい。
【0099】
この実施形態および他の実施形態で開示される流体インターフェースチャネル31~33は、インプラント内の任意の輪郭に従う、または基準とするように構成され得る。インプラントの可能な輪郭には、外面、密度輪郭、ルーメン、穿孔、内部構造またはマーカーが含まれ、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル31~33は、実際にそうであるか構想上であるかにかかわらず、所定の内部形状、場所、または輪郭に従うか、基準とするように構成され得る。
【0100】
図3は、左側から見たインプラント10の側面断面図であり、
図1に示した線Aで垂直に切断したものである。線Aは、この実施形態における流体インターフェースチャネル31の側面プロファイルを示すために、左アーム13および左流体インターフェースチャネル31を横切る。第1の例示的な実施形態では、流体インターフェースチャネル31は、横方向の流れの一貫性を高めるために、幅よりも高さが大きい。
【0101】
インプラント10のインターフェースシステムにおいて、流体インターフェースチャネル31および33は、高さが固定され得る。あるいは、流体インターフェースチャネルの高さは、優先流路に対する上記で開示されたルーメンの固定間隔または外壁に対する流体インターフェースチャネルの固定間隔と同様に、チャネルの頂部壁または底部壁と終端板との間の固定間隔を維持するために、変化し得る。
【0102】
本明細書に開示される実施形態における流体インターフェースチャネルの位置および構成は、垂直断面図で示されるが、それらは、形状または特性において単一の平面に限定されない。流体インターフェースチャネルは、いかなる平面にも拘束されないが、インプラントの必要に応じて適切に流体を輸送するために、インプラントの三次元体積に従ってもよい。
【0103】
図4は、第2のインプラント110に示される流体インターフェースシステムの第2の実施形態の側面断面図である。開示された第1の実施形態の対応する要素と実質的に同じである代替の実施形態の要素は、同じ数字で識別される。機能が類似している(必ずしも同一ではない)要素は、同じ数字に100を加えた数字で表記される。
【0104】
図4の第2のインプラント110は、外側が第1のインプラント10と実質的に同じ形状であり、上から見たときの流体インターフェースチャネルの形状のみが異なる。
図4におけるインプラント110は左側から示されており、
図1に示される線Aと同様の位置を垂直に切断されている。第2のインプラント110は、上から見ると第1のインプラント10と実質的に同じ形状であるため、線Aは、
図4で用いられた切断線を正確に描写している。
【0105】
インプラント110に示されているように、インターフェースシステムは、少なくとも2つの分岐へ放出する、1つ以上の流体インターフェースチャネルを備える。流体インターフェースチャネルに関する分岐は、サイズや方向によって制限されない。分岐は、別の場所への導管を提供するか、分岐自体内で終端となるかにかかわらず、流体が移動するための経路を提供する、インプラントにおける開口部または空隙を含み得る。いくつかの実施形態では、分岐は、流体インターフェースチャネルへと開口する単一の格子単位セルを備える。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネルの縁部近くの格子単位セルは、ストラットを除去して、接線チャネル、または中心チャネルからの分岐を作成することにより変更される。枝は単一の平面に拘束される必要はなく、インプラントの幾何学的形態または形状に従ってもよい。
【0106】
左アーム113の左流体インターフェースチャネル131は、分岐流体インターフェースチャネルの例として
図4に示されており、右側は、鏡像または異なる設計であり得る。流体リダイレクトチャネル124は、流体インターフェースポート121と左流体インターフェースチャネル131を接続する。左流体インターフェースチャネル131は、幅の長さよりも高さが大きく、下側分岐141と上側分岐142に分かれている。第2の実施形態は、下部分岐141および上部分岐142を備えた流体インターフェースチャネル131を開示しているが、いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル131は二股に分岐している。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル131は、実質的に等しい高さに位置する2つの分岐に横方向に分かれる。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル131は、垂直面または水平面以外の面に位置合わせされた分岐に分かれる。いくつかの実施形態では、流体インターフェースチャネル131は、異なる平面と位置合わせされた分岐に二股に分かれる。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート121は、インプラント110の一部に自由に浮動し得る。
【0107】
図5は、第3のインプラント210に示される流体インターフェースシステムの第3の実施形態の側面断面図である。
図5における第3のインプラント210は、その外側が第1のALIFインプラント10と実質的に同じ形状であり、上から見たときに、流体インターフェースチャネルの形状のみが異なる。
図5において、インプラント210は左側から示されており、
図1に示される線Aと同様の位置で垂直に切断されている。第3のインプラント210は、上から見たときに第1のインプラント10と実質的に同じ形状であるため、線Aは、
図5で使用される切断線を正確に描写している。
【0108】
インプラント210に示されるように、インターフェースシステムは、複数の分岐を有する1つ以上の流体インターフェースチャネルを備える。左アーム213における左流体インターフェースチャネル231は、複数の分岐を有する流体インターフェースチャネルの例として
図5に示されており、右側は鏡像または異なる設計のものであり得る。流体リダイレクトチャネル224は、流体インターフェースポート221と左流体インターフェースチャネル231とを接続する。左流体インターフェースチャネル231は、幅の長さよりも高さが大きく、一般的に左流体インターフェースチャネル231の中心から上方または下方に延在する複数の分岐部251に分かれる。いくつかの実施形態では、分岐251は、流体インターフェースチャネル231から横方向に、または横方向および垂直方向の両方に延在していてもよい。いくつかの実施形態では、分岐251は、横方向、垂直方向、前方、後方、およびすべての方向の間の任意の三次元の組み合わせを含む任意の方向に延在し得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート221は、インプラント210の一部に自由に浮動し得る。
【0109】
図6は、第4のインプラント310に示される流体インターフェースシステムの第4の実施形態の底部断面図である。
図6の第4のインプラント310は、外側が第1のインプラント10と実質的に同じ形状であり、上から見たときの流体インターフェースチャネルの形状のみが異なる。
図6において、第4のインプラント310は底部から示され、その高さの約20%で水平に切断されている。
【0110】
インターフェースシステムは、インプラント310に示されているように、接続チャネル361を備えた1つ以上の流体インターフェースチャネルを備える。インプラント310は、少なくとも、左流体インターフェースチャネル331を備えた左アーム313と、右流体インターフェースチャネル333を備えた右アーム315とを有する。インプラント310は、必要に応じて、中央アーム314および追加の流体インターフェースチャネルを有してもよい。左アーム313と右アーム315とは、インプラント310の背面319で接続されている。インプラント310の背面319内には、流体が右流体インターフェースチャネル333から左流体インターフェースチャネル331へ、およびその逆に通過することを可能にする接続チャネル361がある。接続チャネル361は、必要に応じて、中央流体インターフェースチャネルまたは追加の流体インターフェースチャネルおよび/または分岐に接続していてもよい。
【0111】
図7は、インプラント610に含まれる例示的な流体インターフェースシステムの等角図であり、インプラント内に含まれる流体インターフェースシステムは破線で表されている。インプラント610の外部には、その内部に向かって延在する、左流体インターフェースポート621、中央流体インターフェースポート622、および右流体インターフェースポート623がある。左の流体インターフェースポート621は、左の流体リダイレクトチャネル624に対して開口しており、右の流体インターフェースポート623は、右の流体リダイレクトチャネル625に対して開口している。中央流体インターフェースポート622は、中央流体インターフェースチャネル632に対して開口している。左流体リダイレクトチャネル624は、左流体インターフェースチャネル631に対して開口しており、右流体リダイレクトチャネル625は、右流体インターフェースチャネル633に対して開口している。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート621-623は、インプラント610の一部に自由に浮動し得る。
【0112】
図8は、インプラント470に示される流体インターフェースシステムの第5の実施形態の側面断面図である。インプラント470は、その水平中心を垂直に切断されており、左側から示されている。インプラント470の背面は、流体インターフェースチャネル473に接続された流体インターフェースポート472を含む。流体インターフェースチャネル473は、インプラント470の本体471内へ延在し、流体は、格子構造を含む本体471を通って移動し得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート472は、インプラント470の一部に自由に浮動し得る。
【0113】
図9は、第1のインプラント10での使用に適合した本発明の第1の例示的な実施形態の斜視図であり、インプラント10の背面または前面の流体インターフェースポート21~23の例示的な構成を示す。
図9の流体インターフェースポート21~23の構成は一例であり、それらの位置およびサイズは、本明細書で開示される本発明の概念内で変更され得る。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート21~23の数は増減することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の流体インターフェースポート21~23は、流体インターフェースポートの機能のないツール係合領域に置き換えられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の流体インターフェースポート21~23は、ツール係合領域のない流体インターフェースポートに置き換えられる。
【0114】
図10は、第6のインプラント510に示される流体インターフェースシステムの第6の実施形態の側断面図である。
図10における第6のインプラント510は、その外側および上から見たとき、第1のインプラント10と実質的に同じ形状であり、流体インターフェースチャネルの形状および壁構成のみが異なる。
図10において、インプラント510は、左側から示されており、
図1に示されている線Aと同様の位置で垂直に切断されている。第6インプラント510は、上から見たときに第1インプラント10と実質的に同じ形状であるため、線Aは、10で使用される切断線を正確に描写している。
【0115】
インプラント510に示されるインターフェースシステムは、選択的に配置された細孔をさらに備える実質的に固体の壁に、少なくとも部分的に沿っている、1つ以上の流体インターフェースチャネルを備える。左アーム513における左流体インターフェースチャネル531は、選択的に配置された細孔をさらに備える実質的に固体の壁部分を有する、流体インターフェースチャネルの例として
図10に示され、右側は鏡像または異なる設計であり得る。流体リダイレクトチャネル524は、流体インターフェースポート521と左流体インターフェースチャネル531とを接続する。いくつかの実施形態では、流体インターフェースポート521は、インプラント510の一部に自由に浮動し得る。左流体インターフェースチャネル531は、幅の長さよりも高さが大きく、選択的に配置された細孔582を有する実質的に固体の壁581部分をさらに備える。実質的に固体の壁581部分および/または細孔582は、左流体インターフェースチャネル531の内壁全体を覆うか、または内壁を部分的に覆い得る。細孔582は一般に、流体が実質的に固体の壁581の一方の側から他方の側に連通することを可能にする開口部として特徴付けられる。細孔582は、形状が円形であっても、形状が円形でなくてもよい。円形の場合、細孔582はすべて同じ直径であっても、直径が複数であってもよい。単一の細孔582もまた、2つ以上の直径を有してもよい(すなわち、1つ以上の方向に細くなっている場合)。形状が円形でない場合、細孔582はすべて同じ開口表面積を有してもよく、または2つ以上の開口表面積を有してもよい。単一の細孔582はまた、2つ以上の開口部表面積を有してもよい。
【0116】
選択的に配置された細孔582を有する実質的に固体の壁581により、流体の輸送のさらなる制御が可能になる。いくつかの実施形態では、選択的に配置された細孔582を伴うまたは伴わない実質的に固体の壁581をインプラントの外面上で使用することが、望ましい場合がある。さまざまな製造技術を使用して、制御されたサイズおよび量の細孔582を有する実質的に固体の壁581(以下、「固体制御細孔壁」)を含み得る。追加プロセスを使用して製造されたインプラントの場合、固体制御細孔壁を設計に追加してもよく、付加プロセスで作成されたものと同様に、インプラントとともにプリントしてもよい。固体制御細孔壁は、インプラントおよび/または他の材料の他の部分と同じ材料を備えてもよい。固体制御細孔壁は、インプラントの製造後に表面処理を使用して製造してもよい。例えば、HAなどのコーティングは、流体インターフェースチャネル壁またはインプラントの外壁に適用され得る。HAコーティングは、ディップコーティング、スパッタコーティング、プラズマスプレー、パルスレーザー体積、熱間圧加工、熱間等方圧加工、電気泳動堆積、溶射およびゾルゲルを含み、これらに限定されないさまざまな方法を使用して適用してもよい。塗布方法と塗布回数によって、HAコーティングの厚さは0.005マイクロメートル未満で、2.0ミリリットル(mm)を超える厚さの値となってもよい。HAコーティングを格子または足場に適用すると、一定の厚さの層が作成され、構造内の隣接するストラット間の開口部または相互接続部のサイズが小さくなる。十分な表面厚さに適用する場合、格子または足場の製造後にHAコーティングを使用して、固体制御細孔壁を作成し得る。HAコーティングを使用して格子構造から固体制御細孔壁を作成する場合、HAコーティングは、所望の細孔サイズと基本格子または足場構造の単位セルのサイズに基づいて特定の厚さに適用されることが望ましい。例えば、単位セルの幅が2.0mmで、直径が0.5mmのストラットで構成されている場合、中央の空隙の幅は約1.0mmとなる。約0.2mmの中央空隙または細孔が望ましい場合、HAまたは他のコーティングを約0.4mmの厚さに塗布する必要がある。
【0117】
HAまたは他の表面コーティングを液体の形でインプラントの外壁に適用する場合、外壁を流体に浸してもよい。コーティングを所望の厚さに構築するために、インプラントを流体に複数回浸漬してもよい。HAまたは他の表面コーティングを、流体インターフェースチャネルなどのインプラントの内面に適用する場合、コーティングを加熱して蒸気とし、所望の表面に噴霧してもよい。コーティングは、所望のコーティング厚を達成するために必要に応じて再適用してもよい。
【0118】
本明細書では、異なる流体チャネルを含むいくつかの例について説明したが、他の例も可能である。例えば、異なる例示的な実施形態からの流体チャネルは、互いに組み合わせて実装され得る。ここで、インプラントの片側は、チャネルの第1セットを画定し(例:
図2)、インプラントの別の側は、チャネルの第2セットを画定し、これは、第1セットとは異なり得る(例:
図3)。
【0119】
一部の実施形態では、一部またはすべての領域の流体チャネル壁または外面からの流体の漏れまたは侵入を完全に止めることが望ましい場合がある。流体の分布を止めるために、細孔、開口部または相互接続部のない実質的に固体の壁を使用してもよく、この壁はさまざまな製造技術を使用して含まれ得る。付加プロセスを使用して製造されたインプラントの場合、実質的に固体の壁が設計に追加されてもよく、付加プロセスで作成されたものと同様に、インプラントとともに製造されてもよい。実質的に固体の壁は、主材料および/または別の材料を含んでもよい。実質的に固体の壁は、インプラントの製造後に表面処理を使用して製造されてもよい。例えば、HAコーティングは、インプラントの流体インターフェースチャネル壁または外壁に適用され得る。十分な表面厚さに適用される場合、HAコーティングまたは別のコーティングを使用して、表面の細孔、開口部、または相互接続部を閉じ、実質的に固体の壁を作成し得る。HAコーティングを使用して格子に基づく構造から実質的に固体の壁を作成する場合、HAコーティングは、ベース格子または足場構造の単位セルのサイズに基づいて、少なくとも特定の厚さに適用されることが望ましい。単位セルの所定の中央空隙サイズでは、HAコーティングを中央空隙幅の少なくとも半分の厚さに塗布して、実質的に固体の壁を作成する必要がある。例えば、単位セルの幅が約2.0mmで、直径が約0.5mmのストラットで構成されている場合、中央空隙の幅は約1.0mmになる。実質的に固体の壁が望ましい場合、HAまたは他のコーティングを少なくとも約0.5mmの厚さに塗布する必要がある。いくつかの実施形態では、骨パテまたは骨ワックスなどの充填材料を表面に追加して、実質的に固体の壁を作成できる。いくつかの実施形態では、この充填材料は生物活性であってもよい。いくつかの実施形態では、この充填材料は生体不活性であってもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステム、流体インターフェースチャネル、流体リダイレクトチャネルおよび/または流体インターフェースポートは、細胞移動を促進するように構成される。いくつかの実施形態において、流体インターフェースシステム、流体インターフェースチャネル、流体リダイレクトチャネルおよび/または流体インターフェースポートは、細胞の付着を促進するように構成される。
【0121】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステム、流体インターフェースチャネル、流体リダイレクトチャネルおよび/または流体インターフェースポート(集合的に「流体インターフェースシステム表面」とする)は、インプラント材料または構造の特性に起因する粗さを有し得る。表面特性に関して本明細書で使用される「粗い」という用語は、どんなに小さくても、完全に滑らかな表面から逸脱する、表面の不規則性を指す。いくつかの実施形態では、粗さはRaによって定量化することができ、ここでRaは平均粗さ、または平均線からの絶対プロファイル高さ偏差の算術平均である。いくつかの実施形態では、粗さはRqによって定量化することができ、ここで、Rqは、粗さの二乗平均平方根または粗さプロファイル縦座標の二乗平均平方根である。いくつかの実施形態では、粗さはRzによって定量化することができ、ここで、Rzは平均粗さ深さまたは連続サンプリング高さでの個々の粗さ深さの算術平均である。
【0122】
いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面Raは0より大きい。
いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面Raは1nmを超える。いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面Raは1μmを超える。いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面粗さは、ナノスケール、ミクロスケールまたはマクロスケールのRa値を有する。いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面粗さは、ナノスケール、ミクロスケール、マクロスケール内に収まり得る複数のRa値を有する。いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面粗さは、ナノスケール、ミクロスケール、マクロスケールのそれぞれに収まる複数のRa値を有する。いくつかの実施形態において、流体インターフェースシステムの表面粗さは、ミクロおよびマクロスケール内に収まる複数のRa値を有する。いくつかの実施形態では、流体インターフェースシステムの表面粗さは、ナノスケールおよびマクロスケール内に収まる複数のRa値を有する。いくつかの実施形態において、流体インターフェースシステムの表面粗さは、ナノスケールおよびミクロスケール内に収まる複数のRa値を有する。本明細書で使用される場合、ナノスケールは、ナノメートルまたはミクロンで測定可能なサイズを指す傾向がある。本明細書で使用される場合、ミクロスケールは、ミクロンで測定可能なサイズを指す傾向がある。本明細書で使用されるマクロスケールは、ミリメートルで測定可能なサイズを指す傾向がある。場合によっては、表面の不規則性が骨の付着を促進し得る。表面の不規則性には、突起、塊、くぼみが含まれ得る。粗い表面には、目に見える表面の不規則性があり得、または拡大像を用いた場合にのみ見える表面の不規則性があり得る。表面の不規則性には、実質的に平坦な表面からの逸脱が含まれ、鋭いエッジ、丸いエッジ、およびその間のあらゆるものを含む不規則性が含まれ得る。本明細書に開示されるデバイスおよび方法を達成するために、粗さおよび表面トポグラフィの様々な他の測定が使用してもよいことを理解されたい。
【0123】
いくつかの実施形態は、0nm以上500nm以下の表面粗さRaを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上50nm以下の表面粗さRaを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上30nm以下の表面粗さRaを有する。いくつかの実施形態は、5nm以上10nm以下の表面粗さRaを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上500nm以下の表面粗さRqを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上50nm以下の表面粗さRqを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上10nm以下の表面粗さRqを有する。いくつかの実施形態は、30nm以上50nm以下の表面粗さRqを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上500nm以下の表面粗さRzを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上350nm以下の表面粗さRzを有する。いくつかの実施形態は、0nm以上50nm以下の表面粗さRzを有する。いくつかの実施形態は、200nm以上400nm以下の表面粗さRzを有する。いくつかの実施形態において、流体インターフェースシステム表面は、特定の特性を促進するために精度管理された表面エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、流体システムの表面は、細胞の付着を促進するように構成された表面エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、流体システム表面は、細胞移動を促進するように構成された表面エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、この表面エネルギーは、複数の細胞または組織タイプに調整されてもよい。いくつかの実施形態では、この表面エネルギーは、細菌増殖の測定値を減らすように構成されてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態は、マイクロサイズの細孔および/またはナノサイズの表面特徴を備えた流体インターフェースシステム表面を含む。いくつかの実施形態は、局所的な表面特徴を含む。いくつかの実施形態は、局所的なナノサイズの表面特徴を含む。付加プロセス中のある時点で表面エッチングを行うことにより、追加プロセスで製造されたインプラントに、流体インターフェースシステムの表面を追加し得る。
【0125】
本発明の流体インターフェースシステムは、本明細書では例示的なインプラントに適合されているが、他のタイプのインプラントおよび他のタイプの医療機器での使用に適合され得る。いくつかの実施形態では、インプラント10、110、210、310、510、および610は、腰椎前方椎体間固定(以下「ALIF」とする)インプラントであり得る。いくつかの実施形態では、インプラント10、110、210、310、510および610は、頸部独立型インプラントであり得る。いくつかの実施形態では、インプラント10、110、210、310、510、および610は、足首固定スペーサインプラントであり得る。いくつかの実施形態では、インプラント470は、腰椎後部椎体間固定(以下「PLIF」)インプラントまたは片側進入腰椎後方椎体間固定(以下「TLIF」)インプラントであり得る。いくつかの例示的な実施形態がALIF、PLIFまたはTLIFインプラントを含むことは、本明細書で開示される流体インターフェースシステムを使用することができるデバイスのタイプを制限しない。いくつかの実施形態では、単一のインプラントをPLIFまたはTLIFと呼ぶことができる。なぜなら、PLIFおよびTLIFインプラントはしばしば非常に類似しており、時には区別できないことが理解されているからである。PLIFインプラントと比較して、TLIFインプラントは(前から後ろにかけて)わずかに長くてもよく、横方向に湾曲していてもよい。PLIFインプラントは、一般に、直線後方経路から移植され、TLIFインプラントは、一般に、後方方向と横方向との間の角度から移植される。PLIFインプラントとTLIFインプラントがともに前弯していてもよい。
【0126】
流体インターフェースチャネルは、記述されているもの以外のさまざまな方法で構成されてもよい。例えば、流体インターフェースシステムは、複数の流体インターフェースチャネルへのマニホールドとして機能する、大きな内部空洞を含んでもよい。図示されていないが、流体インターフェースシステムは、外部表面へ延在する分岐を使用することにより、高体積密度または独立気泡設計のインプラントで使用され得る。各チャネルはまた、接続しても、独立したままにしてもよく、流体の流れを誘導または分配するための1つ以上のバッフルを含んでもよい。各流体インターフェースチャネルの表面を処理(酸エッチング、表面コーティング、研磨、陽極酸化など)して、特定の領域、チャネル全体、またはその後の勾配における、表面張力、濡れ性、またはレイノルズ数を変更してもよい。端から直接流れこむことを防ぎ、チャネルへの背圧を生成するために、チャネルにキャップを付けてもよい。チャネルは、デバイスの既存の多孔性を活用することを優先して配置してもよい。例えば、繰り返し単位格子のノードまたはストラットを削除したり、繰り返し単位格子の空隙を優先的に利用したりできる。本明細書に開示される流体インターフェースシステムの例示的な実施形態はすべて、外部流体インターフェースポートを使用するが、いくつかの実施形態では、インプラントに流体を事前充填し、流体インターフェースポートを省略することができる。
【0127】
本明細書に記載されているのは、医療用インプラントで使用するための流体インターフェースシステムである。この開示では、本発明の例示的な実施形態のみが示され、説明されている。しかし、前述のように、本発明は様々な他の組み合わせおよび環境で使用可能であり、本明細書で表現される発明概念の範囲内で変更または修正が可能であることを理解されたい。