(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ミリ波誘電体導波路によって実現された大口径のスケーラブルなミリ波アレイ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/12 20060101AFI20221216BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20221216BHJP
H01P 3/16 20060101ALI20221216BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20221216BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20221216BHJP
H01Q 3/26 20060101ALN20221216BHJP
【FI】
H01P5/12 Z
H01Q21/06
H01P3/16
H01Q3/36
G01S7/03 210
H01Q3/26 Z
(21)【出願番号】P 2019555154
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 US2018028612
(87)【国際公開番号】W WO2018195453
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-15
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】ネマト・ドラチャ
(72)【発明者】
【氏名】モハマド・アミン・アーバビアン
(72)【発明者】
【氏名】ババク・ママンディプア
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0240907(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0018852(US,A1)
【文献】特開2007-088768(JP,A)
【文献】特開平10-126109(JP,A)
【文献】特開昭62-006503(JP,A)
【文献】特開2003-338781(JP,A)
【文献】特開2013-046413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01P 3/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
λが20GHzから500GHzの範囲の動作周波数に対応する自由空間波長であるときの、30λ以上の間隔を有する2つ以上の放射素子を備えたコヒーレント分配ミリ波装置であって、
前記各放射素子はフロントエンドに
直接に結合された一つ以上の
放射部分素子を含み、
前記コヒーレント分配ミリ波装置は、
中央プロセッサと、
前記中央プロセッサを2つ以上の放射素子に接続する受動分配ネットワークとを備え、
前記受動分配ネットワークは、中央プロセッサ
を放射素子に接続
するための誘電体導波路を含み、
前記受動分配ネットワークを使用した、前記中央プロセッサと前記放射素子間の信号分配は、動作周波数での直接分配であ
り、
前記受動分配ネットワークの動作周波数は、前記放射素子の放射周波数f
rad
又は上記放射周波数f
rad
の整数倍と実質的に同一である、コヒーレント分配ミリ波装置。
【請求項2】
前記装置は、前記中央プロセッサに対して互いに前記複数の放射素子を位相シフトすることによってビーム形成能力を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記放射素子の少なくとも1つのフロントエンドは、前記放射素子の複数の
放射部分素子に対して、増幅の個々のレベル及び/又は位相シフトの個々のレベルを提供するように構成されたローカルプロセッサを含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の放射素子のうちの少なくとも1つは、ローカルプロセッサを用いて互いにその
放射部分素子を位相シフトすることによりビーム形成能力を有する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ローカルプロセッサは、前記複数の放射素子の放射周波数f
radが、f
rad=m*のf
distによって、前記受動分配ネットワークの
動作周波数f
distに関連する周波数逓倍回路を含み、ここで、mは1より大きい整数である請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記受動分配ネットワークは、前記複数の放射素子と中央プロセッサとの間において、
ミリ波周波数における前記誘電体導波路の分配路に基づいて、20GHzから500GHzの周波数範囲で20度以下の位相誤差を受動的に提供し、
前記位相誤差は、1分間の平均化ウィンドウで計算された二乗平均平方根時間平均である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記受動分配ネットワークの誘電体導波路は、シングルモード伝送を提供するように構成される請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記受動分配ネットワークの誘電体導波路は、マルチモード伝送を提供するように構成される請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記受動分配ネットワークの誘電体導波路は、偏波多重伝送を提供するように構成される請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記受動分配ネットワークの誘電体導波路は、第1の誘電体導波モードで送信信号の分配を提供するように構成され、
前記第1の誘電体導波モードとは異なる第2の誘電導波モードで受信信号の分配を提供するように構成される請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記誘電体導波路の断面は、長方形、円形、中空の長方形、及び中空の円形からなるグループから選択される請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記中央プロセッサは多入力多出力システムであり、
前記多入力多出力システムは、利得ステージ、ベースバンドに変換するミキサ、アナログデジタル変換器、チャネル分離ネットワーク、遅延線、可変利得ステージ、及び複素加算回路からなるグループから選択された1つ以上のコンポーネントの任意の組み合わせを含む請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記中央プロセッサは、アナログ回路、デジタル回路、又は混合モードのアナログ及びデジタル回路の任意の組み合わせで実現される請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、レーダ、通信、高速リンク及び相互接続、データセンタ、データリンク、コンピュータシステム、モバイルプラットフォーム、サーバ、イメージング、自動車用アプリケーション、センサー、ドローン、第5世代システム、メトロポリタンインターネットアクセス、ラストマイルテレコミュニケーション、バックホールアプリケーション、並びに、長距離アプリケーションからなるグループから選択されたアプリケーションのために構成される請求項1の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレントミリ波システムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途で、位相コヒーレンスが保存されるような、広く間隔(すなわち、30λ以上の要素間隔)を空けた放射素子から電磁波放射を送信又は受信できることが望ましい。放射素子が分配ネットワークを介して中央プロセッサに接続されたアーキテクチャを想定すると、位相コヒーレンスは、分配ネットワークが位相を維持し、すなわち、分配ネットワークの入力と出力については対応する入力位相と出力位相の間に実質的に固定された関係があることを意味する。
【0003】
この概念の従来の実施例では、光周波数とRF周波数の両方について考慮されてきたが、対応するシステムアーキテクチャの重要な違いは、異なる周波数範囲に関連する実際的な考慮事項によって決まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RFシステムの一般的なアプローチは、比較的低い周波数(しばしば「ベースバンド」と呼ばれる)で中央プロセッサからの信号を分配することであり、当該信号は、次いで、放射素子に配置された周波数変換するフロントエンドでは、実質的に高い周波数(しばしば「RF」と呼ばれる)に周波数シフトされる。周波数変換フロントエンドは通常、2つの入力を有するアナログ乗算機能を実行する。送信の場合、2つの入力は、中央プロセッサからの分散ベースバンドと、フロントエンドの基準発振器によって提供される高い中間周波数(IF)であり、出力は放射されるRF信号である。受信の場合、2つの入力はローカル発振器からのIFと、受信した高周波RF信号であり、出力は中央プロセッサで受信されるベースバンドである。通常、同じコンポーネント(アナログミキサー)がこれらの機能の両方を提供できる。このアプローチの主な理由は、従来の電気的な伝送線路又はRF金属導波路などのRF周波数での直接分配は、(例えば、
図8で見られるような)減衰及び電気的干渉に関する重大な問題に直面し、なぜなら損失及び電気的干渉の両方が、このような構造において、周波数と共に急速に増大する。
【0005】
光学システムの状況は興味深いコントラストを提供する。ここで、光ファイバのこのような距離では、損失と光干渉は無視できる。しかし、光ファイバの単純な受動ネットワークでは、上記の位相コヒーレンスを提供することはできない。その理由は、ファイバに加えられる機械的振動、温度変化、曲げ又は応力などの、光ファイバ(又はより一般的には任意の光導波路)に対する環境摂動であり、これらすべては動作周波数に対応するファイバ内の光の波長に小さな変化を引き起こすように作用する。波長のこれらの小さな変化は、ランダムな位相シフトにつながる。これらのランダムな位相シフトは、波長オーダーの光路長にわたって非常に小さいであるが、巨視的なシステムの典型的な光路長は、数百万の光波長の長さである。結果として、光ファイバの典型的な巨視的長さの出力位相は、光路の多くの波長にわたる小さな位相誤差の蓄積のために、その光ファイバの入力位相と実質的に固定された関係を持たない。例えば、光ファイバへの光信号の入力位相が0度に固定される場合、出力位相は0~360度の範囲全体でランダムにドリフトする。この問題を克服するために、コヒーレント光学システムでは、2つの出力を提供する光スプリッタを備えた光ファイバに単一のレーザーを供給する単純な場合でも、位相コヒーレンスを維持するためのアクティブ制御が必要である。
【0006】
このことが、従来の光ファイバ通信システムが強度変調と直接検出に依存している理由であり、これは、コヒーレントシステムが提供する方がはるかに簡単であるRF周波数において、たまらなくプリミティブであって貧弱な実行オプションになる。光ファイバのランダム位相につながる上記のすべての効果は、原則として、あらゆる電磁導波路構造にも適用できることにも注意してください。しかし、RFシステムの実際の経路長は(関連する波長の倍数として)ほぼ同じではなく、その結果、累積位相摂動は、RF周波数では事実上無視できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
最も意外なことに、本発明者らは、コヒーレント光学及びRFシステムでの直接分配のさまざまな既知の欠点は、受動コヒーレント分配のための誘電体導波路(のDWG)を使用することにより、ミリ波周波数で回避できる。ミリ波周波数での関連する分配経路の長さは十分に短いため、光ファイバのような累積位相誤差は重大な問題ではない。それとともに、誘電体導波路は電気的干渉に対して低損失かつ実質的免疫を提供し、それによってRFシステムに直接分配の主な欠点を回避することができる。
【0008】
このアプローチは、無線通信リンクの容量を大幅に増加させ、イメージング/レーダーシステムの解像度を向上させる方法を提供する。ミリ波で非常に低い損失と大きな帯域幅を備えたDWGにより、比較的大きなベースラインで非常に効率的な信号分配が可能になる。
【0009】
アプリケーションには次のものが含まるがこれらに限定されず、アプリケーションは、レーダ、通信、高速リンクと相互接続、データセンタ、データリンク、コンピュータシステム、モバイルプラットフォーム、サーバ、イメージング、自動車用アプリケーション、センサー、ドローン、第5世代システム、メトロポリタンインターネットアクセス、ラストマイルテレコミュニケーション(電気通信)、バックホールアプリケーション、及び長距離アプリケーションを含む。
【発明の効果】
【0010】
以下の重要な利点が提供される。従来の(TEM導波路(導波管)及び非TEM金属導波路(導波管))給電/分配ネットワークの比較的大きな伝送損失と制限された帯域幅(マグニチュードロールオフによる)のために、大きな開口を有するミリ波アレイでの大規模なベースライン(数十又は数千の波長)の相互接続の実装には大きな課題がある。損失の問題を回避する一般的なシステムアーキテクチャは、大幅に低い周波数で大規模な給電ネットワーク/ベースラインを実現し、サブアレイで信号をローカルでアップ/ダウン変換(高域変換/低域変換)することである。この手法は、損失の問題を回避するが、帯域幅が限られているため、高解像度のイメージング及び大容量の通信リンクに必要な高精度のCLK/LO分配を提供しない。この技術により、損失が非常に小さく帯域幅が広いミリ波DWGに基づく方法が提供され、比較的大きなベースライン上で非常に効率的な信号分配が可能になる。これにより、無線通信リンクの容量が大幅に増加し、イメージング/レーダーシステムの解像度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】直接ミリ波信号分配のための2つの例示的なシステムアーキテクチャを示す。
【
図4】直接ミリ波信号分配のための2つの例示的なシステムアーキテクチャを示す。
【
図5B】
図5Aの一例に対応する例示的なモードパターンを示す。
【
図6A】誘電体導波路におけるマルチモードの起動の例を示す。
【
図6B】誘電体導波路におけるマルチモードの起動の例を示す。
【
図7A】誘電体導波路のマルチモード動作に関するさらなる例を示す。
【
図7B】誘電体導波路のマルチモード動作に関するさらなる例を示す。
【
図7C】誘電体導波路のマルチモード動作に関するさらなる例を示す。
【
図8】誘電体導波路の損失と、マイクロストリップ線路の線路を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るブロック図である。この例は、コヒーレント分散型ミリ波装置であり、当該ミリ波装置は、中央プロセッサ102と、受動分配ネットワーク104と、30λ又はそれ以上の間隔を有する2つ以上の放射素子110及び120を含む。ここで、λは、20GHzから500GHzまでの範囲の動作周波数に対応する自由空間波長であり、動作周波数は、複数の信号の分配が受動分配ネットワークで行われる周波数であると解釈される。各放射素子には、フロントエンドに直接結合された1つ以上の放射部分素子が含まれる。放射素子110は、フロントエンド116に接続された放射部分素子112及び114を含む。放射素子120は、フロントエンド126に接続された放射部分素子122及び124を含む。放射素子内の放射部分素子間の間隔は、動作波長の任意の倍数又は分数にすることができる。放射素子には、任意の数の放射部分素子を任意の配置(装置)又はアーキテクチャで含めることができる。
【0013】
ここで、放射素子は、フロントエンドに直接結合された1つ以上の放射部分素子として定義される。送信時において、フロントエンドは放射部分素子を駆動し、受信時に、放射部分素子は、フロントエンドを駆動する。「直接結合」とは、中間周波数を用いたアップミキシング(高域変換混合)又はダウンミキシング(低域変換混合)による周波数変換がないことを意味する。しかし、直接結合されたフロントエンドには、周波数の乗算又は除算を含めることができ、高周波数逓倍回路によって提供することができるように、--例えば、送信時に周波数を4で乗算し、受信時に周波数を4で除算する--。
【0014】
受動分配ネットワーク104は、中央プロセッサを、誘電体導波路を備えた放射素子に接続する。受動分配ネットワークを用いた、中央プロセッサ102と放射素子(110、120など)間の信号分配は、動作周波数で直接分配される。受動分配ネットワークは、入力と出力の間に位相コヒーレンスを、受動的に提供する(すなわち、位相コヒーレンスを提供するために使用されるアクティブ制御ループなしの)導波路(導波管)の装置として定義される。上記のように、これは(例えば光学機器などの)一部の周波数範囲では不可能である。
【0015】
ここで、位相コヒーレンスは、20度以下、より好ましくは5度以下、さらにより好ましくは1度以下の二乗平均平方根(RMS)位相誤差として定義され、すべての平均は1分間の平均時間にわたって定義された時間平均である。誘電体導波路は、誘電体材料のみを含む(つまり、電気導体は含まれない)電磁導波路構造である。これにより、主分配接続にDC電気経路がないことが有利に保証され、このことは接地ループ、電気的干渉などから発生する可能性のある問題を軽減できる。
【0016】
好ましい実施形態では、前記装置は、中央プロセッサを用いて、複数の放射素子を互いに対して位相シフトすることによりビーム形成能力を有する。受動分配ネットワーク104を介した信号のコヒーレント分配は、この機能を可能にするものである。
【0017】
上述したように、ミリ波信号の直接分配はこの研究の重要な側面である。直接分配の一例は、放射素子の放射周波数fradが受動分配ネットワークの分配周波数fdistと実質的に同じ場合である。直接分配のもう1つの例は、フロントエンドに周波数逓倍回路が含まれており、放射素子の放射周波数fradが受動分配ネットワークの分配周波数fdistに対して、frad=m*fdistによって関連付けられている場合であり、ここで、mは1より大きい整数である。直接信号分配のこれら2つの例は、周波数変換するフロントエンドにおけるミキサで中間周波数信号(IF)と混合することにより比較的低い周波数のベースバンド信号が、周波数がより高いRF周波数に変換される従来のシステムアーキテクチャとは著しく対照的である。
【0018】
本発明の実施は、中央プロセッサの詳細に決定的に依存しない。それは、意図する用途に必要なように構成された多入力多出力システムであることが好ましい。それは、利得ステージ(利得段)、ベースバンドに変換するためのミキサ(混合器)、アナログデジタル変換器、チャネル分離ネットワーク、遅延線、可変利得ステージ(可変利得段)、及び複素加算回路などのコンポーネント(構成要素)を含めることができる。中央プロセッサでベースバンドに変換するミキシングは、フロントエンドでベースバンドにミキシング(混合)することとは非常に異なることに注意してください。なぜなら、1番目のケースではネットワーク104の信号分配はベースバンドにあり、2番目のケースではネットワーク104の信号分配はベースバンドにないからである。中央プロセッサは、アナログ回路、デジタル回路、又は混合モードのアナログ及びデジタル回路の任意の組み合わせで実装できる。
【0019】
図2は、第1の実施の形態を示す。この例では、放射素子202、204、206、208は、それぞれ誘電体導波路212、214、216、218を介して中央処理装置(中央プロセッサ)102に接続される。誘電体導波路212、214、216、218は、この例では、
図1の受動分配ネットワーク104を形成する。放射素子202、204、206、208は、それぞれ222、224、226、228の図示の符号で参照される放射部分素子を含む。放射素子208の拡大図では、放射部分素子234、236の2つのアレイに接続されたフロントエンド232が示される。
【0020】
図3は、直接ミリ波信号分配用の例示的なシステムアーキテクチャを示す。ここで、放射素子310及び320は、誘電体導波路330及び340を介して中央プロセッサ102に接続され、複数のフロントエンドのより多くの詳細が示される。より具体的には、放射素子310は放射部分素子311を含み、放射素子310のフロントエンドは、ミリ波結合回路314に接続された1個の部分素子当たり、可変増幅器312及び可変位相シフタ313を含み、ミリ波結合回路314はフロントエンドを誘電体導波路330に結合するためのカプラ315に接続される。同様に、放射素子320は複数の放射部分素子321を含み、放射素子320のフロントエンドは、ミリ波結合回路324に接続される1個の部分素子当たり、可変増幅器322及び可変位相シフタを含み、ミリ波結合回路324はフロントエンドを誘電体導波路340に結合するためにカプラ325に接続される。この例では、複数のフロントエンドは、放射素子の複数の部分素子に対して、増幅の個々のレベル及び/又は位相シフトの個々のレベルを提供するように構成されたローカルプロセッサを含む。これは、ローカルプロセッサで放射素子の部分素子を相互に位相シフトすることにより、ビームフォーミングを提供するために使用できる。
【0021】
本発明の実施は、受動分配ネットワークのアーキテクチャに決定的に依存しない。
図2と
図3の例では、このアーキテクチャは並列であり、すべての放射素子が中央プロセッサに対して直接でのそれに対応する誘電体導波路接続を有する。
図4は、直列接続されたアプローチの一例を示す図であり、ここで、放射素子410、420はそれぞれ部分素子412、422を有し、それぞれ414、424の図示の符号で示されるフロントエンドを有し、誘電体導波路440を介して中央プロセッサ102に接続される放射素子の1個(この場合、放射素子420)を用いて、誘電体導波路430を介して互いに直列に接続される。上記のように互いに離間している限り、任意の数又は配置の放射素子を使用でき、また、これらは、例えば直列、並列、ハイブリッド直並列、階層型ツリー構成など、任意の構成の誘電体導波路を介して中央プロセッサに接続できる。
【0022】
また、本発明の実施は、誘電体導波路の詳細に決定的に依存しない。
図5Aは、例示的なDWG形状、長方形502、円504、空芯508を有する中空の長方形506、及び空芯512を有する中空の円形510を示す。
図5Bは、
図5Aの複数の例に対応する例示的な複数のモードパターンを示す。垂直モード520、524、528、532は、対応する水平モード522、526、530、534とともに示されている。ここで、矢印はモードの電界を模式的に示す。
【0023】
受動分配ネットワークの誘電体導波路は、シングルモード伝送又はマルチモード伝送を提供するように構成できる。
図6A~
図6Bは、誘電体導波路におけるマルチモードの励起(起動)の例を示す。この例では、ソース602は、両方が誘電体導波路604に結合されるダイポールアンテナ606及びスロットダイポールアンテナ608を駆動する。水平モード612はダイポールアンテナ606により駆動され、垂直モード610はスロットダイポールアンテナ608により駆動される。これは、偏波多重伝送を提供すると見なすことができる。誘電体導波路の高次モードを使用して、
図6A~
図6Bの偏波多重化とは別に、又はそれに加えて、使用するモードの数を増やすことができる。
【0024】
図7A~
図7Cは、誘電体導波路のマルチモード動作に関するさらなる例を示す。
図7Aは、誘電体導波路708に結合されたアンテナ704、706に接続されたユニット702を示す。もう一方の端部では、構造は類似しており、ユニット714を有し、ユニット714は、誘電体導波路708に結合されるアンテナ710及び712に接続される。そのような構造の1つの可能な用途は、誘電体導波路の異なるモードで送信と受信を行うことにより全二重動作を提供することである。例えば、ユニット702は、アンテナ704及び710に結合された導波モードでユニット714に送信することができる一方、ユニット714は、アンテナ706及び712に結合された導波モードでユニット702に送信することができる。より一般的には、受動分配ネットワークの誘電体導波路は、第1の誘電体導波モードで送信信号の分配を提供するように構成でき、第1の誘電体導波モードとは異なる第2の誘電導波モードで受信信号の分配を提供するように構成される。
【0025】
図7Bは、アンテナ704及び710を含む信号経路に90度ミリ波位相シフタ722及び724が追加されることを除いて、
図7Aの例に類似している。これには、水平及び垂直の直線偏波モードとは対照的に、誘電体導波路の左右の円偏波モードで2つのモードを作成する効果がある。これを使用して、堅牢性と角度のずれを比較できる。
【0026】
図7Cは、
(1)ユニット702はいま送信機702a、702bであり、
(2)ユニット714はいま受信機714a、714bであり、
(3)ポストプロセッサ730は、2つの直交偏波モードで別々に送信された2つの信号を回復(再生)するために挿入される
ことを除いて、
図7Aの例に類似している。
【0027】
図8は、誘電体導波路の損失を、マイクロストリップ線路における損失と比較したグラフである。ここで、マイクロストリップの損失は、銅トレース(1オンス銅、200μm幅)における導体損失であり、DWG損失は、80%の電磁界の閉じ込めを仮定したときのHDPE(高密度ポリエチレン)材料中の誘電損失である。匹敵する性能はまた、それらの中心周波数及び帯域幅で適当に設計されたバンドパス誘電体導波路を用いて得ることができる。