(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】位置決定装置
(51)【国際特許分類】
E02D 11/00 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
E02D11/00
(21)【出願番号】P 2020037398
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】396011521
【氏名又は名称】大都技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】都 英吾
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3221669(JP,U)
【文献】特開昭61-242218(JP,A)
【文献】特開平09-100534(JP,A)
【文献】特開平11-013061(JP,A)
【文献】国際公開第2009/087754(WO,A1)
【文献】特開平06-057747(JP,A)
【文献】特開2005-113541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 11/00
E02D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機の位置及び方向を特定する位置決定装置であって、
旋回軸廻りに回動する回転体と、
前記回転体の縁端部から上方に延びるスライダー支柱と、
前記スライダー支柱にスライド自在に嵌合する昇降部材と、
一端部に前記昇降部材と回動可能に連結する昇降連結部が設けられた主リンクと、
一端部に前記スライダー支柱と回動可能に連結する支柱連結部が設けられるとともに、他端部に前記主リンクの中間部と回動可能に連結する主リンク連結部が設けられる副リンクと、
前記主リンクの他端部に設けられた接続連結部に連結して、前記杭打機の取付角度を調整できる杭打機接続部と、を備え、
前記昇降部材を昇降させたとき、前記杭打機接続部は、前記回転体を回動させたときの前記スライダー支柱の軌跡で描かれる仮想面の外周領域を直線移動することを特徴とする位置決定装置。
【請求項2】
前記昇降連結部から前記主リンク連結部までの距離、前記接続連結部から前記主リンク連結部までの距離、及び前記支柱連結部から前記主リンク連結部までの距離が等しいことを特徴とする請求項1に記載の位置決定装置。
【請求項3】
駆動力を発生させることで、前記主リンクを、前記スライダー支柱に沿って昇降させる主リンク移動手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置決定装置。
【請求項4】
前記主リンク移動手段は、前記スライダー支柱に沿って配設されて、一端が前記スライダー支柱の下端部に、他端が前記昇降部材に接続する支柱シリンダーを有することを特徴とする請求項
3に記載の位置決定装置。
【請求項5】
前記杭打機接続部は、前記主リンクと第1軸廻りに回動可能
に連結する主リンク接続部材と、前記第1軸に対して直角に延びる第2軸廻りに回動可能に連結するリーダー接続部材と、を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の位置決定装置。
【請求項6】
前記回転体は、車両を走行させるための走行部の上方に配設されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の位置決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線移動することで杭打装置の位置を決定して、さらに打設角度を調整できる位置決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防護柵の設置、太陽光パネルの基礎支柱の設置、及びフェンスの基礎工事については、従来、油圧ショベル等の建設機械を改良した杭打機が用いられてきた。具体的には、ブームの先端を改良して、杭打機を取り付けた構造である。
【0003】
特許文献1では、傾斜面においても杭を正確に鉛直に打ち込むことができる杭打ちアタッチメント及び杭打機が開示されている。具体的には、油圧ショベルに取り付けられたアームおよびバケットに替えて、ブームの先端に杭打ちアタッチメントを取り付けた構造である。ブームシリンダーを動作してブームを前後方向に回動することによって杭の打設位置を決定できる。
【0004】
特許文献2では、油圧ショベルに取り付けられたバケットに替えて、油圧ブレーカーと圧入用ジゼルが取付けられた杭打ち装置が開示されている。
【0005】
しかし、上述したような、ブームを前後方向に回動して杭の打設位置を決定する方式では、杭打機を水平移動させようとすれば、必ず回転変位を伴うこととなる。そのため、所定の水平変位をさせようとする場合、ブームの位置によって、回転変位量は異なる。具体的には、杭打機を水平方向に所定の長さ移動させる場合、ブームが地表面に対してほぼ平行に位置するときは、ブームがほぼ垂直に位置するときと比べて、より大きな回動が必要となる。
【0006】
ブームの回動を極力抑えて、杭打機を水平移動させたい場合は、ブームを地表面に対して垂直に近い位置にあらかじめ配置しておけば良いが、杭打機の支持位置が高くなり安定して支持することが難しい。さらに、ブームが地表面に対して垂直に近い状態で油圧ショベルを移動する場合、重心が高くなることから走行が不安定となる。特に、不陸の多い作業場所での施工には危険が伴う。また、杭打機の支持位置を低くすると、杭打機を水平移動するためにブームを大きく回動させる必要がある。さらに、ブームが地表面に対して水平に近い状態で油圧ショベルを移動する場合、広い作業場所でないと走行が困難となる。すなわち、効率よく杭打機の位置を決められるブーム高さは限られることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-177764号公報
【文献】実用新案登録第3221669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、杭打機を直線移動させることで、杭の打設位置及び方向が容易に決定出来て、コンパクトで機動性に優れた杭打機の位置決定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、杭打機の位置及び方向を特定する位置決定装置であって、旋回軸廻りに回動する回転体と、回転体の縁端部から上方に延びるスライダー支柱と、スライダー支柱にスライド自在に嵌合する昇降部材と、一端部に昇降部材と回動可能に連結する昇降連結部が設けられた主リンクと、一端部に前記スライダー支柱と回動可能に連結する支柱連結部が設けられるとともに、他端部に主リンクの中間部と回動可能に連結する主リンク連結部が設けられる副リンクと、主リンクの他端部に設けられた接続連結部に連結して、杭打機の取付角度を調整できる杭打機接続部を備え、昇降部材を昇降させたとき、杭打機接続部は、回転体を回動させたときのスライダー支柱の軌跡で描かれる仮想面の外周領域を直線移動することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、スライダー支柱と、スライダー支柱にスライド自在に嵌合する昇降部材と、一端部に昇降部材と回動可能に連結する昇降連結部が設けられた主リンクと、一端部に前記スライダー支柱と回動可能に連結する支柱連結部が設けられるとともに、他端部に主リンクの中間部と回動可能に連結する主リンク連結部が設けられる副リンクでスコットラッセル機構を構成する。これにより、位置決定装置は、直線移動するので、ブームが回動して平面位置を決定する他の装置に比べて杭打機の位置決めを簡単に、かつ正確に行うことができる。
【0011】
好ましくは、昇降連結部から主リンク連結部までの距離、接続連結部から主リンク連結部までの距離、及び支柱連結部から主リンク連結部までの距離が等しい。
【0012】
この構成によれば、昇降連結部から主リンク連結部までの距離、接続連結部から主リンク連結部までの距離、及び支柱連結部から主リンク連結部までの距離が等しいので、杭打機は、スライダー支柱の延びる方向に直角に直進する。これにより、杭打機の位置決めがさらに容易になる。
【0013】
好ましくは、駆動力を発生させることで、主リンクを、スライダー支柱に沿って昇降させる主リンク移動手段を備える。
【0014】
この構成によれば、駆動力を発生させることで、主リンクを、スライダー支柱に沿って昇降させる主リンク移動手段を備えるので、杭打機は主リンク移動手段によって人力を介すことなく動力で直線移動できる。
【0015】
好ましくは、主リンク移動手段は、スライダー支柱に沿って配設されて、一端が前記スライダー支柱の下端部に、他端が昇降部材に接続する支柱シリンダーを有する。
【0016】
この構成によれば、支柱シリンダーを駆動することで、杭打機の位置を目標地点に、簡単に、かつ正確に移動できる。
【0017】
好ましくは、杭打機接続部は、主リンクと第1軸廻りに回動可能に連結する主リンク接続部材と、第1軸に対して直角に延びる第2軸廻りに回動可能に主リンク接続部材と連結するリーダー接続部材を有する。
【0018】
この構成によれば、杭打機接続部は、主リンクと第1軸廻りに回動可能に連結する主リンク接続部材と、第1軸に対して直角に延びる第2軸廻りに回動可能に主リンク接続部材と連結するリーダー接続部材を有するので、杭打機接続部を第1軸、及び第2軸廻りに回動することで、杭打機の打設方向を全方向に渡って調整できる。
【0019】
好ましくは、回転体は、車両を走行させるための走行部の上方に配設される。
【0020】
この構成によれは、回転体は、車両を走行させるための走行部の上方に配設されるので、走行部を走行させることで位置決定装置を簡単に移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】杭打機が、車両に取り付けられた位置決定装置に装着された状態を説明する側面図である。
【
図2】(a)(b)は、スコットラッセル機構装置が動作する状態を説明する側面図である。
【
図4】昇降部材と支柱ユニットとの嵌合状態を説明する平面図である。
【
図10】杭打機接続部およびリーダーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、
図1~10を参照して説明する。
【0023】
図1に示す通り、車両100に固定された位置決定装置1は、杭打機200をリーダー53の延びる方向に沿ってスライド可能に固定している。
【0024】
杭打機200は、スコットラッセル機構装置150を動作することで打設地点に直線移動する。車両100は、クローラー120を備えた走行部101と、走行部101の上方に設けられて、旋回軸V1周りに回動可能な回転体102を有している。回転体102には、車両100を運転するための運転席103が設けられるとともに、スライダー支柱10を連結するための車両連結部110が水平方向に突設して設けられている。
【0025】
旋回軸V1は地面300に対して、垂直な方向に延びている。従って、操作盤104を操作して、回動力を付与することで、回転体102は、地面300に平行な状態で回動する。
【0026】
スライダー支柱10は、回転軸V2廻りに油圧の動作によって回動できる状態で車両連結部110に固定されている。回転軸V2は、旋回軸V1と同様に、地面300に対して、垂直な方向に延びている。従って、スライダー支柱10は、地面300に平行な状態で回動する。また、状況に応じてレバー操作によって、固定状態を開放した後、手動により回転軸V2廻りに回動できる構造としてもよい。
【0027】
スライダー支柱10は、支柱ユニット11、支柱ユニット11の下端部に接続する上基部12、上基部12の下端部に接続する下基部13を有している。支柱ユニット11は、昇降部材20が昇降できる範囲に渡って、回転軸V2に平行な軸に沿って上方に向かって延びている。
【0028】
上基部12は、支柱ユニット11の下端部の側面11bから、旋回軸V1から離れる方向に向かって突設する一対の側板12bを有している(
図2(a)、(b)参照)。一対の側板12bによって、収容部(図示略)が画定されている。収容部は副リンク40の一端部及び支柱シリンダー60の下端部が収容されている。上基部12には、支柱シリンダー60の下端部と連結するシリンダー連結部87が、さらに副リンク40の一端部を回動可能に固定する支柱連結部86が設けられている。また、シリンダー連結部87の位置に孔87aが、支柱連結部86の位置に孔86aが設けられている。
【0029】
上基部12の下方に平板状の下基部13が取付けられている。上基部12、及び下基部13に、それぞれ1箇所の連結個所90、91が設けられている。連結個所90、91は、連結ユニット15を上基部12、及び下基部13に連結するためのものである。2箇所で連結されることで、支柱ユニット11は、上基部12、及び下基部13を介して連結ユニット15に固定される。
【0030】
連結ユニット15は、凹部15aが設けられたコ字形の部材である。凹部15aに車両連結部110が挿入された状態で、レバー操作によって、回転体102とスライダー支柱10は連結ユニット15を介して固定される。
【0031】
図2(a)、(b)に示す通り、スコットラッセル機構装置150は、昇降部材20、主リンク30及び副リンク40を有する。スコットラッセル機構装置150は、スコットラッセル機構を適用して、上下方向の移動を水平方向の直線的移動に変換するものである。具体的には、昇降部材20が、支柱ユニット11に沿って降下するのに伴って、接続連結部85が支柱ユニット11から隔れる方向に向かって水平に直線移動する。
【0032】
図4に示す通り、支柱ユニット11は、は2本のコ字形のスライドレール11aを、隙間17aを設けて背合わせに配設して、対向する腹板16を連結板17で相互に連結した構造である。
【0033】
図3、4に示す通り、昇降部材20は、支柱ユニット11にスライド自在に嵌合する嵌合ユニット21、及び主リンク30と支柱シリンダー60を連結する連結ユニット22を有する。嵌合ユニット21は、両端に嵌合開口部21aが設けられている。嵌合開口部21aは、平板25のそれぞれの端部から支柱ユニット11に向かって垂直に延びるL字形の部材25aと、平板25によって画定される空間である。スライドレール11aのフランジ部18は、嵌合開口部21aにスライド自在に挿入されている。これにより、昇降部材20は、スライドレール11aに沿って昇降する。
【0034】
平板25の中央部に突起部26が設けられている。突起部26は、隙間17aに配設されており、腹板16、16によってフランジ部18、18の方向の変位が拘束されている。
【0035】
上述した構成により、昇降部材20は、支柱ユニット11が延びる方向にブレを生じることなく、スライド自在に昇降できる。
【0036】
連結ユニット22は、一対の連結プレート23、23を有する。連結プレート23は、平板25から支柱ユニット11と離れる方向に向かって垂直に延びていて、主リンク30と連結する昇降連結部81の位置に孔81aが設けられている。また、調整シリンダー62の一端部と連結するシリンダー連結部82の位置に、孔82aが、支柱シリンダー60と連結するシリンダー連結部83の位置に、孔83aが設けられている。
【0037】
一対の連結プレート23、23によって凹部27が設けられていて、連結プレート23、23は、平板25に加えて補強材28を介して接続されている。これにより、凹部27の間隔が確保できるとともに、連結プレート23の強度を増強できる。また、連結プレート23は、軽量化を図る目的で補強材28に対応する位置と更にもう一か所に孔28a、29aが設けられている。
【0038】
図5に示す通り、主リンク30は直線状に延びるボックス形状の部材である。一端部に設けられる昇降連結部81の位置に孔81bが、他端部に設けられる接続連結部85の位置に孔85aが、さらに中間部に設けられる主リンク連結部84の位置に孔84aが設けられている。孔81b、孔84a、及び孔85aは直線状に配設されて、孔81bの中心から孔84aの中心までの距離L1と、孔85aの中心から孔84aの中心までの距離L2は等しくなるように設定されている。
【0039】
主リンク30は、昇降部材20と昇降連結部81で回動可能に接続されている。具体的には主リンク30に設けられた孔81bと、一対の連結プレート23、23に設けられた孔81a、81aに連結ピン(図示略)を挿通した構造である。これにより、主リンク30は、連結ピンの中心軸周りに回動できる。
【0040】
図6に示す通り、副リンク40は、一対の側板41、41によって凹部40aが画定されている。凹部40aは、杭打機接続部50がスライダー支柱10に近づく方向に移動したとき、主リンク30を収容するための空間である。一対の側板41、41は、補強材42を介して接続されている。これにより、凹部40aの間隔が確保できるとともに、側板41の強度を増強できる。
【0041】
副リンク40の一端部に設けられる支柱連結部86の位置に孔86bが、他端部に設けられる主リンク連結部84の位置に孔84bが設けられている。孔86bの中心から孔84bの中心までの距離L3は、上述した距離L1、L2と等しくなるように設定されている。
【0042】
副リンク40は、支柱連結部86によって上基部12と回動可能に接続されるとともに、主リンク連結部84によって主リンク30と回動可能に接続されている。支柱連結部86、及び主リンク連結部84の連結構造は昇降連結部81の連結構造とほぼ同じであることから説明は省略する。
【0043】
支柱シリンダー60は、油圧によってシリンダーロッド60aがシリンダー本体に沿って移動する油圧シリンダーであり、それぞれの端部は、シリンダー連結部83、87によって接続されている。連結部83、87の連結構造は昇降連結部81とほぼ同じであることから説明は省略する。
【0044】
図7に示す通り、杭打機接続部50は、主リンク接続部材51、リーダー接続部材52、及びリーダー53を有している。主リンク接続部材51は、接続連結部85で主リンク30と第1軸H1(
図8参照)廻りに回動可能に接続されるとともに、連結接続部89でリーダー接続部材52と第2軸H2廻りに回動可能に連結されている。また、リーダー53は、リーダー接続部材52とスライド自在に固定されるとともに、杭打機200をスライド自在に固定する。
【0045】
図8に示す通り、主リンク接続部材51は、平板55の一方の面から主リンク30の方向に向かって垂直に延びる一対の側板56、56が突設している。一対の側板56、56によって、主リンク30、及び調整シリンダー62の端部を内挿する凹部55cが画定される。
【0046】
側板56は、接続連結部85の位置に孔85bが設けられている。また、シリンダー連結部88の位置に、孔88aが設けられている。
【0047】
主リンク30の他端は、接続連結部85で回動可能に接続されている。具体的には主リンク30に設けられた孔85aと、一対の側板56、56に設けられた孔85b、85bに連結ピン85cを挿通した構造である。これにより、主リンク30の他端部は、連結ピン85cの中心軸(第1軸H1)廻りに回動できる。
【0048】
調整シリンダー62(
図2参照)は、油圧によってシリンダーロッド62aがシリンダー本体に沿って移動する油圧シリンダーであり、それぞれの端部は、シリンダー連結部82、88によって接続されている。
【0049】
主リンク接続部材51は、平板55の他方の面から、円環状の突起部材55aが突設している。突起部材55aは、平板55に接続する円環156と、円環156の端部から直角に屈曲し円環156の中心に向かって水平に延びる鍔157を有している。これにより、突起部材55aは凹部55dを画定する。また、平板55の上端部に、突起部材55aと同心の弧状のスリット56aが設けられている。
【0050】
リーダー接続部材52は、凹部55dに回転可能に挿入される突起部材55bが設けられている。突起部材55a、55b及び凹部55dによって連結接続部89が構成される。また、スリット56aを貫通するガイド56bが設けられている。ガイド56bは、リーダー接続部材52の回動を誘導するとともに、リーダー接続部材52と、主リンク接続部材51の間隔を保持するためのものである。これにより、リーダー接続部材52は、突起部材の中心軸(第2軸H2)廻りに円滑に回動できる。
【0051】
図9に示す通り、リーダー53は、上下方向に延びる2本のH形の部材53aを並列に配設して、中間部を接続材53bで連結した構造である。一対の突起部53c、53cは、リーダー接続部材52に設けられた一対の凹部53d、53dに挿入されている。これにより、リーダー53は、リーダー接続部材52が画定する面に沿って上下方向にスライドできる。
【0052】
杭打機200は、リーダー53の延びる方向に沿ってスライド自在に固定されている。スライドするための構造は、上述したリーダー53のスライド構造とほぼ同じであることから説明は省略する。
【0053】
図10に示す通り、調整シリンダー63は、主リンク接続部材51に設けられた連結個所91、およびリーダー接続部材52に設けられた連結部92に連結している。シリンダーロッド63aを移動させることで、リーダー接続部材52は第2軸H2(
図7参照)廻りに回動する。
【0054】
調整シリンダー64は、リーダー接続部材52に設けられた連結部93、およびリーダー53に設けられた連結部94に連結している。シリンダーロッド64aを移動させることで、リーダー53はリーダー接続部材52に沿って上下方向にスライドする。
【0055】
杭打機200の位置決め及び取付角度の調整手順について説明する。
【0056】
車両100を操作して、杭打ち箇所の近傍に配置する。車両100が走行するときは、主リンク30、及び副リンク40は、折り畳まれた状態で、スライダー支柱10に沿って収容されている。このとき、支柱シリンダー60のシリンダーロッド60aは伸びた状態でスライダー支柱10の上端部に位置している。
【0057】
回転体102を旋回軸V1廻りに回動して、杭打機200を目標方向に合わせて、シリンダーロッド60aを降下させる(
図1、
図2参照)。降下に伴って、杭打機200は、目標方向に向かって旋回軸V1に直角に直進する。主リンク30、副リンク40は等距離のスコットラッセル機構を構成するからである。このように、本実施形態の位置決定装置1は、従来のものと比較して杭打機200の平面位置の位置決めが容易となる。
【0058】
第1軸H1(
図8参照)、及び第2軸H2(
図7参照)方向の杭打機200の方向を確認し、杭の打設方向と異なる場合は、シリンダーロッド62a(
図2参照)、シリンダーロッド63a(
図10参照)をそれぞれの調整シリンダー62、63の長手方向に沿って移動する。
【0059】
シリンダーロッド62aを移動することで、杭打機接続部50は第1軸H1廻りに回動する。またシリンダーロッド63aを移動することで、杭打機接続部50のリーダー接続部材52は第1軸H1と直角な方向の第2軸H2廻りに回動する。すなわち全方向に調整可能となる。これにより、傾斜面の施工現場でも、杭を垂直に打設できる。
【0060】
その後、昇降シリンダー64のシリンダーロッド64aを移動して、リーダー53を降下させて、下端部を地面300に設置させる。これにより杭打機200は、リーダー53の先端部、及び走行部101で強固に支持され、杭打設時のぶれを抑制できる。
【0061】
打設完了後は、昇降シリンダー64のシリンダーロッド64aを移動してリーダー53を上昇させ、シリンダーロッド60aを上昇させて主リンク30、及び副リンク40を折り畳んで、スライダー支柱10に沿って収容する。
【0062】
本実施形態は例示であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、杭打装置として、杭打機を例示したが、杭の引抜機でも、杭用の穴を掘る中堀機であっても、スクリュー杭を回転圧入する圧入機であっても、円筒状の杭を圧入する圧入機であってもよい。また、中堀機としては、岩盤等の固い地盤に適用するダウンザホールハンマを使用するものでも、通常地盤に適用するアースオーガを使用するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る杭打位置決定装置は、狭隘で、傾斜があり、かつ不陸がある施工現場でも杭打ちができることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0064】
1: 位置決定装置
10: スライダー支柱
20: 昇降部材
30: 主リンク
40: 副リンク
50: 杭打機接続部
81: 昇降連結部
84: 主リンク接続部
85: 接続連結部
86: 支柱連結部
60: 支柱シリンダー
100: 車両
101: 走行部
102: 回転体
V1: 旋回軸
H1: 第1軸
H2: 第2軸