(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】杭設置装置
(51)【国際特許分類】
E02D 7/26 20060101AFI20221216BHJP
E02D 7/10 20060101ALI20221216BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
E02D7/26
E02D7/10
E02D7/20
(21)【出願番号】P 2020067156
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】396011521
【氏名又は名称】大都技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】都 英吾
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290833(JP,A)
【文献】特開2001-032274(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222468(JP,U)
【文献】実開昭57-079633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/26
E02D 7/10
E02D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の設置に用いる杭設置装置であって、
起振力を発生する打撃ユニットと、
前記打撃ユニットの下端部に固定される軸体ユニットと
、
軸体を内挿した状態で、前記軸体ユニットの中心軸廻りに回動する回転ユニットと、
前記回転ユニットの上端部の外周領域に設けられて、圧縮空気を取り入れる流入部と、
前記流入部に接続して、前記回転ユニットの下端部から、前記圧縮空気を、下方に向け
て環状に噴射する放出部と、を備えることを特徴とする杭設置装置。
【請求項2】
前記流入部は、前記回転ユニットの周方向に沿って環状に配設される流入凹部を有し、前記放出部は、前記流入凹部から前記回転ユニットの下端部まで貫通し、周方向に沿って等間隔に配設される挿通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の杭設置装置。
【請求項3】
前記回転ユニットの下端部に固定された状態で、前記中心軸周りに回動する接続ユニットを備え、
前記接続ユニットは、前記放出部から噴射された前記圧縮空気を環状膜状に噴射する環状のスリットが設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の杭設置装置。
【請求項4】
前記接続ユニットは、前記軸体の下端部を内挿した状態で、前記中心軸周りに回動することを特徴とする請求項3に記載の杭設置装置。
【請求項5】
前記接続ユニットは、前記回転ユニットに固定される外殻と、杭の頭部の形状に対応した凹部が設けられる内挿部とを有し、前記外殻と前記内挿部は協働して前記スリットを画定することを特徴とする請求項3又は4に記載の杭設置装置。
【請求項6】
前記内挿部は、前記外殻に着脱自在に内挿されることを特徴とする請求項5に記載の杭設置装置。
【請求項7】
前記打撃ユニットは、リーダーにスライド可能に嵌合することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の杭設置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃、回動、及び環状膜状の圧縮空気の噴射が可能な杭設置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防護柵、太陽光パネルの基礎杭の設置については、杭に打撃力を付与して地中に打込む工法(以後、直接打設工法と呼ぶ。)が通常であるが、施工現場の状況に応じて様々な工法が採用されてきた。例えば、硬い岩盤に設置する場合は、ダウンザホールハンマ工法によって、地盤を中堀した後、中堀した穴を、一旦、土砂で埋め戻し、その後、杭を打設する工程を踏むことが一般的である。また、市街地等の施工において、騒音が問題となる場合は、アースオーガによって先行掘削後、杭を圧入、又は打設によって設置する工法が採用されている。
【0003】
それぞれの工法に使用する施工機械は、工法ごとに、専用の装置を備えている。例えば、ダウンザホールハンマ工法に用いる装置については、ダウンザホールハンマに圧縮空気を供給するためのエアスイベル、及びダウンザホールハンマを回転させるためのモータを備えている。直接打設工法に用いる装置については、油圧、又は空気圧で動作する打撃機を備えている。アースオーガを用いる施工機械は、回転させるためのモータを備えている。さらに、アースオーガを圧入するための圧入装置を備える場合もある。
【0004】
上述した通り、ダウンザホールハンマ工法で使用する施工機械は、打撃機を備えていないため、直接打設工法に使用することはできない。また、直接打設工法で使用する施工機械は、エアスイベル、及びモータを備えていないためダウンザホールハンマ工法に使用することはできない。また、圧入装置が必要となる場合は、これらとは別の施工機械とする必要がある。すなわち、施工法ごとに異なる種類の施工機械が必要となる。例えば、硬い地盤に杭を設置する場合は、ダウンザホールハンマ工法に用いる施工機械と、直接打設工法に用いる施工機械の少なくとも2種類の施工機械が必要となる。これにより、作業効率、及びそれぞれの施工機械の稼働率は低下する。
【0005】
市街地においては、騒音に配慮した施工が要求される。直接打設工法が可能な施工条件の作業現場においても、騒音対策上、アースオーガによって先行掘削した後、杭を打設、又は圧入する方法がとられる。この場合は、直接打設工法に比べて作業効率は劣る。
【0006】
施工現場の地盤状況は、事前に調査によって完全に把握できるものではなく、直接打設工法が適用可能であると判断された場所であっても、部分的に硬い岩盤が現れる、又は大きな転石が現れることで、施工が困難になる事態も想定される。このよう場合は、作業を中断して、別途、ダウンザホールハンマ工法に用いる施工機械を施工現場に導入し、地盤を中堀した後、一旦、土砂を埋め戻し、その後直接打設工法によって杭を打設する必要が生じる。これにより、作業の中断が生じ、長工期化を招く虞もある。また、スクリュー杭を回転しながら圧入する施工においても、同様の事態が生じる。
【0007】
特に、交通量の多い幹線道路における防護柵基礎の設置工事においては、地盤状況の予期せぬ変化で長工期化した場合は、道路の車線規制の期間が延長される。これにより、車線規制の回数が増加するとともに渋滞の期間が長くなり、多くの車両が渋滞に巻き込まれることによる経済的損出は大きくなる。
【0008】
すなわち、杭の設置工事においては、施工現場の地盤状況に応じて施工可能な工法を選定し、その工法の中から騒音問題等を考慮して施工を行うことを要求されることから、それぞれの施工機械の稼働率は低くなる。また、硬い岩盤や、大きな転石が突如出現した場合は、別途、好適な施工機械を導入する必要が生じることから、大きな経済的損失を生じる虞がある。
【0009】
このような現状に鑑み、様々な施工法に適用可能であり、かつ施工環境にかかわることなく使用できる杭設置装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-3667号公報
【文献】特開2002-38861号公報
【文献】特開2005-325547号公報
【文献】実用新案登録第3154759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、地盤状況、周辺環境に影響を受けることなく幅広く適用できる杭設置装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための発明は、杭の設置に用いる杭設置装置であって、起振力を発生する打撃ユニットと、打撃ユニットの下端部に固定される軸体ユニットと、軸体を内挿した状態で、軸体ユニットの中心軸廻りに回動する回転ユニットと、回転ユニットの上端部の外周領域に設けられて、圧縮空気を取り入れる流入部と、流入部に接続して、回転ユニットの下端部から、圧縮空気を、下方に向けて環状に噴射する放出部を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、杭設置装置は、起振力を発生する打撃ユニットと、打撃ユニットの下端部に固定される軸体ユニットと、軸体を内挿した状態で、軸体ユニットの中心軸廻りに回動する回転ユニットと、回転ユニットの上端部の外周領域に設けられて、圧縮空気を取り入れる流入部と、流入部に接続して、回転ユニットの下端部から、圧縮空気を、下方に向けて環状に噴射する放出部を備えるので、この装置を使用して、様々な杭打ち作業を行い得る。例えば、起振させることで杭を地盤に打込む杭打ち作業、スクリュー杭を回転圧入して地中に打込む作業、ダウンザホールハンマを取り付けて、ダウンザホールハンマを、回転させるとともに、圧縮空気を噴射することで打撃力を付与して、硬い岩盤を掘削する作業、アースオーガを取り付けて、アースオーガ―を回転させることで地中を掘り進む作業等である。複数の作業を同じ杭設置装置で行い得るので、施工の効率化を図るとともに、杭設置装置の稼働率を向上できる。
【0014】
好ましくは、流入部は、回転ユニットの周方向に沿って環状に配設される流入凹部を有し、放出部は、流入凹部から回転ユニットの下端部まで貫通し、周方向に沿って等間隔に配設される挿通孔を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、圧縮空気は、回転ユニットの周方向に沿って環状に配設される流入凹部に充填される。充填された圧縮空気は、周方向に沿って等間隔に配設される挿通孔を経由して回転ユニットの下端部から、周方向にそって等間隔に均等な圧力で噴射される。
【0016】
好ましくは、回転ユニットの下端部に固定された状態で、中心軸周りに回動する接続ユニットを備え、接続ユニットは、放出部から噴射された圧縮空気を環状膜状に噴射する環状のスリットが設けられることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、回転ユニットの下端部に固定された状態で、中心軸周りに回動する接続ユニットを備え、接続ユニットは、放出部から噴射された圧縮空気を環状膜状に噴射する環状のスリットが設けられるので、圧縮空気は、環状のスリットから下方に向かって環状膜状に噴射される。環状膜状に噴射される圧縮空気によって、杭の外周領域にエアカーテンが形成される。これにより、杭を打設するときの騒音低減効果が期待される。
【0018】
好ましくは、接続ユニットは、軸体の下端部を内挿した状態で、中心軸周りに回動することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、接続ユニットは、軸体の下端部を内挿した状態で、中心軸周りに回動するので、接続ユニットが回動したときの振れを抑制できる。
【0020】
好ましくは、接続ユニットは、回転ユニットに固定される外殻と、杭の頭部の形状に対応した凹部が設けられる内挿部とを有し、外殻と内挿部は協働してスリットを画定することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、接続ユニットは、回転ユニットに固定される外殻と、杭の頭部の形状に対応した凹部が設けられる内挿部とを有するので、様々な種類の杭の杭打ち作業を行い得る。
【0022】
好ましくは、内挿部は、外殻に着脱自在に内挿されることを特徴とする。
【0023】
この構成によれは、内挿部は、外殻に着脱自在に内挿されるので、内挿部を取り換えることで打設可能な杭の種類を増やすことができる。また、消耗、破損した内挿部を、新しいものに簡単に取り換えることができる。
【0024】
好ましくは、打撃ユニットは、リーダーにスライド可能に嵌合することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、打撃ユニットは、リーダーにスライド可能に嵌合することを特徴とするので杭を所定の位置に簡単に、かつ正確に打設できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】杭打機が、リーダーに装着された状態の側面図である。
【
図3】杭打機の正面断面図である。ただしチェーンは省略している。
【
図4】ダウンザホールハンマを装着した状態を説明する部分正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について、
図1~3を参照して説明する。
【0028】
杭設置装置1(以後、杭打機1と呼ぶ。)は、杭を所定の場所に据付けるための装置である。少なくとも、杭に打撃力及び/又は回転力を付与して地中に埋設する作業、杭を建てこむための穴を穿孔する作業が可能な装置をいう。
【0029】
図1に示す通り、杭設置装置1は、打撃ユニット10、軸体ユニット20、回転ユニット30、接続ユニット60等を有しており、打撃ユニット10はリーダー210にスライド可能に嵌合している。リーダー210には杭打機1を昇降させるための昇降設備(図示略)が設けられており、これにより、リーダー210の延びる方向に沿って上下方向に昇降できる。リーダー210は、位置決定装置200に接続している。位置決定装置200は、主リンク201、及び副リンク202を備えるいわゆる「スコットラッセル機構」によってリーダー210を水平方向に直進させる装置である。具体的には、シリンダー203を動作して主リンク201を支柱204に沿って昇降させることでリーダー210を水平方向に直線移動させることができる構造となっている。さらに、調整シリンダー230、240を動作して、接続部231、232を、直交する回動軸廻りに回動することでリーダー210の角度を自在に調整できるとともに、調整シリンダー250を動作してリーダー210を上下方向に移動できる構造となっている。また、位置決定装置200は、連結ユニット220を介して、車両等に連結することができる。
【0030】
【0031】
打撃ユニット10は杭300を打撃するための起振力を発生させる装置である。杭300は、両端が開口した円筒である。打撃ユニット10が発生させた起振力は、軸体ユニット20、及び接続ユニット60を介して杭300に打撃力を付与する。
【0032】
モータ100は、打撃ユニット10に固定されている。モータ100に設けられた歯車101は、回転ユニット30に設けられた歯車31と、チェーン(図示略)を介して接続している。これにより、モータ100の動作に伴って回転ユニット30は、回動する。
【0033】
取入口42から取り入れられた圧縮空気260は流入部40、放出部50、及びスリット43(
図3参照)を経由して接続ユニット60の下端から、杭300を取り囲む環状膜状の放出空気270として、下方に向かって噴射される。
【0034】
上述の通り、本実施例で示す杭打機1は、杭300に打撃力、及び回転力を付与するとともに、環状膜状の放出空気270を杭300の外周に放出できる機能を具備する。
【0035】
以下、
図3を参照して杭打機1の構成等について詳述する。
【0036】
杭打機1は、打撃ユニット10、軸体ユニット20、回転ユニット30、及び接続ユニット60を有している。また、圧縮空気260を取込む流入部40、流入部40から取込まれた圧縮空気260をスリット43に噴射する放出部50が設けられている。
【0037】
打撃ユニット10は、油圧またはエアーによって上下方向に振動して杭300を打撃するための起振力を発生させる装置である。シリンダーとシリンダーに内挿されているピストンを有しており、油圧の動作によってピストンが往復運動を繰り返すことで起振力を発生させる。上述した通り、リーダー210にスライド可能に嵌合した状態で支持されているので、起振力を発生させた場合においても、横ブレ等の不規則な振動を抑制できる構造となっている。本実施形態では、杭打機1はリーダー210に支持された状態であるが、懸垂された状態で起振させてもよい。
【0038】
軸体ユニット20は、軸心体21、内カバー22、及び外カバー23を有している。外カバー23は、中心軸CLと同心の円柱形状の穴23aが設けられたドーナツ形状の部材であり、打撃ユニット10の下端部に固定されている。穴23aは、内カバー22を挿入するためのものである。
【0039】
外カバー23の外周部から下方に向かって垂直に延びる、中心軸CLと同心の円環形状の鍔部材25が設けられている。鍔部材25は、圧縮空気260を取り入れるための取入口42が設けられている。
【0040】
内カバー22は、外カバー23に固定されていて、軸心体21を挿通するための、中心軸CLと同心の円柱状の穴22aが画定された円筒形状の部材である。下端部には水平方向に向かって突設する鍔部26が設けられている。
【0041】
軸心体21は、円柱形の部材であり、一端は、打撃ユニット10の下端部に設けられた挿入凹部10aに挿入された状態で、打撃ユニット10に固定されている。挿入凹部10aは軸心体21とほぼ同じ直径の穴が画定されており、軸心体21の上端部は、この穴に挿入されている。また、軸心体21の下端部は、内挿部80に設けられた貫入凹部80aに挿入されている。貫入凹部80aは、軸心体21とほぼ同じ直径の穴が画定されている。打撃ユニット10を動作することによって発生した打撃力は、軸心体21を介して内挿部80に伝達される。
【0042】
回転ユニット30は、外カバー23及び鍔部26に挟持されるとともに、内カバー22の側面22bを取り囲む状態で中心軸CLの廻りに回転可能に固定されている。上下方向から挟持されることで、回転ユニット30の、上下方向の移動は拘束される。これにより、回転ユニット30は、上下方向のブレを生ずることなく、側面22bに沿って回動できる。
【0043】
回転ユニット30と、側面22b、外カバー23、及び鍔部26が接触する部分に、ベアリング(図示略)が設けられている。ベアリングは、摩擦力を低減することで、回転ユニット30の回動を円滑にするためのものである。
【0044】
回転ユニット30の下端部に円環状の歯車31が設けられている。歯車31は、チェーンを介して歯車101に接続している。モータ100を動作することで、回転力を歯車101、チェーンを介して歯車31に伝達する。これにより、モータ100の動作で回転ユニット30は、中心軸CL廻りに回動する。
【0045】
接続ユニット60は、回転ユニット30に固定される外殻70、及び外殻70に回動可能に固定される内挿部80を有している。外殻70は、円筒形の部材であり、上端部から水平に突設する円環状の鍔部70aが設けられている。外殻70は、鍔部70aの周方向に沿って、環状に、等間隔に配設される接続ボルト72によって、回転ユニット30に固定される。
【0046】
外殻70の内部に、内挿部80が挿入されている。外殻70と、内挿部80の間に設けられた隙間は、スリット43を画定するためのものである。内挿部80の中間部に、周方向に沿って、環状のストッパ81が設けられている。ストッパ81は、周方向に沿って等間隔に配設された支持ボルト71によって支持されている。軸心体21の下端部は、内挿部80に設けられた貫入凹部80aに、貫入凹部80aの底面に接触した状態で回動可能に挿入されている。これにより、内挿部80は、モータ100の動作によって回動することなく、外殻70の回動と独立して中心軸CL廻りに回動できる。また、本実施形態では内挿部80は外殻70に回動可能に固定されているが、外殻70に固定されていても良い。凹部82は、防護柵等の基礎杭の頭部に取り付けられた球面形状のキャップの形状に沿った球面が設けられている。これにより、キャップ付きの基礎杭を打設するときの、キャップの損傷を回避できる。
【0047】
内挿部80には、規格の異なる杭頭部に対応した形状となる凹部82が設けられている。また、内挿部80は支持ボルト71を緩めることで、取り外すことができるため、凹部82の形状を適宜選定することで、規格の異なる多種多様の杭を打設できる。
【0048】
内挿部80は、打設による衝撃力を直接受ける部材であることから、破損する確率が高くなるが、このような場合でも、取り換えは容易となる。
【0049】
圧縮空気260は、取入口42を経由して流入部40の流入空間41aに噴射される。流入空間41aは、回転ユニット30の上端部に環状に設けられた流入凹部41と、鍔部材25によって画定される空間である。
【0050】
流入空間41aに充填された圧縮空気260は、放出部50、スリット43を経由して、接続ユニット60の下端から、杭300を包み込む環状膜状の放出空気270として、下方に向かって噴射される。
【0051】
圧縮空気260の噴射経路について説明する。
【0052】
流入空間41aに充填された圧縮空気260は、挿通孔45に流入する。挿通孔45は、等間隔に環状に配設された複数の管から構成されており、上端が流入空間41aに接続し、下端が回転ユニット30と接続ユニット60との間に設けられた隙間46に接続する。これにより、回転ユニット30が回動している状況下でも、圧縮空気260は、挿通孔45を経由して、均等な圧力で等間隔に噴射されて、隙間46に充填される。
【0053】
隙間46に充填された圧縮空気260は、スリット43を経由して、接続ユニット60の下端から、杭300を包み込む環状膜状の放出空気270として、下方に向かって噴射される。
【0054】
本実施例で示す杭打機1は、杭300に打撃力、及び回転力を付与するとともに、環状膜状の放出空気270を杭300の外周に放出できる機能を具備する。これらの機能を適宜組み合わせることで、中堀、杭打設等、様々な施工が実施可能となる。
【0055】
例えば、杭300を打設するとき、杭300を凹部82に接触した状態で、外殻70に固定することで、打撃力を伴って回転しながら杭を効率よく打設できる。同時に、スリット43から、放出空気270を放出することで杭300の外周部にエアカーテンが設けられる。杭300の外部領域がエアカーテンで覆われることで、打撃による騒音の騒音レベルを低減できる。打設効率を高めることで施工時間の短縮を図り、同時に騒音レベルを低減できることから、都市部等の人口密集地域における施工法としても有効である。
【0056】
図4を参照して、杭設置装置1に、ダウンザホールハンマ310を取り付けた使用態様について説明する。
【0057】
ダウンザホールハンマ310は、本体311の先端部に設けられた打撃駆動部(図示略)、及び本体311の先端部から突出した状態で打撃駆動部に接続する掘削ビット(図示略)を有しており、ダウンザホールハンマ310に固定される接続金具320を介して外殻70に固定されている。具体的には、ダウンザホールハンマ310は、接続金具320とボルト330によって固定され、接続金具320は外殻70とボルト340によって固定される構造である。掘削ビットは、本体の外径より大きく設定されている。接続金具320の中央部にはダウンザホールハンマ310の内部空間310aに連通する隙間320aが画定されている。
【0058】
モータ100を動作させて回転ユニット30を中心軸CL廻りに回動させるとともに、取入口42から圧縮空気260を流入空間41aに向かって噴射する。
【0059】
回転ユニット30の回動とともに、回転ユニットに外殻70を介して固定されるダウンザホールハンマ310は中心軸CL廻りに回動する。これにより、掘削ビットは中心軸CL廻りに回動する。同時に、圧縮空気260は、放出部50を経由して、スリット43に放出空気270として噴射される。放出空気270は、隙間320aを経由して内部空間310aに噴射される、この噴射された放出空気270が打撃駆動部を通過することで、打撃駆動部は動作する。これにより、掘削ビットは、地盤を掘削するための回転力、及び打撃力が付与される。
【0060】
回転力、及び打撃力が付与された掘削ビットは、地盤と本体311の間に所定の隙間を設けながら、地盤を掘削する。
【0061】
放出空気270は、掘削ビットを通過してダウンザホールハンマ310の外部領域に噴射される。噴射された空気は、本体311と地盤との間に生じた隙間から、掘削ビットによって掘削された土と一体となって地表面に排出される。
【0062】
本実施形態は例示であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。本実施形態では、杭は、両端が開口した円筒であるとしたが、構造物を支持するための地中に打込む棒状のものであれば、形状は問わない。具体的には、中空断面であっても充実断面であってもよく、また、断面形状は円形であっても矩形であってもL字形であってもよい。さらに、先端が先細り形状であっても、スクリュー形状であってもよい。
【0063】
また、杭打装置として、中堀機、杭打機の適用を例示したが、スクリュー杭を回転・圧入する施工に用いてもよい。さらに、防護柵、太陽光発電用の基礎杭において、打設完了後、防護柵等が取り付け可能となる方向に回転させる施工に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る杭設置装置は、多様な工法に適用出来て、場所を選ぶことなく施工できるものである。特に、交通規制を余儀なくされる道路上での防護柵の杭設置工事等において、工期短縮、コストダウン、及び交通渋滞による経済的損失の抑制が可能となるので産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0065】
1:杭打機
10:打撃ユニット
20:軸体ユニット
30:回転ユニット
40:流入部
41:流入凹部
43:スリット
45:挿通孔
50:放出部
60:接続ユニット
70:外殻
80:内挿部
82:凹部