(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】データ収集装置、道路状態評価支援装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20221216BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20221216BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20221216BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20221216BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20221216BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/13
G07C5/00 Z
G16Y10/40
G16Y40/10
(21)【出願番号】P 2021099127
(22)【出願日】2021-06-15
(62)【分割の表示】P 2017011177の分割
【原出願日】2017-01-25
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】服部 哲也
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇喜
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153903(JP,A)
【文献】特開2014-006683(JP,A)
【文献】特開2016-057861(JP,A)
【文献】特開2013-140448(JP,A)
【文献】特開2016-186756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G07C 5/00
E01C 1/00
G16Y 10/40、40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたデータ収集装置で収集された車両の周囲の画像データ、車両に加わった加速度の大きさを表す加速度データ、車両の位置データ、及びデータを収集した収集日時データが関連付けて蓄積されたデータベースに基づいて、特定の地点で異なる複数の日時に取得された前記画像データの画像を時系列に表示手段に表示させる処理手段を有する道路状態評価支援装置
であって、
前記処理手段は、路面の修繕が必要な地点の位置情報を、修繕による道路のライフサイクルコストの低下幅の大きさを識別可能に前記表示手段に表示させる機能を持つ道路状態評価支援装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の道路状態評価支援装置の機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、データ収集装置、道路状態評価支援装置、及びプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
路面の沈下量等の変位量を計測するために、レーザ測距方法が用いられる(特許文献1)。このレーザ測距方法においては、レーザ光の照射角度を指定された方位角及び、または上下角に設定する機能を有するレーザ測距手段を用いて計測対象面の変位量を演算する。前回もしくは前回以前の測量において得られた計測対象面上の特定の部位を変位基準点とし、変位基準点の3次元座標、もしくは測量機から変位基準点までの距離と視準方向を記憶しておく。今回の測量においては、記憶していた測量機から変位基準点の視準方向、もしくは変位基準点の3次元座標を用いて、変位基準点に相当する位置の点を視準点とし
て視準して、視準方向において検出される計測対象面上の点を検出点とし、この検出点の3次元座標、または測量機から検出点までの距離を得て、変位基準点を基準とした検出点の変位量を算出する。検出された変位量に基づいて、路面の補修時期を予測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ測距方法を用いて路面の沈下量等の変位量を計測するためには、計測場所に予めレーザ測距装置を設置しておかなければならない。沈下が生じる危険性の高い場所に、予めレーザ測距装置を設置しておくことにより、その場所の路面の沈下量を計測することができるが、レーザ測距装置を設置していない場所では、路面の沈下量を計測することができない。
【0005】
本発明の目的は、例えば、計測場所に予めレーザ測距装置等の計測装置を設置することなく、道路または道路付属物等の修繕要否等の判定を行う基礎となるデータ等を収集することができるデータ収集装置等を提供することである。本発明の他の目的は、例えば、収集されたこれらのデータに基づいて修繕要否等の判定を行うための道路状態評価支援装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)車両に搭載されて使用され、道路または道路付属物の修繕要否の判定を行う基礎となるデータである判定基礎データを収集する処理手段を有し、前記判定基礎データが、前記車両の周囲の画像データを含むデータ収集装置とするとよい。
【0007】
収集された画像データに基づいて、道路または道路付属物の修繕要否の判定を適確に行うことができる。収集された判定基礎データを表示する機能を有するとよく、収集された画像データの画像を表示する機能を有すると特によい。このようにすることにより、表示された画像を見て、道路または道路付属物の修繕要否の判定を適確に行うことができる。
【0008】
道路の修繕要否(補修工事が必要か否か)は、例えば、路面の段差やくぼみ等の凹凸、わだち掘れ、ひび割れ、高速道路のつなぎ目補修箇所、路面の沈下等の有無に基づいて行われる。路面の凹凸の有無を判定する判定基礎データとして、例えば、路面の凹凸を通過するときに車両に加わる加速度を表す加速度データ、車両の周囲を撮影した画像データ等を用いるとよい。わだち掘れやひび割れの有無を判定する判定基礎データとして、例えば車両の前方を撮影した画像データ等を用いるとよい。路面の沈下の有無を判定する判定基礎データとして、沈下箇所を通過するときの車両の傾きを示すデータ等を用いるとよい。
【0009】
道路付属物には、例えば転落防止柵、車道と歩道との分離柵、道路上の並木、道路標識、道路標示、道路情報表示装置、車両監視装置、共同溝等が含まれる。これらの修繕要否の判定を行う判定基礎データとして、車両の周囲の画像等のデータを用いるとよい。
【0010】
処理手段は、収集された画像データを、表示機能を有する外部機器に引き渡す機能、または表示機能を有する機器に表示させる機能を持つとよい。修繕要否の判定を行う主体は、例えば、判定基礎データに含まれる画像データの画像を見た道路管理者とするとよい。修繕要否の判定を行う主体を、例えば、判定基礎データに含まれる画像データを解析する画像解析プログラム、及び画像解析結果に基づいて判定処理を行う人工知能(AI)とし
てもよい。
【0011】
収集される画像データは、一定のサンプリング周期で取得される複数の画像で構成するようにするとよい。このサンプリング周期は、収集された画像データに含まれる複数の画像によって、車両が走行した経路の周囲の画像を、経路に沿って途切れることなく取得できる程度の短さとするとよい。処理手段は、この画像データとして動画データを収集すると特によい。
【0012】
処理手段は、例えば、収集した判定基礎データを、記録装置に記録する機能を備えるとよい。記録装置として、例えば着脱可能なメモリカードとするとよい。このようにすることで、メモリカードを介して判定基礎データをデータ収集装置から他の機器に引き渡すことができる。
【0013】
例えば、車両に加わる加速度を数値化した加速度データを判定基礎データに含ませるとよい。処理手段は、判定基礎データに含まれる加速度データを、表示機能を有する外部機器に引き渡す機能、または表示機能を有する機器に表示させる機能を持つとよい。加速度データは、例えば、加速度の時間軸変化(時間波形)として表示させるとよい。修繕要否の判定を行う主体は、例えば、パソコンの画面に表示された加速度の時間波形を見た道路管理者とするとよい。修繕要否の判定を行う主体を、例えば、加速度の時間波形の形状に基づいて判定を行う判定プログラムとしてもよい。
【0014】
(2)前記判定基礎データが、前記車両に搭載されたセンサで取得され、前記車両の周囲の画像データとは異なるセンシングデータを含むようにするとよい。
【0015】
センシングデータとして、例えば、車両の現在位置を示す位置データ、上記(1)における車両の周囲を撮影して得られる画像データとは異なる画像データ、車両に加わる加速度の大きさを表す加速度データ等を採用するとよい。
【0016】
位置データを取得するセンサとして、例えばGPS受信機を用いるとよい。処理手段は、例えば位置データによって、道路または道路付属物の修繕要否の判定を行うべき地点に車両が近づいたこと、または道路または道路付属物の修繕要否の判定を行うべき領域内に車両が進入したことを検知する機能を備えるとよい。処理手段は、道路または道路付属物の修繕要否の判定を行うべき地点または領域内で、判定基礎データの収集を行う機能を備えるとよい。
【0017】
上記(1)における車両の周囲を撮影して得られる画像データ、及びそれとは異なる画像データを取得するセンサとして、相互に異なる撮像装置、例えばCMOSカメラ、CCDカメラ等を用いるとよい。例えば、一方の撮像装置で車両の前方の路面や道路付属物を撮影し、他方の撮像装置で車両直下の路面を撮影するようにするとよい。処理手段は、例えばこれらの画像データによって、路面の状態、車両が走行した道路の周囲に配置されている道路付属物の形状や表面状態等の情報を得ることができる。
【0018】
加速度データを取得するセンサとして、例えば車両に加わる加速度を検知する加速度センサを用いるとよい。処理手段は、例えば加速度データによって、車両に加わる衝撃の大きさを検知することができる。衝撃の大きさの相違によって、処理手段は、例えば車両が衝突によって衝撃を受けたこと、車両が路面の凹凸を通過したことによって衝撃を受けたこと等を区別することができる。
【0019】
処理手段は、上記(1)における車両の周囲を撮影して得られる画像データと、上記(2)におけるセンシングデータとを関連付けてデータベース化して記録する機能を備える
とよい。例えば、データを取得した日時によって両者を対応付けるとよい。このようにすることで、一方のデータから、それに対応する他方のデータを抽出することができる。処理手段は、これらの画像データ及びセンシングデータを外部機器に引き渡す機能を備えるとよい。外部機器は、引き渡されたこれらの画像データとセンシングデータとを関連付けてデータベース化して記録する機能を備えるとよい。
【0020】
センシングデータを画像データ以外のデータとすると特によい。(1)における車両の周囲を撮影して得られる画像データと、(2)における画像データ以外のセンシングデータとを関連付けて、道路または道路付属物の修繕の要否を、より適確に判定することができる。
【0021】
(3)前記センシングデータは、前記車両に加わる加速度の大きさを表す加速度データを含み、
前記処理手段が、前記加速度データに基づいて前記車両に衝突が発生したことを検出すると、検出時点を含む前後の期間に収集した前記画像データ及び前記加速度データを記録装置に記録する機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0022】
上記(1)の機能を持つデータ収集装置を、衝突事故が発生した時点の周囲の画像を記録(以下、イベント記録という。)する一般的なドライブレコーダとして利用することができる。
【0023】
(4)前記処理手段が、前記加速度データに基づいて前記車両が路面の凹凸を通過したことを検出すると、検出時点を含む前後の期間に収集した前記画像データ及び前記加速度データを前記記録装置に記録するデータ収集装置とするとよい。
【0024】
加速度データのみでは道路の修繕要否を判定することが困難な場合に、画像データで示された路面の画像を、修繕の要否を判定するための情報として用いることができる。
【0025】
例えば、測定された加速度のピーク値が判定閾値を超えると、車両が路面の凹凸を通過したと判定するとよい。この判定閾値は、路面に種々の凹凸のある道路を実際に走行して、車両に加わる加速度を測定することにより決定するとよい。路面の凹凸には、例えば舗装のひび割れ、わだち掘れ、段差、ポットホール等が含まれる。
【0026】
イベント記録を行う一般的なドライブレコーダにとっては、車両が路面の凹凸を通過したことにより加わる衝撃によって発生する加速度の時間波形のピークは、衝突事故の発生を検出するためには邪魔なもの(ゴミデータ)である。一般的に、路面の凹凸を通過したときに発生する加速度の時間波形のピークは、衝突事故時に発生する加速度のピークより小さい。このピークの大きさの相違を利用して、一般的なドライブレコーダは、衝突事故の発生と路面の凹凸の通過とを区別している。邪魔なものとして取り扱われていた比較的小さな加速度の時間波形のピークをトリガ(検出契機)として、路面の凹凸が発生している地点を見つけ出す(ピックアップする)機能を、一般的なドライブレコーダに備えるとよい。このようにすることで、一般的なドライブレコーダを、道路または道路付属物の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集するデータ収集装置に容易に転用することができる。また、衝突事故の発生を検知する機能と、路面の凹凸を通過したことを検知する機能との両方を備えることにより、ドライブレコーダを、このデータ収集装置と共用することができる。
【0027】
(5)前記処理手段が、前記加速度データで示される加速度の大きさが第1の判定閾値以上のとき、前記車両に衝突が発生したと判定し、前記加速度データで示される加速度の大きさが前記第1の判定閾値より小さい第2の判定閾値以上のとき、前記車両が路面の凹
凸を通過したと判定するデータ収集装置とするとよい。
【0028】
収集された加速度データを用いて、車両が路面の凹凸を通過したときに受けた衝撃と、衝突事故によって受けた衝撃とを切り分けることができる。これにより、例えば、イベント記録を行うドライブレコーダを、道路等の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集するデータ収集装置としても利用することができる。例えば、一般的なドライブレコーダには、加速度の大きさと第1の判定閾値とを比較する機能が備わっている。このような一般的なドライブレコーダに、加速度の大きさと第2の判定閾値とを比較する機能を追加することにより、一般的なドライブレコーダを、道路等の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集するデータ収集装置として利用することができる。なお、加速度が第1の判定閾値以上のときには、車両に衝突が発生したと判定するとともに、路面の凹凸を通過したと判定するとよい。これにより、衝突が発生したときと同程度の大きな衝撃が車両に加わるような高低差の大きな凹凸を通過したときに、路面の凹凸を通過したと正しく判定することができる。
【0029】
(6)さらにマイクを有し、前記処理手段は、前記マイクで収集された音の情報を併用して、前記車両が路面の凹凸を通過したことを検出するデータ収集装置とするとよい。
【0030】
音の情報を併用することにより、路面の凹凸の有無をより高精度に判定することができる。
【0031】
(7)前記処理手段が、前記画像データを解析することにより、前記車両が路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間を走行しているか否かを判定し、路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間を走行していると判定すると、前記車両が路面の凹凸を通過したか否かを検出する処理をスキップするデータ収集装置とするとよい。
【0032】
修繕の対象とならない劣化以外の要因による凹凸を検出対象から除外することができる。これにより、凹凸が発生している地点が過剰に検出されてしまうことを抑制することができる。その結果、真に修繕の対象として考慮すべき凹凸が発生している地点を、容易に検知することが可能になる。
【0033】
路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間として、少なくとも、例えば工事中であることにより発生している凹凸が発生している区間、開削工事を行った場所の継ぎ目部分の段差が発生している区間、マンホールの縁による段差、橋梁の継ぎ目部分の段差等が存在する区間であるか否かを判定するようにするとよい。例えば、画像データの画像から工事中の看板を検知すると、現在走行中の道路が工事中であると判定するとよい。開削工事を行った場所の継ぎ目、マンホールの縁、橋梁の継ぎ目等は、画像データを解析することにより検知するとよい。
【0034】
(8)前記処理手段が、前記画像データを解析することにより走行中の路面の種別を判定し、路面の種別に応じて前記車両が路面の凹凸を通過したと判定する判定基準を変えるデータ収集装置とするとよい。
【0035】
車両が受ける加速度(衝撃)は、車両が走行している路面の種別に依存する。路面の種別に応じて上述の判定基準を変えることにより、路面の種別に応じた適切な判定を行うことができる。
【0036】
路面の種別として、例えばアスファルト舗装、コンクリート舗装、ブロック舗装等が挙げられる。処理手段は、これらの路面の種別を判定する機能を備えるとよい。コンクリート舗装の路面には、例えば5~10m間隔で1cm程度の継ぎ目が設けられる。ブロック
舗装の路面には、敷き詰められた複数のブロックからなる独特のパターンが現れる。アスファルト舗装の路面には、継ぎ目や独特のパターンは現れない。処理手段は、路面の画像データを解析し、継ぎ目や独特のパターンの有無を検出することによって、路面の種別を判定するとよい。
【0037】
(9)前記処理手段が、前記画像データを解析することにより意図的に設けられた路面の段差舗装を検出し、段差舗装が検出された地点では、前記車両が路面の凹凸を通過したか否かを検出する処理をスキップするデータ収集装置とするとよい。
【0038】
意図的に設けられた路面の段差舗装がなされている地点が、修繕すべき段差が発生している地点の候補として上がってしまうことを防止できる。
【0039】
意図的に設けられた路面の段差舗装として、例えば、走行する車両の運転手に音と振動を与えることによって走行速度の抑制や、注意喚起を図るためのものが挙げられる。段差舗装は、例えば、舗装表面に樹脂系接着剤を用いてセラミック等の骨材を塗布することにより行われる。処理手段は、路面の画像データからセラミック等の骨材によるパターンを検出することにより、路面に、意図的に設けられた段差舗装がなされているか否かを判断するとよい。
【0040】
(10)前記処理手段が、現在位置を示す現在位置データを取得する機能を持ち、前記判定基礎データを収集すべき場所を特定する収集位置データを記憶しており、前記現在位置データと前記収集位置データとに基づいて前記判定基礎データの収集を行うか否かを判定し、前記判定基礎データの収集を行うと判定すると、前記判定基礎データを収集して前記記録装置に記録する機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0041】
判定基礎データを収集すべき場所で判定基礎データを収集し、その他の場所では、判定基礎データを収集しないようにすることができる。車両が走行した全ての場所で判定基礎データを収集する場合に比べて、解析すべき判定基礎データのデータ量が少なくなる。このため、判定基礎データを記録すべきメモリ量を少なくするとともに、不要な判定基礎データを解析する処理に要する無駄な時間を無くすことができる。
【0042】
現在位置データは、GPS受信機により取得するようにするとよい。GPS受信機は、データ収集装置に内蔵するとよい。または、車両に搭載されたGPS受信機からデータ収集装置が現在位置データを受信するようにしてもよい。センシングデータが現在位置を示す現在位置データを含むようにするとよい。センシングデータに含まれる現在位置データを、画像データ、加速度データ等と関連付けてデータベース化して記録すると特によい。このようにすることで、画像データが収集された位置、及び加速度データが収集された位置を特定することができる。
【0043】
(11)前記収集位置データは、前記判定基礎データを収集すべき測定地点を特定するデータを含み、
前記処理手段が、前記車両の現在位置と前記測定地点との距離が基準距離以下になると、前記車両が前記測定地点に近づいたことを報知する機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0044】
データ収集装置を搭載した車両の運転手は、車両が測定地点に近づいたことを知ることができる。これにより、判定基礎データの収集のための準備に取り掛かることができる。
【0045】
判定基礎データを収集すべき測定地点は、過去に測定された判定基礎データの解析により、現時点では直ちに修繕する必要がない程度の凹凸等が検出された複数の地点から選択
するとよい。このような測定地点の判定基礎データを、日を置いて継続して収集することにより、路面の劣化の進行速度を考慮して修繕の要否を判定することができる。
【0046】
(12)前記処理手段が、前記測定地点を通過するときの走行速度の標準値を記憶しており、前記車両が前記測定地点に近づいたことを報知するとともに、前記車両の運転者に、前記標準値の走行速度で走行するように促す機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0047】
データ収集装置を搭載した車両の運転手は、測定地点を走行する前に、標準値で走行する必要があることに気付くことができる。これにより、標準値から大きく外れて測定地点を走行してしまい、収集された判定基礎データが有効に利用できなくなってしまう事態の発生を抑制することができる。例えば音声を出力することにより、標準値の走行速度で走行するように促すとよい。
【0048】
(13)前記処理手段が、収集した前記判定基礎データを前記記録装置に常時記録する機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0049】
データ収集装置を搭載した車両が走行した全ての経路について、道路または道路付属物の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集することができる。これにより、より広範なエリアで判定基礎データが収集される。道路や道路付属物に異常が見つかった地点において、異常が発見されていない過去の時点に収集された判定基礎データが蓄積されている場合には、過去の時点に収集された判定基礎データを併用して、異常の発生時期や発生原因等を分析することが可能である。
【0050】
常時記録する期間として、例えば、車両のアクセサリキーをオンにした時点からオフにした時点までの期間とするとよい。また、走行経路のうち判定基礎データを収集する区間を予め決めておき、判定基礎データを収集する区間内で常時記録するようにしてもよい。例えば、処理手段が、判定基礎データを収集する区間の開始地点及び終了地点の位置データを記憶しておき、車両の現在位置が開始地点に一致したら判定基礎データの収集を開始し、終了地点に一致したら判定基礎データの収集を終了するとよい。
【0051】
(14)前記処理手段が、前記画像データの解析を行うことにより、道路または道路付属物の修繕要否の判定を行う機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0052】
道路管理者による画像データの画像のチェック作業に掛かる負担を軽減することができる。また、人間の目視による異常箇所の見逃しがあった場合にも、処理手段が異常を検出することによって、異常の見逃しを少なくすることができる。
【0053】
画像データの解析により、路面のひび割れ、道路標示の劣化、雨上がり後における道路の排水機能の不良、道路標識やガードレール等の道路付属物の腐食や変形、土砂崩れの兆候、街路樹による弊害等を検知することができるようにするとよい。
【0054】
(15)さらに、通信手段を有し、前記処理手段が、前記車両の走行中に収集した前記判定基礎データを、前記通信手段を介して外部機器に送信する機能を持つデータ収集装置とするとよい。
【0055】
データ収集装置を搭載した車両が、車両基地から出発して目的の経路を走行した後、車両基地に戻る道路維持作業用の車両であるとき、収集した判定基礎データを、車両が車両基地に戻る前に外部機器に送ることができる。民生用のドライブレコーダにこの機能を搭載すると、道路維持作業用の車両のみならず、ドライブレコーダを搭載した一般の車両からも判定基礎データを集めることができる。一般の多くの車両に搭載されたドライブレコ
ーダから、より多くの判定基礎データを集めて蓄積することにより、修繕要否の判定の精度を高めることができる。
【0056】
(16)車両に搭載されたデータ収集装置で収集された車両の周囲の画像データ、車両に加わった加速度の大きさを表す加速度データ、車両の位置データ、及びデータを収集した収集日時データが関連付けて蓄積されたデータベースに基づいて、特定の地点で異なる複数の日時に取得された前記画像データの画像を時系列に表示手段に表示させる処理手段を有する道路状態評価支援装置とするとよい。
【0057】
道路管理者は、時系列に表示された画像を見て、道路または道路付属物の劣化の進み具合を確認することができる。これにより、修繕要否の判定を行うとともに、修繕が必要になる時期を予測することができる。また、表示された画像を見て、表示された地点の劣化状態を継続して観察する必要があるか否かを判断することができる。継続して観察する必要があると判断した場合、時系列に表示された画像は、観察する頻度を決めるための有効な情報となる。
【0058】
表示手段に画像を表示させる特定の地点として、例えば加速度データに基づいて路面に凹凸が発生していると判定された地点、継続観察の対象となっている地点等とするとよい。
【0059】
このデータベースは、道路状態評価支援装置が持つ記憶装置内に配置するとよい。また、このデータベースは、データ通信ネットワークに接続されたサーバ上に配置すると特によい。このようにすると、複数の道路状態評価支援装置をデータ通信ネットワークに接続することにより、複数の道路状態評価支援装置からデータベースにアクセスすることが可能になる。
【0060】
(17)前記処理手段が、前記画像データの画像とともに、対応する前記加速度データの時間波形を前記表示手段に表示させる道路状態評価支援装置とするとよい。
【0061】
道路管理者は、加速度データの時間波形を見て、その地点を通過したときに車両に加わった衝撃の大きさを特定することができる。衝撃の大きさは、例えば路面に発生している凹凸の高低差等を特定するための情報として利用することができる。時系列に表示された加速度データの時間波形から、路面に発生している凹凸等の劣化の進み具合を知ることができる。
【0062】
(18)前記処理手段が、前記特定の地点で収集された前記加速度データとして、ピーク波形を示す前記加速度データの時間波形を前記表示手段に表示させる機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0063】
加速度データの時間波形のピークを検知することにより、時系列に表示される複数の加速度データの時間波形が取得された地点を、精度よく一致させることができる。その結果、路面に発生した同一地点の凹凸に起因して発生した衝撃を時系列に評価することができる。
【0064】
特定の地点で収集された加速度データは、加速度データに関連付けられている位置データを参照して見つけ出すことができる。この位置データは、例えばGPS受信機により取得されたものであり、種々の要因によって位置の測定誤差が発生する。このため、位置データのみからでは、異なる日時に収集された走行中の加速度データの複数の時間波形の各々が取得された位置を精度よく一致させることは困難である。加速度データの時間波形のピークを検出することにより、異なる日時に収集された加速度データの複数の時間波形の
各々が取得された位置を、精度よく一致させることができる。その結果、加速度データの収集日時に基づいて、特定の地点の画像データを精度よく抽出することができる。
【0065】
(19)前記処理手段が、複数の異なる日時に前記特定の地点において収集された複数の前記加速度データの各々から、前記特定の地点の路面の凹凸に依存する評価値を求め、求められた前記評価値の経時変化を前記表示手段に表示させる機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0066】
特定の地点の路面の凹凸に依存する評価値の経時変化から、将来の劣化の進み度合いを推測することができる。推測された劣化の進み度合いから、修繕を行うべき時期を予測することができる。路面の凹凸に依存する評価値として、例えば加速度データの時間波形に現れるピークの高さとするとよい。
【0067】
処理手段は、過去から現時点までの評価値をグラフ形式で表示させるとよい。道路管理者は、評価値の変化をグラフ形式で見ることにより、視覚的に評価値の劣化の速さを認識することができる。処理手段は、過去から現時点までの評価値の変化から、将来における評価値の変化を予測し、過去から現時点までの評価値の変化、及び予測された将来の評価値の変化をグラフ形式で表示させるとよい。予測された将来の評価値の変化は、道路または道路付属物の修繕時期を決定するための有益な情報として利用することができる。
(20)前記処理手段が、前記データベースに蓄積された前記加速度データの時間波形から、車両が路面の凹凸を通過したことを示唆する時間波形を抽出する機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0068】
データベースに蓄積された加速度データに基づいて、人手を介することなく、路面に凹凸が存在すると思われる地点を抽出することができる。これにより、膨大な量の加速度データを処理することが可能になる。凹凸を通過したことを示唆する時間波形の抽出は、例えば、加速度データの時間波形に現れるピーク高さ、時間波形の形状、前後左右上下の三方向の加速度の大小関係等に基づいて行うことができる。
【0069】
例えば、車両に急制動が加わったときには、前後方向に大きな加速度が発生する。運転者が急ハンドル操作を行った時には、左右方向に大きな加速度が発生する。これに対し、車両が路面の凹凸を通過したときには、上下方向に大きな加速度が発生する。処理手段は、発生する加速度の方向の相違を利用して、路面に凹凸が存在すると思われる地点を抽出するとよい。さらに、急制動、急ハンドル等に対応する加速度データの時間波形は、路面の凹凸の通過に対応する加速度データの時間波形と比べて、より緩やかに変化する。処理手段は、この時間波形の形状の相違を利用して、路面に凹凸が存在すると思われる地点を抽出するとよい。
【0070】
処理手段は、車両が路面の凹凸を通過したことを示唆する時間波形を抽出するために、加速度データ以外の情報を利用すると特によい。処理手段は、加速度データ以外の情報として、例えば車両の走行速度を利用するとよい。例えば、車両のドアの開閉時に加速度データの時間波形にピークが現れるが、このときの走行速度はほぼ0である。車両が路面の凹凸を通過したか否かの判定に、走行速度のデータを併用することにより、ドアの開閉によって発生した加速度データの時間波形のピークを検出対象から除外することができる。
【0071】
(21)前記データベースが、前記加速度データを収集したときにデータ収集装置が搭載されていた車両の種別を示す車両種別データを含み、
前記処理手段が、前記加速度データを車両種別データに基づいて正規化する機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0072】
加速度データを車両種別データに基づいて正規化することにより、車両種別の異なる複数の車両に搭載されたデータ収集装置で収集された加速度データ同士を比較することが可能になる。ここで、「車両種別データに基づいて正規化する」とは、種々の車両に搭載したデータ収集装置で実際に収集された加速度データを、標準車両に搭載していたとしたら得られたであろう加速度データに変換することを意味する。変換対象の加速度データとして、例えば、加速度データの時間波形を特徴づける特徴量とするとよい。加速度データの時間波形を特徴づける特徴量として、例えば時間波形に現れたピークの高さ、時間波形の周波数成分の分布等を用いるとよい。
【0073】
(22)前記データベースが、データの収集日時に関連付けて車両の走行速度データを蓄積しており、
前記処理手段が、前記加速度データを前記走行速度データに基づいて正規化する機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0074】
加速度データを走行速度データに基づいて正規化することにより、異なる走行速度で収集した加速度データを比較することが可能になる。ここで、「走行速度データに基づいて正規化する」とは、種々の異なる走行速度で実際に収集された加速度データを、標準速度で走行していたとしたら得られたであろう加速度データに変換することを意味する。標準速度として、例えば走行中の経路の法定速度、または法定速度よりやや遅い速度を採用するとよい。変換対象の加速度データとして、例えば、加速度データの時間波形を特徴づける特徴量とするとよい。加速度データの時間波形を特徴づける特徴量として、例えば時間波形に現れたピークの高さ、時間波形の周波数成分の分布等を用いるとよい。
【0075】
(23)前記処理手段が、前記データベースに蓄積された前記画像データに基づいて路面の修繕が必要な度合いを判定し、判定結果を、前記画像データ、前記加速度データ、前記位置データ、及び前記収集日時データと関連付けて前記データベースに登録する機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0076】
修繕が必要な度合いを、人手を介することなく判定することができるため、膨大な量の画像データに対応することが可能になる。路面の修繕が必要な度合いは、例えば人工知能(AI)を用いて行うとよい。
【0077】
(24)前記処理手段が、路面の修繕が必要な地点を特定する情報を、修繕の必用な度合いを認識可能に前記表示手段に表示させる機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0078】
表示手段に表示された情報を見た道路管理者は、複数の修繕の必要な地点から緊急度の高い地点を容易に見つけ出すことができる。例えば、修繕が必要な地点の道路名、住所、及び位置情報を、修繕の必要な度合いで並べ替えて一覧表形式で表示手段に表示するとよい。また、表示手段に地図を表示し、修繕の必要な地点に、修繕の必要な度合いごとに異なるアイコンを表示してもよい。または、アイコンに代えて、道路のうち修繕の必要な地点に、修繕の必要な度合いごとに異なる色を付してもよい。
【0079】
(25)前記処理手段が、路面の修繕が必要な地点の位置情報を、修繕による道路のライフサイクルコストの低下幅の大きさを識別可能に前記表示手段に表示させる機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0080】
道路管理者は、ライフサイクルコストの低下幅の大きな修繕箇所を容易に見つけ出すことができる。例えば、修繕が必要な地点の道路名、住所、及び位置情報を、ライフサイクルコストの低下幅の大きさで並べ替えて一覧表形式で表示手段に表示するとよい。また、
表示手段に地図を表示し、修繕の必要な地点に、ライフサイクルコストの低下幅の大きさに応じたアイコンを表示してもよい。または、アイコンに代えて、道路のうち修繕の必要な地点に、ライフサイクルコストの低下幅の大きさに応じた色を付してもよい。
【0081】
(26)前記処理手段が、前記データベースに蓄積された前記画像データの解析を行うことにより、道路の付属物の修繕の要否を判定する道路状態評価支援装置とするとよい。
【0082】
人手を介することなく、道路の付属物の修繕の要否を判定することができる。これにより、膨大な量の画像データを処理することが可能になる。道路の付属物の修繕対象として、例えば道路標示の劣化、雨上がり後における道路の排水機能の不良、道路標識やガードレール等の道路付属物の腐食や変形、土砂崩れの兆候、街路樹による弊害等を取り上げるとよい。
【0083】
(27)前記処理手段が、同一の地点において異なる複数の日時に収集された複数の前記画像データの差分に基づいて道路の付属物の修繕の要否を判定する機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0084】
画像データの差分により、道路付属物の劣化の進行速度を認識することができる。道路付属物の劣化の進行速度を考慮することにより、道路付属物の修繕の要否を、より適切に判定することができる。例えば、道路標示の色が薄くなる速さ、街路樹の成長の速さ等に基づいて、修繕の要否を、より適切に判定することが可能になる。
【0085】
(28)さらに、通信手段を有し、前記処理手段が、前記通信手段を介して複数のデータ収集装置で収集された前記画像データ、前記加速度データ、前記位置データ、前記収集日時データ、及びデータ収集装置を識別する識別データを受信し、これらのデータを関連付けて前記データベースに蓄積する機能を持つ道路状態評価支援装置とするとよい。
【0086】
通信手段を介してデータを受信するため、データを入手するための手間を省くことができる。また、複数のデータ収集装置からデータを受信するため、1つのデータ収集装置からデータを入手する場合に比べて、より大量のデータを集めることができる。例えば、道路管理業者の作業車両のみらならず、道路管理業者の社員の個人所有の車両等にデータ収集装置を搭載して、これらのデータを入手するとよい。不特定の一般車両にデータ収集装置を搭載してこれらのデータを入手するようにするとさらによい。
【0087】
(29)前記処理手段が、データ収集装置ごとに、受信した前記画像データ及び前記加速度データに応じてポイントを付して、ポイントの累積値を記憶する道路状態評価支援装置とするとよい。
【0088】
ポイントに応じて、データ収集装置の所有者に特典を提供することが可能になる。データ収集装置を搭載した車両の所有者にとっては、より多くのデータを道路状態評価支援装置に送信する動機づけになる。データ収集装置を搭載していない車両の所有者にとっては、データ収集装置を搭載しようとする動機づけになる。これにより、より大量のデータを入手することが可能になる。特典として、例えば有料道路通行料の割引、道の駅での商品購入時の割引等とするとよい。
【0089】
(30)本明細書は、上記(1)から(15)までのいずれかに記載のデータ収集装置としての機能を携帯端末に実現させるためのプログラムの発明を開示する。
【0090】
(31)本明細書は、上記(16)から(29)までのいずれかに記載の道路状態評価支援装置としての機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの発明を開示する。
【0091】
さらに、本明細書は、上記(1)から(15)までのいずれかに記載のデータ収集装置と、上記(16)から(29)までのいずれかに記載の道路状態評価支援装置とを含む道路状態評価支援システムの発明を開示する。さらに、本明細書は、上記(1)から(15)までのいずれかに記載のデータ収集装置の機能と、上記(16)から(29)までのいずれかに記載の道路状態評価支援装置の機能の両方を持つ機器の発明を開示する。このような機器は、例えば、車両に着脱可能に搭載されるタブレット端末等によって実現するとよい。
【発明の効果】
【0092】
例えば、計測場所に予めレーザ測距装置等の計測装置を設置することなく、道路または道路付属物等の修繕要否等の判定を行う基礎となるデータ等を収集することができる。例えば、収集されたこれらのデータは、修繕要否等の判定を行うための有益な情報となる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】
図1Aは、第1の実施例によるデータ収集装置を斜め後方から見た斜視図であり、
図1Bは、車両に搭載された状態のデータ収集装置、フロントガラス、ダッシュボード等を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施例によるデータ収集装置1のブロック図である。
【
図3】
図3Aは、データ収集装置で収集される画像データ以外の各種センシングデータの構成の一例を表形式で示す図であり、
図3Bは、画像データの構成を表形式で示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施例によるデータ収集装置のコントローラが実行するデータ記録処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、加速度データの時間波形、第1の判定閾値At1、第2の判定閾値At2、及び記録すべき画像データの一例を示す図である。
【
図6】
図6Aは、第1の実施例の第2の変形例によるデータ収集装置のコントローラが実行する処理のフローチャートであり、
図6Bは、カメラで取得された画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7Aは、第1の実施例の第3の変形例によるデータ収集装置のコントローラが実行する処理のフローチャートであり、
図7B、
図7C、及び
図7Dは、それぞれアスファルト舗装、コンクリート舗装、及びブロック舗装の路面を走行中に取得した画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8Aは、第1の実施例の第4の変形例によるデータ収集装置のコントローラが実行する処理のフローチャートであり、
図8Bは、段差舗装がなされた路面を走行するときの画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9Aは、第1の実施例の第5の変形例によるデータ収集装置のコントローラが実行する処理のフローチャートであり、
図9Bは、データ収集区間の一例を示す図であり、
図9Cは、データ収集地点の一例を示す図である。
【
図10】
図10Aは、第1の実施例の第6の変形例によるデータ収集装置のコントローラが実行する処理のフローチャートであり、
図10Bは、判定基礎データを記録する経路の一例を示す図である。
【
図11】
図11Aは、第1の実施例の第7の変形例によるデータ収集装置のコントローラが実行する処理のフローチャートであり、
図11B及び
図11Cは、コントローラが路面または道路付属物の修繕が必要であると判定した画像の例を示す図面である。
【
図12】
図12は、第2の実施例による道路状態評価支援装置のブロック図である。
【
図13】
図13は、第2の実施例による道路状態評価支援装置のディスプレイに表示された画像の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施例による道路状態評価支援装置のディスプレイに表示された評価値の経時変化の画像の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、加速度データの時間波形と、その時間波形が取得された日時及び位置との関係を示す図である。
【
図16】
図16Aは、コントローラがディスプレイに表示させたメインメニュー画面の例を示す図であり、
図16Bは、第2の実施例の第1の変形例による道路状態評価支援装置のコントローラがディスプレイに表示させた画像の一例を示す図である。
【
図17】
図17Aは、第2の実施例の第2の変形例による道路状態評価支援装置に蓄積される判定基礎データのデータ構造の一例を示す図であり、
図17Bは、車両種別と換算係数との対応関係を示す図である。
【
図18】
図18は、第2の実施例の第3の変形例による道路状態評価支援装置で適用される車両種別、走行速度、及び換算係数の対応関係の一例を示す図である。
【
図19】
図19Aは、第2の実施例の第4の変形例による道路状態評価支援装置のディスプレイに表示された画像の一例を示す図であり、
【
図20】
図20は、修繕が必要と判定された地点を表示した画像の他の例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2の実施例の第5の変形例による道路状態評価支援装置のディスプレイに表示された画像の一例を示す図である。
【
図22】
図22A~
図22Cは、同一の地点において、異なる複数の日時に収集された画像データの例を示す図である。
【
図23】
図23Aは、第2の実施例の第7の変形例による道路状態評価支援装置、及びデータ収集装置1を搭載した複数の車両を含むシステムの概略図であり、
図23Bは、データ収集装置ごとに付与されたポイントの累積値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
[第1の実施例]
図1A~
図5を参照して、第1の実施例によるデータ収集装置について説明する。
【0095】
図1Aは、第1の実施例によるデータ収集装置を斜め後方から見た斜視図である。車両に搭載されて使用されるデータ収集装置1の筐体の後方(車室内側)を向く面にディスプレイ11及び複数の操作ボタン12が配置されている。データ収集装置1の筐体の側面にSDカード挿入口10が配置されている。筐体の上面にジョイントレール13が設けられている。
図1Aには現れていないが、筐体の前面にカメラのレンズが取り付けられている。
図1Aに現れていない方の側面にDCジャックが配置されており、底面にスピーカが配置されている。
【0096】
レンズを含むカメラは、例えば車両の前方を撮影する。DCジャックは、電源ケーブルを介して車両のDC電源に接続される。運転者等のユーザが、SDカード挿入口10を通してSDカードをデータ収集装置1に装着する。スピーカは、音や音声を出力する。ジョイントレール13に、データ収集装置1を車両に搭載するためのジョイントが取り付けられる。ディスプレイ11は種々の画像を表示する。ユーザは、操作ボタン12を操作してデータ収集装置1に種々の指令を入力する。
【0097】
図1Bは、車両に搭載された状態のデータ収集装置1、フロントガラス3、ダッシュボード等を示す図である。データ収集装置1は、車両のフロントガラス3の上部であって左右方向中央付近のルームミラー4に隣接する助手席側の位置に取り付けられている。データ収集装置1は、両面テープ等の取り付け部材によりフロントガラス3に貼りつけて固定されている。データ収集装置1のDCジャックが電源ケーブル6を介してシガーソケット5に接続されている。車両のアクセサリ電源がオンにされると、シガーソケット5からデータ収集装置1に電力が供給される。車両が路面の凹凸を通過して車両に加速度(または衝撃)が加わると、データ収集装置1にも同様の加速度(または衝撃)が加わる。
【0098】
図2は、第1の実施例によるデータ収集装置1のブロック図である。処理手段としてのコントローラ20が、中央処理ユニット(CPU)20a、リードオンリメモリ(ROM)20b、及びランダムアクセスメモリ(RAM)20c等を含む。ROM20bに、オペレーティングシステム(OS)、データ収集装置1の各種機能を実現するためのプログラム等が格納されている。CPU20aがROM20bに格納されているプログラムを実行することにより、データ収集装置1の種々の機能が実現される。RAM20cは、CPU20aがプログラムを実行する際に、一時的な記憶領域として利用される。
【0099】
スピーカ16及びディスプレイ11が、ユーザに種々の情報を知らせるための通知手段として機能する。コントローラ20は、スピーカ16から音や音声による警報や種々の情報を発出させる。さらに、コントローラ20は、ディスプレイ11に種々の情報を画像で表示させる。操作ボタン12は、ユーザがデータ収集装置1に対して種々の指令を与える入力手段として機能する。
【0100】
種々のセンサで取得されたセンシングデータがコントローラ20に入力される。センサとして、GPS受信機14、カメラ15、加速度センサ17、ジャイロセンサ18が準備されている。
【0101】
GPS受信機14は、GPS衛星から受信した信号に基づいて車両の現在位置を示す位置データを算出する。さらに、GPS受信機14は、GPS衛星から受信した信号に基づいて、現在時刻を算出する。コントローラ20は、GPS受信機14から車両の現在位置を示す位置データ及び現在の日時を示す日時データを入手することができる。なお、コントローラ20は内部にタイマを有しており、内部のタイマから現在日時を取得することもできる。
【0102】
カメラ15は車両の周囲を撮影し、周囲の画像データを取得する。例えば、カメラ15は車両の前方を撮影するようにするとよい。カメラ15として、例えばCMOSカメラ、CCDカメラ等の撮像装置を用いるとよい。
【0103】
加速度センサ17は、車両に加わる前後方向(X軸方向)、左右方向(Y軸方向)、及び上下方向(Z軸方向)の加速度を計測し、加速度データを取得する。ジャイロセンサ18は、車両の三軸方向、すなわち上下方向を軸とした回転方向(ヨーイング方向)、左右方向を軸とした回転方向(ピッチング方向)、及び前後方向を軸とした回転方向(ローリング方向)の角速度を計測し、角速度データを取得する。コントローラ20は、加速度データ及び角速度データを一定のサンプリング周期、例えば10msのサプリング周期で取り込む。
【0104】
SDカードリーダ19にSDカード挿入口10(
図1A)を通してSDカード22が装着される。SDカードリーダ19は、コントローラ20からの制御に基づいて、装着されているSDカード22へのデータの書き込み処理、またはSDカード22からのデータの読み込み処理を実行する。SDカード22に代えて、その他のリムーバルブル記録媒体を用い、SDカードリーダ19に代えて、リムーバブル記録媒体へのデータの読み書きを行うカードリーダを用いてもよい。
【0105】
通信回路21が、コントローラ20からの制御により、データ通信ネットワーク40を介して他の機器とのデータ通信を行う。通信回路21として、例えばWiFi規格、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信の規格、LTE、4G等の移動通信システムの規格等に準拠した通信回路を用いるとよい。近距離無線通信の規格は、例えば車両が停止している状態において車両外部の機器との通信に適用することができる。または、車両内の機器、例えば容量の大きなストレージを持つパソコン等との通信に適用すること
ができる。移動通信システムの規格は、例えば、より広範囲の領域内で移動する車両と外部機器との通信に適用することができる。
【0106】
データ収集装置1は、GPS受信機14、カメラ15、加速度センサ17、及びジャイロセンサ18で取得された位置データ、画像データ、加速度データ、角速度データ等のセンシングデータをSDカード22に記録する機能を有する。
【0107】
次に、データ収集装置1のデータ記録機能について説明する。
図3Aは、データ収集装置1で収集される画像データ以外の各種センシングデータの構成の一例を表形式で示す図である。コントローラ20は、日時データ、走行速度データ、位置データ、加速度データ、及び角速度データを、一定のサンプリング周期で収集する。日時データは、日付情報及び時刻情報を含む。コントローラ20は、GPS受信機14または内部タイマから日時データを取得することができる。
【0108】
走行速度データは、車両の走行速度を表している。コントローラ20は、車両の電子制御ユニット(ECU)からOBDコネクタを介して走行速度データを取得する。位置データは、緯度情報及び経度情報で構成される。加速度データは、X軸(前後方向)、Y軸(左右方向)及びZ軸(上下方向)の加速度を表す。角速度データは、X軸を回転軸とした回転方向の角速度、Y軸を回転軸とした回転方向の角速度、及びZ軸を回転軸とした回転方向の角速度を表す。
【0109】
図3Bは、画像データの構成を表形式で示す図である。コントローラ20は、カメラ15から入力された画像データを、例えばH.264、H.265等の動画圧縮規格に準拠して圧縮する。画像データは、複数のフレームFで構成されており、一部のフレームFIは、画像を取得した日時データ及び位置データを含む。日時データを含まないフレームFの画像の取得日時は、フレームFIを取得した日時と、フレームFIからのコマ数、及びフレームレートに基づいて算出することができる。
【0110】
画像データと、その他のセンシングデータとは、日時データに基づいて相互に関連付けられる。例えば、加速度データと、その加速度データを取得したときの画像データとが、日時データを介して関連付けられる。
【0111】
図3A及び
図3Bに示した日時データ、走行速度データ、位置データ、加速度データ、角加速度データ、及び画像データは、道路の修繕要否を判定する基礎となる。本明細書においてこれらのデータを判定基礎データという。
【0112】
図4は、コントローラ20が実行するデータ記録処理のフローチャートである。車両のアクセサリキーがオンにされてデータ収集装置1に電源が供給されると、コントローラ20が
図4に示した処理を開始する。処理が開始されると、コントローラ20は、判定基礎データをRAM20c内に確保されたリングバッファに常時記録する処理を開始する。
【0113】
コントローラ20は、加速度センサ17から加速度データを取得し、加速度データに基づいて衝突が発生したか否かの判定を行う(ステップST01)。例えば、計測された加速度の大きさ(絶対値)が第1の判定閾値以上になると、コントローラ20は衝突が発生したと判定する。第1の判定閾値と比較する加速度データは、例えばX軸、Y軸、及びZ軸の3つの加速度データとし、いずれか1つの軸の加速度データが第1の判定閾値以上になると、衝突が発生したと判定するとよい。
【0114】
コントローラ20は、衝突が発生したと判定すると、SDカード22の衝突イベント用の記録領域に、衝突発生時点を含む前後の期間に収集した判定基礎データを記録する処理
を開始する(ステップST03)。データを記録する期間は、例えば衝突の原因を解析するために十分な期間とするとよい。例えば、衝突発生時点から前後に1分間ずつの時間幅をもつ合計2分間の期間とするとよい。衝突発生時点より前の判定基礎データは、コントローラ20がリングバッファから読み出して、SDカード22に記録する。
【0115】
ステップST01で衝突の発生が検出されなかった場合には、コントローラ20は、路面の凹凸を通過したか否かの判定を行う(ステップST02)。例えば、計測された加速度の大きさが第1の判定閾値よりも小さい第2の判定閾値以上になると、コントローラ20は路面の凹凸を通過したと判定する。第2の判定閾値と比較する加速度データは、例えばX軸、Y軸、及びZ軸の3つの加速度データとし、いずれか1つの軸の加速度データが第2の判定閾値以上になると、路面の凹凸を通過したと判定するとよい。なお、凹凸の通過時には主として上下方向の加速度が加わるため、Z軸の加速度データのみを第2の判定閾値と比較してもよい。路面の凹凸には、例えば舗装のひび割れ、わだち掘れ、段差、ポットホール等が含まれる。
【0116】
コントローラ20は、路面の凹凸を通過したと判定すると、SDカード22の道路状態評価用の記録領域に、凹凸通過時点を含む前後の期間に収集した判定基礎データを記録する(ステップST04)。データを記録する期間は、例えば路面の凹凸の画像を記録するのに十分な期間とするとよい。例えば、凹凸の通過を検出した時点から前後に20秒間ずつの時間幅を持つ合計40秒間の期間とするとよい。
【0117】
ステップST02で凹凸の通過を検出しなかった場合、またはステップST03及びステップST04で判定基礎データの記録を終了したとき、コントローラ20は、データ収集処理を終了するか否かを判定する(ステップST05)。例えば、車両からデータ収集装置1への電源の供給が停止したら、コントローラ20は、データ収集処理を終了する。データ収集装置1は、車両からの電力供給が停止しても、データ収集停止処理を実行するための電力を供給することが可能な容量のバッテリを内蔵しており、車両からの電力供給が停止した後は、内蔵のバッテリからの電力によりデータ収集装置1が動作する。データ収集を継続する場合には、コントローラ20は、ステップST01からの処理を繰り返す。ステップST01では、コントローラ20が新たに収集した加速度データについて判定を行う。
【0118】
次に、
図5を参照してステップST03及びステップST04の判定基礎データの記録処理について説明する。
図5は、加速度データの時間波形、第1の判定閾値At1、第2の判定閾値At2、及び記録すべき画像データの一例を示す図である。第1の判定閾値At1は通常の路面の凹凸を通過したときに車両が受ける加速度の最大値よりも大きい値に設定されている。第2の判定閾値At2は、凹凸の無い通常の路面を走行しているときに車両が受ける加速度の最大値よりも大きい値に設定されている。
【0119】
車両が路面の凹凸を通過すると、加速度データの時間波形に第2の判定閾値At2よりも大きなピークP1が現れる。コントローラ20は、このピークP1を検出すると、ピークP1が現れた時点を含む前後の期間T1に取得された画像データ31及び加速度データ等をSDカード22に記録する。
【0120】
車両に衝突事故が発生すると、加速度データの時間波形に第1の判定閾値At1よりも大きなピークP2が発生する。コントローラ20は、このピークP2を検出すると、ピークP2が現れた時点を含む前後の期間T2に取得された画像データ32及び加速度データ等をSDカード22に記録する。
【0121】
次に、データ収集装置1の画像表示機能について説明する。コントローラ20は、SDカード22に記録された画像データの画像をディスプレイ11に表示させる機能を有する。例えば、ユーザが操作ボタン12を操作して、表示させたい画像を取得した日時データまたは位置データを入力すると、コントローラ20は、入力された日時データまたは位置データに対応付けられている画像データの画像をディスプレイ11に表示させる。
【0122】
さらに、コントローラ20は、SDカード22に記録された画像データ以外の判定基礎データを、数字またはグラフ形式でディスプレイ11に表示させる機能を有する。例えば、ユーザが操作ボタン12を操作して、表示させたい判定基礎データ(例えば加速度データ及び日時データ)を入力すると、コントローラ20は、入力された判定基礎データを数字またはグラフ形式でディスプレイ11に表示させる。
【0123】
次に、データ収集装置1のデータ送信機能について説明する。コントローラ20は、SDカード22に記録された判定基礎データを読み出し、通信回路21からデータ通信ネットワーク40を介して他の機器に送信する機能を有する。例えば、ユーザが操作ボタン12を操作して判定基礎データの送信を指示すると、コントローラ20は判定基礎データの送信を開始する。コントローラ20は、収集した判定基礎データをリアルタイムに他の機器に送信するようにしてもよい。
@
コントローラ20は、判定基礎データをSDカード22に記録する代わりに、通信回路21を介して車両内の機器、例えば、容量の大きなストレージを持つパソコン等に転送してもよい。判定基礎データを一旦車両内の機器に蓄積させた後、車両内の機器から携帯端末等の長距離通信が可能な装置を介して、またはデータ収集装置1のLTE、4G等の移動通信システムの規格に準拠した通信機能を利用して、外部のサーバや管理用パソコン(例えば、後述する道路状態評価支援装置)等に送信するとよい。データ収集装置1と車両内の機器との無線通信は、長距離の通信に比べて安定している。このため、車両内の機器は、SDカード22と同様に、判定基礎データをバッファリングする大容量のストレージとして利用することができる。
@
さらに、一旦SDカード22に記録した判定基礎データを、SDカード22から読み出して、通信回路21を介して車両内の機器に転送してもよい。このようにすることで、外部のサーバや管理用パソコン等との通信ができない状況下でも、SDカード22の記録容量に制約されることなく、大容量の判定基礎データを蓄積することができる。外部のサーバ等との通信が可能になった時点で、車両内の機器から携帯端末等の長距離通信が可能な装置を介して外部のサーバや管理用パソコン等に送信するとよい。
【0124】
[第1の実施例の効果]
次に、第1の実施例の優れた効果について説明する。道路管理者は、ディスプレイ11に表示させた画像を見て、画像に含まれる道路の路面の状態、及び道路付属物の形状や表面状態等を確認することができる。さらに、SDカード22をパソコン等に装着して、SDカード22に記録されている画像データやその他の判定基礎データを確認することができる。道路管理者は、これらの判定基礎データに基づいて、道路または道路付属物の修繕の要否を判定することができる。
【0125】
道路の修繕要否(補修工事が必要か否か)は、例えば、路面の段差やくぼみ等の凹凸、わだち掘れ、ひび割れ、高速道路のつなぎ目補修箇所、路面の沈下等の有無に基づいて行うとよい。路面の凹凸の有無は、例えば、路面の凹凸を通過するときに車両に加わる加速度を表す加速度データ、車両の周囲を撮影した画像データ等に基づいて行うとよい。わだち掘れやひび割れの有無は、例えば車両の前方を撮影した画像データ、路面を撮影した画像データ等に基づいて行うとよい。路面の沈下の有無は、沈下箇所を通過するときの車両
の傾きを示すデータ等を用いて行うとよい。車両の傾きは、車両の角速度から求めるとよい。
【0126】
道路付属物には、例えば転落防止柵、車道と歩道との分離柵、道路上の並木、道路標識、道路標示、道路情報表示装置、車両監視装置、共同溝等が含まれる。これらの修繕要否の判定は、車両の周囲の画像等のデータに基づいて行うとよい。
【0127】
データ収集装置1で収集する画像データは、一定のサンプリング周期で取得される複数の画像で構成するようにするとよい。このサンプリング周期は、収集された画像データに含まれる複数の画像によって、車両が走行した経路の周囲の画像を、経路に沿って途切れることなく取得できる程度の短さとするとよい。このようにすることで、画像データを取得した区間の全域において、道路及び道路付属物の劣化状態に関する情報を得ることができる。
【0128】
第1の実施例では、路面の凹凸の状況に関する情報として、画像データと、画像データ以外のデータ、例えば加速度データとが得られる。これらの性質の異なる2種類以上のデータを併用することにより、道路の修繕の要否を、より適確に判定することができる。
【0129】
第1の実施例によるデータ収集装置1は、収集された加速度データを用いて、車両が路面の凹凸を通過したときに受けた衝撃と、衝突事故によって受けた衝撃とを切り分けている。これにより、例えば、衝突時の画像記録(イベント記録)を行うドライブレコーダを、道路等の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集するデータ収集装置としても利用することができる。例えば、一般的なドライブレコーダには、加速度の大きさと衝突を検出するための第1の判定閾値とを比較する機能が備わっている。このような一般的なドライブレコーダに、加速度の大きさと路面の凹凸を検出するための第2の判定閾値とを比較する機能を追加することにより、一般的なドライブレコーダを、道路等の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集するデータ収集装置1として利用することができる。なお、加速度が第1の判定閾値以上のときには、車両に衝突が発生したと判定するとともに、路面の凹凸を通過したと判定するとよい。これにより、衝突が発生したときと同程度の大きな衝撃が車両に加わるような高低差の大きな凹凸を通過したときに、路面の凹凸を通過したと正しく判定することができる。
【0130】
このように、一般的な民生用のドライブレコーダに簡単な機能を追加することによって、道路または道路付属物の修繕要否を判定するための判定基礎データを収集する業務用のデータ収集装置1として利用することができる。このため、データ収集装置1の低コスト化を図ることが可能である。逆に、第1の実施例によるデータ収集装置1をドライブレコーダとして利用することが可能である。
【0131】
イベント記録を行う一般的なドライブレコーダにとっては、車両が路面の凹凸を通過したことにより加わる衝撃によって発生する加速度の時間波形のピークは、衝突事故の発生を検出するためには邪魔なもの(ゴミデータ)である。一般的に、路面の凹凸を通過したときに発生する加速度の時間波形のピークは、衝突事故時に発生する加速度のピークより小さい。このピークの大きさの相違を利用して、一般的なドライブレコーダは、衝突事故の発生と路面の凹凸の通過とを区別している。第1の実施例によるデータ収集装置1では、ドライブレコーダで邪魔なものとして取り扱われていた比較的小さな加速度の時間波形のピークを、路面の凹凸が発生している地点を見つけ出す(ピックアップする)ための有益な情報として取り扱うことができる。
【0132】
第1の実施例では、
図3に示したように、画像データ以外の判定基礎データと、画像データとが、データを収集した日時を示す日時データを介して関連付けられている。このた
め、画像データ以外の判定基礎データから、それに対応する画像データを抽出することができる。例えば、加速度データの波形のピークから、対応する画像データを抽出することができる。
【0133】
コントローラ20は、車両の走行中にSDカード22に記録された判定基礎データを通信回路21から外部機器に送信することができる。民生用のドライブレコーダに判定基礎データを収集する機能を搭載することにより、道路維持作業用の車両のみならず、ドライブレコーダを搭載した一般の車両から判定基礎データを集めることができる。一般の多くの車両に搭載されたドライブレコーダから、より多くの判定基礎データを集めて蓄積することにより、修繕要否の判定の精度を高めることができる。
【0134】
車速が著しく遅い場合には、車両が凹凸を通過しても第2の判定閾値At2を超えるような大きな加速度のピークは生じない。従って、車速が著しく遅い場合には凹凸の有無を判定するための有効な加速度データが得られない。有効な加速度データに基づいて凹凸の有無の判定を行うために、
図4の凹凸通過を検出する処理(ステップST02)を、車速が既定の閾値を超えてから実行するようにするとよい。
【0135】
[第1の実施例の第1の変形例]
次に、第1の実施例の第1の変形例について説明する。
第1の実施例の第1の変形例によるデータ収集装置1は、判定基礎データを収集するセンサとして、さらにマイクを有する。コントローラ20は、加速度データと、マイクで収集された音のデータとを併用して、車両が路面の凹凸を通過したか否かの判定を行う機能を有する。
【0136】
加速度データと、音の情報とを併用することにより、路面の凹凸の有無をより高精度に判定することができる。さらに、音の大きさや周波数(スペクトル)から、路面の凹凸の形状や大きさに関する情報を得ることができる。
【0137】
[第1の実施例の第2の変形例]
次に、
図6A及び
図6Bを参照して、第1の実施例の第2の変形例について説明する。
図6Aは、第1の実施例の第2の変形例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートである。以下、
図4に示した第1の実施例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートとの相違点について説明する。
【0138】
第2の変形例では、第1の実施例のステップST01とステップST02との間に、収集した画像データを解析することにより、車両が走行している区間が、路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間か否かを判定する処理(ステップST11)が追加される。走行中の区間が、路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間ではない場合、路面の凹凸の通過を検出したか否かを判定する(ステップST02)。この判定処理、及びその後の処理は第1の実施例による処理と同一である。
【0139】
走行中の区間が、路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間である場合、コントローラ20は、路面の凹凸の通過を検出したか否かを判定する処理(ステップST02)をスキップし、処理終了か否かの判定(ステップ(ST05)を行う。
【0140】
図6Bは、カメラ15(
図2)で取得された画像の一例を示す図である。道路脇に「工事中」の看板が設置されている。コントローラ20は、取得した画像データを解析して工事中の看板を検知すると、この先の道路が工事中であると認識する。工事中の区間を抜けたか否かは、画像データの路面の状況から判定することができる。コントローラ20は、
工事中の区間に差し掛かった時点から、工事中の区間を抜ける時点まで、車両が路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間を走行していると判定する。
【0141】
次に、第1の実施例の第2の変形例によるデータ収集装置1の優れた効果について説明する。
【0142】
道路の工事中の区間は、例えば道路の表層が切削されて下層路盤が露出している等の理由により、路面に凹凸が発生している。この凹凸は、路面の劣化以外の要因で発生しているものであり、データ収集装置1がこの凹凸を検出したとしても、修繕要否の判定を行う必要はない。第2の変形例では、修繕要否の判定を行う必要がない凹凸を検出対象から除外することにより、凹凸を過剰に検出してしまうことを抑制することができる。その結果、不要な判定基礎データによってSDカード22の記録容量が消費されることを抑制することができる。記録される全データ量が少なくなるため、記録されたデータに基づいて修繕すべき凹凸を判定する際の解析すべきデータ量が少なくなる。その結果、解析に必要となる処理時間を短縮することが可能になる。
【0143】
路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間として、
図6Bに示したように、例えば工事中であることにより発生している凹凸が発生している区間とするとよい。その他に、開削工事を行った場所の継ぎ目部分の段差が発生している区間、マンホールの縁による段差、橋梁の継ぎ目部分の段差等が存在する区間を含めてもよい。開削工事を行った場所の継ぎ目、マンホールの縁、橋梁の継ぎ目等は、画像データを解析することにより検知するとよい。
【0144】
図6Aに示した第3の変形例では、コントローラ20が、路面の劣化以外の要因で凹凸が発生している区間を走行していると判定した場合に、凹凸の検出処理をスキップしたが、凹凸の検出処理を実行し、判定基礎データを記録する処理(ステップST04)をスキップしてもよい。
【0145】
[第1の実施例の第3の変形例]
次に、
図7A~
図7Dを参照して、第1の実施例の第3の変形例について説明する。
図7Aは、第1の実施例の第3の変形例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートである。データ収集装置1に電源が供給されると、コントローラ20は、カメラ15(
図2)で取得された画像データを解析することにより、現在走行中の路面の種別を判定する(ステップST21)。コントローラ20は、路面の種別に応じて、路面の凹凸を検出するための第2の判定閾値At2(
図5)を変える。
【0146】
路面の種別には、例えばアスファルト舗装、コンクリート舗装、及びブロック舗装が含まれる。コントローラ20は、路面の種別がアスファルト舗装であると判定した場合には、第2の判定閾値At2をアスファルト舗装用の値に設定し(ステップST22)、路面の種別がコンクリート舗装であると判定した場合には、第2の判定閾値At2をコンクリート舗装用の値に設定し(ステップST23)、路面の種別がブロック舗装であると判定した場合には、第2の判定閾値At2をブロック舗装用の値に設定する(ステップST24)。
【0147】
第2の判定閾値At2を設定した後、コントローラ20は処理を終了するか否かを判定する(ステップST25)。例えば、データ収集装置1への電源の供給が停止されるとコントローラ20は処理を停止する。処理を継続する場合には、コントローラ20は、ステップST21からの処理を繰り返す。この繰り返し処理は、例えば、一定の周期、例えば1秒周期で実行するとよい。
【0148】
図7B、
図7C、及び
図7Dは、それぞれアスファルト舗装、コンクリート舗装、及びブロック舗装の路面を走行中に取得した画像の一例を示す図である。コンクリート舗装の路面には、
図7Cに示すように、例えば5m~10m間隔で幅1cm程度の継ぎ目が存在する。ブロック舗装の路面には、
図7Dに示すように、例えば敷き詰められた複数のブロックからなる独特のパターンが現れる。アスファルト舗装の路面には、
図7Bに示すように、継ぎ目や独特のパターンは現れない。コントローラ20は、画像解析によって継ぎ目や独特のパターンの有無を検出することにより、路面の種別を判定することができる。
【0149】
次に、第1の実施例の第3の変形例の優れた効果について説明する。
車両が受ける加速度(衝撃)は、車両が走行している路面の種別に依存する。路面の種別に応じて第2の判定閾値At2を変えることにより、路面の種別に応じて適切に凹凸の有無の判定を行なうことができる。例えば、ブロック舗装の路面を走行中には、ブロックによる独特のパターンによる衝撃が継続して車両に加わる。この独特のパターンによる衝撃の大きさを、凹凸検出の対象から除外するように、第2の判定閾値At2を設定するとよい。路面がコンクリート舗装の場合には、継ぎ目により車両に加わる衝撃の大きさを、凹凸検出の対象から除外するように、第2の判定閾値At2を設定するとよい。このように第2の判定閾値At2を設定することにより、修繕対象とならない凹凸が過度に検出されてしまうことを防止することができる。
【0150】
第1の実施例の第3の変形例では、路面の種別によって第2の判定閾値At2を異ならせたが、その他に、道路種別、例えば一般道と高速道路とで第2の判定閾値At2を異ならせてもよい。このようにすることで、一般道と高速道路とで、より適切に凹凸の有無を判定することが可能になる。また、走行している道路の種別に応じて、車両の走行速度が閾値を超えたら判定基礎データの収集を行うようにするとよい。
【0151】
路面の種別を画像解析によって判定する方法に代えて、予め道路ごとの路面の種別をSDカード22等に記憶させておいてもよい。コントローラ20は、車両の現在地点と、予め記憶されている道路ごとの路面の種別との関係から、現在走行している道路の路面の種別を特定することができる。
【0152】
[第1の実施例の第4の変形例]
次に、
図8A~
図8Bを参照して、第1の実施例の第4の変形例について説明する。
図8Aは、第1の実施例の第4の変形例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートである。以下、
図4に示した第1の実施例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートとの相違点について説明する。
【0153】
第4の変形例では、ステップST01とステップST02との間に、コントローラ20が、カメラ15(
図2)で取得された画像データを解析することにより、路面に意図的に設けられた段差舗装がなされているか否かを判定する(ステップST31)。路面に段差舗装がなされていると判定した場合には、コントローラ20は、凹凸の検出処理(ステップST02)をスキップし、処理終了か否かの判定(ステップST05)を行う。路面に段差舗装がなされていないと判定した場合には、コントローラ20は、凹凸を検出する処理(ステップST02)を実行する。
【0154】
図8Bは、段差舗装がなされた路面を走行するときの画像の一例を示す図である。意図的に設けられた段差舗装の例として、走行する車両の運転手に音や振動を与えることによって走行速度の抑制や注意喚起を図るためのものが挙げられる。段差舗装は、例えば、舗装表面に樹脂系接着剤を用いてセラミック等の骨材を塗布することにより行われる。
図8Bに示すように、骨材が塗布された領域94が進行方向に周期的に配置されている。コン
トローラ20は、画像データから骨材が塗布された領域94を検出することにより、路面に意図的に設けられた段差舗装がなされているか否かを判定することができる。
【0155】
第3の変形例では、意図的に設けられた段差舗装がなされている地点が、修繕すべき段差が発生している地点の候補として上がってしまうことを防止することができる。
【0156】
意図的に設けられた段差舗装がなされている地点を特定する情報を、予めSDカード22等に登録しておいてもよい。コントローラ20は、車両が、予め登録されている意図的に設けられた段差舗装がなされている地点を通過するときに、凹凸の検出処理(ステップST02)をスキップするとよい。
【0157】
パソコン等の外部機器に画像データの画像を表示させ、ユーザが画像を見ながら凹凸の検出処理(ステップST02)をスキップする区間を指定できるようにするとよい。例えば、凹凸の検出処理(ステップST02)をスキップする区間の開始地点と終了地点とを、ポインティングデバイスを用いて画像上で指定するようにするとよい。
【0158】
[第1の実施例の第5の変形例]
次に、
図9A~
図9Cを参照して、第1の実施例の第5の変形例について説明する。
第1の実施例の第5の変形例では、コントローラ20が、道路または道路付属物の修繕要否を判定する基礎となる判定基礎データを収集すべき場所を特定する収集位置データを記憶している。収集位置データは、例えば、コントローラ20が通信回路21(
図2)を介して外部機器から受信することにより取得するとよい。または、コントローラ20が、SDカード22に記録されている収集位置データを読み出すことにより取得してもよい。コントローラ20は、取得した収集位置データをRAM20c(
図2)に格納する。
【0159】
収集位置データは、判定基礎データを収集すべき地点(データ収集地点)を特定する形式のデータ、及び判定基礎データを収集すべき区間(データ収集区間)の始点と終点とを特定する形式のデータの少なくとも一方を含む。コントローラ20は、周期的に車両の現在位置がデータ収集地点の近傍か否かの判定、及びデータ収集区間内か否かの判定を行う。車両の現在位置がデータ収集地点の近傍、またはデータ収集区間内である場合、コントローラ20は、現在位置が判定基礎データを収集すべき場所であることを示すフラグ(データ収集フラグ)をセットする。車両の現在位置がデータ収集地点の近傍ではなく、かつデータ収集区間内でもない場合、コントローラ20は、データ収集フラグをリセットする。
【0160】
図9Aは、第1の実施例の第5の変形例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートである。以下、
図4に示した第1の実施例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートとの相違点について説明する。
【0161】
第5の変形例では、
図4のステップST02の処理の代わりに、コントローラ20は、車両の現在位置が判定基礎データを収集すべき場所であるか否かを判定する(ステップST41)。例えば、データ収集フラグがセットされている場合には、コントローラ20は、車両の現在位置が判定基礎データを収集すべき場所であると判定し、データ収集フラグがリセットされている場合には、車両の現在位置が判定基礎データを収集すべき場所ではないと判定する。
【0162】
車両の現在位置が判定基礎データを収集すべき場所であると判定した場合、コントローラ20は、SDカード22の道路状態評価用の記録領域に、判定基礎データを記録する(ステップST42)。その後、処理を終了するか否かの判定を行う(ステップST05)
。車両の現在位置が判定基礎データを収集すべき場所ではないと判定した場合には、コントローラ20は、判定基礎データを記録する処理をスキップし、処理を終了するか否かの判定を行う(ステップST05)。
【0163】
図9Bは、データ収集区間の一例を示す図である。
図9Bにおいて、データ収集区間80を太い実線で示す。車両が車両基地83から出発して、予め決められたデータ収集区間80を含む経路を走行した後、車両基地に戻る。車両がデータ収集区間80の始点81に到達すると、コントローラ20は、データ収集フラグをセットし、終点82に到達するとデータ収集フラグをリセットする。これにより、車両がデータ収集区間80を走行している期間、判定基礎データがSDカード22に常時記録される。
【0164】
図9Cは、データ収集地点の一例を示す図である。少なくとも1つのデータ収集地点85が予め設定されている。車両が車両基地83を出発し、データ収集地点85を通過した後、車両基地83に戻る。車両がデータ収集地点85の近傍領域86(
図9Cにおいて太い実線で示した部分)に位置するとき、コントローラ20は、データ収集フラグをセットする。このため、コントローラ20は、データ収集地点85の近傍領域86において判定基礎データをSDカード22に記録する。
【0165】
次に、第1の実施例の第5の変形例の優れた効果について説明する。
第1の実施例の第5の変形例では、判定基礎データを収集すべき場所では、加速度データのピークの有無にかかわらず判定基礎データをSDカード22に記録する。このため、加速度データに顕著なピークが現れないような路面の劣化が生じている場合に、劣化が生じている地点の画像データを記録することができる。路面の劣化の有無の判定は、画像データを画面に表示させて道路管理者が画像を目視して行うとよい。また、画像解析ソフトを用いて画像解析を行うことにより、路面の劣化の有無を自動判定するようにしてもよい。また、加速度データの大きさに基づいて、路面の凹凸の有無を判定してもよい。
【0166】
また、判定基礎データを収集すべき場所で判定基礎データをSDカード22に記録し、その他の場所では判定基礎データをSDカード22に記録しない。このため、車両が走行した全ての経路で判定基礎データをSDカード22に記録する場合に比べて、SDカード22のメモリ空間を消費する量を少なくすることができる。さらに、収集された判定基礎データを解析する際に、解析対象となる判定基礎データのデータ量が少なくなるため、解析処理に要する時間を短縮することができる。
【0167】
データ収集地点85(
図9C)として、路面の劣化が観測されるが修繕が直ちに必要な程度ではない地点を登録しておくとよい。この地点の判定基礎データを定期的に収集することにより、劣化の進み具合を継続して観測することができる。
【0168】
データ収集地点85(
図9C)の近傍領域86は、GPS受信機14(
図2)により求められる位置の誤差、及び車両の現在位置とカメラ15で撮影される路面の位置との差を考慮して、データ収集地点85の路面を撮影することができるように定義するとよい。
【0169】
コントローラ20は、車両の現在位置とデータ収集地点85との距離が基準距離以下になると、車両がデータ収集地点85に近づいたことを運転者に報知する機能を持つとよい。車両の運転手は、車両がデータ収集地点85に近づいたことを知ることができる。これにより、判定基礎データの収集のための準備に取り掛かることができる。
【0170】
さらに、コントローラ20は、データ収集地点85を通過するときの走行速度の標準値を記憶しており、車両がデータ収集地点85に近づいたことを報知するとともに、車両の運転者に、標準値の走行速度で走行するように促す機能を持つとよい。車両の運転手は、
データ収集地点85を走行する前に、標準値で走行する必要があることに気付くことができる。これにより、標準値から大きく外れてデータ収集地点85を走行してしまい、収集された判定基礎データが有効に利用できなくなってしまう事態の発生を抑制することができる。
【0171】
車両がデータ収集地点85に近づいたこと、及び走行速度の標準値は、例えば、スピーカ16から音声を出力させるようにするとよい。これにより、運転者は、視線を逸らすことなく報知された情報に気付くことができる。
【0172】
[第1の実施例の第6の変形例]
次に、
図10A及び
図10Bを参照して、第1の実施例の第6の変形例について説明する。
【0173】
第1の実施例では、データ収集装置1は、路面の凹凸を検出したことをトリガとして、判定基礎データをSDカード22に記録した(
図4のステップST04)。第1の実施例の第5の変形例では、判定基礎データを収集すべき場所においてのみ判定基礎データをSDカード22に記録した(
図9のステップST42)。第6の変形例では、データ収集装置1が、判定基礎データを常時記録する機能を有する。
【0174】
判定基礎データを常時記録するモードを「常時記録モード」といい、凹凸を検出した時点で判定基礎データを記録するモードを「イベント記録モード」ということとする。コントローラ20は、常時記録モード及びイベント記録モードのうち一方を既定のモードとして記憶している。ユーザがモード切り替えの操作を行わない場合には、データ収集装置1は、規定のモードで動作する。ユーザが操作ボタン12(
図1、
図2)を操作して既定のモードとは異なるモードを選択すると、データ収集装置1は、ユーザによって選択されたモードで動作する。
【0175】
図10Aは、第1の実施例の第6の変形例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートである。以下、
図4に示した第1の実施例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理との相違点について説明する。
【0176】
第6の変形例では、ステップST01とステップST02との間に、コントローラ20が現時点のモードを判定する(ステップST51)。現時点のモードが常時記録モードである場合には、コントローラ20は、判定基礎データをSDカード22の道路状態評価用の記録領域に記録する(ステップST04)。現時点のモードがイベント記録モードである場合には、コントローラ20は、凹凸の検出処理(ステップST02)を実行する。
【0177】
図10Bは、判定基礎データを記録する経路の一例を示す図である。車両が車両基地83を出発して経路87を走行した後、車両基地83に戻る。第6の変形例では、常時記録モードが選択されている場合、車両基地83を出発してから戻るまでに走行した経路の全区間において、判定基礎データを記録する。
【0178】
次に、第6の変形例の優れた効果について説明する。データ収集装置1を常時記録モードに設定しておくことにより、車両が走行した全ての経路について、道路または道路付属物の修繕の要否を判定するための判定基礎データを収集することができる。これにより、より広範なエリアで判定基礎データが収集される。道路や道路付属物に異常が見つかった地点において、異常が発見されていない過去の時点に収集された判定基礎データが蓄積されている場合には、過去の時点に収集された判定基礎データを併用して、異常の発生時期や発生原因等を分析することが可能である。
【0179】
常時記録する期間として、例えば、車両のアクセサリキーをオンにした時点からオフにした時点までの期間とするとよい。
【0180】
[第1の実施例の第7の変形例]
次に、
図11A~
図11Cを参照して、第1の実施例の第7の変形例について説明する。
【0181】
図11Aは、第1の実施例の第7の変形例によるデータ収集装置1のコントローラ20が実行する処理のフローチャートである。この処理は、例えば
図4に示した第1の実施例のステップST02、ステップST03、ステップST04の各々とステップST05との間に実行する。第7の変形例では、
図4に示した第1の実施例のステップST02、ステップST03、ステップST04の後、コントローラ20がカメラ15(
図2)で取得された画像データの解析を行う(ステップST61)。例えば、画像データ中の路面の状態の解析、画像データ中の道路付属物の状態の解析を行う。コントローラ20は、解析結果に基づいて路面や道路付属物が修繕要否の判定を行う(ステップST62)。例えば、コントローラ20は、路面のひび割れ、道路標示の劣化、雨上がり後における道路の排水機能の不良、道路標識やガードレール等の道路付属物の腐食や変形、土砂崩れの兆候、街路樹による弊害等を検知する。
【0182】
コントローラ20は、路面または道路付属物の修繕が必要であると判定すると、画像データ及びその他の判定基礎データをSDカード22に記録する(ステップST63)。判定基礎データの記録後、
図4に示したフローチャートのステップST05を実行する。コントローラ20は、路面または道路付属物の修繕が必要ではないと判定すると、判定基礎データをSDカード22に記録することなく、
図4に示したフローチャートのステップST05を実行する。
【0183】
図11B及び
図11Cは、コントローラ20が路面または道路付属物の修繕が必要であると判定した画像の例を示す図面である。
図11Bに示した例では、ガードレールの一部に破断箇所90が確認される。
図11Cに示した例では、道路標識91の一部分が街路樹92で隠れて、運転手から視認できない状態になっている。
【0184】
次に、第1の実施例の第7の変形例の優れた効果について説明する。第1の実施例の第7の変形例では、走行中に取得した全ての画像を道路管理者が見て、修繕の必要な箇所を見つけ出す場合に比べて、道路管理者が見るべき画像の量が少なくてすむ。このため、道路管理者による画像のチェック作業に掛かる負担を軽減することができる。また、人間の目視による異常箇所の見逃しがあった場合にも、コントローラ20が修繕必要箇所を検出することによって、修繕必要箇所の見逃しを少なくすることができる。
【0185】
[第1の実施例の第8の変形例]
次に、第1の実施例の第8の変形例について説明する。
第1の実施例では、データ収集装置1に1つのカメラ15(
図2)が搭載されている。第8の変形例では、カメラ15の他に、2台目のカメラが搭載されている。2台目のカメラは、1台目のカメラ15が撮影する方向とは異なる方向を撮影する。例えば、1台目のカメラ15は車両の前方を撮影し、2台目のカメラは車両直下の路面を撮影する。
【0186】
コントローラ20は、第1の実施例のステップST03及びステップST04(
図4)において、1台目のカメラ15で取得された画像データに加えて2台目のカメラで取得された画像データをSDカード22に記録する。
【0187】
次に、第1の実施例の第8の変形例の優れた効果について説明する。第8の実施例では
、車両の前方のみならず、車両直下の路面を撮影することができる。SDカード22に記録された車両直下の路面の画像データに基づいて、路面の状態をより詳細に観察することが可能になる。
【0188】
2台目のカメラが車両の後方を撮影するようにしてもよい。このようにすると、1台目のカメラ15と2台目のカメラとにより、道路付属物を異なる方向から見た画像を得ることができる。これにより、道路付属物の修繕要否の判定精度を高めることができる。
【0189】
[第2の実施例]
次に、
図12~
図15を参照して、第2の実施例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0190】
図12は、第2の実施例による道路状態評価支援装置50のブロック図である。道路状態評価支援装置50は、コントローラ60、ディスプレイ61、入力装置62、SDカードリーダ63、通信装置64、データベース65、及び外部記憶装置66を含む。処理手段としてのコントローラ60が、中央処理ユニット(CPU)60a、及びランダムアクセスメモリ(RAM)60c等を含む。外部記憶装置66に、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラム等の種々のプログラムが格納されている。CPU60aが外部記憶装置66に格納されているプログラムをRAM60cに転送して実行することにより、道路状態評価支援装置50の種々の機能を実現する。さらに、RAM60cは、CPU60aがプログラムを実行する際に、一時的な記憶領域として利用される。
【0191】
データ収集装置1(
図1、
図2)によって収集された判定基礎データが記録されたSDカード22がSDカードリーダ63に装着される。コントローラ60は、SDカード22に記録された判定基礎データを読み取り、データベース65に蓄積する機能を有する。さらに、コントローラ60は、データ収集装置1によって収集され、データ通信ネットワーク40を通して通信装置64で受信された判定基礎データをデータベース65に蓄積する機能を有する。データベース65には、
図3Aに示した日時データ、走行速度データ、位置データ、加速度データ、角速度データ、及び画像データが相互に関連付けられて蓄積されている。
【0192】
コントローラ60は、ユーザにコマンドの入力を促すダイアログをディスプレイ61に表示させる。道路状態評価支援装置50のユーザ、例えば道路管理者は、ディスプレイ61に表示されたダイアログを見て、入力装置62を操作してコントローラ60に種々のコマンドを与える。コントローラ60は、ユーザによって与えられたコマンドに対する処理を実行し、処理結果をディスプレイ61に表示させる。
【0193】
次に、道路状態評価支援装置50が実行する処理について説明する。
ユーザが、特定の地点の加速度データ及び画像データを表示させる操作を行うと、コントローラ60は、特定の地点で異なる複数の日時に取得された画像データの画像を時系列にディスプレイ61に表示させる。
【0194】
図13は、ディスプレイ61に表示された画像の一例を示す図である。コントローラ60は、ユーザによって指定された特定の地点の画像データをデータベース65から抽出し、複数の日時にカメラ15(
図2)によって取得された画像データの画像70を、取得された日時を示す情報71とともに時系列にディスプレイ61に表示させる。表示した図形の縦方向が、時系列に対応する。
図13では、一例として、2016年7月5日10時0分7秒、同月30日11時12分47秒、同年8月26日10時15分33秒、及び同年10月8日10時43分9秒に取得された同一地点の画像70を表示した例を示している。
【0195】
さらに、コントローラ60は、表示した画像データに関連付けられた加速度データをデータベース65から抽出し、抽出した加速度データの時間波形72を、画像70との対応関係が識別できるようにディスプレイ61に表示させる。例えば、画像70の横に加速度データの時間波形72を表示させる。表示する加速度データの時間波形として、例えば、車両の上下方向の加速度データを採用するとよい。また、車両の上下方向、前後方向、及び左右方向の加速度データの時間波形を色分けして重ねて表示してもよい。表示されている画像70を取得した時点に対応する時間波形72の時間軸上の位置に、識別標識73を表示する。識別標識73として、例えば縦方向に延びる破線を用いるとよい。
【0196】
道路管理者が識別標識73を時間軸方向に移動させると、コントローラ60は、表示されている画像を、識別標識73で特定される時刻に対応する画像に切り替える。
【0197】
コントローラ60は、さらにディスプレイ61に評価値ボタン75を表示させる。ユーザが評価値ボタン75を選択すると、コントローラ60は、複数の異なる日時に特定の地点において収集された複数の加速度データの各々から、特定の地点の路面の凹凸に依存する評価値を求める。さらに、求められた評価値の経時変化をディスプレイ61に表示させる。
【0198】
評価値として、例えば、加速度データの時間波形に現れているピークの最大高さを採用するとよい。評価値として、例えば時間波形の最大振幅(ピークツーピーク)を採用してもよい。また、評価値として、例えば、ある閾値を超えた加速度の波形の平均値を採用してもよい。
【0199】
図14は、ディスプレイ61に表示された評価値の経時変化の画像の一例を示す図である。コントローラ60は、評価値の経時変化をディスプレイ61にグラフ形式で表示させる。グラフの横軸は日時を表し、縦軸は評価値を表す。過去から現時点までの評価値を実線で表示し、将来の評価値の変動予測を破線で表示している。凹凸の高低差が修繕すべき大きさになったときの評価値の値をTEと表す。コントローラ60は、評価値の値がTEとなる位置を認識可能に、例えば評価値の値がTEとなる位置に破線を表示する。
図14に示した例では、時間の経過とともに評価値が上昇している。これは、時間の経過とともに、路面の凹凸の高低差が大きくなっていることを意味する。コントローラ20は、過去の評価値の変動の傾きに基づいて将来の評価値の変動を予測する。
【0200】
次に、
図15を参照して、
図13に示した画像70及び加速度データの時間波形72を表示する処理について説明する。
【0201】
図15は、加速度データの時間波形と、その時間波形が取得された日時及び位置との関係を示す図である。ユーザが、表示すべき地点L0の位置データを入力すると、コントローラ60は、データベース65に蓄積されている位置データから、入力された特定の地点L0またはその近傍の地点で取得された加速度データを抽出する。特定の地点L0を通過した日時はt0である。抽出された加速度データの時間波形AからピークPを検出する。データベース65から、加速度のピークPが検出された日時t1に対応する画像データ(例えば、動画の1つのフレームF)を抽出し、日時t1に対応する画像データの画像70、及び加速度のピークPを含む前後の期間の時間波形72をディスプレイ61に表示させる。GPS受信機14による位置データの算出誤差等により、ピークPが現れた地点L1は、ユーザが入力した地点L0に一致するとは限らない。
【0202】
ピークPが現れた日時t1の時点のフレームFは、ピークPの原因となった凹凸の地点よりも前方の画像に対応する。ディスプレイ61に表示させる画像70がピークPの原因
となった凹凸を含むように、フレームFとして日時t1よりもやや前のものを抽出するとよい。
【0203】
[第2の実施例の効果]
道路管理者は、時系列に表示された画像70(
図13)を見て、道路または道路付属物の劣化の進み具合を確認することができる。これにより、修繕要否の判定を行うとともに、修繕が必要となる時期を予測することができる。また、表示された画像70を見て、表示された地点の劣化状態を継続して観察する必要があるか否かを判断することができる。継続して観察する必要があると判断した場合、時系列に表示された画像70は観察する頻度を決めるための有効な情報となる。
【0204】
道路管理者は、ディスプレイ61に画像を表示させる特定の地点として、例えば、加速度データに基づいて路面に凹凸が発生していると判定された地点、継続観察の対象となっている地点、種々の要因により修繕の必要があるかもしれないと予測される地点等を入力するとよい。
【0205】
道路管理者は、ディスプレイ61に表示された加速度データの時間波形を見て、その地点を通過したときに車両に加わった衝撃の大きさを特定することができる。衝撃の大きさは、路面に発生している凹凸の高低差を特定するための情報として利用することができる。時系列に表示された加速度データの時間波形から、路面に発生している凹凸等の劣化の進み具合を知ることができる。
【0206】
道路管理者が指定した特定の地点で収集された加速度データは、加速度データに関連付けられている位置データを参照して見つけ出すことができる。この位置データは、例えばGPS受信機14により取得されたものであり、種々の要因によって位置の測定誤差が発生する。このため、位置データのみからでは、異なる日時に収集された走行中の加速度データの複数の時間波形の各々が取得された位置を精度よく一致させることは困難である。
【0207】
第2の実施例では、コントローラ60が加速度データの時間波形のピークP(
図15)を検出することにより、異なる日時に収集された加速度データの複数の時間波形の各々が取得された位置を、精度よく一致させることができる。その結果、同一地点の凹凸に起因して発生した衝撃を時系列に評価することができるとともに、加速度データの収集日時に基づいて、特定の地点の画像データを精度よく抽出することができる。
【0208】
特定の地点の路面の凹凸に依存する評価値の経時変化(
図14)から、将来の劣化の進み度合いを推測することができる。推測された劣化の進み度合いから、修繕を行うべき時期を予測することができる。
【0209】
評価値の経時変化がグラフ形式(
図14)で表示されるため、道路管理者は、視覚的に評価値の劣化の速さを認識することができる。
図14のグラフに示された将来の評価値の変化は、道路または道路付属物の修繕時期を決定するための有益な情報として利用することができる。
【0210】
コントローラ60は、複数の修繕候補箇所において修繕が必要になると思われる時期を予測し、修繕工事時期が集中しないように平均化して、修繕工事の推奨時期をディスプレイ61に表示させる機能を持つとよい。このとき、コントローラ60は、道路のライフサイクルコストが全体として最小になるように、修繕工事の推奨時期を決定するとよい。
【0211】
コントローラ60は、データ収集装置1からリアルタイムに判定基礎データを受信するようにしてもよい。コントローラ60は、リアルタイムに受信した判定基礎データを解析
し、再収集が必要と判定したら、データ収集装置1に対して、再収集を促す信号を送信するとよい。例えば、凹凸が存在すると判定された地点の走行速度が規定の速度の範囲外である場合、データ収集装置1を搭載した車両の運転者に対して、規定の速度で再度走行するように促す信号を送信するようにするとよい。
【0212】
[第2の実施例の第1の変形例]
次に、
図16A及び
図16Bを参照して、第2の実施例の第1の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0213】
第2の実施例では、画像データを表示すべき特定の地点を道路管理者が指定したが、第2の実施例の第1の変形例では、コントローラ60が、凹凸発生地点を抽出する機能を有する。
【0214】
図16Aは、コントローラ60がディスプレイ61(
図12)に表示させたメインメニュー画面の例を示す図である。メニュー画面内に、凹凸地点の抽出を指示するための凹凸地点抽出ボタン76が表示されている。道路管理者は、凹凸地点抽出ボタン76を選択することにより、コントローラ60に対して凹凸地点を抽出する処理を実行させる。
【0215】
凹凸地点抽出ボタン76(
図16A)が選択されると、コントローラ60はデータベース65に蓄積されている加速度データの時間波形から、車両が路面の凹凸を通過したことを示唆する時間波形を抽出する。例えば、加速度データの時間波形のピーク値と判定閾値とを比較し、判定閾値を超えたピーク値を含む時間波形を、車両が路面の凹凸を通過したことを示唆する時間波形として抽出するとよい。
【0216】
図16Bは、コントローラ60がディスプレイ61に表示させた画像の一例を示す図である。異なる日時及び異なる位置で、凹凸を通過したことを示唆する時間波形が抽出されており、抽出された加速度の時間波形、及びその時間波形のピークに対応する日時データ及び位置データが表示されている。さらに、時系列表示を指示するための時系列表示ボタン77A、及び継続観察対象地点として登録するための詳細点検登録ボタン77Bが表示されている。
【0217】
道路管理者が、複数の加速度の時間波形のうち1つの時間波形を指定して時系列表示ボタン77Aを選択すると、コントローラ60は、指定された時間波形のピークが検出された地点で他の日時に取得された加速度データの時間波形、及び画像データ等を時系列にディスプレイ61に表示させる。表示する画像は、例えば
図13に示した画像と同様である。
【0218】
道路管理者が、複数の加速度の時間波形のうち1つの時間波形を指定して詳細点検登録ボタン77Bを選択すると、コントローラ60は、指定された時間波形のピークが現れている地点を、詳細点検対象地点として登録する。コントローラ60は、詳細点検対象地点として登録した地点を示す情報を、例えば外部記憶装置66に記憶させる。
【0219】
道路管理者が入力装置62を操作して、詳細点検対象地点の一覧を表示させる指令を入力すると、コントローラ60は、ディスプレイ61に詳細点検対象地点の情報を一覧表形式で表示させる。道路管理者が、表示された詳細点検対象地点から1つの地点を選択すると、コントローラ60は、選択された詳細点検対象地点について
図13に示した日時データ情報、画像データの画像、及び加速度データの時間波形を時系列にディスプレイ61に表示させる。
【0220】
さらに、コントローラ60は、詳細点検対象地点を特定する情報、例えば位置データを
データ収集装置1(
図1、
図2)に受け渡す機能を有する。詳細点検対象地点を特定する情報の受け渡しは、例えばSDカード22を介して行うとよい。または、データ通信ネットワーク40(
図12)を介して行ってもよい。
【0221】
詳細点検対象地点を特定する情報を取得したデータ収集装置1は、車両が詳細点検対象地点に近づくと、詳細点検対象地点に近づいたことを運転者に報知する機能を有するとよい。例えば、「1km先、詳細点検対象地点です。詳細点検を実施してください。」という音声メッセージをスピーカ16(
図2)から出力させるとよい。
【0222】
次に、第2の実施例の第1の変形例の優れた効果について説明する。
第2の実施例の第1の変形例では、データベース65に蓄積された加速度データに基づいて、人手を介することなく、路面に凹凸が存在すると思われる地点を抽出することができる。これにより、膨大な量の加速度データを処理することが可能になる。
【0223】
第2の実施例の第1の変形例では、加速度データの時間波形のピーク値に基づいて凹凸の検出を行ったが、時間波形の形状、前後左右上下の三方向の加速度の大小関係等に基づいて、車両が路面の凹凸を通過したことを示唆する時間波形を抽出してもよい。例えば、車両に急制動が加わったときには、前後方向に大きな加速度が発生する。運転者が急ハンドル操作を行った時には、左右方向に大きな加速度が発生する。これに対し、車両が路面の凹凸を通過したときには、上下方向に大きな加速度が発生する。コントローラ60は、発生する加速度の方向の相違を利用して、路面に凹凸が存在すると思われる地点を抽出するとよい。さらに、急制動、急ハンドル等に対応する加速度データの時間波形は、路面の凹凸の通過に対応する加速度データの時間波形と比べて、より緩やかに変化する。コントローラ60は、この時間波形の形状の相違を利用して、路面に凹凸が存在すると思われる地点を抽出するとよい。
【0224】
コントローラ60は、車両が路面の凹凸を通過したことを示唆する時間波形を抽出するために、加速度データ以外の情報を利用すると特によい。コントローラ60は、加速度データ以外の情報として、例えば車両の走行速度を利用するとよい。例えば、車両のドアの開閉時の衝撃により、加速度データの時間波形にピークが現れるが、このときの走行速度はほぼ0である。車両が路面の凹凸を通過したか否かの判定に、走行速度のデータを併用することにより、ドアの開閉によって発生した加速度データの時間波形のピークを検出対象から除外することができる。
【0225】
コントローラ60が、凹凸が存在すると思われる地点を検出した場合、その前後の日時において同一地点で加速度データの波形のピークが検出されない場合には、その地点を凹凸発生地点として抽出しないようにするとよい。このような地点は、例えば小石等の小さな障害物によって一時的に凹凸が発生していた箇所と考えられるからである。
【0226】
コントローラ60は、角速度データに基づいて車両の傾きを求め、路面に異常な傾斜が発生している地点を検出する機能を持つとよい。道路の地下の状態に基づいて、角速度データの解析を行う地点を求めるとよい。例えば、地下鉄工事中、地下に大きな空洞が存在するといった情報に基づいて、角速度データの解析を行う地点を決定するとよい。このように、道路の地下の状態を加味して、路面の異常な傾斜の発生を検知する処理を行うことにより、解析すべき角速度データの量を少なくすることができる。
【0227】
コントローラ60は、道路の清掃、除雪作業等、画像に大きな変化が現れると推定されるイベントの日時情報を、
図13に示した画像内に表示するとよい。道路の清掃前と清掃後、または除雪作業前と除雪作業後とでは、収集される画像に大きな差が生じる。道路管理者が清掃の有無、除雪作業の有無を知らないで画像を観察すると、2つの画像の違いか
ら修繕要否の判定を誤ってしまうことが懸念される。道路の清掃日時、除雪作業の日時等の情報の表示に道路管理者が気付くことにより、修繕の有無の誤判定を防止することができる。
【0228】
[第2の実施例の第2の変形例]
次に、
図17A及び
図17Bを参照して、第2の実施例の第2の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0229】
第2の実施例では、特定の車両、例えば道路管理業者の作業車両に搭載された1台のデータ収集装置1(
図1A、
図1B、
図2)から取得された判定基礎データを取り扱ったが、第2の変形例では、複数の車両にそれぞれ搭載されたデータ収集装置1から判定基礎データを取得する。
【0230】
図17Aは、判定基礎データのデータ構造の一例を示す図である。日時データ、走行速度データ、位置データ、加速度データ、及び角速度データが車両種別データと関連付けてデータベース65に蓄積されている。さらに、
図3Bに示した画像データも、車両種別データに関連付けられている。
【0231】
図17Bは、車両種別と換算係数との対応関係を示す図である。この対応関係は、例えば、予め外部記憶装置66に格納されている。
図17Bに示した例では、車両種別A01、A02、及びB01に、それぞれ換算係数x1、x2、及びx3が対応付けられている。
【0232】
路面の凹凸の形状及び深さが同一であっても、データ収集装置1が搭載された車両が異なると、データ収集装置1で測定される加速度の大きさも異なる。第2の実施例の第2の変形例では、コントローラ60は、加速度データを車両種別データに基づいて正規化する機能を有する。「正規化」とは、種々の車両に搭載したデータ収集装置1で実際に収集された加速度データを、標準車両に搭載していたとしたら得られたであろう加速度データに変換することを意味する。変換対象の加速度データとして、例えば加速度データの時間波形を特徴づける特徴量とするとよい。加速度データの時間波形を特徴づける特徴量として、例えば時間波形に現れたピークの高さ、時間波形の周波数成分の分布等を用いるとよい。コントローラ60は、例えば、実際に測定された加速度データの時間波形の特徴量に、その加速度データを取得したデータ収集装置1が搭載されている車両の車両種別の換算係数を乗じることにより、特徴量を車両種別データに基づいて正規化する。
【0233】
種々の車両に搭載されたデータ収集装置1で取得された加速度データを車両種別データに基づいて正規化することにより、車両種別の異なる複数の車両にそれぞれ搭載されたデータ収集装置1で取得された加速度データ同士を比較することが可能になる。
【0234】
換算係数は、データ収集装置1を種々の車両に搭載して凹凸を通過し、加速度データを収集することにより、予め算出しておくことができる。
【0235】
凹凸を通過したときに取得される加速度データの大きさは天候の影響を受ける場合がある。例えば、夏と冬とではタイヤの温度やサスペンションの温度が異なるため、これらのパラメータが加速度データに影響を与えると考えられる。例えば、取得された加速度データを、データ取得時の気温に基づいて正規化するとよい。このようにすることにより、夏に取得された加速度データと、冬に取得された加速度データとを比較することが可能になる。
【0236】
[第2の実施例の第3の変形例]
次に、
図18を参照して、第2の実施例の第3の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。第2の実施例の第2の変形例では、
図17Bに示すように換算係数が車両種別ごとに設定されている。これに対し、第2の実施例の第3の変形例では、車両種別ごと、かつ走行速度ごとに換算係数が設定されている。コントローラ60は、加速度データを、車両種別及び走行速度に基づいて正規化する機能を有する。「正規化」とは、種々の異なる走行速度で実際に収集された加速度データを、標準速度で走行していたら得られたであろう加速度データに変換することを意味する。標準速度として、例えば走行中の経路の法定速度、または法定速度よりやや遅い速度を採用するとよい。
【0237】
図18は、車両種別、走行速度、及び換算係数の対応関係の一例を示す図である。例えば、車両種別A01、走行速度v1に、換算係数x11が対応付けられている。コントローラ60は、車両種別A01の車両にデータ収集装置1を搭載し、走行速度v1で走行したときに取得された加速度データの時間波形の特徴量に換算係数x11を乗ずることにより、加速度データを正規化する。
【0238】
路面の凹凸の形状及び深さが同一であっても、データ収集装置1が搭載された車両の走行速度が異なると、データ収集装置1で測定される加速度の大きさも異なる。コントローラ60が、車両種別及び走行速度に基づいて加速度データを正規化することにより、異なる走行速度で収集した加速度データ同士を比較することが可能になる。
【0239】
換算係数は、データ収集装置1を車両に搭載して、種々の走行速度で凹凸を通過して加速度データを収集することにより、予め算出しておくことができる。
【0240】
実際の走行速度が標準速度から大きく外れている場合には、適切な換算係数を決定することが困難な場合がある。このような走行速度に対しては、
図18に示した対応関係一覧表において換算係数が対応付けられていない。コントローラ60は、関zな係数が対応付けられていないような走行速度で得られた加速度データについては、凹凸の有無の判定対象から除外するとよい。
【0241】
[第2の実施例の第4の変形例]
次に、
図19A~
図20を参照して、第2の実施例の第4の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0242】
第2の実施例の第4の変形例では、コントローラ60が、データベース65に蓄積された画像データに基づいて路面の修繕が必要な度合いを判定し、判定結果を、画像データ、加速度データ、位置データ、日時データ等と関連付けてデータベース65に登録する機能を有する。道路管理者が入力装置62(
図12)を操作して、修繕が必要な度合いを判定する処理を実行するように指示すると、コントローラ60は、データベース65に蓄積されている画像データの解析を行うことにより、種々の地点において修繕が必要な度合いを算出する。修繕が必要な度合いの算出には、例えばディープラーニングによる人工知能の技術を用いるとよい。
【0243】
コントローラ60は、修繕が必要であると判定した地点の位置データを、修繕が必要な度合いを認識可能にディスプレイ61(
図12)に表示させる。
【0244】
図19Aは、ディスプレイ61に表示された画像の一例を示す図である。修繕が必要と判定された地点を特定する情報と、修繕が必要な度合いとが並べられて一覧表形式でディスプレイ61に表示されている。修繕が必要と判定された地点を特定する情報として、例えば道路名、住所、及び緯度経度情報等を表示するとよい。さらに、各地点に対応して、画像表示ボタン78が表示されている。
図19Aでは、例えば〇〇通り△△△の地点に修
繕が必要な度合いが10の異常が発生している例を示している。道路管理者が、この地点に対応する画像表示ボタン78を選択すると、コントローラ60は、〇〇通り△△△の地点の画像を表示する。
【0245】
図19Bは、〇〇通り△△△の地点の画像の一例を示す図である。この画像から、路面に凹凸93が確認される。
【0246】
図20は、修繕が必要と判定された地点を表示した画像の他の例を示す図である。コントローラ60は、修繕が必要と判定した複数の地点を含む地図を表示し、その地図上の、修繕が必要と判定した地点に、修繕が必要な度合いが認識できるアイコンを表示する。アイコンとして、例えば丸付き数字を用いるとよい。丸で過去生まれた数字が、修繕が必要な度合いを表している。修繕の必要な地点に、修繕の必要な度合いごとに異なる色を付してもよい。
【0247】
次に、第2の実施例の第4の変形例の優れた効果について説明する。
第2の実施例の第4の変形例においては、道路や道路付属物の修繕が必要な度合いを、人手を介することなく判定することができるため、膨大な量の画像データに対応することが可能になる。ディスプレイ61に表示された情報を見た道路管理者は、複数の修繕の必要な地点から緊急度の高い地点を容易に見つけ出すことができる。
【0248】
道路保全管理計画のデータを利用して、道路自体の更新時期(修繕時期)が近い地点は、修繕の必要がある候補から除外するとよい。
【0249】
[第2の実施例の第5の変形例]
次に、
図21を参照して第2の実施例の第5の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0250】
第2の実施例の第4の変形例では、コントローラ60が、修繕が必要な地点の位置情報を、その地点の修繕が必要な度合いを認識可能にディスプレイ61に表示させたが、第5の変形例では、コントローラ60が、修繕が必要な地点を、修繕による道路のライフサイクルコストの低下幅の大きさを識別可能にディスプレイ61に表示させる。
【0251】
図21は、ディスプレイ61に表示された画像の一例を示す図である。修繕が必要と判定された地点を特定する情報と、修繕による道路のライフサイクルコストの低下幅とが対応付けられ、ライフサイクルコストの低下幅の大きさで並べ替えて一覧表形式でディスプレイ61に表示されている。修繕が必要と判定された地点を特定する情報として、例えば道路名、住所、及び緯度経度情報等を表示するとよい。さらに、各地点に対応して、画像表示ボタン79が表示されている。
図21では、例えば〇〇通り△△△の地点の修繕による道路のライフサイクルコストの低下幅が20,000,000円であることを示している。道路管理者が、この地点に対応する画像表示ボタン79を選択すると、コントローラ60は、この地点の画像をディスプレイ61に表示させる。
【0252】
次に、第2の実施例の第5の変形例の優れた効果について説明する。道路管理者は、ディスプレイ61に表示された画像を見て、ライフサイクルコストの低下幅の大きな修繕箇所を容易に見つけ出すことができる。修繕による道路のライフサイクルコストの低下幅の大きな箇所から順番に修繕することにより、全体として、道路のライフサイクルコストの上昇を抑制することができる。
【0253】
例えば、道路付属物の損傷の程度の推移から、急速に損傷の程度が大きくなり始めたことを検知するとよい。損傷の程度が低いうちに修繕することにより、修繕費用の増大を抑
制することができる。
【0254】
図21では、修繕が必要と判定された地点を、ライフサイクルコストの低下幅とともに一覧表形式で表示された例を示したが、
図20に示したように、ディスプレイ61に地図を表示し、修繕の必要な地点に、ライフサイクルコストの低下幅の大きさに応じたアイコンを表示してもよい。または、アイコンに代えて、道路のうち修繕の必要な地点に、ライフサイクルコストの低下幅の大きさに応じた色を付してもよい。
【0255】
[第2の実施例の第6の変形例]
次に、
図22A~
図22Cを参照して、第2の実施例の第6の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0256】
第2の実施例の第6の変形例では、コントローラ60が、データベース65に蓄積された画像データの解析を行うことにより、道路付属物の修繕の要否を判定する機能を有する。道路管理者が入力装置62(
図12)を操作して、道路付属物の修繕の要否を判定する処理を実行するように指示すると、コントローラ60は、データベース65に蓄積されている画像データの解析を行うことにより、種々の地点の道路付属物の修繕が必要か否かを判定する。コントローラ60は、ディスプレイ61に表示させる。さらに、コントローラ60は、判定結果を、画像データ、加速度データ、位置データ、日時データ等と関連付けてデータベース65に登録する。
【0257】
道路の付属物の修繕対象として、例えば道路標示の劣化、雨上がり後における道路の排水機能の不良、道路標識やガードレール等の道路付属物の腐食や変形、土砂崩れの兆候、街路樹による弊害等を取り上げるとよい。修繕の要否の判定には、例えばディープラーニングによる人工知能の技術を用いるとよい。ガードレールの一部分の色が周囲の色と異なっている場合、例えば白色のガードレールの一部分が茶色に変色している場合、その部分に腐食が発生している可能性が高いと判定することができる。このように、空間的な色の変化に基づいて、道路付属物の修繕が必要か否かを判定することができる。
【0258】
道路の点検として、道路の開通時に行う初期点検、通常の業務として行う日常点検、年に1回程度行う定期点検、及び災害発生後等に行う緊急点検が挙げられる。コントローラ60は、例えば、データベース65に蓄積された判定基礎データに基づいて、日常点検項目について点検を行うようにするとよい。
【0259】
さらに、コントローラ60は、同一の地点において異なる複数の日時に収集された複数の画像データの差分に基づいて道路の付属物の修繕の要否を判定する機能を持つ。
【0260】
図22A~
図22Cは、同一の地点において、異なる複数の日時に収集された画像データの例を示す図である。
図22Aに示した例では、最高速度規制標識95が街路樹で隠されることなく視認される。
図22Bに示した例では、
図22Aの時点から街路樹96が成長したため、最高速度規制標識95の一部が街路樹96で隠れているが、最高速度が時速40kmであることが確認可能である。
図22Cに示した例では、さらに街路樹96が成長したため、最高速度規制標識95の大部分が街路樹96で隠れており、最高速度が時速40kmであることを確認することができない。
【0261】
コントローラ60は、
図22A、
図22B、及び
図22Cの画像の差分を求めることにより、街路樹96の成長の様子、及び最高速度規制標識95が街路樹96によって隠されていく様子を検知することができる。
【0262】
また、道路付属物に発生した小さな傷が時間の経過とともに大きくなっていく様子を認
識することができる。このように、時間的な画像の変化に基づいて、道路付属物の修繕が必要か否かの判定を行うことができる。
【0263】
次に、第2の実施例の第6の変形例の優れた効果について説明する。第2の実施例の第6の変形例では、人手を介することなく、道路の付属物の修繕の要否を判定することができる。これにより、膨大な量の画像データを処理することが可能になる。
【0264】
コントローラ60は、画像データの差分により、道路付属物の劣化の進行速度を認識することができる。道路付属物の劣化の進行速度を考慮することにより、道路付属物の修繕の要否を、より適切に判定することができる。例えば、道路標示の色が薄くなる速さ、道路付属物に発生した傷が大きくなる速さ、街路樹の成長の速さ等に基づいて、修繕の要否を、より適切に判定することが可能になる。
【0265】
道路付属物に関して、修繕要否を判定するために重点的に解析する箇所を予め決めておくとよい。例えば、ガードレール、ガードケーブル、ガードレールの支柱基礎とアンカー、ガードレールのボルトとナット等を重点解析箇所として登録しておくとよい。例えば、ディープラーニング技術を用いた人工知能に、重点解析箇所の画像を重点的に解析させ、修繕の要否を判定させるようにするとよい。
【0266】
雨上がり後に取得された画像データを解析することにより、道路の排水機能の不良や、わだち掘れの発生等を容易に検知することができる。雨上がりか否かは、画像データに移りこんだワイパーの動作により判定することができる。例えば、ワイパーが動作している状態から、ワイパーが停止された状態に移行したら、雨上がりであると判定するとよい。
【0267】
ゲリラ豪雨の後は、排水機能が正常であっても路面上の雨水が排水できない場合がある。従って、ゲリラ豪雨の後は、排水機能が正常であるか否かの判定を行わないようにしてもよい。ゲリラ豪雨か否かは、ワイパーの動作速度や、遠方の景色の煙ぶり具合等に基づいて判定することができる。
【0268】
多くのデータ収集装置1から収集した画像データ、日時データ、位置データをビッグデータとして保存しておくとよい。このビッグデータに基づいて、雨が降った時間帯と地域とを知ることができる。
【0269】
過去に土砂崩れ等の災害が発生しやすい地点等を、データ収集地点85(
図9C)として登録しておくとよい。これにより、災害が発生しやすい地点の画像等を継続して蓄積することができる。この画像を時系列に観察することにより、土砂崩れ等の災害の兆候を事前に検知することが可能になる。
【0270】
また、画像を時系列に評価することにより、地震による液状化の有無を検知することが可能である。液状化が発生すると、相対的に比重の軽いものは浮き上がり、重いものは沈む現象が起きる。コントローラ60は、現時点の画像と過去の画像とを比べて、浮き上がっているもの及び沈んでいるものを検知することにより、液状化が発生した可能性があるか否かを判定する機能を持つとよい。特に、地震前の画像と地震後の画像とを比較することにより、液状化の有無を判定するとよい。
【0271】
特に、陸域観測技術衛星「だいち」等の情報から、液状化発生の可能性の高いエリアを求め、このエリアを画像データ収集の対象(
図9Cのデータ収集地点85)として登録しておくとよい。陸域観測技術衛星の情報の他に、地下水位の高さマップに基づいて液状化発生の可能性の高いエリアを求めてもよい。
【0272】
さらに、陸域観測技術衛星の情報等に基づいて、地すべりが発生する可能性の高いエリアを画像データ収集の対象として登録しておくとよい。
【0273】
[第2の実施例の第7の変形例]
次に、
図23A及び
図23Bを参照して、第2の実施例の第7の変形例による道路状態評価支援装置50について説明する。
【0274】
第2の実施例の第7の変形例では、道路状態評価支援装置50が通信装置64(
図12)を介して、複数のデータ収集装置1から道路または道路付属物の修繕要否の判定を行う基礎となる判定基礎データ、及びデータ収集装置1を識別するための識別データを受信する。
【0275】
図23Aは、第2の実施例の第7の変形例による道路状態評価支援装置50、及びデータ収集装置1を搭載した複数の車両51を含むシステムの概略図である。道路状態評価支援装置50が、データ通信ネットワーク40及び無線基地局55を介して、複数の車両51の各々に搭載されたデータ収集装置1とデータ通信を行う。データ収集装置1の各々は、収集した判定基礎データ、及びデータ収集装置を識別する識別データを道路状態評価支援装置50に送信する。道路状態評価支援装置50のコントローラ60は、データ収集装置1の各々から判定基礎データ及び識別データを受信し、これらのデータを関連付けてデータベース65に蓄積する。
【0276】
さらに、コントローラ60は、データ収集装置1ごとに、受信した判定基礎データに応じてポイントを付して、ポイントの累積値を、例えば外部記憶装置66に記憶する。
【0277】
図23Bは、データ収集装置1ごとに付与されたポイントの累積値の一例を示す図である。例えば、識別データがABC00001で識別されるデータ収集装置1に、1,000ポイントが付与されている。
【0278】
次に、第2の実施例の第7の変形例の優れた効果について説明する。第2の実施例の第7の変形例では、コントローラ60が通信装置64(
図12)を介してデータを受信するため、データを入手するための手間を省くことができる。また、複数のデータ収集装置1からデータを受信するため、1つのデータ収集装置1からデータを入手する場合に比べて、より大量のデータを集めることができる。例えば、道路管理業者の作業車両のみらならず、道路管理業者の社員の個人所有の車両等にデータ収集装置1を搭載して、これらのデータを入手するとよい。不特定の一般車両にデータ収集装置1を搭載してこれらのデータを入手するようにするとさらによい。
【0279】
さらに、第2の実施例の第7の変形例では、データ収集装置1ごとに付与されたポイントに応じて、データ収集装置1の所有者に特典を提供することが可能になる。データ収集装置1を搭載した車両の所有者にとっては、より多くのデータを道路状態評価支援装置50に送信する動機づけになる。データ収集装置1を搭載していない車両の所有者にとっては、データ収集装置1を搭載しようとする動機づけになる。これにより、道路状態評価支援装置50に、より大量のデータを蓄積することが可能になる。特典として、例えば有料道路通行料の割引、道の駅での商品購入時の割引等とするとよい。
【0280】
町内会や自治会等の一般市民の団体ごとに、ポイントを付すようにしてもよい。多くのポイントを貯めた団体に、情報提供に対する報奨を与えるようにするとよい。
【0281】
コントローラ60は、災害発生等によって緊急点検が必要となったエリア(緊急点検必要エリア)を特定する情報を複数のデータ収集装置1に送信する機能を持つとよい。緊急
点検必要エリアは、道路管理者が入力装置62を操作することにより入力するとよい。
【0282】
緊急点検必要エリアを特定する情報を受信したデータ収集装置1は、車両が緊急点検必要エリア内に位置するとき、画像データを収集して道路状態評価支援装置50にリアルタイムに送信する機能を有する。道路状態評価支援装置50は、データ収集装置1から受信した画像データをデータベース65に蓄積するとともに、道路管理者からの指令に応じてディスプレイ61に表示させる機能を有する。
【0283】
緊急点検必要エリアに、データ収集装置1を搭載した車両が存在する場合には、道路管理者は、緊急点検が必要なエリアに赴くことなく、緊急点検必要エリアの画像を入手することができる。これにより、災害に対する迅速な対応が可能になる。
【0284】
データ収集装置1を、一般ユーザが操縦するマルチコプタ等の飛翔装置に搭載して、緊急点検必要エリアの空撮画像を道路状態評価支援装置50に送信するようにするとさらによい。
【0285】
データ収集装置1から道路状態評価支援装置50に送信されるデータに、普通車、中型車、大型車等の車両区分を示すデータ(車両区分データ)を含めるとよい。大型車が舗装に与える影響は、小型車が舗装に与える影響の約1万倍といわれている。道路を通過する車両の車両区分の比率が異なると、路面の劣化の進行度合いも異なる。国内のほとんどすべての車両にデータ収集装置1が搭載されると、データ収集装置1から取得したデータに基づいて、道路ごとの通行車両の台数を車両区分ごとに算出することができるようになる。
【0286】
通行車両が路面に与える影響を推測する際に、車両区分ごとの車両の台数を反映させるとよい。例えば、大型車1台の通行を、普通車1万台の通行量として換算して、路面に与える影響を推測するとよい。車両区分ごとの通行料を反映させた路面に与える影響は、道路の修繕が必要な時期を予測するための有益な情報となる。
【0287】
以上、本発明の様々な側面を実施例及び変形例を用いて説明してきたが、これらの実施例及び変形例の説明は、本発明の技術的範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の技術的範囲は、明細書に明示的に説明された構成に限定されるものではなく、本明細書は、説明された本発明の様々な側面を組み合わせて得られる他の発明をも開示する。本願の出願人は、本発明のうち、特許を受けようとする発明の構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されておらず、本明細書に開示される少なくとも1つの構成要素を含む発明をも、将来的に特許請求の範囲に含める意思を有する。
【0288】
本願発明は上述した「発明を実施するための形態」に記載の構成に限定されない。上述した各実施例や変形例に含まれる構成要素を任意に選択して組み合わせて、新たな発明を構成するとよい。また各実施例や変形例の任意の構成要素と、「課題を解決するための手段」に記載の任意の構成要素または「課題を解決するための手段」に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とを任意に組み合わせて新たな発明とすることができる。本願の出願人は、これらの新たな発明についても、本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【0289】
例えば、本明細書は、第1の実施例、及び第1の実施例の種々の変形例によるデータ収集装置1としての機能を携帯端末に実現させるためのプログラムの発明を開示する。さらに、本明細書は、第2の実施例、及び第2の実施例の種々の変形例による道路状態評価支援装置50としての機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの発明を開示する
。
【0290】
さらに、本明細書は、第1の実施例、及び第1の実施例の種々の変形例によるデータ収集装置1と、第2の実施例、及び第2の実施例の種々の変形例による道路状態評価支援装置50とを含む道路状態評価支援システムの発明を開示する。さらに、本明細書は、第1の実施例、及び第1の実施例の種々の変形例によるデータ収集装置1の機能と、第2の実施例、及び第2の実施例の種々の変形例による道路状態評価支援装置50の機能との両方を持つ機器の発明を開示する。このような機器は、例えば、車両に着脱可能に搭載されるタブレット端末等によって実現するとよい。
【符号の説明】
【0291】
1 データ収集装置
3 フロントガラス
4 ルームミラー
5 シガーソケット
6 電源ケーブル
10 SDカード挿入口
11 ディスプレイ
12 操作ボタン
13 ジョイントレール
14 GPS受信機
15 カメラ
16 スピーカ
17 加速度センサ
18 ジャイロセンサ
19 SDカードリーダ
20 コントローラ
20a CPU
20b ROM
20c RAM
21 通信回路
22 SDカード
31、32 画像データ
40 データ通信ネットワーク
50 道路状態評価支援装置
51 車両
60 コントローラ
60a CPU
60c RAM
61 ディスプレイ
62 入力装置
63 SDカードリーダ
64 通信装置
65 データベース
66 外部記憶装置
70 画像
71 画像が取得された日時を示す情報
72 加速度データの時間波形
73 表示された画像の取得時点を示す識別標識
75 評価値ボタン
76 凹凸地点抽出ボタン
77A 時系列表示ボタン
77B 詳細点検登録ボタン
78、79 画像表示ボタン
80 データ収集区間
81 データ収集区間の始点
82 データ収集区間の終点
83 車両基地
85 データ収集地点
86 データ収集地点の近傍領域
87 経路
90 ガードレールの破断箇所
91 道路標識
92 街路樹
93 路面の凹凸
94 骨材が塗布された領域
95 最高速度規制標識
96 街路樹