(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】チャープミラー及びチャープミラーユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20221216BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20221216BHJP
G02B 26/06 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G02B5/08 Z
G02B5/08 A
G02B7/198
G02B26/06
(21)【出願番号】P 2021130165
(22)【出願日】2021-08-06
(62)【分割の表示】P 2017140973の分割
【原出願日】2017-07-20
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宗男
(72)【発明者】
【氏名】田村 耕一
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-030288(JP,A)
【文献】特開2009-032916(JP,A)
【文献】特開2002-243935(JP,A)
【文献】特表2003-529788(JP,A)
【文献】特開2003-107223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0303601(US,A1)
【文献】JURGEN KUHL AND JOACHIM HEPPNER,Compression of femtosecond optical pulses with dielectric multilayer interferometers,IEEE Journal of Quantum Electronics,1986年01月,VOL.QE-22, NO.1,pp.182-185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
G02B 5/28
G02B26/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に形成された、高屈折率材料による高屈折率層と低屈折率材料による低屈折率層との交互膜である誘電体多層膜と、
を備えており、
各前記高屈折率層及び各前記低屈折率層が、それぞれの所定の物理膜厚を全体として有しており、
前記誘電体多層膜に係る所定波長域内の
何れの波長においても、群速度遅延分散GDDの値が、何れも、入射角θの関数となっており、所定入射角域内で、単調増加又は単調減少し、
前記所定波長域の大きさが、10nm以上であり、
前記所定入射
角域の大きさが、15°以上である
ことを特徴とするチャープミラー。
【請求項2】
前記所定波長域における群速度遅延分散GDDの平均値GDD
aveのフィッティング直線が、前記所定入射角域内における前記入射角θと、前記所定入射角域内の所定値である基本入射角θ
0について、
GDD
ave=a(θ-θ
0)+b,
-200≦a≦200,
-6000≦b≦6000,
という条件を満たすものである
ことを特徴とする
請求項1に記載のチャープミラー。
【請求項3】
前記所定波長域が、1025nm以上1035nm以下を含んでおり、
前記中心波長が、1030nmである
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のチャープミラー。
【請求項4】
前記所定波長域が、780nm以上820nm以下を含んでおり、
前記中心波長が、800nmである
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のチャープミラー。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のチャープミラーと、
前記チャープミラーを入射光路に対して相対的に回転させるチャープミラー回転機構と、
前記チャープミラーの反射光路を調整する光路調整ミラーと、
前記光路調整ミラーを、前記チャープミラーからの前記反射光路に対して回転可能且つ前記入射光路と平行に移動可能とする光路調整ミラー移動機構と、
を備えており、
前記光路調整ミラー移動機構は、前記光路調整ミラーを、前記チャープミラーと平行になるように回転させ、且つ前記チャープミラーから
の光パルスを反射するように移動させ、
前記光路調整ミラーは、前記反射光路を、
前記入射光路と平行となる一定の光路に調整する
ことを特徴とするチャープミラーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェムト秒光パルスを始めとするパルス幅の極めて短い光パルス(超短光パルス)等の分散補償を行えるチャープミラー、及びこれを用いたチャープミラーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3569777号公報(特許文献1)に記載されているように、近時、分子状態や固体の電子状態の制御、化学反応制御、材料加工等において、フェムト秒光パルスが利用されている。フェムト秒光パルスは、フェムト(10-15)秒程度の非常に短いパルス幅において、例えば1012W(ワット)程度以上といった高いピーク強度を有する光である。
フェムト秒光パルスは、様々な波長の光が、位相を揃えた状態で重畳されて構成される。
フェムト秒光パルスは、波長毎に光の速度が異なる媒質中、即ち光の群速度に波長依存性がある媒質中を伝搬すると、ある波長の光に対して別の波長の光がその伝搬方向において相対的に速く進むことないしはその重畳により、パルス幅が広がったり、ピーク強度が下がったりする。光の群速度に波長依存性があることで、波長に応じ光の速度にずれが生ずることは、チャープと呼ばれる。
【0003】
フェムト秒光パルスの特性は、チャープによりパルス幅が広がったりピーク強度が下がったりした分だけ損なわれるため、プリズムや誘電体多層膜鏡により、波長に応じ速度のずれた即ちチャープしたフェムト秒光パルスをずれのないフェムト秒光パルスに戻すことが行われる(分散補償)。
例えば、可視域の波長の光が重畳され、伝搬により赤色光が伝搬方向で他の色の光より速くチャープしたフェムト秒光パルスを、互いに異なる膜厚に係る複数のブラッグ膜を有する誘電体多層膜鏡(チャープミラーの一例)でブラック反射させ、反射における赤色光の光路長を他の色の光の光路長より長くすれば、チャープミラーにおける反射によって、速くずれた赤色光が光路長の差に応じて遅くなり、光路長の差が適切であれば、赤色光のチャープが解消されることとなる。又、他の色においても、チャープミラーの層数や膜厚を調整して光路長の差を調整すれば、同様に補償される。
【0004】
チャープミラーにおけるブラッグ膜の層数や膜厚は各ブラック膜(誘電体多層膜)の形成により固定されるため、1回の反射における光路長の差が固定されていて、光が相対的に遅く戻される度合(分散補償量)ないしその波長に応じた分布は固定されており、チャープミラーの1回の反射では、所定の分散補償量における補償しか行えず、所定の伝搬経路を通った所定のフェムト秒光パルスしか適切に補償することができない。これでは、伝搬経路及びフェムト秒光パルスの組の種類毎に合わせて設計された複数のブラッグ膜を有するチャープミラーを用意しなければならず、極めて煩わしい。
そこで、特許第3569777号公報(特許文献1)のチャープ量可変装置では、2枚のチャープミラーが向かい合わせて配置され、それらの間におけるフェムト秒光パルスの反射回数を変えるための可動鏡や固定鏡が更に配置される。この装置によれば、チャープミラーにおける反射回数を変えることで、反射1回当たりの分散補償量の自然数倍の分散補償量において、フェムト秒光パルスの分散補償を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記装置では、所定の分散補償量の自然数倍の分散補償量という、離散した分散補償量において、フェムト秒光パルスの分散補償が行われ、分散補償量の微調整は困難である。
又、分散補償量の種類を増やすため、10回程度以上といった比較的に多い反射回数にも変えられるようにすると、装置が大掛かりになる。
更に、チャープミラーにおける反射率は現実的には100%未満であり、反射回数が増えるほど、最終的な(総合的な)反射率が低下して、フェムト秒光パルスの損失が大きくなる。
そこで、本発明の主な目的は、フェムト秒光パルスを始めとする超短光パルス等の分散補償をきめ細く行えるチャープミラーを提供することである。
又、本発明の主な目的は、反射回数を抑制することができ、分散補償による超短光パルスの損失を抑制可能であるチャープミラーを提供することである。
加えて、本発明の主な目的は、上述のチャープミラーを有することで、簡単に分散補償が行え、又コンパクトであるチャープミラーユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、チャープミラーにおいて、基材と、前記基材に形成された、高屈折率材料による高屈折率層と低屈折率材料による低屈折率層との交互膜である誘電体多層膜と、を備えており、各前記高屈折率層及び各前記低屈折率層が、それぞれの所定の物理膜厚を全体として有しており、前記誘電体多層膜に係る所定波長域内の何れの波長においても、群速度遅延分散GDDの値が、何れも、入射角θの関数となっており、所定入射角域内で、単調増加又は単調減少し、前記所定波長域の大きさが、10nm以上であり、前記所定入射角域の大きさが、15°以上であることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域における群速度遅延分散GDDの平均値GDDaveのフィッティング直線が、前記所定入射角域内における前記入射角θと、前記所定入射角域内の所定値である基本入射角θ0について、GDDave=a(θ-θ0)+b,-200≦a≦200,-6000≦b≦6000,という条件を満たすものであることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域が、1025nm以上1035nm以下を含んでおり、前記中心波長が、1030nmであることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域が、780nm以上820nm以下を含んでおり、前記中心波長が、800nmであることを特徴とするものである。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項5に記載の発明は、チャープミラーユニットにおいて、上記チャープミラーと、前記チャープミラーを入射光路に対して相対的に回転させるチャープミラー回転機構と、前記チャープミラーの反射光路を調整する光路調整ミラーと、前記光路調整ミラーを、前記チャープミラーからの前記反射光路に対して回転可能且つ前記入射光路と平行に移動可能とする光路調整ミラー移動機構と、を備えており、前記光路調整ミラー移動機構は、前記光路調整ミラーを、前記チャープミラーと平行になるように回転させ、且つ前記チャープミラーからの光パルスを反射するように移動させ、前記光路調整ミラーは、前記反射光路を、前記入射光路と平行となる一定の光路に調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の主な効果は、フェムト秒光パルスを始めとする超短光パルス等の分散補償をきめ細く行えるチャープミラーを提供することである。
又、本発明の主な効果は、反射回数を抑制することができ、分散補償による超短光パルスの損失を抑制可能であるチャープミラーを提供することである。
更に、本発明の主な効果は、上述のチャープミラーを有することで、簡単に分散補償が行え、又コンパクトであるチャープミラーユニットを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は従来におけるチャープミラーユニット(分散補償ユニット)ないしその作動を示す模式図であり、(b)は(a)における波長とGVDの関係を示すグラフである。
【
図2】実施例1の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図3】実施例2の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図4】実施例3の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図5】実施例4の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図6】実施例5の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図7】実施例6の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図8】実施例7の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図9】実施例8の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図10】実施例9の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図11】実施例10の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図12】実施例11の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図13】実施例12の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図14】実施例13の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図15】実施例14の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図16】実施例15の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図17】実施例16の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図18】実施例17の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図19】実施例18の誘電体多層膜における各層の物理膜厚を示すグラフである。
【
図20】実施例1の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図21】実施例2の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図22】実施例3の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図23】実施例4の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図24】実施例5の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図25】実施例6の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図26】実施例7の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図27】実施例8の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図28】実施例9の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図29】実施例10の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図30】実施例11の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図31】実施例12の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図32】実施例13の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図33】実施例14の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図34】実施例15の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図35】実施例16の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図36】実施例17の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図37】実施例18の反射面におけるGDDの入射角依存性を示すグラフである。
【
図38】所定の入射角範囲における実施例1の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図39】所定の波長域における実施例1のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図40】所定の入射角範囲における実施例2の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図41】所定の波長域における実施例2のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図42】所定の入射角範囲における実施例3の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図43】所定の波長域における実施例3のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図44】所定の入射角範囲における実施例4の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図45】所定の波長域における実施例4のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図46】所定の入射角範囲における実施例5の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図47】所定の波長域における実施例5のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図48】所定の入射角範囲における実施例6の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図49】所定の波長域における実施例6のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図50】所定の入射角範囲における実施例7の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図51】所定の波長域における実施例7のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図52】所定の入射角範囲における実施例8の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図53】所定の波長域における実施例8のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図54】所定の入射角範囲における実施例9の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図55】所定の波長域における実施例9のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図56】所定の入射角範囲における実施例10の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図57】所定の波長域における実施例10のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図58】所定の入射角範囲における実施例11の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図59】所定の波長域における実施例11のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図60】所定の入射角範囲における実施例12の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図61】所定の波長域における実施例12のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図62】所定の入射角範囲における実施例13の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図63】所定の波長域における実施例13のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図64】所定の入射角範囲における実施例14の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図65】所定の波長域における実施例14のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図66】所定の入射角範囲における実施例15の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図67】所定の波長域における実施例15のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図68】所定の入射角範囲における実施例16の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図69】所定の波長域における実施例16のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図70】所定の入射角範囲における実施例17の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図71】所定の波長域における実施例17のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図72】所定の入射角範囲における実施例18の(a)反射率,(b)GDD(入射角依存性)を示すグラフである。
【
図73】所定の波長域における実施例18のGDD(波長依存性)を示すグラフである。
【
図74】本発明に係るチャープミラーユニット(分散補償ユニット)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面に基づいて説明される。尚、本発明の形態は、これらの例に限定されない。
【0012】
本発明に係るチャープミラーは、反射面を備えた基材を有しており、反射面において超短光パルスを反射することにより、超短光パルスの分散補償を行うものである。
以下、超短光パルスがフェムト秒光パルスである場合について説明されるが、本発明において、超短光パルスはフェムト秒光パルスに限定されるものではない。又、本発明は、超短光パルスではない光パルスや、フェムト秒であるものを始めとした様々な周期に係る光に適用することも可能である。尚、以下、特に断られない限り、フェムト秒光パルスは単に光パルスとされる。
【0013】
光パルスが媒質中を伝搬すると、媒質の種類に応じて、波長毎の速度にずれが生じてチャープし、光パルスのパルス幅が広がったり、光パルスのピーク強度が下がったりする。
例えば、媒質が石英である場合、波長400nmにおける光(青色光)の群速度は約198nm/fs(ナノメートル毎フェムト秒)であり、550nm(緑色光)での群速度は約202nm/fsであり、700nm(赤色光)での群速度は約204nm/fsであって、400nm以上1200nmの波長域において、波長(nm)の増加に応じ、群速度(nm/fs)が緩やかに単調増加する。
よって、石英中を伝搬する光パルスは、赤色光が緑色光や青色光に対して相対的に速くなり、赤色光が伝搬方向で先行するようにずれて行く。
尚、群速度Vg(nm/fs)は、波長をλ(nm),波長λの関数である媒質の屈折率をn(λ)、光速をc(nm/fs)とすると、次の[数1]で表される。
【0014】
【0015】
そして、群速度のずれの指標として、次の[数2]で表される群速度分散GVD(Group Velocity Dispersion,fs2/cm,フェムト秒フェムト秒毎センチメートル)が用いられる。群速度分散GVDは、群速度の傾きに応じるものであり、GVD=0であれば、群速度に波長依存性がないこととなって、媒体中を伝搬する光パルスはチャープしない。他方、GVD≠0であれば、群速度に波長依存性が存在して、GVD≠0の媒体中を伝搬する光パルスはチャープする。
【0016】
【0017】
チャープを経た光パルスのピーク強度Imaxないしパルス幅Δτは、群速度分散GVDを用いて、順に次の[数3],[数4]で表される。ここで、xは媒体の厚み(cm)であり、C1,C2はそれぞれ所定の定数であり、Imax,0,Δτ0は順に初期ピーク強度(W),初期パルス幅(fs)である。
【0018】
【0019】
かようにチャープした光パルスは、チャープミラーの反射面において、各波長の光の光路長に差が付いた状態で反射することで、分散補償される。
例えば、チャープミラーの反射面において、互いに異なる膜厚に係る複数のブラッグ膜を有する光学多層膜が形成されれば、ブラッグ反射により、光パルスは各波長の光の光路長に差が付いた状態で反射される。又、回折格子により、光パルスが各波長の光の光路長に差が付いた状態で反射されるようにすることも可能である。
光パルスは、ブラッグ反射により、角速度ωの関数である位相のずれ即ちチャープミラーの反射位相φ(ω)を生ずる。反射位相φ(ω)は、時刻をt(秒)、所定の定数をCとすると、次の[数5]で表される。
【0020】
【0021】
反射位相に係る[数5]のうち、ωの時間遅延の最低次項である-∂φ/∂ω|0は、φとして中心波長の値が代入されるものであり、群速度遅延GD(Group Delay)に対応するものであって、チャープミラー(光学多層膜内)の滞在時間に応じた値となっている。中心波長は、所定の波長域(対象波長域)に含まれる波長であり、分散補償の対象としての光パルスにおけるピーク波長(強度が最大となる波長)に対応して把握される。尚、中心波長は、対象波長域の中央値でなくても良い。又、光パルスの強度は、中心波長において最大でなくても良い。
又、ωの非線形項の最低次項である-∂2φ/∂ω2|0は、φとして中心波長の値が代入されるものであり、群速度遅延分散GDD(Group Delay Dispersion)に対応するものであって、位相のずれの指標となる。そして、GDD=-∂2φ/∂ω2である。
チャープを経た光パルスのピーク強度Imaxないしパルス幅Δτは、群速度分散GVDと同様に、群速度遅延分散GDDを用いて、順に次の[数6],[数7]で表すこともできる。
【0022】
【0023】
所定の伝搬経路を通った光パルスがチャープミラーに反射されてなされる分散補償は、次の[数8]を満たすようにすると、最大限に行われる。
ここで、iは、伝搬経路中における媒質の種類毎に付されるナンバーであり、伝搬経路に石英ガラスと空気が存在する場合は、例えばi=1(石英),i=2(空気)である。又、GVD1は石英のGVDであり、GVD2は空気のGVDである。更に、媒質の厚さ1は石英の厚さ(石英における経路長)であり、媒質の厚さGVD2は空気の厚さ(空気における経路長)である。
即ち、チャープミラーにおいて、伝搬経路全体におけるGVDが打ち消されるGDDを有するようにすれば、分散補償がなされる。
尚、400nm以上1200nmの波長域において、石英のGVDも空気のGVDも共に単調減少し、波長800nmの光において石英のGVDは363.49fs2/cm、空気のGVDは0.21fs2/cmであって、他の波長でも同様のオーダーであることから、石英のGVDは空気のGVDのおよそ1000倍であり、目安として石英中を1mm(ミリメートル)進行する場合のGVDと空気中を1m(メートル)進行する場合のGVDがほぼ同様になる。
【0024】
【0025】
従来、
図1(a)に示されるように、光学多層膜の形成の容易さや作動の安定性(設計通りの作動の実現)を確保する観点から、チャープミラーMpに対する光パルスの入射角そして反射角は固定されていた。
従って、例えば、向かい合わせのチャープミラーMpにおいて所定の入射角ないし反射角で合計10回各反射地点R1~R10で反射されるように光パルスP2を入射させて、
図1(b)において一点鎖線で示されるGVDを有する光パルスP2が、各反射によるGDDの減少によりGVDが都度減少され(同図における10本の実線)、760nm以上850nm以下の波長域で分散補償される(光パルスP3)。尚、同図の実線に対し、反射地点R1~R10と同じ符号が付される。
ここでのチャープミラーMpは、当該入射角において、当該波長域におけるGVDの大きさの1/10に相当する大きさであるGDDを有するものとされており、当該波長域においておよそ-60fs
2(600の1/10)でフラットである。尚、GDDがマイナスであるチャープミラーMpは、負分散ミラーとも呼ばれる。
光パルスP1は、発振装置から発出され、例えば模式的に7段階の波長成分(
図1(a)における短波長側から順に波長成分W1~W7)を互いに位相が揃った状態で有しているところ、1cm厚の光学ガラスBK7ないし空気を通ってチャープミラーMpに達するまでに、長波長側の波長成分W7,W6・・が短波長側の波長成分W1,W2・・に対して伝搬方向で先行するようにチャープする。かようにチャープした光パルスP2のGVDは、
図1(b)の一点鎖線Gのようになるところ、1回目の反射で当該波長域において1/10程度即ち60fs
2程度減少し、同図において一点鎖線Gに最も近い(最上の)実線R1で示されるGVDとなる。又、2回目の反射で、
図1(b)において次に近い(上から2番目の)実線R2に係るGVDとなり、以下同様にして、10回目の反射で、当該波長域にわたってGVDが0となって、光パルスP1と同等であるように補償された光パルスP3が得られる。
かような従来の向かい合うチャープミラーMpでは、光学ガラスBK7の厚みが変わる場合、60fs
2/cm又はその倍数に相当するようにGVDが変化する厚みの離散的な変化に対しては、反射回数を変更することで分散補償可能であるが、その離散的な厚み以外の厚みに対しては、光学多層膜(ブラッグ膜構成)について別途設計された別のチャープミラーMpが必要になる。
【0026】
これに対し、本発明では、光学多層膜(ブラッグ膜構成)の設計等により、光パルスの入射角の変化に応じ、所定の入射角域内でGDDが単調増加または単調減少するようにする。即ち、チャープミラーのGDDは、入射角の関数となっており、所定入射角域内で単調増加又は単調減少するものである。
従って、光パルスのチャープミラー反射面に対する入射角を、光パルス入射経路に対するチャープミラーの相対的な回転等によって調整すれば、GDDを連続的に変化させることができ、光学ガラスBK7の厚みが様々に変わる等、光パルスの伝搬経路が様々に変化したとしても、光パルスに対して分散補償を行うことができる。
尚、本発明において、光パルスの入射角の変化に応じGDDが単調増加または単調減少するチャープミラーが、10回程度の反射のなされる光学系に組み込まれても良く、この場合であっても、チャープミラーの相対的な回転により、GDDを容易に微調整することができる。
【0027】
かようなGDDの変化においては、対象とする波長域の中心波長において、GDDが入射角の大きさに応じ単調増加又は単調減少すれば良い。
又、入射角θの変化の幅Δθ(所定入射角域の大きさ)は、15°以上あれば、GDDの調整幅や調整精度を十分に確保することができる。入射角の変化の幅Δθ内において、最も多用する(設計においてGDDが狙った値をとる)角度として定められた基本入射角θ0が含まれるようにすれば、基本入射角θ0を標準として入射角θを変化の幅Δθ内で調整することにより、GDDがより調整し易くなる。尚、基本入射角θ0は、所定入射角域内に含まれていれば、どのような値であっても良く、所定入射角域内の定数(所定値)であると言える。又、入射角の変化の幅Δθについて、5°以上とすることもできるし、10°以上とすることもできるし、20°以上とすることもできるし、他の任意の値以上とすることもでき、大きいほどGDDの調整幅が十分なものとなり、あるいはGDDの微調整が可能となる。
更に、対象とする波長域は、用途やチャープミラーの作製の容易さ等に応じて限定されていて良く、1025nm以上1035nm以下あるいはこれを含むものとされれば、中心波長1030nmのYb:YAGレーザーに係る光パルスの分散補償に好適なものとなり、780nm以上820nm以下あるいはこれを含むものとされれば、中心波長800nmのTi:Sapphireレーザーに係る光パルスの分散補償に好適なものとなる。
加えて、対象とする波長域におけるGDDの平均値GDDaveが、入射角θと基本入射角θ0を用いて、次の[数9]で示される関係を有するようにすれば、チャープミラーが一層GDDを調整し易いものとなる。ここで、aは定数であって、-200≦a≦200[fs2/°]であり、bは定数であって、-6000≦b≦6000[fs2]である。
【0028】
【0029】
又、かような本発明のチャープミラーと、これを回転角調整可能に回転移動可能な回転機構と、により、GDDの連続的な調整が可能であるチャープミラーユニット(分散補償ユニット)が形成されても良い。
更に、かようなチャープミラーユニットにおいて、チャープミラーが複数設けられていても良いし、回転移動可能及び平行移動可能な複数のチャープミラーが設けられていても良いし、1以上の回転するチャープミラーと1以上の通常のミラー(分散補償せずあるいはGDD変化させずに反射即ち伝搬方向変換のみ行うことを目的としたミラー)が設けられていても良い。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例が示される。
但し、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。特に、実施例の中心波長は、800nmあるいは1030nmとされているところ、本発明における中心波長は、これらのものに限られない。
又、本発明の捉え方により、実施例が本発明の範囲外となる実質的な比較例となったり、比較例が本発明の範囲内である実質的な実施例となったりすることがある。
【0031】
本発明の実施例として、同一の板状の基材の片面(反射面)において、互いに膜構成の異なる誘電体多層膜を有しているチャープミラーの形成がシミュレートされた。
基材は、直径30mmの円形板状であり、光学ガラスBK7製である。
尚、反射面における誘電体多層膜は、真空蒸着によって、膜物質を、各膜厚の制御された状態で交互に蒸着させることで実際に形成可能である。
【0032】
実施例1~6における誘電体多層膜は、奇数層がTa
2O
5(高屈折率材料による高屈折率層)、偶数層がSiO
2(低屈折率材料による低屈折率層)である交互膜であり、各層は順に
図2~7に示すような物理膜厚を有している。実施例1~6における誘電体多層膜の全層数は、順に72,72,72,72,40,72である。
実施例7における誘電体多層膜は、奇数層がNb
2O
5(高屈折率層)、偶数層がSiO
2であり、各層は
図8に示すような物理膜厚を有している。実施例7における誘電体多層膜の全層数は、44である。
実施例8~9における誘電体多層膜は、奇数層がTa
2O
5、偶数層がSiO
2であり、各層は順に
図9~10に示すような物理膜厚を有している。実施例8~9における誘電体多層膜の全層数は、順に58,70である。
実施例10~11における誘電体多層膜は、奇数層がNb
2O
5、偶数層がSiO
2であり、各層は
図11~12に示すような物理膜厚を有している。実施例10~11における誘電体多層膜の全層数は、順に62,66である。
実施例12~16における誘電体多層膜は、奇数層がTa
2O
5、偶数層がSiO
2であり、各層は順に
図13~17に示すような物理膜厚を有している。実施例12~16における誘電体多層膜の全層数は、順に62,62,72,50,50である。
実施例17~18における誘電体多層膜は、奇数層がNb
2O
5、偶数層がSiO
2であり、各層は順に
図18~19に示すような物理膜厚を有している。実施例17~18における誘電体多層膜の全層数は、順に44,44である。
【0033】
実施例1~18の各反射面において、所定の波長の光パルスが入射角θ[°]につき0を超えて90未満で変えていった状態で反射する場合のGDDの分布(GDDの0°~90°の入射角依存性)がシミュレーションにより測定された。
光パルスの波長は、実施例1~6,8~9,12~16において中心波長1030nmないしその前後の1025nm,1035nm(Yb:YAGレーザー)であり、実施例7,11,17~18において中心波長800nmないしその前後の780nm,820nm(Ti:Sapphireレーザー)である。
実施例1~18に係る0°~90°の入射角依存性が、順に
図20~37に示される。
【0034】
実施例1(
図20)では、5≦θ≦30(Δθ=25)において、中心波長(1030nm)ないしその前後の波長(1025,1035nm)即ち対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、1025nm~1035nmにおけるGDD分布の平均に対し最小二乗法によりフィッティングした直線であるフィッティング直線(上記[数9])のa=37.2,b=-1060.9である。尚、基本入射角θ
0=5(s偏光)において、中心波長のGDD=-1000である。この入射角範囲(入射角域)における実施例1の反射率とGDD(
図20の一部拡大図)とが、
図38に示される。又、対象波長域及びその前後の領域即ち1020~1040nmにおいて、所定の入射角(θ=5,10,15,20,25,30)毎に、波長を徐々に変化させた場合の実施例1の反射率とGDD(波長依存性)とが、
図39に示される。尚、フィッティング直線は、横軸をθとし縦軸をGDDとした平面において定められるものであり、最小二乗法以外の手法によりフィッティングされたものであっても良い。
他方、45≦θ≦68(Δθ=23)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0035】
実施例2(
図21)では、5≦θ≦30(Δθ=25)において対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線におけるa=19.9,b=-988.2である。尚、θ
0=5(s偏光)において、中心波長のGDD=-1000である。この入射角範囲における実施例2の反射率とGDDとが
図40に示され、1020~1040nmにおいて、所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例2の反射率とGDDとが
図41に示される。
他方、45≦θ≦52(Δθ=7)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、75≦θ<90(Δθ=15)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0036】
実施例3(
図22)では、5≦θ≦30(Δθ=25)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=0.003,b=-999.7である。尚、θ
0=5(s偏光)において、中心波長のGDD=-1000である。この入射角範囲における実施例3の反射率とGDDとが
図42に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例3の反射率とGDDとが
図43に示される。
他方、40≦θ≦57(Δθ=17)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、70≦θ<75(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0037】
実施例4(
図23)では、5≦θ≦30(Δθ=25)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調減少しており、フィッティング直線のa=-19.2,b=-1013.4である。尚、θ
0=5(s偏光)において、フィッティング直線(線形(Ave))のGDD=-1000である。この入射角範囲における実施例4の反射率とGDDとが
図44に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例4の反射率とGDDとが
図45に示される。
他方、38≦θ≦62(Δθ=24)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0038】
実施例5(
図24)では、5≦θ≦30(Δθ=25)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=12.0,b=-301.9である。尚、θ
0=5(s偏光)において、フィッティング直線のGDD=-300である。この入射角範囲における実施例5の反射率とGDDとが
図46に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例5の反射率とGDDとが
図47に示される。
他方、38≦θ≦62(Δθ=24)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0039】
実施例6(
図25)では、12≦θ≦30(Δθ=18)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=154.9,b=-2946.0である。中心波長1030nmのGDDは、5≦θ≦30(Δθ=25)において単調増加している。尚、θ
0=5(s偏光)において、フィッティング直線のGDD=約-3000である。この入射角範囲における実施例6の反射率とGDDとが
図48に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例6の反射率とGDDとが
図49に示される。
他方、38≦θ≦43(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、50≦θ≦55(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、62≦θ≦72(Δθ=10)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0040】
実施例7(
図26)では、5≦θ≦30(Δθ=25)において、対象波長域780~820nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=1.3,b=-44.3である。尚、θ
0=5(s偏光)において、対象波長域平均(Ave)のGDD=-40である。この入射角範囲における実施例7の反射率とGDDとが
図50に示され、対象波長域及びその前後の領域即ち770~830nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例5の反射率とGDDとが
図51に示される。
他方、70≦θ≦77(Δθ=7)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0041】
実施例8(
図27)では、37≦θ≦53(Δθ=16)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=33.3,b=-666.6である。尚、θ
0=45(s偏光)において、フィッティング直線のGDD=-650である。この入射角範囲における実施例8の反射率とGDDとが
図52に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例8の反射率とGDDとが
図53に示される。
他方、0≦θ≦33(Δθ=33)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、55≦θ≦58(Δθ=3)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、70≦θ<90(Δθ=20)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0042】
実施例9(
図28)では、37≦θ≦54(Δθ=17)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=33.6,b=-664.9である。尚、θ
0=45(s偏光)において、フィッティング直線のGDD=-650である。この入射角範囲における実施例9の反射率とGDDとが
図54に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例9の反射率とGDDとが
図55に示される。
他方、23≦θ≦33(Δθ=10)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、85≦θ<90(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調増加している。
【0043】
実施例10(
図29)では、38≦θ≦53(Δθ=15)において、対象波長域780~820nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=1.8,b=-34.1である。中心波長のGDDは、36≦θ≦55(Δθ=19)において単調増加している。尚、θ
0=45(s偏光)において、対象波長域平均のGDD=-33である。この入射角範囲における実施例10の反射率とGDDとが
図56に示され、対象波長域及びその前後の領域即ち770~830nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例10の反射率とGDDとが
図57に示される。
他方、0≦θ≦10(Δθ=7)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0044】
実施例11(
図30)では、40≦θ≦52(Δθ=12)において、対象波長域780~820nmに係るGDDが単調増加しており、フィッティング直線のa=1.8,b=-34.1である。中心波長のGDDは、35≦θ≦55(Δθ=20)において単調増加している。尚、θ
0=45(s偏光)において、対象波長域平均のGDD=-30である。この入射角範囲における実施例11の反射率とGDDとが
図58に示され、対象波長域及びその前後の領域即ち770~830nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例11の反射率とGDDとが
図59に示される。
他方、0≦θ≦30(Δθ=30)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
【0045】
実施例12(
図31)では、25≦θ≦64(Δθ=39)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調減少している。
又、5≦θ≦30の入射角範囲における実施例12の反射率とGDDとが
図60に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例12の反射率とGDDとが
図61に示される。
図31,60によれば、0≦θ≦13(Δθ=13)において対象波長域に係るGDDが単調減少しており、19≦θ≦22(Δθ=3)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、0≦θ<15(Δθ=15)において単調減少しており、15≦θ≦22(Δθ=7)において単調増加している。
【0046】
実施例13(
図32)では、19≦θ≦67(Δθ=48)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調減少している。
又、5≦θ≦30の入射角範囲における実施例13の反射率とGDDとが
図62に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例13の反射率とGDDとが
図63に示される。
図32,62によれば、0≦θ≦7(Δθ=7)において対象波長域に係るGDDが単調減少しており、15≦θ≦17(Δθ=2)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、0≦θ<12(Δθ=12)において単調減少しており、12≦θ≦17(Δθ=5)において単調増加している。
【0047】
実施例14(
図33)では、30≦θ≦36(Δθ=6)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調減少しており、40≦θ≦43(Δθ=3)において、対象波長域に係るGDDが単調増加しており、46≦θ≦52(Δθ=6)において、対象波長域に係るGDDが単調減少しており、62≦θ≦82(Δθ=20)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、5≦θ≦30の入射角範囲における実施例14の反射率とGDDとが
図64に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例14の反射率とGDDとが
図65に示される。
図33,64によれば、9≦θ≦16(Δθ=7)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、5≦θ≦22(Δθ=17)において単調増加している。
【0048】
実施例15(
図34)では、0≦θ≦22(Δθ=22)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調減少しており、57≦θ<90(Δθ=33)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例15の反射率とGDDとが
図66に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例15の反射率とGDDとが
図67に示される。
図34,66によれば、35≦θ≦42(Δθ=7)において対象波長域に係るGDDが単調減少しており、50≦θ≦53(Δθ=3)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、30≦θ≦42(Δθ=12)において単調減少しており、45≦θ≦55(Δθ=10)において単調増加している。
【0049】
実施例16(
図35)では、0≦θ≦42(Δθ=42)において、対象波長域1025~1035nmに係るGDDが単調減少している。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例16の反射率とGDDとが
図68に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例16の反射率とGDDとが
図69に示される。尚、
図69(b)において、θ=55のデータは省略されている。
図35,68によれば、51≦θ≦53(Δθ=2)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、0≦θ≦43(Δθ=43)において単調減少しており、50≦θ≦54(Δθ=4)において単調増加している。
【0050】
実施例17(
図36)では、中心波長800nmのGDDが、0≦θ≦32(Δθ=32)において単調減少し、33≦θ≦42(Δθ=9)において単調増加し、43≦θ≦53(Δθ=10)において単調減少し、53≦θ<61(Δθ=8)において単調増加し、33≦θ≦42(Δθ=9)において単調増加し、62≦θ≦67(Δθ=5)において単調減少する。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例17の反射率とGDDとが
図70に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例17の反射率とGDDとが
図71に示される。
図36,70によれば、この入射角範囲において対象波長域1025~1035nmに係るGDDが何れも単調増加したり、何れも単調減少したりする部分は見受けられない。
【0051】
実施例18(
図37)では、対象波長域780~820nmに係るGDDが、0≦θ≦32(Δθ=32)において単調減少する。尚、中心波長800nmのGDDが、0≦θ<37(Δθ=35)において単調減少し、37≦θ≦49(Δθ=12)において単調増加し、49<θ≦70(Δθ=21)において単調減少し、70<θ≦80(Δθ=10)において単調増加する。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例16の反射率とGDDとが
図72に示され、1020~1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例18の反射率とGDDとが
図73に示される。
図37,72によれば、対象波長域のGDDが、42≦θ≦44(Δθ=2)において単調増加する。
【0052】
これらの実施例によれば、チャープミラーの反射面に対する光パルスの入射角を変更することで、GDDを連続的に変更することができる。
光パルスの入射角θは、
図74に示すようなチャープミラーユニット(分散補償ユニット)によって、容易に調整することができる。
即ち、チャープミラーユニットUは、光パルスP(伝搬経路即ち光路について一点鎖線で示される)の入射口IN及び出射口OUTを有するケース2と、光学多層膜E(誘電体多層膜)が形成された反射面Fを有するチャープミラーMと、チャープミラーMを回転可能であり又所望の回転位置で保持可能であるチャープミラー回転機構3と、光路調整ミラー4と、光路調整ミラー4を回転可能ないし平行移動可能であり又所望の回転位置ないし平行移動位置で保持可能である光路調整ミラー移動機構5と、を備えている。
チャープミラーM(実施例1~18の何れか等)は、ケース2内において、チャープミラー回転機構3を介して設けられている。チャープミラー回転機構3は、チャープミラーMにつながる鉛直方向の軸6を有しており、チャープミラーMを、その反射面Fの一点(例えば中心点)を含む鉛直線の周りで回転させ、又所望の回転位置で保持する。当該反射面Fの一点は、ここでは入射口INから入った光パルスPを受ける(反射させる)点である。
光路調整ミラー4は、ケース2内において、光路調整ミラー移動機構5を介して設けられている。光路調整ミラー移動機構5は、光路調整ミラー4につながる鉛直方向の軸(図示略)と、その軸が入るレール7とを有しており、光路調整ミラー4を、その中心を通る鉛直線の周りで回転可能であるようにし、又入射口INから入った光パルスPの伝搬経路と平行なレール7に沿って平行移動可能であるようにし、更に所望の回転位置ないし平行移動位置で保持する。光路調整ミラー4は、ここでは、対象波長域内で、何れの入射角においても(少なくとも対象入射角全域で)GDDがほぼ0である低分散ミラーである。尚、光路調整ミラー4は、光学多層膜を備えない金属製のミラーであっても良いし、光学多層膜を有するミラーであっても良いし、チャープミラーであっても良い。
出射口OUTは、レール7の仮想的な延長線上あるいはその隣接部位に配置され、入射口INと反対側に配置される。光路調整ミラー4は、チャープミラーMからの光パルスPの伝搬方向即ち反射光路の方向を、出射口OUTに向かう方向であって、レール7と平行な方向に変える。尚、出射口OUTは、入射口INと同じ側等に配置されても良い。又、光路調整ミラー4は、光パルスPの伝搬方向を、レール7と平行ではない方向や入射口INから入った光パルスPと平行ではない方向に変えても良い。又、光路調整ミラー4が複数設けられるようにし、反射光路が様々に変更されるようにしても良い。
【0053】
チャープミラーユニットUにおいて、入射口INまでの光パルスPのGVDに応じたGDDとなる入射角θを、入射口INからの光パルスPについて有するように、チャープミラーMがチャープミラー回転機構3により回転される。光路調整ミラー4は低分散ミラーであるから、そのGDDは考慮する必要がなく、チャープミラーMの回転による入射角θの調整が容易である。尚、チャープミラーユニットUにおいて、変更可能なGDDの幅(領域の大きさ)や対象波長域等を変更するといった目的で、チャープミラーMが交換可能であるようにされていても良い。又、チャープミラーMの回転に代えて、あるいはその回転と共に、チャープミラーMに入射する光パルスPの光路の移動を行うことで、入射角θの調整がなされても良い。
加えて、光路調整ミラー4が、チャープミラーMと平行となるように回転され、更にチャープミラーMからの光パルスPを反射するように平行移動されれば、チャープミラーMにより分散補償された光パルスPは、入射口INからの光パルスPと平行な一定の光路で出射口OUTから出ることとなり、チャープミラーMの回転移動毎にチャープミラーユニットU外部の光学系を調整し直す必要がなく、手間がかからない。
尚、光路調整ミラー4がチャープミラーである場合、チャープミラーMは、反射された光パルスが光路調整チャープミラーにより補償される分と同等のGDDを有するように、角度調整(GDD調整)される。
【0054】
そして、実施例1~18では、中心波長に係るGDDの値が、入射角θに対して単調増加又は単調減少する所定の入射角θの範囲を有している。
例えば、実施例1では、5≦θ≦30の範囲において、中心波長1030nmに係るGDDが、入射角θに対して、-1000程度から-180程度までにかけて単調増加している。
かような入射角θの範囲において入射角θを変更すれば、GDDを連続的に変更することができ、又単調増加あるいは単調減少により、入射角θの増加に対してGDDの変化が常に増加あるいは減少となって、入射角θの調整によるGDDの調整が行い易い。
【0055】
又、GDDが単調増加あるいは単調減少する入射角θの範囲(入射角θの変化の幅Δθ)が、15°以上あれば、入射角θの調整幅が十分なものとなり、GDDの調整幅を十分に確保したり(例えば実施例1の5≦θ≦30の範囲ではGDD=-1000~-180で調整可能)、GDDの微調整を可能としたり(例えば実施例3の5≦θ≦30の範囲参照)することができる。尚、入射角の変化の幅Δθについて、5°以上とすることもできるし、10°以上とすることもできるし、20°以上とすることもできるし、他の任意の値以上とすることもでき、大きいほどGDDの調整幅が十分なものとなり、あるいはGDDの微調整が可能となる。
【0056】
更に、対象波長域が1025~1035nmであれば、中心波長1030nmのYb:YAGレーザーに係る光パルスの分散補償に好適であり、780~820nm以下であれば、中心波長800nmのTi:Sapphireレーザーに係る光パルスの分散補償に好適である。
【0057】
又、対象波長域内における何れの波長においても、対象とする入射角変化領域内でGDDが入射角θについて単調増加しあるいは単調減少するようにすれば、対象波長域内全域に亘りGDDを同様に調整することができ、更に適切にGDDが調整されるチャープミラーMが提供される。中心波長1030nmのYb:YAGレーザーに係る光パルスを分散補償する場合、中心波長の両側に係る波長の光も構成要素として含んでいるから、その両側の領域のGDDも中心波長のGDDと同様に変化するものとすれば、より適切な分散補償に資することとなる。
例えば、実施例1では、
図39(b)に示されるように、対象波長域1025~1035nmの何れの波長に対しても、入射角θ[°]=5のGDDより10のGDDが大きく、同様に15,20,25,30の順でGDDがより大きく、対象波長域内における何れの波長においても、対象とする入射角変化領域(5≦θ≦30)内でGDDが入射角θについて単調増加し、入射角を増すと対象波長域全域でGDDが単調増加する。
【0058】
加えて、対象波長域の中心波長と両端の波長について、入射角θに対するGDDの各分布が(対象入射角領域内で)同様であると、対象波長域の大部分で入射角θに対するGDDの値が同様となり、対象波長域の大部分ないし全部に亘り適切にGDDが調整されるチャープミラーMが提供される。
例えば、実施例1では、
図38(b)に示されるように、5≦θ≦30において、1025nm(対象波長域最小端)のGDD分布と、1030nm(中心波長)のGDD分布と、1035nm(対象波長域最大端)のGDD分布とが、何れもGDD=-1000~-200にかけて右上がりの直線に沿ったものとなっており、互いに重なっている。よって、対象波長域の大部分ないし全部において、入射角θに対するGDDの値が同様となる。
実施例1では、対象波長域のGDDの平均値GDD
aveの入射角θに対する分布に対して、対象波長域最小端のGDD分布と、中心波長のGDD分布と、対象波長域最大端のGDD分布とが、何れもGDD
aveの変化幅の上下各15%以内に全て入っている。実施例1のθ=30において、GDD
aveの値(-160)に対して対象波長域最大端(1035nm)のGDDの値(-40)が最も離れているところ、対象波長域におけるGDD
aveの変化幅は840(-1000-(-160)の絶対値)であり、その上15%は-160+840×0.15=-34であって、-34≧-40であるから、GDD
aveの値に対して対象波長域最大端のGDDの値は、GDD
aveの変化幅の上15%以内に入っており、対象波長域最小端のGDD分布と、中心波長のGDD分布と、対象波長域最大端のGDD分布との同等度が高い。尚、GDD
aveの変化幅の15%以内ではなく、5%以内、10%以内、20%以内、あるいは他の任意の値以内とすることもでき、小さいほど対象波長域におけるGDD分布の同等性が高くなる。又、GDD
aveに代えて、そのフィッティング直線において上下所定%以内であるための基準線及び変化幅の少なくとも一方を把握することもできる。
かような観点を加味すると、実施例17は、0≦θ<90の何れの入射角においても、対象波長域最小端のGDD分布と、中心波長のGDD分布と、対象波長域最大端のGDD分布との同一性が少なく、又共に単調増加あるいは共に単調減少する入射角域も少なく、従って、他の実施例の方がより一層GDDを調整し易いものとなっている。
【0059】
又、対象波長域の中心波長とその他の波長について、入射角θに対するGDDの各分布が(対象入射角領域内で)定数分を除いて平行である場合、高次の分散補償をしつつGDDの調整を行うこともできる。
例えば、実施例5では、
図47で示されるように、GDDの値が波長の関数として増加しているので、このミラーは負の3次分散(Third Order Dispersion:TOD)を有している(TOD<0)。ここで、TODは、上記[数5]におけるωの非線形項の第2項であり、TOD=-∂
3φ/∂ω
3|
0である。入射角が増加すると、波長間の大小関係が変わることなく、GDDが単調増加する。即ち、3次分散が固定された状態で、2次分散であるGDDが調整可能となる。
【0060】
更に、GDDaveのフィッティング直線が、上記[数9]であって-200≦a≦200[fs2/°]であり、bは定数であって、-6000≦b≦6000[fs2]となるようであれば、対象入射角域においてGDDがより穏やかに変化するものとなり、入射角θの変化に基づくGDDの変化が取り扱い易いものとなって、GDDを制御し易いものとなる。
かようなフィッティング直線を有するものとして、上述の通り、実施例1~3,5~7(5≦θ≦30),実施例4(5≦θ≦29),実施例8(37≦θ≦53),実施例9(37≦θ≦54),実施例10(36≦θ≦55),実施例11(35≦θ≦55)が挙げられる。尚、実施例14では、a=226.3となり、この観点からは急激に変化し過ぎるものとなる。
【0061】
又、対象入射角域でGDDがマイナスからプラスに変化するようにすれば、正分散ミラーと負分散ミラーの2種類の特性が1つのチャープミラーにより実現され、GDDが多様に調整可能となって便利であるし、正分散ミラーと負分散ミラーを双方配置することが不要となって分散補償ユニットがコンパクトになる。
かような特徴を有するものとして、実施例6(5≦θ≦30,GDD=-2800~1000),実施例12~15が挙げられる。
【符号の説明】
【0062】
3・・チャープミラー回転機構、4・・光路調整ミラー、5・・光路調整ミラー移動機構、E・・光学多層膜(誘電体多層膜)、F・・反射面、M・・チャープミラー、U・・チャープミラーユニット。