(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】扉システム
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
B61B1/02
(21)【出願番号】P 2021139420
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503036988
【氏名又は名称】株式会社音楽館
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向谷 実
(72)【発明者】
【氏名】東田 利之
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6864941(JP,B1)
【文献】特開2019-077201(JP,A)
【文献】特開2018-158668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上の少なくとも第1固定位置で固定可能な第1扉部材と、
前記設置面上の少なくとも第2固定位置で固定可能な第2扉部材と、
前記第1扉部材及び前記第2扉部材のうち前記設置面上で固定されているいずれか一方の扉部材に対して他方の扉部材を引き寄せる力又は引き離す力を生じさせることにより、前記一方の扉部材に対して前記他方の扉部材を相対的に移動させる駆動システムと、
を有する扉システム。
【請求項2】
前記設置面には凹部が形成されており、
前記第1扉部材は、前記第1固定位置において、前記凹部に嵌る位置と前記凹部から退避した位置との間を移動可能な被固定体を有している、
請求項1に記載の扉システム。
【請求項3】
前記凹部の開口を塞ぐと共に、前記設置面の一部を構成する蓋部と、
前記凹部の底面と前記蓋部との間に配置されており、前記被固定体が前記凹部に嵌ることを許容するように縮むと共に、前記蓋部を前記設置面の一部を構成する位置に戻す弾性力を生じさせる弾性体と、
を有する請求項2に記載の扉システム。
【請求項4】
前記凹部は、その内面の一部に係合部を有しており、
前記被固定体は、爪部を有しており、
前記被固定体は、前記凹部に嵌った状態において前記爪部が前記係合部に引っ掛かるように姿勢を可変に設けられている、
請求項3に記載の扉システム。
【請求項5】
前記駆動システムに含まれる第1駆動源に加えて、前記被固定体を前記凹部に嵌る位置と前記凹部から退避した位置との間で移動させると共に前記被固定体の姿勢を変える駆動力を生じさせる第2駆動源を有する、
請求項4に記載の扉システム。
【請求項6】
前記第1扉部材は、その移動方向に延びる第1ガイドを有しており、
前記第2扉部材は、その移動方向に延びる第2ガイドを有しており、
前記第1ガイド上を摺動する第1ブロックと、前記第2ガイド上を摺動する第2ブロックと、が固定される前記第3扉部材をさらに有し、
前記駆動システムは、前記第1ブロックを移動させる第1駆動源と、前記第2ブロックを移動させる第3駆動源と、を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の扉システム。
【請求項7】
前記第1駆動源は、前記第1扉部材のハウジング内に収容されており、
前記第3駆動源は、前記第2扉部材のハウジング内に収容されている、
請求項6に記載の扉システム。
【請求項8】
前記第1扉部材及び前記第2扉部材は、前記設置面上で回転する車輪を備えており、
前記第3扉部材は、前記設置面に対して非接触である、
請求項6又は7に記載の扉システム。
【請求項9】
前記第1扉部材のハウジングの上面と前記第2扉部材のハウジングの上面の高さが異なっている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の扉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線路への転落防止など乗客の安全性を確保するためにプラットホーム上に設置される所謂ホームドアが知られている。ホームドアは、特許文献1に開示されるように、プラットホーム上に固定される複数の戸袋と、戸袋に収容される板状の扉とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、鉄道車両の扉の数やその間隔は車両毎に様々であり、それに応じた位置の乗降通路を確保可能なホームドアが求められている。しかしながら、プラットホーム上に戸袋が固定されて成るホームドアにおいては、乗降通路の位置の自由度が制限されてしまう。このように、設置面に対して固定される戸袋があることにより通路の位置の自由度が制限されてしまうことは、ホームドアに限られず、戸袋を有することが前提となっているあらゆる扉システムに共通の課題である。
【0005】
上記課題を鑑みて、本発明は、通路の位置の自由度が高い扉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
【0007】
(1)設置面上の少なくとも第1固定位置で固定可能な第1扉部材と、前記設置面上の少なくとも第2固定位置で固定可能な第2扉部材と、前記第1扉部材及び前記第2扉部材のうち前記設置面上で固定されているいずれか一方の扉部材に対して他方の扉部材を引き寄せる力又は引き離す力を生じさせることにより、前記一方の扉部材に対して前記他方の扉部材を相対的に移動させる駆動システムと、を有する扉システム。
【0008】
(2)(1)において、前記設置面には凹部が形成されており、前記第1扉部材は、前記第1固定位置において、前記凹部に嵌る位置と前記凹部から退避した位置との間を移動可能な被固定体を有している、扉システム。
【0009】
(3)(2)において、前記凹部の開口を塞ぐと共に、前記設置面の一部を構成する蓋部と、前記凹部の底面と前記蓋部との間に配置されており、前記被固定体が前記凹部に嵌ることを許容するように縮むと共に、前記蓋部を前記設置面の一部を構成する位置に戻す弾性力を生じさせる弾性体と、扉システム。
【0010】
(4)(3)において、前記凹部は、その内面の一部に係合部を有しており、前記被固定体は、爪部を有しており、前記被固定体は、前記凹部に嵌った状態において前記爪部が前記係合部に引っ掛かるように姿勢を可変に設けられている、扉システム。
【0011】
(5)(4)において、前記駆動システムに含まれる第1駆動源に加えて、前記被固定体を前記凹部に嵌る位置と前記凹部から退避した位置との間で移動させると共に前記被固定体の姿勢を変える駆動力を生じさせる第2駆動源を有する、扉システム。
【0012】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記第1扉部材は、その移動方向に延びる第1ガイドを有しており、前記第2扉部材は、その移動方向に延びる第2ガイドを有しており、前記第1ガイド上を摺動する第1ブロックと、前記第2ガイド上を摺動する第2ブロックと、が固定される前記第3扉部材をさらに有し、前記駆動システムは、前記第1ブロックを移動させる第1駆動源と、前記第2ブロックを移動させる第3駆動源と、を含む、扉システム。
【0013】
(7)(6)において、前記第1駆動源は、前記第1扉部材のハウジング内に収容されており、前記第3駆動源は、前記第2扉部材のハウジング内に収容されている、扉システム。
【0014】
(8)(6)又は(7)において、前記第1扉部材及び前記第2扉部材は、前記設置面上で回転する車輪を備えており、前記第3扉部材は、前記設置面に対して非接触である、扉システム。
【0015】
(9)(1)~(8)のいずれかにおいて、前記第1扉部材のハウジングの上面と前記第2扉部材のハウジングの上面の高さが異なっている、扉システム。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)~(9)の側面によれば、通路の位置の自由度が高い扉システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る扉システムが設けられるプラットホームに鉄道車両が停車している様子を示す斜視図である。
【
図2A】本実施形態に係る扉システムの内部構造を示す斜視図である。
【
図2B】本実施形態に係る扉システムの断面図である。
【
図3B】第1固定部及び第2固定部の外観を示す斜視図である。
【
図4A】アンカー部が固定状態にある第1扉部材の内部構造を示す図である。
【
図4B】
図4Aに示す状態からアンカー部が回転した様子を示す図である。
【
図4C】
図4Bに示す状態からアンカー部が上方に移動した様子を示す図である。
【
図5A】本実施形態に係る扉システムが閉位置にある状態を示している。
【
図5B】閉位置から第1扉部材及び第3扉部材が移動する途中の様子を示している。
【
図5C】本実施形態に係る扉システムが開位置にあり、扉システムの左側に乗降通路が形成された状態を示している。
【
図5D】閉位置から第2扉部材及び第3扉部材が移動する途中の様子を示している。
【
図5E】本実施形態に係る扉システムが開位置にあり、扉システムの右側に乗降通路が形成された状態を示している。
【
図6】本実施形態の第1変形例に係る扉システムの全体構成を示す図である。
【
図7】本実施形態の第2変形例に係る扉システムにおいて扉部材が直線的に移動する様子を示す図である。
【
図8】本実施形態の第2変形例に係る扉システムにおいて扉部材が回動する様子を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態(以下、本実施形態ともいう)について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0019】
以下の説明において、
図2A等の矢印X1が示す方向を左方と定義し、矢印X2が示す方向を右方と定義する。本実施形態において、「左方」とは、扉システム100よりもプラットホームP上の内側から線路側を見た際の左方であり、「右方」とは、扉システム100よりもプラットホームP上の内側から線路側を見た際の右方である。すなわち、
図2A等において、後述の第1扉部材10、第3扉部材30、及び第2扉部材20は、左方からこの順で並んで配置されている。また、本実施形態において、左方及び右方は、鉄道車両Tの移動方向である。
【0020】
また、
図2A、
図2Bの矢印Y1及び矢印Y2が示す方向は、各扉部材の「厚み方向」である。厚み方向は、乗客が鉄道車両Tに乗り降りする際に進む方向である。また、
図2A等の矢印Z1が示す方向は上方であり、矢印Z2が示す方向は下方である。
【0021】
[扉システムの全体構成]
図1を参照して、本実施形態に係る扉システム100の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る扉システムが設けられるプラットホームに鉄道車両が停車している様子を示す斜視図である。
【0022】
扉システム100は、プラットホームPから線路への落下防止など乗客の安全性を確保するために、プラットホームPのうち線路側の縁に沿うように設けられている。ここで、プラットホームPとは、線路上を走行する電車や新幹線等の鉄道車両Tが停車する駅において乗客が鉄道車両Tに乗り降りするために設けられる乗車場所である。
【0023】
なお、プラットホームP上には扉システム100のみが複数並んで設けられていてもよいし、扉システム100以外の装置が設けられていてもよい。
図1においては、左方から右方に向かって、扉システム100A、板状の扉201、202を収容可能な戸袋201を備える扉装置200、扉システム100B、扉システム100Cがこの順で並んで設けられる例を示している。戸袋201は、プラットホームPに固定されている。
【0024】
扉システム100は、第1扉部材10と、第2扉部材20と、第3扉部材30と、駆動システムと、を有している。第1扉部材10、第2扉部材20、及び第3扉部材30は、駆動システムの駆動力により、プラットホームPの設置面上を移動可能に構成される板状の構造体である。第1扉部材10、第2扉部材20、及び第3扉部材30は、鉄道車両Tの移動方向(すなわち左右方向)に移動可能に設けられている。なお、設置面とは、扉システム100が設置される面であり、本実施形態においてはプラットホームPの床面である。
【0025】
また、扉システム100は、プラットホームPに設けられており、プラットホームPの設置面上の第1固定位置で第1扉部材10を固定する複数の第1固定部P1を含む。また、扉システム100は、プラットホームPに設けられており、プラットホームPの設置面上の第2固定位置で第2扉部材20を固定する複数の第2固定部P2を含む。本実施形態においては、第1固定部P1及び第2固定部P2が、プラットホームP上の設置面の一部を構成するようにプラットホームPに埋め込まれている例について説明する。
【0026】
なお、本実施形態において、「固定状態」とは、第1扉部材10が有するアンカー部123が第1固定部P1の凹部P11に嵌った状態をいう。固定状態において、第1扉部材10はプラットホームPの設置面上で移動不可となる。また、「非固定状態」とは、第1扉部材が有するアンカー部123が第1固定部P1から退避した状態をいう。非固定状態において、第1扉部材10はプラットホームPの設置面上を移動可能となる。第2扉部材20についても同様である。
【0027】
また、本実施形態において、「開位置」とは、扉システム100が乗降通路Eへの乗客の進入を許容する位置である。また、「閉位置」とは、扉システム100が乗降通路Eへの乗客の進入を規制する位置である。本実施形態においては、開位置において、第1扉部材10、第2扉部材20、第3扉部材30はそれらの移動方向において互いに重なる位置にある例を説明する。後述の
図5Aは扉システム100が閉位置にある状態を示している。また、後述の
図5C及び
図5Eは扉システム100が開位置にある状態を示している。
【0028】
ここで、乗降通路Eとは、駅に鉄道車両Tが停車した際に、プラットホームP上の扉システム100よりも内側にいる乗客が鉄道車両T内へ乗車するように移動する、又は鉄道車両T内からプラットホームP上の扉システム100よりも内側へ移動する際に通過する通路であると定義する。
【0029】
また、第1扉部材10の第1固定位置とは、扉システム100が開位置及び閉位置にある状態における第1扉部材10の位置である。同様に、第2扉部材20の第2固定位置とは、扉システム100が開位置及び閉位置にある状態における第2扉部材20の位置である。すなわち、本実施形態において、第1固定位置及び第2固定位置はそれぞれ2箇所ある。
【0030】
[第1扉部材10の構成の詳細]
図2A、
図2Bを参照して、本実施形態の第1扉部材の構成の詳細について説明する。
図2Aは、本実施形態に係る扉システムを示す斜視図である。なお、
図2Aにおいては、第1扉部材10及び第2扉部材20の内部構造を示すように、それらのハウジングの一部を省略して図示している。
図2Bは、本実施形態に係る扉システムの断面図である。なお、
図2Bは、リニアブロック115、215と、アンカー部123、223と、第1固定部P1と、第2固定部P2とを通過する切断面で切り取った断面を示している。
【0031】
第1扉部材10は、駆動システムの一部を構成する駆動ユニット11と、被固定ユニット12と、それらを収容すると共に第1扉部材10の外装を構成するハウジング13と、設置面上で回動する車輪14と、を有している。第1扉部材10は、プラットホームPの設置面上で固定される複数の第1固定位置間を移動可能に構成されている。
【0032】
本実施形態においては、第1扉部材10は2カ所の第1固定位置間を移動可能であって、第1固定位置にある第1扉部材10を固定する第1固定部P1がそれぞれ2つ設けられる例について説明する。すなわち、第1固定部P1が、1の第1扉部材10に対して4つ設けられる例について説明する。
図2A中には表れていないが、
図2Aに示す第1扉部材10の真下にも一対の第1固定部P1が設けられている。
【0033】
[第1扉部材10の構成の詳細:駆動ユニット11]
駆動ユニット11は、第1駆動源であるモータ111と、環状のタイミングベルト112と、タイミングベルトが架け渡される複数のプーリ113と、第1ガイドであるリニアガイド114と、リニアガイド114上を摺動する第1ブロックであるリニアブロック115と、接続部116とを含んで構成される。なお、駆動ユニット11を構成する、モータ111、プーリ113、及びリニアガイド114は、ハウジング13に対して直接又は間接的に固定されている。一方、駆動ユニット11を構成するリニアブロック115は、後述の第3扉部材30のハウジング33に対して直接又は間接的に固定されている。
【0034】
リニアガイド114は、ハウジング13の左端部から右端部に亘って第1扉部材10の移動方向に沿って延びている。また、リニアブロック115は、リニアガイド114の左端部と右端部との間を行き来可能に設けられている。
【0035】
図2Aにおいては、リニアガイド114、及びそれに対応するリニアブロック115がそれぞれ鉛直方向に並んで4つ設けられる例を示している。ただし、リニアガイド114及びリニアブロック115の数は一例であり、これに限られるものではない。また、リニアガイドの114の長さは
図2Aに示すものに限られるものではない。リニアガイド114は、少なくともハウジング13内に収容可能な長さであればよい。
【0036】
また、
図2Aにおいては、プーリ113が5つ設けられる例を示している。ただし、プーリ113の数も一例であり、これに限られるものではない。
【0037】
モータ111が駆動し、回転力を生じさせると、5つのプーリ113のうちモータ111の駆動軸と同軸上に配置される駆動プーリ113aが回転する。駆動プーリ113aの回転に伴いタイミングベルト112が回転する。
【0038】
接続部116は、タイミングベルト112と、1のリニアブロック115とを接続している。
図2Aにおいては、接続部116が、タイミングベルト112と、鉛直方向において一番下側に配置されるリニアブロック115とを接続する例を示している。また、タイミングベルト112の下部は、リニアガイド114に沿うように延びている。
【0039】
このような構成により、タイミングベルト112の回転に伴い、接続部116が移動する。そして、接続部116の移動に伴い、リニアブロック115がリニアガイド114に沿って直線移動をする。そして、リニアブロック115の直線移動に伴い、第1扉部材10に対して第3扉部材30が相対移動する、又は第3扉部材30に対して第1扉部材10が相対移動する。具体的には、第1扉部材10が固定状態にあり、かつ第2扉部材20が非固定状態にある場合、第1扉部材10に対して第3扉部材30が相対的に移動する。一方、第2扉部材20が固定状態にあり、かつ第1固定部材10が非固定状態にある場合、第3扉部材30に対して第1扉部材10が相対的に移動する。
【0040】
なお、第1扉部材10は、車輪14を直接回転させるための動力源を有していない。車輪14は、モータ111からの動力により第1扉部材10が左右方向に移動するのに伴い、設置面上で回転する。設置面上で回転する車輪14を有することより、第1扉部材10が車輪14に支えられ、リニアガイド114及びリニアブロック115に掛かる負荷が低減される。そのため、リニアブロック115の移動がスムーズになる。なお、本実施形態においては、第1扉部材10の移動方向に離間して配置される2つの車輪14を有する例を示すが、車輪14の数や位置は図示の例に限られない。
【0041】
リニアブロック115は、
図2Bに示すように、リニアガイド114に噛み合って摺動する摺動部115aと、摺動部115aに固定される固定部115bと、第3扉部材30のハウジング33と固定部115bとを接続する接続部115cとを有するとよい。また、第1扉部材10のハウジング13の面のうち第3扉部材30側(線路側)の面には、リニアブロック115の移動方向に沿うスリットSLが形成されているとよい。そして、接続部115cが、スリットを通過するように厚み方向に延びており、固定部115bと第3扉部材30のハウジング33とを接続しているとよい。
【0042】
[第1扉部材10の構成の詳細:被固定ユニット12]
被固定ユニット12は、第2駆動源であるモータ121と、回転体122と、柱状の被固定体であるアンカー部123と、回転体122の回転に伴いアンカー部123を動作させるアンカー動作板124と、を含んで構成される。
【0043】
本実施形態においては、被固定ユニット12が、上下方向に延びる円柱状のアンカー部123を4つ有する例について説明するが、アンカー部123の数や形状はこれに限られるものではない。
【0044】
アンカー動作板124は、左右方向に延びる板状の部材であり、4つのアンカー部123の周面の一部にそれぞれ固定されている。
【0045】
また、回転体122は、周方向の一部に形成される切り欠き122a(
図4A~
図4C参照)を有しており、アンカー動作板124は、第1扉部材10の厚み方向に延びると共に切り欠き122aに嵌る突起124a(
図4A~
図4C参照)を有している。モータ121が駆動し、回転力を生じさせると、モータ121の駆動軸と同軸上に配置される回転体122が回転する。また、回転体122の回転により、アンカー動作板124が動作する。そして、アンカー動作板124の動作により、4つのアンカー部123の姿勢が変わる。アンカー動作板124及びアンカー部123の動作の詳細について
図4A~
図4Cを参照して後述する。
【0046】
[第2扉部材20]
次に、
図2Aを参照して、本実施形態の第2扉部材の構成の詳細について説明する。
【0047】
第2扉部材20は、その内部構造は第1扉部材10と同様であり、第1扉部材10に対して、厚み方向において第3扉部材30を中心として対称に配置されている。そのため、
図2Aに示す第2扉部材20を背面側(厚み方向の反対側)から見た場合、
図2Aに示す第1扉部材10と同様の構成となっている。すなわち、第2扉部材20は、駆動システムの一部を構成する駆動ユニット21と、被固定ユニット22と、それらを収容すると共に第2扉部材20の外装を構成するハウジング23と、設置面上で回転する車輪24と、を有している。第2扉部材20は、第1扉部材10よりも線路側に設けられている。
【0048】
駆動ユニット21は、第3駆動源であるモータ211と、環状のタイミングベルト212と、タイミングベルト212が架け渡される複数のプーリ213と、第2ガイドであるリニアガイド214と、リニアガイド214上を摺動する第2ブロックであるリニアブロック215と、を含んで構成される。また、被固定ユニット22は、モータ221と、回転体(モータ221により隠れているため不図示)と、柱状の被固定体であるアンカー部223と、回転体の回転動に伴いアンカー部223を動作させるアンカー動作板224と、を含んで構成される。駆動ユニット21を構成するリニアブロック215は、後述の第3扉部材30のハウジング33に対して直接又は間接的に固定されている。具体的には、接続部215cが、第2扉部材20のハウジング21に形成されるスリットSL(
図1、
図2B参照)を通過するように延びると共にハウジング33と固定部215bとを接続するように設けられることで、リニアブロック215がハウジング33に対して固定されている。
【0049】
[第3扉部材30]
次に、
図2Aを参照して、本実施形態の第3扉部材30の構成の詳細について説明する。なお、
図2Aにおいては、第3扉部材30を二点鎖線で示している。
【0050】
第3扉部材30は、扉システム100の厚み方向において、第1扉部材10よりも線路側であって、第2扉部材20よりもプラットホームP上の内側に設けられている。
【0051】
第3扉部材30は、その外装を構成するハウジング33を有している。第3扉部材30の厚み方向におけるハウジング33の一方の面にはリニアブロック115が固定されており、他方の面にはリニアブロック215が固定されている。
【0052】
そのため、第3扉部材30は、リニアブロック115の移動に伴って第1扉部材10に対して相対的に移動し、リニアブロック215の移動に伴って第2扉部材20に対して相対的に移動する。また、第3扉部材30が第1扉部材10に対して相対的に移動することより、第2扉部材20は第1扉部材10に対して相対的に移動することとなる。同様に、第3扉部材30が第2扉部材20に対して相対的に移動することより、第1扉部材10は第2扉部材20に対して相対的に移動することとなる。
【0053】
なお、第3扉部材30は、第1扉部材10及び第2扉部材20と異なり、駆動源を含む駆動ユニットを有していない。すなわち、第3扉部材30は、第1扉部材10の駆動ユニット11及び第2扉部材20の駆動ユニット21からの駆動力のみによって移動する。また、第3扉部材30は車輪を有しておらず、ハウジング33の底面がプラットホームPから離間するように第1扉部材10及び第2扉部材20に支持されている。すなわち、第3扉部材30は設置面に対して非接触である。
【0054】
[固定構造]
次に、
図3A、
図3Bを参照して、プラットホームPの第1固定部P1において第1扉部材10を固定する固定構造について説明する。
図3Aは、本実施形態における固定構造を示す斜視図である。
図3Bは、第1固定部及び第2固定部の外観を示す斜視図である。なお、ここで、固定構造とは、アンカー部の下端部と、プラットホームPの固定部とからなる構造である。
【0055】
図3Aにおいては、アンカー部123が第1固定部P1から退避した状態を示している。また、
図3Aにおいては、第1固定部P1のうち設置面より下方であって、外部から視認できない部分を二点鎖線で示している。なお、第2固定部P2は、第1固定部P1と同様の構造を有するため、その説明については省略する。
【0056】
図3Bにおいては、第1扉部材10が第1固定部P1上に位置しておらず、第2扉部材20も第2固定部P2上に位置していない状態を示している。
図3Bに示すように、厚み方向で互いに隣り合う第1固定部P1と第2固定部P2は一体に構成されていてもよい。そして、一体に構成される第1固定部P1と第2固定部P2とは、プラットホームPに埋め込まれて固定されると共に、設置面の一部を構成していてもよい。
【0057】
アンカー部123は、円柱状であり、その外周に爪部123aが設けられている。爪部123aは、アンカー部123のうち円柱状の部分よりも径が大きい部分である。なお、爪部123aは、アンカー部123の円柱状の部分と一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0058】
第1固定部P1は、アンカー部123の下端部が嵌る凹部P11と、凹部P11の底部に設けられる弾性体である戻しバネP12と、戻しバネP12の上部に固定される蓋部P13と、凹部P11の内周面から径方向内側に突出する係合部P14とを有している。
【0059】
蓋部P13は、凹部P11の開口を塞ぐと共に、設置面の一部を構成可能に設けられている。戻しバネP12は、アンカー部123が凹部P11に嵌ることを許容するように縮むと共に、蓋部P13を設置面の一部を構成する位置に戻す弾性力を生じさせる。係合部P14は、その上面がプラットホームPの設置面の一部を構成している。また、蓋部P13は、その外周に、上面視における係合部P14の外形に沿う形状の切り欠きP131を有している。
【0060】
[被固定ユニットの動作]
次に、
図3A、及び
図4A~
図4Cを参照して、被固定ユニット12の動作について説明する。
図4Aは、アンカー部が固定状態にある第1扉部材の内部構造を示す図である。
図4Bは、
図4Aに示す状態からアンカー部が回転した様子を示す図である。
図4Cは、
図4Bに示す状態からアンカー部が上方に移動した様子を示す図である。なお、
図4A~
図4Cにおいては、アンカー部123の下端部及び第1固定部P1の図示を省略している。
図4A~
図4Cにおいては、アンカー動作板124の動作を説明し、アンカー部123の下端部の動作については
図3Aを参照して説明する。
【0061】
まず、第1扉部材10が固定状態から非固定状態となる際の被固定ユニット12の動作について説明する。
【0062】
モータ121が、
図4Aに示す矢印R1方向に回転するのに伴い回転体122が矢印R1方向に回転する。これにより、回転体122の切り欠き122aに嵌る突起124aを有するアンカー動作板124が
図4Aに示す矢印D1方向に移動する。アンカー動作板124が矢印D1方向に移動するのに伴い、アンカー部123のうちアンカー動作板124が固定される部分が矢印d1方向にそれぞれ移動し、アンカー部123の姿勢が変わる。具体的には、アンカー部123が、上下方向に延びる軸を回転中心として
図4Bに示す矢印r1方向に回転する。アンカー部123が矢印r1方向に回転することにより、アンカー部123の爪部123aが、上面視において係合部P14と重ならない位置に移動する。
【0063】
さらに回転体122が矢印R1方向に回転することで、回転体122の切り欠き122aに嵌る突起124aは上方に移動する。これにより、アンカー動作板124が
図4Cに示す矢印u方向(上方)に移動すると共に、アンカー部123が
図4Cに示す矢印U方向に移動する。その結果、アンカー部123が上方に移動することで、アンカー部123が固定部P1から退避する。
【0064】
この際、蓋部P13は戻しバネP12の弾性力により上方に移動し、設置面の一部を構成する位置に戻ることとなる。すなわち、蓋部P13は、凹部P11の開口を塞ぐ
図3Aに示す状態になる。このように、蓋部P13及び戻しバネP12を有する構成を採用することにより、アンカー部123が嵌っていない状態において凹部P11が外部に露出しない。そのため、凹部P11に粉塵等が侵入することを抑制できる。
【0065】
以上のような動作を実現するため、固定状態において、回転体122の切り欠き122aは、回転体122の下部に位置しているとよい。すなわち、切り欠き122aは、回転体122の回転に伴い、左方に移動した後、上方に移動する位置にあるとよい。このような構成により、アンカー動作板124を、左方に移動した後、上方に移動させることが可能となる。回転体122は、その回転角度が45度以上であって180度以下であるとよい。なお、本実施形態においては、回転という回転体122の1の動作により、アンカー動作板124を左方及び上方へ移動させる例を説明したが、これに限られない。例えば、アンカー動作板124を左右方向に移動させる動力及び機構と、アンカー動作板124を上下方向に移動させる動力及び機構とをそれぞれ備えていてもよい。
【0066】
次に、アンカー部123が非固定状態から固定状態になる際の動作について説明する。なお、非固定状態から固定状態になる際の動作は、上述の固定状態から非固定状態になる際の逆の動きとなる。そのため、具体的な図示については省略し、固定状態から非固定状態になる際の動作の説明に用いた
図3A、
図4A~
図4Cを参照して説明することとする。
【0067】
モータ121が、
図4Cに示す非固定状態から、矢印R1方向と反対方向に回転するのに伴い回転体122が矢印R1方向の反対方向に回転する。これにより、回転体122の切り欠き122aに嵌る突起124aを有するアンカー動作板124が下方に移動する。また、アンカー部123も同様に下方に移動する。すなわち、
図4Cに示す状態から
図4Bに示す状態となる。そして、アンカー部123の下端部に蓋部P13が押される。それにより、アンカー部123の下端部が凹部P11に嵌り、爪部123aが係合部P14よりも下方に位置する。
【0068】
さらに回転体122が矢印R1方向と反対方向に回転することで、回転体122の切り欠き122aに嵌る突起124aは矢印D1の反対方向(右方向)に移動する。これにより、アンカー動作板124が矢印D1方向の反対方向に移動する。
【0069】
アンカー動作板124が矢印D1方向の反対方向に移動するのに伴い、アンカー部123が
図4Bに示す矢印r1方向の反対方向に回転する。これにより、上面視において爪部123aが係合部P14と重なる位置に移動する。すなわち、爪部123aが係合部P14に引っ掛かる位置となり、アンカー部123が凹部P11から抜けなくなる。すなわち、アンカー部123が第1固定部P1に固定される。その結果、第1扉部材10が設置面上で移動不可の固定状態となる。
【0070】
[開閉動作]
次に、
図5A~
図5Eを参照して、本実施形態における扉部材の開閉動作について説明する。
図5Aは、本実施形態に係る扉システムが閉位置にある状態を示している。
図5Bは、閉位置から第1扉部材及び第3扉部材が移動する途中の様子を示している。
図5Cは、本実施形態に係る扉システムが開位置にあり、扉システムの左側に乗降通路が形成された状態を示している。
図5Dは、閉位置から第2扉部材及び第3扉部材が移動する途中の様子を示している。
図5Eは、本実施形態に係る扉システムが開位置にあり、扉システムの右側に乗降通路が形成された状態を示している。
【0071】
図5A~
図5Eにおいては、プラットホームPの断面も示している。なお、
図5A~
図5Eにおいては、
図3のV-V切断線で切り取った断面を示している。すなわち、図中の左側においては第1固定部P1の断面を示しており、図中の右側においては第2固定部P2の断面を示している。
【0072】
また、
図5A~
図5Eにおいては、第1固定部P1及び第2固定部P2と、アンカー部123、223の下端部については簡略化して図示している。具体的には、第1固定部P1のうち凹部内の戻しバネP12のみに符号を付けて示しており、同様に第2固定部P2のうち凹部内の戻しバネP22のみに符号を付けて示している。
【0073】
なお、
図5A、
図5B、
図5Cにおいて、第1扉部材10は非固定状態にあり、第2扉部材20は固定状態にある。すなわち、
図5A、
図5B、
図5Cにおいて、アンカー部123は第1固定部P1から退避した状態にあり、アンカー部223は第2固定部P2に固定された状態にある。また、
図5D、
図5Eにおいて、第1扉部材10は固定状態にあり、第2扉部材20は非固定状態にある。すなわち、
図5D、
図5Eにおいて、アンカー部123は第1固定部P1に固定された状態にあり、アンカー部223は第2固定部P2から退避した状態にある。
【0074】
[開閉動作:第1扉部材の移動]
駆動ユニット11において、タイミングベルト112を
図5Bに示す矢印T11方向(時計回り)に回転させるようにモータ111が駆動すると、上述したように、リニアブロック115が
図5Bに示す矢印B11方向に移動する。これに伴い、第1扉部材10が第3扉部材30に対して相対的に移動することとなる。すなわち、第1扉部材10が、第3扉部材30に引き寄せられる力を受け、
図5Bに示す矢印H11方向に移動する。
【0075】
また、駆動ユニット21において、タイミングベルト212を
図5Bに示す矢印T21方向(反時計回り)に回転させるようにモータ211が駆動すると、リニアブロック215が
図5Bに示すB21方向に移動する。これに伴い、第3扉部材30が第2扉部材20に対して相対的に移動することとなる。すなわち、第3扉部材30が、第2扉部材20から引き寄せられる力を受け、
図5Bに示す矢印H21方向に移動する。
【0076】
以上説明したように駆動ユニット11及び駆動ユニット21が駆動することにより、扉システム100は、
図5Aに示す状態から
図5Bに示す状態を経て、
図5Cに示す状態となる。すなわち、第1扉部材10及び第3扉部材30が閉位置から右方に移動することとなる。これにより、扉システム100の左側に乗降通路Eが形成される。
【0077】
一方、タイミングベルト112を矢印T11方向と反対方向に回転させるようにモータ111が駆動すると共に、タイミングベルト212を矢印T21方向と反対方向に回転させるようにモータ211が駆動する場合、扉システム100は、
図5Cに示す状態から
図5Bに示す状態を経て、
図5Aに示す状態となる。これは、駆動ユニット11により第1扉部材10が第3扉部材30から引き離される力を受け、駆動ユニット21により第3扉部材30が第2扉部材20から引き離される方向の力を受けるためである。
【0078】
本実施形態においては、駆動ユニット11のモータ111と、駆動ユニット21のモータ211とが同じタイミングで駆動する例について説明した。すなわち、第1扉部材10が第3扉部材30に引き寄せられる力を受けている間に、第3扉部材30が第2扉部材20に引き寄せられる力を受ける例について説明した。このように、各扉部材の駆動を同時並行に行うことで、扉システム100において閉位置と開位置間の移動スピードを速くすることができる。ただし、これに限られるものではなく、モータ111とモータ211のうち一方のモータの駆動が完了してから他方のモータの駆動を開始してもよい。
【0079】
[開閉動作:第2扉部材の移動]
駆動ユニット21において、タイミングベルト212を
図5Dに示す矢印T22方向に回転させるようにモータ211が駆動すると、リニアブロック215が
図5Dに示す矢印B22方向に移動する。これに伴い、第2扉部材20が第3扉部材30に対して相対的に移動することとなる。すなわち、第2扉部材20が
図5Dに示す矢印H22方向に移動する。これは、駆動ユニット21により第2扉部材20が第3扉部材30に引き寄せられる力を受けるためである。
【0080】
また、駆動ユニット11において、タイミングベルト112を
図5Dに示す矢印T12方向に回転させるようにモータ111が駆動すると、リニアブロック115が
図5Dに示す矢印B12方向に回転する。これに伴い、第3扉部材30が第1扉部材10に対して相対的に移動することとなる。すなわち、第3扉部材30が第1扉部材10から引き寄せられる力を受け、
図5Dに示す矢印H12方向に移動する。
【0081】
以上説明したように、駆動ユニット11及び駆動ユニット21が駆動することにより、扉システム100は、
図5Aに示す状態から
図5Dに示す状態を経て、
図5Eに示す状態となる。すなわち、第2扉部材20及び第3扉部材30が閉位置から左方に移動することとなる。これにより、扉システム100の右側に乗降通路Eが形成される。
【0082】
一方、タイミングベルト212を矢印T22方向と反対方向に回転させるようにモータ211が駆動すると共に、タイミングベルト112を矢印T12と反対方向に回転させるようにモータ111が駆動する場合、扉システム100は、
図5Eに示す状態から
図5Dに示す状態を経て、
図5Aに示す状態となる。これは、駆動ユニット11により第3扉部材30が第1扉部材10から引き離される力を受け、駆動ユニット21により第2扉部材20が第3扉部材30から引き離される力を受けるためである。
【0083】
[まとめ]
以上説明した本実施形態に係る扉システム100は、プラットホームPに固定される不動の戸袋を有しないことより、乗降通路Eの位置の自由度が高い。そのため、鉄道車両Tの扉の位置や間隔に応じた位置に乗降通路Eを形成することができる。また、第1扉部材10は第1固定位置で第1固定部Pに固定されることより、停止した状態における姿勢が安定し、転倒することが抑制される。第2扉部材20においても同様である。また、本実施形態においては、プラットホームP上に、扉部材が走行するレールやガイドを設ける必要がない。そのため、扉システム100を設置するための工事が容易である。また、プラットホームP上にレールやガイドが設けられることによる段差が乗降通路Eに形成されることもない。
【0084】
[その他]
本実施形態においては、扉部材が3つである例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、扉部材は2つであってもよい。この場合、駆動システムが有する駆動ユニットは1つであってもよい。また、扉部材は4つ以上であってもよい。この場合、第3扉部材30が2つ以上であり、それら第3扉部材30が互いにリニアガイドとリニアブロックを介して接続されており、リニアガイド上でのリニアブロックの摺動に伴い相対移動可能となっているとよい。
【0085】
また、本実施形態においては、扉部材の固定状態を安定させるために、アンカー部123が爪部123aを有しており、第1固定部P1が係合部P14を有しており、アンカー部123が凹部P11から引き抜けない構造を採用したが、これに限られない。すなわち、第1扉部材10が設置面上で固定され、移動不可となる構造であればよい。例えば、アンカー部123の下端部に雄螺子が切られており、凹部P11の内周面に雌螺子が切られており、アンカー部123の下端部が凹部P11に対してネジ締結される構成であってもよい。または、例えば、アンカー部123の下端部に駆動可能な爪部が設けられており、アンカー部123の下端部が凹部P11に嵌った状態で、爪部が第1固定部P1のいずれかの部分に引っ掛かるよう駆動する構成であってもよい。または、例えば、アンカー部123が単に凹部P11に嵌るだけの構成であってもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、扉部材がアンカー部を有する構成を説明したが、扉部材を固定する構造はこれに限られない。例えば、プラットホームP側にアンカー部が設けられており、扉部材側の凹部に嵌ることで扉部材を固定する構成であってもよい。
【0087】
また、本実施形態においては、プラットホームPの設置面に固定部P1が設けられる例について説明したが、これに限られない。例えば、フルスクリーン型のホームドアの場合、天井側に固定部P1が設けられていてもよい。この場合、扉部材は上方に突出するアンカー部を有しているとよい。
【0088】
また、本実施形態においては、第1扉部材10が開位置及び閉位置の2箇所において第1固定部P1により固定可能な例を説明したが、これに限られない。例えば、第1扉部材10は、閉位置のみにおいて第1固定部P1に固定される構成でもよい。すなわち、第1扉部材10は、少なくとも1カ所において第1固定部P1により固定可能であればよい。一方、第1扉部材10は3箇所以上の位置において第1固定部P1により固定可能であっても構わない。この場合、第1扉部材10の固定位置の数に応じた数の第1固定部P1が設けられているとよい。このような構成とすることで、乗降通路Eの開口幅を可変とすることが可能となる。
【0089】
また、本実施形態においては、
図2B等に示すように、第1扉部材10のハウジング13の上面よりも、第3扉部材30のハウジング33の上面を低くした。また、第3扉部材30の上面よりも、第2扉部材20のハウジング23の上面を低くした。このように、線路側にある扉部材のハウジングの上面が低いとよい。
【0090】
[第1変形例]
次に、
図6を参照して、本実施形態の第1変形例に係る扉システム300について説明する。
図6は、本実施形態の第1変形例に係る扉システムの全体構成を示す図である。
【0091】
扉システム300は、扉システム100と異なり、プラットホームP以外の設置面に設置されるものである。例えば、扉システム300は、人や移動体の移動に応じた移動通路が形成される倉庫、工場、娯楽施設等に設置されるものであるとよい。
【0092】
扉システム300は、第1扉部材である第1柱部材310と、第2扉部材である第2柱部材320と、第1柱部材310と第2柱部材320の間に設けられるワイヤ330と、駆動システム(不図示)と、を有している。
【0093】
第1柱部材310は設置面上の第1固定位置で固定可能であり、第2柱部材320は設置面上の第2固定位置で固定可能である。すなわち、第1柱部材310は、第1扉部材10と同様に、上下動及び回転可能なアンカー部を有しているとよい。同様に、第2柱部材320は第2扉部材20と同様に、上下動及び回転可能なアンカー部を有しているとよい。
【0094】
また、扉システム300は、設置面に設けられており、アンカー部を固定する固定部P3を有している。固定部P3は、扉システム100の第1固定部P1、第2固定部P2と同様に、アンカー部を固定可能な構造であるとよい。
【0095】
図6においては、設置面上に固定部P3が4箇所に設けられる例を示している。また、
図6においては、第1柱部材310が固定部P3に固定された状態であって、第2柱部材320が移動中の様子を示している。第2柱部材320は、第1柱部材310が固定される固定部P3以外の固定部P3のいずれへも移動可能であるとよい。また、第2柱部材320が固定部P3に固定された状態においては、第1柱部材310は、第2柱部材320が固定される固定部P3以外の固定部P3のいずれへも移動可能であるとよい。また、第1柱部材310及び第2柱部材320は、設置面上で回転する車輪を有しているとよい。
【0096】
駆動システムは、ワイヤ330を、第1柱部材310のハウジング内に巻き取る、又は第1柱部材310のハウジングから巻き出す駆動源を含んでいるとよい。また、駆動システムは、ワイヤ330を第2柱部材310のハウジング内に巻き取る、又は第2柱部材310のハウジングから巻き出す駆動源を含んでいるとよい。
【0097】
また、駆動システムは、固定部P3で固定される第1柱部材310に対して第2柱部材320を引き寄せる力を生じさせるようにワイヤ330を駆動可能であるとよい。また、駆動システムは、固定部P3で固定される第2柱部材320に対して第1柱部材310を引き寄せる力を生じさせるようにワイヤ330を駆動可能であるとよい。
【0098】
なお、第1変形例においては、ワイヤ330を例に挙げたが、これに限らず、第1柱部材310と第2柱部材320との間で伸縮可能な筒状部材などを用いてもよい。
【0099】
[第2変形例]
次に、
図7、
図8を参照して、本実施形態の第2変形例に係る扉システムについて説明する。
図7は、本実施形態の第2変形例に係る扉システムにおいて扉部材が直線的に移動する様子を示す図である。
図8は、本実施形態の第2変形例に係る扉システムにおいて扉部材が回動する様子を示す上面図である。なお、
図7、
図8は、扉部材が移動する様子を説明するための図であり、各扉部材の構成については模式的に図示している。
【0100】
第2変形例に係る扉システムは、柱部材410Aと、柱部材410Bと、それらの移動方向に延伸すると共に、一端が柱部材410Aに固定されており、他端が柱部材410Bに固定されるバー部材600と、を有している。なお、
図7においては、バー部材600が鉛直方向に並んで3本設けられる例を示している。ただし、バー部材600の数や配置はこれに限られるものではない。
【0101】
柱部材410A及び柱部材410Bは、設置面Pに設けられる固定部に対して固定される被固定部であるアンカー部423を有している。例えば、
図7(b)においては、柱部材410A及び柱部材410Bのアンカー部423が下方に突出することで、設置面Pの固定部に固定されている状態を示している。この状態において、柱部材410A及び柱部材410Bは設置面P上で移動不可となる。なお、図示は省略するが、柱部材410A及び柱部材410Bは、設置面上で回動する車輪を有していてもよい。柱部材510A及び柱部材510Bも同様である。
【0102】
さらに、第2変形例に係る扉システムは、柱部材510Aと、柱部材510Bと、それらの移動方向に延伸すると共に、一端が柱部材510Aに固定されており、他端が柱部材510Bに固定されるバー部材700と、を有している。なお、
図7においては、バー部材700が、鉛直方向に並んで2本設けられており、3本のバー部材600と互い違いに配置される例を示している。ただし、バー部材700の数や配置はこれに限られるものではない。
【0103】
柱部材510A及び柱部材510Bは、設置面Pに設けられる固定部に対して固定される被固定部であるアンカー部523を有している。例えば、
図7(b)においては、柱部材510A及び柱部材510Bのアンカー部523が下方に突出することで、設置面Pの固定部に固定されている状態を示している。この状態において、柱部材510A及び柱部材510Bは設置面P上で移動不可となる。
【0104】
バー部材600は、柱部材510Aの外装を構成するハウジングを貫通すると共に、柱部材510Aのハウジング内に収容される動力源(不図示)により移動可能に設けられている。柱部材510Aのハウジング内に収容される動力源は、柱部材510Aに対して、柱部材410A及び柱部材410Bを引き寄せる又は引き離す力を生じさせることにより、柱部材510Aに対して柱部材410A及び柱部材410Bを相対的に移動させる。
【0105】
バー部材700は、柱部材410Bの外装を構成するハウジングを貫通すると共に、柱部材410Bのハウジング内に収容される動力源(不図示)により移動可能に設けられている。柱部材410Bのハウジング内に収容される動力源は、柱部材410Bに対して、柱部材510A及び柱部材510Bを引き寄せる又は引き離す力を生じさせることにより、柱部材410に対して柱部材510A及び柱部材510Bを相対的に移動させる。
【0106】
図7(b)は、
図7(a)の状態から柱部材410A及び柱部材410Bが、図中の矢印に示す方向に移動した状態を示している。
図7(c)は、
図7(b)の状態から柱部材510A及び柱部材510Bが図中の矢印に示す方向に移動した状態を示している。
【0107】
また、第2変形例に係る扉システムは、
図8に示すように、上面視において複数の柱部材が並ぶ方向を傾斜させるように、いずれかの柱部材を中心として回動可能に構成される。
図8においては、柱部材510Aが固定部に固定されると共に、矢印R4に示す方向に回動する様子を示している。また、柱部材410A、柱部材410Bは、柱部材510Bは、柱部材510Aの回動に伴って移動する。
図8においては、柱部材410A、柱部材510A、柱部材410B、柱部材510Bが、直線L1が延びる方向に沿うように並んで配置される状態から、直線L1に交差する直線L2が延びる方向に沿うように並んで配置される状態となる様子を示している。なお、
図8の破線は移動後の各柱部材が固定される固定部P4を示している。
【符号の説明】
【0108】
10 第1扉部材、11 駆動ユニット、111 モータ、112 タイミングベルト、113 プーリ、113a 駆動プーリ、114 リニアガイド、115 リニアブロック、115a 摺動部、115b 固定部、115c 接続部、116 接続部、12 被固定ユニット、121 モータ、122 回転体、122a 切り欠き、123 アンカー部、123a 爪部、124 アンカー動作板、124a 突起、13 ハウジング、20 第2扉部材、21 駆動ユニット、211 モータ、212 タイミングベルト、213 プーリ、213a 駆動プーリ、214 リニアガイド、215 リニアブロック、215a 摺動部、215b 固定部、215c 接続部、216 接続部、22 被固定ユニット、221 モータ、223 アンカー部、224 アンカー動作板、23 ハウジング、30 第3扉部材、33 ハウジング、100 扉システム、200 扉装置、201 戸袋、202,203 扉、300 扉システム、310 第1柱部材、320 第2柱部材、330 ワイヤ、410A,410B,510A,510B 柱部材、600,700 バー部材、P プラットホーム、P1 第1固定部、P11 凹部、P12 戻しバネ、P13蓋部、P131 切り欠き、P14 係合部、P2 第2固定部、P3 固定部、P4 固定部、T 鉄道車両。
【要約】
【課題】通路の位置の自由度が高い扉システムを提供する。
【解決手段】扉システム100は、設置面上の少なくとも第1固定位置で固定可能な第1扉部材10と、設置面上の少なくとも第2固定位置で固定可能な第2扉部材20と、第1扉部材10及び第2扉部材20のうち設置面上で固定されているいずれか一方の扉部材に対して他方の部材を引き寄せる力又は引き離す力を生じさせることにより、一方の扉部材に対して他方の扉部材を相対的に移動させる駆動システムと、を有する。
【選択図】
図2A