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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】信号処理回路
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/12 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
G06F1/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017238657
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019106044
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-09-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】依田 友也
【合議体】
【審判長】中野 裕二
【審判官】富澤 哲生
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152861(JP,A)
【文献】特開2008-301410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/04-1/14
G06F 3/05
H03L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロックを出力するクロック発生回路と、
複数の入力信号のそれぞれに対応して設けられ、前記クロック発生回路から出力された前記第1クロックと、分周回路から出力された前記第1クロックよりも周波数が低い第2クロックとに基づいて、前記入力信号をデジタル信号に変換する複数の変換器と、
前記複数の変換器のそれぞれに設けられ、前記第1クロックを分周することにより、前記第2クロックを出力する、周囲の温度が低下するほど入力信号に対する出力信号の位相変動量が増加する位相変動特性を有する複数の前記分周回路と、
前記クロック発生回路と複数の前記分周回路のそれぞれとの間であって、複数の前記分周回路それぞれの近傍に設けられ、前記分周回路の位相変動特性と逆の位相変動特性であって、周囲の温度が低下するほど入力信号に対する出力信号の位相変動量が減少する位相変動特性を有しており、前記第1クロックを増幅する複数の増幅器と、
を備える信号処理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1クロックと、第1クロックよりも周波数が低い第2クロックを生成するクロック発生回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。クロック発生回路は、生成した第1クロック及び第2クロックを、AD変換器等の所定の信号処理を行う信号処理装置に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-37485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第2クロックは、例えば、クロック発生回路において第1クロックに基づいて生成される。クロック発生回路の周辺の温度が変化すると、クロック発生回路が備えている部品の特性が変化し、第1クロックの変化タイミングに対する第2クロックの変化タイミングが変動する。その結果、信号処理装置において求められている第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たせない場合が生じてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、温度変動にかかわらず第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たすようにすることができる信号処理回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る信号処理回路は、第1クロックを出力するクロック発生回路と、前記第1クロックを分周することにより、前記第1クロックよりも周波数が低い第2クロックを出力する分周回路と、前記クロック発生回路から出力された前記第1クロックと、前記分周回路から出力された前記第2クロックとに基づいて、入力信号をデジタル信号に変換する変換器と、前記クロック発生回路と前記分周回路との間に設けられ、前記分周回路における入力信号に対する出力信号の位相変動量と、前記分周回路の周囲の温度との関係である前記分周回路の位相変動特性と逆の位相変動特性を有する増幅器と、を備える。
【0007】
前記信号処理回路は、複数の入力信号のそれぞれに対応する複数の前記変換器をさらに備え、前記分周回路は、複数の前記変換器のそれぞれに前記第2クロックを出力してもよい。
【0008】
前記信号処理回路は、複数の入力信号のそれぞれに対応する複数の前記変換器と、複数の前記変換器のそれぞれに入力する前記第2クロックを生成する複数の前記分周回路と、前記クロック発生回路と、複数の前記分周回路のそれぞれとの間に設けられ、当該分周回路の前記位相変動特性と逆の位相変動特性を有する複数の前記増幅器と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度変動にかかわらず第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たすようにすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る信号処理回路の構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る分周回路の位相変動特性を示す図である。
図3】第1実施形態に係る増幅器への入力信号に対する分周回路から出力される出力信号の位相変動量と、分周回路の周囲の温度との関係を示す図である。
図4】第2実施形態に係る信号処理回路の構成を示す図である。
図5】第3実施形態に係る信号処理回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
[信号処理回路1の構成]
図1は、第1実施形態に係る信号処理回路1の構成を示す図である。信号処理回路1は、クロック発生回路11と、分周回路12と、増幅器13と、外部機器14と、AD変換器15と、デジタル回路16とを備える。
【0012】
クロック発生回路11は、第1クロックDEV_CLKを生成する。第1クロックの周波数は、例えば2.4GHzである。クロック発生回路11は、生成した第1クロックを増幅器13とAD変換器15とに出力する。
【0013】
分周回路12は、増幅器13を介してクロック発生回路11に接続されている。分周回路12は、クロック発生回路11から出力された第1クロックを所定の分周比で分周することにより、第1クロックよりも周波数が低い第2クロックSYSREF_CLKを生成する。第2クロックの周波数は、30MHzである。分周回路12は、生成した第2クロックをAD変換器15とデジタル回路16とに出力する。
【0014】
電子回路においては、入力信号に対して出力信号が遅延する。本明細書において、入力信号に対する出力信号の遅延時間を位相変動量という。入力信号に対する出力信号の位相変動量は温度によって変化する。本明細書において、温度と位相変動量との関係を位相変動特性という。
【0015】
分周回路12の位相変動特性は、分周回路12における入力信号に対する出力信号の位相変動量と、分周回路12の周囲の温度との関係である。図2は、第1実施形態に係る分周回路12の位相変動特性を示す図である。図2において、横軸は温度を示し、縦軸は分周回路12における入力信号に対する出力信号の位相変動量を示している。図2に示す例では、温度が1度増加するにしたがって、入力信号の位相に対する出力信号の位相が約1.7psec遅延している。
【0016】
増幅器13は、クロック発生回路11と分周回路12との間に設けられている。増幅器13は、分周回路12の近傍に設けられている。増幅器13は、クロック発生回路11から出力され、分周回路12に入力される第1クロックの信号レベルを増幅する。増幅器13は、信号レベルが増幅された第1クロックを分周回路12に出力する。
【0017】
増幅器13は、分周回路12の位相変動特性と逆の位相変動特性を有している。分周回路12が、温度が上昇するにつれて位相変動量が増加する位相変動特性を有する場合、逆の位相変動特性は、温度が上昇するにつれて位相変動量が減少する位相変動特性である。分周回路12が、温度が上昇するにつれて位相変動量が減少する位相変動特性を有する場合、逆の位相変動特性は、温度が上昇するにつれて位相変動量が増加する位相変動特性である。
【0018】
図3は、第1実施形態に係る増幅器13への入力信号に対する分周回路12から出力される出力信号の位相変動量と、分周回路12の周囲の温度との関係を示す図である。分周回路12の位相変動特性が、増幅器13の位相変動特性により打ち消されることで、図3に示すように、増幅器13への入力信号(第1クロック)に対する、分周回路12から出力される出力信号(第2クロック)の位相変動量が、温度変動にかかわらずほぼ一定となっていることが確認できる。
【0019】
外部機器14は、例えば、通信機器や計測機器であり、アナログ信号としてのIF(Intermediate Frequency)信号を生成する。外部機器14は、生成したIF信号をAD変換器15に出力する。
【0020】
AD変換器15は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、AD変換器15は、クロック発生回路11から出力された第1クロックと、分周回路12から出力された第2クロックとに基づいて、外部機器14から入力される入力信号としてのIF信号をデジタル信号に変換する。AD変換器15は、変換されたデジタル信号を、JESD204Bの規格に基づくタイミングでデジタル回路16に出力する。
【0021】
デジタル回路16は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)であり、AD変換器15から入力されたデジタル信号と、分周回路12から入力された第2クロックとに基づいて、各種の処理を実行する。
【0022】
[第1実施形態の効果]
以上のとおり、第1実施形態に係る信号処理回路1は、クロック発生回路11と分周回路12との間に設けられ、分周回路12の位相変動特性と逆の位相変動特性を有する増幅器13を備える。このようにすることで、分周回路12の位相変動特性が増幅器13の位相変動特性により打ち消され、増幅器13に入力される第1クロックに対する、分周回路12から出力される第2クロックの位相変動量が、温度変動にかかわらずほぼ一定となる。したがって、信号処理回路1は、AD変換器15に入力される第1クロックと第2クロックとの位相変動量を、温度変動にかかわらずほぼ一定とし、温度変動にかかわらず第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たすようにすることができる。
【0023】
なお、第1実施形態では、分周回路12と、クロック発生回路11との間に、増幅器13が設けられる例について説明したが、これに限らず、他の位置に増幅器13が設けられてもよい。例えば、2つの増幅器13のそれぞれを、分周回路12とAD変換器15との間、及び分周回路12とデジタル回路16との間に設けてもよい。また、分周回路12の位相変動特性と同じ位相変動特性を有する増幅器を、クロック発生回路11と分周回路12との接続点と、AD変換器15との間に設けてもよい。このようにすることで、分周回路12と、クロック発生回路11との間に、増幅器13が設けられる場合と同様に、温度変動にかかわらず第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たすようにすることができる。
【0024】
<第2実施形態>
[複数のAD変換器15に対して1組の分周回路12と増幅器13とを備える]
続いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、信号処理回路1が、複数の外部機器14から出力されるIF信号をデジタル信号に変換するために、複数のAD変換器15と、1組の分周回路12と増幅器13とを備える点で第1実施形態と異なる。以下に、第2実施形態に係る信号処理回路1について説明する。
【0025】
なお、本実施形態では、外部機器14が2つ設けられ、2つの外部機器14に対応して2つのAD変換器15が設けられる例について説明するが、これに限らず、外部機器14と、AD変換器15とは、それぞれ3つ以上設けられていてもよい。また、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0026】
図4は、第2実施形態に係る信号処理回路1の構成を示す図である。図4に示されるように、第2実施形態に係る信号処理回路1は、複数の外部機器14として、外部機器14Aと、外部機器14Bとを備える。また、信号処理回路1は、複数の外部機器14から入力される複数の入力信号のそれぞれに対応する複数のAD変換器15として、AD変換器15Aと、AD変換器15Bとを備える。
【0027】
第2実施形態において、クロック発生回路11は、生成した第1クロックを増幅器13と、AD変換器15Aと、AD変換器15Bとに出力する。
分周回路12は、複数のAD変換器15(AD変換器15A及びAD変換器15B)のそれぞれと、デジタル回路16とに第2クロックを出力する。
【0028】
増幅器13は、クロック発生回路11と分周回路12との間に設けられている。増幅器13は、分周回路12の位相変動特性と逆の位相変動特性を有している。
外部機器14Aは、生成したIF信号をAD変換器15Aに出力し、外部機器14Bは、生成したIF信号をAD変換器15Bに出力する。
【0029】
AD変換器15Aは、クロック発生回路11から出力された第1クロックと、分周回路12から出力された第2クロックとに基づいて、外部機器14Aから入力されるIF信号をデジタル信号に変換する。AD変換器15Aは、変換されたデジタル信号を、JESD204Bの規格に基づくタイミングでデジタル回路16に出力する。
【0030】
AD変換器15Bは、クロック発生回路11から出力された第1クロックと、分周回路12から出力された第2クロックとに基づいて、外部機器14Bから入力されるIF信号をデジタル信号に変換する。AD変換器15Bは、変換されたデジタル信号を、JESD204Bの規格に基づくタイミングでデジタル回路16に出力する。
【0031】
[第2実施形態の効果]
以上のとおり、第2実施形態に係る信号処理回路1は、第1実施形態と同様に、分周回路12の位相変動特性と逆の位相変動特性を有する増幅器13を備える。また、分周回路12は、複数のAD変換器15のそれぞれに第2クロックを出力する。このようにすることで、第2実施形態に係る信号処理回路1は、複数のAD変換器15のそれぞれに入力される第1クロックと第2クロックとの位相変動量を、温度変動にかかわらずほぼ一定とし、複数のAD変換器15において第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たすようにすることができる。
【0032】
<第3実施形態>
[複数のAD変換器15のそれぞれに対して分周回路12と増幅器13とを備える]
続いて、第3実施形態について説明する。第2実施形態のように、1つの分周回路12から複数のAD変換器15に第2クロックを出力する場合、配線によっては、第2クロックにノイズが含まれ、その結果、AD変換器15が正常に動作しないことがある。そこで、第3実施形態に係る信号処理回路1は、複数のAD変換器15のそれぞれに対して分周回路12と増幅器13とを備える。以下に、第3実施形態に係る信号処理回路1について説明する。なお、以下の説明では、第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0033】
図5は、第3実施形態に係る信号処理回路1の構成を示す図である。図5に示されるように、信号処理回路1は、複数のAD変換器15のそれぞれに入力する第2クロックを生成する複数の分周回路12として、分周回路12Aと分周回路12Bとを備える。また、信号処理回路1は、クロック発生回路11と、複数の分周回路12のそれぞれとの間に設けられ、当該分周回路12の位相変動特性と逆の位相変動特性を有する複数の増幅器13として、増幅器13Aと増幅器13Bとを備える。
【0034】
増幅器13Aは、クロック発生回路11と、分周回路12Aとの間に設けられている。増幅器13Aは、分周回路12Aの位相変動特性と逆の位相変動特性を有している。
分周回路12Aは、増幅器13Aから出力された増幅後の第1クロックに基づいて第2クロックを生成する。分周回路12Aは、生成した第2クロックをAD変換器15Aとデジタル回路16とに出力する。
【0035】
増幅器13Bは、クロック発生回路11と、分周回路12Bとの間に設けられている。増幅器13Bは、分周回路12Bの位相変動特性と逆の位相変動特性を有している。
分周回路12Bは、増幅器13Bから出力された増幅後の第1クロックに基づいて第2クロックを生成する。分周回路12Bは、生成した第2クロックをAD変換器15Bに出力する。
【0036】
AD変換器15Aは、クロック発生回路11から出力された第1クロックと、分周回路12Aから出力された第2クロックとに基づいて、外部機器14Aから入力されるIF信号をデジタル信号に変換する。
【0037】
AD変換器15Bは、クロック発生回路11から出力された第1クロックと、分周回路12Bから出力された第2クロックとに基づいて、外部機器14Bから入力されるIF信号をデジタル信号に変換する。
【0038】
[第3実施形態の効果]
以上のとおり、第3実施形態に係る信号処理回路1は、複数のAD変換器15のそれぞれに入力する第2クロックを生成する複数の分周回路12と、クロック発生回路11と複数の分周回路12のそれぞれとの間に設けられ、当該分周回路12の位相変動特性と逆の位相変動特性を有する複数の増幅器13と、を備える。このようにすることで、信号処理回路1は、複数のAD変換器15のそれぞれに入力する第2クロックにノイズが含まれることを抑制しつつ、温度変動にかかわらず、複数のAD変換器15における第1クロックと第2クロックとの同期条件を満たすようにすることができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0040】
1・・・信号処理回路、11・・・クロック発生回路、12・・・分周回路、13・・・増幅器、14・・・外部機器、15・・・AD変換器、16・・・デジタル回路
図1
図2
図3
図4
図5