IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワイエイシイガーター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-剥離装置 図1
  • 特許-剥離装置 図2
  • 特許-剥離装置 図3
  • 特許-剥離装置 図4
  • 特許-剥離装置 図5
  • 特許-剥離装置 図6
  • 特許-剥離装置 図7
  • 特許-剥離装置 図8
  • 特許-剥離装置 図9
  • 特許-剥離装置 図10
  • 特許-剥離装置 図11
  • 特許-剥離装置 図12
  • 特許-剥離装置 図13
  • 特許-剥離装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
H01L21/68 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018027593
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019145634
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】597007178
【氏名又は名称】ワイエイシイガーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 進
(72)【発明者】
【氏名】島田 亮司
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-087832(JP,U)
【文献】特開2001-217302(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130361(WO,A1)
【文献】特開2000-012571(JP,A)
【文献】特開2015-159294(JP,A)
【文献】特開2016-143832(JP,A)
【文献】特開2008-125059(JP,A)
【文献】特開2016-1768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品が貼り付けられたシート上のうち第1の広さの領域を撮像可能な第1の撮像手段と、
前記シート又は前記第1の撮像手段のいずれか一方を、いずれか他方に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記第1の撮像手段により撮像されることにより取得される前記電子部品の位置情報に基づいて、前記電子部品を剥離させる剥離機構と、
を備える剥離装置であって、
前記シート上のうち前記第1の広さの領域よりも広い第2の広さの領域を撮像可能な第2の撮像手段と、
前記第2の撮像手段が撮像した画像情報に基づいて、前記シート上に存在する電子部品群の輪郭を取得する画像情報取得手段と、
を有し、
前記移動機構は、前記第1の広さの領域の少なくとも一部が前記電子部品群の輪郭の内側の領域に重なるように前記シート又は前記第1の撮像手段のいずれか一方を、前記いずれか他方に対して相対的に移動させる、
剥離装置。
【請求項2】
前記シートを支持するシート支持具を備え、
前記シート支持具は、前記シートのうち前記複数の電子部品が貼り付けられる面に垂直な方向に延びる軸を中心に90度単位で回転可能である、
請求項1に記載の剥離装置。
【請求項3】
前記シート上に貼り付けられた前記複数の電子部品それぞれの特性情報を予め記憶する記憶部を備え、
前記剥離機構は、前記シート上に貼り付けられた前記複数の電子部品を前記特性情報に応じて分類するように剥離させる、
請求項1又は2に記載の剥離装置。
【請求項4】
前記第2の撮像手段は、前記シート上を走査することにより前記第2の広さの領域を撮像する走査撮像装置である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シート上に貼り付けられた複数の半導体チップを剥離するチップ剥離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実登3187638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような剥離装置においては、シート上における半導体チップ等の電子部品の位置に関する位置情報を取得し、その位置情報に基づいて、シートの裏側からニードル等を押し当て、シートの表側から吸着することにより電子部品を1つずつ剥離させていく。
【0005】
大きさが微小な電子部品の位置情報を精度よく取得するためには、高い解像度を有するカメラを用いて、当該カメラをシートに対して近接させた状態で電子部品を撮像する必要がある。この場合、カメラにより撮像できる領域の広さが限定的となるため、シート全域の電子部品を撮像するためには、シートを支持する支持具をカメラに対して移動させつつ、撮像動作を複数回行う必要が生じる。
【0006】
ここで、例えば、剥離装置によって既に電子部品の一部が剥離された状態のシート上の電子部品を剥離するために、電子部品の位置情報を取得する場合、電子部品が存在しない領域を撮像するためにシートを支持する支持具をカメラに対して移動させることとなってしまう。電子部品が存在しない領域を撮像するためにシートを支持する支持具を移動させる分、余分な動作を行うこととなってしまい、シート上に存在する電子部品の位置情報を取得するのに不要に時間を要することとなってしまう。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子部品の位置情報を取得するのに要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0009】
(1)複数の電子部品が貼り付けられたシート上のうち第1の広さの領域を撮像可能な第1の撮像手段と、前記シート又は前記第1の撮像手段のいずれか一方を、いずれか他方に対して相対的に移動させる移動機構と、前記第1の撮像手段により撮像されることにより取得される前記電子部品の位置情報に基づいて、前記電子部品を剥離させる剥離機構と、を備える剥離装置であって、前記シート上のうち前記第1の広さの領域よりも広い第2の広さの領域を撮像可能な第2の撮像手段を備え、前記移動機構は、前記第2の撮像手段により撮像されることにより取得される前記シート上における前記電子部品の存在の有無に関する存在情報に基づいて、前記シート又は前記第1の撮像手段のいずれか一方を、前記いずれか他方に対して相対的に移動させる、剥離装置。
【0010】
(2)(1)において、前記シートを支持するシート支持具を備え、前記シート支持具は、前記シートのうち前記複数の電子部品が貼り付けられる面に垂直な方向に延びる軸を中心に90度単位で回転可能である、剥離装置。
【0011】
(3)(1)または(2)において、前記シート上に貼り付けられた前記複数の電子部品それぞれの特性情報を予め記憶する記憶部を備え、前記剥離機構は、前記シート上に貼り付けられた前記複数の電子部品を前記特性情報に応じて分類するように剥離させる、剥離装置。
【0012】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記第2の撮像手段は、前記シート上を走査することにより前記第2の広さの領域を撮像する走査撮像装置である、剥離装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子部品の位置情報を取得するのに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る剥離システムの物理的な構成の概要を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る剥離装置を示す斜視図である。
図3図2に示す剥離装置のシート支持具にシートが支持された状態を示す斜視図である。
図4】半導体チップが貼り付けられたシートを表側から見た平面図である。
図5】本実施形態に係る剥離装置を示す上面図である。
図6】本実施形態に係る剥離装置を示す上面図である。
図7】本実施形態に係る剥離装置を示す上面図である。
図8】部分的に半導体チップが存在しない状態のシートを表側から見た平面図である。
図9】本実施形態に係る剥離装置を示す上面図である。
図10】剥離位置にあるシート及び剥離機構を示す側面図である。
図11】剥離位置にあるシート及び剥離機構を示す側面図である。
図12】剥離位置にあるシート及び剥離機構を示す側面図である。
図13】本実施形態における制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
図14図8で示したシートを、θ方向に90度回転させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る剥離システム100の全体構成の概要を説明する。図1は、本実施形態に係る剥離システムの物理的な構成の概要を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、剥離システム100は、剥離装置1、制御部10、記憶部15、画像処理装置90を含むシステムである。剥離装置1は、シート支持具2と、支持具移動機構21と、剥離機構3と、第2の撮像手段であるラインスキャンカメラ70と、第1の撮像手段であるエリアカメラ80とを含む。これら剥離装置1に含まれる各機構やカメラ等は、制御部10によってその動作が制御される。制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える一般的なコンピュータやPLC(Programmable Logic Controller)等のコントローラに含まれるものであるとよい。なお、制御部10と記憶部15は、剥離装置1の一部に含まれるものであってもよい。
【0018】
剥離機構1は、吸着コレット31、コレット進退機構32、ニードル33、ニードル進退機構34を含む。また、画像処理装置90は、第1画像情報取得部91と、第2画像情報取得部92とを含む。
【0019】
次に、図2図4を参照して、剥離装置の構成を具体的に説明する。図2は、本実施形態に係る剥離装置を示す斜視図である。図3は、図2に示す剥離装置のシート支持具にシートが支持された状態を示す斜視図である。なお、図2図3においては、ラインスキャンカメラ70及びエリアカメラ80の図示は省略する。
【0020】
シート支持具2は、環状に形成されており、ダイシングされた複数の半導体チップWが貼り付けられたシートSを支持可能に構成される。シートSは、例えば樹脂材料からなる伸縮性のある粘着シートであり、半導体チップWは、例えばLED等の発光素子である。以下の説明において、シート支持具2にシートSが支持された状態において、シートSのうち半導体チップWが貼り付けられる側を表側とし、半導体チップWが貼り付けられていない側を裏側という。また、図2図3に示すように、裏側から表側に向かう方向(シート面の法線方向)をY軸方向、上下方向をZ軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向と定義する。また、Y軸方向を軸として回転する方向をθ方向と定義する。
【0021】
図4は、半導体チップが貼り付けられたシートを表側から見た平面図である。図4に示すように、シートSの表側の面には、ダイシングされた複数の半導体チップWが貼り付けられている。図4に示すように、半導体チップWは、X軸方向及びZ軸方向に並んで設けられる。ただし、図4に示すシートSは一例であって、シートSの外形や、半導体チップWの配列はこれに限られるものではい。なお、図4においては、図面が煩雑になるのを避けるため、1の半導体チップにのみ符号Wを付し、他の半導体チップについては符号を省略して図示している。後述の図8図14においても同様とする。
【0022】
シート支持具2は、支持具移動機構21(図2図3においては不図示)によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ方向(シートSの中心を軸とした回転方向)に移動可能に構成される。図3は、シート支持具2が、シートSに貼り付けられた半導体チップWを剥離機構3により剥離する位置(以下、剥離位置)にある状態を示している。シート支持具2が剥離位置にある状態において、シート支持具2の表側には、半導体チップWを吸着保持する吸着コレット31、及び吸着コレット31を支持し、シートSに対して進退させるコレット進退機構32が配置される。
【0023】
吸着コレット31は、例えばゴム等の弾性材料からなる。吸着コレット31は、コレット進退機構32によりシートSに対して進退可能に構成される。吸着コレット31は、モーター36により回転されるアーム35に取り付けられており、シート支持具2に支持されたシートSに対向する位置と、後述のチップ搬送ステージ7に対向する位置との間で回転する。また、コレット進退機構3は、吸着コレット31に吸着力を付与する不図示のポンプを備えている。
【0024】
また、シート支持具2の表側には、吸着コレット31から受け渡された半導体チップWを搬送するチップ搬送ステージ7が配置されている。チップ搬送ステージ7は、円板状に形成され、周縁に沿って一定間隔で配列する複数のチップ搬送部71を有している。チップ搬送ステージ7は、間欠的に回転することによって複数のチップ搬送部71を順に吸着コレット31に近接させ、吸着コレット31から半導体チップWを受け取る。
【0025】
また、シート支持具2が剥離位置にある状態において、シート支持具2の裏側には、ニードル33を保持するホルダー51、及びニードル33をシートSに対して進退させるニードル進退機構34が配置されている。ホルダー51は、剥離位置にあるシート支持具2に支持されるシートSに対向する対向面の中央部に通過穴を有し、通過穴内にニードル41が配置されている。また、シート支持具2の裏側には、ニードル進退機構34をシート支持具2に対して進退可能に支持する機構支持ステージ6が配置されている。
【0026】
図1に示したエリアカメラ80は、シート支持具2に支持されるシートS上における第1の広さの領域を撮像可能な撮像装置である。また、エリアカメラ80は、シート支持具2に支持されるシートSに対して相対的に移動可能に構成される。本実施形態においては、シート支持具2が支持具移動機構21により移動されることにより、エリアカメラ80がシートSに対して相対的に、X軸方向及びZ軸方向に移動することとした。
【0027】
図1に示したラインスキャンカメラ70は、シート支持具2に支持されるシートS上における第2の広さの領域を撮像可能な撮像装置である。第2の広さの領域は、第1の広さの領域よりも広い。ラインスキャンカメラ70は、シートS上を走査することにより、シートSの全域を一括して撮像して、シートS上の全域における半導体チップWの画像情報を取得可能な走査撮像装置であるとよい。しかしながら、これに限られるものではなく、ラインスキャンカメラ70は、撮像可能な領域が少なくともエリアカメラ80よりも広いものであればよい。
【0028】
また、エリアカメラ80として、ラインスキャンカメラ70よりも、高画質のものを用いるとよい。すなわち、ラインスキャンカメラ70よりもエリアカメラ80の方が、高い解像度を有するとよい。本実施形態においては、直径20数センチメートルのシートSに貼り付けられる約2万個の半導体チップWを撮像対象として、解像度が約47万画素のエリアカメラ80、解像度が約8千画素のラインスキャンカメラ70を用いた。
【0029】
なお、エリアカメラ80及びラインスキャンカメラ70により撮像されることによって取得される半導体チップWの画像は、画像処理装置90において画像処理された上で、制御部10を含むコンピュータのディスプレイ上にユーザが視認できる態様で表示されるとよい。
【0030】
上述のように、画像処理装置90は、第1画像情報取得部91と、第2画像情報取得部92とを含む。第2画像情報取得部92は、ラインスキャンカメラ70により撮像されたシートS上における半導体チップWに関する第2画像情報を取得する。第2画像情報は、シートS上における半導体チップWの存在の有無に関する存在情報を含むものである。第1画像情報取得部91は、エリアカメラ80により撮像されたシートS上における半導体チップWに関する第1画像情報を取得する。第1画像情報は、シートS上における半導体チップWの位置に関する位置情報を含むものである。
【0031】
第2画像情報取得部92により取得される存在情報は、半導体チップWの位置情報の詳細を示すものである必要はなく、少なくともシートS上のある位置(座標)に半導体チップWが存在するか否かを示すものであればよい。一方、第1画像情報取得部91により取得される位置情報は、複数の半導体チップWのシート上における位置(座標)の詳細を示すものである。上述のようにエリアカメラ80は高い解像度を有するカメラであるため、半導体チップWの詳細な位置情報を取得することができる。
【0032】
上述の剥離機構3は、位置情報に基づいて、剥離対象である半導体チップWを順次剥離する。具体的には、制御部10が、エリアカメラ80により撮像されることにより第1画像情報取得部91により取得された位置情報に基づいて、剥離対象である半導体チップWのX軸方向及びZ軸方向の座標を取得し、その座標に対応する位置に、ニードル33及び吸着コレット31が対向するように、支持具移動機構21によりシート支持具2を移動させる。そして、シートSの裏側から半導体チップWに対してニードル33を突き当て、シートSの表側から吸着コレット31により吸着することにより、半導体チップWを剥離させる。このような動作を、剥離対象である複数の半導体チップWに対して順次行う。
【0033】
なお、記憶部15がシートSに貼り付けられる半導体チップWの配列パターンを予め記憶しておき、制御部10が、記憶部15に予め記憶される配列パターンと、第1画像情報取得部91により取得された位置情報とを比較し、シート支持具2の剥離位置を調整する構成であってもよい。例えば、制御部10が、予め記憶される配列パターンと取得された位置情報とを比較して、半導体チップWが傾いた状態でシートSに貼り付けられていると判定した場合、シート支持具2を支持具移動機構21によってθ方向に移動させる等の微調整を行うとよい。
【0034】
また、例えば、シートS上に貼り付けられた複数の半導体チップWの特性に関する特性情報を、記憶部15に予め記憶させておき、その情報に基づいて、半導体チップWを剥離させる構成にしてもよい。具体的には、例えば、複数の半導体チップWのそれぞれの特性情報に基づいて、同ランクの特性を有する半導体チップWのみを剥離させるとよい。これにより、半導体チップWをその特性に応じて分類することができる。また、不良品(ランクの低い半導体チップ)については剥離させないとしてもよい。なお、特性情報は、例えば、電圧値や発光輝度等に関する情報であるとよい。また、予め記憶される特性情報毎に区別できる態様で、コンピュータのディスプレイ上に半導体チップWの画像を表示する構成としてもよい。
【0035】
図5図9を参照して、本実施形態に係る剥離システム100による撮像動作について説明する。
【0036】
図5は、本実施形態に係る剥離装置を示す上面図(Z軸正方向から見た図)であり、ラインスキャンカメラによりシート支持具に支持されるシートに貼り付けられた半導体チップを撮像する様子を示す図である。なお、図5においては、上述した剥離装置1の各構成の配置や形状を模式的に、かつ一部を省略して図示しており、シート支持具2に支持されるシートSについても図示を省略している。後述の図6図7図9においても同様である。なお、図5に示す破線矢印は、ラインスキャンカメラ70による撮像領域を示すものである。
【0037】
図5において、シート支持具2は、ラインスキャンカメラ70によってシートSに貼り付けられた半導体チップWが撮像される位置(以下、第2の撮像位置)にある。シート支持具2が第2の撮像位置にある状態において、ラインスキャンカメラ70によってシートS上の全域が一括して撮像される。本実施形態においては、ラインスキャンカメラ70が撮像可能な領域の広さがシートS全域よりも広いためである。このようにラインスキャンカメラ70を用いてシートS上の半導体チップWを撮像することにより、画像処理装置90によりシートS全域における半導体チップWの存在の有無に関する存在情報が取得される。
【0038】
図6図7は、本実施形態に係る剥離装置を示す上面図であり、エリアカメラによりシート支持具に支持されるシートに貼り付けられた半導体チップを撮像する様子を示す図である。なお、図6図7に示す破線矢印は、エリアカメラ80による撮像領域を示すものである。また、図6図7において、シート支持具2は、エリアカメラ80によってシートSに貼り付けられた半導体チップWが撮像される位置(以下、第1の撮像位置)にある。なお、図6においては、第1の撮像位置に移動する前であって、第2の撮像位置にあったシート支持具2を破線により示している。
【0039】
本実施形態においては、図6図7に示すように、エリアカメラ80の撮像可能な領域に反射鏡85を配置し、反射鏡85を介して、シートS上の第1の広さの領域を撮像する。ただし、これに限られるものではなく、反射鏡85を介さずに直接シートSを撮像する構成であっても構わない。また、エリアカメラ80によって撮像することにより取得される画像の画質を向上させるため、第1の撮像位置にあるシート支持具2付近に、撮像対象である半導体チップWを照らすように白色LED(Light Emitting Diode)等の照明装置を設けてもよい。
【0040】
半導体チップWの位置情報を精度よく取得するためには、エリアカメラ80をシートSに対して近接させた状態で半導体チップWを撮像する必要がある。この場合、エリアカメラ80により撮像できる領域は限定的となるため、シートS全域の半導体チップWを撮像するためには、シートSを支持するシート支持具2を移動させつつ、複数回撮像動作を行う必要がある。
【0041】
具体的には、エリアカメラ80により、第1の撮像位置にあるシート支持具2に支持されたシートS上の所定の領域を撮像した後(図6参照)、シート支持具2を支持具移動機構21により移動させ、移動後の第1の撮像位置においてシートS上の別の領域を撮像する(図7参照)。図6においては、シートSの中心O付近の領域に存在する半導体チップWを撮像する様子を示している。図7においては、シートSのX軸正方向側の領域に存在する半導体チップWを撮像する様子を示している。このように、エリアカメラ80を用いて、シートS上を複数回撮像することにより、画像処理装置90がシートS上に貼り付けられた全ての半導体チップWの位置情報を取得することが可能となる。
【0042】
ここで、半導体チップWは、シートS上におけるX軸方向及びY軸方向に常に満遍なく存在しているわけではなく、既に剥離装置1により剥離された領域や、何らかの不具合により剥がれてしまった領域には存在しない。図8は、部分的に半導体チップが存在しない状態のシートを表側から見た平面図である。図8は、シートSの中心Oの座標を(X,Z)=(0,0)とした場合、X軸及びZ軸の正の領域において半導体チップWがほぼ存在しておらず、X軸及びZ軸の負の領域において一部の半導体チップWが剥がれた状態を示している。
【0043】
ここで、図8中の破線の円r1、r2は、エリアカメラ80により撮像可能な広さの領域(第1の広さの領域)を示している。図8に示すような状態のシートSを用いた場合において、シートSの全域をエリアカメラ80により撮像しようとすると、半導体チップWが存在しない領域を撮像するためにシートSを支持する支持具2をエリアカメラ80に対して移動させることとなる。半導体チップWが存在しない領域を撮像するためにシートSを支持するシート支持具2を移動させる分、余分な動作を行うこととなってしまい、シートS上に存在する半導体チップWの位置情報を取得するのに不要に時間を要することとなってしまう。具体的には、半導体チップWが存在しない、図8に示す円r2の領域までもエリアカメラ80により撮像することとなってしまう。
【0044】
そこで、本実施形態においては、ラインスキャンカメラ70により撮像されることにより取得された半導体チップWの存在の有無に関する存在情報に基づいて、エリアカメラ80により撮像可能な領域を撮像した際に半導体チップWが撮像される位置となるように、シート支持具2を支持具移動機構21により移動させることとした。図8に示す例においては、制御部10は、図8中の破線Eで囲った領域が、半導体チップWが存在する領域であることに関する存在情報を取得する。そして、制御部10は、存在情報に基づいて、半導体チップWが存在する領域のみを撮像するように、エリアカメラ80及び支持具移動機構21の動作を制御する。図8中の破線の円r1は本実施形態におけるエリアカメラ80により撮像される領域を示すものであり、破線の円r2は本実施形態におけるエリアカメラ80により撮像されない領域を示すものである。
【0045】
本実施形態においては、エリアカメラ80により半導体チップWが存在する領域のみを撮像するようシート支持具2を支持具移動機構21により移動させるため、シート支持具2の移動量を少なくすることができる。その結果、剥離対象である半導体チップWの位置情報を短時間で取得することができる。
【0046】
さらに、図9図12を参照して、剥離機構3による剥離動作について説明する。図9は、本実施形態に係る剥離装置を示す上面図であり、剥離機構によりシート上の半導体チップを剥離する様子を示す図である。図10は、剥離位置にあるシート及び剥離機構を示す側面図であって、ニードルがホルダーに収納された状態を示す図である。図11は、剥離位置にあるシート及び剥離機構を示す側面図であって、ニードルがホルダーから突出した状態を示す図である。図12は、剥離位置にあるシート及び剥離機構を示す側面図であって、吸着コレットが半導体素子を吸着保持し、チップ搬送ステージに対向する位置を向いた状態を示す図である。なお、図10図12においては、図面の複雑化を避けるため、シート支持具2の図示を省略し、1の半導体チップWのみを示すこととした。
【0047】
剥離機構3は、エリアカメラ80によりシートS上の半導体チップWを撮像することにより取得された位置情報に基づいて、シートS上の半導体チップWを順次剥離する。具体的には、剥離対象である半導体チップWに対向する位置に、吸着コレット31及びニードル33が配置されるように、シート支持具2を第1の撮像位置から剥離位置へ移動させる(図10等参照)。
【0048】
その後、ニードル進退機構34によりニードル33を、剥離対象である半導体チップWに対して突出させる。これにより、剥離対象である半導体チップWは、吸着コレット31に近づく方向に移動する(図11参照)。そして、図11に示す状態において、吸着コレット31によって剥離対象である半導体チップWを吸着する。そして、半導体チップWを吸着コレット31が吸着保持した状態で、コレット進退機構32によって吸着コレット31をシートSから退避させる。そして、吸着された半導体チップWが、図2図3に示すチップ搬送ステージ6に対向する向きになるように、吸着コレット31を回転させる(図12参照)。その後、図2図3に示すチップ搬送部71が吸着コレット31から半導体チップWを受け取る。
【0049】
次に、図13等を参照して、本実施形態における制御部の動作について説明する。図13は、本実施形態における制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【0050】
まず、制御部10は、シート支持具2が第2の撮像位置へ移動するように支持具移動機構21を制御する(ステップS1)。そして、制御部10は、シートS全域を撮像するようにラインスキャンカメラ70を制御する(ステップS2、図5参照)。そして、制御部10は、画像処理装置90の第2画像情報取得部92により取得された第2画像情報から、半導体チップWの存在の有無に関する存在情報を取得する(ステップS3)。
【0051】
その後、制御部10は、存在情報に基づいて、シート支持具2が第1の撮像位置へ移動するように支持具移動機構21を制御する(ステップS4、図6参照)。具体的には、制御部10は、存在情報に基づいて、エリアカメラ80によりシートS上のうち第1の広さの領域を撮像した際に半導体チップWが撮像される第1の撮像位置へ、シート支持具2が移動するように支持具移動機構21を制御する。
【0052】
そして、制御部10は、シートS上における第1の領域を撮像するようにエリアカメラ80を制御する(ステップS5)。制御部10は、存在情報に基づいて、撮像対象である全ての領域の撮像が完了していないと判定した場合(ステップ6のNO)、さらに、支持具移動機構21によりシート支持具2を別の第1の撮像位置へ移動させる(ステップS4、図7参照)。その後、同様の撮像動作を行う。
【0053】
制御部10は、存在情報に基づいて、撮像対象である全ての領域の撮像が完了したと判定した場合(ステップS6のYES)、画像処理装置90の第1画像情報取得部91により取得された第1画像情報から、半導体チップWの位置に関する位置情報を取得する(ステップS7)。
【0054】
その後、制御部10は、位置情報に基づいて、支持具移動機構21によりシート支持具2を剥離位置へ移動させる(ステップS8)。そして、制御部10は、剥離対象である1の半導体チップWを剥離させるように剥離機構3を駆動させる(ステップS9、図9図11参照)。制御部10は、剥離対象である全ての半導体チップWの剥離が完了していないと判定した場合(ステップS10のNO)、さらに、支持具移動機構21によりシート支持具2を剥離対象である他の半導体チップWを剥離させるように剥離機構3を駆動させる。制御部10は、このような剥離動作を、剥離対象である全ての半導体チップWの剥離が完了するまで繰り返す。
【0055】
なお、上述のように、シート支持具2は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に加えて、θ方向に支持具移動機構21により移動可能に構成されるとよい。θ方向への移動は、エリアカメラ80により撮像されることにより取得される半導体チップWの画像に対して、予め記憶部15に記憶される配列パターンを合わせ込む所謂パターンマッチングを行う場合の、微調整を行う際に行われるとよい。また、このような微調整に限らず、支持具2を、支持具移動機構21により90度単位で回転移動可能な構成としてもよい。図14は、図8で示したシートを、θ方向に90度回転させた状態を示す平面図である。
【0056】
このように、シート支持具2を、シートSの中心Oを軸としてθ方向に90度回転移動させることにより、シートS上に貼り付けられた半導体チップWの向きを90度変えることができる。すなわち、図8に示すように長手方向がZ軸方向になるように貼り付けられた半導体チップWを、図14に示すようにX軸方向が長手方向である状態にすることができる。これにより、吸着コレット31に吸着保持される際等、剥離する工程以降の工程における半導体チップWの向きを変えることができる。これにより、剥離工程の後に各半導体チップWを個別に向きを変える工程を行うことなく、ユーザの要望に基づく方向を向いた半導体チップWを容易に得ることができる。
【0057】
なお、上記実施形態においては、エリアカメラ80の位置を固定し、シートSを支持するシート支持具2を支持具移動機構21により移動させる構成について説明したが、これに限られるものではなく、エリアカメラ80とシートSが相対的に移動可能な構成であればよい。すなわち、シート支持具2の位置を固定し、エリアカメラ80を移動機構により移動させる構成であってもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、第1の撮像手段としてのエリアカメラ80と、第2の撮像手段としてのラインスキャンカメラ70とを独立した構成のカメラとした例について説明したが、1台のカメラで、第1の撮像手段及び第2の撮像手段の双方の役割を担う構成としてもよい。例えば、エリアカメラ80に、シャッターを1回切った際にシートS全域を撮像することが可能となるようなズーム機能を備えさせるとよい。この場合、エリアカメラ80により撮像されることにより取得される画像の画質は低下するが、本実施形態で説明した存在情報が得られる程度、すなわち、ラインスキャンカメラ70と同等の画質の画像が得られるものであるとよい。このような構成とすることで、1台のエリアカメラ80で第1の広さの領域を撮像可能な第1の撮像手段、及び第1の広さの領域よりも広い第2の広さの領域を撮像可能な第2の撮像手段の双方の役割を担うことが可能となる。
【0059】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0060】
1 剥離装置、2 シート支持具、3 剥離機構、31 吸着コレット、32 コレット進退機構、33 ニードル、34 ニードル進退機構、35 アーム、36 モーター、6 機構支持ステージ、7 チップ搬送ステージ、71 チップ搬送部、10 制御部、51 ホルダー、70 ラインスキャンカメラ、80 エリアカメラ、85 反射鏡、90 画像処理装置、91 第1画像情報取得部、92 第2画像情報取得部、100 剥離システム、S シート、W 半導体チップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14