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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20221216BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20221216BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20221216BHJP
   F16H 25/20 20060101ALN20221216BHJP
   F16H 25/22 20060101ALN20221216BHJP
【FI】
H02K7/06 A
H02K5/00 A
H02K5/24 A
F16H25/20 E
F16H25/22 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018124582
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020005453
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】牛田 公人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 雅生
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071687(JP,A)
【文献】特開2017-163723(JP,A)
【文献】実開昭56-141489(JP,U)
【文献】特開平09-191606(JP,A)
【文献】特開2015-059579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
H02K 5/00
H02K 5/24
F16H 25/20
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに内蔵された電動モータと、前記電動モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備え、前記電動モータが、その軸方向の一端部側で前記ケースに対して揺動しないように固定され、反対の他端部側で導電部材がモータ端子に接続された電動アクチュエータにおいて、
前記導電部材は、前記電動モータの前記ケースに固定された一端部側とは反対の他端部に固定されるホルダ部によって保持され、
前記電動モータにおける前記ケースに固定された一端部側とは反対の他端部側で、前記電動モータの外周面と前記ケースの内周面との間に弾性部材を設けたことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記電動モータの外周面と前記ケースの内周面とによって前記弾性部材を径方向に圧縮した状態で挟んで保持するように構成した請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記ケースは、互いに組み付け可能に構成された第1ケース分割体と第2ケース分割体とを有し、
前記第1ケース分割体及び前記第2ケース分割体の一方のケース分割体の内周面に凸状の位置規制部を設け、
前記位置規制部と、前記一方のケース分割体に組み付けられた他方のケース分割体の端面とによって、前記電動モータに対する前記弾性部材の軸方向両側への移動を規制した請求項1又は2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性部材をフッ素ゴムで構成した請求項1から3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の省力化、低燃費化のために電動化が進み、例えば、自動車の自動変速機やブレーキ、ステアリング等の操作を電動機の力で行うシステムが開発され、市場に投入されている。
【0003】
このような用途に使用されるアクチュエータとして、例えば、下記特許文献1には、電動モータの回転運動を直線運動に変換して出力するボールねじ機構を備えるものが開示されている。また、特許文献1には、電動モータの軸方向の一端部側に板状のステーを取り付け、そのステーを介して電動モータをアクチュエータケースにボルトで締結することで、振動に対する電動モータの位置保持力を向上させた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-74790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている構成においては、電動モータが、ステーが設けられた側とは反対側では全く支持されていない片持ち支持の状態であるため、外部からの振動(エンジンからの振動や車両走行中に生じる振動など)が電動モータに伝わると、電動モータの支持されていない側で振れが生じる可能性がある。従って、特許文献1に提案されている構成は、厳しい振動条件下での適用には十分ではなく、改善が必要であった。
【0006】
そこで、本発明は、電動モータの振れを高度に抑制することが可能な電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、ケースと、ケースに内蔵された電動モータと、電動モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備え、電動モータが、その軸方向の一端部側でケースに対して固定された電動アクチュエータにおいて、電動モータにおけるケースに固定された一端部側とは反対の他端部側で、電動モータの外周面とケースの内周面との間に弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
このように、電動モータにおけるケースに固定された一端部側とは反対の他端部側で、電動モータの外周面とケースの内周面との間に弾性部材を設けることで、電動モータの他端部側が弾性部材によって弾性的に支持されるようになる。これにより、外部からの振動が電動モータに伝わったとしても、電動モータの他端部側での振れが弾性部材によって吸収されることで、振れが高度に抑制される。
【0009】
また、電動モータの外周面とケースの内周面とによって弾性部材を径方向に圧縮した状態で挟んで保持することで、弾性部材に径方向の弾性反発力が生じる。従って、この径方向の弾性反発力により電動モータの径方向の振れ(振れの径方向成分)を抑制することができる。ただし、弾性部材によって抑制される振れは、電動モータの径方向の振れだけに限らず、他の任意の方向の振れも抑制することが可能である。すなわち、電動モータとケースとの間で生じる弾性部材の摩擦力や弾性部材の種々の方向に作用する弾性力によって、電動モータの径方向と交差する任意の方向の振れも抑制することができる。
【0010】
ケースは、互いに組み付け可能に構成された第1ケース分割体と第2ケース分割体とを有するものであってもよい。この場合、第1ケース分割体及び第2ケース分割体の一方のケース分割体の内周面に凸状の位置規制部を設け、その位置規制部と、一方のケース分割体に組み付けられた他方のケース分割体の端面とによって、電動モータに対する弾性部材の軸方向両側への移動を規制することで、弾性部材を電動モータの他端部側で位置保持しておくことができる。これにより、外部からの振動によって弾性部材が電動モータの軸方向に移動して脱落したり、弾性部材が電動モータの他端部側とは反対側(ケースに固定された端部側)へ移動したりするのを防止できるので、弾性部材による所期の機能(電動モータの他端部側での振れ抑制)を長期に亘って確実に発揮させることができる。
【0011】
弾性部材は、電動アクチュエータの作動時に電動モータが高温になることを考慮して、耐熱性材料で構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動モータの振れを高度に抑制することができるので、電動モータの振れに起因する部品の破損などの不具合が生じにくくなり、厳しい振動環境下においても適用可能な信頼性の高い電動アクチュエータを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の一形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
図2】電動モータを支持するステーやボルトの斜視図である。
図3】ステーがギヤケースに対して固定されている部分を示す断面図である。
図4】電動モータの反固定端部側及びその周辺部を示す断面図である。
図5】モータケースの本体部及びキャップ部の斜視図である。
図6】係合部及び被係合部の部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態に係る電動アクチュエータの断面図である。まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係る電動アクチュエータの全体構成及び動作について説明する。
【0015】
図1に示す電動アクチュエータ1は、電動モータ5を有するモータ部2と、電動モータ5の回転運動を伝達する駆動力伝達機構3と、電動モータ5の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構4とを主な構成としている。
【0016】
モータ部2は、電動モータ5と、電動モータ5に電力供給するための導電部材としての一対のバスバー70と、電動モータ5やバスバー70等を収容するモータケース60とを備えている。本実施形態では、電動モータ5として、安価な(ブラシ付き)DCモータを用いているが、ブラシレスモータ等の他のモータを用いてもよい。なお、ここでいうモータケース60は、電動モータ5自体が有するケース(ハウジング)とは別体で構成されたものであり、独自のケースを有する電動モータ5全体が収容される電動アクチュエータのケース(アクチュエータケース)である。
【0017】
モータケース60は、電動モータ5の大部分を収容する第1ケース分割体としての円筒状の本体部61と、本体部61の一端部(図1における左端部)に固定された第2ケース分割体としての蓋状のキャップ部62とで構成されている。各バスバー70は、金属製の板部材を所定形状に曲げ加工して形成されており、それぞれ樹脂製のホルダ部71によって保持されている。また、各バスバー70は、ホルダ部71が電動モータ5の端部(図1おける左端部)に固定された状態で、電動モータ5のモータ端子5d(図2参照)に対して溶接により接続されている。キャップ部62には軸方向に突出する筒状のコネクタ部62aが設けられており、コネクタ部62aの内周側には各バスバー70の先端部(モータ端子5dに接続される側とは反対側の端部)が配置されている。このバスバー70の先端部に対し、図示しない動力電源から延びる動力線の相手側端子が接続されることで、動力電源から電動モータ5へ電力が供給可能な状態となる。
【0018】
駆動力伝達機構3は、駆動側のドライブギヤ8と、これと噛み合う被駆動側のドリブンギヤ9とで構成されている。ドライブギヤ8及びドリブンギヤ9は、ギヤケース10内に収容されている。ドライブギヤ8は、ドリブンギヤ9よりも歯数の少ない小径のギヤであり、電動モータ5の回転軸5aに対してこれと一体的に回転するように取り付けられている。これに対して、ドリブンギヤ9は、ドライブギヤ8よりも歯数の多い大径のギヤであり、運動変換機構4を構成する後述のナット17に対してこれと一体的に回転するように取り付けられている。
【0019】
また、ドライブギヤ8は、その軸方向の両端部にて2つの軸受11,12によって回転可能に支持されている。2つの軸受11,12のうち、一方(図1において左側)の軸受11は、電動モータ5の端部に固定された筒状の軸受保持部材13内に嵌め込まれることによって保持され、他方(図1において右側)の軸受12は、ギヤケース10内に嵌め込まれることによって保持されている。ドリブンギヤ9は、ナット17の外周面に設けられた複列の軸受14によってナット17と共に回転可能に支持されている。複列の軸受14は、ギヤケース10に設けられた筒状のスリーブ15内に収容され、スリーブ15の内周面に装着された止め輪16によって軸方向への移動が規制されている。複列の軸受14としては、ナット17を安定的かつ確実に支持することができるように、ラジアル荷重に加えて、両方向のアキシャル荷重を支承できる複列アンギュラ玉軸受を用いることが好ましい。
【0020】
電動モータ5が駆動を開始し、電動モータ5の回転軸5aが回転すると、回転軸5aと一体的にドライブギヤ8が回転し、これに連動してドリブンギヤ9が回転する。このとき、電動モータ5からの回転運動は、歯数の少ないドライブギヤ8から歯数の多いドリブンギヤ9へ伝達されるので、減速されて回転トルクが増加する。このように、ドライブギヤ8とドリブンギヤ9間での減速により回転トルクを増加させて出力することで、小型の電動モータを用いても十分な出力が得られるようになる。なお、本実施形態とは異なり、ドライブギヤ8とドリブンギヤ9とを同じ歯数のギヤで構成し、電動モータ5からの回転運動を減速せずに伝達するようにしてもよい。
【0021】
運動変換機構4は、回転部材としてのナット17と、直動部材としてのねじ軸18と、多数のボール19とを有するボールねじ機構である。ナット17の内周面とねじ軸18の外周面には、それぞれ螺旋状溝が形成されており、これらの螺旋状溝の間にボール19が転動可能に収容されている。また、ナット17には図示しない循環部材が設けられており、この循環部材によってボール19が螺旋状溝に沿って循環するように構成されている。
【0022】
ねじ軸18は、ナット17の内周に挿通され、電動モータ5の回転軸5aと平行に配置されている。ねじ軸18の前端部(図1における左端部)には、連結孔18aが設けられており、この連結孔18aにボルト等の締結具を挿入することで、ねじ軸18と操作対象である図示しない使用機器の対応部位とが連結される。電動モータ5の回転運動がドライブギヤ8及びドリブンギヤ9を介してナット17に伝達されると、ナット17が回転することで、ねじ軸18が軸方向の一方(前進方向又は後退方向)へ移動する。反対に、電動モータ5が逆回転した場合は、ドライブギヤ8及びドリブンギヤ9を介して回転運動がナット17に伝達されて、ねじ軸18が軸方向の他方へ移動する。このように、電動モータ5の正逆回転によって、ねじ軸18が前進又は後退することで、ねじ軸18の前端部に連結された操作対象が操作される。
【0023】
ねじ軸18の後端部(操作対象側の端部とは反対側の端部)は、ねじ軸ケース20によって覆われている。ねじ軸ケース20は、ギヤケース10に対してモータケース60が固定される側とは反対側で固定されている。
【0024】
また、ねじ軸18の後端部には、ねじ軸18の回転を規制する回転規制部材としての回り止めピン21が設けられている。回り止めピン21は、ねじ軸18に対してその軸方向と直交又は交差する方向に取り付けられている。ねじ軸18の後端部から外径方向に突出する回り止めピン21の両端部には、それぞれガイドローラ22が回転可能に取り付けられている。各ガイドローラ22は、ねじ軸ケース20に設けられた軸方向に延びる一対のガイド溝20a内に挿入されている。ガイドローラ22がガイド溝20aに沿って軸方向へ移動することで、ねじ軸18は周方向に回転することなく軸方向に前進又は後退する。
【0025】
また、ねじ軸18において、ナット17よりも前端部側には、電動アクチュエータ1内に異物が侵入するのを防止するブーツ23と、ブーツ23を保護するためのブーツカバー25とが設けられている。ブーツ23は、小径端部23aと大径端部23bとこれらを繋いで軸方向に伸縮する蛇腹部23cとで構成されている。小径端部23aはねじ軸18の外周面に固定され、大径端部23bはブーツカバー25に取り付けられた筒状のブーツ装着部材24の外周面に固定されている。ブーツカバー25は、ブーツ23の外側を覆うように配置され、モータケース60の本体部61と一体成型されている。
【0026】
ねじ軸18の往復運動に伴ってブーツ23が伸縮すると、ブーツ23内部の圧力が変動するため、特にねじ軸18の軸方向移動量が大きい場合に内圧変動により蛇腹部23cが過大に変形して、蛇腹部23cの耐久性が低下する虞がある。そこで、ブーツ23の内圧変動による蛇腹部23cの破損を防ぐために、ねじ軸ケース20に通気フィルタ26を設けている。通気フィルタ26は、電動アクチュエータ1内を通ってブーツ23の内部空間と連通しており、ブーツ23が伸縮すると、通気フィルタ26を通してエアが流入又は流出することで、蛇腹部23cの変形が抑制される。
【0027】
また、ねじ軸18の外周面には、ねじ軸18の軸方向位置を検出するためのセンサターゲットとなる磁石27が設けられている。一方、モータケース60の外周には、図示しないストロークセンサが設けられている。ねじ軸18が前進又は後退すると、これに伴って移動する磁石27の磁場(例えば磁束密度の向き及び強さ)の変化をストロークセンサが検出することにより、磁石27の軸方向位置、ひいてはねじ軸18の軸方向位置が検出される。
【0028】
ここで、図2及び図3を参照しつつ、本実施形態に係る電動アクチュエータ1における電動モータ5の支持構造について説明する。
【0029】
図2に示すように、電動モータ5の回転軸5aが突出する側の端面には、支持部材としての板状のステー40が2本のボルト41によって固定される。詳しくは、ステー40の中央部には孔部40aが設けられており、この孔部40aに電動モータ5の回転軸5aを挿通させた状態で、2本のボルト41をステー40に設けられたボルト挿通孔40bを通して電動モータ5の端面に設けられたねじ孔5bにねじ込むことにより、ステー40が電動モータ5の端面に対して固定される。また、ステー40には別の2本のボルト42を挿通させるボルト挿通孔40cが設けられており、これらのボルト挿通孔40cにボルト42を挿通させ、図3に示すように、各ボルト42をギヤケース10に設けられたねじ孔10aにねじ込むことで、ステー40がギヤケース10に対して固定される。これにより、電動モータ5はステー40を介してギヤケース10に固定される。
【0030】
このように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1において、電動モータ5は、その軸方向の一端部側でステー40を介してギヤケース10に対して固定されている。一方、電動モータ5の軸方向の他端部側は、ボルト等によるモータケース60への締結は行われていない。仮に、この他端部側(以下、「反固定端部側」という。)での電動モータ5に対する支持が全くない場合、電動モータ5が片持ち支持となるため、外部からの振動(例えば、エンジンからの振動や車両走行中に生じる振動など)に曝される振動環境下では、電動アクチュエータを適用するにあたって課題がある。具体的には、外部からの振動が電動モータ5に伝わると、特に電動モータ5の固定端部から離れた箇所(反固定端部側)で電動モータ5の振れが大きくなる傾向にあるため、本実施形態のように、モータ端子5dとバスバー70とが電動モータ5の反固定端部側で接続されている構成においては、その振れによる影響でモータ端子5dとバスバー70との溶接個所が破損するなどしてこれらの接続状態が良好に維持できなくなる虞がある。例えば、電動モータ5の反固定端部側に振れが生じた場合に、電動モータ5に固定されているホルダ部71が電動モータ5よりも先にモータケース60の内面に衝突すると、衝突による反力(振れの方向とは反対方向の力)によりホルダ部71の動き(振れ)が規制される一方、電動モータ5の反固定端部側は振れによる慣性運動によってさらにモータケース60の内面側へ動くので、ホルダ部71と電動モータ5との間で相反する方向の運動が発生する。このような場合、ホルダ部71と電動モータ5との相反する方向の運動によって、モータ端子5dとバスバー70との溶接箇所において互いに分離する方向の負荷がかかる。そして、斯かる負荷が溶接箇所に繰り返し加わることで、溶接個所が疲労等により破損し、ひいては電動アクチュエータ1が故障することになる(制御不能となる)。
【0031】
そこで、本実施形態では、電動モータ5の反固定端部側での振動を高度に抑制するため、以下のような対策を講じている。
【0032】
図4は、電動モータの反固定端部側及びその周辺部の断面図である。
【0033】
図4に示すように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1においては、電動モータ5の反固定端部側での振れを抑制するため、電動モータ5の反固定端部側の外周面とモータケース60の本体部61の内周面との間に弾性部材としてのOリング50を設けている。Oリング50は、電動モータ5とモータケース60の本体部61とによって径方向に挟まれた状態で保持されている。また、Oリング50は、本体部61の内周面に設けられた凸状の位置規制部61cと、本体部61の内周に嵌め込まれたキャップ部62の端面62dとによって、電動モータ5に対する軸方向への移動が規制されている。
【0034】
図5に示すように、本体部61の内周面には、周方向に延びる凸状の位置規制部61cが複数設けられている。本実施形態では、位置規制部61cが周方向に断続的に設けられているが、周方向に連続的して設けられた環状の位置規制部61cであってもよい。
【0035】
また、図5に示すように、キャップ部62には、互いに180°対称となる位置に爪状に形成された一対の係合部62bが設けられている。一方、本体部61には、係合部62bが導入される一対の導入部61aが設けられている。
【0036】
図6に示すように、導入部61a内には、係合部62bと係合可能な被係合部61bが設けられている。係合部62bと被係合部61bとの係合構造は、所謂スナップフィット式の係合構造である。係合部62bが電動モータ5の軸方向に沿って導入部61aに導入されると、各係合部62bが互いに離れる方向に撓んで弾性変形し、被係合部61bに達したときに各係合部62bが弾性復帰することによって被係合部61bと係合した状態又は係合可能な状態となり、キャップ部62が本体部61に対して組み付けられる。
【0037】
このようにして組み付けられたキャップ部62の端面62dが、本体部61内に装着されたOリング50に対して対向することで、キャップ部62の端面62dと位置規制部61cとの間でOリング50が保持される。なお、この状態で、キャップ部62の端面62d及び位置規制部61cは、Oリング50に対して接触した状態であってもよいし、非接触の状態であってもよい。これにより、Oリング50はキャップ部62の端面62dと位置規制部61cとによって電動モータ5の軸方向への移動が規制される。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1においては、弾性部材としてのOリング50が電動モータ5の反固定端部側の外周面とモータケース60の本体部61の内周面との間に設けられていることで、電動モータ5の反固定端部側がOリング50によって弾性的に支持される。すなわち、本実施形態においては、電動モータ5の反固定端部側と、この反固定端部側に固定されているホルダ部71、及びホルダ部71に保持されるバスバー70が、モータケース60の内面に対して隙間を介して配置され、モータケース60に対して固定されていないが、電動モータ5の反固定端部側がOリング50を介してモータケース60に接触していることで弾性的に支持される。これにより、電動モータ5の反固定端部側に振れが生じたとしても、その振れがOリング50によって吸収されることで、振れが抑制され、モータケース60の内面に対するホルダ部71の衝突を回避することができる。あるいは、モータケース60の内面に対してホルダ部71が衝突したとしても、その衝突による衝撃を抑制することができる。その結果、衝突に起因するモータ端子5dとバスバー70との溶接個所における負荷を低減することができ、溶接個所の破損を防止できるようになる。
【0039】
ここで、本実施形態では、Oリング50が電動モータ5の径方向に圧縮されて保持されているため、Oリング50による径方向の弾性反発力によって、電動モータ5の径方向の振れ(振れの径方向成分)を抑制することが可能である。ただし、Oリング50によって抑制される振れは、電動モータ5の径方向の振れだけに限らず、他の任意の方向の振れも抑制することが可能である。すなわち、電動モータ5とモータケース60との間で生じるOリング50の摩擦力やOリング50の種々の方向に作用する弾性力によって、電動モータ5の径方向と交差する任意の方向の振れも抑制することが可能である。
【0040】
このように、本発明によれば、電動モータ5の反固定端部側の振れを高度に抑制することができるので、厳しい振動環境下であってもモータ端子5dとバスバー70との接続状態を良好に維持することができ、信頼性の高い電動アクチュエータを提供できるようになる。
【0041】
また、本実施形態のように、キャップ部62の端面62dと本体部61の位置規制部61cとによってOリング50の軸方向移動が規制されることで、Oリング50を電動モータ5の反固定端部側で位置保持しておくことができる。これにより、外部からの振動によってOリング50が電動モータ5の軸方向に移動して脱落したり、Oリング50が電動モータ5の固定端部側へ移動したりするのを防止できるので、Oリング50による所期の機能(電動モータ5の反固定端部側での振れ抑制)を長期に亘って確実に発揮させることができる。また、本実施形態とは反対に、凸状の位置規制部をキャップ部62の内周面に設け、この位置規制部と本体部61の端面とによってOリング50の軸方向移動を規制するように構成することも可能である。
【0042】
また、Oリング50は、電動アクチュエータ1の作動時に電動モータ5が高温になる場合もあることから、耐熱性材料{例えば、フッ素ゴム(FKM)等}で構成されていることが望ましい。なお、Oリングに限らず、電動モータの振れを抑制できるものであれば他の弾性部材を採用してもよい。
【0043】
以上、本発明に係る電動アクチュエータの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことである。
【0044】
上述の実施形態では、電動アクチュエータ1のケースが、本体部61とキャップ部62とから成るモータケース60と、ギヤケース10と、ねじ軸ケース20と、ブーツカバー25とで構成されているが、ケースの構造は上述の実施形態のものに限らない。ケースの形状や分割構造は、電動アクチュエータの内部構造の仕様変更や組付け性などに応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 電動アクチュエータ
3 駆動伝達機構
4 運動変換機構
5 電動モータ
50 Oリング(弾性部材)
60 モータケース
61 本体部(第1ケース分割体)
61c 位置規制部
62 キャップ部(第2ケース分割体)
62d 端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6