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特許7195072アップグレード評価方法、アップグレード評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】アップグレード評価方法、アップグレード評価装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20221216BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20221216BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B23/02 V
F01D25/00 V
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018127079
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020008956
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】今北 浩司
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-032438(JP,A)
【文献】特開2004-030565(JP,A)
【文献】特開2002-092075(JP,A)
【文献】特開2010-179294(JP,A)
【文献】特開2001-155090(JP,A)
【文献】特開2006-146554(JP,A)
【文献】特開2012-14294(JP,A)
【文献】特開2003-70163(JP,A)
【文献】特開2002-156147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 23/02
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行されるアップグレード評価方法であって、
機器の性能データを取得する性能データ取得ステップと、
前記性能データに基づいて、前記機器の性能を改善する改善機能の導入時と非導入時との性能差に基づく導入効果を算出する効果算出ステップと、
を有し、
前記効果算出ステップでは、前記機器の運転状態に応じた周期で前記導入効果を算出する、アップグレード評価方法。
【請求項2】
前記改善機能の提供側と被提供側の間で交換される前記導入効果に対する対価であって、前記導入効果の程度に応じて決定される前記対価の大きさを決定する対価算出ステップ、
をさらに有し、
前記対価算出ステップでは、前期周期ごとに、前記効果算出ステップで算出した前記導入効果に基づく前記対価を算出する、請求項1に記載のアップグレード評価方法。
【請求項3】
前記対価算出ステップでは、前記導入効果が正の場合、前記被提供側から前記提供側へ支払われる前記対価を算出する、
請求項2に記載のアップグレード評価方法。
【請求項4】
前記対価算出ステップでは、前記導入効果が負の場合、前記提供側から前記被提供側へ支払われる前記対価を算出する、
請求項2または請求項3に記載のアップグレード評価方法。
【請求項5】
前記機器の性能に対する前記機器の運転環境や運転条件の影響を、前記性能データから除去する外的要因評価ステップ、をさらに備え、
前記効果算出ステップでは、前記外的要因評価ステップで前記運転環境の影響を除去した後の前記性能データに基づいて、前記導入効果を算出する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のアップグレード評価方法。
【請求項6】
前記改善機能は、前記機器の制御ロジックであって、前記改善機能の導入と非導入とが、前記制御ロジックの実行と非実行によって切り替えられ、
前記効果算出ステップでは、前記制御ロジックの実行時と非実行時の性能差に基づいて前記導入効果を算出する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のアップグレード評価方法。
【請求項7】
前記効果算出ステップでは、前記制御ロジックの実行時の前記導入効果を、当該実行時の直前の非実行時または当該実行時の直後の非実行時における性能と当該実行時の性能との性能差に基づいて算出する、
請求項6に記載のアップグレード評価方法。
【請求項8】
前記改善機能は、前記機器に導入する部品であって、
前記効果算出ステップでは、前記部品の導入前と導入後の性能差に基づいて前記導入効果を算出する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のアップグレード評価方法。
【請求項9】
前記効果算出ステップでは、前記機器が起動して停止するまでを1つの前記周期として、前記導入効果を算出する、
請求項1から請求項8の何れか1項に記載のアップグレード評価方法。
【請求項10】
前記効果算出ステップでは、前記機器の負荷が変化するたびに、前記導入効果を算出する、
請求項9に記載のアップグレード評価方法。
【請求項11】
前記導入効果の算出タイミングの設定の入力を受け付ける設定受付ステップ、をさらに備え、
記設定受付ステップでは、前記導入効果の算出を1日以下の単位で行うことを示す設定の入力を受け付ける、
請求項1から請求項10の何れか1項に記載のアップグレード評価方法。
【請求項12】
機器の性能データを取得する性能データ取得部と、
前記性能データに基づいて、前記機器の性能を改善する改善機能の導入時と非導入時との性能差に基づく導入効果を算出する効果算出部と、
を備え、
前記効果算出部は、前記機器の運転状態に応じた周期で前記導入効果を算出する、
アップグレード評価装置。
【請求項13】
前記改善機能の提供側と被提供側の間で交換される前記導入効果に対する対価であって、前記導入効果の程度に応じて決定される前記対価の大きさを決定する対価算出部、
をさらに備え、
前記対価算出部は、前記周期ごとに、前記導入効果に基づく前記対価を算出する、
請求項12に記載のアップグレード評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップグレード評価方法、アップグレード評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンなどの発電プラントにおいて、性能の向上を目的とするアップグレードメニュー(部品や制御ロジックなど)が提供されている。アップグレードメニューを導入する際には、その効果に対する保証値を設定し、導入後の性能の向上が保証値を達成するとユーザからメーカへ所定の金額が支払われる。反対に性能の向上が保証値に満たない場合、メーカはペナルティとして所定の金額をユーザに支払う場合がある。
また、例えば、導入の効果が小さいアップグレードメニューを導入する場合、保証値を達成したか否かの検証が難しいため、メーカからユーザへ保証値が提示されないことがある。そのような場合、ユーザは、保証を得られないためアップグレードメニューの導入をためらうことが多くなる。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、発電プラントのプラント診断サービスにおいて、診断に従った結果生じたエネルギー効率の改善による燃料等の節約分や発生電力量の増加分などの利得を計測し、実際に得られた利得に応じた金額を診断サービス提供者に支払うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-16167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アップグレードメニューの導入には、メーカとユーザの双方にリスクが存在する。メーカのリスクは、例えば、利益の確保が難しい保証値を設定しなければならないリスクである。ユーザのリスクは、例えば、導入コストに見合った効果が得られないリスクである。アップグレードメニューの導入にあたり、メーカとユーザ双方のリスクを低減する取り決めの確立が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、上述の課題を解決することのできるアップグレード評価方法、アップグレード評価装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、アップグレード評価方法は、コンピュータによって実行されるアップグレード評価方法であって、機器の性能データを取得する性能データ取得ステップと、前記性能データに基づいて、前記機器の性能を改善する改善機能の導入時と非導入時との性能差に基づく導入効果を算出する効果算出ステップと、を有し、前記効果算出ステップでは、前記機器の運転状態に応じた周期で前記導入効果を算出する。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法は、前記改善機能の提供側と被提供側の間で交換される前記導入効果に対する対価であって前記導入効果の程度に応じて決定される前記対価の大きさを決定する対価算出ステップ、をさらに有し、前記対価算出ステップでは、前期周期ごとに、前記効果算出ステップで算出した前記導入効果に基づく前記対価を算出する。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法における前記対価算出ステップでは、前記導入効果が正の場合、前記被提供側から前記提供側へ支払われる前記対価を算出する。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法における前記対価算出ステップでは、前記導入効果が負の場合、前記提供側から前記被提供側へ支払われる前記対価を算出する。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法は、前記機器の性能に対する前記機器の運転環境や運転条件の影響を、前記性能データから除去する外的要因評価ステップ、をさらに備え、前記効果算出ステップでは、前記外的要因評価ステップで前記運転環境の影響を除去した後の前記性能データに基づいて、前記導入効果を算出する。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法における前記改善機能は、前記機器の制御ロジックであって、前記改善機能の導入と非導入とが、前記制御ロジックの実行と非実行によって切り替えられ、前記効果算出ステップでは、前記制御ロジックの実行時と非実行時の性能差に基づいて前記導入効果を算出する。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法における前記効果算出ステップでは、前記制御ロジックの実行時の前記導入効果を、当該実行時の直前の非実行時または当該実行時の直後の非実行時における性能と当該実行時の性能との性能差に基づいて算出する。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法における前記改善機能は、前記機器に導入する部品であって、前記効果算出ステップでは、前記部品の導入前と導入後の性能差に基づいて前記導入効果を算出する。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記効果算出ステップでは、前記機器が起動して停止するまでを1つの前記周期として、前記導入効果を算出する。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記効果算出ステップでは、前記機器の負荷が変化するたびに、前記導入効果を算出する。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価方法において前記導入効果の算出タイミングの設定の入力を受け付ける設定受付ステップ、をさらに備え、前記設定受付ステップでは、前記導入効果の算出を1日以下の単位で行うことを示す設定の入力を受け付ける。
【0018】
本発明の一態様によれば、アップグレード評価装置は、機器の性能データを取得する性能データ取得部と、前記性能データに基づいて、前記機器の性能を改善する改善機能の導入時と非導入時との性能差に基づく導入効果を算出する効果算出部と、を備え、前記効果算出部は、前記機器の運転状態に応じた周期で前記導入効果を算出する。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記アップグレード評価装置は、前記改善機能の提供側と被提供側の間で交換される前記導入効果に対する対価であって、前記導入効果の程度に応じて決定される前記対価の大きさを決定する対価算出部、をさらに備え、前記対価算出部は、前記周期ごとに、前記導入効果に基づく前記対価を算出する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アップグレードメニューの導入効果に対する対価を適切に算出することで、アップグレードメニューの導入にあたって、ユーザとメーカ双方のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態におけるプラントと対価算出装置のブロック図である。
図2】本発明の第一実施形態における対価算出テーブルの一例を示す図である。
図3】本発明の第一実施形態における導入効果と対価の算出例を示す図である。
図4】本発明の第一実施形態における導入効果算出処理および対価算出処理の一例を示す第1のフローチャートである。
図5】本発明の第一実施形態における環境要因の除去処理を説明する図である。
図6】本発明の第一実施形態における導入効果算出処理および対価算出処理の一例を示す第2のフローチャートである。
図7】本発明の第二実施形態におけるプラントと対価算出装置のブロック図である。
図8】本発明の各実施形態における対価算出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態によるアップグレードメニューの導入効果に対する対価算出方法について図1図6を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態におけるプラントと対価算出装置のブロック図である。
図1に示すプラント10は、例えば、発電プラント、化学プラント、ごみ焼却プラント等である。プラント10が発電プラントの場合、プラント10は、ガスタービンや蒸気タービン、発電機などの機器を備える。プラント10は、これらの機器を制御する制御装置11を備えている。制御装置11は、機器の運転状態や運転環境を示す運転データを、各機器やセンサから取得し、取得した運転データを監視しつつ、プラント10が所望の電力を発電するようガスタービンなどの機器を制御する。また、制御装置11は、運転データを用いて、ガスタービンの出力効率などのプラント10の性能データを算出する。ガスタービンの出力効率は、例えば、ガスタービンへの燃料投入量に対するガスタービンの出力によって算出することができる。プラント10の機器を製造するメーカは、プラント10が備える機器の性能を向上させるアップグレードメニューを提供している。
【0023】
アップグレードメニューには、機器の性能を向上する部品(ハードウェア)、制御ロジック(ソフトウェア)が存在する。アップグレードメニューの部品を導入すると、導入後に機器の性能が向上し、例えば、ガスタービンの出力効率が向上する。また、制御ロジックを導入すると、その制御ロジックを動作させたときには機器の性能が向上し、制御ロジックを動作させない場合には、導入前の性能が維持される。つまり、制御ロジックの場合には、ソフトウェア的な切り替えによって、性能改善効果を有効にしたり無効にしたりすることができる。
【0024】
アップグレードメニューを導入する場合、性能改善効果が顕著であれば、ユーザは、初期投資を惜しまず導入を決定することができる。しかし、効果が顕著ではない場合、ユーザは導入の効果を慎重に見極めて導入を決定する。これに対し、メーカは、アップグレードメニューの導入を推進するために、安価な金額(例えば無料)でアップグレードメニューを提供し、一定の性能改善効果が得られたらユーザからその対価を得るといった取り決めを行うことがある。このような場合、導入の効果を正確に評価することが求められる。しかし、実際には、運転環境や運転条件の変動によって性能がばらついたり、外的要因の性能への影響が大きい場合にはアップグレードメニューによる性能の向上が隠れてしまったり、性能に関するデータの計測精度の限界等により性能改善効果が確認できなかったり、反対に予想よりも高い性能改善効果が得られたりする場合がある。例えば、1年に1回、このような性能評価の結果に基づいて対価の支払いを決定すると、その1回の改善効果の評価結果がユーザ又はメーカにとって不利な方へ偏る可能性があるため、ユーザとメーカの双方にとって高いリスクとなる。そこで、本実施形態では、対価算出装置20が、ユーザとメーカの双方が納得しやすい方法で対価を決定し、アップグレードメニュー導入のリスクを低減する。第一実施形態では、改善機能を有する部品のアップグレードメニューを導入した場合の対価の算出について説明する。制御ロジックを導入した場合の対価の算出については、第二実施形態で説明する。
【0025】
対価算出装置20は、制御装置11とネットワーク(NW)を介して通信可能に接続されている。対価算出装置20は、制御装置11からプラント10が備える機器の性能データ、運転環境の状態を示す運転データなどを取得し、アップグレードメニュー導入前後の性能差(導入効果)を評価する。そして、対価算出装置20は、性能改善に見合った対価を算出する。対価算出装置20は、(1)なるべく数多くの導入効果の評価機会を設け、(2)その都度、評価結果が示す導入効果の程度に応じた対価を算出する。(1)により評価結果のばらつきを平均化することができ、ユーザとメーカのどちらか一方に利益が偏ることを防ぐことができる。(2)により、実際の導入効果に見合わない対価の交換を防ぐことができる。なお、対価の交換とは、アップグレードメニュー導入によって導入効果が得られた場合は、ユーザからメーカへ報酬としての対価を支払い、反対に導入によって効果が得られない、あるいは、何らかの事情でマイナスの効果が出た場合には、メーカからユーザへ性能劣化への補償としての対価を支払うことを含んでいる。
【0026】
対価算出装置20は、性能データ取得部21と、運転データ取得部22と、制御部23と、設定受付部24と、出力部25と、記憶部26と、通信部27と、を備える。
性能データ取得部21は、プラント10に関する種々の性能値を含む性能データを取得する。性能データ取得部21は、取得した性能データを記憶部26に記録する。
運転データ取得部22は、プラント10の運転環境(気温、湿度など)や運転条件(負荷の大きさ、運転時間など)の情報を含んだ運転データを取得する。運転データ取得部22は、取得した運転データを記憶部26に記録する。
制御部23は、アップグレードメニューの導入効果の大きさに応じた対価を算出する処理を制御する。例えば、制御部23は、予め設定されたタイミング(1月毎、1日毎、1時間毎、1分毎など)で導入効果に応じた対価を算出する。制御部23は、効果算出部231と、外的要因評価部232と、対価算出部233と、を備える。
効果算出部231は、アップグレードメニューの導入効果を算出する。例えば、効果算出部231は、アップグレードメニューの非導入時に達成されたプラント10の機器の性能(出力電力量、発電効率、Noxなどの気体排出の低減など)と導入時の性能との差を算出し、性能差に基づいて導入効果を算出する。
【0027】
外的要因評価部232は、性能データから運転環境や運転条件などの外的要因の影響を除去する。例えば、気温が高い環境で達成された性能には、アップグレードメニューの導入効果の他、気温の影響が含まれている。この性能を、同程度の気温で達成された導入前の性能と比較することができれば、アップグレードメニューの導入効果を算出することができるが、導入前後の性能データから気温の影響を除去し、除去後の性能データを用いて性能差を算出した方が、導入効果がより正確に算出できる。特に気温差が性能に与える影響が、導入効果よりも大きいような場合、気温の影響によって導入効果が確認できなくなることがある(例えば、導入後の気温が性能に対して悪影響を及ぼす条件であった場合、気温の影響によって導入効果が隠れてしまう)。外的要因評価部232は、正確な導入効果を抽出するために性能データから環境要因などの影響を除去する。
【0028】
対価算出部233は、効果算出部231が算出した導入効果に基づいて、アップグレードメニューの提供側(メーカ)と被提供側(ユーザ)の間で交換される対価を算出する。例えば、導入効果が正の場合、ユーザからメーカへ支払われる対価を算出する。この場合、導入効果が大きい程、算出される対価は大きな値となる。一方、導入効果が負の場合、アップグレードメニューを導入するための初期費用などに応じて、メーカからユーザへ支払われる対価を算出してもよい。例えば、初期費用が0の場合、導入効果が0や負であっても対価の算出を行わなくてもよい。反対に初期費用をユーザに要求した場合は、導入効果が0や負であれば、初期費用に見合った対価の算出を行う。また、対価の支払いの基準となる性能向上の保証値が設定され、この保証値を上回った(あるいは下回った)程度に応じて対価が算出されてもよい。
【0029】
設定受付部24は、対価算出に必要な情報の設定を受け付ける。例えば、設定受付部24は、導入効果および対価を算出するタイミング(1時間毎など)の設定、導入効果の程度に応じた対価を定めた対価算出テーブル設定などを受け付ける。
出力部25は、対価算出部233が算出した対価を出力する。
記憶部26は、性能データ、運転データ、設定受付部24が受け付けた設定情報を記憶する。また、記憶部26は、アップグレードメニュー導入前の性能データの代表値を記憶する。
通信部27は、制御装置11とのデータ通信を行う。通信部27によって、リアルタイムにプラント10から性能データを取得することができるので、対価算出装置20は、最新の性能データに基づいて、適宜、現在のプラント10におけるアップグレードメニューの導入効果の算出や、導入効果に応じた対価の算出を行うことができる。
【0030】
図2は、本発明の第一実施形態における対価算出テーブルの一例を示す図である。
対価算出テーブルには、導入効果に応じた対価が設定されている。例えば、対価の算出を月ごとに行う場合、対価算出部233は、導入効果に応じた行の「対価(月単位)」欄の値を対価算出テーブルから読み出して、この値を対価とする。例えば、対価の算出を半年ごとに行う場合、対価算出部233は、導入効果に応じた行の「対価(半年単位)」欄の値を対価算出テーブルから読み出して、この値を対価とする。次に対価の算出例について説明する。
【0031】
(月ごとの導入効果および対価算出)
図3は、本発明の第一実施形態における導入効果と対価の算出例を示す図である。
まず、月単位で導入効果を評価する場合について説明する。プラント10では、アップグレードメニュー(部品)が導入されているとする。
効果算出部231は、1月が終わった段階で、記憶部26が記憶する1月に取得された性能データ(例えば、ガスタービンの出力効率)を読み出す。効果算出部231は、1月分の出力効率の平均値を算出する等して1月の出力効率の代表値を算出する。また、効果算出部231は、記憶部26が記憶するアップグレードメニュー導入前の出力効率の代表値を読み出して取得する。効果算出部231は、1月分の出力効率のから導入前の出力効率の代表値を減算して、導入効果「0.1」を算出する。次に対価算出部233が、1月の導入効果「0.1」と図2で例示する対価算出テーブルとに基づいて、1月分の対価を算出する。具体的には、図2の対価算出テーブルの「導入効果」欄の値が「0.1」の行の「対価(月単位)」欄の値「1000」を取得して、「1000」を1月分の対価として算出する。例えば、導入効果が「0.05」%などテーブルに設定されていない値の場合、対価算出部233は、対価算出テーブルの設定値から、そのときの対価「500」を補間計算により算出してもよい(8月、10月)。同様に効果算出部231は2月以降の導入効果を算出し、対価算出部233は2月以降の対価を算出する。
【0032】
例えば、1月には「0.1」%の性能改善が得られたので対価「1000」は、ユーザからメーカへ支払われる。2月には、「0.2」%の性能改善が得られたのでメーカは対価「2000」をユーザから得る。このように性能改善の程度に応じた対価が得られるので、メーカは、例えばアップグレードメニューを安価に提供し、導入後の性能改善効果により利益を得ることができる。ユーザは、安価にアップグレードメニューを導入することができ、実際に効果が得られた分だけ対価を支払えばよいので、導入のリスクが低下し、性能改善効果による出力効率上昇による燃料コスト削減などの利益を得ることができる。
【0033】
反対に3月は、性能が「0.1」%低下(-0.1)している。このときの対価「-1000」は、メーカからユーザへ対価「1000」が支払われることを意味する。ユーザは、性能が低下したときには、メーカから低下分の対価を補償してもらえるので安心してアップグレードメニューを導入することができる。また、このような補償により、メーカは導入効果の保証値を提示する必要がなくなり、保証値が達成できないときのリスクから解放される。特に導入効果が小さく、保証値の設定が難しいアップグレードメニューでも、保証値の設定を行うことなく、安心してユーザへ提案することができる。
【0034】
また、7月には、性能の改善度が0%だったため、ユーザとメーカの間で対価の交換は行わない。プラントの運転中は、様々な要因により導入効果が確認できない場合があるが、このような取り決めを行うことができれば、メーカは、導入効果が確認できなかった場合でも補償対価を支払わなくてよいので、導入効果が計測できなかったときの補償リスクに関する対策等を行わなくてよい。本実施形態の導入効果および対価算出処理のように、実際に得られた導入効果に応じて対価を決定し、且つ、なるべく導入効果および対価算出の機会を多く設けるような条件であれば、他の機会に適切な対価が得られるとの期待が持てるので、ユーザ、メーカ双方が納得して、このような取り決めに合意することができる。
【0035】
(半年ごとの導入効果および対価算出)
次に導入効果および対価算出の頻度を半年ごとに低下させた場合について説明する。
効果算出部231は、6月が終わった段階で、記憶部26が記憶する1月~6月に取得された性能データ(出力効率)を読み出す。効果算出部231は、半年分の出力効率の平均値を算出して導入後の出力効率の代表値とする。効果算出部231は、半年分の出力効率の代表値から記憶部26が記憶する導入前の出力効率の代表値を減算して、導入効果「0.1」%を算出する。次に対価算出部233が、導入効果「0.1」%と対価算出テーブルとに基づいて、半年分の性能改善に対応する対価「1000」を算出する。7月~12月についても同様に、効果算出部231は導入効果「0.03」%を算出し、対価算出部233は対価「1800」を算出する。
【0036】
半年ごとに算出された対価を、月ごとの対価算出の場合と比較すると、6月の対価「6000」は、月ごとに算出された1月~6月の対価の合計と等しい。しかし、実際には、2月には0.2%の導入効果が得られ、3月には「0.1」%導入効果が低下している。月ごとに対価を算出すると、これらの性能の変動を把握することができ、また、その都度、その変動に見合った対価の交換が行われるため導入効果と対価交換との関係性に対する透明性が確保される。また、数多く効果の評価を繰り返すことで、評価結果の偏りが抑えられ、ユーザとメーカの双方にとって公平性が確保される。
【0037】
次に7月~12月について検討する。半年ごとに対価を算出する場合の12月の対価は「1800」、一方、月ごとに算出した場合の7月~12月の対価の合計は「2000」である。半年の間で月ごとの導入効果にばらつきがある場合、半年に1度の評価では、そのばらつきが平均化されるため、各月の変動に対して対価を算出し、それらを合計した値との差が生じたと考えられる。導入効果が平均化されない程度の間隔で対価の算出を行うことにより、メーカ、ユーザの双方にとって、アップグレードメニューの導入効果を明確に確認する機会を得ることができる。特に導入効果にばらつきが生じやすいアップグレードメニューの場合には、短い期間ごとに対価の算出を行うことで、メーカは、確実に利益を得ることができる。
【0038】
(従来の対価算出)
比較のために従来の対価算出について説明する。一例として、半年に1回対価の算出を行うものとする。従来の方法では、保証値を決めて、性能の改善がこの保証値に達すれば、ユーザがメーカに対価を支払い、保証値に達しない場合、ユーザからメーカへの対価の支払いは行われない。契約によっては、メーカからユーザにペナルティの対価を支払う。図3の例では、保証値が「0.07」%に設定され、6月には「0.1」%の効率改善を達成している為、ユーザが、予め定められた対価「6000」をメーカへ支払う。12月の場合、「0.03」%の効率改善は保証値に達していないため、ユーザからメーカへの支払いは行われない。
【0039】
このように従来の対価算出では、導入効果の大きさに応じた対価が算出されない。また、保証値を達成しなければ、効率が上昇してもメーカは利益を得ることができない。従ってメーカにとっては、利益を確保できる保証値を設定することが重要となり、机上の計算で例えば「0.1」%の効果改善が見込まれていても、性能のばらつきを見込んで低い保証値(0.07%)を設定する。すると、ユーザは、より小さな性能改善に対して対価を支払わなくてはならなくなり、採算が合わなくなることがある。
【0040】
これに対し、本実施形態の導入効果および対価算出方法であれば、保証値の提示を行わない代わりに例えばアップグレードメニューの導入を無料にすることで、メーカは、わずかな効率改善であっても、それに見合った利益を得ることができる。また、ユーザは、効果が無ければ対価を支払う必要が無いため、効果の保証が無いアップグレードメニューの導入に投資する必要がなくなる。また、例えば、月ごとに対価の算出を行うなど、導入効果を評価する機会を多く設けることで、1度だけの評価結果に大きく左右されること無く、ユーザはアップグレードメニュー導入によるプラント10の性能向上の利益を享受することができ、メーカは、性能向上に対する対価を得ることができる。
【0041】
図4は、本発明の第一実施形態における導入効果算出処理および対価算出処理の一例を示す第1のフローチャートである。図4を用いて、導入効果算出処理および対価算出処理の流れについて説明する。
前提としてアップグレードメニュー(部品)が導入されているとする。まず、設定受付部24が、対価算出処理に必要な設定情報の入力を受け付ける(ステップS10)。例えば、設定受付部24は、メーカとユーザの双方が利益を確保できるよう設定された対価算出テーブルの入力を受け付ける。また、対価算出処理を行う適切なタイミングについての設定を受け付ける。対価交換の管理上の便宜やアップグレードメニュー導入前後の比較のしやすさを考えて、運転状態が変化する周期を一つの区切りとして、その間に得られた導入効果に基づく対価を算出するように設定してもよい。例えば、日々ガスタービンを起動、停止する運用を行うような場合には、1日単位で導入効果の評価、対価の算出を行うように設定してもよい。あるいは、プラント10に対して要求される負荷が半日単位で変化する場合、半日ごとに導入効果の評価、対価の算出を行うように設定してもよい。同様に1週間単位で負荷やガスタービンの運転形態が変化するような場合、週単位で対価の算出等を行うように設定してもよい。あるいは、ガスタービンが1年中、一定の負荷で運転する場合、評価の機会を増やして偏りをなくすために、例えば、1時間毎や1分毎等なるべく小さな単位で導入効果の評価、対価の算出を行うように設定してもよい。あるいは、アップグレードメニューの性質に応じて、一定の期間、プラント10を運転しないと導入効果が計測できないような場合には、その期間に合わせて対価の算出タイミングを設定してもよい。また、導入効果の評価および対価の算出タイミングは、1日単位、1時間単位など定期的な時間間隔に限定されない。例えば、ガスタービンの1回の起動から停止までを1つの評価期間の単位として設定してもよい。あるいは、ガスタービンが定格負荷と50%の部分負荷での運転を繰り返すような場合、定格負荷で運転を行っている期間を1つの評価期間、部分負荷で運転を行っている期間を1つの評価期間とし、負荷帯が変わるごとに対価の算出を行うようにしてもよい。
またステップS10では、アップグレードメニューの導入前であって、評価対象と同様の運転環境、運転条件でプラント10を運転したときに計測した性能の代表値を設定する。設定受付部24は、各種設定情報を記憶部26に記録する。
【0042】
次にプラント10の運転中に性能データ取得部21が、定期的に性能データを取得する(ステップS11)。次に制御部23が、導入効果の評価タイミングかどうかを判定する(ステップS12)。例えば、ステップS10において1日単位で対価を算出すると設定された場合、制御部23は、前回の対価の算出から24時間が経過すると、導入効果の評価タイミングであると判定する。評価タイミングではない場合(ステップS12;No)、制御部23は、評価タイミングが到来するまで待機する。
【0043】
評価タイミングと判定した場合(ステップS12;Yes)、制御部23は、導入効果の算出と、導入効果に応じた対価の算出を行う。まず、効果算出部231が、導入効果を算出する(ステップS13)。例えば、効果算出部231は、前回の評価後に取得した性能データを記憶部26から読み出して平均値を算出する。効果算出部231は、算出した平均値から、記憶部26が記憶するアップグレードメニュー導入前の性能データを減算して、性能の向上の程度(効果)を算出する。次に対価算出部233が、ステップS13で算出された効果と対価算出テーブルに基づいて、導入効果に見合う対価を算出する(ステップS14)。次に出力部25が、ステップS14にて算出された対価を出力する。メーカとユーザは出力された対価の交換を行う。
【0044】
図4を用いて説明したように、従来の対価算出方法では所定期間(例えば1年)に1回だけ、アップグレードメニューの導入効果を算出し、導入効果が保証値を上回っているかどうかで対価を決定していた。本実施形態の対価算出装置20は、(1)所定期間(例えば1年)における複数の時点ごとに(例えば、1か月毎、1日毎など)アップグレードメニューの導入効果を算出し、(2)当該複数の時点ごとに導入効果の大きさに応じた対価を算出する。これにより、アップグレードメニューの導入におけるユーザとメーカ双方のリスクを低減することができる。
【0045】
次に外的要因の影響を性能データから除去する処理について説明する。図4の説明では、アップグレードメニューの導入前と導入後で同じような運転環境で計測された性能データを比較するようにした。しかし、アップグレードメニューが性能に与える影響よりも、運転環境などが性能に与える影響が大きい場合は、性能データから外的要因の影響を除去しなければ、アップグレードメニューの導入前後の性能比較が正確にできない場合がある。
【0046】
図5は、本発明の第一実施形態における環境要因の除去処理を説明する図である。
外的要因評価部232は、性能データと、その性能データが示す性能が達成されたときの運転データの関係を示す関数を生成する。図5(a)は、ガスタービンの出力効率(縦軸)とガスタービン(圧縮機)が吸入する空気の温度(横軸)の関係を示すグラフである。図中、四角印の点は、異なる時点に取得された運転データに含まれる気温と、性能データに含まれるガスタービンの出力効率との関係をプロットしたものである。曲線L1は、外的要因評価部232が、四角印の点から単回帰分析などにより生成した関数を示す。なお、外的要因が複数存在する場合には、重回帰分析により関数を生成することができる。一般にガスタービンは、気温が低い程、高効率の運転が可能となり、気温が上昇すると出力効率が低下する。曲線L1は、このような気温とガスタービンの出力効率の関係を含んでおり、ガスタービン単体での性能を必ずしも示していない。例えば、点P1と点P3を比較すると、点P1の時点の方が、出力効率が高い。しかし、点P1の時点のガスタービンの性能が、点P3の時点のガスタービンの性能よりも高いとは限らない。例えば、点P1の時点のガスタービンの出力効率は点P3時点の出力効率に比べ劣化しているが、運転環境が良い(気温が低い)ために点P1の出力効率が高くなっている可能性がある。外的要因評価部232は、外的要因(気温)の影響を除去する処理を行う。例えば、気温T1を基準値として、様々な気温下で演算された出力効率を、気温T1の下での出力効率に換算する。この場合、外的要因評価部232は、全ての四角印の点のそれぞれを、各点に対応する気温の値がT1となるように、曲線L1に沿って移動させる。例えば、点P1の場合、破線矢印のように点P1を移動させる。その結果、点P1は星印の点P1´へ移動する。点P1´における出力効率の値が、気温の影響を除去した後の出力効率である。点P2、点P3の場合も同様に、各点から曲線L1に沿って伸びる破線矢印に従って、それぞれ星印の点P2´、点P3´まで移動させる。移動後の点P2´における出力効率の値が、点P2時点における外的要因除去後の出力効率である。移動後の点P3´における出力効率の値が、点P3時点における外的要因除去後の出力効率である。このように同じ気温下での出力効率に揃えることで、気温の影響を受けずに出力効率の比較が可能になる。これを外的要因の除去処理と呼ぶ。
【0047】
図5(b)は、出力効率(縦軸)とその出力効率が得られた時間(横軸)の関係を示すグラフである。図5(b)のグラフは、上記処理により得られた外的要因除去処理後の各時点における出力効率を、その出力効率を達成した時間と出力効率の関係を示すグラフ上にプロットしなおしたものである。曲線L2は、外的要因評価部232が、星印の点から回帰分析などにより生成した近似曲線である。曲線L2は、時間の経過に従って出力効率が徐々に低下していることを示している。つまり、曲線L2は、この間の気温の変動に関係なくガスタービンの出力効率が、時間の経過とともに劣化していることを示している。
このように外的要因の除去処理によって、環境要因などに影響されないプラント10自体の性能の評価が可能になる。例えば、図5(b)に示すように出力効率の経時的な変化を算出することで、性能の経年変化をとらえることが可能になる。
外的要因評価部232は、アップグレードメニューの導入前の性能データと適用後の性能データのそれぞれから外的要因の影響を除去する処理を行う。
【0048】
図6は、本発明の第一実施形態における導入効果算出処理および対価算出処理の一例を示す第2のフローチャートである。図6を用いて、外的要因の除去処理を行う場合の導入効果算出処理および対価算出処理の流れについて説明する。なお、図4と同様の処理については簡単に説明する。また、記憶部26には、アップグレードメニュー導入前の性能データと、その性能データが示す性能を達成したときの運転データが記録されている。
まず、設定受付部24が、導入効果および対価算出処理に必要な設定情報の入力を受け付ける(ステップS10)。次に性能データ取得部21が、定期的に性能データを取得する(ステップS11)。それと並行して、運転データ取得部22が、定期的に運転データを取得する(ステップS111)。なお、性能データと運転データには時刻情報が含まれており、性能情報には、例えば、ガスタービンの出力効率とその出力効率が達成されている時刻が含まれる。また、運転データには、気温、湿度、負荷などの情報とともに、その気温、湿度、負荷が計測された時刻の情報が含まれている。
【0049】
次に制御部23が、導入効果の評価タイミングかどうかを判定する(ステップS12)。評価タイミングと判定した場合(ステップS12;Yes)、制御部23は、外的要因除去処理と、導入効果の評価と、導入効果に応じた対価の算出処理を行う。
まず、外的要因評価部232が、アップグレードメニュー導入後の性能データと導入前の性能データのそれぞれから、外的要因の影響を除去する処理を行う(ステップS125)。アップグレードメニュー導入後の性能データの場合、外的要因評価部232は、評価対象期間(例えば、1日単位で導入効果の評価と対価の算出を行う場合、24時間前から現在までの)の性能データと運転データとを時刻情報に基づいて対応付けて、例えば、運転データの気温、湿度、負荷などの各値と、同時刻に達成された出力効率の関係を示す関数を重回帰分析などにより生成する。そして、外的要因評価部232が、図5で説明したように気温、湿度、負荷などの各パラメータの値をパラメータごとに定められた所定の基準値に揃えることで、外的要因を除去する。外的要因評価部232は、同様にアップグレードメニュー導入前の性能データおよび運転データを用いて、外的要因の各パラメータの値を導入後と同じ基準値に備える外的要因除去処理を行う。
外的要因評価部232は、アップグレードメニュー導入前後の性能データから外的要因の影響を除去したデータを記憶部26に記録する。
【0050】
次に効果算出部231が、外的要因の影響を除去した後の性能データを用いて、導入効果を算出する(ステップS13)。次に対価算出部233が、対価を算出し(ステップS14)、出力部25が、算出された対価を出力する。外的要因の影響を除去することで、アップグレードメニューの導入効果がより正確に算出できる。また、正確な導入効果に基づいて対価を算出することができる。
【0051】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による導入効果算出処理および対価算出方法を、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第二実施形態におけるプラントと対価算出装置のブロック図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係る構成と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第二実施形態に係るプラント10Aには、制御ロジックのアップグレードメニューが導入されている(制御ロジックαとする)。例えば、制御装置11Aが実行する制御用プログラムに制御ロジックαが組み込まれており、ユーザの指示等により、制御ロジックαの実行、非実行が切り替えられる。制御装置11Aは、性能データ、運転データを、対価算出装置20Aへ送信する。性能データには、例えば出力効率、時刻の他に制御ロジックαが実行されているかどうかを示すフラグ情報(例えば、実行されていればON、実行されていなければOFF)が含まれている。
対価算出装置20Aでは、性能データ取得部21が、フラグ情報を含む性能データを取得し、記憶部26に記録する。制御部23は、効果算出部231に代わって効果算出部231Aを備えている。効果算出部231Aは、性能データに含まれるフラグ情報を用いて、アップグレードメニューの導入時(制御ロジックαの実行時)の性能と非導入時(制御ロジックαの非実行時)の性能を区別し、両者を比較することで効果を算出する。また、効果算出部231Aは、制御ロジックαが非実行状態から実行状態に切り替わると、実行状態における性能を、直前の非実行状態における性能、または直後の非実行状態における性能と比較してもよい。直前の非実行時の性能と比較することで、プラント10Aの経年劣化が同程度の状態で、且つ、類似した運転環境で計測された性能同士を比較することができる。
【0052】
次に第一実施形態で説明した図4を参照して第二実施形態の導入効果算出処理および対価算出処理の流れについて説明する。
まず、設定受付部24が、導入効果および対価算出処理に必要な設定情報の入力を受け付ける(ステップS10)。第一実施形態と同様に対価算出テーブルや、導入効果および対価算出処理を行うタイミングについての設定を受け付ける。対価算出処理のタイミングについては、第一実施形態と同様の設定(例えば、1日単位など)でもよいし、制御ロジックαの実行と非実行が切り替わるタイミングで対価算出を行うような設定でもよい
次に制御部23が、導入効果の評価タイミングかどうかを判定する(ステップS12)。評価タイミングと判定した場合(ステップS12;Yes)、まず、効果算出部231Aが、導入効果を算出する(ステップS13)。例えば、1日単位で導入効果を算出する設定の場合、効果算出部231Aは、24時間以内に取得した性能データのうち制御ロジックαの実行時における性能データと、非実行時における性能データとを区別して記憶部26から取得する。そして、効果算出部231Aは、制御ロジックαの実行時の性能の代表値と、非実行時の性能の代表値を算出する。次に効果算出部231Aは、制御ロジックαの実行時の性能と非実行時の性能の差(効果)を算出する。
また、例えば、実行と非実行が切り替わるタイミングで導入効果を算出する設定の場合、効果算出部231Aは、制御ロジックαが実行から非実行に切り替わったタイミングで、実行時の性能の代表値と、その実行時の直前の非実行時の性能の代表値とを比較して効果を算出する。あるいは、制御ロジックαが実行から非実行に切り替わったタイミングで、実行時の性能の代表値と、その実行時の直後の非実行時の性能の代表値(例えば、現在の非実行状態における、非実行状態への切り替え後から現在までの性能の平均値)とを比較して効果を算出してもよい。
次に対価算出部233が、対価を算出し(ステップS14)、出力部25が、算出された対価を出力する。
【0053】
なお、本実施形態においても外的要因評価部232による外的要因の除去処理を行ってもよい。例えば、制御ロジックαの効果が、外的要因の性能に及ぼす影響よりも小さい場合や、制御ロジックαの実行と非実行の切り替えを行わず、実行状態にしたまま運転している場合のように環境要因などの変化が無視できない場合などに有効である。
【0054】
図8は、本発明の各実施形態における対価算出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える例えばPC(Personal Computer)やサーバ端末装置である。上述の対価算出装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶部26に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0055】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、入出力インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
なおアップグレードメニューは改善機能の一例である。対価算出装置20は、アップグレード評価装置の一例である。図4図6等に示す導入効果および対価算出処理は、アップグレード評価方法の一例である。
【符号の説明】
【0057】
10・・・プラント
11・・・制御装置
20・・・対価算出装置
21・・・性能データ取得部
22・・・運転データ取得部
23・・・制御部
24・・・設定受付部
25・・・出力部
26・・・記憶部
27・・・通信部
23・・・制御部
231・・・効果算出部
232・・・外的要因評価部
233・・・対価算出部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8