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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】トモグラフィ計測センサ及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
G01N27/22 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018137487
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020016445
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山根 善行
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】磯 良行
(72)【発明者】
【氏名】武居 昌宏
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185924(JP,A)
【文献】特開2011-164103(JP,A)
【文献】特開2002-214183(JP,A)
【文献】特表2008-525821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内の固気混相流の誘電率分布から固体及び気体の分布状態を求めるキャパシタンス・トモグラフィ法に用いるトモグラフィ計測センサであって、
撓曲可能な樹脂製の薄膜状の絶縁体であるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の表面に形成された電極層と、
前記電極層を被覆する第一カバーレイと、
前記フレキシブル基板の裏面に形成された導電層と、
前記導電層を被覆する第二カバーレイと、
前記電極層と前記導電層とを電気的に接続する複数のスルーホールと、を備え、
前記電極層は、前記管路の軸方向に細長い矩形形状を有し前記管路の周方向に対応する方向に等間隔に配列された複数のセンサ電極と、前記センサ電極の外周を囲うグランド電極と、前記センサ電極の各々について前記管路の軸方向に対応する方向の両端に配置されたガード電極と、を含み、
前記電極層は、前記フレキシブル基板上に配置された金属箔と、該金属箔上に配置され電極パターンを形成する金属メッキと、により構成されている、
ことを特徴とするトモグラフィ計測センサ。
【請求項2】
前記電極層を備えた本体部と、前記電極層の配線を集約したベルト部と、該ベルト部の先端に形成されたコネクタ部と、を有する請求項1に記載のトモグラフィ計測センサ。
【請求項3】
前記本体部のみを前記管路の表面に巻き付けた状態を保持する粘着テープと、前記本体部の表面を覆う樹脂シートと、該樹脂シートの表面を覆う銅箔と、前記本体部、前記樹脂シート及び前記銅箔を固縛する結束バンドと、を含む、請求項2に記載のトモグラフィ計測センサ。
【請求項4】
管路内の固気混相流の誘電率分布から固体及び気体の分布状態を求めるキャパシタンス・トモグラフィ法を用いたトモグラフィ計測装置であって、
前記トモグラフィ計測装置は、請求項1~3の何れか一項に記載のトモグラフィ計測センサを有する、ことを特徴とするトモグラフィ計測装置。
【請求項5】
複数の前記トモグラフィ計測センサを前記管路に直列に並べて配置した、請求項4に記載のトモグラフィ計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トモグラフィ計測センサ及び装置に関し、特に、固気混相流動場の計測に適したトモグラフィ計測センサ及びトモグラフィ計測センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固気混相流(固体粒子と空気の混合した流れ)は、光非透過性を有するため、光学的な計測はほぼ不可能である。一方で、粉体搬送や流動層等の分野では、内部の流動状態や堆積状態を計測したいという要求は高まっている。
【0003】
かかる固気混相流動場の計測技術としては、キャパシタンス・トモグラフィ法が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。キャパシタンス・トモグラフィ法は、多数の電極からなるセンサを管路外周に配置し、各電極間のキャパシタンスの組み合わせを短時間で測定し、画像再構成法により管路断面の誘電率分布、すなわち、粒子と気体の分布を求める方法である。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された発明は、混相流の静電容量を計測し、混相流の誘電率の分布状態を求め、混相流の混相状態分布の画像を再構成する技術に関するものである。かかる特許文献1には、少なくとも2つの媒体が存在する管路において、その周囲に配置された複数の電極を有するセンサと、前記電極間の静電容量を計測する計測手段と、少なくとも2つの媒体の分布画像を再構成する画像再構成手段と、再構成した分布画像を表示する表示手段と、を備えたる混相状態分布計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-228475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図2に記載されたように、センサは計測対象である配管の周囲に配設される複数の電極を備えている。かかる電極は、従来、計測対象となる配管の表面に直に接着されており、接着された電極に抵抗や配線をハンダ付けすることによって、センサを配管に取り付けていた。
【0007】
しかしながら、電極間を繋ぐ抵抗や配線をハンダ付けする際に、円弧上の配管面に対して作業する必要があり、作業性が悪く、作業時間を要するという問題があった。また、配管表面にセンサを取り付けた後で配管の取回し作業をする必要があり、作業性が悪く、配管取回し時にセンサ部品が損傷する懸念もあった。さらに、配管に一度取り付けてしまうと、その後に取り外して再利用することは難しく、費用対効果が低いという問題もあった。
【0008】
本発明はこれらの問題点に鑑み創案されたものであり、作業効率及び費用対効果の向上を図ることができる、トモグラフィ計測センサ及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、管路内の固気混相流の誘電率分布から固体及び気体の分布状態を求めるキャパシタンス・トモグラフィ法に用いるトモグラフィ計測センサであって、撓曲可能な樹脂製の薄膜状の絶縁体であるフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の表面に形成された電極層と、前記電極層を被覆する第一カバーレイと、前記フレキシブル基板の裏面に形成された導電層と、前記導電層を被覆する第二カバーレイと、前記電極層と前記導電層とを電気的に接続する複数のスルーホールと、を備え、前記電極層は、前記管路の軸方向に細長い矩形形状を有し前記管路の周方向に対応する方向に等間隔に配列された複数のセンサ電極と、前記センサ電極の外周を囲うグランド電極と、前記センサ電極の各々について前記管路の軸方向に対応する方向の両端に配置されたガード電極と、を含み、前記電極層は、前記フレキシブル基板上に配置された金属箔と、該金属箔上に配置され電極パターンを形成する金属メッキと、により構成されている、ことを特徴とするトモグラフィ計測センサが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、管路内の固気混相流の誘電率分布から固体及び気体の分布状態を求めるキャパシタンス・トモグラフィ法を用いたトモグラフィ計測装置であって、前記トモグラフィ計測装置は、撓曲可能な樹脂製の薄膜状の絶縁体であるフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の表面に形成された電極層と、前記電極層を被覆する第一カバーレイと、前記フレキシブル基板の裏面に形成された導電層と、前記導電層を被覆する第二カバーレイと、前記電極層と前記導電層とを電気的に接続する複数のスルーホールと、を備え、前記電極層は、前記管路の周方向に対応する方向に等間隔に配列された複数のセンサ電極と、前記センサ電極の外周を囲うグランド電極と、を含み、前記電極層は、前記フレキシブル基板上に配置された金属箔と、該金属箔上に配置され電極パターンを形成する金属メッキと、により構成されている、ことを特徴とするトモグラフィ計測センサを有することを特徴とするトモグラフィ計測装置が提供される。

【0012】
前記トモグラフィ計測センサは、前記電極層を備えた本体部と、前記電極層の配線を集約したベルト部と、該ベルト部の先端に形成されたコネクタ部と、を有していてもよい。
【0013】
また、前記トモグラフィ計測センサは、前記本体部のみを前記管路の表面に巻き付けた状態を保持する粘着テープと、前記本体部の表面を覆う樹脂シートと、該樹脂シートの表面を覆う銅箔と、前記本体部、前記樹脂シート及び前記銅箔を固縛する結束バンドと、を含んでいてもよい。
【0014】
前記トモグラフィ計測装置は、複数の前記トモグラフィ計測センサを前記管路に直列に並べて配置したものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るトモグラフィ計測センサ及び装置によれば、柔軟なフレキシブル基板にセンサ電極を含む電極層を配置したことにより、トモグラフィ計測センサ自身を撓曲可能に構成することができ、管路の表面にトモグラフィ計測センサを巻き付けることにより、キャパシタンス・トモグラフィ法に必要な電極を容易に配置することができる。また、かかる構成により、配管取回し後にトモグラフィ計測センサを配置することができ、トモグラフィ計測センサを着脱自在に構成することができる。したがって、本発明によれば、作業効率及び費用対効果の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係るトモグラフィ計測装置を示す全体構成図である。
図2図1に示したトモグラフィ計測センサを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は電極層の概略平面図、である。
図3】トモグラフィ計測センサの取り付け方法を示す説明図であり、(a)は巻き付け工程、(b)は樹脂シート被覆工程、(c)は銅箔被覆工程、(d)は固縛工程、を示している。
図4図1に示したトモグラフィ計測装置による試験結果の一例を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例、を示している。
図5図1に示したトモグラフィ計測装置による試験結果の第四例を示す図であり、(a)は試験片、(b)は計測画像、を示している。
図6】第二実施形態に係るトモグラフィ計測装置を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1図6を用いて説明する。ここで、図1は、第一実施形態に係るトモグラフィ計測装置を示す全体構成図である。図2は、図1に示したトモグラフィ計測センサを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は電極層の概略平面図、である。
【0018】
図1に示したトモグラフィ計測装置1は、管路11内の固気混相流の誘電率分布から固体及び気体の分布状態を求めるキャパシタンス・トモグラフィ法を用いたトモグラフィ計測装置であって、管路11に取り付けられるトモグラフィ計測センサ2と、トモグラフィ計測センサ2の入出力信号を処理する信号処理装置3と、トモグラフィ計測センサ2の入出力信号を制御するとともにトモグラフィ計測センサ2からの出力信号に基づいて画像処理を行う制御装置4と、制御装置4により再構成された断層画像を出力する出力装置5と、を備えている。
【0019】
ここで、トモグラフィ法とは、さまざまな方向から対象物に光や電波等を当てて、その透過情報や散乱情報を基にマトリックス演算を行い、対象物の内部の物理量等を導き出して断層画像を得る方法であり、断層撮影法と呼ばれることもある。
【0020】
また、キャパシタンス・トモグラフィ法は、多数の電極からなるセンサを管路外周に配置し、各電極間のキャパシタンス(静電容量)の組み合わせを短時間で測定し、画像再構成法により管路断面の誘電率分布、すなわち、粒子と気体の分布を求める方法である。かかるキャパシタンス・トモグラフィ法は、計測対象物が非導電性である場合に有効な手法である。
【0021】
管路11は、例えば、微粉炭等の粉体を気中搬送する配管である。トモグラフィ計測センサ2は、管路11の外周に沿って配置される。
【0022】
トモグラフィ計測センサ2は、図2(a)及び図2(b)に示したように、撓曲可能なフレキシブル基板21と、フレキシブル基板21の表面に形成された電極層22と、電極層22を被覆する第一カバーレイ23と、フレキシブル基板21の裏面に形成された導電層24と、導電層24を被覆する第二カバーレイ25と、電極層22と導電層24とを電気的に接続する複数のスルーホール26と、を備えている。なお、図2(b)では、説明の便宜上、スルーホール26及び導線の図を省略してある。
【0023】
フレキシブル基板21は、例えば、ポリイミド等の樹脂によって構成される薄膜状の絶縁体である。また、第一カバーレイ23は、電極層22を保護する樹脂フィルムである。第一カバーレイ23は、接着剤231を介して電極層22上に貼付される。また、第二カバーレイ25は、導電層24を保護する樹脂フィルムである。第二カバーレイ25は、接着剤251を介して導電層24上に貼付される。
【0024】
このように、トモグラフィ計測センサ2は、樹脂製の薄膜(フィルム)を積層し、その中間に電極や導線を配置した構成を有しており、全体として撓曲可能に構成されている。
【0025】
電極層22は、例えば、フレキシブル基板21側に配置された銅箔221と、銅箔221上に配置され電極パターンを形成する銅メッキ222と、により構成される。銅箔221は、接着剤223を介してフレキシブル基板21に貼付される。
【0026】
導電層24は、例えば、フレキシブル基板21側に配置された銅箔241と、銅箔241上に配置され導線パターンを形成する銅メッキ242と、により構成される。銅箔241は、接着剤243を介してフレキシブル基板21に貼付される。
【0027】
また、電極層22は、例えば、図2(b)に示したように、管路11の周方向に対応する方向に等間隔に配列された複数のセンサ電極22aと、センサ電極22aの各々について管路11の軸方向に対応する方向の両端に配置されたガード電極22bと、センサ電極22a及びガード電極22bの外周を囲うグランド電極22cと、を備えている。
【0028】
センサ電極22aは、トモグラフィ計測センサ2の電極を構成する部分である。センサ電極22aは、例えば、図示したように、管路11の軸方向に細長い矩形形状を有している。本実施形態では、8本のセンサ電極22aが等間隔に配置されている。したがって、管路11にトモグラフィ計測センサ2を取り付けた場合、センサ電極22aは、管路11の周方向に45°の間隔で均等に配置される。なお、センサ電極22aの本数は任意であり、8本に限定されるものではない。
【0029】
また、センサ電極22aは、所定のスルーホール26を介して導電層24に電気的に接続されている。また、各センサ電極22aは、所定のスルーホール26及び抵抗器を介してグランド電極22cに電気的に接続されており、アースされている。なお、抵抗器は、フレキシブル性を担保可能な小型の角型チップ抵抗器であり、例えば、第一カバーレイ23上に配置される。
【0030】
ガード電極22bは、センサ電極22aのノイズを除去する機能を有している。センサ電極22aの両端に配置された一対のガード電極22bは、スルーホール26及び導電層24を介して電気的に接続されている。また、各ガード電極22bは、スルーホール26及び抵抗器を介してグランド電極22cに電気的に接続されており、アースされている。なお、抵抗器は、フレキシブル性を担保可能な小型の角型チップ抵抗器であり、例えば、第二カバーレイ25上に配置される。
【0031】
また、トモグラフィ計測センサ2は、例えば、図2(b)に示したように、電極層22を備えた本体部2aと、電極層22(センサ電極22a,ガード電極22b,グランド電極22c)の配線を集約したベルト部2bと、ベルト部2bの先端に形成されたコネクタ部2cと、を有している。なお、図2(b)では、電極層22のみを図示しているが、フレキシブル基板21、第一カバーレイ23、導電層24及び第二カバーレイ25も同一の外形を有している。
【0032】
このように、本体部2aとコネクタ部2cとをベルト部2bで連結した構成とすることにより、トモグラフィ計測センサ2を管路11に取り付けた場合であっても、コネクタ部2cをフレキシブルな状態に保持することができ、ケーブル等の着脱を容易に行うことができる。
【0033】
上述したトモグラフィ計測センサ2は、柔軟性を持つフレキシブル基板21(FPC:Flexible printed circuits)上に電極や配線を一体成型し、ハンダ付け等の手間を省くとともに、基板ごと配管に巻き付けて簡単に固定するだけで計測可能な新たなセンサを提供するものである。
【0034】
かかるトモグラフィ計測センサ2は、要するに、ベースとなるフレキシブル基板21の両面に銅箔が塗布されており、片側にセンサやグランド等の電極パターンを形成し、反対側に配線向けのパターンをエッチング成形したものである。また、配線は、本体部2aからフレキシブル基板の状態で幅15mm程度を引き出した部分の先端にまとめて取り付けてある。
【0035】
本実施形態に係るトモグラフィ計測センサ2によれば、本体部2aの厚さを1mm程度に薄くすることができ、柔軟性も備えていることから、従来製法(銅シートを管路表面に貼って電極パターンを切り出し、抵抗と導線をハンダ付けする方法)で作成したセンサと比較して、センサ自体を容易に取回すことができる。
【0036】
次に、トモグラフィ計測センサ2の取り付け方法について、図3(a)~図3(d)を参照しつつ説明する。ここで、図3は、トモグラフィ計測センサの取り付け方法を示す説明図であり、(a)は巻き付け工程、(b)は樹脂シート被覆工程、(c)は銅箔被覆工程、(d)は固縛工程、を示している。図3(a)~図3(c)は、管路11の軸方向に平行な断面図を示しており、図3(d)は管路11の軸方向に垂直な断面図を示している。
【0037】
図3(a)に示した巻き付け工程は、トモグラフィ計測センサ2の本体部2aのみを管路11の表面に沿って巻き付けて仮留めする工程である。具体的には、本体部2aを管路11に沿って巻き付けたときの突き合わせ部に、図3(d)に示した粘着テープ2dを貼り付けることにより、本体部2aを仮留めする。すなわち、トモグラフィ計測センサ2は、本体部2aのみを管路11の表面に巻き付けた状態を保持する粘着テープ2dを備えている。
【0038】
図3(b)に示した樹脂シート被覆工程は、管路11の表面に仮留めされた本体部2aの表面に樹脂シート2eを配置して、本体部2aを絶縁材で被覆する工程である。かかる樹脂シート2eを配置することにより、トモグラフィ計測センサ2の本体部2aの絶縁状態を効果的に保持することができる。すなわち、トモグラフィ計測センサ2は、本体部2aの表面を覆う樹脂シート2eを備えている。
【0039】
図3(c)に示した銅箔被覆工程は、樹脂シート2eの表面を銅箔2fで被覆して、外周スクリーンを形成する工程である。かかる銅箔2fを配置することにより、トモグラフィ計測センサ2のノイズを効果的に低減することができる。すなわち、トモグラフィ計測センサ2は、樹脂シート2eの表面を覆う銅箔2fを備えている。
【0040】
図3(d)に示した固縛工程は、銅箔2fの上から結束バンド2gを巻き付けて本体部2aを固縛する工程である。すなわち、トモグラフィ計測センサ2は、本体部、前記樹脂シート及び前記銅箔を固縛する結束バンド2gを備えている。かかるトモグラフィ計測センサ2の取り付け方法によれば、従来、数時間を要していた取り付け作業を10~20分程度まで短縮することができる。
【0041】
また、上述した取り付け方法により、図3(d)に示したように、管路11の外周に複数のセンサ電極22aが等間隔に配置される。その後、制御装置4の指令に基づいて信号処理装置3が、複数のセンサ電極22aから二つのセンサ電極22aを選択し、選択したセンサ電極22aに電圧を負荷し、そのキャパシタンス(静電容量)を計測する。
【0042】
この処理を二つのセンサ電極22aを選択する全ての組み合わせについて行い、画像再構成法により管路11の断面における誘電率分布を算出する。この誘電率分布の算出は、制御装置4が行い、再構成された断層画像は外部モニタ等の出力装置5によって外部出力される。
【0043】
次に、上述したトモグラフィ計測装置1を用いた試験結果について、図4(a)~図5(b)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、図1に示したトモグラフィ計測装置による試験結果の一例を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例、を示している。図5は、図1に示したトモグラフィ計測装置による試験結果の第四例を示す図であり、(a)は試験片、(b)は計測画像、を示している。
【0044】
図4(a)に示した第一例は、左図に示したように、内径40mmのアクリル樹脂製のパイプ6の内部に、直径2mm×長さ3mm程度の大きさの樹脂ペレット7を断面の半分程度を埋めるように配置し、樹脂ペレット7が静止した状態で、トモグラフィ計測装置1を用いて計測を行ったものである。
【0045】
図4(a)の右図は、計測結果の誘電率分布を示したものである。図示したように、図の右下の位置に固体である樹脂ペレット7を示す誘電率εsが表示され、図の左上の位置に気体である空気を示す誘電率εaが表示されている。左図の試験体と右図の計測結果とを比較すれば、実際の樹脂ペレット7の配置と誘電率εsの分布とは一致していることがわかる。
【0046】
図4(b)に示した第二例は、左図に示したように、内径40mmのアクリル樹脂製のパイプ6の内部に、直径20mmのアクリル樹脂製の中実棒8をパイプ6の内面から離れた状態に配置して、トモグラフィ計測装置1を用いて計測を行ったものである。
【0047】
図4(b)の右図は、計測結果の誘電率分布を示したものである。図示したように、図の中心から下方にずれた位置に固体である中実棒8を示す誘電率εsが表示され、その周囲に気体である空気を示す誘電率εaが表示されている。左図の試験体と右図の計測結果とを比較すれば、実際の中実棒8の配置と誘電率εsの分布とは一致していることがわかる。
【0048】
図4(c)に示した第三例は、左図に示したように、内径40mmのアクリル樹脂製のパイプ6の内部に、直径20mmのアクリル樹脂製の中実棒8をパイプ6の内面に接触した状態に配置して、トモグラフィ計測装置1を用いて計測を行ったものである。
【0049】
図4(c)の右図は、計測結果の誘電率分布を示したものである。図示したように、図の左下の位置に固体である中実棒8を示す誘電率εsが表示され、その周囲に気体である空気を示す誘電率εaが表示されている。左図の試験体と右図の計測結果とを比較すれば、実際の中実棒8の配置と誘電率εsの分布とは一致していることがわかる。
【0050】
図5(a)及び図5(b)に示した第四例は、内径40mmのアクリル樹脂製のパイプの内部に、図5(a)に示した試験片9を通過させながら、トモグラフィ計測装置1を用いて計測を行ったものである。試験片9は、例えば、3Dプリンタで作成したプラグ流形状を模擬した樹脂固体モデル(外形39mm、長さ100mm)である。
【0051】
なお、プラグ流とは、粉粒体が浮遊することなくプラグのような集団を形成しながら移動する搬送形態の一つである。かかるプラグ流は、図示したように、概ね、中央部が中実円柱形状であり、両端部が片方の側面に減衰する形状を有している。
【0052】
図5(b)に示した計測画像は、トモグラフィ計測装置1の計測結果を左から順番に時系列に並べたものである。図示したように、固体である試験片9を示す誘電率εsは、時間の経過とともに占有率が徐々に増加し、中間の時間帯では占有率は略100%に達し、その後、占有率は徐々に低下していくことがわかる。図5(b)に示した誘電率分布は、図5(a)に示した試験片9の形状に対応した妥当な結果であることがわかる。
【0053】
上述した試験結果によれば、本実施形態に係るトモグラフィ計測センサ2を備えたトモグラフィ計測装置1は、少なくとも従来のセンサを備えたトモグラフィ計測装置と同等の計測画像を取得することができる。
【0054】
また、上述した本実施形態に係るトモグラフィ計測センサ2によれば、柔軟なフレキシブル基板21にセンサ電極22aを含む電極層22を配置したことにより、トモグラフィ計測センサ2自身を撓曲可能に構成することができ、管路11の表面にトモグラフィ計測センサ2を巻き付けることにより、キャパシタンス・トモグラフィ法に必要な電極を容易に配置することができる。
【0055】
また、トモグラフィ計測センサ2をフレキシブル化したことにより、配管取回し後にトモグラフィ計測センサ2を配置することができ、トモグラフィ計測センサ2を着脱自在に構成することができる。したがって、本実施形態に係るトモグラフィ計測センサ2及びトモグラフィ計測装置1によれば、作業効率及び費用対効果の向上を図ることができる。
【0056】
次に、第二実施形態に係るトモグラフィ計測装置1について、図6を参照しつつ説明する。ここで、図6は、第二実施形態に係るトモグラフィ計測装置を示す部分拡大図である。なお、図6において、説明の便宜上、信号処理装置3、制御装置4及び出力装置5の図を省略してある。
【0057】
図6に示したトモグラフィ計測装置1は、二つのトモグラフィ計測センサ2を管路11に直列に並べて配置したものである。このように、トモグラフィ計測センサ2を直列に並べて、二つの計測断面における計測値の時間変化の相関を取ることで固体の速度を求めることができる。
【0058】
特に、本実施形態に係るトモグラフィ計測センサ2を用いることにより、センサ間隔を後から任意に変更することができ、速度レベルに応じて適切な時間分解能の距離設定を行うことができる。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、例えば、必要に応じてガード電極22bを省略してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 トモグラフィ計測装置
2 トモグラフィ計測センサ
2a 本体部
2b ベルト部
2c コネクタ部
2d 粘着テープ
2e 樹脂シート
2f 銅箔
2g 結束バンド
3 信号処理装置
4 制御装置
5 出力装置
6 パイプ
7 樹脂ペレット
8 中実棒
9 試験片
11 管路
21 フレキシブル基板
22 電極層
22a センサ電極
22b ガード電極
22c グランド電極
23 第一カバーレイ
24 導電層
25 第二カバーレイ
26 スルーホール
221,241 銅箔
222,242 銅メッキ
223,231,243,251 接着剤

図1
図2
図3
図4
図5
図6