IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFE鋼板株式会社の特許一覧 ▶ ケイミュー株式会社の特許一覧

特許7195089横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法
<>
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図1
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図2
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図3
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図4
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図5
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図6
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図7
  • 特許-横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/363 20060101AFI20221216BHJP
   E04D 3/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
E04D3/363 B
E04D3/00 V
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018167083
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020041270
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 純二
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
(72)【発明者】
【氏名】和泉 正章
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-038128(JP,A)
【文献】特開平10-266479(JP,A)
【文献】特開2001-020470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/363
E04D 3/362
E04D 3/00
E04D 1/06
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向の端縁と幅方向の端縁とによって区画された輪郭形状を有する板材本体を備え、該板材本体の幅方向の一方の端縁をその端縁に設けられた棟側ハゼ部を介して水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに、該幅方向のもう一方の端縁をその端縁に設けられた軒側ハゼ部を介して水下側に位置する吊子に連係させることにより屋根構造体を構築する横葺き屋根材であって、
前記棟側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向の端縁につながり水上側に位置する吊子の内側に設けられた窪みに着脱自在に連係可能な抜け止め爪部と、該爪部につながり該吊子の立ち上がり壁部の内壁面に沿って起立する側壁部と、該側壁部の上端部に片持ち支持され該吊子の天板の下面に沿い軒側に向けて伸延する舌片にて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなり、
前記軒側ハゼ部は、該板材本体の幅方向の端縁に垂下保持される垂下壁と、該垂下壁の下端に片持ち支持され水下側に位置する吊子の天板の下面に沿い棟側に向けて伸延する舌片にて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなり、
前記棟側ハゼ部、前記軒側ハゼ部は、横葺き屋根材を棟側に向けて水平に移動させることにより前記棟側ハゼ部を水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに、前記軒側ハゼ部を水下側に位置する吊子に連係させるものである、ことを特徴とする横葺き屋根材。
【請求項2】
長さ方向の端縁と幅方向の端縁とによって区画された輪郭形状を有する板材本体を備え、該板材本体の幅方向の一方の端縁をその端縁に設けられた棟側ハゼ部を介して水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに、該幅方向のもう一方の端縁をその端縁に設けられた軒側ハゼ部を介して水下側に位置する吊子に連係させることにより屋根構造体を構築する横葺き屋根材であって、
前記棟側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向の端縁につながり水上側に位置する吊子の内側に設けられた窪みに着脱自在に連係可能な抜け止め爪部と、該爪部につながり該吊子の立ち上がり壁部の内壁面に沿って起立する側壁部と、該側壁部の上端部に片持ち支持され該吊子の天板の下面に沿い軒側に向けて伸延する舌片にて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなり、
前記軒側ハゼ部は、該板材本体の幅方向の端縁に垂下保持される垂下壁と、該垂下壁の下端に片持ち支持され水下側に位置する吊子の天板の下面に沿い棟側に向けて伸延する舌片にて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなり、
前記棟側ハゼ部の舌片は、その自由端が前記板材本体に最も接近する傾斜を有し、前記軒側ハゼ部の舌片は、その自由端が前記水下側に位置する吊子の天板に向けて最も接近する傾斜を有することを特徴とする横葺き屋根材。
【請求項3】
請求項1または2に記載した横葺き屋根材にて構築された屋根構造体につき、その屋根構造体の任意の位置の屋根材を部分交換するに当たり、
まず、交換すべき横葺き屋根材の板材本体を棟側分断片と軒側分断片に分割したのち、該棟側分断片を軒側に向けて引っ張ることにより棟側ハゼ部と水上側に位置する吊子との嵌合を解除するとともに該軒側分断片を軒側ハゼ部とともに水下側に位置する吊子から取り外し、次いで、取り外した部分に新規な横葺き屋根材を配置してその板材本体の棟側ハゼ部を水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに該軒側ハゼ部を水下側に位置する吊子に連係させることを特徴とする横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法。
【請求項4】
前記水上側に位置する吊子の下地材に対する固定を解除するとともに該吊子を棟側に向けてスライドさせて横葺き屋根材相互間のハゼ組を緩め、次いで、その状態を維持したまま前記棟側分断片を軒側に向けて引っ張ることにより前記棟側ハゼ部と前記水上側に位置する吊子との嵌合を解除することを特徴とする請求項3に記載した横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横葺き屋根と呼ばれる屋根構造体は、長さ方向の寸法(桁行方向の寸法)が幅方向の寸法(梁間方向の寸法)よりも長い板状本体を備えた屋根板材を使用し、桁行方向において屋根板材同士を接続する作業を先行して行い、その接続作業が完了したならば梁間方向において屋根板材同士を接続する作業をそれぞれ棟に向け交互に行うことによって構築されるものである。
【0003】
かかる屋根構造体に使用される屋根板材は、通常、水上側の端縁については該端縁につながる延長部を設け、この延長部にビス等の固定具を打ち付けることによって野地板などの下地材に固定するか(特許文献1)、あるいは、該延長部に鉤型形状をなすハゼ部を設け、該ハゼ部の上部から吊子を引っ掛けることによって下地材に固定するのが普通である。しなしながら、この種の屋根板材は、例えば、屋根構造体の構築が完了したのちにおいて、屋根板材の一部分に傷や凹みなどの外観不良が発見され、その屋根板材の部分交換が迫られた場合にあっては、水上側の端縁につながる延長部分での固定を解除するか、あるいは吊子を一旦取り外す必要があることから外観不良が発見された屋根板材に至るまでに取り付けられた屋根板材を全て取り外したのちでなければ屋根板材の交換は困難であり、屋根板材の効率的な部分交換を実施することができない状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-190018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、屋根構造体の構築が完了したのちにおいて屋根板材の一部分に外観不良が発見された場合であっても、他の屋根板材を取り外すことなしに外観不良を起こした屋根板材のみを交換することができ、しかも、屋根材同士の連結強度が高い横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長さ方向の端縁と幅方向の端縁とによって区画された輪郭形状を有する板材本体を備え、該板材本体の幅方向の一方の端縁をその端縁に設けられた棟側ハゼ部を介して水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに、該幅方向のもう一方の端縁をその端縁に設けられた軒側ハゼ部を介して水下側に位置する吊子に連係させることにより屋根構造体を構築する横葺き屋根材であって、前記棟側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向の端縁につながり水上側に位置する吊子の内側に設けられた窪みに着脱自在に連係可能な抜け止め爪部と、該爪部につながり該吊子の立ち上がり壁部の内壁面に沿って起立する側壁部と、該側壁部の上端部に片持ち支持され該吊子の天板の下面に沿い軒側に向けて伸延する舌片にて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなり、前記軒側ハゼ部は、該板材本体の幅方向の端縁に垂下保持される垂下壁と、該垂下壁の下端に片持ち支持され水下側に位置する吊子の天板の下面に沿い棟側に向けて伸延する舌片にて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなり、前記棟側ハゼ部、前記軒側ハゼ部は、横葺き屋根材を棟側に向けて水平に移動させることにより前記棟側ハゼ部を水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに、前記軒側ハゼ部を水下側に位置する吊子に連係させるものである、ことを特徴とする横葺き屋根材である。
【0007】
上記の構成からなる横葺き屋根材においては、前記棟側ハゼ部の舌片は、その自由端が前記板材本体に最も接近する傾斜を有し、前記軒側ハゼ部の舌片は、その自由端が前記水下側に位置する吊子の天板に向けて最も接近する傾斜を有するものとする。
【0008】
また、本発明は、上記の構成からなる横葺き屋根材にて構築された屋根構造体につき、その屋根構造体の任意の位置の屋根材を部分交換するに当たり、まず、交換すべき横葺き屋根材の板材本体を棟側分断片と軒側分断片に分割したのち、該棟側分断片を軒側に向けて引っ張ることにより棟側ハゼ部と水上側に位置する吊子との嵌合を解除するとともに該軒側分断片を軒側ハゼ部とともに水下側に位置する吊子から取り外し、次いで、取り外した部分に新規な横葺き屋根材を配置してその板材本体の棟側ハゼ部を水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに該軒側ハゼ部を水下側に位置する吊子に連係させることを特徴とする横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法である。
【0009】
上記の屋根材の部分交換方法においては、前記水上側に位置する吊子の下地材に対する固定を解除するとともに該吊子を棟側に向けてスライドさせて横葺き屋根材相互間のハゼ組を緩め、次いで、その状態を維持したまま前記棟側分断片を軒側に向けて引っ張ることにより棟側ハゼ部と前記水上側に位置する吊子との嵌合を解除するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、横葺き屋根材の板材本体の軒側ハゼ部とこの軒側ハゼ部が連係する水下側に位置する吊子との連係を解除しておき、横葺き屋根材の板材本体を軒側に向けて引っ張るか、あるいは、横葺き屋根材の板材本体を棟側分断片と軒側分断片に分割し該軒側分断片を軒側に向けて引っ張ることにより棟側ハゼ部と水上側に位置する吊子との嵌合を解除することが可能であり、交換すべき屋根板材を簡単に取り外すことができる。また、取り外した部分に新規な横葺き屋根材を取り付けるには、新規な横葺き屋根材の板材本体の棟側ハゼ部を水上側に位置する吊子に嵌合させるとともに軒側ハゼ部を水下側に位置する吊子に連係させるだけでよく、屋根材の部分交換を効率的に行うことができる。
【0011】
また、本発明によれば、棟側ハゼ部が水上側に位置する吊子に嵌合した状態では、抜け止め爪部が吊子の内側に設けられた窪みに連係しており、しかも棟側ハゼ部の外周面が吊子の内側の全面に接触(面接触)することから棟側ハゼ部の吊子に対する嵌合強度が高く(屋根材同士の連結強度が高い)、横葺き屋根材の板材本体に負圧が作用しても屋根材同士の連結が簡単に解除されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にしたがう横葺き屋根材の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
図2】本発明にしたがう横葺き屋根材を吊子に取り付けた状態を示した図である。
図3】本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築するのに用いて好適な吊子の外観斜視図である。
図4】(a)~(d)は、本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築する手順を示した図である。
図5】本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて構築された屋根構造体の一部分の外観斜視図である。
図6】(a)(b)は、本発明にしたがう横葺き屋根材の取り外し要領を示した図である。
図7】(a)~(c)は、本発明にしたがう横葺き屋根材の他の取り外し要領を示した図である。
図8】(a)~(c)は、新規な横葺き屋根材の取り付け要領を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう横葺き屋根材の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。本発明にしたがう横葺き屋根材は、長さ方向の寸法は任意(フリー)で、幅方向の寸法が180~400mm程度、厚さ0.35~0.8mm程度の、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板やカラー鋼板等の防錆処理鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム合金板、亜鉛板等からなるものが用いられ、ロール成形法やプレス成形法等を適用して所定の断面形状へと成形されるものである。
【0014】
図1における符号1は、横葺き屋根材の板材本体である。板材本体1は、長さ方向の端縁1a、1bと幅方向の端縁1c、1dとによって区画された輪郭形状を有するものからなっている。板材本体1は、ここでは、幅方向の中央部分に長さ方向に沿って延びる屈曲線Lを有するものを例として示してあるが、板材本体1の全面がフラットなものであってもよく板材本体1は、屈曲線Lを有するものに限定されることはない。
【0015】
また、符号2は、板材本体1の幅方向の一方の端縁1cに設けられた棟側ハゼ部、3は、板材本体1の幅方向のもう一方の端縁1dに設けられた軒側ハゼ部である。
【0016】
図2は、本発明にしたがう上記の横葺き屋根材を、屋根の下地材の任意の位置に設けられた吊子4(水下側に位置する吊子)、吊子5(水上側に位置する吊子)に取り付けた状態をその側面について示したものである。本発明にしたがう横葺き屋根材は、板材本体1の幅方向の一方の端縁1cを棟側ハゼ部2を介して水上側に位置する吊子5に嵌合させるとともに、幅方向のもう一方の端縁1dを軒側ハゼ部3を介して水下側に位置する吊子4に連係させることによって取り付けられる。なお、ここでは、吊子4、5に横葺き屋根材を取り付けた場合を例として示したが、屋根構造体を構築するに当たっては、軒から棟にかけて複数の吊子を設置してその全ての吊子において同様の要領で横葺き屋根材が取り付けられることになる。
【0017】
吊子4、5としては、屋根の一方のけらば(螻羽)からもう一方のけらば(螻羽)に向けて連続的に伸延し横葺き屋根材の長さ方向の寸法と同程度の寸法を有する図3に示すような外観形状になる通し吊子を用いるのが好ましい。なお、形状が同一のものであれば所定の間隔をあけて設置される部分吊子を用いてもかまわない。吊子4、5において、符号4a、5aは、軒側に設けられた固定用ベースbにつながり下向きに凹んだ窪み、4b、5bは、窪み4a、5aにつながる立ち上がり壁部、4c、5cは、立ち上がり壁部4b、5bの上端部につながり軒側に向けて斜め横向きに倒れ込んだ天板である。吊子4、5としては、具体的には、軒側に向けて開放された開放端cを有しその開放端cを通して棟側ハゼ部2を嵌合させることができるC字状(あるいは逆C字状)断面形状をなすものを適用するのがよい。
【0018】
板材本体1に設けられた棟側ハゼ部2としては、板材本体1の幅方向の端縁1cにつながり水上側に位置する吊子5の内側に設けられた窪み5aに着脱自在に連係可能な抜け止め爪部2aと、該爪部2aにつながり該吊子5の立ち上がり壁部5bの内壁面に沿って起立する側壁部2bと、該側壁部2bの上端部に片持ち支持され該吊子5の天板5cの下面において軒側に向けて伸延する舌片2cにて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなるものが適用される。棟側ハゼ部2の舌片2cは、その自由端2c1が板材本体1に最も近接する傾斜を有するものがとするのが好ましく、かかる舌片2cを有することにより吊子5との嵌合状態で該舌片2cが吊子5の天板5cに突き当たることになるため、屋根材同士の連結強度が高まり、板材本体1に負圧が作用しても棟側ハゼ部2が吊子5から簡単に抜け出すことがないようになっている。
【0019】
また、軒側ハゼ部3としては、該板材本体1の幅方向の端縁1dに垂下保持される垂下壁3aと、該垂下壁3aの下端に片持ち支持され水下側に位置する吊子4の天板4cの下面に沿い棟側に向けて伸延する舌片3bにて構成された全体として鉤型断面形状を呈する折返し片からなるものが適用される。軒側ハゼ部3の舌片3bは、その自由端3b1が吊子4の天板4cに向けて最も接近する傾斜を有するものとするのが好ましく、該舌片3bにより板材本体1との間で吊子4の天板4cを挟持して該吊子4との連係強度を高めることができるようになっている。
【0020】
本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築するには、まず、図4(a)に示すように、吊子を必要数だけ軒から棟にかけて所定間隔で下地材(野地板)に設置、固定する(ここでは、吊子4、5、6を用いる場合についてのみ表示しており、吊子5から吊子4を見た場合、吊子4が水下側に位置する吊子となり、吊子5が水上側に位置する吊子となる。また吊子6から吊子5を見た場合には、吊子5が水下側に位置する吊子となり、吊子6が水上側に位置する吊子となる。)。
【0021】
次いで、図4(b)に示すように、横葺き屋根材を水平方向に移動させつつ板材本体1の棟側ハゼ部2を図4(c)に示す如く、水上側に位置する吊子5に嵌合させるとともに、軒側ハゼ部3を水下側に位置する吊子4に連係させる。吊子4と吊子5との間で横葺き屋根材の取り付けを終えたならば、図4(d)に示すように、さらに吊子5とその水上側に位置する吊子6との間で同様の要領で横葺き屋根材の取り付けを行う。
【0022】
吊子5と吊子6との間に取り付けられる横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3については、吊子4と吊子5の間で取り付けられる横葺き屋根材の板材本体1の棟側ハゼ部2を介して吊子5に連係することになる。
【0023】
横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築するには、上記の取り付け作業を、屋根の一方のけらばからもう一方のけらばに至るまで先行して行い、その作業を終えたならば、上段側、すなわち水上側において同様の作業を行い、これを屋根の棟に至るまで繰り返すことになる。図5に、本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて構築された屋根構造体の一部分を外観斜視図で示す。
【0024】
図6(a)(b)は、本発明にしたがう横葺き屋根材にて構築された屋根構造体につき、吊子4、5の間に取り付けられた横葺き屋根材の部分交換を行うべく、該横葺き屋根材の取り外し要領を模式的に示した図である。
【0025】
横葺き屋根材の取り外しを行うには、図6(a)に示すように、取り外すべき横葺き屋根材をカッターや鋏の如き切断手段を使用してその板材本体1を棟側分断片1′と軒側分断片1′′にそれぞれ分割する。そして、図6(b)に示すように、水上側に位置する別の横葺き屋根材(既に取り付けられている横葺き屋根材)の板材本体1の軒側ハゼ部3と吊子5との連係を解除したうえで棟側分断片1′を軒側に向けて引っ張ることにより棟側ハゼ部2と吊子5との嵌合を解除して該棟側分断片1′を吊子5から取り外すとともに、軒側分断片1′′を吊子4から取り外せばよい。
【0026】
棟側ハゼ部2と吊子5との嵌合を解除するに当たっては、図7(a)に示すように、棟側分断片1′を引き起こして下地材にねじ込んだビスを取り外して吊子5の固定を解除したのち、該吊子5を図7(b)に示すように、棟側に向けてスライドさせて水上側に位置する別の横葺き屋根材とのハゼ組を緩め、その状態を維持したまま図7(c)に示すように棟側分断片1′を軒側に向けて引っ張るのが望ましく、これによれば水上側に位置する別の横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部2と吊子5との連係を解除する作業が不要になり、横葺き屋根材の効率的な取り外しが可能となる。
【0027】
横葺き屋根材を取り外した部分に新規な横葺き屋根材を配置するには、図8(a)に示すように、新規な横葺き屋根材の板材本体1の棟側ハゼ部2に水上側に位置する別の横葺き屋根材の軒側ハゼ部3を引っ掛け、その状態で図8(b)に示すように新規な横葺き屋根材を軒側に向けて引っ張る。そして、新規な横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部2を吊子5に嵌合させることができる位置に達したならば、図8(c)に示す如く、今度は新規な横葺き屋根材を棟側に向けて水平に移動させてその板材本体1の該棟側ハゼ部2を吊子5に嵌合させるとともに、軒側ハゼ部3を、吊子4に連係させればよい。
【0028】
本発明にしたがう横葺き屋根材は、上述したように屋根構造体の構築が既に完了していたとしても一部分のみの屋根材の取り外し、取り付けが可能であり、横葺き屋根材の効率的な部分交換が行える。
【0029】
なお、本発明の横葺き屋根材は、基本的には屋根構造体を構築するのに用いられるが、建築構造物の外壁を構築する外装材として用いることができる。この場合、外装材としての横葺き屋根材は、板材本体1の棟側ハゼ部2が軒側を向くように、また、軒側ハゼ部3が基礎側に向くように配置して屋根構造体を構築するのと同様の手順で横葺き屋根材を取り付けていけばよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、既に構築された屋根構造体であったとしても、一部分のみの屋根材の交換が可能であり、かつ、屋根材同士の連結強度が高い横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法が提供できる。
【符号の説明】
【0031】
1 板材本体
1′ 棟側分断片
1′′ 軒側分断片
1a、1b 長さ方向の端縁
1c、1d 幅方向の端縁
2 棟側ハゼ部
2a 抜け止め爪部
2b 側壁部
2c 舌片
2c1 自由端
3 軒側ハゼ部
3a 垂下壁
3b 舌片
3b1 自由端
4 吊子
4a 窪み
4b 立ち上がり壁部
4c 天板
5 吊子
5a 窪み
5b 立ち上がり壁部
5c 天板
6 吊子
c 開放端
b ベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8