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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20221216BHJP
   B01J 23/28 20060101ALI20221216BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B01J35/04 311B
B01J23/28 A ZAB
B01D53/86 222
B01J35/04 351
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018176029
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020044509
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】今田 尚美
(72)【発明者】
【氏名】池本 清司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰良
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107046(JP,A)
【文献】特開2006-015344(JP,A)
【文献】米国特許第06589910(US,B1)
【文献】米国特許第06187274(US,B1)
【文献】特開2008-280864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦部と凸条からなるスペーサ部とを交互に配してなる板状触媒、および
平坦部を基準にした凸条の高さよりも低い高さレベルで、凸条に対して平行でない向きに、平坦部の上方に張り渡された帯状のバッフル部
を有し、
バッフル部は、板状触媒に在る凸条を受け容れることができるように折り曲げられた部分を有する帯部材からなる、排ガス浄化用板状触媒エレメント。
【請求項2】
バッフル部は、ステンレス鋼製板若しくはこれに触媒が担持されてなるもの、またはステンレス鋼エキスパンドメタル若しくはこれに触媒が担持されてなるものからなる、請求項に記載の排ガス浄化用板状触媒エレメント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス浄化用板状触媒エレメントを、少なくとも2枚、ガス流路が確保されるように、重ね合わせてなる、排ガス浄化用触媒ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用板状触媒エレメントおよび排ガス浄化用触媒ユニットに関する。より詳細に、本発明は、低い圧力損失で且つ高い脱硝効率を有する排ガス浄化用板状触媒エレメント、および該エレメントをガス流路が確保されるように重ね合わせてなる排ガス浄化用触媒ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、各種工場に在るボイラ等の火炉から排出されるガス中の窒素酸化物を脱硝触媒の存在下で分解させて排ガスを浄化することが行われている。排ガス中の窒素酸化物を高効率で分解するために種々の脱硝触媒構造体が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、燃焼によって硫黄酸化物を含有する排ガスを生成する設備に使用される排煙脱硝装置において、ガス流れ方向に設置される複数の触媒層のうち少なくとも1層の触媒層に、帯状の突起からなる突条部と平板部とを交互に所定の間隔で有する触媒エレメントを、互いに隣接する触媒エレメントの突条部を直交するように複数枚積層して得られる触媒構造体を開示している。
【0004】
特許文献2は、平板上に山状部及び谷状部からなるスペーサ部が一定間隔でガス流れ方向に線条に形成された平板状触媒エレメントを多数積層してなる触媒構造体であって、山状部及び谷状部に凹部が所定間隔で形成され、かつ該凹部に棒状のガス攪拌体が、前記スペーサ間に形成される流路の中心に位置するように配置されていることを特徴とする排ガス浄化用触媒構造体を開示している。
【0005】
特許文献3は、排ガス流路に適合する枠体内に配置される排ガス浄化用触媒構造体であって、該触媒構造体は、平板状の触媒を所定間隔で交互に逆方向に曲げて形成した突起部、または山部と谷部を多数有する板状触媒と、表裏に貫通する孔を多数有する金属、セラミックまたはガラス製の網状物からなるガス分散体とを、交互に積層したものからなる排ガス浄化用触媒構造体を開示している。
【0006】
特許文献4は、主構成部である平坦部と、凸条および凹条からなる線状のスペーサ部とからなる平板状触媒エレメントを、スペーサ部の長手方向に沿ってガス流路が確保されるように重ね合せてなる排ガス浄化用触媒構造体であって、前記平坦部は、平坦部を基準にしたスペーサ部の高さよりも低い高さで平坦部に立設された脚板と該脚板の上辺から平坦部に略平行に設置された天板とからなるバッフル部を少なくとも1つ有し、前記ガス流路に流れるガスを前記バッフル部で乱すことができる排ガス浄化用触媒構造体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-239243号公報
【文献】特開2013-107046号公報
【文献】WO00/13775A1
【文献】WO2014/076938A1(特開2014-97438号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、低い圧力損失で且つ高い脱硝効率を有する排ガス浄化用板状触媒エレメント、および該エレメントをガス流路が確保されるように重ね合わせてなる排ガス浄化用触媒ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく検討した結果、以下のような態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0010】
〔1〕 平坦部と凸条からなるスペーサ部とを交互に配してなる板状触媒、および
平坦部を基準にした凸条の高さよりも低い高さレベルで、凸条に対して平行でない向きに、平坦部の上方に張り渡された帯状のバッフル部
を有し、
バッフル部は、板状触媒に在る凸条を受け容れることができるように折り曲げられた部分を有する帯部材からなる、排ガス浄化用板状触媒エレメント。
〔2〕バッフル部は、ステンレス鋼製板若しくはこれに触媒が担持されてなるもの、またはステンレス鋼エキスパンドメタル若しくはこれに触媒が担持されてなるものからなる、〔1〕に記載の排ガス浄化用板状触媒エレメント。
【0011】
〕前記〔1〕または〔2〕に記載の排ガス浄化用板状触媒エレメントを、少なくとも2枚、ガス流路が確保されるように重ね合わせてなる、排ガス浄化用触媒ユニット。

【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントおよび排ガス浄化用触媒ユニットは、低い圧力損失で、ダストが堆積し難く、且つガス流れを効率的に乱すことができ、その結果として、触媒重量当たりの脱硝率が高い。
本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントおよび排ガス浄化用触媒ユニットは、同一触媒量での脱硝性能が従来品に比べて高いので、触媒の使用量を大幅に低減することが可能である。また、実機の排ガス処理条件に応じて、バッフル部の設置条件を任意に変更することが可能であるため、広範の排ガスに対処することが可能である。本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントおよび排ガス浄化用触媒ユニットは、特に、石炭焚きのボイラから排出されるダストを比較的に多く含むガスの処理に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントの一例を示す斜視図である。
図2図1に示した排ガス浄化用板状触媒エレメントを構成するバッフル部4を示す斜視図である。
図3図1に示した排ガス浄化用板状触媒エレメントを構成する板状触媒1を示す斜視図である。
図4図1に示した排ガス浄化用板状触媒エレメントの重ね合わせの位置関係を説明するための斜視図である。
図5図1に示した排ガス浄化用板状触媒エレメントを重ね合わせ状態を示す断面図である。
図6】本発明の排ガス浄化用触媒ユニットの一例を示す斜視図である。
図7】重ね合わせた排ガス浄化用板状触媒エレメント間のガス流れの状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施形態によって本発明の範囲は制限されない。
【0015】
〔排ガス浄化用板状触媒エレメント〕
本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントは、板状触媒1とバッフル部4とを有する。板状触媒1は、図3に示すような、スペーサ部2と平坦部3とを交互に配してなるものである。
【0016】
平坦部3およびスペーサ部2には、触媒が担持されている。触媒は脱硝反応に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、Ti、Mo、W、Vなどの元素を含む触媒成分を含有する触媒、Cuなどの貴金属元素やFeなどの卑金属元素が担持されていてもよいゼオライトまたはアルミノケイ酸塩を含有する触媒、前記Tiなどの元素を含む触媒成分を含有する触媒と前記ゼオライトまたはアルミノケイ酸塩を含有する触媒との混合触媒などを挙げることができる。触媒を担持させる基材として、金属平板、織金網、パンチングメタル、エキスパンドメタル(別名:ラスメタル、メタルラス)、ワイヤメッシュ、ガラス織布、ガラス不織布などの平面状のものを挙げることができる。基材にはステンレス鋼が好ましく用いられる。平面状基材は、型曲げ加工(プレス曲げ加工)などによって、容易に、平坦部とスペーサ部の形を作ることができる。触媒を担持させる平面状基材の厚さは特に制限されないが、好ましくは0.1mm~0.3mmである。
【0017】
基材への触媒の担持は、例えば、触媒成分を含有するペースト状組成物(以下、触媒ペーストという。)を平板状のラスメタル基材の一面に載せ、ロール等で圧し挟み、次いで乾燥、必要に応じて焼成することを含む方法、ガラス繊維製織布からなる平らな基材の一面に触媒ペーストを塗り、ガラス繊維製織布からなる別の平らな基材を塗布面に載せて、該触媒ペーストを2枚の基材で挟み込むように重ね、必要に応じて重ね合わせた基材の両面に触媒ペーストを塗布し、これをロール等で強く圧し潰して触媒ペーストを基材に浸み込ませ、次いで乾燥、必要に応じて焼成することを含む方法などによって行うことができる。このようにして、平らな基材の両面に触媒層が積層される。基材の網目間も触媒ペーストで埋まっていることが好ましい。基材に触媒を担持させたものの厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.2~2mmである。
【0018】
スペーサ部は、排ガス浄化用板状触媒エレメントを複数枚重ねたときにエレメント間にガスが通り抜けることができる空間、すなわち、ガス流路を確保するためのスペーサの役割をなす。スペーサ部は、触媒が担持された凸条からなる。凸条の断面形状は特に制限されない。例えば、上向き凸条からなる断面山形のスペーサ部、上向き凸条と下向き凸条とからなる断面波形のスペーサ部2などを挙げることができる。上向き凸条と下向き凸条とからなる断面波形のスペーサ部2を有する板状触媒エレメントを重ね合わせたときに、下に在る排ガス浄化用板状触媒エレメントの上向き凸条と上に在る排ガス浄化用板状触媒エレメントの下向き凸条とが間にある排ガス浄化用板状触媒エレメントの平坦部3を挟持する配置になるので、重ね合わせた方向に対する剛性を高くすることができ、さらに枠体によって横方向を固定することによって、排ガス浄化用触媒ユニット内で排ガス浄化用板状触媒エレメントが安定に重ね合わせられた構造を維持できる。スペーサ部2は平面状基材を型曲げ加工することによって形成することができる。凸条間の間隔は、好ましくは20~200mmである。一つの凸条の幅は、好ましくは10~20mmである。図1に示すスペーサ部2において下向き凸条と上向き凸条とを合わせた幅は、好ましくは20~40mmである。平坦部を基準にした凸条の高さは、好ましくは4~10mmである。
【0019】
バッフル部4は、帯部材からなる。該帯部材は、平坦部を基準にした凸条の高さよりも低い高さレベルで、凸条に対して平行でない向き、好ましくは直角な方向に、平坦部の上方に張り渡されている。バッフル部の高さレベルは、平坦部を基準にした凸条の高さの2/5~3/5であることが好ましい。バッフル部の厚さは、好ましくは0.2~2mmである。
【0020】
バッフル部4は、その面が、平坦部に対してほぼ平行に配されることによって、ガス流が衝突する面積を帯部材の厚さ分だけにすることができる。バッフル部4を板状触媒の重ね合わせで形成されるガス流路の中央部に配することによって、図7に示す矢印のような流れが生じる。ガス流路の中央部は板状触媒から離れているので板状触媒の近傍に比べて脱硝反応が進行し難くNOx濃度が高い。ガス流路の中央部に配されたバッフル部がNOx濃度の高いガス流れを乱し、板状触媒にNOxが接触しやすくする。乱されたガス流れは、細いガス流路を十数cm~数十cm流れるだけで整流される。乱されたガス流れが整流されてしまう前の位置にバッフル部4をさらに配することで、ガス流れの乱れを持続させて、NOxの板状触媒への接触頻度を高めることができる。
【0021】
バッフル部は、排ガス浄化用板状触媒エレメントに在る凸条を受け容れることができるように折り曲げられた部分を有する帯部材からなるものであってもよい。折り曲げ部分の形状は、凸条を受け容れることができるものであれば特に制限されない。例えば、図2に示すバッフル部4において、上向き凸条を受け容れることができる折り曲げ部分5は、上向き突条の頂部形状と同じ形に折り曲げられており、下向き凸条を受け容れることができる折り曲げ部分6は、凸条の幅よりも大きい幅で矩形に折り曲げられている。図2中の折り曲げ部分6の幅は好ましくは10~20mmである。このような幅で矩形に折り曲げることによって、製造上のバラツキによる凸条の位置のズレに対処できる。バッフル部4の平坦部分7の長さは、排ガス浄化用板状触媒エレメントを重ね合わせたときに形成されるガス流路の幅に応じて、適宜選択できる。
【0022】
帯部材は、金属平板、織金網、パンチングメタル、エキスパンドメタル(別名:ラスメタル、メタルラス)、ワイヤメッシュ、ガラス織布、ガラス不織布などの平面状のもので構成できる。帯部材には触媒が担持されていてもよい。担持される触媒は、平坦部またはスペーサ部に担持される触媒として挙げたものと同じものであってもよい。バッフル部は、ステンレス鋼製板若しくはこれに触媒が担持されてなるもの、またはステンレス鋼エキスパンドメタル若しくはこれに触媒が担持されてなるものからなることが好ましい。バッフル部は、帯幅Dが、好ましくは10~30mmである。
【0023】
第一のバッフル部を排ガス浄化用板状触媒エレメントの前縁から、好ましくは100~300mm、より好ましくは150~200mm離れた後方に設置し、第二のバッフル部を、第一のバッフル部から、好ましくは30~200mm離れた後方に設置することができる。さらに第三以降のバッフル部を、好ましくは30~200mmの間隔で設けてもよい。
一つの排ガス浄化用板状触媒エレメントに在るバッフル部は、重ね合せたときに、隣りの排ガス浄化用板状触媒エレメントに在るバッフル部と、平坦部法線方向から見て、同じ位置に設置してもよいし、異なる位置に設置してもよい。
【0024】
排ガス浄化用板状触媒エレメントのスペーサ部およびバッフル部は、形成方法において特に制限されず、例えば、次のようにして形成することができる。触媒ペーストが担持されてなる平らな面状基材をプレス曲げ加工することによって断面波形のスペーサ部を有する板状触媒1を形成することができる。一方で、触媒ペーストが担持されてなる平らな帯状基材をプレス曲げ加工することによってスペーサ部の突条を受け容れることができるように折り曲げられた部分を有する帯部材を形成することができる。帯部材4を図1のように板状触媒1に嵌め合わせることによって、本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントを得ることができる。このような方法などで得られた排ガス浄化用板状触媒エレメントは枠体10内に収容できる大きさに適宜カットすることができる。
【0025】
〔排ガス浄化用触媒ユニット〕
本発明の排ガス浄化用触媒ユニットは、本発明の排ガス浄化用板状触媒エレメントを、少なくとも2枚、ガス流路が確保されるように重ね合わせて成るものである。重ね合わせた排ガス浄化用板状触媒エレメントが崩れないようにするために枠体10に収容することができる。排ガス浄化用板状触媒エレメントの重ね方は、排ガス浄化用板状触媒エレメント間にガスが通過できる空間を確保できる形態であれば特に制限されない。断面波形のスペーサ部が相互に平行になるように重ねてもよいし、相互に直角になるように重ねてもよいし、または平行と直角の中間の角度になるように重ねてもよい。本発明では図4に示すようにスペーサ部が相互に平行になるように重ねるのが好ましい。また、スペーサ部が嵌め合わないように重ねること、すなわち一つの排ガス浄化用板状触媒エレメントに在るスペーサ部が隣りの排ガス浄化用板状触媒エレメントに在る平坦部に接するように重ねることが高い開口率および高い脱硝効率を得る観点から好ましい。重ねる枚数は枠体の大きさと排ガス浄化用板状触媒エレメントの大きさに応じて適宜設定することができる。通常は20~40枚程度の排ガス浄化用板状触媒エレメントを重ねる。枠体は、重ねられた排ガス浄化用板状触媒エレメント間にガスを導くことができる構造のものであれば特に制限されない。例えば、枠体10は4枚の金属製平板で構成した四角筒状のものが挙げられる。
【実施例
【0026】
次に、実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0027】
実施例1
酸化チタン10kg、モリブデン酸アンモニウム四水和物2kg、メタバナジン酸アンモニウム1kg、および蓚酸1kgを混合し、これに水を加えながらニーダで1時間混練してペースト状にした。これに、シリカ・アルミナ系無機繊維2kgを加えて、さらに30分間混練して水分約30%の触媒ペーストを得た。
この触媒ペーストを、一対の圧延ローラを用いて、SUS430ステンレス鋼エキスパンドメタルからなる幅500mmで且つ長尺の面状基材のラス目間及び表面に圧し付けて厚さ0.7mmの長尺の平板触媒を得た。この長尺の平板触媒をプレス機に用いて型曲げ加工して断面波形のスペーサ部(平坦部を基準にした凸条の高さ=7mm)を形成させた。その後、長さ600mmに切断し,平坦部3とスペーサ部2とを有する板状触媒1を得た。
一方、厚さ1mm、長さ500mm,幅(D)10mmのSUS430ステンレス鋼板製の帯部材を、プレス機を用いて、型曲げ加工して、折り曲げ部分6を形成させた。次いで、折り曲げ部分6が板状触媒1の平坦部のほぼ真ん中で且つ板状触媒1の前縁から200mm及び400mm離れた位置になるように帯部材2本を凸条に対してほぼ直角な向きで置き、プレス機を用いて、型曲げ加工して、折り曲げ部分5を形成させると同時に板状触媒1の上向き凸条にかしめて、バッフル部4を有する板状触媒エレメントaを得た。バッフル部4は、平坦部を基準にして3.5mmの高さレベルで平坦部の上方に張り渡された。
板状触媒エレメントaを図5のように重ね合わせ、枠体10で保持した。これを24時間通風乾燥させ、ついで空気中500℃で2時間焼成して、触媒ユニットAを得た。
【0028】
実施例2
SUS430ステンレス鋼板製の帯部材の厚さを0.5mmに変更した以外は実施例1と同じ方法で板状触媒エレメントbおよび触媒ユニットBを得た。
【0029】
実施例3
SUS430ステンレス鋼板製の帯部材の厚さを2mmに変更した以外は実施例1と同じ方法で板状触媒エレメントcおよび触媒ユニットCを得た。
【0030】
実施例4
SUS430ステンレス鋼板製の帯部材の幅(D)を20mmに変更した以外は実施例1と同じ方法で板状触媒エレメントdおよび触媒ユニットDを得た。
【0031】
実施例5
SUS430ステンレス鋼板製の帯部材を、SUS430ステンレス鋼エキスパンドメタル製の帯部材に変更した以外は実施例1と同じ方法で板状触媒エレメントeおよび触媒ユニットEを得た。
【0032】
実施例6
SUS430ステンレス鋼エキスパンドメタル製の帯部材に実施例1で得られた触媒ペーストをローラで圧し付け、触媒の担持された帯部材(厚さ0.7mm)を得た。
SUS430ステンレス鋼板製の帯部材を、触媒の担持された帯部材に変更した以外は実施例1と同じ方法で板状触媒エレメントfおよび触媒ユニットFを得た。
【0033】
比較例1
板状触媒エレメントの代わりに実施例1で得られた板状触媒1を用いた以外は実施例1と同じ方法で触媒ユニットGを得た。
【0034】
触媒ユニットA~Gについて,表1に記載の条件で脱硝反応を行い、反応速度比と圧力損失を測定した。その結果を表2に示す。
表2から分かるように、本発明の板状触媒エレメントa~fを重ね合わせてなる触媒ユニットA~Fは、触媒ユニットGに比べて、高い脱硝性能を有している。触媒ユニットA~Dの結果から、バッフル部の厚さ及び幅(D)が大きいほど脱硝性能が高いことがわかる。バッフル部の厚さまたは幅(D)が大きくなるほど圧力損失が高くなるが、その上昇は小さいことがわかる。触媒が担持されたバッフル部を設けると脱硝効率がさらに高まる。本発明の触媒ユニットは、圧力損失が低く、排ガスにダストが含まれていてもダストの堆積が起こりにくい。石炭焚きボイラなどから排出されるダストを多く含む排ガスの浄化処理に好適であり、従来の触媒ユニットよりも環境負荷を大幅に低減できる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【符号の説明】
【0037】
1:板状触媒
2:スペーサ部
3:平坦部
4:バッフル部
5:バッフル部の上向き凸条を受け容れる折り曲げ部分
6:バッフル部の下向き凸条を受け容れる折り曲げ部分
7:バッフル部の平坦部分
8:排ガス
9:触媒ユニット
10:枠体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7