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特許7195098車両用通信装置、並びにこれを用いる車両制御システムおよび交通システム
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  • 特許-車両用通信装置、並びにこれを用いる車両制御システムおよび交通システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】車両用通信装置、並びにこれを用いる車両制御システムおよび交通システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20221216BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221216BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 H
G08G1/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018181319
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020052723
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 治誉
(72)【発明者】
【氏名】崔 亨旭
(72)【発明者】
【氏名】池田 悟
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-199222(JP,A)
【文献】特開2018-025871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の移動体の移動に関する移動データを受信する車両用通信装置であって、
他の移動体の移動データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した移動データを蓄積して記録するメモリと、
前記メモリにおける移動データの記録を管理するデータ管理部と、
を有し、
前記データ管理部は、
前記メモリに記録されている移動データから得られる移動体ごとの速度を取得し、
取得した移動体ごとの速度に応じて、複数の廃棄周期から取得した廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する、
車両用通信装置。
【請求項2】
前記データ管理部は、
移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にある場合には、通常の廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除し、
移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にない場合には、通常の廃棄周期よりも長い廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する、
請求項1記載の車両用通信装置。
【請求項3】
他の移動体の移動に関する移動データを受信する車両用通信装置であって、
他の移動体の移動データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した移動データを蓄積して記録するメモリと、
前記メモリにおける移動データの記録を管理するデータ管理部と、
を有し、
前記データ管理部は、
前記メモリに記録されている移動データから得られる移動体ごとの速度を取得し、
取得した移動体ごとの移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にある場合には、通常の廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除し、
取得した移動体ごとの移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にない場合には、通常の廃棄周期よりも長い廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する、
両用通信装置。
【請求項4】
前記データ管理部は、
前記取得部が他の移動体の移動データを受信する周期に応じて、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する、
請求項1から3のいずれか一項記載の車両用通信装置。
【請求項5】
前記データ管理部は、
自車と進路が交差すると考えられる他の移動体の移動データについては、他の移動体が交差位置に到達する時間および自車が交差位置に到達する時間の中で短い方の時間を基準として変更された該他の移動体の廃棄周期により、移動体ごとに無効化または削除する、
請求項1から4のいずれか一項記載の車両用通信装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の車両用通信装置と、
前記車両用通信装置のメモリに記録されている移動データを用いて、車両を制御する車両制御装置と、
を有する、車両制御システム。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項記載の車両用通信装置と、
前記車両用通信装置との間で移動体の移動に関する移動データを送受するサーバ装置と、
を有する、交通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用通信装置、並びにこれを用いる車両制御システムおよび交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人が移動の際に乗車する自動車などの車両では、車両の走行や車両で用いる機器の操作を支援または自動制御することが考えられている。そして、移動などにおける車両のたとえば安全性、円滑性、移動コスト、快適性、環境性といった性能を向上させるためには、車両は、それぞれが単独で検出した情報のみに基づいて車両を制御するのではなく、広く自車以外の他の車両や歩行者といった他の移動体の移動に関する情報や走行環境についての情報を取得して収集し、それらの複合的な情報を用いて車両を制御することが望ましい。
このようなことに利用可能な交通システムには、現時点ではたとえばITS(Intelligent Transport System)、協調(Cooperative)ITS、UTMS(Universal Traffic Management Systems)、ART(Advanced Rapid Transit)、PTPS(Public Transportation Priority System)といったものなどがあり、これらの研究開発が推し進められている。また、協調ITSに関して、標準化規格TC204/WG18が策定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-207940号公報
【文献】特開2018-101384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際にこのような移動体などの情報が送受可能になる状況では、上述したような移動体の移動に関する移動データを収集して処理することになる自動車といった車両では、大量の移動データを取得して車両の制御に利用することが求められる、と考えられる。
しかしながら、これまでの自動車といった車両では、自車で検出したデータを処理したり、個別の移動体の移動をまとめて抽象化した静的な渋滞データや経路案内用の部分的な地図データについて、自車位置を含むエリアについてのみ受信して処理したりする程度である。
すなわち、現在の車両では、移動体についての情報が広く収集可能な環境になったとしても、その広く収集され得る大量の移動体についての動的な移動データを適切に取得して、取得した大量の動的な移動データに基づいて車両の走行などを制御することはできない。
特許文献1は、研究開発的中の技術として、古いデータを削除する技術を開示する。特許文献2は、所定時間の経過後にデータを削除する技術を開示する。
しかしながら、これらの技術では、基本的に古いデータを一律に削除する。移動体についての大量の動的な移動データについてこの技術を適用した場合、削除されるデータには有用なものが含まれている可能性がある。また、削除されない新しいデータには、不要なものが残ってしまう可能性がある。このようなデータが残っている場合、単にメモリが圧迫されるだけでなく、場合によっては、いつまでたっても車両が前へ進むことができなくなったり、または車両の移動が不要に過剰的に反応したものになったり、してしまう可能性がある。
【0005】
このように自動車といった車両では、収集され得る複数の移動体についての移動データを良好に取得できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用通信装置は、他の移動体の移動に関する移動データを受信する車両用通信装置であって、他の移動体の移動データを取得する取得部と、前記取得部が取得した移動データを蓄積して記録するメモリと、前記メモリにおける移動データの記録を管理するデータ管理部と、を有し、前記データ管理部は、前記メモリに記録されている移動データから得られる移動体ごとの速度を取得し、取得した移動体ごとの速度に応じて、複数の廃棄周期から取得した廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する。
【0007】
好適には、前記データ管理部は、移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にある場合には、通常の廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除し、移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にない場合には、通常の廃棄周期よりも長い廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する、とよい。
【0008】
本発明に係る他の車両用通信装置は、他の移動体の移動に関する移動データを受信する車両用通信装置であって、他の移動体の移動データを取得する取得部と、前記取得部が取得した移動データを蓄積して記録するメモリと、前記メモリにおける移動データの記録を管理するデータ管理部と、を有し、前記データ管理部は、前記メモリに記録されている移動データから得られる移動体ごとの速度を取得し、取得した移動体ごとの移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にある場合には、通常の廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除し、取得した移動体ごとの移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にない場合には、通常の廃棄周期よりも長い廃棄周期により、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する
【0009】
好適には、前記データ管理部は、前記取得部が他の移動体の移動データを受信する周期に応じて、前記メモリに記録されている移動データを、移動体ごとに無効化または削除する、とよい。
【0011】
好適には、前記データ管理部は、自車と進路が交差すると考えられる他の移動体の移動データについては、他の移動体が交差位置に到達する時間および自車が交差位置に到達する時間の中で短い方の時間を基準として変更された該他の移動体の廃棄周期により、移動体ごとに無効化または削除する、とよい。
【0012】
本発明に係る車両制御システムは、上述したいずれかの車両用通信装置と、前記車両用通信装置のメモリに記録されている移動データを用いて、車両を制御する車両制御装置と、を有する。
【0013】
本発明に係る交通システムは、上述したいずれかの車両用通信装置と、前記車両用通信装置との間で移動体の移動に関する移動データを送受するサーバ装置と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、メモリに、取得部が取得した移動データを蓄積して記録し、データ管理部によりメモリにおける移動データの記録を管理する。そして、データ管理部は、メモリに記録されている移動データから得られる移動体ごとの速度を取得し、取得した移動体ごとの速度に応じて、メモリから移動体ごとに移動データを無効化または削除する。
たとえば、データ管理部は、移動体の速度の変化の程度に応じて、複数の廃棄周期から取得した廃棄周期により、メモリから移動体ごとに移動データを無効化または削除する。具体的にはたとえば、データ管理部は、移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にある場合には、通常の廃棄周期により、メモリから移動体ごとに移動データを無効化または削除し、移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にない場合には、通常の廃棄周期よりも長い廃棄周期により、メモリから移動体ごとに移動データを無効化または削除する。
よって、たとえば、移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲を超える場合には、その移動体の移動データは、長い廃棄周期に基づいてメモリに長期にわたって蓄積して記録される。有用なものになる得る可能性がある移動データは、メモリに長期にわたって蓄積して記録され得る。また、移動体の速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲に収まる場合には、その移動体の移動データは、通常の廃棄周期に基づいてメモリから廃棄される。不要なものになる得る可能性がある移動データは、メモリから早期に廃棄され得る。
その結果、本発明では、自動車といった車両において、交通システムにおいて収集され得る複数の移動体についての移動データを良好に取得して蓄積することができる。また、本発明では、好適に取得して蓄積している移動データに基づいて、車両の走行などを良好に制御することができる。
また、本発明では、メモリに蓄積する移動データを適宜廃棄しているので、メモリの記憶容量や移動データを処理する制御部における負荷を軽減できる。また、本発明では、メモリに蓄積する移動データがたとえばオーバフロー的になることにより車両の制御ができなくなること、たとえば車両が前へ進めなくなってしまうことや過剰に反応し過ぎてしまうことを抑制できる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る交通システムの一例の概略説明図である。
図2図2は、複数の移動体としての車両および歩行者の移動状態の一例の説明図である。
図3図3は、複数の移動体の移動に関する移動データの生成状況とメモリに蓄積されるデータ量との対応関係の説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る車両用の通信装置を備える車両制御システムの一例の説明図である。
図5図5は、図4の受信制御部の処理の一例の説明図である。
図6図6は、図4の送信制御部の処理の一例の説明図である。
図7図7は、図4の移動体監視部の処理の一例の説明図である。
図8図8は、図4の車両制御装置としての走行制御部の処理の一例の説明図である。
図9図9は、本発明の第一実施形態における、図4のメモリ管理部の処理の一例の説明図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態における、図4のメモリ管理部の処理の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る交通システム1の一例の概略説明図である。
図1には、複数の移動体としての複数の車両2と、低速移動体としての複数の歩行者3と、が図示されている。人が移動の際に乗車する自動車などの車両2では、車両2の走行や車両2で用いる機器の操作を支援または自動制御するようになってきている。車両2には、たとえば、複数の人が乗車可能な自動車または電気自動車の他にも、モータサイクル、パーソナルモビリティ、カート、電動車椅子、が含まれてよい。
図1の交通システム1は、自動車などの車両2のそれぞれに設けられる複数の車両用の通信装置、歩行者3などの低速移動体によりそれぞれ所持される複数の歩行者用の通信装置、基地局4、ビーコン装置5、サーバ装置6、を有する。図1において、車両用の通信装置は車両2により、歩行者用の通信装置は歩行者3により代理して図示されている。交通システム1は、商用無線通信の基地局、高速道路の路肩に設置される通信装置を、基地局4として使用してよい。
【0018】
図1の交通システム1において、車両2および歩行者3の各通信装置は、自身の移動体としての移動に関する移動データを、基地局4またはビーコン装置5を通じて、サーバ装置6へ送信する。サーバ装置6は、複数の移動体の移動に関する移動データを収集し、必要に応じて収集した移動データに基づいて交通情報などについてのデータを生成し、その移動データおよび交通情報のデータを通信装置へ送信する。サーバ装置6は、車両用の通信装置との間で移動体の移動に関する移動データを送受する。
また、図1の交通システム1において、車両2および歩行者3の各通信装置は、自身の移動体としての移動に関する移動データを、近くにいる他の通信装置へ送信する。
そして、各通信装置は、サーバ装置6または他の移動体の通信装置から移動データなどを受信すると、それを蓄積し、自身の移動の制御に利用する。
【0019】
たとえば、図1において、右側の車両2は、左方向へ直進する。図1の左側の車両2は、右方向へ直進する。図1の右側の車両2と左側の車両2とは、たとえば双方向の道路においてすれ違う。
図1の右下の歩行者3は、上方向へ直進する。しかしながら、右下の歩行者3の移動速度が遅いため、図1の右側の車両2と左側の車両2とは、右下の歩行者3がそれらの進路と交差する位置に到達する前に、該交差位置を通過している。
これに対し、図1の左上の歩行者3は、下方向へ直進する。このため、図1の右側の車両2は、左上の歩行者3が交差位置に到達するタイミングと前後して、該交差位置に到達する可能性がある。
この場合、図1の右側の車両2に搭載される車両用の通信装置は、予め受信した左上の歩行者3の移動に関する移動データに基づいて交差位置を同時に通過しないように、自車の移動速度を加減速する。
このように、交通システム1が、複数の移動体の移動に関する移動データを複数の移動体の間で送受することにより、複数の移動体は安全に移動できるようになると期待される。
たとえば、車両2は、それ自身で検出した情報のみに基づいて車両2を制御するのではなく、広く自車以外の他の車両や歩行者3といった他の移動体の移動に関する情報や走行環境についての情報を取得して収集し、それらの複合的な情報を用いて車両2を制御することができる。
【0020】
このように交通システム1を用いて複数の移動体の間でそれらの移動データを互いに送受することにより、移動体の移動についての安全性、円滑性、移動コスト、快適性、環境性などが向上し得る。
このようなことに利用可能な交通システム1には、たとえばITS(Intelligent Transport System)、協調(Cooperative)ITS、UTMS(Universal Traffic Management Systems)、ART(Advanced Rapid Transit)、PTPS(Public Transportation Priority System)といったものなどがある。協調ITSは、標準化規格TC204/WG18により標準化されている。
【0021】
図2は、複数の移動体としての車両2および歩行者3の移動状態の一例の説明図である。
図2には、上下方向へ延在する幹線道路7と、幹線道路7から左方向へ延びる路地8と、が図示されている。自動車といった車両2は、幹線道路7および路地8の中央部を移動する。歩行者3は、幹線道路7および路地8の側部を移動する。また、歩行者3は、赤信号の横断歩道9の手前で止まり、信号が青になると横断歩道9において幹線道路7を横断する。図2には、多数の歩行者3および多数の車両2が図示されている。
上述した交通システム1の目的を達するためには、このような走行環境においてたとえば図2の下から上へ幹線道路7を走行する車両2は、同一の幹線道路7を走行する対向車などの他の車両2だけでなく、車両2の近くの路側帯を歩行する多数の歩行者3、路地8から出てくる歩行者3および車両2に対して注意し、これらと衝突などの接触を起こさないように進路を微調整して走行することになる。
したがって、車両2は、その周囲に存在している多数の他の移動体の位置および速度といった情報を有する移動データを即時的に取得する必要がある。これにより、車両2は、他の移動体の近くを通過する際に接触しないように進行を調整することができる。
各移動体は、自身の周囲に存在する多数の他の移動体の最新の移動データを常に取得する必要がある。たとえば、路地8の先頭に位置する車両2は、図中の丸破線のエリアに含まれる多数の他の移動体の最新の移動データを常に取得する必要がある。
また、各移動体は、自身の周囲に存在する他の移動体の数を自ら制限することはできない。
【0022】
図3は、複数の移動体の移動に関する移動データの生成状況とメモリ18に蓄積されるデータ量との対応関係の説明図である。
図3(A)は、歩行者Aの複数の移動データである。
図3(B)は、車両Aの複数の移動データである。
図3(C)は、歩行者Bの複数の移動データである。
図3(D)は、車両Bの複数の移動データである。
図3(A)から図3(D)において、複数の移動データは、左から右へ向かって順番に生成される。
図3(E)は、図3(A)から図3(D)による移動データの合計データ量の時間変化グラフである。
図3(E)のグラフに示すように、時間が経過することに応じて移動データの合計データ量は、比例的に増加する。また、合計データ量の増加割合は、移動体の数量が多くなるほど大きくなる。
【0023】
上述した交通システム1の目的を達するために、各移動体は、図3(A)から図3(D)に示すように、それぞれの最新の位置および速度といった情報を有する移動データを、可能な限りの微小時間間隔により繰り返し送信する。
その結果、図3(E)に示すように、複数の移動体の間で送受される移動データの合計データ量は、収集対象の移動体の数および収集を開始してからの経過時間に応じて飛躍的に増加してゆく。各移動体が、他の移動体の移動を監視するためにメモリに蓄積するデータ量についても、同傾向で増加してゆく。
このように、車両2などに設けられて、移動データを取得して収集する各移動体の通信装置は、上述した交通システム1の目的を達しようとする場合には、このように大量の移動データを適切に取得してそれぞれの移動の制御などに利用することが求められる。
このような大量のデータは、自動車などの車両2がこれまでに経験したことがないデータ量である。
【0024】
しかしながら、これまでの自動車といった車両2では、自車で検出したデータを処理したり、個別の移動体の移動をまとめて抽象化した静的な渋滞データや経路案内用の部分的な地図データについて、自車位置を含むエリアについてのみ受信して処理したりする程度のデータ処理能力しか備えていない。
すなわち、現在の自動車では、移動体についての情報が広く収集可能な環境になったとしても、その広く収集され得る大量の移動体についての動的な移動データを適切に取得して、取得した大量の動的な移動データを処理して自動車の走行などを制御することはできない。
また、仮にそのような処理能力を備えたとしても、自動車はいつまでたっても前へ進むことができなくなったり、自動車の移動が不要に過剰的に反応したものになったり、してしまう可能性がある。
そこで、車両用の通信装置では、たとえば古くなった移動データを削除して、通信装置で蓄積して利用する移動データの合計データ量を抑制することが考えられる。
しかしながら、このように古くなった移動データを単に一律に削除する場合、削除される移動データに有用なものが含まれている可能性がある。また、削除されない新しい移動データに不要なものが残ってしまう可能性がある。
【0025】
このように自動車といった車両2に用いられる車両用の通信装置では、交通システム1で収集される複数の移動体についての移動データを良好に取得でき、取得した移動データに基づいて車両2の走行などを良好に制御できることが望まれている。
以下、本実施形態での対策について説明する。
【0026】
図4は、本発明の実施形態に係る車両用の通信装置を備える車両制御システム10の一例の説明図である。
図4の車両制御システム10は、移動体としての車両2に設けられ、車両2の走行などを制御するものである。
図4の車両制御システム10は、無線通信部11、撮像デバイス12、スキャンデバイス13、GPS受信機14、走行センサ15、環境センサ16、操作部材17、メモリ18、タイマ19、ECU(Electronic Control Unit)20、および、これらを接続する車載ネットワーク21、を有する。なお、メモリ18、タイマ19などは、ECU20とともに、1チップマイクロコンピュータに形成され、この1チップマイクロコンピュータが車載ネットワーク21に接続されてよい。
図4において、車両用の通信装置22は、たとえば無線通信部11、メモリ18、タイマ19、ECU20、で構成されてよい。
【0027】
車載ネットワーク21は、自動車といった車両2において、車両2の各部に設けられる機器同士を接続するネットワークである。車載ネットワーク21は、たとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernetでよい。また、車載ネットワーク21は、中継装置と、中継装置に接続される複数の通信ケーブルを有してもよい。この場合、車両2の各部に設けられる機器は、複数の通信ケーブルに分散して接続してよい。車両2の各部に設けられる機器は、車載ネットワーク21を通じて、他の機器との間でデータを送受する。
【0028】
撮像デバイス12は、車両2の内部または周囲を撮像する。交通システム1に対応する車両2は、少なくとも車両2の前方を撮像する撮像デバイス12を備えるとよい。この場合、車両2は、車両2の前方を走行する他の車両などを撮像した画像を得ることができる。
【0029】
スキャンデバイス13は、車両2の周囲に存在する他の移動体や固定設置物をレーダなどによりスキャンする。これにより、車両2は、車両2の周囲に存在する他の移動体や固定設置物までの距離などを検出できる。
【0030】
GPS受信機14は、GPS衛星からの電波を受信して、車両2の現在の位置情報を生成する。GPS受信機14は、地上に固定設置されている基地局4や電波塔からの電波を受信して、車両2の現在の位置情報を生成したり補正したりしてよい。なお、車両2は、GPS受信機14とは別のたとえば無線通信部11が受信する基地局4からの電波に基づいて、または車両2の走行についての検出に基づいて、車両2の現在の位置情報を生成してもよい。
【0031】
走行センサ15は、車両2の実走行に関連する情報を検出する。車両2の実走行に関連する情報には、たとえば車両2の速度、移動方向、がある。車両2の実走行に関連する情報は、この他にもたとえば車両2の駆動源の作動状態、トランスミッションの作動状態、制動装置の作動状態、操舵状態、などを含んでよい。
【0032】
環境センサ16は、車両2が存在する位置での実環境を検出する。実環境の情報としては、たとえば、日照の状態、降雨の状態、路面の種類、気温、湿度、がある。
【0033】
操作部材17は、車両2に乗った乗員が、車両2の走行などを操作するための部材である。操作部材17には、たとえばハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ワイパスイッチ、ウィンカレバー、スタートボタン、運転モード切替ボタン、がある。操作部材17は、乗員による操作部材17の操作があると、その操作の情報を生成して出力する。
【0034】
タイマ19は、時間または時刻を計測して出力する。
【0035】
無線通信部11は、交通システム1の通信データを送受できるものであれはよい。無線通信部11は、交通システム1で用いるたとえば基地局4およびビーコン装置5と通信したり、他の移動体で用いられている通信装置とV2V(Vehicle-to-Vehicle)、V2Xの通信をしたりする。無線通信部11は、交通システム1により指定されたゾーンについて通信する1つの基地局4またはビーコン装置5と通信してよい。この場合、車両2がゾーンを超えて移動すると、交通システム1は新たなゾーンに対応する1つの基地局4またはビーコン装置5を、データの無線通信先として指定する。これにより、無線通信部11は、移動体が移動している場合でも、交通システム1のサーバ装置6との間で移動データなどを送受することができる。
【0036】
ここで、移動データは、たとえば、移動体の識別情報、属性情報、位置情報、位置検出時刻情報、速度情報、進行方向情報、を有する。移動データは、この他にもたとえば、移動データの生成タイミングに対応する時刻情報、などを有してよい。
移動体の識別情報は、移動体を他の移動体から識別するための情報でよい。移動体の識別情報は、たとえば移動体に固有の識別番号でよい。移動体の識別番号には、たとえば、車両2に付された車体番号、製造番号、無線通信部11に割り当てられたMACアドレス、IPアドレス、などが使用できる。
移動体の属性情報は、移動体の種類を示す情報である。移動体の種類には、たとえば車両2、車両2、歩行者3、自転車、犬、子供、老人がある。移動体が車両2である場合、属性情報は、たとえば、車体のメーカ、車種、型番、色の番号、外形状の画像、外装されるオプション装備、タイヤの種類、ホイールの種類、車体ナンバー、などの情報を含んでよい。
移動体の位置情報は、たとえばGPS受信機14にて生成された位置情報でよい。
移動体の位置検出時刻情報は、たとえばGPS受信機14がGPS電波を受信したタイミングにおけるタイマ19の計測時刻、位置情報を生成したタイミングにおけるタイマ19の計測時刻、でよい。
移動体の速度情報は、たとえば走行センサ15により検出される移動体の実速度、でよい。
移動体の進行方向情報は、たとえば走行センサ15により検出される移動体の実移動方向、でよい。
なお、移動データは、これらの一部の情報のみを有するものでもよい。交通システム1における複数の移動体は、異なる情報を含む移動データを送受してよい。
【0037】
メモリ18は、車両2で利用する各種のプログラムおよびプログラムの実行中に使用する各種のデータを記録する。メモリ18に記録されるデータには、上述した車両2の各部において取得したデータが含まれる。たとえば無線通信部11が受信した移動データは、メモリ18に蓄積して記録される。
【0038】
ECU20は、メモリ18に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、車両2の制御部が実現される。車両2の制御部は、車両2の上述した各部を制御する。
図4には、ECU20に実現される車両2の制御部の機能として、メモリ管理部31、受信制御部32、移動体監視部34、送信制御部35、走行制御部36、経路生成部37、が図示されている。
【0039】
メモリ管理部31は、メモリ18に記録されるデータを管理し、メモリ18へのデータの記録、更新、削除を実行する。メモリ管理部31は、たとえば、メモリ18における移動データの記録を管理する。
【0040】
受信制御部32は、無線通信部11から他の移動体の受信データを取得して処理する。受信データがたとえば他の移動体の移動データである場合、受信制御部32は、取得した他の移動体の移動データをメモリ18に記録するために、メモリ管理部31へ出力する。これにより、メモリ18には、取得された複数の移動データが蓄積して記録される。
【0041】
移動体監視部34は、メモリ18に蓄積して記録されている複数の他の移動体の情報に基づいて、複数の他の移動体の移動を監視する。移動体監視部34は、たとえば他の移動体の移動による自車の進路(走行)への影響を監視する。
移動体監視部34は、たとえば、自車および進路を含む監視エリアに存在する他の移動体の進路を予想し、自車の進路との交差判断により他の移動体ごとの監視レベルを設定する。
他の移動体ごとの監視レベルは、たとえば、他の移動体の進路が交差する場合の高レベル、他の移動体の進路が近接する場合の中レベル、他の移動体の進路が離れている場合の低レベル、で分類されてよい。
【0042】
送信制御部35は、メモリ18に蓄積して記録されている複数の移動体の移動データの全部または一部を、無線通信部11から送信させる。
【0043】
経路生成部37は、移動体が目的地まで移動する移動経路を生成し、生成した移動経路の情報をメモリ18に記録するために、メモリ管理部31へ出力する。
【0044】
走行制御部36は、自動運転または運転支援により、車両2の走行を制御する。走行制御部36は、たとえば乗員による操作部材17の操作、メモリ18に記録されている移動経路、メモリ18に記録されている複数の他の移動体の移動データ、移動体監視部34による監視結果、などに応じて、車両2の進路を調整して走行を制御する。
たとえば、走行制御部36は、操作部材17の操作量や移動経路に基づいて短期的な進路を決定し、その短期的な進路が他の移動体の進路と交差したり接近したりしないように車両2の進路を調整する。また、走行制御部36は、生成した進路に沿って車両2が移動するように、車両2の走行を制御する。
【0045】
図5は、図4の受信制御部32の処理の一例の説明図である。
受信制御部32は、たとえば新たな移動データが受信された場合、または周期的なタイミングで、図5の受信処理を繰り返し実施してよい。
【0046】
図5の受信処理のステップST1において、受信制御部32は、無線通信部11が移動データを受信したか否かを判断する。
受信制御部32は、移動体の個別の移動データだけでなく、複数の移動体についてのグループの移動データについても、受信を判断してよい。また、場合によっては、受信制御部32は、個別の移動体の移動データではなく、複数の移動体に対応するグループの移動データのみを受信して判断してよい。
無線通信部11が移動データを受信していない場合、受信制御部32は、図5の受信処理を終了する。
無線通信部11が移動データを受信している場合、受信制御部32は、ステップST2において移動データを取得してメモリ管理部31へ出力する。メモリ管理部31は、新たに取得された移動データをメモリ18に保存する。その後、受信制御部32は、図5の受信処理を終了する。
以上の処理が繰り返されることにより、メモリ18には、受信制御部32により取得された複数の他の移動体のそれぞれについての、異なる時刻の複数の移動データが蓄積して保存される。
【0047】
図6は、図4の送信制御部35の処理の一例の説明図である。
送信制御部35は、たとえば新たな自車の移動データがメモリ18に記録された場合、または周期的なタイミングで、図6の送信処理を繰り返し実施してよい。
【0048】
図6の送信処理のステップST11において、送信制御部35は、メモリ18に記録されている移動データに、送信するデータが含まれているか否かを判断する。
メモリ18に記録されている移動データに送信データが含まれていない場合、送信制御部35は、図6の送信処理を終了する。
メモリ18に記録されている移動データに送信データが含まれている場合、送信制御部35は、ステップST12においてメモリ18から送信する移動データを取得して無線通信部11へ出力して送信する。その後、送信制御部35は、図6の送信処理を終了する。
以上の処理により、メモリ18に蓄積される移動データは、適宜、他の移動体の通信装置または車両制御システム10へ送信される。他の移動体の通信装置または車両制御システム10は、自車から送信された移動データをメモリ18に保存して蓄積し、それぞれの移動の制御に利用する。なお、メモリ18に自車の移動データが記録されている場合、送信制御部35は、自車の移動データを、他の移動体の移動データとともに、他の移動体の通信装置または車両制御システム10へ送信してよい。
【0049】
図7は、図4の移動体監視部34の処理の一例の説明図である。
移動体監視部34は、たとえば走行制御部36による1回の一連の移動制御が完了した場合、新たな自車の移動データがメモリ18に記録された場合、または周期的なタイミングで、図7の監視処理を繰り返し実施してよい。
【0050】
図7の監視処理のステップST21において、移動体監視部34は、メモリ18に記録されている複数の移動データを、移動体毎またはグループごとに取得する。移動体監視部34は、各移動体または各グループについて時刻が異なる複数の移動データがメモリ18に蓄積されている場合、その複数の移動データを取得する。
ステップST22において、移動体監視部34は、取得した移動データを用いて、その移動データに対応している他の移動体の移動についての自車の移動に対する影響の有無および程度を予測判断し、その予測判断に応じた監視レベルを判定する。移動体監視部34は、たとえば、移動データから他の移動体の進路を予測し、自車の進路と交差または近接する可能性があるか否かを判断する。また、移動体監視部34は、その交差位置または近接位置への他の移動体の到達時間および自車の到達時間を演算し、時間差を含めて自車の進路と交差または近接する可能性があるか否かを判断してよい。移動体監視部34は、メモリ18に蓄積されているすべての移動データを使用することにより、他の移動体の動きを精度よく判断することができる。
ステップST23において、移動体監視部34は、他の移動体の移動についての自車の移動に対する影響の有無および程度に基づいて、他の移動体に対して監視レベルを付与する。
他の移動体に付与される監視レベルは、たとえば、他の移動体の進路が交差する場合の高レベル、他の移動体の進路が近接する場合の中レベル、他の移動体の進路が交差も近接もしない場合の低レベル、でよい。
以上の処理を繰り返すことにより、移動体監視部34は、刻々と変化する他の移動体の移動状況に応じて該他の移動体を監視し続けることができる。また、移動体監視部34は、複数の他の移動体を、監視レベルで分類することができる。
【0051】
図8は、図4の車両制御装置としての走行制御部36の処理の一例の説明図である。
走行制御部36は、たとえば自身による前回の一連の移動制御が完了した場合、新たな自車の移動データがメモリ18に記録された場合、または周期的なタイミングで、図8の走行処理を繰り返し実施してよい。
【0052】
図8の走行処理のステップST31において、走行制御部36は、車両2に設けられている各種の自車センサの検出データなどを取得する。
ステップST32において、走行制御部36は、自車センサの検出データに基づいて、自車の走行状態が緊急な状態にあるか否かを判断する。走行制御部36は、たとえば撮像デバイス12による車両2前方の画像において車道への歩行者3または他の車両の飛び出しを検出した場合、自車の走行状態が緊急な状態にあると判断する。
自車の走行状態が緊急な状態にある場合、走行制御部36は、処理をステップST36へ進める。ステップST36において、走行制御部36は、緊急な状況に対応する車両2の走行制御および乗員保護制御を実行する。走行制御部36は、たとえば、即座に車両2を制動して急停車させる回避制御を実行する。また、急停車の制御を開始した後に走行センサ15が大きな加速度を検出した場合、走行制御部36は、シートベルトおよびエアバッグを用いた乗員保護制御を実行する。なお、この緊急な走行制御の際に、走行制御部36は、緊急を告げる自車の移動データを、無線通信部11から他の移動体へ送信してよい。これにより、他の移動体は、自車に追従して必要な緊急な走行制御を開始できる。なお、自車の走行制御部36も、無線通信部11が他の移動体から緊急を告げる移動データを受信していることをステップST32で判断し、受信している場合には処理をステップST36へ進めてよい。
その後、走行制御部36は、処理をステップST37へ進める。
【0053】
自車の走行状態が緊急な状態にない場合、走行制御部36は、処理をステップST33へ進める。ステップST33において、走行制御部36は、移動体監視部34による監視結果を取得する。
ステップST34において、走行制御部36は、移動体監視部34による複数の移動体の移動についての監視結果に応じて、車両2の進路を生成または調整し、進路を更新する。
走行制御部36は、たとえば、経路生成部37により生成された移動経路に基づいて、今回の車両2の移動制御期間での進路を生成する。走行制御部36は、直進する場合にはたとえば現状の車線のそのまま走行する進路を生成し、右左折する場合には右左折用の車線へ変更して走行する進路を生成する。
また、走行制御部36は、監視結果に基づいて、今回の車両2の移動制御に用いる進路に対して、今回の車両2の移動制御期間で交差または近接する可能性がある他の移動体の有無を判断する。走行制御部36は、高レベルおよび中レベルの監視結果を有する移動体についての、今回の車両2の移動制御期間での移動速度および移動方向を予測し、自車の進路との交差または近接を判断する。
今回の車両2の移動制御期間において自車の進路と交差または近接する他の移動体がない場合、走行制御部36は、移動経路に基づいて生成した進路を、今回の制御に使用する進路として、進路を更新する。
今回の車両2の移動制御期間において自車の進路と交差または近接する他の移動体がある場合、走行制御部36は、移動経路に基づいて生成した進路が該他の移動体の進路から離れるように、進路を更新する。または、走行制御部36は、交差位置または近接位置の手前で停止できるように、移動経路に基づいて生成した進路の速度情報を更新する。
ステップST35において、走行制御部36は、更新した新たな進路にしたがって、車両2が安全な走行し得る範囲での制御により、自車の走行を制御する。この間に乗員による操作部材17の操作がある場合、更新した新たな進路に近づくように、操作量に対する制御量を増減して調整してよい。
ステップST37において、走行制御部36は、制御後の自車の新たな位置情報および時刻情報を含む自車の移動データを生成してメモリ管理部31へ出力し、メモリ18に保存して蓄積する。
以上の処理を繰り返すことにより、走行制御部36は、刻々と変化する他の移動体の移動状況に応じて自車の移動を制御し続けることができる。
【0054】
図9は、本発明の第一実施形態における、図4のメモリ管理部31の処理の一例の説明図である。
【0055】
図9のメモリ18のデータ管理処理のステップST41において、メモリ管理部31は、たとえばサーバ装置6から他の移動体の移動データを定期的に受信するタイミングであるか否かを判断する。この他にもたとえば、メモリ管理部31は、たとえば10ミリ秒などの周期的なタイミングであるか否かを判断したり、受信制御部32が新たな他の移動体の移動データを受信したタイミングであるか否かを判断したりしてもよい。メモリ管理部31は、図9のメモリ18のデータ管理処理を繰り返し実行する。
定期的に移動データなどを受信するタイミングでない場合、メモリ管理部31は、図9のデータ管理処理を終了する。
定期的に移動データなどを受信するタイミングである場合、メモリ管理部31は、図9のデータ管理処理を実際に開始する。
ステップST42において、メモリ管理部31は、まず、メモリ18に記憶されている複数の移動体について廃棄周期を過ぎている時刻の移動データを削除する。
【0056】
ステップST43において、メモリ管理部31は、削除処理後のメモリ18から、他の移動体ごとの移動データを取得する。
ステップST44において、メモリ管理部31は、取得した移動データに基づいて、メモリ18に記録されている移動データから得られる他の移動体についての実際の移動速度である実速度を取得する。たとえば、最新の移動データに速度情報が含まれる場合、メモリ管理部31は、その速度情報を実速度としてよい。また、移動データに速度情報が含まれていない場合、メモリ管理部31は、最新の二つの移動データの位置情報および時刻情報から、実速度を演算する。
ステップST45において、メモリ管理部31は、取得した他の移動体の実速度に基づいて、速度変化(加速度)を演算する。たとえば、移動データに速度情報が含まれる場合、メモリ管理部31は、最新の移動データの実速度と、その前の移動データの実速度との差分を演算して、速度変化を取得する。
ステップST46において、メモリ管理部31は、取得した速度変化が、他の移動体の種類のなどに応じて想定され得る通常の速度変化の範囲を超えているか否かを判断する。通常の速度変化の範囲は、たとえば他の移動体が歩行者3である場合には、通常の歩行において生じえる速度変化の範囲とすればよい。たとえば他の移動体が車両2である場合には、通常の走行において車両2に生じえる速度変化の範囲とすればよい。
【0057】
取得した速度変化が通常の速度変化の範囲を超えていない場合、メモリ管理部31は、処理をステップST48へ進める。ステップST48において、メモリ管理部31は、処理中の他の移動体についての移動データを廃棄する周期に、通常の廃棄周期を設定する。通常の廃棄周期は、たとえば各移動体において移動データを生成する周期の2~3倍の時間とすればよい。これにより、移動データに速度情報が含まれない場合でも、メモリ管理部31は、必要最小限の個数の移動データに基づいて、廃棄周期を選択するための速度および速度変化の演算処理を実施することができる。なお、廃棄周期は、走行環境などに応じて変更されてよい。
【0058】
取得した速度変化が通常の速度変化の範囲を超えている場合、メモリ管理部31は、処理をステップST47へ進める。ステップST47において、メモリ管理部31は、処理中の他の移動体についての移動データを廃棄する周期に、通常の廃棄周期より長い周期を設定する。この長期廃棄周期は、少なくとも通常の廃棄周期より長いものであればよく、たとえば通常の廃棄周期の2~3倍とすればよい。これにより、通常の速度変化をしていない注意を必要とする他の移動体についての移動データを、メモリ18に蓄積しておくことができる。メモリ18に蓄積される通常より大きい移動データにより、移動体監視部34は、該他の移動体の動きについて詳しく監視して、自車の移動に対する影響の有無および程度を良好に判定することが可能になる。
【0059】
ステップST49において、メモリ管理部31は、メモリ18に蓄積されているすべての他の移動体についての上述したスキャン処理が完了したか否かを判断する。
すべての他の移動体についてのスキャン処理が完了していない場合、メモリ管理部31は、処理をステップST43へ戻し、次の他の移動体について上述した処理を繰り返す。これにより、メモリ18に移動データが蓄積されているすべての他の移動体に対して、スキャン処理が実施され、それぞれの速度変化に応じた廃棄周期が設定される。メモリ管理部31は、次回のステップST42の処理において、他の移動体について廃棄周期を経過した移動データをメモリ18から削除できる。
その後、メモリ管理部31は、図9のデータ管理処理を終了する。
【0060】
以上のデータ管理処理を繰り返すことにより、メモリ管理部31は、他の移動体の実速度に応じて周期的に古くなった移動データを他の移動体ごとにメモリ18から削除できる。これにより、メモリ18に蓄積されるデータ量が、時間の経過とともに増加し続けてしまうことを防ぐことができる。有限な記憶容量のメモリ18を用いて、複数の他の移動体の移動データを好適に蓄積することができる。
なお、メモリ管理部31は、廃棄周期を過ぎた移動データをその判断タイミングにおいて即座に削除するのではなく無効化し、メモリ18の記憶容量が不足するタイミングにおいて移動データを上書きすることによりメモリ18から削除するようにしてもよい。この場合、移動体監視部34は、無効化されていない有効な移動データのみに基づいて、各他の移動体についての移動を監視すればよい。
また、図9の処理では、メモリ管理部31は、廃棄周期により、移動データの廃棄タイミングを調整している。この他にもたとえば、メモリ管理部31は、廃棄頻度により、移動データの廃棄タイミングを調整してもよい。
【0061】
以上のように、本実施形態では、メモリ18に、車両2の走行などの制御に用いるために取得した移動データを蓄積して記録し、メモリ管理部31によりメモリ18における移動データの記録を管理する。そして、メモリ管理部31は、メモリ18に記録されている移動データから得られる移動体ごとの実速度を取得し、取得した移動体ごとの実速度に応じて周期的に、メモリ18から移動体ごとに移動データを削除または無効化する。
たとえば、メモリ管理部31は、他の移動体の実速度の変化(加速度)の程度に応じて、通常の廃棄周期と長期廃棄周期との中から取得した廃棄周期により、メモリ18から他の移動体ごとに過去の移動データを削除または無効化する。具体的にはたとえば、メモリ管理部31は、移動体の実速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にある場合には、通常の廃棄周期により、メモリ18から移動体ごとに過去の移動データを削除または無効化し、移動体の実速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲内にない場合には、長期廃棄周期により、メモリ18から移動体ごとに過去の移動データを削除または無効化する。
よって、たとえば、移動体の実速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲を超える場合には、その移動体の移動データは、長い期間にわたってメモリ18に蓄積して記録される。車両2の走行などの制御に用いるために有用なものになる得る可能性がある移動データは、メモリ18に長期にわたって蓄積して記録され得る。また、移動体の実速度の変化が所定の通常の速度変化の範囲に収まる場合には、その移動体の移動データは、通常の期間においてメモリ18から廃棄される。車両2の走行などの制御に用いるために不要なものになる得る可能性がある移動データは、メモリ18から早期に廃棄され得る。移動体監視部34は、メモリ18に適切に蓄積されている移動データを用いて、他の移動体の個々の移動状況をより確からしく予測することがきる。また、メモリ18の移動データを一律に長期廃棄周期で保持してから削除する場合と比べて、メモリ18に必要とされる記憶容量を減らすことができる。
その結果、本実施形態では、自動車といった車両2において、交通システム1において収集され得る複数の他の移動体についての移動データを良好に取得して蓄積することができる。また、本実施形態では、好適に取得して蓄積している移動データに基づいて、車両2の走行などを良好に制御することができる。
また、本実施形態では、メモリ18に蓄積する移動データを適宜廃棄しているので、メモリ18の記憶容量や移動データを処理するEPUの処理負荷を軽減できる。たとえば、本実施形態では、メモリ18に蓄積する移動データがオーバフローすることにより車両2の制御が不能になったり、車両2が前へ進まなくなったり、過剰に反応し過ぎてしまったりしてしまうことを抑制できる。
【0062】
本実施形態では、メモリ管理部31は、他の移動体の移動データをサーバ装置6などから周期的に受信する周期に応じて、その移動データを受信して収集するタイミングに合わせて、メモリ18から移動体ごとに過去の移動データを削除または無効化する。よって、他の移動体の移動データを受信する周期に合わせて、不要な移動データを廃棄できる。メモリ18に蓄積される移動データのデータ量は、移動データを周期的に受信するタイミングに応じた量に抑えることができる。
【0063】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る交通システム1について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0064】
図10は、本発明の第二実施形態における、図4のメモリ管理部31の処理の一例の説明図である。
図10のステップST41からST49の処理は、上述した実施形態の図9のステップと同様である。
【0065】
ステップST43において削除処理後のメモリ18から他の移動体ごとの移動データを取得した後、ステップST51において、メモリ管理部31は、該他の移動体の位置情報を用いて、該他の移動体が自車からの距離が遠い遠方に位置するか否かを判断する。他の移動体が自車の走行に影響しない遠方にある場合、メモリ管理部31は、処理をステップST48へ進めて、該他の移動体に対して通常の廃棄周期を設定する。遠方の判断距離は、例えば他の移動体が車両2である場合、数十から数百メートルとすればよい。他の移動体が歩行者3である場合、自車の移動速度による制御周期での移動距離とすればよい。
【0066】
他の移動体が自車の遠方にいない場合、メモリ管理部31は、処理をステップST52へ進める。ステップST52において、メモリ管理部31は、他の移動体と自車とが接触しない可能性について判断する。メモリ管理部31は、他の移動体がたとえば高速道路と一般道といった異なる区分の道路を走行していると考えられる場合、メモリ管理部31は、他の移動体と自車とが接触可能性がないと判断する。また、メモリ管理部31は、自車から数百メートル以上離れている他の移動体についても、接触可能性がないと判断してよい。他の移動体が自車との接触可能性がない場合、メモリ管理部31は、処理をステップST48へ進めて、該他の移動体に対して通常の廃棄周期を設定する。
【0067】
他の移動体と自車とが接触可能性がないとは判断できない場合、メモリ管理部31は、処理をステップST44へ進めて、ステップST44~ST48により、実測度の変化の程度に応じた廃棄周期を設定する。
この際、メモリ管理部31は、ステップST53において、他の移動体についての長期廃棄周期を演算する。
たとえば、メモリ管理部31は、自車と進路が交差すると考えられる他の移動体が交差位置に到達する時間と、自車が交差位置に到達する時間とを、それぞれの移動データに基づいて演算する。そして、メモリ管理部31は、それらの到達時間の中で短い方の時間を、他の移動体の長期廃棄周期とする。メモリ管理部31は、自車より他の移動体の到達時間が短い場合には、自車到達前に他の移動体が交差位置を通過する可能性が高いため、他の移動体の到達時間を長期廃棄周期とする。
メモリ管理部31は、自車より他の移動体の到達時間が長い場合には、自車通過後に他の移動体が交差位置に到達する可能性が高いため、自車の到達時間を長期廃棄周期とする。
メモリ管理部31は、自車の到達時間と他の移動体の到達時間との差が少なく、自車に影響がある可能性が高い場合には、その到達時間に制御時間を足した時間を長期廃棄周期とする。これにより、実際に略同時に交差位置に到達した場合において、走行制御部36は、他の移動体の移動データを活用して有効な回避制御を実施することが可能になる。たとえば、走行制御部36は、交差位置の手前で車両2を減速させて他の移動体の通過をやり過ごすことができる。
【0068】
その後、ステップST49において、メモリ管理部31は、メモリ18に蓄積されているすべての他の移動体についての上述したスキャン処理が完了したか否かを判断する。これ以降のメモリ管理部31の処理は、上述した実施形態と同様である。
以上のように、本実施形態では、メモリ管理部31は、メモリ18に記録されている移動データの中で、接触しない可能性が高いと判断された他の移動体のもの、および距離が遠い他の移動体のものについて、メモリ18から移動体ごとに移動データを削除または無効化する。よって、移動体の速度の変化に関係なく、接触しない可能性が高い他の移動体や、距離が遠い他の移動体についての不要となる可能性が高い移動データは、その実速度および速度変化により長期廃棄周期とされることなく、通常の廃棄周期で適切に廃棄される。
【0069】
本実施形態では、メモリ管理部31は、自車と進路が交差すると考えられる他の移動体については、通常の廃棄周期よりも長い廃棄周期として、他の移動体が交差位置に到達する時間および自車が交差位置に到達する時間の中で短い方の時間を基準として変更された該他の移動体の廃棄周期または廃棄頻度を用いる。よって、自車または他の移動体が交差位置に到達する時間までは、該他の移動体の移動データをメモリ18に蓄積することができる。必要となる可能性が高い移動データを、必要となる可能性が高い期間において、適切にメモリ18に蓄積して保持できる。
【0070】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、メモリ管理部31は、他の移動体の実速度の変化が通常の変化範囲から外れる場合に、他の移動体の移動データについてのメモリ18への蓄積を開始または再開する。
この他にもたとえば、メモリ管理部31は、他の移動体の実速度が通常の速度範囲から外れる場合に、他の移動体の移動データについてのメモリ18への蓄積を開始または再開してもよい。
また、メモリ管理部31は、実速度および実速度の変化の中の少なくとも一方が各々の通常範囲から外れる場合に、他の移動体の移動データについてのメモリ18への蓄積を開始または再開してもよい。
【0072】
上記実施形態では、移動体に設けられる車両制御システム10および通信装置は、メモリ18に蓄積した移動データに基づいて車両2の移動を制御するために、移動体監視部34と走行制御部36とを用いている。
この他にもたとえば、移動体に設けられる車両制御システム10および通信装置は、走行制御部36の処理において移動体監視部34と同様の処理を実施し、移動体監視部34のみを用いてもよい。この場合、移動体監視部34は、たとえば図9のステップST43において、移動体監視部34と同様の処理を実施すればよい。また、このように走行制御部36に移動体監視部34を統合している場合、走行制御部36は、監視レベルを付与することなく、監視判断結果をそのまま用いて進路を調整するように更新してよい。
【0073】
上記実施形態では、移動体に設けられる車両制御システム10および通信装置は、受信制御部32とともにメモリ管理部31を有する。
この他にもたとえば、移動体に設けられる車両制御システム10および通信装置は、メモリ管理部31を受信制御部32に統合し、メモリ18からの移動データの削除処理を受信制御部32に実施させてもよい。この場合、受信制御部32は、たとえば移動データを受信した際に他の移動体ごとに廃棄周期を設定し、廃棄周期を過ぎた移動データをメモリ18から移動体ごとに削除してよい。
【0074】
上記実施形態では、移動体に設けられる車両制御システム10および通信装置は、走行制御部36とともに送信制御部35を有する。
この他にもたとえば、移動体に設けられる車両制御システム10および通信装置は、送信制御部35を走行制御部36に統合し、移動データの送信処理を走行制御部36に実施させてもよい。この場合、走行制御部36は、たとえば図9のステップST47の処理の後に、保存した自車の移動データを無線通信部11により送信してよい。
【0075】
上記実施形態では、車両2に設けられる車両制御システム10は、図4に示す各部を備えている。この他にもたとえば、車両制御システム10は、図4の一部の機能のみを備えてもよい。また、車両制御システム10は、独自に備える図4の一部の機能に対して、たとえば携帯端末などにより図4の残部の機能が追加されることにより、図4のすべての機能を備えてもよい。
また、車両制御システム10は、図4の一部の機能を備え、その状態において上述した各種の処理を実施してもよい。車両用の通信装置22は、たとえば車両2に搭載される自車センサとして図4の一部のみを備えるものでもよい。特に、車両制御システム10は、車両2において走行以外の制御を実施する場合、図4のすべての自車センサ、操作部材17、ECU20の経路生成部37、を備えなくてもよい。この場合であっても、車両制御システム10に備えられる車両用の通信装置22は、サーバ装置6との間で移動データなど送受する交通システム1を構成する。
【0076】
上記実施形態では、車両用の通信装置22は、車両制御システム10の一部として説明している。歩行者3、自転車などの低速移動体用の制御システムにおいても、上述した車両用の通信装置22と同様の機能を備えてよい。また、車両2以外の電車などの他の種類の車両2においても、上述した車両制御システム10および車両用の通信装置22を適用してよい。
【符号の説明】
【0077】
1…交通システム、2…車両(車両用の通信装置)、3…歩行者(歩行者用の通信装置)、4…基地局、5…ビーコン装置、6…サーバ装置、7…幹線道路、8…路地、9…横断歩道、10…車両制御システム(車両用の通信装置)、11…無線通信部、12…撮像デバイス、13…スキャンデバイス、14…GPS受信機、15…走行センサ、16…環境センサ、17…操作部材、18…メモリ、19…タイマ、20…ECU、21…車載ネットワーク、22…通信装置(車両用の通信装置)、31…メモリ管理部、32…受信制御部、34…移動体監視部、35…送信制御部、36…走行制御部(車両制御装置)、37…経路生成部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10