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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ガスメータ、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20221216BHJP
   G01F 15/04 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G01F3/22 B
G01F15/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018182530
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051935
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】越智 毅
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭史
(72)【発明者】
【氏名】談議 康晴
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】萱場 貴士
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣純
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-241972(JP,A)
【文献】特開2002-168663(JP,A)
【文献】特開平09-218071(JP,A)
【文献】特開2001-165720(JP,A)
【文献】特開2002-267562(JP,A)
【文献】特開平06-174505(JP,A)
【文献】特開2008-232992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/22,15/00-15/18,
G01F 22/00-22/02,
F23K 5/00,
F23N 5/24,
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部と、前記ガス通流路での圧力を計測する圧力計測部と、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との計測結果に基づいて制御を実行する制御部とを備えたガスメータであって、
前記制御部は、
前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が予め定められた最低流量未満のときに、前記圧力計測部にてガス供給圧が計測されている状態で、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、
予め決定された第1所定期間で前記圧力計測部にて計測される圧力が圧力降下判定幅未満の低下である場合に遮断された遮断部位より下流側の下流側流路でのガス漏洩がないガス非漏洩状態であると判定すると共に、前記第1所定期間で前記圧力計測部にて計測される圧力が圧力降下判定幅以上に低下した場合に前記下流側流路でガス漏洩があるガス漏洩状態であると判定する第1漏洩判定を実行すると共に、
前記第1漏洩判定において前記ガス漏洩状態であると判定した場合であっても、前記第1漏洩判定中において前記温度計測部にて計測される温度が低下したときで、前記第1漏洩判定において圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定したときには、前記ガス漏洩状態から前記ガス非漏洩状態へ判定を変更する第2漏洩判定を実行し、
前記制御部は、前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が零のときに
、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、当該遮断した状態で前記圧力計測部にて計測される前記下流側流路の圧力が大気圧である第1状態から、前記ガス通流路の遮断を解除し、前記圧力計測部にて計測される圧力がガス供給圧力となる第2状態までにおいて、前記流量計測部にて計測される積算流量から前記下流側流路の流路容積を推定する流路容積推定を実行するとともに、
前記流路容積推定にて推定された前記下流側流路の前記流路容積が大きいほど、前記第1漏洩判定における前記圧力降下判定幅を小さい値に調整する圧力降下判定幅調整を行い

前記制御部は、当該ガスメータ設置時に前記流路容積推定を実行するものであり、
前記流路容積推定より後において、前記圧力降下判定幅調整を実行する場合には、前記設置時に推定された前記流路容積を、前記温度計測部にて計測される温度に基づいて補正した補正流路容積に基づいて前記圧力降下判定幅の調整を行う圧力降下判定幅補正調整を実行する、ガスメータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2漏洩判定において、前記第1所定期間の開始時点での前記圧力計測部にて計測される圧力に対する前記開始時点から終了時点までの間の圧力の低下量の割合が、前記開始時点での前記温度計測部にて計測される温度に対する前記開始時点から終了時点までの間の温度の低下量の割合である場合、圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定する請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記ガス通流路を遮断する遮断弁を備える共に、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部とが前記ガス通流路において前記遮断弁の下流側に備えられ、
前記制御部は、前記遮断弁にて前記ガス通流路を遮断した状態で、前記第1漏洩判定及び前記第2漏洩判定を実行する請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項4】
外部の監視センターから前記第1漏洩判定及び前記第2漏洩判定の実行の指示を受信可能であると共に、前記第1漏洩判定及び前記第2漏洩判定の判定結果を前記監視センターへ送信可能な通信部が設けられている請求項1~の何れか一項に記載のガスメータ。
【請求項5】
内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部と、前記ガス通流路での圧力を計測する圧力計測部とを備えたガスメータの制御方法であって、
前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が予め定められた最低流量未満のときに、前記圧力計測部にてガス供給圧が計測されている状態で、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、
予め決定された第1所定期間で前記圧力計測部にて計測される圧力が圧力降下判定幅未満の低下である場合に遮断された遮断部位より下流側の下流側流路でのガス漏洩がないガス非漏洩状態であると判定すると共に、前記第1所定期間で前記圧力計測部にて計測される圧力が圧力降下判定幅以上に低下した場合に前記下流側流路でガス漏洩があるガス漏洩状態であると判定する第1漏洩判定工程を実行すると共に、
前記第1漏洩判定工程において前記ガス漏洩状態であると判定した場合であっても、前記温度計測部にて計測される温度が低下したときで、圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定したときには、前記ガス漏洩状態から前記ガス非漏洩状態へ判定を変更する第2漏洩判定工程を実行し、
前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が零のときに、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、当該遮断した状態で前記圧力計測部にて計測される前記下流側流路の圧力が大気圧である第1状態から、前記ガス通流路の遮断を解除し、前記圧力計測部にて計測される圧力がガス供給圧力となる第2状態までにおいて、前記流量計測部にて計測される積算流量から前記下流側流路の流路容積を推定する流路容積推定処理を実行するとともに、
前記流路容積推定処理にて推定された前記下流側流路の前記流路容積が大きいほど、前記第1漏洩判定における前記圧力降下判定幅を小さい値に調整する圧力降下判定幅調整処理を行い、
当該ガスメータ設置時に前記流路容積推定処理を実行するものであり、
前記流路容積推定処理より後において、前記圧力降下判定幅調整処理を実行する場合には、前記設置時に推定された前記流路容積を、前記温度計測部にて計測される温度に基づいて補正した補正流路容積に基づいて前記圧力降下判定幅の調整を行う圧力降下判定幅補正調整処理を実行する、ガスメータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部と、前記ガス通流路での圧力を計測する圧力計測部と、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との計測結果に基づいて制御を実行する制御部とを備えたガスメータ、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスメータの設置工程では、ガスメータの下流側でのガス漏洩の有無を確認するべく、特許文献1に示す漏洩判定方法により、ガスメータより下流側(屋内側)でのガス漏洩の有無を判定する。当該漏洩判定方法では、ガス通流路のうちガスメータの上流側入口に設けられる屋外ガス栓を閉弁した後に、ガスメータより下流側のガス通流路の接続部位に圧力計等の機能を有するデジタルマノメータを連通接続し、当該ガスメータより下流側の下流側流路の圧力の経時変化を計測することにより、下流側流路でのガス漏洩の有無を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-220474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、漏洩判定において、下流側流路の接続部位に対してデジタルマノメータを連通接続すると共に、漏洩判定が終了した後には当該デジタルマノメータを下流側流路の接続部位から取り外す必要がある。当該漏洩判定では、デジタルマノメータを取り外した後の下流側流路の接続部位の気密性については担保できず、改善の余地があった。
更に、特許文献1に記載の漏洩判定方法では、漏洩判定を行う場合には、現場に検査員を派遣すると共にデジタルマノメータ等の機器を用いて判定する必要があると共に、ガスメータが設置されている敷地内に進入する必要があり、判定に伴う作業工程が多くなり、且つ検査員の派遣に伴う人的コストが高くなるという問題もあった。このため、例えば、定期的な漏洩判定の実行等を行い難い状況にあり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い経済メリットを得られつつも漏洩判定の工程を簡素化しながらも、下流側流路でのガス漏洩の有無の判定の確度をより高くすることができるガスメータ、及びその制御方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのガスメータは、内部のガス通流路を通流するガスの流量を計
測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部と、前
記ガス通流路での圧力を計測する圧力計測部と、前記流量計測部と前記温度計測部と前記
圧力計測部との計測結果に基づいて制御を実行する制御部とを備えたガスメータであって
、その特徴構成は、前記制御部は、
前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が予め定められた最低流量未
満のときに、前記圧力計測部にてガス供給圧が計測されている状態で、前記流量計測部と
前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、
予め決定された第1所定期間で前記圧力計測部にて計測される圧力が圧力降下判定幅未
満の低下である場合に遮断された遮断部位より下流側の下流側流路でのガス漏洩がないガ
ス非漏洩状態であると判定すると共に、前記第1所定期間で前記圧力計測部にて計測され
る圧力が圧力降下判定幅以上に低下した場合に前記下流側流路でガス漏洩があるガス漏洩
状態であると判定する第1漏洩判定を実行すると共に、
前記第1漏洩判定において前記ガス漏洩状態であると判定した場合であっても、前記第
1漏洩判定中において前記温度計測部にて計測される温度が低下したときで、前記第1漏
洩判定において圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定したときには、前記
ガス漏洩状態から前記ガス非漏洩状態へ判定を変更する第2漏洩判定を実行し、
前記制御部は、前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が零のときに
、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、当該遮断した状態で前記圧力計測部にて計測される前記下流側流路の圧力が大気圧である第1状態から、前記ガス通流路の遮断を解除し、前記圧力計測部にて計測される圧力がガス供給圧力となる第2状態までにおいて、前記流量計測部にて計測される積算流量から前記下流側流路の流路容積を推定する流路容積推定を実行するとともに、
前記流路容積推定にて推定された前記下流側流路の前記流路容積が大きいほど、前記第1漏洩判定における前記圧力降下判定幅を小さい値に調整する圧力降下判定幅調整を行い

前記制御部は、当該ガスメータ設置時に前記流路容積推定を実行するものであり、
前記流路容積推定より後において、前記圧力降下判定幅調整を実行する場合には、前記設置時に推定された前記流路容積を、前記温度計測部にて計測される温度に基づいて補正した補正流路容積に基づいて前記圧力降下判定幅の調整を行う圧力降下判定幅補正調整を実行する点にある。
【0007】
上記目的を達成するためのガスメータの制御方法は、内部のガス通流路を通流するガス
の流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計
測部と、前記ガス通流路での圧力を計測する圧力計測部とを備えたガスメータの制御方法
であって、その特徴構成は、
前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が予め定められた最低流量未
満のときに、前記圧力計測部にてガス供給圧が計測されている状態で、前記流量計測部と
前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、
予め決定された第1所定期間で前記圧力計測部にて計測される圧力が圧力降下判定幅未
満の低下である場合に遮断された遮断部位より下流側の下流側流路でのガス漏洩がないガ
ス非漏洩状態であると判定すると共に、前記第1所定期間で前記圧力計測部にて計測され
る圧力が圧力降下判定幅以上に低下した場合に前記下流側流路でガス漏洩があるガス漏洩
状態であると判定する第1漏洩判定工程を実行すると共に、
前記第1漏洩判定工程において前記ガス漏洩状態であると判定した場合であっても、前
記温度計測部にて計測される温度が低下したときで、圧力の低下が温度の低下に伴う圧力
低下であると判定したときには、前記ガス漏洩状態から前記ガス非漏洩状態へ判定を変更
する第2漏洩判定工程を実行し、
前記流量計測部にて計測される前記ガス通流路のガス流量が零のときに、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部との上流側にて前記ガス通流路を遮断し、当該遮断した状態で前記圧力計測部にて計測される前記下流側流路の圧力が大気圧である第1状態から、前記ガス通流路の遮断を解除し、前記圧力計測部にて計測される圧力がガス供給圧力となる第2状態までにおいて、前記流量計測部にて計測される積算流量から前記下流側流路の流路容積を推定する流路容積推定処理を実行するとともに、
前記流路容積推定処理にて推定された前記下流側流路の前記流路容積が大きいほど、前記第1漏洩判定における前記圧力降下判定幅を小さい値に調整する圧力降下判定幅調整処理を行い、
当該ガスメータ設置時に前記流路容積推定処理を実行するものであり、
前記流路容積推定処理より後において、前記圧力降下判定幅調整処理を実行する場合には、前記設置時に推定された前記流路容積を、前記温度計測部にて計測される温度に基づいて補正した補正流路容積に基づいて前記圧力降下判定幅の調整を行う圧力降下判定幅補正調整処理を実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、特に、ガス漏洩の判定に用いるための温度計測部を、ガスメー
タ内部に備えているから、第1漏洩判定が完了した後に、温度計測部を取り外す必要がな
く、下流側流路の気密性が担保された状態を維持したまま、第1漏洩判定を完了できる。
更に、本発明にあっては、第1漏洩判定においてガス漏洩状態であると判定した場合で
あっても、温度計測部にて計測される温度が低下したときで、圧力の低下が温度の低下に
伴う圧力低下であると判定したときには、ガス漏洩状態からガス非漏洩状態へ判定を変更
する第2漏洩判定を実行するから、下流側流路でのガスの温度による圧力変化までをも考
慮した状態で、ガス漏洩の有無を判定できる。結果、圧力の低下が温度の低下に伴うもの
であるときには、ガス漏洩と判定しないことになるので、温度の低下に伴う圧力低下を排
除した状態でガス漏洩の判定を行うことができ、より確度の高いガス漏洩の判定を行うこ
とができる。当該第2漏洩判定に関しても、その判定の後に、下流側流路にて温度計測部
等を取り外す必要がないため、下流側流路での気密性を担保した状態を維持したまま、第
2漏洩判定を完了できる。
更に、上記特徴構成によれば、ガスメータの制御部に対して第1漏洩判定及び第2漏洩
判定を定期的に行うプログラムを組み込むことで、検査員等を現場に派遣せずとも、第1
漏洩判定及び第2漏洩判定を実行できるから、経済メリットを享受できる。
以上より、経済メリットを得られつつも漏洩判定の工程を簡素化しながらも、下流側ガ
ス流路でのガス漏洩の有無の判定の確度をより高くすることができるガスメータ、及びそ
の制御方法を実現できる。
上記特徴構成の如く、流路容積推定にて下流側流路の流路容積を推定することで、下流
側流路の下流側ガス流路の流路容積の大小を知ることできる。
そして、上記特徴構成によれば、当該流路容積が大きい場合、圧力降下判定幅が小さい
場合であっても、外部に漏洩しているガス流量が大きいものとなるから、推定された流路
容積が大きいほど、第1漏洩判定における圧力硬化判定幅を小さい値に調整することで、
外部に漏洩するガスの流量が多くなりすぎることを防止でき、現場毎の状況に対応した第
1漏洩判定による安全性を向上できる。
流路容積推定を行うには、ガスメータの遮断弁を遮断して客先へのガスの供給を停止す
る必要がある。上記特徴構成によれば、流路容積の推定は、メータ取り付け時に実行すれ
ばいいから、圧力降下判定幅の調整を行う毎に、ガスメータの遮断弁を閉止する必要がな
く、客先でのガス利用の利便性を高めることができる。
しかも、圧力降下判定幅の設定については、メータ取り付け時に推定した流路容積に基
づいて、現状のガスの温度により補正した値を用いるから、計測時における下流側流路の
周囲環境の状態をも反映して、圧力降下判定幅を調整できる。
【0009】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記第2漏洩判定において、前記第1所定期間の開始時点での前記圧力計測部にて計測される圧力に対する前記開始時点から終了時点までの間の圧力の低下量の割合が、前記開始時点での前記温度計測部にて計測される温度に対する前記開始時点から終了時点までの間の温度の低下量の割合である場合、前記圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、例えば、圧力の低下量の割合が、温度の低下量の割合よりも大きい場合には、温度は低下してそれに伴う圧力低下も発生しているけれども、ガス漏洩に伴う圧力低下も発生しているとして、ガス漏洩状態にあると判定される。
即ち、上記特徴構成によれば、下流側流路での圧力低下が、下流側流路でのガスの温度の低下に伴う状態変化によるものである場合にのみ、第2漏洩判定において、ガス漏洩状態からガス非漏洩状態へ移行でき、漏洩状態の判定精度の向上を図ることができる。
【0012】
上記特徴構成の如く、流路容積推定にて下流側流路の流路容積を推定することで、下流側流路の下流側ガス流路の流路容積の大小を知ることできる。
そして、上記特徴構成によれば、当該流路容積が大きい場合、圧力降下判定幅が小さい場合であっても、外部に漏洩しているガス流量が大きいものとなるから、推定された流路容積が大きいほど、第1漏洩判定における圧力硬化判定幅を小さい値に調整することで、外部に漏洩するガスの流量が多くなりすぎることを防止でき、現場毎の状況に対応した第1漏洩判定による安全性を向上できる。
【0014】
流路容積推定を行うには、ガスメータの遮断弁を遮断して客先へのガスの供給を停止する必要がある。上記特徴構成によれば、流路容積の推定は、メータ取り付け時に実行すればいいから、圧力降下判定幅の調整を行う毎に、ガスメータの遮断弁を閉止する必要がなく、客先でのガス利用の利便性を高めることができる。
しかも、圧力降下判定幅の設定については、メータ取り付け時に推定した流路容積に基づいて、現状のガスの温度により補正した値を用いるから、計測時における下流側流路の周囲環境の状態をも反映して、圧力降下判定幅を調整できる。
【0015】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記ガス通流路を遮断する遮断弁を備える共に、前記流量計測部と前記温度計測部と前記圧力計測部とが前記ガス通流路において前記遮断弁の下流側に備えられ、
前記制御部は、前記遮断弁にて前記ガス通流路を遮断した状態で、前記第1漏洩判定及び前記第2漏洩判定を実行する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、ガスメータの内部に設けられる遮断弁により、下流側流路の上流端を遮断できるから、外部の監視センターからガスメータへ第1漏洩判定及び第2漏洩判定を行う指令を出したときに、ガスメータ自身にてその遮断弁を遮断して、第1漏洩判定及び第2漏洩判定を行うための環境を良好に設定できる。
これにより、作業員が現場に赴くことなく、第1漏洩判定及び第2漏洩判定を実行することができ、人的コストの削減を行うことができ、経済性を向上させることができる。
【0017】
これまで説明してきたガスメータには、
外部の監視センターから前記第1漏洩判定及び前記第2漏洩判定の実行の指示を受信可能であると共に、前記第1漏洩判定及び前記第2漏洩判定の判定結果を前記監視センターへ送信可能な通信部が設けられることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るガスメータの概略構成図である。
図2】実施形態に係るガスメータの制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るガスメータ100、及びその制御方法は、高い経済メリットを得られつつも漏洩判定の工程を簡素化しながらも、下流側流路でのガス漏洩の有無の判定の確度をより高くすることができるものに関する。以下、当該ガスメータ100、及びその制御方法について、図面に基づいて説明する。
【0020】
ガスメータ100は、超音波流量計として構成されており、ガス管から住居等のガス供給箇所(図示せず)へ供給されるガスの流量を計測するものである。
当該ガスメータ100には、図1の一部断面図に示すように、一次側のガス配管に連通接続されるガス流入口11と、二次側のガス配管に連通接続されるガス流出口12と、当該ガス流入口11とガス流出口12とを接続する形でガス通流路Lが形成されている。
ガス通流路Lには、整流流路を形成する筒状部材20が配設されると共に、当該筒状部材20の内部には、筒軸心に沿って延びる整流板21が複数設けられている。
詳細な図示は省略するが、当該ガスメータ100には、筒状部材20の内部に形成される整流流路に超音波を伝播させる一対の送受波器SJ1、SJ2とが備えられている。
より詳細には、ガス通流路Lを通流するガスの流れ方向に対して、当該流れ方向に沿った第1方向及び当該第1方向とは逆方向の第2方向に超音波を伝搬させて、第1方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信すると共に第2方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信する一対の送受波器SJ1、SJ2を備えると共に、第1方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第1伝搬時間と第2方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第2伝搬時間とを計測し、計測された第1伝搬時間及び第2伝搬時間と所定伝搬距離とからガス流路を通流するガスのガス流速を導出し、当該ガス流速とガス通流路L(整流流路)の流路断面積とからガス流量を導出する制御装置Cを備え、これらが流量計測部として機能する。
制御装置Cは、ガスメータ100の内部の中央に形成される中央空間Kに制御基板として実装されており、ソフトウェア群と演算装置や記憶部等のハードウェア群とが協働する状態で設けられている。制御装置Cでは、ガスメータ100において、ガス流量の演算等を行う制御部C1や、制御部C1からの各種信号をガスメータ100の外部の監視センターCSへ無線ネットワーク回線N等を介して送信する通信部C2等の機能部位が備えられる。監視センターCSは、通信部CS1を介して複数のガスメータ100(M1~M5)との間で各種情報を送受信可能に構成されている。
また、図示は省略するが、ガスメータ100には、制御部C1にて演算されたガス流量を外部から視認可能な状態で表示する表示部が設けられている。
【0021】
筒状部材20にて構成される整流流路の上流側には、ガスメータ100の上流側のガス圧が著しく低下したときに安全上の観点からガス通流路Lを遮断する遮断弁30が設けられており、当該遮断弁30は、弁体31がガス通流路L内に突出形成される弁座部32に着座する形態で、ガス通流路Lの開閉部位LKを閉止して、ガス通流路Lを閉止する。
【0022】
ガス通流路Lとしての整流流路には、その流路軸心に略直交する方向に開口LRが形成されると共に、整流流路の内部と連通する状態で連通空間SKが併設されている。当該連通空間SKは、整流流路の流れが阻害されないように、整流流路から外れた位置で且つガスメータ100の内部に形成されている。当該連通空間SKの内部には、ガス通流路Lを通流するガスの温度を計測する温度センサS1(温度計測部の一例)及びガス通流路Lのガスの圧力を計測する圧力センサS2(圧力計測部の一例)が配設されており、当該温度センサS1及び圧力センサS2にて計測される温度及び圧力は、制御装置Cの制御部C1が受信する。
【0023】
さて、制御部C1は、漏洩判定の工程を簡素化しながらも、ガス通流路Lにおける遮断弁30の下流側の下流側流路Laでのガス漏洩の有無の判定の確度をより高くするべく、以下の制御を実行する。
制御部C1は、超音波流量計にて計測されるガス通流路Lのガス流量が予め定められた最低流量(例えば、20L/h以上40L/h以下の流量で、可変に設定可能な流量)未満のときに、圧力センサS2にてガス供給圧(例えば、供給約款に記載された供給圧力1.0~2.5kPa)が計測されている状態で、超音波流量計の超音波の送受波器SJ1、SJ2と温度センサS1と圧力センサS2との上流側にて遮断弁30によりガス通流路Lを遮断し、超音波流量計にて計測されるガス通流路Lのガス流量が最低流量未満の状態において、予め決定された第1所定期間(例えば、2分)で圧力センサS2にて計測される圧力が圧力降下判定幅(例えば、ガス供給圧未満の圧力値で、可変に設定可能な圧力幅)未満の低下である場合に下流側流路Laでのガス漏洩がないガス非漏洩状態であると判定すると共に、第1所定期間で圧力センサS2にて計測される圧力が圧力降下判定幅以上に低下した場合に、下流側流路Laでガス漏洩があるガス漏洩状態であると判定する第1漏洩判定を実行すると共に、第1漏洩判定においてガス漏洩状態であると判定した場合であっても、温度センサS1にて計測される温度が低下したときで、圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定したときには、ガス漏洩状態からガス非漏洩状態へ判定を変更する第2漏洩判定を実行する。
当該制御によれば、デジタルマノメータ等の他の機器を、下流側流路Laの接続部位(図示せず)に連通接続したり取り外したりすることなく、ガス漏洩の有無の判定を行うことができ、下流側流路Laの接続部位からのガス漏洩のリスクを排除できる。
尚、第1所定期間は、後述の流路容積推定処理にて推定される流路容積に基づいて、設置箇所毎(流路容積毎)に各別に設定可能に構成されている。
【0024】
より詳細なガス漏洩に係る制御については、図2の制御フローを参照しながら説明する。
制御部C1は、第1漏洩判定処理を下流側流路Laの流路容積に合わせて適切に実行するため、下流側流路Laの流路容積を推定する流路容積推定処理を実行する(#01)。
当該流路容積推定処理は、例えば、ガスメータ100の取り付け時でガスメータ100の下流側が大気圧近傍である時に行うものであり、制御部C1は、超音波流量計にて計測されるガス通流路Lのガス流量が零であるときに、遮断弁30にてガス通流路Lを遮断し、当該遮断状態において圧力センサS2にて計測される下流側流路Laの圧力が大気圧である第1状態から、ガス通流路Lの遮断弁30による遮断を解除し、圧力センサS2にて計測される圧力がガス供給圧力となる第2状態までにおいて、超音波流量計にて計測される流量の積算値から下流側流路Laの流路容積を推定する流路容積推定を実行する。
制御部C1は、流路容積推定にて推定された下流側流路Laの流路容積が大きいほど、第1漏洩判定における圧力降下判定幅を小さい値に調整する圧力降下判定幅調整を行う(#02)。これにより、下流側流路Laの容積が通常よりも大容量の場合で、漏洩がある場合に、ガス漏洩量が大きくなり過ぎることを防止し、安全性の向上を図っている。
当該推定された流路容積及び圧力降下判定幅は、制御装置Cの記憶部(図示せず)に記憶され、ガスメータ100の取り付け後に、下記の制御にて利用される。
【0025】
制御部C1は、ガスメータ100が設置されている各戸において、ガスの利用がないことを確認するべく、超音波流量計にて計測される流量が予め定められた最低流量未満か否かを判断する(#03)。流量が最低流量未満でない場合、所定時間毎に、流量が最低流量未満か否かを判断する処理を繰り返す(#04)。
制御部C1は、流量が最低流量未満であると判断すると、圧力センサS2にてガス供給圧が計測されている状態で、遮断弁30を遮断する(#05)。
制御部C1は、予め決定された第1所定期間で圧力センサS2にて計測される圧力が圧力降下判定幅未満の低下である場合に下流側流路Laでのガス漏洩がないガス非漏洩状態であると判定すると共に、第1所定期間で圧力センサS2にて計測される圧力が、上記#02で流路容積に対応して設定された圧力降下判定幅以上に低下した場合に、下流側流路Laでガス漏洩があるガス漏洩状態であると判定する第1漏洩判定を実行する(#06)。
ただし、当該第1漏洩判定では、第1漏洩判定中に温度の低下が発生し、当該温度の低下に伴って圧力低下が発生したときには、ガスが漏洩していないにも関わらず、ガス漏洩状態であると判定されてしまう虞がある。
【0026】
そこで、制御部C1は、第1漏洩判定においてガス漏洩状態であると判定した場合であっても、第1漏洩判定中において温度センサS1にて計測される温度が低下したときで、第1漏洩判定での圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定したときには、ガス漏洩状態からガス非漏洩状態へ判定を変更する第2漏洩判定を実行する(#07)。
第2漏洩判定について説明を追加すると、制御部C1は、第2漏洩判定において、第1所定期間の開始時点での圧力センサS2にて計測される圧力に対する開始時点から終了時点までの間の圧力の低下量の割合が、開始時点での温度センサS1にて計測される温度に対する開始時点から終了時点までの間の温度の低下量の割合である場合、圧力の低下が温度の低下に伴う圧力低下であると判定する。
上記#07の制御を実行することで、例えば、圧力の低下量の割合が、温度の低下量の割合よりも大きい場合には、温度は低下してそれに伴う圧力低下も発生しているけれども、ガス漏洩に伴う圧力低下も発生しているとして、ガス漏洩状態にあると判定される。このため、下流側流路Laでの圧力低下が、下流側流路Laでのガスの温度変化に伴う状態変化によるものである場合にのみ、第2漏洩判定において、ガス漏洩状態からガス非漏洩状態へ移行でき、漏洩状態の判定精度の向上を図ることができる。
【0027】
制御部C1は、ガス漏洩状態であると判定された場合、ガスメータ100に備えられる漏洩ランプRを点滅させると共に、通信部C2を介して、監視センターCSへガス漏洩状態にあることを知らせる信号を送信する漏洩報知処理を実行する(#08)。
【0028】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、圧力降下判定幅調整、第1漏洩判定、及び第2漏洩判定は、ガスメータ100に設けられる遮断弁30にてガス通流路Lを遮断した状態で実行する例を示した。
しかしながら、圧力降下判定幅調整、第1漏洩判定、及び第2漏洩判定は、ガスメータ100の上流側のガス通流路Lを開閉する開閉弁(図示せず)にて実現するように構成しても構わない。
【0029】
(2)上記実施形態において、ガスメータ100は、超音波メータである例を示したが、膜式メータ等の他のメータであっても、本発明の機能は良好に発揮される。
【0030】
(3)上記実施形態において、温度センサS1は、相対湿度を計測する相対湿度センサとして構成しても構わない。この場合、制御部C1は、相対湿度センサにて計測される温度に基づいて、各種制御を実行することになる。
尚、当該相対湿度センサによる計測は、ガスメータ100の復帰後、一定流量以上の通流があった後に開始される。
【0031】
(4)上記実施形態において、流路容積推定処理や圧力降下幅調整処理は、実行しなくても構わない。
【0032】
(5)上記実施形態における流路容積推定により推定された流路容積は、第1漏洩判定を実行するタイミングでのガスメータ100の温度に基づいて補正されるように構成しても構わない。当該補正は、状態方程式の関係に基づいて行われる。
そして、#02の圧力降下判定幅調整は、補正された流路容積に基づいて圧力降下判定幅の調整を行う圧力降下判定幅補正調整に置き換えられることになる。
【0033】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のガスメータ、及びその制御方法は、高い経済メリットを得られつつも漏洩判定の工程を簡素化しながらも、下流側流路でのガス漏洩の有無の判定の確度をより高くすることができるガスメータ、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
30 :遮断弁
100 :ガスメータ
C :制御装置
C1 :制御部
C2 :通信部
CS :監視センター
L :ガス通流路
La :下流側流路
S1 :温度センサ
S2 :圧力センサ
SJ1 :送受波器
SJ2 :送受波器
図1
図2