(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】キャブ及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20221216BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
E02F9/16 A
B62D25/08 B
(21)【出願番号】P 2018190976
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山光 弘法
(72)【発明者】
【氏名】大倉 直澄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】塚本 卓
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-115268(JP,A)
【文献】特開2001-208887(JP,A)
【文献】特開2008-105669(JP,A)
【文献】国際公開第2006/008985(WO,A1)
【文献】特開平11-166247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0148198(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に用いられるキャブであって、
第1ピラーと、
前記第1ピラーの後方に配置された第2ピラーと、
前記第1ピラーと前記第2ピラーの間に配置されたビームと、
前記ビームに設けられた補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前後方向において前記第1ピラーおよび前記第2ピラーの少なくとも一方と間隔を空けて配置されて
おり、
前記ビームは、
内板と、
前記内板の外側に配置された外板と、を有し、
前記補強部材は、前記外板と前記内板の間に配置され、前記内板に固定されており、
前記補強部材は、
前記内板から前記外板に向かって形成された板状の第1部分と、
前記第1部分に対向し、前記内板から前記外板に向かって形成された板状の第2部分と、
前記第1部分の前記外板側の先端と前記第2部分の前記外板側の先端の間を繋ぐ板状の第3部分と、を有し、
前記内板には、貫通孔が形成されており、
前記補強部材は、
前記第1部分または前記第2部分の前記外板とは反対側の端に設けられた突出部を更に有し、
前記突出部は、前記貫通孔に挿入されている、
キャブ。
【請求項2】
前記第3部分は、前記外板に対向する平面を有する、
請求項
1に記載のキャブ。
【請求項3】
前記外板は、前記平面に対向し、前記平面と平行な平行部分を有し、
前記平行部分と前記平面の間には所定の間隔が形成されている、
請求項
2に記載のキャブ。
【請求項4】
キャブを備える作業機械であって、
前記キャブは、
第1ピラーと、
前記第1ピラーの後方に配置された第2ピラーと、
前記第1ピラーと前記第2ピラーの間に配置されたビームと、を備え、
前記ビームは、
内板と、
前記内板の外側に配置された外板と、
前記外板と前記内板の間に配置され、前記内板に固定されている補強部材と、を有し、
前記補強部材は、前後方向において前記第1ピラーおよび前記第2ピラーの少なくとも一方と間隔を空けて配置されて
おり、
前記補強部材は、
前記内板から前記外板に向かって形成された板状の第1部分と、
前記第1部分に対向し、前記内板から前記外板に向かって形成された板状の第2部分と、
前記第1部分の前記外板側の先端と前記第2部分の前記外板側の先端の間を繋ぐ板状の第3部分と、を有し、
前記内板には、貫通孔が形成されており、
前記補強部材は、
前記第1部分または前記第2部分の前記外板とは反対側の端に設けられた突出部を更に有し、
前記突出部は、前記貫通孔に挿入されている、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、および作業機械に用いるキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械として、パイプレイヤやブルドーザなどが用いられているが、これらはトラクタをベースとして作業機などを変更することによって製造されており、生産コストの観点から、キャブは複数の車種で共通であるほうが望ましい。
上記パイプレイヤは、履帯式トラクタにカウンターウェイト、ブーム、ウインチを装備した車両であり、石油や天然ガスの輸送のためのパイプラインの敷設工事に利用される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、ブルドーザは、ブレードやリッパなどを備え、土砂のかきおこしや盛土、整地などに用いられる。
作業機械に用いられるキャブには、転倒時にキャブ内の乗員を保護するために、ROPS(rollover protective structure)と呼ばれる転倒時保護構造を備えている。ROPSの規格は、車両重量によって異なっており、車両重量が大きいほうが強度を求められる。
【0004】
このようなROPSには、キャブ自体に保護構造が含まれるROPS一体型タイプと、キャブの周囲を覆うようにフレームを設けて保護構造とした門型フレームタイプとが用いられている。門型フレームは作業機械のオペレータの視界を損ねるので、視界性の観点ではROPS一体型キャブが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブルドーザの重量には車種による幅があり、またパイプレイヤの重量は重いため、ROPS一体型キャブでは、複数種類または複数サイズの作業機械に対して共通のキャブを用いることが難しかった。
本発明では、複数種類または複数サイズの作業機械に対して用いることが可能なROPS一体型キャブおよび作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、発明に係るキャブは、作業機械に用いられるキャブであって、第1ピラーと、第2ピラーと、ビームと、補強部材と、を備える。第2ピラーは、第1ピラーの後方に配置されている。ビームは、第1ピラーと第2ピラーの間に配置されている。補強部材は、ビームに設けられている。
また、他の発明に係る作業機械は、キャブを備える。キャブは、第1ピラーと、第2ピラーと、ビームとを備える。第2ピラーは、第1ピラーの後方に配置されている。ビームは、第1ピラーと第2ピラーの間に配置されている。ビームは、内板と、外板と、補強部材と、を有する。外板は、内板の外側に配置されている。補強部材は、外板と内板の間に配置され、内板に固定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数種類または複数サイズの作業機械に対して用いることが可能なキャブおよび作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施の形態のパイプレイヤの斜視図。
【
図6】
図2のキャブから外板を外した状態を示す図。
【
図7】(a)
図6のB部拡大図、(b)
図7(a)を模式的に示す正面図。
【
図8】(a)
図6のC部拡大図、(b)
図8(a)を模式的に示す正面図。
【
図9】
図3のキャブから外板を外した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる実施の形態のパイプレイヤについて図面を参照しながら以下に説明する。
(パイプレイヤ1の概要構成)
図1は、本実施の形態のパイプレイヤ1の外観を示す斜視図である。
パイプレイヤ1は、車両本体2と、作業機7を有する。車両本体2は、操作者と作業機7の操縦のための機器を内部に入れて保護するためのキャブ10を備える。以下の説明において、前後方向とは、キャブ10の運転席に着座した操作者から見た車体の前後方向を意味する。また、左右方向、或いは、側方とは、パイプレイヤ1の車幅方向を意味し、キャブ10の運転席に着座した操作者から見た左右の方向である。また、
図1において前方向を矢印Fで示し、後ろ方向を矢印Bで示し、右方向を矢印Rで示し、左方向を矢印Lで示している。
【0011】
車両本体2は、エンジンルーム11、キャブ10、一対の走行装置12などを有している。エンジンルーム11には、エンジンが配置される。キャブ10、及び、油圧ポンプなどの機器(図示せず)は、エンジンルーム11の後方に配置されている。走行装置12は、それぞれ履帯12aを有している。エンジンからの駆動力により履帯12aが駆動されることにより、パイプレイヤ1が走行する。
【0012】
作業機7は、カウンターウェイト3と、ブーム4と、フック5と、ウインチ装置6を有する。
カウンターウェイト3は、車両本体2の右側面側に取り付けられている。ブーム4は、車両本体2の左側面側に取り付けられている。すなわち、ブーム4は、カウンターウェイト3と反対側の車両本体2の側部に取り付けられている。ブーム4は、後述のウインチ装置6から張り出されるワイヤロープにより懸架されている。ブーム4の下部は、車両本体2に対して車両本体2の前後方向に沿う軸により揺動可能に取り付けられている。また、ブーム4の先端には、荷であるパイプを吊るためのフック5が吊るされている。
【0013】
ウインチ装置6は、ブーム4を上下に揺動するブームウインチと、フックを昇降移動させるフックウインチとを有する。ブームウインチから引き出されたワイヤロープがブーム4に繋がっている。また、フックウインチから引き出されたワイヤロープがフック5に繋がっている。
【0014】
(キャブ10)
図2は、キャブ10を左側面側から視た斜視図である。
図3は、キャブ10を右側面側から視た斜視図である。
キャブ10は、内部に空間S1を有し、その空間S1には、運転席やステアリング操作のためのハンドルやジョイスティックレバー、ブーム4およびウインチ装置6を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。
キャブ10は、床枠部21と、天井部22と、前面パネル部23と、前方ピラー24と、側面パネル部25と、後方ピラー26と、ビーム27と、前方ピラー28と、側面パネル部29と、後方ピラー30と、ビーム31と、後面パネル部32と、補強部材33、34(後述する
図6、
図9参照)と、を有する。
【0015】
床枠部21は、内部空間S1の下方の面の周縁部に配置されている。天井部22は、平面視において概ね五角形状であり、内部空間S1の上方に配置され、床枠部21に対向する。
前面パネル部23は、内部空間S1の前側に配置され、床枠部21と天井部22の間を繋いでいる。前面パネル部23は、上部に窓が配置される窓枠を有している。
【0016】
次に、キャブ10の左側面側に配置された前方ピラー24と、側面パネル部25と、後方ピラー26と、ビーム27について説明する。
前方ピラー24は、前面パネル部23の後方(矢印B)であって前面パネル部23よりも左方向(矢印L)側に配置されている。前方ピラー24は、床枠部21から上方に向かって形成されており、天井部22に繋がっている。前面パネル部23と前方ピラー24の間には、図示していないがドアが設けられる。
【0017】
側面パネル部25は、前方ピラー24の後方(矢印B)であって、左側面の下部に配置されている。側面パネル部25は、
図3に示すように、鉛直方向に形成された側面部251と、側面部251の上端から左方向(矢印L)に向かって形成された水平部252と、を有する。側面部251は、
図2に示すように、前方ピラー24よりも右方向(矢印R)側(内側ともいえる)に配置されており、水平部252の前端が前方ピラー24に繋がっている。なお、本明細書において「水平」とは、社会通念上、水平と認識できれば良く、厳密な意味ではなく、例えば、組みつけ誤差、機械的な誤差なども含む。また、本明細書において「鉛直」とは、社会通念上、鉛直と認識できれば良く、厳密な意味ではなく、例えば、組みつけ誤差、機械的な誤差なども含む。
【0018】
後方ピラー26は、水平部252の左後方の角から上方に向かって形成されており、天井部22に繋がっている。このように、後方ピラー26は、前方ピラー24よりも後方(矢印B)に配置されている。後方ピラー26は、前方ピラー24と前後方向において対向するように配置されている。
ビーム27は、前方ピラー24と後方ピラー26の間に配置されている。ビーム27は、前方ピラー24の上端と後方ピラー26の上端とを、それぞれと溶接されることにより繋いでおり、天井部22にも溶接により固定されている。なお、ビーム27の構造については、後段にて詳述する。
【0019】
前方ピラー24、側面パネル部25、後方ピラー26、およびビーム27によって囲まれた部分に窓が配置される。
次に、キャブ10の右側面側に配置された前方ピラー28と、側面パネル部29と、後方ピラー30と、ビーム31とについて説明する。
前方ピラー28は、
図3に示すように、前面パネル部23の後方(矢印B)であって前面パネル部23よりも右方向(矢印R)側に配置されている。前方ピラー28は、床枠部21から上方に向かって形成されており、天井部22に繋がっている。前面パネル部23と前方ピラー28の間には、図示していないがドアが設けられる。前方ピラー28は、前方ピラー24と左右方向において対向して配置されている。
【0020】
側面パネル部29は、前方ピラー28の後方(矢印B)であって、右側面の下部に配置されている。側面パネル部29は、
図3に示すように、鉛直方向に形成された側面部291と、側面部291の上端から右方向(矢印R)に向かって形成された水平部292と、を有する。側面部291は、前方ピラー28よりも左方向(矢印L)側(内側ともいえる)に配置されており、水平部292の前端が前方ピラー28に繋がっている。
【0021】
後方ピラー30は、水平部292の右後方の角から上方に向かって形成されており、天井部22に繋がっている。このように、後方ピラー30は、前方ピラー28よりも後方(矢印B)に配置されている。後方ピラー30は、前方ピラー28と前後方向において対向するように配置されている。後方ピラー30は、後方ピラー26と左右方向において対向するように配置されている。
【0022】
ビーム31は、前方ピラー28と後方ピラー30の間に配置されている。ビーム31は、前方ピラー28の上端と、後方ピラー30の上端とを、それぞれと溶接されることにより繋いでおり、天井部22にも溶接により固定されている。なお、ビーム27の構造については、後段にて詳述する。
前方ピラー28、側面パネル部29、後方ピラー30、およびビーム31によって囲まれた部分に窓が配置される。
【0023】
後面パネル部32は、内部空間S1の後側に配置され、床枠部21と天井部22の間を繋いでいる。後面パネル部32は、上部に窓が配置される窓枠を有している。
【0024】
(ビーム27、ビーム31)
ビーム27には、補強部材33(後述する
図4)が配置され、ビーム31には、補強部材34(後述する
図9)が配置されている。
ビーム27とビーム31の内部構造は、概ね同様であるため、ビーム27を例に挙げて説明する。
図4は、
図3のAA´間の矢示断面図である。
図4に示すように、ビーム27は、内板41と、外板42とを有する。
図5は、内板41および補強部材33を示す斜視図である。内板41は、断面視L字形状の部材であり、平板状の部材からプレス成形などによって形成される。内板41は、側壁部411と、水平部412とを有する。側壁部411は、鉛直方向に沿って配置される。水平部412は、側壁部411の下端から左方向(矢印L)(外側ともいえる)に向かって突出するように設けられている。
【0025】
側壁部411には、複数の貫通孔413が形成されている。貫通孔413は、前後方向に長い長孔形状である。
外板42は、内板41の左方向(矢印L)側(外側ともいえる)を覆うように配置されている。外板42は、平板状の部材からプレス成形などによって形成されている。外板42は、
図4に示すように、天井部421と、湾曲部422と、側壁部423と、接続部424とを有する。
【0026】
天井部421は、水平に配置されており、内板41の上端41aと溶接によって接合されている。側壁部423は、内板41の側壁部411の左方向(矢印L)側に、側壁部411と対向して配置されている。湾曲部422は、天井部421の左方向(矢印L)側の端と側壁部423の上端とを繋ぐように、内板41と反対側に向かって凸に湾曲している。接続部424は、側壁部423の下端から右方向(矢印R)方向に曲げられた後に、下方に向かって形成されている。接続部424の右方向(矢印R)側の面と、内板41の水平部412の先端412aが溶接によって接合されている。
このような形状の内板41と外板42によって、内板41と外板42の間に空間S2が形成されている。
【0027】
(補強部材33、34)
ビーム27への補強部材33の配置構造と、ビーム31への補強部材33の配置構造は同様であるため、ビーム27への補強部材の配置構造を例に挙げて説明する。
【0028】
補強部材33は、ビーム27を補強するための部材であってビーム27の長手方向(前後方向)に沿って配置されている。補強部材33は、内板41に固定され、空間S2に配置されている。補強部材33は、
図5に示すように、平板状の部材からプレス成形などによって形成されており、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53と、複数の突出部54と、を有している。
【0029】
第1部分51は、
図4に示すように、内板41から外板42に向かって形成されている。第2部分52は、内板41から外板42に向かって形成されており、第1部分51と平行であって、第1部分51よりも下方に対向して配置されている。第3部分53は、第1部分51の外板42側の端と第2部分52の外板42側の端とを繋ぐように形成されている。第3部分53は、外板42側に平面53aを有し、平面53aは、外板42の側壁部423と平行に形成されている。なお、本実施の形態では、第3部分53は板状であるため、第3部分53自体が、側壁部423と平行に形成されている。また、第3部分53の平面53aは、側壁部423と所定の間隔G1を空けて配置されている。なお、本明細書において「平行」とは、社会通念上、平行と認識できれば良く、厳密な意味ではなく、例えば、組みつけ誤差、機械的な誤差なども含む。
【0030】
複数の突出部54は、第1部分51の第3部分53とは反対側の端51aと、第2部分52の第3部分53と反対側の端52aに設けられており、外板42とは反対側に向かって突出している。複数の突出部54の各々は、第1部分51または第2部分52に沿って形成されている。
複数の突出部54は、複数の貫通孔413に対応する位置に形成されており、貫通孔413に突出部54が挿入される(
図5の点線矢印参照)。このように、本実施の形態ではホゾ構造が用いられており、貫通孔413に突出部54を挿入後、突出部54と、その近傍の内板41の部分とを溶接することによって内板41に補強部材33が固定される。
【0031】
内板41に補強部材33が固定された状態で、内板41が前方ピラー24と後方ピラー26の間に配置され、前方ピラー24と後方ピラー26に溶接によって固定される。その後、補強部材33を覆うように外板42を配置し、外板42と内板41が溶接によって接合される。
図6は、外板42を外した状態のビーム27を示す図である。
図7(a)は、
図6のB部拡大図である。
図7(b)は、間隔G2を示すための
図7(a)の正面模式図である。
図8(a)は、
図6のC部拡大図である。
図8(b)は、間隔G3を示すための
図8(a)の正面模式図である。なお、
図7(a)および
図8(a)では、外板42が二点鎖線で示されている。また、
図7(b)および
図8(b)では、間隔G2、G3の位置を説明するために間隔G2、G3を実際よりも大きく図示している。
【0032】
図7(a)および
図7(b)に示すように、補強部材33の前端33aと前方ピラー24は非接触であり、前端33aと前方ピラー24の間には、所定の間隔G2が形成されている。詳細には、補強部材33の前端33aと、前方ピラー24の後方側の面24aの間に、間隔G2が形成されている。なお、前端33aは、第1部分51、第2部分52および第3部分53の全ての前端を含む。
【0033】
また、
図8(a)および
図8(b)に示すように、補強部材33の後端33bと後方ピラー26は非接触であり、後端33bと後方ピラー26の間には、所定の間隔G3が形成されている。詳細には、補強部材33の後端33bと、後方ピラー26の前方側の面26aの間に、間隔G3が形成されている。後端33bは、第1部分51、第2部分52および第3部分53の全ての後端を含む。
【0034】
図9は、外板42を外したビーム31を示す図である。図に示すように、ビーム31の内部には補強部材34が取り付けられている。ビーム31および補強部材34の構成は、ビーム27および補強部材33の構成と概ね同様であり、補強部材34は、ビーム31の内部に配置されている。ビーム31は内板41及び外板42を有し、補強部材34は内板41に固定されている。また、補強部材34の前端と前方ピラー28は非接触であり所定の間隔が形成されている。また、補強部材34の後端と後方ピラー30は非接触であり所定の間隔が形成されている。
【0035】
<特徴等>
(1)
本実施の形態のキャブ10は、パイプレイヤ1(作業機械の一例)に用いられるキャブ10であって、前方ピラー24、28(第1ピラーの一例)と、後方ピラー26、30(第2ピラーの一例)と、ビーム27、31(ビームの一例)と、補強部材33、34と、を備える。後方ピラー26、30は、前方ピラー24、28の後方に配置されている。ビーム27は、前方ピラー24と後方ピラー26の間に配置されている。ビーム31は、前方ピラー28と後方ピラー30の間に配置されている。補強部材33は、ビーム27に設けられている。補強部材34は、ビーム31に設けられている。
【0036】
このように、キャブ10のビーム27、31に補強部材33、34を設けることによって、キャブ10をパイプレイヤおよび重量の重いブルドーザなどに用いることができる。また、重量の軽いブルドーザなどに用いる際には、補強部材33、34を取り付けないことにより、キャブ10の重量を軽くすることが出来る。
以上のように、種類の異なる作業機械やサイズの異なる作業機械に用いることが可能なキャブを提供することができる。
【0037】
(2)
本実施の形態のキャブ10では、ビーム27、31は、内板41と、外板42と、を有する。外板42は、内板41の外側に配置されている。補強部材33、34は、外板42と内板41の間に配置され、内板41に固定されている。
これによって、転倒時に外板42が補強部材33、34に当接するため、キャブ10の強度を向上することができる。
【0038】
(3)
本実施の形態のキャブ10では、補強部材33、34は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53と、を有する。第1部分51は、板状であって、内板41から外板42に向かって形成されている。第2部分52は、板状であって、第1部分51よりも下方に対向して配置され、内板41から外板42に向かって形成されている、第3部分53は、板状であって、第1部分51の外板42側の先端と第2部分52の外板42側の先端の間を繋ぐ。
このように、補強部材33、34が内板41から外板42に突出するように構成されており、転倒時に外板42が補強部材33、34に当たるため、キャブ10の強度を向上することができる。
【0039】
(4)
本実施の形態のキャブ10では、補強部材33は、前方ピラー24および後方ピラー26の少なくとも一方と間隔G2または間隔G3を空けて配置されている。また、補強部材34は、前方ピラー28および後方ピラー30の少なくとも一方と間隔を空けて配置されている。
【0040】
補強部材33、34は、転倒時にビーム27、31に加わる外力に対して補強を行うための部材であるため、ピラーが受けた力が出来るだけ伝達されないほうが好ましい。仮にピラーからの力も受けようとした場合、補強部材自体の強度を更に上げる必要があり、重量が増加する。そのため、前方ピラー24および後方ピラー26の少なくとも一方と補強部材33の間に間隔を形成して非接触とし、前方ピラー28および後方ピラー30の少なくとも一方と補強部材34の間に間隔を形成して非接触とすることにより、転倒時などに前方ピラー24、28または後方ピラー26、30が受ける力が直接補強部材33、34に伝達されないようにすることができる。
【0041】
(5)
本実施の形態のキャブ10では、第3部分53は、外板42に対向する平面53aを有する。
これによって、外力の衝撃を面で受けることができ、強度を向上することができる。
【0042】
(6)
本実施の形態のキャブ10では、外板42は、平面53aに対向し、平面53aと平行な側壁部423(平行部分の一例)を有する。側壁部423と平面53aの間には所定の間隔G1が形成されている。
例えば、補強部材33、34が外板42に当接するような設計の場合、寸法誤差によって補強部材33、34が外板42の取り付け位置よりも突出すると、外板42を取り付けることができなくなるおそれがある。このため、寸法誤差を考慮した場合であっても外板42と補強部材33、34の間に所定の間隔を生じるように設計することによって、製造時の寸法誤差に対応することができる。
【0043】
(7)
本実施の形態のキャブ10では、内板41には、貫通孔413が形成されている。補強部材33、34は、第1部分51または第2部分52の外板42とは反対側の端に設けられた突出部54を有する。突出部54は、貫通孔413に挿入されている。
このように、ホゾ構造を用いることにより、補強部材33、34の突出部54と内板41を溶接すれば良いため、製造が容易となる。
また、外板42に貫通孔を形成して補強部材を固定するよりも内板41に貫通孔413を形成することにより、突出部54がキャブ10の内側に隠れるため、外観上好ましい。
【0044】
(8)
本実施の形態のパイプレイヤ1(作業機械の一例)は、キャブ10を備える。キャブ10は、前方ピラー24、28(第1ピラーの一例)と、後方ピラー26、30(第2ピラーの一例)と、ビーム27、31(ビームの一例)とを備える。後方ピラー26は、前方ピラー24の後方に配置されている。後方ピラー30は、前方ピラー28の後方に配置されている。ビーム27は、前方ピラー24と後方ピラー26の間に配置されている。ビーム31は、前方ピラー28と後方ピラー30の間に配置されている。ビーム27は、内板41と、外板42と、補強部材33と、を有する。ビーム31は、内板41と、外板42と、補強部材34とを有する。外板42は、内板41の外側に配置されている。補強部材33は、外板42と内板41の間に配置され、内板41に固定されている。補強部材34は、外板42と内板41の間に配置され、内板41に固定されている。
【0045】
このように、キャブ10のビーム27、31に補強部材33、34を設けることによって、キャブ10をパイプレイヤおよび重量の重いブルドーザなどに用いることができる。また、重量の軽いブルドーザなどに用いる際には、補強部材33、34を取り付けないことにより、キャブ10の重量を軽くすることが出来る。
以上のように、種類の異なる作業機械やサイズの異なる作業機械に用いることが可能なキャブを提供することができる。
【0046】
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施の形態では、補強部材33、34は、内板41に固定されているが外板42の内側面に固定されていてもよい。
【0047】
(B)
上記実施の形態では、ホゾ構造を用いて補強部材33、34を内板41に固定しているが、このような構造に限らなくても良い。例えば、補強部材33、34の第1部分51の端51aが上方に向かって曲げられ、第2部分52の端52aが下方に向かって曲げられ、夫々の曲げられた部分が内板41の表面と溶接されてもよい。
【0048】
(C)
上記実施の形態では、補強部材33は、前方ピラー24と後方ピラー26の双方に非接触であるが、少なくとも一方に非接触であればピラーに受けた力を逃がすことができるため、前方ピラー24と後方ピラー26のいずれか一方に接触していてもよい。
また、補強部材34も同様であり、前方ピラー28と後方ピラー30の双方に非接触であるが、前方ピラー28と後方ピラー30のいずれか一方に接触していてもよい。
【0049】
(D)
上記実施の形態では、第1部分51の端51aと第2部分52の端52aの双方に突出部54が形成されているが、内板41に固定さえできれば、どちらか一方のみに設けられていてもよい。また、突出部54の数も複数に限らず、内板41に固定さえできれば1つであっても良い。
【0050】
(E)
上記実施の形態では、左側面側のビーム27と右側面側のビーム31の双方に補強部材33、34が設けられているが、ROPS試験を満たすことができれば、どちらか一方にのみ設けられていてもよい。
(F)
上記実施の形態では、本実施の形態のキャブ10を用いる作業機械の一例としてパイプレイヤを例に挙げて説明したが、パイプレイヤに限らなくても良く、例えば、ブルドーザ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のキャブは、複数種類または複数サイズの作業機械において用いることが可能であり、パイプレイヤ、ブルドーザ等として有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 :キャブ
24、28 :前方ピラー(第1ピラーの一例)
26、30 :後方ピラー(第2ピラーの一例)
27、31 :ビーム
33、34 :補強部材