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特許7195116銅ベース触媒、その製造方法、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】銅ベース触媒、その製造方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20221216BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20221216BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20221216BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20221216BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221216BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20221216BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221216BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20221216BHJP
   C07C 45/29 20060101ALI20221216BHJP
   C07C 49/17 20060101ALI20221216BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221216BHJP
【FI】
B01J23/83 Z
B01J23/78 Z
B01J23/80 Z
B01J37/00 D
B01J37/08
B01J37/03 B
B01J37/02 101C
B01J37/18
C07C45/29
C07C49/17 A
C07B61/00 300
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018213510
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2019089060
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】201711119001.8
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201711119002.2
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518405289
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司大連石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】喬凱
(72)【発明者】
【氏名】周峰
(72)【発明者】
【氏名】蘇傑
(72)【発明者】
【氏名】馬会霞
(72)【発明者】
【氏名】▲ジャイ▼慶銅
(72)【発明者】
【氏名】張淑梅
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-503471(JP,A)
【文献】特表2017-520522(JP,A)
【文献】特開平05-168928(JP,A)
【文献】特開2005-211881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 45/29
C07C 49/17
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と、
元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属およびランタン系列金属から選ばれる少なくとも1種類の補助金属と、
アルカリ金属と、
任意に用いるバインダーと、を含む、脱水素化のための銅ベース触媒であって、
式(II)で示すケトン類化合物および式(II’)で示すケトン類化合物から選ばれる少なくとも1種類のケトン類添加剤と
任意に用いる溶媒と、をさらに含む、脱水素化のための銅ベース触媒。
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
R1-C(=O)-CH(=O)-R2 (II’)
(式(II)および式(II’)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す
【請求項2】
前記第IIA族金属は、MgおよびCaから選ばれる少なくとも1つであり、および/または、
前記第VIII族非貴金属は、FeおよびNiから選ばれる少なくとも1つであり、および/または、
前記第VIB族金属は、Crであり、および/または、
前記第VIIB族金属は、Mnであり、および/または、
前記第IIB族金属は、Znであり、および/または、
前記ランタン系列金属は、Ybであり、および/または、
前記無機バインダーは、難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれ、
および/または、
前記ケトン類添加剤は、アセトインであり、および/または、
前記溶媒は、C1~6のアルコールから選ばれる少なくとも1つであり、および/または、
前記R1基およびR2基は、それぞれ独立してC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す、請求項1に記載の銅ベース触媒。
【請求項3】
前記バインダーは、アルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる1つ以上であり、および/または、
前記溶媒は、メタノールおよびエタノールから選ばれる少なくとも1つであり、および/または、
前記R1基およびR2基は、それぞれ独立してメチル基またはエチル基を表す、請求項1に記載の銅ベース触媒。
【請求項4】
前記銅ベース触媒は、該銅ベース触媒の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%と、前記少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%と、前記アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%と、前記バインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%と、を含み、
前記銅ベース触媒100重量部に対し、前記ケトン類添加剤が0.1重量部以上、且つ、前記溶媒が30重量部以下である、請求項1に記載の銅ベース触媒。
【請求項5】
前記銅ベース触媒は、前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)40~50重量%と、前記少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)30~45重量%または35~45重量%と、前記アルカリ金属(酸化物で計算)1~5重量%と、前記バインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)5~15重量%と、を含み、
前記銅ベース触媒100重量部に対し、前記ケトン類添加剤が1~10重量部または1~5重量部、且つ、前記溶媒が5重量部以下または3重量部以下である、請求項4に記載の銅ベース触媒。
【請求項6】
(i)触媒前駆体の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%と、元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属およびランタン系列金属から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%と、アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%と、任意に用いるバインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%と、を含む触媒前駆体を製造するステップ(1)と、
式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に接触させて銅ベース触媒を得るステップ(2-1)と、
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す
を含む、脱水素化のための銅ベース触媒の製造方法;または、
(ii)触媒前駆体の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%と、元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属およびランタン系列金属から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%と、任意に用いるアルカリ金属と、任意に用いるバインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%と、を含む触媒前駆体を製造するステップ(1’)と、
式(II)で示すケトン類化合物と、溶媒と、任意に用いるアルカリ金属前駆体とからなる混合物を、前記触媒前駆体に接触させて銅ベース触媒を得るステップ(2-2)と、
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す
任意に乾燥を行った後、前記銅ベース触媒を焼成する任意のステップ(2-3)と、を含み、
ステップ(1’)におけるアルカリ金属(酸化物で計算)の使用量と、ステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量との合計量は、前記銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、前記銅ベース触媒の総重量に基づいて1~10重量%となる量である脱水素化のための銅ベース触媒の製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)またはステップ(1’)において、前記触媒前駆体の総重量に基づいて、前記触媒前駆体は、銅(CuOで計算)40~50重量%、Mg、Ca、Fe、Ni、Cr、Mn、ZnおよびYbから選ばれる少なくとも1つ(酸化物で計算)30~45重量%または35~45重量%、アルカリ金属(酸化物で計算)1~5重量%と、難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー5~15重量%と、を含み、および/または、
前記ケトン類化合物は、アセトインであり、および/または、
式(II)中の前記R1基およびR2基は、それぞれ独立してC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、および/または、
ステップ(2-2)において、前記溶媒は、C1~6のアルコールから選ばれる少なくとも1つであり、および/または、
前記接触は、超音波の存在下であり、および/または、
ステップ(2-3)において、ステップ(1’)における前記アルカリ金属(酸化物で計算)の前記使用量と、ステップ(2-2)における前記アルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の前記使用量との合計量は、前記銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、前記銅ベース触媒の総重量に基づいて1~5重量%となる量であり、および/または、
ステップ(2-2)における前記アルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の前記使用量は0を超える、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記バインダーは、アルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる1種類以上であり、および/または、
前記溶媒は、メタノールおよびエタノールから選ばれる少なくとも1つであり、および/または、
ステップ(2-2)における前記アルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量は、前記銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~5重量%となる量である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(2-1)において、前記触媒前駆体100重量部に対し、前記式(II)で示すケトン類化合物が0.1重量部以上であるか、または、
前記ステップ(2-2)において、前記触媒前駆体100重量部に対し、前記式(II)で示すケトン類化合物が0.1重量部以上、且つ、前記溶媒が30重量部以下である、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(2-1)において、前記触媒前駆体100重量部に対し、前記式(II)で示す前記ケトン類化合物が1~10重量部または1~5重量部であり、および/または、
前記ステップ(2-2)において、前記触媒前駆体100重量部に対し、前記式(II)で示す前記ケトン類化合物が1~10重量部または1~5重量部であり、および/または、
前記溶媒が5重量部以下または3重量部以下である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(1)において、銅前駆体と、補助金属前駆体と、アルカリ金属前駆体と、任意に用いるバインダー前駆体とを共沈させることにより前記触媒前駆体を得るか、または、
前記ステップ(1’)において、銅前駆体と、補助金属前駆体と、任意に用いるアルカリ金属前駆体と、任意に用いるバインダー前駆体とを共沈させることにより前記触媒前駆体を得る、請求項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(2-1)は、
温度100~200℃および圧力0.1~5MPaの条件下で、前記式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に2~60時間、接触させるステップ(2-1-1)を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップ(2-1)は、
温度100~150℃および圧力0.1~1MPaの条件下で、前記式(II)で示すケトン類化合物を気体またはガス混合物の形式で前記触媒前駆体に24~48時間接触させるステップ(2-1-1)を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(2-2)は、
前記混合物を用いて前記触媒前駆体を5~24時間浸漬するステップ(2-2-1)と、
温度50~95℃の条件下で、前記溶媒の少なくとも一部を去し、前記銅ベース触媒を得るステップ(2-2-2)と、
温度150~350℃および圧力0.1~5MPaの条件下で、前記銅ベース触媒を2~60時間、エージングする任意のステップ(2-2-3)と、を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(2-2)は、
前記混合物を用いて前記触媒前駆体を超音波の存在下で5~10時間浸漬するステップ(2-2-1)と、
温度65~70℃の条件下で、前記溶媒の少なくとも80体積%以上、90体積%以上、または98体積%以上、または略全部を除去し、前記銅ベース触媒を得るステップ(2-2-2)と、
温度300~350℃および圧力0.1~1MPaもしくは系内で自然に発生する圧力の条件下で、前記銅ベース触媒を24~48時間、エージングする任意のステップ(2-2-3)と、を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
銅塩とアルミニウム塩と補助金属塩とを含有する水溶液A’を調製すると共に、沈殿剤含有水溶液B’を調製し、連続撹拌の条件下で溶液A’および溶液B’を同時に滴下しながら沈殿温度70~95℃、pH8~9となるように制御し、滴下完了後、エージング、濾過を経て沈殿物C’を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた沈殿物C’を乾燥、成形、焼成することで触媒前駆体D’を得るステップ(2)と、
計量されたアルカリ金属含有水酸化物を、調製されたアセトイン含有メタノール溶液に添加して調製した溶液E’に、計量されたステップ(2)で得られた触媒前駆体D’を添加し、超音波の条件下で5~10時間浸漬させ、浸漬完了後、65~70℃下で溶液E’中のメタノールを完全に蒸発させて触媒前駆体F’を得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた触媒前駆体F’を密閉容器内に投入し、300~350℃の条件下で24~48時間静置して触媒前駆体G’を得るステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた触媒前駆体G’を乾燥、焼成することで最終的触媒H’を得るステップ(5)と、を含む、脱水素化のための銅ベース触媒の製造方法。
【請求項17】
銅ベース触媒の存在下で、式(I)で示す2価アルコールを、式(II)で示すヒドロキシケトン化合物に転化させる転化ステップを含む、ヒドロキシケトン化合物の製造方法であって、
R1-CH(OH)-CH(OH)-R2 (I)
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(I)および式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す
前記銅ベース触媒は、
(1)前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%と、元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属およびランタン系列金属から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%と、アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%と、任意に用いるバインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%と、を含む銅ベース触媒Aと、
(2)請求項1に記載の銅ベース触媒である銅ベース触媒Bと、
(3)請求項または16に記載の製造方法により製造される銅ベース触媒である銅ベース触媒Cと、
から選ばれる少なくとも1つである、製造方法。
【請求項18】
前記転化ステップを行う前に、温度150~350℃および圧力0.1~5MPaの条件下で前記銅ベース触媒Aを、前記式(II)で示すヒドロキシケトン化合物に2~60時間、接触させるステップ、または、
前記転化ステップを行う前に、温度150~350℃および圧力0.1~5MPaの条件下で前記銅ベース触媒Bまたは前記銅ベース触媒Cを、2~60時間、エージングするステップをさらに含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記転化ステップを行う前に、温度300~350℃および圧力0.1~1MPaもしくは系内で自然に発生する圧力の条件下で前記銅ベース触媒Aを、前記式(II)で示すヒドロキシケトン化合物に24~48時間、接触させるステップ、および/または、
前記転化ステップを行う前に、温度300~350℃および圧力0.1~1MPaもしくは系内で自然に発生する圧力の条件下で前記銅ベース触媒Bまたは前記銅ベース触媒Cを、24~48時間、エージングするステップを含む、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記転化ステップを行う前に、水素ガスの存在下、温度200~400℃および圧力0.1~10MPaの条件下で前記銅ベース触媒を還元するステップをさらに含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項21】
前記転化ステップを行う前に、水素ガスの存在下、温度200~300℃および圧力0.1~1MPaの条件下で前記銅ベース触媒を還元するステップをさらに含む、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記転化ステップの反応条件は、
希釈剤が任意に存在し、反応温度が200~300℃、反応圧力が0.01~0.5MPa、液体の空間速度が0.5~10h-1である条件、または、
前記希釈剤が存在せず、反応温度が250~270℃、反応圧力が0.01~0.2MPa、液体の空間速度が1.5~5h-1である条件、または、
前記希釈剤が存在し、反応温度が270~300℃、反応圧力が0.01~0.2MPa、液体の空間速度が5~10h-1、且つ、前記希釈剤と前記式(I)で示す2価アルコールとのモル比が0.1~3である条件を含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項23】
銅ベース触媒の、2,3-ブタンジオールの脱水素化触媒もしくは部分的脱水素化触媒としての用途であって、
前記銅ベース触媒は、
)請求項1に記載の銅ベース触媒である銅ベース触媒Bと、
)請求項または16に記載の製造方法により製造される銅ベース触媒である銅ベース触媒Cと、
から選ばれる少なくとも1つである、用途。
R1-CH(OH)-CH(OH)-R2 (I)
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(I)および式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ベース触媒、特に銅ベース脱水素化触媒に関する。また、本発明は、該銅ベース触媒の製造方法、および、アセトイン等のヒドロキシケトン化合物の製造における、該銅ベース触媒の脱水素化触媒としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトイン(別名:3-ヒドロキシブタノン)は、トウモロコシ、ブドウ、リンゴ、畜肉類等の様々な食品に含まれる天然成分であり、幅広い用途の食用香料として人々に好まれる甘美な香りを有するため、主にバター型、乳製品型、ヨーグルト型およびイチゴ型の香料の生産に用いられている。また、アセトインは、多くの薬物の中間体でもある。
【0003】
現在、アルドール縮合法が中国食品添加剤基準のアセトインの主要生産方法となっている。しかし、当該方法に用いられるチアゾール塩触媒は、高価な上、製品から効果的に分離することが困難であるため、市販のアセトイン食品添加剤には、多からず少なからず、一定量の硫黄や窒素等の有害な不純物が含まれてしまう。例えば特許文献1には、アセトアルデヒドを原料として用い、ハロゲン化チアゾール塩を触媒として用いて、アセトアルデヒドをアシロイン縮合反応させてアセトインを生成することが開示されている。また、非アルドール縮合法として、非特許文献1には、2,3-ブタンジオンを原料とし、水素添加触媒の作用下にてアセトインを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】CN1562934
【非特許文献】
【0005】
【文献】『江蘇化工』,2001,29(2):29~31;張小舟
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術のアセトイン製造方法は、有害な不純物の含量、または工業上の実施等に関して、まだ改善の余地が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術を基に鋭意に研究した結果、新規の銅ベース触媒を見出した。また、さらなる研究を経たところ、該銅ベース触媒を脱水素化触媒として用いてアセトインを製造することで、従来技術に存在する前記課題の少なくとも1つを解決可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
具体的には、本発明は以下の態様の構成に関する。
【0009】
〔1〕銅と、元素周期表における第IIA族金属(好ましくはMgおよびCaから選ばれる少なくとも1つ)、第VIII族非貴金属(好ましくはFeおよびNiから選ばれる少なくとも1つ)、第VIB族金属(好ましくはCr)、第VIIB族金属(好ましくはMn)、第IIB族金属(好ましくはZn)およびランタン系列金属(好ましくはYb(イッテルビウム))から選ばれる少なくとも1種類の補助金属と、アルカリ金属と、任意に用いるバインダー(好ましくは難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、より好ましくはアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)(羊甘土)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ)と、を含む銅ベース触媒であって、
式(II)で示すケトン類化合物および式(II’)で示すケトン類化合物から選ばれる少なくとも1種類のケトン類添加剤(好ましくはアセトイン)と、
任意に用いる溶媒(好ましくはC1~6のアルコールから選ばれる少なくとも1つ、より好ましくはC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価アルコールから選ばれる少なくとも1つ、さらに好ましくはメタノールおよびエタノールから選ばれる少なくとも1つ)と、をさらに含む銅ベース触媒:
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
R1-C(=O)-CH(=O)-R2 (II’)
(式(II)および式(II’)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、好ましくはC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、より好ましくはメチル基またはエチル基を表す)。
【0010】
〔2〕前記銅ベース触媒は、該銅ベース触媒の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%(好ましくは40~50重量%)と、前記少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%(好ましくは30~45重量%または35~45重量%)と、前記アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%(好ましくは1~5重量%)と、前記バインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%(好ましくは5~15重量%)と、を含み、
前記銅ベース触媒100重量部に対し、前記ケトン類添加剤が0.1重量部以上(好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部)、且つ、前記溶媒が30重量部以下(好ましくは10重量部以下、5重量部以下または3重量部以下)である、前記何れか一態様に記載の銅ベース触媒。
【0011】
〔3〕(i)触媒前駆体の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%(好ましくは40~50重量%)と、元素周期表における第IIA族金属(好ましくはMgおよびCaから選ばれる少なくとも1つ)、第VIII族非貴金属(好ましくはFeおよびNiから選ばれる少なくとも1つ)、第VIB族金属(好ましくはCr)、第VIIB族金属(好ましくはMn)、第IIB族金属(好ましくはZn)およびランタン系列金属(好ましくはYb)から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%(好ましくは30~45重量%または35~45重量%)と、アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%(好ましくは1~5重量%)と、任意に用いるバインダー(好ましくは難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、より好ましくはアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ)(乾ベース;酸化物で計算)0~30重量%(好ましくは5~15重量%)と、を含む触媒前駆体を製造するステップ(1)と、
式(II)で示すケトン類化合物(好ましくはアセトイン)を前記触媒前駆体に接触させて銅ベース触媒を得るステップ(2-1)と、
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、好ましくはC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、より好ましくはメチル基またはエチル基を表す)
を含む、銅ベース触媒の製造方法;または、
(ii)触媒前駆体の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%(好ましくは40~50重量%)と、元素周期表における第IIA族金属(好ましくはMgおよびCaから選ばれる少なくとも1つ)、第VIII族非貴金属(好ましくはFeおよびNiから選ばれる少なくとも1つ)、第VIB族金属(好ましくはCr)、第VIIB族金属(好ましくはMn)、第IIB族金属(好ましくはZn)およびランタン系列金属(好ましくはYb)から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%(好ましくは30~45重量%または35~45重量%)と、任意に用いるアルカリ金属と、任意に用いるバインダー(好ましくは難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、より好ましくはアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ)(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%(好ましくは5~15重量%)と、を含む該触媒前駆体を製造するステップ(1’)と、
式(II)で示すケトン類化合物(好ましくはアセトイン)と、溶媒(好ましくはC1~6のアルコールから選ばれる少なくとも1つ、より好ましくはC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価アルコールから選ばれる少なくとも1つ、さらに好ましくはメタノールおよびエタノールから選ばれる少なくとも1つ)と、任意に用いるアルカリ金属前駆体とからなる混合物を、(好ましくは超音波の存在下で)前記触媒前駆体に接触させて銅ベース触媒を得るステップ(2-2)と、
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、好ましくはC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、より好ましくはメチル基またはエチル基を表す)
任意に乾燥を行った後、前記銅ベース触媒を焼成する任意のステップ(2-3)と、を含み、
ステップ(1’)におけるアルカリ金属(酸化物で計算)の使用量と、ステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量との合計量は、前記銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~10重量%(好ましくは1~5重量%)となる量であり、
好ましくはステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量は0を超え、より好ましくはステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量は、前記銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~10重量%(好ましくは1~5重量%)となる量である、銅ベース触媒の製造方法。
【0012】
〔4〕前記ステップ(2-1)において、前記触媒前駆体100重量部に対し、前記式(II)で示すケトン類化合物が0.1重量部以上(好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部)であるか、または、
前記ステップ(2-2)において、前記触媒前駆体100重量部に対し、前記式(II)で示すケトン類化合物が0.1重量部以上(好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部)、且つ、前記溶媒が30重量部以下(好ましくは10重量部以下、5重量部以下または3重量部以下)である、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0013】
〔5〕前記ステップ(1)において、銅前駆体と、補助金属前駆体と、アルカリ金属前駆体と、任意に用いるバインダー前駆体とを共沈させることにより前記触媒前駆体を得るか、または、
前記ステップ(1’)において、銅前駆体と、補助金属前駆体と、任意に用いるアルカリ金属前駆体と、任意に用いるバインダー前駆体とを共沈させることにより前記触媒前駆体を得る、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0014】
〔6〕前記ステップ(2-1)は、
温度100~200℃(好ましくは100~150℃)および圧力0.1~5MPa(好ましくは0.1~1MPa)の条件下で、前記式(II)で示すケトン類化合物を(好ましくは気体またはガス混合物の形式で)前記触媒前駆体に2~60時間(好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間)、接触させるステップ(2-1-1)を含む、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0015】
〔7〕前記ステップ(2-2)は、
前記混合物を用いて前記触媒前駆体を(好ましくは超音波の存在下で)5~24時間(好ましくは5~10時間)浸漬するステップ(2-2-1)と、
温度50~95℃(好ましくは65~70℃)の条件下で、前記溶媒の少なくとも一部(例えば10体積%以上、30体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、98体積%以上、または略全部)を除去(例えば蒸発)し、前記銅ベース触媒を得るステップ(2-2-2)と、
温度150~350℃(好ましくは300~350℃)および圧力0.1~5MPa(好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは系内で自然に発生する圧力)の条件下で、前記銅ベース触媒を2~60時間(好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間)、エージングする任意のステップ(2-2-3)と、を含む、前記何れか一態様に記載の製造方法。
【0016】
〔8〕銅ベース触媒の存在下で、式(I)で示す2価アルコール(好ましくは2,3-ブタンジオール)を、式(II)で示すヒドロキシケトン化合物(好ましくはアセトイン)に転化させるステップ(以下、「転化ステップ」と称する)を含む、ヒドロキシケトン化合物(特にアセトイン)の製造方法であって、
R1-CH(OH)-CH(OH)-R2 (I)
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(I)および式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、好ましくはC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、より好ましくはメチル基またはエチル基を表す)
前記銅ベース触媒は、
(1)前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%(好ましくは40~50重量%)と、元素周期表における第IIA族金属(好ましくはMgおよびCaから選ばれる少なくとも1つ)、第VIII族非貴金属(好ましくはFeおよびNiから選ばれる少なくとも1つ)、第VIB族金属(好ましくはCr)、第VIIB族金属(好ましくはMn)、第IIB族金属(好ましくはZn)およびランタン系列金属(好ましくはYb)から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%(好ましくは30~45重量%または35~45重量%)と、アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%(好ましくは1~5重量%)と、任意に用いるバインダー(好ましくは難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、より好ましくはアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ)(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%(好ましくは5~15重量%)と、を含む銅ベース触媒Aと、
(2)前記何れか一態様に記載の銅ベース触媒である銅ベース触媒Bと、
(3)前記何れか一態様に記載の製造方法により製造される銅ベース触媒である銅ベース触媒Cと、から選ばれる少なくとも1つである、製造方法。
【0017】
〔9〕前記転化ステップを行う前に、温度150~350℃(好ましくは300~350℃)および圧力0.1~5MPa(好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは系内で自然に発生する圧力)の条件下で前記銅ベース触媒Aを、前記式(II)で示すヒドロキシケトン化合物(好ましくはアセトイン)に2~60時間(好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間)、接触させるステップ、または、
前記転化ステップを行う前に、温度150~350℃(好ましくは300~350℃)および圧力0.1~5MPa(好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは系内で自然に発生する圧力)の条件下で前記銅ベース触媒Bまたは前記銅ベース触媒Cを、2~60時間(好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間)、エージングするステップをさらに含む、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0018】
〔10〕前記転化ステップを行う前に、水素ガスの存在下、温度200~400℃(好ましくは200~300℃)および圧力0.1~10MPa(好ましくは0.1~1MPa)の条件下で前記銅ベース触媒を還元するステップをさらに含む、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0019】
〔11〕前記転化ステップの反応条件は、
希釈剤(好ましくは水素ガス、窒素ガスおよび水蒸気から選ばれる少なくとも1つ、好ましくは水素ガス)が任意に存在し、反応温度が200~300℃、反応圧力が0.01~0.5MPa、液体の空間速度が0.5~10h-1である条件、または、
前記希釈剤が存在せず、反応温度が250~270℃、反応圧力が0.01~0.2MPa、液体の空間速度が1.5~5h-1である条件、または、
前記希釈剤が存在し、反応温度が270~300℃、反応圧力が0.01~0.2MPa、液体の空間速度が5~10h-1、且つ、前記希釈剤と前記式(I)で示す2価アルコールとのモル比が0.1~3(好ましくは0.1~1)である条件を含む、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0020】
〔12〕銅ベース触媒の、脱水素化触媒(特に部分的脱水素化触媒、さらに特に2,3-ブタンジオールの脱水素化触媒もしくは部分的脱水素化触媒)としての用途であって、
前記銅ベース触媒は、
(1)前記銅ベース触媒の総重量に基づいて、銅(CuOで計算)30~60重量%(好ましくは40~50重量%)と、元素周期表における第IIA族金属(好ましくはMgおよびCaから選ばれる少なくとも1つ)、第VIII族非貴金属(好ましくはFeおよびNiから選ばれる少なくとも1つ)、第VIB族金属(好ましくはCr)、第VIIB族金属(好ましくはMn)、第IIB族金属(好ましくはZn)およびランタン系列金属(好ましくはYb)から選ばれる少なくとも1種類の補助金属(酸化物で計算)10~45重量%(好ましくは30~45重量%または35~45重量%)と、アルカリ金属(酸化物で計算)1~10重量%(好ましくは1~5重量%)と、任意に用いるバインダー(好ましくは難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、より好ましくはアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、アルミニウムシリケート、ベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンから選ばれる少なくとも1種類の無機バインダー、さらに好ましくはアルミナ)(乾燥ベース;酸化物で計算)0~30重量%(好ましくは5~15重量%)と、を含む銅ベース触媒Aと、
(2)前記何れか一態様に記載の銅ベース触媒である銅ベース触媒Bと、
(3)前記何れか一態様に記載の製造方法により製造される銅ベース触媒である銅ベース触媒Cと、から選ばれる少なくとも1つである、用途;
R1-CH(OH)-CH(OH)-R2 (I)
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
(式(I)および式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、好ましくはC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表し、より好ましくはメチル基またはエチル基を表す)。
【0021】
〔13〕アセトインの製造に用いられ、銅、補助金属およびアルカリ金属を含む触媒であって、
最終的な触媒には、40~50重量%の酸化銅と、35~45重量%の補助金属含有酸化物と、1~5重量%のアルカリ金属含有酸化物と、5~15重量%のアルミナとが含まれ、
前記補助金属は、イッテルビウム、ニッケル、亜鉛元素から選ばれる少なくとも1つである、触媒。
【0022】
〔14〕前記補助金属含有酸化物は、三酸化二イッテルビウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛のうちの1つまたは複数である、前記または下記何れか一態様に記載の触媒。
【0023】
〔15〕前記アルカリ金属含有酸化物は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウムのうちの1つまたは複数である、前記何れか一態様に記載の触媒。
【0024】
〔16〕前記何れか一態様に記載の触媒の製造方法であって、
銅塩とアルミニウム塩と補助金属塩とを含有する水溶液A’を調製すると共に、沈殿剤含有水溶液B’を調製し、連続撹拌の条件下で溶液A’および溶液B’を同時に滴下しながら沈殿温度70~95℃、pH8~9となるように制御し、滴下完了後、エージング、濾過を経て沈殿物C’を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた沈殿物C’を乾燥、成形、焼成することで触媒前駆体D’を得るステップ(2)と、
計量されたアルカリ金属含有水酸化物を、調製されたアセトイン含有メタノール溶液に添加して調製した溶液E’に、計量されたステップ(2)で得られた触媒前駆体D’を添加し、超音波の条件下で5~10時間浸漬させ、浸漬完了後、65~70℃下で溶液E’中のメタノールを完全に蒸発させて触媒前駆体F’を得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた触媒前駆体F’を密閉容器内に投入し、300~350℃の条件下で24~48時間静置して触媒前駆体G’を得るステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた触媒前駆体G’を乾燥、焼成することで最終的触媒H’を得るステップ(5)と、を含む製造方法。
【0025】
〔17〕ステップ(1)において、前記銅塩は、硝酸銅、塩化銅、硫酸銅から選ばれる1つまたは複数であり、前記アルミニウム塩は、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムから選ばれる1つまたは複数であり、前記補助金属塩は、イッテルビウム含有、ニッケル含有、亜鉛含有の、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩から選ばれる1つまたは複数である、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0026】
〔18〕ステップ(1)において、前記銅塩は、硝酸銅であり、前記アルミニウム塩は、硝酸アルミニウムであり、前記補助金属塩は、イッテルビウム含有、ニッケル含有、亜鉛含有の硝酸塩である、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0027】
〔19〕本発明に係る方法のステップ(1)において、前記沈殿剤は、アルカリ金属含有の、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩から選ばれる1つまたは複数であり、前記沈殿剤含有水溶液の濃度は、アルカリ金属イオンのモル濃度として0.1~1Mである、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0028】
〔20〕ステップ(1)において、前記沈殿剤は、アルカリ金属含有の、水酸化物および炭酸水素塩から構成された混合物であり、前記沈殿剤含有水溶液の濃度は、アルカリ金属イオンのモル濃度として0.5~0.8Mである、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0029】
〔21〕ステップ(2)において、前記成形は、打錠法、押出法、液滴法またはペレット造粒法にて行われる、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0030】
〔22〕ステップ(3)において、前記アセトイン含有メタノール溶液中のアセトインの体積分率は1~5%である、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0031】
〔23〕ステップ(3)において、前記アルカリ金属含有水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウムから選ばれる1つまたは複数である、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0032】
〔24〕ステップ(3)において、前記溶液E’の使用量は、触媒前駆体D’の体積の2~10倍である、前記または下記何れか一態様に記載の製造方法。
【0033】
〔25〕ステップ(4)において、前記密閉容器は結晶化釜である、前記何れか一態様に記載の製造方法。
【0034】
〔26〕2,3-ブタンジオールを触媒の作用下で脱水素反応させてアセトインを作製する、アセトインの製造方法であって、
前記触媒は、酸化銅40~50重量%と、イッテルビウム含有、ニッケル含有、亜鉛含有の酸化物または当該酸化物の混合物35~45重量%と、アルカリ金属含有酸化物1~5重量%と、アルミナ5~15重量%とを含み、
前記反応の条件は、反応温度が200~300℃、反応圧力が0.01~0.5MPa、液体の空間速度が0.5~10h-1である、製造方法。
【発明の効果】
【0035】
一実施形態において、本発明の銅ベース触媒は、脱水素化触媒として用いられてアセトインを製造することができると共に、高いアセトイン選択性を示す。
【0036】
一実施形態において、本発明のアセトイン製造方法は、生物ベース材料(例えば2,3-ブタンジオール)を原料として用いることができるため、グリーンな製造技術に属する。
【0037】
一実施形態において、本発明のアセトイン製造方法は、生成物であるアセトインの選択性が高く、工業上の大規模生産に好適である。
【0038】
一実施形態において、本発明のアセトイン製造方法は、製品としてのアセトインに、硫黄や窒素等の有害な不純物が略含まれない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例7において、空間速度(LHSV)が2,3-ブタンジオール転化率(1)およびアセトイン選択性(2)に与える影響を評価するグラフである。
図2】実施例20において、水素-アルコールモル比(H/BDO)が2,3-ブタンジオール転化率(1)およびアセトイン選択性(2)に与える影響を評価するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の保護範囲は、これら具体的な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲により確定される。
【0041】
本明細書において言及される出版物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、全て参考として引用される。別途で定義しない限り、本明細書中に使用される全ての技術的用語および科学的用語は、当業者が一般に理解している意味を有し、定義が異なる場合には本明細書中の定義に準ずる。
【0042】
本明細書において、「当業者に公知」、「従来技術」、またはそれらの類似的表現を用いて材料、物質、方法、ステップ、装置または部材等を修飾する場合、当該修飾される対象は、本願の出願の時点で既に本分野で通常に使用されているものを内包するが、現在は常用となっていないものの、将来にその類似目的に適合すると本分野で公認されるであろうものも含む。
【0043】
本発明において、「酸化物」として表現される金属元素は、その安定した金属酸化物の形態である。また、触媒または触媒前駆体中の当該金属元素の正確な含量を正確に表現する目的で、当該元素の含量は、分析方法上の暗黙的認識として、当該元素に対応する酸化物の形式で示す。当業者であれば、触媒または触媒前駆体中の酸化物の含量に基づき、触媒または触媒前駆体中の当該金属元素単体の含量を容易に換算し得るが、これは、前記金属元素が、触媒または触媒前駆体中に前記酸化物の形態で存在することを意味するものではない。例えば、Kの酸化物はKOを指すが、これは単に、触媒または触媒前駆体中のKの含量を、KOを基準として計算するに過ぎず、必ずしもKがKOの形態で存在することを意味していない。
【0044】
本発明の文脈において、銅、補助金属、アルカリ金属およびバインダーの含量は、蛍光X線分析法(XRF)を用いて測定してもよく、その他の方法(例えば重量法、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)、または当該元素の含量を測定可能な他の方法)を用いて測定してもよい。
【0045】
本発明において、ケトン類添加剤および溶媒の含量は、重量差分およびクロマトグラフィーに基づいて測定する。本発明に用いる測定方法は、下記の通りである。すなわち、ケトン類添加剤と溶媒とを含有する定量された触媒もしくは触媒前駆体(質量はmと表記する)を試料チューブ(例えば、化学的吸着分析装置または熱重量分析装置の試料チューブを採用してもよく、固定床式チューブ型反応器を採用してもよい)内に投入し、不活性ガス(ヘリウムガス)を試料チューブの一方側から他方側にまで連続的に通過させて、低温(-20℃)のコールドトラップを形成する。続いて、試料チューブを、使用されるケトン類添加剤または溶媒の沸点よりも20℃高い温度にまで昇温し、且つ2時間以上維持する。そして、コールドトラップ内の液体W1を回収して秤量(質量はmと表記する)し、ケトン類添加剤と溶媒との総量とする。ガスクロマトグラフィーを用い、W1中のケトン類添加剤および溶媒の質量分率を測定することで、W1中のケトン類添加剤の質量(mと表記する)および溶媒の質量(mと表記する)を算出することができる。
【0046】
触媒中または触媒前駆体中のケトン類添加剤の含量 = m/m×100
触媒中または触媒前駆体中の溶媒の含量 = m/m×100
別途で明確に指す場合を除き、本明細書中に記載のパーセンテージ、部数、比率等は全て重量に準じ、また、圧力は全てゲージ圧である。
【0047】
本明細書において、本発明における任意の2つまたは複数の態様もしくは実施形態を、任意に組み合わせることが可能であり、これによって構成される発明は、本明細書の出願当初の開示内容の一部に属すると同時に、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0048】
一実施形態によれば、本発明は、銅ベース触媒、特に脱水素化銅ベース触媒に関する。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、銅、補助金属およびアルカリ金属を少なくとも含む。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、該銅ベース触媒の総重量に基づいて、30~60重量%、好ましくは40~50重量%の銅(CuOで計算)を含む。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前記補助金属は、元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属またはランタン系列金属から選ばれてもよい。これらの補助金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第IIA族金属としては、具体的には例えばMg、Ba、SrまたはCaが挙げられ、MgまたはCaが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIII族非貴金属としては、具体的には例えばFe、CoまたはNiが挙げられ、FeまたはNiが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIB族金属としては、具体的には例えばCr、MoまたはWが挙げられ、Crが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIIB族金属としては、具体的には例えばMnまたはReが挙げられ、Mnが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第IIB族金属としては、具体的には例えばZnまたはCdが挙げられ、Znが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記ランタン系列金属としては、具体的には例えばLa、Ce、Pr、YbまたはLuが挙げられ、Ybが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、該銅ベース触媒の総重量に基づいて、10~45重量%、好ましくは30~45重量%または35~45重量%の前記補助金属(酸化物で計算)を含む。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ金属としては、具体的には例えばLi、Na、K、RbおよびCsが挙げられ、NaおよびKが好ましく、Kが特に好ましい。これらアルカリ金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、該銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~10重量%、好ましくは1~5重量%の前記アルカリ金属(酸化物で計算)を含む。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、バインダーをさらに任意に含む。前記バインダーとしては、本分野において脱水素化触媒の製造時に通常に使用される任意のバインダーが挙げられ、具体的には例えば難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩が挙げられる。これらのバインダーは、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記難溶融性酸化物としては、具体的には例えばアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカおよびアルミニウムシリケートが挙げられる。これらの難溶融性酸化物は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記アルミノ珪酸塩としては、例えばベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトが挙げられる。これらのアルミノ珪酸塩は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記バインダーとしては、アルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、該銅ベース触媒の総重量に基づいて、0~30重量%、好ましくは5~15重量%の前記バインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)を含む。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、さらにケトン類添加剤を含む。前記ケトン類添加剤としては、例えば、式(II)で示すケトン類化合物、または式(II’)で示すケトン類化合物、特にアセトインが挙げられる。これらのケトン類添加剤は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
R1-C(=O)-CH(=O)-R2 (II’)
式(II)および式(II’)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。前記C1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基としては、C1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒100重量部に対し、前記ケトン類添加剤は、0.1重量部以上、好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部である。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、溶媒(特に有機溶媒)をさらに任意に含む。前記有機溶媒としては、例えば、前記ケトン類添加剤を溶解可能な任意の有機溶媒が挙げられ、より具体的には例えばC1~6のアルコール(特にC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価アルコール)が挙げられ、メタノールおよびエタノールが好ましい。これらの溶媒は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒100重量部に対し、前記溶媒は、30重量部以下、好ましくは10重量部以下、5重量部以下または3重量部以下である。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、顆粒状材料であってもよく、粉末状材料であってもよく、特に限定されない。ケトン類添加剤および任意に用いる溶媒等の存在により、前記触媒は湿潤状態となる場合がある。また、前記顆粒の形状としては、本分野において脱水素化触媒顆粒として通常に用いられる様々な既知の形状が挙げられ、具体的には例えば球状、柱状および片状等が挙げられる。これらの形状は、当業者が本分野の既知の任意の通常の方法で実現することができ、特に限定されない。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒は、本発明の製造方法によって製造されてもよい。但し、前記銅ベース触媒の製造方法は、これに限定されない。ここで、前記製造方法としては、通常、ステップ(1)およびステップ(2-1)を含むか、または、ステップ(1’)およびステップ(2-2)を含む。
【0064】
<触媒前駆体を製造するステップ(1)>
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、銅、補助金属およびアルカリ金属を少なくとも含む。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、該触媒前駆体の総重量に基づいて、30~60重量%、好ましくは40~50重量%の銅(CuOで計算)を含む。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、前記補助金属は、元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属またはランタン系列金属から選ばれてもよい。これらの補助金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第IIA族金属としては、具体的には例えばMg、Ba、SrまたはCaが挙げられ、MgまたはCaが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIII族非貴金属としては、具体的には例えばFe、CoまたはNiが挙げられ、FeまたはNiが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIB族金属としては、具体的には例えばCr、MoまたはWが挙げられ、Crが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIIB族金属としては、具体的には例えばMnまたはReが挙げられ、Mnが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第IIB族金属としては、具体的には例えばZnまたはCdが挙げられ、Znが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記ランタン系列金属としては、具体的には例えばLa、Ce、Pr、YbまたはLuが挙げられ、Ybが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、該触媒前駆体の総重量に基づいて、10~45重量%、好ましくは30~45重量%または35~45重量%の前記補助金属(酸化物で計算)を含む。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ金属としては、具体的には例えばLi、Na、K、RbおよびCsが挙げられ、NaおよびKが好ましく、Kが特に好ましい。これらのアルカリ金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、該触媒前駆体の総重量に基づいて、1~10重量%、好ましくは1~5重量%の前記アルカリ金属(酸化物で計算)を含む。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、バインダーをさらに任意に含む。前記バインダーとしては、本分野において脱水素化触媒の製造時に通常に使用される任意のバインダーが挙げられ、具体的には例えば難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩が挙げられる。これらのバインダーは、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記難溶融性酸化物としては、具体的には例えばアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカおよびアルミニウムシリケートが挙げられる。これらの難溶融性酸化物は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記アルミノ珪酸塩としては、例えばベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトが挙げられる。これらのアルミノ珪酸塩は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記バインダーとしては、アルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、該触媒前駆体の総重量に基づいて、0~30重量%、好ましくは5~15重量%の前記バインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)を含む。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体は、顆粒状材料であってもよく、粉末状材料であってもよく、特に限定されない。また、前記顆粒の形状としては、本分野において脱水素化触媒顆粒として通常に用いられる様々な既知の形状が挙げられ、具体的には例えば球状、柱状および片状等が挙げられる。これらの形状は、当業者が本分野の既知の任意の通常の方法で実現することができ、特に限定されない。
【0073】
<触媒前駆体を製造するステップ(1’)>
ここで、該ステップ(1’)および前記ステップ(1)は、ステップ(1’)においては、触媒前駆体中の前記アルカリ金属が任意に用いられる組成要素であって、最低含量が0となってもよい、という相違点を除き、全く同じである。また、含量が0でない場合、ステップ(1’)における触媒前駆体中の前記アルカリ金属の含量としては、前記ステップ(1)においてアルカリ金属含量に関して規定した数値範囲が、そのまま適用され得る。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒前駆体の製造方法は、本発明に関して前記のように規定した触媒前駆体組成に適合すればよく、特に限定されない。前記触媒前駆体の具体的な製造方法としては、例えば、銅前駆体と、補助金属前駆体と、場合に応じて(例えばステップ(1)またはステップ(1’)による)任意に用いるアルカリ金属前駆体と、任意に用いるバインダー前駆体とを共沈させることにより、前記触媒前駆体を得る方法(以下、「共沈法」と称する)が挙げられる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記共沈法は、下記のステップ(1-1)~ステップ(1-3)のうちの、複数または全部を含んでいてもよい。
【0076】
<ステップ(1-1)>
銅前駆体と、補助金属前駆体と、任意に用いるバインダー前駆体との溶液Aを調製すると共に、沈殿剤の溶液Bを調製し、前記溶液Aと前記溶液Bとを混合することによって沈殿物Cを得る。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記溶液Aおよび前記溶液Bの調製に用いられる溶媒は、対応する物質を溶解可能であり、且つ、前記共沈法に悪影響を及ぼさないものであれば、特に限定されない。最も好適に使用できる溶媒としては、例えば水が挙げられる。また、本発明において、前記溶液A中の各前駆体の濃度、または前記溶液B中の沈殿剤の濃度は、当業者が状況に応じて自由に選択すればよく、特に限定されないが、一例として、前記溶液B中の沈殿剤のモル濃度(アルカリ金属イオンで計算)は、通常、0.1~1M、または0.5~0.8Mである。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記バインダー前駆体としては、例えば本分野において脱水素化触媒のバインダー前駆体として使用可能な任意の既知材料が挙げられ、特に限定されない。具体例を挙げると、例えば難溶融性酸化物、難溶融性酸化物前駆体、アルミノ珪酸塩およびアルミノ珪酸塩前駆体が挙げられる。これらのバインダー前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記難溶融性酸化物またはその前駆体としては、具体的にアルミニウム塩、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナコロイド、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカ、水ガラス、シリカコロイド、シリカゲル、ケイ酸エステルおよびアルミニウムシリケートが挙げられる。これらの難溶融性酸化物またはその前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記アルミノ珪酸塩またはその前駆体としては、例えばアルミン酸ナトリウム、ベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトが挙げられる。これらのアルミノ珪酸塩またはその前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記バインダー前駆体としては、アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、シリカコロイド、水ガラス、珪藻土およびカオリンが好ましく、アルミニウム塩、水酸化アルミニウムおよびアルミナがより好ましく、硝酸アルミニウムが特に好ましい。これらのバインダー前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、前記銅前駆体および前記補助金属前駆体は、対応する元素の酸化物、または、焼成によって当該酸化物を生成可能な任意の物質であってもよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、当該対応する元素の、酸化物、水酸化物、無機酸塩および有機酸塩(これら化合物の水和物を含む)、好ましくは水溶性無機酸塩および水溶性有機酸塩、より好ましくは塩酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、アルコキシド、硝酸塩、硫酸塩および酢酸塩、特に硝酸塩が挙げられる。これらの前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、前記沈殿剤は、前記溶液AのpHを変化させて前記沈殿物Cを得ることが可能なものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、アンモニア水、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられる。これらの沈殿剤は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよいが、特に水酸化物と炭酸水素塩との混合物が好ましい。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記沈殿剤または前記溶液Bの使用量は、特に限定されないが、通常、共沈反応系のpHが7.5~10、好ましくは8~9となるような量であればよい。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(1-1)において、前記混合を撹拌しながら行ってもよい。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、前記混合の温度は、50~95℃、好ましくは70~95℃である。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、前記溶液Aと前記溶液Bとの混合が完了した後、得られた前記沈殿物Cを前記混合温度下で0.5~12時間、好ましくは2~5時間、エージングし、その後、濾過等の通常の分離手法によって前記沈殿物Cを回収する。
【0085】
<ステップ(1-2)>
前記沈殿物Cを乾燥および焼成し、予備触媒前駆体Dを得る。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、ステップ(1’)の場合において前記アルカリ金属の含量が0であるとき、該予備触媒前駆体Dは、すなわち、前記ステップ(1’)における触媒前駆体である。
【0087】
<ステップ(1-3)>
アルカリ金属前駆体の溶液Eを調製し、該溶液Eに前記沈殿物Cまたは前記予備触媒前駆体Dを浸漬した後、乾燥および焼成を行い、前記触媒前駆体Fを得る。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、前記溶液Eの調製に用いられる溶媒は、前記アルカリ金属前駆体を溶解可能であり、且つ、前記浸漬に悪影響を及ぼさないものであれば、特に限定されない。最も好適に使用できる溶媒としては、例えば水が挙げられる。また、本発明において、前記溶液E中の前記アルカリ金属前駆体の濃度は、当業者が状況に応じて自由に選択すればよく、特に限定されない。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ金属前駆体は、アルカリ金属酸化物、または、焼成によってアルカリ金属酸化物を生成可能な任意の物質であってもよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、アルカリ金属の、酸化物、水酸化物、無機酸塩および有機酸塩(これら化合物の水和物を含む)、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられる。これらのアルカリ金属前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよいが、特に水酸化カリウムと炭酸水素カリウムとの混合物が好ましい。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(1-2)またはステップ(1-3)において、前記乾燥の温度は、特に限定されないが、通常、80~150℃、好ましくは100~120℃である。また、前記乾燥の時間は、特に限定されないが、通常、2~48時間、好ましくは12~24時間である。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(1-2)またはステップ(1-3)において、前記焼成の温度は、特に限定されないが、通常、300~500℃、好ましくは350~450℃である。また、前記焼成の時間は、特に限定されないが、通常、2~24時間、好ましくは4~6時間である。また、前記焼成は、通常、酸素含有雰囲気下で行われる。前記酸素含有雰囲気としては、具体的には例えば空気が挙げられる。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(1-2)またはステップ(1-3)において、焼成前に成形ステップを任意に行う。前記成形ステップは、本分野の既知の任意の通常の手法によって行ってもよい。具体的には、例えば打錠法、押出法、液滴法、またはペレット造粒法等が挙げられ、特に限定されない。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、前記成形ステップにおいて、成形助剤を必要に応じて用いてもよい。ここで、前記成形助剤としては、例えば本分野において触媒顆粒の製造時に使用可能な任意の既知の成形助剤が挙げられ、特に限定されない。具体的には、例えば水、押出助剤、解膠剤、pH調整剤、細孔形成剤および滑剤等が挙げられ、より具体には、例えば水、グラファイト粉末、セスバニア粉末、クエン酸、メチルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコール(ポリエタノール)が挙げられる。これら成形助剤は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、これら成形助剤の使用量は、本分野における既知の情報を参照すればよく、特に限定されない。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、前記共沈法において、前記銅前駆体、前記補助金属前駆体、前記任意に用いるアルカリ金属前駆体、および前記任意に用いるバインダー前駆体に関して、それらの相互間の比率または各々の使用量は、特に限定されず、最終的に製造される触媒前駆体中の各組成要素の含量が本発明の前記何れか1つの規定を満せればよい。
【0095】
<ステップ(2-1)>
式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に接触させ、前記銅ベース触媒を得る。ここで、前記ケトン類化合物としては、アセトインが好ましい。
【0096】
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。前記C1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基としては、特にC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、前記式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に接触させる方法は、特に限定されず、具体的には例えば、前記式(II)で示すケトン類化合物を、所定の含量となるまで前記触媒前駆体に吸着させる方法が挙げられる。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、前記式(II)で示すケトン類化合物の前記接触または吸着は、気体またはガス混合物の形態で行ってもよい。例を挙げて説明すると、前記ガス混合物中、前記式(II)で示すケトン類化合物の体積分率は、前記ガス混合物のトータル体積に対して、通常、1~10%、好ましくは1~5%である。また、前記不活性ガスとしては、具体的には例えば窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスが挙げられ、窒素ガスが好ましい。これらの不活性ガスは、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、前記所定の含量として、前記ケトン類化合物の含量は、前記触媒前駆体100重量部に対して、通常、0.1重量部以上、好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部である。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-1)は、ステップ(2-1-1)を含んでもよい。
【0101】
<ステップ(2-1-1)>
温度100~200℃および圧力0.1~5MPaの条件下で、前記式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に2~60時間、接触させる。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-1-1)において、前記式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に接触させる方法は、特に限定されず、具体的には例えば、気体またはガス混合物の形態の前記式(II)で示すケトン類化合物を前記触媒前駆体に接触させる方法、より具体的には例えば、気体またはガス混合物の形態の前記式(II)で示すケトン類化合物を、所定の含量となるまで前記触媒前駆体に吸着させる方法が挙げられる。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、前記式(II)で示すケトン類化合物の前記接触または吸着は、気体またはガス混合物の形態で行ってもよい。例を挙げて説明すると、前記ガス混合物中、前記式(II)で示すケトン類化合物の体積分率は、前記ガス混合物のトータル体積に対して、通常、1~10%、好ましくは1~5%である。また、前記不活性ガスとしては、具体的には例えば窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスが挙げられ、窒素ガスが好ましい。これらの不活性ガスは、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、前記所定の含量として、前記ケトン類化合物の含量は、前記触媒前駆体100重量部に対して、通常、0.1重量部以上、好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部である。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-1-1)において、前記温度としては、通常、100~200℃、好ましくは100~150℃である。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-1-1)において、前記圧力としては、通常、0.1~5MPa、好ましくは0.1~1MPaである。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-1-1)において、前記接触の時間としては、通常、2~60時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間である。
【0108】
<ステップ(2-2)>
前記式(II)で示すケトン類化合物と、溶媒と、任意に用いるアルカリ金属前駆体とからなる混合物を、前記触媒前駆体に接触(例えば浸漬または混合)させ、前記銅ベース触媒を得る。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、前記接触は、超音波の存在下で行われる。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、前記溶媒(特に有機溶媒)としては、例えば、前記ケトン類化合物および前記アルカリ金属前駆体(存在する場合)を溶解可能な任意の有機溶媒が挙げられ、より具体的には例えばC1~6のアルコール(特にC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価アルコール)が挙げられ、メタノールおよびエタノールが好ましい。これらの溶媒は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ金属前駆体は、アルカリ金属酸化物、または、焼成によってアルカリ金属酸化物を生成可能な任意の物質であってもよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、アルカリ金属の、酸化物、水酸化物、無機酸塩および有機酸塩(これら化合物の水和物を含む)、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられる。これらのアルカリ金属前駆体は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよいが、特に水酸化カリウムと炭酸水素カリウムとの混合物が好ましい。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、前記混合物を前記触媒前駆体に接触させる方法は、特に限定されないが、具体的には例えば、前記式(II)で示すケトン類化合物と、前記任意に用いるアルカリ金属前駆体と、前記溶媒とを所定の相対比率で混合した後、得られた該混合物を所定の相対比率で前記触媒前駆体に(均一となるまで)混合、または浸漬する方法が挙げられる。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、前記ケトン類化合物の使用量は、前記触媒前駆体100重量部に対して、通常、0.1重量部以上、好ましくは0.1~20重量部、1~10重量部または1~5重量部である。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、前記溶媒の使用量は、前記触媒前駆体100重量部に対して、通常、30重量部以下、好ましくは10重量部以下、5重量部以下または3重量部以下である。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、前記任意に用いるアルカリ金属前駆体の使用量の具体例として、例えば、ステップ(1’)におけるアルカリ金属(酸化物で計算)の使用量と、ステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量との合計量は、最終的に製造される銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、当該銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~10重量%、好ましくは1~5重量%となるような量である。換言すれば、ステップ(1’)のみにおいて前記アルカリ金属を用いてもよく、ステップ(2-2)のみにおいて前記アルカリ金属前駆体を用いてもよく、あるいは、ステップ(1’)において前記アルカリ金属を用いると共に、ステップ(2-2)において前記アルカリ金属前駆体を用いてもよい。但し、前提として、両者の使用量の和が本発明における上述した規定を満たさなければならず、すなわち、前記製造方法によって最終的に製造される銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、当該銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~10重量%、好ましくは1~5重量%とならなければならない。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、本発明における前記構成に加えて触媒の性能をさらに向上させるために、ステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量は、通常、0を超え、好ましくはステップ(2-2)におけるアルカリ金属前駆体(酸化物で計算)の使用量は、前記銅ベース触媒に含まれるアルカリ金属(酸化物で計算)が、当該銅ベース触媒の総重量に基づいて、1~10重量%、好ましくは1~5重量%となるような量である。後者の場合、前記アルカリ金属前駆体は、任意に用いる組成要素ではなくなり、且つ、前記ステップ(2-2)のみにおいて前記アルカリ金属前駆体を導入することになる。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2)は、以下のステップ(2-2-1)およびステップ(2-2-2)を含んでもよい。
【0118】
<ステップ(2-2-1)>
前記混合物を用いて前記触媒前駆体を5~24時間浸漬し、浸漬混合物を得る(以下、「浸漬ステップ」と称する)。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、前記浸漬は、超音波の存在下で行われる。
【0120】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-1)において、前記浸漬の温度および圧力は、当業者が通常に選択すればよく、特に限定されないが、具体的には例えば常温、常圧が挙げられる。また、前記浸漬の時間としては、通常、5~24時間、好ましくは5~10時間である。
【0121】
本発明の一実施形態によれば、前記浸漬ステップにおいて、実施の利便性を図り、前記混合物中の前記式(II)で示すケトン類化合物(特にアセトイン)の体積分率は、通常、1~5%または1~3%である。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記浸漬ステップにおいて、実施の利便性を図り、前記混合物の使用量は、通常、前記触媒前駆体の体積の2~10倍または2~5倍である。但し、本発明はこれに限定されない。
【0122】
<ステップ(2-2-2)>
温度50~95℃の条件下で、前記浸漬混合物中から前記溶媒の少なくとも一部を除去し、前記銅ベース触媒を得る。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-2)において、前記温度は、通常、50~95℃、好ましくは65~70℃である。
【0124】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-2)において、前記除去の方法としては、前記溶媒の少なくとも一部を前記浸漬混合物中から除去可能であれば、特に限定されないが、具体的には例えば蒸発法等が挙げられる。
【0125】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-2)において、前記溶媒の少なくとも一部、具体的には例えば前記溶媒の10体積%以上、30体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、98体積%以上、または略全部を除去する。
【0126】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2)は、ステップ(2-2-3)をさらに任意に含む。
【0127】
<ステップ(2-2-3)>
温度150~350℃および圧力0.1~5MPaの条件下で、前記銅ベース触媒を2~60時間、エージングする。
【0128】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-3)において、前記温度は、通常、150~350℃、好ましくは300~350℃である。
【0129】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-3)において、前記圧力は、通常、0.1~5MPa、好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは反応系内で自然に発生する圧力である。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-2-3)において、前記エージングの時間は、通常、2~60時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間である。ここで、前記エージングは、密閉容器内で行われてもよい。該密閉容器としては、具体的には例えば結晶化釜が挙げられる。但し、本発明はこれに限定されない。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-1)または前記ステップ(2-2)の完了後に、ステップ(2-3)をさらに任意に実施してもよい。
【0132】
<ステップ(2-3)>
任意に乾燥を行った後、前記銅ベース触媒を焼成する。
【0133】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-3)において、前記乾燥の温度は、特に限定されないが、通常、80~150℃、好ましくは100~120℃である。また、前記乾燥の時間は、特に限定されないが、通常、2~48時間、好ましくは12~24時間である。なお、前記乾燥のステップは、任意のステップである。
【0134】
本発明の一実施形態によれば、前記ステップ(2-3)において、前記焼成の温度は、特に限定されないが、通常、300~500℃、好ましくは350~450℃である。また、前記焼成の時間は、特に限定されないが、通常、2~24時間、好ましくは4~6時間である。また、前記焼成は、通常、酸素含有雰囲気下で行われる。前記酸素含有雰囲気としては、具体的には例えば空気が挙げられる。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、前記製造方法は、
銅塩とアルミニウム塩と補助金属塩とを含有する水溶液A’を調製すると共に、沈殿剤含有水溶液B’を調製し、連続撹拌の条件下で溶液A’および溶液B’を同時に滴下しながら沈殿温度70~95℃、pH8~9となるように制御し、滴下完了後、エージング、濾過を経て沈殿物C’を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた沈殿物C’を乾燥、成形、焼成することで触媒前駆体D’を得るステップ(2)と、
計量されたアルカリ金属含有水酸化物を、調製されたアセトイン含有メタノール溶液に添加して調製した溶液E’に、計量されたステップ(2)で得られた触媒前駆体D’を添加し、超音波の条件下で5~10時間浸漬させ、浸漬完了後、65~70℃下で溶液E’中のメタノールを完全に蒸発させて触媒前駆体F’を得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた触媒前駆体F’を密閉容器内に投入し、300~350℃の条件下で24~48時間静置して触媒前駆体G’を得るステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた触媒前駆体G’を乾燥、焼成することで前記最終的触媒H’を得るステップ(5)と、を含んでもよい。
【0136】
一実施形態によれば、本発明は、銅ベース触媒における、脱水素化触媒としての用途、特に2,3-ブタンジオールの脱水素化触媒としての用途にも関する。前記脱水素化触媒としては、部分的脱水素化触媒であってもよい。ここで言う「部分的脱水素化」とは、脱水素化されるべき化合物(例えば2,3-ブタンジオール)の化学構造式中に複数の同じ性質の水素原子(例えば、2つのヒドロキシル基の水素原子)が存在する場合において、一部(例えば1つ)の水素原子のみを離脱させることを指す。
【0137】
一実施形態によれば、本発明は、ヒドロキシケトン化合物の製造方法、特にアセトインの製造方法にも関する。ここで特に強調すべき点として、以下に明確に記載されている事項および内容を除き、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法には、本分野において触媒作用下の脱水素反応に対して通常に用いられる任意の形式および任意の方法を、直接適用してもよい。よって、その詳細は省略する。
【0138】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法は、銅ベース触媒の存在下で、式(I)で示す2価アルコールを、式(II)で示すヒドロキシケトン化合物に転化させるステップ(以下、「転化ステップ」と称する)を含む。
【0139】
本発明の一実施形態によれば、前記用途または前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法において、前記銅ベース触媒としては、例えば銅ベース触媒A、銅ベース触媒Bおよび銅ベース触媒Cが挙げられる。これらの銅ベース触媒は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0140】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Bおよび前記銅ベース触媒Cとしては、例えば、本明細書において上述した何れかの銅ベース触媒が挙げられる。これらの銅ベース触媒は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0141】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、銅、補助金属およびアルカリ金属を少なくとも含む。
【0142】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、該銅ベース触媒Aの総重量に基づいて、30~60重量%、好ましくは40~50重量%の銅(CuOで計算)を含む。
【0143】
本発明の一実施形態によれば、前記補助金属は、元素周期表における第IIA族金属、第VIII族非貴金属、第VIB族金属、第VIIB族金属、第IIB族金属またはランタン系列金属から選ばれてもよい。これらの補助金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第IIA族金属としては、具体的には例えばMg、Ba、SrまたはCaが挙げられ、MgまたはCaが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIII族非貴金属としては、具体的には例えばFe、CoまたはNiが挙げられ、FeまたはNiが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIB族金属としては、具体的には例えばCr、MoまたはWが挙げられ、Crが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第VIIB族金属としては、具体的には例えばMnまたはReが挙げられ、Mnが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記第IIB族金属としては、具体的には例えばZnまたはCdが挙げられ、Znが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記ランタン系列金属としては、具体的には例えばLa、Ce、Pr、YbまたはLuが挙げられ、Ybが好ましい。これらの金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0144】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、該銅ベース触媒Aの総重量に基づいて、10~45重量%、好ましくは30~45重量%または35~45重量%の前記補助金属(酸化物で計算)を含む。
【0145】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ金属としては、具体的には例えばLi、Na、K、RbおよびCsが挙げられ、NaおよびKが好ましく、Kが特に好ましい。これらのアルカリ金属は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0146】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、該銅ベース触媒Aの総重量に基づいて、1~10重量%、好ましくは1~5重量%の前記アルカリ金属(酸化物で計算)を含む。
【0147】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、バインダーをさらに任意に含む。前記バインダーとしては、本分野において脱水素化触媒の製造時に通常に使用される任意のバインダーが挙げられ、具体的には例えば難溶融性酸化物およびアルミノ珪酸塩が挙げられる。これらのバインダーは、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記難溶融性酸化物としては、具体的には例えばアルミナ、ボーキサイト、疑似ベーマイト、シリカおよびアルミニウムシリケートが挙げられる。これらの難溶融性酸化物は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記アルミノ珪酸塩としては、例えばベーマイト、パリゴルスカイト、含水カオリン(ハロイサイト)、ベントナイト、カオリン、珪藻土およびモンモリロナイトが挙げられる。これらのアルミノ珪酸塩は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。前記バインダーとしては、アルミナ、シリカ、珪藻土およびカオリンが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0148】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、該銅ベース触媒Aの総重量に基づいて、0~30重量%、好ましくは5~15重量%の前記バインダー(乾燥ベース;酸化物で計算)を含む。
【0149】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、アセトインの製造に用いられ、銅、補助金属およびアルカリ金属を含む触媒である。また、最終的に、該触媒は、40~50重量%の酸化銅と、35~45重量%の補助金属含有酸化物と、1~5重量%のアルカリ金属含有酸化物と、5~15重量%のアルミナとを含む。前記補助金属は、イッテルビウム、ニッケル、亜鉛元素から選ばれる少なくとも1つである。
【0150】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、顆粒状材料であってもよく、粉末状材料であってもよく、特に限定されない。また、前記顆粒の形状としては、本分野において脱水素化触媒顆粒として通常に用いられる様々な既知の形状が挙げられ、具体的には例えば球状、柱状および片状等が挙げられる。これらの形状は、当業者が本分野の既知の任意の通常の方法で実現することができ、特に限定されない。
【0151】
本発明の一実施形態によれば、前記銅ベース触媒Aは、本分野における既知の任意の通常の形式に基づいて製造されてもよく、本明細書中に前記触媒前駆体に関して記載した製造方法を参照して製造されてもよく、特に限定されない。本発明の一実施形態によれば、式(I)で示す2価アルコールとしては、特に2,3-ブタンジオールが挙げられる。ここで、前記2,3-ブタンジオールとしては、例えば、オレフィン水和法または生物的発酵法によって得られた2,3-ブタンジオール、特に生物的発酵法によって得られた2,3-ブタンジオールが挙げられる。
【0152】
R1-CH(OH)-CH(OH)-R2 (I)
式(I)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。ここで、前記C1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、特にC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0153】
本発明の一実施形態によれば、式(II)で示すヒドロキシケトン化合物としては、特にアセトインが挙げられる。
【0154】
R1-C(=O)-CH(OH)-R2 (II)
式(II)中、R1基およびR2基は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立してC1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。ここで、前記C1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、特にC1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、本発明における前記構成に加えて本発明の技術的効果をさらに向上させるために、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法は、前記転化ステップを行う前に、温度150~350℃および圧力0.1~5MPaの条件下で前記銅ベース触媒Aを、前記式(II)で示すヒドロキシケトン化合物に2~60時間、接触させるステップ(以下、「予備接触ステップ」と称する)をさらに任意に含む。
【0156】
本発明の一実施形態によれば、前記予備接触ステップにおいて、前記温度は、通常、150~350℃、好ましくは300~350℃である。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、前記予備接触ステップにおいて、前記圧力は、通常、0.1~5MPa、好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは反応系内で自然に発生する圧力である。
【0158】
本発明の一実施形態によれば、前記予備接触ステップにおいて、前記接触の時間は、通常、2~60時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間である。
【0159】
本発明の一実施形態によれば、本発明における前記構成に加えて本発明の技術的効果をさらに向上させるために、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法は、前記転化ステップを行う前に、温度150~350℃および圧力0.1~5MPaの条件下で前記銅ベース触媒Bまたは前記銅ベース触媒Cを2~60時間、エージングするステップ(以下、「エージングステップ」と称する)をさらに任意に含む。前記エージングステップによれば、エージングされた銅ベース触媒が得られる。
【0160】
本発明の一実施形態によれば、前記エージングステップにおいて、前記温度は、通常、150~350℃、好ましくは300~350℃である。
【0161】
本発明の一実施形態によれば、前記エージングステップにおいて、前記圧力は、通常、0.1~5MPa、好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは反応系内に自然に発生する圧力である。
【0162】
本発明の一実施形態によれば、前記エージングステップにおいて、前記エージングの時間は、通常、2~60時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは24~48時間である。ここで、前記エージングは、密閉容器内で行われてもよい。該密閉容器としては、具体的には例えば結晶化釜が挙げられる。但し、本発明はこれに限定されない。
【0163】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法は、前記転化ステップを行う前に、水素ガスの存在下、温度200~400℃および圧力0.1~10MPaの条件下で前記銅ベース触媒を還元するステップ(以下、「還元ステップ」と称する)をさらに任意に含む。
【0164】
本発明の一実施形態によれば、前記還元ステップにおいて、前記温度は、通常、200~400℃、好ましくは200~300℃である。
【0165】
本発明の一実施形態によれば、前記還元ステップにおいて、前記圧力は、通常、0.1~10MPa、好ましくは0.1~1MPaである。
【0166】
本発明の一実施形態によれば、前記還元ステップにおいて、前記還元の処理方法は、特に限定されず、所望の還元目的を実現可能であれば、当業者が通常の知識に基づいて選択してもよい。具体的には例えば、水素ガス体積分率10~100%の窒素水素混合ガスを前記温度下、100ml/分以上の線速度で、前記銅ベース触媒を含有する触媒床層に通過させる方法が挙げられる。但し、本発明はこれに限定されない。
【0167】
本発明の一実施形態によれば、前記還元ステップにおいて、前記還元の時間は、特に限定されず、所望の還元目的を実現可能であれば、当業者が通常の知識に基づいて選択してもよいが、通常、5時間以上である。
【0168】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法において、前記転化ステップは、希釈剤の存在下で行われてもよく、希釈剤の不存在下で行われてもよい。ここで、前記希釈剤としては、例えば、本分野において脱水素反応時に通常に使用される各種の希釈剤が挙げられ、具体的には例えば水素ガス、窒素ガスおよび水蒸気が挙げられ、水素ガスが好ましい。これら希釈剤は、1つを単独で用いてもよく、複数を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0169】
本発明の一実施形態によれば、前記希釈剤が存在する場合において、前記希釈剤と、前記式(I)で示す2価アルコールとのモル比は、通常、0.1~3、好ましくは0.1~1である。
【0170】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法において、前記転化ステップの反応温度は、通常、200~300℃である。特に、前記希釈剤が存在する場合、反応温度は、通常、270~300℃である。また、前記希釈剤が存在しない場合、反応温度は、通常、250~270℃である。
【0171】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法において、前記転化ステップの反応圧力は、通常、0.01~0.5MPaである。特に、前記希釈剤が存在する場合、反応圧力は、通常、0.1~0.5MPaである。また、前記希釈剤が存在しない場合、反応圧力は、通常、0.01~0.2MPaが好ましい。
【0172】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法において、前記転化ステップにおける液体の空間速度は、通常、0.5~10h-1である。特に、前記希釈剤が存在する場合、液体の空間速度は、通常、5~10h-1である。また、前記希釈剤が存在しない場合、液体の空間速度は、通常、1.5~5h-1である。
【0173】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒドロキシケトン化合物の製造方法は、本分野において触媒作用下の脱水素反応に対して通常に用いられる任意の反応器の中で行われてもよい。当該反応器としては、具体的には例えば固定床式反応器、流動化床式反応器および移動床式反応器が挙げられ、固定床式反応器が好ましい。
【0174】
一実施形態によれば、本発明は、2,3-ブタンジオールを触媒の作用下で脱水素反応させてアセトインを作製する、アセトインの製造方法であって、前記触媒は、酸化銅40~50重量%と、イッテルビウム含有、ニッケル含有、亜鉛含有の酸化物または当該酸化物の混合物35~45重量%と、アルカリ金属含有酸化物1~5重量%と、アルミナ5~15重量%とを含み、前記反応の条件は、反応温度が200~300℃、反応圧力が0.01~0.5MPa、液体の空間速度が0.5~10h-1である、製造方法に関する。
【実施例
【0175】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0176】
以下の実施例および比較例において、試薬および材料は、いずれも購入した市販品である。
【0177】
また、以下の実施例および比較例において、別途で明示する場合を除き、液体の空間速度は、全て体積に準じ、圧力(反応圧力を含む)は全て、ゲージ圧である。
【0178】
本明細書の文脈上、以下の実施例および比較例において、
2,3-ブタンジオール転化率(x2,3-ブタンジオール)を下式により算出し、
【0179】
【数1】
【0180】
アセトイン選択性(sアセトイン)を下式により算出し、
【0181】
【数2】
【0182】
アセトイン収率(yアセトイン)を下式により算出する。
【0183】
【数3】
【0184】
式中、f2,3-ブタンジオールおよびfアセトインは、各々、原料中の2,3-ブタンジオールおよびアセトインのモル量を示し、p2,3-ブタンジオールおよびpアセトインは、各々、製品中の2,3-ブタンジオールおよびアセトインのモル量を示す。
【0185】
<実施例1>
銅ベース触媒H1の調製方法は、下記の通りである。
【0186】
(1-1)
122gの硝酸銅、103gの硝酸イッテルビウムおよび88gの硝酸アルミニウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液A1を調製した。16gの水酸化カリウムおよび24gの炭酸水素カリウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液B1を調製した。5Lのビーカーに1Lの脱イオン水を加え、75℃にまで昇温した。該温度を維持しつつ、連続撹拌の条件下で溶液A1およびB1を同時に滴下しながら、pHを約8.0に維持した。滴下完了後、引き続き2時間撹拌した後、エージングのために2時間静置し、濾過して沈殿物C1を得た。
【0187】
(1-2)
沈殿物C1を110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成した後、沈殿物の重さの3%に当たるグラファイト粉末を滑剤として添加して打錠成形し、さらに400℃下で5時間焼成することで、直径4.5~5.5mm、高さ5~5.5mmの円柱状の触媒前駆体D1を得た。
【0188】
(1-3)
秤量した0.35gのKOHを15mlの脱イオン水に添加し、溶液E1を調製した。10gの触媒前駆体D1(約7.5ml)を秤量して溶液E1に添加し、超音波の条件下で8時間浸漬させた。浸漬完了後、85℃下で溶液E1中の水を完全に蒸発させ、続いて110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成することで、触媒H1を得た。
【0189】
元素分析の結果、触媒H1中、CuOの含量が40.6重量%、Ybの含量が44.5重量%、KOの含量が2.7重量%、Alの含量が12.2重量%であった。
【0190】
また、触媒H1は、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて該触媒H1を常圧、260℃下で5時間還元処理した。還元完了後、当該触媒H1を、反応へ供される反応原料とした。
【0191】
<実施例2>
銅ベース触媒H2の調製方法は、下記の通りである。
【0192】
(1)実施例1で調製された触媒H1を触媒前駆体として用いた。
【0193】
(2)該触媒前駆体H1を粉末になるまで破砕して得たH1粉末をTP-5082型化学的吸着分析装置の直線型試料チューブ内に入れ、窒素ガス雰囲気下で100℃にまで昇温した。該温度を維持した状態で、窒素ガス雰囲気をアセトイン体積分率1%のアセトイン/窒素混合ガスに置き換え、48時間処理した後、降温し、生成物を取り出して触媒H2とした。
【0194】
元素分析の結果、触媒H2中、CuOの含量が40.1重量%、Ybの含量が44.0重量%、KOの含量が2.6重量%、Alの含量が12.1重量%、アセトインの含量が1.2重量%であった。
【0195】
また、触媒H2は、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、以下のステップを用いて予備処理した。
【0196】
ステップ(3-1)
10gの触媒H2を秤量して20mlのステンレス製結晶化釜に入れ、圧力が1MPaになるまで窒素ガスを釜内に充填した。結晶化釜を300℃のオーブンの中に置き、48時間処理した。
【0197】
ステップ(3-2)
水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて、ステップ(3-1)の処理を経て得られた触媒H2を常圧、260℃下で5時間還元した。還元完了後、当該触媒H2を、反応へ供される反応原料とした。
【0198】
<実施例3~7>
実施例1の予備還元された触媒H1および実施例2の予備処理された触媒H2をそれぞれ触媒として用い、内径10mmの固定床式反応器の中において、2,3-ブタンジオールを直接脱水素化してアセトインを製造し、その反応性能を考察した。実験結果を表1に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
<実施例8>
銅ベース触媒H3の調製方法は、下記の通りである。
【0201】
(1)以下のステップを用いて触媒前駆体を調製した。
【0202】
ステップ(1-1)
137gの硝酸銅、136gの硝酸ニッケルおよび111gの硝酸アルミニウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液A3を調製した。30gの水酸化カリウムおよび24gの炭酸水素カリウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液B3を調製した。5Lのビーカーに1Lの脱イオン水を加え、75℃にまで昇温した。該温度を維持しつつ、連続撹拌の条件下で溶液A3およびB3を同時に滴下しながら、pHを約9.0に維持した。滴下完了後、引き続き2時間撹拌した後、エージングのために2時間静置し、濾過して沈殿物C3を得た。
【0203】
ステップ(1-2)
沈殿物C3を110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成した後、沈殿物の重さの3%に当たるグラファイト粉末を滑剤として添加して打錠成形し、さらに400℃下で5時間焼成することで、直径4.5~5.5mm、高さ5~5.5mmの円柱状の触媒前駆体D3を得た。
【0204】
ステップ(1-3)
秤量した0.65gのKOHを15mlの脱イオン水に添加し、溶液E3を調製した。10gの触媒前駆体D3(約7.5ml)を秤量して溶液E3に添加し、超音波の条件下で10時間浸漬させた。浸漬完了後、85℃下で溶液E3中の水を完全に蒸発させ、続いて110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成することで、触媒F3を得た。
【0205】
(2)銅ベース触媒H3の製造方法として以下のステップを用いた。
【0206】
ステップ(2-1)
前記触媒前駆体F3を内径10mmの固定床式反応器に入れ、窒素ガス雰囲気下で150℃にまで昇温した。該温度を維持した状態で、窒素ガス雰囲気をアセトイン体積分率5%のアセトイン/窒素混合ガスに置き換え、24時間処理した後、降温し、最終の触媒H3を取り出した。
【0207】
元素分析の結果、触媒H3中、CuOの含量が43.8重量%、NiOの含量が35.0重量%、KOの含量が4.6重量%、Alの含量が14.4重量%、アセトインの含量が2.2重量%であった。
【0208】
また、触媒H3は、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、以下のステップを用いて予備処理した。
【0209】
ステップ(3-1)
10gの触媒H3を秤量して20mlのステンレス製結晶化釜に入れ、圧力が0.1MPaになるまで釜内に窒素ガスを充填した。結晶化釜を350℃のオーブンの中に置き、24時間処理した。
【0210】
ステップ(3-2)
水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて、ステップ(3-1)の処理を経て得られた触媒H3を常圧、230℃下で8時間還元した。還元完了後、当該触媒H3を、反応へ供される反応原料とした。
【0211】
<実施例9>
実施例8の予備処理された触媒H3を触媒として用い、内径10mmの固定床式反応器の中において、2,3-ブタンジオールを直接脱水素化してアセトインを製造したときの反応性能に対する、液体の空間速度の影響を考察した。なお、反応温度は250℃、反応圧力は0.2MPaであった。実験結果を図1に示す。
【0212】
<実施例10>
銅ベース触媒(最終的触媒)H’4の調製方法は、下記の通りである。
【0213】
(1’)以下のステップを用いて触媒前駆体F’4を調製した。
【0214】
ステップ(1’-1)
137gの硝酸銅、103gの硝酸イッテルビウムおよび45gの硝酸アルミニウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液A’4を調製した。30gの水酸化カリウムおよび12gの炭酸水素カリウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液B’4を調製した。5Lのビーカーに1Lの脱イオン水を加え、70℃にまで昇温した。該温度を維持しつつ、連続撹拌の条件下で溶液A’4およびB’4を同時に滴下しながら、pHを約9.0に維持した。滴下完了後、引き続き2時間撹拌した後、エージングのために2時間静置し、濾過して沈殿物C’4を得た。
【0215】
ステップ(1’-2)
沈殿物C’4を110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成した後、沈殿物の重さの3%に当たるグラファイト粉末を滑剤として添加して打錠成形し、さらに400℃下で5時間焼成することで、直径2.5~3.5mm、高さ2.5~3.5mmの円柱状の触媒前駆体D’4を得た。
【0216】
ステップ(1’-3)
秤量した0.50gのKOHを15mlの脱イオン水に添加し、溶液E’4を調製した。10gの触媒前駆体D’4(約7.5ml)を秤量して溶液E’4に添加し、超音波の条件下で10時間浸漬させた。浸漬完了後、85℃下で溶液E’4中の水を完全に蒸発させ、続いて110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成することで、触媒F’4を得た。
【0217】
(2)銅ベース触媒H’4の調製方法として以下のステップを用いた。
【0218】
ステップ(2-2-1)
0.61gのアセトインを30mlのメタノールに溶解し、溶液G’4を調製した。触媒前駆体F’4を粉末になるまで破砕した。10gの触媒前駆体F’4の粉末を秤量して溶液G’4に添加し、室温(20~30℃)下で連続撹拌しながら6時間浸漬させた。
【0219】
ステップ(2-2-2)
ステップ(2-2-1)の前記浸漬が完了した後、70℃下で、溶液E’4のうちの98体積%の液体を蒸発させ、最終の銅ベース触媒F’4を得た。
【0220】
元素分析の結果、触媒H’4中、CuOの含量が43.9重量%、Ybの含量が41.4重量%、KOの含量が3.2重量%、Alの含量が6.7重量%、アセトインの含量が3.9重量%、メタノールの含量が1.0重量%であった。
【0221】
また、触媒H’4を、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、以下のステップを用いて予備処理した。
【0222】
ステップ(3-1)
10gの触媒H’4を秤量して20mlのステンレス製結晶化釜に入れた。結晶化釜を300℃のオーブンの中に置き、該結晶化釜内で自然に発生した圧力を維持しながら、36時間静置した。
【0223】
ステップ(3-2)
水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて、ステップ(3-1)の処理を経て得られた触媒H’4を常圧、250℃下で7時間還元した。還元完了後、当該触媒H’4を、反応へ供される反応原料とした。
【0224】
<実施例11~14>
実施例10の予備処理された触媒H’4を触媒として用い、内径10mmの固定床式反応器の中において、2,3-ブタンジオールを脱水素化してアセトインを製造したときの反応性能に対する、希釈剤の影響を考察した。実験結果を表2に示す。
【0225】
【表2】
【0226】
<実施例15>
銅ベース触媒(最終的触媒)H’5の調製方法は、下記の通りである。
【0227】
(1’)以下のステップを用いて触媒前駆体F’5を調製した。
【0228】
ステップ(1’-1)
152gの硝酸銅、156gの硝酸ニッケルおよび67gの硝酸アルミニウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液A’5を調製した。33.6gの水酸化カリウムを秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液B’5を調製した。5Lのビーカーに1Lの脱イオン水を加え、80℃にまで昇温した。該温度を維持しつつ、連続撹拌の条件下で溶液A’5およびB’5を同時に滴下しながら、pHを約8.0に維持した。滴下完了後、引き続き2時間撹拌した後、エージングのために2時間静置し、濾過して沈殿物C’5を得た。
【0229】
ステップ(1’-2)
沈殿物C’5を110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成した後、沈殿物の重さの3%に当たるグラファイト粉末を滑剤として添加して打錠成形し、さらに400℃下で5時間焼成することで、直径2.5~3.5mm、高さ2.5~3.5mmの円柱状の触媒前駆体D’5を得た。
【0230】
ステップ(1’-3)
秤量した0.10gのKOHを15mlの脱イオン水に添加し、溶液E’5を調製した。10gの触媒前駆体D’5(約7.5ml)を秤量して溶液E’5に添加し、超音波の条件下で10時間浸漬させた。浸漬完了後、85℃下で溶液E’5中の水を完全に蒸発させ、続いて110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成することで、触媒前駆体F’5を得た。
【0231】
(2)銅ベース触媒H’5の調製方法として以下のステップを用いた。
【0232】
ステップ(2-2-1)
0.77gのアセトインを37.5mlのメタノールに溶解し、溶液G’5を調製した。10gの触媒前駆体F’5を秤量して溶液G’5に添加し、室温(20~30℃)、超音波の条件下で撹拌しながら6時間浸漬させた。
【0233】
ステップ(2-2-2)
ステップ(2-2-1)の前記浸漬が完了した後、65℃下で、溶液E’5のうちの97体積%の液体を蒸発させ、最終の銅ベース触媒H’5を得た。
【0234】
元素分析の結果、触媒H’5中、CuOの含量が45.6重量%、NiOの含量が36.9重量%、KOの含量が1.0重量%、Alの含量が9.4重量%、アセトインの含量が4.4重量%、メタノールの含量が2.8重量%であった。
【0235】
また、触媒H’5を、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、以下のステップを用いて予備処理した。
【0236】
ステップ(3-1)
10gの触媒H’5を秤量して20mlのステンレス製結晶化釜に入れた。結晶化釜を350℃のオーブン中に置き、該結晶化釜内で自然に発生した圧力を維持しながら、24時間静置した。
【0237】
ステップ(3-2)
水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて、ステップ(3-1)の処理を経て得られた触媒H’5を常圧、260℃下で5時間還元した。還元完了後、当該触媒H’5を、反応へ供される反応原料とした。
【0238】
<実施例16>
銅ベース触媒(最終的触媒)H’6の調製方法は、下記の通りである。
【0239】
(1’)以下のステップを用いて触媒前駆体F’6を調製した。
【0240】
ステップ(1’-1)
152gの硝酸銅、156gの硝酸ニッケルおよび67gの硝酸アルミニウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液A’6を調製した。33.6gの水酸化カリウムを秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液B’6を調製した。5Lのビーカーに1Lの脱イオン水を加え、80℃にまで昇温した。該温度を維持しつつ、連続撹拌の条件下で溶液A’6およびB’6を同時に滴下しながら、pHを約8.0に維持した。滴下完了後、引き続き2時間撹拌した後、エージングのために2時間静置し、濾過して沈殿物C’6を得た。
【0241】
ステップ(1-2)
沈殿物C’6を110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成した後、沈殿物の重さの3%に当たるグラファイト粉末を滑剤として添加して打錠成形し、さらに400℃下で5時間焼成することで、直径2.5~3.5mm、高さ2.5~3.5mmの円柱状の触媒前駆体D’6を得た。
【0242】
(2)銅ベース触媒H’6の調製方法として以下のステップを用いた。
【0243】
ステップ(2-2-1)
0.77gのアセトインを37.5mlのメタノールに溶解した後、0.10gのKOHを添加し、溶液E’6を調製した。10gの触媒前駆体D’6(約7.5ml)を秤量して溶液E’6に添加し、超音波の条件下で5時間浸漬させた。
【0244】
ステップ(2-2-2)
ステップ(2-2-1)の前記浸漬が完了した後、70℃下で、溶液E’5のうちの98体積%の液体を蒸発させ、触媒前駆体G’6を得た。
【0245】
ステップ(2-2-3)
ステップ(2-2-2)で得られた触媒前駆体G’6を20mlのステンレス製結晶化釜に入れた。結晶化釜を350℃のオーブン中に置き、該結晶化釜内で自然に発生した圧力を維持しながら、24時間静置した。
【0246】
ステップ(2-2-4)
ステップ(2-2-3)の処理を経た触媒前駆体G’6を110℃下で24時間乾燥した後、400℃下で10時間焼成し、最終の触媒H’6を得た。
【0247】
元素分析の結果、触媒H’6中、CuOの含量が49.1重量%、NiOの含量が39.7重量%、KOの含量が1.1重量%、Alの含量が10.1重量%であった。
【0248】
また、触媒H’6を、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、以下のステップを用いて予備処理した。すなわち、水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて触媒H’6を常圧、260℃下で8時間還元し、還元完了後、当該触媒H’6を、反応へ供される反応原料とした。
【0249】
<実施例17~21>
実施例15および16の、予備処理された触媒H’5および触媒H’6をそれぞれ触媒として用い、内径10mmの固定床式反応器の中において、2,3-ブタンジオールを脱水素化してアセトインを製造したときの反応性能に対する、水素ガス存在下の反応条件の影響を考察した。実験結果を表3に示す。
【0250】
【表3】
【0251】
<実施例22>
銅ベース触媒(最終的触媒)H’7の調製方法は、下記の通りである。
【0252】
(1’)以下のステップを用いて触媒前駆体H’7を調製した。
【0253】
ステップ(1’-1)
152gの硝酸銅、147gの硝酸亜鉛、および60gの硝酸アルミニウムをそれぞれ秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液A’7を調製した。50gの炭酸ナトリウムを秤量して1Lの脱イオン水に溶解し、溶液B’7を調製した。5Lのビーカーに1Lの脱イオン水を加え、95℃にまで昇温した。該温度を維持しつつ、連続撹拌の条件下で溶液A’7およびB’7を同時に滴下しながら、pHを約9.0に維持した。滴下完了後、引き続き2時間撹拌した後、エージングのために2時間静置し、濾過して沈殿物C’7を得た。
【0254】
ステップ(1’-2)
沈殿物C’7を110℃下で24時間乾燥し、さらに400℃下で5時間焼成した後、沈殿物の重さの3%に当たるグラファイト粉末を滑剤として添加して打錠成形し、さらに400℃下で5時間焼成することで、直径3.5~4.5mm、高さ3.5~4.5mmの円柱状の触媒前駆体F’7を得た。
【0255】
(2)銅ベース触媒H’7の調製方法として以下のステップを用いた。
【0256】
ステップ(2-2-1)
0.38gのアセトインおよび0.25gのKOHを37.5mlのメタノールに溶解し、溶液G’7を調製した。10gの触媒前駆体F’7を秤量して溶液G’7に添加し、室温(20~30℃)、超音波の条件下で撹拌しながら10時間浸漬させた。
【0257】
ステップ(2-2-2)
ステップ(2-2-1)の前記浸漬が完了した後、65℃下で、溶液E’7のうちの99体積%の液体を蒸発させ、最終の銅ベース触媒H’7を得た。
【0258】
元素分析の結果、触媒H’7中、CuOの含量が46.7重量%、ZnOの含量が38.6重量%、KOの含量が1.7重量%、Alの含量が9.4重量%、アセトインの含量が1.7重量%、メタノールの含量が1.9重量%であった。
【0259】
また、触媒H’7を、2価アルコールの脱水素化に基づくヒドロキシケトン調製反応へ供される前に、以下のステップを用いて予備処理した。
【0260】
ステップ(3-1)
10gの触媒H’7を秤量して20mlのステンレス製結晶化釜に入れ、圧力が0.2MPaになるまで釜内に窒素ガスを充填した。結晶化釜を325℃のオーブン中に置き、24時間静置した。
【0261】
ステップ(3-2)
水素ガス体積分率10%の窒素水素混合ガスを用いて、ステップ(3-1)の処理を経て得られた触媒H’7を常圧、200℃下で10時間還元した。還元完了後、当該触媒H’7を、反応へ供される反応原料とした。
【0262】
<実施例23>
実施例22で製造された触媒H’7を触媒として用い、内径10mmの固定床式反応器の中において、2,3-ブタンジオールを脱水素化してアセトインを製造したときの反応性能に対する、水素-アルコールモル比の影響を考察した。なお、反応温度は270℃、反応圧力は0.1MPaであった。実験結果を図2に示す。
【0263】
<実施例24>
アセトインを出発原料として用い、実施例1で調製された触媒H1の触媒性能と、実施例10で調製された触媒H’4の触媒性能とを比較した。容積1.67mlの小型反応釜を用いて評価実験を行い、流動化床式砂浴炉を用いて反応釜の温度を制御した。また、触媒を評価する前に、実施例1および実施例10に記載の予備還元および予備処理の手順に従って、当該触媒をそれぞれ前処理した。触媒を評価する具体的プロセスは、以下の通りである。すなわち、25mgのアセトイン、25mgのt-ブタノール、および5mgの触媒を反応釜に入れて密封した後、反応釜を、予め所定の反応温度にまで加熱された流動化床式砂浴炉に入れ、反応させた。2時間反応させた後、直ちに反応釜を取り出し、冷水に入れて降温した。冷却完了後、反応釜を開け、生成物を、アセトンで洗浄すると共に、定量のためにピペットを用いて10ml容積の瓶に移した。生成物を濾過した後、生成物に関して、GC-FIDを用いて定量分析し、GC-MSを用いて定性分析した。反応の結果を表4に示す。
【0264】
【表4】
【0265】
実施例1の方法で調製された触媒H1に関し、GC-MSを用いて反応生成物を分析した結果、反応生成物中に、2,3-ブタンジオン(収率10.3%)およびメチルペンタンジオン(収率6.2%)等のアセトインの過転化による生成物が、比較的多量に存在していた。一方、本発明の実施例10に記載された触媒調製方法を用いた場合、アセトインの過転化を大きく抑制することができた。
【0266】
<実施例24>
2,3-ブタンジオールの脱水素化に基づく、実施例19の生成物に対して、公知の減圧蒸留法を用いた分離を行い、アセトインの製品を得た。中国国家軽工業推奨標準QB/T 4234-2011に記載の『3-ヒドロキシ-2-ブタノン(アセトイン)』に関する分析方法を用い、該製品の品質を検査した。結果を表5に示す。
【0267】
【表5】
【0268】
表5に示すように、本発明にて製造されるアセトインの製品は、QB/T 4234-2011の『3-ヒドロキシ-2-ブタノン(アセトイン)』の技術指標を満たし、アセトインの含量が99.7重量%にまで達している。さらに、アルドール縮合法により製造された市販のアセトイン添加剤に比べ、本発明にて製造されるアセトインの製品は、硫黄、窒素等の不純物が含まれず、食品添加剤として、より好適である。
図1
図2