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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】水中探知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/521 20060101AFI20221216BHJP
   G01S 15/96 20060101ALN20221216BHJP
【FI】
G01S7/521 Z
G01S15/96
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018215202
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020085474
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】多田 芳博
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3059610(EP,A1)
【文献】特開平02-290580(JP,A)
【文献】特開2017-156141(JP,A)
【文献】特開平06-201817(JP,A)
【文献】特開平05-126938(JP,A)
【文献】特開平04-043984(JP,A)
【文献】特開昭54-066869(JP,A)
【文献】特開昭63-298184(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107140116(CN,A)
【文献】米国特許第04674075(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52- 7/64,
G01S 15/00-15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信し、物標に反射したエコー信号を受信する送受波器と、
前記送受波器を回動する駆動モータと、
前記送受波器及び前記駆動モータを収容するドームと、
前記ドーム内において、前記送受波器に電気的に接続される送受波器ケーブルの中途部の経路を規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、弾性変形しながら、前記送受波器ケーブルを前記ドームに近づく方向に引っ張ることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
超音波を送信し、物標に反射したエコー信号を受信する送受波器と、
前記送受波器を回動する駆動モータと、
前記送受波器及び前記駆動モータを収容するドームと
を備え、
前記送受波器に電気的に接続される送受波器ケーブルの中途部の周囲に、転がり部材が複数並べて支持されており、
前記転がり部材の外周面が前記送受波器ケーブルに接触可能であることを特徴とする水中探知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中探知装置であって、
前記駆動モータは、前記送受波器の上下方向に延びる旋回軸を中心として前記送受波器を回転させる旋回駆動モータを備えことを特徴とする水中探知装置。
【請求項4】
請求項に記載の水中探知装置であって、
前記ドームを上下方向に移動させる上下装置を備え、
前記上下装置は、前記ドームが取り付けられる昇降軸を備え、
前記旋回駆動モータ及び前記送受波器は、前記昇降軸の下方に設けられることを特徴とする水中探知装置。
【請求項5】
請求項1からまでの何れか一項に記載の水中探知装置であって、
前記駆動モータは、前記送受波器の上下方向と垂直な方向に延びる俯仰軸を中心として前記送受波器を回転させる俯仰駆動モータを備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水中探知装置であって、
前記俯仰駆動モータの回転は、ウォームギア機構を介して前記送受波器に伝達されることを特徴とする水中探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波によって物体を探知する水中探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中を探知するために用いられる送受波器を旋回、俯仰して目標物を探知する水中探知装置が知られている。特許文献1は、この種のソーナ送受波器(水中探知装置)を開示する。
【0003】
特許文献1に開示されたソーナ送受波器は、送受波器を旋回するための旋回駆動モータ、送受波器を俯仰させるための俯仰駆動モータ等の駆動モータを水上に設け、複数の軸が同心軸となって配置されている旋回軸を介して、各駆動モータからの駆動力を水中に装備された送受波器に伝達する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭47-006381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、駆動モータが送受波器から相当に離れて設けられているので、駆動力を伝達するための旋回軸の重量が大きくなってしまう。このため、駆動の負荷が大きくなり、駆動モータの小型化が困難であった。また、特許文献1では、旋回軸が、複数の軸が同心で配置される同心軸構造となっており、構成が複雑となっていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、駆動モータの小型化が容易であり、コンパクトな水中探知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の水中探知装置が提供される。即ち、この水中探知装置は、送受波器と、駆動モータと、ドームと、規制部材と、を備える。前記送受波器は、超音波を送信し、物標に反射したエコー信号を受信する。前記駆動モータは、前記送受波器を回動する。前記ドームは、前記送受波器及び前記駆動モータを収容する。前記規制部材は、前記ドーム内において、前記送受波器に電気的に接続される送受波器ケーブルの中途部の経路を規制する。前記規制部材は、弾性変形しながら、前記送受波器ケーブルを前記ドームに近づく方向に引っ張る。
【0009】
これにより、駆動モータを送受波器の近傍に配置することができるので、駆動力を伝達するための軸を短くでき、動力損失を抑制して駆動モータの小型化を実現することができる。この結果、装置のコンパクト化に繋がるとともに、コストの低減を図ることができる。また、ドーム内において、ケーブルの弛みによる垂れ下がりを回避することができ、ケーブルがドーム内で絡むことを防止できる。
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の水中探知装置が提供される。即ち、この水中探知装置は、送受波器と、駆動モータと、ドームと、を備える。前記送受波器は、超音波を送信し、物標に反射したエコー信号を受信する。前記駆動モータは、前記送受波器を回動する。前記ドームは、前記送受波器及び前記駆動モータを収容する。前記送受波器に電気的に接続される送受波器ケーブルの中途部の周囲に、転がり部材が複数並べて支持されている。前記転がり部材の外周面が前記送受波器ケーブルに接触可能である。
これにより、駆動モータを送受波器の近傍に配置することができるので、駆動力を伝達するための軸を短くでき、動力損失を抑制して駆動モータの小型化を実現することができる。この結果、装置のコンパクト化に繋がるとともに、コストの低減を図ることができる。また、ケーブルがドーム内部で擦れることによる損傷を防止できる。
【0010】
前記の水中探知装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記駆動モータは、前記送受波器の上下方向に延びる旋回軸を中心として前記送受波器を回転させる旋回駆動モータを備える。
【0011】
これにより、旋回駆動モータを旋回軸から離れた位置に配置することで、旋回軸の近傍に、電気ケーブルを配置する経路を容易に確保することができる。
【0012】
前記の水中探知装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この水中探知装置は、前記ドームを上下方向に移動させる上下装置を備える。前記上下装置は、前記ドームが取り付けられる昇降軸を備える。前記旋回駆動モータ及び前記送受波器は、前記昇降軸の下方に設けられる。
【0013】
これにより、ドームを上下させる上下装置と、送受波器の旋回角を変更する機構と、を別途に構成することができ、特に昇降軸周辺の構成の簡素化を図ることができる。
【0014】
前記の水中探知装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記駆動モータは、前記送受波器の上下方向と垂直な方向に延びる俯仰軸を中心として前記送受波器を回転させる俯仰駆動モータを備える。
【0015】
これにより、送受波器の俯仰角を容易に変更することができる。
【0016】
前記の水中探知装置においては、前記俯仰駆動モータの回転は、ウォームギア機構を介して前記送受波器に伝達されることが好ましい。
【0017】
これにより、動力伝達構造の小型化を実現することができるとともに、モータの回転を大きな減速比で送受波器に伝達することができ、送受波器を強力に俯仰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るソナーが備える音響探知装置の構成を示す斜視図。
図2】ソナーが船舶に搭載される様子を示す側面図。
図3】ソナーの構成を示す模式図。
図4】送受波器が水平方向に探知する場合の姿勢を示す断面図。
図5】送受波器が真下方向に探知する場合の姿勢を示す断面図。
図6図1の状態から送受波器の旋回角及び俯仰角を変更した様子を示す斜視図。
図7】(a)送受波器が水平方向に探知する場合の送受波器ケーブルの弛みを示す底面図。(b)送受波器が真下方向に探知する場合の送受波器ケーブルの弛みを示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るソナー100が備える音響探知装置4の構成を示す斜視図である。図2は、ソナー100が船舶90に搭載される様子を示す側面図である。図3は、ソナー100の構成を示す模式図である。図4は、送受波器40が水平方向に探知する場合の姿勢を示す断面図である。なお、以下の説明では、「上下方向」とは、鉛直方向を意味する。
【0024】
図2に示すソナー(水中探知装置)100は、漁船等の船舶90に装備され、水中地底調査や魚群探知等に用いられる。ソナー100は、図3に示すように、主として、表示操作部1と、送受信装置2と、上下装置3と、音響探知装置4と、を備える。
【0025】
表示操作部1は、オペレータがソナー100に関する指示又は設定等を行うためのものである。表示操作部1は、音響探知装置4を介して受信した反射波(エコー信号)に基づいて、魚群及び海底等を示す水中探知映像を生成して表示することができる。
【0026】
送受信装置2は、図略の送信回路と、受信回路と、を備える。送信回路は、表示操作部1からの指示に基づいて、外部に送信する送信信号を生成し、音響探知装置4へ出力する。受信回路は、音響探知装置4が受信したエコー信号に対して増幅及びA/D変換等の処理を行って、表示操作部1へ出力する。
【0027】
上下装置3は、音響探知装置4に機械的に接続されており、音響探知装置4を上下方向に移動させるための装置である。上下装置3は、上下方向に配置された円筒状の昇降軸30を備える。
【0028】
昇降軸30は、上下方向に細長く形成され、上下装置3が備える図略の昇降機構によって上下動可能に構成されている。この昇降軸30の下端に音響探知装置4が固定されている。昇降軸30は、中空の金属管から構成され、その内部には、後述の送受波器40、駆動モータ等をつなぐ様々なケーブルが通っている。
【0029】
音響探知装置4は、図2に示すように、船底90a等に取り付けられている。音響探知装置4は、上下装置3によって上下方向に直線的に移動可能に取り付けられている。この構成により、船舶90が移動している際に、音響探知装置4を船底90aの上方に格納することができ、漂流物や魚等に当たることによる昇降軸30の曲がりや音響探知装置4の損傷を回避することができる。一方、ソナー100を使用する場合には、音響探知装置4を船底90aから下方に突出させることで、様々な方向に超音波を送信することができる。
【0030】
音響探知装置4は、図1に示すように、主として、送受波器40と、格納ケース(ドーム)5と、を備える。
【0031】
送受波器40には、超音波を送受信可能な複数の振動子(図略)が内蔵されている。送受波器40の振動子は、送受信装置2から入力された送信信号に基づいて、探知領域に向けて超音波を送信する。送受波器40の振動子は、送信した超音波が魚や海底等の物標によって反射した反射波をエコー信号として受信することができる。
【0032】
送受波器40は、円筒の一部を切り欠いたような形状に構成されている。送受波器40を軸方向に垂直な面で切った断面は、略C字状となっている。送受波器40の外周には、円弧面状の送受波面が形成されている。送受波器40は中空状に形成されており、その内部空間40aは、細長い直線状の開口部を介して、送受波器40の外側と繋がっている。この開口部は、円筒の軸方向と平行な方向に沿って、送受波器40の軸方向一端から他端まで連続的に形成されている。送受波器40の内部空間40aには、後述する旋回軸60の下端部が差し込まれている。また、内部空間40aには、後述の取付け部材76、ウォーム71、ウォームホイール72及び俯仰軸70等が配置される。
【0033】
格納ケース5は、図4に示すように、上ケース部51と、下ケース部52と、から構成される。格納ケース5の内部には、収容空間5aが形成されている。この収容空間5aには、送受波器40、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7等が収容される。旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7は、詳細は後述するが、送受波器40を旋回及び俯仰させるためのものである。
【0034】
上ケース部51は、上端が閉じられた円筒状に形成される。この上端の中心位置には、昇降軸30を固定するためのスリーブ53が形成されている。スリーブ53は、その内部に挿入された昇降軸30に固定される。このように、上ケース部51は、昇降軸30と同軸で配置され、当該昇降軸30の下端に固定される。この結果、上下装置3によって格納ケース5を上下方向に移動させ、水中に出し入れすることができる。
【0035】
上ケース部51の下端には、上ケース部51の外径より小さい外径を有する差込部54が形成されている。下ケース部52が上ケース部51に取り付けられるとき、当該差込部54は、下ケース部52の内部に挿入され、その外周壁と下ケース部52の内周壁とが密接している。
【0036】
下ケース部52は、音響を透過可能な材料から構成される。下ケース部52は、上側が開放され、半球状の底部を有する中空の円筒状に形成されている。下ケース部52は、上ケース部51の差込部54を覆うように、上ケース部51に液密的に取り付けられている。このように、上ケース部51及び下ケース部52の中空部分から、格納ケース5の収容空間5aが構成される。
【0037】
続いて、図1等を参照して、送受波器40の旋回及び俯仰について詳細に説明する。図5は、送受波器40が真下方向に探知する場合の姿勢を示す断面図である。図6は、図1の状態から送受波器40の旋回角及び俯仰角を変更した様子を示す斜視図である。
【0038】
本実施形態の送受波器40は、上下方向に延びる後述の旋回軸60を中心として350°の角度範囲で回転可能であり、かつ、旋回軸60と垂直な方向(水平方向)に延びる俯仰軸70を中心として90°の角度範囲で回転可能であるように取り付けられている。旋回軸60の方向は、上下装置3による格納ケース5の移動方向と平行になっている。
【0039】
これにより、送受波器40は、図2の鎖線に示すように、略半球状の探知範囲に対して超音波を送信することができる。なお、以下の説明においては、送受波器40が旋回軸60を中心として回転することを「旋回」と呼び、送受波器40が俯仰軸70を中心として回転することを「俯仰」と呼ぶことがある。
【0040】
本実施形態のソナー100の音響探知装置4は、送受波器40の旋回角及び俯仰角を変更するための回転機構として、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7と、旋回軸60と、旋回板61と、補助取付け部材62と、インターナルギア63と、第1遊星ギア64と、駆動ギア65と、俯仰軸70と、ウォーム71と、ウォームホイール72と、を備える。旋回駆動モータ6は、送受波器40の旋回角を変更する駆動モータに相当する。俯仰駆動モータ7は、送受波器40の俯仰角を変更する駆動モータに相当する。回転機構を構成するこれらの部材は、格納ケース5の収容空間5a内に収容されている。
【0041】
旋回軸60は、昇降軸30と同軸で配置され、その外径が昇降軸30の内径より小さく形成されている。図4に示すように、旋回軸60の上端部が、昇降軸30の下端部の内側に挿入されている。旋回軸60は、中空の金属管から構成され、その内部には、送受波器40、旋回駆動モータ6、俯仰駆動モータ7等に電気的に接続される様々なケーブルが通っている。
【0042】
旋回板61は、旋回軸60の長手方向中途部に固定され、旋回軸60の旋回に伴って旋回する。旋回板61は、円板状に形成され、その中心位置を旋回軸60が貫通するように、旋回軸60の外周面に取り付けられている。
【0043】
補助取付け部材62は、旋回軸60と平行な方向で見たとき、円状に形成されている。補助取付け部材62は、旋回板61より上側に配置されている。図4に示すように、補助取付け部材62は、本体部62aと、旋回軸取付け部62bと、ギア取付け部62cと、を備える。
【0044】
本体部62aは、略円板状に形成され、その上側の面と、上ケース部51の天井面と、が接触するように、上ケース部51に固定されている。本体部62aは、その中心が旋回軸60の軸線上に位置するように配置されている。
【0045】
旋回軸取付け部62bは、円筒状に形成され、本体部62aの中心位置に配置されている。即ち、旋回軸取付け部62bは、昇降軸30と同軸で配置されている。旋回軸取付け部62bの上端部は、昇降軸30の下端部の内側に挿入されている。旋回軸取付け部62bは、ベアリング等を介して、旋回軸60を回転可能に支持している。従って、旋回軸60は昇降軸30に対して相対回転可能である。
【0046】
ギア取付け部62cは、旋回軸60と平行な方向で見たとき、略円環状に形成されている。ギア取付け部62cは、本体部62aの周縁部を下方に突出させて形成されている。ギア取付け部62cの下面にはインターナルギア63が取り付けられている。
【0047】
インターナルギア63は、ギア取付け部62cの下面と接触するように、ギア取付け部62cに固定されている。インターナルギア63は円環状に形成されている。インターナルギア63の内周には、第1遊星ギア64等と噛み合うための歯が形成されている。インターナルギア63は中空状に形成され、その内側を旋回軸60が上下方向に通過している。
【0048】
第1遊星ギア64は、旋回板61に固定された回転軸64aによって回転可能に支持されている。回転軸64aは、旋回板61の外周近傍から上方に突出するように配置されている。第1遊星ギア64は、旋回板61の上方に配置され、回転軸64aの先端部に支持されている。図1に示すように、第1遊星ギア64は、インターナルギア63に噛み合うとともに、旋回駆動モータ6により回転駆動される駆動ギア65とも噛み合っている。第1遊星ギア64は、駆動ギア65が回転することによって従動回転する。
【0049】
駆動ギア65は、旋回駆動モータ6の出力軸6aに取り付けられている。駆動ギア65は、旋回駆動モータ6により回転駆動される。駆動ギア65は、旋回駆動モータ6からの駆動力を第1遊星ギア64に伝達する。
【0050】
旋回駆動モータ6は、電動モータ(例えば、ステッピングモータ)から構成される。旋回駆動モータ6は、第1遊星ギア64の回転軸64aの近傍に配置される。旋回駆動モータ6のハウジングは、旋回板61の下面に固定される。旋回駆動モータ6の出力軸6aは、旋回板61を貫通して上方に突出している。駆動ギア65は、旋回板61の上方に配置され、出力軸6aの先端部に固定される。
【0051】
この構成で、第1遊星ギア64は、旋回駆動モータ6の駆動力が駆動ギア65を介して伝達されることにより、回転軸64aを中心として回転(自転)する。第1遊星ギア64はインターナルギア63に噛み合っているので、第1遊星ギア64は、格納ケース5に固定的に取り付けられているインターナルギア63の内周を転がるように移動する。旋回駆動モータ6の駆動によって、第1遊星ギア64は、回転軸64aを中心として自転しながら、旋回軸60を中心として公転する。
【0052】
第1遊星ギア64の公転に連動して、旋回板61(ひいては旋回軸60)が、旋回軸60の軸線を中心として回転する。このように、旋回駆動モータ6は、第1遊星ギア64、インターナルギア63及び旋回板61を介して、旋回軸60をインターナルギア63に対して相対回転させることができる。
【0053】
第1遊星ギア64とインターナルギア63により、遊星歯車機構が構成されている。遊星歯車機構の大きな減速比を利用して、小型の旋回駆動モータ6で、旋回板61、旋回駆動モータ6、俯仰駆動モータ7、送受波器40等を含む構造体を強力に旋回させることができる。
【0054】
本実施形態の音響探知装置4は、旋回角検出センサ67と第2遊星ギア68とを更に備えている。ソナー100は、旋回角検出センサ67及び第2遊星ギア68を用いて、旋回軸60の旋回角度を検出している。
【0055】
旋回角検出センサ67は、第2遊星ギア68の回転角度を検知するレゾルバから構成されている。旋回角検出センサ67は、第1遊星ギア64とは異なる位置で、旋回板61の外周近傍に配置される。旋回角検出センサ67のハウジングは、旋回板61の適宜の位置に固定される。旋回角検出センサ67の検出軸67aは、ハウジングから上方に突出している。
【0056】
第2遊星ギア68は、旋回板61の上方に配置され、旋回角検出センサ67の検出軸67aの先端部に固定されている。第2遊星ギア68は、インターナルギア63に噛み合っている。
【0057】
この構成により、旋回板61が回転すると、第2遊星ギア68が旋回板61とともに回転(公転)する。第2遊星ギア68はインターナルギア63に噛み合っているので、第2遊星ギア68は、公転に伴って自転する。旋回角検出センサ67は、第2遊星ギア68の自転角度を検出する。ソナー100は、検出された第2遊星ギア68の自転角度に基づいて、旋回軸60の旋回角度を計算により得ることができる。
【0058】
俯仰駆動モータ7は、電動モータ(例えば、ステッピングモータ)から構成される。俯仰駆動モータ7は、図1に示すように、旋回軸60の下部の外周近傍に配置されている。本実施形態の俯仰駆動モータ7は、その出力軸7aが旋回軸60と平行になるように配置されているが、これに限定されず、その出力軸7aが旋回軸60と平行でないように配置されても良い。俯仰駆動モータ7のハウジングは、ブロック状の取付け部材76を介して、旋回軸60に対して固定される。これにより、俯仰駆動モータ7は、旋回軸60の旋回に伴って、旋回軸60を中心として一体的に旋回する。
【0059】
俯仰駆動モータ7の出力軸7aには、カップリング73を介して動力伝達軸74が相対回転不能に結合されている。動力伝達軸74には、ウォーム71が固定されている。これにより、ウォーム71が俯仰駆動モータ7によって回転駆動される。
【0060】
ウォーム71は、取付け部材76に固定されたギアケース8の内部に配置されている。ギアケース8は、中空状に形成されている。ギアケース8は、ウォーム71を回転可能に支持している。ウォーム71の外周面には、ウォームホイール72の外周の歯と噛み合うためのネジ歯が形成されている。
【0061】
ウォームホイール72は、旋回軸60の真下に配置されている。ウォームホイール72は、ウォーム71と対面するように配置されている。ウォームホイール72は、送受波器40の内部空間40aに配置されている。ウォームホイール72は、歯が円弧状に並べられたセクタギアとして構成されている。ウォームホイール72は、送受波器40の内部空間40aの内壁に固定されている。
【0062】
ギアケース8は、ウォームホイール72を内部に差し込むことが可能な開放部を有している。ウォームホイール72は、外周の歯をギアケース8の内部に差し込んだ状態で、ギアケース8に取り付けられた俯仰軸70を介して回転可能に支持されている。俯仰軸70の向きは、旋回軸60に対して垂直となっている。俯仰軸70は、旋回軸60の軸線を下方に延長した部分を横切るように、水平に向けて配置されている。
【0063】
俯仰軸70を支持するギアケース8は、取付け部材76等を介して旋回軸60に固定されている。従って、旋回駆動モータ6が駆動すると、俯仰軸70は旋回軸60を中心として旋回する。
【0064】
この構成で、俯仰駆動モータ7は、ウォーム71を回転駆動することで、ウォーム71に噛み合うウォームホイール72の歯を送り、ウォームホイール72を回転させる。ウォームホイール72の回転に連動して、送受波器40は図4及び図5の白抜き矢印に示すように俯仰軸70を中心として回転する。
【0065】
ウォーム71とウォームホイール72とにより、ウォームギア機構が構成されている。ウォームギア機構の大きな減速比を利用して、小型の俯仰駆動モータ7で、重量物である送受波器40を強力に俯仰させることができる。
【0066】
ソナー100は、送受波器40の俯仰角度を検出するための俯仰角検出センサ75を備える。俯仰角検出センサ75は、例えば俯仰駆動モータ7の出力軸7aの回転角度を検知するレゾルバから構成されている。
【0067】
俯仰角検出センサ75は、カップリング73とウォーム71との間の動力伝達軸74に取り付けられている。ソナー100は、俯仰角検出センサ75を用いて動力伝達軸74の回転角度を検出することによって、送受波器40の俯仰角度を計算により得ることができる。
【0068】
以上に説明した旋回と俯仰の組合せにより、送受波器40を3次元的に様々な方向に向けることができる。図6には、図1の状態から送受波器40の旋回角及び俯仰角を適宜変更した様子が示されている。
【0069】
本実施形態においては、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7が、上下装置3側でなく、格納ケース5の内部に配置されている。従って、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7から送受波器40までの駆動伝達軸を短くでき、動力伝達経路での動力損失を抑制することができる。この結果、駆動のための構成を簡素化できるとともに、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7を小型化することができる。
【0070】
また、旋回駆動モータ6により送受波器40の旋回角を変更するための機構が格納ケース5の内部に配置されており、上下装置3と別々になっている。この結果、上下装置3の簡素化を図ることができ、また、上下装置3側のレイアウトの自由度が増大する。更に、旋回角の変更のための駆動伝達軸を昇降軸30の内部に配置しなくて良いので、特に昇降軸30の周辺の構成を簡素化することができる。
【0071】
続いて、音響探知装置4の電気ケーブルについて、図7を参照して詳細に説明する。図7(a)は、送受波器40が水平方向に探知する場合の送受波器ケーブル9の弛みを示す底面図である。図7(b)は、送受波器40が真下方向に探知する場合の送受波器ケーブル9の弛みを示す底面図である。
【0072】
音響探知装置4において、格納ケース5の収容空間5aには多数の電気ケーブルが配置される。図では省略しているが、電気ケーブルの例として、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7に接続されるもの、旋回角検出センサ67及び俯仰角検出センサ75に接続されるものが考えられる。図1及び図4等には、電気ケーブルの例として、送受波器40に対して信号をやり取りするための送受波器ケーブル9が示されている。
【0073】
ケーブルは、昇降軸30の内部、及び旋回軸60の内部を通って、格納ケース5の収容空間5a内に配索されている。図6に示すように、旋回軸60の長手方向中途部(具体的には、旋回板61より下側に位置する部分)には、ケーブルを引き出すための引出口60aが形成されている。
【0074】
本実施形態において、旋回駆動モータ6、駆動ギア65、第1遊星ギア64及びインターナルギア63からなる旋回駆動機構は、旋回軸60から適宜離れた位置に配置されている。従って、旋回軸60の近傍に、電気ケーブルを配置する経路を容易に確保することができる。本実施形態では、筒状の旋回軸60の内部に電気ケーブルが配置されている。
【0075】
引出口60aは、旋回軸60の管壁を貫通するように形成されている。引出口60aは、旋回軸60の径方向において、俯仰駆動モータ7が配置されている側とは略反対側に形成されている。
【0076】
電気ケーブルが内部を通過する旋回軸60は、インターナルギア63の内部に差し込まれている。また、旋回板61は、インターナルギア63等のギアと、引出口60aから引き出される電気ケーブルと、の間に配置される。従って、電気ケーブルが、第1遊星ギア64とインターナルギア63との噛合い部等に噛み込まれて損傷することを防止できる。
【0077】
なお、引出口60aは、旋回軸60の周方向に並べて複数形成されても良い。この場合、上述の電気ケーブルのそれぞれを、接続先の旋回駆動モータ6、俯仰駆動モータ7、旋回角検出センサ67、俯仰角検出センサ75のそれぞれに近い引出口60aから引き出すことができる。
【0078】
電気ケーブルは、引出口60aを介して格納ケース5の収容空間5a内に引き出されて、旋回駆動モータ6、俯仰駆動モータ7、旋回角検出センサ67、俯仰角検出センサ75、及び送受波器40の振動子等へ接続される。
【0079】
昇降軸30の内部において、電気ケーブルはある程度の弛みを有するように配置されている。これにより、旋回駆動モータ6、俯仰駆動モータ7、旋回角検出センサ67、俯仰角検出センサ75、及び送受波器40等の旋回による電気ケーブルのねじりを当該弛みによって吸収することができるので、ケーブルの破損を回避することができる。
【0080】
旋回板61の下側近傍において、送受波器ケーブル9には、図7等に示すように比較的大きく周回するように半周程度巻かれた弛み部9aが形成されている。なお、図7においては、格納ケース5が省略されている。送受波器ケーブル9は、弛み部9aを形成した後に下向きに曲げられ、図1に示すように俯仰駆動モータ7の近傍に設けられたガイドコイル(案内部材)91の内部を通って、俯仰軸70より低い位置まで延びる。ガイドコイル91から出た送受波器ケーブル9は、下ケース部52の底部を通過した後に送受波器40の内部空間40aへ導かれ、送受波器40に接続される。
【0081】
弛み部9aについて詳細に説明する。例えば図6に示すように、送受波器ケーブル9は、旋回軸60の径方向において、俯仰駆動モータ7が配置されている側とは略反対側に形成された引出口60aから引き出される。その後、送受波器ケーブル9は、旋回板61の径方向において、旋回軸60及び俯仰駆動モータ7から離れる方向に延びる。続いて、送受波器ケーブル9は、俯仰駆動モータ7が配置される側へ、旋回軸60を概ね円弧状に迂回するように配置される。これにより、弛み部9aが形成される。
【0082】
送受波器40が図5の白抜き矢印に示すように姿勢を変化させるとき、送受波器ケーブル9は、送受波器40によって下方に引っ張られる。しかしながら、送受波器ケーブル9に弛み部9aが形成されているので、送受波器ケーブル9が引きちぎられることを回避できる。
【0083】
図7等に示すように、弛み部9aの中途部には、旋回板61に固定された弾性部材(規制部材)92が巻かれている。弾性部材92は、例えばスプリングから構成することができる。弾性部材92は、送受波器ケーブル9の弛み部9aを旋回板61の径方向外側に引っ張るように付勢する。
【0084】
送受波器40は、水平方向に超音波を送信する第1姿勢(俯仰角が0°である状態)と、真下に超音波を送信する第2姿勢(俯仰角が90°である状態)と、の間で俯仰姿勢を変化させることができる。図4には第1姿勢が示され、図5には第2姿勢が示されている。
【0085】
図4の白抜き矢印に示すように第1姿勢から第2姿勢に変化するとき、弾性部材92が送受波器ケーブル9を外周側に引っ張ることによって、送受波器ケーブル9が、ガイドコイル91を介して上方に送り出される。これにより、送受波器ケーブル9の先端側(送受波器40に接続する側)からガイドコイル91までの間に、送受波器ケーブル9の折曲げや捻じり等によるキンク状態(元の状態に戻りにくくなってしまう状態)を回避することができる。また、ガイドコイル91の上側における弛み量の増加は、弾性部材92によって送受波器ケーブル9を外周側に引っ張ることによって吸収することができる。従って、弛み部9aが下側に垂れ下がることを回避することができ、弛み部9aが他の部材に絡むことを防止できる。
【0086】
図4に示す第1姿勢において、弛み部9aは、図7(a)に示すように、旋回軸60に最接近する位置に位置し、最も短くなる。このとき、弾性部材92が大きく伸びている。
【0087】
一方、図5に示す第2姿勢において、弛み部9aは、図7(b)に示すように、旋回板61の外側に最接近する位置(旋回軸60から離れた位置)に位置し、最も長くなる。この場合、弾性部材92が少し伸びている状態(又は自然長の状態)である。
【0088】
このように、弾性部材92によって弛み部9aを旋回軸60から離れる側に常に引っ張ることにより、送受波器40の俯仰に伴って弛み部9aの長さが変化しても、弛み部9aが垂れ下がることを回避できる。即ち、弾性部材92により弛み部9aの挙動を好適に規制することができる。
【0089】
次に、送受波器ケーブル9を案内するガイドコイル91について説明する。
【0090】
ガイドコイル91は、細長い金属を螺旋状に巻いて形成されている。図1等に示すように、ガイドコイル91は、収容空間5aにおいて、旋回軸60から離れた場所(下ケース部52の周壁の近傍)に配置されている。ガイドコイル91は、俯仰駆動モータ7を挟んで旋回軸60とは反対側に位置している。ガイドコイル91は、保持部材としての取付ステー77を介して、取付け部材76及びギアケース8に取り付けられている。
【0091】
ガイドコイル91は、旋回板61の近傍から導かれた送受波器ケーブル9を下側に案内する。ガイドコイル91は、送受波器ケーブル9において弛み部9aより下側に位置している部分の、長手方向中途部の外側を周回している。ガイドコイル91の下端部は、送受波器40に近づく向きに斜めに曲げられている。これにより、ガイドコイル91を通過した送受波器ケーブル9を送受波器40へ円滑に案内することができる。
【0092】
ガイドコイル91を構成する巻き線93には、多数のコロ(転がり部材)94が回転可能に支持されている。コロ94は、送受波器ケーブル9の周囲に多数配置され、それぞれが概ね球状に形成されている。コロ94の外周面は、ガイドコイル91の内部を通過する送受波器ケーブル9に対して接触可能である。これにより、送受波器40の俯仰によって送受波器ケーブル9がガイドコイル91の内部を移動するとき、送受波器ケーブル9とガイドコイル91とが擦れることによる損傷を回避することができる。また、ガイドコイル91により、送受波器ケーブル9の配索経路を規制することができるので、送受波器ケーブル9と格納ケース5との接触を回避することができる。また、送受波器ケーブル9を俯仰駆動モータ7から離れて配置することができ、ノイズの低減を図ることができる。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態のソナー100は、送受波器40と、旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7と、格納ケース5と、を備える。送受波器40は、超音波を送信し、物標に反射したエコー信号を受信する。旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7は、送受波器40を回動する。格納ケース5は、送受波器40及び駆動モータを収容する。
【0094】
これにより、駆動モータを送受波器40の近傍に配置することができるので、駆動力を伝達するための軸を短くでき、動力損失を抑制して駆動モータの小型化を実現することができる。この結果、装置のコンパクト化に繋がるとともに、コストの低減を図ることができる。
【0095】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0096】
旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7のうち一方だけが格納ケース5に収容され、残りが昇降軸30の上方(上下装置3側)に配置されても良い。
【0097】
旋回駆動モータ6及び俯仰駆動モータ7の回転は、遊星歯車機構又はウォームギア機構に限定されず、他の様々な構成で減速することができる。
【0098】
旋回板61の代わりに、枠組状の旋回フレームが旋回軸60に固定されても良い。
【0099】
駆動ギア65を設けずに、第1遊星ギア64を旋回駆動モータ6によって直接回転駆動しても良い。
【0100】
弾性部材92は、スプリングの代わりに、他の弾性部材(例えば、ゴム)から構成されても良い。また、弾性部材92の長手方向一端側が旋回板61に固定され、他端側が弛み部9aに引っ掛けられても良い。
【0101】
螺旋状のガイドコイル91の代わりに、細長い金属から形成されたガイドリング(ガイド部材)を上下方向に複数並べて取付ステー77に固定し、このガイドリングの内部を送受波器ケーブル9が通過するように構成しても良い。この場合、それぞれのガイドリングに複数のコロ94を支持することにより、ガイドコイル91と実質的に同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0102】
5 格納ケース(ドーム)
6 旋回駆動モータ(駆動モータ)
7 俯仰駆動モータ(駆動モータ)
40 送受波器
100 ソナー(水中探知装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7