(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】撮像装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20221216BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20221216BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20221216BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221216BHJP
H04N 5/369 20110101ALI20221216BHJP
【FI】
H04N5/232 290
G02B7/34
G03B13/36
H04N5/225 300
H04N5/232 120
H04N5/369 600
(21)【出願番号】P 2018215780
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】浜野 英之
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182481(JP,A)
【文献】特開2016-072695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G02B 7/34
G03B 13/36
H04N 5/225
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷蓄積期間が共通する第1視点画像と第2視点画像とを読み出し可能な撮像素子と、
前記撮像素子から読み出された画像に対して補正処理を適用する補正手段と、
連写時における前記補正手段による前記第1視点画像に対する補正処理を、前記撮像素子からの前記第1視点画像および前記第2視点画像の読み出しと並列に実行するように前記撮像素子および前記補正手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、連写時における前記補正手段による前記第2視点画像に対する補正処理を、前記撮像素子からの前記第1視点画像および前記第2視点画像の読み出しと並列せずに実行するように前記撮像素子および前記補正手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1視点画像と前記第2視点画像とが所定単位ずつ交互に読み出され、
前記制御手段は、メモリに保存された前記第2視点画像に前記補正処理を適用するように前記補正手段を制御することを特徴とする請求項1
または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1視点画像をメモリに保存せずに前記補正処理を適用するように前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1視点画像および前記第2視点画像に対する前記補正処理の完了後に前記撮像素子からライブビュー表示のための画像を読み出し、前記補正手段によって前記補正処理を適用するように前記撮像素子および前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2視点画像に対する前記補正処理と並列に前記撮像素子からライブビュー表示のための画像を読み出し、前記第2視点画像に対する前記補正処理の完了後に前記補正手段によって前記ライブビュー表示のための画像に前記補正処理を適用するように前記撮像素子および前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
4に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1視点画像に対する前記補正処理の完了後、前記第2視点画像に対する前記補正処理を開始する前に前記撮像素子からライブビュー表示のための画像を読み出して前記補正手段によって前記補正処理を適用し、前記ライブビュー表示のための画像に対する前記補正処理の完了後に、前記第2視点画像に対する前記補正処理を適用するように前記撮像素子および前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
4に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、メモリに保存された前記第1視点画像に前記補正処理を適用するように前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第2視点画像に対する前記補正処理を、連写の次の撮影に係る前記撮像素子からの読
み出しと並列に、あるいは前記連写の終了後に適用するように前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1視点画像に対する前記補正処理の完了後、ライブビュー表示のための画像を前記撮像素子から読み出し、前記補正手段によって前記補正処理を適用するように前記撮像素子および前記補正手段を制御することを特徴とする請求項
8または
9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記撮像素子から前記第1視点画像および前記第2視点画像を読み出す場合と、前記ライブビュー表示のための画像を読み出す場合とで、前記撮像素子の読み出しモードを切り替えることを特徴とする、請求項
5、6、7、および10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記ライブビュー表示のための画像が、焦点検出処理に用いられることを特徴とする請求項
5、6、7、10、および11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記撮像素子が、複数の光電変換部を備える画素を有し、前記第1視点画像と前記第2視点画像とは、読み出される光電変換部が異なることを特徴とする請求項1から
12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
電荷蓄積期間が共通する第1視点画像と第2視点画像とを読み出し可能な撮像素子と、前記撮像素子から読み出された画像に対して補正処理を適用する補正手段とを有する撮像装置の制御方法であって、
制御手段が、連写時における前記第1視点画像に対する補正処理を、前記撮像素子からの前記第1視点画像および前記第2視点画像の読み出しと並列に実行するように前記撮像素子および前記補正手段を制御する制御工程を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項15】
電荷蓄積期間が共通する第1視点画像と第2視点画像とを読み出し可能な撮像素子と、前記撮像素子から読み出された画像に対して補正処理を適用する補正手段とを有する撮像装置が有するコンピュータを、請求項1から
13のいずれか1項に記載の撮像装置の制御手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズの射出瞳を複数の領域に瞳分割し、分割された瞳領域に応じた複数の視点画像を同時に撮影することができる撮像装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、1つの画素に対して、1つのマイクロレンズと複数に分割された光電変換部が形成されている撮像素子を用いた撮像装置が開示されている。画素に形成された複数の光電変換部のそれぞれには、撮影レンズの射出瞳のうち、互いに異なる部分領域を出射した光が入射する。そのため、光電変換部ごとに信号を読み出し、画素内での位置が同じ光電変換部から読み出された信号から画像を形成することにより、1回の撮影により、電荷蓄積期間が共通する複数の視点の異なる画像(多視点画像)を得ることができる。また、複数の光電変換部で得られる信号を画素ごとに加算することにより、画素ごとに1つのマイクロレンズと1つの光電変換部を有する一般的な撮像素子で得られる画像と同様の、1つの画像(通常画像)を得ることもできる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第4410804号明細書
【文献】特開2001-083407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮影で得られた画像に対して適用する処理がある場合、電荷蓄積期間が共通する多視点画像を取得すると、処理を複数の画像に適用する必要があるため、負荷が増大する。その結果、例えば多視点画像を取得する撮影モードでは、通常画像を取得する撮影モードよりも連写速度が低下しうる。
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、電荷蓄積期間が共通する多視点画像を取得する場合の連写速度低下を抑制することのできる撮像装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、電荷蓄積期間が共通する第1視点画像と第2視点画像とを読み出し可能な撮像素子と、撮像素子から読み出された画像に対して補正処理を適用する補正手段と、連写時における補正手段による第1視点画像に対する補正処理を、撮像素子からの第1視点画像および第2視点画像の読み出しと並列に実行するように撮像素子および補正手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする撮像装置によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
このような構成により本発明によれば、電荷蓄積期間が共通する多視点画像を取得する場合の連写速度低下を抑制することのできる撮像装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】実施形態に係る焦点検出装置を備える撮像装置の一例としてのカメラシステムの機能構成例を示すブロック図
【
図1B】
図1Aにおける画像処理部およびメモリの構成例を示すブロック図
【
図4】
図3の撮像素子の動作例を示すタイミングチャート
【
図5】実施形態における光電変換領域と射出瞳との関係例を示す図
【
図7】実施形態におけるカメラの撮像処理に関するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る焦点検出装置をレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラ(カメラシステム)に適用した実施形態について説明する。しかしながら本発明に係る焦点検出装置は、位相差検出方式の焦点検出に用いる信号を生成可能な撮像素子を有する任意の電子機器に適用可能である。このような電子機器には、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ一般はもとより、カメラ機能を有する携帯電話機、コンピュータ機器、メディアプレーヤ、ロボット機器、ゲーム機器、家電機器などが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
図1Aは、本発明の実施形態に係る焦点検出装置を備える撮像装置の一例としての、撮影レンズを交換可能なカメラと撮影レンズからなるカメラシステムの構成例を示す図である。
図1Aにおいて、カメラシステムはカメラ100と、交換可能な撮影レンズ300とから構成される。
【0012】
撮影レンズ300を通過した光束は、レンズマウント306,106を通過してカメラ100に入射する。カメラ100に入射した光はメインミラー130により上方へ反射され、光学ファインダ104に入射する。光学ファインダ104により、撮影者は被写体光学像を観察しながら撮影できる。光学ファインダ104内には、例えば、合焦表示、手振れ警告表示、絞り値表示、露出補正表示などを被写体光学像とともに提示する表示部が設けられている。
【0013】
メインミラー130の背面にはサブミラー131が設けられている。メインミラー130に入射する光の一部がサブミラー131に入射するよう、メインミラー130の一部はハーフミラーである。メインミラー130を透過した光はサブミラー131で下方へ反射されて焦点検出装置105へ入射する。焦点検出装置105は、例えば2次結像光学系とラインセンサとを有する位相差検出方式の焦点検出装置であり、1対の像信号をAF部(オートフォーカス部)42に出力する。AF部42では、1対の像信号に対して位相差検出演算を行い、検出した位相差に基づいて撮影レンズ300のデフォーカス量およびデフォーカス方向を求める。システム制御部50は、撮影レンズ300のフォーカス制御部342(後述)を制御して、AF部42が求めたデフォーカス量およびデフォーカス方向に基づく位置に撮影レンズ300のフォーカスレンズを駆動する。
【0014】
撮像素子14を露光して撮影を行う場合、システム制御部50は、不図示のクイックリターン機構によりメインミラー130とサブミラー131を光路外に退避させる(ミラーアップ)。これにより、撮影レンズ300を通過してカメラ100に入射する光は、シャッター12の開口部を介して、撮像素子14に入射可能になる。撮像素子14による撮影が終了すると、システム制御部50は、メインミラー130とサブミラー131を
図1Aに示す位置(光路中)に戻す。なお、撮像素子14による撮影は、静止画撮影に加え、後述する画像表示部28にライブビュー表示を行うための動画撮影、記録用の動画撮影などがある。
【0015】
撮像素子14はCCDまたはCMOSイメージセンサであり、光電変換領域(またはフォトダイオード)を有する画素が複数、2次元的に配置された構成を有する。各画素は入射光量に応じた電圧を有する電気信号を出力する。したがって、撮像素子14は被写体光学像を電気信号群に変換する。撮像素子14から読み出される個々の電気信号はA/D変換器16でデジタル信号(画像データ)に変換される。なお、後述するように、A/D変換器16は撮像素子14に組み込まれてもよい。
【0016】
本実施形態に係る撮像素子14は少なくとも一部の画素が複数の光電変換領域(またはフォトダイオード)を有するように構成されている。上述の通り、このような構成を有する画素は、位相差検出方式の焦点検出に用いる信号を出力可能である。従って、クイックリターン機構によりメインミラー130とサブミラー131が光路外に退避し、焦点検出装置105に光が入射しない場合であっても、撮像素子14の出力を用いた位相差検出方式の焦点検出が可能である。
【0017】
本実施形態では、1つの画素が有する複数の光電変換領域の数が2であるものとする。この場合、複数の光電変換部を有する画素からは、第1の光電変換部の出力(A信号)、第2の光電変換部の出力(B信号)、および第1の光電変換部と第2の光電変換部の加算出力(A+B信号)という3種類の出力を得ることができる。なお、複数の光電変換領域を所定方向(例えば水平または垂直方向)に2分して取り扱いできれば、1つの画素が有する複数の光電変換領域の数は2でなくてもよい。また、A信号は、A+B信号からB信号を減じることによって取得してもよい。同様に、B信号は、A+B信号からA信号を減じることによって取得してもよい。
【0018】
タイミング発生回路18は、撮像素子14、A/D変換器16、D/A変換器26にクロック信号や制御信号を供給する。タイミング発生回路18の動作はメモリ制御部22及びシステム制御部50により制御される。複数の光電変換部を有する画素から、一部の光電変換部の出力を読み出したり、全ての光電変換部の出力を加算して読み出したりするための制御信号は、システム制御部50がタイミング発生回路18を制御して撮像素子14に供給する。
【0019】
画像処理部20は、A/D変換器16からの画像データ或いはメモリ制御部22からの画像データに対して画像処理を適用する。画像処理部20は、例えば信号処理プロセッサ(DSP)、ASIC、FPGA、CPLDなどのハードウェア回路によって実現することができる。画像処理部20はまた、プログラマブルプロセッサとメモリとを備え、メモリに記憶されたプログラムをプログラマブルプロセッサで実行することによっても実現できる。
【0020】
図1Bは、画像処理部20が実現する機能の一部をブロックで模式的に示した図である。第1補正処理部20aおよび第2補正処理部20
dは、それぞれ所定の補正処理を適用する。ここで、第1補正処理部20aは表示や記録に用いる画像データを対象とし、第2補正処理部20
dは焦点検出用の画像データを対象として、補正処理を提供する。
【0021】
焦点検出用の画像データは一部の画素から生成されるため、表示や記録に用いる画像データよりもデータ量が少ない。また、焦点検出には色情報は不要であり、輝度情報だけがあれば足りる。そのため、第1および第2補正処理部20aおよび20dをハードウェア回路で実現する場合、第2補正処理部20dは第1補正処理部20aと比較すると回路規模が小さくてよい。現像処理部20cは、第1補正処理部20aで補正処理が適用された画像データに対して、現像処理(画素補間処理、ホワイトバランス調整処理、色変換処理など)を適用する。
【0022】
AF信号生成部20bは、A/D変換器16からの画像データ(撮像素子14の出力信号)のうち、焦点検出用信号の生成に用いられる出力信号(上述のA信号、B信号)から、位相差検出方式の焦点検出に用いる1対の信号列を生成する。AF信号生成部20bは例えば、焦点検出領域に含まれる、光電変換部の分割方向(
図2の例では水平方向)に並んだ複数の画素から読み出された複数のA信号からなる信号列としてA像を生成する。AF信号生成部20bは同様にして複数のB信号からなる信号列をB像を生成する。A像およびB像が、位相差検出方式の焦点検出に用いる1対の信号列である。なお、A信号およびB信号から位相差検出方式の焦点検出に用いる1対の信号列を生成する方法はこれに限定されない。
【0023】
第2補正処理部20dは、AF信号生成部20bが生成する1対の信号列に対して補正処理を適用する。その後、1対の信号列はシステム制御部50を介してAF部42へ送られる。AF部42は1対の信号列の相関演算により信号列間のずれ量(シフト量)を検出し、ずれ量を撮影レンズ300のデフォーカス量とデフォーカス方向に変換する。AF部42は、変換したデフォーカスの量および方向をシステム制御部50に出力する。システム制御部50は、撮影レンズ300のフォーカス制御部342を通じてフォーカスレンズを駆動し、撮影レンズ300の合焦距離を調節する。
【0024】
また、画像処理部20のAF信号生成部20bは、撮像素子14から得られる、第1の視点画像としての通常の画像データを生成するための信号(上述したA+B信号に相当)に基づいて、コントラスト評価値を演算することができる。コントラスト評価値は、AF信号生成部20bからシステム制御部50に直接出力されてよい。システム制御部50は、撮影レンズ300のフォーカス制御部342を通じてフォーカスレンズ位置を変更しながら撮像素子14で撮影を行い、画像処理部20で算出したコントラスト評価値の変化を調べる。そして、システム制御部50は、フォーカスレンズを、コントラスト評価値が最大となる位置に駆動する。このように、本実施形態のカメラ100は、コントラスト検出方式の焦点検出も可能である。
【0025】
したがって、カメラ100は、動画撮影時のようにメインミラー130とサブミラー131が光路外に退避して焦点検出装置105に光が入射しない場合も、撮像素子14から得られる信号に基づく焦点検出が可能である。この場合、システム制御部50は、位相差検出方式とコントラスト検出方式の一方または両方を用いることができる。また、カメラ100は、メインミラー130とサブミラー131が光路内にある、光学ファインダ104を用いた静止画撮影では、焦点検出装置105による位相差検出方式の焦点検出が可能である。このように、カメラ100は、静止画撮影時、ライブビュー表示時、(記録用の)動画撮影時のどの状態においても焦点検出が可能である。
【0026】
メモリ制御部22は、A/D変換器16、タイミング発生回路18、画像処理部20、画像表示メモリ24、D/A変換器26、メモリ30、圧縮伸長部32を制御する。そして、A/D変換器16の出力する画像データは、画像処理部20およびメモリ制御部22を介して、あるいはメモリ制御部22のみを介して、画像表示メモリ24あるいはメモリ30に書き込まれる。画像表示メモリ24には、例えば画像表示部28の特性に合わせた表示用画像データが書き込まれる。表示用画像データは、D/A変換器26によって表示用のアナログ信号に変換され、画像表示部28出力される。画像表示部28は例えば液晶ディスプレイである。撮像素子14で撮影した動画から生成した表示用画像データを画像表示部28に逐次表示することで、画像表示部28を電子ビューファインダ(EVF)として機能させることができる。画像表示部28をEVFとして機能させるための表示動作をライブビュー表示、表示される画像をライブビュー画像と呼ぶ。画像表示部28は、システム制御部50の指示により表示をON/OFFすることが可能であり、表示をOFFにした場合にはカメラ100の電力消費を低減できる。
【0027】
メモリ30は例えばDRAMであり、
図1Bに示すように、記録画像用メモリ30aとシステムメモリ30bとから構成される。なお、記録画像用メモリ30aとシステムメモリ30bとは、同一メモリ空間内の異なる領域であってよい。記録画像用メモリ30aは静止画や動画の一時記憶に用いられ、所定枚数の静止画や所定時間の動画を記憶するのに必要な記憶容量を有する。記録画像用メモリ30aは例えば連写撮影やパノラマ撮影における画像バッファとして用いられる。システムメモリ30bはシステム制御部50が不揮発性メモリ52に記憶されたプログラムを実行したり、撮像素子14から取得した信号を一時保存したりするために用いられる。
【0028】
圧縮伸長部32は、記録画像用メモリ30aに記憶された画像データを読み込んで例えば適応離散コサイン変換(ADCT)もしくはその逆変換を適用し、圧縮(符号化)処理や、伸長(復号)処理を適用する。圧縮伸長部32は、処理した画像データを記録画像用メモリ30aに書き戻す。なお、圧縮および伸長の方法は、設定に応じて異なり得る。
【0029】
シャッター制御部36は、システム制御部50の制御にしたがい、撮影レンズ300の絞り312を制御する絞り制御部344と連携しながら、シャッター12の動作を制御する。インターフェース(I/F)部38およびコネクタ122は、カメラ100と撮影レンズ300とを電気的に接続する。I/F部38およびコネクタ122は、カメラ100と撮影レンズ300との間における制御信号、状態信号、データなど通信路を提供するほか、カメラ100から撮影レンズ300への電源を供給路を提供する。なお、I/F部38およびコネクタ122は、光信号を伝送するための構成を有してもよい。
【0030】
測光部46は、被写体光学像の輝度情報を取得し、被写体輝度と露出条件とを対応付けたプログラム線図などを用いて露出条件を決定する自動露出制御(AE)処理を行うことができる。測光部46は、例えば光学ファインダ104に入射する被写体光学像の輝度を例えば撮像素子を用いて計測することにより、被写体光学像の輝度情報を取得することができる。また、測光部46は、フラッシュ48と連携することで調光処理機能も有する。なお、画像処理部20が撮像素子14から得られた画像データから取得した輝度情報などに基づいてシステム制御部50がAE処理を実行して露出条件を決定してもよい。いずれの場合も、システム制御部50は、決定された露出条件に基づいてシャッター制御部36と撮影レンズ300の絞り制御部344を制御する。フラッシュ48は、AF補助光を発生させたり、撮影時の発光量を決定したりする機能を有する。
【0031】
システム制御部50は例えばCPUやMPUなどのプロセッサを有し、プロセッサにより例えば不揮発性メモリ52に予め記憶されたプログラムをシステムメモリ30bに読み込んで実行することによりカメラシステム全体の動作を制御する。不揮発性メモリ52はシステム制御部50の動作用の定数、変数、プログラム等を記憶する。
表示部54はシステム制御部50でのプログラムの実行に応じて、文字、画像、音声等を用いて動作状態やメッセージ等を表示する、例えば液晶表示装置である。表示部54はカメラ100の操作部近辺の視認し易い位置に単数或いは複数設置され、例えばLCDやLED等の組み合わせにより構成される。表示部54の表示内容のうち、LCD等に表示するものとしては、記録枚数や残撮影可能枚数等の撮影枚数に関する情報や、シャッタースピード、絞り値、露出補正、フラッシュ等の撮影条件に関する情報等がある。その他、電池残量や日付・時刻等も表示される。
【0032】
不揮発性メモリ56は、電気的に消去・記録可能であり、例えばEEPROMである。60、62、64、66、68及び70は、システム制御部50の各種の動作指示を入力するための操作部であり、スイッチやダイアル、タッチパネル、視線検知によるポインティング、音声認識装置等の単数或いは複数の組み合わせで構成される。
【0033】
モードダイアル60は、電源オフ、オート撮影モード、マニュアル撮影モード、再生モード、PC接続モード等の各機能モードを切り替え設定できる。シャッタースイッチSW1である62は、不図示のシャッターボタンが半押しされるとONとなり、AF処理、AE処理、AWB処理、EF処理等の動作開始を指示する。シャッタースイッチSW2である64は、シャッターボタンが全押しされるとONとなり、撮影に関する一連の処理の動作開始を指示する。撮影に関する一連の処理とは、露光処理、現像処理及び記録処理等のことである。露光処理では、撮像素子14から読み出した信号をA/D変換器16、メモリ制御部22を介してメモリ30に画像データとして書き込む。現像処理では、第1補正処理部20aによる補正処理や現像処理部20cによる現像処理を行う。記録処理では、記録画像用メモリ30aから画像データを読み出し、圧縮伸長部32で圧縮を行い、記憶媒体150或いは160に画像データとして書き込む。
【0034】
画像表示ON/OFFスイッチ66は、画像表示部28のON/OFFを設定できる。この機能により、光学ファインダ104を用いて撮影を行う際に、液晶モニタ等から成る画像表示部28への電流供給を遮断することにより、省電力を図ることができる。クイックレビューON/OFFスイッチ68は、撮影した画像データを撮影直後に自動再生するクイックレビュー機能を設定する。操作部70は、各種ボタンやタッチパネル等からなる。各種ボタンには、メニューボタン、フラッシュ設定ボタン、単写/連写/セルフタイマー切り替えボタン、露出補正ボタン等がある。
【0035】
電源制御部80は、電池検出回路、DC/DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成されている。電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行い、検出結果及びシステム制御部50の指示に基づいてDC/DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記憶媒体を含む各部へ供給する。コネクタ82及び84は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、リチウムイオン電池等の二次電池、ACアダプタ等からなる電源部86をカメラ100と接続する。
【0036】
インターフェース(I/F)部90及び94は、メモリカードやハードディスク等の記憶媒体との接続機能を有し、コネクタ92および96は、メモリカードやハードディスク等の記憶媒体150および160の端子と物理的に接触する。媒体着脱検知部98は、コネクタ92または96に記憶媒体が装着されているかどうかを検知する。なお、本実施形態では、記憶媒体を取り付けるインターフェース及びコネクタを2系統持つものとして説明しているが、インターフェース及びコネクタは、単数あるいは複数、いずれの系統数を備える構成としても構わない。また、異なる規格のインターフェース及びコネクタを組み合わせて備える構成としても構わない。更に、インターフェース及びコネクタにLANカード等の各種通信カードを接続することで、コンピュータやプリンタ等の他の周辺機器との間で画像データや画像データに付属した管理情報を転送し合うことができる。
【0037】
通信部110は、有線通信、無線通信等の各種通信機能を有する。コネクタ112は、通信部110によりカメラ100を他の機器と接続し、無線通信の場合はアンテナである。記憶媒体150及び160は、メモリカードやハードディスク等である。記憶媒体150及び160は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録部152,162、カメラ100とのインターフェース154,164、カメラ100と接続を行うコネクタ156,166を備えている。
【0038】
次に、撮影レンズ300について説明する。撮影レンズ300は、レンズマウント306をカメラ100のレンズマウント106に係合させることによりにカメラ100と機械的並びに電気的に結合される。電気的な結合はレンズマウント106及びレンズマウント306に設けられたコネクタ122及びコネクタ322によって実現される。レンズ311には撮影レンズ300の合焦距離を調節するためのフォーカスレンズが含まれる。フォーカス制御部342は、フォーカスレンズを光軸に沿って駆動することで撮影レンズ300の焦点調節を行う。フォーカス制御部342の動作は、調節手段としてのシステム制御部50が、レンズシステム制御部346を通じて制御する。絞り312はカメラ100に入射する被写体光の量と角度を調節する。
【0039】
コネクタ322及びインターフェース338は、撮影レンズ300をカメラ100のコネクタ122と電気的に接続する。そして、コネクタ322は、カメラ100と撮影レンズ300との間で制御信号、状態信号、データ信号等を伝え合うと共に、各種電圧の電流を供給される機能も備えている。コネクタ322は電気通信のみならず、光通信、音声通信等を伝達する構成としてもよい。
【0040】
ズーム制御部340はレンズ311の変倍レンズを駆動し、撮影レンズ300の焦点距離(画角)を調整する。撮影レンズ300が単焦点レンズであればズーム制御部340は存在しない。絞り制御部344は、測光部46からの測光情報に基づいて、シャッター12を制御するシャッター制御部36と連携しながら、絞り312を制御する。
【0041】
レンズシステム制御部346は例えばCPUやMPUなどのプログラマブルプロセッサを有し、予め記憶されたプログラムを実行することにより撮影レンズ300全体の動作を制御する。そして、レンズシステム制御部346は、撮影レンズの動作用の定数、変数、プログラム等を記憶するメモリの機能を備えている。不揮発性メモリ348は、撮影レンズ固有の番号等の識別情報、管理情報、開放絞り値や最小絞り値、焦点距離等の機能情報、現在や過去の各設定値などを記憶する。
【0042】
不揮発性メモリ348はまた、撮影レンズ300の状態に応じたレンズ枠情報も記憶している。レンズ枠情報は、撮影レンズ300を通過してカメラ100に入射する光を決定する、レンズ枠の開口半径の情報と、撮像素子14からレンズ枠の開口までの距離の情報である。レンズ枠には、レンズ311の縁部を保持する枠状の部品だけでなく、絞り312も含まれる。レンズ枠の位置および/または開口半径はレンズ311の合焦距離(フォーカスレンズの位置)や焦点距離(ズーム位置)に応じて変化する。そのため、レンズ枠情報はレンズ311の複数のフォーカス位置やズーム位置に対応して複数記憶されている。そして、カメラ100が焦点検出を行う際には、レンズ311のフォーカス位置とズーム位置に対応したレンズ枠情報が不揮発性メモリ348から読み出され、カメラ100(システム制御部50)にコネクタ322、122を通じて供給される。
以上が、カメラ100と撮影レンズ300からなる本実施形態のカメラシステムの構成である。
【0043】
次に、撮像素子14の構成を
図2および
図3を用いて説明する。
図2(a)は、撮像素子14が有する複数の画素のうち、位相差検出方式の焦点検出に用いる信号を出力可能な構成を有する画素の回路構成例を示す。ここでは、1つの画素200に、マイクロレンズを共有する複数の光電変換領域または光電変換部として2つのフォトダイオード(PD)201a、201bが設けられた構成を説明する。しかし、より多く(例えば、4つ)のフォトダイオードが設けられてもよい。フォトダイオード201a(第1の光電変換部)、フォトダイオード201b(第2の光電変換部)は、後述するように、焦点検出画素として機能するとともに、撮像画素としても機能する。
【0044】
転送スイッチ202a、202b、リセットスイッチ205、選択スイッチ206は例えばMOSトランジスタにより構成されてよい。以下の説明ではこれらスイッチはN型のMOSトランジスタとするが、P型のMOSトランジスタであってもよいし、他のスイッチング素子であってもよい。
【0045】
図2(b)は、撮像素子14に2次元配列された複数の画素のうち、水平n画素、垂直m画素を模式的に示した図である。ここでは、全ての画素が
図2(a)に示した構成を有するものとする。各画素にはマイクロレンズ201iが設けられ、フォトダイオード201a、201bは同一のマイクロレンズを共有する。以下では、フォトダイオード201aにより得られる信号をA信号または第1の信号、フォトダイオード201bにより得られる信号をB信号または第2の信号と呼ぶ。また、複数のA信号から生成される焦点検出用の信号列をA像または第1の像信号、複数のB信号から生成される焦点検出用の信号列をB像または第2の像信号と呼ぶ。また、対をなすA像とB像とを、信号列対または像信号対と呼ぶ。
【0046】
転送スイッチ202aはフォトダイオード201aとフローティングディフュージョン(FD)203との間に接続される。また、転送スイッチ202bはフォトダイオード201bとFD203との間に接続される。転送スイッチ202a、202bは、それぞれフォトダイオード201a、201bで発生した電荷を共通のFD203に転送する素子である。転送スイッチ202a、202bは、それぞれ制御信号TX_A、TX_Bによって制御される。
【0047】
フローティングディフュージョン(FD)203は、フォトダイオード201a、201bから転送された電荷を一時的に保持するとともに、保持した電荷を電圧信号に変換する電荷電圧変換部(キャパシタ)として機能する。
【0048】
増幅部204は、ソースフォロワMOSトランジスタである。増幅部204のゲートは、FD203に接続され、増幅部204のドレインは電源電位VDDを供給する電源208に接続される。増幅部204は、FD203に保持された電荷に基づく電圧信号を増幅して、画像信号として出力する。
【0049】
リセットスイッチ205は、FD203と電源208との間に接続される。リセットスイッチ205は、制御信号RESによって制御され、FD203の電位を電源電位VDDにリセットする機能を有する。
【0050】
選択スイッチ206は、増幅部204のソースと垂直出力線207の間に接続される。選択スイッチ206は、制御信号SELによって制御され、増幅部204で増幅された画像信号を垂直出力線207に出力する。
【0051】
図3は、撮像素子14の構成例を示す図である。撮像素子14は、画素アレイ234、垂直走査回路209、電流源負荷210、読み出し回路235、共通出力線228、229、水平走査回路232及びデータ出力部233を有する。以下では画素アレイ234に含まれる全ての画素が
図2(a)に示した回路構成を有するものとする。しかしながら、一部の画素はマイクロレンズあたり1つのフォトダイオードが設けられた構成を有してもよい。
【0052】
画素アレイ234は、行列状に配置された複数の画素200を有する。
図3には説明を簡略化するために、4行n列の画素アレイ234を示している。しかし、画素アレイ234が有する画素200の行数および列数は任意である。また、本実施形態において、撮像素子14は単板式カラー撮像素子であり、原色ベイヤー配列のカラーフィルタを有している。そのため、画素200には赤(R)、緑(G)及び青(B)のカラーフィルタのいずれか1つが設けられている。なお、カラーフィルタを構成する色や配列に特に制限はない。また、画素アレイ234に含まれる一部の画素は遮光され、オプチカルブラック(OB)領域を形成する。
【0053】
垂直走査回路209は、行ごとに設けられた駆動信号線236を介して、各行の画素200に、
図2(a)に示した各種の制御信号を供給する。なお、
図3では簡略化のために各行の駆動信号線236を1本の線で表しているが、実際には複数の駆動信号線が各行に存在する。
【0054】
画素アレイ234に含まれる画素は、一列ごとに共通の垂直出力線207に接続される。垂直出力線207の各々には、電流源負荷210が接続される。それぞれの画素200からの信号は、列ごとに設けられた読み出し回路235に垂直出力線207を通じて入力される。
【0055】
水平走査回路232は、それぞれが1つの読み出し回路235に対応する制御信号hsr(0)~hsr(n-1)を出力する。制御信号hsr()はn個の読み出し回路235の1つを選択する。制御信号hsr()で選択された読み出し回路235は、共通出力線228、229を通じてデータ出力部233に信号を出力する。
【0056】
次に、読み出し回路235の具体的な回路構成例を説明する。
図3には、n個の読み出し回路235のうち1つについての回路構成例を示しているが、他の読み出し回路235も同じ構成を有する。本実施形態の読み出し回路235はランプ型のAD変換器を含んでいる。
【0057】
垂直出力線207を通じて読み出し回路235に入力された信号は、クランプ容量211を介してオペアンプ213の反転入力端子に入力される。オペアンプ213の非反転入力端子には、基準電圧源212から基準電圧Vrefが供給される。フィードバック容量214~216とスイッチ218~220がオペアンプ213の反転入力端子と出力端子の間に接続される。オペアンプ213の反転入力端子と出力端子の間にはさらにスイッチ217が接続される。スイッチ217は制御信号RES_Cにより制御され、フィードバック容量214~216の両端をショートさせる機能を有する。また、スイッチ218~220はシステム制御部50からの制御信号GAIN0~GAIN2で制御される。
【0058】
比較器221にはオペアンプ213の出力信号と、ランプ信号発生器230から出力されるランプ信号224が入力される。Latch_N222はノイズレベル(N信号)を保持するための記憶素子であり、Latch_S223はA信号およびA信号とB信号が加算された信号レベル(A+B信号)を保持するための記憶素子である。比較器221の出力(比較結果を表す値)とカウンタ231の出力(カウンタ値)225が、Latch_N222とLatch_S223のそれぞれに入力される。Latch_N222とLatch_S223の動作(有効または無効)はそれぞれ、LATEN_N、LATEN_Sで制御される。Latch_N222で保持したノイズレベルはスイッチ226を介して共通出力線228に出力される。Latch_S223で保持した信号レベルはスイッチ227を介して共通出力線229に出力される。共通出力線228、229はデータ出力部233に接続される。
【0059】
スイッチ226、227は水平走査回路232からの制御信号hsr(h)で制御される。ここで、hは制御信号線が接続されている読み出し回路235の列番号を示す。各読み出し回路235のLatch_N222、Latch_S223に保持された信号レベルは共通出力線228、229に順次出力され、データ出力部233を通じてメモリ制御部22や画像処理部20に出力される。この、各読み出し回路235で保持された信号レベルを順次外部に出力する動作を水平転送と呼ぶ。なお、読み出し回路に入力される制御信号(hsr()を除く)や、垂直走査回路209、水平走査回路232、ランプ信号発生器230、カウンタ231の制御信号は、タイミング発生回路18やシステム制御部50から供給される。
【0060】
図3に示した撮像素子14の読み出し動作に関するタイミングチャートである
図4を参照して、1行分の画素に対する読み出し動作について説明する。なお、各制御信号がHのときに各スイッチはオンになり、Lのときに各スイッチはオフになるものとする。
【0061】
時刻t1において垂直走査回路209は、制御信号RESをHにした状態で制御信号TX_A、TX_BをLからHにして、転送スイッチ202a、202bをオンにする。これにより、フォトダイオード201a、201bに蓄積された電荷は、転送スイッチ202a、202b、リセットスイッチ205を介して電源208に転送され、フォトダイオード201a、201bはリセットされる。また、FD203も同様にリセットされる。時刻t2において垂直走査回路209が、制御信号TX_A、TX_BをLとし、転送スイッチ202a、202bをオフすると、フォトダイオード201a、201bで光電荷の蓄積が開始する。
【0062】
所定の蓄積時間が経過すると、時刻t3において垂直走査回路209は、制御信号SELをHとし、選択スイッチ206をオンにする。これにより、増幅部204のソースが垂直出力線207に接続される。時刻t4において垂直走査回路209は、制御信号RESをLとし、リセットスイッチ205をオフする。これにより、FD203のリセットが解除され、FD203のリセット信号レベルが増幅部204を介して垂直出力線207に読み出され、読み出し回路235に入力される。
【0063】
その後、時刻t5においてタイミング発生回路18は制御信号RES_CをLにする。これにより、スイッチ217がオンし、垂直出力線207に読み出されたリセット信号レベルと基準電圧Vrefとの差分に基づく電圧がオペアンプ213から出力される。撮像素子14には予め、操作部70を通じて設定されたISO感度に基づき、システム制御部50が制御信号GAIN0~GAIN2のいずれか1つをHにする設定が行われる。例えば実施形態のカメラ100がISO感度100、200、400のいずれかが設定可能である場合、ISO感度100のときは制御信号GAIN0がH、GAIN1、GAIN2がLとなる。同様に、ISO感度200では制御信号GAIN1がH、ISO感度400では制御信号GAIN2がHとなる。なお、設定感度の種類や、設定感度と制御信号との関係はこれに限定されない。
【0064】
オペアンプ213は、入力された電圧を、クランプ容量211と、制御信号GAIN0~GAIN2のうちHのものに対応するスイッチに対応するフィードバック容量214~216の1つとの容量比で定まる反転ゲインで増幅して出力する。この増幅により、オペアンプ213までの回路で発生するランダムノイズ成分も増幅される。したがって、増幅後の信号に含まれるランダムノイズの大きさは、ISO感度に依存する。
【0065】
次に、時刻t6において、ランプ信号発生器230は時間経過とともに信号レベルが線形に増加するランプ信号の出力を開始し、同時にカウンタ231はリセット状態からカウントアップを開始する。また、タイミング発生回路18はLATEN_NをHにして、Latch_Nを有効にする。比較器221は、オペアンプ213の出力信号とランプ信号発生器230が出力するランプ信号とを比較する。ランプ信号レベルがオペアンプ213の出力信号レベルを上回ると、比較器221の出力がLからHに変化する(時刻t7)。Latch_N222はLATEN_NがHの状態において、比較器221の出力がLからHに変化すると、その時点でカウンタ231が出力しているカウンタ値を記憶する。Latch_N222が記憶するカウンタ値が、N信号レベルを表すデジタル値(N信号データ)に相当する。なお、LATEN_SはLであるため、Latch_S223は無効であり、カウント値は記憶しない。その後時刻t8において、ランプ信号レベルが予め定められた値に達するとランプ信号発生器230がランプ信号の出力を停止し、またタイミング発生回路はLATEN_NをLにする。
【0066】
時刻t9で垂直走査回路209は制御信号TX_AをHにする。これにより、転送スイッチ202aがオンし、時刻t2からフォトダイオード201aに蓄積された光電荷(A信号)がFD203へ転送される。その後、時刻t10で垂直走査回路209は制御信号TX_AをLにする。FD203は転送された電荷を電位に変換し、この電位(A信号レベル)が、増幅部204および垂直出力線207を介して読み出し回路235へ出力される。オペアンプ213は、垂直出力線207に読み出されたA信号レベルと、基準電圧Vrefとの差分に基づく電圧を出力する。オペアンプ213の反転ゲインは、クランプ容量211と、フィードバック容量214~216のいずれか1つとの比率によって定まる。
【0067】
次に、時刻t11でランプ信号発生器230はランプ信号の出力を開始し、同時にカウンタ231はリセット状態からカウントアップを開始する。また、タイミング発生回路18はLATEN_SをHにして、Latch_Sを有効にする。比較器221は、オペアンプ213の出力信号とランプ信号発生器230が出力するランプ信号とを比較する。ランプ信号レベルがオペアンプ213の出力信号レベルを上回ると、比較器221の出力がLからHに変化する(時刻t12)。Latch_S223はLATEN_SがHの状態において、比較器221の出力がLからHに変化すると、その時点でカウンタ231が出力しているカウンタ値を記憶する。Latch_S223が記憶するカウンタ値が、A信号レベルを表すデジタル値(A信号データ)に相当する。なお、LATEN_NはLであるため、Latch_N222は無効であり、カウント値は記憶しない。その後時刻t13において、ランプ信号レベルが予め定められた値に達するとランプ信号発生器230がランプ信号の出力を停止し、またタイミング発生回路はLATEN_SをLにする。
【0068】
その後、時刻t14~t15の間、水平走査回路232は制御信号hsr(h)を順次一定期間ずつHにする。これにより、各読み出し回路235のスイッチ226、227が一定期間オンし、オフに戻る。各読み出し回路235のLatch_N222、Latch_S223に保持されたN信号データとA信号データは共通出力線228、229へそれぞれ読み出され、データ出力部233に入力される。データ出力部233では各読み出し回路235から出力されたA信号データとN信号データについて、A信号データからN信号データを減じた値を外部へ出力する。
【0069】
時刻t16からt17の間、垂直走査回路209は制御信号TX_AおよびTX_BをHにし、転送スイッチ202a,202bをオンにする。これにより、両方のフォトダイオード201a、201bから光電荷がFD203へ転送される。FD203は転送された電荷を電位に変換し、この電位(A+B信号レベル)が、増幅部204および垂直出力線207を介して読み出し回路235へ出力される。オペアンプ213は、垂直出力線207に読み出されたA+B信号レベルと、基準電圧Vrefとの差分に基づく電圧を出力する。
【0070】
次に、時刻t18でランプ信号発生器230はランプ信号の出力を開始し、同時にカウンタ231はリセット状態からカウントアップを開始する。また、タイミング発生回路18はLATEN_SをHにして、Latch_Sを有効にする。比較器221は、オペアンプ213の出力信号とランプ信号発生器230が出力するランプ信号とを比較する。ランプ信号レベルがオペアンプ213の出力信号レベルを上回ると、比較器221の出力がLからHに変化する(時刻t19)。Latch_S223はLATEN_SがHの状態において、比較器221の出力がLからHに変化すると、その時点でカウンタ231が出力しているカウンタ値を記憶する。Latch_S223が記憶するカウンタ値が、A+B信号レベルを表すデジタル値(A+B信号データ)に相当する。その後時刻t20において、ランプ信号レベルが予め定められた値に達するとランプ信号発生器230がランプ信号の出力を停止し、またタイミング発生回路はLATEN_SをLにする。
【0071】
その後、時刻t21~t22の間、水平走査回路232は制御信号hsr(h)を順次一定期間ずつHにする。これにより、各読み出し回路235のスイッチ226、227が一定期間オンし、オフに戻る。各読み出し回路235のLatch_N222、Latch_S223に保持されたN信号データとA+B信号データは共通出力線228、229へそれぞれ読み出され、データ出力部233に入力される。データ出力部233では各読み出し回路235から出力されたA+B信号データとN信号データについて、A+B信号データからN信号データを減じた値を外部へ出力する。
【0072】
時刻t22でタイミング発生回路18は制御信号RES_CをHとし、時刻t23に垂直走査回路209が制御信号RESをHとし、時刻t24で垂直走査回路209が制御信号SELをLにすると、1行分の読み出し動作が完了する。この動作を所定の行数分繰り返すことにより1画面分の像信号を取得する。このように、A信号とA+B信号とは所定単位ずつ(ここでは1行ずつ)交互に読み出される。
【0073】
本実施形態のカメラ100は、静止画モードと動画モードを有する。システム制御部50は、静止画モードが設定されている場合、撮像素子14を全画素読み出しモードに設定し、全行分の画素データを読み出すように制御する。また、システム制御部50は、動画モードが設定されていれば、撮像素子14を間引き読み出しモードに設定し、例えば3行周期(1行読んで2行飛ばす)で画素データを読み出すように制御する。このように、本実施形態では、読み出す行数が静止画モードより動画モードの方が少ない。ただし、静止画モードと動画モードにおける読み出し方法はこれに限定されるものではない。特に、動画モードにおいては行単位ではなく画素単位で間引いて読み出してもよい。
【0074】
このようにして、撮像素子14による1回の撮影(露光)により、撮像素子14からは、リセットノイズが除去された第2の視点画像としてのA信号と第1の視点画像としてのA+B信号を読み出すことができる。A信号は撮像画像用または焦点検出用の信号として、A+B信号は撮影画像を構成する信号として用いられる。A+B信号およびA信号はまた、撮像画像用または焦点検出用のB信号を生成するためにも用いられる。第1の視点画像(A+B信号)と、第2の視点画像(A信号)とは電荷蓄積期間が共通する(電荷蓄積タイミングが等しい)多視点画像である。
【0075】
なお、本実施形態の撮像素子14は、全画素読み出しモード(第1の読み出しモード)と、間引き読み出しモード(第2の読み出しモード)の2種類の読み出しモードを有する。全画素読み出しモードは全ての有効画素を読み出すモードであり、例えば高精細静止画を得る際に設定される。
【0076】
間引き読み出しモードは、全画素読み出しモードより少ない画素を読み出すモードである。間引き読み出しモードは例えば、動画や、プレビュー画像もしくはライブビュー画像のように、必要な解像度が高精細静止画よりも低い場合や、画像を高速に読み出す必要がある場合に設定される。例えば上述のように行単位で間引いて読み出してもよいし、画像の縦横比を変えないように水平および垂直方向の両方で同じ割合で画素を間引いて読み出してもよい。なお、「間引き」は読み出し自体を行わないことだけでなく、読み出しされた信号を棄てる(無視する)構成や、読み出した複数の信号から1つの信号を生成することによって信号の数を削減する構成も含む。例えば、隣接する複数の画素から読み出した信号を平均して1つの信号を生成することで、SN比を改善することができる。
【0077】
図5(a)は、本実施形態の撮像装置において、撮影レンズ300の射出瞳面と、撮像素子14の像面の中央近傍に配置された画素200(中央画素)の光電変換部201a,201bとの共役関係を説明する図である。撮像素子14内の光電変換部201a、201bと撮影レンズ300の射出瞳面は、マイクロレンズ201iによって共役関係となるように設計される。そして撮影レンズ300の射出瞳面は、光量調節用の虹彩絞りが設けられる面とほぼ一致するのが一般的である。
【0078】
一方、本実施形態の撮影レンズ300は変倍機能を有したズームレンズである。ズームレンズには、変倍操作を行なうと、射出瞳の大きさや、像面から射出瞳までの距離(射出瞳距離)が変化するものがある。
図5では、撮影レンズ300の焦点距離が広角端と望遠端の中央にある状態を示している。この状態における射出瞳距離Dlを標準値として、マイクロレンズの形状や、像高(画面中心からの距離またはXY座標)に応じた偏心パラメータの最適設計がなされる。
【0079】
図5(a)において、撮影レンズ300は、第1レンズ群101、第1レンズ群を保持する鏡筒部材101b、第3レンズ群105、および第3レンズ群を保持する鏡筒部材105bを有している。また、撮影レンズ300は、絞り102と、絞り開放時の開口径を規定する開口板102a、および絞り込み時の開口径を調節するための絞り羽根102bを有している。なお、
図5において、撮影レンズ300を通過する光束の制限部材として作用する101b、102a、102b、及び105bは、像面から観察した場合の光学的な虚像を示している。また、絞り102の近傍における合成開口を撮影レンズ300の射出瞳と定義し、像面からの距離を射出瞳距離Dlとしている。
【0080】
画素200の最下層には、光電変換部201aおよび201bが配置される。光電変換部201a、201bの上層には、配線層201e~201g、カラーフィルタ201h、及びマイクロレンズ201iが設けられる。光電変換部201a、201bは、マイクロレンズ201iによって撮影レンズ300の射出瞳面に投影される。換言すれば、射出瞳が、マイクロレンズ201iを介して、光電変換部201a、201bの表面に投影される。
【0081】
図5(b)は、撮影レンズ300の射出瞳面上における、光電変換部201a、201bの投影像EP1a、EP1bを示している。円TLは、絞り102の開口板102aで規定される、画素200への光束の最大入射範囲を射出瞳面に示したものである。円TLは開口板102aで規定されるため、図では円TLを102aとも記載している。
図5は中央画素を示しているため、光束のケラレは光軸に対して対称となり、光電変換部201a及び201bは同じ大きさの瞳領域を通過した光束を受光する。そして、円TLには、投影像EP1a、EP1bの大部分が含まれるため、光束のケラレはほぼ発生しない。従って、光電変換部201a、201bで光電変換された信号を加算した場合、円TL、すなわち射出瞳領域のほぼ全体を通過した光束を光電変換した結果が得られる。光電変換部201aが受光する射出瞳の領域を第1の瞳領域、光電変換部201bが受光する射出瞳の領域を第2の瞳領域、第1の瞳領域と第2の瞳領域を合わせた領域を第3の瞳領域と呼ぶ。
【0082】
(ライブビュー表示と並行した静止画連写処理)
次に、ライブビュー表示と並行した静止画の連写(以下、ライブビュー連写(LV連写)と呼ぶ)を実行する際のカメラ100の動作について説明する。ライブビュー連写時には、
・静止画を取得するための全画素読み出し
・ライブビュー表示用かつ焦点検出用の画像を取得するための間引き読み出し
・静止画用の画像補正処理と現像処理
・焦点検出用の補正処理
・焦点検出処理
・焦点調節処理
・ライブビュー画像の表示処理
・静止画保存処理
を繰り返し実行する必要がある。以下、順を追って説明する。
【0083】
まず、撮像素子14の読み出しに関する処理について説明する。撮像素子14に対しては、全画素読み出しモードでの読み出し、リセット動作、間引き読み出しモードでの読み出し、リセット動作を繰り返し実行する。なお、リセット動作は撮像素子14の各画素の蓄積電荷をリセットする動作であり、読み出しモードを切り換える前に実行する。
【0084】
ライブビュー表示用の画像データを位相差検出方式の焦点検出に用いる場合、間引き読み出しにおいてはA+B信号と、A信号またはB信号、あるいはA信号とB信号とを読み出す。前者の場合、AF信号生成部20bはA+B信号からA信号(またはB信号)を減じて、B信号(またはA信号)を生成したのち、AF用の1対の像信号を生成する。後者の場合、第1補正処理部20aは、A信号とB信号とを加算してA+B信号を生成したのち、補正処理を適用する。なお、A信号、B信号、A+B信号間での加減算は、特に記載がない限り、同じ画素から読み出された信号間で行う。なお、焦点検出領域を含んでいない画素行については、A+B信号だけを読み出すようにしてもよい。
【0085】
(画像補正処理と現像処理)
画像補正処理は画像データを現像処理する前に適用され、例えばオフセット補正、ゲイン補正、ダークシェーディング補正、色シェーディング補正、周辺光量落ち補正などが含まれるが、これらに限定されない。また、これらの補正処理はいずれも公知技術を用いて実施することができ、以下に記載する方法に限定されない。オフセット補正およびゲイン補正は、読み出し回路235が有するAD変換器の入出力特性と理想的な入出力特性との差が画像データの値に与える影響を補正する処理である。補正処理部は、例えば補正前の画像データの値に応じたオフセット補正値やゲイン補正値を不揮発性メモリ56から読み出し、画像データの値に適用することによってオフセット補正およびゲイン補正を実施することができる。
【0086】
ダークシェーディング補正は、撮像素子の特性や配線の影響などに起因する画素ごとの信号レベルのばらつきを補正する処理である。
色シェーディング補正は、撮像素子の特定の色に対する感度が領域によって異なることに起因する色むらを補正する処理である。なお、この色むらの発生量は環境光の種類に依存するため、例えば不揮発性メモリ56に予め記憶された、光源の色温度に応じた補正値(R,G,Bの感度のゲイン補正量)を用いて補正する。
【0087】
周辺光量落ち補正は、撮影レンズ、撮影条件、および像高(光軸と画像中心との交点)に応じた補正値を画像データに適用し、画面の四隅が暗くなる現象を軽減する。
【0088】
焦点検出用の画像補正処理は、撮像素子から読み出された画像データから生成された焦点検出用信号(A像信号およびB像信号)を、焦点検出処理に用いる前に補正する処理である。ゲイン補正、ダークシェーディング補正、シェーディング補正、周辺光量落ち補正などが含まれてよいが、これらに限定されない。焦点検出処理は後述するように輝度(Y)信号を用い、色情報は不要であるため、画素ごとのオフセット補正や色シェーディング補正は適用しない。
【0089】
ゲイン補正、ダークシェーディング補正、シェーディング補正、周辺光量落ち補正は、上述したとおりであるため説明を省略し、シェーディング補正処理について説明する。シェーディングとは像信号における強度ムラである。光束の一部が撮影光学系(レンズ、絞り等の光学部材やこれらを保持する鏡筒を含む)により遮られると、A像信号とB像信号の少なくとも一方に像信号レベルの低下シェーディングが発生し得る。像信号レベルの低下やシェーディングが生じると、A像信号とB像信号との位相差検出精度、ひいては焦点検出精度が低下する原因となる。
シェーディングは、射出瞳距離、絞り値、像高に応じて変化する。したがって、シェーディング補正処理は、これら3つのパラメータの離散値の組み合わせについて補正値を記憶し、他の値の組み合わせに対する補正値は補間によって求める。
【0090】
図1Bに関して説明したように、本実施形態の画像処理部20は静止画用の補正処理を適用する第1補正処理部20aと、焦点検出用の補正処理を適用する第2補正処理部20dとを有し、補正処理を並列に実行可能である。撮像素子14からの画像信号の読み出しの開始とともに補正処理を開始することにより、リアルタイムな補正処理が可能である。
【0091】
静止画用の補正処理と焦点検出用の補正処理は第1および第2補正処理部20aおよび20dによって並列に実行可能だが、ライブビュー画像に対する補正処理と静止画用の補正処理とはいずれも第1補正処理部20aで実行するため、並列処理できない。
【0092】
次に、現像処理部20cが行う現像処理について説明する。現像処理は一般に、ホワイトバランス調整処理およびデモザイキング処理を含む複数の処理の総称であり、厳密な定義はないが、撮像素子から読み出された画素あたり1つの色成分を有する画像データを、標準的な形式の画像データに変換する処理である。
【0093】
ホワイトバランス調整処理は、予め定められた白色領域に含まれる値を有する画素の色成分(例えばR,G,B)が等しい値になるように、色成分に適用するゲインの値を調整する処理である。また、デモザイキング処理は、各画素データに不足してる色成分の値を補間する処理である。一般的な単板式のカラー撮像素子には複数の色がモザイク状に配置されたカラーフィルタが設けられており、読み出された画像データは画素あたり1つの色成分についての値しか有していない。各画素について、不足している色成分の値を、他の画素の値を用いて補間するのがデモザイク処理である。デモザイク処理により、カラー画像データが得られる。
【0094】
現像処理の一部として、このカラー画像データに対して画質を向上させるための処理を適用することができる。例えば、ノイズ低減処理、彩度強調処理、色相補正処理、エッジ強調処理などが例示できるが、これらに限定されない。さらに、予め定められた形式(例えばJPEG、TIFFなど)の画像データとするための処理(例えば符号化処理)を適用することができる。
【0095】
(焦点検出処理と焦点調節処理)
次に、AF部42が行う焦点検出処理と、システム制御部50が行う焦点調節処理について説明する。焦点検出処理は、上述したように、AF信号生成部20bが生成する1対の像信号(A像信号およびB像信号)の位相差をAF部42が検出し、デフォーカス量およびデフォーカス方向に変換する処理である。なお、AF信号生成部20bは、1対の像信号を、ライブビュー表示用に読み出した画像データから生成するものとするが、静止画用読み出した画像データから生成してもよい。焦点調節処理は、AF部42が検出したデフォーカス量およびデフォーカス方向に基づいてシステム制御部50がレンズ311のフォーカスレンズを駆動する処理である。
【0096】
(ライブビュー表示処理)
ライブビュー表示処理は、撮像素子14から間引き読み出しした画像データに基づいて静止画用の画像補正処理と現像処理とが行われた表示用画像データを、システム制御部50が画像表示部28に表示させる処理である。
【0097】
(静止画保存処理)
静止画保存処理では、静止画用に撮像素子から全画素読み出しした画像データをメモリ制御部22が記録画像用メモリ30aに一旦保存する。そして、記録画像用メモリ30aに保存された画像データに対して画像処理部20が上述した静止画用の補正処理、現像処理を適用し、適用後の画像データを記録画像用メモリ30aに書き戻す。
【0098】
以上がライブビュー連写時に実行する処理である。本実施形態では、これらの処理の実行手順を改良することにより、連写速度を向上させる。
図6は、ライブビュー連写時の処理シーケンスの例を示すタイムチャートである。なお、便宜上、
図6では1枚目の静止画撮影に係る電荷蓄積の開始から、2枚目の静止画撮影に係る電荷蓄積までの処理シーケンスを示しているが、以降も同様の処理シーケンスが繰り返し実行される。
【0099】
また、
図6では、上述した各処理のうち、撮像素子の電荷蓄積および読み出し処理、静止画/ライブビュー(LV)画像補正処理関連、焦点検出/焦点調節関連、ライブビュー表示処理(EVF)、静止画保存処理についての処理タイミングについて示している。ここで、現像処理を記載していないのは、現像処理が静止画用の補正処理とほぼ並列に実施され、現像処理だけが行われる時間が他の処理に要する時間に対して無視できる程度であることによる。
【0100】
図6(a)は、静止画として単一の視点画像(A+B信号)を連写する場合の処理シーケンスを示している。以下、各処理について説明する。
撮像素子関連処理:
システム制御部50は、撮像素子14の電荷蓄積期間内にシャッター12を開閉することにより、AE処理によって決定されたシャッター速度に応じた期間、撮像素子14を露光する。その後、全画素読み出しモードが設定されている撮像素子14から、A+B信号が読み出される。読み出しが終了すると、システム制御部50はシャッター12を開いたのち、撮像素子14の各画素をリセットし、さらに撮像素子14の読み出しモードを間引き読み出しモードに切り換える。その後、システム制御部50は、シャッター12を開いた状態で撮像素子14の露光と読み出しをライン単位で行い、ライブビュー(LV)表示用兼AF用の画像データを読み出す。読み出した画像データを用いた焦点検出処理が完了し、焦点調節処理が開始されるまで、システム制御部50は表示兼AF用の画像データの取得を繰り返す。焦点調節処理が開始されると、システム制御部50は撮像素子14の各画素をリセットし、さらに撮像素子14の読み出しモードを全画素読み出しモードに切り換えたのち、シャッター12を閉じる。これにより、撮像素子14は、2枚目の静止画撮影のための電荷蓄積期間に入る。
【0101】
画像補正処理:
A+B信号の読み出しが開始されると、読み出されたA+B信号の画像データに対し、第1補正処理部20aによって静止画用の補正処理を開始する。静止画用の補正処理(および現像処理)が終了し、LV表示用兼AF用の画像データの読み出しが開始されると、第1補正処理部20aによって補正処理を開始する。
【0102】
焦点検出/焦点調節処理:
LV表示用兼AF用の画像データの読み出しが開始されると、AF信号生成部20bは焦点検出用の1対の信号列を生成する。第2補正処理部20dは、1対の信号列に対して補正処理を適用し、システム制御部50を通じてAF部42に供給する。AF部42は1対の信号列の位相差を検出し、検出した位相差に基づいてデフォーカス量およびデフォーカス方向を求める(焦点検出)。システム制御部50はこのデフォーカス量およびデフォーカス方向に基づいて、レンズシステム制御部346およびフォーカス制御部342を通じてレンズ311のフォーカスレンズを駆動する(焦点調節)。
【0103】
EVF表示処理:
静止画撮影用の電荷蓄積期間の開始から、少なくとも次に読み出されたLV表示用画像データの現像処理が完了するまでの期間は、ライブビュー表示を更新することができない。そのため、システム制御部50は、この期間中、直近の表示用画像データを画像表示部28に継続的に表示する。次に読み出されたLV表示用画像データの現像処理が完了すると、システム制御部50はその画像データを用いてLV表示を更新する。その後、次の電荷蓄積時間が開始されるまで、システム制御部50は新たなLV表示用画像データの現像処理が完了するごとに、LV表示を更新する。
【0104】
画像保存処理:
システム制御部50は、現像処理が完了したA+B信号を、記録画像用メモリ30aに順次保存する。
【0105】
図6(b)は、静止画として、第1の視点画像(A+B信号)と第2の視点画像(A信号(またはB信号))の両方を連写する場合の処理シーケンスを示している。この場合、撮像素子14から1行ごとにA信号とA+B信号とが読み出される。
図6(b)の処理シーケンスでは、読み出された信号をそれぞれシステムメモリ30bに一旦保存する。そして、撮像素子14からの読み出しが完了したのち、第1補正処理部20aによりA+B信号に対する補正処理を開始する。補正処理が完了すると、システム制御部50が補正済みのA+B信号を記録画像用メモリ30aに保存するとともに、第1補正処理部20aがA信号に対する補正処理を開始する。A信号に対する補正処理が完了すると、システム制御部50は補正後のA信号を記録画像用メモリ30aに保存する。また、
図6(a)と同様にしてLV表示用兼AF用の画像データの読み出し、補正処理、焦点検出処理、焦点調節処理を実施する。
図6(b)の処理シーケンスでは、A+B信号とA信号とを全て記録画像用メモリ30aに保存してから、A+B信号に対する補正処理と、A信号に対する補正処理とを順次実行する。そのため、撮像素子14が次の静止画撮影のための電荷蓄積期間に入るまでの時間が長くなる。したがって、連写の間隔が長くなる(連写速度が低下する)。
【0106】
そのため、本実施形態では、第1および第2の視点画像を連写する場合の処理シーケンスを変更することにより、
図6(b)の処理シーケンスにおける連写速度の低下を抑制する。
図6(c)に、本実施形態による、第1および第2の視点画像を連写する場合の処理シーケンスの例を示す。
【0107】
図6(c)の処理シーケンスでは、A+B信号とA信号とを全て記録画像用メモリ30aに保存してから補正処理を開始する代わりに、A+B信号については記録画像用メモリ30aに保存せずにリアルタイムに補正処理を適用するようにした。一方で、A信号についてはA+B信号の補正処理が完了するまではシステムメモリ30bに保存し、A+B信号の補正処理が完了次第、補正処理を適用する。リアルタイム処理とすることで、第1補正処理部20aがA+B信号の補正処理に占有される期間は、A+B信号を一旦メモリに保存してから補正処理する場合よりも長くなる。しかし、リアルタイム処理とすることで、撮像素子14からの画像データの読み出し終了とほぼ同時に、A+B信号に対する補正処理(および現像処理)を完了することができる。
【0108】
このように、
図6(c)の処理シーケンスでは、画像データの読み出しと、A+B信号の補正処理とを並列に実行することにより、
図6(b)のシーケンスよりも連写間隔を短縮できる。しかしながら、
図6(a)のシーケンスと比較すると依然として連写間隔が長い。
【0109】
図6(d)は
図6(c)の処理シーケンスを、A信号の補正処理をLV用兼AF用画像データの露光・読み出し処理と並列に実行するように変更した、本実施形態の変形例のである。あるいは、
図6(c)の処理シーケンスにおいて、A信号の補正処理が完了するのを待たずにLV用兼AF用画像データの露光・読み出し処理を開始するようにしたものとも言える。これにより、連写間隔を
図6(a)に示した1視点画像のみの連写時と同等まで短縮できる。
【0110】
ただし、LV用画像の補正処理はA信号の補正処理が完了するまで開始されないので、EVF表示の更新回数が減少し、LV表示の滑らかさが低下する。ただし、LV用画像を利用するAF処理についてはA信号の補正処理に影響を受けずに実施できるため、焦点検出処理および焦点調節処理は
図6(a)のシーケンスと同様のタイミングで実施できる。
【0111】
図6(e)は、
図6(d)の処理シーケンスを、A+B信号の補正処理完了後、LV表示用画像に対する補正処理を行ってからA信号の補正処理を行うように変更した、本実施形態の別の変形例である。
図6(e)の処理シーケンスでは、LV表示の更新回数は
図6(d)と変わらないものの、更新のタイミングが早くなるため、直前の画像が連続して表示される時間が短縮され、表示の滑らかさが改善される。
【0112】
図6(f)は、
図6(e)の処理シーケンスにおいて、
・A+B信号をシステムメモリ30bに保存してから補正処理を適用する
・A+B信号に対する補正処理は読み出し期間の途中から開始する
・A信号に対する補正処理は、次の読み出し期間の始めから開始する
ように変更した、本実施形態のさらに別の変形例である。
【0113】
図6(f)の処理シーケンスでは、LV表示用画像データの補正処理が、A信号やA+B信号といった記録用静止画データの補正処理によって待たされることがない。そのため、
図6(d)や(e)の処理シーケンスよりもLV表示の更新回数を増やすことができ、LV表示の滑らかさをさらに改善することができる。なお、A+B信号に対する補正処理を開始するタイミングは、A信号に対する補正処理と重複しないように予め定めておく。
【0114】
図6(f)の処理シーケンスは、連写速度の低下を抑制しつつ、LV表示の滑らかさも改善できるが、連写終了後に最後の撮影に係るA信号の補正処理および保存処理を実行する必要がある。なお、
図6(f)の処理シーケンスにおいて、連写に係る全てのA信号について、連写中は一時保存しておき、補正処理および保存処理を連写終了後にまとめて実行するようにしてもよい。
【0115】
また、実施形態に係る
図6(c)~
図6(f)の処理シーケンスでは、静止画については(メカニカル)シャッター12を用いて全画素同時に露光するものとして説明した。しかし、静止画についてもLV表示用(AF用)画像と同様に行単位での露光および読み出しとしてもよい。この場合、静止画用に読み出した画像データを焦点検出やLV表示にも用いることができる。
【0116】
多視点画像(ここではA信号またはB信号とA+B信号)を連写する場合、本実施形態のカメラ100は、ライブビュー表示中にシャッタースイッチSW2がONしたことに応じて
図6(c)~
図6(f)のいずれかの処理シーケンスを実行することができる。また、カメラ100は、1視点画像(A+B信号)を連写する場合には、
図6(a)の処理シーケンスを実行することができる。連写または単写、連写の場合に多視点画像と1視点画像のどちらを連写するかは、メニュー画面やモード選択ダイヤルなどの操作を通じたユーザ設定に応じて決定されてよい。
【0117】
また、多視点画像を連写する場合に、
図6(c)~
図6(f)のどの処理シーケンスを実行するかは、固定であってもよいし、切り替え可能であってもよい。例えば、連写速度が重要な場合には、
図6(d)~
図6(f)のいずれかを実行することができる。また、連写撮影後に最後に撮影した画像のプレビュー表示を行う場合には、
図6(c)~
図6(e)のいずれかを実行するようにしてもよい。さらに、LV表示の更新回数を優先する場合には
図6(c)または
図6(f)の処理シーケンスを実行するようにしてもよい。
【0118】
また、システムメモリ30bの容量が少なく、多視点画像の一方しか保存できない場合には、補正処理をリアルタイムに行う
図6(c)~
図6(e)のいずれかの処理シーケンスを実行するようにしてもよい。
【0119】
次に
図7を用いて本実施形態のカメラ100の撮影動作について説明する。
図7に示すフローチャートは、例えば静止画撮影のスタンバイ状態で実行することができる。この状態ではライブビュー表示とそれに関連する処理(動画撮影、ライブビュー画像の生成、動画撮影用の焦点検出および焦点調節処理など)が継続的に実行されているものとする。
【0120】
S501でシステム制御部50は、例えば現在の設定に基づいて、1視点画像の連写を行うのか、多視点画像の連写を行うのかを判定する。システム制御部50は、1視点画像の連写を行うと判定した場合にはS502へ、多視点画像の連写を行うと判定した場合にはS503へ、それぞれ処理を進める。
【0121】
システム制御部50は、S502では1視点画像の連写(第1の連写撮影モード)を、S503では多視点画像の連写(第2の連写撮影モード)を選択し、処理をS504へ進める。
【0122】
S504でシステム制御部50は、シャッタースイッチSW1がONか否かを判定し、ONであればS505へ処理を進め、OFFであれば処理をS501に戻す。
S505でシステム制御部50は、焦点検出処理を行う。ここでシステム制御部50は、A+B信号しか読み出していなければ、A信号またはB信号も読み出すように撮像素子14の読み出し動作を変更する。そして、システム制御部50は、AF信号生成部20bに対し、ライブビュー画像のうち、焦点検出領域に含まれる画像データから位相差検出方式のAF用の1対の像信号を生成するように指示する。AF信号生成部20bは生成した像信号をAF部42に供給する。
【0123】
そして、AF部42は、像信号の相対位置を変化させながら相関量を算出し、相関が最も大きくなる相対距離を位相差として検出する。さらにAF部42は検出した位相差に例えば所定のデフォーカス換算係数を乗じてデフォーカス量およびデフォーカス方向を求める。ここで、デフォーカス換算係数は、撮影時の光学条件(絞り、射出瞳距離、レンズ枠情報など)や、焦点検出領域の像高、A像、B像を構成する信号のサンプリングピッチなどから求めることができる。AF部42はデフォーカス量およびデフォーカス方向をシステム制御部50に通知する。システム制御部50は、デフォーカス量およびデフォーカス方向に基づいて、レンズ311のフォーカスレンズを駆動する。
【0124】
S506でシステム制御部50は、シャッタースイッチSW2がONか否かを判定し、ONであればS507へ処理を進め、OFFであれば処理をS504に戻す。
S507でシステム制御部50は、第1の連写モードであれば
図6(a)の処理シーケンスを、第2の連写モードであれば
図6(c)~
図6(f)のいずれかの処理シーケンスを、SW2がOFFになるまで(あるいは連写上限枚数に達するまで)実行する。
【0125】
以上説明したように、本実施形態では、ライブビュー表示を継続しながら多視点画像の連写が可能な撮像装置において、第1および第2視点画像の少なくとも一方に対する補正処理を、第1および第2視点画像の読み出しと並列に実行するようにした。これにより、第1および第2視点画像の読み出しが完了してから補正処理を開始する場合と比較して、連写速度を向上することができる。また、第1および第2視点画像の一方に対する補正処理を、第1および第2視点画像の読み出しと並列に実行する場合、他方に対する補正処理を開始する前にライブビュー表示用の画像の読み出しを実行することで、ライブビュー表示の滑らかさを改善できる。
【0126】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0127】
14…撮像素子、20…画像処理部、28…画像表示部、30…メモリ、42…AF部、50…システム制御部、100…カメラ、300…撮影レンズ、306…レンズマウント、342…フォーカス制御部、346…レンズシステム制御部。