(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】MEMS画像増強器用の蛍光スクリーン
(51)【国際特許分類】
H01J 29/28 20060101AFI20221216BHJP
H01J 29/20 20060101ALI20221216BHJP
H01J 29/30 20060101ALI20221216BHJP
H01J 29/18 20060101ALI20221216BHJP
H01J 9/22 20060101ALI20221216BHJP
H01J 9/227 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01J29/28
H01J29/20
H01J29/30
H01J29/18 M
H01J9/22 T
H01J9/227 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018223038
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512169604
【氏名又は名称】エルビット システムズ オブ アメリカ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーリン ダブリュ.スミス
(72)【発明者】
【氏名】ダン チルコット
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05725787(US,A)
【文献】米国特許第5360630(US,A)
【文献】特開昭55-67700(JP,A)
【文献】特開昭60-142300(JP,A)
【文献】特開平2-247953(JP,A)
【文献】特開平11-339681(JP,A)
【文献】特開2004-22247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 29/28
H01J 29/20
H01J 29/30
H01J 29/18
H01J 9/22
H01J 9/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然に不透明な上層及び前記自然に不透明な上層内に画定されている活性領域を有するウエハ構造と、
前記活性領域内の前記自然に不透明な上層から形成されている内壁の格子と、
前記内壁の格子の間の前記活性領域に配置されている
、厚さが200nmから300nmの範囲内の非粒子蛍光体層と、
前記
非粒子蛍光体層の上に
直接堆積されている反射性金属層と、を含む、マイクロ電気機械画像増強器用の蛍光スクリーン。
【請求項2】
前記反射性金属層と前記非粒子蛍光体層との間にラッカーが存在しない、請求項1に記載の蛍光スクリーン。
【請求項3】
前記内壁の格子は、
複数の画素のパターンを画定し、前記
非粒子蛍光体層は、前記複数の画素の
各画素の底部に配置されている、請求項1に記載の蛍光スクリーン。
【請求項4】
各画素の
前記底部は、ほぼ垂直な側壁によって境界が定められている平面である、請求項3に記載の蛍光スクリーン。
【請求項5】
前記ウエハ構造は、
ガラスウエハと、
前記ガラスウエハの上面に接合されているシリコン層であって、前記シリコン層は、前記自然に不透明な上層を形成する、シリコン層と、を含む、請求項1に記載の蛍光スクリーン。
【請求項6】
前記内壁の格子は、画素のパターンを画定し、前記シリコン層は、前記画素のパターンの
各画素の底部から除去され
ている、請求項5に記載の蛍光スクリーン。
【請求項7】
マイクロ電気機械画像増強器用の蛍光スクリーンを形成する方法であって、
ウエハの自然に不透明な上層の活性領域にお
いて画素のパターンを作製することと、
前記画素のパターンに亘って
、200nmから300nmの範囲内の厚さに蛍光体層を成長させることと、
前記蛍光
体層をアニールすることと、
ラッカーを使用することなく、前記蛍光
体層の上に
直接、反射性金属を堆積させることと、を含む、方法。
【請求項8】
前記蛍光体層は、非粒子蛍光体層である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記自然に不透明な上層は、シリコン層であり、前記画素のパターンを作製することは、
前記画素のパターンを画定す
る内壁の格子を
前記シリコン層から作製することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記内壁の格子を作製することは、
材料を前記シリコン層から除去して、前記内壁の格子を画定するために、前記シリコン層をエッチングすることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像増強器は、しばしば、その設計において蛍光スクリーンを利用する。これらの蛍光スクリーンは、通常は、粒子状蛍光体で作成されるが、粒子状蛍光体を有する蛍光スクリーンを作製するプロセスは非常に厄介であり、しばしば望ましくない特性を有する蛍光スクリーンをもたらす。例えば、高レベルでは、蛍光粒子を光ファイバフェースプレートに接着(即ち、糊付け)することによって、粒子状蛍光スクリーンを作製することが多い。このプロセスでは、付着材料及び温度ベーキングの1つ以上の適用を用いてもよい。次いで、蛍光体粒子は、アルミニウム(又は他のそのような金属)で被覆され、そのうちアルミニウム層に含まれるピンホールの数を最小にするためにしばしば複数の工程を必要とする。
【0002】
例えば、蛍光体粒子の上に均一なアルミニウム層を作製するために、犠牲的な平坦化材料をアルミニウムの堆積の前に使用(その後除去される)してもよい。あいにく、このプロセスの間に、ガスと水がアルミニウム層の下に閉じ込められ、デバイスの動作中にデバイスの性能が低下するアウトガスが発生し、蛍光スクリーンに「仮想漏れ」が発生する。これは、画像増強器の信頼性にとって有害である。
【0003】
少なくとも部分的に、粒子蛍光体の堆積に伴う困難に起因して、多くの粒子蛍光スクリーンは、実質的に平坦なウエハ構造を含む(即ち、アルミニウム又は金属層は、光ファイバフェースプレートの上面と平行に並ぶ平面内に実質的に伸びる連続した層である)。この連続した平坦な形状は、光が蛍光スクリーンとの最初の接触点から横方向に移動することを可能にし(即ち、蛍光の散乱を可能にする)、並びに後方散乱電子が初期接点から離れた方向に光を作る事を妨げることに失敗する(よって、電子が異なる場所から再び入る際、後光効果が生じる)。
【0004】
さらに、粒子蛍光体を有する蛍光スクリーンは、少なくとも粒子蛍光体が通常は、大量のウエハスケール処理には大きすぎる粒子サイズ(即ち、直径2ミクロン)を有するために、マイクロ電気機械システム(MEMS)画像増強器と互換性がない場合、望ましくない。例えば、MEMS画像増強器のための真空密封は、10ミクロン未満の厚さ及び数十ミクロンから数百ミクロンの間の線幅を有する直接ボンド又はボンド材料を使用して行われてもよい。その結果、直径2ミクロンの蛍光体粒子は、画像増強器が形成されたウエハを破壊したり、真空密封の形成を妨げたりする場合がある。
【0005】
前述の問題に鑑みて、粒子蛍光体を含まない(よって、ウエハスケール処理に適合する)MEMS画像増強器用の蛍光スクリーンが望まれている。このような蛍光スクリーンは、蛍光スクリーンが後方散乱電子を減少させ、光子散乱を最小限にでき、及び/又は蛍光スクリーンに含まれる(即ち、蛍光粒子で形成された蛍光スクリーンと比較して)意図しない仮想漏れ(即ち、真空空間内の意図しないガス)の量を減少させることができる場合、特に望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、マイクロ電気機械システム(MEMS)画像増強器用の蛍光スクリーンは、ウエハ構造と、内壁の格子と、薄膜蛍光体層と、反射性金属層と、を含む。ウエハ構造は、自然に不透明な上層と、自然に不透明な上層内に画定された活性領域とを有する。内壁の格子は、活性領域内で、自然に不透明な上層から形成される。薄膜蛍光体層は、内壁の格子の間の活性領域に配置される。反射性金属層は、薄膜蛍光体層の上に配置されている。少なくともいくつかの例では、薄膜蛍光体層は、非粒子蛍光体層である。
【0007】
別の実施形態によれば、MEMS画像増強器のための蛍光スクリーンは、ウエハ構造と、くぼみの格子と、非粒子蛍光体層と、反射性金属層と、を含む。ウエハ構造は活性領域を有し、活性領域内にくぼみの格子が形成される。非粒子状蛍光体層はくぼみ内に配置され、反射性金属層は蛍光体層上に配置される。
【0008】
さらに別の実施形態によれば、マイクロ電子機械画像増強器用の蛍光スクリーンを形成する方法は、ウエハの自然に不透明な上層の活性領域に画素のパターンを生成することを含む。蛍光体層は、画素パターンに亘って成長され、蛍光体層がアニールされる。反射性金属は、蛍光体層上に堆積される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の例に係るマイクロ電子機械システム(MEMS)画像増強器用の蛍光スクリーンを含むダイの斜視図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態に係るMEMS画像増強器用の蛍光スクリーンを形成する方法の高レベルのフロー図である。
【0010】
この開示を通して、同様の要素を識別するために、同様の参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
マイクロ電子機械システム(MEMS)画像増強器用の蛍光スクリーンが本明細書に提示されている。蛍光スクリーンは、複数のセル又は画素を形成する内壁の格子を有するウエハ構造上に形成される(即ち、堆積される)蛍光体の薄膜を含む。特に、蛍光スクリーンは蛍光粒子を含まず、代わりに、薄膜蛍光体層を含む。その結果、蛍光スクリーンは、ウエハスケール処理に適合する。セル/画素は、開放頂部のくぼみ又は空洞を含み又は画定し、蛍光体層は、それぞれのくぼみ又はキャビティの少なくとも底面に堆積される。
【0012】
有利に、内壁の格子は、後方散乱電子を含むか、又は捕捉する。また、蛍光体層が非粒子層であるため(即ち、蛍光体層に蛍光粒子が含まれていないため)、蛍光スクリーンは、一般的な蛍光体層よりも実質的に薄い。例えば、本明細書に提示される蛍光スクリーンの蛍光体層は、200ナノメートル(nm)の厚さを有する薄い蛍光膜であってもよい。比較すると、蛍光粒子は、通常は、本明細書に提示される蛍光スクリーンに含まれる薄い蛍光膜の厚さの約10倍の2ミクロン(即ち、2,000nm)の直径を有する。結果として、本明細書に提示される蛍光スクリーンは、蛍光粒子を有する蛍光スクリーンと比較して、光子散乱を低減することができる。さらに、非粒子蛍光体層は、実質的に平ら又は平坦な上面を画定することにより、蒸発操作なしで反射性金属層を蛍光体層の上に直接堆積させることができる(即ち、蛍光スクリーンを形成する間、ラッカーを適用したり除去したりする必要がない)。これは、特に、粒子蛍光体を利用するような不規則な蛍光体層を含む蛍光スクリーンと比較して、蛍光スクリーンに含まれる意図しない「仮想漏れ」(即ち、意図しない真空スペース)の量を最小にする。
【0013】
上述したように、本明細書に提示される蛍光スクリーンは、MEMS画像増強器に好適である。簡単な例として、本明細書に提示される蛍光スクリーンは、ナイトビジョンゴーグルの画像増強器用のウエハの70~100個のダイ上に形成することができる。この蛍光スクリーンは、蛍光スクリーンを含むシステムが、粒子ベースの蛍光スクリーンを含むシステムよりも実質的に小さく軽量であることを可能にする性能の優位性を提供し、したがって、画像増強器及び/又はナイトビジョンゴーグルのペアを実質的に粒子ベースの蛍光スクリーンを組み込んだものよりもサイズ及び重量において小さくなることを可能にしてもよい。さらに、薄膜蛍光体層は、蛍光体粒子から形成される蛍光体層のサイズの約1/10の大きさであってもよい。本明細書に提示される蛍光スクリーンがナイトビジョンゴーグルに含まれる場合、蛍光スクリーンは、増幅された電子を可視光に変換してもよい(ゴーグル/画像増強器の他の要素が周囲光から受け取られた光子を電子に変換して電子を増幅した後)。提示された蛍光スクリーンの効率は、蛍光スクリーンが、直接観察システム(即ち、ユーザが画像のために蛍光体を直接見るシステム)又はデジタルシステム(即ち、ユーザが蛍光スクリーンに焦点を合わせたカメラからのデジタル出力を見るシステム)によって観ることができる可視光を出力することを可能にする。
【0014】
図1を参照すると、この図は、MEMS画像増強器用の蛍光スクリーン100の例示的な実施形態を含むダイ10の斜視図を示す。蛍光スクリーン100は、ダイ10の活性領域12(イメージング領域12とも称される)に含まれ、斜視図の実施形態では、寸法D1の高さ及び幅を有する正方形である。より具体的には、図示の例では、活性領域12は、約14ミリメートル(mm)×14mm(即ちD1は、14mmである)の正方形領域である。しかしながら、他の実施形態では、活性領域12は、任意の形状及びサイズであってもよい。
【0015】
活性領域12の形状及びサイズにかかわらず、活性領域12は、ダイを固定して追加の構成要素(即ち、真空密封を有する追加のウエハ)に封止することを可能にする外部バンド16によって束縛される。図示の実施形態では、外部バンド16は、シリコン層120から形成される。実際、図示の実施形態では、ダイ10は、ガラスウエハなどのウエハ110の一部であり、ウエハ110の上にシリコン層120が形成されている。シリコン層120は、エッチバックボンディング、間引き、及び/又は堆積のような、現在知られている又は今後開発される任意の技術を用いてウエハ110の上に形成されてもよい。さらに、シリコン層120は、任意の接合(例えば、陽極接合、陰極接合など)によってウエハ110に接合されてもよい。集合的に、ウエハ110及びシリコン層120は、ウエハ構造と呼ばれ、シリコン層120は、ウエハ構造の上層を形成する。
【0016】
特に、ウエハ構造は、内壁130の格子を含む。内壁130の格子は、(活性領域内の)シリコン120から形成され、活性領域12に材料を選択的に追加又は除去することによって可能である。特に、特定のパターンでシリコン120をウエハ110に追加することによって、及び/又はシリコン120をウエハ110に接合し、ウエハ110からシリコン120を選択的に除去することによって、活性領域12に内壁130の格子が形成される。例えば、いくつかの実施形態では、シリコン層120は、(オキシドによってハンドルウエハから分離されたシリコンの薄い層を含む)シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハをパターニングし、SOIウエハのシリコンをウエハ110に結合させ、ハンドルウエハをエッチングして取り除き、内壁130の格子を露出することなどのリソグラフィ技術によって活性領域12に堆積され、パターン化される。比較すると、他の実施形態では、均一なシリコン層120がガラスウエハ100の上に形成され、次いでシリコン120が選択的に除去されて内壁130の格子が形成される。概して言えば、ウエハ構造は、活性領域12内の内壁130の格子を画定する任意の方法で形成することができる。
【0017】
さらに、内壁130の格子がどのように形成されるかにかかわらず、シリコンが自然に不透明であるため、内壁130の格子は自然に不透明である。その結果、壁130は、反射性材料及び/又は吸収性材料で被覆(又はオーバーコート)される必要はない。即ち、その自然な不透明性のために、(シリコン120から形成される)内壁の格子130は、光を吸収及び/又は反射し、後方散乱電子の有害な影響を防止又は少なくとも最小限に抑える。さらに、内壁130の自然に不透明な格子は、内壁130の内部の格子によって画定されたセル又は画素135の間で、壁130を通って光が通るのを防ぐために、反射層を作製するための処理などの変更を必要としない。
【0018】
図1~
図3を参照し、画素135を説明する。一般に、内壁の格子130は、シリコン層120内の画素又はセル135のパターンを画定する。しかしながら、画素135は、実際にはその中にシリコンを含まない。画素の底部は、最初にウエハ110から形成され、最終的に薄い蛍光体膜140及び反射性金属層150で覆われる。換言すれば、シリコン120は、それぞれの画素135の底部136から除去される。よって、画素135がシリコン120内に形成されていると説明された場合、これは、画素135が、シリコン120から形成される壁130の間に形成され、大部分が、シリコン層120と並列して簡易的に配置されている意味を意図している。
【0019】
図示の実施形態では、画素135は、均一な画素である。なお、画素135は、画素135がそれぞれ同じ寸法を有し、同じ距離だけ離れている限り、規則的な繰り返しパターンでパターン化される。例えば、それぞれの画素135は、約4ミクロン~約6ミクロンの範囲内の長さ及び幅(
図3のW1として示す)を有する正方形の底面136を有してもよい。一方、それぞれの画素135は、隣接する画素135が約0.3ミクロンの距離(
図3のW2として示されている)によって分離されるように、約4ミクロン~約10ミクロンの範囲内の高さ(
図3のHで示す)を有し、それぞれの壁130は、約0.3ミクロンの厚さを有してもよい。特に、下記に詳細に説明するように、少なくとも膜蛍光体層140が粒子ベースの蛍光体層よりも実質的に薄い(即ち、より短い高さを有する)ため、ピクセルの高さ(即ち、
図3のH)は、粒子蛍光体と共に使用される同様の構造よりも実質的に短くてもよい。
【0020】
蛍光スクリーン100が上述の寸法で形成される場合、蛍光スクリーン100は、約88%の開口率を有してもよい。即ち、画素135は、蛍光スクリーンの通常の表面積(蛍光スクリーン100に対して通常の位置から見た表面積(ランドスケープで表示した際に図面のページの上部))の約88%を覆ってもよい。しかし、他の実施形態では、開口率は、約80%~95%の範囲内であってもよい。より高い開口率は、(より高い開口率が、電子が壁130の上面132(
図3参照)に衝突する機会を減少させるので)後方散乱電子をより効果的に減少させるのに役立ち得るが、開口率は、内壁130の格子の構造的完全性及び画素135のサイズに対して均衡しなければならない。特に、壁の厚さ及び画素サイズは、開口率を制御し得るが、より薄い壁は、より不安定であり、より大きな画素135は、後方散乱電子が画素135の底部136(
図3参照)に含まれる蛍光体層140に再衝突するのを防止することにおいて、有効性が低い可能性がある。
【0021】
ここで、
図2及び
図3を参照し、これらの図は、それぞれ
図1のA-A線に沿ったダイ10の断面図及び
図2のB部分の拡大図を示す。これらの図は、「亘って」という用語が蛍光体層140が少なくとも内壁130の格子のいずれか及び全ての内壁間に配置されていることを意味する限り、内壁130の格子によって画定される画素135のパターンに亘って配置された蛍光体140の薄膜を示す。即ち、蛍光体層140は、蛍光スクリーンを蛍光スクリーン100の主な寸法に対して垂直の方向から見た場合(即ち、ランドスケープで表示された際の図面のページの上部から)、蛍光体膜140が開口率(即ち、80%~95%)と同等の活性領域12の少なくとも一部を覆うように、内壁130の格子によって画定されるセル/画素135のそれぞれの少なくとも底面136の上に配置される。
【0022】
言い換えれば、堆積技術はしばしば壁130と画素135とを区別することができず、したがって、蛍光体層140は、壁130の格子と壁130の格子の上との間に配置される。即ち、蛍光体膜140は、
図3に明瞭に示されるように、蛍光スクリーンを蛍光スクリーン100の主寸法に垂直な方向から見たとき(即ち、ランドスケープで表示された際の図面のページの上部から)、蛍光体膜140が活性領域の100%を覆うように、それぞれの画素135の底面136及びそれぞれの壁130の上面132上に堆積されてもよい。
【0023】
さらに、いくつかの実施形態では、蛍光体層140は、任意の壁130の側壁134を被覆してもよく、それによって画素135を画定する任意の表面の被覆を完了する。例えば、蛍光体層140が原子層堆積を介して形成される場合、蛍光体層140は、底部136及び底部136を取り囲む4つの側壁134の全てを被覆してもよい。明確にするために、断面図に対して垂直である側壁134(即ち、断面図の視点から後壁とみなされる画素135の壁)は、
図2及び
図3から省略される。しかしながら、側壁134は、
図1に示されるように、それぞれの画素135の底部136を実質的に取り囲んでいるか、又は拘束してもよいことが理解されたい。さらに、側壁134は、それぞれの画素135が本質的に開放頂部キャビティ又はくぼみであるように、底部136に対して実質的に垂直に(即ち、側壁134は、実質的に垂直な側壁134とすることができる)延びてもよい。これに加えて、又はこれに代えて、それぞれの画素135の形状は、ピット又はトレンチとして説明されてもよい。
【0024】
上記の原子層堆積に言及したにもかかわらず、非粒子蛍光体層140は、電子エネルギーが非粒子蛍光体層の中に
付与されることを確保する好適な高さを有する非粒子蛍光体膜を堆積させるのに好適な任意の数の堆積技術によって、内壁130の格子に亘って形成されてもよい。好適な高さは、入射する電子の浸透範囲よりも大きい任意の高さであり得る。浸透範囲は、入射電子のエネルギー及び蛍光体の密度に依存してもよく、その関係性は式:
【数1】
[式中、ρは蛍光体密度を表し、Vは、入射電子のエネルギーを表し、R
Pは、浸透範囲を表す]によって画定される。言い換えると、蛍光体の厚さは、スクリーン解像度(R
L)に対する悪影響を最小限にするために、浸透範囲を考慮して最小化されるべきであり、下記式によって画定される:
【数2】
【0025】
より具体的な例として、電子エネルギーが約200nmに亘って吸収される場合(即ち、浸透範囲が200nmであり、これは最も一般的であり得る)、非粒子蛍光体膜140の高さは、約200nm~300nmの範囲内である。その結果、薄膜140は、電子エネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを可視光に変換するのに十分である。さらに、この高さ(即ち、フィルムの厚さ)は、蛍光体粒子から形成された蛍光体層のサイズの約1/10であり、繰り返すと、蛍光体層140の高さの減少は、非粒子蛍光体膜であり、(即ち、粒子ベースの蛍光体層と比較して)蛍光体層内の光子散乱を低減するのに役立ち得る。
【0026】
さらに
図2及び
図3を参照すると、反射性金属層150が、蛍光体層140の頂上に配置されている。即ち、蛍光体層140は、反射性金属層150で被覆されている。反射性金属層150は、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、及び/又は任意の他の導電性及び反射性金属(即ち、原子番号の低い金属)の層であってもよく、蒸発技術なしに、蛍光体層140の上に直接形成することができる。即ち、反射性金属層150は、2つの堆積物の間にラッカーを適用することなく(及び加熱を介してラッカーの除去を続いて試みることなく)蛍光体層140の上面に直接堆積させることができる。反射性層150は、不連続な平坦な上面(即ち、上面は、実際、壁130の格子によって分離された複数の平坦な上面セグメント)であるが、蛍光体層140が実質的に平坦な上面(即ち、実質的に平らな上面)を形成するため、蛍光体層140の上に直接形成することができる。蛍光体層140のすぐ上に反射性層150を形成することは、ラッカー又は他のそのような物質を塗布し、続いて除去する(即ち焼き尽くす)技術と比較して、実質的にほとんどピンホール、仮想漏れ及び閉じ込められたガスを生成しない。
【0027】
ここで
図3を参照し、内壁130(及び内壁によって形成された画素135)の格子の全体的な構造は、電子散乱を実質的に低減する。電子が任意の蛍光スクリーンに対して衝突すると、電子の少なくともいくつかが蛍光スクリー
ンから跳ね返る
(即ち、後方散乱)が、本明細書に提示された蛍光スクリーンは、この後方散乱の悪影響を低減又は排除する(即ち、本明細書において提示された蛍光スクリーンは「後光効果」を低減又は排除する)。蛍光スクリーン100は、内壁130の格子が電子が横方向に別の画素135に移動することを防止するので、悪影響を防止する。その代わりに、
図3に示すように、後方散乱電子は、側壁134の1つに吸収されるか、又は側壁134のうちの1つから反射される(後方散乱電子を蛍光体層140から遠ざかる方向に向ける)。
【0028】
図4は、本発明の例示的な実施形態に係るMEMS画像増強器用の蛍光スクリーンを形成する方法の高レベルのフロー図である。最初に、ステップ410において、画素のパターンが、ウエハのダイの活性領域又はイメージング領域に生成される。412及び414に示されるように(及び上述のように)、いくつかの実施形態では、画素を形成することは、ウエハにシリコンの上層を与えることと、シリコン内に壁の格子を作り、画素のパターンを画定することと、を含む。上述したように、様々な実施形態において、シリコン層は、ガラスウエハなどのウエハ上に堆積され、及び/又は接合(即ち、陽極接合)され、内壁の格子は、様々なリソグラフィ及び/又は堆積技術を使用して形成してもよい。
【0029】
420では、蛍光体の層は、画素の格子に亘って成長又は形成される。上述したように、蛍光体の層は、非粒子蛍光体であり、現在知られている又は今後開発される任意の堆積技術によって適用される。したがって、画素の格子に亘って蛍光体の層を成長させる際に、蛍光体の層をそれぞれの画素の底部に堆積させ、壁の格子のそれぞれの壁の上に堆積させてもよい。実際に、いくつかの実施形態(即ち、蛍光体層が原子層堆積によって堆積される実施形態)では、蛍光体層は、壁の格子内のそれぞれの壁の側壁に堆積されてもよい。
【0030】
430では、蛍光体層がアニールされる。アニーリングは、蛍光体層を結晶化させ、蛍光体層が(蛍光体層がその上の電子からのより多くのエネルギーを光に変換するように)良好な蛍光体の効率を有することを確実にする。アニーリングは、蛍光体層が600~900℃の範囲の温度に加熱されることを必要としてもよい。特に、内壁(吸収体/反射体)の格子は、アルミニウムでオーバーコートされたガラスではなくシリコンで形成されるので、内壁は、少なくともアルミニウムでオーバーコートされたガラスと比較して、より高いアニール点を可能にする。このより高いアニール点は、蛍光体の効率を向上させることができる(これは、次に、直接観察又はデジタル用途に好適な可視光を生成する)。これと比較して、アルミニウムでオーバーコートされたガラスを600~900℃の範囲の温度でアニールすると、アルミニウムは溶融する及び/又はガラス中に拡散する(アルミニウムは660℃で溶融するため)場合がある。結果として、アルミニウムでオーバーコートされたガラスは、より低い蛍光体の効率をもたらす、より低い温度でアニールされる。
【0031】
440では、反射性金属層は、アニールされた蛍光体層上に堆積される。上述したように、反射性金属層は、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、及び/又は他の導電性及び反射性金属(即ち、原子番号の小さい金属)の層であってもよく、画素内又は内壁の格子に堆積された任意の蛍光体層を覆ってもよい。例えば、蛍光体層が原子層堆積技術によって堆積される場合、反射性金属層は、画素の底部に配置された蛍光体膜(即ち、
図3のアイテム136)、画素を画定する側壁(即ち、
図3のアイテム134)、及び画素を形成する内壁の上部(即ち、
図3のアイテム132)の上に堆積されてもよい。反射性金属層がこれらの表面の全てに堆積されると、反射性金属層は、活性領域に亘って電気的に接続され得る。しかし、蛍光体層(したがって、反射性金属層)が画素の底部及び/又は内壁のみに配置される実施形態では、反射性金属層の部分は、それぞれ電気的に絶縁されてもよい。
【0032】
要約すると、1つの形態では、マイクロ電気機械画像増強器用の蛍光体スクリーンが提供され、このスクリーンは、自然に不透明な上層及び自然に不透明な上層内で画定される活性領域を有するウエハ構造と、活性領域内の自然に不透明な上層から形成されている内壁の格子と、内壁の格子の間の活性領域において配置されている薄膜蛍光体層と、薄膜蛍光体層の上に配置されている反射性金属層と、を備える。
【0033】
別の形態では、マイクロ電気機械画像増強器用の蛍光スクリーンを形成する方法が提供され、方法は、ウエハの自然に不透明な最上層の活性領域に画素のパターンを作成することと、画素のパターンに亘って蛍光体層を成長させることと、蛍光体層をアニールすることと、蛍光体層上に反射性金属を堆積させることと、を含む。
【0034】
さらに別の形態では、マイクロ電気機械画像増強器用の蛍光スクリーンが提供され、蛍光スクリーンは、活性領域を有するウエハ構造と、活性領域内に形成されたくぼみの格子と、くぼみに配置された非粒子蛍光体層と、蛍光体層の上に配置された反射性金属層と、を含む。
【0035】
本明細書に提示される蛍光スクリーンは、多くの利点を提供する。例えば、上述のように、ウエハ構造(即ち、ガラスウエハ並びに内壁の格子及び画素のパターンを形成するシリコンの構造)は、後方散乱電子を捕捉し、蛍光スクリーンの画像忠実度(即ち、変調伝達関数を介して測定される)を改善する。ウエハ構造はまた、導電性であってもよく、蛍光スクリーンから電荷を排出するとともに、蛍光体の効率を改善する(即ち、より高いアニールポイントを可能にすることによって)。
【0036】
別の例として、少なくとも部分的に薄膜蛍光体層に起因して、本明細書に提示される蛍光スクリーンは、(少なくとも粒子ベースの蛍光スクリーンと比較して)光子散乱を低減し、したがって、画素間の蛍光のクロストークを排除することによって画像忠実度(即ち、変調伝達関数を介して測定される)を改善することができる。さらに、本明細書に提示される蛍光スクリーンは、(不規則な上面を画定する)蛍光粒子の上に反射性金属層を形成するために必要な蒸発処理がないため、仮想漏れを低減又は排除することができる。代わりに、反射性金属を薄膜蛍光体層の平らな上面に直接塗布(即ち、堆積)することができる。言い換えれば、蛍光体層を形成する前に、少なくともシリコン内壁が自然に不透明であるため、反射性金属をウエハ構造に塗布する必要はない。
【0037】
最後の例として、本明細書に提示される蛍光スクリーンは蛍光粒子を含まないため、蛍光スクリーンは、ウエハスケール処理及び気密封止と適合性がある。その結果、蛍光スクリーンは、大規模で迅速に製造され、迅速かつ効率的に、ナイトビジョンゴーグル又はスコープなどの様々なイメージング製品に組み込むことができる。実際に、本明細書に提示される蛍光スクリーンは、粒子ベースの蛍光スクリーンと比較して、サイズ及び重量減少を提供することによって、これらのイメージング製品を改善し得る。蛍光スクリーンはまた、蛍光スクリーンによって生成される画像の画像忠実度を改善することによって、デジタル及びアナログの両方のソリューションに対する性能改善を提供し得る。
【0038】
本明細書において使用され得る「左」、「右」、「上」、「底」、「前」、「後」、「側方」、「高さ」、「長さ」、「幅」、「上方」、「下方」、「内側」、「外側」、「内」、「外」などの用語は、単に参照点又は参照部分を記載しており、本発明をいずれかの特定の向き又は構成に限定するものではないことを理解されたい。さらに、「例示的」という用語は、本明細書において例又は説明を説明するために使用される。例示として本明細書に記載された任意の実施形態は、好ましい又は有利な実施形態として解釈されるのではなく、本発明の可能な実施形態の一例又は例示として解釈されるべきである。
【0039】
開示された発明は、1つ以上の特定の実施例で具体化されているように本明細書に図示及び記載されているが、それにもかかわらず、本発明の範囲、範囲内、及び請求の等価物の範囲から逸脱することなく様々な修正及び構造的変更をその範囲内で行うことができるため、示された詳細に限定されることを意図しない。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウエハは、マスクされ、エッチングされて内壁の格子を形成する光ファイバウエハであってよい。これらの実施形態では、内壁が後方散乱電子を含むのに十分に不透明であることを確実にするために、内壁の格子を反射性及び/又は導電性材料で被覆する必要がある。次に、上述したのと同様に、壁の格子によって形成された画素に、薄膜の蛍光体と反射性材料を形成することができる。
【0040】
加えて、実施形態の1つからの様々な特徴は、他の実施形態に組み込むことができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、広範かつ以下の特許請求の範囲に記載された開示の範囲と矛盾しないように解釈されることが適切である。