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  • 特許-押出ブロー容器の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】押出ブロー容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/76 20060101AFI20221216BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B29C49/76
B29C49/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018225951
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020082706
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】津田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】石川 岳
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-178420(JP,A)
【文献】特開2007-030224(JP,A)
【文献】特開2002-293317(JP,A)
【文献】特開2002-137283(JP,A)
【文献】特開2000-000883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 - 49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により上下方向に延びるパリソンを形成するパリソン形成工程と、
一対の成形金型により前記パリソンを径方向に挟み込み、前記パリソンの上端開口を開放した状態で前記パリソンの下端開口を閉塞し、前記パリソンを、一対の前記成形金型間のキャビティ内に位置させる型締め工程と、
前記パリソン内にその上端開口からプラグを進入させて嵌合し、前記パリソンを、前記プラグの外周面と前記キャビティの内面とにより挟み込み、押出ブロー容器の口部を成形する口部成形工程と、
前記プラグに形成された供給孔から加圧エアを供給し、前記パリソンのうち、成形した前記口部より下方に位置する部分を延伸させ、前記キャビティの内面に押し当てて、押出ブロー容器の肩部、胴部、および底部を成形するブロー工程と、を有する押出ブロー容器の製造方法であって、
前記プラグの外周面に、下方を向き、全周にわたって連続して延びる第1成形面を有する第1成形段部が形成され、
前記口部成形工程時に、前記第1成形段部を、前記パリソンの内周面に押し当てて、前記口部の内周面に、上方を向き、かつ上下方向に対する傾斜角度が90°となる面を有する段部を成形する、押出ブロー容器の製造方法。
【請求項2】
前記プラグの外周面に、前記第1成形段部より上方に位置し、下方を向き、全周にわたって連続して延びる第2成形面を有する第2成形段部が形成され、
前記キャビティの内面に、上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びる傾斜面が形成され、
前記口部成形工程時に、前記第2成形段部を、前記パリソンの内周面に押し当てて、前記口部の上端開口縁を成形するとともに、前記傾斜面に、前記第2成形面の外周縁を当接、若しくは近接させ、前記パリソンのうち、成形した前記口部より上方に位置する部分を切除する、請求項1に記載の押出ブロー容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ブロー容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に示されるような、口部の内周面に、上方を向く面(以下、段面という)を有する段部が形成された容器が知られている。この容器では、例えば、充填ノズルの先端開口縁を、段面に突き当てた状態で、内容液を充填することが可能になったり、他の容器への詰め替え時に、内容液が、口部の内周面にその全域にわたって表面張力により張り付いて口部内に留まったりするのを抑制することができる。
この容器を押出ブロー成形により形成することが考えられる。
【0003】
押出ブロー成形は、まず、押出成形により形成された上下方向に延びるパリソンを、一対の成形金型により径方向に挟み込み、パリソンの上端開口を開放した状態でパリソンの下端開口を閉塞した後に、パリソン内にその上端開口からプラグを進入させて嵌合し、パリソンを、プラグの外周面とキャビティの内面とにより挟み込み、押出ブロー容器の口部を成形し、その後、プラグに形成された供給孔から加圧エアを供給し、パリソンのうち、成形した口部より下方に位置する部分を延伸させ、キャビティの内面に押し当てて、押出ブロー容器の肩部、胴部、および底部を成形する。
従来では、前述の段部を形成するに際し、押出ブロー容器の口部の内周面に切削加工を施していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-347731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の押出ブロー容器の製造方法では、口部の内周面に切削加工を施して段部を形成していたので、押出ブロー容器内に切屑が進入するおそれがあり、また、切削加工時に生ずる摩擦熱、および回転トルクなどにより口部が変形しやすくなり、口部を精度よく形成することが困難であるという問題があった。後者の問題は、口部の深い位置に段部を形成する場合に顕在化するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、押出ブロー容器内に切屑が進入したり、口部の寸法精度が低下したりするのを防ぎつつ、口部の内周面に段部を形成することができる押出ブロー容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の押出ブロー容器の製造方法は、押出成形により上下方向に延びるパリソンを形成するパリソン形成工程と、一対の成形金型により前記パリソンを径方向に挟み込み、前記パリソンの上端開口を開放した状態で前記パリソンの下端開口を閉塞し、前記パリソンを、一対の前記成形金型間のキャビティ内に位置させる型締め工程と、前記パリソン内にその上端開口からプラグを進入させて嵌合し、前記パリソンを、前記プラグの外周面と前記キャビティの内面とにより挟み込み、押出ブロー容器の口部を成形する口部成形工程と、前記プラグに形成された供給孔から加圧エアを供給し、前記パリソンのうち、成形した前記口部より下方に位置する部分を延伸させ、前記キャビティの内面に押し当てて、押出ブロー容器の肩部、胴部、および底部を成形するブロー工程と、を有する押出ブロー容器の製造方法であって、前記プラグの外周面に、下方を向き、全周にわたって連続して延びる第1成形面を有する第1成形段部が形成され、前記口部成形工程時に、前記第1成形段部を、前記パリソンの内周面に押し当てて、前記口部の内周面に、上方を向き、かつ上下方向に対する傾斜角度が90°となる面を有する段部を成形する。
【0008】
この発明によれば、口部成形工程時に、プラグの第1成形段部を、パリソンの内周面に押し当てて、押出ブロー容器の口部の内周面に、上方を向く面を有する段部を成形するので、切屑、および摩擦熱を生じさせずに、段部を形成することが可能になり、押出ブロー容器内に切屑が進入したり、口部の寸法精度が低下したりするのを防ぎつつ、口部の内周面に段部を形成することができる。
前述したように、段部を切削加工で形成しないので、摩擦熱、および回転トルクなどの負荷が口部に加えられるのを防ぐことが可能になり、仮に口部の、肩部寄りの深い位置に段部を形成する場合でも、口部を精度よく形成することができる。
段部を口部の深い位置に形成すると、他の容器への詰め替え時に、内容液が、口部の内周面に表面張力により張り付き得る、口部の内周面の上下方向の長さが短くなり、口部内に留まる内容液の量をより一層確実に抑えることができる。
【0009】
ここで、前記プラグの外周面に、前記第1成形段部より上方に位置し、下方を向き、全周にわたって連続して延びる第2成形面を有する第2成形段部が形成され、前記キャビティの内面に、上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びる傾斜面が形成され、前記口部成形工程時に、前記第2成形段部を、前記パリソンの内周面に押し当てて、前記口部の上端開口縁を成形するとともに、前記傾斜面に、前記第2成形面の外周縁を当接、若しくは近接させ、前記パリソンのうち、成形した前記口部より上方に位置する部分を切除する。
【0010】
この場合、口部成形工程時に、第2成形段部を、パリソンの内周面に押し当てて、押出ブロー容器の口部の上端開口縁を成形するとともに、キャビティの内面の傾斜面に、第2成形面の外周縁を当接、若しくは近接させ、パリソンのうち、成形した前記口部より上方に位置する部分を切除する。
すなわち、口部成形工程時に、押出ブロー容器の口部の上端開口縁、および段部を成形するのと同時に、パリソンのうち、成形した前記口部より上方に位置する部分を切除するので、押出ブロー容器を効率よく形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押出ブロー容器内に切屑が進入したり、口部の寸法精度が低下したりするのを防ぎつつ、口部の内周面に段部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る一実施形態として示した押出ブロー容器の要部を示す半縦断面図である。
図2】本発明に係る一実施形態として示した押出ブロー容器の製造方法を説明する説明図である。
図3】本発明に係る変形例として示した押出ブロー容器の要部を示す半縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る押出ブロー容器の製造方法について説明する。
まず、押出ブロー容器1について説明する。
本実施形態の押出ブロー容器1は、図1に示されるように、口部11、肩部12、胴部13、および底部を備え、これらが共通軸Oに沿って上方から下方に向けてこの順に連設されて構成されている。口部11、肩部12、胴部13、および底部は、共通軸Oと同軸に配設されている。以下、共通軸Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、共通軸Oに交差する方向を径方向といい、共通軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0014】
押出ブロー容器1は、合成樹脂材料で一体に形成されている。合成樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。押出ブロー容器1は、1種類の合成樹脂材料で形成される場合に限定されるものではなく、異種の合成樹脂材料を積層することで形成されても構わない。
後者の場合、互いに積層された層同士が、剥離可能であってもよいし、剥離不能であってもよい。異種の合成樹脂材料が積層されてなる構成は、押出ブロー成形の方が、射出成形、およびプリフォームを用いた延伸ブロー成形などと比べて容易に形成することができる。
【0015】
例えば、主材樹脂およびバリア性樹脂の2種類の合成樹脂材料を積層することで、押出ブロー容器1を形成しても構わない。
この場合、主材樹脂としては、例えばポリプロピレン等が挙げられる。バリア性樹脂は、例えばガス(酸素や二酸化炭素等)や、湿気等の水分や、紫外線等の光や、香り等の匂い成分等が主材樹脂を透過することを規制するバリア性を有する合成樹脂材料であり、バリアする対象物に応じて適宜選択される。
例えば、ガスに対するバリア性を発揮させる場合には、ナイロン系樹脂やエチレンビニルアルコール共重合体樹脂等が採用され、水分に対するバリア性を発揮させる場合には、環状ポリオレフィン系樹脂等が採用される。
【0016】
口部11の外周面に、雄ねじ部11aが形成されている。口部11の上端開口縁11bは、上下方向に沿う縦断面視で共通軸Oに直交する方向に延びる平坦面になっている。口部11の上端開口縁11bにおける外周縁は、口部11の外周面に対して径方向の外側に向けて尖る切断痕11cとなっている。
【0017】
口部11の内周面の上端部は、上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びている。口部11の内周面の上部は、口部11の内周面の下部より径方向の外側に位置している。なお、雄ねじ部11aは、口部11の外周面における上部および下部に一体に形成されている。口部11の内周面に、上方を向く面を有する段部15が形成されている。段部15は、口部11の内周面における上部と下部との接続部分に位置している。
【0018】
段部15における上方を向く面の、上下方向に対する傾斜角度は、約90°となっている。これにより、例えば、充填ノズルの先端開口縁を、段部15の上方を向く面に突き当てた状態で、内容液を充填することが可能になったり、他の容器への詰め替え時に、内容液が、口部11の内周面にその全域にわたって表面張力により張り付いて口部11内に留まったりするのを確実に抑制することができる。
【0019】
口部11の内周面における上部および下部の、上下方向に直交する水平方向に対する各傾斜角度が、85.0°以上89.9°以下、好ましくは89.0°以上89.5°以下となっている。
口部11の内周面において、下部と段部15との接続部分は、径方向の内側に向けて突の曲面状に形成されている。この接続部分の、上下方向に沿う縦断面視における曲率半径は、0.05mm以上となっている。
口部11の内周面において、上部と段部15との接続部分は、径方向の外側に向けて窪む曲面状に形成されている。この接続部分の、上下方向に沿う縦断面視における曲率半径は、0.05mm以上となっている。
【0020】
次に、以上のように構成された押出ブロー容器1の製造方法について説明する。
【0021】
まず、押出成形によりパリソンWを形成する(パリソン形成工程)。この際、パリソンWは、ダイスヘッドから下方に向けて押出され、上下方向に延びている。
次に、ダイスヘッドから押出されたパリソンWを、一対の成形金型21により径方向に挟み込み、パリソンWの上端開口を開放した状態でパリソンWの下端開口を閉塞し、パリソンWを、一対の成形金型21間のキャビティ21a内に位置させる(型締め工程)。
【0022】
次に、図2に示されるように、パリソンW内に、その上端開口からプラグ22を進入させて嵌合し、パリソンWの上部を、プラグ22の外周面とキャビティ21aの内面とにより挟み込み、押出ブロー容器1の口部11を成形する(口部成形工程)。
ここで、プラグ22の外周面には、下方を向き、全周にわたって連続して延びる第1成形面23aを有する第1成形段部23が形成されている。
口部成形工程時に、第1成形段部23を、パリソンWの上部の内周面に押し当てて、口部11の内周面に段部15を成形する。
【0023】
ここで、プラグ22の外周面には、第1成形段部23より上方に位置し、下方を向き、全周にわたって連続して延びる第2成形面24aを有する第2成形段部24が形成されている。キャビティ21aの内面には、上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びる傾斜面21bが形成されている。傾斜面21bは、キャビティ21aの内面における上端部に位置している。
【0024】
口部成形工程時に、第2成形段部24を、パリソンWの上部の内周面に押し当てて、口部11の上端開口縁11bを成形し、傾斜面21bに、第2成形面24aの外周縁を当接、若しくは近接させ、パリソンWのうち、成形した口部11より上方に位置する部分を切除する。この際、第2成形面24aの外周縁は、キャビティ21aの内面の傾斜面21bにおける下端部に、当接、若しくは近接している。また、口部11の上端開口縁11bに切断痕11cが形成される。
【0025】
次に、プラグ22に形成された供給孔22aから加圧エアを供給し、パリソンWのうち、成形した口部11より下方に位置する部分を延伸させて、キャビティ21aの内面に押し当てる(ブロー工程)。これにより、肩部12、胴部13、および底部が成形されて、押出ブロー容器1が形成される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態による押出ブロー容器の製造方法によれば、口部成形工程時に、プラグ22の第1成形段部23を、パリソンWの内周面に押し当てて、押出ブロー容器1の口部11の内周面に、上方を向く面を有する段部15を成形するので、切屑、および摩擦熱を生じさせずに、段部15を形成することが可能になり、押出ブロー容器1内に切屑が進入したり、口部11の寸法精度が低下したりするのを防ぎつつ、口部11の内周面に段部15を形成することができる。
【0027】
前述したように、段部15を切削加工で形成しないので、摩擦熱、および回転トルクなどの負荷が口部11に加えられるのを防ぐことが可能になり、仮に、例えば図3に示されるように、口部11の、肩部12寄りの深い位置に段部15を形成する場合でも、口部11を精度よく形成することができる。
段部15を口部11の深い位置に形成すると、他の容器への詰め替え時に、内容液が、口部11の内周面に表面張力により張り付き得る、口部11の内周面の上下方向の長さが短くなり、口部11内に留まる内容液の量をより一層確実に抑えることができる。
【0028】
本実施形態では、口部成形工程時に、第2成形段部24を、パリソンWの内周面に押し当てて、押出ブロー容器1の口部11の上端開口縁11bを成形するとともに、キャビティ21aの内面の傾斜面21bに、第2成形面24aの外周縁を当接、若しくは近接させ、パリソンWのうち、成形した口部11より上方に位置する部分を切除する。
すなわち、口部成形工程時に、押出ブロー容器1の口部11の上端開口縁11b、および段部15を成形するのと同時に、パリソンWのうち、成形した口部11より上方に位置する部分を切除するので、押出ブロー容器1を効率よく形成することができる。
【0029】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
例えば 前記実施形態では、口部成形工程時に、パリソンWのうち、成形した口部11より上方に位置する部分を切除したが、パリソンWの上端開口縁に、第2成形面24aを押し当てて、口部11の上端開口縁11bを成形してもよい。
【0031】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 押出ブロー容器
11 口部
11b 上端開口縁
15 段部
21 成形金型
21a キャビティ
21b 傾斜面
22 プラグ
22a 供給孔
23 第1成形段部
23a 第1成形面
24 第2成形段部
24a 第2成形面
W パリソン
図1
図2
図3