(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】裏面電極型太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/18 20060101AFI20221216BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20221216BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01L31/04 420
H01L31/06 455
H01L21/306 N
(21)【出願番号】P 2018234470
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-10-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 暢
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158017(JP,A)
【文献】特開2000-277890(JP,A)
【文献】特開昭62-239536(JP,A)
【文献】特開2005-142309(JP,A)
【文献】特開昭64-022030(JP,A)
【文献】特開2014-011083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316520(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102437243(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 21/302-21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1の面に第1導電型半導体層を形成する工程と、
第1導電型半導体層の上にリフトオフ層を形成する工程と、
前記リフトオフ層を選択的に除去してリフトオフ層パターンを形成する工程と、
前記リフトオフ層パターンを覆うように第2導電型半導体層を形成する工程と、
前記リフトオフ層パターンをエッチングする工程と、
前記リフトオフ層パターンをエッチングする工程よりも後で、前記基板をリンス液に浸漬して前記基板の表面に残存するリフトオフ層パターンを除去する工程とを備え、
前記基板の前記リンス液への浸漬は、前記基板の最初に前記リンス液と接する位置が、前回の浸漬の際とは異なった位置となるように複数回繰り返す、裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記基板の前記リンス液への浸漬を繰り返す際に、毎回新たなリンス液を用いる、請求項1に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記基板の前記リンス液への浸漬を繰り返す際に、少なくとも1回は前記基板を180°回転させて浸漬を行う、請求項1又は2に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記リフトオフ層パターンは、第1の方向に延びる幹パターンと、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数の枝パターンとを有し、
前記基板
の前記リンス液
への浸漬を繰り返す際に、少なくとも1回は前記基板を前記第2の方向に沿って移動させて浸漬を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記枝パターンの線幅は、前記幹パターンの線幅よりも細い、請求項4に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記幹パターンは、前記枝パターンよりも前記基板の第1の辺に近い位置に前記第1の辺に沿って形成され、
前記基板の前記リンス液への最初の浸漬は、前記第1の辺が他の辺よりも先に前記リンス液と接するように行う、請求項4又は5に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、裏面電極型太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極による遮蔽損のない太陽電池として、裏面のみに電極を配置させた裏面電極型太陽電池が注目されている。
【0003】
裏面電極型太陽電池は、裏面にp型半導体層及びn型半導体層等を含むパターンを精度良く形成する必要がある。半導体層のパターンを形成する方法として、リフトオフ法がある。リフトオフ法は、半導体層よりも容易にエッチングされるリフトオフ層を半導体層の下層に選択的に設け、リフトオフ層をエッチングすることにより上層の半導体層をリフトオフ層と共に選択的に除去する手法である。リフトオフ法を用いることにより、太陽電池の裏面に高精度のパターンを容易に形成できると期待される(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リフトオフ法においてエッチングされたリフトオフ層が、基板の表面から完全に脱離せずに残存する場合がある。このため、リフトオフ法においてリフトオフ層を基板の表面から適切に脱離させる技術が求められている。
【0006】
本開示の課題は、リフトオフ法を用いたパターン形成の際に基板表面にリフトオフ層が残存しにくくした、裏面電極型太陽電池の製造方法を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の裏面電極型太陽電池の製造方法の一態様は、基板の第1の面に第1導電型半導体層を形成する工程と、第1導電型半導体層の上にリフトオフ層を形成する工程と、リフトオフ層を選択的に除去してリフトオフ層パターンを形成する工程と、リフトオフ層パターンを覆うように第2導電型半導体層を形成する工程と、リフトオフ層パターンをエッチングする工程と、リフトオフ層パターンをエッチングする工程よりも後で、基板をリンス液に浸漬して基板の表面に残存するリフトオフ層パターンを除去する工程とを備え、基板のリンス液への浸漬は、基板の最初にリンス液と接する位置が、前回の浸漬の際とは異なった位置となるように複数回繰り返す。
【発明の効果】
【0008】
本開示の裏面電極型太陽電池の製造方法によれば、リフトオフ法を用いたパターン形成の際に基板表面にリフトオフ層が残存しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図5】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図6】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層パターンのエッチング工程を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法におけるリンス工程を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法におけるリンス工程を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池におけるリフトオフ層パターンの変形例を示す平面図である。
【
図10】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図11】一実施形態に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、
図1に示すように、第1の面101及び第2の面102にそれぞれテクスチャ構造TXを有する基板100を準備する。
【0011】
次に、
図2に示すように、基板100の第2の面102の上に、例えばi型非晶質シリコンからなる第2面真性半導体層121を形成する。続いて、形成した第2面真性半導体層121の上に低反射層124を形成する。低反射層124は、光閉じ込めの観点から、適した光吸収係数及び屈折率を有する窒化硅素(SiN
X)又は酸化珪素(SiO
X)等を用いることができる。なお、第2面真性半導体層及び低反射層124は、必要に応じて形成すればよく、形成しなくてもよい。
【0012】
次に、
図3に示すように、基板100の第1の面101の上に、第1真性半導体層111を形成する。続いて、形成した第1真性半導体層111の上に、第1導電型半導体層113を形成する。第1導電型半導体層113は、例えばp型半導体層とすることができる。なお、第1真性半導体層111は、必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。また、第1真性半導体層111は、第2面真性半導体層121と同じ工程において形成することもできる。
【0013】
次に、第1導電型半導体層113の上に、リフトオフ層116aを形成する。リフトオフ層116aは、例えば、酸化珪素(SiOX)を主成分とする層とすることができる。
【0014】
次に、
図4に示すように、リフトオフ層116a、第1導電型半導体層113及び第1真性半導体層111を選択的に除去する。これにより、リフトオフ層116aがパターニングされ、リフトオフ層パターン116が形成される。リフトオフ層116a、第1導電型半導体層113及び第1真性半導体層111が選択的に除去された部分は、リフトオフ層パターン116が存在しない領域NAとなる。
【0015】
リフトオフ層116aを含む各層のパターニングは、フォトリソグラフィ法、例えば所定のパターンを有するレジスト膜(不図示)をリフトオフ層116aの上に形成し、レジスト膜によってマスクされた領域がエッチングにより溶解せず、マスクされていない領域が溶解することにより実現できる。エッチングは、例えばフッ化水素酸と酸化性溶液との混合溶液(例えばフッ硝酸)、又はオゾンをフッ化水素酸に溶解させた溶液(以下、オゾン/フッ酸液)等により行うことができる。なお、パターニングは、エッチング溶液を用いたウェットエッチングに限定されず、例えばドライエッチングにより行ったり、エッチングペースト等を用いたパターン印刷により行ったりすることができる。
【0016】
なお、
図4には、領域NAにおいて第1真性半導体層111を除去する例を示したが、第1真性半導体層111は残存させてもよい。この場合、後の工程において、第2真性半導体層を形成しなくてもよい。
【0017】
次に、
図5に示すように、リフトオフ層パターン116、第1導電型半導体層113及び第1真性半導体層111が残存する部分を含む、第1の面101上の全面に、第2真性半導体層112及び第2導電型半導体層114を順次形成する。第2導電型半導体層114は、第1導電型半導体層113と逆の導電型の層であり、例えばn型半導体層とすることができる。なお、第2真性半導体層112は必要に応じて形成すればよく、形成しなくてもよい。
【0018】
次に、
図6に示すように、エッチング溶液を用いて、リフトオフ層パターン116をエッチングする。エッチングされたリフトオフ層パターン116は、直ちに基板から脱離する部分もあるが、大部分は基板100の表面に付着した状態で残存する。リフトオフ層パターン116のエッチングは、例えば、フッ化水素酸を用いたウェットエッチングにより行うことができる。具体的には、エッチング溶液141を満たしたエッチング槽140に、基板100を浸漬して引き上げることにより行うことができる。基板100の浸漬(エッチング)時間は、リフトオフ層パターン116の形状及び材質等に応じて適宜設定すればよい。但し、パッシベーションの低下を抑える観点から、エッチング時間は好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下であり、リフトオフ層パターン116のエッチングを十分に進行させる観点から、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。
【0019】
次に、
図7に示すように、基板100の表面に残存するエッチング液、及びリフトオフ層を除去するためにリンス工程を行う。リンス工程は、リンス液151を満たしたリンス槽150にエッチングを行った基板100を下降させて浸漬し、引き上げることにより行うことができる。エッチング後の基板100をリンス液151に浸漬することにより、基板100の表面に残存するリフトオフ層パターン116及びその上に形成されている第2真性半導体層112及び第2導電型半導体層114を基板100から脱離させ、第1導電型半導体層113を露出させることができる。第2導電型半導体層114のリフトオフ層パターン116が設けられていない領域NAに形成された部分は、基板100上に残存する。
【0020】
基板100のリンス液への浸漬は、複数回繰り返す。浸漬を繰り返す際に、基板100のリンス液と最初に接する位置が、前回の浸漬とは異なる位置となるようにする。例えば、基板100の厚さ方向をz軸とした場合、次の浸漬の際にz軸を中心に基板100を回転させてから浸漬すればよい。
【0021】
エッチングした後のリフトオフ層パターン116が基板100の表面に残存している場合、
図8に示すように、一部が浮き上がった状態となっている。この浮き上がった部分161からリンス液151に接するようにすれば、浮き上がっていない部分からリンス液151に接する場合よりも、残存するリフトオフ層パターン116が基板100から脱離し易くなる。リフトオフ層パターン116の浮き上がった部分161の位置は一定ではないため、基板100を回転させて、異なる位置からリンス液151に接するようにした方が、浮き上がった部分161からリンス液151に接する可能性を高くできる。
【0022】
基板100の回転角度は、特に限定されないが、浮き上がった部分161からリンス液151に接する可能性を大きくする観点から、1回前の浸漬を行った状態に対して好ましくは±45°以上であり、より好ましくは±90°以上、さらに好ましくは180°である。なお角度の正号は右回り、負号は左回りを意味する。浸漬を3回以上繰り返す場合には、最初にリンス液151と接する部分が毎回異なるようにすることも、1回おき又は数回おきに、同じ部分が最初にリンス液151と接するようにすることもできる。例えば、1回目に対して2回目は基板100を180°回転させて浸漬し、3回目は90°回転させることができる。また、3回目を180°回転させて1回目と同じ方向にして浸漬することもできる。
【0023】
リフトオフ層パターン116が、
図7に示すように、幹パターン116Aが延びる方向(第1の方向)がX軸に沿い、複数の枝パターン116Bが延びる方向(第2の方向)がY軸に沿っている場合、基板100を枝パターン116Bが延びるY軸方向に沿って移動させて、リンス槽150への浸漬と引き上げとを行うことが好ましい。枝パターン116Bが延びるY軸方向に沿って浸漬を行うことにより、X軸方向に延びる幹パターン116Aの端部全体がリンス液151と最初に接するようになるため、浮き上がった部分161から、リフトオフ層パターン116がリンス液151と接する可能性が高くなる。この場合、次の浸漬の際には、基板100をz軸を中心に180°回転させて、枝パターン116Bの延びる方向が再びY軸方向に沿うようにして移動させることが好ましい。但し、複数回繰り返す浸漬の少なくとも1回について枝パターン116Bが延びる方向に沿って移動させればよく、基板100の移動方向が枝パターン116Bが延びる方向に沿っていない場合があってもよい。なお、
図6及び
図7には、幹パターン116Aが基板の端部側に配置されている例を図示したが、幹パターン116Aが基板の中央側に配置されていても構わない。
【0024】
酸化珪素を主成分とするリフトオフ層パターン116を、フッ化水素酸によりエッチングした場合には水素が発生し、発生した水素によりリフトオフ層パターン116に基板100から浮き上がった部分161が生じる。幹パターン116A及び枝パターン116Bの線幅は、種々であるが、一般的な幹パターンの線幅は1mm以上、5mm以下程度であり、500μm程度である枝パターンの線幅よりも広い。このため、幹パターン116Aの部分において枝パターン116Bの部分よりも水素の発生量が多くなり、基板100から浮き上がった部分161が生じやすい。このため、基板100をリンス槽150に浸漬する場合に、幹パターン116Aの部分が、枝パターン116Bの部分よりも先にリンス液151と接するように浸漬することが好ましい。
【0025】
例えば、
図7に示すような、基板100に、上下反転して2つのリフトオフ層パターン116が設けられている場合において、一方の幹パターン116Aに近い辺を下にした状態を0°の位置、他方の幹パターン116Aに近い辺を下にした状態を180°の位置とする。この場合、1回目の浸漬は、0°の位置において、枝パターン116Bの延びる方向に沿って基板100を下降させ、2回目の浸漬は、180°の位置において、枝パターン116Bの延びる方向に沿って基板100を下降させることが好ましい。但し、1回目の浸漬を0°の位置とすれば、2回目の浸漬は90°の位置又は270°の位置として、幹パターン116Aの延びる方向に沿って基板100を下降させて行うこともできる。
【0026】
図9に示すように、基板100に1つのリフトオフ層パターン116が設けられており、幹パターン116Aが第1の辺100Aに沿って、枝パターン116Bよりも第1の辺100Aに近い位置に設けられている場合には、基板100を最初にリンス液151に浸漬する際に、第1の辺100Aが他の辺よりも先にリンス液151と接するように浸漬を行うことが好ましい。この場合、2回目の浸漬は、基板100をz軸を中心として任意の角度に回転させて行うことができるが、180°回転させて行うことが好ましい。
【0027】
なお、リフトオフ層パターン116として、幹パターン116Aから一方向にのみ枝パターン116Bが突出している形状を示したが、幹パターン116Aを中心に両方向に枝パターン116Bが突出している形状とすることもできる。この場合も、少なくとも1回は枝パターン116Bが延びる方向に沿って基板100を下降させてリンス槽150に浸漬することが好ましい。
【0028】
基板100をリンス槽150に向かって下降させる際に、基板100をリンス液151の液面に対して垂直に侵入させることができるが、角度をつけて侵入させてもよい。基板100をスムーズにリンス液151中に侵入させる観点から、液面に対する基板の角度は好ましくは5°以上、60°以下であり、設備の設計及び操作性の観点から好ましくは15°以上45°以下である。
【0029】
リンス液151への浸漬を繰り返す場合に、繰り返し同じリンス液151を使用することができるが、リンス液中を浮遊しているリフトオフ後の小片の基板100への再付着を低減する観点からは、毎回新たなリンス液を使用することが好ましい。リンス液151は、リフトオフ層パターン116の脱離を促進する観点、コンタミの観点、及びコストの観点から水が好ましく、超純水がより好ましい。
【0030】
リフトオフ層パターン116のエッチングとリンスによるリフトオフが終了した後、
図10に示すように、基板100における第1の面101に、例えば、マスクを用いたスパッタリング法により、分離溝125を生じさせるように透明電極層117(117A、117B)を形成する。なお、透明電極層117の形成は、スパッタリング法に代えて、以下のようにしてもよい。例えば、マスクを用いずに透明導電性酸化物膜を第1の面101上の全面に成膜し、その後、フォトリソグラフィ法により、第1導電型半導体層113上及び第2導電型半導体層114上にそれぞれ透明導電性酸化物膜を残すエッチングを行って形成してもよい。第1導電型半導体層113と第2導電型半導体層114とを互いに分離絶縁する分離溝125を形成することにより、リークの発生を抑えることができる。
【0031】
次に、
図11に示すように、透明電極層117の上に、例えば開口部を有するメッシュスクリーン(図示せず)を用いて、線状の金属電極層118(118A、118B)を形成する。以上により、裏面電極型の太陽電池を形成することができる。
【0032】
リフトオフ層116aは、均一な単層とすることができるが、密度が異なる2種類以上の酸化珪素膜の積層膜とすることもできる。この場合、リフトオフを容易にする観点から、基板100に近い側の層を密度が低く、エッチングレートが大きい膜とすることが好ましい。
【0033】
リフトオフ層116aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは20nm以上、600nm以下であり、より好ましくは50nm以上、450nm以下である。リフトオフ層を積層膜とする場合には、合計の膜厚がこの範囲に入るようにすればよく、この場合、基板100に最も近い膜の厚膜を最も薄くすることが好ましい。
【0034】
本実施形態において基板100は、単結晶シリコンで形成された半導体基板であっても、多結晶シリコンで形成された半導体基板であってもよい。基板100の導電型は、n型であっても、p型であってもよい。n型の単結晶基板は、キャリア寿命が長く好ましい。
【0035】
基板100の厚さは、250μm以下とすることができる。なお、厚さを測定する場合の測定方向は、基板100の平均面(平均面とは、テクスチャ構造TXに依存しない基板全体としての面を意味する)に対する垂直方向である。
【0036】
なお、本実施形態においては、基板100の第1の面101及び第2の面102の両方がテクスチャ構造TXを有している例を示した。テクスチャ構造TXを第1の面101に設けることにより、光の取り込み効果が向上する。テクスチャ構造TXを第2の面102に設けた場合は、受光した光の取り込み効果及び閉じ込め効果が高くなる。
【0037】
本実施形態においては、第1の面101と第2の面102とに同一パターンのテクスチャ構造TXが設けられている例を示したが、第1の面101と第2の面102とにおいてテクスチャ構造TXの凹凸の大きさを変えてもよい。なお、テクスチャ構造TXは、第1の面101及び第2の面の一方にのみ設けてもよく、テクスチャ構造TXを設けなくてもよい。
【0038】
テクスチャ構造TXは、例えば、基板100における面方位が(100)面のエッチングレートと、面方位が(111)面のエッチングレートとの差を応用した異方性エッチングによって形成することができる。テクスチャ構造TXにおける凹凸の大きさは、例えば、頂点の数で定義することが可能である。本実施形態では、特に限定されないが、光取り込み性能と生産性との観点から、頂点の数は好ましくは50000個/mm2以上、100000個/mm2以下の範囲であり、より好ましくは70000個/mm2個以上、85000個/mm2以下である。
【0039】
本実施形態において、第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の表面にも、基板100のテクスチャ構造TXを反映したテクスチャ構造が存在している例を示した。第2導電型半導体層114がテクスチャ構造TXを有していると、リフトオフ層パターン116をリフトオフする際に、テクスチャ構造TXの凹において膜厚が薄く且つ膜厚方向にクラックが入りやすくなっており、ここからエッチング溶液がリフトオフ層パターン116に到達しやすくなるため、リフトオフが容易になるという利点も得られる。
【0040】
本実施形態において第2面真性半導体層121、第1真性半導体層111及び第2真性半導体層112は、基板100への不純物の拡散を抑えつつ、表面パッシベーションを行う。なお、「真性(i型)」とは、導電性不純物を含まない完全な真性に限られず、シリコン系層が真性層として機能し得る範囲で微量のn型不純物又はp型不純物を含む「弱n型」又は「弱p型」の実質的に真性である層をも包含する。
【0041】
第2面真性半導体層121、第1真性半導体層111及び第2真性半導体層112の材料は、特に限定されないが、非晶質シリコン系薄膜であってもよく、シリコンと水素とを含む水素化非晶質シリコン系薄膜(a-Si:H薄膜)であってもよい。なお、ここでいう非晶質とは、長周期で秩序を有していない構造を意味する。すなわち、完全な無秩序なだけでなく、短周期で秩序を有しているものも含まれる。
【0042】
第2面真性半導体層121、第1真性半導体層111及び第2真性半導体層112の厚さは、特に限定されないが、パッシベーション層としての効果の観点から、好ましくは2nm以上であり、高抵抗化により生じる変換特性の低下を抑える観点から、好ましくは20nm以下である。
【0043】
第2面真性半導体層121、第1真性半導体層111及び第2真性半導体層112の形成方法は、特に限定されないが、プラズマ化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。この方法によると、単結晶シリコンへの不純物の拡散を抑制しつつ、基板表面のパッシベーションを有効に行える。また、プラズマCVD法であれば、真性の半導体層における層中の水素濃度をその厚さ方向において変化させることにより、キャリアの回収を行う上で有効なエネルギーバンドギャッププロファイルの形成を行うことができる。
【0044】
なお、プラズマCVD法による薄膜の成膜条件は、例えば、基板温度が100℃以上、300℃以下、圧力が20Pa以上、2600Pa以下、及び高周波のパワー密度が0.003W/cm2以上、0.5W/cm2以下とすることができる。
【0045】
また、成膜の際に使用する原料ガスは、真性の半導体層の場合モノシラン(SiH4)及びジシラン(Si2H6)等のシリコン含有ガス、又はそれらのガスと水素(H2)とを混合したガスとすることができる。
【0046】
なお、上記のガスに、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)又はモノゲルマン(GeH4)等の異種の元素を含むガスを添加して、シリコンカーバイド(SiC)、窒化硅素(SiNX)又はシリコンゲルマニウム(SiGe)等のシリコン化合物を形成することにより、薄膜のエネルギーバンドギャップを適宜変更してもよい。
【0047】
本実施形態において第1導電型半導体層113がp型、第2導電型半導体層114がn型である例を示したが、逆の導電型にすることもできる。
【0048】
第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の膜厚は、特に限定されないが、パッシベーション層としての効果の観点から、好ましくは2nm以上であり、高抵抗化により生じる変換特性の低下を抑える観点から、好ましくは20nm以下である。
【0049】
第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114は、基板100の裏側において、第1導電型半導体層113と第2導電型半導体層114とが真性半導体層を介して電気的に分離されるように配置される。第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の幅は、好ましくは50μm以上、3000μm以下、より好ましくは80μm以上、1000μm以下である。なお、第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の幅は、特に断りがない限り、パターン化された各層の一部分の長さで、パターン化により、例えば、線状になった一部分の延び方向と直交する方向の長さを意味する。
【0050】
p型の半導体層は、p型のドーパント(ホウ素等)が添加されたシリコン層であって、不純物拡散の抑制又は直列抵抗の抑制の観点から、非晶質シリコンで形成された層とすることができる。一方、n型の半導体層は、n型のドーパント(リン等)が添加されたシリコン層であって、p型の半導体層と同様に、非晶質シリコン層で形成された層とすることができる。
【0051】
第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114は、原料ガスとして、モノシラン(SiH4)又はジシラン(Si2H6)等のシリコン含有ガス、又はシリコン系ガスと水素(H2)との混合ガスを用いたプラズマCVD法等により形成することができる。p型の半導体層を形成する場合には、ドーパントガスとしてジボラン(B2H6)等を添加すればよい。n型の半導体層を形成する場合には、ドーパントガスとしてホスフィン(PH3)等を添加すればよい。また、ホウ素(B)又はリン(P)といった不純物の添加量は微量でよいため、ドーパントガスを原料ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
【0052】
また、ドーパントガスとしてのエネルギーバンドギャップを調整するために、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)又はモノゲルマン(GeH4)等の異種の元素を含むガスを添加して、第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の少なくとも一方を合金化してもよい。
【0053】
低反射層124は、太陽電池が受けた光の反射を抑制する層である。低反射層124は、光を透過する透光性の材料からなる層であれば、特に限定されないが、例えば、酸化珪素SiOX)、窒化珪素(SiNX)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化チタン(TiOX)等からなる層とすることができる。低反射層124は、例えば、酸化亜鉛又は酸化チタン等の酸化物のナノ粒子を分散させた樹脂材料を塗布して形成することもできる。
【0054】
本実施形態において、リフトオフ工程よりも前に低反射層124を形成する例を示したが、低反射層124は、リフトオフ工程よりも後で形成することもできる。
【0055】
電極層119は、幹パターンと枝パターンとを有する櫛歯形状の第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の上に形成されている。電極層119の幹パターンの部分に形成された部分はいわゆるバスバー部であり、枝パターンの部分に形成された部分はいわゆるフィンガー部である。
【0056】
フィンガー部の線幅は、第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114の枝パターンの部分の線幅と同じにすることができる。また、フィンガー部の線幅を枝パターンの部分の線幅よりも狭くすることもできる。また、隣接するフィンガー部同士の短絡を防止できる構成であれば、フィンガー部の幅を枝パターンの部分の線幅よりも広くすることもできる。
【0057】
電極層119は、第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114に生じるキャリアを導く輸送層として機能する。電極層119は、第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114と電気的に接続されるように、各層を覆うように形成すればよい。なお、第1導電型半導体層113を覆う電極層119Aと、第2導電型半導体層114を覆う電極層119Bとを、乖離して配置することにより、第1導電型半導体層113と第2導電型半導体層114との短絡を防止する。
【0058】
本実施形態において、電極層119は、透明導電性酸化物からなる透明電極層117と、金属電極層118とが順次積層された積層電極とした。金属電極層118と半導体層との間に透明電極層117を設けることにより、金属電極層118を構成する金属元素が第1導電型半導体層113及び第2導電型半導体層114に拡散することを抑制する効果が得られる。また、電気的な接合を良好にする効果も得られる。
【0059】
透明電極層117は、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化インジウム(InOX)等により形成することができる。また、酸化インジウムに種々の金属酸化物、例えば酸化チタン(TiOX)、酸化スズ(SnOX)、酸化タングステン(WOX)若しくは酸化モリブデン(MoOX)等を添加した透明導電性酸化物により形成することもできる。酸化インジウムに添加する金属酸化物の量は、好ましくは1重量%以上、15重量%以下である。
【0060】
透明電極層117の厚さは、好ましくは20nm以上、200nm以下である。この厚さの透明電極層117を形成する方法として、例えば、スパッタ法等の物理気相堆積(PVD:Physical Vapor Deposition)法、又は有機金属化合物と酸素又は水との反応を利用した金属有機化学気相堆積(MOCVD:Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法等が挙げられる。
【0061】
金属電極層118は、特に限定されないが、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又はニッケル(Ni)等により形成することができる。
【0062】
金属電極層118の厚さは、好ましくは1μm以上、80μm以下である。この厚さの金属電極層118を形成する方法として、材料ペーストをインクジェットによる印刷若しくはスクリーン印刷する印刷法、又はめっき法が挙げられる。但し、これには限定されず、蒸着又はスパッタリング法等の真空プロセスを採用してもよい。
【0063】
本実施形態において、電極層119までの構造が形成された状態で、各層の接合面のパッシベーション、p型及びn型の半導体層及びその界面における欠陥準位の発生の抑制、並びに透明電極層117における透明導電性酸化物の結晶化等を目的として、アニール処理を施すことができる。
【0064】
アニール処理は、例えば、各層を形成した基板100を好ましくは150℃以上、200℃以下のオーブンに投入して行うことができる。この場合、オーブン内は大気雰囲気とすることができる。また、より効果的なアニール処理を行う観点から、水素又は窒素雰囲気としてもよい。また、アニール処理は、各層を形成した基板100に、赤外線ヒータにより赤外線を照射するRTA(Rapid Thermal Annealing)等により行うこともできる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を用いて本開示の発明についてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本開示の発明をこれに限定する意図を有しない。
【0066】
<残渣量の算出>
残渣量の算出は、リフトオフ層パターン116のエッチングとリンスによるリフトオフが終了したセル全体の画像をスキャナーで取得し、2値化処理した画像にて行った。残渣量は、リフトオフ層が完全に除去された場合を0%とし、リフトオフが進行せず、リフトオフ層パターン116が完全に残った場合を100%とした。
【0067】
<電気的特性の測定>
AM1.5のスペクトル分布を有するソーラーシミュレータを用いて、得られた裏面電極形太陽電池に25℃の下で疑似太陽光を100mW/cm2のエネルギー密度で照射し、開放電圧VOC(Voltage Open Circuit)、短絡電流JSC(Short Circuit Current)、曲線因子FF(Fill Factor)、及び光電変換効率を測定した。各測定値は、実施例1の裏面電極形太陽電池の測定値を1.00として規格化した。
【0068】
<裏面電極型太陽電池の製造>
まず、基板として、厚さが200μmの単結晶シリコン基板を採用した。単結晶シリコン基板の第1の面及び第2の面に異方性エッチングを行い、基板にピラミッド型のテクスチャ構造を形成した。
【0069】
基板をCVD装置に導入し、導入した基板の第1の面及び第2の面に、シリコンからなる真性半導体層(膜厚8nm)を形成した。製膜条件は、基板温度を150℃、圧力を120Pa、SiH4/H2流量比の値を3/10、及びパワー密度を0.011W/cm2とした。
【0070】
CVD装置を用いて、第1の面の真性半導体層の上にp型の水素化非晶質シリコン系薄膜(膜厚10nm)からなる第1導電型半導体層を形成した。製膜条件は、基板温度を150℃、圧力を60Pa、SiH4/B2H6流量比の値を1/3、及びパワー密度を0.01W/cm2とした。また、B2H6ガスの流量は、B2H6がH2により5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0071】
プラズマCVD装置を用いて、第1導電型半導体層の上に、主成分を酸化珪素(SiOX)とするリフトオフ層を形成した。リフトオフ層の膜厚は400nmとした。
【0072】
リフトオフ層を形成した第1の面に感光性レジスト膜を製膜した。これをフォトリソグラフィ法により露光・現像を行い、リフトオフ層、第1導電型半導体層及び真性半導体層を除去する領域を露出させた。次に基板を、7重量%のフッ化水素に40ppmのオゾンを混合したオゾン/フッ化水素酸に浸漬し、リフトオフ層、第1導電型半導体層及び真性半導体層を選択的に除去してリフトオフ層パターンを形成した。
【0073】
次に、露出した第1の面を濃度が2重量%のフッ化水素酸によって洗浄した後、基板をCVD装置に導入し、第2の面に真性半導体層(膜厚8nm)を1回目の真性半導体層と同様の成膜条件で形成した。続いて、形成した真性半導体層の上に、n型の水素化非晶質シリコン系薄膜(膜厚10nm)からなる第2導電型半導体層を形成した。製膜条件は、基板温度が150℃、圧力が60Pa、SiH4/PH3/H2流量比の値が1/2、及びパワー密度が0.01W/cm2とした。また、PH3ガスの流量は、PH3がH2により5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0074】
第2導電型半導体層が形成された基板を、所定の条件でエッチング槽に浸漬して、リフトオフ層パターンのエッチングを行った。次に、リフトオフ層パターンのエッチングを行った基板に対して、所定の条件でリンス工程を行った。
【0075】
次に、低反射層として、基板の第2の面に窒化硅素層を形成した。その後、マグネトロンスパッタリング装置を用いて、透明電極層となる酸化物膜(膜厚80nm)を、基板の第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の上に形成した。透明導電性酸化物としては、酸化スズを10重量%の濃度で含有する酸化インジウム(ITO)をターゲットとして使用した。装置のチャンバ内にアルゴンと酸素との混合ガスを導入し、チャンバ内の圧力を0.3Paに設定した。アルゴンと酸素との混合比率は、抵抗率が最も低くなる(いわゆるボトム)条件とした。また、直流電源を用いて、0.4W/cm2の電力密度で成膜を行った。
【0076】
次に、フォトリソグラフィ法により、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層上にまたがっている透明導電性酸化物膜を選択的にエッチングして、透明電極層を形成した。このエッチングにより形成された透明電極層により、p型半導体層上の透明導電性酸化物膜と、n型半導体層上の透明導電性酸化物膜との間の導通を防止した。
【0077】
次に、透明電極層の上に、銀ペーストをスクリーン印刷し、温度が180℃のオーブンで60分間の加熱処理を行い、金属電極層を形成した。
【0078】
(実施例1)
リフトオフ層パターンをエッチングする際のエッチング液は、7重量%のフッ化水素酸とし、エッチング液への浸漬時間は10分間とした。
【0079】
リフトオフ層パターンをエッチングした後のリンス工程は、基板を超純水からなるリンス液を満たした第1のリンス槽及び第2のリンス槽に順次浸漬して行った。基板を第1のリンス槽に浸漬する際には、一方の幹パターン近傍の辺が下方になる位置(以後、この配置を0°の位置という。)に基板を配置し、枝パターンが延びる方向に沿って基板を下降させることにより、一方の幹パターン近傍の辺が最初にリンス液に接触するようにした。10秒間浸漬を行った後、基板を引き上げ、z軸を中心に元の位置に対して180°基板を回転させた(以後、この位置を180°の位置という)。続いて、基板を枝パターンの延びる方向に沿って下降させ、第2のリンス槽に浸漬した。10秒間浸漬を行った後、基板を引き上げ、残渣量を測定した。
【0080】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は4%であった。また、電極形成後のVOC、JSC、FF及び光電変換効率は良好であった。
【0081】
(実施例2)
第1のリンス槽から引き上げた後、基板を90°回転させて90°の位置とし、幹パターンの延びる方向に沿って下降させて、第2のリンス槽に浸漬した以外は、実施例1と同様にした。
【0082】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は10%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化JSCはいずれも1.00であり、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも0.98であった。
【0083】
(実施例3)
基板を第2のリンス槽から引き上げた後、基板を-90°回転させて90°の位置として、幹パターンの延びる方向に沿って下降させて、第3のリンス槽に浸漬し、基板を第3のリンス槽から引き上げた後、基板を180°回転させて270°の位置として、幹パターンの延びる方向に沿って下降させて、第4のリンス槽に浸漬した以外は、実施例1と同様にした。
【0084】
第4のリンス槽から引き上げた後の残渣量は0%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化JSCは1.00、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも1.01であった。
(実施例4)
第1のリンス槽から引き上げた後、基板を180°回転させて180°の位置とし、枝パターンの延びる方向に沿って下降させて、再び第1のリンス槽に浸漬した以外は、実施例1と同様にした。
【0085】
基板を180°の位置として第1のリンス槽に浸漬してから引き上げた後の残渣量は9%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化ISCはいずれも1.00であり、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも0.98であった。
【0086】
(実施例5)
リフトオフ層パターンを
図9に示すような、基板の一の辺の近傍にのみ幹パターンが設けられている形状とし、第1のリンス槽に浸漬する際に、幹パターンの近傍の第1の辺100Aが最初にリンス液に接触するように基板を配置してこの位置を0°の位置とした以外は、実施例1と同様にした。
【0087】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は4%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC、規格化JSC、規格化FF及び光電変換効率はいずれも1.00であった。
【0088】
(実施例6)
第1のリンス槽に浸漬する際に、90°の位置として第1の辺100Aと隣接する辺が最初にリンス液に接触するように基板を下降させ、基板を第2のリンス槽から引き上げた後、基板を180°回転させて270°の位置としてから第2のリンス槽に浸漬した以外は、実施例5と同様にした。
【0089】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は13%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化JSCはいずれも1.00であり、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも0.97であった。
【0090】
(比較例1)
リフトオフ層パターンをエッチングした後のリンスにおいて、第2のリンス槽への浸漬を行わなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0091】
第1のリンス槽から引き上げた後の残渣量は20%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化JSCはいずれも1.00であり、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも0.95であった。
【0092】
(比較例2)
リフトオフ層パターンをエッチングした後のリンスにおいて、第1のリンス槽に基板を浸漬する際に、基板の位置を90°の位置として、幹パターンの延びる方向に沿って下降させた以外は、比較例1と同様にした。
【0093】
第1のリンス槽から引き上げた後の残渣量は23%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化JSCはいずれも1.00であり、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも0.94であった。
【0094】
(比較例3)
第2のリンス槽へ基板を浸漬する前に、基板を回転させず、基板を0°の位置としたまま第2のリンス槽へ浸漬した以外は、実施例1と同様にした。
【0095】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は15%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOC及び規格化JSCはいずれも1.00であり、規格化FF及び規格化光電変換効率はいずれも0.96であった。
【0096】
(比較例4)
リフトオフ層パターンをエッチングする際の浸漬時間を20分とした以外は、比較例3と同様にした。
【0097】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は13%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOCは0.95、規格化JSCは1.00、規格化FFは0.93、規格化光電変換効率は0.88あり、パッシベーションの低下がみられた。
【0098】
(比較例5)
リフトオフ層パターンをエッチングする際の浸漬時間を30分とした以外は、比較例3と同様にした。
【0099】
第2のリンス槽から引き上げた後の残渣量は11%であった。また、実施例1の裏面電極形太陽電池を基準とした規格化VOCは0.90、規格化JSCは1.00、規格化FFは0.90、規格化光電変換効率は0.81あり、パッシベーションの低下がみられた。
【0100】
表1に、各実施例及び比較例の、条件及び結果をまとめて示す。
【0101】
【符号の説明】
【0102】
100 基板
100A 第1の辺
101 第1の面
102 第2の面
111 第1真性半導体層
112 第2真性半導体層
113 第1導電型半導体層
114 第2導電型半導体層
116 リフトオフ層パターン
116A 幹パターン
116B 枝パターン
116a リフトオフ層
117 透明電極層
118 金属電極層
119 電極層
119A 電極層
119B 電極層
121 第2面真性半導体層
124 低反射層
125 分離溝
140 エッチング槽
141 エッチング溶液
150 リンス槽
151 リンス液
161 浮き上がった部分