(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】形質導入のための方法、キット、作用物質および装置
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20221216BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221216BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221216BHJP
【FI】
C12N15/867 Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
(21)【出願番号】P 2018521109
(86)(22)【出願日】2016-10-20
(86)【国際出願番号】 IB2016001605
(87)【国際公開番号】W WO2017068419
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-21
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514214106
【氏名又は名称】ジュノ セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】タリン セミフ ユー.
(72)【発明者】
【氏名】バシュアワ キーナン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162211(WO,A1)
【文献】特表2014-529361(JP,A)
【文献】国際公開第2013/124474(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/080032(WO,A2)
【文献】米国特許第06103493(US,A)
【文献】国際公開第2014/076277(WO,A1)
【文献】Hobson, D. A. et al.,"In situ transduction of target cells on solid surfaces by immobilized viral vectors",BMC Biotechnol.,2003年,Vol. 3; 4,pp. 1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の標的T細胞を、(1)選択物質を含むオリゴマータンパク質試薬、および(2)ウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含む、T細胞の形質導入のための方法であって、
該オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントを含み、
該選択物質が、(i)1つまたは複数の標的T細胞の表面上で発現される
CD3、CD28、またはCD8分子に特異的に結合し、かつ、(ii)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントに可逆的に結合する第1の結合パートナーを含み、
該オリゴマータンパク質試薬が、固体支持体上に固定化され、かつインキュベーションの少なくとも一部が、該固体支持体上で起こり、かつ、
該方法が、エクスビボで行われ、かつ、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数のT細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記T細胞の形質導入のための方法。
【請求項2】
(1)におけるインキュベーションの少なくとも一部が(2)と同時に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)ウイルス粒子をオリゴマータンパク質試薬と接触させ、それにより、該ウイルス粒子および該試薬を含む組成物を生成する工程であって、該オリゴマータンパク質試薬が、(i)選択物質、および(ii)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントを含む、工程;および
(b)(a)の組成物を、標的T細胞を含む複数の細胞とともにインキュベートする工程
を含む、T細胞の形質導入のための方法であって、
前記選択物質が、(i)1つまたは複数の標的T細胞の表面上で発現される
CD3、CD28、またはCD8分子に特異的に結合し、かつ、(ii)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントに可逆的に結合する第1の結合パートナーを含み、
該オリゴマータンパク質試薬が、固体支持体上に固定化され、かつインキュベーションの少なくとも一部が、該固体支持体上で起こり、かつ、
該方法が、エクスビボで行われ、かつ、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数のT細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記T細胞の形質導入のための方法。
【請求項4】
(1)(a)標的T細胞を含む複数の細胞を含む組成物と、
(b)(i)該標的T細胞のうちの1つまたは複数によって発現される
CD3、CD28、またはCD8分子に特異的に結合し、かつ(ii)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントを含むオリゴマータンパク質試薬と可逆的に結合している第1の結合パートナーを含む、選択物質と
を接触させる工程;ならびに
(2)少なくとも複数のT細胞を、ウイルス粒子の存在下でインキュベートする工程
を含む、T細胞の形質導入のための方法であって、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
該オリゴマータンパク質試薬が、固体支持体上に固定化され、かつインキュベーションの少なくとも一部が、該固体支持体上で起こり、かつ、
該方法が、エクスビボで行われ、かつ、該ウイルス粒子を用いて形質導入されたT細胞を含むアウトプット組成物を生成する、前記T細胞の形質導入のための方法。
【請求項5】
ウイルス粒子が前記オリゴマータンパク質試薬と可逆的に結合し、該試薬がウイルス粒子の表面上の分子と直接または間接的に可逆的に結合する複数の結合部位を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ウイルス粒子、選択物質、およびオリゴマータンパク質試薬を含む組成物を、標的T細胞を含む複数の細胞と混合する工程を含む、T細胞の形質導入のための方法であって、
該オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントを含み、
該選択物質が、(i)1つまたは複数の標的T細胞の表面上で発現される
CD3、CD28、またはCD8分子に特異的に結合し、かつ、(ii)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントに可逆的に結合する第1の結合パートナーを含み、
該オリゴマータンパク質試薬が、固体支持体上に固定化され、かつインキュベーションの少なくとも一部が、該固体支持体上で起こり、かつ、
該方法が、エクスビボで行われ、かつ、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数のT細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記T細胞の形質導入のための方法。
【請求項7】
前記オリゴマータンパク質試薬が、前記ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合するウイルス結合物質をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルス結合物質が、前記オリゴマータンパク質試薬に可逆的に結合する第2の結合パートナーを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
(1)(a)ウイルス粒子を含む組成物と、
(b)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンムテイン、またはこれらのうちのいずれかの生物学的活性フラグメントを含むオリゴマータンパク質試薬と可逆的に結合している第1の結合パートナーを含む選択物質と、
(c)(i)前記ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合し、かつ、(ii)前記オリゴマータンパク質試薬に可逆的に結合する第2の結合パートナーを含む、ウイルス結合物質と、
を接触させる工程;および
(2)標的T細胞を含む少なくとも複数の細胞を該ウイルス粒子の存在下でインキュベートする工程
を含む、T細胞の形質導入のための方法であって、
前記選択物質が、1つまたは複数の標的T細胞の表面上で発現される
CD3、CD28、またはCD8分子に特異的に結合し、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
該オリゴマータンパク質試薬が、固体支持体上に固定化され、かつインキュベーションの少なくとも一部が、該固体支持体上で起こり、かつ、
該方法が、エクスビボで行われ、かつ、該ウイルス粒子を用いて形質導入された複数のT細胞を含むアウトプット組成物を生成する、
前記T細胞の形質導入のための方法。
【請求項10】
前記第2の結合パートナーが、ストレプトアビジン結合ペプチドを含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
ストレプトアビジン結合ペプチドが、
Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly (SEQ ID NO: 7),
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 8),
SAWSHPQFEKGGGSGGGSGGGSWSHPQFEK (SEQ ID NO: 15),
SAWSHPQFEK(GGGS)
2GGSAWSHPQFEK (SEQ ID NO: 16),
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(GlyGlyGlySer)
3-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 17),
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(GlyGlyGlySer)
2-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 18), および
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(GlyGlyGlySer)
2Gly-Gly-Ser-Ala-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 19)
からなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ストレプトアビジン結合ペプチドが、SAWSHPQFEK(GGGS)
2GGSAWSHPQFEK (SEQ ID NO: 16)である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴマータンパク質試薬とともに前記インキュベートする工程の前または最中に、前記方法が、刺激物質の存在下で、標的T細胞のうちの1つまたは複数が該刺激物質によって活性化される条件下で、前記T細胞を活性化させる工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記刺激物質が、TCR複合体の1種類または複数種類の成分のうちの1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記刺激物質が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する一次作用物質、およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質を含む、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
一次作用物質がCD3に特異的に結合する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
T細胞共刺激分子が、CD28、CD137(4-1BB)、CD27、OX40、およびICOSからなる群から選択される、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
T細胞共刺激分子が、CD28である、請求項15または16記載の方法。
【請求項19】
(i)刺激シグナルを送達するために、1つまたは複数の標的T細胞の表面に発現される受容体に特異的に結合し、かつ、(ii)前記オリゴマータンパク質試薬または第二の試薬に可逆的に結合する、受容体結合物質の存在下で少なくとも複数の標的T細胞を培養する工程をさら含み、ここで、該オリゴマータンパク質試薬または該第二の試薬が、それぞれ該受容体結合物質に可逆的に結合しそれによって標的T細胞においてシグナルを誘導することができる複数の結合部位を含む、
請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記培養する工程が、前記インキュベートする工程の前に開始される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記受容体結合物質が第一の受容体結合物質であり、前記受容体が第一の受容体であり、前記培養する工程が第二の受容体結合物質の存在下でさらに行われ、該第二の受容体結合物質が、標的T細胞のうちの1つまたは複数の表面の第二の受容体に特異的に結合し、それにより、第一の受容体を通して送達されたシグナルを増強するための第二のシグナルを標的T細胞中に誘導することができる補助結合物質である、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
第二の受容体が、共刺激分子、補助分子、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、もしくは免疫チェックポイント分子であるか、またはTNFファミリーもしくはTNF受容体ファミリーのメンバーである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第一および第二の受容体結合物質が、それぞれCD3およびCD28に結合する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
第一のおよび第二の受容体結合物質が、それぞれ抗CD3抗体もしくはそのフラグメントならびに抗CD28抗体もしくはそのフラグメントを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記選択物質が、抗体、抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、MHC分子、またはこれらのうちのいずれかの結合性フラグメントを含む、請求項
1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記選択物質が、抗体を含む、請求項
1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記選択物質が、抗体フラグメントを含む、請求項
1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記抗体フラグメントが、一価抗体フラグメントである、請求項
27記載の方法。
【請求項29】
前記一価抗体フラグメントがFabフラグメントである、請求項
28記載の方法。
【請求項30】
固体支持体が、固定相を含む、請求項
1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
固体支持体が、ビーズを含む、請求項
1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
ウイルス粒子のゲノムが、組換えタンパク質をコードする異種核酸分子を含む、請求項
1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
組換えタンパク質が、キメラ抗原受容体である、請求項
32記載の方法。
【請求項34】
ウイルス粒子が、レトロウイルスベクター粒子である、請求項
1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
ウイルス粒子が、レンチウイルスベクター粒子である、請求項
1~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴマータンパク質試薬の個々の分子が、多糖類または二官能性リンカーによって架橋されている、請求項
1~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記前記オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジンまたはその生物学的に活性なフラグメントを含み、かつ、前記第1の結合パートナーが、該ストレプトアビジンまたはその生物学的に活性なフラグメントに可逆的に結合する、請求項
1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記前記オリゴマータンパク質試薬が、第1の結合パートナーに可逆的に結合するストレプトアビジンムテインを含む、請求項
1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
ストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47を含む、請求項
38記載の方法。
【請求項40】
ストレプトアビジンムテインが、
(a)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にVal
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47に対応するアミノ酸配列を含み、かつ、ビオチン、デスチオビオチン、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アミノ酸配列;または
(c)ビオチン、デスチオビオチン、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含む、請求項
38記載の方法。
【請求項41】
ストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、請求項
38記載の方法。
【請求項42】
前記ストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:6記載のアミノ酸の配列を含む、請求項
38記載の方法。
【請求項43】
前記第1の結合パートナーが、ビオチンを含む、請求項
1~36および
38~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記第1の結合パートナーが、デスチオビオチンを含む、請求項
1~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記第1の結合パートナーが、ストレプトアビジン結合ペプチドを含む、請求項
1~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記選択物質のストレプトアビジン結合ペプチドが、
Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly (SEQ ID NO: 7),
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 8),
SAWSHPQFEKGGGSGGGSGGGSWSHPQFEK (SEQ ID NO: 15),
SAWSHPQFEK(GGGS)
2GGSAWSHPQFEK (SEQ ID NO: 16),
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(GlyGlyGlySer)
3-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 17),
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(GlyGlyGlySer)
2-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 18) および
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys-(GlyGlyGlySer)
2Gly-Gly-Ser-Ala-Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys (SEQ ID NO: 19)
からなる群より選択される、請求項
45記載の方法。
【請求項47】
前記選択物質のストレプトアビジン結合ペプチドが、
SAWSHPQFEK(GGGS)
2GGSAWSHPQFEK (SEQ ID NO: 16)
である、請求項
45記載の方法。
【請求項48】
前記第1の結合パートナーと前記オリゴマータンパク質試薬との間の可逆的結合を破壊することができる物質を導入する工程をさらに含む、請求項
1~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記可逆的結合を破壊することができる物質が、ストレプトアビジン結合ペプチド、ビオチン、またはデスチオビオチンを含む、請求項
48記載の方法。
【請求項50】
前記可逆的結合を破壊することができる物質が、D-ビオチンを含む、請求項
48記載の方法。
【請求項51】
標的T細胞をさらにインキュベートする工程を含む、請求項
1~50のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれもその内容が全体として参照により組み入れられる、2015年10月22日に出願された「Methods, Kits and Apparatus for Transducing a Population of Cells」と題する米国特許仮出願第62/245,265号、2016年3月9日に出願された「Methods, Kits and Apparatus for Transducing a Population of Cells」と題する米国特許仮出願第62/305,989号および2016年7月29日に出願された「Methods and Agents for Promoting Transduction」と題する米国特許仮出願第62/369,020号の優先権を主張する。
【0002】
参照による配列リストの組み入れ
本出願は、電子形式の配列リストとともに提出されている。配列リストは、2016年10月17日に作製された、735042002840SeqList.txtと題するファイル(サイズ39,953バイト)として提供されている。電子形式の配列リスト中の情報全体は全体として参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、いくつかの局面において、細胞の組成物、たとえばリンパ球の集団の形質導入に関する。方法は、形質導入を促進する試薬、たとえばオリゴマータンパク質試薬の使用を伴い、その試薬はまた、いくつかの場合、それに可逆的に結合した結合物質を含むことができ、そのような結合は概して、物質の添加によって可逆性である。いくつかの局面において、本開示は、細胞の表面上の分子への作用物質の結合を含み、それにより、形質導入細胞を含むインキュベートされた組成物を提供する、細胞集団の形質導入のための方法および試薬を提供する。いくつかの場合、試薬は多量体形成試薬であり、1つまたは複数の作用物質は、試薬に可逆的に結合することによって多量体化される。いくつかの局面において、多量体化された作用物質は、細胞の集団の形質導入を提供することができ、その後、そのような作用物質は、可逆性結合の破壊によって除去することができる。いくつかの態様において、提供される方法は、細胞を形質導入するために、さらに、いくつかの場合、形質導入細胞を濃縮、活性化、刺激および/または増殖するために、用いられことができる。また、組成物、装置およびそれらの使用方法が提供される。
【背景技術】
【0004】
背景
T細胞集団をインビトロで形質導入するためには、たとえば養子細胞免疫治療または癌治療における使用のために抗原特異的T細胞をインビトロで形質導入するためには、様々な戦略が利用可能である。いくつかの局面において、T細胞治療、たとえば、組み換え受容体、たとえばキメラ抗原受容体で改変または形質導入されたT細胞治療の注入が、腫瘍を保有する宿主中で、またはウイルス感染を治療するための使用のために、抗腫瘍反応性を有することが示された。研究、診断および治療目的を含め、細胞集団をインビトロで形質導入するために、改善された戦略が必要である。そのような必要性を満たす試薬、方法、製品およびキットが提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、標的細胞を含む複数の細胞をオリゴマータンパク質試薬;およびウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含む、細胞に形質導入を行う方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する方法である。
【0006】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、オリゴマー試薬は複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位は、少なくとも10、20、30もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30もしくは約40アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40もしくは約50kDaの分子量を含み;かつ/または、オリゴマー試薬は、少なくとも100もしくは約100、および/もしくは150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む。
【0007】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、単量体単位を個々に含む複数の多量体サブユニット単位を含む。いくつかの局面において、多量体サブユニットは四量体である。
【0008】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、オリゴマータンパク質試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含む。
【0009】
いくつかの態様において、同じく本明細書に提供されるものは、標的細胞を含む複数の細胞を、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬;ならびにウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0010】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、インキュベートする工程は、細胞を試薬と、およびウイルスと、同時にまたは順次どちらかの順序で混合する工程を含む。いくつかの態様において、インキュベートする工程の少なくとも一部分の間、試薬およびウイルス粒子は、同時に、細胞の存在下にあるか、または細胞と接触している。
【0011】
いくつかの態様において、同じく本明細書に提供されるものは、ウイルス粒子をオリゴマータンパク質試薬と接触させ、それにより、試薬と会合したウイルス粒子を含む混合物を生成する工程;および混合物を、標的細胞を含む複数の細胞とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0012】
いくつかの態様において、方法は、ウイルス粒子を、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬と接触させ、それにより、試薬と会合したウイルス粒子を含む混合物を生成する工程;および混合物を複数の細胞とともにインキュベートする工程を含み、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0013】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は正味正電荷または全正電荷を有する。いくつかの場合、試薬は裸である。
【0014】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、結合物質を含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは可逆的に結合しておらず;試薬は、細胞表面マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは結合しておらず;試薬は、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは結合しておらず;および/または、試薬は、ヘパリン結合ドメインを含まず、および/またはインテグリン結合ドメインを含まず、および/またはVLA4結合ドメインを含まず、および/またはVLA5結合ドメインを含まず;および/または試薬は、ウイルス結合物質または細胞選択物質を含まない、および/またはそれにコンジュゲートまたは結合していない。
【0015】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬はさらに、それぞれがウイルス粒子の表面および/または標的細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる複数の1種類または複数種類の結合物質を含む、および/またはそれに可逆的に結合する。
【0016】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、複数の標的細胞をオリゴマータンパク質試薬およびウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含み、オリゴマータンパク質試薬が複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位が、少なくとも10、20、30もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30もしくは約40アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40もしくは約50kDaの分子量を含み;かつ/またはオリゴマータンパク質試薬が、少なくとも100kDaもしくは少なくとも約100kDaの分子量を含むか、または平均で少なくとも100kDaもしくは少なくとも約100kDaの分子量を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0017】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン結合ポリペプチド、Strep-tag結合ペプチド、ストレプトアビジンムテイン、ストレプトアビジン類似体、アビジンムテイン、アビジン類似体、および/または前記のいずれかの生物学的活性フラグメントを個々に含む複数のポリペプチド単位を含む。
【0018】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、それぞれが個々に2つ以上のポリペプチド単位を含む1つまたは複数の多量体サブユニットを含む。
【0019】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、複数の標的細胞を(1)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニット;および(2)ウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0020】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、(i)インキュベートする工程は、順次どちらかの順序で、標的細胞を試薬と混合する工程、および/または標的細胞をウイルス粒子と混合する工程を含み、任意で、(a)における混合および(b)における混合は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間以下の期間内で実施され、および/または、(a)における混合は、(b)における混合から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間または48時間以内に実施され;(ii)インキュベートする工程は、標的細胞、試薬およびウイルス粒子を混合する工程を含み、該混合は同時または実質的に同時に実施され;(iii)インキュベートする工程は、標的細胞およびウイルス粒子を含み、かつ試薬を含まない組成物を混合する工程を含み、任意で、標的細胞および試薬を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%または40%以下が、活性化される細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択される表面マーカーを発現し;IL-2、IFNγ、TNFαからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、および/または増殖することができ;および/または混合は、組成物中の標的細胞およびウイルス粒子の混合ののち1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間または48時間以内に実施され;(iv)インキュベーションは、標的細胞および試薬を含み、ウイルス粒子を含まない組成物をウイルス粒子と混合する工程を含み、任意で、標的細胞および試薬活性化細胞を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%または40%以下が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択される表面マーカーを発現し;IL-2、IFNγ、TNFαからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、および/または増殖することができ;および/または混合は、組成物中の標的細胞およびウイルス粒子の混合ののち1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間または48時間以内に実施され;および/または(v)インキュベーションは、ウイルス粒子および試薬を含む組成物を、標的細胞を含み、かつウイルス粒子を含まないかつ/または試薬を含まない組成物と混合する工程を含み、任意で、標的細胞および試薬を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%または40%以下が、活性化された細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択される表面マーカーを発現し;IL-2、IFNγ、TNFαからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、および/または増殖することができる。
【0021】
いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、ビオチン結合ポリペプチド、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体、ストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、および生物学的活性フラグメントのうちのまたは複数を含む複数の単位を含む。
【0022】
いくつかの態様において、試薬は、それぞれが個々に2つ以上の単量体単位を含む複数の多量体サブユニット単位を含む。いくつかの態様において、多量体サブユニットは四量体である、および/またはそれぞれが個々に4つの単量体単位を含む。
【0023】
いくつかの態様において、インキュベートする工程は、細胞を試薬と、およびウイルス粒子と、同時または順次どちらかの順序で混合する工程を含む。いくつかの態様において、インキュベートする工程の少なくとも一部分の間、試薬およびウイルス粒子は、同時に、細胞の存在下にあるか、または細胞と接触している。
【0024】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、(a)ウイルス粒子をオリゴマータンパク質試薬と接触させ、それにより、ウイルス粒子および試薬を含む組成物を生成する工程であって、ウイルス粒子が、任意で試薬と会合する、工程;および(b)(a)の組成物を、標的細胞を含む複数の細胞とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0025】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、ウイルス粒子およびオリゴマータンパク質試薬を含む組成物を、標的細胞を含む複数の細胞と混合する工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0026】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、(a)ウイルス粒子を、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬と接触させ、それにより、ウイルス粒子および試薬を含む組成物を生成する工程であって、ウイルス粒子が任意で試薬と会合する、工程;および(b)(a)の組成物を複数の細胞とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0027】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、ウイルス粒子およびタンパク質試薬を含む組成物を、標的細胞を含む複数の細胞と混合する工程を含み、タンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含む、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。いくつかの態様において、試薬および/または各単量体単位および/または各多量体単位は正味正電荷または全正電荷を有する。
【0028】
いくつかの態様において、試薬は、抗体またはそのフラグメントを含む結合物質を含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは可逆的に結合しておらず、または、ヒト細胞表面分子もしくはその結合フラグメントを含む結合物質を含まず;試薬は、ヒト細胞表面マーカー、任意でT細胞マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは結合しておらず;試薬は、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず;および/またはそれにコンジュゲートまたは結合しておらず;および/または、試薬は、ヘパリン結合ドメインを含まず、および/またはインテグリン結合ドメインを含まず、および/またはVLA4結合ドメインを含まず、および/またはVLA5結合ドメインを含まない。
【0029】
いくつかの態様において、試薬はまた、それぞれがウイルス粒子の表面および/または標的細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる複数の1種類または複数種類の結合物質を含む、および/またはそれに可逆的に結合する。
【0030】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、標的細胞を含む複数の細胞を(1)結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含むオリゴマータンパク質試薬であって、1つまたは複数の結合部位が、結合物質に可逆的に結合する、オリゴマータンパク質試薬;および(2)ウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、(1)におけるインキュベーションの少なくとも一部分が(2)と同時に実施され、該方法が、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。いくつかの場合、試薬は、結合物質それぞれに可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、複数の結合部位は、結合パートナーCに結合することができる1つまたは複数の結合部位Zを含み;結合物質はさらに、結合パートナーCの1つまたは複数を含む。
【0031】
いくつかの態様において、結合物質は、受容体結合物質であるか、またはそれを含む。いくつかの場合、試薬はさらに、標的細胞の表面に発現した分子に特異的に結合する選択物質であるさらなる結合物質を含む。いくつかの局面において、結合物質は、標的細胞の1つまたは複数の表面に発現した分子に特異的に結合する選択物質である。いくつかの場合、結合物質は、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合するウイルス結合物質である。
【0032】
いくつかの態様において、提供されるものは、標的細胞を含む複数の細胞を含む組成物と、標的細胞の1つまたは複数によって発現される分子に特異的に結合することができ、かつ選択物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬に可逆的に結合する、選択物質である結合物質とを接触させる工程;および1つまたは複数のウイルス粒子の存在下、少なくとも複数の細胞をインキュベートする工程を含み、接触させる工程およびインキュベートする工程が同時または順次どちらかの順序で実施される、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された細胞を含むアウトプット組成物を生成する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0033】
いくつかの場合、ウイルスベクター粒子は試薬に可逆的に結合し、該試薬は、ウイルス粒子の表面上の分子に直接または間接的に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む。いくつかの局面において、ウイルス粒子は、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合するウイルス粒子結合物質を介して試薬に可逆的に結合し、該試薬は、ウイルス粒子結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む。
【0034】
いくつかの態様において、試薬は、選択物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位Z1を含み、および/または試薬は、ウイルス結合物質を介して1つまたは複数のウイルス粒子に可逆的に結合することができる複数の結合部位Z2を含む。
【0035】
いくつかの態様において、提供されるものは、1つまたは複数のウイルス粒子を含む組成物と、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合することができ、かつウイルス結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬に可逆的に結合する、ウイルス結合物質である結合物質とを接触させる工程;および1つまたは複数のウイルス粒子の存在下、標的細胞を含む少なくとも複数の細胞をインキュベートする工程を含み、接触させる工程およびインキュベートする工程が同時または順次どちらかの順序で実施される、細胞の形質導入のための方法であって、ウイルス粒子を用いて形質導入された複数の細胞を含むアウトプット組成物を生成する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0036】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間以下の期間内で実施され、および/または(a)における混合は、(b)におけるインキュベートする工程から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間または48時間以内に実施される。
【0037】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、結合物質は、抗体、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合性を有するタンパク質系結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマーおよびMHC分子またはそれらの結合フラグメントである、またはそれを含む。いくつかの場合、抗体フラグメントは、Fabフラグメント、Fvフラグメント、(Fab')2フラグメントおよび二価一本鎖Fv(scFv)フラグメントからなる群から選択されるフラグメントを含む。
【0038】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、オリゴマータンパク質試薬である、またはそれを含む。いくつかの場合、オリゴマータンパク質試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は可溶性である。
【0039】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、インキュベーションの間、試薬は、固体支持体、固定相、ビーズ、微粒子、磁性粒子および/またはマトリックスではなく、それに結合も会合もしておらず;および/または試薬は、フレキシブルであり、金属コアまたは磁性コアを含まず、完全にまたは主に有機多量体で構成され、形状が球状でも、実質的に球状でも、均一でもなく、および/または硬直していない。
【0040】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、支持体上に直接または間接的に固定化されている、または固定化されることができ;インキュベーションの少なくとも一部分は支持体上で起こる。いくつかの局面において、試薬は、支持体上に直接または間接的に固定化されている、または固定化されることができ、それにより、選択物質は、支持体上に固定化されている、または固定化されることができ;さらに支持体を組み合わせる際、それにより、少なくとも複数の1種類または複数種類の標的細胞は、インキュベーションの少なくとも一部分の間、選択物質を介して支持体上に固定化される。
【0041】
いくつかの態様において、同じく本明細書に提供されるものは、標的細胞を含む複数の細胞を含む組成物と、標的細胞の1つまたは複数によって発現した選択マーカーに特異的に結合することができ、かつ支持体上に直接または間接的に固定化されているか、または固定化されることができる選択物質と、支持体とを接触させる工程であって、それにより、少なくとも複数の1種類または複数種類の標的細胞が選択物質を介して支持体上に固定化される、工程;および複数のウイルス粒子を含む組成物の存在下で少なくとも複数の細胞をインキュベートする工程であって、複数のウイルス粒子のうちの1つまたは複数が支持体上に直接または間接的に固定化されることができる、工程を含む、細胞の形質導入のための方法である。いくつかの場合、接触させる工程およびインキュベートする工程は同時にまたは順次どちらかの順序で実施され;1つまたは複数の標的細胞および1つまたは複数のウイルス粒子は、インキュベーションの少なくとも一部分の間、支持体上に固定化され;方法は、ウイルス粒子を用いて形質導入された複数の細胞を含むアウトプット組成物を生成する。
【0042】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、支持体は、固定相であるか、または固定相を含み;および/または支持体は、固体支持体であるか、または固体支持体を含む。試薬が支持体上に固定化されているか、または固定化されることができるいくつかの局面において、該試薬は、選択物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位Z1と、ウイルス結合物質を介して1つまたは複数のウイルス粒子に可逆的に結合することができる複数の結合部位Z2とを含む。いくつかの場合、接触させる工程はさらに、試薬を組み合わせる工程を含み、試薬は支持体上に固定化されている。いくつかの局面において、選択物質および/または複数の細胞を含む組成物を試薬および支持体に組み合わせる前に、試薬および支持体は組み合わされる。
【0043】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、選択物質は第一の選択物質であり、分子は第一の分子であり、インキュベーションはさらに、標的細胞の1つまたは複数の表面に発現した第二の分子に特異的に結合することができる第二の選択物質の存在下で実施される。いくつかの例において、第二の選択物質は、試薬または第二の試薬に可逆的に結合し、試薬または第二の試薬は、第二の選択物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、第二の選択物質は試薬または第二の試薬に可逆的に結合する。
【0044】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、標的細胞は血液細胞を含み;標的細胞は白血球を含み;標的細胞はリンパ球を含み;標的細胞はB細胞を含み;標的細胞はB細胞集団を含み;標的細胞はT細胞を含み;標的細胞はT細胞集団を含み;および/または標的細胞はナチュラルキラー(NK)細胞を含み;標的細胞は樹状細胞を含み;標的細胞はマクロファージを含む。
【0045】
いくつかの場合、標的細胞は、抗原特異的T細胞またはその集団、Tヘルパー細胞またはその集団、細胞傷害性T細胞またはその集団、記憶T細胞またはその集団、調節性T細胞またはその集団またはNK細胞またはその集団、抗原特異的B細胞またはその集団、記憶B細胞またはその集団または調節性B細胞またはその集団を含む。
【0046】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、標的細胞はT細胞を含む。いくつかの場合、T細胞は、CD4+および/またはCD8+ T細胞および/またはそれらの亜集団またはサブセットを含む、および/または前記のいずれかの集団に関して濃縮されている。
【0047】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、分子はB細胞またはT細胞共受容体であり;分子は、T細胞またはB細胞抗原受容体複合体のメンバーであり、またはそれを含み;分子は、CD3鎖であり、またはそれを含み;分子は、CD3ζ鎖であり、またはそれを含み;分子は、CD8であり、またはそれを含み;分子は、CD4であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、選択物質と特異的に結合する分子は、CD25、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RAおよび/もしくはCD45ROであるか、またはこれらを含む。
【0048】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、選択物質と分子との間の特異的結合は、標的細胞に対しシグナルを誘導せず、すなわち刺激シグナルも活性化シグナルも増殖シグナルも誘導しない。いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部分の間、選択物質は、標的細胞の表面に発現した分子に結合し、それにより、試薬と標的細胞との間の会合を促進する。いくつかの例において、試薬と標的細胞との間の会合は、分子を発現せず、選択物質と特異的に結合もしない非標的細胞の形質導入と比べて、標的細胞の形質導入を増強する。
【0049】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、複数の細胞は休止またはナイーブT細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、複数の細胞中のT細胞の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択されるT細胞活性化マーカーに関して表面陰性であり;および/または、IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;および/または増殖能力がある。いくつかの態様において、複数の細胞中のT細胞の10%以下が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択されるT細胞活性化マーカーを含み;および/または、IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;および/または増殖能力がある。
【0050】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、該インキュベートする工程の前に、方法は、T細胞活性化を促進する条件下で複数の細胞の細胞を刺激する工程を含まない。
【0051】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、複数の細胞は、該インキュベートする工程の前に、約37℃でのインキュベーションを含むエクスビボ刺激および/またはT細胞、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞におけるTCR複合体を通してシグナルを活性化、誘導することができる作用物質;T細胞、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の増殖を誘導することができる作用物質;CD3結合分子;CD28結合分子からなる群から選択される作用物質(1つまたは複数)の存在下でのインキュベーションに付されていない。いくつかの態様において、複数の細胞は活性化された細胞を含む。
【0052】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬とともにインキュベートする工程の前または最中に、方法は、刺激物質の存在下、標的細胞の1つまたは複数が刺激物質によって刺激または活性化される条件下で細胞を活性化する工程を含む。いくつかの例において、標的細胞はT細胞を含み、該刺激条件は、TCR複合体の1つまたは複数の成分の1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる作用物質の存在を含む。いくつかの局面において、該作用物質は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する一次作用物質およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質を含む。
【0053】
いくつかの例において、一次作用物質はCD3に特異的に結合し;および/または共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群から選択される。いくつかの局面において、該一次および二次作用物質は、抗体を含む、および/または、固体支持体の表面に存在する。
【0054】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法はさらに、刺激シグナルを送達するために1つまたは複数の標的細胞の表面に発現する受容体に特異的に結合し、かつ試薬または第二の試薬に可逆的に結合する受容体結合物質の存在下で、少なくとも複数の細胞を培養する工程を含み、試薬または第二の試薬は、それぞれが受容体結合物質に可逆的に結合しそれによって細胞においてシグナルを誘導または調節することができる複数の結合部位を含む。いくつかの場合、該培養する工程は、該インキュベートする工程の前に実施および/または開始される。
【0055】
いくつかの態様において、試薬は第二の試薬であり、第二の試薬は、該インキュベーションの間、固体支持体、固定相、ビーズ、微粒子、磁性粒子および/またはマトリックスに結合も会合もしておらず;および/または第二の試薬は、フレキシブルであり、金属コアまたは磁性コアを含まず、完全にまたは主に有機多量体で構成され、形状が球状でも、実質的に球状でも、均一でもなく、および/または硬直していない。いくつかの場合、試薬は第二の試薬であり、第二の試薬は支持体上に固定化されている。
【0056】
いくつかの態様において、刺激物質は、MHC I:ペプチド複合体またはその機能的部分、MHCII:ペプチド複合体またはその機能的部分を含み、および/または、T細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体および/またはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる。
【0057】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、受容体結合物質は、TCR/CD3複合体のメンバーに特異的に結合するか、またはCD3に特異的に結合する。いくつかの場合、受容体結合物質は第一の受容体結合物質であり、培養する工程は、第二の受容体結合物質の存在下でさらに実施され、該第二の受容体結合物質は、T細胞の1つまたは複数の表面上の第二の受容体に特異的に結合することより、第一の受容体を通して送達されたシグナルを増強、減衰または改変するための第二のシグナルを細胞中に誘導することができる補助結合物質である。
【0058】
いくつかの例において、第二の受容体結合物質は、試薬、第二の試薬または第三の試薬に可逆的に結合し;試薬、第二の試薬または第三の試薬は、第二の受容体結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、第二の受容体結合物質は試薬、第二の試薬または第三の試薬に可逆的に結合する。いくつかの場合、第二の受容体は、共刺激分子、補助分子、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、免疫チェックポイント分子である、またはTNFファミリーまたはTNF受容体ファミリーのメンバーである。
【0059】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、第一および第二の受容体結合物質は、それぞれCD3および/もしくはCD28であるかまたはCD3および/もしくはCD28を含む細胞の表面に発現した分子に結合する。いくつかの局面において、第一および第二の受容体結合物質は、それぞれ抗CD3および/または抗CD28抗体またはフラグメントを含む。
【0060】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、インキュベートする工程および培養する工程は、任意で管材によって操作可能に接続されている別々の容器中で実施される。いくつかの態様において、インキュベートする工程および培養する工程は閉鎖系中で実施される。
【0061】
いくつかの態様において、方法は、第一および/または第二の受容体結合物質であることができる受容体結合物質に可逆的に結合し、かつ該受容体結合物質によって刺激された細胞を回収し、それにより、培養細胞を産生する工程を含み、培養細胞は、標的細胞を含む複数の細胞であるか、またはそれを含む。
【0062】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、該接触させる工程ののち、方法はさらに、固定化された標的細胞から、複数の細胞のうちの他の細胞を分離および/または除去することを含む。いくつかの場合、分離および/または除去することは、洗浄工程を行うことによって実施される。いくつかの場合、該分離することおよび/または該洗浄工程は、該インキュベーションの開始の前に実施される。
【0063】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、該インキュベートする工程は、該接触させる工程の前に実施および/または開始される;または、該インキュベートする工程は、該接触させる工程の後で実施および/または開始される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、該接触させる工程は、該インキュベーションの少なくとも一部分の間に実施される。
【0064】
いくつかの態様において、ウイルス結合物質は、エンベロープ糖タンパク質、エンベロープ糖タンパク質のバリアント、キメラエンベロープ糖タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスカプシドタンパク質のバリアント、ウイルスマトリックスタンパク質、ウイルスマトリックスタンパク質のバリアント、合成部分、ペプチドおよびタグの中から選択される、ウイルス粒子の表面上の分子に結合する。いくつかの場合、エンベロープ糖タンパク質は、VSV糖タンパク質(VSV-G)、シンドビス糖タンパク質、任意でSIN、MMLV糖タンパク質、HSV糖タンパク質、MMTV糖タンパク質、麻疹ウイルス糖タンパク質、HTLV糖タンパク質、SIV糖タンパク質、GALV糖タンパク質、HIV糖タンパク質、任意でgp160、gp120またはgp41およびRSV糖タンパク質、任意でgp85またはgp37の中から選択されるか、またはそれらのバリアント、ウイルス粒子結合物質が結合するのに十分な部分、もしくはキメラ分子である。いくつかの局面において、ウイルス結合物質は、ウイルスに対して異種性である非ウイルス組み換え分子である、ウイルス粒子の表面上の分子に結合する。
【0065】
いくつかの態様において、分子は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、ヘマグルチニンペプチド、VSV-Gタグ、HSVタグ、T7エピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、mycエピトープ、V5タグおよびストレプトアビジン結合ペプチドの中から選択される合成部分、ペプチドまたはタグである。いくつかの場合、分子はストレプトアビジン結合ペプチドである。いくつかの局面において、分子は合成部分、ペプチドまたはタグであり、ウイルス粒子は、合成部分、ペプチドまたはタグをその表面に発現するように操作されている。
【0066】
いくつかの態様において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、SEQ ID NO: 7、8、13、14および15~19のいずれかに示されたアミノ酸の配列を含む。いくつかの場合、分子は、リガンド結合ドメインである、またはそれを含む。いくつかの例において、分子は、抗原受容体である、またはそれを含む。いくつかの場合、抗原受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの局面において、ウイルス結合抗原は、CARの細胞外領域に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである。いくつかの例において、細胞外領域は抗原結合ドメインまたはヒンジ領域である。
【0067】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス粒子結合物質は、プロタミン、POLYBRENE(登録商標)およびRETRONECTIN(登録商標)の中から選択される。いくつかの態様において、ウイルス粒子は結合パートナーC1またはC2を含み;試薬は、結合パートナーC1またはC2と結合してウイルス粒子と試薬との間に可逆性結合を形成することができる複数の結合部位Z1またはZ2を含む。いくつかの局面において、ウイルス粒子は、合成部分、ペプチドまたはタグをその表面に発現するように操作され、合成部分、ペプチドまたはタグは、結合パートナーC1またはC2である、またはそれを含む。いくつかの場合、ペプチドはストレプトアビジン結合ペプチドである。いくつかの例において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、SEQ ID NO: 7、8、13、14および15~19のいずれかに示されたアミノ酸の配列を含む。
【0068】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス粒子は試薬と会合または結合する。いくつかの態様において、ウイルスベクターのゲノムは、組み換えタンパク質をコードする異種核酸分子を含む。いくつかの場合、組み換えタンパク質は抗原受容体である。いくつかの例において、組み換えタンパク質はキメラ抗原受容体である。
【0069】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス粒子はレトロウイルス粒子である。いくつかの局面において、ウイルス粒子はレンチウイルス粒子である。いくつかの場合、レンチウイルスベクター粒子は、HIV-1に由来するゲノムを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、レトロウイルスベクター粒子はガンマレトロウイルス粒子である。いくつかの例において、ガンマレトロウイルス粒子はネズミ白血病ウイルス(MLV)粒子である。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイプ化されている。いくつかの場合、ウイルスエンベロープ糖タンパク質はVSV-Gである。
【0070】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、キメラ抗原受容体(CAR)は、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの場合、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。いくつかの局面において、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを連結する膜貫通ドメインが含まれる。いくつかの場合、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインはさらに、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの例において、T細胞共刺激分子は、CD28および41BBからなる群から選択される。
【0071】
任意のこのような態様のいくつかにおいて、核酸はさらに、組み換え抗原受容体をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーターを含む。
【0072】
任意のこのような態様のいくつかにおいて、複数の細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)またはその濃縮または単離された細胞のサブセットを含む。いくつかの態様において、複数の細胞は、血液細胞、白血球、リンパ球、B細胞、T細胞またはNK細胞を含む。
【0073】
いくつかの態様において、複数の細胞は、抗原特異的T細胞またはその集団、Tヘルパー細胞またはその集団、細胞傷害性T細胞またはその集団、記憶T細胞またはその集団、調節性T細胞またはその集団、NK細胞またはその集団、抗原特異的B細胞またはその集団、記憶B細胞またはその集団または調節性B細胞またはその集団を含む。いくつかの態様において、複数の細胞は初代細胞である。いくつかの態様において、複数の細胞はT細胞を含む。いくつかの局面において、T細胞は、未分画のT細胞であり、濃縮または単離されたCD3+ T細胞であり、濃縮または単離されたCD4+ T細胞でありまたは濃縮または単離されたCD8+ T細胞である。
【0074】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は複数の細胞に対して毒性ではないか、または複数の細胞の少なくとも75%、85%、90%、95%もしくはそれより多く、もしくは少なくとも約75%、約85%、約90%、約95%もしくはそれより多くが、接触させる工程またはインキュベートする工程ののち生存可能である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、接触させる工程および/またはインキュベートする工程後の細胞の毒性は、同じ条件下でポリカチオン形質導入アジュバントと接触させた、またはそれとともにインキュベートしたときの細胞の毒性の1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍または10倍未満、または約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍もしくは約10倍未満;および/または、接触させる工程および/またはインキュベートする工程後の細胞の生存率は、同じ条件下でポリカチオン形質導入アジュバントと接触させた、またはそれとともにインキュベートしたときの細胞の生存率と比較して1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍または10倍高い、または約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍もしくは約10倍高い。いくつかの場合、ポリカチオン形質導入アジュバントは、硫酸プロタミン、フィブロネクチン由来形質導入アジュバントまたはRetroNectinである。
【0075】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチンやビオチン類似体またはその生物学的活性フラグメントに可逆的に結合するストレプトアビジンの類似体またはムテイン;ストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、アビジンまたはストレプトアビジンの類似体またはムテイン;遷移金属イオンに結合することができる少なくとも2つのキレート化基Kを含む試薬;オリゴヒスチジン親和性タグに結合することができる作用物質;グルタチオン-S-トランスフェラーゼに結合することができる作用物質;カルモジュリンまたはその類似体;カルモジュリン結合ペプチド(CBP)に結合することができる作用物質;FLAGペプチドに結合することができる作用物質;HAタグに結合することができる作用物質;マルトース結合タンパク質(MBP)に結合することができる作用物質;HSVエピトープに結合することができる作用物質;mycエピトープに結合することができる作用物質;またはビオチン化担体タンパク質に結合することができる作用物質である、またはそれを含む。
【0076】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチンまたは生物学的活性フラグメントに可逆的に結合するストレプトアビジンの類似体またはムテイン;ストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジンまたはアビジンの類似体またはムテイン;遷移金属イオンに結合することができる少なくとも2つのキレート化基Kを含む試薬;オリゴヒスチジン親和性タグに結合することができる作用物質;グルタチオン-S-トランスフェラーゼに結合することができる作用物質;カルモジュリンまたはその類似体;カルモジュリン結合ペプチド(CBP)に結合することができる作用物質;FLAGペプチドに結合することができる作用物質;HAタグに結合することができる作用物質;マルトース結合タンパク質(MBP)に結合することができる作用物質;HSVエピトープに結合することができる作用物質;mycエピトープに結合することができる作用物質;またはビオチン化担体タンパク質に結合することができる作用物質の、オリゴマーまたはポリマーである。
【0077】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテイン、または/およびアビジン類似体またはアビジンムテインの、オリゴマーまたはポリマーを含む。いくつかの局面において、オリゴマーまたはポリマーの個々の分子は多糖類または二官能リンカーによって架橋されている。任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、ビオチンまたは生物学的活性フラグメントに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、またはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、またはこれらを含み;試薬は、ビオチン類似体または生物学的活性フラグメントに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインまたはアビジン類似体またはアビジンムテインであるか、またはこれらを含み;および/または、試薬は、ストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテイン、またはアビジン類似体またはアビジンムテインであるか、またはこれらを含む。
【0078】
いくつかの局面において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、
からなる群から選択される。
【0079】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、SEQ ID NO: 1に示されたアミノ酸の配列中のストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含み;または、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインは、SEQ ID NO: 1に示されたアミノ酸の配列中のストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47を含む。
【0080】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインは、(a)SEQ ID NO: 3~6、27および28のいずれかに示されたアミノ酸の配列;(b)SEQ ID NO: 3~6、27および28のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示し、かつa144-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体またはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、またはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するアミノ酸の配列;または(c)ビオチンまたはその生物学的活性形態、ビオチン類似体またはムテインまたはその生物学的活性フラグメントまたはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、(a)または(b)の機能的フラグメントを含む。
【0081】
いくつかの態様において、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインはさらに、SEQ ID NO: 1に示されたアミノ酸の配列中のストレプトアビジン中の位置に関して117位、120位および/または121位に対応する位置にアミノ酸置換(1つまたは複数)を含む。いくつかの例において、アミノ酸置換(1つまたは複数)は、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121またはPhe121の中から選択され;または、アミノ酸置換(1つまたは複数)は、Glu117、Gly120またはTyr121の1つまたは複数から選択され;または、アミノ酸置換は、Glu117、Gly120またはTyr121から選択される。
【0082】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインは、(a)SEQ ID NO: 27または28に示されたアミノ酸の配列;(b)SEQ ID NO: 28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示し、かつVal44、Thr45、Ala46、Arg47、Glu117、Gly120およびTyr121に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンまたはその生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体またはムテインまたはその生物学的活性フラグメントまたはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するアミノ酸の配列;または(c)ビオチンまたはその生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体またはムテインまたはその生物学的活性フラグメントまたはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、(a)または(b)の機能的フラグメントを含む。
【0083】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、結合物質は、ストレプトアビジン結合ペプチドである結合パートナーCを含む。いくつかの例において、結合パートナーCは、
からなる群から選択されるストレプトアビジン結合ペプチドを含む。
【0084】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法は、1つまたは複数の結合物質と試薬との間の可逆性結合を破壊する工程を含む。いくつかの場合、該破壊は、1つまたは複数の結合物質と試薬との間の結合を逆転させることができる物質を細胞に導入する工程を含む。いくつかの局面において、物質は遊離結合パートナーであるおよび/または競合物質である。いくつかの例において、組成物中の物質はT細胞または標的細胞に対して有害ではなく、および/または、該物質の添加は、標的細胞の生存のパーセンテージを、同等のまたは同じ条件下で、該物質なしで標的細胞をインキュベートした場合と比較して90%、80%、70%、60%または50%未満に低下させない。
【0085】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテイン、または/およびアビジン類似体またはアビジンムテイン、またはそれらの生物学的活性フラグメントであるか、またはこれらを含み;物質は、ストレプトアビジン結合ペプチド、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、任意でDビオチン、またはビオチン類似体もしくは生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの例において、物質はストレプトアビジン結合ペプチドであり、
からなる群から選択され;および/または、物質はC1またはその類似体でありまたはC2またはその類似体である。
【0086】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法は、前記破壊ののち、細胞を回収する工程を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法はさらに、細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの場合、さらなるインキュベーションは、細胞を増殖させるための条件下で実施される。いくつかの局面において、インキュベーションおよびさらなるインキュベーションは同じ容器の中で実施され;および/または、さらなるインキュベーションは物質の存在下で実施され;および/または、方法は、さらなるインキュベーションの前に、インキュベートされた組成物から物質、選択物質、刺激物質、ウイルス粒子結合物質および/または試薬を除去する工程を含まない。いくつかの態様において、試薬は、さらなるインキュベーションの前に組成物から除去されることも、さらなるインキュベーションの間に組成物から除去されることも、さらなるインキュベーションの少なくとも半分の間に組成物から除去されることもない。
【0087】
いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは37℃±2℃でもしくは約37℃±2℃で実施され;および/または、さらなるインキュベーションは、インキュベーションおよび/またはさらなるインキュベーションの少なくとも一部分の間にT細胞にシグナルを送達することができるさらなる作用物質の存在下で実施される。いくつかの場合、さらなる作用物質は、T細胞、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の増殖を増強または誘導することができる。いくつかの態様において、さらなる作用物質は、IL-2、IL-15およびIL-7の中から選択されるサイトカインである。いくつかの局面において、さらなるインキュベーションは、14日以下、12日以下、10日以下、8日以下または6日以下である期間、実施される。
【0088】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、支持体は樹脂またはマトリックスを含み;支持体はゲルろ過マトリックスを含み;支持体はクロマトグラフィーマトリックスを含み;および/または、支持体はセルロースベースまたは有機ポリマーベースのメンブレンを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、支持体は、微粒子、硬質粒子、磁性粒子またはビーズを含む。いくつかの場合、クロマトグラフィーマトリックスはカラム内に存在し、および/または、クロマトグラフィーはカラムクロマトグラフィーまたは平面クロマトグラフィーである。いくつかの態様において、支持体は、該インキュベーションおよび/または該接触させる工程の全部または一部中に容器内に存在する固定相である。
【0089】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、容器は、カラム、双方向流に適した容器、ピペットチップ、チューブおよび液体試料のフロースルーに適したカラムからなる群から選択される容器を含む。
【0090】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、アウトプット組成物中の1つまたは複数の形質導入細胞は、ウイルス粒子に含まれる異種核酸によってコードされた組み換えタンパク質を発現する。任意のそのような態様のいくつかにおいて、細胞の形質導入は、試薬の非存在におけるウイルス粒子による形質導入の場合と比べて1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍もしくはそれを上回って、または約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍もしくはそれを上回って増大する。
【0091】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法は、選択物質と結合した分子を発現する標的細胞の選択的形質導入を生じさせる。いくつかの場合、形質導入は、該分子を発現しない非標的細胞におけるよりも、該分子を発現する標的細胞において少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれを上回って高い。
【0092】
任意のそのような態様のいくつかにおいては、方法によって複数の細胞の中の該細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも75%が該ウイルスベクターで形質導入され;および/または、該さらなるインキュベートされた組成物中の該細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも75%が該ウイルスベクターで形質導入され;および/または、該インキュベートされた組成物および/またはさらなるインキュベートされた組成物中の該細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも75%が、該ウイルスベクター内に含まれる異種核酸の産物を発現する。
【0093】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法はエクスビボで実施される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、方法はさらに、方法によって産生された形質導入細胞を回収または単離する工程を含む。
【0094】
同じく提供されるものは、本明細書に記載される方法のいずれかによって産生された形質導入細胞である。また、いくつかの場合、形質導入細胞を含む組成物が提供される。
【0095】
同じく本明細書に提供されるものは、試薬に可逆的に結合したウイルスベクター粒子結合物質(ウイルス粒子結合物質はウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合することができる);または試薬に可逆的に結合したウイルスベクター粒子を含む組成物である。いくつかの局面において、試薬は、それぞれがウイルス粒子結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む。いくつかの例において、組成物はさらに、試薬に可逆的に結合しかつ標的細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる選択物質を含む。いくつかの例において、試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテイン、またはアビジン類似体またはアビジンムテイン、または前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントであるか、もしくはこれらを含む、または、前記のうちのいずれかの複数の単位を含むオリゴマーである。
【0096】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス結合物質は、ウイルス分子に対して異種の非ウイルス組み換え分子である、ウイルス粒子の表面上の分子に結合する;または、エンベロープ糖タンパク質、エンベロープ糖タンパク質のバリアント、キメラエンベロープ糖タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスカプシドタンパク質のバリアント、ウイルスマトリックスタンパク質、ウイルスマトリックスタンパク質のバリアント、合成部分、ペプチドおよびタグの中から選択される、ウイルス粒子の表面上の分子に結合する。
【0097】
いくつかの場合、エンベロープ糖タンパク質は、VSV糖タンパク質(VSV-G)、シンドビス糖タンパク質、任意でSIN、MMLV糖タンパク質、HSV糖タンパク質、MMTV糖タンパク質、麻疹ウイルス糖タンパク質、HTLV糖タンパク質、SIV糖タンパク質、GALV糖タンパク質、HIV糖タンパク質、任意でgp160、gp120またはgp41およびRSV糖タンパク質、任意でgp85またはgp37の中から選択されるか、またはそれらのバリアント、ウイルス粒子結合物質が結合するのに十分な部分、もしくはキメラ分子であり;または、分子は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、ヘマグルチニンペプチド、VSV-Gタグ、HSVタグ、T7エピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、mycエピトープ、V5タグおよびストレプトアビジン結合ペプチドの中から選択される合成部分、ペプチドまたはタグである。
【0098】
いくつかの例において、非ウイルス組み換え分子は、リガンド結合ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの例において、分子は、抗原受容体であるか、または抗原受容体を含む。いくつかの場合、抗原受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの場合、ウイルス結合抗原は、CARの細胞外領域に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、細胞外領域は抗原結合ドメインまたはヒンジ領域である。
【0099】
同じく本明細書に提供されるものは、本明細書に記載される組成物および支持体を含み、支持体上に試薬が固定化されている、製品である。いくつかの場合、支持体は、固定相および/または固体支持体であるか、またはそれを含む。いくつかの例において、支持体は、クロマトグラフィーマトリックスであるか、またはそれを含む固定相であり、製品はさらに、クロマトグラフィーマトリックスの全部または一部が収容される容器を含む。いくつかの場合、容器はカラムである。
【0100】
同じく本明細書に提供されるものは、1つまたは複数のオリゴマータンパク質試薬、標的細胞およびウイルス粒子を含む複数の細胞ならびにクロマトグラフィーマトリックスであるか、またはそれを含む少なくとも1つの固定相を含む支持体から選択される1つまたは複数の構成要素を収容する1つまたは複数の容器を含む装置である。いくつかの場合、少なくとも1つのオリゴマータンパク質試薬は、ウイルス粒子結合物質、選択物質および/または受容体結合物質に可逆的に結合する。いくつかの局面において、1つまたは複数の容器は流体接続しており、それにより、構成要素の1つまたは複数は装置内で1つの容器から別の容器に通過する。
【0101】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、本明細書に記載される製品または装置はさらに、クロマトグラフィーのために少なくとも1つの固定相の1つに流体接続された試料出口を含む。いくつかの態様において、製品または装置は、機能的に閉鎖された系または無菌系である。
【0102】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、製品または装置はさらに、1つもしくは複数の容器もしくはその構成要素、またはクロマトグラフィーのための少なくとも1つの固定相の少なくとも1つの、pH、pO2、pCO2および/またはサーモスタット制御を調整または調節することができる1つまたは複数の制御装置を含む。いくつかの場合、製品または装置はさらに、培地および/または1つもしくは複数の栄養素および/または1つもしくは複数の炭素源を含む容器への流体接続を含み、それにより、任意で、該細胞がクロマトグラフィーのために固定相に固定化されているとき、接続は、そのような培地、栄養素および/または炭素源を装置内の細胞に送ることができる。いくつかの態様において、構成要素および/または構成要素を含む容器の少なくとも1つは装置から滅菌または無菌の方式で着脱可能である。
【0103】
同じく本明細書に提供されるものは、ストレプトアビジン結合ペプチドを含むウイルスベクター粒子である。いくつかの場合、ストレプトアビジン結合ペプチドは、エンベロープ糖タンパク質との融合タンパク質である。いくつかの例において、エンベロープ糖タンパク質はVSV-Gである。
【0104】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、任意でレンチウイルスベクターである。いくつかの局面において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、
からなる群から選択される。いくつかの例において、ウイルスベクター粒子は、組み換え抗原受容体、任意でキメラ抗原受容体をコードするゲノムを含む。
【0105】
同じくいくつかの態様において提供されるものは、本明細書に記載されるウイルスベクター粒子、ウイルスベクター粒子に可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位を含む試薬;および任意で使用のための指示を含むキットである。いくつかの場合、キットはさらに、標的細胞の表面上の選択マーカーに結合することができる選択物質を含み、試薬は、選択物質に可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位を含む。
【0106】
同じく提供されるものは、ウイルス粒子と会合したオリゴマータンパク質試薬を含む組成物である。いくつかの態様において、オリゴマー試薬は複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位は、少なくとも10、20、30、もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30、もしくは約40アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40もしくは約50kDaの分子量を含み;かつ/または、オリゴマー試薬は、少なくとも100もしくは少なくとも約100、および/もしくは、150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む。
【0107】
いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、複数の多量体サブユニットで構成されたオリゴマーを含む。いくつかの例において、多量体サブユニットは四量体単位であり、個々に単量体単位を含む。いくつかの局面において、オリゴマータンパク質試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテイン、またはアビジン類似体またはアビジンムテイン、または前記のいずれかの生物学的活性フラグメントおよび/または前記のいずれかの多量体を含み、任意で含む。
【0108】
いくつかの態様において、ウイルス粒子は、異種核酸をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0109】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は裸であり;試薬は、結合物質を含まず、かつ/または結合物質にコンジュゲートも可逆的に結合もしておらず;試薬は、任意で接着分子、インテグリン、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカン、T細胞表面マーカー、CD3、CD28、CD4および/もしくはCD8の中から選択される細胞表面マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、かつ/もしくは該分子にコンジュゲートも結合もしておらず;試薬は、哺乳動物細胞表面マーカー、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、かつ/もしくはこれらにコンジュゲートも結合もしておらず;および/または、試薬は、ヘパリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはインテグリン結合ドメインを含まず、および/もしくはVLA4結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA5結合ドメインを含まず;かつ/または、試薬は、ウイルス結合物質も細胞選択物質も含まない、かつ/もしくはこれらにコンジュゲートも結合もしていない。
【0110】
いくつかの態様において、試薬はさらに、複数の1種類または複数種類の結合物質を含む、および/またはそれに可逆的に結合する。いくつかの例において、結合物質は、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合するウイルス粒子結合物質、標的細胞の表面上の分子に特異的に結合する選択物質または標的細胞中に刺激シグナルを送達するために受容体に特異的に結合する受容体結合物質である。
【0111】
いくつかの態様において、結合物質は、抗体、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合性を有するタンパク質系結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマーおよびMHC分子またはその結合フラグメントであるか、またはそれを含む。いくつかの場合、抗体フラグメントは、Fabフラグメント、Fvフラグメント、(Fab')2フラグメントおよび二価一本鎖Fv(scFv)フラグメントからなる群から選択されるフラグメントを含む。
【0112】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様において、試薬は、SEQ ID NO: 1に示されたアミノ酸の配列中のストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテイン;または、SEQ ID NO: 1に示されたアミノ酸の配列中のストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val44-Thr45-Ala46-Arg47を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む。
【0113】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、(a)SEQ ID NO: 3~6、27および28のいずれかに示されたアミノ酸の配列;(b)SEQ ID NO: 3~6、27および28のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示し、かつVal44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンまたはその生物学的活性形態、ビオチン類似体またはビオチンムテインまたはその生物学的活性フラグメント、またはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するアミノ酸配列;または(c)ビオチンまたはその生物学的活性形態、ビオチン類似体またはムテインまたはその生物学的活性フラグメントまたはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、(a)または(b)の機能的フラグメントを含む、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む。
【0114】
いくつかの態様において、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインはさらに、SEQ ID NO: 1に示されたアミノ酸の配列中のストレプトアビジン中の位置に関して117位、120位および/または121位に対応する位置にアミノ酸置換(1つまたは複数)を含む。いくつかの例において、アミノ酸置換(1つまたは複数)は、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121またはPhe121の中から選択され;または、アミノ酸置換(1つまたは複数)は、Glu117、Gly120またはTyr121の1つまたは複数から選択され;または、アミノ酸置換は、Glu117、Gly120またはTyr121から選択される。
【0115】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は、(a)SEQ ID NO: 27または28に示されたアミノ酸の配列;(b)SEQ ID NO: 28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示し、かつVal44、Thr45、Ala46、Arg47、Glu117、Gly120およびTyr121に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンまたはその生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体またはビオチンムテインまたはその生物学的活性フラグメント、またはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するアミノ酸の配列;または(c)ビオチンまたはその生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体またはムテインまたはその生物学的活性フラグメントまたはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、(a)または(b)の機能的フラグメントを含む、ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む。
【0116】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターのゲノムは、組み換えタンパク質をコードする核酸分子を含む。いくつかの場合、組み換えタンパク質は抗原受容体である。いくつかの態様において、ウイルス粒子はレトロウイルスである。いくつかの例において、レトロウイルスはレンチウイルスである。いくつかの場合、レトロウイルスはガンマレトロウイルスである。いくつかの態様において、ウイルス粒子は複製欠損性である。
【0117】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、試薬は可溶性である。
【0118】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるものは、細胞の形質導入のための方法である。本明細書に提供されるものは、複数の細胞を含むインプット組成物中に存在するような1つまたは複数の標的細胞を含む複数の細胞を(1)オリゴマー試薬;および(2)ウイルス粒子とともにインキュベートする、たとえばそれらと接触させる工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、任意で、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。
【0119】
本明細書に提供されるものは、(a)ウイルス粒子をオリゴマー試薬と接触させ、それにより、試薬と会合したウイルス粒子を含む混合物を生成する工程;および(b)混合物を、複数の細胞を含むインプット組成物と接触させる工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、任意で、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法である。いくつかの態様において、試薬は、オリゴマーであるか、またはオリゴマーを含む。いくつかの態様において、接触させる工程は、細胞を試薬と、およびウイルス粒子と、同時にまたは順次どちらかの順序で混合する工程を含む。いくつかの態様において、接触させる工程の少なくとも一部分の間、試薬およびウイルス粒子は、同時に、細胞の存在下にあるか、または細胞と接触している。
【0120】
態様のいずれかのいくつかにおいて、オリゴマー試薬はオリゴマータンパク質試薬であり;および/または、オリゴマー試薬は複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位は、任意で、少なくとも10、20、30もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30もしくは約40アミノ酸長、任意で、少なくとも50、60、65、70、80、90、100、125もしくは150アミノ酸長もしくは少なくとも約50、約60、約65、約70、約80、約90、約100、約125もしくは約150アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40もしくは約50kDaの分子量を含み、任意で、試薬は、任意で四量体単位であり個々に単量体単位を含む複数の多量体サブユニットで構成されたオリゴマーを含み;かつ/または、オリゴマー試薬は、少なくとも100もしくは少なくとも約100、かつ/または150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDa約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む。
【0121】
態様のいずれかのいくつかにおいて、試薬、たとえばオリゴマータンパク質試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のいずれかの多量体の複数の単位を含み、任意で含む。
【0122】
いくつかの態様において、接触させる工程は、細胞を試薬と、およびウイルス粒子と、同時にまたは順次どちらかの順序で混合する工程を含む。いくつかの態様において、接触させる工程の少なくとも一部分の間、試薬およびウイルス粒子は、同時に、細胞の存在下にあるか、または細胞と接触している。
【0123】
いくつかの態様において、アウトプット組成物中の1つまたは複数の形質導入細胞は、ウイルス粒子に含まれる異種核酸によってコードされた組み換えタンパク質を発現する。いくつかの態様において、ウイルス粒子はレトロウイルス、たとえばレンチウイルスまたはガンマレトロウイルスである。
【0124】
いくつかの態様において、提供される方法は、試薬なしで実施された、または代替アジュバント、たとえばRetronectinまたは硫酸プロタミンを用いて実施された形質導入と比べて形質導入効率を高める。いくつかの態様において、形質導入効率は、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍もしくはそれを上回って、または約1.2倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍もしくはそれを上回って増大する。
【0125】
いくつかの態様において、試薬は結合物質に可逆的に結合する。いくつかの態様において、細胞上の結合物質は、細胞または細胞の亜集団の選択、単離、活性化、刺激および/または増殖のうちの1つまたは複数を促進することができる。いくつかの態様において、結合は、記載されたような任意の結合物質である。
【0126】
同じく提供されるものは、試薬、たとえば任意のオリゴマータンパク質試薬、たとえばウイルス粒子として記載されたいずれかを含む組成物である。いくつかの態様において、ウイルス粒子はレトロウイルス、たとえばレンチウイルスまたはガンマレトロウイルスである。
【0127】
同じく提供されるものは、試薬、たとえば任意のオリゴマータンパク質試薬、たとえばウイルス粒子として記載されたいずれかを含むキットである。いくつかの態様において、ウイルス粒子はレトロウイルス、たとえばレンチウイルスまたはガンマレトロウイルスである。
[本発明1001]
複数の標的細胞をオリゴマータンパク質試薬およびウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
該オリゴマータンパク質試薬が、複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位が、少なくとも10、20、30、もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30、もしくは約40アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40、もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40、もしくは約50kDaの分子量を含み;かつ/または
該オリゴマータンパク質試薬が、少なくとも100kDaまたは少なくとも約100kDaの分子量を含むか、または平均で少なくとも100kDaまたは少なくとも約100kDaの分子量を含み、
該方法が、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1002]
オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン結合ポリペプチド、strep tag結合ペプチド、ストレプトアビジンムテイン、ストレプトアビジン類似体、アビジンムテイン、アビジン類似体、および/または前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントを個々に含む複数のポリペプチド単位を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
オリゴマータンパク質試薬が、それぞれが個々に2つ以上のポリペプチド単位を含む1つまたは複数の多量体サブユニットを含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
複数の標的細胞を、
(1)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬;ならびに
(2)ウイルス粒子
とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1005]
(i)前記インキュベートする工程が、順次どちらかの順序で、標的細胞を前記試薬と混合すること、および/または標的細胞をウイルス粒子と混合することを含み、任意で、(a)における該混合および(b)における該混合が、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、もしくは72時間以下の期間内で実施され、かつ/または(a)における該混合が、(b)における該混合から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは48時間以内に実施され、
(ii)前記インキュベートする工程が、標的細胞、前記試薬、およびウイルス粒子を混合することを含み、該混合が、同時または実質的に同時に実施され;
(iii)前記インキュベートする工程が、標的細胞およびウイルス粒子を含み、かつ前記試薬を含まない組成物を混合する工程を含み、任意で、
標的細胞および該試薬を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%、もしくは40%以下が活性化細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し;IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、かつ/もしくは増殖することができ;かつ/または
該混合が、該組成物中の標的細胞およびウイルス粒子の混合ののち1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは48時間以内に実施され;
(iv)前記インキュベーションが、標的細胞および前記試薬を含み、かつウイルス粒子を含まない組成物をウイルス粒子と混合する工程を含み、任意で、
標的細胞および該試薬を含む該組成物中の該標的細胞の5%、10%、20%、30%、もしくは40%以下が活性化細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し;IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、かつ/もしくは増殖することができ;かつ/または
該混合が、該組成物中の標的細胞およびウイルス粒子の混合ののち1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは48時間以内に実施され;かつ/または
(v)前記インキュベーションが、ウイルス粒子および前記試薬を含む組成物を、標的細胞を含み、かつウイルス粒子を含まないかつ/もしくは前記試薬を含まない組成物と混合する工程を含み、任意で、
標的細胞および該試薬を含む該組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%、または40%以下が活性化細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し;IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、かつ/または増殖することができる、
本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
オリゴマータンパク質試薬が、ビオチン結合ポリペプチド、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体、ストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、および生物学的活性フラグメントのうちの1つまたは複数を含む複数の単位を含む、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記試薬が、それぞれが個々に2つ以上の単量体単位を含む複数の多量体サブユニット単位を含む、本発明1006の方法。
[本発明1008]
多量体サブユニットが四量体であり、かつ/またはそれぞれが個々に4つの単量体単位を含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記インキュベートする工程が、前記細胞を前記試薬と、およびウイルス粒子と、同時にまたは順次どちらかの順序で混合する工程を含む、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記インキュベートする工程の少なくとも一部分の間、前記試薬およびウイルス粒子が、同時に、前記細胞の存在下にあるか、または前記細胞と接触している、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
(a)ウイルス粒子をオリゴマータンパク質試薬と接触させ、それにより、該ウイルス粒子および該試薬を含む組成物を生成する工程であって、該ウイルス粒子が、任意で該試薬と会合している、工程;および
(b)(a)の組成物を、標的細胞を含む複数の細胞とともにインキュベートする工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1012]
ウイルス粒子およびオリゴマータンパク質試薬を含む組成物を、標的細胞を含む複数の細胞と混合する工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1013]
(a)ウイルス粒子を、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬と接触させ、それにより、該ウイルス粒子および該試薬を含む組成物を生成する工程であって、該ウイルス粒子が、任意で該試薬と会合している、工程;および
(b)(a)の組成物を複数の細胞とともにインキュベートする工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1014]
ウイルス粒子およびタンパク質試薬を含む組成物を、標的細胞を含む複数の細胞と混合する工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
該タンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含み、
該方法が、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1015]
前記試薬および/または単量体単位の各々および/または多量体単位の各々が、正味の正電荷または全体的な正電荷を有する、本発明1001~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記試薬が、抗体もしくはそのフラグメントを含む結合物質を含まず、かつ/もしくは該結合物質とコンジュゲートも可逆的に結合もしておらず、ヒト細胞表面分子もしくはその結合性フラグメントを含む結合物質も含まない;
前記試薬が、ヒト細胞表面マーカー、任意でT細胞マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、かつ/もしくは該分子とコンジュゲートも結合もしておらず;
前記試薬が、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートも結合もしておらず;かつ/または
前記試薬が、ヘパリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはインテグリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA4結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA5結合ドメインを含まない、
本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記試薬が、それぞれがウイルス粒子表面および/もしくは標的細胞の表面の分子に特異的に結合することができる複数の1種類または複数種類の結合物質をさらに含み、かつ/またはそれと可逆的に結合している、本発明1001~1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
標的細胞を含む複数の細胞を、
(1)結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含むオリゴマータンパク質試薬であって、1つまたは複数の結合部位が結合物質に可逆的に結合している、オリゴマータンパク質試薬;および
(2)ウイルス粒子
とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)におけるインキュベーションの少なくとも一部が(2)と同時に実施され、
該方法が、該ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1019]
前記試薬が、結合物質それぞれに可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、該複数の結合部位が、結合パートナーCに結合することができる1つまたは複数の結合部位Zを含み;
該結合物質が、結合パートナーCの1つまたは複数をさらに含む、
本発明1017または本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記結合物質が、受容体結合物質であるか、または受容体結合物質を含む、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記試薬が、標的細胞の表面に発現される分子に特異的に結合する選択物質であるさらなる結合物質をさらに含む、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記結合物質が、標的細胞のうちの1つまたは複数の表面に発現される分子に特異的に結合する選択物質である、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記結合物質が、ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合するウイルス結合物質である、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1024]
(1)(a)標的細胞を含む複数の細胞を含む組成物と、(b)(i)該標的細胞のうちの1つまたは複数によって発現される分子に特異的に結合することができ、かつ(ii)選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬と可逆的に結合している、該選択物質である結合物質とを接触させる工程;ならびに
(2)少なくとも複数の細胞を、1つまたは複数のウイルス粒子の存在下でインキュベートする工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
該方法が、該ウイルス粒子を用いて形質導入された細胞を含むアウトプット組成物を生成する、前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1025]
ウイルスベクター粒子が前記試薬と可逆的に結合し、該試薬がウイルス粒子表面の分子と直接または間接的に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
ウイルス粒子が、該ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合するウイルス粒子結合物質を介して前記試薬と可逆的に結合し、該試薬が、該ウイルス粒子結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記試薬が、選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z1を含み、かつ/または前記試薬が、ウイルス結合物質を介して1つもしくは複数のウイルス粒子と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z2を含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
(1)(a)1つまたは複数のウイルス粒子を含む組成物と、(b)(i)該ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合することができ、かつ(ii)ウイルス結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬と可逆的に結合している、該ウイルス結合物質である結合物質とを接触させる工程;および
(2)標的細胞を含む少なくとも複数の細胞を該1つまたは複数のウイルス粒子の存在下でインキュベートする工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
該方法が、該ウイルス粒子を用いて形質導入された複数の細胞を含むアウトプット組成物を生成する、
前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1029]
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、もしくは72時間以下の期間内で実施され、かつ/または(a)における混合することが、(b)におけるインキュベートする工程から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは48時間以内に実施される、本発明1024~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
前記結合物質が、抗体、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子またはその結合性フラグメントであるか、またはこれらを含む、本発明1021~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
抗体フラグメントが、Fabフラグメント、Fvフラグメント、(Fab')
2
フラグメント、および二価単鎖Fv(scFv)フラグメントからなる群より選択されるフラグメントを含む、本発明1030の方法。
[本発明1032]
前記試薬が、オリゴマータンパク質試薬であるか、またはオリゴマータンパク質試薬を含む、本発明1004、1013および1024~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含む、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記試薬が可溶性である、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
前記インキュベーションの間、前記試薬が、固体支持体、固定相、ビーズ、微粒子、磁性粒子、および/もしくはマトリックスではなく、それに結合も会合もしておらず;かつ/または
前記試薬が、フレキシブルであり、金属コアもしくは磁性コアを含まず、完全にもしくは主に有機多量体から構成され、形状が球状でも、実質的に球状でも、均一でもなく、かつ/または硬直していない、
本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記試薬が、支持体上に直接または間接的に固定化されているか、または固定化されることができ;かつ
インキュベーションの少なくとも一部が、該支持体上で起こる、
本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1037]
前記試薬が、支持体上に直接または間接的に固定化されているか、または固定化されることができ、それにより、前記選択物質が、該支持体上に固定化されているか、または固定化されることができ;(1)において、(c)支持体、がさらに組み合わされ、それにより、少なくとも複数のうちの1つまたは複数の標的細胞が、インキュベーションの少なくとも一部の間、該選択物質を介して該支持体上に固定化される、本発明1024~1027のいずれかの方法。
[本発明1038]
(1)(a)標的細胞を含む複数の細胞を含む組成物と、(b)(i)該標的細胞のうちの1つまたは複数によって発現される選択マーカーに特異的に結合することができ、かつ(ii)支持体に、直接または間接的に固定化されているか、または固定化されることができる選択物質と;(c)支持体とを接触させる工程であって、それにより、少なくとも複数のうちの1つまたは複数の標的細胞が該選択物質を介して該支持体上に固定化される、前記工程;および
(2)複数のウイルス粒子を含む組成物の存在下で少なくとも複数の細胞をインキュベートする工程であって、該複数のウイルス粒子のうちの1つまたは複数が、該支持体上に、直接または間接的に固定化されることができる、前記工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
該1つまたは複数の標的細胞および該1つまたは複数のウイルス粒子が、該インキュベーションの少なくとも一部の間、該支持体上に固定化されており;かつ
該方法が、該ウイルス粒子を用いて形質導入された複数の細胞を含むアウトプット組成物を生成する、
前記細胞の形質導入のための方法。
[本発明1039]
支持体が、固定相であるか、もしくは固定相を含み;かつ/または
支持体が、固体支持体であるか、もしくは固体支持体を含む、
本発明1036~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記試薬が、支持体上に固定化されているか、または固定化されることができ、該試薬が、前記選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z1と、ウイルス結合物質を介して1つまたは複数のウイルス粒子と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z2とを含む、本発明1038または本発明1039の方法。
[本発明1041]
前記方法が、(1)において、(d)試薬、をさらに組み合わせることを含み、該試薬が、支持体上に固定化されている、本発明1040の方法。
[本発明1042]
前記選択物質および/または複数の細胞を含む組成物を前記試薬および支持体に組み合わせる前に、前記試薬および支持体が組み合わされる、本発明1038~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
前記選択物質が第一の選択物質であり、前記分子が第一の分子であり、インキュベーションが、標的細胞のうちの1つまたは複数の表面に発現された第二の分子に特異的に結合することができる第二の選択物質の存在下でさらに実施される、本発明1022、1024~1027および1030~1041のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記第二の選択物質が、前記試薬または第二の試薬と可逆的に結合し、該試薬または該第二の試薬が、該第二の選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、該第二の選択物質が、該試薬または該第二の試薬と可逆的に結合する、本発明1043の方法。
[本発明1045]
標的細胞が、血液細胞を含み;
標的細胞が、白血球を含み;
標的細胞が、リンパ球を含み;
標的細胞が、B細胞を含み;
標的細胞が、B細胞集団を含み;
標的細胞が、T細胞を含み;
標的細胞が、T細胞集団を含み;かつ/または
標的細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞を含み;
標的細胞が、樹状細胞を含み;
標的細胞が、マクロファージを含む、
本発明1001~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
標的細胞が、抗原特異的T細胞もしくはその集団、ヘルパーT細胞もしくはその集団、細胞傷害性T細胞もしくはその集団、メモリーT細胞もしくはその集団、調節性T細胞もしくはその集団、またはNK細胞もしくはその集団、抗原特異的B細胞もしくはその集団、メモリーB細胞もしくはその集団、または調節性B細胞もしくはその集団を含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
標的細胞が、T細胞を含む、本発明1001~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
T細胞が、CD4+および/もしくはCD8+ T細胞、ならびに/またはその亜集団もしくはサブセットを含み、かつ/または前記のうちの任意の集団が濃縮されている、本発明1047の方法。
[本発明1049]
前記分子が、B細胞またはT細胞共受容体であり;
前記分子が、T細胞もしくはB細胞抗原受容体複合体のメンバーであるか、またはそれを含み;
前記分子が、CD3鎖であるか、またはCD3鎖を含み;
前記分子が、CD3ゼータ鎖であるか、またはCD3ゼータ鎖を含み;
前記分子が、CD8であるか、またはCD8を含み;
前記分子が、CD4であるか、またはCD4を含む、
本発明1001~1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
前記選択物質によって特異的に結合される分子が、CD25、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RA、および/もしくはCD45ROであるか、またはこれらを含む、本発明1022、1024~1027および1030~1048のいずれかの方法。
[本発明1051]
前記選択物質と前記分子との間の特異的結合が、標的細胞に対しシグナルを誘導せず、すなわち刺激シグナルも活性化シグナルも増殖シグナルも誘導しない、本発明1022、1024~1027および1030~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
インキュベーションの少なくとも一部の間に、前記選択物質が、標的細胞の表面に発現される分子に結合し、それにより、前記試薬と該標的細胞との間の会合を促進する、本発明1022、1024~1027および1030~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記分子を発現せず、前記選択物質と特異的に結合もしない非標的細胞の形質導入と比べて、前記試薬と標的細胞との間の会合が、該標的細胞の形質導入を増強する、本発明1052の方法。
[本発明1054]
前記複数の細胞が、休止またはナイーブT細胞を含む、本発明1001~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
前記複数の細胞におけるT細胞の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択されるT細胞活性化マーカーについて表面陰性であり;かつ/またはIL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;かつ/または増殖能力がある、本発明1001~1054のいずれかの方法。
[本発明1056]
前記複数の細胞のうちのT細胞の10%以下が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択されるT細胞活性化マーカーを含み;かつ/またはIL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;かつ/または増殖能力がある、本発明1001~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記インキュベートする工程の前に、T細胞活性化を促進する条件下で前記複数の細胞のうちの細胞を刺激する工程を含まない、本発明1001~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記インキュベートする工程の前に、前記複数の細胞が、
(a)約37℃でのインキュベーションを含むエクスビボ刺激、ならびに/または
(b)T細胞、CD4+ T細胞、および/もしくはCD8+ T細胞におけるTCR複合体を経由するシグナルを、活性化、誘導することができる作用物質;T細胞、CD4+ T細胞、および/もしくはCD8+ T細胞の増殖を誘導することができる作用物質;CD3結合分子;CD28結合分子からなる群より選択される1種類もしくは複数種類の作用物質の存在下でのインキュベーション
に供されていない、本発明1001~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
前記複数の細胞が、活性化細胞を含む、本発明1001~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記試薬とともに前記インキュベートする工程の前または最中に、刺激物質の存在下で、標的細胞のうちの1つまたは複数が該刺激物質によって刺激または活性化される条件下で前記細胞を活性化させる、本発明1001~1059のいずれかの方法。
[本発明1061]
標的細胞がT細胞を含み、前記刺激する条件が、TCR複合体の1種類または複数種類の成分のうちの1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる作用物質の存在を含む、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記作用物質が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する一次作用物質およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質を含む、本発明1061の方法。
[本発明1063]
一次作用物質がCD3に特異的に結合し;かつ/または
前記共刺激分子が、CD28、CD137(4-1BB)、CD27、OX40、もしくはICOSからなる群より選択される、
本発明1062の方法。
[本発明1064]
一次作用物質および二次作用物質が抗体を含み、かつ/または固体支持体の表面に存在する、本発明1062または本発明1063の方法。
[本発明1065]
(i)刺激シグナルを送達するために、1つまたは複数の標的細胞の表面に発現する受容体に特異的に結合する、かつ
(ii)前記試薬または第二の試薬に可逆的に結合する
受容体結合物質の存在下で少なくとも複数の細胞を培養する工程をさら含み、
該試薬または該第二の試薬が、それぞれ該受容体結合物質に可逆的に結合しそれによって細胞においてシグナルを誘導または調節することができる複数の結合部位を含む、
本発明1001~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
前記培養する工程が、前記インキュベートする工程の前に実施および/または開始される、本発明1065の方法。
[本発明1067]
前記試薬が、第二の試薬であり、インキュベーションの間、該第二の試薬が、固体支持体、固定相、ビーズ、微粒子、磁性粒子、および/もしくはマトリックスと結合も会合もしておらず、かつ/または
該第二の試薬が、フレキシブルであり、金属コアもしくは磁性コアを含まず、完全にもしくは主に有機多量体で構成され、形状が球状でも、実質的に球状でも、均一でもなく、かつ/もしくは硬直していない、
本発明1065または本発明1066の方法。
[本発明1068]
前記試薬が、第二の試薬であり、該第二の試薬が、支持体上に固定化されている、本発明1065または本発明1066の方法。
[本発明1069]
刺激物質が、MHC I:ペプチド複合体もしくはその機能的部分、MHCII:ペプチド複合体もしくはその機能的部分を含み、かつ/またはT細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体、および/もしくはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる、本発明1065~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
前記受容体結合物質が、TCR/CD3複合体のメンバーに特異的に結合するか、またはCD3に特異的に結合する、本発明1065~1069のいずれかの方法。
[本発明1071]
前記受容体結合物質が第一の受容体結合物質であり、前記培養する工程が第二の受容体結合物質の存在下でさらに実施され、該第二の受容体結合物質が、
T細胞のうちの1つまたは複数の表面の第二の受容体に特異的に結合し、それにより、第一の受容体を通して送達されたシグナルを増強、減衰または改変するための第二のシグナルを細胞中に誘導することができる補助結合物質
である、本発明1065~1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
第二の受容体結合物質が、前記試薬、第二の試薬または第三の試薬と可逆的に結合し;
該試薬、第二の試薬または第三の試薬が、該第二の受容体結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、該第二の受容体結合物質が該試薬、第二の試薬または第三の試薬に可逆的に結合する、
本発明1071の方法。
[本発明1073]
第二の受容体が、共刺激分子、補助分子、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、免疫チェックポイント分子であるか、またはTNFファミリーもしくはTNF受容体ファミリーのメンバーである、本発明1071または本発明1072の方法。
[本発明1074]
第一および第二の受容体結合物質が、それぞれCD3および/もしくはCD28であるかまたはCD3および/もしくはCD28を含む細胞の表面に発現される分子に結合する、本発明1071~1073のいずれかの方法。
[本発明1075]
第一のおよび第二の受容体結合物質が、それぞれ抗CD3および/または抗CD28抗体またはフラグメントを含む、本発明1074の方法。
[本発明1076]
前記インキュベートする工程および培養する工程が、任意で管材により操作可能に接続される別々の容器内で実施される、本発明1065~1075のいずれかの方法。
[本発明1077]
前記インキュベートする工程および培養する工程が、閉鎖系内で実施される、本発明1065~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
第一および/または第二の受容体結合物質であることができる受容体結合物質に可逆的に結合し、かつ該受容体結合物質により刺激された細胞を回収し、それにより、培養細胞を産生する工程を含む方法であって、該培養細胞が標的細胞を含む複数の細胞であるか、または標的細胞を含む複数の細胞を含む、本発明1065~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
前記接触させる工程の後に、固定化された標的細胞から、前記複数の細胞のうちの他の細胞を分離することおよび/または除去することをさらに含む、本発明1036~1078のいずれかの方法。
[本発明1080]
分離することおよび/または除去することが、洗浄工程を行うことによって実施される、本発明1079の方法。
[本発明1081]
分離することおよび/または洗浄工程が、インキュベーションの開始前に実施される、本発明1079または本発明1080の方法。
[本発明1082]
前記インキュベートする工程が、前記接触させる工程の前に実施および/もしくは開始されるか;または
前記インキュベートする工程が、前記接触させる工程の後で実施および/もしくは開始される、
本発明1011~1017および1024~1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
前記接触させる工程が、前記インキュベーションの少なくとも一部の間に実施される、本発明1001~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
ウイルス結合物質が、エンベロープ糖タンパク質、エンベロープ糖タンパク質のバリアント、キメラエンベロープ糖タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスカプシドタンパク質のバリアント、ウイルスマトリックスタンパク質、ウイルスマトリックスタンパク質のバリアント、合成部分、ペプチドおよびタグの中から選択されるウイルス粒子表面分子に結合する、本発明1023、1026~1037および1040~1083のいずれかの方法。
[本発明1085]
エンベロープ糖タンパク質が、VSV糖タンパク質(VSV-G)、シンドビス糖タンパク質、任意でSIN、MMLV糖タンパク質、HSV糖タンパク質、MMTV糖タンパク質、麻疹ウイルス糖タンパク質、HTLV糖タンパク質、SIV糖タンパク質、GALV糖タンパク質、HIV糖タンパク質、任意でgp160、gp120もしくはgp41、およびRSV糖タンパク質、任意でgp85もしくはgp37の中から選択されるか、またはそれらのバリアント、ウイルス粒子結合物質が結合するのに十分な部分、もしくはキメラ分子である、本発明1084の方法。
[本発明1086]
ウイルス結合物質が、ウイルスに対して異種の非ウイルス性組換え分子であるウイルス粒子表面分子に結合する、本発明1023、1026~1037および1040~1083のいずれかの方法。
[本発明1087]
前記分子が、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、ヘマグルチニンペプチド、VSV-Gタグ、HSVタグ、T7エピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、mycエピトープ、V5タグ、およびストレプトアビジン結合ペプチドの中から選択される合成部分、ペプチドまたはタグである、本発明1085または本発明1086の方法。
[本発明1088]
前記分子が、ストレプトアビジン結合ペプチドである、本発明1087の方法。
[本発明1089]
前記分子が、合成部分、ペプチドまたはタグであり、ウイルス粒子が、合成部分、ペプチドまたはタグをその表面に発現するように操作されている、本発明1085、本発明1086または本発明1087の方法。
[本発明1090]
ストレプトアビジン結合ペプチドが、SEQ ID NO:7、8、13、14、および15~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、本発明1088または本発明1089の方法。
[本発明1091]
前記分子が、リガンド結合ドメインであるか、またはリガンド結合ドメインを含む、本発明1086の方法。
[本発明1092]
前記分子が、抗原受容体であるか、または抗原受容体を含む、本発明1091の方法。
[本発明1093]
抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、本発明1092の方法。
[本発明1094]
ウイルス結合抗原が、CARの細胞外領域に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである、本発明1093の方法。
[本発明1095]
細胞外領域が、抗原結合ドメインまたはヒンジ領域である、本発明1094の方法。
[本発明1096]
ウイルス粒子結合物質が、プロタミン、POLYBRENE(登録商標)およびRETRONECTIN(登録商標)の中から選択される、本発明1023、1026~1037および1040~1083のいずれかの方法。
[本発明1097]
ウイルス粒子が、結合パートナーC1またはC2を含み;かつ
前記試薬が、該結合パートナーC1またはC2と結合して該ウイルス粒子と該試薬との間に可逆性結合を形成することができる複数の結合部位Z1またはZ2を含む、
本発明1023、1026~1037および1040~1096のいずれかの方法。
[本発明1098]
ウイルス粒子が、合成部分、ペプチドまたはタグをその表面に発現するように操作されており、該合成部分、ペプチドまたはタグが、結合パートナーC1またはC2であるか、または結合パートナーC1またはC2を含む、本発明1097の方法。
[本発明1099]
前記ペプチドが、ストレプトアビジン結合ペプチドである、本発明1098の方法。
[本発明1100]
ストレプトアビジン結合ペプチドが、SEQ ID NO:7、8、13、14、および15~19のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、本発明1099の方法。
[本発明1101]
ウイルス粒子が、前記試薬と会合または結合する、本発明1001~1100のいずれかの方法。
[本発明1102]
ウイルスベクターのゲノムが、組換えタンパク質をコードする異種核酸分子を含む、本発明1001~1101のいずれかの方法。
[本発明1103]
組換えタンパク質が、抗原受容体である、本発明1102の方法。
[本発明1104]
組換えタンパク質が、キメラ抗原受容体である、本発明1103の方法。
[本発明1105]
ウイルス粒子が、レトロウイルスベクター粒子である、本発明1001~1104のいずれかの方法。
[本発明1106]
ウイルス粒子が、レンチウイルスベクター粒子である、本発明1001~1105のいずれかの方法。
[本発明1107]
レンチウイルスベクター粒子が、HIV-1由来のゲノムを含む、本発明1106の方法。
[本発明1108]
レトロウイルスベクター粒子が、ガンマレトロウイルス粒子である、本発明1001~1107のいずれかの方法。
[本発明1109]
ガンマレトロウイルス粒子が、マウス白血病ウイルス(MLV)粒子である、本発明1108の方法。
[本発明1110]
ウイルスベクター粒子が、ウイルスエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイプ化されている、本発明1001~1109のいずれかの方法。
[本発明1111]
ウイルスエンベロープ糖タンパク質が、VSV-Gである、本発明1110の方法。
[本発明1112]
キメラ抗原受容体(CAR)が、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、本発明1104~1111のいずれかの方法。
[本発明1113]
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む、本発明1112の方法。
[本発明1114]
細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを連結している膜貫通ドメインをさらに含む、本発明1112または本発明1113の方法。
[本発明1115]
膜貫通ドメインが、CD28の膜貫通部分を含む、本発明1114の方法。
[本発明1116]
細胞内シグナル伝達ドメインが、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、本発明1112~1115のいずれかの方法。
[本発明1117]
T細胞共刺激分子が、CD28および41BBからなる群より選択される、本発明1116の方法。
[本発明1118]
前記核酸が、組換え抗原受容体をコードする核酸に機能的に連結されるプロモーターをさらに含む、本発明1102~1117のいずれかの方法。
[本発明1119]
前記複数の細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)またはその細胞の濃縮もしくは単離されたサブセットを含む、本発明1001~1118のいずれかの方法。
[本発明1120]
前記複数の細胞が、血液細胞、白血球、リンパ球、B細胞、T細胞またはNK細胞を含む、本発明1001~1119のいずれかの方法。
[本発明1121]
前記複数の細胞が、抗原特異的T細胞もしくはその集団、ヘルパーT細胞もしくはその集団、細胞傷害性T細胞もしくはその集団、メモリーT細胞もしくはその集団、調節性T細胞もしくはその集団、NK細胞もしくはその集団、抗原特異的B細胞もしくはその集団、メモリーB細胞もしくはその集団、または調節性B細胞もしくはその集団を含む、本発明1001~1120のいずれかの方法。
[本発明1122]
前記複数の細胞が、初代細胞である、本発明1001~1121のいずれかの方法。
[本発明1123]
前記複数の細胞が、T細胞を含む、本発明1001~1121のいずれかの方法。
[本発明1124]
T細胞が、未分画のT細胞であるか、濃縮もしくは単離されたCD3+ T細胞であるか、濃縮もしくは単離されたCD4+ T細胞であるか、または濃縮もしくは単離されたCD8+ T細胞である、本発明1123の方法。
[本発明1125]
前記試薬が、前記複数の細胞に毒性ではないか、または前記複数の細胞の少なくとも75%、85%、90%、95%もしくはそれより多く、もしくは複数の細胞の少なくとも約75%、約85%、約90%、約95%もしくはそれより多くが、前記接触させる工程もしくはインキュベートする工程の後に生存可能である、本発明1001~1124のいずれかの方法。
[本発明1126]
前記接触させる工程および/もしくはインキュベートする工程後の細胞毒性が、同じ条件下でポリカチオン形質導入アジュバントと接触させた、もしくはそれとともにインキュベートしたときの細胞毒性の1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍もしくは10倍未満、もしくは約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍もしくは約10倍未満であり;かつ/または
前記接触させる工程および/もしくは該インキュベートする工程後の細胞生存率が、同じ条件下でポリカチオン形質導入アジュバントと接触させた、もしくはそれとともにインキュベートしたときの細胞の生存率と比較して1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍または10倍高い、もしくは約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍もしくは約10倍高い、本発明1001~1125のいずれかの方法。
[本発明1127]
ポリカチオン形質導入アジュバントが、硫酸プロタミン、フィブロネクチン由来形質導入アジュバントまたはRetroNectinである、本発明1126の方法。
[本発明1128]
前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチンやビオチン類似体もしくはその生物学的活性フラグメントと可逆的に結合する、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン;ストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アビジンもしくはストレプトアビジンの類似体もしくはムテイン;遷移金属イオンに結合することができる少なくとも2つのキレート化基Kを含む試薬;オリゴヒスチジン親和性タグと結合することができる作用物質;グルタチオン-S-トランスフェラーゼと結合することができる作用物質;カルモジュリンもしくはその類似体;カルモジュリン結合ペプチド(CBP)と結合することができる作用物質;FLAGペプチドと結合することができる作用物質;HAタグと結合することができる作用物質;マルトース結合タンパク質(MBP)と結合することができる作用物質;HSVエピトープと結合することができる作用物質;mycエピトープと結合することができる作用物質;またはビオチン化担体タンパク質と結合することができる作用物質であるか、またはこれらを含む、本発明1001~1127のいずれかの方法。
[本発明1129]
前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン;ストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、ストレプトアビジンもしくはアビジンの類似体もしくはムテイン;遷移金属イオンに結合することができる少なくとも2つのキレート化基Kを含む試薬;オリゴヒスチジン親和性タグと結合することができる作用物質;グルタチオン-S-トランスフェラーゼと結合することができる作用物質;カルモジュリンもしくはその類似体;カルモジュリン結合ペプチド(CBP)と結合することができる作用物質;FLAGペプチドと結合することができる作用物質;HAタグと結合することができる作用物質;マルトース結合タンパク質(MBP)と結合することができる作用物質;HSVエピトープと結合することができる作用物質;mycエピトープと結合することができる作用物質;またはビオチン化担体タンパク質と結合することができる作用物質の、オリゴマーまたはポリマーである、本発明1001~1127のいずれかの方法。
[本発明1130]
前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、または/およびアビジン類似体もしくはアビジンムテインの、オリゴマーまたはポリマーを含む、本発明1001~1129のいずれかの方法。
[本発明1131]
オリゴマーまたはポリマーの個々の分子が、多糖類または二官能性リンカーによって架橋されている、本発明1129または本発明1130の方法。
[本発明1132]
前記試薬が、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、もしくはこれらを含み;
前記試薬が、ビオチン類似体もしくは生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、もしくはこれらを含み;かつ/または
前記試薬が、ストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、もしくはこれらを含む、
本発明1001~1131のいずれかの方法。
[本発明1133]
ストレプトアビジン結合ペプチドが、
からなる群より選択される、本発明1132の方法。
[本発明1134]
前記試薬が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2を含むか、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、本発明1001~1133のいずれかの方法。
[本発明1135]
前記試薬が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44
-Thr
45
-Ala
46
-Arg
47
もしくはIle
44
-Gly
45
-Ala
46
-Arg
47
を含むストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインを含むか;または
ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44
-Thr
45
-Ala
46
-Arg
47
を含む、
本発明1001~1134のいずれかの方法。
[本発明1136]
ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、
(a)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44
-Thr
45
-Ala
46
-Arg
47
もしくはIle
44
-Gly
45
-Ala
46
-Arg
47
に対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、前記アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含む、本発明1001~1135のいずれかの方法。
[本発明1137]
ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して、117位、120位および/または121位に対応する位置で1つまたは複数のアミノ酸置換をさらに含む、本発明1135または本発明1136の方法。
[本発明1138]
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121もしくはPhe121の中から選択されるか;または
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
アミノ酸置換からが、Glu117、Gly120もしくはTyr121から選択される、
本発明1137の方法。
[本発明1139]
ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、
(a)SEQ ID NO:27もしくは28に示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44
、Thr
45
、Ala
46
、Arg
47
、Glu
117
、Gly
120
およびTyr
121
に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含む、本発明1001~1138のいずれかの方法。
[本発明1140]
前記結合物質が、ストレプトアビジン結合ペプチドである結合パートナーCを含む、本発明1017~1139のいずれかの方法。
[本発明1141]
結合パートナーCが、
からなる群より選択されるストレプトアビジン結合ペプチドを含む、本発明1140の方法。
[本発明1142]
1つまたは複数の結合物質と前記試薬との間の可逆的結合を破壊する工程を含む、本発明1017~1141のいずれかの方法。
[本発明1143]
前記破壊が、1つまたは複数の結合物質と前記試薬との間の結合を逆転させることができる物質を細胞に導入する工程を含む、本発明1142の方法。
[本発明1144]
前記物質が、遊離結合パートナーおよび/または競合物質である、本発明1142または本発明1143の方法。
[本発明1145]
前記組成物中の前記物質が、T細胞もしくは標的細胞に有害でなく、かつ/または該物質の添加が、同等もしくは同じ条件下で、該物質なしで標的細胞をインキュベートした場合とそれぞれ比較して、生存標的細胞のパーセンテージを90%、80%、70%、60%、もしくは50%未満に低下させない、本発明1142~1144のいずれかの方法。
[本発明1146]
前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、または/およびアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、またはそれらの生物学的活性フラグメントであるか、またはこれらを含み;かつ
前記物質が、ストレプトアビジン結合ペプチド、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、任意でD-ビオチン、またはビオチン類似体もしくは生物学的活性フラグメントを含む、
本発明1142~1145のいずれかの方法。
[本発明1147]
前記物質が、
からなる群より選択されるストレプトアビジン結合ペプチドであり;かつ/または
前記物質が
、C1もしくはその類似体であるか、もしくはC2もしくはその類似体である、
本発明1146の方法。
[本発明1148]
前記破壊の後に細胞を回収する工程を含む、本発明1001~1147のいずれかの方法。
[本発明1149]
細胞をさらにインキュベートする工程を含む、本発明1001~1148のいずれかの方法。
[本発明1150]
さらなるインキュベーションが、細胞を増大させるための条件下で行われる、本発明1149の方法。
[本発明1151]
インキュベーションおよびさらなるインキュベーションが、同じ容器内で実施され;かつ/または
該さらなるインキュベーションが、前記物質の存在下で実施され;かつ/または
前記方法が、該さらなるインキュベーションの前に、インキュベーションされた組成物から前記物質、選択物質、刺激物質、ウイルス粒子結合物質および/もしくは試薬を除去する工程を含まない、
本発明1149または本発明1150の方法。
[本発明1152]
前記試薬が、さらなるインキュベーションの前に組成物から除去されることも、さらなるインキュベーションの間に組成物から除去されることも、さらなるインキュベーションの少なくとも半分の間に組成物から除去されることもない、本発明1150または本発明1151の方法。
[本発明1153]
さらなるインキュベーションが、37℃±2℃もしくは約37℃±2℃で実施され;かつ/または
さらなるインキュベーションが、インキュベーションおよび/もしくはさらなるインキュベーションの少なくとも一部の間にT細胞にシグナルを送達することができるさらなる作用物質の存在下で実施される、
本発明1149~1152のいずれかの方法。
[本発明1154]
さらなる作用物質が、T細胞、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の増殖を増強または誘導することができる、本発明1153の方法。
[本発明1155]
さらなる作用物質が、IL-2、IL-15、IL-7およびIL-21の中から選択されるサイトカインである、本発明1153または本発明1154の方法。
[本発明1156]
さらなるインキュベーションが、14日以下、12日以下、10日以下、8日以下または6日以下である期間、実施される、本発明1149~1155のいずれかの方法。
[本発明1157]
前記支持体が、樹脂もしくはマトリックスを含み;
前記支持体が、ゲル濾過マトリックスを含み;
前記支持体が、クロマトグラフィーマトリックスを含み;かつ/または
前記支持体が、セルロースベースもしくは有機ポリマーベースのメンブレンを含む、
本発明1036~1156のいずれかの方法。
[本発明1158]
前記支持体が、微粒子、硬質粒子、磁性粒子、またはビーズを含む、本発明1036~1157のいずれかの方法。
[本発明1159]
クロマトグラフィーマトリックスが、カラム内に存在し、かつ/またはクロマトグラフィーが、カラムクロマトグラフィーもしくは平面クロマトグラフィーである、本発明1157の方法。
[本発明1160]
前記支持体が、前記インキュベーションおよび/または接触させる工程の全体または一部の間容器内に存在する固定相である、本発明1036~1159のいずれかの方法。
[本発明1161]
容器が、カラム、双方向流に適切な容器、ピペットチップ、チューブ、および液体試料のフロースルーに適切なカラムからなる群より選択される容器を含む、本発明1160の方法。
[本発明1162]
アウトプット組成物中の1つまたは複数の形質導入細胞が、ウイルス粒子に含まれる異種核酸によってコードされる組換えタンパク質を発現する、本発明1001~1161のいずれかの方法。
[本発明1163]
細胞の形質導入が、前記試薬の非存在下でのウイルス粒子を用いた形質導入と比較して、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍もしくはそれを上回って、または約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍もしくはそれを上回って増大する、本発明1001~1162のいずれかの方法。
[本発明1164]
前記選択物質と結合した分子を発現する標的細胞の選択的形質導入を生じさせる、本発明1021、1022、1024~1027、1030~1161のいずれかの方法。
[本発明1165]
形質導入が、前記分子を発現しない非標的細胞におけるよりも、該分子を発現する標的細胞において少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれを上回って高い、本発明1164の方法。
[本発明1166]
前記複数の細胞のうちの前記細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が前記方法による前記ウイルスベクターを用いて形質導入され;かつ/または
さらにインキュベーションされた前記組成物中の前記細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が前記ウイルスベクターを用いて形質導入され;かつ/または
前記インキュベートされた組成物および/もしくは前記さらにインキュベートされた組成物中の前記細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記ウイルスベクター内に含まれる異種核酸の産物を発現する、
本発明1001~1165のいずれかの方法。
[本発明1167]
エクスビボで行われる、本発明1001~1166のいずれかの方法。
[本発明1168]
前記方法によって産生された形質導入細胞を回収または単離する工程をさらに含む、本発明1001~1167のいずれかの方法。
[本発明1169]
本発明1001~1168のいずれかの方法によって産生された、形質導入細胞。
[本発明1170]
本発明1169の形質導入細胞を含む、組成物。
[本発明1171]
前記試薬に可逆的に結合しているウイルスベクター粒子結合物質であって、ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合することができる、ウイルス粒子結合物質;または
前記試薬に可逆的に結合しているウイルスベクター粒子
を含む、組成物。
[本発明1172]
前記試薬が、それぞれがウイルス粒子結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む、本発明1171の組成物。
[本発明1173]
前記試薬と可逆的に結合し、かつ標的細胞の表面の分子に特異的に結合することができる選択物質をさらに含む、本発明1171または本発明1172の組成物。
[本発明1174]
前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントであるか、もしくはこれらを含むか、または前記のうちのいずれかの複数の単位を含むオリゴマーである、本発明1170の組成物。
[本発明1175]
ウイルス結合物質が、
ウイルス分子に対して異種の非ウイルス性組換え分子である、ウイルス粒子表面の分子に結合するか;または
エンベロープ糖タンパク質、エンベロープ糖タンパク質のバリアント、キメラエンベロープ糖タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスカプシドタンパク質のバリアント、ウイルスマトリックスタンパク質、ウイルスマトリックスタンパク質のバリアント、合成部分、ペプチド、およびタグの中から選択されるウイルス粒子表面分子に結合する、
本発明1171~1174のいずれかの組成物。
[本発明1176]
エンベロープ糖タンパク質が、VSV糖タンパク質(VSV-G)、シンドビス糖タンパク質、任意でSIN、MMLV糖タンパク質、HSV糖タンパク質、MMTV糖タンパク質、麻疹ウイルス糖タンパク質、HTLV糖タンパク質、SIV糖タンパク質、GALV糖タンパク質、HIV糖タンパク質、任意でgp160、gp120もしくはgp41、およびRSV糖タンパク質、任意でgp85もしくはgp37の中から選択されるか、またはそれらのバリアント、ウイルス粒子結合物質が結合するのに十分な部分、もしくはキメラ分子であり;または
前記分子が、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、ヘマグルチニンペプチド、VSV-Gタグ、HSVタグ、T7エピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、mycエピトープ、V5タグ、およびストレプトアビジン結合ペプチドの中から選択される合成部分、ペプチドまたはタグである、
本発明1175の組成物。
[本発明1177]
非ウイルス性組換え分子が、リガンド結合ドメインであるか、またはリガンド結合ドメインを含む、本発明1175の組成物。
[本発明1178]
前記分子が、抗原受容体であるか、または抗原受容体を含む、本発明1177の組成物。
[本発明1179]
前記抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、本発明1178の組成物。
[本発明1180]
ウイルス結合抗原が、CARの細胞外領域に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである、本発明1179の組成物。
[本発明1181]
細胞外領域が、抗原結合ドメインまたはヒンジ領域である、本発明1180の組成物。
[本発明1182]
本発明1170~1181および1202~1225のいずれかの組成物および支持体を含む製品であって、前記試薬が、該支持体上に固定化されている、製品。
[本発明1183]
支持体が、固定相および/または固体支持体であるか、または固定相および/または固体支持体を含む、本発明1182の製品。
[本発明1184]
支持体が、クロマトグラフィーマトリックスであるか、またはクロマトグラフィーマトリックスを含む固定相であり、前記製品が、クロマトグラフィーマトリックスの全部または一部が収容される容器をさらに含む、本発明1183の製品。
[本発明1185]
容器が、カラムである、本発明1184の製品。
[本発明1186]
(a)1種類または複数種類のオリゴマータンパク質試薬、標的細胞を含む複数の細胞およびウイルス粒子より選択される1つまたは複数の構成要素を含む1つまたは複数の容器;
(b)クロマトグラフィーマトリックスであるか、またはクロマトグラフィーマトリックスを含む、少なくとも1つの固定相を含む支持体
を含む、装置。
[本発明1187]
少なくとも1種類のオリゴマータンパク質試薬が、ウイルス粒子結合物質、選択物質および/または受容体結合物質と可逆的に結合している、本発明1186の装置。
[本発明1188]
1つまたは複数の容器が流体接続されており、それにより、構成要素のうちの1つまたは複数が装置内の1つの容器から別の容器に通過する、本発明1186または本発明1187の装置。
[本発明1189]
クロマトグラフィー用の少なくとも1つの固定相のうちの1つと流体接続される試料出口をさらに含む、本発明1182~1188のいずれかの製品または装置。
[本発明1190]
機能的に閉鎖された系または無菌系である、本発明1182~1189のいずれかの製品または装置。
[本発明1191]
1つもしくは複数の容器もしくはその構成要素、またはクロマトグラフィーのための少なくとも1つの固定相の少なくとも1つの、pH、pO
2
、pCO
2
および/またはサーモスタット制御を調整または調節することができる1つまたは複数の制御装置をさらに含む、本発明1182~1190のいずれかの製品または装置。
[本発明1192]
培地および/または1つもしくは複数の栄養素および/または1つもしくは複数の炭素源を含む容器への流体接続をさらに含み、それにより、任意で前記細胞がクロマトグラフィーのために固定相に固定化されているとき、該接続が、そのような培地、栄養素および/または炭素源を装置内の細胞に送ることができる、本発明1182~1191のいずれかの製品または装置。
[本発明1193]
構成要素および/または構成要素を含む容器の少なくとも1つが、装置から滅菌または無菌の方式で着脱可能である、本発明1182~1192のいずれかの製品または装置。
[本発明1194]
ストレプトアビジン結合ペプチドを含む、ウイルスベクター粒子。
[本発明1195]
ストレプトアビジン結合ペプチドが、エンベロープ糖タンパク質との融合タンパク質である、本発明1194のウイルスベクター粒子。
[本発明1196]
エンベロープ糖タンパク質が、VSV-Gである、本発明1195のウイルスベクター粒子。
[本発明1197]
ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、任意でレンチウイルスベクターである、本発明1194~1196のいずれかのウイルスベクター粒子。
[本発明1198]
ストレプトアビジン結合ペプチドが、
からなる群より選択される、本発明1194~1197のいずれかのウイルスベクター粒子。
[本発明1199]
ウイルスベクター粒子が、組換え抗原受容体、任意でキメラ抗原受容体をコードするゲノムを含む、本発明1194~1198のいずれかのウイルスベクター粒子。
[本発明1200]
本発明1194~1199のいずれかのウイルスベクター粒子;
ウイルスベクター粒子と可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位を含む試薬;および
任意で使用説明書
を含む、キット。
[本発明1201]
前記キットが、標的細胞の表面の選択マーカーと結合することができる選択物質をさらに含み、前記試薬が、該選択物質と可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位を含む、本発明1200のキット。
[本発明1202]
ウイルス粒子と会合しているオリゴマータンパク質試薬を含む、組成物。
[本発明1203]
前記オリゴマー試薬が、複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位が、少なくとも10、20、30、もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30、もしくは約40アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40、もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40、もしくは約50kDaの分子量を含み;かつ/または
オリゴマー試薬が、少なくとも100もしくは約100、および/または150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む、本発明1202の組成物。
[本発明1204]
前記オリゴマータンパク質試薬が、複数の多量体サブユニットから構成されるオリゴマーを含む、本発明1202または本発明1203の組成物。
[本発明1205]
多量体サブユニットが、四量体単位であり、個々に単量体単位を含む、本発明1204の組成物。
[本発明1206]
前記オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの多量体を含み、任意でこれらの複数の単位を含む、本発明1202~1205のいずれかの組成物。
[本発明1207]
ウイルス粒子が、異種核酸をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明1202~1206のいずれかの組成物。
[本発明1208]
前記試薬が、裸であり;
前記試薬が、結合物質を含まず、かつ/または結合物質とコンジュゲートも可逆的に結合もしておらず;
前記試薬が、接着分子、インテグリン、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカン、T細胞表面マーカー、CD3、CD28、CD4および/またはCD8の中から任意で選択される細胞表面マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、かつ/または該分子とコンジュゲートも結合もしておらず;
前記試薬が、哺乳動物細胞表面マーカー、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートも結合もしておらず;かつ/または
前記試薬が、ヘパリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはインテグリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA4結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA5結合ドメインを含まず;かつ/または
前記試薬が、ウイルス結合物質も細胞選択物質も含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートもカップリングも結合もしていない、
本発明1202~1207のいずれかの組成物。
[本発明1209]
前記試薬が、複数の1種類または複数種類の結合物質をさらに含み、かつ/またはそれと可逆的に結合している、本発明1202~1208のいずれかの組成物。
[本発明1210]
前記結合物質が、ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合するウイルス粒子結合物質、標的細胞の表面の分子に特異的に結合する選択物質、または標的細胞中に刺激シグナルを送達するために受容体に特異的に結合する受容体結合物質である、本発明1209の組成物。
[本発明1211]
前記結合物質が、抗体、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子またはその結合性フラグメントであるか、またはこれらを含む、本発明1209または本発明1210の組成物。
[本発明1212]
抗体フラグメントが、Fabフラグメント、Fvフラグメント、(Fab')
2
フラグメント、および二価単鎖Fv(scFv)フラグメントからなる群より選択されるフラグメントを含む、本発明1211の組成物。
[本発明1213]
前記試薬が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2を含むか、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、本発明1202~1212のいずれかの組成物。
[本発明1214]
前記試薬が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44
-Thr
45
-Ala
46
-Arg
47
もしくはIle
44
-Gly
45
-Ala
46
-Arg
47
を含むストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインを含み;または
該ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44
-Thr
45
-Ala
46
-Arg
47
を含む、
本発明1202~1213のいずれかの組成物。
[本発明1215]
前記試薬が、
(a)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44
-Thr
45
-Ala
46
-Arg
47
もしくはIle
44
-Gly
45
-Ala
46
-Arg
47
に対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、前記アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む、
本発明1202~1214のいずれかの組成物。
[本発明1216]
ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して117位、120位および/または121位に対応する位置に1つまたは複数のアミノ酸置換をさらに含む、本発明1214または1215の組成物。
[本発明1217]
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121もしくはPhe121の中から選択されるか;または
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
アミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121から選択される、
本発明1216の組成物。
[本発明1218]
前記試薬が、
(a)SEQ ID NO:27もしくは28に示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44
、Thr
45
、Ala
46
、Arg
47
、Glu
117
、Gly
120
およびTyr
121
に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む、
本発明1202~1217のいずれかの組成物。
[本発明1219]
ウイルスベクターのゲノムが、組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む、本発明1202~1218のいずれかの組成物。
[本発明1220]
組換えタンパク質が、抗原受容体である、本発明1219の組成物。
[本発明1221]
ウイルス粒子が、レトロウイルスである、本発明1202~1220のいずれかの組成物。
[本発明1222]
レトロウイルスが、レンチウイルスである、本発明1221の組成物。
[本発明1223]
レトロウイルスが、ガンマレトロウイルスである、本発明1221の組成物。
[本発明1224]
ウイルス粒子が、複製欠損性である、本発明1202~1223のいずれかの組成物。
[本発明1225]
前記試薬が、可溶性である、本発明1202~1224のいずれかの組成物。
【図面の簡単な説明】
【0128】
(
図1)標的細胞を含む複数の細胞をオリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテインのオリゴマー)試薬およびウイルス粒子とともにインキュベートする、またはそれらと接触させる工程を含む、提供される形質導入方法の概略図を提供する。
(
図2)提供される方法にしたがって可逆系を用いるウイルス形質導入方法の例示的態様の概略図を提供する。
図2Aは、第一および第二の作用物質に可逆的に結合した試薬を示す。第一の作用物質は、ウイルス粒子上の分子に特異的に結合することができる。第二の作用物質は、細胞上の分子に特異的に結合することができる。試薬は、それぞれが作用物質に可逆的に結合することができる、同じであることもできるし異なることもできる複数の結合部位Z1およびZ2を有する。第一の作用物質は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z1に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC1を含み、第二の作用物質は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z2に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC2を含む。いくつかの場合、C1とC2とは異なる。いくつかの場合、C1とC2とは同じまたは実質的に同じである。第一の作用物質は、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位V1を含む。第二の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B2を含む。いくつかの態様において、第一および/または第二の作用物質は選択物質であることができる。ここで、第一の作用物質はウイルス粒子の表面上の分子に結合しており、第二の作用物質は細胞の表面上の分子に結合している。
図2Bは、ウイルス粒子および作用物質に可逆的に結合した試薬を示す。作用物質は、細胞上の分子に特異的に結合することができる。試薬は、それぞれが可逆的に結合することができる、同じであることもできるし異なることもできる複数の結合部位Z1およびZ2を有する。ウイルス粒子は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z1に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC1を含む。作用物質は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z2に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC2を含む。いくつかの場合、C1とC2とは異なる。いくつかの場合、C1とC2とは同じまたは実質的に同じである。作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B2を含む。いくつかの態様において、作用物質は選択物質であることができる。
図2Bは、ウイルス粒子の表面上のウイルスエンベロープタンパク質中に結合パートナーを含むウイルス粒子と、細胞の表面上の分子に結合した作用物質とを示す。
図2Cは、支持体、たとえば固体支持体および/または固定相に結合し、第一および第二の作用物質に可逆的に結合した試薬を示す。第一の作用物質は、ウイルス粒子上の分子に特異的に結合することができる。第二の作用物質は、細胞上の分子に特異的に結合することができる。試薬は、それぞれが作用物質に可逆的に結合することができる、同じであることもできるし異なることもできる複数の結合部位Z1およびZ2を有する。第一の作用物質は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z1に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC1を含み、第二の作用物質は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z2に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC2を含む。いくつかの場合、C1とC2とは異なる。いくつかの場合、C1とC2とは同じまたは実質的に同じである。第一の作用物質は、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位V1を含む。第二の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B2を含む。いくつかの態様において、第一および/または第二の作用物質は選択物質であることができる。ここで、第一の作用物質はウイルス粒子の表面上の分子に結合しており、第二の作用物質は細胞の表面上の分子に結合している。
図2Dは、支持体、たとえば固体支持体および/または固定相に結合し、ウイルス粒子および作用物質に可逆的に結合した試薬を示す。作用物質は、細胞上の分子に特異的に結合することができる。試薬は、それぞれが可逆的に結合することができる、同じであることもできるし異なることもできる複数の結合部位Z1およびZ2を有する。ウイルス粒子は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z1に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC1を含む。作用物質は、試薬の少なくとも1つの結合部位Z2に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC2を含む。いくつかの場合、C1とC2とは異なる。いくつかの場合、C1とC2とは同じまたは実質的に同じである。作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B2を含む。いくつかの態様において、作用物質は選択物質であることができる。
図2Dは、ウイルス粒子の表面上のウイルスエンベロープタンパク質中の結合パートナーを含むウイルス粒子と、細胞の表面上の分子に結合した作用物質とを示す。
(
図3)
図3は、例示的な実施態様の概略図を提供する。
図3Aは、作用物質への可逆的結合のための複数の結合部位を有する試薬(またはその代表部分)の概略図を示す。この場合、試薬は2つの作用物質に可逆的に結合することができるものとして示されており、作用物質のそれぞれは、細胞上の分子に特異的に結合することができる。この試薬は、複数の結合部位Z1を含めて、複数の結合部位を有し、それぞれが作用物質に可逆的に結合することができる。示した概略図では、第1および第2の作用物質は、場合によって同じでもよく、それぞれが少なくとも1つの結合パートナーC1を含む。結合パートナーC1は結合部位Z1に可逆的に結合する。第1および第2の作用物質は、それぞれ、結合部位B2をも含み、結合部位B2は細胞の表面上の分子に特異的に結合することができ、該分子は、ある場合には、同じ細胞上にあり得る。ここでは、第1および第2の作用物質が、同じ細胞上の複数の分子に特異的に結合するように示されている。
図3Bは、第1および第2の作用物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を有する試薬の概略図を示し、第1および第2の作用物質は、それぞれ、第1および第2の細胞上の分子に特異的に結合することができる。この試薬は複数の結合部位Z1を有し、それぞれが作用物質に可逆的に結合することができる。第1および第2の作用物質は、場合によって同じでもよく、それぞれが結合パートナーC1を含み、結合パートナーC1は結合部位Z1に可逆的に結合する。第1および第2の作用物質はそれぞれ結合部位B2を含み、結合部位B2は細胞の表面上の分子に特異的に結合することができ、該分子は、場合によって、同じ細胞または異なる細胞上にあり得る。ここでは、第1の作用物質が第1の細胞の表面上の分子に結合しており、第2の作用物質が第2の細胞の表面上の分子に結合している。
図3Cは、第1および第2の作用物質に可逆的に結合することができる試薬を示し、第1および第2の作用物質は、それぞれ、第1および第2の細胞上の分子に特異的に結合することができる。この試薬は、複数の結合部位Z1およびZ2を有し、これらは同じでも異なってもよく、それぞれが作用物質の一方または両方に可逆的に結合することができる。第1の作用物質は、Z1に可逆的に結合する結合パートナーC1を含む;第2の作用物質は、Z2に可逆的に結合することができる結合パートナーC2を含む。ある場合には、C1およびC2は異なる。ある場合には、C1およびC2は同じまたは実質的に同じである。第1の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる結合部位B1を含み、第2の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B3を含む。結合部位B1およびB3は、場合によって、2つの異なる細胞表面分子、または単一分子上の異なるエピトープ、または異なる細胞の表面上の同じもしくは異なる分子に結合する。ここでは、第1の作用物質が第1の細胞の表面上の分子に、B1を介して、結合しているとして示されており、第2の作用物質は第2の細胞の表面上の分子に結合している。
図3Dは、選択物質のような、第1および第2の作用物質に可逆的に結合することができる試薬を示し、第1および第2の作用物質は、それぞれ、細胞上の分子に特異的に結合することができる。この試薬は、Z1およびZ2を含む複数の結合部位を有し、これらは同じでも異なってもよく、それぞれが作用物質に可逆的に結合することができる。第1の作用物質は、結合部位Z1に特異的に結合することができる結合パートナーC1を含み、第2の作用物質は、結合部位Z2に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合パートナーC2を含む。ある場合には、C1およびC2は異なる。ある場合には、C1およびC2は同じまたは実質的に同じである。第1の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる結合部位B1を含み、第2の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる結合部位B3を含む。いくつかの態様では、第1の作用物質および第2の作用物質は選択物質であり得る。結合部位B1およびB3は、1個の細胞の表面上の同じもしくは異なる分子(例えば、受容体)、1つの分子上の同じもしくは異なるエピトープ、または異なる細胞の表面上の同じもしくは異なる分子に結合することができる。ここでは、第1の作用物質は細胞の表面上の第1の分子に結合しており、第2の作用物質は同じ細胞の表面上の第2の分子に結合している。
図3Eは、第1および第2の作用物質に可逆的に結合された試薬を示し、これらの作用物質は、それぞれ、細胞上の分子に特異的に結合することができる。この試薬は、Z1およびZ2を含む複数の結合部位を有し、これらは同じでも異なってもよく、それぞれが作用物質に可逆的に結合することができる。第1の作用物質は、試薬のZ1に可逆的に結合することができる結合パートナーC1を含み、第2の作用物質は、Z2に可逆的に結合することができる結合パートナーC2を含む。ある場合には、C1およびC2は異なる。ある場合には、C1およびC2は同じまたは実質的に同じである。第1の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B2を含み、第2の作用物質は、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位B4を含む。いくつかの態様では、第1の作用物質および第2の作用物質は刺激物質であり得る。結合部位B2およびB4は、1個の細胞の表面上の同じもしくは異なる分子、1つの分子上の同じもしくは異なるエピトープ、または異なる細胞の表面上の同じもしくは異なる分子に結合することができる。ここでは、第1の作用物質は細胞の表面上の第1の分子に結合しており、第2の作用物質は同じ細胞の表面上の第2の分子に結合している。
(
図4)
図4A~4Eを含む
図4は、
図3A~3Eに示された例示的な実施態様の概略図を提供するが、ここでは、描かれた試薬が固定相のような支持体上に固定化されているとして示されている。
(
図5)
図5は、オリゴマー試薬を用いて刺激物質を多量体化し、得られた複合体を細胞とインキュベートして細胞にシグナルを送達し、続いて、その結合を逆転させる例示的な実施態様の概略図を示す。パネルAはオリゴマー試薬1を示し、この試薬1は支持体に結合されておらず、柔軟性であるとして示されている。ここではFabフラグメントとして示されて、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる刺激物質2が、該試薬と組み合わされる。この刺激物質は、刺激物質を多量体化する試薬上の結合部位(例えば、結合部位Z)に可逆的に結合することができる、結合パートナー(例えば、結合パートナーC)を含む。パネルBは、試薬上の結合部位に可逆的に結合している結合パートナーを示す。細胞3がこのシステムに加えられる。パネルCは、細胞3の表面上の分子4に特異的に結合している、多量体化された刺激物質(Fabフラグメント)を示す。パネルCに描かれた刺激物質は、刺激性の受容体結合物質(例えば、第1の受容体結合物質および/または第2の受容体結合物質)であり、これは、細胞上の分子への刺激物質の結合時に、該細胞においてシグナルを誘導またはモジュレートすることができる。パネルDに示されるように、競合試薬(例えば、ビオチン)のような物質5がこの組成物に添加され、これは、刺激物質上の結合パートナーに対してよりも試薬上の結合部位に対してより高い結合親和性を示し、それによって試薬1と刺激物質2との間の可逆的結合を破壊する物質であり得る。場合によっては、刺激物質、例えばFabフラグメントもまた、細胞3上の分子4との相互作用から解離させることができる。ある場合には、これは、細胞内のシグナル伝達を妨害し、減少させ、かつ/または終結させることができる。
(
図6)
図6は、固体支持体、または固定相を含む表面などの、支持体に取り付けられた可逆的システムの例示的な実施態様の概略図を提供する。パネルAは、試薬1を含む支持体6を示す。細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる、Fabフラグメントなどの作用物質2がこのシステムに添加される。作用物質2、例えばFabフラグメントは、試薬上の結合部位(例えば、結合部位Z)に可逆的に結合することができる結合パートナー(例えば、結合パートナーC)を含む。パネルBは、試薬上の結合部位に可逆的に結合している結合パートナーを示す。細胞3がこのシステムに添加される。パネルCは、細胞3の表面上の分子4に結合している作用物質2、例えばFabフラグメントを示す。いくつかの態様では、scFvが受容体結合物質または選択物質を構成する。いくつかの態様では、作用物質、例えばFabフラグメントは、受容体結合物質または選択物質であり得る。パネルCは、例示的な受容体結合物質(例えば、第1の受容体結合物質および/または第2の受容体結合物質)を示し、これは、細胞上の分子への該受容体結合物質、例えばFabフラグメント、の結合時に、該細胞においてシグナルを誘導またはモジュレートすることができる。競合試薬(例えば、ビオチン)のような物質5が添加され、これは、作用物質、例えばFabフラグメント上の結合パートナーに対してよりも試薬上の結合部位に対してより高い結合親和性を示し、それによって試薬と作用物質との間の結合を破壊する物質であり得る。パネルDは、作用物質2、例えばFabフラグメントと試薬との間の結合の破壊を示し、それによって、作用物質からの、したがって細胞からの試薬の解離が生じる。場合によっては、作用物質、例えばFabフラグメントも、細胞3上の分子4との相互作用から解離させることができる。ある場合には、これは、細胞内のシグナル伝達を妨害し、減少させ、かつ/または終結させることができる。
(
図7A)
図7A~7Cは、ストレプトアビジンムテインStrep-tactin(登録商標)被覆ビーズ上に可逆的に固定化されたαCD3およびαCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した後に、CD3+ Tレスポンダー細胞を増殖させた実験の結果を示す。
図7Aは、刺激された細胞のサイズ分布(前方散乱)を示すヒストグラムである。
(
図7B)
図7A~7Cは、ストレプトアビジンムテインStrep-tactin(登録商標)被覆ビーズ上に可逆的に固定化されたαCD3およびαCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した後に、CD3+ Tレスポンダー細胞を増殖させた実験の結果を示す。
図7Bは、
図7Bの最上部に示される細胞分裂ごとの細胞数に応じた増殖の程度を表すヒストグラムを示す(0は非分裂細胞を表し、5は少なくとも5回の分裂を繰り返した細胞を表す)。
(
図7C)
図7A~7Cは、ストレプトアビジンムテインStrep-tactin(登録商標)被覆ビーズ上に可逆的に固定化されたαCD3およびαCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した後に、CD3+ Tレスポンダー細胞を増殖させた実験の結果を示す。
図7Cは、4日間の刺激後の培養皿の写真を示す。
(
図8)
図8A~8Eは、可溶性試薬として作用する可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化された可逆的αCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した後に、CD3+ Tレスポンダー細胞を増殖させた実験の結果を示す。結果を
図8A~8Eに示した実験の場合には、300,000個のCD3+レスポンダーT細胞(Tress)を、2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、αCD3 FabフラグメントとαCD28 Fabフラグメント(両方とも重鎖にストレプトアビジン結合ペプチドとしてStrepタグを保有する)との組み合わせが固定化された、様々な量の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン調製物により刺激した。(「1×」は0.5μgのαCD3 Fabと0.5μgのαCD28 Fabで機能化された3μgのオリゴマーストレプトアビジンムテインに相当する;数字は「1×」の倍量を示す)。Tresp細胞は非刺激状態のままであったか、または陰性対照として用いたブランクのオリゴマーストレプトアビジンムテイン(Fabなし)により刺激した。Tresp細胞を、20U/mlのインターロイキン2(IL-2)を補充した1mlの細胞培養培地中に300,000個のCD3陰性自己支持細胞(30Gy照射したもの)と共に48ウェルプレートに2つ組で播種した。細胞を培地交換せずに37℃でインキュベートし、増殖を5日後にFACS分析でCFSE希釈により分析した(
図8B)。
図8Aは、培養5日後の細胞のサイズ分布を示す。ヒストグラムは生存CD3+細胞を示し、一方、
図8Cは、1mMのD-ビオチンで処理して洗浄した後に、刺激試薬から遊離した培養後の細胞を示す。単量体Fabフラグメントの解離と除去は、蛍光標識としてフィコエリトリンで標識したオリゴマーストレプトアビジンムテイン(ST-PE)を用いて再染色することにより分析され、代表的なヒストグラムが示される。
図8Dは、5日後の生存(トリパンブルー陰性)細胞の絶対数をノイバウエル計算盤(Neubauer counting chamber)でカウントし、それぞれの刺激条件に対してプロットしたグラフを示す。中央値細胞数が
図8Dに示される;エラーバーは標準偏差(SD)を示す。
図8Eは、5日間の刺激後の培養皿の写真を示す。
(
図9)
図9Aおよび9Bは、可溶性試薬として作用する2種類の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 FabフラグメントまたはαCD3/αCD28/αCD8のいずれかを用いてインビトロで刺激した、精製済みのCD4+およびCD8+ Tレスポンダー細胞(Tresp)の増殖の増大動態を示す。第1の種類のオリゴマーストレプトアビジンムテインは、実施例3で得られたオリゴマーストレプトアビジンムテインの画分(n≧3)であった(本明細書では、「従来の」または「より小さい」オリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格とも呼ばれ、
図9Aおよび9Bに頂点が下にある三角形の記号で示される);可溶性試薬として使用される、このオリゴマーストレプトアビジンムテインの第2の種類は、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインをビオチン化ヒト血清アルブミン(HSA)と反応させることによって得られたオリゴマーであった。このHSAベースの可溶性試薬は、本明細書では「より大きな」オリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格とも呼ばれる。
図9Aおよび9Bの実験では、培地を交換せずに増大させた。CD4+ Tレスポンダー細胞の結果を
図9Aに示し、CD8+ Tレスポンダー細胞の結果を
図9Bに示す。これに関連して、第1の作用物質、任意で第2および第3の作用物質に可逆的に結合させることによって機能化された、実験的に使用される可溶性試薬は、「Streptamer(登録商標)多量体」と呼ばれることに留意されたい。
(
図10)
図10Aおよび10Bは、可溶性試薬として作用する2種類の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインで可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した、精製済みのCD4+およびCD8+ Tレスポンダー細胞(Tresp)の増殖の増大動態を示す。第1の種類のオリゴマーStrep-tactin(登録商標)は、実施例3で得られたオリゴマーストレプトアビジンムテインの画分(n≧3)であった(本明細書では、「従来のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格」とも呼ばれ、
図10Aおよび10Bに頂点が下にある三角形の記号で示される);可溶性試薬として使用される、このオリゴマーストレプトアビジンムテインの第2の種類は、HSAベースの可溶性試薬、上述の「大きな骨格」であった。
図10Aおよび10Bの実験では、培地を交換して増大させた。CD4+ Tレスポンダー細胞の結果を
図10Aに示し、CD8+ Tレスポンダー細胞の結果を
図10Bに示す。
(
図11)
図11Aおよび11Bは、精製済みのCD4+およびCD8+ Tレスポンダー細胞の増殖の増大動態についての
図9A~Bおよび10A~Bで得られた結果からの結合データを示し、
図11AはCD4+ T細胞の結果を示し、
図11BはCD8+ T細胞の結果を示す。直線は、3日目に培地交換を行った培養に使用され、一方点線は、3日目に培地交換を行わないで得られた増大の程度の値を示す。
図11Aおよび11Bに示されるデータは、投入細胞数に対して正規化される。オリゴマーストレプトアビジンムテイン(n≧3)で刺激したTresp、市販の抗CD3/抗CD28ビーズ(陽性対照)で刺激したTresp、および非刺激T細胞(陰性対照)についてのデータのみが示されており、「大きな骨格」を有する試薬に関するデータは示されていない。
(
図12A)
図12A~12Cは、実施例3に記載される可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(n≧3)に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロでポリクローナルに刺激した、CD3+セントラルメモリーT細胞(Tcm) (CD3+CD62L+CD45RA-Tcm)の増大動態および表現型を示す。
図12Aおよび12Bに示されるグラフは、時点ごとに採取された細胞の数に応じた増殖の程度を表し、
図12AはIL-2のみを補充した培地での増殖を示す。
(
図12B)
図12A~12Cは、実施例3に記載される可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(n≧3)に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロでポリクローナルに刺激した、CD3+セントラルメモリーT細胞(Tcm) (CD3+CD62L+CD45RA-Tcm)の増大動態および表現型を示す。
図12A~および12Bに示されるグラフは、時点ごとに採取された細胞の数に応じた増殖の程度を表し、
図12BはIL-2とIL-15を補充した培地での増殖を示す。
(
図12C)
図12A~12Cは、実施例3に記載される可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(n≧3)に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロでポリクローナルに刺激した、CD3+セントラルメモリーT細胞(Tcm) (CD3+CD62L+CD45RA-Tcm)の増大動態および表現型を示す。
図12Cは、これらの異なるサイトカイン環境で14日間培養した後のCD62LおよびCD127表面発現のフローサイトメトリー分析を示す。
(
図13A)
図13Aおよび13Bは、可溶性試薬として作用する2種類の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した、精製済みのCD8+ Tレスポンダー細胞の増大の収量および表現型を示す。第1の種類のオリゴマーストレプトアビジンムテインは、実施例3で得られたオリゴマーストレプトアビジンムテインの画分(従来の骨格)であり、可溶性試薬として使用される、このオリゴマーストレプトアビジンムテインの第2の種類は、本明細書では「大きな」骨格と呼ばれる上記の可溶性オリゴマーであった。これらの実験では、従来のオリゴマーストレプトアビジンムテインの画分(n≧3)はまた、単一のFabフラグメント(
図13Aおよび
図13Bでは3番目のバー)により、またはαCD3 FabフラグメントとαCD28 Fabフラグメントとの組み合わせにより機能化された試薬としても用いられた。αCD3/αCD28 Fabフラグメントによる組み合わせ刺激に加えて、追加のαCD8 Fabフラグメント(IBA GmbH (Goettingen, ドイツ)から市販される)も固定化されたが、それは、特定のT細胞亜集団を選択的に刺激することが可能かどうかを試験するためであった。
図13Aは、6日目に採取された細胞の数に応じた増殖の程度を表す棒グラフを示し、陰性対照(非刺激の精製CD8+ Tレスポンダー細胞)と比較され、陽性対照(市販の抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されたビーズ)で刺激した精製CD8+ Tレスポンダー細胞)に対して正規化された。
(
図13B)
図13Aおよび13Bは、可溶性試薬として作用する2種類の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した、精製済みのCD8+ Tレスポンダー細胞の増大の収量および表現型を示す。第1の種類のオリゴマーストレプトアビジンムテインは、実施例3で得られたオリゴマーストレプトアビジンムテインの画分(従来の骨格)であり、可溶性試薬として使用される、このオリゴマーストレプトアビジンムテインの第2の種類は、本明細書では「大きな」骨格と呼ばれる上記の可溶性オリゴマーであった。これらの実験では、従来のオリゴマーストレプトアビジンムテインの画分(n≧3)はまた、単一のFabフラグメント(
図13Aおよび
図13Bでは3番目のバー)により、またはαCD3 FabフラグメントとαCD28 Fabフラグメントとの組み合わせにより機能化された試薬としても用いられた。αCD3/αCD28 Fabフラグメントによる組み合わせ刺激に加えて、追加のαCD8 Fabフラグメント(IBA GmbH (Goettingen, ドイツ)から市販される)も固定化されたが、それは、特定のT細胞亜集団を選択的に刺激することが可能かどうかを試験するためであった。
図13Bは、細胞培養後のCD8およびT細胞表面分子CD45RO (T細胞の増殖および活性化の指標である)の表面発現のフローサイトメトリー分析を示す。一元配置ANOVAを用いて種々の刺激条件を比較したところ、有意差(n.s.)は検出されなかった。
(
図14A)
図14Aおよび14Bは、単一のFabフラグメントにより、またはFabフラグメントの組み合わせ(上記の通り)により機能化された可溶性試薬として作用する可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した、精製済みのCD8+ Tレスポンダー細胞の増大についての収量および表現型を示す。これらの実験では、CD8+ Tレスポンダー細胞を、任意で上記のαCD8 Fabフラグメントと共に、様々な量のαCD3およびαCD28 Fabフラグメントにより機能化された可溶性試薬(実施例3の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(1mg/ml))で刺激した。用語「1×」とは、0.5μgのαCD3 Fabフラグメント単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン1.5μgおよび0.5μgのαCD28 Fab単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン1.5μgに相当するか、または0.5μgのαCD3 Fabフラグメントと0.5μgのαCD28 Fabを負荷したオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物3μl、もしくは0.5μgのstrep-tag付加αCD3、0.5μgのstrep-tag付加αCD8および0.5μgのstrep-tag付加αCD28 Fabを負荷したオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物4.5μlに相当する。したがって、用語「2×」は、1μgのαCD3 Fabフラグメント単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン3.0μgおよび1μgのαCD28 Fab単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン3.0μgに相当し、固定化されたαCD3 Fabフラグメントの量の2倍が使用されたことを意味する。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、市販の抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されたビーズ)で刺激した精製CD8+ Tレスポンダー細胞を陽性対照とした。
図14Aは、5日目に採取された細胞の数に応じた増殖の程度を表す棒グラフを示し、陰性対照と比較され、陽性対照に対して正規化された。
(
図14B)
図14Aおよび14Bは、単一のFabフラグメントにより、またはFabフラグメントの組み合わせ(上記の通り)により機能化された可溶性試薬として作用する可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した、精製済みのCD8+ Tレスポンダー細胞の増大についての収量および表現型を示す。これらの実験では、CD8+ Tレスポンダー細胞を、任意で上記のαCD8 Fabフラグメントと共に、様々な量のαCD3およびαCD28 Fabフラグメントにより機能化された可溶性試薬(実施例3の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(1mg/ml))で刺激した。用語「1×」とは、0.5μgのαCD3 Fabフラグメント単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン1.5μgおよび0.5μgのαCD28 Fab単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン1.5μgに相当するか、または0.5μgのαCD3 Fabフラグメントと0.5μgのαCD28 Fabを負荷したオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物3μl、もしくは0.5μgのstrep-tag付加αCD3、0.5μgのstrep-tag付加αCD8および0.5μgのstrep-tag付加αCD28 Fabを負荷したオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物4.5μlに相当する。したがって、用語「2×」は、1μgのαCD3 Fabフラグメント単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン3.0μgおよび1μgのαCD28 Fab単独で機能化されたオリゴマーストレプトアビジンムテイン3.0μgに相当し、固定化されたαCD3 Fabフラグメントの量の2倍が使用されたことを意味する。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、市販の抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されたビーズ)で刺激した精製CD8+ Tレスポンダー細胞を陽性対照とした。
図14Bは、細胞培養後のCD8およびCD45ROの表面発現のFACS分析を示す。
(
図15)
図15Aおよび15Bは、可溶性試薬として用いられる実施例3の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した精製CD3+ Tレスポンダー細胞の増大を示す。1つの実験では、αCD3/αCD28 Fabフラグメントに加えて、IBA GmbH (Goettingen, ドイツ)から市販されるαCD8 Fabフラグメント(カタログ番号6-8000-203)もストレプトアビジンムテインの可溶性オリゴマー上に固定化されたが、それは、αCD8 Fabフラグメントをも可逆的に固定化してある試薬を用いて、バルクCD3+培養物内のCD8+ T細胞亜集団をインビトロで選択的に刺激することが可能かどうかを試験するためであった。より詳細には、0.5μgのαCD3と0.5μgのαCD28 Fabとの組み合わせを負荷したオリゴマーストレプトアビジンムテイン(1mg/ml)の調製物3μlで500,000個の精製CD3+レスポンダーT細胞(Tresp)を刺激した。代替的アプローチとして、4.5μlのオリゴマーストレプトアビジンムテインに上記の0.5μgのαCD3、0.5μgのαCD8 Fabおよび0.5μgのαCD28 Fabを負荷した。非刺激Tresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されたビーズ)で刺激したTrespを陽性対照として用いた。
図15Aは、αCD8 Fabフラグメントを含む試薬が増大したCD3+ 細胞を最も多く生じさせたことを示す。
図15Bは、CD8+ T細胞の量は、αCD8 Fabフラグメントを用いて増大させた細胞組成物において最も多いことを示す。
(
図16A)
図16Aおよび16Bは、αCD3抗体OKT3で標識した、またはStrep-tactin(登録商標)により多量体化されたOKT3のFabフラグメント(本明細書ではFab多量体とも呼ばれる)で標識した、Jurkat細胞における示差的細胞内カルシウム動員の結果を示す。
図16A:Jurkat細胞にカルシウム感受性色素Indo-1-AMを負荷し、αCD3 mAb (黒四角)の注入、または事前のD-ビオチンによる分断ありもしくは分断なし(それぞれ、濃い灰色の三角および明るい灰色の円)のαCD3 OKT3 Fab多量体(親細胞株OKT3由来)の注入によってカルシウム放出を引き起こし、PBSの注入(逆白三角)と比較した。イオノマイシンの適用を陽性対照として用いた。細胞内Ca
2+濃度の時間分解変化を、FL6/FL7比の変化に基づいてフローサイトメトリーによってモニターした。
(
図16B)
図16Aおよび16Bは、αCD3抗体OKT3で標識した、またはStrep-tactin(登録商標)により多量体化されたOKT3のFabフラグメント(本明細書ではFab多量体とも呼ばれる)で標識した、Jurkat細胞における示差的細胞内カルシウム動員の結果を示す。
図16B:Indo-1-AMで標識したJurkat細胞を、実施例11に記載されるように、異なるαCD3刺激により活性化し(OKT3:上のグラフ、αCD3 Fab多量体:中央のグラフ)、続いてαCD3 Fab多量体シグナル伝達のその後(t=140s)のD-ビオチンに媒介される妨害を行った。PBSの注入(下のグラフ)およびイオノマイシンを、陰性対照または陽性対照として用いた。データは3つの異なる実験を代表する。
(
図17)
図17は、抗CD3 OKT3 Fab多量体による細胞の可逆的染色の結果を示す。新鮮分離したPBMCを、モノクローナル抗体(左のドットプロット、Fab多量体の親クローン)またはコグネイトPE標識Fab多量体のいずれかで染色し、D-ビオチンによる処理前(左から2番目の列)または処理後(中央の列)に分析した。その後、残存するFab単量体を、新鮮なPE標識Strep-Tactin(登録商標)を用いて後続の洗浄工程後に検出した(右から2番目の列)。可逆的に染色した細胞の二次Fab多量体染色を対照として用いた(右の列)。生存(PI陰性)細胞のみが示される。ドットプロット内の数字は、ゲート内の細胞のパーセンテージを示す。
(
図18)
図18は、蛍光標識としてフィコエリトリンで標識したStrep-Tactin(登録商標)により多量体化された抗CD28 Fabフラグメントの可逆的結合による細胞の分離を示す。CD28+細胞は、国際特許出願WO2013/011011に記載されるように、新鮮分離したPMBCからFab多量体磁気細胞選別によって選別/分離された。選別前に、細胞を、コグネイト蛍光aCD28多量体(左のドットプロット)で、または免疫グロブリンκ軽鎖に対する抗体(左から2番目のドットプロット、αIgκmAb)で対照染色した。選別後、細胞をD-ビオチンで処理し、次いで洗浄して磁性ビーズとFab単量体を除去した。続いて、潜在的に残っているFab単量体を検出するために、遊離したCD28+細胞を、CD28 Fab多量体(右から2番目のドットプロット)で、またはαIgκmAb(右のドットプロット)で(再)染色した。生存(PI陰性)CD3+細胞のみが示される。ドットプロット内の数字は、ゲート内の細胞のパーセンテージを示す。
(
図19)
図19Aおよび19Bは、実施例3に記載される可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(n≧3)に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した精製済みのCD4+およびCD8+ Tレスポンダー細胞の活性化後のT細胞の早期クラスター形成を示す。
図19AはCD4+ T細胞の結果を示し、
図19BはCD8+ T細胞の結果を示す。可溶性の多量体形成試薬(オリゴマーのストレプトアビジンムテイン)で刺激したTresp、市販の抗CD3/抗CD28ビーズで刺激したTresp(陽性対照)、および非刺激T細胞(陰性対照)のデータが示される。
(
図20)
図20A~Fは、ペプチド:MHC分子複合体(細胞への一次活性化シグナルを提供する第1の作用物質として作用する)およびαCD28 Fabフラグメント(細胞の表面上の補助分子に結合する第2の作用物質として作用する)の両方を用いてインビトロで刺激した精製CD3+CD62L+CD45RA- Tcmレスポンダー細胞のバルク集団からの選択的抗原特異的(Ag特異的)増大の動態を示す;非刺激T細胞(陰性対照)が示される。抗原特異的ペプチドとMHC分子との複合体およびαCD28 Fabフラグメントの両方を、実施例3に記載したのと同じ可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン(n≧3)に可逆的に固定化した。
図20Aで抗原特異的増大に使用したペプチドは、サイトメガロウイルス(CMV)に特異的であるHLA-C7/IE-1エピトープを表す、HLA-C702 MHC分子によって制限された前初期1タンパク質のアミノ酸309~317のペプチド:
であった(Ameres et al, PLOS Pathogens, May 2013, vol. 9, issue 5, e1003383に記載される)。該ペプチドを提示するMHC I分子は、その重鎖のC末端に、IBA GmbH (Goettingen, ドイツ)から「Twin-Strep-tag (登録商標)」として市販されているストレプトアビジン結合ペプチド:
を保有する。
図20Aは、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化された細胞に一次活性化シグナルを提供する第1の作用物質として、このHLA-C7/IE-1エピトープに特異的なペプチド:MHC-I複合体を用いて増殖させた、Ag特異的細胞の画分についての例示的なフローサイトメトリー分析を示す。
図20B~
図20Eのグラフは、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに可逆的に固定化された細胞に一次活性化シグナルを提供する第一の作用物質として、抗原特異的ペプチドとMHC I分子との異なる複合体を用いて、
図20Aと同様に時点ごとに採取された、特異的ペプチド:MHC I多量体陽性細胞の数に応じたさらなるAg特異性の増大動態を示す。より詳細には、
図20Bは、CMVのpp65エピトープ(HLA-A2402によって制限されたアミノ酸341~350:
)に特異的なペプチド:MHC-I複合体を用いて増大させたAg特異的細胞の増大を示す;
図20Cは、CMVのpp65エピトープ(HLA-B702によって制限されたアミノ酸265~274:
)に特異的な別のペプチド:MHC-I複合体を用いて増殖させたAg特異的細胞の増大を示す;
図20Dは、アデノウイルスのヘキソン(hexon)5エピトープ(HLA-B702によって制限されたアミノ酸114~124:
)に特異的なペプチド:MHC-I複合体を用いて増殖させたAg特異的細胞の増大を示す;
図20Eは、CMVのHLA-B7/IE-1309~317エピトープに特異的なペプチド:MHC-I複合体を用いて増殖させたAg特異的細胞の増大を示す(例示的なFACSデータ、上記
図20A参照)。Twin Strep(登録商標)-Tagを有するすべてのペプチド:MHC分子は、IbaGmbHから市販されている。これに関連して、C末端に「Twin-Strep-tag(登録商標)」を有するHLA-A
*2402、HLA-B
*0702およびHLA-C
*0702分子のアミノ酸配列は、添付の配列表にSEQ ID NO: 42、43および44として示され、一方β2ミクログロブリン(HLAコード化分子を意味するα鎖と共に、それぞれのMHC I分子を形成する)のアミノ酸配列は、添付の配列表にSEQ ID NO: 45として示される。また、
図20Fは、
図20DからのHLA-B7/ヘキソン5 114-124刺激/増大細胞についての14日間培養後のCD62LおよびCD127表面発現の例示的なフローサイトメトリー分析を示す。
(
図21)
図21は、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインに第1および第2の作用物質として可逆的に固定化された、a)抗原特異的ペプチドMHC I複合体およびb)αCD28 Fabフラグメントを用いてインビトロで刺激した、精製CD3+CD62L+CD45RA-Tcmレスポンダー細胞からの選択的Ag特異的増大の動態を示す。この目的のために、500,000個のCD3+CD62L+CD45RA-レスポンダーTcm細胞(Tresp)を、ストレプトアビジン結合ペプチドを備えた0.5μgのペプチド:MHCクラスI複合体(この特定のペプチドは、HLA-B0702によって制限されたアデノウイルスのヘキソン5タンパク質のアミノ酸114~124:
を表す;上記参照)および0.5μgのαCD28 Fabで機能化されたStreptactin多量体形成試薬の調製物3μlを用いて、Ag特異的に刺激した。代替刺激として、Streptactin多量体形成試薬の調製物4.5μlに0.5μgのこのペプチド:MHCクラスI複合体、0.5μgのαCD8 Fabおよび0.5μgのαCD28 Fabを負荷した。比較のために、0.5μgのαCD3 Fabと0.5μgのαCD28 Fabとの組み合わせを負荷したStreptactin多量体形成試薬(1mg/ml)の調製物3μlを用いて、ポリクローナル刺激を行った。再び上記の代替刺激条件として、0.5μgのαCD3 Fab、0.5μgのαCD8 Fabおよび0.5μgのαCD28 Fabを負荷したStreptactin多量体の調製物4.5μlを使用した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズでポリクローナル刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、48ウェルプレートで、30U/mlのIL-2および5ng/mlのIL-15を補充した細胞培養培地1ml中に播種した。細胞を、3日ごとに培地交換して37℃でインキュベートし、細胞数を7日および14日後に分析した。
図21に示す写真は、アデノウイルスのHLA-B7/ヘキソン5エピトープについて例示されるAg特異的刺激の5日目のクラスター形成の程度を表す。
(
図22)
図22Aおよび22Bは、αCD19キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変された形質導入Jurkat細胞の、可溶性多量体形成試薬として実施例3のオリゴマーStrep-tactin(登録商標)を用いて刺激された、細胞内シグナル伝達カスケードの活性化を示す。CARの特異性は、典型的には、CD19などの標的/腫瘍関連抗原に特異的に結合して、それをT細胞特異的シグナル伝達にリンクさせる、モノクローナル抗体(mAb)の抗原結合領域からアセンブルされたscFv領域に由来する(Hudecek et al, Clin Cancer Res. 2013 June 15; 19(12): 3153-3164に記載される)。この実験では、Jurkat細胞に一次活性化シグナルを提供する第1の作用物質として、αCD19 CARの天然リガンドを含むCD19の細胞外ドメイン(ECD)、ならびにαCD19-CAR内のIgG4スペーサーを認識するポリクローナルαIgG F(ab)2フラグメント(ロバ抗ヒトF(ab)2はJackson Immuno Research社から市販される)も使用した。可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインへの可逆的固定化は、CD19のECDのC末端に融合されたストレプトアビジン結合ペプチド:
によって、またはαIgGのビオチン化(Fab)2フラグメントによって提供された(ストレプトアビジンムテイン「m2」は低い親和性でビオチンに結合するので、この結合は可逆的であり、例えば、過剰の遊離ビオチンの添加によって置き換えられる)。
図22Aの対照実験では、300,000個のCD3+ Jurkatレスポンダー細胞(Jresp)を、αCD3 FabおよびαCD28 Fabで機能化されたオリゴマーStreptactin (1mg/ml)の調製物の混合物の様々な量を用いて刺激した(「×1」は、0.5μgのaCD3 Fabおよび0.5μgのaCD28 Fabで機能化された3μgの多量体化Streptactinに相当する - ポリクローナルStreptamer多量体)。
図22Bの実験では、オリゴマーStreptactinの調製物3μlがCD19の細胞外ドメイン(ECD) 0.5μg(×1)もしくは1μg(×2)で機能化された;または、オリゴマーStreptactinの調製物3μlがIgG4スペーサーを認識するαIgG 0.5μg(×1)もしくは1μg(×2)を負荷された(これらは両方ともCAR特異的Streptamer(登録商標)多量体である)。抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3およびαCD28モノクローナル抗体を不可逆的に固定化したビーズ)またはPMAおよびイオノマイシンで刺激したJrespを陽性対照として用いた。Jresp細胞を、1.5mlエッペンドルフチューブで30U/mlのIL-2を補充した細胞培養培地200μl中に播種した。細胞を37℃でインキュベートし、氷上に置き、0分から20分の刺激後に溶解させた。リン酸化ERKの検出は、活性MAPKシグナル伝達を示し、ハウスキーパーβアクチンの染色は、条件および時点ごとの総タンパク質の等量のローディングを示す。
(
図23)(1)抗CD3/抗CD28磁性ビーズおよび硫酸プロタミンアジュバント、(2)抗CD3/抗CD28磁性ビーズおよび可逆的に結合した抗CD8 Fabを有するオリゴマータンパク質試薬、または(3)可逆的に結合した抗CD3/抗CD28 Fabを有するオリゴマータンパク質試薬のみの存在下、ウイルスベクターで形質導入された生きたT(CD3+ゲーティングされた)上のCD4+(y軸)およびCAR(x軸)の表面マーカー発現のドットプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0129】
詳細な説明
本明細書に提供されるものは、標的細胞、たとえば細胞組成物をオリゴマータンパク質試薬およびウイルスベクター粒子と接触させる、たとえばそれらとともに培養またはインキュベートすることによって細胞の形質導入を行う方法である。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、それに可逆的に結合した複数の結合物質、たとえばウイルス結合物質または選択物質を有する、多量体形成試薬である。いくつかの態様において、方法は、多量体形成試薬が、標的細胞およびウイルス粒子の存在下で、多量体形成試薬が標的細胞および/またはウイルス粒子の表面上の1つまたは複数の分子に結合する条件下でインキュベートされ、それにより、ウイルスベクターで形質導入された複数の標的細胞を含む組成物を生成するところの可逆試薬系に関する。同じく提供されるものは、ウイルスベクターおよびオリゴマー試薬を含む組成物および製品、たとえばキットならびに提供される方法と関連して使用するための装置およびシステムである。いくつかの態様において、組成物およびキットは、提供される開示の方法および用途で使用されることができる。
【0130】
本出願中で参照される、特許文献、科学技術文献およびデータベースを含むすべての刊行物は、各個々の刊行物が個別に参照により本明細書に組み入れられる場合と同じ程度に、あらゆる趣旨で参照により全体として本明細書に組み入れられる。本明細書中で述べられた定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願および他の刊行物中で述べられた定義と反する、または他のやり方で合致しないならば、本明細書中で述べられた定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先する。たとえば、PCT国際出願PCT/EP2015/058339の内容が参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0131】
本明細書の中で使用される区分見出しは、文書構成のためのものに過ぎず、記載される主題を限定するものと解釈されてはならない。
【0132】
I. 細胞形質導入の方法の概要
本明細書に提供されるものは、細胞組成物をオリゴマータンパク質試薬およびウイルスベクター粒子と接触させる、たとえばそれらとともに培養またはインキュベートすることによって細胞の形質導入を行う方法である。いくつかの態様において、細胞は、オリゴマータンパク質試薬およびウイルス粒子と同時または別々に接触させられる、またはそれらとともにインキュベートされる。いくつかの態様において、ウイルス粒子およびオリゴマー試薬は混合され、混合物が細胞と接触させられる、またはそれとともにインキュベートされる。いくつかの態様において、提供される方法は、従来の形質導入アジュバント(たとえばRetronectin(登録商標)またはポリカチオン)を使用する方法と比較して、より効率的な細胞の形質導入を提供する。
【0133】
いくつかの態様において、提供される方法は、ストレプトアビジンのムテイン、たとえば、オリゴマー形態のストレプトアビジンムテインがウイルス形質導入を促進するという知見に基づく。いくつかの局面において、結果は、オリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬が、他の活性化試薬を用いる方法と比較して、または他のアジュバントを用いて実施される形質導入と比較して、より高い細胞形質導入効率を一貫してもたらすということを示した。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジン)は、ウイルス粒子と会合、たとえば結合または相互作用することができる。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬(たとえばオリゴマーストレプトアビジンムテイン)は正味正電荷を有する。
【0134】
いくつかの局面において、増大した形質導入効率は、細胞またはウイルス表面上の分子に結合するための別の結合部分または作用物質とコンジュゲートまたは会合していない、またはコンジュゲートまたは会合する必要がない、裸のオリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテイン)試薬によって達成される。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテイン)試薬は、ウイルス結合物質を含まない、またはそれにコンジュゲートしていない。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテイン)試薬は、細胞、たとえば免疫細胞の表面上の分子に特異的な結合物質、たとえば選択物質または刺激物質を含まない、またはそれにコンジュゲートしていない。このような結合物質は、形質導入効率を高めるために必要ではないかもしれないが、いくつかの局面において、オリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテイン)試薬は、結合物質、たとえばウイルス結合物質、選択物質または刺激物質を含むことができ、たとえばこれらにコンジュゲート(たとえば可逆的にコンジュゲート)していることができることが理解されよう。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬に結合した結合物質、たとえばウイルス結合物質または選択物質の添加は、細胞の形質導入を増強、調節および/または選択的に標的とすることができる。
【0135】
いくつかの態様において、方法は、ウイルス粒子の表面および/または1つまたは複数の標的細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる、それに結合した1つまたは複数の作用物質、たとえば第一の作用物質、第二の作用物質などを有する多量体形成試薬であることができる試薬を用いる。いくつかの態様において、多量体形成試薬は、ウイルス粒子の表面上の分子、たとえばウイルスエンベロープ上に存在する、またはウイルスエンベロープの一部として存在する分子に結合する、それに結合したウイルス結合物質を有する。いくつかの態様において、したがって、試薬、たとえば多量体形成試薬は、ウイルス粒子結合物質を介して試薬に結合し得る、それに結合したウイルス粒子の1つまたは複数を有し得る。いくつかの態様において、多量体形成試薬は、少なくとも複数の標的細胞の1つまたは複数によって発現される、細胞の表面上の分子、たとえば選択マーカーに結合する、それに結合した選択物質を有する。いくつかの局面において、作用物質、たとえば第一の作用物質、第二の作用物質などは、多量体形成試薬に可逆的または不可逆的に結合することができる。
【0136】
したがって、多量体形成試薬は一般に、いくつかの場合、複数の物質が可逆的に結合して、第一の作用物質、第二の作用物質および/または他の作用物質を十分な密度で細胞の集団に提示することができる、1つよりも多い結合部位、たとえばZ1を提供する。いくつかの態様において、多量体形成試薬は、第一の物質の可逆性結合のための少なくとも1つの結合部位Z、たとえばZ1を含み、第一の作用物質もまた、少なくとも1つの結合パートナーC、たとえばC1を含み、結合パートナーC、たとえばC1もまた、多量体形成試薬の結合部位Z、たとえばZ1に可逆的に結合することができる。いくつかの局面において、そのような多量体形成試薬は、複数の結合部位、たとえばZ1を有することができ、たとえばストレプトアビジンムテイン(ホモ四量体である)は、その天然の状態で、4つのそのような結合部位、たとえばZ1を有し、さらにオリゴマー化されることもできることが留意されよう。いくつかの場合、試薬は、結合パートナー、たとえばC1の可逆性結合のための唯一の結合部位、たとえばZ1を有し得る。そのような例が多量体カルモジュリンである。カルモジュリンは、そのようなものとして、カルモジュリン結合ペプチドのための唯一の結合部位を有する。しかし、カルモジュリンは、ビオチン化されたのち、ストレプトアビジンオリゴマーと反応して(以下をも参照)、それにより、複数のカルモジュリン分子が「足場」上で高い密度で提示されて、それにより、多量体カルモジュリンを提供する多量体形成試薬を提供することができる。
【0137】
したがって、第一の作用物質は、多量体形成試薬と接触したとき、またはそれとともにインキュベートされたとき、結合パートナーC、たとえばC1と結合部位Z、たとえばZ1との間に形成される可逆性結合を介して多量体形成試薬に可逆的に結合することができる。加えて、第二の作用物質は、結合パートナーC、たとえばC2を含むことができ、結合パートナーC2は、多量体形成試薬の結合部位Z、たとえばZ2に可逆的に結合することができる。いくつかの態様において、第二の作用物質は、多量体形成試薬と接触したとき、またはそれとともにインキュベートされたとき、結合パートナーC、たとえばC1と結合部位Z、たとえばZ2との間に形成される可逆性結合を介して多量体形成試薬に可逆的に結合する。いくつかの場合、C1とC2とは、同じまたは実質的に同じであることもできるし、および/または同じまたは実質的に同じ部分を含むこともできる。いくつかの場合、Z1とZ2とは、同じまたは実質的に同じであることもできるし、および/または同じまたは実質的に同じ部分を含むこともできる。
【0138】
いくつかの態様において、多量体形成試薬と作用物質、たとえばウイルス結合物質、選択物質または記載される他の作用物質との間の結合の解離または破壊は、競合試薬または物質の存在下でのインキュベーションによって逆転させる、または破壊することができる。いくつかの態様において、結合パートナーC1およびC2として、多量体形成物質の同じ結合部位に結合する部分を使用することは、同じ競合試薬(第一の結合パートナーC1および第二の結合パートナーC2の)またはその類似体を使用して、結合を破壊し、場合によっては終了させて、多量体形成試薬から標的細胞(たとえばT細胞)の集団を解放し、ひいては、特定の結合物質に依存して、標的細胞(たとえばT細胞)の集団の形質導入、選択、刺激もしくは活性化および/または増殖を終了させることができるという利点を有する。
【0139】
いくつかの局面において、結合物質、たとえばウイルス結合物質、選択物質または記載された他の作用物質は抗体または抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、抗原、たとえば細胞表面受容体分子に対する抗体分子の結合親和性は通常、10-7M~10-13MのKDの親和性範囲である。したがって、従来のモノクローナル抗体を作用物質(第一または第二の受容体結合物質、たとえば刺激物質または選択物質)として使用することができる。いくつかの態様においては、より強い結合につながる任意の不要なアビディティ効果を回避するために、モノクローナル抗体は、その一価抗体フラグメント、たとえばFabフラグメントまたは単鎖Fvフラグメントの形態で使用することもできる。
【0140】
結合パートナーCを含むための結合物質(たとえば第一の作用物質、第二の作用物質など、たとえばウイルス結合物質、選択物質または受容体結合物質、たとえば刺激物質)を産生するいくつかの場合、結合パートナーC、たとえばC1またはC2は、作用物質(たとえば抗体フラグメント)の組み換え産生に使用されるそれぞれの発現ベクトルによって提供されることができ、結合パートナーC、たとえばC1またはC2がN末端またはC末端のいずれかで作用物質との融合ペプチドの一部になる。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントである作用物質に関連して、結合パートナーC、たとえばC1またはC2は、軽鎖または重鎖のC末端に存在することができる。また、組み換えタンパク質、たとえば抗体分子の可変ドメインをクローニングし、それぞれのタンパク質、たとえば抗体フラグメントを組み換え産生するこの方法は当業者に周知である。たとえばSkerra, A. (1994)を参照すること。いくつかの態様において、所与の標的、たとえばCD3またはCD28または記載されたような他の補助または刺激物質分子に対して抗体様性質を有する人工結合分子から、たとえば周知の進化的方法、たとえばファージディスプレイ(たとえば、Kay, B.K. et al. (1996) Phage Display of Peptides and Proteins―A Laboratory Manual, 1st Ed., Academic Press, New York NY;Lowman, H.B. (1997) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26, 401-424またはRodi, D.J., and Makowski, L. (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10, 87-93で考察されている)、リボソームディスプレイ(Amstutz, P. et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12, 400-405で考察されている)またはWilson, D.S. et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 3750-3755に報告されているようなmRNAディスプレイにより、抗体分子を生成することができる。
【0141】
いくつかの態様において、提供される試薬およびそのような試薬を使用する方法は、養子免疫治療における使用に望ましいものを含む、免疫細胞および/またはその特定の集団および/または亜集団の増大した形質導入を生じさせる特徴を含む。いくつかの態様において、方法は、利用可能な方法、たとえば従来のアジュバント、たとえばRetronectin(登録商標)またはポリカチオンアジュバント試薬(たとえば硫酸プロタミン)を使用して形質導入を実施する方法と比べて同じ、またはより高い形質導入効率で細胞を形質導入する能力を提供する。いくつかの態様において、そのような他のアジュバントは、ウイルスと感染させる標的細胞との間の係合を促進することができるが、細胞に対して毒性効果を生じさせることもできる。たとえば、Retronectin(登録商標)を形質導入アジュバントとして利用する現行のプロトコルは、形質導入工程の直後の培地交換を推奨している。いくつかの場合、これは、用いることができる従来のアジュバントの濃度、ひいては形質導入の全体効率を制限することができる。
【0142】
対照的に、提供されるオリゴマー試薬、たとえば、多量体形成試薬を含む、ストレプトアビジンムテインを含む試薬は、毒性効果なしで長期間、細胞培養物中に維持することができる。いくつかの態様において、提供される形質導入方法は、ウイルス粒子と細胞とを接触させる前またはその最中にオリゴマー試薬、たとえば多量体形成試薬を細胞から除去することなく、実施することができる。いくつかの態様において、細胞のさらなるインキュベーション、たとえば形質導入細胞を増殖させるためのさらなるインキュベーションの少なくとも一部分の間、オリゴマー試薬、たとえば多量体形成試薬を除去する必要はない。
【0143】
いくつかの態様において、細胞は、提供される方法にしたがって遺伝子工学によって導入された1つまたは複数の核酸を含み、それにより、そのような核酸の組み換えまたは遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの態様において、核酸は異種性である、すなわち、通常、細胞または細胞から得られる試料、たとえば、操作される細胞および/またはそのような細胞が由来する生物中に通常は見いだされない、別の生物または細胞から得られた試料中には存在しない。いくつかの態様において、核酸は天然起源ではない。たとえば、核酸は、複数の様々な細胞タイプからの様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含むものを含め、自然界には見られない。
【0144】
いくつかの態様において、提供される方法は、従来のアジュバント、たとえばRetronectin(登録商標)またはポリカチオンアジュバント試薬の存在下で実施された形質導入と比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2.0倍、3倍、4倍、5倍もしくはそれより大きく、または少なくとも約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3倍、約4倍、約5倍もしくはそれより大きく増大している形質導入効率を生じさせる。いくつかの態様において、増大した形質導入効率、たとえば特定の細胞の増強または促進または形質導入は、T細胞のような細胞へのベクターの形質導入または他の形態の移入ののち、レトロウイルスベクターのゲノムに含まれる核酸によってコードされた組み換えタンパク質、たとえば異種タンパク質の発現のレベルを計測することによって評価される。増強は、オリゴマータンパク質試薬または多量体形成試薬を含まない方法、たとえば代わりに従来のアジュバントの存在下で実施される方法によって実施される形質導入と比べた場合のそのような発現の相対度数を決定することによって計測され得る。組み換え分子の発現レベルを評価するためのいくつかの周知の方法、たとえば親和性ベースの方法、たとえば免疫親和性ベースの方法、たとえば細胞表面タンパク質に関しては、たとえばフローサイトメトリーを使用し得る。いくつかの例において、発現は、形質導入マーカーおよび/またはレポータコンストラクトの検出によって計測される。いくつかの態様において、トランケートされた表面タンパク質をコードする核酸がベクター内に含まれ、その発現および/または増強のマーカーとして使用される。
【0145】
いくつかの局面において、試薬、たとえばオリゴマータンパク質試薬は、マーカーを発現する細胞の形質導入を優先的に標的とするために、細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる選択物質と可逆的に結合または会合した多量体化試薬である。いくつかの態様においては、より大きな集団内の細胞の特定の亜集団を、集団中の1つまたは複数の他の細胞と比べて選択的に形質導入することができる。いくつかの場合、細胞の特定の亜集団の形質導入効率を、細胞の混合集団中の他の細胞と比べて1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10倍もしくはそれより大きく、または約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍、約6.0倍、約7.0倍、約8.0倍、約9.0倍、約10倍もしくはそれより大きく増大させることができる。いくつかの態様において、混合培養物の亜集団を標的化することは実質的な利点を提供し得る。いくつかの態様において、そのようなプロセスは産生プロセスを簡素化することができ、細胞の集団を事前に精製するために必要なリソースが減る。いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞のための提供される方法は、ウイルス粒子での形質導入のために細胞をオリゴマータンパク質(ストレプトアビジンムテイン)試薬と接触させる前に細胞を選択する工程を含まず、そのようなオリゴマータンパク質試薬は、特定の細胞集団の形質導入を標的化する選択物質と可逆的に結合している。
【0146】
いくつかの態様において、提供される試薬および方法はさらなる利点を有する。概して、レトロウイルスベースのベクターは、関心対象の遺伝子を細胞に安定に組み込むために使用することができる。概して、既存のレトロウイルスベクターを使用するT細胞の形質導入は、T細胞受容体(TCR)の係合またはサイトカイン刺激によるT細胞の活性化を必要とする。いくつかの例において、養子免疫治療のための遺伝子操作されたT細胞を調製するために利用可能な手法は、選択、活性化、形質導入および増殖の逐次的なエクスビボ工程を必要とすることができる。しかし、そのような処理工程は、たとえば複数の処理工程の複雑さ、コストおよび再現性のために、特定の養子免疫治療法のための細胞の調製には必ずしも望ましいとはいえない。いくつかの局面において、提供される方法は、これらの工程の1つまたは複数を、順次ではなく同時に実行することを可能にする。
【0147】
いくつかの態様において、方法は、細胞の選択、単離、刺激、活性化および/または増殖の1つまたは複数を含む他の処理工程を含む。いくつかの態様において、形質導入を調節するために使用される同じオリゴマー試薬、たとえば多量体形成試薬を、これら他の処理工程の1つまたは複数において使用する、たとえば細胞を選択し、および/または細胞を活性化し、および/または細胞の形質導入を調節するために使用することができる。いくつかの態様において、オリゴマー試薬は、細胞の選択、活性化、刺激および/または増殖の1つまたは複数を促進するための、細胞の表面上の分子に特異的な、それに結合した結合物質を有する多量体形成試薬であることができる。いくつかの態様において、細胞の選択、細胞の活性化、細胞の形質導入の調節および/または細胞の増殖のうちの1つまたは複数は、同じオリゴマー試薬、たとえば同じ多量体試薬の存在下で実施され、それは、いくつかの場合、連続法または半連続法の一部として、任意で閉鎖系中で実施されることができる。いくつかの態様において、提供される方法は、養子細胞治療のような治療用途のための細胞の調製を含む、細胞処理に関する方法において使用することができる。特に、本開示は、利用可能な処理方法、たとえば大規模処理に利用可能な方法を上回る利点を提供する方法に関する。そのような利点は、たとえば、コスト削減、合理化、効能の増大、安全性の向上ならびに様々な対象および条件の間での再現性の増大を含む。
【0148】
概して、レトロウイルスベースのベクターを使用して関心対象の遺伝子を細胞に安定に組み込むことができる。既存のレトロウイルスベクターを用いると、たとえば細胞治療における使用の場合、休止細胞および/または非周期中細胞を効果的に安定に遺伝子操作することが常に可能であるとはいえない。たとえば、利用可能な方法を使用して、非周期中免疫細胞、たとえば非周期中骨髄細胞または休止T細胞をレトロウイルスベクターで効果的に形質導入することは可能ではない場合がある。いくつかの場合、T細胞において形質導入が起こるためには、T細胞受容体(TCR)の係合によるまたはサイトカイン刺激によるT細胞の活性化が必要とされ得る。いくつかの例において、養子免疫治療のための遺伝子操作T細胞を調製するために利用可能な手法は、選択、活性化、形質導入および増殖の順次エクスビボ工程を必要とすることができる。
【0149】
たとえば、たとえば細胞選択後の活性化および/または刺激工程の包含は、養子細胞治療のための細胞を調製する中で時間、コスト、試薬および/またはユーザー取り扱いを増大させることができる。そのような結果は、様々なプロセスの間での、および/または様々な対象からの細胞との可変性のリスクを増すことができる。したがって、いくつかの態様において、提供される方法は、細胞集団を同時に選択または濃縮すること、他の方法と比べて細胞集団をレトロウイルスベクター粒子に曝露すること、および/またはそのような細胞を活性化または刺激することによって有利である。
【0150】
いくつかの局面において、試薬、たとえばオリゴマータンパク質試薬は、刺激物質(たとえば抗CD3および/または抗CD28)と可逆的に結合または会合して、形質導入を調節すること、および細胞活性化を実施することのいずれもでき、それは、いくつかの場合、接触させる工程またはインキュベートする工程の少なくとも一部分の間、同時に実施されることができる。提供される形質導入法のいくつかの態様において、形質導入される集団中の細胞、たとえばT細胞は、細胞を提供される試薬およびウイルス粒子と接触させる、またはそれらとともにインキュベートする前に、刺激および/または活性化されない、またはその必要がない。いくつかの態様において、刺激物質(たとえば抗CD3および/または抗CD28)と可逆的に結合または会合した多量体形成試薬であるオリゴマー試薬、たとえばオリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテイン)試薬を用いる提供される方法は、はじめに別の活性化試薬(たとえば抗CD3/抗CD28コートされた磁性粒子)によって細胞を活性化したのち、従来のアジュバントを使用して形質導入する方法と比べて、形質導入効率の少なくとも1.2倍、1.5倍、2.0倍、3倍、4倍、5倍またはそれを上回る増大を生じさせる。いくつかの局面において、これは、特定の活性化シグナルをさらに送ることができる形質導入試薬が存在しない他のシステムまたは方法よりも有利である。同様に、形質導入アジュバントとしてさらに作用することができる既知の活性化試薬は存在しない。
【0151】
いくつかの態様において、刺激物質、たとえば第一または第二の刺激物質は、標的細胞の表面上の分子に結合して、それにより、細胞にシグナルを提供することができるものであり、そのシグナルは、いくつかの場合、一次活性化シグナルおよび/または補助または共刺激シグナルであることができる。いくつかの態様において、一次活性化シグナルは、そのようなものとして、細胞を活性化して増殖させるのに十分であり得る。多量体形成試薬は、細胞の表面上の補助分子を刺激する、それに結合した第二の作用物質をも有し得る。第二の作用物質は、細胞の表面上の補助分子に結合するとき、活性化された細胞を刺激して増殖させ得る。また、この第二の作用物質は、多量体形成試薬に可逆的または不可逆的のいずれかで結合することができる。
【0152】
いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、リンパ球の完全な集団が刺激/増殖され、その後、増殖に必要な試薬が適当な固定相上でのクロマトグラフィーによって除去される、細胞の集団の連続増殖を含むことができる。いくつかの態様において、培養された細胞である増殖/刺激された細胞は、任意で、提供される方法にしたがって、たとえばT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)で形質移入され、いくつかの局面において、導入されるT細胞受容体またはキメラ抗原受容体に結合する異なる刺激分子による第二の刺激増殖に付されることができる。
【0153】
いくつかの態様において、養子細胞治療における細胞の用量は、組み換え受容体を発現する細胞の数によって決まるため、より高い形質導入効率は、産物用量に到達するのに必要な培養時間を減らすことができる。したがって、いくつかの場合、形質導入細胞の集団を増殖するためのプロセス(1つまたは複数)、たとえば、形質導入後の刺激物質による細胞のさらなるインキュベーションの期間は、提供される方法によって減らされる、たとえば少なくともまたは約少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%もしくはより多く減らされる。いくつかの態様において、形質導入細胞の治療有効量を達成するために集団を増殖するためのプロセス(1つまたは複数)の期間は、2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間もしくは96時間よりも多く、または約2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間もしくは96時間よりも多く減らされる。いくつかの態様において、養子細胞治療のための遺伝子操作された細胞の治療有効量を操作する全産生時間は、少なくともまたは約少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%またはより多く減らされる。
【0154】
いくつかの態様において、提供される方法は、閉鎖系中でたとえば自動化された方式で実施することができる。オリゴマータンパク質試薬、たとえば多量体形成試薬は、固体支持体上に固定化されてもよいし、または可溶性のいずれであってもよい。いくつかの態様において、細胞および/またはウイルス粒子をオリゴマータンパク質(たとえばストレプトアビジンムテイン)試薬、たとえば多量体形成試薬と接触させる、またはそれとともにインキュベートする工程は、支持体、たとえば固定相または固相の存在下で実施され、いくつかの場合、支持体は、選択物質が結合している固定相または固相である。いくつかの態様において、形質導入に使用される細胞および/またはウイルス粒子ならびに任意で選択、刺激および/または活性化される細胞は、固定相中に提供された試薬と会合する、たとえばいくつかの場合、概して間接的に固定化される、たとえばいくつかの場合、概して間接的にその上に固定化される。
【0155】
同じく提供されるものは、たとえば養子細胞治療のための遺伝子操作された細胞を調製するために、提供された開示の方法を実施するための組成物、キットおよび装置である。いくつかの局面において、細胞は、対象から単離され、提供される方法にしたがって操作され、同じ対象に投与される。他の局面において、細胞は、1つの対象から単離され、提供される方法にしたがって操作され、別の対象に投与される。
【0156】
II. 細胞の形質導入のための試薬系
本明細書に提供されるものは、試薬、たとえばオリゴマー試薬を形質導入アジュバントとして使用する方法である。いくつかの態様においては、また、同じオリゴマー試薬または、いくつかの場合、異なるオリゴマー試薬を、それに結合した1つまたは複数の結合物質を有する多量体形成試薬として、形質導入の前に細胞を活性化または刺激し、形質導入のための細胞の特定のサブセットを選択または優先的に標的とし、および/または細胞を刺激または増殖するための方法における使用のために提供することができる。
【0157】
いくつかの態様において、試薬はオリゴマータンパク質試薬である。いくつかの態様において、試薬は、少なくとも10、20、30、40アミノ酸長または少なくとも約10、約20、約30、約40アミノ酸長、たとえば少なくとも50、60、65、70、80、90、125、150、200、250、300もしくはより多くのアミノ酸長または少なくとも約50、約60、約65、約70、約80、約90、約125、約150、約200、約250、約300もしくはより多くのアミノ酸長の1つまたは複数のポリプチド配列を含む。いくつかの態様において、オリゴマー試薬は複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単量体単位は、少なくとも10、20、30、40アミノ酸長または少なくとも約10、約20、約30、約40アミノ酸長、たとえば少なくとも50、60、65、70、80、90、125、150、200、250、300もしくはより多くのアミノ酸長または少なくとも約50、約60、約65、約70、約80、約90、約125、約150、約200、約250、約300もしくはより多くのアミノ酸長または約50、約60、約65、約70、約80、約90、約125、約150、約200、約250、約300もしくはより多くのアミノ酸長のポリプチド配列を含む。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質は、二量体、三量体、四量体または高次オリゴマーである。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60またはより多くの単量体単位を含む。いくつかの態様において、各単量体単位は同じである。いくつかの態様において、オリゴマー試薬は、2つ、3つ、4つまで、またはより多くの異なる単量体単位を含む。いくつかの態様において、試薬は正味正電荷または全正電荷を有する。
【0158】
いくつかの態様において、本明細書に提供される方法は、複数の標的細胞をオリゴマータンパク質試薬およびウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含み、オリゴマータンパク質試薬は複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位は、少なくとも10、20、30もしくは40アミノ酸長もしくは約10、約20、約30もしくは約40アミノ酸長を含み、かつ/または少なくとも20、30、40もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40もしくは約50kDaの分子量を含み;かつ/またはオリゴマータンパク質試薬は、少なくとも100kDaもしくは少なくとも約100kDaの分子量を含むか、または平均で少なくとも100kDaもしくは少なくとも約100kDaの分子量を含み、方法は、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0159】
いくつかの態様において、オリゴマー試薬は、少なくとも少なくとも50kDaもしくは少なくとも約50kDa、少なくとも100kDaもしくは少なくとも約100kDa、少なくとも300kDaもしくは少なくとも約300kDa、少なくとも500kDaもしくは少なくとも約500kDa、少なくとも1000kDaもしくは少なくとも約1000kDa、少なくとも1250kDaもしくは少なくとも約1250kDa、少なくとも1500kDaもしくは少なくとも約1500kDa、少なくとも2000kDaもしくは少なくとも約2000kDaの分子量を含むか、または組成物中の試薬は、平均で、少なくとも少なくとも50kDaもしくは少なくとも約50kDa、少なくとも100kDaもしくは少なくとも約100kDa、少なくとも300kDaもしくは少なくとも約300kDa、少なくとも500kDaもしくは少なくとも約500kDa、少なくとも1000kDaもしくは少なくとも約1000kDa、少なくとも1250kDaもしくは少なくとも約1250kDa、少なくとも1500kDaもしくは少なくとも約1500kDa、少なくとも2000kDaもしくは少なくとも約2000kDaの分子量を含む。
【0160】
いくつかの態様において、オリゴマー試薬は、50kDa~2000kDaもしくは約50kDa~約2000kDa、50kDa~1000kDaもしくは約50kDa~約1000kDa、50kDa~500kDaもしくは約50kDa~約500kDa、100kDa~2000kDaもしくは約100kDa~2000kDa、100kDa~1000kDaもしくは約100kDa~約1000kDa、100kDa~500kDaもしくは約100kDa~約500kDa、150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~約1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDa、50kDa~100kDaもしくは約50kDa~100kDa、50kDa~500kDa、もしくは100kDa~500kDaの分子量を含むか、または組成物中の試薬は、平均で、50kDa~2000kDaもしくは約50kDa~約2000kDa、50kDa~1000kDaもしくは約50kDa~約1000kDa、50kDa~500kDaもしくは約50kDa~約500kDa、100kDa~2000kDaもしくは約100kDa~2000kDa、100kDa~1000kDaもしくは約100kDa~約1000kDa、100kDa~500kDaもしくは約100kDa~約500kDa、150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~約1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDa、50kDa~100kDaもしくは約50kDa~100kDa、50kDa~500kDa、もしくは100kDa~500kDaの分子量を含む。
【0161】
いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジンまたはアビジンまたはそれらのムテインであるか、またはこれらを含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンは野生型ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテインまたは類似体、たとえばストレプトアビジン様ポリペプチドであることができる。同様に、アビジンは、いくつかの局面において、野生型アビジンまたはアビジンのムテインまたは類似体、たとえばニュートラアビジン、一般により中性のpiを示し、天然アビジンの代替として利用可能である、修飾アルギニンを有する脱グリコシル化アビジンを含む。概して、脱グリコシル化された中性形態のアビジンは、市販されている形態、たとえば、Sigma Aldrichから市販されている「Extravidin」またはThermo ScientificまたはInvitrogenから市販されている「NeutrAvidin」を含む。
【0162】
いくつかの態様において、試薬は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、27または28に示されたアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、27または28のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0163】
A. 可逆試薬系
いくつかの態様において、方法は、生物学的粒子、たとえば細胞、微生物またはウイルス粒子の表面上の分子に結合することができる少なくとも1つの作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルスベクター粒子結合物質)が試薬と可逆的に会合する可逆系を用いる。いくつかの場合、試薬は、作用物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む。いくつかの場合、試薬は多量体形成試薬である。いくつかの態様において、少なくとも1つの作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質、ウイルス粒子結合物質)は、分子のエピトープまたは領域に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位(BまたはV)を含み、かつまた、試薬の少なくとも1つの結合部位Zに特異的に結合する結合パートナーCを含む。いくつかの場合、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の結合相互作用は非共有結合的相互作用である。いくつかの態様において、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の結合相互作用、たとえば非共有結合的相互作用は可逆性である。
【0164】
いくつかの態様において、可逆性会合は、少なくとも1つの結合部位Zにも結合することができる結合部位であるか、またはそれを含む物質、たとえば競合試薬(溶離試薬とも呼ばれる)の存在下で媒介されることができる。概して、物質(たとえば競合試薬)は、試薬中に存在する結合部位Zへのより高い結合親和性のせいで、および/または結合パートナーCよりも高い濃度で存在するせいで、競合相手として作用することができ、それにより、試薬から結合パートナーCを切り離す、および/または解離させる。いくつかの態様において、少なくとも1つの結合部位Zへの物質(たとえば競合試薬)の親和性は、少なくとも1つの結合部位Zへの作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルス粒子結合物質)の結合パートナーCの親和性よりも高い。したがって、いくつかの場合、試薬の結合部位Zと作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルス粒子結合物質)の結合パートナーCとの間の結合は、物質(たとえば競合試薬)の添加によって破壊することができ、それにより、作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルス粒子結合物質)と試薬との会合を可逆性にする。
【0165】
このような可逆系に使用することができる試薬は当技術分野において記載され、かつ公知である。たとえば、米国特許第5,168,049号;第5,506,121号;第6,103,493号;第7,776,562号;第7,981,632号;第8,298,782号;第8,735,540号;第9,023,604号;ならびにPCT国際出願公開公報WO2013/124474およびWO2014/076277を参照すること。可逆性相互作用を形成することができる試薬および結合パートナーならびにそのような結合を逆転させることができる物質(たとえば競合試薬)の非限定的な例を以下に記載する。
【0166】
1. 試薬
いくつかの態様において、試薬は、作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルス粒子結合物質)によって含まれる結合パートナーCに可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位Zを含む。いくつかの態様において、試薬は、それぞれが作用物質に含まれる結合パートナーCに特異的に結合することができる複数の結合部位Zを含み、試薬は、複数の作用物質(たとえば複数の受容体結合物質、選択物質および/またはウイルスベクター粒子結合物質)に可逆的に結合することができ、たとえば多量体形成試薬である。いくつかの態様において、試薬は、個々の分子(たとえば単量体)のオリゴマーまたポリマーであり、または、個々の分子(たとえば四量体)を構成するサブユニットの複合体のオリゴマーまたはポリマーであり、そのようなオリゴマーまたはポリマーは少なくとも1つの結合部位Zを含む。いくつかの態様において、試薬は,少なくとも2つの結合部位Z、少なくとも3つの結合部位Z、少なくとも4つの結合部位Z、たとえば少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72またはより多くの結合部位Zを含む。結合部位は、すべてが同じであることもできるし、または複数の結合部位が1つまたは複数の異なる結合部位(たとえばZ1、Z2、Z3など)を含むこともできる。
【0167】
いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質、たとえば2つ以上の作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質および/またはウイルス粒子結合物質)は、試薬中に存在する1つまたは複数の結合部位Zを介して試薬と会合する、たとえばそれに可逆的に結合する。いくつかの場合、これは、結果的に、作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質および/またはウイルス粒子結合物質)が互いに近く配置されて、分子(の少なくとも2つのコピー)(たとえば、細胞表面分子)を有する生物学的粒子(たとえば標的細胞)が、その特定の分子に結合することができる1つまたは複数の結合部位(BまたはV)を有する作用物質と接触させられるならば、アビディティ効果が生じることができるようにする。
【0168】
いくつかの態様において、同じ結合部位(BまたはVのいずれか)を含む2つ以上の異なる作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルスベクター粒子結合物質)が試薬に可逆的に結合することができる。いくつかの態様においては、少なくとも2つの異なる(種類の)作用物質、いくつかの場合には3つまたは4つの異なる(種類の)作用物質、たとえば2つ以上の異なる受容体結合物質、選択物質および/またはウイルスベクター粒子結合物質を使用することが可能である。たとえば、いくつかの態様において、試薬は、結合部位B1、B2、B3またはB4などを含む第一の作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)および別の結合部位、たとえば結合部位B1、B2、B3またはB4のもう1つを含む第二の作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)に可逆的に結合することができる。いくつかの場合、第一の作用物質および第二の作用物質の結合部位は同じであることができる。たとえば、いくつかの局面において、少なくとも2つの作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)それぞれは同じ分子に結合することができる。いくつかの場合、第一の作用物質および第二の作用物質の結合部位は異なることができる。いくつかの局面において、少なくとも2つの作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質)それぞれは異なる分子、たとえば第一の分子、第二の分子などに結合することができる。いくつかの場合、異なる分子、たとえば細胞表面分子が同じ標的細胞上に存在することができる。他の場合においては、異なる分子、たとえば細胞表面分子が、同じ細胞集団中に存在する異なる標的分子上に存在することができる。いくつかの場合、第三、第四などの作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)が同じ試薬と可逆的に会合することができ、各作用物質がさらなる異なる結合部位を含む。いくつかの態様において、試薬は、1つまたは複数の結合部位B(たとえばB1、B2、B3)を含む少なくとも第一の作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)および1つまたは複数の結合部位V(たとえばV1、V2、V3)を含むウイルスベクター粒子結合物質に可逆的に結合することができる。
【0169】
いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質、たとえば2つ以上の異なる作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質および/またはウイルスベクター粒子結合物質)は同じ結合パートナーCを含む。いくつかの態様において、2つ以上の異なる作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)は異なる結合パートナーを含む。いくつかの局面において、第一の作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルスベクター粒子結合物質)は、試薬上に存在する結合部位Z1に特異的に結合することができる結合パートナーC1を有することができ、第二の作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルスベクター粒子結合物質)は、試薬上に存在する結合部位Z1または結合部位Z2に特異的に結合することができる結合パートナーC2を有することができる。したがって、いくつかの例において、試薬によって含まれる複数の結合部位Zは、それぞれ作用物質(たとえば受容体結合物質、選択物質またはウイルスベクター粒子結合物質)によって含まれる結合パートナーC1およびC2に可逆的に結合することができる結合部位Z1およびZ2を含む。いくつかの態様において、C1とC2とは同じであり、および/またはZ1とZ2とは同じである。他の局面において、複数の結合部位Zの1つまたは複数は異なることができる。他の例において、複数の結合パートナーCの1つまたは複数は異なってもよい。結合パートナーCそれぞれが結合部位Zの1つと相互作用する、たとえばそれに特異的に結合することができる限り、結合部位Zを含む試薬と適合性である様々な結合パートナーCの任意の組み合わせを選択することは当業者の技能レベルの範囲内である。
【0170】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン結合ポリペプチド、Strep-tag結合ペプチド、ストレプトアビジンムテイン、ストレプトアビジン類似体、アビジンムテイン、アビジン類似体および/または前記のいずれかの生物学的活性フラグメントを個々に含む複数のポリペプチド単位を含む。たとえば、いくつかの態様において、本明細書に提供される方法は、複数の標的細胞を(1)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬;ならびに(2)ウイルス粒子とともにインキュベートする工程を含み、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0171】
いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテインもしくはストレプトアビジン類似体、アビジン、アビジンムテインもしくはアビジン類似体(例えば、ニュートラアビジン)またはそれらの混合物であり、そのような試薬は、結合パートナーCとの可逆的結合のための1つまたは複数の結合部位Zを含む。いくつかの態様において、結合パートナーCは、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテインもしくはストレプトアビジン類似体、アビジンまたはアビジンムテインもしくはアビジン類似体に特異的に結合することができるビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体、またはストレプトアビジン結合ペプチドもしくは他の分子であり得る。いくつかの態様において、試薬は、ビオチン、ビオチン類似体もしくはそれらの生物学的に活性なフラグメントに可逆的に結合するストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジンの類似体もしくはムテイン、または類似体もしくはムテインもしくはアビジンであるかまたはそれらを含む。いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、ストレプトアビジンの類似体もしくはムテイン、またはアビジンの類似体もしくはムテインであるかまたはそれらを含む。いくつかの態様において、物質(例えば、競合試薬)は、結合パートナーCと、1つまたは複数の結合部位Zに対する結合について競合することができるビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体またはストレプトアビジン結合ペプチドであり得る。いくつかの態様において、結合パートナーCおよび物質(例えば、競合試薬)は異なり、物質(例えば、競合試薬)は結合パートナーの親和性と比較して1つまたは複数の結合部位Zに対してより高い結合親和性を示す。
【0172】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンは、野生型ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテインまたはストレプトアビジン類似体、例えばストレプトアビジン様ポリペプチドであり得る。同様に、アビジンは、いくつかの局面において、野生型アビジンまたはアビジンのムテインもしくは類似体、例えば、典型的により中性のpiを示し、ネイティブアビジンの代替物として利用可能である修飾アルギニンを有する脱グリコシル化アビジンであるニュートラアビジンを含む。通常、脱グリコシル化された中性形態のアビジンは、市販されている形態、例えばSigma Aldrichから入手可能な「Extravidin」またはThermo ScientificもしくはInvitrogenから入手可能な「NeutrAvidin」を含む。
【0173】
いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインもしくはストレプトアビジン類似体である。いくつかの態様において、野生型ストレプトアビジン(wt-ストレプトアビジン)は、Argarana et al, Nucleic Acids Res. 14 (1986) 1871-1882に開示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を有する。一般に、ストレプトアビジンは、自然状態で、各サブユニットがビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体またはビオチン模倣体に対する単一の結合部位を含む4つの同一のサブユニットの四量体として存在する、すなわち、ホモ四量体である。ストレプトアビジンサブユニットの例示的な配列は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列であるが、そのような配列はまた、他のストレプトマイセス種由来のそのホモログに存在する配列も含み得る。特に、ストレプトアビジンの各サブユニットは、約10-14 Mのオーダーの平衡解離定数(KD)のビオチンに対する強い結合親和性を示し得る。いくつかの例において、ストレプトアビジンは、4つの結合部位のうちの1つのみが機能的である一価四量体(Howarth et al. (2006) Nat. Methods, 3:267-73; Zhang et al. (2015) Biochem. Biophys. Res. Commun., 463:1059-63))、4つの結合部位のうちの2つが機能的である二価四量体(Fairhead et al. (2013) J. Mol. Biol., 426:199-214)として存在し得、または単量体もしくは二量体形態で存在し得る(Wu et al. (2005) J. Biol. Chem., 280:23225-31; Lim et al. (2010) Biochemistry, 50:8682-91)。
【0174】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンは、任意の形態、例えば、野生型または非修飾ストレプトアビジン、例えば、ビオチン、ビオチン誘導体またはビオチン類似体またはビオチン模倣体に対する結合部位を含む少なくとも1つの機能的サブユニットを含む、例えば通常SEQ ID NO:1に示されるストレプトマイセス・アビジニイ(Streptomyces avidinii)由来の野生型ストレプトアビジンの少なくとも1つの機能的サブユニットまたはその機能的に活性なフラグメントを含むストレプトマイセス種由来のストレプトアビジンまたはその機能的に活性なフラグメントであり得る。例えば、いくつかの態様において、ストレプトアビジンは、Nおよび/またはC末端で短縮された野生型ストレプトアビジンのフラグメントを含み得る。そのような最小ストレプトアビジンは、N末端においてSEQ ID NO:1のアミノ酸位置10~16の領域で始まり、C末端においてSEQ ID NO:1のアミノ酸位置133~142の領域で終了する任意のものを含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンの機能的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジン、例えばSEQ ID NO:2に示されるものはさらに、SEQ ID NO:1に示される番号でいうAla13に対応する位置にN末端メチオニンを含み得る。ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインにおける残基の位置の参照は、SEQ ID NO:1における残基の番号を参照する。
【0175】
いくつかの局面において、ストレプトアビジンムテインは、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加によって非修飾または野生型ストレプトアビジンの配列から区別されるが、ビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体またはストレプトアビジン結合ペプチドに対する結合部位を含む少なくとも1つの機能的サブユニットを含むポリペプチドを含む。いくつかの局面において、ストレプトアビジン様ポリペプチドおよびストレプトアビジンムテインは、本質的に野生型ストレプトアビジンと免疫学的に等価であり、特にwt-ストレプトアビジンと同じまたは異なる親和性でビオチン、ビオチン誘導体またはビオチン類似体に結合することができるポリペプチドであり得る。いくつかの例において、ストレプトアビジン様ポリペプチドまたはストレプトアビジンムテインは、野生型ストレプトアビジンの一部ではないアミノ酸を含み得るまたはそれらは野生型ストレプトアビジンの一部のみを含み得る。いくつかの態様において、ストレプトアビジン様ポリペプチドは、宿主により産生されたポリペプチドを野生型ストレプトアビジンの構造に変換するために必要とされる酵素を宿主が有さないために、野生型ストレプトアビジンと同一でないポリペプチドである。いくつかの態様において、ストレプトアビジンはまた、ストレプトアビジン四量体およびストレプトアビジン二量体、特にストレプトアビジンホモ四量体、ストレプトアビジンホモ二量体、ストレプトアビジンヘテロ四量体およびストレプトアビジンヘテロ二量体として存在し得る。一般に、各サブユニットは通常、ビオチンもしくはビオチン類似体に対するまたはストレプトアビジン結合ペプチドに対する結合部位を有する。ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの例は、例えば、WO 86/02077、DE 19641876 Al、US 6,022,951、WO 98/40396またはWO 96/24606において言及されている。
【0176】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、非修飾もしくは野生型ストレプトアビジンの一部ではないアミノ酸を含み得るまたは野生型もしくは非修飾ストレプトアビジンの一部のみを含み得る。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、非修飾または野生型ストレプトアビジンのサブユニットとの比較で、例えばSEQ ID NO:1に示される野生型ストレプトアビジンサブユニットまたは例えばSEQ ID NO:2に示される、その機能的に活性なフラグメントとの比較で1つまたは複数のアミノ酸置換(substitutions)(置換(replacements))を有し得る少なくとも1つのサブユニットを含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインの少なくとも1つのサブユニットは、野生型もしくは非修飾ストレプトアビジンと比較して少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個のアミノ酸の相違を有し得、および/またはSEQ ID NO:1もしくは2に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのサブユニットを含み、そのようなストレプトアビジンムテインは、ビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体またはビオチン模倣体に結合する機能的活性を示す。いくつかの態様において、アミノ酸の置換(replacements)(置換(substitutions))は、保存的または非保存的変異である。ストレプトアビジンムテインの例は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,168,049号;同第5,506,121号;同第6,022,951号;同第6,156,493号;同第6,165,750号;同第6,103,493号;もしくは同第6,368,813号;または国際公開PCT出願番号WO2014/076277を参照されたい。
【0177】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインは、ビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体またはストレプトアビジン結合ペプチドに対する1つまたは複数の結合部位Zを含む1または2つ以上の機能的サブユニット、例えば、2つまたはそれ以上、3つまたはそれ以上、4つまたはそれ以上およびいくつかの例においては、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の機能的サブユニットを含むタンパク質を含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインは、単量体;ヘテロ二量体もしくはホモ二量体を含む、二量体;ホモ四量体、ヘテロ四量体、一価四量体もしくは二価四量体を含む四量体を含み得、またはそれらのより高次の多量体もしくはオリゴマーを含み得る。
【0178】
いくつかの態様において、ペプチドリガンド結合パートナーに対するストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの結合親和性は、1 x 10-4 M、5 x 10-4 M、1 x 10-5 M、5x 10-5 M、1 x 10-6 M、5 x 10-6 Mまたは1 x 10-7 M未満であるが、通常1 x 10-13 M、1 x 10-12 Mまたは1 x 10-11 Mより大きい。例えば、例えば米国特許第5,506,121号に開示される、ペプチド配列(Strep-tag)は、ビオチン模倣体として機能し、例えばおよそ10-4 Mから10-5 Mの間のKDの、ストレプトアビジンに対する結合親和性を示し得る。いくつかの例において、結合親和性は、ストレプトアビジン分子内に変異を導入することによってさらに改善され得、例えば米国特許第6,103,493号または国際公開PCT出願番号WO2014/076277を参照されたい。いくつかの態様において、結合親和性は、当技術分野で公知の方法、例えば以下に記載されるいずれかによって決定され得る。
【0179】
いくつかの態様において、試薬、例えばストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインは、ペプチドリガンド結合パートナーに対する結合親和性を示し、このペプチドリガンド結合パートナーは、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)中に存在する結合パートナーCであり得る。いくつかの態様において、ペプチド配列は、SEQ ID NO:9に示される一般式を有する配列を含む、例えば、SEQ ID NO:10に示される配列を含む。いくつかの態様において、ペプチド配列は、SEQ ID NO:11に示される、例えばSEQ ID NO:12に示される一般式を有する。1つの例において、ペプチド配列は、
(Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:7に示される)である。1つの例において、ペプチド配列は、
(Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:8に示される)である。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、少なくとも2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続的配置を含み、2つのモジュール間の距離は少なくとも0でありかつ50アミノ酸以下であり、1つの結合モジュールは、3~8アミノ酸を有し、少なくとも配列His-Pro-Xaa(SEQ ID NO:9)を含み、Xaaはグルタミン、アスパラギンまたはメチオニンであり、他の結合分子は、例えばSEQ ID NO:11に示される、同じまたは異なるストレプトアビジンペプチドリガンドを有する(例えば、国際公開PCT番号WO02/077018;米国特許第7,981,632号を参照のこと)。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:13または14のいずれかに示される式を有する配列を含む。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:15~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を有する。
【0180】
いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジンムテインであるまたはストレプトアビジンムテインを含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、SEQ ID NO:1に示される野生型ストレプトアビジンまたはその生物学的に活性な部分との比較で1つまたは複数の変異(例えば、アミノ酸の置換)を含む。例えば、ストレプトアビジンの生物学的に活性な部分は、いくつかの例において最小ストレプトアビジンと呼ばれる、Nおよび/またはC末端で短縮されたストレプトアビジンバリアントを含み得る。いくつかの態様において、任意の変異が導入され得るN末端短縮最小ストレプトアビジンは、SEQ ID NO:1に示される配列との比較で、N末端がアミノ酸位置10~16の領域から始まり、C末端がアミノ酸位置133~142の領域で終わる。いくつかの態様において、任意の変異が導入され得るN末端短縮ストレプトアビジンは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、最小ストレプトアビジンは、Ala13位~Ser139位のアミノ酸配列を含み、任意で、Ala13の代わりにN末端メチオニン残基を有する。本願の目的上、アミノ酸位置の番号は、全体を通して、SEQ ID NO:1に示されるwt-ストレプトアビジンの番号を参照する。(Argarana et al., Nucleic Acids Res. 14 (1986), 1871-1882を参照のこと、
図3も参照のこと)。
【0181】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、米国特許第6,103,493号に記載される変異体である。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、例えばSEQ ID NO:1に示される野生型ストレプトアビジンのアミノ酸配列に基づくアミノ酸位置44~53の領域内に少なくとも1つの変異を含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、1つまたは複数の残基44、45、46および/または47に変異を含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、野生型ストレプトアビジンの44位のGluから疎水性脂肪族アミノ酸、例えばVal、Ala、IleもしくはLeuへの置換、45位の任意のアミノ酸、46位の脂肪族アミノ酸、例えば疎水性脂肪族アミノ酸および/または47位のValから塩基性アミノ酸、例えばArgもしくはLys、例えば通常Argへの置換を含む。いくつかの態様において、Alaが46位にありおよび/またはArgが47位にありおよび/またはValもしくはIleが44位にある。いくつかの態様において、ストレプトアビジン変異体は、例えばSEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む例示的なストレプトアビジンムテイン(ストレプトアビジン変異体1、SAM1としても公知)に示される、残基Val44-Thr45-Ala46-Arg47を含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、例えばSEQ ID NO:5または6に示されるアミノ酸配列を含む例示的なストレプトアビジンムテイン(SAM2としても公知)に示される、残基Ile44-Gly45-Ala46-Arg47を含む。いくつかの例において、そのようなストレプトアビジンムテインは、例えば、米国特許第6,103,493号に記載されており、Strep-Tactin(登録商標)という商標の下で市販されている。
【0182】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、国際公開PCT出願番号WO 2014/076277に記載される変異体である。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸位置でいうアミノ酸位置44~53の領域に少なくとも2つのシステイン残基を含む。いくつかの態様において、システイン残基は、これらのアミノ酸を連結するジスルフィド架橋を形成するよう45位および52位に存在する。そのような態様において、アミノ酸44は典型的にグリシンまたはアラニンであり、アミノ酸46は典型的にアラニンまたはグリシンであり、アミノ酸47は典型的にアルギニンである。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸位置でいうアミノ酸残基115~121の領域に少なくとも1つの変異またはアミノ酸の相違を含む。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、アミノ酸位置117、120および121における少なくとも1つの変異ならびに/またはアミノ酸位置118および119の欠失ならびに少なくともアミノ酸121の置換を含む。
【0183】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、117位に対応する位置に変異を含み、その変異は、Trp、TyrもしくはPheのような大型疎水性残基またはGlu、AspもしくはArgのような荷電残基またはAsnもしくはGinのような親水性残基またはいくつかの例では疎水性残基Leu、MetもしくはAlaまたは極性残基Thr、SerもしくはHisであり得る。いくつかの態様において、117位の変異は、SerまたはAlaまたはGlyのような小型残基であり得る120位に対応する位置における変異、ならびに疎水性残基、例えばTrp、TyrまたはPheのようなかさ高い疎水性残基であり得る121位に対応する位置における変異と組み合わされる。いくつかの態様において、117位の変異は、疎水性残基、例えばLeu、Ile、MetもしくはValまたは通常TyrもしくはPheであり得るSEQ ID NO:1に示される野生型ストレプトアビジンまたはその生物学的に活性なフラグメントの120位に対応する位置における変異、およびGly、AlaもしくはSerのような小型残基であり得るSEQ ID NO:1に示される野生型ストレプトアビジンまたはその生物学的に活性なフラグメントとの比較で121位に対応する位置における変異、またはGln、またはLeu、Val、Ile、Trp、Tyr、PheもしくはMetのような疎水性残基と組み合わされる。いくつかの態様において、そのようなムテインはまた、残基Val44-Thr45-Ala46-Arg47または残基Ile44-Gly45-Ala46-Arg47を含み得る。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、残基Val44、Thr45、Ala46、Arg47、Glu117、Gly120およびTyr121を含む。いくつかの態様において、ムテインストレプトアビジンは、SEQ ID NO:27もしくはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27もしくはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、残基Val44、Thr45、Ala46、Arg47、Glu117、Gly120およびTyr121を含み、ビオチン、ビオチン類似体もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに結合する機能的活性を示す。
【0184】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、上記変異のいずれかを任意の組み合わせで含み得、得られるストレプトアビジンムテインは、ペプチドリガンド(
;Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:7に示される)に対して2.7 x 10
-4 M未満および/またはペプチドリガンド(
;Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:8に示される)に対して1.4 x 10
-4 M未満および/またはSEQ ID NO:7~19のいずれかに示されるペプチドリガンドのいずれかに対して1 x 10
-4 M、5 x 10
-4 M、1 x 10
-5 M、5x 10
-5 M、1 x 10
-6 M、5 x 10
-6 Mもしくは1 x 10
-7 M未満であるが通常1 x 10
-13 M、1 x 10
-12 Mもしくは1 x 10
-11 Mより大きい結合親和性を示し得る。
【0185】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、SEQ ID NO:3~6、27もしくは28のいずれかに示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:3~6、27もしくは28のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を示し、かつペプチドリガンド(
;Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:7に示される)に対して2.7 x 10
-4 M未満および/またはペプチドリガンド(
;Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:8に示される)に対して1.4 x 10
-4 M未満および/またはSEQ ID NO:7~19のいずれかに示されるペプチドリガンドのいずれかに対して1 x 10
-4 M、5 x 10
-4 M、1 x 10
-5 M、5x 10
-5 M、1 x 10
-6 M、5 x 10
-6 Mもしくは1 x 10
-7 M未満であるが通常1 x 10
-13 M、1 x 10
-12 Mもしくは1 x 10
-11 Mより大きい結合親和性を示す。
【0186】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインはまた、他のストレプトアビジンリガンド、例えば、非限定的に、ビオチン、イミノビオチン、リポ酸、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、HABA(ヒドロキシアゾベンゼン安息香酸)および/またはジメチルHABAに対する結合を示す。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、例えばSEQ ID NO:7~19のいずれかに示されるビオチン模倣ペプチドリガンドに対するストレプトアビジンムテインの結合親和性よりも大きい別のストレプトアビジンリガンド、例えばビオチンまたはデスチオビオチンに対する結合親和性を示す。したがって、いくつかの態様において、ビオチンまたはビオチン類似体もしくは誘導体(例えば、デスチオビオチン)は、提供される方法において競合試薬として使用され得る。例えば、例として、(例えば、SEQ ID NO:4に示される配列を含む)Strep-tactin(登録商標)と命名されたムテインストレプトアビジンと、(例えば、SEQ ID NO:8に示される)Strep-tag(登録商標)IIと命名されたペプチドリガンドとの相互作用は、ビオチン・ストレプトアビジン相互作用に関するおよそ10-13 Mとの比較で、およそ10-16 MのKDの結合親和性によって特徴づけられる。いくつかの例において、Strep-tactin(登録商標)に対して10-10~10-13 Mの間または約10-10~10-13 Mの間のKDの高い親和性で結合し得るビオチンは、この結合部位に関してStrep-tag(登録商標)IIと競合し得る。
【0187】
いくつかの例において、試薬は、遷移金属イオンに結合することが可能であり得る少なくとも2つのキレート基Kを含む。いくつかの態様において、試薬は、オリゴヒスチジン親和性タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、カルモジュリンもしくはそれらの類似体、カルモジュリン結合性ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、HAタグ、マルトース結合性タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、mycエピトープおよび/またはビオチニル化担体タンパク質に結合することが可能であり得る。
【0188】
いくつかの態様において、タンパク質試薬は、それぞれが個々に2つ以上のポリペプチドを含む1つまたは複数の多量体サブユニットを含むことができるオリゴマータンパク質試薬である。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質試薬は、ビオチン結合ポリペプチド、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体、ストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、および生物学的活性フラグメントのうちの1つまたは複数を含む複数の単位を含む。
【0189】
いくつかの態様において、試薬は、オリゴマーまたはポリマーである。いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマーは、自然界でみられるタンパク質の個別分子を直接的もしくは間接的に連結することによって、または単量体の個別分子もしくは個別分子を形成するサブユニットの複合体を直接的もしくは間接的に連結する(例えば、自然界でみられるタンパク質の二量体、三量体、四量体等を直接的もしくは間接的に連結する)ことによってのいずれかで生成され得る。例えば、ストレプトアビジンまたはアビジンの四量体ホモ二量体またはヘテロ二量体は、各オリゴマーまたはポリマーの個別分子または最小構成単位と称され得る。いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマーは、タンパク質の少なくとも2つの個別分子の連結を含み得る(すなわち、2マーである)またはタンパク質(例えば、単量体、四量体)の個別分子の少なくとも3マー、4マー、5マー、6マー、7マー、8マー、9マー、10マー、11マー、12マー、13マー、14マー、15マー、16マー、17マー、18マー、19マー、20マー、25マー、30マー、35マー、40マー、45マーまたは50マーであり得る。
【0190】
オリゴマーは、例えば公開された米国特許出願番号US2004/0082012に記載されるような、当技術分野で公知の任意の方法を用いて生成され得る。いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマーは、例えば多糖または二官能性リンカーによって架橋され得る2つまたはそれ以上の個別分子を含む。
【0191】
いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマーは、個別分子または多糖の存在下で個別分子を形成するサブユニットの複合体を架橋することによって得られる。いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマーは、多糖、例えばデキストランへのカルボキシル残基の導入によって調製され得る。いくつかの局面において、試薬(例えば単量体、四量体)の個別分子は、従来的なカルボジイミド化学を用いて、内部リジン残基の一級アミノ基および/または遊離N末端を通じてデキストラン骨格のカルボキシル基に連結され得る。いくつかの態様において、連結試薬は、デキストラン1モル当たり試薬(例えば単量体、四量体)の個別分子約60モルのモル比で使用される。
【0192】
いくつかの態様において、試薬は、1つまたは複数のストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンの任意の類似体もしくはムテイン(例えば、Strep-Tactin(登録商標)もしくはStrep-Tactin(登録商標)XT)またはアビジンの類似体もしくはムテイン(例えば、ニュートラアビジン)のオリゴマーまたはポリマーである。いくつかの態様において、結合部位Zは、アビジンまたはストレプトアビジンの天然のビオチン結合部位であり、個別分子内に最大4つの結合部位が存在し得(例えば、四量体は、4つの結合部位Zを含み)、それによってホモ四量体は、同じである最大4つの結合部位、すなわちZ1を含み得、ヘテロ四量体は、例えばZ1およびZ2を含む、異なり得る最大4つの結合部位を含み得る。いくつかの態様において、オリゴマーは、同じストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンまたはアビジンムテインの複数の個別分子(例えば、複数のホモ四量体)から生成または産生され、この例で、オリゴマーの各結合部位Z、例えばZ1は同じである。例えば、いくつかの例において、オリゴマーは、複数の結合部位Z1、例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50またはそれ以上の結合部位Z1を含み得る。いくつかの態様において、オリゴマーは、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンもしくはアビジンムテインのヘテロ四量体であり得る複数の個別分子から、および/またはそれらの結合部位Z、例えばZ1およびZ2に関して異なるストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジンもしくはアビジンムテインの複数の2つもしくはそれ以上の異なる個別分子(例えば、異なるホモ四量体)から生成または産生され、この例で、複数の異なる結合部位Z、例えばZ1およびZ2が、オリゴマー内に存在し得る。例えば、いくつかの例において、オリゴマーは、複数の結合部位Z1および複数の結合部位Zを含み得、合わせて、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50またはそれ以上の総結合部位Z1およびZ2を含み得る。
【0193】
いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマーは、二官能性リンカーもしくは他の化学リンカー、例えばグルタルジアルデヒドを用いて、または当技術分野で公知の他の方法によって、個別分子または個別分子を形成するサブユニットの複合体を架橋することによって得られる。いくつかの局面において、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはストレプトアビジンもしくはアビジンの任意のムテインもしくは類似体の架橋オリゴマーまたはポリマーは、リンカーとして機能する二官能性分子、例えばグルタルジアルデヒドを通じてまたは当技術分野で報告されている他の方法によって個々のストレプトアビジンまたはアビジン分子を架橋することによって取得され得る。例えば、ストレプトアビジンムテインにチオール基を導入することによってストレプトアビジンムテインのオリゴマーを生成することが可能である(これは、例えば、ストレプトアビジンムテインと2-イミノチオラン(Trauts試薬)を反応させることによっておよび、例えば、別の反応においてストレプトアビジンムテイン中の利用可能なアミノ基を活性化させることによって行われ得る)。いくつかの態様において、このアミノ基の活性化は、ストレプトアビジンムテインと市販のヘテロ二官能性架橋剤、例えばスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホSMCC)またはスクシンイミジル6-[(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)の反応によって達成され得る。いくつかのそのような態様において、それによって得られる2つの反応産物が混合され、それによって典型的に修飾ストレプトアビジンムテインの1つのバッチに含まれるチオール基と、修飾ストレプトアビジンムテインの他のバッチの(例えば、マレイミド機能によって)活性化されたアミノ酸を反応させる。いくつかの例において、この反応により、ストレプトアビジンムテインの多量体/オリゴマーが形成される。これらのオリゴマーは、任意の適当な数、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50またはそれ以上の個別分子を有し得、そのオリゴマー化度は、反応条件によって異なり得る。
【0194】
いくつかの態様において、オリゴマーまたはポリマー試薬は、サイズ排除クロマトグラフィーを通じて単離され得、任意の望ましい画分が試薬として使用され得る。例えば、いくつかの態様において、2-イミノチオランおよびヘテロ二官能性架橋剤、例えばスルホSMCCの存在下で修飾ストレプトアビジンムテインを反応させた後、オリゴマーまたはポリマー試薬は、サイズ排除クロマトグラフィーを通じて単離され得、所望の望ましい画分が試薬として使用され得る。いくつかの態様において、オリゴマーは、単一の分子量を有さない(かつ有する必要がない)が、それらは統計的な重量分布、例えばガウス分布を示し得る。いくつかの例において、4つ以上のストレプトアビジンまたはムテイン四量体、例えばホモ四量体またはヘテロ四量体、例えば、通常、3~50個の四量体、例えばホモ四量体もしくはヘテロ四量体、10~40個の四量体、例えばホモ四量体もしくはヘテロ四量体、または25~35個の四量体、例えばホモ四量体もしくはヘテロ四量体を含む任意のオリゴマーが、可溶性試薬として使用され得る。オリゴマーは、例えば、3~25個のストレプトアビジンムテイン四量体、例えばホモ四量体またはヘテロ四量体を有し得る。いくつかの局面において、ストレプトアビジンムテインの分子量が約50 kDaである場合、可溶性オリゴマーは、約150kDa~約2000 kDa、約150 kDa~約1500 kDa、約150 kDa~約1250 kDa、約150 kDa~1000 kDa、約150 kDa~約500 kDaまたは約150 kDa~約300 kDa、約300 kDa~約2000 kDa、約300 kDa~約1500 kDa、約300 kDa~約1250 kDa、約300 kDa~1000 kDa、約300 kDa ~約500 kDa、約500 kDa~約2000 kDa、約500 kDa~約1500 kDa、約500 kDa~約1250 kDa、約500 kDa~1000 kDa、約1000 kDa~約2000 kDa、約1000 kDa~約 1500 kDa、約1000 kDa~約1250 kDa、約1250 kDa~約2000 kDaまたは約1500 kDa~約2000 kDaの分子量を有し得る。通常、各ストレプトアビジン分子/ムテインは4つのビオチン結合部位を有するので、そのような試薬は12~160個の結合部位Z、例えば12~100個の結合部位Zを提供し得る。
【0195】
いくつかの態様において、試薬は、抗体またはそのフラグメントを含む結合物質を含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは可逆的に結合しておらず、あるいはヒト細胞表面分子またはその結合フラグメントを含む結合物質を含まず;試薬は、ヒト細胞表面マーカー、任意でT細胞マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは結合しておらず;試薬は、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、および/またはそれにコンジュゲートまたは結合しておらず;および/または試薬は、ヘパリン結合ドメインを含まず、および/またはインテグリン結合ドメインを含まず、および/またはVLA4結合ドメインを含まず、および/またはVLA5結合ドメインを含まない。
【0196】
いくつかの態様において、試薬はまた、それぞれがウイルス粒子の表面および/または標的細胞の表面上の分子に特異的に結合することができる複数の1種類または複数種類の結合物質を含む、および/またはそれに可逆的に結合する。
【0197】
2. 試薬の形式
a. 支持体
いくつかの態様において、形質導入および/または他の処理工程(たとえば選択、活性化または増殖)の1つまたは複数は、固体支持体上で、たとえば、オリゴマータンパク質試薬または多量体形成試薬が固定化、コンジュゲートまたは結合されているマトリックス、たとえば磁性粒子、アガロース粒子、細胞培養皿または他の固体表面マトリックスを使用することにより、実施することができる。いくつかの態様において、試薬は、支持体、たとえば固体支持体または面、たとえばビーズまたは固定相(クロマトグラフィーマトリックス)上に含まれる。いくつかのそのような態様において、試薬は支持体上に可逆的に固定化されている。いくつかの場合、試薬は、共有結合を介して支持体に固定化されている。いくつかの局面において、試薬は、非共有結合的に支持体に可逆的に固定化されている。いくつかの局面において、標的細胞および/またはウイルス粒子は、順次または同時に、たとえば固定相(たとえばクロマトグラフィーマトリックス)として存在する固体支持体上の試薬に曝露されるか、またはそれと接触させられる。
【0198】
いくつかの態様において、支持体は固体支持体である。任意の固体支持体(面)を試薬の可逆性固定化に使用することができる。試薬を固定化することができる固体支持体の代表的な例は、磁性ビーズ、ポリマービーズ、細胞培養プレート、マイクロタイタープレート、メンブレンまたは中空繊維を含む。いくつかの局面においては、中空繊維を、TerumoBCT Inc.(Lakewood, CO, USA)から市販されているQuantum(登録商標)Cell Expansion System中でバイオリアクターとして使用することができる。いくつかの態様において、試薬は固体支持体に共有結合している。他の態様においては、非共有結合的相互作用を、たとえばプラスチック基材上への固定化に使用することもできる。
【0199】
いくつかの態様において、試薬は、たとえば、ストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジンまたはアビジンムテインであることができる。そのようなストレプトアビジンムテインは、任意の表面、たとえばクロマトグラフィー精製に使用される樹脂(ビーズ)に共有結合することができ、そのような形態で、IBA GmbH, Gottingenから、たとえばStrep-Tactin(登録商標)Sepharose、Strep-Tactin(登録商標)Superflow(登録商標)、Strep-Tactin(登録商標)Superflow(登録商標)High CapacityまたはStrep-Tactin(登録商標)MacroPrep(登録商標)として市販されている。
【0200】
容易に購入することができる他の代表的な例は、オリゴヒスチジンタグ(Hisタグ)タンパク質の可逆性固定化、たとえば、結合パートナーCとしてオリゴヒスチジンタグ、たとえばペンタまたはヘキサヒスチジンタグを含む作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)の可逆性結合に使用することができる固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)樹脂、たとえばTALON(登録商標)樹脂(Westburg, Leusden, The Netherlands)である。他の例は、グルタチオンが結合する結合パートナーCまたはセファロースとしてカルモジュリン結合ペプチドを含む作用物質(たとえば受容体結合物質または選択物質)とともに使用することができる、GE Life Sciencesから市販されているカルモジュリンセファロースを含む。いくつかのそのような場合、結合パートナーCはグルタチオン-S-トランスフェラーゼである。
【0201】
いくつかの態様において、本方法に用いられる固体支持体は、磁気誘引性物質、たとえば1つまたは複数の磁気誘引性粒子または磁性流体を含み得る。それぞれの磁気誘引性粒子が、標的細胞またはウイルス粒子に結合することができる結合部位を有する試薬を含み得る。いくつかの場合、磁気誘引性粒子は、反磁性、強磁性、常磁性または超常磁性材料を含み得る。概して、超常磁性材料は、永久磁化を生じさせることなく、誘導磁場を有する磁場に応答する。酸化鉄に基づく磁性粒子は、たとえば、Dynabeads(登録商標)としてDynal Biotechから、磁性MicroBeadsとしてMiltenyi Biotecから、磁性多孔質ガラスビーズとしてCPG Inc.から、また、様々な他の供給元、たとえばいくつか挙げるならばRoche Applied Science、BIOCLON、BioSource International Inc.、micromod、AMBION、Merck、Bangs Laboratories、PolysciencesまたはNovagen Inc.から市販されている。超常磁性CoおよびFeCoに基づく磁性ナノ粒子ならびに強磁性Coナノ結晶がたとえばHutten, A. et al.(J. Biotech. (2004), 112, 47-63)によって記載されている。いくつかの態様において、細胞および細胞集団は、免疫磁気(またはアフィニティー磁気)分離技術(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher(商標) Humana Press Inc., Totowa, NJで考察)を使用して分離または単離される。
【0202】
いくつかの態様において、支持体は、固定相を含む。したがって、いくつかの態様において、試薬は、固定相(クロマトグラフィーマトリクスとも呼ばれる)に含まれる。いくつかのそのような態様において、試薬は、固定相に可逆的に固定化される。いくつかの例において、試薬は、共有結合を通じて固定相に可逆的に固定化される。いくつかの局面において、試薬は、非共有結合により固定相に可逆的に固定化される。
【0203】
任意の材料が、クロマトグラフィーマトリクスとして使用され得る。一般に、適当なクロマトグラフィー材料は、例えば、充填されたクロマトグラフィーカラムにおいて所望の条件下で使用される際に、本質的に無害なもの、すなわち、細胞の生存度に対して弊害をもたらさないものである。いくつかの態様において、固定相は、予め定められた場所、例えば、予め定められた位置で維持され、それに対して試料の場所が移動する。したがって、いくつかの態様において、固定相は、移動相が(フロースルーによりまたはバッチモードでのいずれかで)流動し、相間で(溶解したまたは分散したのいずれかの)液体相中に含まれる成分の分配が生じる、クロマトグラフィーシステムの一部である。
【0204】
いくつかの態様において、クロマトグラフィーマトリクスは、固体または半固体相の形態を有し、単離/分離したい標的細胞を含む試料は液体相である。クロマトグラフィーマトリクスは、(任意の適当なサイズおよび形状の)特定の材料または紙基材もしくはメンブレンを含むモノリシックなクロマトグラフィー材料である。したがって、いくつかの局面において、クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィーおよび平面クロマトグラフィーの両方であり得る。いくつかの態様において、標準的なクロマトグラフィーカラムに加えて、双方向の流れを実現するカラム、例えばPhyNexus, Inc. San Jose, CA, U.S.A.から入手可能なPhyTip(登録商標)カラムまたはピペットチップが、カラムベース/フロースルーモードベースの方法で使用され得る。したがって、いくつかの例において、双方向の流れを実現するピペットチップまたはカラムもまた、本発明の方法において有用なクロマトグラフィーカラムに含まれる。いくつかの例において、例えば粒状のマトリクス材料が使用される場合、粒状のマトリクス材料は、例えば、約5μm~約200μm、または約5μm~約400μm、または約5μm~約600μmの平均粒子サイズを有し得る。いくつかの局面において、クロマトグラフィーマトリクスは、例えば、ポリマー樹脂または金属酸化物または半金属酸化物であり得るかまたはそれらを含み得る。いくつかの局面において、例えば平面クロマトグラフィーが使用される場合、マトリクス材料は、平面クロマトグラフィーに適した任意の材料、例えば、従来的なセルロースベースもしくは有機ポリマーベースのメンブレン(例えば、紙製メンブレン、ニトロセルロースメンブレンもしくはフッ化ポリビニリデン(PVDF)メンブレン)またはシリカコーティングされたガラスプレートであり得る。1つの態様において、クロマトグラフィーマトリクス/固定相は、非磁性材料または非磁化性材料である。
【0205】
いくつかの態様において、本発明の方法に適した非磁性または非磁化性クロマトグラフィー固定相は、誘導体化シリカまたは架橋ゲルを含む。いくつかの局面において、架橋ゲルは、天然ポリマー、例えば自然界で発生するポリマークラスのものに基づき得る。例えば、クロマトグラフィー固定相の基礎となり得る天然ポリマーは、多糖である。いくつかの例において、各多糖は、通常、架橋される。多糖マトリクスの例は、アガロースゲル(例えば、Superflow(商標)アガロースまたはSepharose(登録商標)材料、例えば異なるビーズおよび孔サイズで市販されているSuperflow(商標)Sepharose(登録商標))または架橋デキストランのゲルを含むがこれらに限定されない。さらなる実例は、共にGE Healthcareから入手可能な、Sephadex(登録商標)またはSuperdex(登録商標)として(様々なビーズサイズおよび様々な孔サイズで)市販されている、デキストランが共有結合される粒状架橋アガロースマトリクスである。そのようなクロマトグラフィー材料の別の実例は、Sephacryl(登録商標)であり、これもGE Healthcareから異なるビーズおよび孔サイズで入手可能である。
【0206】
いくつかの態様において、架橋ゲルはまた、合成ポリマー、例えば自然界で発生しないポリマークラスのものに基づき得る。いくつかの局面において、クロマトグラフィー固定相の基礎となるそのような合成ポリマーは、極性単量体単位を有し、したがってそれ自体が極性であるポリマーである。したがって、いくつかの例において、そのような極性ポリマーは、親水性である。疎油性とも称される親水性分子は、いくつかの局面において、水分子と双極子・双極子相互作用を形成し得る部分を含む。一般に、親油性とも称される疎水性分子は、水から分離する傾向を有する。
【0207】
適当な合成ポリマーの実例は、ポリアクリルアミド、スチレンジビニルベンゼンゲルならびにアクリレートおよびジオールまたはアクリルアミドおよびジオールのコポリマーである。実例は、Fractogel(登録商標)として市販されているポリメタクリレートゲルである。さらなる例は、Toyopearl(登録商標)として市販されているエチレングリコールおよびメタクリレートのコポリマーである。いくつかの態様において、クロマトグラフィー固定相はまた、天然および合成ポリマー成分、例えば、複合マトリクスもしくは複合材または多糖およびアガロースのコポリマー、例えばポリアクリルアミド/アガロース複合材、または多糖およびN,N'-メチレンビスアクリルアミドのコポリマーを含み得る。デキストランおよびN,N'-メチレンビスアクリルアミドのコポリマーの実例は、上記のSephacryl(登録商標)シリーズの材料である。いくつかの態様において、誘導体化シリカは、合成または天然ポリマーに連結されたシリカ粒子を含み得る。そのような態様の例は、多糖結合シリカ、ポリビニルピロリドン結合シリカ、ポリエチレンオキシド結合シリカ、ポリ(2-ヒドロキシエチルアスパルトアミド)シリカおよびポリ(N'-イソプロピルアクリルアミド)結合シリカを含むがこれらに限定されない。
【0208】
いくつかの態様において、本発明の方法において使用されるクロマトグラフィーマトリクスはまた、磁気的に誘引可能な物体、例えば1つまたは複数の磁気的に誘引可能な粒子または磁性流体を含み得る。各々の磁気的に誘引可能な粒子は、標的細胞に結合することができる結合部位を有する試薬を含み得る。いくつかの例において、磁気的に誘引可能な粒子は、反磁性、強磁性、常磁性または超常磁性材料を含み得る。一般に、超常磁性材料は、永久磁化を起こすことなく誘起磁場による磁場に反応する。酸化鉄に基づく磁気粒子は、例えば、Dynal BiotechからDynabeads(登録商標)、Miltenyi Biotecから磁性MagneticBeadsとして、CPG Inc.,から磁性多孔性ガラスビーズとして、および様々な他の販売元、例えば、いくつか挙げると、Roche Applied Science、BIOCLON、BioSource International Inc.、micromod、AMBION、Merck、Bangs Laboratories、Polysciences、またはNovagen Inc.から、市販されている。超常磁性CoおよびFeCoならびに強磁性Coナノ結晶に基づく磁性ナノ粒子が、例えばHutten, A. et al. (J. Biotech. (2004), 112, 47-63)によって報告されている。他の態様において、本発明の方法において使用されるクロマトグラフィーマトリクスは、任意の磁気的に誘引可能な物体のくぼみである。
【0209】
b. 可溶物
いくつかの態様において、試薬は、固体支持体に結合されない、すなわち、それは可溶性形態で存在するかまたは可溶性である。原則として、支持体、例えば固体支持体または固定相に固定化される試薬の場合と同じ試薬が使用され得る。例えば、上記の試薬の任意の例が、そのような試薬を支持体、例えば、固体支持体または固定相に固定化も付加もすることなく使用され得る。いくつかの態様において、試薬は、結合パートナーCとの相互作用を通じた結合物質への可逆的結合のための複数の結合部位Zを含む。いくつかの例において、試薬は、個別分子のオリゴマーもしくはポリマー、または個別分子を形成するサブユニットの複合体のオリゴマーもしくはポリマー(例えば、二量体、三量体もしくは四量体タンパク質のオリゴマーもしくはポリマー)である。いくつかの態様において、試薬は、例えば、ストレプトアビジンムテインオリゴマー、カルモジュリンオリゴマー、あるいは、遷移金属イオンに結合することができ、それによってその試薬をオリゴヒスチジン親和性タグ、多量体グルタチオン-S-トランスフェラーゼまたはビオチニル化担体タンパク質に結合できるようにする少なくとも2つのキレート基Kを提供する化合物(オリゴマー)であり得る。
【0210】
いくつかの態様において、試薬は、試薬に付加された固体支持体(表面)の不存在により特徴づけられる。例えば、いくつかの態様において、試薬は、粒子、ビーズ、ナノ粒子、マイクロスフィアまたは他の固体支持体を含まないかまたはそれらに(直接的もしくは間接的に)付加されない。いくつかの態様において、試薬は、硬直的な、柔軟性のないもしくは堅いものではない、または硬直的な、柔軟性のないもしくは堅い表面を含まないかもしくはそれに付加されない。いくつかの態様において、試薬は、柔軟であるまたは実質的に柔軟である。いくつかの例において、試薬は、細胞の表面の形状に対して調節するまたは適合させることができる。いくつかの態様において、試薬は、球状または実質的に球状の形状を含まない。
【0211】
いくつかの態様において、試薬の実質的にすべて、すなわち、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超またはそれ以上が、有機物である、有機物から構成されるまたは有機物を含む。例えば、いくつかの態様において、試薬の80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超またはそれ以上が、脂質、糖質、タンパク質、ペプチドもしくはそれらの混合物である、それらから構成されるまたはそれらを含む。いくつかの態様において、試薬は、無機物、無機コア、例えば金属、例えば鉄、合成または無機ポリマー、例えばスチレンポリマー、例えばポリスチレン、ラテックス、シリカもしくは磁性コアを本質的に含まない、本質的にそれらから構成されないまたは本質的にそれらを含まない。例えば、いくつかの態様において、試薬の一部として含まれる試薬における無機物の相対的パーセンテージは、20%、15%、10%、5%未満またはそれより少ない。
【0212】
いくつかの態様において、水溶液中の試薬の全体の大部分(すなわち、50%超)、例えば60%、70%、80%、90%、95%、99%超またはそれ以上は、試薬を含む個別タンパク質分子、例えば個別分子または個別分子を形成するサブユニットの複合体(例えば、四量体分子)のオリゴマーもしくはポリマーからなる。いくつかの態様において、可溶性試薬の総密度は、1.2 g/cm3、1.1 g/cm3、1.0 g/cm3未満またはそれより小さい。
【0213】
いくつかの態様において、例えば支持体または固体支持体に付加されていない(例えば、ビーズに付加されていない)可溶性試薬は、比較的小さいサイズ、例えば、通常、20 nm未満または約20 nm未満のサイズ、例えば、15 nm未満もしくは約15 nm未満、10 nm未満もしくは約10 nm未満、5 nm未満もしくは約5 nm未満、またはそれより小さい。
【0214】
いくつかの態様において、例えば支持体または固体支持体に付加されていない(例えば、ビーズに付加されていない)可溶性試薬は、生物学的に不活性である、すなわち、それは生細胞に対して非毒性である。いくつかの態様において、試薬は生分解性であり得る、例えば、それは酵素的活性によって分解され得るまたは食細胞によって除去され得る。
【0215】
いくつかの態様において、試薬(例えば、ストレプトアビジンまたはムテイン、例えば四量体ストレプトアビジンムテイン)を担体、例えば有機担体に反応させることが可能である。いくつかの局面において、多糖との反応に加えて、担体タンパク質として生理学的または薬学的に許容されるタンパク質、例えば血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA))を使用することも可能である。そのような例において、試薬、例えば、(個別の四量体としてまたはオリゴマーの形態のいずれかの)ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインは、非共有結合的相互作用を通じて担体タンパク質に連結され得る。いくつかのそのような態様において、(様々な販売元、例えば、いくつか挙げるとThermoFisher Scientific、Sigma AldrichまたはVectorlabs、から市販されている)ビオチニル化BSAを、試薬(例えば、ストレプトアビジンムテイン)と反応させることができる。いくつかの局面において、試薬オリゴマー(例えば、ストレプトアビジンオリゴマー)の一部は、オリゴマーの結合部位Zの大部分を作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)および本明細書に記載される任意のさらなる作用物質との結合に利用可能な状態で残しつつ、1つまたは複数の結合部位Zを通じて、ビオチニル化担体タンパク質に非共有結合的に連結され得る。したがって、そのようなアプローチによって、複数の結合部位Zを有する可溶性試薬が調製され得る。
【0216】
他の態様において、試薬、例えば、(個別の四量体としてまたはオリゴマーの形態のいずれかの)ストレプトアビジンムテインは、合成担体、例えばポリエチレングリコール(PEG)分子に、共有結合的に連結され得る。任意の適当なPEG分子が、例えば、この目的で使用され得、PEG分子および各試薬は可溶性であり得る。典型的に、1000 Daの分子量までのPEG分子は、本発明の方法において使用され得る水または培養培地に可溶性である。いくつかの例において、そのようなPEGベースの試薬は、市販の活性化PEG分子(例えば、NOF North America Corporation, Irvine, California, USAから入手可能なPEG-NHS誘導体またはCreative PEGWorks, Chapel Hills, North Carolina, USAから入手可能な活性化PEG誘導体)とストレプトアビジンムテインのアミノ基とを用いて調製され得る。
【0217】
3.成分の除去または分断
いくつかの態様において、形質導入および/または1つまたは複数の他のプロセス(例えば、選択、活性化、刺激および/または増殖)が中断されることが望まれるインキュベーションまたは他の好適な時間の後、可逆的に結合している作用物質の結合パートナーC(例えば、C1)と多量体形成試薬の結合部位Z(例えば、Z1)との間の結合は、それぞれの可逆的結合を破壊することによって破壊される。いくつかの場合では、破壊は、多量体形成試薬に結合している細胞集団を含むインキュベーション/反応混合物に、競合物質を加えることによって達成され得る。可逆的に結合している作用物質の結合パートナーC(例えば、C1)と多量体形成試薬の結合部位Z(例えば、Z1)との間の可逆的結合の競合的破壊(競合的溶離であると理解することができる)のために、細胞のインキュベーション混合物/集団を、第一の結合パートナーと結合部位Z(例えば、Z1)との間の結合を破壊させることができる遊離の第一の結合パートナーC(例えば、C1)、または該第一の結合パートナーCの類似体と接触させることができる。ストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合するストレプトアビジン結合ペプチドである結合パートナーC(例えば、C1)の例では、第一の遊離のパートナーは、対応する遊離のストレプトアビジン結合ペプチドまたは競合的に結合する類似体であってよい。このような類似体は、例えば、ビオチンまたはビオチン誘導体、例えばデスチオビオチンであることができる。
【0218】
いくつかの局面において、ストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、Strep-tag)とストレプトアビジンムテイン結合試薬との間の結合は強いが、ビオチンまたはビオチン類似体に対するストレプトアビジン結合試薬の結合親和性よりも小さいので、可逆性を達成することができる。よって、いくつかの態様において、ビオチン(ビタミンH)またはビオチン類似体を加えて結合に関して競合することで、ストレプトアビジンムテイン結合試薬(例えば、固体支持体(例えば、ビーズまたはクロマトグラフィーマトリックス)上に存在する)とストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、Strep-tag)との間の結合相互作用を妨害することができる。いくつかの態様において、相互作用を、低濃度のビオチンまたは類似体の存在下で、例えば0.1mM~10mM、0.5mM~5mMまたは1mM~3mM、例えば一般に少なくとも1mMもしくは少なくとも約1mM、または少なくとも2mM、例えば2.5mMまたは約2.5mMの存在下で逆転させることができる。いくつかの態様において、競合物質、例えばビオチンまたはビオチン類似体の存在下でのインキュベーションは、選択された細胞を固体支持体、例えばクロマトグラフィーマトリックスまたはビーズから放出させる。
【0219】
いくつかの態様において、可逆的に結合している作用物質(1つまたは複数)の細胞表面分子からの解離に起因して、提供される方法は、刺激された細胞集団が、刺激期間の終了時に、結合物質(例えば、ウイルス結合物質、選択物質または刺激物質)を含まないという追加利点を有する。また、いくつかの態様において、該方法において使用される全ての他の試薬、すなわち作用物質(例えば、第一または第二の受容体結合物質、例えば、刺激物質、または選択物質)、ならびに結合パートナーC(例えば、C1)、またはその類似体の競合試薬を、刺激された細胞集団から容易に除去することができる。
【0220】
いくつかの態様において、成分(例えば、競合試薬)の分離/除去を、第二の固定相を使用して実施することができる。この目的のために、標的細胞および/またはウイルス粒子ならびに1つまたは複数の残留成分を含む混合物が、例えば、上記の第一の固定相上に適用される前または適用された後、好適な第二の固定相上のクロマトグラフィーに曝露される。この二次固定相は、ゲル濾過マトリックスおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであってよく、ゲル濾過および/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、親和性試薬を含む。クロマトグラフィー樹脂上に含まれる親和性試薬は、試薬(例えば、ストレプトアビジンムテイン、例えばStrep-Tactin)の結合部位Zに(特異的に)結合する結合パートナーDを含み、それによって結合分子試薬を固定相上に固定化する。いくつかの態様において、親和性試薬は、例として、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジン、アビジンムテインまたはその混合物であってよい。いくつかの態様において、作用物質(例えば、第一または第二の受容体結合物質、例えば、刺激物質、または選択物質)および/または競合試薬は、親和性試薬に結合し、それによってクロマトグラフィーマトリックス上に固定化される。いくつかの局面において、ストレプトアビジン系結合分子試薬(例えば、Strep-Tactin)が使用され、かつ、それに結合する作用物質がストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、Strep-tag)を含む場合、この第二の固定相の親和性試薬中に含まれる結合パートナーDは、ビオチンであることができる。組成物中の任意の残留ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインは、その後、市販されているクロマトグラフィーマトリックス、例えばビオチン-セファロース(商標)に通常共有結合するビオチンに結合する。
【0221】
いくつかのこのような態様において、標的細胞(例えば、遺伝子修飾された、例えば形質導入されたT細胞)を試薬から回収することができる。
【0222】
結果として、培養細胞、例えば、単離された、選択された、形質導入された、活性化されたおよび/または増殖された細胞集団を含む試料は、作用物質(例えば、第一の作用物質、第二の作用物質など、例えばウイルス結合物質、選択物質または受容体結合物質、例えば、刺激物質、または選択物質)および/または競合物質が枯渇している。いくつかの態様において、培養された組成物は、いかなる反応物質も含まず、それは、いくつかの局面において、特定の用途に関連した使用に、例えば任意の細胞ベースの治療用途に有利である。
【0223】
いくつかの態様において、作用物質と試薬との間の結合を破壊または逆転させるために使用される競合物質を、「除去カートリッジ」を介して、刺激された細胞集団から容易に除去することができる(例えば、国際特許出願WO 2013/124474に記載されているものを参照のこと)。いくつかの場合、例えば、試薬が、固体支持体、例えばバイオリアクター表面または磁気ビーズ上に固定化されている場合では、試薬は引き止められている。したがって、遊離の作用物質および競合試薬の除去のための除去カートリッジの使用は、溶離試料(例えば、可逆的結合の破壊後に得られた試料)を第二のクロマトグラフィーカラム上に装填する工程を含むことができる。いくつかの態様において、このクロマトグラフィーカラムは、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスであると同時にゲル浸透マトリックスとして作用することの両方ができる、好適な固定相を有する。いくつかの局面において、このアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、その上に固定化された親和性試薬を有する。いくつかの態様において、親和性試薬は、例として、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、アビジン、アビジンムテインまたはその混合物であってよい。
【0224】
いくつかの態様において、クロマトグラフィーマトリックスは、例えば、本明細書に記載のとおりの除去カートリッジにおいて使用されるとき、ゲル濾過マトリックスである。一般に、ゲル濾過は、通り抜けるように設計されているその性質によって特徴付けることができる。よって、ゲル濾過マトリックスは、いくつかの局面において、細胞または他の生物学的実体を主にそれらのサイズに基づいて分離することを可能にする。いくつかのこのような局面において、それぞれのクロマトグラフィーマトリックスは、典型的には、上に述べたとおりの微粒子状の多孔質材料である。クロマトグラフィーマトリックスは、典型的には分子量の観点で規定される特定の排除限界を有してもよく、それを超える分子は、細孔への侵入から完全に除外される。いくつかの態様において、そのサイズ排除限界を規定するそれぞれの分子量は、標的細胞の重量に対応する重量以下になるように選択され得る。このような態様において、標的細胞は、サイズ排除クロマトグラフィーマトリックスの細孔に侵入することが妨げられる。同様に、固定相は、選択された標的細胞のサイズよりも小さいサイズの細孔を有してよい。例示的な態様において、クロマトグラフィーマトリックスは、0~約500nmの平均細孔径を有する。
【0225】
いくつかの態様において、試料中に存在する成分、例えば作用物質(例えば、ウイルス結合物質、受容体結合物質または選択物質)または競合試薬は、細孔の排除限界以下であるサイズを有してよく、したがってクロマトグラフィーマトリックスの細孔に侵入することができる。いくつかの局面において、細孔容積に部分的にまたは完全に侵入することができるこのような成分の中で、細孔容積へ接近し難いより大きな分子は、最初に溶離することができるが、一方で、最も小さな分子は典型的には最後に溶離する。いくつかの態様において、クロマトグラフィーマトリックスの排除限界は、標的細胞の最大幅未満になるように選択される。よって、いくつかの局面において、細孔容積に接近できる成分は、標的細胞よりクロマトグラフィーマトリックス内/上に長く留まることができる。したがって、いくつかの場合では、標的細胞を、クロマトグラフィーカラムの溶離液中に、試料の他の物体/成分から別々に収集することができる。それゆえ、いくつかの局面において、成分、例えば作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)、または、該当する場合、競合試薬は、標的細胞よりも後の時点でゲル濾過マトリックスから溶離し得る。いくつかの態様において、例えば、ゲル浸透マトリックスが、試料中に存在する作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)および/または競合試薬に結合することができる結合部位Zを含む試薬(例えばその上に共有結合した)を含む場合、この効果はさらに増大することができる。いくつかの場合では、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)および/または競合試薬は、試薬の結合部位Zに結合して、それによってマトリックス上に固定化されることができる。いくつかの局面において、この方法は、除去カートリッジ中で実施される。
【0226】
いくつかの態様において、第一および第二の固定相、例えば細胞の選択のためのクロマトグラフィーカラム(選択カートリッジ)および試薬の除去のための第二のクロマトグラフィーカラム(除去カートリッジ)の少なくとも1つの配置を含む、装置が提供される。装置は、直列に流体接続されている第一および第二の固定相(クロマトグラフィーカラム)の複数の配置を含んでよい。装置は、第一および第二の固定相の第一の配置の第一の固定相に流体接続されている、試料入口を含んでよい。いくつかの態様において、装置はまた、細胞用の試料出口を含んでもよく、試料出口は、クロマトグラフィー用の第一および第二の固定相の少なくとも1つの配置の最後の第二の固定相に流体接続されている。いくつかの局面において、装置はまた、第一および第二の固定相の配置の第一の固定相の少なくとも1つに流体接続されている競合試薬容器を含んでもよい。
【0227】
いくつかの態様において、試薬および他の成分を組成物から除去する能力は、磁気ビーズのような任意の固体支持体を回避することができるさらなる利点を有する。いくつかの態様において、これは、このような磁気ビーズによる標的細胞(例えば、遺伝子修飾された、例えば形質導入されたT細胞)の混入のリスクがないかまたはリスクが最小限であることを意味する。いくつかの態様において、これはまた、最終T細胞集団が磁気ビーズを確実に含まないようにするために追加の措置を講じる必要があるDynabeads(登録商標)の使用のような他の方法と比較して、GMP基準に準拠するプロセスをより容易に確立することができることを意味する。
【0228】
B. 結合物質
いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、ウイルスベクター粒子結合物質)は、生物学的粒子、例えば細胞、微生物またはウイルスの表面上の分子への結合のための1つまたは複数の結合部位を有する。いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)は、細胞の表面上の分子、例えば、細胞表面分子への結合のための1つまたは複数の結合部位Bを有する。いくつかの態様において、作用物質(例えば、ウイルスベクター粒子結合物質)は、ウイルス粒子の表面上の分子への結合のための1つまたは複数の結合部位Vを有する。したがって、いくつかの例では、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)は、結合部位(例えば、BまたはV)または複数の結合部位(例えば、複数の結合部位BまたはV)を含み、ここで、作用物質と生物学的粒子(例えば、細胞またはウイルス粒子)の表面上の分子との間の特異的結合は、1つまたは複数の結合部位(例えば、BまたはV)と分子との間の相互作用を含む。
【0229】
いくつかの態様において、作用物質は、単一の結合部位のみを含む、すなわち、これは一価である。いくつかの態様において、作用物質は、分子に結合することができる少なくとも2つ、例えば複数の結合部位(3、4または5つの結合部位を含む)を有する。いくつかの場合では、結合部位はBであり、かつ作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)は細胞表面分子に結合することができる複数の結合部位B(2、3、4または5つの結合部位Bを含む)を含む(例えば、B1、B2、B3など)。いくつかのこのような局面において、結合部位Bの少なくとも2つまたは複数は、同一であってよい。いくつかの態様において、結合部位Bの少なくとも2つまたは複数の1つもしくは複数は、異なっていてよい(例えば、B1およびB2)。いくつかの態様において、結合部位はVであり、作用物質(例えば、ウイルス粒子結合物質)はウイルスベクター粒子の表面上の分子に結合することができる複数の結合部位V(2、3、4または5つの結合部位Vを含む)を含む(例えば、V1、V2、V3など)。いくつかのこのような局面において、結合部位Vの少なくとも2つまたは複数は、同一であってよい。いくつかの態様において、結合部位Vの少なくとも2つまたは複数の1つもしくは複数は、異なっていてよい(例えば、V1およびV2)。いくつかの態様において、結合部位(例えば、BまたはV)は、抗体結合部位(例えば、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))またはこのような抗体結合部位の少なくとも2つを含む。
【0230】
いくつかの態様において、1つまたは複数の異なる作用物質(例えば、1つまたは複数の異なる受容体結合物質、選択物質または細胞上の分子に結合する他の作用物質)は、試薬に可逆的に結合する。いくつかの態様において、少なくとも2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なる作用物質は、同じ試薬に可逆的に結合する。いくつかの態様において、少なくとも2つの異なる作用物質が同じ試薬に可逆的に結合し、各試薬は、作用物質と分子との間の特異的結合のための1つの結合部位Bまたは複数の結合部位Bを含む。いくつかの態様において、少なくとも2つまたはそれ以上の作用物質は、例えば、同じまたは実質的に同じ分子への結合のための、同じ結合部位Bを含む。いくつかの態様において、少なくとも2つまたはそれ以上の作用物質は、例えば異なる分子への結合のための、異なる結合部位Bを含む。いくつかの態様において、第1の作用物質(例えば、第1の受容体結合物質または第1の選択物質)は、結合部位B1、B2、B3、B4等を含み、第2の作用物質(例えば、第2の受容体結合物質または第2の選択物質)は、結合部位B1、B2、B3、B4等のうちの別のものを含む。いくつかの態様において、第1の作用物質(例えば、第1の選択物質)は結合部位B1を含み、第2の作用物質(例えば、第2の選択物質)は結合部位B3を含む。いくつかの態様において、第1の作用物質(例えば、第1の受容体結合質)は結合部位B2を含み、第2の作用物質(例えば、第2の受容体結合物質)は結合部位B4を含む。任意のそのような態様において、第1の作用物質および第2の作用物質は、結合パートナーC1またはC2を含み得る。いくつかの態様において、C1およびC2は同じであり得る。いくつかの態様において、C1およびC2は異なる。いくつかの態様において、第1の作用物質および第2の作用物質は、同じ結合パートナーC1を含む。
【0231】
いくつかの例において、(例えば、その結合部位Bを通じた)作用物質と試薬の結合部位Zとの間の結合の解離定数(KD)は、約10-2 M~約10-13 Mまたは約10-3 M~約10-12 Mまたは約10-4 M~約10-11 M、または約10-5 M~約10-10 Mの範囲の値を有し得る。いくつかの態様において、結合物質と分子との間の結合の解離定数(KD)は、低い親和性のもの、例えば、約10-3~約10-7 Mの範囲内である。いくつかの態様において、結合物質と分子との間の結合の解離定数(KD)は、高い親和性のもの、例えば、約10-7~約1 x 10-10 Mの範囲内である。
【0232】
いくつかの態様において、結合部位BまたはVを通じた作用物質と分子との結合の解離は、例えば、試薬と作用物質との間の可逆的結合の破壊の後に、生物学的粒子(例えば標的細胞またはウイルス粒子)が作用物質により一過的にのみ染色されるまたは作用物質と一過的にのみ結合するのに十分に早く起こる。いくつかの例において、koff速度((結合部位Bを通じた)作用物質と分子との間の結合の解離速度定数とも呼ばれる)で表現される場合、koff速度は、約0.5 x 10-4秒-1もしくはそれ以上、約1 x 10-4秒-1もしくはそれ以上、約2 x 10-4秒-1もしくはそれ以上、約3 x 10-4秒-1もしくはそれ以上、約4 x 10-4秒-1もしくはそれ以上、約5 x 10-4秒-1もしくはそれ以上、約1 x 10-3秒-1もしくはそれ以上、約1.5 x 10-3秒-1もしくはそれ以上、約2 x 10-3秒-1もしくはそれ以上、約3 x 10-3秒-1もしくはそれ以上、約4 x 10-3秒-1もしくはそれ以上、約5 x 10-3秒-1もしくはそれ以上、約1 x 10-2秒もしくはそれ以上、または約5 x 10-1秒-1もしくはそれ以上である。特定の作用物質と細胞の分子との相互作用に適したkoff速度範囲を経験的に決定することは、当業者の技能の範囲内である(例えば、公開された米国出願番号US2014/0295458を参照のこと)。例えば、結合複合体の崩壊の後に作用物質の大部分が1時間以内に除去または分離され得るように、例えば4.0 x 10-4秒-1より大きい、比較的高いkoff速度を有する作用物質が使用され得る。他の例において、結合複合体の崩壊の後に、作用物質の大部分が約3.5時間以内に細胞から除去または分離され得るように、例えば1.0 x 10-4秒-1の、低いkoff速度を有する作用物質が使用され得る。
【0233】
いくつかの態様において、この結合のKDならびに作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルス粒子結合物質)の結合部位(BまたはV)と分子との間で形成される結合のKD、KA、koffおよびkon速度は、任意の適当な手段によって、例えば蛍光滴定、平衡透析または表面プラズモン共鳴によって決定され得る。
【0234】
いくつかの局面において、それに対して作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)が誘導され得る分子は、細胞表面分子である。いくつかの態様において、細胞表面分子は、ペプチドまたはタンパク質、例えば受容体、例えば膜受容体タンパク質である。いくつかの態様において、受容体は、脂質、多糖または核酸である。いくつかの態様において、タンパク質である細胞表面分子は、表在性膜タンパク質または内在性膜タンパク質であり得る。細胞表面分子は、いくつかの態様において、膜をまたぐ1つまたは複数のドメインを有し得る。いくつかの実例として、膜貫通ドメインを有する膜タンパク質は、Gタンパク質共役受容体、例えば嗅覚受容体、ロドプシン受容体、ロドプシンフェロモン受容体、ペプチドホルモン受容体、味覚受容体、GABA受容体、オピエート受容体、セロトニン受容体、Ca2+受容体、メラノプシン、アセチルコリン、ニコチン性、アドレナリン作用性、ノルエピネフリン、カテコールアミン、L-DOPA-、ドパミンおよびセロトニン(生体アミン、エンドルフィン/エンケファリン)神経ペプチド受容体を含む、神経伝達物質受容体、例えばリガンド依存性、電圧依存性または機械刺激依存性受容体、受容体キナーゼ、例えばセリン/スレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼ、ポーリン/チャネル、例えば塩素チャネル、カリウムチャネル、ナトリウムチャネル、OMPタンパク質、ABCトランスポーター(ATP結合カセットトランスポーター)、例えばアミノ酸トランスポーター、Na-グルコーストランスポーター、Na/ヨウ化物トランスポーター、イオントランスポーター、例えば集光複合体、シトクロムcオキシダーゼ、ATPase Na/K、H/K、Ca、細胞接着受容体、例えばメタロプロテアーゼ、インテグリンまたはカトヘリン(catherin)であり得る。
【0235】
いくつかの態様において、細胞表面分子は、望ましい細胞集団またはサブ集団、例えば、血液細胞の集団またはサブ集団、例えばリンパ球(例えば、T細胞、Tヘルパー細胞、例えばCD4+ Tヘルパー細胞、B細胞もしくはナチュラルキラー細胞)、単球、または幹細胞、例えばCD34陽性末梢幹細胞またはNanogもしくはOct-4発現幹細胞を定義する抗原であり得る。T細胞の例は、CMV特異的CD8+ Tリンパ球、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞および調節性T細胞(Treg)等の細胞を含む。Tregの実例は、CD4 CD25 CD45RA Treg細胞であり、メモリーT細胞の実例は、CD62L CD8+特異的セントラルメモリーT細胞である。細胞表面分子はまた、腫瘍細胞のマーカーであり得る。
【0236】
いくつかの態様において、それに対して作用物質(例えば、ウイルスベクター粒子結合物質)が誘導され得る分子は、ウイルス表面上の分子である。そのような分子の例を、以下に記載する。
【0237】
上記のように、いくつかの態様において、結合部位BまたはVに加えて、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルス粒子結合物質)は、結合パートナーCを有する。いくつかの局面において、この結合パートナーCは、試薬の結合部位Zに結合することができ、試薬は、結合パートナーCに対する1つまたは複数の結合部位を有する。いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)に含まれる結合パートナーCと試薬の結合部位Zとの間で形成され得る非共有結合的な結合は、任意の所望の強度および親和性のものであり得、この方法を実施する条件下で破壊可能または可逆的であり得る。作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)は、2つ、3つまたはそれ以上を含む少なくとも1つのさらなる結合パートナーCを含み得、試薬は、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、および/またはウイルス粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCに対する少なくとも2つ、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれ以上の結合部位Zを含み得る。米国特許7,776,562、米国特許8,298,782または国際特許出願WO 2002/054065に記載されるように、結合パートナーCと1つまたは複数の対応する結合部位Zとを有する試薬の任意の組み合わせが、例えば、結合パートナーCおよび結合部位Zが、例えばアビディティ効果を生じるように、複合体内で可逆的に結合することができるように、選択され得る。
【0238】
作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルスベクター粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCは、例えば、炭化水素ベース(ポリマーを含む)であり得、窒素、リン、硫黄、カルベン、ハロゲンまたはプソイドハロゲン基を含み得る。いくつかの局面において、それは、アルコール、有機酸、無機酸、アミン、ホスフィン、チオール、ジスルフィド、アルカン、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂質、糖、オリゴ糖または多糖であり得る。さらなる例として、それはまた、カチオン、アニオン、ポリカチオン、ポリアニオン、ポリカチオン、電解質、高分子電解質、カーボンナノチューブまたはカーボンナノフォームであり得る。通常、そのような結合パートナーCは、他の物体に対するよりも試薬の結合部位に対してより高い親和性を有する。各結合パートナーCの例は、クラウンエーテル、免疫グロブリン、それらのフラグメントおよび抗体様機能を有するタンパク質性結合分子を含むがこれらに限定されない。
【0239】
いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルスベクター粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCは、ビオチンを含み、試薬は、ビオチンに可逆的に結合するストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含む。いくつかの態様において、作用物質に含まれる結合パートナーCは、ストレプトアビジンまたはアビジンに可逆的に結合するビオチン類似体を含み、試薬は、各々のビオチン類似体に可逆的に結合するストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含む。いくつかの態様において、作用物質に含まれる結合パートナーCは、ストレプトアビジンまたはアビジン結合ペプチドを含み、試薬は、各々のストレプトアビジンまたはアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体またはアビジン類似体を含む。
【0240】
いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジン、例えば、(例えばSEQ ID NO:3~6に示される)上記の任意のものを含むストレプトアビジンムテインであり、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)に含まれる結合パートナーCは、ストレプトアビジン結合ペプチドを含み得る。いくつかの態様において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、SEQ ID NO:9に示される一般式を有する配列を含み得る、例えばSEQ ID NO:10に示される配列を含む。いくつかの態様において、ペプチド配列は、SEQ ID NO:11に示される、例えばSEQ ID NO:12に示される一般式を有する。1つの例において、ペプチド配列は、
(Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:7に示される)である。1つの例において、ペプチド配列は、
(Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:8に示される)である。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、少なくとも2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続的配置を含み、2つのモジュール間の距離は少なくとも0かつ50アミノ酸以下であり、1つの結合モジュールは3~8アミノ酸を有し、少なくとも配列His-Pro-Xaa(SEQ ID NO:9)を含み、Xaaはグルタミン、アスパラギンまたはメチオニンであり、他の結合モジュールは、(例えばSEQ ID NO:11に示される)同じまたは異なるストレプトアビジンペプチドリガンドを有する(例えば、国際公開PCT出願番号WO02/077018;米国特許第7,981,632号を参照のこと)。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:13または14のいずれかに示される式を有する配列を含む。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:15~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を有する。大部分の例において、すべてのこれらのストレプトアビジン結合ペプチドは、同じ結合部位、すなわちストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合する。そのようなストレプトアビジン結合ペプチドの1つまたは複数がビオチンパートナーC、例えばC1およびC2として使用される場合、多量体形成試薬は典型的に、ストレプトアビジンムテインである。
【0241】
いくつかの態様において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、さらに修飾され得る。いくつかの態様において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、ニッケル付加trisNTA(His-STREPPERまたはHis/Strep-tag(登録商標)IIアダプターとも呼ばれる)にコンジュゲートされたペプチド配列
(Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:8に示される)を含み得る。
【0242】
いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、および/またはウイルスベクター粒子結合物質)の結合パートナーCは、親和性タグとして当業者に公知の部分を含む。そのような態様において、試薬は、対応する結合パートナー、例えば、親和性タグに結合することが公知の抗体または抗体フラグメントを含み得る。公知の親和性タグのいくつかの実例として、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)に含まれる結合パートナーCは、ジニトロフェノールまたはジゴキシゲニン、オリゴヒスチジン、ポリヒスチジン、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)またはチオレドキシン、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、
、マルトース結合タンパク質(MBP)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質Dの配列
のHSVエピトープ、配列
の転写因子c-mycの「myc」エピトープ、V5タグ
またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)を含み得る。そのような態様において、抗体または抗体フラグメントであり得る試薬の1つまたは複数の結合部位Zと抗原との間で形成される複合体は、遊離抗原、すなわち遊離ペプチド(エピトープタグ)または遊離タンパク質(例えば、MBPもしくはCBP)を添加することによって競合的に妨げられ得る。いくつかの態様において、親和性タグはまた、オリゴヌクレオチドタグであり得る。いくつかの例において、そのようなオリゴヌクレオチドタグは、例えば、試薬に連結されたまたは試薬に含まれる相補的配列を有するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせるために使用され得る。
【0243】
適当な結合パートナーCのさらなる例は、レクチン、プロテインA、プロテインG、金属、金属イオン、ニトリロ三酢酸誘導体(NTA)、RGDモチーフ、デキストラン、ポリエチレンイミン(PEI)、レドックスポリマー、糖タンパク質、アプタマー、色素、アミロース、マルトース、セルロース、キチン、グルタチオン、カルモジュリン、ゼラチン、ポリミキシン、ヘパリン、NAD、NADP、リジン、アルギニン、ベンズアミジン、ポリUまたはオリゴdTを含むがこれらに限定されない。レクチン、例えばコンカバリンAは、多糖およびグリコシル化タンパク質に結合することが公知である。色素の実例は、NADH依存的酵素に特異的に結合するトリアジン色素、例えばCibacronブルーF3G-A(CB)またはレッドHE-3Bである。典型的に、グリーンAは、CoAタンパク質、ヒト血清アルブミンおよびデヒドロゲナーゼに結合する。いくつかの例において、色素7-アミノアクチノマイシンDおよび4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドールは、DNAに結合する。一般に、金属、例えばNi、Cd、Zn、CoまたはCuのカチオンは、典型的に、親和性タグ、例えばヘキサヒスチジンまたは
およびN-メタクリロイル-(L)-システインメチルエステルを含むオリゴヒスチジン含有配列に結合させるために使用される。
【0244】
いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルスベクター粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCと試薬の1つまたは複数の結合部位Zとの間の結合は、二価、三価または四価カチオンの存在下で生じる。これに関して、いくつかの態様において、試薬は、典型的には適当なキレート剤によって保持、例えば錯体化された、二価、三価または四価カチオンを含む。いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)に含まれる結合パートナーCは、二価、三価または四価カチオンを含む、例えば錯体を含む部分を含み得る。各々の金属キレート剤の例は、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(ニトリロ三酢酸、NTAとも呼ばれる)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(ジメルカプロール)、プロフィンおよびヘムを含むがこれらに限定されない。例として、EDTAは、ほとんどの一価、二価、三価および四価金属イオン、例えば銀(Ag+)、カルシウム(Ca2+)、マンガン(Mn2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+)、コバルト(Co+)およびジルコニウム(Zr4+)と錯体を形成し、BAPTAは、Ca2+に特異的である。実例として、当技術分野で使用されている標準的な方法は、オリゴヒスチジンタグとキレート剤ニトリロ三酢酸(NTA)によって提示される銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)、コバルト(Co2+)または亜鉛(Zn2+)イオンとの間の錯体の形成である。
【0245】
いくつかの態様において、例えば、米国特許第5,985,658号に記載されるように、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、および/またはウイルスベクター粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCは、カルモジュリン結合ペプチドを含み、試薬は、多量体カルモジュリンを含む。いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、および/またはウイルスベクター粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCは、FLAGペプチドを含み、試薬は、FLAGペプチド、例えば、米国特許第4,851,341号に記載されるモノクローナル抗体4E11に結合するFLAGペプチド、に結合する抗体を含む。1つの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、および/またはウイルスベクター粒子結合物質)に含まれる結合パートナーCは、オリゴヒスチジンタグを含み、試薬は、オリゴヒスチジンタグに結合する抗体または遷移金属イオンを含む。いくつかの態様において、すべてのこれらの結合錯体の分解は、例えばEDTAまたはEGTAを添加することによる、金属イオンキレート化、例えばカルシウムキレート化によって達成され得る。いくつかの態様において、カルモジュリン、抗体、例えば4E11またはキレート化金属イオンまたは遊離キレート剤は、従来的な方法によって、例えば、ビオチニル化およびストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらのオリゴマーとの錯体形成によって、または第1工程においてNoguchi, A, et al. Bioconjugate Chemistry (1992) 3, 132-137に本質的に記載されるように多糖、例えばデキストランにカルボキシル残基を導入し、第2工程において従来的なカルボジイミド化学を用いて、カルモジュリンまたは抗体またはキレート化金属イオンまたは遊離キレート剤を、一級アミノ基を通じて多糖、例えばデキストラン骨格のカルボキシル基に連結することによって、多量体化され得る。いくつかのそのような態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)に含まれる結合パートナーCと試薬の1つまたは複数の結合部位Zとの間の結合は、金属イオンキレート化によって妨げられ得る。金属キレート化は、例えば、EGTAまたはEDTAの添加によって達成され得る。
【0246】
いくつかの態様において、分子に特異的に結合する、作用物質の1つまたは複数の結合部位BまたはVは、例えば、抗体、そのフラグメント、または抗体様機能を有するタンパク質性結合分子に含まれ得る。いくつかの態様において、作用物質の結合部位BまたはVは、抗体結合部位である、例えば、抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)であるかまたはそれを含む。(組換え)抗体フラグメントの例は、Fabフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fvフラグメント(scFv)、二価抗体フラグメント、例えば(Fab)2'フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ(Iliades, P., et al, FEB S Lett (1997) 409, 437-441)、デカボディ(Stone, E., et al, Journal of Immunological Methods (2007) 318, 88-94)および他のドメイン抗体(Holt, L.J., et al, Trends Biotechnol. (2003), 21, 11, 484-490)を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルスベクター粒子結合物質)は、二価タンパク質性人工結合分子、例えば、「デュオカリン」としても公知の二量体リポカリンムテインを含み得る。
【0247】
いくつかの態様において、作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルスベクター粒子結合物質)は、単一の結合部位Bを有し得る、すなわち、一価であり得る。一価の作用物質の例は、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子またはMHC分子を含むがこれらに限定されない。一価抗体フラグメントの例は、Fabフラグメント、Fvフラグメントおよび二価単鎖Fvフラグメントを含む単鎖Fvフラグメント(scFv)を含むがこれらに限定されない。
【0248】
いくつかの態様において、作用物質は、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFabフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fvフラグメント(scFv)、二価抗体フラグメント、例えば(Fab)2'フラグメントである。いくつかの態様において、作用物質は、関心対象の細胞分子に結合することがわかっている親抗体であるかまたはそれ由来である。細胞表面分子に対する様々な抗体分子またはそのフラグメントが当技術分野で周知であり、そのような様々な抗体の任意のものが、本明細書の方法における作用物質として使用され得る。いくつかの態様において、作用物質は、例えば、上記のように親和性が変化したまたは十分に速いオフレートを示す抗体が生成するよう、親または参照抗体の可変重鎖に1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む抗体またはそのフラグメントである。例えば、そのような変異の例は、抗CD4抗体13B8.2の変異の関係で公知であり(例えば、米国特許第7,482,000号、米国特許出願第US2014/0295458号または国際特許出願番号WO2013/124474を参照のこと)、任意のそのような変異が、別の親または参照抗体において行われ得る。
【0249】
いくつかの局面において、一価であり得る作用物質(例えば、受容体結合物質、選択物質、またはウイルスベクター粒子結合物質)は、例えば、一価の抗体フラグメントまたは一価の人工結合分子(タンパク質性もしくはその他)、例えばリポカリンファミリー(「Anticalin(登録商標)」としても公知)のポリペプチドをベースとしたムテインまたは二価の分子、例えば両方の結合部位が維持されている抗体またはフラグメント、例えばF(ab')2フラグメントを含む。
【0250】
抗体様機能を有するタンパク質性結合分子の例は、リポカリンファミリーのポリペプチドをベースとしたムテインを含む(例えば、WO 03/029462、Beste et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1999) 96, 1898-1903を参照のこと)。通常、リポカリン、例えばビリン結合タンパク質、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ヒトアポリポタンパク質Dまたはヒト涙液リポカリンは、特定の標的に結合するよう改変することができる天然のリガンド結合部位を有している。細胞表面分子に特異的に結合する作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)として使用され得る抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子のさらなる例は、いわゆるグルボディ(glubody)(例えば、国際特許出願WO 96/23879を参照のこと)、アンキリンスキャホールド(Mosavi, L.K., et al, Protein Science (2004) 13, 6, 1435-1448)または結晶性スキャホールド(例えば、国際特許出願WO 01/04144)をベースにしたタンパク質、Skerra, J. Mol. Recognit. (2000) 13, 167-187に記載されるタンパク質、アドネクチン(AdNectin)、テトラネクチンおよびアビマーを含むがこれらに限定されない。一般に、ヒト受容体ドメインのファミリーのエクソンシャッフリングによって進化させた多価アビマータンパク質を含むアビマーは、様々な細胞表面受容体において一つながりの複数のドメインとして発生するいわゆるAドメインを含む(Silverman, J., et al, Nature Biotechnology (2005) 23, 1556-1561)。通常ヒトフィブロネクチンのドメイン由来であるアドネクチンは典型的に、標的に免疫グロブリン様結合するよう改変することができる3つのループを含む(Gill, D.S. & Damle, N.K., Current Opinion in Biotechnology (2006) 17, 653-658)。通常各々のヒトホモ三量体タンパク質由来であるテトラネクチンも同様に、典型的にC型レクチンドメイン内に所望の結合のために改変することができるループ領域を含む。いくつかの例においてタンパク質リガンドとして機能し得るペプトイドは典型的に、側鎖が炭素原子ではなくアミド窒素に接続されている点でペプチドと相違するオリゴ(N-アルキル)グリシンである。ペプトイドは典型的に、プロテアーゼおよび他の修飾酵素に対して耐性を有し、ペプチドよりもずっと高い細胞透過性を有し得る(例えば、Kwon, Y.-U., and Kodadek, T., J. Am. Chem. Soc. (2007) 129, 1508-1509を参照のこと)。
【0251】
適当なタンパク質性結合分子のさらなる例は、EGF様ドメイン、Kringleドメイン、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、Glaドメイン、SRCRドメイン、Kunitz/ウシ膵臓トリプシン阻害ドメイン、テンダミスタット、Kazal型セリンプロテアーゼ阻害ドメイン、三葉(P型)ドメイン、フォン・ヴィレブランド因子C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、サイログロブリンI型リピート、LDL受容体クラスAドメイン、Sushiドメイン、Linkドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免疫グロブリンドメインもしくは免疫グロブリン様ドメイン(例えば、ドメイン抗体もしくはラクダ重鎖抗体)、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、フォン・ヴィレブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型4ジスルフィドコアドメイン、F5/8 C型ドメイン、ヘモペキシンドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGF様ドメイン、C2ドメイン、「カッパボディ」(Ill et al. Protein Eng (1997) 10, 949-57)、いわゆる「ミニボディ」(Martin et al, EMBO J (1994) 13, 5303-5309)、ダイアボディ(Holliger et al, PNAS USA (1993)90, 6444-6448)、いわゆる「ヤヌシス(Janusis)」(Traunecker et al, EMBO J (1991) 10, 3655-3659もしくはTraunecker et al, Int J Cancer (1992) Suppl 7, 51-52)、ナノボディ、マイクロボディ、アフィリン、アフィボディ、ノッチン、ユビキチン、ジンクフィンガータンパク質、自己蛍光タンパク質またはロイシンリッチリピートタンパク質を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、抗体様機能を有する核酸分子は、アプタマーであり得る。一般に、アプタマーは、定義された三次元モチーフに折りたたまれ、特定の標的構造に対して高い親和性を示す。
【0252】
1. 受容体結合物質
いくつかの態様において、作用物質は、受容体結合物質である。いくつかの態様において、受容体結合物質は、細胞の表面上の分子(例えば、受容体)に結合し、作用物質と分子との間の結合は、細胞内でシグナルを誘導または調整することができる。いくつかの例において、細胞表面分子(例えば、受容体)は、シグナル伝達分子である。いくつかのそのような例において、受容体結合物質は、1つまたは複数の細胞によって発現されるシグナル伝達分子に特異的に結合することができる。いくつかの例において、受容体結合物質は、刺激物質であり、刺激物質は、細胞表面分子、例えば受容体への結合により細胞(例えば、T細胞)内でシグナルを誘導することができる任意の作用物質であり得る。いくつかの態様において、シグナルは、免疫刺激性であり得、この例において、受容体結合物質または刺激物質は、細胞(例えば、T細胞)による免疫応答に関与するまたは免疫応答を刺激するシグナルを誘導または調整することができる、例えば、免疫細胞の増殖もしくは増大、免疫細胞の活性化、免疫細胞の分化、サイトカインの分泌、細胞傷害活性または免疫細胞の1つもしくは複数の他の機能的活性を増加させる。いくつかの態様において、シグナルは、阻害性であり得、この例において、受容体結合物質または刺激物質は、細胞(例えば、T細胞)における免疫応答に関与するまたは免疫応答を阻害するシグナルを誘導または調整することができる、例えば、免疫細胞の増殖もしくは増大、免疫細胞の活性化、免疫細胞の分化、サイトカインの分泌、細胞傷害活性または免疫細胞の1つもしくは複数の他の機能的活性を阻害または減少させる。
【0253】
いくつかの態様において、受容体結合物質は、第1の受容体結合物質である。いくつかの局面において、第1の受容体結合物質は、細胞の表面上の受容体分子に結合する。したがって、いくつかの例において、第1の受容体結合物質は、シグナルを誘導または調整する。いくつかの局面において、第1の受容体結合物質によるシグナルの誘導または調整は、細胞の活性化、刺激および/または増大(増殖)をもたらす。したがって、いくつかの例において、第1の受容体結合物質は、細胞に対する一次活性化シグナルを提供し、それによって細胞を活性化させる。
【0254】
いくつかの態様において、細胞集団は、B細胞の集団、T細胞の集団またはナチュラルキラー細胞の集団を含むがこれらに限定されないリンパ球の集団であり得る。細胞集団の実例は、CD40またはCD137を有するB細胞である(両細胞集団は、活性化シグナルを提供する第1の作用物質、例えば4-1BBリガンド;またはαCD40抗体分子もしくはαCD137抗体分子(例えば、Zhang et al., 2010, J Immunol, 184:787-795を参照のこと)のみに結合することによって増殖し得る)。B細胞の増大のために使用され得る作用物質(第1または第2のいずれか)の他の実例は、IgG、CD19、CD28またはCD14に結合する作用物質、例えばαCD19、αIgG、αCD28またはαCD14抗体分子である。B細胞の増大のための第1または第2の作用物質がtoll様受容体またはインターロイキン、例えばIL-21に対するリガンドを含み得ることも想定されている(例えば、Dienz O, et al. 2009. J. Exp. Med. 206:69を参照のこと)。リポ多糖もまた第1の作用物質として使用され得、本明細書で使用される結合パートナーC1を備えることができることから、B細胞のリポ多糖依存的な活性化も本発明に包含されていることに留意されたい。
【0255】
適当な細胞集団の他の実例は、TCR/CD3への第1の作用物質の結合およびT細胞上の補助分子、例えばCD28への第2の作用物質の結合により活性化された後に増大されるT細胞集団を含む。この例において、第1の作用物質は、T細胞内のTCR/CD3複合体関連シグナルを刺激し、第2の作用物質は、補助分子としてのCD28への結合により二次刺激を提供する。T細胞の増大のために使用され得る作用物質はまた、インターロイキン、例えば、IL-2、IL-7、IL-15またはIL-21を含み得る(例えば、Cornish et al. 2006, Blood. 108(2):600-8、Bazdar and Sieg, 2007, Journal of Virology, 2007, 81(22):12670-12674、Battalia et al, 2013, Immunology, 139(1):109-120を参照のこと)。T細胞の増大のために使用され得る作用物質の他の実例は、CD8、CD45またはCD90に結合する作用物質、例えばαCD8、αCD45またはαCD90抗体である。T細胞集団の実例は、抗原特異的T細胞、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(メモリーT細胞の実例は、CD62L+CD8+特異的セントラルメモリーT細胞である)または調節性T細胞(Tregの実例は、CD4+CD25+CD45RA+ Treg細胞である)を含む。
【0256】
適当な細胞集団の別の実例は、例えばCD16またはCD56に結合する作用物質、例えばαCD16またはαCD56抗体、を用いて増大され得る、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を含む。そのようなαCD16抗体の実例は、SEQ ID NO:36に示されるVH配列およびSEQ ID NO:37に示されるVL配列を有する抗体3G8である(例えば、Hoshino et al, Blood. 1991 Dec 15;78(12):3232-40を参照のこと)。NK細胞の増大のために使用され得る別の作用物質は、IL-15であり得る(例えば、Vitale et al. 2002. The Anatomical Record. 266:87-92を参照のこと)。適当な細胞集団のさらに別の実例は、例えばCD14に結合する作用物質、例えばαCD14抗体分子、を用いて増大され得る、単球を含む。
【0257】
いくつかの態様において、第1の受容体結合物質は、細胞、例えばT細胞内でTCR/CD3複合体関連シグナルを刺激し得る。いくつかの局面において、第1の受容体結合物質は、CD3に特異的に結合する結合物質であり得る。いくつかの例において、CD3に特異的に結合する第1の受容体結合物質は、抗CD3抗体、抗CD3抗体の二価抗体フラグメント、抗CD3抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD3結合分子からなる群より選択され得る。二価抗体フラグメントは、(Fab')2フラグメントまたは二価単鎖Fvフラグメントであり得、一価抗体フラグメントは、Fabフラグメント、Fvフラグメントおよび単鎖Fvフラグメント(scFv)からなる群より選択され得る。いくつかの例において、抗体様結合特性を有するタンパク質性CD3結合分子は、アプタマー、リポカリンファミリーのポリペプチドをベースとしたムテイン、グルボディ、アンキリンスキャホールドをベースにしたタンパク質、結晶性スキャホールドをベースにしたタンパク質、アドネクチンまたはアビマーであり得る。
【0258】
いくつかの態様において、抗CD3 Fabフラグメントは、ハイブリドーマ細胞株OKT3(ATCC(登録商標)CRL-8001(商標);米国特許第4,361,549号も参照のこと)により産生されるCD3結合モノクローナル抗体由来であり得る。抗CD3抗体OKT3の重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインは、Arakawa et al J. Biochem. 120, 657-662 (1996)に記載されており、それぞれ、SEQ ID NO:31および32に示されるアミノ酸配列を含む。
【0259】
いくつかの局面において、受容体結合物質は、第2の受容体結合物質である。いくつかの例において、第2の受容体結合物質は、細胞の表面上の分子、例えば、細胞表面分子、例えば受容体分子に結合する。いくつかの態様において、第2の受容体結合物質は、第1の分子を通じて送達されるシグナルを増強、減衰、または修飾することができる。いくつかの態様において、第2の受容体結合物質は、シグナル、例えば第2のまたは追加のシグナルを誘導または調整する。いくつかの局面において、第2の受容体結合物質は、第1の受容体結合物質によって誘導されるシグナルを増強または強化し得る。いくつかの態様において、第2の受容体結合物質は、補助分子に結合するおよび/または細胞内で補助的もしくは二次シグナルを刺激もしくは誘導し得る。いくつかの局面において、第2の受容体結合物質は、共刺激分子に結合するおよび/または共刺激シグナルを提供する。
【0260】
いくつかの態様において、第2の受容体結合物質であり得る受容体結合物質は、共刺激分子、補助分子、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、免疫チェックポイント分子またはTNFファミリーもしくはTNF受容体ファミリーのメンバーであり得る第2の分子に結合する、例えば、特異的に結合する。
【0261】
いくつかの態様において、細胞、例えばT細胞上の分子は、CD28であり得、(例えば、第2の受容体結合物質であり得る)受容体結合物質は、CD28に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD28に特異的に結合する(例えば、第2の受容体結合物質であり得る)受容体結合物質は、抗CD28抗体、抗CD28抗体の二価抗体フラグメント、抗CD28抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD28結合分子からなる群より選択され得る。二価抗体フラグメントは、(Fab')2フラグメントまたは二価単鎖Fvフラグメントであり得、一価抗体フラグメントは、Fabフラグメント、Fvフラグメントおよび単鎖Fvフラグメント(scFv)からなる群より選択され得る。抗体様結合特性を有するタンパク質性CD28結合分子は、アプタマー、リポカリンファミリーのポリペプチドをベースとしたムテイン、グルボディ、アンキリンスキャホールドをベースにしたタンパク質、結晶性スキャホールドをベースにしたタンパク質、アドネクチンまたはアビマーであり得る。
【0262】
いくつかの態様において、抗CD28 Fabフラグメントは、その重鎖および軽鎖がそれぞれSEQ ID NO:33および34を含む、抗体CD28.3(GenBankアクセッション番号AF451974.1の下で合成単鎖Fvコンストラクトとして寄託されている;Vanhove et al, BLOOD, 15 July 2003, Vol. 102, No. 2, pages 564-570も参照のこと)由来であり得る。
【0263】
いくつかの態様において、細胞、例えばT細胞またはB細胞上の分子は、CD137であり得、(例えば、第2の受容体結合物質であり得る)受容体結合物質は、CD137に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD137に特異的に結合する(例えば、第2の受容体結合物質であり得る)受容体結合物質は、抗CD137抗体、抗CD137抗体の二価抗体フラグメント、抗CD137抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD137結合分子からなる群より選択され得る。
【0264】
いくつかの態様において、細胞、例えばB細胞上の分子は、CD40であり得、(例えば、第2の受容体結合物質であり得る)受容体結合物質は、CD40に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD40に特異的に結合する(例えば、第2の受容体結合物質であり得る)受容体結合物質は、抗CD40抗体、抗CD40抗体の二価抗体フラグメント、抗CD40抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD40結合分子からなる群より選択され得る。
【0265】
上記の例のいずれにおいても、二価抗体フラグメントは、(Fab)2'フラグメント、または二価単鎖Fvフラグメントであり得、一価抗体フラグメントは、Fabフラグメント、Fvフラグメントおよび単鎖Fvフラグメント(scFv)からなる群より選択され得る。上記の例のいずれにおいても、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子は、アプタマー、リポカリンファミリーのポリペプチドをベースとしたムテイン、グルボディ、アンキリンスキャホールドをベースにしたタンパク質、結晶性スキャホールドをベースにしたタンパク質、アドネクチンおよびアビマーであり得る。
【0266】
いくつかの局面において、受容体結合物質、例えば刺激物質は、標的細胞の表面上に発現される分子を特異的に標的とし、その分子はTCRまたはキメラ抗原受容体である。例えば、標的細胞の表面上に発現される分子は、T細胞またはB細胞抗原受容体複合体、CD3鎖、CD3ゼータ、T細胞受容体もしくはB細胞受容体の抗原結合部分、またはキメラ抗原受容体から選択される。いくつかの例において、受容体結合物質は、ペプチド:MHCクラスI複合体を標的とする。
【0267】
いくつかの態様において、刺激物質は、標的細胞の表面上に発現される分子のHisタグ付加細胞外ドメインに結合する。いくつかの例において、刺激物質は、ニッケル付加trisNTA(His-STREPPERまたはHis/Strep-tag(登録商標)IIアダプターとも呼ばれる)にコンジュゲートされたペプチド配列
(Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:8に示される)を含む。いくつかの態様において、Hisタグ付加された標的細胞の表面上に発現される分子は、CD19である。
【0268】
いくつかの局面において、受容体結合物質、例えば刺激物質は、組換え受容体、例えばCARの抗体部分に特異的に結合する。いくつかの例において、組換え受容体の抗体部分は、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分、例えばヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域を含む。いくつかの態様において、定常領域または一部分は、ヒトIgG、例えばIgG4またはIgG1のそれらである。いくつかの例において、試薬は、IgG4スペーサーを認識するαIgGを有する。
【0269】
2. 選択物質
いくつかの態様において、作用物質は、選択物質である。いくつかの態様において、選択物質は、細胞の表面上の分子、例えば細胞表面分子に結合する。いくつかの例において、細胞表面分子は、選択マーカーである。いくつかのそのような例において、選択物質は、1つまたは複数の細胞によって発現される選択マーカーに特異的に結合することができる。いくつかの態様において、選択物質または試薬に可逆的に結合する作用物質は、細胞の選択または単離を容易にするために使用され得る。
【0270】
いくつかの局面において、細胞表面分子、例えば選択マーカーは、所望の細胞集団またはサブ集団、例えば、血液細胞、例えばリンパ球(例えば、T細胞、Tヘルパー細胞、例えばCD4+ Tヘルパー細胞、B細胞もしくはナチュラルキラー細胞)、単球または幹細胞、例えばCD34陽性末梢幹細胞もしくはNanogもしくはOct-4発現幹細胞、の集団またはサブ集団を定義する抗原であり得る。いくつかの態様において、選択マーカーは、T細胞またはT細胞のサブセットの表面上で発現されるマーカー、例えばCD25、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RAおよび/またはCD45ROであり得る。T細胞の例は、CMV特異的CD8+ Tリンパ球、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞および調節性T細胞(Treg)等の細胞を含む。Tregの実例は、CD4 CD25 CD45RA Treg細胞を含み、メモリーT細胞の実例は、CD62L CD8+特異的セントラルメモリーT細胞を含む。細胞表面分子、例えば選択マーカーはまた、腫瘍細胞のマーカーであり得る。
【0271】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD4であり得、選択物質はCD4に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD4に特異的に結合する選択物質は、抗CD4抗体、抗CD4抗体の二価抗体フラグメント、抗CD4抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD4結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD4抗体、例えば二価抗体フラグメントまたは一価抗体フラグメント(例えば、CD4 Fabフラグメント)は、抗体13B8.2またはCD4に対する特異的結合性を保持する13B8.2の機能的に活性な変異体由来であり得る。例えば、抗体13B8.2の例示的な変異体またはm13B8.2は、米国特許第7,482,000号、米国出願番号US2014/0295458または国際特許出願番号WO2013/124474;およびBes, C, et al. J Biol Chem 278, 14265-14273 (2003)に記載されている。「ml3B8.2」と呼ばれる変異Fabフラグメントは、米国特許第7,482,000号に記載されるように、CD4結合マウス抗体13B8.2の可変ドメインならびに重鎖に関してガンマ型の定常ヒトCH1ドメインおよびカッパ型の定常ヒト軽鎖ドメインを含む定常ドメインを有する。いくつかの態様において、抗CD4抗体、例えば抗体13B8.2の変異体は、各々Kabatの番号付けにしたがい、可変軽鎖内のアミノ酸置換H91Aおよび可変軽鎖内のアミノ酸置換Y92A、可変重鎖内のアミノ酸置換H35Aおよび/または可変重鎖内のアミノ酸置換R53Aを含む。いくつかの局面において、ml3B8.2内の13B8.2 Fabフラグメントの可変ドメインと比較して、軽鎖の91位(SEQ ID NO:30の93位)のHis残基がAlaに変異しており、重鎖の53位(SEQ ID NO:29の55位)のArg残基がAlaに変異している。いくつかの態様において、抗CD4またはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-206または6-8000-205または6-8002-100;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0272】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD8であり得、選択物質はCD8に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD8に特異的に結合する選択物質は、抗CD8抗体、抗CD8抗体の二価抗体フラグメント、抗CD8抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD8結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD8抗体、例えば二価抗体フラグメントまたは一価抗体フラグメント(例えば、CD8 Fabフラグメント)は、抗体OKT8(例えば、ATCC CRL-8014)またはCD8に対する特異的結合性を保持するその機能的に活性な変異体由来であり得る。いくつかの態様において、抗CD8またはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8003または6-8000-201; IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0273】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD3であり得、選択物質はCD3に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD3に特異的に結合する選択物質は、抗CD3抗体、抗CD3抗体の二価抗体フラグメント、抗CD3抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD3結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD3抗体、例えば二価抗体フラグメントまたは一価抗体フラグメント(例えば、CD3 Fabフラグメント)は、抗体OKT3(例えば、ATCC CRL-8001;例えば、Stemberger et al. PLoS One. 2012; 7(4): e35798を参照のこと)またはCD3に対する特異的結合性を保持するその機能的に活性な変異体由来であり得る。いくつかの態様において、抗CD3またはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-201、6-8001-100;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0274】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD25であり得、選択物質はCD25に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD25に特異的に結合する選択物質は、抗CD25抗体、抗CD25抗体の二価抗体フラグメント、抗CD25抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD25結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD25抗体、例えば二価抗体フラグメントまたは一価抗体フラグメント(例えば、CD25 Fabフラグメント)は、抗体FRT5(例えば、Stemberger et al. 20128を参照のこと)またはCD25に対する特異的結合性を保持するその機能的に活性な変異体由来であり得る。いくつかの態様において、抗CD4またはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-205または6-8000-207または6-8004-050;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0275】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD62Lであり得、選択物質はCD62Lに特異的に結合する。いくつかの局面において、CD62Lに特異的に結合する選択物質は、抗CD62L抗体、抗CD62L抗体の二価抗体フラグメント、抗CD62L抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD62L結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD62L抗体、例えば二価抗体フラグメントまたは一価抗体フラグメント(例えば、CD62L Fabフラグメント)は、抗体DREG56(例えば、ATCC HB300;例えば、Stemberger et al. 2012を参照のこと)またはCD62Lに対する特異的結合性を保持するその機能的に活性な変異体由来であり得る。いくつかの態様において、抗CD62Lまたはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-204または6-8005-050;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0276】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD45RAであり得、選択物質はCD45RAに特異的に結合する。いくつかの局面において、CD45RAに特異的に結合する選択物質は、抗CD45RA抗体、抗CD45RA抗体の二価抗体フラグメント、抗CD45RA抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD45RA結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD45RA抗体、例えば二価抗体フラグメントまたは一価抗体フラグメント(例えば、CD45RA Fabフラグメント)は、抗体MEM56(例えば、Millipore 05-1413;例えば、Stemberger et al. 2012を参照のこと)またはCD45RAに対する特異的結合性を保持するその機能的に活性な変異体由来であり得る。いくつかの態様において、抗CD45RAまたはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-208または6-8007-050;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0277】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD45ROであり得、選択物質はCD45ROに特異的に結合する。いくつかの局面において、CD45ROに特異的に結合する選択物質は、抗CD45RO抗体、抗CD45RO抗体の二価抗体フラグメント、抗CD45RO抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD45RO結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD45ROまたはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-209または6-8012-020;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0278】
いくつかの態様において、選択マーカーはCD154であり得、選択物質はCD154に特異的に結合する。いくつかの局面において、CD154に特異的に結合する選択物質は、抗CD154抗体、抗CD154抗体の二価抗体フラグメント、抗CD154抗体の一価抗体フラグメントおよび抗体様結合特性を有するタンパク質性CD154結合分子からなる群より選択され得る。いくつかの態様において、抗CD154またはそのフラグメントに可逆的に結合する試薬は、市販されているまたは市販されている試薬由来である(例えば、カタログ番号6-8000-202または6-5510-050;IBA GmbH, Gottingen, Germany)。
【0279】
3. ウイルスベクター粒子結合物質
いくつかの態様において、作用物質は、ウイルス粒子の表面上の分子に結合するウイルスベクター粒子結合物質(ウイルス粒子結合物質またはその類似の変形体とも呼ばれる)である。いくつかの態様において、試薬(オリゴマーまたはポリマーであることができる)、例えば、多量体形成試薬は、結合パートナーを介して、ウイルス粒子結合物質に可逆的に結合する。いくつかの態様において、結合パートナーは、試薬上に存在する結合部位Z(例えば、Z1)に可逆的に結合する結合パートナーC(例えば、C1)である。いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、ウイルス粒子の表面上の分子に結合する結合部位V(例えば、V1)を含む。
【0280】
いくつかの態様において、ウイルス粒子が直接試薬に可逆的に結合することができるように、ウイルス粒子結合物質は必要ない。いくつかの態様において、ウイルス粒子は、ウイルスの表面上に直接発現される結合パートナーC(例えば、C1)を含み、これは、試薬上に存在する結合部位Z(例えば、Z1)に可逆的に結合することができる。
【0281】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子結合物質に可逆的に結合する試薬には、ウイルスベクター粒子で形質導入されることが望まれる細胞の表面上の分子に結合することができる別の作用物質、例えば受容体結合物質および/または選択物質がさらに可逆的に結合することができる。したがって、いくつかの態様において、試薬は、ウイルスベクター粒子結合物質によって結合されたウイルス粒子と、受容体結合物質または選択物質によって結合された細胞とを密接に接触させることができ、それによって細胞の形質導入を促進する。
【0282】
いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、ウイルス粒子結合物質上に存在する結合部位V1に結合する。
【0283】
いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、ウイルスエンベロープタンパク質、またはウイルスのウイルスエンベロープタンパク質のバリアントもしくは一部、またはキメラエンベロープタンパク質を含む。いくつかの態様において、ウイルス粒子は、レトロウイルス粒子、例えばレンチウイルス粒子である。いくつかの態様において、ウイルスエンベロープタンパク質、例えばウイルス糖タンパク質は、特定のウイルス系統または種を天然由来または起源とするもの、例えばレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)系統と天然に関連するものである。いくつかの態様において、ウイルスエンベロープタンパク質、例えばウイルス糖タンパク質は、特定のウイルス系統を天然由来または起源としないものである。例えば、いくつかの態様において、ウイルス粒子、例えばレトロウイルス粒子(例えば、レンチウイルス粒子)は、例えば、ウイルスの細胞指向性を増加または変更するために、異なるウイルスに由来するエンベロープ糖タンパク質を含むようシュードタイプ化される。例えば、いくつかの場合では、env遺伝子によってコードされる表面糖タンパク質は、限られた数の細胞タイプ上の受容体にしか結合することができないので、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)は、通常、狭い指向性を有する。したがって、いくつかの態様において、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、テナガザル白血病ウイルス(leukemia virus gibbon)(GALV、テナガザル白血病ウイルス(gibbon ape leukemia virus))、マウス白血病ウイルス(MLV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLVまたはMMLV)、シンドビスウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSVまたはHSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTVまたはMMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、RD114ウイルス、もしくはヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)に由来するエンベロープタンパク質、例えばエンベロープ糖タンパク質もしくはキメラ糖タンパク質、または当技術分野において公知の他のウイルスエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイプ化される(例えば、Frecha et al. 2008およびWO2015/036713を参照のこと)。
【0284】
したがって、いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、ウイルス粒子がシュードタイプ化されるための、ウイルスエンベロープタンパク質(例えば、ウイルスエンベロープ糖タンパク質)、またはそのバリアント、一部もしくはキメラであるか、またはこれらを含むことができる。例示的なウイルスエンベロープタンパク質(例えば、ウイルスエンベロープ糖タンパク質)は、例えば、VSV糖タンパク質(VSVGまたはVSV-G)、シンドビス糖タンパク質(例えば、SIN)、MMLV糖タンパク質、HSV糖タンパク質、MMTV糖タンパク質、GALV糖タンパク質、HIV糖タンパク質(gp160、gp120および/またはgp41を含む)、もしくはRSV糖タンパク質(gp85および/またはgp37を含む)を含むかもしくはそれに由来し、または、そのバリアント、一部、もしくはキメラである。いくつかの態様において、ウイルスエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。
【0285】
いくつかの態様において、ウイルスエンベロープタンパク質は、水泡性口内炎ウイルス-G(VSVGまたはVSV-G)タンパク質またはそのバリアントである。いくつかの態様において、VSVGは、モノメトキシポリ(エチレン)を使用して、ポリエチレングリコール修飾(PEG化)または共有結合修飾される。
【0286】
いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、ウイルスカプシドタンパク質またはそのバリアントである。例示的なカプシドタンパク質は、p24カプシドタンパク質を含む。
【0287】
いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、ウイルスマトリックスタンパク質またはそのバリアントである。例示的なマトリックスタンパク質は、p17マトリックスタンパク質を含む。
【0288】
いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、ウイルス粒子を中和しないかまたは実質的に中和しない、すなわち、これは非中和ウイルス粒子結合物質である。いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、取り込みのための細胞受容体へのビリオン結合、細胞へのビリオン取り込み、エンドソームにおけるゲノムの脱殻、ウイルス粒子の凝集および/またはエンベロープウイルスの溶解と干渉しないかまたは実質的に干渉しない、例えば、このような特徴を、ウイルス粒子結合物質の非存在下で生じるようなそれぞれの特徴と比較して、2倍以下または1.5倍以下だけ変更または変化させる。いくつかの態様において、取り込みのための細胞受容体へのビリオン結合および/または細胞へのビリオン取り込みの程度は、ウイルス粒子結合物質の存在の非存在下で生じる受容体へのビリオン結合および/または細胞によるビリオン取り込みと比較して、ウイルス粒子結合物質の存在下では低下しないかまたは実質的に低下しない。いくつかの態様において、取り込みのための細胞受容体へのビリオン結合および/または細胞へのビリオン取り込みの程度またはレベルは、ウイルス粒子結合物質の非存在下での取り込みのための細胞受容体へのビリオン結合および/または細胞へのビリオン取り込みの程度またはレベルの少なくとも50%以上、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上である。
【0289】
いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、一価分子(例えば、一価抗体フラグメントまたは一価人工結合分子(タンパク質性または他)、例えばリポカリンファミリーのポリペプチドベースのムテイン(Anticalin(登録商標)としても公知))、または二価分子、例えば、F(ab’)2フラグメントのような両方の結合部位が保持されている抗体またはフラグメントであることができる。
【0290】
いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、抗VSV-G抗体、抗シンドビス糖タンパク質抗体(例えば、抗SIN抗体)、および抗MMLV糖タンパク質抗体、抗HSV糖タンパク質抗体、抗MMTV糖タンパク質抗体、抗GALV糖タンパク質抗体、抗HIV糖タンパク質抗体もしくは抗RSV糖タンパク質抗体、またはその抗原結合フラグメント、例えば二価抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2フラグメントもしくは二価単鎖Fvフラグメント、または一価抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメント(scFv)であることができる。いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、抗gp160抗体、抗gp120抗体、抗gp41抗体、抗gp85抗体もしくは抗pg37抗体、またはその抗原結合フラグメント、例えば二価抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2フラグメントもしくは二価単鎖Fvフラグメント、または一価抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメント(scFv)であることができる。いくつかの態様において、抗体は、Fabフラグメントである。
【0291】
いくつかの態様において、抗体は、抗VSV-G抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば二価抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2フラグメントもしくは二価単鎖Fvフラグメント、または一価抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメント(scFv)である。いくつかの態様において、抗VSV-G抗体またはその抗原結合フラグメントは、Lefrancois, J Virol. 1984 Jul;51(1):208-14に記載されている抗VSV-G抗体、または当業者に公知の他の抗VSV-G抗体であるかまたはそれに由来する。
【0292】
いくつかの態様において、抗体は、抗gp120抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば二価抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2フラグメントもしくは二価単鎖Fvフラグメント、または一価抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメント(scFv)である。いくつかの態様において、抗体は、抗gp41抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば二価抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2フラグメントもしくは二価単鎖Fvフラグメント、または一価抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメント(scFv)である。いくつかの態様において、抗体は、抗gp160抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば二価抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2フラグメントもしくは二価単鎖Fvフラグメント、または一価抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメント(scFv)である。いくつかの態様において、抗gp120抗体、抗gp160抗体もしくは抗gp41抗体またはその抗原結合フラグメントは、Holl et al., J Virol. 2006 Jun;80(12):6177-81に記載されているかまたは当業者に公知のgp120、gp41、およびgp160に結合する抗体であるかまたはそれに由来する。
【0293】
いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、該ウイルスに対して異種の非ウイルス組換え分子であるウイルス粒子の表面上の分子に結合する。いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面修飾のための方法は、例えば、シュードタイピング、融合タンパク質の作製、親油性残基でのタンパク質の翻訳後修飾、例えばGPIアンカー修飾、アダプター分子の利用または直接的な化学修飾を含む(Metzner and Dangerfield, Ch. 3 “Surface Modification of Retroviral Vectors for Gene Therapy, in “Viral Gene Therapy”, published July 20, 2011)。
【0294】
いくつかの局面において、ウイルス粒子の表面修飾は、ウイルス粒子を調製および産生するために使用される同じプロセスによって達成される。いくつかの場合では、ウイルス粒子の産生のための遺伝子を担持するプラスミドベクターと関心対象の非ウイルス組換え分子をコードする核酸を含む構築物との同時トランスフェクションは、関心対象の非ウイルス組換え分子を提示するウイルス粒子の形成を導くことができる(Metzner and Dangerfield)。所見は、ウイルス粒子、例えば、関心対象の組換え分子を発現する標的細胞の形質導入のためのウイルス粒子を産生するために使用される細胞が、ウイルス粒子の産生の間に組換え分子(例えば、キメラ抗原受容体)を発現し得ることを指摘している。したがって、このような産生細胞(例えば、抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸を含むウイルス粒子を産生するための産生細胞)において産生されたウイルス粒子が、ウイルス粒子の表面上に組換え分子(例えば、CAR)を提示し得ることが考慮される。したがって、いくつかの局面において、ウイルス粒子結合物質は、抗原受容体を発現させるよう細胞を形質導入するために使用されているウイルス粒子の表面上の抗原受容体(例えば、CAR)それ自体に特異的に結合するものであることができる。いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、抗原受容体(例えば、CAR)の細胞外領域に対して指向される抗体または抗原結合フラグメントであるかまたはこれらを含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、CARの抗原結合フラグメント(例えば、scFv)に特異的に結合する。いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、抗イディオタイプ抗体である。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、抗原受容体(例えば、CAR)のヒンジ領域、例えばIgGヒンジ領域(記載されているまたは公知のいずれかを含む)に特異的に結合する。他の組換え異種分子に対して類似の方法を採用することができる。
【0295】
いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面は、合成部分、例えばペプチド(いくつかの場合では、タグ(例えば、親和性タグ)であることができる)を含む。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、このような部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)をその表面に発現するように操作される。例えば、いくつかの局面において、ウイルスの表面上の分子、例えばウイルス糖タンパク質は、合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)の発現のための融合タンパク質として操作される。このような態様において、ウイルス粒子結合物質は、ウイルス粒子の表面上に発現される合成部分、ペプチドまたはタグに特異的に結合する結合部位V(例えば、V1)を含む。
【0296】
例示的な合成部分、ペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)は、ジニトロフェノールまたはジゴキシゲニン、オリゴヒスチジン、ポリヒスチジン、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)またはチオレドキシン、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAG-ペプチド、ヘマグルチニンペプチド(HAタグ)(YPYDVPDYA、SEQ ID NO:20)、VSV-Gタグ、HSVタグ、T7エピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、「myc」エピトープ、V5タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、Strep-Tag(登録商標))、オリゴヌクレオチド、色素、カチオン、ポリカチオンを含むことができる。
【0297】
公知の親和性タグの数種の実例として、例えば、ジニトロフェノールまたはジゴキシゲニン、オリゴヒスチジン、ポリヒスチジン、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)またはチオレドキシン、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAG-ペプチド、
、マルトース結合タンパク質(MBP)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質Dの配列
のHSVエピトープ、配列
の転写因子c-mycの「myc」エピトープ、V5タグ
、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)を含む。
【0298】
例示的な対応する結合物質は、この文脈においてウイルス粒子結合物質であろうし、かつ、このような合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)に対する公知の抗体または抗原結合フラグメントのいずれかを含む。
【0299】
いくつかの態様において、試薬は、ウイルスベクター粒子の表面上に存在する合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)に直接結合する。したがって、いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子と試薬との間の相互作用を容易にするウイルス粒子結合物質はない。いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、結合パートナーC1を含む。いくつかの態様において、試薬は、結合部位Z(例えば、Z1)とウイルス粒子の表面上に存在する結合パートナーC(例えば、C1)との間の相互作用を介して、直接粒子に可逆的に結合する。
【0300】
いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上の分子は、試薬上の結合部位Z(例えば、Z1)に可逆的に結合することができる合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)に直接または間接的にコンジュゲートされる、ウイルスエンベロープタンパク質、そのバリアント、またはその一部を含む。いくつかの態様において、合成部分、例えばペプチドは、ストレプトアビジン結合ペプチドである。例示的なウイルスエンベロープタンパク質は、上で考察されており、かつ、レンチウイルス粒子のenv糖タンパク質複合体(gp160、gp120、またはgp41を含む)、水泡性口内炎ウイルス-G(VSVGまたはVSV-G)、シンドビスウイルスエンベロープ、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLVまたはMMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSVまたはHSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTVまたはMMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLVまたはGALV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくはラウス肉腫ウイルス(RSV)タンパク質、またはそのバリアントを含む。
【0301】
いくつかの態様において、試薬は、ストレプトアビジン、例えば上記のいずれかを含むストレプトアビジンムテイン(例えば、SEQ ID NO:3~6に示される)であり、ウイルス粒子および/もしくはウイルスエンベロープタンパク質またはそのバリアントに含まれる結合パートナーC(例えば、C1)は、ストレプトアビジン結合ペプチドであることができる。いくつかの態様において、ストレプトアビジン結合ペプチドは、SEQ ID NO:9に示される一般式を有する配列を含んでよく、例えば、SEQ ID NO:10に示される配列を含む。いくつかの態様において、ペプチド配列は、SEQ ID NO:11に示される、例えばSEQ ID NO:12に示される一般式を有する。一例として、ペプチド配列は、
(SEQ ID NO:7に示される、Strep-tag(登録商標)とも呼ばれる)である。一例として、ペプチド配列は、
(SEQ ID NO:8に示される、Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれる)である。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、少なくとも2つのストレプトアビジン結合モジュールの一連の配置であって、2つのモジュール間の距離が少なくとも0で50アミノ酸以下であり、1つの結合モジュールが3~8アミノ酸を有しかつ少なくとも配列His-Pro-Xaa(SEQ ID NO:9)を含み、式中、Xaaは、グルタミン、アスパラギン、またはメチオニンであり、他の結合モジュールが同じまたは異なるストレプトアビジンペプチドリガンド(例えば、SEQ ID NO:11に示される)を有する、配置を含む(例えば、国際公開PCT出願第WO02/077018号;米国特許第7,981,632号を参照のこと)。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:13または14のいずれかに示される式を有する配列を含む。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:15~19のいずれかに示されるアミノ酸の配列を有する。
【0302】
合成部分またはタグ(例えば、親和性タグ)を含むようにウイルス粒子(レンチウイルス粒子を含む)の表面上に存在する分子を改変する方法は、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、ウイルス粒子の表面上に存在する分子は、親和性タグおよびウイルスエンベロープタンパク質またはそのバリアントを含む融合タンパク質である、タンパク質(例えば、糖タンパク質)である。合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)は、ウイルスエンベロープタンパク質もしくはそのバリアントのカルボキシ末端、ウイルスエンベロープタンパク質もしくはそのバリアントのアミノ末端に存在することができ、かつ/またはウイルスエンベロープタンパク質配列もしくはそのバリアント内に含まれることができる。
【0303】
ウイルス粒子(レンチウイルス粒子を含む)上での発現のために、標準的な組換え分子技術を使用して、このような部分をウイルスエンベロープタンパク質配列(VSV-Gを含む)に導入することができる。例えば、いくつかの態様において、VSV-Gは、VSV-Gタンパク質起源のVSV-Gタグ
を含む。いくつかの態様において、VSV-Gは、天然のVSV-G分子のアミノ酸位置24に対応する部位に挿入された合成部分またはタグを含む(例えば、Guibinga et al. Molecular Therapy (2004) 9, 76-84を参照のこと、フォン・ヴィレブランド(Willebrand)因子のコラーゲン結合ドメイン由来の10アミノ酸タグ
の挿入を例示)。いくつかの態様において、合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性部分)をVSV-GのN末端に融合させることができる(例えば、Kameyama et al., J Virol Methods. 2008 Oct;153(1):49-54を参照のこと)。別の例として、Verhoeyen et al., Blood. 2003 Mar 15; 101(6): 2167-2174に記載のとおり、親和性タグまたはタンパク質を表面サブユニットの+1の位置に融合させることによって、MLV env遺伝子および得られるタンパク質を修飾することができる。いくつかの態様において、シンドビスウイルス糖タンパク質(SIN)のE2膜貫通ドメインを、合成ペプチドまたはタグ(いくつかの場合では、E2タンパク質のアミノ酸70~74の間に挿入することができる)を含むように改変することができる(例えば、Yang et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Aug 1; 103(31):11479-84、および Morizono et al., J Gene Med. 2009 Aug; 11(8): 655-663を参照のこと)。いくつかの態様において、タグは、E2タンパク質のアミノ酸71~74の間に位置するHAタグである(Yangを参照のこと)。いくつかの態様において、タグは、E2のアミノ酸70に挿入されたビオチン-アダプターペプチドである(Morizonoを参照のこと)。いくつかの態様において、合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)は、1つまたは複数のリンカーペプチド(配列「GGGS」(SEQ ID NO:48)を有するリンカーペプチドを含む、フレキシブルリンカーペプチドを含む)をさらに含むことができる(Morizonoを参照のこと)。任意の所望の合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)を有するウイルス糖タンパク質の融合タンパク質を作製するために、類似の技術を使用することができる。
【0304】
いくつかの態様において、ウイルス粒子結合物質は、ウイルス形質導入を容易にする、例えば増強することができる、ポリカチオンまたはカチオン性脂質であるかまたはこれらを含む。例示的なポリカチオンは、プロタミン(例えば、硫酸プロタミン)、臭化ヘキサジメトリン(POLYBRENE(登録商標)、Abbott Laboratories Corp)、およびCH-296(RETRONECTIN(登録商標)、Clontech)を含む。いくつかの態様において、ポリカチオンは、試薬上の結合部位Z(例えば、Z1)に可逆的に結合するために結合パートナーC(例えば、C1)に直接または間接的に連結される。いくつかの態様において、ポリカチオンは、ウイルスと細胞との間の静電架橋として働くことができる。いくつかの態様において、ポリカチオンは、ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合する結合部位V(例えば、V1)を含まないが、それにもかかわらず、ウイルス粒子の表面と相互作用して、細胞との相互作用を調整することができる。
【0305】
III. 細胞の形質導入方法
オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬を使用した、ウイルスベクターの細胞への移入のための方法が提供される。いくつかの態様において、提供される形質導入法に従って使用されるオリゴマータンパク質試薬は、多量体形成試薬である。いくつかの態様において、該細胞、例えば自家または同種移入のために調製された初代細胞は、細胞療法、例えば、養子細胞療法において使用するためのものである。いくつかの態様において、該試薬をまた、改変された細胞組成物の調製と関連する1つまたは複数の他の処理工程、例えば細胞の選択、活性化および/または刺激の1つまたは複数を容易にするために該方法において活用することもできる。該方法は、追加の細胞処理工程、例えば細胞の洗浄、単離、分離、製剤化または細胞組成物の産生に関連する他の工程を含んでよい。
【0306】
いくつかの態様において、提供される方法は、ウイルスベクター粒子、例えばレトロウイルスベクター粒子を、細胞、例えば免疫細胞(T細胞を含む)に導入するために使用される。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする核酸を含むゲノムを有する。よって、いくつかの態様において、提供される方法を、免疫細胞、例えばT細胞において、遺伝子改変された抗原受容体、例えばトランスジェニックTCRまたはCARを発現させるために使用することができる。また、このような粒子および方法によって形質導入された細胞、このような細胞を含む組成物、ならびにそれを使用するための方法も提供される。
【0307】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子および方法は、養子免疫療法において使用するのに望ましい、免疫細胞および/またはその特定の集団および/または亜集団の形質導入の増加をもたらす特徴を含む。提供される形質導入法およびウイルスベクター粒子のいくつかの態様において、形質導入されている集団の細胞、例えば、T細胞は、細胞と提供されるレトロウイルスベクター粒子との接触またはインキュベーションの前におよび/またはそれと併せて、刺激および/または活性化されないかまたはその必要はない。
【0308】
A. 細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーション
いくつかの態様において、提供される方法は、複数の細胞を含む細胞組成物(本明細書で以降、「インプット組成物」とも呼ばれる)を、(1)オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬、例えば多量体形成試薬および(2)ウイルス粒子、と接触させる、例えば、一緒にインキュベートすることによって細胞の形質導入を行う方法を包含する。いくつかの態様において、該方法は、細胞を試薬と、およびウイルス粒子と、同時または順次に混合する工程を包含する。いくつかの態様において、該方法は、ウイルス粒子および試薬を一緒に予混合し、次いで、細胞組成物を試薬と会合しているウイルス粒子の混合物と接触させる工程を包含する。いくつかの態様において、接触させる工程は、30分間~72時間、例えば30分間~48時間、30分間~24時間または1時間~24時間、例えば少なくともまたは約少なくとも30分間、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、36時間もしくはそれ以上である。
【0309】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、(i)インキュベートする工程は、標的細胞を試薬と混合する工程、および/または標的細胞をウイルス粒子と混合する工程であって、連続して、いずれかの順序で、任意で、(a)における混合する工程および(b)における混合する工程が、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、もしくは72時間以下の期間内で実施され、かつ/または(a)における混合する工程が、(b)における混合する工程から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは48時間以下離れて実施される、工程を含み;(ii)インキュベートする工程は、標的細胞、試薬、およびウイルス粒子を混合する工程であって、同時にまたは実質的に同時に実施される工程を含み;(iii)インキュベートする工程は、標的細胞およびウイルス粒子を含むが試薬を含まない組成物を混合する工程であって、任意で:標的細胞および試薬を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%、または40%以下が、活性化された細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現する工程を含み;IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、かつ/または増殖することが可能であり;ならびに/あるいは混合する工程は、組成物中の標的細胞およびウイルス粒子の混合後1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、または48時間以下で実施され;(iv)インキュベーションは、標的細胞および試薬を含むがウイルス粒子を含まない組成物をウイルス粒子と混合する工程であって、任意で:標的細胞および試薬を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%、または40%以下が、活性化された細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現する工程を含み;IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、かつ/または増殖することが可能であり;ならびに/あるいは混合する工程は、組成物中の標的細胞およびウイルス粒子の混合後1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、または48時間以下で実施され;ならびに/あるいは(v)インキュベーションは、ウイルス粒子および試薬を含む組成物を、標的細胞を含むがウイルス粒子および/または試薬を含まない組成物と混合する工程であって、任意で:標的細胞および試薬を含む組成物中の標的細胞の5%、10%、20%、30%、または40%以下が活性化された細胞であり、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現する工程を含み;IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、および/または増殖することが可能である。
【0310】
いくつかの態様において、インキュベートする工程は、細胞を試薬と、およびウイルス粒子と、同時にまたは順次どちらかの順序で混合する工程を含む。いくつかの態様において、インキュベートする工程の少なくとも一部の間、試薬およびウイルス粒子は、同時に、細胞の存在下にあるか、または細胞と接触している。
【0311】
いくつかの態様において、提供される方法は、(a)ウイルス粒子をオリゴマータンパク質試薬と接触させて、それによってウイルス粒子および試薬を含む組成物を作製する工程であって、ウイルス粒子が、任意で試薬と会合している、工程;および(b)(a)における組成物を、標的細胞を含む複数の細胞とインキュベートする工程を包含し、該方法が、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0312】
いくつかの態様において、提供される方法は、ウイルス粒子およびオリゴマータンパク質試薬を含む組成物を、標的細胞を含む複数の細胞と混合する工程を包含し、該方法が、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0313】
いくつかの態様において、提供される方法は、(a)ウイルス粒子を、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のうちのいずれかの複数のサブユニットを含むタンパク質試薬と接触させて、それによってウイルス粒子および試薬を含む組成物を作製する工程であって、ウイルス粒子が、任意で試薬と会合している、工程;および(b)(a)における組成物を複数の細胞とインキュベートする工程を包含し、該方法が、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0314】
いくつかの態様において、提供される方法は、ウイルス粒子およびタンパク質試薬を含む組成物を、標的細胞を含む複数の細胞と混合する工程であって、タンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体、アビジンムテイン、もしくは前記のいずれかの生物学的活性フラグメント、および/または前記のいずれかの複数のサブユニットを含む、工程を包含し;該方法は、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。いくつかの態様において、試薬および/または単量体ユニットの各々および/または多量体ユニットの各々は、正味正電荷または全正電荷を有する。
【0315】
いくつかの態様において、提供される方法は、標的細胞を含む複数の細胞を、(1)結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含むオリゴマータンパク質試薬であって、1つまたは複数の結合部位が結合物質に可逆的に結合する、オリゴマータンパク質試薬;および(2)ウイルス粒子とともにインキュベートする工程であって、(1)におけるインキュベーションの少なくとも一部が(2)と同時に行われる工程を包含し、該方法が、ウイルス粒子を用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0316】
いくつかの態様において、提供される方法は、(1)(a)1つまたは複数のウイルス粒子を含む組成物と、(b)(i)ウイルス粒子の表面上の分子に特異的に結合することができかつ(ii)ウイルス結合物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬に可逆的に結合する、ウイルス結合物質である結合物質とを接触させる工程;および(2)標的細胞を含む少なくとも複数の細胞を1つまたは複数のウイルス粒子の存在下でインキュベートする工程を包含し、(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、該方法が、ウイルス粒子を用いて形質導入された複数の細胞を含むアウトプット組成物を作製する。
【0317】
本明細書に提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、もしくは72時間以下の期間内で実施され、かつ/または(a)における混合する工程は、(b)におけるインキュベートする工程から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは48時間以下離れて実施される。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、組換え抗原受容体、任意でキメラ抗原受容体をコードするゲノムを含む。
【0318】
形質導入工程の間のウイルスベクター粒子および細胞を含む組成物は、1つまたは複数の追加の作用物質、例えば形質導入効率を促進するもの、例えばプロタミン(例えば、硫酸プロタミン)、臭化ヘキサジメトリン(POLYBRENE(登録商標)、Abbott Laboratories Corp)、およびCH-296(RETRONECTIN(登録商標)、Clontech)を含むポリカチオンをさらに含んでよい。いくつかの態様において、ポリカチオンは、インプット組成物中に1μg/mL~100μg/mL、例えば5μg/mL~50μg/mLの終濃度で存在することができる。該組成物はまた、処理されるべき細胞タイプの培養用に設計された培地、例えば造血幹細胞培地、例えば、無血清培地を含む細胞培養培地を含む、培地を含んでよい。
【0319】
いくつかの態様において、インプット組成物の細胞の濃度は、1.0×105細胞/mL~1.0×108細胞/mLまたは約1.0×105細胞/mL~1.0×108細胞/mL、例えば少なくとも1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mLもしくは1×108細胞/mLまたは少なくとも約1.0×105細胞/mL、約5×105細胞/mL、約1×106細胞/mL、約5×106細胞/mL、約1×107細胞/mL、約5×107細胞/mLもしくは約1×108細胞/mLまたは約1.0×105細胞/mL、約5×105細胞/mL、約1×106細胞/mL、約5×106細胞/mL、約1×107細胞/mL、約5×107細胞/mLもしくは約1×108細胞/mLである。
【0320】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子のコピーまたはその感染単位(IU)の、インプット組成物中の総細胞数当たりの特定の比率(IU/細胞)または形質導入されるべき総細胞数当たりの特定の比率のウイルス粒子が提供される。例えば、いくつかの態様において、ウイルス粒子は、接触させる工程の間、1細胞当たり0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、もしくは60IU、または約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約10、約15、約20、約30、約40、約50、もしくは約60IU、または少なくとも0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、もしくは60IU、または少なくとも約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約10、約15、約20、約30、約40、約50、もしくは約60IUのウイルスベクター粒子で存在する。
【0321】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子の力価は、1×106IU/mL~1×108IU/mLまたは約1×106IU/mL~1×108IU/mL、例えば5×106IU/mL~5×107IU/mLまたは約5×106IU/mL~5×107IU/mL、例えば少なくとも6×106IU/mL、7×106IU/mL、8×106IU/mL、9×106IU/mL、1×107IU/mL、2×107IU/mL、3×107IU/mL、4×107IU/mL、または5×107IU/mLである。
【0322】
いくつかの態様において、形質導入は、100未満、例えば一般に60、50、40、30、20、10、5またはそれ以下未満の多重感染度(MOI)で達成することができる。
【0323】
いくつかの態様において、接触させる工程は、溶液中、例えば可溶性のオリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬または多量体形成試薬を使用して実施される。いくつかの態様において、細胞、オリゴマー試薬およびウイルス粒子を、0.5mL~500mLもしくは約0.5mL~500mL、例えば0.5mL~200mL、0.5mL~100mL、0.5mL~50mL、0.5mL~10mL、0.5mL~5mL、5mL~500mL、5mL~200mL、5mL~100mL、5mL~50mL、5mL~10mL、10mL~500mL、10mL~200mL、10mL~100mL、10mL~50mL、50mL~500mL、50mL~200mL、50mL~100mL、100mL~500mL、100mL~200mLもしくは200mL~500mL、または約0.5mL~200mL、約0.5mL~100mL、約0.5mL~50mL、約0.5mL~10mL、約0.5mL~5mL、約5mL~500mL、約5mL~200mL、約5mL~100mL、約5mL~50mL、約5mL~10mL、約10mL~500mL、約10mL~200mL、約10mL~100mL、約10mL~50mL、約50mL~500mL、約50mL~200mL、約50mL~100mL、約100mL~500mL、約100mL~200mLもしくは約200mL~500mLの容量で接触させる。
【0324】
いくつかの態様において、接触させる工程が、溶液中、例えば、可溶性のオリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬を使用して実施されるとき、接触させる工程の少なくとも一部が遠心分離、例えばスピノキュレーション(例えば、遠心接種)による接触させる工程を実施することができる。いくつかの態様において、細胞、ウイルス粒子および試薬を含む組成物を、一般に、比較的低い力または速度で、例えば細胞をペレット化するのに使用されるより遅い速度、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、約1000rpm、もしくは約1500rpmもしくは約1700rpm、または少なくとも600rpm、少なくとも1000rpm、もしくは少なくとも1500rpmもしくは少なくとも1700rpm)で回転させることができる。いくつかの態様において、回転は、例えばチャンバーまたはキャビティの内壁または外壁で測定された場合、100g~3200gまたは約100g~3200g(例えば、100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g、または約100g、約200g、約300g、約400g、約500g、約1000g、約1500g、約2000g、約2500g、約3000gもしくは約3200g、または少なくとも100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g、または少なくとも約100g、少なくとも約200g、少なくとも約300g、少なくとも約400g、少なくとも約500g、少なくとも約1000g、少なくとも約1500g、少なくとも約2000g、少なくとも約2500g、少なくとも約3000gもしくは少なくとも約3200g)の力、例えば、相対遠心力で実施される。「相対遠心力」またはRCFという用語は、一般に、回転軸と比較した空間内の特定の点における、地球の重力に相対的な、物体または物質(例えば細胞、試料、もしくはペレットおよび/または回転させられているチャンバーもしくは他の容器内の点)に付与される有効力であると理解される。その値は、周知の式を使用して、重力、回転速度および回転半径(RCFが測定されている、回転軸から物体、物質、または粒子までの距離)を考慮に入れて決定され得る。
【0325】
いくつかの態様において、オリゴマー試薬、例えば多量体形成試薬は、支持体に結合していない、例えば固体表面または固定相に結合していない。
【0326】
いくつかの態様において、オリゴマー試薬、例えば多量体形成試薬は、支持体、例えば固体表面または固定相上に固定化される。いくつかの態様において、接触させる工程は、固定相内で、例えば、タンパク質(ストレプトアビジンムテイン)、例えばオリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬がその上に固定化されているクロマトグラフィーマトリックスを使用して実施される。提供される方法に関連して使用するための例示的なこのようなフォーマットは、本明細書に記載される。したがって、いくつかの態様において、提供される方法に従ってカラム上での形質導入を実施することができる。
【0327】
いくつかの態様において、細胞と接触させるインプット組成物は、活性化された細胞を含む。いくつかの態様において、インプット組成物中の細胞、例えば、T細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が、活性化され、例えば、いくつかの場合では、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび/または4-1BBの1つまたは複数について表面陽性である。いくつかの態様において、細胞は、接触させる工程の開始前に、例えば、形質導入の開始前に、活性化物質で、例えば抗CD3/抗CD28の存在下で活性化される。外因性成長因子の非存在下でまたは少量の外因性成長因子でT細胞集団をインビボで増殖する方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許6,352,694 B1および欧州特許EP 0 700 430 B1を参照のこと)。一般に、このような方法は、種々の結合物質(例えば、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体)が固定化されている1μMより大きい固相表面を採用する。例えば、Dynabeads(登録商標)CD3/CD28(Invitrogen)は、T細胞増殖のための市販の試薬であり、それは、ヒトT細胞上のCD3およびCD28細胞表面分子に対する親和性精製されたモノクローナル抗体の混合物でコートされた、均一な4.5μmの超常磁性の無菌の非発熱性のポリスチレンビーズである。いくつかの態様において、活性化物質、例えば、抗CD3および/または抗CD28を、ビーズ、例えば磁気ビーズ上に固定化することができる。
【0328】
いくつかの態様において、細胞活性化はまた、IL-2(例えば、50IU/mL~200IU/mLまたは約50IU/mL~200IU/mL、例えば100IU/mLまたは約100IU/mL)の存在下で実施される。いくつかの態様において、活性化は、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間もしくは12時間~24時間、または約1時間~96時間、約1時間~72時間、約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間もしくは約12時間~24時間、例えば少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、36時間もしくは72時間、または少なくとも約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間もしくは約72時間実施される。いくつかの態様において、活性化は、25℃超または約25℃超、例えば一般に32℃、35℃もしくは37℃超、または約32℃、約35℃もしくは約37℃超、例えば37℃±2℃または約37℃±2℃の温度、例えば37℃または約37℃の温度で実施される。
【0329】
いくつかの態様において、細胞は、接触させる工程の開始前に、例えば、形質導入の開始前に、活性化物質で、例えば抗CD3/抗CD28の存在下で活性化されない。いくつかの態様において、細胞と接触させるインプット組成物は、複数の静止細胞を含む。いくつかの態様において、集団中のT細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上は、静止T細胞、例えば、T細胞活性化マーカー、例えば表面マーカーもしくは細胞内サイトカインまたは他のマーカーを欠いているT細胞、および/または細胞サイクルのG0もしくはG0G1a期にあるT細胞である。
【0330】
特定の局面において、提供される方法は、オリゴマータンパク質試薬、例えば多量体形成試薬と接触させる工程および/またはインキュベーションの前に活性化の必要なしに、T細胞において形質導入を起こすことが可能である。いくつかの態様において、該方法は、提供される方法に従って、最初に、すなわち形質導入の前に、T細胞を活性化および/または刺激することなしに、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジン)試薬の存在下で、静止またはナイーブなT細胞を含むT細胞の集団をウイルスベクターで形質導入する工程を含む。いくつかのこのような態様において、提供される方法を使用して、T細胞を活性化および/または刺激する工程を含まない養子療法のための免疫細胞、例えばT細胞を調製することができる。
【0331】
いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)は、裸である。
【0332】
いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)は、それに結合している、組成物中の標的細胞(例えば、T細胞)の表面上の分子に、または、いくつかの場合では、ウイルス粒子の表面上の分子に結合することができる1つまたは複数の結合物質を有する多量体形成試薬である。いくつかの態様において、結合物質は、作用物質に可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬に可逆的に結合する。いくつかの態様において、インキュベーションは、作用物質が細胞またはウイルス粒子上の分子に結合する、例えば特異的に結合する条件下で実施される。記載のとおりのいくつかの態様において、オリゴマー試薬には、1つまたは複数の(例えば、第一または第二または第三の作用物質など)が可逆的に固定化(結合)されており、該作用物質は、細胞の選択、刺激、増殖および/もしくは分化または細胞の形質導入の調節に使用することができる、受容体結合物質、例えば、刺激物質または補助物質、選択物質またはウイルス結合物質を含むことができる。
【0333】
いくつかの場合では、特定の受容体結合物質(例えば、刺激物質または補助物質)について、このような結合は、組成物中の標的細胞(例えば、T細胞)においてシグナル、例えば記載のとおりの一次シグナルまたは補助シグナルを誘導または調節することができる。いくつかの態様において、作用物質の分子への結合は、組成物中の標的細胞の刺激、活性化、増殖および/または分化の1つまたは複数をもたらす。いくつかの態様において、試薬は、一次活性化シグナルを細胞に提供する刺激物質を含み、該刺激物質が、少なくとも1つの結合パートナーC(例えば、C1、C2またはC3など)を含み、結合パートナーCが、作用物質の可逆的結合のためオリゴマー試薬の結合部位Z1に可逆的に結合することができる 。いくつかの態様において、試薬は、補助シグナルを細胞に提供する補助物質を含み、該補助物質が、少なくとも1つの結合パートナーC(例えば、C1、C2またはC3など)を含み、結合パートナーCが、作用物質の可逆的結合のためオリゴマー試薬の結合部位Z1に可逆的に結合することができる。いくつかの態様において、試薬は、特定の細胞表面分子またはマーカーへの結合を特異的に標的化する選択物質を含み、該選択物質が、少なくとも1つの結合パートナーC(例えば、C1、C2またはC3など)を含み、結合パートナーCが、作用物質の可逆的結合のためオリゴマー試薬の結合部位Z1に可逆的に結合することができる。
【0334】
いくつかの態様において、インプット組成物中の細胞の活性化は、インプット組成物の細胞をオリゴマータンパク質試薬および/またはウイルス粒子と接触させる工程の間に開始される。このような例では、オリゴマータンパク質試薬は、その上に固定化されている、受容体結合物質、例えば、T細胞のような細胞内でシグナルを誘導または調節することができる刺激物質および/または補助物質を有することができる。いくつかの態様において、刺激物質は、MHC I:ペプチド複合体もしくはその機能的部分、MHCII:ペプチド複合体もしくはその機能的部分を含み、かつ/または、T細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体、および/もしくはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる。いくつかの態様において、オリゴマー試薬は、その上に固定化されている、補助シグナルを細胞、例えばT細胞に提供することができる補助物質を有することができる。いくつかの態様において、受容体結合物質、例えば、刺激物質および/または補助物質は、本明細書に記載のとおりの任意の作用物質、例えば抗CD3および/または抗CD28抗体(例えば、Fab)である。あるいは、細胞の増殖をトリガーする受容体のリガンド、例えば天然リガンドを刺激物質として使用することも可能である。例えば、CD19の細胞外ドメインを使用して、キメラCD19結合抗原受容体(CAR)を発現するよう形質導入された細胞の細胞内シグナル伝達カスケードの活性化を引き起こすことができる。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジン)試薬は、接触させる工程、任意でさらなるインキュベーションの間に、細胞の形質導入を調節することも、細胞を活性化、例えば刺激することもできる。いくつかの態様において、刺激物質を含むオリゴマー試薬の結合は、例えば競合物質、例えば、ビオチンの存在下で可逆的である。
【0335】
いくつかの態様において、提供される方法を、B細胞、T細胞またはナチュラルキラー細胞のような特定の細胞集団の形質導入および/またはエクスビボ増殖を選択的に誘発するために使用することができる。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬は、形質導入の調節に使用される同じ試薬に可逆的に結合している少なくとも1つの選択物質を含むことができる多量体形成試薬である。いくつかの態様において、オリゴマー(例えば、ストレプトアビジンムテイン)試薬は、選択物質および第一または第二の受容体結合物質(例えば、刺激物質または補助物質)の一方または両方を同じ試薬上に含むことができる多量体形成試薬である。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジン)試薬、例えば多量体形成試薬は、細胞の形質導入を調節することも、選択されたまたは標的化された細胞の特定の亜集団への形質導入を優先的に標的化することもできる。いくつかの態様において、オリゴマータンパク質(例えば、ストレプトアビジン)試薬、例えば多量体形成試薬は、接触させる工程、任意でさらなるインキュベーションの間に、細胞の形質導入を調節、例えば選択されたまたは標的化された細胞の特定の亜集団への形質導入を優先的に標的化し、細胞を活性化、例えば刺激することができる。
【0336】
いくつかの態様において、結合物質、例えば、選択物質および/または刺激物質を含むオリゴマー試薬の結合は、例えば競合物質、例えば、ビオチンの存在下で可逆的である。以下に記載のとおり、いくつかの局面において、該方法は、細胞、ウイルス粒子およびオリゴマー試薬(例えば、1つまたは複数の結合物質に結合している多量体形成試薬)を含む組成物を競合物質に加えるまたはそれとインキュベートして、細胞またはウイルス粒子への1つまたは複数の結合物質の結合を逆転、解離または破壊する工程を含む。いくつかの態様において、逆転、解離または破壊に続いて、組成物の1つまたは複数の成分、例えば解離したオリゴマー試薬、1つまたは複数の結合物質および/または競合物質を除去することができる。例示的なこのような方法は、以下に記載される。
【0337】
いくつかの態様において、提供される方法から産生された細胞(本明細書で以降、「アウトプット組成物」または「インキュベートされた組成物」とも呼ばれる)は、ウイルスベクター、例えば異種タンパク質、例えば組換え受容体、例えば、CARをコードするヌクレオチドを含むウイルスベクターで形質導入されたものを含む。この文脈における異種とは、ウイルスから通常発現されないおよび/またはウイルスゲノムによってコードされないタンパク質を指す。いくつかの態様において、宿主ゲノムへのウイルスベクターの組み込みは、インキュベーション後にウイルスベクター粒子のゲノム内に含まれる核酸によってコードされる組換えタンパク質、例えば異種タンパク質の発現レベルを測定することによって評価することができる。組換え分子の発現レベルを評価するための多数の周知の方法、例えば親和性に基づく方法、例えば、免疫親和性に基づく方法による、例えば、細胞表面タンパク質の状況では、例えばフローサイトメトリーによる検出を使用してよい。いくつかの例では、発現は、形質導入マーカーおよび/または受容体構築物の検出によって測定される。いくつかの態様において、短縮型表面タンパク質をコードする核酸がベクター内に含まれ、その発現および/または増強のマーカーとして使用される。
【0338】
細胞
いくつかの態様において、標的細胞を含む組成物は、例えば記載の方法に従いウイルスベクター粒子を用いて形質導入される。
【0339】
いくつかの態様において、細胞は、通常、真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞であり、典型的に、ヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は、血液、骨髄、リンパもしくはリンパ器官由来であるか、または免疫系の細胞、例えば自然もしくは適応免疫の細胞、例えば骨髄もしくは典型的にはT細胞および/もしくはNK細胞であるリンパ球を含むリンパ細胞である。他の例示的な細胞は、幹細胞、例えば複能性および多能性幹細胞を含み、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む。細胞は典型的に、初代細胞、例えば対象から直接単離されたおよび/または対象から単離され凍結された細胞である。いくつかの態様において、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば、総T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞およびそれらのサブ集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化、増大、再循環、局在化および/もしくは持続性に関する能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロフィール、ならびに/または分化度により定義されるものを含む。処置される対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。特にこの方法は、既製の方法を含む。いくつかの局面において、例えば既製品技術に関して、細胞は、多能性および/または複能性細胞、例えば幹細胞、例えば人工多能性幹細胞(iPSC)である。いくつかの態様において、この方法は、対象から細胞を単離する工程、本明細書に記載されるようにそれらを調製、処理、培養および/または改変する工程、ならびに凍結保存の前または後にそれらを同一患者に再導入する工程を含む。
【0340】
特に、T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよびサブ集団は、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然および適応調節性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、ならびにデルタ/ガンマT細胞である。
【0341】
いくつかの態様において、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様において、細胞は、単球または顆粒球、例えば骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球および/または好塩基球である。
【0342】
いくつかの態様において、細胞の調製は、1回または複数回の培養および/または調製工程を含む。細胞は、試料、例えば生物学的試料、例えば対象から得られたまたは対象由来のものから単離され得る。いくつかの態様において、細胞を単離する対象は、疾患もしくは状態を有する者または細胞療法を必要とする者または細胞療法を受けるであろう者である。対象は、いくつかの態様において、特定の治療的介入、例えばそのために細胞を単離、処理および/または改変する養子細胞療法を必要とするヒトである。
【0343】
したがって、細胞は、いくつかの態様において、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料は、組織、体液および対象から直接採取された他の試料ならびに1つまたは複数の処理工程、例えば分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターを用いた形質導入)、洗浄および/またはインキュベートから得られる試料を含む。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られる試料または処理された試料であり得る。生物学的試料は、それら由来の処理された試料を含む、体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官試料を含むがこれらに限定されない。
【0344】
いくつかの局面において、細胞がそれに由来するまたは細胞がそこから単離される試料は、血液もしくは血液由来試料である、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物であるもしくはそれ由来である。例示的な試料は、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、頸部、精巣、卵巣、扁桃腺もしくは他の器官、および/またはそれら由来の細胞を含む。試料は、細胞療法、例えば養子細胞療法に関して、自己および同種源由来の細胞を含む。
【0345】
いくつかの態様において、細胞は、細胞株、例えばT細胞株由来である。細胞は、いくつかの態様において、異種供給源から、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類またはブタから得られる。
【0346】
いくつかの態様において、細胞の単離は、1つまたは複数の調製および/または非親和性ベースの細胞分離工程を含む。いくつかの例において、細胞は、例えば望まない成分を除去するため、望む成分を濃縮するため、特定の試薬に対する感受性を有する細胞を溶解または除去するために、1つまたは複数の試薬の存在下で、洗浄、遠心分離および/またはインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の特性、例えば密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性に基づき分離される。
【0347】
いくつかの例において、細胞は対象の循環血から、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面において、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および/または血小板を含むリンパ球を含み、いくつかの局面において、赤血球および血小板以外の細胞を含む。
【0348】
いくつかの態様において、対象から回収された血液細胞は、例えば血漿画分を除去するためおよび細胞をその後の処理工程のための適当な緩衝液または培地に入れるために洗浄される。いくつかの態様において、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの態様において、洗浄溶液は、カルシウムおよび/もしくはマグネシウムならびに/または多くのもしくはすべての二価カチオンを含まない。いくつかの局面において、洗浄工程は、半自動化「フロースルー」型遠心分離装置(例えば、Cobe 2991細胞処理装置、Baxter)を製造元の指示にしたがって用いて達成される。いくつかの局面において、洗浄工程は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)を製造元の指示にしたがって用いて達成される。いくつかの態様において、細胞は、洗浄後に様々な生体適合性緩衝液、例えばCa++/Mg++非含有PBSに再懸濁される。特定の態様において、血液細胞試料の成分は除去され、細胞は培養培地に直接再懸濁される。
【0349】
いくつかの態様において、この方法は、密度ベースの細胞分離方法、例えば、赤血球の溶解およびPercollまたはFicoll勾配を通じた遠心分離による末梢血からの白血球の調製、を含む。
【0350】
いくつかの態様において、提供される方法を実施する前に、細胞を濃縮または選択する必要はない。いくつかの態様において、試薬、例えばオリゴマー試薬、例えば、多量体形成試薬は、それに可逆的に結合している、細胞の表面上の分子に結合することができるまたは結合する1つまたは複数の選択物質を含むことができる。いくつかの態様において、このような試薬は、形質導入を媒介するために採用される同じ試薬であるかまたは異なる試薬である。いくつかの態様において、このような試薬の存在下での細胞およびウイルス粒子のインキュベーションの少なくとも一部を実施する工程は、細胞の事前選択または濃縮なしに、細胞集団の選択的な形質導入をもたらすことができる。
【0351】
いくつかの態様において、単離方法は、1つまたは複数の特定分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸の細胞内での発現または存在に基づく異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様において、そのようなマーカーに基づく任意の公知の分離方法が使用され得る。分離方法は、可逆的試薬システム、例えば作用物質(例えば、受容体結合物質または選択物質)および本明細書に記載される試薬を用いる方法を含む、本明細書に開示される任意の方法を含み得る。
【0352】
いくつかの態様において、分離は、親和性または免疫親和性ベースの分離である。例えば、単離は、いくつかの局面において、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの、当該細胞による発現または発現レベルに基づく、細胞および細胞集団の分離を含み、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとインキュベートすること、ならびに通常はその後の洗浄工程および抗体または結合パートナーに結合していない細胞から抗体または結合パートナーに結合した細胞を分離することによる分離を含む。
【0353】
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために維持される正選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞が維持される負選択に基づき得る。いくつかの例において、両方の画分が、さらなる使用のために維持される。いくつかの局面において、負選択は、異種集団内である細胞型を特異的に特定する抗体が利用可能でない場合に特に有用であり得、分離は、望まれる集団以外の細胞により発現されるマーカーに基づき最適に実施される。
【0354】
分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%濃縮または除去を必要とするものではない。例えば、特定型の細胞、例えばあるマーカーを発現するそれらの正選択または濃縮は、そのような細胞の数またはパーセンテージの増加を表すが、それはそのマーカーを発現しない細胞が完全に存在しないことを必要とするものではない。同様に、特定型の細胞、例えばあるマーカーを発現する細胞の負選択、除去または排除は、そのような細胞の数またはパーセンテージの減少を表すが、すべてのそのような細胞が完全に除去されることを必要とするものではない。
【0355】
いくつかの例において、1回の工程から正または負選択された画分を、別の分離工程、例えば後続の正または負選択に供する、複数回の分離工程が実施される。いくつかの例において、1回の分離工程は、複数のマーカーを同時に発現する細胞を、例えば、各々が負選択の標的となるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、排除し得る。同様に、様々な細胞型において発現される複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型が同時に正選択され得る。
【0356】
例えば、いくつかの局面において、T細胞の特定のサブ集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカーについて陽性であるかまたはそれを高レベルで発現する細胞、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+および/またはCD45RO+ T細胞が、正または負選択技術によって単離される。
【0357】
例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28コンジュゲート磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を用いて正選択され得る。
【0358】
いくつかの態様において、単離は、正選択による特定の細胞集団の濃縮、または負選択による特定の細胞集団の排除によって、実施される。いくつかの態様において、正または負選択は、それぞれ正または負選択される細胞において発現される(マーカー+)かまたは相対的に高いレベルで発現される(マーカー高)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または他の結合物質と共に細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0359】
いくつかの態様において、T細胞は、非T細胞、例えばB細胞、単球または他の白血球において発現されるマーカー、例えばCD14の負選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面において、CD4+またはCD8+選択工程は、CD4+ヘルパーおよびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+またはCD8+集団はさらに、1つまたは複数のナイーブ、メモリーおよび/またはエフェクターTサブ集団において発現されるかまたは相対的に高い程度発現されるマーカーについての正または負選択によってサブ集団に分類され得る。
【0360】
いくつかの態様において、CD8+細胞はさらに、例えばそれぞれのサブ集団に関連する表面抗原に基づく正または負選択によって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリーおよび/またはセントラルメモリー幹細胞について濃縮される、またはそれらを排除される。いくつかの態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、効能を高めるために、例えば投与後の長期間の生存、増大および/または生着を改善するために実施され、それは、いくつかの局面において、そのようなサブ集団において特に確実である。Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82; Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照のこと。いくつかの態様において、TCM濃縮CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の混合は、効果をさらに向上させる。
【0361】
態様において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-の両サブセットに存在する。PBMCは、例えば抗CD8および抗CD62L抗体を用いて、CD62L-CD8+および/もしくはCD62L+CD8+画分について濃縮され得るまたはそれらを排除され得る。
【0362】
いくつかの態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3および/またはCD127の陽性または高い表面発現に基づき、いくつかの局面において、それはCD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するまたは高度に発現する細胞についての負選択に基づく。いくつかの局面において、TCM細胞について濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の排除およびCD62Lを発現する細胞についての正選択または濃縮によって実施される。1つの局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性の画分から出発し、これがCD14およびCD45RAの発現に基づく負選択およびCD62Lに基づく正選択に供されることによって実施される。そのような選択は、いくつかの局面において、同時に実施され、他の局面においては、いずれかの順で順次実施される。いくつかの局面において、CD8+細胞集団またはサブ集団を調製するのに使用したのと同じCD4発現ベースの選択設定が、CD4+細胞集団またはサブ集団を生成するためにも使用され、したがってCD4ベースの分離からの陽性および陰性の両画分が維持され、任意で1回または複数回のさらなる正または負選択工程を行った後に、この方法の後続の工程において使用される。
【0363】
ある特定の例では、PBMC試料または他の白血球試料がCD4+細胞の選択に供され、そこで陰性および陽性の両方の画分が保持される。次いで、陰性画分が、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく陰性選択ならびにセントラルメモリーT細胞、例えばCD62LまたはCCR7に特徴的なマーカーに基づく陽性選択に供され、そこで陽性および陰性選択がいずれかの順序で実施される。
【0364】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、ナイーブ、セントラルメモリーおよびエフェクター細胞に分類される。CD4+リンパ球は、標準的な方法によって取得され得る。いくつかの態様において、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞である。いくつかの態様において、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様において、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45RO-である。
【0365】
1つの例において、負選択によりCD4+細胞について濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは典型的に、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様において、抗体または結合パートナーは、正および/または負選択により細胞を分離できるよう、固体支持体またはマトリクス、例えば磁気ビーズまたは常磁性ビーズに結合される。例えば、いくつかの態様において、細胞および細胞集団は、(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher (著作権) Humana Press Inc., Totowa, NJで概説されている)免疫磁気(または親和性磁気)分離技術を用いて分離または単離される。
【0366】
いくつかの局面において、分離される細胞の試料または組成物は、小さな、磁化可能なまたは磁気反応性の材料、例えば磁気反応粒子または微粒子、例えば常磁性ビーズ(例えば、DynabeadsまたはMACSビーズ)と共にインキュベートされる。磁気反応性材料、例えば粒子は、通常、分離が望まれる、例えば負または正選択されることが望まれる、細胞、細胞群または細胞集団に存在する分子、例えば表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に、直接的または間接的に付着される。
【0367】
いくつかの態様において、磁気粒子またはビーズは、特異的結合メンバー、例えば抗体または他の結合パートナーに結合された磁気反応性材料を含む。多くの周知の磁気反応性材料が、磁気分離方法において使用される。適当な磁気粒子は、参照により本明細書に組み入れられるMoldayの米国特許第4,452,773号および欧州特許明細書EP 452342 Bに記載されるものを含む。コロイド状のサイズ指定された粒子、例えばOwenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されるものが、他の例である。
【0368】
インキュベートは通常、磁気粒子またはビーズに付着された、抗体もしくは結合パートナーまたはそのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する分子、例えば二次抗体もしくは他の試薬が、試料中の細胞上に存在する場合に細胞表面分子に特異的に結合する条件下で、実施される。
【0369】
いくつかの局面において、試料は磁場に置かれ、磁気反応性または磁化可能粒子が付着された細胞は、磁石に誘引され、非標識細胞から分離される。正選択の場合、磁石に誘引される細胞が維持され、負選択の場合、誘引されない細胞(非標識細胞)が維持される。いくつかの局面において、同じ選択工程の間に正および負選択の組み合わせが実施され、正および負画分が維持され、さらに処理されるかまたはさらなる分離工程に供される。
【0370】
特定の態様において、磁気反応性粒子は、一次抗体もしくは他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素またはストレプトアビジンでコーティングされる。特定の態様において、磁気粒子は、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを通じて細胞に付着される。特定の態様において、ビーズではなく細胞が、一次抗体または結合パートナーによって標識され、次いで細胞型特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えばストレプトアビジン)でコーティングされた磁気粒子が添加される。特定の態様において、ストレプトアビジンコーティングされた磁気粒子が、ビオチニル化された一次または二次抗体と組み合わせて使用される。
【0371】
いくつかの態様において、磁気反応性粒子は、その後にインキュベート、培養および/または改変される細胞に付着したまま維持され、いくつかの局面において、粒子は、患者に投与するための細胞に付着したまま維持される。いくつかの態様において、磁化可能または磁気反応性粒子は、細胞から除去される。細胞から磁化可能粒子を除去する方法は公知であり、例えば、競合する非標識抗体、磁化可能粒子または切断可能なリンカーにコンジュゲートされた抗体等の使用を含む。いくつかの態様において、磁化可能粒子は、生分解性である。
【0372】
いくつかの態様において、親和性ベースの選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を通じた選択である。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化粒子が付着した細胞の高純度選択を実現する。特定の態様において、MACSは、外部磁場の適用後に非標的種および標的種が順次溶出される様式で動作する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞はその場で維持され、非付着種が溶出する。次いで、この第1の溶出工程が完了した後に、磁場内で捕捉され溶出を妨げられていた種が、溶出し回収され得るように何らかの様式で自由にされる。特定の態様において、非標的細胞は、標識され、異種細胞集団から排除される。
【0373】
特定の態様において、単離または分離は、この方法の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベート、培養および/または製剤化工程の1つまたは複数を実施するシステム、デバイスまたは装置を用いて実施される。いくつかの局面において、システムは、閉鎖または滅菌環境下でこれらの工程の各々を実施するよう、例えば、失敗、使用者による操作および/または混入を最小限に抑えるよう、使用される。1つの例において、システムは、国際特許出願公開番号WO2009/072003またはUS 20110003380 A1に記載されるシステムである。
【0374】
いくつかの態様において、システムまたは装置は、統合型もしくは内蔵型システム内でおよび/または自動もしくはプログラム可能な方式で、単離、処理、改変および製剤化工程の1つまたは複数、例えばすべてを実施する。いくつかの局面において、システムまたは装置は、使用者が処理、単離、改変および製剤化工程の結果をプログラム、制御、評価できるならびに/またはそれらの工程の様々な局面を調節できるようにする、システムまたは装置と連携するコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含む。
【0375】
いくつかの局面において、分離および/または他の工程は、例えば、閉鎖滅菌システムにおける臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotic)を用いて実施される。構成要素は、統合マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプおよび様々なピンチ弁を含み得る。統合コンピュータは、いくつかの局面において、機器のすべての構成要素を制御し、繰り返される手順を標準化された順でシステムに実施させる。磁気分離ユニットは、いくつかの局面において、可動式永久磁石および選択カラム用ホルダーを含む。蠕動ポンプは、管材セットを通じて流速を制御し、ピンチ弁と共に、システムを通る緩衝液の流れの制御および細胞の継続的な分離を確実にする。
【0376】
CliniMACSシステムは、いくつかの局面において、滅菌、非発熱性溶液で供給される抗体結合磁化可能粒子を使用する。いくつかの態様において、細胞が磁気粒子で標識された後、過剰な粒子を除去するために細胞は洗浄される。その後、細胞調製バッグが管材セットに接続され、これがさらに緩衝液を含むバッグおよび細胞回収バッグに接続される。管材セットは、プレカラムおよび分離カラムを含む組み立て済み滅菌管材からなり、一回使いきりである。分離プログラムの開始後、システムは自動的に細胞試料を分離カラムに投入する。標識された細胞はカラム内で維持され、非標識細胞は一連の洗浄工程によって除去される。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法において使用される細胞集団は標識されず、カラム内で維持されない。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法において使用される細胞集団は標識され、カラム内で維持される。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法において使用される細胞集団は、磁場の除去後にカラムから流出され、細胞回収バッグに回収される。
【0377】
特定の態様において、分離および/または他の工程は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を用いて実施される。CliniMACS Prodigyシステムは、いくつかの局面において、遠心分離による細胞の自動洗浄および分画を可能にする細胞処理ユニットを装備している。CliniMACS Prodigyシステムはまた、オンボードカメラおよび巨視的なソース細胞産物の層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する画像認識ソフトウェアを含み得る。例えば、末梢血は、自動的に赤血球、白血球および血漿層に分離され得る。CliniMACS Prodigyシステムはまた、細胞培養プロトコル、例えば細胞の分化および増大、抗原添加および長期的細胞培養を行う統合型細胞培養チャンバーを含み得る。投入口は、培地の無菌的除去および補充を可能にし得、細胞は統合型顕微鏡を用いてモニターされ得る。例えば、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraet al. (2012) Blood.1:72-82、およびWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照のこと。
【0378】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞集団は、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体の流れで運搬されるフローサイトメトリーを通じて、回収および濃縮(または排除)される。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞集団は、調製目的(FACS)選別を通じて回収および濃縮(または排除)される。特定の態様において、本明細書に記載される細胞集団は、FACSベースの検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって回収および濃縮(または排除)される(例えば、WO 2010/033140、Cho et al. (2010) Lab Chip 10, 1567-1573;およびGodin et al. (2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照のこと)。両方の例において、細胞は、十分に定義されたT細胞サブセットの高純度の単離が可能なように複数のマーカーで染色され得る。
【0379】
いくつかの態様において、抗体また結合パートナーは、正および/または負選択のための分離を容易にするために、1つまたは複数の検出マーカーで標識される。例えば、分離は、蛍光標識された抗体への結合に基づき得る。いくつかの例において、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えば調製目的(FACS)を含む蛍光活性化細胞選別(FACS)および/または例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップによって、流体の流れの中で実施される。そのような方法は、複数のマーカーに基づく同時の正および負選択を可能にする。
【0380】
いくつかの態様において、調製方法は、単離、インキュベートおよび/または改変の前または後のいずれかに、細胞を凍結、例えば凍結保存する工程を含む。いくつかの態様において、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団内の顆粒球および、一定程度、単球を除去する。いくつかの態様において、細胞は、例えば血漿および血小板を除去する洗浄工程の後に、凍結溶液中に懸濁される。いくつかの局面において、任意の様々な公知の凍結溶液およびパラメータが使用され得る。1つの例は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含むPBSまたは他の適当な細胞凍結培地を使用する。これはその後、DMSOおよびHSAの終濃度がそれぞれ10%および4%となるよう培地で1:1希釈される。細胞はその後、毎分1°の速度で-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの蒸気相の中で保管される。
【0381】
いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作の前にまたはそれに関連して、例えば提供される方法に従い形質導入の前またはそれに関連して、インキュベートおよび/または培養される。インキュベート工程は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化および/または繁殖を含み得る。いくつかの態様において、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件は、集団内の細胞の増殖、増大、活性化および/もしくは生存を誘導するよう、抗原曝露を模倣するよう、ならびに/または遺伝子改変のため、例えば組換え抗原受容体の導入のために細胞を準備するよう設計されたものを含む。
【0382】
条件は、特定の培地、温度、酸素量、二酸化炭素量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンおよび/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体および細胞を活性化するよう設計された任意の他の作用物質の1つまたは複数を含み得る。
【0383】
いくつかの態様において、刺激条件または作用物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面において、作用物質は、T細胞においてTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを起動または始動させる。そのような作用物質は、例えば固体支持体、例えばビーズに結合された、抗体、例えばTCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的なもの、例えば、抗CD3、抗CD28、ならびに/または1つもしくは複数のサイトカインを含み得る。任意で、増大方法はさらに、(例えば、少なくとも約0.5 ng/mlの濃度で)培養培地に抗CD3および/または抗CD28抗体を添加する工程を含み得る。いくつかの態様において、刺激性の作用物質は、IL-2および/またはIL-15、例えば少なくとも約10ユニット/mLのIL-2濃度を含む。
【0384】
いくつかの局面において、インキュベートは、Riddellらに対する米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraet al. (2012) Blood.1:72-82および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されるような技術にしたがい実施される。
【0385】
いくつかの態様において、T細胞は、培養開始組成物にフィーダー細胞、例えば非分裂末梢血単核細胞(PBMC)を(例えば、得られる細胞集団が、増大しようとする初期集団内の各Tリンパ球につき少なくとも約5、10、20もしくは40個またはそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含むように)添加し、培養物を(例えば、T細胞数が増大されるのに十分な時間)インキュベートすることによって増大される。いくつかの局面において、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ線照射されたPBMCフィーダー細胞を含み得る。いくつかの態様において、PBMCは、細胞分裂を防ぐために、約3000~3600ラドの範囲のガンマ線で照射される。いくつかの局面において、フィーダー細胞は、T細胞集団の添加前に培養培地に添加される。
【0386】
いくつかの態様において、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に適した温度、例えば、少なくとも摂氏約25度、通常少なくとも約30度、および通常摂氏37度もしくは約37度を含む。任意で、インキュベートはさらに、フィーダー細胞としての非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)の添加を含み得る。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲のガンマ線で照射され得る。LCLフィーダー細胞は、いくつかの局面において、任意の適当な量、例えば少なくとも約10:1のLCLフィーダー細胞 対 初期Tリンパ球の比率で提供される。
【0387】
いくつかの態様において、抗原特異的T細胞、例えば抗原特異的CD4+および/またはCD8+ T細胞は、ナイーブまたは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、抗原特異的T細胞株またはクローンは、サイトメガロウイルス抗原に対して、感染対象からT細胞を単離し、細胞をインビトロで同抗原によって刺激することによって生成され得る。
【0388】
いくつかの場合では、細胞、例えば、T細胞が活性化されることを必要としないウイルスベクター粒子を使用してよい。いくつかのこのような例では、活性化の前におよび/または活性化の非存在下で、細胞を選択および/または形質導入してよい。
【0389】
B. 成分の可逆的結合または分断および除去
いくつかの態様において、該方法は、オリゴマータンパク質試薬、例えば多量体形成試薬と接触、インキュベートまたは培養された細胞を、(i)第一の結合パートナー(例えば、C1)と結合部位Z(例えば、Z1)との間の結合を破壊させることができる競合試薬(例えば、遊離の結合パートナーC、例えば、C1)もしくはその類似体、および/または(例えば、必要に応じて)と接触させる工程をさらに含む。本明細書に記載のとおりの例示的な競合試薬のいずれかを採用することができる。いくつかの態様において、特定の結合パートナーCの性質および結合部位Zとのその相互作用に依存して、1つまたは複数のさらなる第二の競合試薬を加えることができる。そのようにすることによって、該結合パートナーとオリゴマー試薬の該結合部位との間の可逆的結合が破壊され、それによって、溶離液中に、オリゴマー試薬に結合している細胞、例えば、T細胞(例えば、アウトプット組成物)が放出される。
【0390】
いくつかの態様において、遊離パートナーまたはその類似体の添加は、多量体形成試薬からの結合パートナーC(例えばC1)の置換をもたらし、ひいては、可逆的に結合している作用物質中に結合パートナーが含まれるので、多量体形成試薬からのこのような作用物質の置換が達成される。この作用物質の置換は次に、細胞表面分子からの第一の作用物質の解離を、特に第一の作用物質と細胞表面受容体との間の結合の結合親和性が10-2M~10-13Mの範囲の解離定数(KD)を有し、したがって可逆的でもある場合にもたらす。この解離に起因して、いくつかの局面において、細胞集団の形質導入、選択、活性化、刺激および/または活性化も終了する。
【0391】
いくつかの態様において、該方法は、可逆的解離または分断に続いて1つまたは複数の成分を除去する工程をさらに含むことができる。成分の分断および/または除去のための本明細書に上記のとおりの方法のいずれかを採用することができる。いくつかの態様において、培養された標的細胞(例えば、T細胞)中の任意の未結合または残留の競合試薬(例えば、ビオチン)を分離または除去することができる。いくつかの態様において、オリゴマー化試薬が、細胞組成物(例えば、アウトプット組成物)中の細胞から除去、低減または分離される。いくつかの態様において、結合物質の1つまたは複数が、細胞組成物(例えば、アウトプット組成物)中の細胞から除去、低減または分離される。いくつかの態様において、競合物質が、組成物(例えば、アウトプット組成物)中の細胞から除去または低減または分離される。いくつかの態様において、細胞を遠心分離によって単純に沈殿させることができ、かつ、可溶性の多量体形成物質および/または他の成分を含む上清を廃棄することができるので、該方法は、可溶性のオリゴマー化試薬、例えば、多量体形成試薬を採用して、該試薬および1つまたは複数の他の成分を細胞組成物から容易に除去することができる。あるいは、可溶性の多量体形成物質を、本明細書に記載のような除去カートリッジのゲル浸透マトリックスにおいて、細胞組成物から除去することができる(例えば、国際特許出願WO 2013/124474)。
【0392】
例えば、いくつかの態様において、分離/除去を、第二の固定相を使用して実施することができる。この目的のために、標的細胞(例えば、T細胞)およびオリゴマー化試薬を含む混合物(例えば、アウトプット組成物中に依然として存在することができる)が、好適な固定相(第二の固定相であることができる)に曝露される。この固定相は、ゲル濾過マトリックスおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであってよく、ゲル濾過および/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスが、親和性試薬を含む。クロマトグラフィー樹脂上に含まれる親和性試薬は、存在する場合、オリゴマー試薬の結合部位Z1および/または結合部位Z2に(特異的に)結合する結合パートナーDを含み、それによってオリゴマー試薬を固定相上に固定化する。ストレプトアビジン系オリゴマー試薬が使用され、かつ、結合物質が結合パートナーC1またはC2としてストレプトアビジン結合ペプチドを有する場合、この固定相の親和性試薬中に含まれる結合パートナーDは、ビオチンであることができる。オリゴマー化試薬として使用されるストレプトアビジンの、またはストレプトアビジンムテインの可溶性オリゴマーは、その後、市販されているクロマトグラフィーマトリックス、例えばビオチン-セファロース(商標)に通常共有結合しているビオチンに結合する。いくつかのこのような態様において、細胞(例えば、アウトプット組成物)をオリゴマー化試薬から回収することができる。
【0393】
いくつかの態様において、試薬および他の成分を組成物から除去する能力は、磁気ビーズのような任意の固体支持体を回避することができるさらなる利点を有する。いくつかの態様において、これは、このような磁気ビーズによる活性化T細胞の混入のリスクがないかまたはリスクが最小限であることを意味する。いくつかの態様において、これはまた、最終の増殖されたT細胞集団が磁気ビーズを確実に含まないようにするために追加の措置を講じる必要があるDynabeads(登録商標)の使用のような他の方法と比較して、GMP基準に準拠するプロセスをより容易に確立することができることを意味する。いくつかの態様において、固相(例えば、磁気ビーズ)が存在しないので、本発明はまた、公知の細胞増殖系、例えばXuri Cell Expansion System W25およびWAVE Bioreactor 2/10 System(GE Healthcare (Little Chalfont、Buckinghamshire、United Kingdom)から入手可能)またはQuantum(登録商標) Cell Expansion System(TerumoBCT Inc. (Lakewood, CO, USA)から入手可能)に組み込むことができる、細胞の増殖のための自動化された閉鎖系を提供する。
【0394】
C. さらなる処理
いくつかの態様において、形質導入のための処理工程、例えば細胞工学に関連する処理工程は、細胞の培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または増殖を追加で含むことができる。いくつかの態様において、インプット組成物および/またはアウトプット組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。このような条件は、集団の細胞の増殖、増殖、活性化、および/または生存を誘発して、抗原曝露を模倣するよう、かつ/または、遺伝子工学のため、例えばウイルスベクターで形質導入するための細胞を活性化するため細胞をプライミングするよう設計されたものを含む。
【0395】
いくつかの態様において、任意で、該方法は、インキュベーションのさらなる部分、例えば、細胞をオリゴマー試薬、例えば多量体形成試薬、およびウイルスベクター粒子と接触させる工程に続くさらなる部分のインキュベーションを含む。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、ウイルス粒子結合物質および試薬ならびに/または選択物質および試薬の分断に続いて実施される。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、回転または遠心分離なしで実施され、それは、一般に、回転下で、例えば、遠心分離またはスピノキュレーションに関連して行われるインキュベーションの少なくとも一部に続いて実施される。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、固定相以外で、例えばクロマトグラフィーマトリックス以外で、例えば、溶液中で実施される。いくつかのこのような態様において、さらなるインキュベーションは、細胞の1つまたは複数の宿主ゲノムへのウイルスベクターの組み込みをもたらす条件下で実行される。
【0396】
インキュベーションによって宿主ゲノムへのウイルスベクター粒子の組み込みがもたらされたかどうかを評価または決定すること、ひいてはさらなるインキュベーションのための条件を実験的に決定することは、当業者の技術の範囲内である。いくつかの態様において、宿主ゲノムへのウイルスベクターの組み込みは、インキュベーション後にウイルスベクター粒子のゲノム内に含まれる核酸によってコードされる組換えタンパク質、例えば異種タンパク質の発現レベルを測定することによって評価することができる。組換え分子の発現レベルを評価するための多数の周知の方法、例えば親和性に基づく方法、例えば、免疫親和性に基づく方法による、例えば、細胞表面タンパク質の状況では、例えばフローサイトメトリーによる検出を使用してよい。いくつかの例では、発現は、形質導入マーカーおよび/または受容体構築物の検出によって測定される。いくつかの態様において、短縮型表面タンパク質をコードする核酸は、ベクター内に含まれ、その発現および/または増強のマーカーとして使用される。
【0397】
いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、接触させる工程が行われる同じ容器または装置内で実施される。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、接触させる工程が行われるものと異なる容器または装置内で実施され、これは、例えば、ウイルス粒子および試薬との接触に続いて細胞組成物を異なる容器または装置内へ移送、例えば、自動移送することによる。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、インキュベーションの前にインプット組成物から試薬を除去することなしに実施される。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、さらなるインキュベーションの間に試薬を除去することなしに実施される。いくつかの態様において、試薬は、さらなるインキュベーションの少なくとも一部の間、例えばさらなるインキュベーションの少なくとも半分の間に含まれるが、その後、1つまたは複数のさらなる処理工程の前に組成物から除去される。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションに続いて、細胞を調製するためのプロセスは、細胞を洗浄または製剤化する工程をさらに含むことができる。
【0398】
いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、細胞の刺激および/または活性化のための条件下で実施され、その条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、ならびに細胞を活性化するよう設計された任意の他の作用物質の1つまたは複数を含むことができる。
【0399】
いくつかの態様において、刺激条件または刺激物質は、1つまたは複数の作用物質(例えば、刺激および/または補助物質)、例えば、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができるリガンドを含む。いくつかの局面において、作用物質、例えば、一次シグナルを送達する、例えば、ITAM誘発シグナルの活性化を開始するために好適な作用物質、例えばTCR成分に特異的なもの、および/または共刺激シグナルを促進する作用物質、例えばT細胞共刺激受容体に特異的なもの、例えば、抗CD3、抗CD28、または抗41-BB(例えば、ビーズのような固体支持体に結合している)、および/または1つまたは複数のサイトカインは、T細胞においてTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを有効にするかまたは開始する。中でも、刺激物質は、抗CD3/抗CD28ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander、および/またはExpACT(登録商標)ビーズ)である。任意で、増殖法は、抗CD3および/または抗CD28抗体を培養培地に加える工程をさらに含んでよい。いくつかの態様において、刺激物質は、IL-2および/またはIL-15、例えば、少なくとも約10ユニット/mLの濃度のIL-2を含む。いくつかの態様において、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoffら(2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraら(2012) Blood.1:72-82、および/またはWang ら(2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されているもののような技術に従って実施される。
【0400】
いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、刺激物質(例えば、サイトカイン、例えばIL-2)の存在下で実行される。
【0401】
いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、室温を超える、例えば25℃を超えるまたは約25℃を超える、例えば一般に32℃、35℃もしくは37℃を超える、または約32℃、約35℃もしくは約37℃を超える温度で実施される。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、37℃±2℃または約37℃±2℃の温度、例えば37℃または約37℃の温度で実施される。
【0402】
いくつかの態様において、インキュベーション、例えば1つまたは複数の刺激物質とのインキュベーションの全期間は、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間もしくは12時間~24時間、または約1時間~96時間、約1時間~72時間、約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間もしくは約12時間~24時間、例えば少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、36時間もしくは72時間、または少なくとも約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間もしくは約72時間である。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間もしくは12時間~24時間、または約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間もしくは約12時間~24時間(記載の数字を含む)の時間である。
【0403】
いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、閉鎖系で行われる。いくつかの態様において、試薬から、例えば容器、例えば、バッグ、チューブ、または槽(vessel)内へ細胞を溶離した後、溶離された組成物を含む容器は、さらなる時間インキュベートされる。いくつかの態様において、容器は、37℃±2℃または約37℃±2℃の温度で、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間もしくは12時間~24時間、または約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間もしくは約12時間~24時間(記載の数字を含む)の時間インキュベートされる。
【0404】
D. 形質導入された細胞の例示的な特徴
いくつかの態様において、該方法は、アウトプット組成物(例えば、溶離された組成物)またはそのサブセット中の特定の数またはパーセンテージの細胞の形質導入をもたらす。例えば、いくつかの態様において、アウトプット組成物、例えば、溶離された組成物中の全細胞の(または特定の標的細胞タイプ、例えばT細胞の)少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、前記ウイルスベクターを用いて形質導入され、かつ/またはそれによってコードされる組換え遺伝子産物を発現する。いくつかの態様において、形質導入の方法は、組成物中の全細胞、例えばT細胞の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、ウイルスベクターを用いて形質導入され、かつ/またはそれによってコードされる組換え遺伝子産物を発現する、アウトプット組成物、例えば、溶離された組成物をもたらす。細胞の形質導入は、ベクターに含まれる組換え核酸、例えば、導入遺伝子またはその産物の細胞中での存在を検出することによって検出され得る。いくつかの態様において、産物は、細胞の表面上に検出され、このことは、細胞の形質導入に成功したことを示している。いくつかの態様において、形質導入の検出は、形質導入マーカー、例えば形質導入された細胞を産生する目的で含まれる別の導入遺伝子もしくは産物、および/または他の選択マーカーの検出を包含する。
【0405】
いくつかの態様において、該方法は、このような少なくとも特定の形質導入効率を特定の条件下で達成することができる。例えば、いくつかの態様において、インプット組成物がウイルスおよび細胞を、1細胞当たり1感染単位(IU)~1細胞当たり10IUもしくは1細胞当たり約1感染単位(IU)~1細胞当たり10IU、例えば1細胞当たり少なくとも1感染単位(IU)もしくは1感染単位(IU)もしくは約1感染単位(IU)、または1細胞当たり少なくとも2IUもしくは2IUもしくは約2IU、1細胞当たり少なくとも5IUもしくは5IUもしくは約5IU、または1細胞当たり少なくとも10IUもしくは10IUもしくは約10IUの比率で含む場合、該方法は、該方法によって作製された組成物中の細胞の少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が組換えウイルスベクターを含む、例えば、該ベクターで形質導入されている、アウトプット組成物を産生することができる。
【0406】
いくつかの態様において、形質導入法から生じたアウトプット組成物、例えば、溶離された組成物は、1細胞当たり特定の平均(average)または平均(mean)のコピー数(ベクターコピー数(VCN))の形質導入されたベクターを含む。VCNは、単一細胞におけるコピーの数という単位で表現され得る。あるいは、それは、全細胞集団または組成物、例えばアウトプットもしくは形質導入された組成物(組成物内の任意の形質導入されていない細胞を含み、それは任意のコピー数のベクターを含まないであろう)に対する平均数として表現され得る。あるいは、VCNは、形質導入された細胞のみにおける平均コピー数という単位で表現され得る。いくつかの態様において、該方法によって産生された形質導入されたまたは溶離された組成物中の全ての細胞における平均VCNは、10、5、4、2.5、1.5もしくは1以下、または約10、約5、約4、約2.5、約1.5もしくは約1以下である。いくつかの態様において、組換えウイルスベクターを含むかまたは組換え遺伝子産物を発現する形質導入されたまたは溶離された組成物中の細胞における平均VCNは、4、3、2、2.5、1.5もしくは1以下、または約4、約3、約2、約2.5、約1.5もしくは約1以下である。
【0407】
いくつかの局面において、提供される方法を使用して、細胞、例えばT細胞のサブセットにおいて形質導入を増強または増加させることが可能であり、細胞をオリゴマー試薬およびウイルス粒子と接触させる工程(例えば、形質導入する工程)の少なくとも一部の間に行われるインキュベーションまたは培養において少なくとも1つまたは複数の選択物質の存在下で、これを可逆的に選択することができる。いくつかの態様において、選択マーカーに特異的に結合する選択物質の存在下で接触させた、例えばインキュベートさせたときに選択マーカーに対して陽性であるアウトプット組成物中の細胞、例えばT細胞のサブセットにおいて、選択物質を含まない試薬の存在下での接触、例えばインキュベーションと比較して、形質導入を、少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍、少なくとも3.0倍、少なくとも4.0倍、少なくとも5.0倍、少なくとも6.0倍、少なくとも7.0倍、少なくとも8.0倍、少なくとも9.0倍、少なくとも10倍またはそれ以上増加させることができる。いくつかの態様において、選択マーカーは、本明細書に記載のとおりの任意の選択マーカーであることができる。いくつかの態様において、選択マーカーは、CD25、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RA、および/またはCD45ROの中から選択される。いくつかの態様において、細胞の形質導入を選択的にまたは優先的に標的化できることは、細胞工学のプロセス、例えば、細胞の活性化および/または形質導入の開始の前にまず細胞を単離または選択せずに、混合された細胞集団において形質導入を実施することができることを意味する。いくつかの態様において、提供される方法は、細胞の活性化の前または細胞の形質導入の開始の前に免疫親和性に基づく方法によって細胞を選択または単離する工程を含まない。
【0408】
また、上記の方法のいずれかによって産生される組成物も提供される。いくつかの態様において、該組成物は、少なくとも複数の細胞が組換えウイルスベクターで形質導入された少なくとも1×107細胞または5×107細胞、例えば少なくとも1×108細胞、2×108細胞、4×108細胞、6×108、8×108細胞または1×109細胞を含む。いくつかの態様において、細胞は、T細胞である。
【0409】
IV. ウイルスベクター粒子
いくつかの態様において、該方法は、細胞組成物、例えばインプット組成物をウイルス粒子(「ウイルスベクター粒子」とも称される)と、記載のとおりのオリゴマー試薬、例えば多量体形成試薬の存在下で接触させる工程を包含する。いくつかの局面において、複数のウイルスベクター粒子を含む細胞組成物を、ある試薬にまたはウイルスベクター粒子が可逆的に結合することができる試薬に可逆的に結合しているウイルス粒子結合物質と接触させる。
【0410】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、組換えおよび/または異種分子、例えば、組換えまたは異種タンパク質、例えば組換えおよび/または異種受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)または他の抗原受容体をコードする核酸をウイルスベクターのゲノム中に含む、レトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスまたはガンマレトロウイルスベクター粒子である。ウイルスベクター粒子のゲノムは、典型的には、組換え分子をコードする核酸に加えて、配列を含む。このような配列は、ウイルス粒子にゲノムがパッケージングされることを可能にする配列および/または組換え受容体、例えばCARをコードする核酸の発現を促進する配列を含んでよい。
【0411】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子は、HIV-1レンチウイルスベクター粒子である。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子、例えばレトロウイルスベクター粒子は、VSV-Gまたは他のウイルスエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイプ化される。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、その表面に、記載のとおりのウイルスエンベロープ糖タンパク質に融合またはコンジュゲートされた合成部分、例えばペプチドまたはタグ(例えば、親和性タグ)を含む。
【0412】
A. ウイルスベクター
提供されるウイルスベクター粒子は、レトロウイルスゲノムに基づくベクターに由来する、例えばガンマレトロウイルスまたはレンチウイルスゲノムに基づくベクターに由来するゲノムを含む。多数のこのような好適なベクターゲノムのいずれかは公知である(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25; Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46; Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93; Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557; Pfeifer and Verma (2001) Annu. Rev. Genomics Hum. Genet., 2:177-211を参照のこと)。提供されるウイルスベクターのいくつかの局面において、組換え受容体、例えば抗原受容体、例えばCARをコードする異種核酸が、ベクターゲノムの5’LTR配列と3’LTR配列との間に含まれ、かつ/または位置する。
【0413】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、レンチウイルスゲノム、例えばHIV-1ゲノムまたはSIVゲノムである。例えば、レンチウイルスベクターは、ビルレンス遺伝子を多重に弱毒化させることによって作製されており、例えば、遺伝子env、vif、vpuおよびnefを欠失させて、ベクターを治療目的にとって安全なものにすることができる。レンチウイルスベクターは公知である。Naldiniら(1996 and 1998); Zuffereyら(1997); Dullら 1998、米国特許第6,013,516号;および第5,994,136号)を参照されたい。いくつかの態様において、これらのウイルスベクターは、プラスミド系またはウイルス系であり、かつ、外来核酸の組み込みのため、選択のため、および宿主細胞への核酸の移入のために不可欠な配列を担持するよう構成されている。公知のレンチウイルスは、寄託機関または保存機関、例えばAmerican Type Culture Collectionから容易に入手することも(「ATCC」; 10801 University Blvd., Manassas, Va. 20110-2209)、または公知の供給源から市販の技術を使用して単離することもできる。
【0414】
レンチウイルスベクターの非限定例は、レンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、HTLV-2またはウマ感染性貧血ウイルス(E1AV)に由来するものを含む。例えば、レンチウイルスベクターは、HIVビルレンス遺伝子を多重に弱毒化させることによって作製されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefを欠失させて、ベクターを治療目的にとって安全なものにする。レンチウイルスベクターは、当技術分野において公知であり、Naldiniら(1996 and 1998); Zuffereyら(1997); Dullら 1998, 米国特許第6,013,516号;および第5,994,136号)を参照されたい。いくつかの態様において、これらのウイルスベクターは、プラスミド系またはウイルス系であり、かつ、外来核酸の組み込みのため、選択のため、および宿主細胞への核酸の移入のために不可欠な配列を担持するよう構成されている。公知のレンチウイルスは、寄託機関または保存機関、例えばAmerican Type Culture Collectionから容易に入手することも(「ATCC」; 10801 University Blvd., Manassas, Va. 20110-2209)、または公知の供給源から市販の技術を使用して単離することもできる。
【0415】
いくつかの態様において、ウイルスゲノムベクターは、レトロウイルス、例えばレンチウイルスの5’LTRおよび3’LTRの配列を含むことができる。いくつかの局面において、ウイルスゲノム構築物は、レンチウイルスの5’LTRおよび3’LTR由来の配列を含んでよく、特に、レンチウイルスの5’LTR由来のR配列およびU5配列ならびにレンチウイルス由来の不活性化されたまたは自己不活性化3’LTRを含むことができる。LTR配列は、任意の種の任意のレンチウイルス由来のLTR配列であることができる。例えば、これらは、HIV、SIV、FIVまたはBIV由来のLTR配列であってよい。典型的には、LTR配列は、HIV LTR配列である。
【0416】
いくつかの態様において、ウイルスベクター、例えばHIVウイルスベクターの核酸は、追加の転写単位を欠いている。ベクターゲノムは、不活性化されたまたは自己不活性化3’LTRを含むことができる(Zufferey et al. J Virol 72: 9873, 1998; Miyoshi et al., J Virol 72:8150, 1998)。例えば、ウイルスベクターRNAを産生するために使用される核酸の3’LTRのU3領域の欠失を使用して、自己不活性化(SIN)ベクターを作製することができる。次いで、この欠失は、逆転写の間にプロウイルスDNAの5’LTRに移すことができる。自己不活性化ベクターは、一般に、3’の長い末端反復(LTR)からのエンハンサーおよびプロモーター配列の欠失を有し、それがベクター組み込みの間に5’LTRにコピーされる。いくつかの態様において、TATA boxの除去を含め十分な配列を排除して、LTRの転写活性を無効にすることができる。これは、形質導入された細胞において完全長ベクターRNAの産生を防止することができる。いくつかの局面において、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、TATA box、Sp1およびNF-カッパB部位の欠失を含む。自己不活性化3’LTRの結果として、侵入および逆転写後に生成されたプロウイルスは、不活性化された5’LTRを含む。これは、ベクターゲノムの可動化のリスクおよび近傍の細胞性プロモーターへのLTRの影響を低減することによって安全性を改善することができる。自己不活性化3’LTRは、当技術分野において公知の任意の方法によって構築することができる。いくつかの態様において、これは、ベクター力価またはベクターのインビボもしくはインビボ特性に影響を及ぼさない。
【0417】
任意で、レンチウイルスの5’LTR由来のU3配列は、ウイルス構築物中のプロモーター配列、例えば異種プロモーター配列と置換することができる。これは、パッケージング細胞株から回収されたウイルスの力価を増加させることができる。また、エンハンサー配列を含むことができる。パッケージング細胞株中のウイルスRNAゲノムの発現を増加させる任意のエンハンサー/プロモーターの組み合わせを使用してよい。一例として、CMVエンハンサー/プロモーター配列が使用される(米国特許第5,385,839号および米国特許第5,168,062号)。
【0418】
特定の態様において、レトロウイルスベクターゲノム、例えばレンチウイルスベクターゲノムを組み込み欠陥になるように構築することによって、挿入突然変異のリスクを最小限にすることができる。非組み込みベクターゲノムを産生するための様々なアプローチを遂行することができる。いくつかの態様において、不活性インテグラーゼを有するタンパク質をコードするように、pol遺伝子のインテグラーゼ酵素成分への突然変異を工学改変することができる。いくつかの態様において、例えば、付着部位の一方または両方を突然変異もしくは欠失させるか、または欠失もしくは修飾を通して3’LTR近位ポリプリン区画(PPT)を非機能的にすることによって、ベクターゲノムそれ自体を修飾して、組み込みを防止することができる。いくつかの態様において、非遺伝的アプローチが利用可能であり;これらは、インテグラーゼの1つまたは複数の機能を阻害する薬剤を含む。アプローチは、相互に排他的ではなく;すなわち、それらの1つより多くを一度に使用することができる。例えば、インテグラーゼおよび付着部位の両方が非機能的であることも、またはインテグラーゼおよびPPT部位が非機能的であることも、または付着部位およびPPT部位が非機能的であることも、またはそれらの全てが非機能的であることもできる。このような方法およびウイルスベクターゲノムは、公知であり、利用可能である(Philpott and Thrasher, Human Gene Therapy 18:483, 2007; Engelman et al. J Virol 69:2729, 1995; Brown et al J Virol 73:9011 (1999); WO 2009/076524; McWilliams et al., J Virol 77:11150, 2003; Powell and Levin J Virol 70:5288, 1996を参照のこと)。
【0419】
いくつかの態様において、ベクターは、宿主細胞、例えば原核生物の宿主細胞において増殖するための配列を含む。いくつかの態様において、ウイルスベクターの核酸は、原核生物細胞、例えば細菌細胞において増殖するための1つまたは複数の複製起源を含む。いくつかの態様において、原核生物の複製起源を含むベクターはまた、その発現が検出可能または選択可能なマーカー、例えば薬物耐性を付与する遺伝子を含んでもよい。
【0420】
B. 核酸
1. 組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、異種組換え分子をコードする核酸を含む。いくつかの態様において、異種組換え分子は、組換え受容体、例えば、抗原受容体、SBトランスポゾン(例えば、遺伝子サイレンシングのための)、カプシド封入されたトランスポゾン、相同の二本鎖核酸(例えば、ゲノム組換えのための)またはレポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、例えばGFPまたはルシフェラーゼ)であるかまたはこれらを含む。
【0421】
いくつかの態様において、異種組換え分子は、組換え受容体、例えばキメラ受容体である。組換え受容体、例えば異種受容体は、抗原受容体、例えば機能的な非TCR抗原受容体(キメラ抗原受容体(CAR)を含む)、および他の抗原結合受容体、例えばトランスジェニックT細胞受容体(TCR)を含んでよい。受容体はまた、他の受容体、例えば他のキメラ受容体、例えば、特定のリガンドに結合しかつCAR中に存在するものと類似の膜貫通ドメインおよび/または細胞内シグナル伝達ドメインを有する受容体を含んでもよい。
【0422】
このような例のいずれかでは、核酸は、ウイルスベクターの領域に、例えば一般にウイルスゲノムの非必須領域に挿入または位置する。いくつかの態様において、核酸が、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノム内に挿入され、複製欠損であるウイルスが産生される。
【0423】
いくつかの態様において、コードされた組換え抗原受容体、例えば、CARは、標的化されるべき細胞または疾患、例えば癌、感染症、炎症性もしくは自己免疫疾患、または他の疾患もしくは病態(提供される方法および組成物で標的化するための本明細書に記載のものを含む)上の1つまたは複数のリガンドに、特異的に結合することができるものである。例示的な抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体RORl、tEGFR、Her2、Ll-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3、もしくは4、FBP、胎児アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、ルイスY、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、腫瘍胎児抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、およびMAGE A3、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリン、例えばサイクリンA1(CCNA1)、および/またはビオチン化分子、ならびに/またはHIV、HCV、HBV、HPV、および/もしくは他の病原体および/もしくはその発癌性型によって発現されるおよび/もしくはそれに特徴的なもしくはそれに特異的な分子である。
【0424】
CARおよび組換えTCRを含む抗原受容体、ならびにその産生および導入は、いくつかの態様において、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号US2002131960、US2013287748、US20130149337、米国特許第6,451,995号、第7,446,190号、第8,252,592号、第8,339,645号、第8,398,282号、第7,446,179号、第6,410,319号、第7,070,995号、第7,265,209号、第7,354,762号、第7,446,191号、第8,324,353号、および第8,479,118号、ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載されているもの、ならびに/または、Sadelainら、Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398; Davilaら、(2013) PLoS ONE 8(4): e61338; Turtleら、Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39; Wuら、Cancer, 2012 March 18(2): 160-75によって記載されているものを含む。
【0425】
a. キメラ抗原受容体
いくつかの態様において、ウイルスベクターのゲノムに含まれる核酸は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。CARは、一般に、細胞外リガンド結合ドメイン、例えば1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結されている抗体またはそのフラグメントを含む細胞外部分を有する、遺伝子改変された受容体である。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結する膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインを含む。このような分子は、典型的には、天然の抗原受容体を通じたシグナル、および/または共刺激受容体と組み合わせたこのような受容体を通じたシグナルを模倣または近似する。
【0426】
いくつかの態様において、CARは、特定のマーカー、例えば養子療法によって標的化されるべき特定の細胞タイプにおいて発現されるマーカー、例えば、癌マーカーおよび/または記載の抗原のいずれかに対する特異性を有するよう構築される。したがって、CARは、典型的には、抗体の1つまたは複数の抗原結合フラグメント、ドメイン、もしくは部分、または1つまたは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの態様において、CARは、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分、例えば可変重鎖(VH)もしくはその抗原結合部分、またはモノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)を含む。
【0427】
いくつかの態様において、CARの細胞外部分、例えばその抗体部分は、スペーサー、例えば抗原認識構成成分、例えばscFvと膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域をさらに含む。スペーサーは、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部またはそのバリアントもしくは改変型、例えば、ヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域等であり得るか、またはこれらを含み得る。いくつかの態様において、定常領域または部分は、IgG4またはIgG1などのヒトIgGのものである。スペーサーは、スペーサーが存在しない場合と比較して、抗原結合後の細胞の応答性を増加させる長さのものであってよい。いくつかの例において、スペーサーは、12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長または12アミノ酸長以下である。例示的なスペーサーには、少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸(列挙された範囲の任意の端点間の任意の整数を含む)を有するものが含まれる。いくつかの態様において、スペーサー領域は約12個以下のアミノ酸、約119個以下のアミノ酸、または約229個以下のアミノ酸を有する。例示的なスペーサーは、IgG4ヒンジのみ、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジを含む。例示的なスペーサーには、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153または国際特許出願公開番号WO2014031687に記載されているものが含まれるがそれに限定されない。
【0428】
細胞外リガンド結合ドメイン、例えば抗原認識ドメインは一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成成分、例えば、CARの場合であればTCR複合体などの抗原受容体複合体を介する活性化を模倣し、かつ/または別の細胞表面受容体を通してシグナル伝達するシグナル伝達構成成分などに、連結される。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの態様において、CARは、細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。1つの態様では、受容体、例えばCAR中のドメインの1つに天然で付随している膜貫通ドメインが使用される。場合によっては、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避するように選択され、またはアミノ酸置換によって修飾される。
【0429】
膜貫通ドメインはいくつかの態様において、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、ドメインはいくつかの局面において、任意の膜結合型タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD 16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD 154に由来する(すなわち、少なくともその膜貫通領域を含む)ものが含まれる。膜貫通ドメインはいくつかの態様において合成による。いくつかの局面において、合成膜貫通ドメインは、主に、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含む。いくつかの局面において、合成膜貫通ドメインの各末端には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが見出されるであろう。いくつかの態様において、連結はリンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによる。
【0430】
いくつかの態様では、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば2~10アミノ酸長のリンカー、例えばグリシンおよびセリン(例えば、グリシン-セリンダブレット)を含むものなどが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成する。
【0431】
受容体、例えばCARは、一般に、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達構成成分または細胞内シグナル伝達構成成分群を含む。いくつかの態様において、受容体は、TCR複合体の細胞内構成成分、例えばT細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖など、例えばCD3ゼータ鎖を含む。したがって、いくつかの局面において、抗原結合部分は1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。いくつかの態様において、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、受容体、例えばCARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16などの1つまたは複数の付加的な分子の一部をさらに含む。例えば、いくつかの局面において、CARまたは他のキメラ受容体は、CD3-ゼータ (CD3-ζ) またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25、またはCD16とのキメラ分子を含む。
【0432】
いくつかの態様では、CARまたは他のキメラ受容体の連結時に、受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞、例えばCARを発現するように操作されたT細胞、の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。例えば、状況によっては、CARは、細胞溶解活性またはTヘルパー活性などといったT細胞の機能、例えばサイトカインまたは他の因子の分泌などを誘導する。いくつかの態様では、例えば、抗原受容体構成成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が、エフェクター機能シグナルを伝達するのであれば、インタクトな免疫刺激鎖の代わりにそれが使用される。いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体 (TCR) の細胞質配列を含み、いくつかの局面では、天然状況においてそのような受容体と協調して作用して、抗原受容体会合後にシグナル伝達を開始させる、共受容体の細胞質配列、および/またはそのような分子の任意の誘導体もしくはバリアント、および/または同じ機能を有する任意の合成配列も、含む。
【0433】
天然のTCRの状況において、完全な活性化は一般に、TCRを介するシグナル伝達のみならず、共刺激シグナルも必要とする。したがって、いくつかの態様では、完全な活性化を促進するために、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための構成成分もまたCARに含まれる。他の態様において、CARは、共刺激シグナルを生成するための構成成分を含まない。いくつかの局面では、同じ細胞中で付加的なCARが発現され、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための構成成分を提供する。
【0434】
T細胞活性化は、いくつかの局面において、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介する抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列);および抗原非依存的様式で作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると説明される。いくつかの局面において、CARは、そのようなシグナル伝達構成成分の一方または両方を含む。
【0435】
いくつかの局面において、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例には、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが含まれる。いくつかの態様において、CAR中の細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータ由来の、細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、または配列を含む。
【0436】
いくつかの態様において、CARは、CD28、4-1BB、OX40、CD27、DAP10、およびICOSなどの共刺激受容体のシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARが活性化構成成分と共刺激構成成分の両方を含む。
【0437】
いくつかの態様では、活性化ドメインが1つのCAR内に含まれる一方で、共刺激構成成分は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。いくつかの態様において、CARは、いずれも同じ細胞上に発現される活性化または刺激CAR、および共刺激CARを含む(WO2014/055668を参照されたい)。いくつかの局面において、CARは、刺激または活性化CARであり:他の局面では、CARは、共刺激CARである。いくつかの態様において、細胞は、異なる抗原を認識するCARなどの阻害性CAR(iCAR、Fedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215) (December, 2013) を参照されたい)をさらに含み、それによって、第1の抗原を認識するCARを介して送達される活性化シグナルは、阻害性CARがそのリガンドに結合することにより削減または阻害されて、例えばオフターゲット効果を減少させる。
【0438】
ある特定の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3細胞内ドメインに連結されたキメラCD28およびCD137共刺激ドメインを含む。
【0439】
いくつかの態様において、CARはまた、形質導入マーカー(例えば、tEGFR)を含むこともできる。いくつかの態様において、CD8+細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4+ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと同じである。いくつかの態様において、CD8+細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4+ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインとは異なる。
【0440】
いくつかの態様において、CARは、1つまたは複数の、例えば、2以上の共刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインを細胞質部分に包含する。例示的なCARは、CD3ゼータ、CD28、および4-1BBの細胞内成分を含む。
【0441】
いくつかの態様において、提供されるウイルスベクター内の核酸によってコードされる組換え受容体、例えば、CARは、例えば、受容体を発現するための細胞の形質導入もしくは改変、ならびに/またはポリヌクレオチドによってコードされる分子を発現する細胞の選択および/もしくは標的化を確認するための、1つまたは複数のマーカーをさらに含む。いくつかの局面において、このようなマーカーは、異なる核酸またはポリヌクレオチドによってコードされ得、これはまた、遺伝子工学プロセスの間に、典型的には同じ方法を介して、例えば、同じベクターまたはベクターのタイプによる形質導入を介して導入され得る。
【0442】
いくつかの局面において、マーカー、例えば、形質導入マーカーは、タンパク質であり、かつ/または細胞表面分子である。例示的なマーカーは、天然に存在する、例えば、内因性のマーカー、例えば天然に存在する細胞表面分子の短縮型バリアントである。いくつかの局面において、バリアントは、天然または内因性の細胞表面分子と比較して、低減された免疫原性、低減されたトラフィッキング機能、および/または低減されたシグナル伝達機能を有する。いくつかの態様において、マーカーは、細胞表面受容体の短縮型、例えば短縮型EGFR(tEGFR)である。いくつかの局面において、マーカーは、CD34、NGFR、または上皮成長因子受容体(例えば、tEGFR)の全てまたは一部(例えば、短縮型形態)を含む。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能リンカー配列、例えば、T2Aをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される。WO2014031687を参照されたい。
【0443】
いくつかの態様において、マーカーは、T細胞上に天然で見いだされないまたはT細胞の表面上に天然で見いだされない、分子、例えば、細胞表面タンパク質、またはその一部である。
【0444】
いくつかの態様において、分子は、非自己分子、例えば、非自己タンパク質、すなわち、細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
【0445】
いくつかの態様において、マーカーは、治療機能を果たさず、かつ/または、遺伝子工学のための、例えば、改変に成功した細胞を選択するためのマーカーとして使用される以外の効果をもたらさない。他の態様において、マーカーは、治療用分子またはそうでなければいくつかの所望の効果を発揮する分子、例えばインビボで遭遇する細胞に対するリガンド、例えば養子移入およびリガンドとの遭遇によって細胞の応答を増強および/または減衰させる共刺激または免疫チェックポイント分子であり得る。
【0446】
いくつかの場合では、CARは、第一世代、第二世代、および/または第三世代のCARと称される。いくつかの局面において、第一世代のCARは、抗原結合時に、CD3鎖によって誘発されるシグナルのみを提供するものであり;いくつかの局面において、第二世代のCARは、このようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するもの、例えば、CD28またはCD137のような共刺激受容体由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含むものであり;いくつかの局面において、第三世代のCARは、いくつかの局面において、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
【0447】
いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外リガンド結合部分、例えば抗原結合部分、例えば抗体またはそのフラグメントおよび細胞内ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体またはフラグメントは、scFvまたは単一ドメインVH抗体を含み、そして、細胞内ドメインは、ITAMを含む。いくつかの局面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結する膜貫通ドメインを含む。細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインは、直接または間接的に連結されることができる。いくつかの態様において、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインは、スペーサー、例えば本明細書に記載のいずれかによって連結される。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを、例えば膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に含む。いくつかの局面において、T細胞共刺激分子は、CD28または41BBである。
【0448】
いくつかの態様において、受容体、例えば、CARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28の膜貫通ドメインまたはそのバリアント、例えば、ヒトCD28の27アミノ酸膜貫通ドメイン(Accession No.: P10747.1)である。いくつかの態様において、細胞内ドメインは、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント、例えばその41アミノ酸ドメインおよび/または天然CD28タンパク質の186~187位にLLからGGへの置換を有するこのようなドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内ドメインは、41BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント、例えばヒト4-1BBの42アミノ酸細胞質ドメイン(Accession No. Q07011.1)を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント、例えばヒトCD3ζのアイソフォーム3の112AA細胞質ドメイン(Accession No.: P20963.2)またはCD3ゼータシグナル伝達ドメイン(米国特許第7,446,190号に記載のとおり)を含む。いくつかの局面において、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ、例えばIgG4またはIgG1のヒンジのみを含む。他の態様において、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結されているIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、CH2およびCH3ドメインに連結されているIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、CH3ドメインのみに連結されているIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または他のフレキシブルリンカー、例えば公知のフレキシブルリンカーであるかまたはこれらを含む。
【0449】
例えば、いくつかの態様において、CARは、以下を含む:抗原(例えば、本明細書に記載の抗原)に特異的に結合する、細胞外リガンド結合部分、例えば抗原結合部分、例えば抗体またはそのフラグメント(sdAbおよびscFvを含む);スペーサー、例えばIgヒンジ含有スペーサーのいずれか;CD28の一部である膜貫通ドメインまたはそのバリアント;CD28のシグナル伝達部分を含む細胞内シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント;ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインのシグナル伝達部分またはその機能的バリアント。いくつかの態様において、CARは、以下を含む:抗原(例えば、本明細書に記載の抗原)に特異的に結合する、細胞外リガンド結合部分、例えば抗原結合部分、例えば抗体またはそのフラグメント(sdAbおよびscFvを含む);スペーサー、例えばIgヒンジ含有スペーサーのいずれか;CD28の一部である膜貫通ドメインまたはそのバリアント;4-1BBのシグナル伝達部分を含む細胞内シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント;ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインのシグナル伝達部分またはその機能的バリアント。いくつかの態様において、このようなCAR構築物は、T2Aリボソームスキップエレメントおよび/またはtEGFR配列(例えば、CARの下流の)をさらに含む。
【0450】
b. T細胞受容体(TCR)
いくつかの態様において、核酸によってコードされる組換え分子は、組換えT細胞受容体(TCR)であるかまたは組換えTCRを含む。いくつかの態様において、組換えTCRは、抗原、一般に標的細胞上に存在する抗原、例えば腫瘍特異抗原、自己免疫もしくは炎症性疾患に関連する特定の細胞タイプ上に発現される抗原、またはウイルス病原体もしくは細菌病原体に由来する抗原に特異的である。
【0451】
いくつかの態様において、TCRは、天然に存在するT細胞からクローニングされたものである。いくつかの態様において、標的抗原(例えば、癌抗原)に対して高親和性のT細胞クローンが、患者から同定されかつ単離される。いくつかの態様において、標的抗原に対するTCRクローンが、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、すなわちHLA)で改変されたトランスジェニックマウスにおいて作製されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15:169-180 and Cohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照されたい)。いくつかの態様において、標的抗原に対するTCRを単離するためにファージディスプレイが使用される(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14:1390-1395 and Li (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照のこと)。
【0452】
いくつかの態様において、T細胞クローンが得られた後、TCRアルファ鎖およびベータ鎖が単離され、遺伝子発現ベクター内にクローニングされる。いくつかの態様において、TCRアルファ鎖およびベータ鎖がピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドを介して連結され、それによって両方の鎖が同時発現される。いくつかの態様において、TCRをコードする核酸は、受容体を発現するための細胞の形質導入もしくは改変を確認するマーカーをさらに含む。
【0453】
2. 他の調節エレメント
いくつかの態様において、組換え受容体、例えば抗原受容体、例えばCARをコードするウイルスベクターゲノムに含まれる核酸配列は、他の遺伝子エレメント、例えば転写調節配列(プロモーターまたはエンハンサーを含む)と機能的関係で作動可能に連結され、特定の様式で関心対象の配列の発現を調節する。特定の例では、このような転写調節配列は、活性に関して時間的および/または空間的に調節されるものである。成分の発現を調節するために使用できる発現制御エレメントは、公知であり、かつ、限定されないが、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、エンハンサーおよび他の調節エレメントを含む。
【0454】
いくつかの態様において、組換え受容体、例えば抗原受容体、例えばCARをコードする核酸配列は、内部プロモーター/エンハンサー調節配列と作動可能に連結される。採用されるプロモーターは、適切な条件下で構成的、細胞特異的、誘導性、および/または有用であり、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指令し得る。プロモーターは、異種であっても内因性であってもよい。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、合成によって産生される。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を使用して産生される。
【0455】
いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、コーディングセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5’非コーディング配列を単離することによって得られ得るので、核酸配列と天然に関連するものであってよい。あるいは、いくつかの態様において、コーディング核酸セグメントは、組換えおよび/または異種プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下に位置付けられてよく、これは、天然ではコーディング核酸配列と通常関連しない。例えば、組換えDNAの構築に使用される例示的なプロモーターは、限定されないが、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、トリプトファン(trp)、RNAポリメラーゼ(pol)IIIプロモーター(ヒトおよびネズミU6 pol IIIプロモーターならびにヒトおよびネズミH1 RNA pol IIIプロモーターを含む);RNAポリメラーゼ(pol)IIプロモーター;サイトメガロウイルス前初期プロモーター(pCMV)、伸長因子-1アルファ(EF-1アルファ)、ならびにラウス肉腫ウイルスの長い末端反復プロモーター(pRSV)プロモーター系を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られ得る。プロモーターはまた、例えば、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーター、または天然配列と通常関連するプロモーターであり得るが、但し、このようなプロモーターは、標的細胞と適合性であるものとする。一態様において、プロモーターは、ウイルス発現系における天然に存在するウイルスプロモーターである。
【0456】
いくつかの態様において、プロモーターは、構成的に活性であってよい。使用され得る構成的プロモーターの非限定例は、ユビキチン(米国特許第5,510,474号; WO 98/32869)、CMV(Thomsen et al., PNAS 81:659, 1984; 米国特許第5,168,062号)、ベータアクチン(Gunning et al. 1989 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4831-4835)およびpgk(例えば、Adra et al. 1987 Gene 60:65-74; Singer-Sam et al. 1984 Gene 32:409-417; および Dobson et al. 1982 Nucleic Acids Res. 10:2635-2637を参照のこと)のプロモーターを含む。
【0457】
いくつかの態様において、プロモーターは、組織特異的プロモーターおよび/または標的細胞特異的プロモーターであってよい。いくつかの態様において、プロモーターは、関心対象の配列の誘導性発現が可能になるよう選択され得る。テトラサイクリン応答系、lacオペレーター-リプレッサー系、ならびに様々な環境的または生理学的変化(熱ショック、金属イオン(例えば、メタロチオネインプロモーター)、インターフェロン、低酸素、ステロイド(例えば、プロゲステロンまたはグルココルチコイド受容体プロモーター)、放射線(例えば、VEGFプロモーター)を含む)に応答するプロモーターを含む、多数の誘導性発現系が公知である。いくつかの態様において、tetオペレーター配列(TECO)に対する大腸菌(Escherichia coli)のtet抑制(tetr)の阻害作用に基づくテトラサイクリン(tet)調節系は、哺乳動物系において使用するために修飾され、発現カセットのための調節エレメントとして使用されることができる。これらの系は、周知である(Goshen and Badgered, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5547-51 (1992), Shockett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6522-26 (1996), Lindemann et al., Mol. Med. 3:466-76 (1997) を参照のこと)。
【0458】
また、関心対象の遺伝子の所望の発現を得るためにプロモーターの組み合わせが使用され得る。当業者は、関心対象の生物または標的細胞における遺伝子の所望の発現パターンに基づいてプロモーターを選択することができる。
【0459】
いくつかの態様において、関心対象の遺伝子の発現を増加させるためにウイルス構築物中にエンハンサーが存在してもよい。エンハンサーは、典型的には、プロモーターに対して作用してその転写を増加させる、通常約10~300長のシス作用型核酸エレメントである。ウイルスゲノム、例えばHIVまたはCMVにおける多くのエンハンサーが公知である。例えば、CMVエンハンサー(Boshart et al. Cell, 41:521, 1985)を使用することができる 。他の例は、例えば、複製起点の後期側(100~270bp)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。いくつかの場合では、エンハンサーは、哺乳動物の遺伝子由来である(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ-フェトタンパク質またはインスリン由来のエンハンサー)。エンハンサーを、異種プロモーターと組み合わせて使用することができる。エンハンサーは、関心対象の遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列に対して5’または3’位でベクターへとスプライシングされてよいが、一般にプロモーターから5’部位に位置する。当業者は、所望の発現パターンに基づいて適切なエンハンサーを選択することができる。
【0460】
ウイルスベクターゲノムはまた、追加の遺伝子エレメントを含んでよい。構築物に含めることができるエレメントのタイプは、なんら限定されることなく、当業者が選択することができる。
【0461】
例えば、標的細胞におけるウイルスゲノムの核移行を容易にするシグナルを含んでよい。このようなシグナルの例は、HIV-1フラップシグナルである。加えて、ベクターゲノムは、関心対象の遺伝子の発現を増強するよう設計された1つまたは複数の遺伝子エレメントを含んでよい。いくつかの態様において、ゲノムは、転写後調節エレメント(PRE)または転写後活性を発揮するその修飾形態を含む。例えば、いくつかの態様において、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後応答エレメント(WPRE)を構築物内に置いてよい(Zufferey et al. 1999. J. Virol. 74:3668-3681; Deglon et al. 2000. Hum. Gene Ther. 11:179-190)。
【0462】
いくつかの例では、別個の異種タンパク質をコードする1つより多いオープンリーディングフレームを含めることができる。例えば、いくつかの態様において、レポーターおよび/または検出可能および/または選択可能遺伝子が発現構築物内に含まれる場合、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列を含めることができる。典型的には、追加の遺伝子エレメントは、独立したプロモーター/エンハンサーと作動可能に連結され、それによって制御される 。追加の遺伝子エレメントは、レポーター遺伝子、選択可能マーカーまたは他の所望の遺伝子であることができる。
【0463】
いくつかの態様において、他の種々の調節エレメントは、転写開始領域および/または終結領域を含むことができる。発現ベクターはまた、転写の終結およびmRNAの安定化のための配列を含んでよい。このような配列は、公知であり、かつ、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’、時折3’非翻訳領域内に天然に見いだされることが多い。転写終結領域の例は、限定されないが、ポリアデニル化シグナル配列を含む。ポリアデニル化シグナル配列の例は、限定されないが、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリ(A)、SV40後期ポリ(A)、ウサギベータグロビン(RBG)ポリ(A)、チミジンキナーゼ(TK)ポリ(A)配列、およびその任意のバリアントを含む。
【0464】
C. ウイルスベクター粒子の調製
ウイルスベクターゲノムは、典型的には、パッケージング細胞株または産生細胞株へトランスフェクションできるプラスミド形態で構築される。そのゲノムがウイルスベクターゲノムのRNAコピーを含むレトロウイルス粒子を産生ために、様々な公知の方法のいずれかを使用することができる。いくつかの態様において、少なくとも2つの成分が、ウイルスに基づく遺伝子送達系の作製に関与する:第一に、ウイルスベクター粒子を作製するのに必要な構造タンパク質および酵素を包含する、パッケージングプラスミド、ならびに第二に、ウイルスベクターそれ自体、すなわち、移入されるべき遺伝子物質。これらの成分の一方または両方の設計にバイオセーフティー予防措置を導入することができる。
【0465】
いくつかの態様において、パッケージングプラスミドは、全てのレトロウイルス、例えばHIV-1の、エンベロープタンパク質以外のタンパク質を含むことができる(Naldini et al., 1998)。他の態様において、ウイルスベクターは、追加のウイルス遺伝子、例えば病原性と関連するもの、例えば、vpr、vif、vpuおよびnef、ならびに/またはTat(HIVの一次トランス活性化因子)を欠いていることができる。いくつかの態様において、レンチウイルスベクター、例えばHIV系レンチウイルスベクターは、親ウイルスの3つの遺伝子gag、polおよびrevのみを含み、これは、組換えを通した野生型ウイルスの再構築の実現性を低減または排除する。
【0466】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、ウイルスベクターゲノムからウイルス粒子に転写されるウイルスゲノムRNAをパッケージングするのに必要な成分全てを含むパッケージング細胞株に導入される。あるいは、ウイルスベクターゲノムは、関心対象の1つまたは複数の配列、例えば、組換え核酸に加えて、ウイルス成分をコードする1つまたは複数の遺伝子を含んでよい。いくつかの局面において、しかしながら、標的細胞におけるゲノムの複製を防止するために、パッケージング細胞株において複製に必要な内因性ウイルス遺伝子が別々に除去かつ提供される。
【0467】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、粒子を作製するのに必要な成分を含む1つまたは複数のプラスミドベクターでトランスフェクトされる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノム(LTRを含む)、シス作用型パッケージング配列および関心対象の配列、すなわち抗原受容体(例えば、CAR)をコードする核酸を含むプラスミド;ならびにウイルス酵素および/または構造成分(例えば、Gag、polおよび/またはrev)をコードする1つまたは複数のヘルパープラスミドで、トランスフェクトされる。いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子を生じる種々の遺伝子成分を分離するために複数のベクターが利用される。いくつかのこのような態様において、分離したベクターをパッケージング細胞へ提供することは、他のやり方では複製能を有するウイルスを生じさせ得る、組換え事象の機会を低減する。いくつかの態様において、レトロウイルス成分の全てを有する単一のプラスミドベクターを使用することができる。
【0468】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクター粒子は、宿主細胞の形質導入効率を増加させるようシュードタイプ化される。例えば、レトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクター粒子は、いくつかの態様において、VSV-G糖タンパク質を用いてシュードタイプ化され、これは、形質導入することができる細胞タイプを拡張する広範な細胞宿主範囲を提供する。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドまたはポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、例えば、異種指向性、多指向性または両指向性エンベロープ、例えばシンドビスウイルスエンベロープ、GALVまたはVSV-Gが誘導される。
【0469】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスゲノムRNAのレンチウイルスベクター粒子へのパッケージングにトランスで必要な、成分(ウイルス調節および構造タンパク質を含む)を提供する。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、レンチウイルスタンパク質を発現および機能的レンチウイルスベクター粒子を産生することができる、任意の細胞株であってよい。いくつかの局面において、好適なパッケージング細胞株は、293(ATCC CCL X)、293T、HeLA(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL-10)およびCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞を含む。
【0470】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスタンパク質(1つまたは複数)を安定に発現する。例えば、いくつかの局面において、gag、pol、revおよび/または他の構造遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株を構築することができる。いくつかの態様において、異種タンパク質をコードする核酸分子および/またはエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムと一緒に、1つまたは複数のウイルスタンパク質をコードする核酸分子で、パッケージング細胞株を一過性にトランスフェクトすることができる。
【0471】
いくつかの態様において、ウイルスベクターならびにパッケージングおよび/またはヘルパープラスミドは、トランスフェクションまたは感染を介して、パッケージング細胞株に導入される。パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノムを含むウイルスベクター粒子を産生する。トランスフェクションまたは感染のための方法は、周知である。非限定例は、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法およびリポフェクション法、電気穿孔法ならびにマイクロインジェクションを含む。
【0472】
組換えプラスミドならびにレトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列が特定の細胞株に導入されるとき(例えば、リン酸カルシウム沈降によって)、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子内にパッケージングされることを可能し得、これが次いで培養培地中に分泌され得る。いくつかの態様における組換えレトロウイルスを含む培地は、その後収集され、任意で濃縮され、そして遺伝子移入に使用される。例えば、いくつかの局面において、パッケージングプラスミドおよび導入ベクターのパッケージング細胞株への同時トランスフェクション後、ウイルスベクター粒子が培養培地から回収され、当業者によって使用される標準法によって力価測定される。
【0473】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを、レンチウイルス粒子の作製を可能にするプラスミドの導入によって、パッケージング細胞株、例えば例示的なHEK 293T細胞株において産生することができる。いくつかの態様において、パッケージング細胞は、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチドで、ならびに組換え受容体、例えば抗原受容体、例えばCARをコードするポリヌクレオチドで、トランスフェクトされ、かつ/またはそれを含む。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、任意でおよび/または追加的に、revタンパク質をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、かつ/またはそれを含む。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、任意でおよび/または追加的に、非天然エンベロープ糖タンパク質、例えばVSV-Gをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、かつ/またはそれを含む。いくつかのこのような態様において、細胞、例えば、HEK293T細胞のトランスフェクションのおよそ2日後、細胞上清は、回収かつ力価測定することができる組換えレンチウイルスベクターを含む。
【0474】
回収かつ/または産生されたレトロウイルスベクター粒子を使用して、記載のとおりの方法を使用して標的細胞を形質導入することができる。一旦標的細胞に入れば、ウイルスRNAは、逆転写され、核に輸送され、宿主ゲノムに安定に組み込まれる。ウイルスRNAの組み込みの1または2日後、組換えタンパク質、例えば抗原受容体、例えばCARの発現を検出することができる。
【0475】
V. 組成物、製剤、および投与方法
操作された受容体(例えば、操作された抗原受容体)、例えばCARまたはTCRなどを含む組成物、ならびに薬学的組成物および製剤を含む、操作された細胞を含む組成物もまた提供される。抗原が発現される疾患、状態、および障害の処置における、または検出、診断、および予後診断方法におけるような、組成物の使用方法およびその使用もまた提供される。
【0476】
A. 組成物/製剤
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であって、かつその製剤が投与される対象にとって容認できないほどの毒性がある付加的な構成成分を含まない調製物を指す。
【0477】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0478】
いくつかの局面において、担体の選択は、一部には、特定の細胞によって、および/または投与方法によって決まる。したがって、種々の適切な製剤が存在する。例えば、薬学的組成物は保存剤を含み得る。適切な保存剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。いくつかの局面では、2種またはそれ以上の保存剤の混合物が使用される。保存剤またはその混合物は典型的に、組成物全体の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。担体は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) によって記載されている。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量および濃度において一般に受容者にとって非毒性であり、これには、緩衝剤、例えばリン酸、クエン酸、および他の有機酸など;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニンを含む;保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなど;単糖、二糖、および他の糖質、例えばグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む;キレート剤、例えばEDTAなど;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール (PEG) などが含まれるが、これらに限定されない。
【0479】
いくつかの局面では、緩衝物質が組成物中に含まれる。適切な緩衝物質には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。いくつかの局面では、2種またはそれ以上の緩衝物質の混合物が使用される。緩衝物質またはその混合物は典型的に、組成物全体の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製する方法は公知である。例示的な方法は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005) に詳述されている。
【0480】
製剤または組成物は、細胞で処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な2種以上の活性成分、好ましくは細胞を補完する活性を有し、それぞれの活性が互いに有害な影響を及ぼさないものもまた含み得る。そのような活性成分は、意図される目的に有効な量の組み合わせで適切に存在する。したがって、いくつかの態様において、薬学的組成物は、他の薬学的に活性のある作用物質または薬物、例えば化学療法剤など、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等をさらに含む。いくつかの態様において、細胞または抗体は、塩、例えば薬学的に許容される塩の形態で投与される。薬学的に許容される適切な酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの鉱酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸などの有機酸から誘導されるものが含まれる。
【0481】
活性成分は、マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルション中に封入され得る。ある特定の態様において、薬学的組成物は、シクロデキストリン包接複合体などの包接複合体として、またはリポソームとして製剤化される。リポソームは、宿主細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)が特定組織を標的とするのに役立ち得る。リポソームの調製には、例えば、Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9: 467 (1980)、ならびに米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、および第5,019,369号に記載されているものなど、多くの方法を利用することができる。
【0482】
薬学的組成物はいくつかの局面において、組成物の送達が、処置されるべき部位の感作の前に、その感作を引き起こすのに十分な時間起こるように、持続放出型、遅延放出型、および徐放型の送達系を使用し得る。多くの型の放出送達系が利用可能であり、それらは公知である。そのような系は、組成物の反復投与を回避し、それによって対象および医師の利便性を高め得る。
【0483】
薬学的組成物はいくつかの態様において、治療有効量または予防有効量などの、疾患または状態を処置または予防するのに有効な量で細胞を含む。治療有効性または予防有効性はいくつかの態様において、処置された対象の定期評価によってモニターされる。状態に応じた数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで繰り返される。しかしながら、他の投与計画が有用である場合もあり、それが決定され得る。望ましい投薬量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって送達され得る。
【0484】
細胞は、標準的な投与技法、製剤、および/または装置を用いて投与され得る。組成物の貯蔵および投与のための、シリンジおよびバイアルなどの製剤および装置が提供される。細胞の投与は、自家投与または異種投与であってよい。例えば、ある対象から免疫応答細胞または前駆細胞を入手し、同じ対象または異なる適合対象に投与することができる。末梢血由来免疫応答細胞またはそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで得られる)は、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与によって投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答細胞を含む薬学的組成物)を投与する場合、治療用組成物は一般に注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、エマルション)で製剤化される。
【0485】
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、または坐剤投与用のものが含まれる。いくつかの態様において、細胞集団は非経口投与される。本明細書で用いられる「非経口」という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、腟投与、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様において、細胞集団は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。
【0486】
組成物はいくつかの態様において、無菌液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルション、分散液、または粘性組成物として提供され、それらはいくつかの局面において、選択されたpHに緩衝化され得る。液体調製物は通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。加えて、液体組成物の方が、投与するのに、特に注射によって投与するのにいくらか便利である。一方、粘性組成物は、特定組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘性範囲内で製剤化され得る。液体組成物または粘性組成物は担体を含んでよく、担体は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってよい。
【0487】
無菌注射溶液は、細胞を溶媒中に組み入れて、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、または同様のものなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混合するなどして調製され得る。組成物はまた凍結乾燥され得る。組成物は、投与経路および所望の調製物に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝物質、ゲル化または増粘性添加剤、保存剤、香味剤、着色剤、および同様のものなどの助剤物質を含み得る。いくつかの局面では、適切な調製物を調製するために標準的な教本を参照することができる。
【0488】
抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を増加させる様々な添加剤が添加され得る。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、および同様のものによって保証され得る。注射可能な薬学的形態の長期吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0489】
徐放性調製物を調製することもできる。徐放性調製物の適切な例には、造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態をした、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが含まれる。
【0490】
インビボ投与に使用されるべき製剤は一般に無菌である。無菌性は、例えば無菌濾過膜を介する濾過などによって容易に達成され得る。
【0491】
B. 投与方法
細胞、集団、および組成物を投与する方法、ならびにがんを含む疾患、状態、および障害を処置または予防するためのそのような細胞、集団、および組成物の使用が提供される。いくつかの態様では、細胞、集団、および組成物が、例えば養子T細胞療法などの養子細胞療法によって、処置されるべき特定の疾患または状態を有する対象または患者に投与される。いくつかの態様では、操作された組成物ならびにインキュベーションおよび/または他の加工段階の後の生成終了組成物などの、提供される方法によって調製された細胞および組成物が、疾患もしくは状態を有するかまたはそれらのリスクがある対象などの対象に投与される。いくつかの局面において、本方法はそれにより、操作されたT細胞によって認識される抗原を発現するがんにおける腫瘍量を減らすことなどによって、疾患または状態の1つまたは複数の症状を処置する、例えば改善する。
【0492】
養子細胞療法のために細胞を投与する方法は公知であり、提供される方法および組成物と関連して使用され得る。例えば、養子T細胞療法は、例えば、Gruenberg et alの米国特許出願公開番号2003/0170238;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al.(2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。
【0493】
本明細書で用いられる場合、「対象」は、ヒトまたは他の動物などの哺乳動物であり、典型的にはヒトである。いくつかの態様において、細胞、細胞集団、または組成物が投与される対象、例えば患者は、哺乳動物、典型的にはヒトなどの霊長類である。いくつかの態様において、霊長類はサルまたは類人猿である。対象は男性または女性であってよく、幼児、若年、青年、成人、および老年対象を含む任意の適切な年齢であってよい。いくつかの態様において、対象は、齧歯類などの非霊長類哺乳動物である。
【0494】
本明細書で用いられる場合、「処置」(および「処置する」または「処置すること」などの、その文法上の変形)は、疾患もしくは状態もしくは障害、またはそれに伴う症状、有害作用、もしくは転帰、もしくは表現型の完全なまたは部分的な改善または軽減を指す。処置の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減縮、転移の予防、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、ならびに寛解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。本用語は、疾患の完全な治癒、または任意の症状の完全な除去、またはすべての症状もしくは転帰に対する効果を意味するものではない。
【0495】
本明細書で用いられる場合、「疾患の発症を遅延させること」とは、疾患(がんなど)の発症を延期し、妨げ、減速させ、遅らせ、安定化し、抑制し、かつ/または先延ばしにすることを意味する。この遅延は、処置される疾患および/または個体の病歴に応じて、様々な時間の長さであり得る。当業者には明白であるように、十分なまたは著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、事実上、予防を包含し得る。例えば、転移の発症などの末期がんが遅延され得る。
【0496】
本明細書で用いられる「予防すること」は、ある疾患に対する素因を有し得るがまだその疾患とは診断されていない対象において、該疾患の発生または再発に対する予防を提供することを含む。いくつかの態様において、提供される細胞および組成物は、疾患の発症を遅延させるためまたは疾患の進行を減速させるために使用される。
【0497】
本明細書で用いられる場合、機能または活性を「抑制する」こととは、関心対象の条件またはパラメータを除くその他の点で同じ条件と比較して、あるいは別の条件と比較して、その機能または活性を低下させることである。例えば、腫瘍成長を抑制する細胞は、その細胞が存在しない場合の腫瘍の成長速度と比較して、腫瘍の成長速度を低下させる。
【0498】
投与との関連における、作用物質、例えば、薬学的製剤、細胞、または組成物の「有効量」とは、必要な投薬量/量および期間において、治療結果または予防結果などの所望の結果を達成するのに有効な量を指す。
【0499】
作用物質、例えば、薬学的製剤または細胞の「治療有効量」とは、必要な投薬量および期間において、疾患、状態、もしくは障害の処置などに関する所望の治療結果、および/または処置の薬物動態学的もしくは薬力学的な効果を達成するのに有効な量を指す。治療有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに投与される細胞集団などの因子に従って変動し得る。いくつかの態様において、提供される方法は、細胞および/または組成物を有効量で、例えば治療有効量で投与することを伴う。
【0500】
「予防有効量」とは、必要な投薬量および期間において、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。予防用量は疾患の前または初期段階に対象において使用されるため、典型的には予防有効量は治療有効量よりも少ないが、必ずしもそうとは限らない。
【0501】
処置される疾患または状態は、抗原の発現が、疾患状態または障害の病因に関連しており、かつ/または関与している、例えばそのような疾患、状態、または障害を引き起こす、悪化させる、またはその他の点でそれらに関与している任意のものであってよい。例示的な疾患および状態には、悪性腫瘍もしくは細胞の形質転換を伴う疾患もしくは状態(例えば、がん)、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、または例えば細菌、ウイルス、もしくは他の病原体によって引き起こされる感染症が含まれ得る。処置され得る様々な疾患および状態に関連している抗原を含む例示的な抗原は、上記されている。特定の態様において、キメラ抗原受容体またはトランスジェニックTCRは、疾患または状態と関連している抗原に特異的に結合する。
【0502】
したがって、提供される方法および使用には、養子細胞療法のための方法および使用が含まれる。いくつかの態様において、本方法は、対象、組織、または細胞、例えば疾患、状態、もしくは障害を有するか、それらのリスクがあるか、またはそれらを有すると疑われるものなどへの、細胞または細胞を含む組成物の投与を含む。いくつかの態様では、細胞、集団、および組成物が、例えば養子T細胞療法などの養子細胞療法によって、処置されるべき特定の疾患または状態を有する対象に投与される。いくつかの態様では、細胞または組成物が、疾患もしくは状態を有するかまたはそれらのリスクがある対象などの対象に投与され、疾患または状態の1つまたは複数の症状を改善する。
【0503】
いくつかの態様において、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受ける予定の対象から、またはそのような対象に由来する試料から細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される自家移植によって行われる。したがって、いくつかの局面において、細胞は、処置および細胞を必要とする対象、例えば患者に由来し、単離および処理後に同じ対象に投与される。
【0504】
いくつかの態様において、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受ける予定であるかまたは最終的に細胞療法を受ける対象以外の対象、例えば第1対象から細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される同種移植によって行われる。そのような態様において、この細胞は次いで、同じ種の異なる対象、例えば第2対象に投与される。いくつかの態様において、第1対象と第2対象は遺伝子的に同一である。いくつかの態様において、第1対象と第2対象は遺伝子的に類似している。いくつかの態様において、第2対象は第1対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。細胞は、任意の適切な手段によって投与され得る。投薬および投与は、投与が短期的であるか長期的であるかに一部依存し得る。様々な投薬計画には、単回または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0505】
ある特定の態様において、細胞または細胞のサブタイプの個々の集団は、約100万~約1000億個の範囲の細胞および/または体重1キログラムにつきその量の細胞、例えば100万~約500億個の細胞など(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)、例えば約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)、および場合によっては約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)、またはこれらの範囲の間にある任意の値が、かつ/または体重1キログラムにつき、対象に投与される。この場合も同様に、投薬量は、疾患もしくは障害および/または患者および/または他の処置に特有の特質に応じて変動し得る。いくつかの態様において、細胞は、併用処置の一部として、例えば、別の治療的介入、例えば抗体または操作された細胞または受容体または作用物質など、例えば細胞毒性剤または治療剤などと同時に、または任意の順序で逐次的に投与される。細胞はいくつかの態様において、1種または複数種の付加的な治療剤と、または別の治療的介入と関連して、同時にまたは任意の順序で逐次的に共投与される。状況によっては、細胞は、細胞集団が1種もしくは複数種の付加的な治療剤の効果を増強するように、またはその逆になるように、十分に近い時間内に別の治療法と共投与される。いくつかの態様において、細胞は、1種または複数種の付加的な治療剤の前に投与される。いくつかの態様において、細胞は、1種または複数種の付加的な治療剤の後に投与される。いくつかの態様において、1種または複数種の付加的な作用物質には、例えば持続性を増強するための、IL-2などのサイトカインが含まれる。いくつかの態様において、本方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0506】
細胞の投与後、操作された細胞集団の生物学的活性はいくつかの態様において、例えばいくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメータには、例えばイメージングによるインビボでの、または例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボでの、抗原に対する操作されたT細胞もしくは天然T細胞または他の免疫細胞の特異的結合が含まれる。ある特定の態様において、標的細胞を破壊する操作された細胞の能力は、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009) およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004) に記載されている細胞傷害性アッセイなどの、当技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて測定され得る。ある特定の態様において、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFなどの1種または複数種のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面において、生物学的活性は、腫瘍量または腫瘍負荷量の減少などの臨床転帰を評価することによって測定される。
【0507】
ある特定の態様において、操作された細胞は、それらの治療有効性または予防有効性が増加するように、いくつもの方法でさらに改変される。例えば、集団によって発現される操作されたCARまたはTCRは、ターゲティング部分に直接的に、またはリンカーを介して間接的にコンジュゲートされ得る。化合物、例えばCARまたはTCRをターゲティング部分にコンジュゲートする実践は、当技術分野において公知である。例えば、Wadwa et al., J.Drug Targeting 3:1 1 1 (1995) および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0508】
VI. 製品およびキット
いくつかの態様では、提供される方法を実行する際に有用な系、装置、およびキットも提供される。いくつかの態様では、ウイルス粒子およびオリゴマータンパク質(例えばムテインストレプトアビジン)試薬、および任意で使用説明書を含む、キットまたはデバイスのような製品が提供される。いくつかの態様では、キットは、養子細胞療法用の遺伝子操作された細胞を調製することに基づく方法のような細胞の形質導入のための方法に使用することができる。
【0509】
いくつかの態様では、製品は、1つまたは複数の容器、典型的には複数の容器、包装材料、ならびに1つまたは複数の容器および/またはパッケージング上のもしくはそれに付随するラベルまたは添付文書を含み、ラベルまたは添付文書は、一般的に、対象からの細胞の形質導入のような細胞の形質導入のための説明書を含む。
【0510】
本明細書において提供される製品は、包装材料を含む。提供された材料のパッケージングに使用するための包装材料は、当業者に周知である。例えば、各々がその全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号および同第5,033,252号を参照されたい。包装材料の例には、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、またはボトルが非限定的に含まれる。製品は、材料の分配を容易にするように針または他の注射器具を含むことができる。典型的には、パッケージングは、その中に含まれる組成物と反応しない。
【0511】
いくつかの態様では、ウイルス粒子およびオリゴマータンパク質(例えばストレプトアビジン)試薬は、別々にパッケージされる。いくつかの態様では、各容器は、単一の区画を有することができる。いくつかの態様では、ウイルス粒子を含む容器は、使用者が、例えば区画内の開口を通してオリゴマー試薬を添加することができ、またはその逆である。ウイルス粒子および/またはオリゴマータンパク質試薬の封じ込めのための画定空間を有するのに適しており、かつオリゴマータンパク質試薬と会合しているウイルス粒子を含む組成物を産生するために混合物に必要な最終成分の添加を可能にする簡単な操作に適している、容器または他の製品が考えられている。いくつかの態様では、細胞と接触させる前に、例えば細胞と接触させる1時間前までに、オリゴマータンパク質(例えばストレプトアビジン試薬)をウイルス粒子に添加する。
【0512】
いくつかの態様では、そのような材料は、例えば、成分を容器中で混合するまたは組み合わせることができるように、同じ容器中に別々にパッケージされる。いくつかの局面では、そのような容器の例には、ウイルス粒子を含む閉鎖された画定空間と、オリゴマータンパク質試薬を含む別個の閉鎖された画定空間とを有することにより、2つの空間が容易に取り外し可能な膜によって分離されている容器が含まれ、膜が、取り外されると成分が混合されることを可能にする。成分を別々に保つことができる任意の容器または他の製品が考えられている。いくつかの態様では、製品は、膜のような分割部材によって分離されている隣接区画内に各成分を含むことができ、分割部材は、製品が圧縮されると破裂して、分離されている成分を混合させる。適切な態様については、例えば、米国特許第3,539,794号および同第5,171,081号に記載された容器を参照されたい。
【0513】
いくつかの態様では、細胞の形質導入のために使用することができる系または装置も提供される。いくつかの態様では、系または装置は、細胞を選択および/または活性化するため、ならびに細胞を形質導入するために使用することができる。いくつかの局面では、系は、これらの工程の各々を閉鎖環境または無菌環境で実施するために、例えばエラー、使用者の取扱いおよび/または汚染を最小限にするために使用される。
【0514】
いくつかの態様では、系は、クロマトグラフィー用の固定相であるか、または該固定相を含み、すなわち、クロマトグラフィーマトリックスであるか、またはクロマトグラフィーマトリックスを含む。いくつかの態様では、固定相は、細胞を活性化、形質導入および/または刺激することのうち1つまたは複数に適している。いくつかの態様では、第一の固定相は、ゲル濾過マトリックスおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであり、ゲル濾過および/またはアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、オリゴマータンパク質(例えばストレプトアビジンムテイン)試薬のようなタンパク質(例えばストレプトアビジンムテイン)試薬を含む。いくつかの態様では、オリゴマータンパク質(例えばストレプトアビジンムテイン)試薬のようなタンパク質(例えばストレプトアビジンムテイン)試薬は、第一の結合物質(例えば選択物質および/または刺激物質)であることができる結合物質に含まれる結合パートナーC1に特異的に結合することができる結合部位Z1を含む。いくつかの態様では、オリゴマータンパク質(例えばストレプトアビジンムテイン)試薬のようなタンパク質(例えばストレプトアビジンムテイン)試薬は、第二の結合物質(例えば選択物質および/または刺激物質)に含まれる結合パートナーC2に特異的に結合することができる結合部位Z2も含む。いくつかの態様では、固定相は、ウイルスベクター粒子と会合することができ、細胞に特異的な結合物質を含む場合、細胞の表面に存在する1つまたは複数の分子と可逆的に結合することもできる。この配置では、固定相は、クロマトグラフィーカラム内に含まれるか、または平面固定相であるかのいずれかである。
【0515】
いくつかの態様では、固定相は、例えば上記と同様に構成された、第二または第三の固定相に操作可能に接続される第一の固定相である。いくつかの態様では、固定相のうちの1つまたは複数、例えば各々は、結合物質の結合パートナーC1またはC2を介してオリゴマータンパク質試薬と結合している1つまたは複数の細胞からオリゴマータンパク質試薬を可逆的に解離させるために使用される溶離試薬と高親和性で結合することができる除去作用物質を含む除去チャンバーと操作可能に接続される。いくつかの態様では、固定相のような装置は、ウイルス粒子および/または細胞を固定相に適用するために適した試料入口を含む場合がある。
【0516】
いくつかの態様では、固定相は、バイオリアクターとともに配置されるまたはそれと操作可能に接続される系として提供される。いくつかの態様では、バイオリアクターは、細胞の増殖に適切であり、固定相は、細胞選択、細胞の活性化もしくは刺激および/または細胞形質導入に適切である。いくつかの態様では、バイオリアクターおよび固定相は、流体接続される。この配置は、上に説明されるような連続増殖に使用することができ、Quantum(登録商標)細胞増殖系)またはXuri細胞増殖系W25のような、公知の細胞増殖系に組み込むことができる。
【0517】
いくつかの態様では、閉鎖系は自動化されている。いくつかの態様では、系と関連した構成要素は、統合マイクロコンピュータ、蠕動ポンプ、ならびに系の様々な部分の間の流体の流動を制御するためのピンチ弁またはストップコックのような様々な弁を含むことができる。統合コンピュータは、いくつかの局面では、機器の全ての構成要素を制御し、標準化された順序で繰り返し手続きを実行するように系に命令する。いくつかの態様では、蠕動ポンプは、管材セット全体の流速を制御し、系を通る緩衝液の制御流動をピンチ弁と一緒に保証する。いくつかの態様では、装置は、機能的閉鎖系と呼ばれる場合がある。
【0518】
VII. 定義
特に定義されない限り、本明細書で用いられる専門用語、表記、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法はすべて、特許請求される主題が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語を、明確にするためにおよび/またはすぐに参照できるように本明細書において定義するが、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野において一般に理解されているものとの実質的な相違を表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0519】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」は、特に文脈によって明白に指示されていない限り、その対象物の複数形も含む。例えば、「1つの (a)」または「1つの (an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書に記載される局面および変形は、局面および変形「からなる」ならびに/または局面および変形「から本質的になる」を含むと理解される。
【0520】
本開示を通して、特許請求される主題の様々な局面は、範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔化のためであり、特許請求される主題の範囲に対する確固たる限定として解釈されるべきでないことが、理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値をすべて具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、ある値域が提供される場合、その範囲の上限値と下限値の間の各介在値、およびその規定範囲内の任意の他の規定値または介在値が、特許請求される主題内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、独立的にそのより小さな範囲内に含まれてよく、これらもまた、規定範囲における任意の具体的に除外される限界値に従って、特許請求される主題内に包含される。規定範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それら含まれた限界値の一方または両方を除外する範囲もまた、特許請求される主題内に含まれる。このことは、範囲の幅とは無関係に適用される。
【0521】
本明細書で用いられる「約」という用語は、当業者にとっては明白な、各値に関する通常の誤差範囲を指す。本明細書において「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそのものに向けられた態様を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は「X」の記載を含む。
【0522】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。本用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノム中に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。ベクターには、ウイルスベクター粒子、例えばガンマレトロウイルスベクター粒子といったレトロウイルスベクター粒子およびレンチウイルスベクターなどが含まれる。
【0523】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫も含む。宿主細胞には「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これには初代形質転換細胞、および継代数に関係なくそれらに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸の内容が親細胞と完全に一致していなくてもよく、変異を含んでもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書に含まれる。
【0524】
本明細書で用いられる場合、組成物とは、2種またはそれ以上の、細胞を含めた製品、物質、または化合物の任意の混合物を指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0525】
本明細書で用いられる場合、1つまたは複数の特定の細胞型または細胞集団に言及する場合の「濃縮すること」とは、集団もしくは細胞によって発現されるマーカーに基づく陽性選択、または枯渇されるべき細胞集団もしくは細胞上に存在しないマーカーに基づく陰性選択などによって、例えば組成物中の全細胞数もしくは組成物の体積と比較して、または他の細胞型に対して、細胞型または集団の数またはパーセンテージを増加させることを指す。本用語は、組成物からの他の細胞、細胞型、または集団の完全な除去を必要とせず、かつそのように濃縮された細胞が、濃縮組成物中に100%または100%近くさえ存在することを必要としない。
【0526】
本明細書で用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定マーカーに関して「陽性」であるという記述は、特定マーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に検出可能な程度に存在することを指す。表面マーカーに言及する場合、本用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し該抗体を検出することによって、検出される表面発現の存在を指し、この場合、染色は、アイソタイプ一致対照を他の点では同一の条件下で用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはそのマーカーに関して陽性であることが公知である細胞のレベルと実質的に類似するレベルで、および/またはそのマーカーに関して陰性であることが公知である細胞のレベルよりも実質的に高いレベルで、フローサイトメトリーによって検出可能である。
【0527】
本明細書で用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定マーカーに関して「陰性」であるという記述は、特定マーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に実質的に検出可能な程度に存在しないことを指す。表面マーカーに言及する場合、本用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し該抗体を検出することによって、検出される表面発現の非存在を指し、この場合、染色は、アイソタイプ一致対照を他の点では同一の条件下で用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはそのマーカーに関して陽性であることが公知である細胞のレベルよりも実質的に低いレベルで、および/またはそのマーカーに関して陰性であることが公知である細胞のレベルと比較して実質的に類似するレベルで、フローサイトメトリーによって検出されない。
【0528】
本明細書で用いられる「発現」という用語は、ポリペプチドが、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいて産生される過程を指す。この過程には、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0529】
本明細書で用いられる場合、対照とは、それが試験パラメータで処理されない点以外は、試験試料と実質的に同一である試料を指し、またはそれが血漿試料である場合、対照は、関心対象の状態に罹患していない正常ボランティアから採取され得る。対照は内部対照であってもよい。
【0530】
VIII. 例示的な態様
本明細書に提供される態様の中には、以下が含まれる。
1. 複数の細胞を含むインプット組成物を、(1)オリゴマー試薬;および(2)ウイルス粒子と接触させる工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
任意で、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記細胞の形質導入のための方法。
2. オリゴマー試薬が、オリゴマータンパク質試薬であり;かつ/または
オリゴマー試薬が、複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位が、少なくとも10、20、30、もしくは40アミノ酸長または少なくとも約10、約20、約30、もしくは約40アミノ酸長、任意で少なくとも50、60、65、70、80、90、100、125、もしくは150アミノ酸長もしくは少なくとも約50、約60、約65、約70、約80、約90、約100、約125、もしくは約150アミノ酸長を任意で含み、かつ/または少なくとも20、30、40、もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40、もしくは約50kDaの分子量を含み、任意で、該試薬が、複数の多量体サブユニットから構成されるオリゴマーを含み、多量体サブユニットが、任意で四量体単位であり、個々に単量体単位を含み;かつ/または
オリゴマー試薬が、少なくとも100もしくは約100、および/または150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~もしくは1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む、
態様1記載の方法。
3. オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体を含む、かつ任意で含む、態様1または態様2記載の方法。
4. 複数の細胞を、
(1)ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体を含む、かつ任意で含む、タンパク質試薬;および
(2)ウイルス粒子
と接触させる工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
任意で、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記形質導入のための方法。
5. 前記試薬が、オリゴマーであるか、またはオリゴマーを含む、態様4記載の方法。
6. 接触させる工程が、細胞を試薬と、およびウイルス粒子と、同時にまたは順次どちらかの順序で混合することを含む、態様1~5のいずれか記載の方法。
7. 接触させる工程の少なくとも一部の間に、前記試薬およびウイルス粒子が同時に、細胞の存在下にあるか、または細胞と接触している、態様1~6のいずれか記載の方法。
8. アウトプット組成物中の1つまたは複数の形質導入細胞が、ウイルス粒子に含まれる異種核酸によってコードされる組換えタンパク質を発現する、態様1~7のいずれか記載の方法。
9. ウイルス粒子と接触された細胞を続いてインキュベートする工程であって、それにより、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する工程をさらに含む、態様1~8のいずれか記載の方法。
10. (a)ウイルス粒子をオリゴマー試薬と接触させる工程であって、それにより、該試薬と会合しているウイルス粒子を含む混合物を生成する工程;および
(b)混合物を、複数の細胞を含むインプット組成物と接触させる工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
任意で、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記形質導入のための方法。
11. オリゴマー試薬が、オリゴマータンパク質試薬であり;かつ/または
オリゴマー試薬が、複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位が、少なくとも10、20、30、もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30、もしくは約40アミノ酸長、任意で少なくとも50、60、65、70、80、90、100、125、もしくは150アミノ酸長もしくは少なくとも約50、約60、約65、約70、約80、約90、約100、約125、もしくは約150アミノ酸長を任意で含み、かつ/または少なくとも20、30、40、もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40、もしくは約50kDaの分子量を含み、任意で、該試薬が、複数の多量体サブユニットから構成されるオリゴマーを含み、多量体サブユニットが、任意で四量体単位であり、個々に単量体単位を含み;かつ/または
オリゴマー試薬が、少なくとも100もしくは約100、および/または150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む、
態様10記載の方法。
12. オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体を含むおよび任意で含む、態様10または態様11記載の方法。
13. (a)ウイルス粒子を、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、アビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体を含むおよび任意で含むタンパク質試薬と接触させる工程であって、それにより、該試薬と会合しているウイルス粒子を含む混合物を生成する工程;および
(b)混合物を、複数の細胞を含むインプット組成物と接触させる工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
任意で、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記形質導入のための方法。
14. 前記試薬が、オリゴマーであるか、またはオリゴマーを含む、態様13記載の方法。
15. 続いて、混合物と接触された細胞をインキュベーションし、それにより、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する工程をさらに含む、態様10~14のいずれか記載の方法。
16. インキュベーションが実施され、前記試薬がインキュベーションの前に組成物から除去されることも、インキュベーションの間に組成物から除去されることも、インキュベーションの少なくとも半分の間に組成物から除去されることもない、態様9または15のいずれか記載の方法。
17. 前記試薬が、裸であり;
前記試薬が、結合物質を含まず、かつ/もしくは結合物質とコンジュゲートも可逆的に結合もしておらず;
前記試薬が、接着分子、インテグリン、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカン、T細胞表面マーカー、CD3、CD28、CD4および/もしくはCD8の中から任意で選択される細胞表面マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、かつ/もしくは該分子とコンジュゲートも結合もしておらず;
前記試薬が、哺乳動物細胞表面マーカー、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートも結合もしておらず;かつ/または
前記試薬が、ヘパリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはインテグリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA4結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA5結合ドメインを含まず;かつ/または
前記試薬が、ウイルス結合物質も細胞選択物質も含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートもカップリングも結合もしていない、
態様1~16のいずれか記載の方法。
18. 前記試薬と接触させる工程および任意でさらなるインキュベーションの前もしくは間に、刺激物質の存在下で細胞を活性化させる工程、および/または接触させる工程もしくはインキュベートする工程もしくはその一部が、細胞が刺激物質によって刺激もしくは活性化される条件で実施され、該刺激物質が、任意で、該試薬と可逆的に結合している結合物質である、態様1~17のいずれか記載の方法。
19. 前記試薬が、ウイルス粒子表面および/または任意で哺乳動物細胞、任意でヒト細胞である標的細胞の表面の分子と各々特異的に結合することができる複数の1または複数の結合物質をさらに含み、かつ/またはそれと可逆的に結合している、1~18のいずれか記載の方法。
20. 複数の細胞を含むインプット組成物を、
(1)結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含むオリゴマータンパク質試薬であって、1つまたは複数の結合部位が、結合物質と可逆的に結合しているオリゴマータンパク質試薬;および
(2)ウイルス粒子
とともにインキュベートする工程を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)におけるインキュベーションの少なくとも一部が、(2)と同時に起こり、
任意で、該方法が、1つまたは複数の形質導入細胞を含むアウトプット組成物を産生する、
前記形質導入のための方法。
21. インキュベーションおよび/もしくはさらなるインキュベーションが、37℃±2℃または約37℃±2℃で実施され;かつ/または
インキュベーションおよび/もしくはさらなるインキュベーションが、インキュベーションおよび/もしくはさらなるインキュベーションの少なくとも一部の間にT細胞にシグナルを送達することができるさらなる作用物質の存在下で実施される、
態様9、15、16および20のいずれか記載の方法。
22. さらなる作用物質が、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の増殖を増大または誘発することができる、態様21記載の方法。
23. さらなる作用物質が、IL-2、IL-15、IL-7およびIL-21の中から選択されるサイトカインである、態様21記載の方法。
24. インキュベーションまたはさらなるインキュベーションが、14日以下、12日以下、10日以下、8日以下または6日以下である期間、実施される、態様21~23のいずれか記載の方法。
25. 前記結合物質が、刺激物質であり、かつ/またはT細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体、および/またはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる、態様10~24のいずれか記載の方法。
26. 前記試薬が、前記結合物質の各々と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、複数の結合部位が、結合パートナーCと結合することができる1つまたは複数の結合部位Zを含み;
前記結合物質が、1つまたは複数の結合パートナーCをさらに含む、
態様19~25のいずれか記載の方法。
27. 前記結合物質が、受容体結合物質であるか、または受容体結合物質を含む、態様19~26のいずれか記載の方法。
28. 受容体結合物質が、
T細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体、および/もしくはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる刺激物質を含むか;または
メンバーもしくはTCR/CD3複合体に特異的に結合するか、またはCD3に特異的に結合する、
態様27記載の方法。
29. 受容体結合物質が、第一の受容体結合物質であり、前記試薬が、第二の受容体結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、該第二の受容体結合物質が、細胞のうちの1つまたは複数の表面の第二の分子に特異的に結合することができる補助結合物質であり、第二の分子が、第一の受容体結合物質を通して送達されたシグナルを、任意で、誘発または増強、減衰、または改変することができる、態様28記載の方法。
30. 第一の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z1と可逆的に結合することができる結合パートナーC1を含み;かつ
第二の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z2と可逆的に結合することができる結合パートナーC2を含む、
態様29記載の方法。
31. C1およびC2が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含み;かつ/または
Z1およびZ2は、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含む、
態様30記載の方法。
32. 前記結合物質が、標的細胞の表面に発現される分子に特異的に結合することができる選択物質である、態様19~31のいずれか記載の方法。
33. 前記試薬が、標的細胞の表面に発現される分子に特異的に結合することができる選択物質であるさらなる結合物質を含む、態様29~32のいずれか記載の方法。
34. 第一の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z1と可逆的に結合することができる結合パートナーC1を含み;
第二の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z2と可逆的に結合することができる結合パートナーC2を含み;
前記選択物質が、前記試薬上の結合部位Z3と可逆的に結合することができる結合パートナーC3を含む、
態様33記載の方法。
35. C1、C2およびC3が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含み;かつ/または
Z1、Z2およびZ3が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含む、
態様34記載の方法。
36. 前記分子が、CD25、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD45ROおよび/またはCD56であるか、またはこれらを含む、態様31~35のいずれか記載の方法。
37. 前記方法、接触させる工程、および/またはインキュベーションの少なくとも一部の間に、前記結合物質が、標的細胞の表面に発現される分子に結合し、それにより、前記試薬と標的細胞との間の会合を容易にする、態様31~36のいずれか記載の方法。
38. 前記試薬と標的細胞との間の会合が、分子を発現せず前記試薬上のもしくは前記試薬と結合している結合物質に特異的に結合されもしない非標的細胞の形質導入と比較して、標的細胞の形質導入を増強することができる、態様37記載の方法。
39. 前記結合物質が、抗体、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子またはその結合性フラグメントであるか、またはこれらを含む、態様18~38のいずれか記載の方法。
40. 抗体フラグメントが、Fabフラグメント、Fvフラグメント、(Fab')
2フラグメント、および二価単鎖Fv(scFv)フラグメントからなる群より選択されるフラグメントを含む、態様39記載の方法。
41. 複数の結合物質が、少なくとも2、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、72またはそれより多く含む、態様19~40のいずれか記載の方法。
42. 前記結合物質、任意で刺激物質が、CD3および/もしくはCD28であるかまたはCD3および/もしくはCD28を含む、細胞の表面に発現される分子に結合する、態様18~41のいずれか記載の方法。
43. 前記結合物質、任意で刺激物質が、抗CD3および/または抗CD28抗体またはフラグメントを含む、態様42記載の方法。
44. インプット組成物が、T細胞を含む、態様1~43のいずれか記載の方法。
45. T細胞が、CD4+および/もしくはCD8+ T細胞、ならびに/またはその亜集団もしくはサブセットを含み、かつ/または前記のうちの任意の集団が濃縮されている、態様44記載の方法。
46. インプット組成物が、休止もしくはナイーブ細胞、および/またはその亜集団もしくはサブセットを含み、かつ/または前記のうちの任意の集団が濃縮されている、態様1~45のいずれか記載の方法。
47. インプット組成物中のT細胞の10%以下が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択されるT細胞活性化マーカーを含み;かつ/またはIL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;かつ/または増殖能力がある、態様1~46記載の方法。
48. 前記接触させる工程の前に、T細胞活性化を促進する条件下で集団の細胞を刺激する工程を含まない、態様1~47のいずれか記載の方法。
49. 前記接触させる工程の前に、インプット組成物中の細胞が、
(a)約37℃でのインキュベーションを含むエクスビボ刺激、ならびに/または
(b)T細胞、CD4+ T細胞、および/もしくはCD8+ T細胞におけるTCR複合体を経由するシグナルを、活性化、誘導することができる作用物質;T細胞、CD4+ T細胞、および/もしくはCD8+ T細胞の増殖を誘導することができる作用物質;CD3結合分子;CD28結合分子からなる群より選択される1つもしくは複数の作用物質の存在下でのインキュベーション
に供されていない、態様1~48のいずれか記載の方法。
50. インプット組成物が、活性化細胞を含む、態様1~45のいずれか記載の方法。
51. ウイルス粒子が、前記試薬と会合している、態様1~50のいずれか記載の方法。
52. 前記試薬が細胞に無毒であるか、または細胞の少なくとも75%、85%、90%、95%もしくはそれより多く、もしくは少なくとも約75%、約85%、約90%、約95%もしくはそれより多くが、前記接触させる工程もしくは任意でさらにインキュベートする工程の後に生存可能である、態様1~51のいずれか記載の方法。
53. 前記接触させる工程および/もしくはさらにインキュベートする工程後の細胞毒性が、同じ条件でポリカチオン形質導入アジュバント、任意で硫酸プロタミン、もしくはフィブロネクチン由来形質導入アジュバント、任意でRetroNectinと接触させた、もしくはそれとともにインキュベーションしたときの細胞毒性と比較して、1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍もしくは10倍、もしくは約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍もしくは約10倍を上回って減少し;かつ/または
前記接触させる工程および/もしくはさらなるインキュベートする工程後の細胞生存率が、同じ条件でポリカチオン形質導入アジュバント、任意で硫酸プロタミン、もしくはフィブロネクチン由来形質導入アジュバント、任意でRetroNectinと接触させた、もしくはそれとともにインキュベーションしたときの細胞毒性と比較して、1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍もしくは10倍、もしくは約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍もしくは約10倍を上回って減少する、
態様1~52のいずれか記載の方法。
54. オリゴマーの個々の分子が、多糖または二官能性リンカーによって架橋されている、態様1~53のいずれか記載の方法。
55. 前記試薬が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2を含むか、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、態様1~54のいずれか記載の方法。
56. 前記試薬が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47を含む、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインを含むか;または
ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47を含む、
態様1~55のいずれか記載の方法。
57. 前記試薬が、
(a)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47に対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、前記アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む、
態様1~56のいずれか記載の方法。
58. ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して117位、120位および/または121位に対応する位置に1つまたは複数のアミノ酸置換をさらに含む、態様56または態様57記載の方法。
59. 1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121もしくはPhe121の中から選択され;または
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121のうちの1つもしくは複数から選択され;または
アミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121から選択される、
態様58記載の方法。
60. 前記試薬が、
(a)SEQ ID NO:27もしくは28に示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれより多い配列同一性を示し、かつVal
44、Thr
45、Ala
46、Arg
47、Glu
117、Gly
120およびTyr
121に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む、
態様1~59のいずれか記載の方法。
61. 前記結合物質が、ストレプトアビジン結合ペプチドを含む、態様19~60のいずれか記載の方法。
62. ストレプトアビジン結合ペプチドが、
からなる群より選択される、態様61記載の方法。
63. 前記結合物質と前記試薬との間の可逆的結合を破壊する工程を含む、態様19~61のいずれか記載の方法。
64. 前記破壊が、第二の受容体結合物質と、第二の試薬であることができる前記試薬との間の結合を逆転させることができる物質を含む組成物を細胞に導入する工程を含む、態様63記載の方法。
65. 細胞の形質導入が、前記試薬の非存在下でのウイルス粒子を用いた形質導入と比較して、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍もしくはそれを上回って、または約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍もしくはそれを上回って増大する、態様1~64のいずれか記載の方法。
66. ウイルスベクターのゲノムが、組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む、態様1~65のいずれか記載の方法。
67. 組換えタンパク質が、抗原受容体である、態様66記載の方法。
68. ウイルス粒子が、レトロウイルスである、態様1~67のいずれか記載の方法。
69. レトロウイルスが、レンチウイルスである、態様68記載の方法。
70. レトロウイルスが、ガンマレトロウイルスである、態様68記載の方法。
71. ウイルス粒子が、複製欠損性である、態様1~70のいずれか記載の方法。
72. 細胞が、血液細胞、白血球、リンパ球、B細胞、T細胞またはNK細胞を含む、態様1~71のいずれか記載の方法。
73. 細胞が、抗原特異的T細胞もしくはその集団、ヘルパーT細胞もしくはその集団、細胞傷害性T細胞もしくはその集団、メモリーT細胞もしくはその集団、調節性T細胞もしくはその集団、NK細胞もしくはその集団、抗原特異的B細胞もしくはその集団、メモリーB細胞もしくはその集団、または調節性B細胞もしくはその集団を含む、態様1~72のいずれか記載の方法。
74. 細胞が、初代細胞である、態様1~73のいずれか記載の方法。
75. 細胞が、T細胞を含む、態様1~74のいずれか記載の方法。
76. T細胞が、未分画のT細胞であるか、濃縮もしくは単離されたCD3+ T細胞であるか、濃縮もしくは単離されたCD4+ T細胞であるか、または濃縮もしくは単離されたCD8+ T細胞である、態様1~75のいずれか記載の方法。
77. 前記試薬が、可溶性である、態様1~76のいずれか記載の方法。
78. 前記試薬が、接触させる工程またはさらなるインキュベーションの少なくとも一部の間、支持体と結合している、態様1~77のいずれか記載の方法。
79. 支持体が、固体支持体または固定相である、態様78記載の方法。
80. ウイルス粒子と会合しているオリゴマー試薬を含む、組成物。
81. ウイルスベクター粒子と会合することができるオリゴマー試薬、ウイルスベクター粒子、および任意で使用説明書を含む、キット。
82. オリゴマー試薬が、オリゴマータンパク質試薬であり;かつ/または
オリゴマー試薬が、複数のポリペプチド単量体単位を含み、各単位が、少なくとも10、20、30、もしくは40アミノ酸長もしくは少なくとも約10、約20、約30、もしくは約40アミノ酸長、任意で少なくとも50、60、65、70、80、90、100、125、もしくは150アミノ酸長もしくは少なくとも約50、約60、約65、約70、約80、約90、約100、約125、もしくは約150アミノ酸長を任意で含み、かつ/または少なくとも20、30、40、もしくは50kDaもしくは少なくとも約20、約30、約40、もしくは約50kDaの分子量を含み、任意で試薬が、複数の多量体サブユニットから構成されるオリゴマーを含み、多量体サブユニットが、任意で四量体単位であり、個々に単量体単位を含み;かつ/または
オリゴマー試薬が、少なくとも100もしくは約100、および/または150kDa~2000kDaもしくは約150kDa~約2000kDa、150kDa~1500kDaもしくは約150kDa~約1500kDa、150kDa~1250kDaもしくは約150kDa~約1250kDa、150kDa~1000kDaもしくは約150kDa~1000kDa、150kDa~500kDaもしくは約150kDa~約500kDaもしくは150kDa~300kDaもしくは約150kDa~約300kDa、300kDa~2000kDaもしくは約300kDa~約2000kDa、300kDa~1500kDaもしくは約300kDa~約1500kDa、300kDa~1250kDaもしくは約300kDa~約1250kDa、300kDa~1000kDaもしくは約300kDa~1000kDa、300kDa~500kDaもしくは約300kDa~約500kDa、500kDa~2000kDaもしくは約500kDa~約2000kDa、500kDa~1500kDaもしくは約500kDa~約1500kDa、500kDa~1250kDaもしくは約500kDa~約1250kDa、500kDa~1000kDaもしくは約500kDa~1000kDa、1000kDa~2000kDaもしくは約1000kDa~約2000kDa、1000kDa~1500kDaもしくは約1000kDa~約1500kDa、1000kDa~1250kDaもしくは約1000kDa~約1250kDa、1250kDa~2000kDaもしくは約1250kDa~約2000kDa、もしくは1500kDa~2000kDaもしくは約1500kDa~約2000kDaの分子量を含む、
態様80記載の組成物または態様81記載のキット。
83. オリゴマータンパク質試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくは前記のうちのいずれかの生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体を含む、および任意で含む、態様80~92のいずれか記載の組成物。
84. ウイルスベクター粒子と会合している試薬を含む組成物であって、該試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくはその生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体であるか、またはこれらを含む、および任意で含む、組成物。
85. ウイルスベクター粒子と会合することができる試薬、ウイルスベクター粒子および任意で使用説明書を含むキットであって、該試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、もしくはその生物学的活性フラグメントの複数の単位、および/または前記のうちのいずれかの多量体であるか、またはこれらを含む、および任意でこれらを含む、キット。
86. ウイルス粒子が、異種核酸をコードするヌクレオチド配列を含む、態様80~85のいずれか記載の組成物またはキット。
87. 前記試薬が、裸であり;
前記試薬が、結合物質を含まず、かつ/もしくは結合物質とコンジュゲートも可逆的に結合もしておらず;
前記試薬が、接着分子、インテグリン、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカン、T細胞表面マーカー、CD3、CD28、CD4および/またはCD8の中から任意で選択される細胞表面マーカーに特異的な結合ドメインを有する分子を含まず、かつ/もしくは該分子とコンジュゲートも結合もしておらず;
前記試薬が、哺乳動物細胞表面マーカー、細胞外マトリックス成分、接着分子、インテグリン、レクチン、インテグリン結合タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞外マトリックス結合分子、ECM成分、ウイルスタンパク質、ウイルス侵入促進細胞表面受容体、ヘパリン、ヘパラン、グリカンを含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートも結合もしておらず;かつ/または
前記試薬が、ヘパリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはインテグリン結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA4結合ドメインを含まず、かつ/もしくはVLA5結合ドメインを含まず;かつ/または
前記試薬が、ウイルス結合物質も細胞選択物質も含まず、かつ/もしくはこれらとコンジュゲートもカップリングも結合もしていない、
態様80~86のいずれか記載の組成物またはキット、17.態様1~16のいずれか記載の方法。
88. 前記試薬が、各々ウイルス粒子表面および/または任意で哺乳動物細胞、任意でヒト細胞である標的細胞の表面の分子に特異的に結合することができる複数の1種類または複数種類の結合物質をさらに含み、かつ/またはそれと可逆的に結合している、態様80~87のいずれか記載の組成物またはキット。
89. 前記試薬が、前記結合物質の各々と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、複数の結合部位が、結合パートナーCと結合することができる1つまたは複数の結合部位Zを含み;
前記結合物質が、1つまたは複数の結合パートナーCをさらに含む、
態様88記載の組成物またはキット。
90. 前記結合物質が、受容体結合物質であるか、または受容体結合物質を含む、態様88または態様89記載の組成物またはキット。
91. 受容体結合物質が、
T細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体、および/もしくはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる刺激物質を含むか;または
メンバーもしくはTCR/CD3複合体に特異的に結合するか、またはCD3に特異的に結合する、
態様90記載の組成物またはキット。
92. 受容体結合物質が、第一の受容体結合物質であり、前記試薬が、第二の受容体結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、該第二の受容体結合物質が、細胞のうちの1つまたは複数の表面の第二の分子に特異的に結合することができる補助結合物質であり、第二の分子が、第一の受容体結合物質を通して送達されるシグナルを任意で誘発または増強、減衰、または改変することができる、態様91記載の組成物またはキット。
93. 第一の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z1と可逆的に結合することができる結合パートナーC1を含み;
第二の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z2と可逆的に結合することができる結合パートナーC2を含む、
態様92記載の組成物またはキット。
94. C1およびC2が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含み;かつ/または
Z1およびZ2が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含む、
態様93記載の組成物またはキット。
95. 前記結合物質が、標的細胞の表面に発現される分子に特異的に結合することができる選択物質である、態様88または態様89記載の組成物またはキット。
96. 前記試薬が、標的細胞の表面に発現される分子に特異的に結合することができる選択物質であるさらなる結合物質を含む、態様90~95のいずれか記載の組成物またはキット。
97. 第一の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z1と可逆的に結合することができる結合パートナーC1を含み;
第二の受容体結合物質が、前記試薬上の結合部位Z2と可逆的に結合することができる結合パートナーC2を含み;
前記選択物質が、前記試薬上の結合部位Z3と可逆的に結合することができる結合パートナーC3を含む、
態様96記載の組成物またはキット。
98. C1、C2およびC3が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含み;かつ/または
Z1、Z2およびZ3が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含む、
態様97記載の組成物またはキット。
99. 前記分子が、CD25、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD45ROおよび/またはCD56であるか、またはこれらを含む、態様95~98のいずれか記載の組成物またはキット。
100. 前記結合物質が、抗体、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子またはその結合性フラグメントであるか、またはこれらを含む、態様88~99のいずれか記載の組成物またはキット。
101. 抗体フラグメントが、Fabフラグメント、Fvフラグメント、(Fab')
2フラグメント、および二価単鎖Fv(scFv)フラグメントからなる群より選択されるフラグメントを含む、態様100記載の組成物またはキット。
102. 複数の結合物質が、少なくとも2、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、72もしくはそれより多く含む、態様88~10のいずれか記載の組成物またはキット。
103. 前記結合物質、任意で刺激物質が、
CD3および/またはCD28であるか、またはCD3および/またはCD28を含む、細胞の表面に発現される分子
に結合する、態様88~102のいずれか記載の方法。
104. 前記結合物質、任意で刺激物質が、抗CD3および/または抗CD28抗体またはフラグメントを含む、態様103記載の組成物またはキット。
105. オリゴマーの個々の分子が、多糖または二官能性リンカーによって架橋されている、態様80~104のいずれか記載の組成物またはキット。
106. 前記試薬が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2を含むか、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、態様80~105のいずれか記載の組成物またはキット。
107. 前記試薬が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47を含むストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインを含むか;または
ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47を含む、
態様80~106のいずれか記載の組成物またはキット。
108. 前記試薬が、
(a)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47に対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、前記アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む、
態様80~107のいずれか記載の組成物またはキット。
109. ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して117位、120位および/または121位に対応する位置に1つまたは複数のアミノ酸置換をさらに含む、態様80~108のいずれか記載の組成物またはキット。
110. 1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121もしくはPhe121の中から選択されるか;または
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
アミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121から選択される、
態様109記載の組成物またはキット。
111. 前記試薬が、
(a)SEQ ID NO:27もしくは28に示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44、Thr
45、Ala
46、Arg
47、Glu
117、Gly
120およびTyr
121に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはその生物学的活性フラグメントもしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含むストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインを含む、
態様80~110のいずれか記載の組成物またはキット。
112. 前記結合物質が、ストレプトアビジン結合ペプチドを含む、態様88~111のいずれか記載の組成物またはキット。
113. ストレプトアビジン結合ペプチドが、
からなる群より選択される、態様112記載の組成物またはキット。
114. ウイルスベクターのゲノムが、組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む、態様80~113のいずれか記載の組成物またはキット。
115. 組換えタンパク質が、抗原受容体である、態様114記載の組成物またはキット。
116. ウイルス粒子が、レトロウイルスである、態様80~115のいずれか記載の組成物またはキット。
117. レトロウイルスが、レンチウイルスである、態様116記載の組成物またはキット。
118. レトロウイルスが、ガンマレトロウイルスである、態様116記載の組成物またはキット。
119. ウイルス粒子が、複製欠損性である、態様80~118のいずれか記載の組成物またはキット。
120. 前記試薬が、可溶性である、態様80~119のいずれか記載の組成物またはキット。
121. 前記試薬が、接触させる工程またはさらなるインキュベーションの少なくとも一部の間、支持体と結合している、態様80~120のいずれか記載の組成物またはキット。
122. 支持体が、固体支持体または固定相である、態様121記載の組成物またはキット。
123. (1)(a)複数の標的細胞を含む組成物と、(b)(i)少なくとも複数の標的細胞のうちの1つまたは複数によって発現される選択マーカーに特異的に結合することができ、かつ(ii)選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬と可逆的に結合している選択物質とを、組み合わせる工程;および
(2)組換え抗原受容体をコードする核酸分子を含むゲノムを含むウイルス粒子を含む組成物の存在下で少なくとも複数の標的細胞をインキュベートする工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
該方法が、ウイルスベクターが形質導入された複数の標的細胞を含むインキュベーションされた組成物を生成する、
前記形質導入のための方法。
124. ウイルスベクター粒子が、前記試薬と可逆的に結合し、該試薬が、ウイルス粒子表面の分子と、直接または間接的に、可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む、
態様123記載の方法。
125. 前記インキュベーションの間、前記試薬が、固体支持体、固定相、ビーズ、微粒子、磁性粒子、および/もしくはマトリックスではなく、それに結合も会合もしておらず;かつ/または
前記試薬が、フレキシブルであり、金属コアもしくは磁性コアを含まず、完全にもしくは主に有機多量体から構成され、形状が球状でも、実質的に球状でも、均一でもなく、かつ/もしくは硬直していない、
態様123または態様124記載の方法。
126. 前記試薬が、支持体上に、直接または間接的に、固定化されているか、または固定化されることができ、それにより、前記選択物質が、支持体上に固定化されている、または固定化されることができ;
(1)において、(c)支持体、がさらに組み合わされ、それにより、少なくとも複数のうちの1つまたは複数標的細胞が、インキュベーションの少なくとも一部の間、該選択物質を介して支持体上に固定化される、
態様123~125のいずれか記載の方法。
127. 1つまたは複数のウイルスベクター粒子が、インキュベーションの少なくとも一部の間、分子と直接または間接的に結合することを介して支持体上に固定化されている、態様126記載の方法。
128. 前記試薬が、選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z1を含み、かつ/または試薬が、1つもしくは複数のウイルス粒子と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z2を含む、
態様123~127のいずれか記載の方法。
129. (1)(a)複数の標的細胞を含む組成物と、(b)(i)少なくとも複数の標的細胞のうちの1つまたは複数によって発現される選択マーカーに特異的に結合することができ、かつ(ii)支持体上に、直接または間接的に、固定化されているか、または固定化されることができる選択物質と;(c)支持体とを、組み合わせる工程であって、それにより、少なくとも複数のうちの1つまたは複数の標的細胞が、選択物質を介して支持体上に固定化される、前記工程;ならびに
(2)組換え受容体をコードする核酸分子を含むゲノムを含む複数のウイルス粒子を含む組成物の存在下で少なくとも複数の標的細胞をインキュベートする工程であって、複数のウイルス粒子のうちの1つまたは複数が、支持体上に、直接または間接的に、固定化されることができる工程
を含む、細胞の形質導入のための方法であって、
(1)における接触させる工程および(2)におけるインキュベートする工程が、同時にまたは順次どちらかの順序で実施され、
1つまたは複数の標的細胞および1つまたは複数のウイルスベクター粒子が、インキュベーションの少なくとも一部の間、支持体上に固定化されており;かつ
該方法が、ウイルスベクターを形質導入された複数の標的細胞を含むインキュベーションされた組成物を生成する、
前記形質導入のための方法。
130. 支持体が、固定相であるか、もしくは固定相を含み;かつ/または
支持体が、固体支持体であるか、もしくは固体支持体を含む、
態様126~129のいずれか記載の方法。
131. 前記試薬が、支持体上に固定化されているか、または固定化されることができ、該試薬が、選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z1と、1つまたは複数のウイルス粒子と可逆的に結合することができる複数の結合部位Z2とを含む、態様128または態様130記載の方法。
132. 前記方法が、(1)において、(d)試薬、さらに組み合わせることを含み、該試薬が、支持体上に固定化されている、態様131記載の方法。
133. 前記選択物質および/または複数の細胞を含む組成物を前記試薬および支持体に組み合わせる前に、前記試薬および支持体が組み合わされる、態様132記載の方法。
134. 前記選択物質が、結合パートナーC1を含み;かつ
複数の結合部位が2つ以上の結合部位Z1を含み、結合部位Z1が、各々、結合パートナーC1と結合して該選択物質と該試薬との間に可逆的結合を形成することができる、
態様128および131~133記載の方法。
135. ウイルスベクター粒子が、ウイルス粒子結合物質を介して試薬と可逆的に結合している、態様124~6および131~134のいずれか記載の方法。
136. ウイルス粒子結合物質が、結合パートナーC2を含み;かつ
複数の結合部位が2つ以上の結合部位Z2を含み、結合部位Z2が、各々、結合パートナーC2と結合してウイルス粒子結合物質と試薬との間に可逆的結合を形成することができる、
態様135記載の方法。
137. C1およびC2が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含み;かつ/または
Z1およびZ2が、同じもしくは実質的に同じであるか、または同じもしくは実質的に同じ部分を含み、態様128および態様131~136のいずれか記載の方法。
138. 前記選択物質が、結合部位B1をさらに含み、選択物質と標的細胞上の選択マーカーとの間の特異的結合が、B1とマーカーとの間の相互作用を含む、態様123~137のいずれか記載の方法。
139. 選択マーカーが第一の選択マーカーであり、前記選択物質が少なくとも複数の標的細胞の表面に発現された第二の選択マーカーとさらに結合することができる、態様123~138のいずれか記載の方法。
140. 前記選択物質が第一の選択物質であり、選択マーカーが第一の選択マーカーであり、インキュベーションが、少なくとも複数の標的細胞の表面に発現された第二の選択マーカーに特異的に結合することができる第二の選択物質の存在下でさらに実施される、態様123~139のいずれか記載の方法。
141. 前記試薬が第二の選択物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、該第二の選択物質が該試薬と可逆的に結合している、態様140記載の方法。
142. 複数の結合部位が第一の選択物質と可逆的に結合することができ、該複数の結合部位が同じまたは異なることができる第二の選択物質と可逆的に結合することができる、態様141記載の方法。
143. 前記第二の選択物質が1つもしくは複数の結合パートナーC1を含み;かつ/または
前記第二の選択物質が結合部位Z1と結合することができる1つもしくは複数の結合パートナーC2を含み;かつ/または
前記第二の選択物質が結合部位Z2と結合することができる1つもしくは複数の結合パートナーC2を含み、前記試薬が、1つもしくは複数の結合部位Z2をさらに含む、
態様142記載の方法。
144. 前記第二の選択物質が、第二の選択物質と第二の選択マーカーとの間の特異的結合を容易にする1つまたは複数の結合部位B3を含む、態様139~143のいずれか記載の方法。
145. 第一の選択マーカーであることができる選択マーカー、および/もしくは標的細胞の表面に発現された第二の選択マーカーが、タンパク質もしくはポリペプチドであり;かつ/または
第一の選択マーカーであることができる選択マーカー、および/もしくは第二の選択マーカーが、タンパク質もしくはポリペプチドである、
態様123~138のいずれか記載の方法。
146. 標的細胞が、血液細胞を含み;
標的細胞が、白血球を含み;
標的細胞が、リンパ球を含み;
標的細胞が、B細胞を含み;
標的細胞が、B細胞集団を含み;
標的細胞が、T細胞を含み;
標的細胞が、T細胞集団を含み;かつ/または
標的細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞を含み;
標的細胞が、樹状細胞を含み;
標的細胞が、マクロファージを含む、
態様123~145のいずれか記載の方法。
147. 標的細胞が、抗原特異的T細胞もしくはその集団、ヘルパーT細胞もしくはその集団、細胞傷害性T細胞もしくはその集団、メモリーT細胞もしくはその集団、調節性T細胞もしくはその集団、またはNK細胞もしくはその集団、抗原特異的B細胞もしくはその集団、メモリーB細胞もしくはその集団、または調節性B細胞もしくはその集団を含む、態様146記載の方法。
148. 標的細胞がT細胞を含む、態様123~147のいずれか記載の方法。
149. T細胞の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%が、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択されるT細胞活性化マーカーについて表面陰性であり;かつ/またはIL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;かつ/または増殖能力がある、態様148記載の方法。
150. 複数の標的細胞のうちの1つまたは複数、任意で複数のT細胞のうちの1つまたは複数を、前記インキュベーションの前および/または間に刺激する工程を含み、該刺激する工程が、細胞を刺激条件に曝露し、それにより1つまたは複数の標的細胞またはT細胞を増殖させるよう誘発する工程を含む、態様123~149のいずれか記載の方法。
151. 前記刺激条件が、TCR複合体の1つまたは複数の成分の1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる作用物質の存在を含む、態様150記載の方法。
152. 前記作用物質が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する一次作用物質およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質を含む、態様151記載の方法。
153. 一次作用物質が、CD3に特異的に結合し;かつ/または
共刺激分子が、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、CD27もしくはICOSからなる群より選択される、
態様152記載の方法。
154. 前記一次および二次作用物質が、抗体を含み、かつ/または固体支持体の表面に存在する、態様152または態様153記載の方法。
155. (3)任意で第二の試薬である試薬と可逆的に結合している刺激物質の存在下で少なくとも複数の細胞を培養する工程であって、(第二の)試薬が、刺激物質が細胞の表面に発現される分子に特異的に結合する条件下で、刺激物質と各々可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、細胞においてシグナルを誘導または調節する、前記工程
をさらに含む、態様123~154のいずれか記載の方法。
156. 前記培養する工程が、前記インキュベートする工程の前に実施および/または開始される、態様155記載の方法。
157. 前記インキュベーションの間、第二の試薬が、固体支持体、固定相、ビーズ、微粒子、磁性粒子、および/もしくはマトリックスではなく、それに結合も会合もしておらず、かつ/または
第二の試薬が、フレキシブルであり、金属コアもしくは磁性コアを含まず、完全にもしくは主に有機多量体から構成され、形状が球状でも、実質的に球状でも、均一でもなく、かつ/もしくは硬直していない、
態様155または態様156記載の方法。
158. 第二の試薬が、任意で固体支持体または固定相である支持体上に固定化されている、態様155または態様156記載の方法。
159. 刺激物質が、MHC I:ペプチド複合体もしくはその機能的部分、MHCII:ペプチド複合体もしくはその機能的部分を含み、かつ/またはT細胞におけるTCR/CD3複合体、T細胞におけるCD3含有複合体、および/もしくはT細胞におけるITAM含有分子を通して刺激シグナルを送達することができる、態様155~158のいずれか記載の方法。
160. 刺激物質が第一の刺激物質であり、培養する工程が第二の刺激物質の存在下でさらに実施され、第二の刺激物質が、少なくとも複数の標的細胞の表面に発現された第二の分子に特異的に結合することができ、それにより、細胞において第二のシグナルを誘導して、第一の分子を通して送達されるシグナルを増強、減衰または改変する、態様155~159のいずれか記載の方法。
161. (第二の)試薬が第二の刺激物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含み、それにより、第二の刺激物質が試薬と可逆的に結合している、態様160記載の方法。
162. 第二の分子が、共刺激分子、補助分子、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、免疫チェックポイント分子であるか、またはTNFファミリーもしくはTNF受容体ファミリーのメンバーである、態様160または態様161記載の方法。
163. インキュベートする工程および培養する工程が、任意で管材により、操作可能に接続される別々の容器内で行われる、態様155~162のいずれか記載の方法。
164. インキュベートする工程および培養する工程が、閉鎖系内で行われる、態様123~163のいずれか記載の方法。
165. 第一の刺激物質および/または第二の刺激物質であることができる刺激物質に可逆的に結合し、かつ該刺激物質により刺激された細胞を回収し、それにより、培養細胞を産生する工程を含み、培養細胞が複数の標的細胞であるかまたは複数の標的細胞を含む、態様155~164のいずれか記載の方法。
166. 前記のように培養された集団中のT細胞の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が、
HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択されるT細胞活性化マーカーについて表面陰性であり;かつ/または
IL-2、IFN-γ、TNF-αからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を欠き;かつ/または
細胞周期のG0もしくはG
0G
1a期である、
態様123~148のいずれか記載の方法。
167. 選択マーカーが、B細胞またはT細胞共受容体であり;
選択マーカーが、T細胞またはB細胞抗原受容体複合体のメンバーであるか、またはそれを含み;
選択マーカーが、CD3鎖であるか、またはそれを含み;
選択マーカーが、CD3ゼータ鎖であるか、またはそれを含み;
選択マーカーが、CD8であるか、またはそれを含み;
選択マーカーが、CD4であるか、またはそれを含み、かつ/あるいは
前記選択物質と選択マーカーとの間の特異的結合が、標的細胞に対して、シグナルを誘導せず、刺激シグナルも活性化シグナルも増殖シグナルも誘導しない、
態様123~166のいずれか記載の方法。
168. 前記組み合わせる工程の後に、固定化された標的細胞から組成物の他の細胞を分離および/または除去することをさらに含む、態様123~167のいずれか記載の方法。
169. 洗浄工程を行う工程をさらに含む、態様167または168記載の方法。
170. 前記分離することおよび/または前記洗浄工程が、前記インキュベーションの開始前に実施される、態様168または態様169記載の方法。
171. 前記インキュベートする工程が、前記組み合わせる工程の前に実施および/もしくは開始されるか;または
前記インキュベートする工程が、前記組み合わせる工程に続いて実施および/もしくは開始される、
態様123~170のいずれか記載の方法。
172. 前記組み合わせる工程が、前記インキュベーションの少なくとも一部の間に実施される、態様123~171のいずれか記載の方法。
173. 支持体上の選択物質の固定化が可逆的である、態様123~172のいずれか記載の方法。
174. ウイルス粒子結合物質が結合部位V1をさらに含み、ウイルス表面の分子とウイルス粒子結合物質との間の結合がB1と該分子との間の相互作用を含む、態様135~173のいずれか記載の方法。
175. ウイルス粒子表面の分子が、エンベロープ糖タンパク質、エンベロープ糖タンパク質のバリアント、キメラエンベロープ糖タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスカプシドタンパク質のバリアント、ウイルスマトリックスタンパク質、ウイルスマトリックスタンパク質のバリアント、合成部分、ペプチドおよびタグの中から選択される、態様174記載の方法。
176. エンベロープ糖タンパク質が、VSV糖タンパク質(VSV-G)、シンドビス糖タンパク質、任意でSIN、MMLV糖タンパク質、HSV糖タンパク質、MMTV糖タンパク質、麻疹ウイルス糖タンパク質、HTLV糖タンパク質、SIV糖タンパク質、GALV糖タンパク質、HIV糖タンパク質、任意でgp160、gp120もしくはgp41、およびRSV糖タンパク質、任意でgp85もしくはgp37の中から選択されるか、またはそれらのバリアント、ウイルス粒子結合物質が結合するのに十分な部分、もしくはキメラ分子である、態様175記載の方法。
177. 合成部分、ペプチドまたはタグが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAGペプチド、ヘマグルチニンペプチド、VSV-Gタグ、HSVタグ、T7エピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、HSVエピトープ、mycエピトープ、V5タグ、およびストレプトアビジン結合ペプチドの中から選択される、態様175記載の方法。
178. 前記分子が、合成部分、ペプチドまたはタグであり、ウイルス粒子が、その表面に合成部分、ペプチドまたはタグを発現するように操作されている、態様175または態様177記載の方法。
179. ストレプトアビジン結合ペプチドが、SEQ ID NO:7、8、13、14、および15~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、態様177または態様178記載の方法。
180. ウイルス粒子結合物質が、プロタミン、POLYBRENE(登録商標)およびRETRONECTIN(登録商標)の中から選択される、態様135~174記載の方法。
181. ウイルス粒子が、結合パートナーC1またはC2を含み;かつ
前記試薬が、結合パートナーC1またはC2と結合することができる複数の結合部位Z1またはZ2を含み、ウイルス粒子と試薬との間に可逆的結合を形成する、
態様123~134および136~173のいずれか記載の方法。
182. ウイルス粒子が、その表面に合成部分、ペプチドまたはタグを発現するように操作されており、合成部分、ペプチドまたはタグが、結合パートナーC1またはC2であるか、または結合パートナーC1またはC2を含む、態様181記載の方法。
183. 前記ペプチドが、ストレプトアビジン結合ペプチドである、態様182記載の方法。
184. ストレプトアビジン結合ペプチドが、SEQ ID NO:7、8、13、14、および15~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、態様183記載の方法。
185. ウイルス粒子が、レトロウイルスベクター粒子である、態様123~184のいずれか記載の方法。
186. ウイルス粒子が、レンチウイルスベクター粒子である、態様123~185のいずれか記載の方法。
187. レンチウイルスベクター粒子が、HIV-1由来であるゲノムを含む、態様186記載の方法。
188. レトロウイルスベクター粒子が、ガンマレトロウイルス粒子である、態様123~185のいずれか記載の方法。
189. ガンマレトロウイルス粒子が、マウス白血病ウイルス(MLV)粒子である、態様188記載の方法。
190. ウイルスベクター粒子が、ウイルスエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイプ化されている、態様123~189のいずれか記載の方法。
191. ウイルスエンベロープ糖タンパク質が、VSV-Gである、態様190記載の方法。
192. 組換え抗原受容体が、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインとITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)である、態様123~191のいずれか記載の方法。
193. 細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む、態様192記載の方法。
194. 細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを連結している膜貫通ドメインをさらに含む、態様192または態様193記載の方法。
195. 膜貫通ドメインが、CD28の膜貫通部分を含む、態様194記載の方法。
196. 細胞内シグナル伝達ドメインが、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、態様192~195のいずれか記載の方法。
197. T細胞共刺激分子が、CD28および41BBからなる群より選択される、態様196記載の方法。
198. 核酸が、組換え抗原受容体をコードする核酸と機能的に連結されるプロモーターをさらに含む、態様123~197のいずれか記載の方法。
199. 前記選択物質と、第一の試薬であることができる前記試薬との間の可逆的結合が、物質の添加によって破壊可能であり;かつ/または
第二の選択物質と、第一の試薬であることができる前記試薬および/もしくは第二の試薬との間の可逆的結合が、物質の添加によって破壊可能であり;かつ/または
ウイルスの表面の分子と、第一の試薬であることができる前記試薬との間の可逆的結合が、物質の添加によって破壊可能であり;かつ/または
ウイルス粒子結合物質と、第一の試薬であることができる前記試薬との間の可逆的結合が、物質の添加によって破壊可能であり;かつ/または
第一の刺激物質であることができる刺激物質と、第二の試薬との間の可逆的結合が、物質の添加によって破壊可能であり;かつ/または
第二の刺激物質と、第二の作用物質との間の可逆的結合が、物質の添加によって破壊可能である、
態様123~198のいずれか記載の方法。
200. 前記破壊が、前記物質を含む組成物を細胞に導入することを含む、態様199記載の方法。
201. 前記物質が、遊離結合パートナーおよび/または競合物質である、態様199または態様200記載の方法。
202. 前記組成物中の物質が、T細胞もしくは標的細胞に有害でなく、かつ/または該物質の添加が、同等もしくは同じ条件下で該物質なしでのT細胞もしくは標的細胞のインキュベーションとそれぞれ比較して、生存しているT細胞もしくは標的細胞のパーセンテージを90%、80%、70%、60%、もしくは50%未満に低下させない、態様199~201のいずれか記載の方法。
203. 前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、または/およびアビジン類似体もしくはアビジンムテイン、またはそれらの生物学的活性フラグメントであるか、またはそれを含み;
前記物質が、ストレプトアビジン結合ペプチド、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、任意でD-ビオチン、またはビオチン類似体もしくは生物学的活性フラグメントを含む、
態様123~202のいずれか記載の方法。
204. 前記物質が、
からなる群より選択されるストレプトアビジン結合ペプチドであり;かつ/または
前記物質が、C1もしくはその類似体であるか、またはC2もしくはその類似体である、
態様203記載の方法。
205. 第一の選択物質であることができる前記選択物質、および/または第二の選択物質が、各々個別に抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子およびその結合性フラグメントの中から選択され;かつ/または
第一の刺激物質であることができる刺激物質、および/または第二の刺激物質が、各々個別に抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子およびその結合性フラグメントの中から選択され;かつ/または
ウイルス粒子結合物質が、抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子、Igドメインを含む分子、サイトカイン、ケモカイン、アプタマー、およびMHC分子およびその結合性フラグメントの中から選択される、
態様123~204のいずれか記載の方法。
206. 前記選択物質、刺激物質、および/もしくはウイルス粒子結合物質が、抗体フラグメントを含み;
前記選択物質、刺激物質、および/もしくはウイルス粒子結合物質が、Fabフラグメントを含み;
前記選択物質、刺激物質、および/もしくはウイルス粒子結合物質が、(Fab')
2フラグメントおよび二価単鎖Fv(scFv)フラグメントの中から選択される二価抗体フラグメントであり;
前記選択物質、刺激物質、および/もしくはウイルス粒子結合物質が、Fabフラグメント、FvフラグメントおよびscFvフラグメントの中から選択される一価抗体フラグメントであり;かつ/または
前記選択物質、刺激物質、および/もしくはウイルス粒子結合物質が、アプタマー、リポカリンファミリーのポリペプチドベースのムテイン、グルボディ、アンキリン足場ベースのタンパク質、結晶足場ベースのタンパク質、アドネクチン(adnectin)およびアビマー(avimer)の中から選択される、抗体様結合特性を有するタンパク質性結合分子である、
態様123~205のいずれか記載の方法。
207. 前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチンやビオチン類似体もしくはその生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン;ストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アビジンもしくはストレプトアビジンの類似体もしくはムテイン;遷移金属イオンに結合することができる少なくとも2つのキレート化基Kを含む試薬;オリゴヒスチジン親和性タグと結合することができる作用物質;グルタチオン-S-トランスフェラーゼと結合することができる作用物質;カルモジュリンもしくはその類似体;カルモジュリン結合ペプチド(CBP)と結合することができる作用物質;FLAGペプチドと結合することができる作用物質;HAタグと結合することができる作用物質;マルトース結合タンパク質(MBP)と結合することができる作用物質;HSVエピトープと結合することができる作用物質;mycエピトープと結合することができる作用物質;またはビオチン化担体タンパク質と結合することができる作用物質であるか、またはこれらを含む、態様123~206のいずれか記載の方法。
208. 前記試薬が、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、もしくはこれらを含み;
前記試薬が、ビオチン類似体もしくは生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、もしくはこれらを含み;かつ/または
前記試薬が、ストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、もしくはアビジン類似体もしくはアビジンムテインであるか、もしくはこれらを含む、
態様123~207のいずれか記載の方法。
209. 前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチンもしくは生物学的活性フラグメントと可逆的に結合するストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン;ストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、ストレプトアビジンもしくはアビジンの類似体もしくはムテイン;遷移金属イオンに結合することができる少なくとも2つのキレート化基Kを含む試薬;オリゴヒスチジン親和性タグと結合することができる作用物質;グルタチオン-S-トランスフェラーゼと結合することができる作用物質;カルモジュリンもしくはその類似体;カルモジュリン結合ペプチド(CBP)と結合することができる作用物質;FLAGペプチドと結合することができる作用物質;HAタグと結合することができる作用物質;マルトース結合タンパク質(MBP)と結合することができる作用物質;HSVエピトープと結合することができる作用物質;mycエピトープと結合することができる作用物質;またはビオチン化担体タンパク質と結合することができる作用物質の、オリゴマーまたはポリマーである、態様123~208のいずれか記載の方法。
210. 前記試薬が、ストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテイン、または/およびアビジン類似体もしくはアビジンムテインの、オリゴマーまたはポリマーを含む、態様123~209のいずれか記載の方法。
211. オリゴマーまたはポリマーの個々の分子が、多糖または二官能性リンカーによって架橋されている、態様209または態様210記載の方法。
212. 複数の結合部位が、少なくとも2、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、72またはこれを上回る結合部位を含む、態様123~211のいずれか記載の方法。
213. ストレプトアビジン結合ペプチドが、
からなる群より選択される、態様207~212のいずれか記載の方法。
214. 前記試薬が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47を含むストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインを含み;または
ストレプトアビジン類似体もしくはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して44位から47位に対応する配列位置にアミノ酸配列Val
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47を含む、
態様123~213のいずれか記載の方法。
215. ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、
(a)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:3~6、27および28のうちのいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44-Thr
45-Ala
46-Arg
47もしくはIle
44-Gly
45-Ala
46-Arg
47に対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、前記アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくはその生物学的活性形態、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含む、態様123~214のいずれか記載の方法。
216. ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列でのストレプトアビジンにおける位置に関して117位、120位および/または121位に対応する位置に1つまたは複数のアミノ酸置換をさらに含む、態様214または態様215記載の方法。
217. 1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Asp117、Arg117、Ser120、Ala120、Gly120、Trp121、Tyr121もしくはPhe121の中から選択されるか;または
1つもしくは複数のアミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
アミノ酸置換が、Glu117、Gly120もしくはTyr121より選択される、
態様216記載の方法。
218. ストレプトアビジン類似体またはストレプトアビジンムテインが、
(a)SEQ ID NO:27または28に示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:28に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を示し、かつVal
44、Thr
45、Ala
46、Arg
47、Glu
117、Gly
120およびTyr
121に対応するアミノ酸配列を含み、かつビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、アミノ酸配列;または
(c)ビオチンもしくは生物学的活性フラグメント、ビオチン類似体もしくはビオチンムテインもしくはそれらの生物学的活性フラグメント、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドと可逆的に結合する、(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
を含む、態様123~217のいずれか記載の方法。
219. 結合パートナーC1および/または結合パートナーC2が、
からなる群より選択されるストレプトアビジン結合ペプチドを独立して含む、
態様123~218のいずれか記載の方法。
220. 前記破壊の後に、細胞を回収する工程、およびインキュベーションされた細胞を含む組成物をさらにインキュベーションし、それにより、さらにインキュベーションされた組成物を生成させる工程を含む、態様123~219のいずれか記載の方法。
221. インキュベーションおよびさらなるインキュベーションが、同じ容器内で実施され;かつ/または
さらなるインキュベーションが、前記物質の存在下で実施され;かつ/または
前記方法が、さらなるインキュベーションの前に、インキュベーションされた組成物から物質、選択物質、刺激物質、ウイルス粒子結合物質および/もしくは試薬を除去する工程を含まない、
態様220記載の方法。
222. さらなるインキュベーションが、細胞を増殖する条件で行われる、態様220または態様221記載の方法。
223. 支持体が、樹脂もしくはマトリックスを含み;
支持体が、ゲル濾過マトリックスを含み;
支持体が、クロマトグラフィーマトリックスを含み;かつ/または
支持体が、セルロースベースもしくは有機ポリマーベースのメンブレンを含む、
態様124~222のいずれか記載の方法。
224. クロマトグラフィーマトリックスが、カラム内に存在し、かつ/またはクロマトグラフィーが、カラムクロマトグラフィーもしくは平面クロマトグラフィーである、態様222記載の方法。
225. 支持体が、微粒子、硬質粒子、磁性粒子、またはビーズを含む、態様124~222のいずれか記載の方法。
226. 支持体が、前記インキュベーションおよび/または接触させる工程の全体または一部の間容器内に存在する固定相である、態様124~222のいずれか記載の方法。
227. 容器が、カラム、双方向流に適切な容器、ピペットチップ、チューブ、および液体試料のフロースルーに適切なカラムからなる群より選択される容器を含む、態様226記載の方法。
228. 第一の選択マーカーであることができる選択マーカー、および/または第二の選択マーカーを発現している細胞の選択的形質導入を招く、態様123~227のいずれか記載の方法。
229. 形質導入が、選択マーカー(第一および/または第二の選択マーカー)を発現しない組成物中に存在する細胞よりも、選択マーカー(第一および/または第二の選択マーカー)を発現している細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれを上回って高い、態様228記載の方法。
230. 前記インキュベーションされた組成物中の前記細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記方法によって前記ウイルスベクターを用いて形質導入され;かつ/または
前記さらにインキュベーションされた組成物中の前記細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記ウイルスベクターを用いて形質導入され;かつ/または
前記インキュベーションされた組成物および/もしくはさらにインキュベーションされた組成物中の前記細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記ウイルスベクター内に含まれる異種核酸の産物を発現する、
態様123~229のいずれか記載の方法。
231. エクスビボで行われる、態様123~230のいずれか記載の方法。
232. 前記方法によって産生された形質導入細胞を回収または単離する工程をさらに含む、態様123~231のいずれか記載の方法。
233. 態様123~232のいずれか記載の方法によって産生された、形質導入細胞。
234. 態様233の形質導入細胞を含む、組成物。
235. 前記試薬と可逆的に結合しているウイルスベクター粒子結合物質であって、ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合することができるウイルス粒子結合物質;または
該試薬と可逆的に結合しているウイルスベクター粒子
を含む、組成物。
236. 前記試薬が、ウイルス粒子結合物質と各々可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む、態様235記載の組成物。
237. 前記試薬と可逆的に結合することができ、かつ標的細胞上の選択マーカーに特異的に結合することができる選択物質をさらに含む、態様235または態様236記載の組成物。
238. 前記選択物質が前記試薬と可逆的に結合している、態様237記載の組成物。
239. 組成物が支持体をさらに含み、前記試薬が支持体上に固定化されている、態様235~238のいずれか記載の組成物。
240. 支持体が、固定相および/または固体支持体であるか、または固定相および/または固体支持体を含む、態様239記載の組成物。
241. ウイルス粒子;および/または
任意でキメラ受容体である組換え分子もしくは組換え分子を発現している核酸を任意で含む標的細胞
をさらに含む、態様235~240のいずれか記載の組成物。
242. 前記試薬とウイルス粒子結合物質との間の可逆的結合を破壊することができ、かつ/または試薬と選択物質との間を分断することができる物質をさらに含む、態様235~241のいずれか記載の組成物。
243. (a)ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合することができるウイルス粒子結合物質;
(b)各々、ウイルス粒子結合物質と可逆的に結合することができる複数の結合部位を含む試薬
を含む、標的細胞の形質導入のための製品。
244. 前記試薬と可逆的に結合することができ、かつ標的細胞上の選択マーカーに特異的に結合することができる選択物質をさらに含む、態様243記載の製品。
245. 前記選択物質が、前記試薬と可逆的に結合している、態様244記載の製品。
246. 前記組成物が支持体をさらに含み、前記試薬が支持体上に固定化されている、態様243~245のいずれか記載の製品。
247. 支持体が、固定相および/または固体支持体であるか、または固定相および/または固体支持体を含む、態様246記載の製品。
248. 支持体が、クロマトグラフィーマトリックスであるか、またはクロマトグラフィーマトリックスを含む固定相であり、前記製品が、クロマトグラフィーマトリックスの全部または部分が含有される任意で第一の容器である容器をさらに含み、(第一の)容器が、任意でカラムである、態様247記載の製品。
249. 態様235~242のいずれか記載の組成物または態様243~248のいずれか記載の製品を含む装置であって、任意で該組成物と、もしくは該装置の1つもしくは複数の構成成分と流体接続される流体入口、ならびに/または該組成物と、および/もしくは該装置の1つもしくは複数の構成成分と流体接続される流体出口をさらに含む、前記装置。
250. (a)ウイルス粒子表面の分子に特異的に結合することができ、かつ試薬と可逆的に結合することができるウイルス粒子結合物質;
(b)試薬と可逆的に結合することができ、かつ標的細胞上の選択マーカーに特異的に結合することができる選択物質;
(c)ウイルス粒子結合物質および選択物質と可逆的に結合することができる試薬;および
(d)支持体
を含む、装置。
251. 任意で閉鎖系または無菌系において、少なくともその一部が流体接続される複数の容器内に、(a)~(d)における構成成分が存在し、それにより、構成成分のうちの1つまたは複数が、装置内の1つの容器から別の容器に通過する、態様250記載の装置。
252. クロマトグラフィー用の少なくとも1つの固定相のうちの1つに流体接続される試料出口をさらに含む、態様243~251のいずれか記載の製品または装置。
253. 装置が、機能的に閉鎖された系である、態様243~252のいずれか記載の製品または装置。
254. 1つまたは複数の容器もしくはその構成要素、および任意でクロマトグラフィーのための少なくとも1つの固定相の少なくとも1つのpH、pO
2、pCO
2および/またはサーモスタット制御を調整または調節することができる1つまたは複数の制御装置をさらに含む、態様243~253のいずれか記載の製品または装置。
255. 培地および/または1種類もしくは複数種類の栄養分および/または1種類もしくは複数種類の炭素源を含む容器との流体接続をさらに含み、それにより、任意で前記細胞がクロマトグラフィー用の固定相上に固定化されている場合、接続が、装置内の細胞にそのような培地、栄養分、および/または炭素源を送達することができる、態様243~254のいずれか記載の製品または装置。
256. 列挙された成分の少なくとも1つおよび/またはそれを含む容器が、滅菌または無菌の方式で装置から着脱可能である、態様243~255のいずれか記載の製品または装置。
257. ストレプトアビジン結合ペプチドを含む、ウイルスベクター粒子。
258. ストレプトアビジン結合ペプチドが、エンベロープ糖タンパク質との融合タンパク質である、態様257記載のウイルスベクター粒子。
259. エンベロープ糖タンパク質が、VSV-Gである、態様258記載のウイルスベクター粒子。
260. ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、任意でレンチウイルスベクターである、態様257~259のいずれか記載のウイルスベクター粒子。
261. ストレプトアビジン結合ペプチドが、
からなる群より選択される、態様257~260のいずれか記載のウイルスベクター粒子。
262. 態様257~261のうちのいずれか記載のウイルスベクター粒子;および
ウイルスベクター粒子と可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位を含む試薬
を含む、キット。
263. 標的細胞の表面の選択マーカーと結合することができる選択物質をさらに含むキットであって、前記試薬が、選択物質と可逆的に結合することができる1つまたは複数の結合部位を含む、態様262記載のキット。
264. ウイルスベクター粒子が、組換え抗原受容体、任意でキメラ抗原受容体をコードするゲノムを含む、態様257~263のいずれか記載のウイルスベクター粒子またはキット。
【実施例】
【0531】
IX. 実施例
以下の実施例は、例証的の目的のためだけに含まれるのであって、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0532】
実施例1:オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬と可逆的に結合している多量体化抗CD3および抗CD28 Fabフラグメントを含む可溶性刺激試薬の生成
オリゴマー性ストレプトアビジンムテインであった多量体形成試薬と可逆的に結合させることによって、刺激物質(抗CD3および抗CD28 Fabフラグメント)を多量体化した。試薬は、Fabフラグメントに存在したペプチドタグに対する複数の結合部位を含んでいた。スルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、製品#22122 Thermo Scientific)およびイミノチオラン(製品# 26101 Thermo Scientific)を製造業者の説明書(Thermo Scientific)に従って用いて、Strep-tactin(登録商標)m1と呼ばれるストレプトアビジンムテインを重合することによってオリゴマー性ストレプトアビジンムテインを調製した(SEQ ID NO:6に示されるムテインアミノ酸配列を含むストレプトアビジンホモ四量体、例えば米国特許第6,103,493号およびVoss and Skerra (1997) Protein Eng., 1:975-982を参照されたい)。オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン分子をサイズ排除クロマトグラフィーによって単量体(未反応)および二量体のストレプトアビジンムテインから分離した。
【0533】
各Fabフラグメントと融合したストレプトアビジンペプチド結合パートナーを介して、抗CD3および抗CD28 Fabフラグメントをオリゴマー性ストレプトアビジンムテインと可逆的に結合させた。抗CD3 Fabフラグメントは、ハイブリドーマ細胞株OKT3(ATCC(登録商標)CRL-8001(商標);米国特許第4,361,549号も参照されたい)によって製造されたCD3結合モノクローナル抗体由来であり、Arakawaら J. Biochem. 120, 657-662 (1996)に記載された抗CD3抗体OKT3の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含んでいた。これらの配列は、それぞれSEQ ID NO:31および32に示される。抗CD28 Fabフラグメントは、抗体CD28.3(合成単鎖Fv構築物としてGenBankアクセッション番号AF451974.1で寄託されている;Vanhove et al, BLOOD, 15 July 2003, Vol. 102、No. 2, pages 564-570も参照されたい)由来であり、それぞれSEQ ID NO:33および34に示される抗CD28抗体CD28.3の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含んでいた。Fabフラグメントを、その重鎖のカルボキシ末端で、アミノ酸配列
を有する2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続配置を含むストレプトアビジンペプチド結合配列に個別に融合させた。ペプチドタグ付きFabフラグメントを組換え産生させた(国際特許出願の公報番号WO2013/011011およびWO2013/124474を参照されたい)。
【0534】
可逆的結合をもたらすために、ペプチドタグ付き抗CD3および抗CD28 Fabフラグメントをほぼ室温で多量体化試薬と混合し、それにより、試薬の結合部位と可逆的に結合することができる結合パートナーであったFabフラグメントのtwin-strep-tagの間の相互作用を介してフラグメントを試薬と可逆的に結合させた。具体的には、この研究において、抗CD3ペプチドタグ付きFabフラグメント約0.5μgおよび抗CD28ペプチドタグ付きFabフラグメント約0.5μgを、室温で可溶性オリゴマー性Strep-tactin(登録商標)約3μgに添加した。場合により、可溶性オリゴマー性ムテインストレプトアビジン骨格に固定化する前に、ペプチドタグ付きFabフラグメントを予備混合し、これは、場合により、異なるFab分子のより均一な分布を招くことができる。結果として生じた可溶性抗CD3/抗CD28多量体化作用物質を使用してT細胞を刺激した。場合により、細胞の刺激前に、結果として生じた可溶性抗CD3/抗CD28多量体化作用物質を氷上で保管した。
【0535】
実施例2:ストレプトアビジンムテインStrep-tactin(登録商標)でコーティングされたビーズ上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片によるCD3+ Tレスポンダー細胞の刺激/増大
300,000個のCD3+CD62L-レスポンダーT細胞(Tresp、非動員ドナーアフェレーシス生成物から連続磁気濃縮によって単離)を3μM CFSEで標識し、0.5μg αCD3 Fab断片のみ、0.5μg αCD28 Fab断片のみ、または0.5μg αCD3 Fab断片と0.5μg αCD28 Fabとの混合物のいずれかが負荷されたStreptactin(登録商標)ビーズの調製物 15μl(10 mg磁気粒子/ml、35μg Streptactin(登録商標)/mgビーズが負荷された)のうちの5μlで刺激した。
【0536】
使用したαCD3 Fab断片は、ハイブリドーマ細胞株OKT3によって産生されるCD3結合モノクローナル抗体に由来した。ハイブリドーマ細胞株OKT3およびOKT3抗体は、米国特許第4,361,549号に記載されており、この細胞株はアクセッション番号ATCC(登録商標)CRL-8001(商標)の下で寄託されている。使用したCD28 Fabは、モノクローナル抗ヒトCD28抗体 CD28.3 (Vanhove et al, BLOOD, 15 July 2003, Vol. 102, No. 2, pages 564-570) に由来した。この抗体CD28.3の可変ドメインのヌクレオチド配列は、GenBankアクセッション番号AF451974.1の下、合成一本鎖Fv構築物抗ヒトCD28抗体scFv28.3の形態で、GenBankに寄託されている。
【0537】
両Fab断片は、定常ドメイン(CH1およびCカッパ)としてIgG1コンセンサス配列を有して、国際特許出願WO2013/011011およびWO 2013/124474に記載されているように、大腸菌において組換えによって産生させた。両Fab断片の重鎖を、IBA GmbH、Gottingen, Germanyから「Twin-Strep-tag(登録商標)」として市販されている、2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続配置
とカルボキシ末端で融合させた。αCD3 Fab断片を、結合パートナーC1として機能するストレプトアビジン結合ペプチドを有する第1作用物質として使用し、αCD28 Fab断片を、結合パートナーC2として機能するストレプトアビジン結合ペプチドを有する第2作用物質として使用した。(四量体)ストレプトアビジンムテイン「Strep-tactin(登録商標)」は、両Fab断片が可逆的に固定化された試薬として機能する。
【0538】
増大実験において、ブランクビーズ(Fabなし)で刺激したTresp細胞を陰性対照とした。Tresp細胞を、10U/mlインターロイキン2 (IL-2) を補充した完全細胞培養液(10% (v/v) ウシ胎仔血清、L-グルタミン、b-メルカプトエタノール、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびゲンタマイシンを補充したRPMI (Gibco)) 3ml中に、300,000個のCD3細胞自己フィーダー細胞(30Gyで照射)と共に48ウェルプレートに3つ組で播種した。細胞を、培地交換せずに37℃でインキュベートし、4日後にFACS解析によって解析した。100μM D-ビオチンと共に10分間インキュベートした後に、FACS染色および解析を行った。各条件につき1つの代表的なプロットを
図7Aに示す。プロットは、生/死を判別するためにヨウ化プロピジウム (PI) で染色した生存CD3+細胞を示す。
図7Aは、刺激された細胞のサイズ分布(前方散乱)を示すヒストグラムである。
図7Aは、ストレプトアビジンムテインStrep-tactin(登録商標)でコーティングされたビーズ上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した後、0.5μg αCD3 Fab断片と0.5μg αCD28 Fabとの混合物が固定化されたビーズの存在下でインキュベートした場合に、Tresp細胞の特定の細胞集団が刺激され、増大した(刺激されていない「ビーズのみ」の対照と比較してサイズ/数が増加)ことを示す。
図7Bは、細胞分裂当たりの細胞数に従って増殖の程度を表す増殖色素CFSEの希釈度のヒストグラムを示す(
図7Bの上部に示されている0は、分裂していない細胞を表し;5は少なくとも5回分裂した細胞を表す)。
図7Bから、0.5μg αCD3 Fab断片と0.5μg αCD28 Fabとの混合物が固定化されたビーズで刺激されたT細胞の集団のほとんどが、3回細胞分裂しており、単一の刺激のみよりも均一な増殖パターンを表す(分裂していないピーク「0」内の細胞数が少ない)ことがわかる。増殖の絶対量の増加(αCD3およびαCD28機能化ビーズで4日間刺激した後、より多くの細胞が均一に増殖した)もまた、指示薬の色が黄色に変化したことによって示される(
図7Cにおいてウェル中のより明るい液体として示される)通り、より著しい培地の消費によって表される。
【0539】
実施例3:可溶性Strep-tactin上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片によるCD3+ Tレスポンダー細胞の刺激/増大
本実施例では、CD3+ Tレスポンダー細胞(フィコール勾配から得られた新たなPBMCの試料から磁気選択によって単離)を、可溶性試薬として作用する可溶性オリゴマーStrep-tactin(登録商標)上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した後、増大した。オリゴマーストレプトアビジンムテインは、実質的に実施例1に記載されているように、製造業者 (Thermo Scientific) のプロトコルに従って、Strep-tactin(登録商標)をスルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、製品番号22122 Thermo Scientific)およびイミノチオラン(製品番号26101 Thermo Scientific)と重合させることによって得た。サイズ排除クロマトグラフィーによって、単量体(未反応)および二量体のストレプトアビジンムテインからオリゴマーストレプトアビジンムテインを分離し、このようにして得られたオリゴマーストレプトアビジンムテイン (n≧3) の画分を可溶性試薬として使用した。
【0540】
インビトロ増大のために、300,000個のCD3+レスポンダーT細胞 (Tresp) を2μMカルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル (CFSE) で標識し、上記のαCD3 OKT3 Fab断片と抗体28.3のαCD28 Fab断片(いずれも重鎖において、ストレプトアビジン結合ペプチドとして上述のTwin-Strep-tag(登録商標)を有する)との組み合わせが固定化された可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物の様々な量で刺激した。(「1x」は、0.5μg αCD3単量体Fab断片および0.5μg αCD28単量体Fab断片で機能化された3μgオリゴマーストレプトアビジンムテインに相当し、「0.5x」、「2x」、および「5x」という数字は、それぞれ「1x」のn倍量を示す)。刺激しない状態のまま、またはブランクオリゴマーストレプトアビジンムテイン(Fabなし)で刺激したTresp細胞を陰性対照とした。Tresp細胞を、20U/ml IL-2を補充した細胞培養液1 mL中に、300,000個のCD3陰性自己フィーダー細胞(30Gyで照射)と共に48ウェルプレートに2つ組で播種した。培地交換せずに細胞を37℃でインキュベートし、5日後にFACS解析によりCFSE希釈度に従って増殖を解析した。
図8Aは、陰性対照と比較した、5日間培養した後の増殖細胞のサイズ分布の増加を示す。
図8Bは、αCD3 Fab断片とαCD28 Fab断片との混合物が固定化された可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインと共にインキュベートした場合に(
図7A~7Cにおける固体Streptactin磁気粒子と比較して)、CD3+ Tresp細胞が適切に刺激され、活発に増殖したことを示す。
図8Aおよび8Bにおける結果は、これらのインビトロ条件下で、表面CD28およびTCR/CD3複合体と、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に可逆的に固定化されたαCD3 Fab断片およびαCD28 Fab断片との会合後に、CD3+ Tレスポンダー細胞の大部分が分裂した(2~5回の細胞分裂)ことを示す。インビトロ増大後、可溶性多量体化作用物質を、D-ビオチン処理後に解離させ除去した。フィコエリトリン標識Strep-Tactin(登録商標)(ST-PE) で細胞を再染色することによって、単量体Fab断片の解離および除去をフローサイトメトリーで解析した。適切なST-PEのみの陰性対照(薄い灰色のヒストグラム)と比較した、代表的なヒストグラム(濃い灰色のヒストグラム)を示す。
図8Cから、両Fab断片が完全に解離し、増大した細胞から完全に除去されたことがわかる。
図8Dは、5日後の生存(トリパンブルー陰性)細胞の絶対数を示す。ノイバウエル計数チャンバーを用いて数を計数し、それぞれの刺激条件に対してプロットした。細胞数中央値を
図8Dに示し;エラーバーは標準偏差 (SD) を示す。
図8Dは、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬上に固定化されたαCD3 Fab断片とαCD28 Fab断片との混合物がすべて、CD3+細胞の増大において同等に効果的であり、絶対細胞数のおよそ4倍の増加をもたらしたことを示す。
【0541】
実施例4:培地交換せずに、可逆的αCD3/αCD28 Fab-Streptamer多量体でインビトロにおいて刺激した精製CD4+ Tレスポンダー細胞およびCD8+ Tレスポンダー細胞の増殖の動態
本実施例では、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した精製CD4+ Tレスポンダー細胞およびCD8+ Tレスポンダー細胞 (Tresp) の増殖の増大動態を調べた。この目的のために、2つの異なるサイズの可溶性オリゴマーStrep-tactin(登録商標)ムテインが、可溶性試薬としての役割を果たした。第1の種類のオリゴマーStrep-tactin(登録商標)は、実施例3で得られたオリゴマーストレプトアビジンムテイン (n≧3) の画分であった(本明細書では「従来のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格」とも称される、
図9Aおよび9Bでは先端が上を向いている三角形記号によって示される)。可溶性試薬として使用された第2の種類のこのオリゴマーストレプトアビジンムテインは、ビオチン化ヒト血清アルブミンと反応させたオリゴマーストレプトアビジンムテイン (n≧3) であった(本明細書では「大きなオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格」とも称される)。
【0542】
本実施例では、500,000個の精製CD4+レスポンダーT細胞またはCD8+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、上記の通りのこれら2つの異なるStreptamer多量体で、すなわち実施例3のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格(1 mgオリゴマーストレプトアビジンムテイン/mlの濃度を有する溶液を使用)または大きなオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格 (0.1mg/ml) のいずれかで別々に刺激した。異なる両骨格3μlに、Fab断片の重鎖のC末端においてストレプトアビジン結合ペプチド
を有する、上記実施例で使用された0.5μg αCD3と0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせを負荷した。加えて、4.5μlの従来のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格に、0.5μg αCD3 Fab断片、0.5μg αCD8 Fab断片(IBA GmbH Gottingen、これも同様にFab断片のC末端においてストレプトアビジン結合ペプチド
を有する)、および0.5μg αCD28 Fab断片を負荷した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、市販の抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3モノクローナル抗体およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されているビーズ)で刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液(10% (v/v) ウシ胎仔血清、0.025% (w/v) L-グルタミン、0.025% (w/v) L-アルギニン、0.1% (w/v) HEPES、0.001% (w/v) ゲンタマイシン、0.002% (w/v) ストレプトマイシン、0.002% (w/v) ペニシリンを補充したRPMI 1640 (Gibco)) 1ml中、48ウェルプレートに2つ組で播種した。培地交換せずに細胞を37℃でインキュベートし、1日、3日、および6日後に細胞数を解析した。
図9Aおよび9Bの実験では、培地交換せずに増大を実施した。CD4+ Tレスポンダー細胞についての結果を
図9Aに示し、CD8+ Tレスポンダー細胞についての結果を
図9Bに示し、グラフは、CD4+ Tresp(
図9A)および
図9BにおけるCD8+ Trespについて、時点ごとに収集された細胞の数に従った増殖の程度を表す。
【0543】
図9Aからわかるように、αCD3およびαCD28 Fab断片が可逆的に固定化された「より小さな」可溶性試薬は、抗CD3/抗CD28ビーズ(T細胞の増大について今までのところ標準的な試薬である)と同じ量のCD4+ T細胞の増大をもたらしたのに対して、「より大きな」多量体化作用物質は、Dynabeadと比較してさらにより優れた増大をもたらした。この改善は、「より小さな」多量体化作用物質よりも多くのT細胞に同時に結合することができ、それによって「より小さな」多量体化作用物質よりも多くのCD4+ T細胞を刺激することができる、可溶性の「より大きな」多量体化作用物質によって引き起こされた可能性がある。
【0544】
図9Bから明らかであるように、本明細書において開示される可溶性多量体化作用物質を用いると、最初の3日以内は少なくとも抗CD3/抗CD28ビーズと同程度効率的にCD8+ T細胞を増大することができた。注目すべきことには、この期間において、(第1作用物質および第2作用物質としての)αCD3およびαCD28 Fab断片に加えて、可逆的に固定化されたαCD8 Fab断片を有する可溶性試薬を使用した増大実験が、これらの培養条件下で最大の増大度を示した。このことは、細胞の特定の亜集団に特異的な刺激(この場合αCD8 Fab断片)を用いることによって、増大の選択性を高めるまたは調節することが可能であり、それによってより多くの量の所望の細胞(亜)集団を得ることができることを示す。
【0545】
したがって、上記を要約すると、実施例4は、T細胞の増大を誘発するという観点での可溶性多量体化作用物質の機能性が、この目的のために抗CD3/抗CD28ビーズを使用する現行の標準的な方法論に匹敵することを示す。しかしながら、第1作用物質および第2作用物質と試薬との間のストレプトアビジンベースの可逆的相互作用の場合には、ビオチンなどの競合物を添加することによって刺激を制御する(および必要に応じて終了させる)ことができるため、本明細書において記載される組成物および方法は、増大条件を最適化できる(例えば、
図9Bの実験において3日後に刺激を停止することが可能である)という理由で抗CD3/抗CD28ビーズ技術よりも大きな利点をもたらす。加えて、可溶性試薬は、(例えば、増大反応後、ビオチン化カラムに試薬を固定化することによって)反応物から容易に除去することができるため、本明細書において開示される増大方法は、抗CD3/抗CD28ビーズなどのビーズの除去に対処する必要なく、例えば治療目的のための細胞のGMP生成に必要とされる閉鎖系において実施および自動化することができる。
【0546】
実施例5:培地交換して、可逆的αCD3/αCD28 Fab-Streptamer多量体でインビトロにおいて刺激した精製CD4+ Tレスポンダー細胞およびCD8+ Tレスポンダー細胞の増殖の動態
本実施例では、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した精製CD4+ Tレスポンダー細胞およびCD8+ Tレスポンダー細胞 (Tresp) の増殖の増大動態を調べた。この目的のために、2つの異なるサイズの可溶性オリゴマーStrep-tactin(登録商標)ムテインが、可溶性試薬としての役割を果たした。第1の種類のオリゴマーStrep-tactin(登録商標)は、実施例3で得られたオリゴマーストレプトアビジンムテイン (n≧3) の画分であった(本明細書では「従来のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格」とも称される、
図10Aおよび10Bでは先端が下を向いている三角形記号によって示される)。可溶性試薬として使用された第2の種類のこのオリゴマーストレプトアビジンムテインは、実施例3で得られたオリゴマーStrep-tactin (n≧3) をビオチン化ヒト血清アルブミンと反応させることによって得られた。この可溶性オリゴマー試薬は、本明細書において「大きなオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格」とも称される。
【0547】
本実施例では、400,000個の精製CD4+レスポンダーT細胞またはCD8+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、上記の通りのこれら2つの異なるオリゴマーストレプトアビジンムテインで、すなわち実施例3のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格 (1.0 mg/ml) または大きなオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格 (0.1mg/ml) のいずれかで別々に刺激した。異なる両骨格3μlに、上記の0.5μg αCD3と0.5μg αCD28 Fab断片との組み合わせを負荷した。加えて、4.5μlの実施例3のオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格に、上記のように0.5μg αCD3 Fab断片、0.5μg αCD8 Fab断片、および0.5μg αCD28 Fab断片を負荷した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3モノクローナル抗体およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されている)で刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに2つ組で播種した。3日目に培地交換しつつ細胞を37℃でインキュベートし、1日、3日、および6日後に細胞数を解析した。CD4+ Tレスポンダー細胞についての結果を
図10Aに示し、CD8+ Tレスポンダー細胞についての結果を
図10Bに示し、グラフは、CD4+ Tresp(
図10A)および
図10BにおけるCD8+ Trespについて、時点ごとに収集された細胞の数に従った増殖の程度を表す。
【0548】
図10Aからわかるように、αCD3およびαCD28 Fab断片が可逆的に固定化された可溶性試薬(多量体化作用物質)は、抗CD3/抗CD28ビーズよりも優れたCD4+ T細胞の増大をもたらした。
【0549】
図10Bから明らかであるように、多量体化作用物質を用いると、最初の6日以内は少なくとも抗CD3/抗CD28ビーズと同程度効率的にCD8+ T細胞を増大することができた。注目すべきことには、この期間において、(第1作用物質および第2作用物質としての)αCD3およびαCD28 Fab断片を有する、より大きな可溶性試薬を使用した増大実験が、これらの培養条件下で最大の増大度を示した。これもまた、「より小さな」多量体化作用物質よりも多くのT細胞に同時に結合することができ、それによって「より小さな」多量体化作用物質よりも多くのCD4+ T細胞を刺激することができる、可溶性の「より大きな」多量体化作用物質によって引き起こされた可能性がある。
【0550】
実施例6:培地交換を伴うまたは伴わない、精製CD4+ T細胞培養物およびCD8+ T細胞培養物の増大動態
本実施例では、「より小さな」多量体化作用物質ならびに陽性対照および陰性対照について、実施例4および5の統合データを投入細胞数に対して正規化した。「より大きな」多量体化作用物質に関して、正規化データは得られなかった。実施例4および5においてに説明したように、400,000~500,000個のCD4+レスポンダーT細胞またはCD8+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、多量体化作用物質の調製物(1mg/ml;0.5μg αCD3 Fab断片および0.5μg αCD28 Fab断片が固定化されている) 3μlで刺激した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズで刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに2つ組で播種した。3日目に培地交換しつつ(
図11Aおよび11Bにおける直線)または培地交換せずに(
図11Aおよび11Bにおける破線)細胞を37℃でインキュベートし、1日、3日、および6日後に細胞数を解析した。
図11Aの正規化データから明らかであるように、抗CD3/抗CD28ビーズを用いる増大は約1.8倍の増大率をもたらしたのに対して、αCD3およびαCD28 Fab断片が可逆的に固定化された「より小さな」可溶性試薬は、CD4+ T細胞の約2.5倍の増大をもたらした。したがって、多量体化作用物質を使用することで、抗CD3/抗CD28ビーズよりも、CD4+ T細胞の増大はさらに改善される。同様に、
図11Bにより、多量体化作用物質を用いて、最初の3日以内は少なくとも抗CD3/抗CD28ビーズと同程度効率的にCD8+ T細胞を増大することができたことが確認される。
【0551】
実施例7:ポリクローナル活性化/増大されたバルクCD3+セントラルメモリーT細胞 (Tcm) の増大動態および表現型
本実施例では、500,000個のCD3+CD62L+CD45RA-レスポンダーTcm細胞 (Tresp) を、0.5μg αCD3と0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせが負荷された実施例3の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物 (1mg/ml) 3μlで刺激した。さらに、0.5μg αCD3 Fab、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabが負荷されたオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物4.5μlをさらなる刺激条件として使用した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3モノクローナル抗体およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されている)で刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2のみまたは30U/ml IL-2および5ng/ml IL-15を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに播種した。3日ごとに培地交換しながら細胞を37℃でインキュベートし、7日および14日後に細胞数を解析した。グラフは、
図12AのIL-2のみを補充した培地および
図12BのIL-2およびIL-15を補充した培地における、時点ごとに収集された細胞の数に従った増殖の程度を表す。
図12Aおよび
図12Bの両方からわかるように、CD3 Fab断片およびαCD28 Fab断片が可逆的に結合している可溶性試薬は、抗CD3/抗CD28ビーズよりも優れた細胞増大をもたらす。
図12Cの、可変サイトカイン環境中で14日間培養した後のCD62LおよびCD127表面発現のフローサイトメトリー解析によってさらに示されるように、多量体化作用物質を使用する実験アプローチは、本明細書で選択された両条件下で、抗CD3/抗CD28ビーズを用いる増大よりも高い含有量のCD127発現長寿命メモリーT細胞を保持する。このことは、本発明の組成物の方法および本明細書に記載される方法のさらなる利点を示す。
【0552】
実施例8:増大されたCD8+ T細胞の収量および表現型‐可溶性試薬のサイズ変動および刺激のためのαCD8-Fab添加物の添加
本実施例では、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した精製CD8+ Tレスポンダー細胞の増大を調べた。加えて、CD8+ T細胞に関する増大の特異性を高めるためにαCD8-Fabを試薬に添加する効果を調べた。
【0553】
この目的のために、300,000個の精製CD8+レスポンダーT細胞 (Tresp)を、2つの異なるStreptactinベースの試薬、すなわち実施例3の小さな多量体化作用物質 (1mg/ml) または上記のより大きな多量体化作用物質 (0.1mg/ml) のいずれかで別々に刺激した。両方のオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬骨格3μlに、上記の0.5μg αCD3と0.5μg αCD28 Fab断片との組み合わせを負荷して、多量体化作用物質を形成した。加えて、4.5μlのより小さなオリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格に、上記の0.5μg αCD3 Fab断片、0.5μg αCD8 Fab断片、および0.5μg αCD28 Fab断片を負荷した。さらに、0.5μg αCD3 Fab断片のみまたは0.5μg αCD28 Fab断片のみで単に機能化された「より小さな」オリゴマーストレプトアビジンムテイン骨格3μlを使用した。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズで刺激したTrespを陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに2つ組で播種した。3日目に培地交換しつつ細胞を37℃でインキュベートし、6日後に解析した。
図13Aは、陰性対照と比較し、かつ陽性対照に対して正規化した、6日目に収集された細胞の数に従った増殖の程度を示す。
図13Aは、多量体化作用物質を用いるCD8+ T細胞の増大が、抗CD3/抗CD28ビーズを用いる増大よりも高収量のCD8+ T細胞をもたらすことを示す。細胞培養後のCD8表面発現およびCD45RO表面発現のFACS解析(
図13B)により、多量体化作用物質または抗CD3/抗CD28ビーズのいずれによっても、同じ表現型のCD8+ T細胞が増大されたことが示される(一元配置ANOVAを用いて様々な刺激条件を比較したところ、有意差 (n.s.) は検出されなかった)。抗CD3/抗CD28ビーズと比較した、本明細書において開示される増大方法を用いたCD8+細胞の収量の改善は、可溶性多量体化作用物質が、抗CD3/抗CD28ビーズ上に固定化された抗体よりも、細胞表面上のそれらの標的受容体により良くアクセスできるという事実に起因する可能性がある。この改善された収量は、希少な細胞集団を初期試料から増大する場合に、非常に有利になり得る。
【0554】
加えて、0.5μg αCD3および0.5μg αCD28 Fab断片の両方が一緒に固定化された試薬を用いて得られた増大の収量(
図13Bにおいて左から2番目の列)を、αCD3 Fab断片のみまたはαCD28 Fab断片のみで単に機能化された2つの試薬を用いた収量(
図13Bにおいて左から3番目の列)と比較したところ、両実験が同じ増大効率を有したことがわかる。したがって、これらの実験から、第1作用物質および第2作用物質の両方が一緒に固定化された1つの試薬を使用することは、第1作用物質のみおよび第2作用物質のみがそれぞれ負荷された2つの別個の試薬を増大のために使用することと、機能的に等価であることが示される。
【0555】
実施例9:増大されたCD8+ T細胞の収量および表現型‐様々な比率のαCD3 Fab断片およびαCD28 Fab断片が固定化された別個の可溶性試薬の力価測定
本実施例では、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に異なる量で可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激して増大されたCD8+ Tレスポンダー細胞 (Tresp) の収量および表現型を調べた。
【0556】
この目的のために、300,000個のCD8+レスポンダーT細胞 (Tresp)を、様々な量の、αCD3 FabのみおよびαCD28 Fabのみで機能化された「小さな」オリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物 (1mg/ml) の混合物(「1x」は、0.5μg αCD3のみで機能化された1.5μgオリゴマーストレプトアビジンムテインおよび0.5μg αCD28 Fab断片のみで機能化された1.5μgオリゴマーストレプトアビジンムテインに相当する)、または0.5μg αCD3 Fabおよび0.5μg αCD28 Fabが負荷されたオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物3μl、または0.5μg αCD3 Fab、0.5μg strep-tag付加αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabが負荷されたオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物4.5μlで刺激した。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズで刺激したTrespを陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに播種した。細胞を、培地交換せずに37℃でインキュベートし、5日後に解析した。
図14Aは、陰性対照と比較し、かつ陽性対照に対して正規化した、5日目に収集された細胞の数に従った増殖の程度を示す。
図14Aは、様々な多量体化作用物質を用いるCD8+ T細胞の増大が、抗CD3/抗CD28ビーズを用いる増大よりも高収量のCD8+ T細胞をもたらすことを示す(特に、5x条件の累計試薬量によって、特に経時的に細胞の最適な増大が生じ/細胞分裂を開始させることにより合計細胞が増加した)。細胞培養後のCD8表面発現およびCD45RO(
図14B)表面発現のFACS解析により、多量体化作用物質または市販の抗CD3/抗CD28ビーズのいずれによっても、同じ表現型のCD8+ T細胞が増大されたことが示される。
【0557】
実施例10:刺激のためにαCD8-Fabを添加して増大されたCD3+ T細胞の収量およびサブセット組成
本実験は、可溶性試薬として機能する実施例3の可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に可逆的に固定化されたαCD3/αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した精製CD3+ Tレスポンダー細胞の増大を示す。1つの実験では、可逆的αCD3/αCD28多量体化作用物質でインビトロにおいて特定のT細胞亜集団を優先的に刺激することが可能であるかどうかを試験するために、αCD3/αCD28 Fab断片に加えて、IBA GmbH、Gottingen, Germanyから市販されているαCD8 Fab断片(カタログ番号6-8000-203)を可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に固定化した。より詳細には、500,000個の精製CD3+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、0.5μgのαCD3と0.5μgのαCD28 Fabとの組み合わせが負荷されたオリゴマーストレプトアビジンムテインの調製物 (1mg/ml) 3μlで刺激した。代替アプローチとして、4.5μlのオリゴマーストレプトアビジンムテインに0.5μg αCD3 Fab、0.5μg strep-tag付加αCD8 Fab、および0.5μg strep-tag付加αCD28 Fabを負荷した。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3モノクローナル抗体およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されているビーズ)で刺激したTrespを陽性対照とした。
図15Aからわかるように、αCD3 Fab断片、αCD28 Fab断片、およびまたαCD8 Fab断片が可逆的に負荷された試薬は、最大数の増大されたCD3+ T細胞をもたらした。増大された細胞の数は1x、1x10
6個であり、収量は、市販の抗CD3/抗CD28ビーズを用いるこれらのT細胞の増大よりも約30%高かった。加えて、およびより重要なことには、
図15Bに示されるように、αCD3 Fab断片、αCD28 Fab断片、およびαCD8 Fab断片を有するこの試薬を用いた場合、抗CD3/抗CD28ビーズ、または本明細書に記載されるような第1作用物質および第2作用物質としてαCD3 Fab断片およびαCD28 Fab断片のみを有する可溶性試薬を用いた増大の両方と比較して、CD8+ T細胞の量が最も多かった。したがって、本実験もまた、所望の細胞集団に一次活性化シグナルを提供する第1作用物質、および任意で共刺激シグナルを提供する第2作用物質に加えて、所望の細胞集団の活性化に特異的なさらなる作用物質を試薬上に固定化することができるという、本明細書に記載される組成物および方法の利点を示す。したがって、そのようにすることによって、本明細書に記載される組成物および方法は、例えば種々の異なる亜集団を含む試料から任意の所望の細胞集団または細胞亜集団を優先的に増大するまたは選択的に濃縮する可能性を提供する。
【0558】
実施例11:Jurkat細胞における差次的細胞内カルシウム動員の解析
ここでは、αCD3抗体クローンOKT3またはStrep-tactin(登録商標)で多量体化されたOKT3のFab断片のいずれかで標識されたJurkat細胞において誘導された差次的細胞内カルシウム動員のリアルタイムフローサイトメトリー (low-cytometric) 解析について調べた。
【0559】
この目的のために、Jurkat細胞にカルシウム感受性色素Indo-1-AMを負荷し、αCD3モノクローナル抗体OKT3(ハイブリドーマ細胞株OKT3によって産生、上記を参照されたい、黒四角)、またはフィコエリトリンと蛍光的にコンジュゲートされた可溶性Strep-Tactinにそのストレプトアビジン結合ペプチドを可逆的に結合させることによって多量体化されたαCD3 Fab断片(親細胞株OKT3に由来)のいずれかを注入することによって、カルシウム放出を誘発した。インタクトな多量体OKT3 Fab-Strep-Tactin複合体の場合、親抗体クローンと同一期間にわたってカルシウム放出が誘発された(濃い灰色の三角形)。細胞の活性化は、PBS陰性対照(白色の倒立三角形)の注入と同じく、D-ビオチンで処理し、予め解離させたFab-Strep-Tactin複合体(薄い灰色の丸)の注入によって、完全に回避され得た。イオノマイシンの適用を、カルシウム流入の陽性対照とした。細胞内Ca
2+濃度の時間分解変化を、FL6/FL7比の変化に基づいてフローサイトメトリーによってモニターした。
図16Aから、親抗体OKT3およびOKT3の多量体化一価Fab断片の両方がカルシウム放出をもたらすことがわかり、このことはOKT3の多量体化一価Fab断片が本質的に親抗体と同様に機能的であることを意味する。注目すべきことには、Streptactin-OKT3 Fab断片を添加する前に、OKT3 Fab断片が固定化されたStrep-tactinにビオチンを添加した場合、多量体OKT3 Fab断片はカルシウム放出を誘発することができなかった。この場合、ビオチンは、多量体形成物質としてのStrep-tactinとOKT3 Fab断片との間に形成された可逆的結合を破壊した。したがって、一価Fab断片は多量体形成物質から外され、解離後には、Jurkat細胞のCD3に結合することによってカルシウム放出を誘発することができなかった。
【0560】
図16Bに示される実験では、indo-1-AMで標識されたJurkat細胞を、
図16Aに記載されるように、OKT3由来のαCD3 Fab-Strep-Tactin複合体によって活性化した。インタクトな(上のグラフ)または予め解離させた複合体(下のグラフ)の注入を、それぞれ陽性対照または陰性対照とした。加えて、インタクトなFab-Strep Tactin複合体で細胞を刺激し、続いて(活性化ピーク付近のt-=140sにおいて)D-ビオチンを注入したところ、αCD3 Fab多量体シグナル伝達が急激に崩壊した(中央のグラフ)。予め解離させたFab複合体群へのイオノマイシンの注入を陽性対照とした。データは、3つの異なる実験の代表である。重要なことには、
図16Bは、D-ビオチンを試料に添加することによって、Strep-tactin多量体形成物質からFab断片が速やかに外され、それによってカルシウム刺激の継続中であってもカルシウム放出が効率的に終了することを示し、解離したOKT3 Fab断片がもはや生物学的活性を持たないことを実証する。同様に、多量体OKT3 Fab断片は、Streptactin-OKT3 Fab試料をJurkat細胞に添加する前にStrep-tactin-OKT3 Fab断片多量体にビオチンを添加した場合にも、カルシウム放出を誘発することができなかった。
【0561】
実施例12:CD3 Fab多量体による細胞の可逆的染色
本実施例では、CD3 Fab多量体による細胞の可逆的染色について調べる。新たに単離されたPBMCを、αCD3モノクローナル抗体クローンOKT3(左のドットプロット、Fab多量体の親クローン)または同族のフィコエリトリン (PE) 標識OKT3 Fab多量体のいずれかで染色し、D-ビオチンで処理する前(左から2番目のカラム)または後(中央のカラム)に解析した。次いで、新たなPE標識Strep-Tactin(登録商標)を用いて、その後の洗浄段階後に、残存するFab単量体を検出した(右から2番目のカラム)。可逆的に染色された細胞の二次Fab多量体染色を陽性対照とした(右のカラム)。生/死を判別するためのヨウ化プロピジウム (PI) による染色において陰性である生存CD3細胞のみを
図17に示す。ドットプロット中の数字は、ゲート内の細胞のパーセンテージを示す。本実験により、多量体形成試薬としてのStreptactinで多量体化された抗CD3 Fab断片によるCD3+ PBMCの染色が、D-ビオチンの添加によって完全に可逆的であること、および一価Fab断片のみではPBMC上に存在するCD3分子に結合しないことが示される。
【0562】
実施例13:CD28 Fab多量体による細胞の可逆的単離
本実施例は、Strep-Tactin(登録商標)磁気粒子(この磁気粒子は、IBA GmbH Gottingen, Germanyから入手可能である)で多量体化された抗CD28 Fab断片の可逆的結合による細胞の単離を示す。上記の実施例2に記載される抗体CD28.3に由来するFab断片をこの目的のために使用した。本質的に国際特許出願WO2013/011011に記載されているように、新たに単離されたPMBCからFab多量体磁気細胞選択によってCD28+細胞を選択/単離した。選択の前に、対照選択としての同族蛍光αCD28多量体(左のドットプロット)または免疫グロブリンカッパ軽鎖に対する抗体(左から2番目のドットプロット、α-IgカッパmAb)のいずれかで、細胞を対照染色した。選択後、CD28+細胞をD-ビオチンで処理し、次に洗浄して磁気ビーズおよびFab単量体を除去した。次に、遊離したCD28+細胞をCD28 Fab多量体(右から2番目のドットプロット)またはα-IgカッパmAb(右のドットプロット)のいずれかで(再)染色して、残存している可能性のあるFab単量体を検出した。生存(PI
陰性)CD3+細胞のみを示す。ドットプロット中の数字は、ゲート内の細胞のパーセンテージを示す。
図18は、CD28+細胞が、このような多量体化抗CD28 Fab断片を用いてPMBCから単離され得ること、および抗CD28 Fab単量体を含む単離試薬がすべて、選択後に除去され得ることを示す。
【0563】
実施例14:可逆的aCD3/aCD28 Fab-Streptamer多量体でインビトロにおいて刺激した精製CD4+ Tレスポンダー細胞およびCD8+ Tレスポンダー細胞の活性化後の早期クラスター形成
本実施例では、400,000個のCD4+レスポンダーT細胞またはCD8+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、0.5μg αCD3 Fabと0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせが負荷されたオリゴマーStreptactin多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) 3μlで刺激した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズで刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに2つ組で播種した。細胞を37℃でインキュベートし、1日および2日後に顕微鏡で解析した。CD4+ Tresp(
図19A)およびCD8+ Tresp(
図19B)の刺激を、それぞれ抗CD3/抗CD28ビーズ(中央の列)およびStreptamer多量体(下の列)について示す。写真は、クラスター形成の程度を表す:見やすくするために、
図19Aおよび
図19Bでは、可溶性ストレプトアビジムテインオリゴマーによる刺激について、例示的なクラスターを丸で示す。Dynabead刺激におけるクラスターは、濃い色の刺激粒子の蓄積によって容易に視認される。明らかであるように、可溶性オリゴマー多量体形成試薬を使用する本発明の増大方法を用いた場合に、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の両方について、早期にクラスターが形成された。
【0564】
実施例15:バルクCD3+セントラルメモリーT細胞からのTcmレスポンダー細胞の選択的抗原特異的増大(動態および表現型)
本実施例では、精製CD3+CD62L+CD45RA-Tcmレスポンダー細胞からの選択的抗原特異的(Ag特異的)増大の動態および表現型を調べた。
【0565】
より詳細には、CD3+CD62L+CD45RA-Tcmレスポンダー細胞を、ペプチド:MHC分子複合体(細胞に一次活性化シグナルを提供する第1作用物質として作用)およびαCD28 Fab断片(細胞の表面上の補助分子を刺激する第2試薬として作用)の両方でインビトロにおいて刺激した。抗原特異的ペプチドとMHC分子との複合体およびαCD28 Fab断片はいずれも、実施例3に記載される可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン (n≧3) 上に可逆的に固定化した。抗原特異的増大のために使用されたペプチドは、サイトメガロウイルス (CMV) に特異的であるHLA-C7/IE-1エピトープを表す前初期1タンパク質 (Ameres et al, PLOS Pathogens, May 2013, vol. 9, issue 5, e1003383に記載) のアミノ酸309~317であるペプチド
であった。このペプチドを提示するMHC I分子は、α鎖(重鎖)のC末端において、ストレプトアビジン結合ペプチド(IBA GmbH、Gottingen, Germanyから「Twin-Strep-tag(登録商標)」として市販されている
を有する。
【0566】
この目的のために、500,000個のCD3+CD62L+CD45RA-レスポンダーT
CM細胞 (Tresp) を、ストレプトアビジン結合ペプチドを備えた0.5μgのペプチド:MHCクラスI複合体および0.5μgの上記αCD28 Fabで機能化された可溶性オリゴマーStreptactin多量体形成試薬の調製物3μlを用いてAg特異的に刺激した。代替法として、Streptactin多量体形成試薬の調製物4.5μlに、0.5μgのこれらペプチド:MHCクラスI複合体、0.5μg CD8 αFab、および0.5μg αCD28 Fabを負荷した。比較のために、0.5μg αCD3 Fabと0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせが負荷されたStreptactin多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) 3μlを用いて、ポリクローナル刺激を実施した。さらに上記の代替の刺激条件として、0.5μg αCD3 Fab、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabが可逆的に負荷されたStreptactin多量体形成試薬の調製物4.5μlを使用した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3モノクローナル抗体およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されたビーズ)でポリクローナル刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2および5ng/ml IL-15を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに播種した。3日ごとに培地交換しながら細胞を37℃でインキュベートし、7日および14日後に細胞数を解析した。(CMVの)HLA-C7/IE-1エピトープのためのペプチド:MHC-I複合体が固定化された可溶性strept-tactinオリゴマーを介して刺激/増大されたAg特異的細胞の画分についての例示的なフローサイトメトリー解析(
図20A)により、これらの抗原特異的T細胞が特異的に増大されたことが示される。
図20B~
図20Eのグラフ(
図20Aに示される増大実験と同様に、時点ごとに収集されたペプチド:MHCI多量体陽性細胞の数に従って、異なるAg特異性の増大の程度を表す)は、Ag特異的ペプチドおよびMHC 1分子の各複合体を使用する多量体形成試薬が最大数の増大細胞を提供することを示し(HLA-A2402によって拘束されるCMVのpp65エピトープ(アミノ酸341~350
)を認識するAg特異的細胞の細胞数の20倍増加(
図20Bを参照されたい)から、CMVのHLA-B7/IE-1
309~317エピトープ
を認識するAg特異的細胞の数の98倍増加(
図20Eを参照されたい)に及ぶ)、それによって本発明の増大方法がAg特異的細胞の増大に十分に適用可能であることを示す。最後に、
図20Fに示される、(アデノウイルスの)HLA-B7/Hexon5エピトープに関する14日間の培養後のCD62LおよびCD127の表面発現の例示的なフローサイトメトリー解析から、本発明の可溶性多量体形成試薬を用いる実験アプローチが、ポリクローナルのおよびAg特異的な刺激条件において、より高い含有量のCD127発現長寿命メモリーT細胞を保持することがさらに確認される。
【0567】
実施例16:バルクセントラルメモリーT細胞の選択的Ag特異的増大の動態および表現型
本実施例では、可溶性オリゴマーストレプトアビジンムテイン上に第1作用物質および第2作用物質として可逆的に固定化されたa) 抗原特異的ペプチドMHC I複合体およびb) αCD28 Fab断片でインビトロにおいて刺激した精製CD3+CD62L+CD45RA-Tcmレスポンダー細胞からの選択的Ag特異的増大の動態について調べる。
【0568】
この目的のために、500,000個のCD3+CD62L+CD45RA-レスポンダーTcm細胞 (Tresp) を、ストレプトアビジン結合ペプチドを備えた0.5μgのペプチド:MHCクラスI複合体(特異的ペプチドは、HLA-B07によって拘束されるアデノウイルスのHexon5タンパク質のアミノ酸114~124
を表す)および0.5μg αCD28 Fabで機能化されたStreptactin多量体形成試薬の調製物3μlを用いてAg特異的に刺激した。代替法として、Streptactin多量体形成試薬の調製物4.5μlに、0.5μgのこのペプチド:MHCクラスI複合体、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabを負荷した。比較のために、0.5μg αCD3 Fabと0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせが負荷されたStreptactin多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) 3μlを用いて、ポリクローナル刺激を実施した。さらに上記の代替の刺激条件として、0.5μg αCD3 Fab、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabが負荷されたStreptactin多量体の調製物4.5μlを使用した。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズでポリクローナル刺激したTresp細胞を陽性対照とした。Tresp細胞を、30U/ml IL-2および5ng/ml IL-15を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに播種した。3日ごとに培地交換しながら細胞を37℃でインキュベートし、7日および14日後に細胞数を解析した。
図21に示される写真は5日目のクラスター形成の程度を表し、例示的なAg特異的刺激がアデノウイルスのHLA-B7/Hexon5エピトープについて示される。
図21からわかるように、元のCD3+CD62L+CD45RA-Tcmレスポンダー集団から、このようなアデノウイルス抗原特異的細胞を特異的に増大することができた。
【0569】
実施例17:aCD19-CARが形質導入されたJurkat細胞のStreptamer多量体による刺激後の細胞内シグナル伝達カスケードの活性化
本実施例では、腫瘍特異的キメラ抗原受容体 (CAR)、すなわちこの場合CD19を発現するように改変されており、かつ可溶性多量体形成試薬として実施例3のオリゴマーStrep-tactin(登録商標)を用いて刺激した形質導入Jurkat細胞の細胞内シグナル伝達カスケードの活性化を調べた。
【0570】
この目的のために、300,000個のJurkatレスポンダー細胞 (Jresp) を、(A) 様々な量の、本明細書に記載されるαCD3 Fab断片およびαCD28 Fab断片で機能化されたStreptactin多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) の混合物(「x1」は、0.5μg αCD3 Fabおよび0.5μg αCD28 Fabで機能化された3μg Streptactin多量体形成試薬に相当する‐これは「ポリクローナルなStreptactinベースの多量体形成試薬」を提供する)、あるいは (B) 0.5μg (x1) もしくは1μg (x2) のCD19の細胞外ドメイン (ECD) で機能化されたStreptactin多量体形成試薬の調製物3μl(αCD19-CARの天然リガンド‐これは「CAR特異的なStreptactinベースの可溶性多量体形成試薬」を提供する)、またはαCD19-CAR内のIgG4スペーサーを認識する0.5μg (x1) もしくは1μg (x2) のαIgGが負荷されたStreptactin多量体形成試薬の調製物3μl(これもまた「CAR特異的なストレプトアビジンムテインベースの多量体形成試薬」を提供する)で刺激した。ヘキサヒスチジンタグを備えたCD19のECDは、Sino Biological/Life technologiesから入手し (SEQ ID NO: 49)、CD19のECDとアダプター分子His-STREPPER(IBA GmbH、Germany、注文番号2-0920-005)を1:1の分子比率で混合し、室温で15分間インキュベートすることによって、ストレプトアビジンベースの多量体形成試薬に結合させるために機能化した。His-STREPPERアダプター分子は、ヘキサヒスチジンタグに結合するキレート部分およびストレプトアビジン結合ペプチドを含み、それによって標的分子、この場合CD19のECDに、ストレプトアビジンムテインベースの多量体形成試薬に可逆的に結合し得るストレプトアビジン結合ペプチドを一時的に提供する。抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3モノクローナル抗体およびαCD28モノクローナル抗体が不可逆的に固定化されているビーズ)またはPMAおよびイオノマイシンで刺激したJrespを、陽性対照とした。Jresp細胞を、30U/mL IL-2を補充した細胞培養液200μl中、1.5mL Eppendorfチューブに播種した。細胞を37℃でインキュベートし、0分~20分間刺激した後、氷上に置き、溶解させた。リン酸化ERKの検出は、活性MAPKのシグナル伝達を示し、ハウスキーパーβ-アクチンの染色は、条件および時間当たり等量の総タンパク質量が負荷されたことを示す。「ポリクローナルStreptactin多量体形成試薬」を介したJurkat細胞の活性化を示す
図22Aと2つの「CAR特異的なStreptactinベースの多量体形成試薬」を介したJurkat細胞の活性化を示す
図22Bとの比較からわかるように、Jurkat細胞は、CD19特異的キメラ抗原受容体に対するCD19細胞外ドメインの結合を介して活性化/増大され得る。T細胞の遺伝的下流プロセシングは、ほとんど、予め選択された細胞集団に対してのみ行われるため、IgG4スペーサードメイン(これは、異なる特異性を有する様々なCAR内で保存されている)を介した、導入されたCARの架橋を介した包括的な活性化は、これらのインビトロ細胞プロセシング状況における可逆的な細胞刺激/増大への適用性を広げる。
【0571】
したがって、本実験により、原則として、細胞集団に一次活性化シグナルを提供する作用物質(リガンド)の結合によって活性化される任意の細胞集団を、本明細書に記載されるように多量体形成試薬上に可逆的に固定化された第1作用物質を用いて増大することができることが示される。
【0572】
実施例18:単一プールからのTcmレスポンダー細胞の並列抗原特異的増大
本実施例では、複数の可逆的ペプチド:MHC/αCH28 Fab-Streptamer多量体でインビトロにおいて刺激したTレスポンダー細胞の単一プールからの並列抗原特異的(Ag特異的)増大の動態を調べる。
【0573】
500,000個のCD3+CD62L+CD45RA-レスポンダーTcm細胞 (Tresp) を、各特異性について、ストレプトアビジン結合ペプチドを有する0.5μgの各ペプチド:MHCクラスI複合体および同様にストレプトアビジン結合ペプチドを有する0.5μg αCD28 Fabで機能化されたStreptactin多量体3μlを用いて、複数のAg特異性について同時に刺激する。代替アプローチとして、各特異性について、本明細書に記載される、ストレプトアビジン結合ペプチドを有する0.5μgペプチド:MHCクラスI複合体、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabで機能化されたStreptactinベースの多量体形成試薬4.5μlを使用する。比較のために、0.5μg αCD3 Fabと0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせが可逆的に負荷されたStreptactinベースの多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) 3μlを用いて、ポリクローナル刺激を実施する。さらに上記の代替の刺激条件として、0.5μg αCD3 Fab、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fab(それらの各々がストレプトアビジン結合ペプチドを有する)が可逆的に負荷されたStreptactinベースの多量体形成試薬の調製物4.5μlを使用することができる。未処理(非刺激)のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3 mAbおよびαCD28 mAbでコーティングされたビーズ)でポリクローナル刺激したTresp細胞を陽性対照とする。Tresp細胞を、30U/ml IL-2および5ng/ml IL-15を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに播種する。3日ごとに培地交換しながら細胞を37℃でインキュベートし、7日および14日後に細胞数を解析する。
【0574】
実施例19:αCD3/αCD8/αCD28 Fab断片で可逆的に機能化されたストレプトアビジンベースの多量体形成試薬でインビトロにおいて刺激したCD3+ Tレスポンダー細胞のうちのCD8+ T細胞の優先的増殖
300,000個のCD3+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、0.5μg αCD3 Fabと0.5μg αCD28 Fabとの組み合わせが負荷されたStreptactin多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) 3μlもしくは大きなStreptactin骨格を用いる多量体形成試薬の調製物 (0.1mg/ml) 3μl、または0.5μg αCD3 Fab、0.5μg αCD8 Fab、および0.5μg αCD28 Fabが負荷されたStreptactinベースの多量体形成試薬の調製物4.5μl、または0.5μg αCD3 Fabのみおよび0.5μg αCD28 Fabのみ(各Fab断片は同様にストレプトアビジン結合ペプチドを有する)を有するStreptactinベースの多量体形成試薬の調製物の混合物3μlで刺激する。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3 mAbおよびαCD28 mAbでコーティングされたビーズ)で刺激したTrespを陽性対照とする。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに2つ組で播種する。細胞を37℃でインキュベートし、3日後に培地交換し、6日後に解析する。
【0575】
実施例20:αCD3およびαCD28 Fab断片で可逆的に機能化されたストレプトアビジンベースの多量体形成試薬でインビトロにおいて刺激したCD3+ Tレスポンダー細胞のうちのCD8+ T細胞の優先的増殖
300,000個のCD3+レスポンダーT細胞 (Tresp) を、様々な量の、αCD3 Fab断片のみおよびαCD28 Fab断片のみで機能化されたStreptactinベースの多量体形成試薬の調製物 (1mg/ml) の混合物(0.5μg αCD3 Fab断片のみで機能化されたStreptactinベースの多量体形成試薬1.5μg、および0.5μg αCD28 Fab断片のみで機能化されたStreptactinベースの多量体形成試薬1.5μg)、または様々な量の、αCD8 Fab断片を伴ってもしくは伴わずにαCD3 Fab断片およびαCD28 Fab断片で機能化されたStreptactinベースの多量体形成試薬の調製物の混合物(各Fab断片はここでもストレプトアビジン結合ペプチドを有する)(αCD8 Fab断片を伴わずに0.5μg αCD3 Fab断片および0.5μg αCD28 Fab断片で機能化されたStreptactinベースの多量体形成試薬3μg、または0.5μg αCD3 Fab断片、0.5μg αCD8 Fab断片、および0.5μg αCD28 Fab断片が負荷されたStreptactin多量体形成試薬の調製物4.5μl、この場合Fab断片は同様にストレプトアビジン結合ペプチドを有する)で刺激する。未処理のTresp細胞を陰性対照とし、抗CD3/抗CD28ビーズ(αCD3 mAbおよびαCD28 mAbでコーティングされたビーズ)で刺激したTrespを陽性対照とする。Tresp細胞を、30U/ml IL-2を補充した細胞培養液1ml中、48ウェルプレートに播種する。細胞を37℃でインキュベートし、3日後に培地交換し、6日後に解析する。
【0576】
実施例21:オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬の形質導入アジュバントとしての使用
オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬を生成させ、入手可能な形質導入増強アジュバントの存在下と比較して、この試薬の存在下でT細胞の形質導入増強を示す研究において形質導入アジュバント活性を示すことを実証した。
【0577】
オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬の産生
実質的に実施例1に記載されるように、スルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、製品#22122 Thermo Scientific)およびイミノチオラン(製品# 26101 Thermo Scientific)を製造業者の説明書(Thermo Scientific)に従って用いて、Strep-tactin(登録商標)m1と呼ばれるストレプトアビジンムテインを重合することによってストレプトアビジンムテインのオリゴマー形態を調製した(SEQ ID NO:6に示されるムテインアミノ酸配列を含むストレプトアビジンホモ四量体、例えば米国特許第6,103,493号およびVoss and Skerra (1997) Protein Eng., 1:975-982を参照されたい)。オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン分子をサイズ排除クロマトグラフィーによって単量体(未反応)および二量体のストレプトアビジンムテインから分離した。
【0578】
この研究では、T細胞表面発現分子に特異的な結合ドメインを含み、その重鎖カルボキシ末端にストレプトアビジン結合ペプチドタグを含む1つまたは複数のFabフラグメントとオリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬を可逆的に結合させた。この研究では、(1)抗CD3および抗CD28 Fabフラグメントならびに(2)抗CD8 Fabフラグメントをそれぞれ可逆的に結合させた、2つの異なるオリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬を使用した。この研究では、タグは、オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬の個別のストレプトアビジンムテイン部分へのFabフラグメントの可逆的結合を可能にしたアミノ酸配列
を有する2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続配置を有した。可逆的結合を引き起こすために、ペプチドタグ付きFabフラグメントをおよそ室温でオリゴマー性ストレプトアビジンムテインと混合し、タグとオリゴマー試薬上の結合部位との間の相互作用を介してフラグメントを試薬と可逆的に結合させた。
【0579】
抗体コンジュゲート型磁性粒子を用いたT細胞の選択および刺激
免疫親和性ベースの選択を介してヒト末梢血単核細胞(PBMC)試料からT細胞を単離した。形質導入の前に、抗CD3および抗CD28抗体フラグメントをコーティングした磁性ビーズとともに37℃で約72時間培養することによって、選択された細胞を刺激した。
【0580】
形質導入および増殖
結果として生じた、刺激された集団の細胞を、以下のような様々な条件で形質導入に供した。
【0581】
刺激されたT細胞約2.1×106個を24ウェルプレートの個別のウェルに体積200uLで添加した。異種分子(この場合は例示的なキメラ抗原受容体(CAR))をコードする核酸を含むガンマレトロウイルスベクター粒子を、ポリカチオン形質導入アジュバント(この場合は硫酸プロタミン)(1)、およびフィブロネクチン由来形質導入アジュバント、この場合はRetroNectin(登録商標)(組換えフィブロネクチンフラグメントベースの形質導入アジュバント)(2)、またはそれぞれ抗CD3/CD28 Fabフラグメントもしくは抗CD8 Fabフラグメントと可逆的に結合している2つのオリゴマー性ストレプトアビジンムテインベースの試薬(それぞれ(3)および(4))のうちの1つと混合した。次に、それぞれの混合物の各々を、刺激されたT細胞集団の細胞に、異なる条件にわたり同じまたはおよそ同じ細胞数/液体体積で、細胞1つあたり3.6感染単位(IU)のウイルスベクター粒子の濃度で添加した。ウェル1つあたりの最終体積を1.1mLに調整した。結果として生じた各組成物を遠心分離に約1時間供し、次に37℃で24時間インキュベーションした。次に、培地およびIL-2の存在下で細胞を37℃で増殖させた。形質導入の24および72時間後に培地を交換し、細胞を継代して体積添加によって標的細胞1×106個/mLにした。
【0582】
活性化後8日目に(約5.7回の集団倍加後)、各組成物中の有核細胞の総数を決定した。形質導入効率の尺度として、フローサイトメトリーベースのアッセイを用いて、CARの表面発現についても陽性であった組成物中の生存可能CD3+細胞のパーセンテージを決定した(この場合、CARの細胞外ドメイン(ECD)内のマウス可変領域部分に特異的に結合している標識ヤギ抗マウス抗体を使用して検出した)。
【0583】
表1に示される条件(1)~(4)についての結果は、形質導入の間にオリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬が存在することが、ポリカチオンまたはフィブロネクチンベースのアジュバントのいずれかの存在と比較して、形質導入効率の増加を招いたことを示したが、これは、このような試薬が無毒の形質導入アジュバントとして有用であることと矛盾しなかった。抗CD3/抗CD28 Fabと可逆的に結合しているオリゴマー試薬(3)を使用したとき、抗CD8 Fabフラグメントと可逆的に結合しているオリゴマー試薬(4)と類似の形質導入効率が観察された。この観察によって、8日目に異種CARを発現している生存T細胞のパーセンテージが増加した原因が、(3)の試薬と可逆的に結合しているCD3 FabおよびCD28 Fabによって媒介される活性化または刺激効果よりも、むしろ、他の形質導入アジュバントと比べた形質導入の増強および/または毒性作用の低下であったことが示された。
【0584】
【0585】
実施例22:T細胞活性化およびウイルス形質導入の増大のための単一のオリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬の使用
別の条件のセット(5)では、抗CD3/抗CD28コーティング済み磁性粒子よりも、抗CD3/抗CD28 Fabフラグメントと可逆的に結合しているオリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬の存在下で刺激を行ったことを除き、本質的に実施例21の(1)~(4)について記載されたように、選択されたT細胞を24~48時間刺激した。この条件について、1.0IUウイルス/細胞の比率を使用し、さらなる形質導入アジュバントを(刺激の間に使用したオリゴマー試薬以外に)添加しなかったことを除き、ガンマレトロウイルス粒子の形質導入を実施例21に記載されたように実施した。
【0586】
実施例21に記載されたようにアッセイして、CARについて表面陽性であった生存T細胞のパーセンテージを評価することによってd.8での形質導入効率を測定した。結果(表1における(1)および(2)についての結果と比較して)を表2に示す。結果により、試薬を除去せずに、別のまたはさらなる形質導入アジュバントを添加せずにオリゴマー性抗CD3/抗CD28結合型ストレプトアビジンムテイン試薬の存在下で細胞を刺激した後に、T細胞の効果的な形質導入が示された。そのうえ、この条件(5)で使用されたウイルス量(感染単位の数/細胞)の約70%の減少にもかかわらず、形質導入の開始時の抗CD3/抗CD28コーティング済み磁性ビーズを用いた刺激および他の形質導入増強アジュバントの添加を含む条件(1および2)と比較して、類似の形質導入効率が観察された。したがって、オリゴマー試薬が、形質導入の開始の1日または複数日前に添加され(形質導入の前または間にいかなる追加的またはさらなるアジュバントも添加せずに)、ストレプトアビジンムテインオリゴマー試薬の使用は、他の形質導入増強アジュバントと類似の程度に形質導入効率を増大させた。
【0587】
他の研究では、様々な刺激試薬を用いたT細胞の活性化に続く、様々な形質導入アジュバントの存在下での形質導入によって、抗CD3/抗CD28結合型オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬が形質導入前のT細胞活性化のために使用された場合、アウトプット組成物において増大した形質導入効率(ウイルスベクターによってコードされる異種タンパク質を発現している生存細胞のパーセンテージとして測定)が観察され、これは、オリゴマー試薬が、形質導入を開始する数時間または数日前から含まれていた場合であっても、形質導入を増強することができ、フィブロネクチンフラグメントベースの作用物質またはポリカチオン形質導入増強作用物質のような他の形質導入増強アジュバントによる増強と相加的であることができたという結論と矛盾しなかったことが示された。これらの結果により、単一のオリゴマー試薬が、本研究において形質導入の前の単一の時点で添加された場合に、T細胞の活性化およびウイルス形質導入を増強または促進するために使用することができたことが実証された。
【0588】
【0589】
実施例23:オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬を用いた細胞の標的サブセットの形質導入増強の評価
T細胞のT細胞サブセットに発現されたCD8細胞表面マーカーに特異的なFabフラグメントに可逆的に結合している、実施例21記載のストレプトアビジンムテインオリゴマー試薬を、バルクT細胞組成物の形質導入の間に含めた。ヒト血液由来試料からの免疫親和性ベースの選択によって単離されたバルク(CD4+およびCD8+)T細胞を含む組成物を、実施例21に記載されているように抗CD3/抗CD28磁性ビーズの存在下で24~48時間刺激した。
【0590】
刺激後、形質導入を開始した。CARをコードするガンマレトロウイルスベクター粒子を抗CD8結合型オリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬またはポリカチオンベースの形質導入アジュバントと混合した。刺激されたT細胞試料にウイルス/アジュバント混合物を添加して、形質導入を促進し、続いて実質的に実施例21記載のように増殖を行った。実施例21のように表面マーカーおよびCARの表面発現を評価するためにフローサイトメトリーを使用した。各条件について、CARを表面発現した生存T細胞のパーセンテージを、CAR表面陽性の生存CD4+ T細胞のパーセンテージと比較した。
【0591】
結果を
図23に示す。この図は、生存T(CD3+ゲート通過)細胞のCAR(x軸)に対するCD4の表面発現レベル(y軸)を示している。結果により、形質導入がポリカチオン形質導入アジュバントの存在下で実施された場合に観察された効率と比較して、CD8+ T細胞(CD4+ T細胞と比較して)において選択的に増加した形質導入効率(異種産物(CAR)を発現している生存細胞のパーセンテージによって測定された)が示された。
【0592】
模擬形質導入対照の細胞について、この研究では検出可能なCARの発現は観察されなかった。これは、異種核酸の形質導入を評価するためのこのアッセイの特異性を示している。
【0593】
これらの結果により、オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬は、形質導入効率を増加させることができることに加えて、オリゴマー性ストレプトアビジンムテイン試薬に可逆的に固定化されたFabにより付与されたこれらの試薬の特異性を使用して、混合細胞集団内のCD8+ 細胞の形質導入を選択的に増強することができたことが実証された。これらの結果は、例えば、標的分子を含まないまたは発現しない1つまたは複数の他の細胞集団が存在する混合細胞集団において、標的細胞の形質導入を選択的に増強または促進するための、標的分子に特異的な可逆的に結合している抗体を含むオリゴマー試薬が有用であることと矛盾しない。
【0594】
本発明は、開示される特定の態様に範囲が限定されるよう意図されておらず、特定の態様は、例えば本発明の様々な局面を説明するために提供される。記載される組成物および方法の様々な改変は、本明細書中の説明および教示から明らかとなるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内に入るよう意図される。
【0595】
【配列表】