(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】リモートコントローラ、機器設定方法および機器設定システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20221216BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20221216BHJP
H04B 11/00 20060101ALI20221216BHJP
F24F 11/50 20180101ALI20221216BHJP
【FI】
H04Q9/00 311V
H04Q9/00 301C
H04Q9/00 301D
H04Q9/00 311P
H04Q9/00 311Q
H04M1/00 U
H04B11/00 C
F24F11/50
(21)【出願番号】P 2019001771
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】那谷 和輝
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230008(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/115317(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103269409(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04M 1/00
H04B 11/00
F24F 11/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象装置を遠隔制御するリモートコントローラであって、
伝送データに基づいて搬送音波が周波数変換された音波信号を外部の携帯端末から受信する音波通信部と、
受信した前記音波信号を解析し、解析結果に従って前記リモートコントローラおよび前記制御対象装置の少なくとも一方の設定を行う制御部と、
を備え
、
前記音波通信部は、
周囲の音波をアナログ値として出力する集音部と、
前記集音部が出力する前記アナログ値をデジタル値へ変換して前記制御部の第1ポートへ入力するデジタル変換回路と、
前記集音部が出力する前記アナログ値からスタート信号を取り出して前記制御部の第2ポートへ入力するスタート信号検知部と、
を有し、
前記制御部は、前記第2ポートに前記スタート信号が入力されたことを検知するまでは、前記第1ポートに入力された音波信号の解析処理を停止する
リモートコントローラ。
【請求項2】
前記制御部は、前記音波通信部が前記携帯端末から設定値を要求する要求信号を受信すると、前記携帯端末から要求された設定値を含む伝送データを生成し、
前記音波通信部は、前記伝送データに基づいて搬送音波を周波数変換した音波信号を生成して送信する請求項1に記載のリモートコントローラ。
【請求項3】
前記音波通信部は、可聴域の音波信号を送受信可能である請求項1または2に記載のリモートコントローラ。
【請求項4】
前記音波通信部は、超音波の音波信号を送受信可能である請求項1または2に記載のリモートコントローラ。
【請求項5】
前記スタート信号検知部は、
前記集音部が出力する前記アナログ値を、前記スタート信号の使用帯域に基づいて予め定められた通過帯域でフィルタリングするフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力波形に含まれる包絡線を予め定められた閾値で取り出して前記第2ポートへ入力する包絡線検波回路と、
を含む請求項
1に記載のリモートコントローラ。
【請求項6】
前記制御部は、予め定められた数の複数の前記スタート信号を検出すると前記解析処理を開始する請求項
1から5のいずれか1項に記載のリモートコントローラ。
【請求項7】
前記制御対象装置は、空気調和機または換気装置である請求項1から
6のいずれか1項に記載のリモートコントローラ。
【請求項8】
制御対象装置を遠隔制御するリモートコントローラが、
周囲の音波をアナログ値として出力する集音部によって、伝送データに基づいて搬送音波が周波数変換された音波信号を外部の携帯端末から受信するステップと、
前記集音部が出力するアナログ値をデジタル値へ変換するステップと、
前記集音部が出力するアナログ値にスタート信号が含まれているか否かを判定するステップと、
前記アナログ値に前記スタート信号が含まれている場合、デジタル値へ変換された前記音波信号を解析するステップと、
解析結果に従って前記制御対象装置および前記リモートコントローラの少なくとも一方の設定を行うステップと、
を含
み、
前記スタート信号が検知されるまでは前記音波信号の解析処理を停止する機器設定方法。
【請求項9】
携帯端末が、設定値を取得するための要求データに基づいて搬送音波を周波数変換した音波信号である要求信号を第1のリモートコントローラに送信するステップと、
前記第1のリモートコントローラが、受信した前記要求信号によって要求された設定値を含む伝送データに基づいて音波信号を生成するステップと、
前記第1のリモートコントローラが、前記音波信号を送信するステップと、
前記携帯端末が、前記第1のリモートコントローラから受信した前記音波信号を解析して前記設定値を取得するステップと、
前記携帯端末が、取得した前記設定値に基づいて、第2のリモートコントローラに送信する設定データを生成するステップと、
前記携帯端末が、前記設定データを含む伝送データに基づいて搬送音波を周波数変換した音波信号を生成するステップと、
前記携帯端末が、前記音波信号を前記第2のリモートコントローラに送信するステップと、
前記第2のリモートコントローラが、
周囲の音波をアナログ値として出力する集音部によって、前記音波信号を受信するステップと、
前記第2のリモートコントローラが、前記集音部が出力するアナログ値をデジタル値へ変換するステップと、
前記第2のリモートコントローラが、前記集音部が出力するアナログ値にスタート信号が含まれているか否かを判定するステップと、
前記第2のリモートコントローラが、前記アナログ値に前記スタート信号が含まれている場合、デジタル値へ変換された前記音波信号を解析するステップと、
前記第2のリモートコントローラが、解析結果に基づいて、前記第2のリモートコントローラおよび前記第2のリモートコントローラが遠隔操作する制御対象装置の少なくとも一方の設定を行うステップと、
を含
み、
前記第2のリモートコントローラは、前記スタート信号が検知されるまでは前記音波信号の解析処理を停止する機器設定方法。
【請求項10】
制御対象装置を遠隔制御するリモートコントローラと、
前記リモートコントローラと音波通信する携帯端末と、
を有し、
前記携帯端末は、前記リモートコントローラに前記制御対象装置および前記リモートコントローラの少なくとも一方の設定を行うための設定データを音波信号として送信し、
前記リモートコントローラは、
伝送データに基づいて搬送音波が周波数変換された音波信号を外部の携帯端末から受信する音波通信部と、
受信した前記音波信号を解析し、解析結果に従って前記リモートコントローラおよび前記制御対象装置の少なくとも一方の設定を行う制御部と、
を有し、
前記音波通信部は、
周囲の音波をアナログ値として出力する集音部と、
前記集音部が出力する前記アナログ値をデジタル値へ変換して前記制御部の第1ポートへ入力するデジタル変換回路と、
前記集音部が出力する前記アナログ値からスタート信号を取り出して前記制御部の第2ポートへ入力するスタート信号検知部と、
を含み、
前記制御部は、前記第2ポートに前記スタート信号が入力されたことを検知するまでは、前記第1ポートに入力された音波信号の解析処理を停止する
機器設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波通信を用いるリモートコントローラ、携帯端末、機器設定方法および機器設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機へ設定を行う際には、操作者が空気調和機のリモートコントローラを直接操作して行っていた。しかしながら、設定を行うための操作は複雑であり、時間がかかるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、空気調和機の設定を容易にするために、NFC(Near Field Communication)またはRFID(Radio Frequency IDentifier)のような電波または磁界を使用した近距離無線通信を使用して、スマートフォンなどの外部装置から設定データをリモートコントローラに送信する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術のように、外部装置とリモートコントローラとを電波または磁界を使用した近距離無線通信で接続する場合、通信可能距離は長くても1m程度であり、操作者がリモートコントローラの付近に移動して設定作業を行う必要がある。このため、特にビル用マルチシステムのように、複数の空気調和機に対して同様のデータ設定を行う際には、操作者が一台一台リモートコントローラの付近に移動して設定作業を行う必要があり、作業に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空気調和機のような制御対象装置、制御対象装置を遠隔制御するリモートコントローラなどの設定を容易に行うことが可能なリモートコントローラを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るリモートコントローラは、制御対象装置を遠隔制御するリモートコントローラであって、伝送データに基づいて搬送音波が周波数変換された音波信号を外部の携帯端末から受信する音波通信部と、受信した音波信号を解析し、解析結果に従ってリモートコントローラおよび制御対象装置の少なくとも一方の設定を行う制御部と、を備え、音波通信部は、周囲の音波をアナログ値として出力する集音部と、集音部が出力するアナログ値をデジタル値へ変換して制御部の第1ポートへ入力するデジタル変換回路と、集音部が出力するアナログ値からスタート信号を取り出して制御部の第2ポートへ入力するスタート信号検知部と、を有し、制御部は、第2ポートにスタート信号が入力されたことを検知するまでは、第1ポートに入力された音波信号の解析処理を停止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空気調和機のような制御対象装置、制御対象装置を遠隔制御するリモートコントローラなどの設定を容易に行うことが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる機器設定システムの構成を示す図
【
図2】
図1に示すリモートコントローラの機能構成を示す図
【
図3】
図2に示すリモートコントローラの機能を実現するためのハードウェア構成の一例を示す図
【
図4】
図3に示す集音装置の出力波形と、MCUの入力波形とを示す図
【
図6】
図5に示す携帯端末が表示する設定画面の一例を示す図
【
図7】
図5に示す携帯端末が表示する表示設定画面の一例を示す図
【
図8】
図5に示す携帯端末の動作を示すフローチャート
【
図9】
図2に示すリモートコントローラの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態にかかるリモートコントローラ、携帯端末、機器設定方法および機器設定システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる機器設定システム10の構成を示す図である。機器設定システム10は、制御対象装置を遠隔操作するリモートコントローラ100A,100Bと、携帯端末200とを有する。なお、本明細書および図面において、リモートコントローラ100A,100Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、単にリモートコントローラ100と称する。
図1では機器設定システム10は2台のリモートコントローラ100A,100Bを有することとしたが、機器設定システム10は1台のリモートコントローラ100を有してもよいし、3台以上のリモートコントローラ100を有してもよい。
【0012】
リモートコントローラ100は、空気調和機、換気装置などの制御対象装置を遠隔制御する機能を有する。携帯端末200は、スマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)などの外部装置であり、制御対象装置の設定を行うためのアプリケーションソフトウェアがインストールされている。リモートコントローラ100は、音波通信を用いて、携帯端末200との間でデータを送受信することができる。具体的には、リモートコントローラ100は、携帯端末200が音波通信を使用して送信する設定データに従って、制御対象装置およびリモートコントローラ100の少なくとも一方の設定を行うことができる。また携帯端末200は、リモートコントローラ100から音波通信を使用して制御対象装置およびリモートコントローラ100の少なくとも一方の現在の設定値を取得することができる。
【0013】
携帯端末200が送信する設定データは、例えば、リモートコントローラ100が備える図示しない液晶表示用モジュールのバックライト設定値、コントラスト設定値など表示の見栄え設定、温度の表示単位、表示に使用する言語などリモートコントローラ100の基本設定値を含む。また携帯端末200が送信する設定データは、リモートコントローラ100が遠隔制御する制御対象装置の設定値を含んでもよい。
【0014】
リモートコントローラ100および携帯端末200が音波通信に使用する音波は、20kHz未満の可聴域の音波であってもよいし、20kHz以上の超音波であってもよい。可聴域の音波を使用する場合、データの送信または受信が行われたことを操作者が耳で確認することができる。また超音波を使用する場合、可聴域の音波を使用するよりもデータの圧縮率を大きくすることができる。
【0015】
図2は、
図1に示すリモートコントローラ100の機能構成を示す図である。リモートコントローラ100は、音波通信部110と、制御部140とを有する。音波通信部110は、音波受信部120および音波送信部130を有する。
【0016】
音波通信部110は、携帯端末200との間で、音波信号を用いた音波通信を行う。音波受信部120は、リモートコントローラ100の外部の携帯端末200が送信した音波信号を受信し、受信した音波信号を制御部140に入力する。音波送信部130は、制御部140から入力される伝送データに基づいて、搬送音波を周波数変換した音波信号を生成し、生成した音波信号を送信する。
【0017】
制御部140は、音波受信部120が音波信号を受信すると、受信した音波信号を解釈して伝送データを復元する。制御部140は、伝送データに含まれる設定データに従って制御対象装置の設定を行う。また制御部140は、携帯端末200への伝送データを生成し、生成した伝送データを音波送信部130に入力する機能も有する。制御部140は、携帯端末200から制御対象装置の設定値を要求する要求信号を受信すると、要求信号に応じて、制御対象装置の設定値を含む伝送データを生成する。
【0018】
図3は、
図2に示すリモートコントローラ100の機能を実現するためのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0019】
リモートコントローラ100の音波通信部110の機能は、集音装置121、A/D(Analog/Digital)変換回路122、フィルタ回路123、包絡線検波回路124、D/A(Digital/Analog)変換回路131、発音装置132といった構成要素を用いて実現することができる。これらの構成要素のうち、集音装置121、A/D変換回路122、フィルタ回路123、および包絡線検波回路124は、音波受信部120の機能を実現するために用いられる。またこれらの構成要素のうち、D/A変換回路131、および発音装置132は、音波送信部130の機能を実現するために用いられる。リモートコントローラ100の制御部140の機能は、MCU(Micro Controller Unit)141を用いて実現することができる。
【0020】
集音装置121は、周囲の音波をアナログ値として出力する集音部である。集音装置121は、例えばマイクモジュールである。集音装置121が出力したアナログ値は、A/D変換回路122およびフィルタ回路123に入力される。A/D変換回路122は、入力されたアナログ値をデジタル値へ変換して出力する。A/D変換回路122が出力したデジタル値は、MCU141のポートaに入力される。ポートaは、MCU141がA/D変換回路122の出力信号を取り込む第1ポートであり、ポートの数は1つでなくてもよい。
【0021】
フィルタ回路123は、集音装置121から入力されるアナログ値を予め定められた周波数帯域でフィルタリングする。包絡線検波回路124は、フィルタ回路123の出力波形に含まれる包絡線を任意の閾値で取り出す。包絡線検波回路124の出力はMCU141のポートbに入力される。ポートbは、MCU141がスタート信号を取り込むための第2ポートである。スタート信号は、携帯端末200とリモートコントローラ100との間で予め定められた周波数およびタイミングで送信される信号であり、伝送データの通信を開始する前に送信され、通信の開始を示す信号である。
【0022】
フィルタ回路123および包絡線検波回路124は、スタート信号が通過できるように設定される。フィルタ回路123が通過させる周波数帯域である通過帯域は、スタート信号の使用帯域に基づいて予め定められる。フィルタ回路123は、スタート信号の使用帯域を含む通過帯域の信号を通過して、通過帯域以外の信号を遮断する。フィルタ回路123および包絡線検波回路124は、スタート信号検知部125とも呼ばれる。スタート信号検知部125は、集音装置121が出力するアナログ値からスタート信号を取り出してMCU141のポートbへ入力する。
【0023】
音波受信部120が上記のような構成をとることによって、MCU141のポートaには、A/D変換回路122から音波信号のデジタル値が常時入力され、MCU141のポートbには、音波受信部120が受信した音波信号にスタート信号が含まれる場合、スタート信号が入力されることになる。
【0024】
D/A変換回路131は、MCU141のポートcから入力される伝送データのデジタル値をアナログ値に変換して出力する。ポートcは、MCU141が音波送信部130に伝送データを出力するための第3ポートである。D/A変換回路131が出力するアナログ値は、発音装置132に入力される。発音装置132は、入力されたアナログ値を音波として周囲へ発音するスピーカモジュールなどである。発音装置132は、増幅回路などの図示しないオーディオ回路を含む。
【0025】
MCU141は、音波受信部120から入力される音波信号の周波数を解析する機能を有する。MCU141は、解析結果に従って制御対象装置の設定を行う。また、MCU141は、音波送信部130から送信する音波信号を生成するための伝送データを生成して出力する。例えば、MCU141は、音波受信部120から入力される音波信号に、制御対象装置の現在の設定値を要求する要求信号が含まれる場合、要求された設定値を含む伝送データを生成してポートcから出力する。MCU141は、音波信号を用いて、制御対象装置の設定値を含む伝送データを携帯端末200に送信することができる。
【0026】
図4は、
図3に示す集音装置121の出力波形と、MCU141の入力波形とを示す図である。
図4には、集音装置121の出力波形と、MCU141のポートaへの入力波形と、MCU141のポートbへの入力波形とが示されている。期間T1s~T4にかけて携帯端末200からリモートコントローラ100に対して音波信号が送信され、リモートコントローラ100の集音装置121に取り込まれる。
【0027】
ここで、期間T1s~T4のうち、T1s~T3eまでは、音波通信の開始を示すスタート信号が集音装置121に入力される。期間T1s~T4のうち、期間T3e~T4までは、設定値、設定値の要求などデータ内容を示す信号が集音装置121に入力される。なお、スタート信号は、ノイズ耐性を向上させるために複数回送信されてもよい。
図4に示す図では、スタート信号は3回送信されている。
【0028】
集音装置121が出力した音波信号のアナログ値は、A/D変換回路122によりデジタル値に変換されて、MCU141のポートaに常時入力される。
【0029】
また集音装置121が出力した音波信号のアナログ値は、A/D変換回路122の前段で分岐してスタート信号検知部125を経由してMCU141のポートbに入力される。なお、フィルタ回路123の通過帯域は、スタート信号の周波数を通過させられればよく、データの送信に使用される周波数は通過させてもよいし、通過させなくてもよい。
図4に示す例では、フィルタ回路123の通過帯域は、データの送信に使用される周波数は遮断するように設定されている。
【0030】
MCU141は、ポートbに入力される信号が既知のスタート信号と一致した場合、つまり、スタート信号検知部125がスタート信号を検知した場合、音波信号の周波数解析処理を開始する。言い換えると、MCU141は、スタート信号が検知されるまでは、音波信号の周波数解析処理を停止している。MCU141は、周波数解析処理の結果、音波信号に設定データが含まれている場合、解析結果に従ってリモートコントローラ100および制御対象装置の少なくとも一方の設定を行う。また、MCU141は、周波数解析処理の結果、音波信号に携帯端末200からの要求信号が含まれている場合、要求信号が示す設定値を含む伝送データを生成してポートcに出力し、音波送信部130から携帯端末200に向けて送信する。
【0031】
図5は、
図1に示す携帯端末200の機能構成を示す図である。携帯端末200は、音波通信部210と制御部240と、表示操作部250とを有する。音波通信部210は、音波受信部220と音波送信部230とを有する。
【0032】
音波通信部210は、リモートコントローラ100との間で、音波信号を用いた音波通信を行う。音波受信部220は、リモートコントローラ100が送信した音波信号を受信し、受信した音波信号を制御部240に入力する。音波送信部230は、制御部240から入力される伝送データに基づいて、搬送音波を周波数変換した音波信号を生成し、生成した音波信号を送信する。
【0033】
制御部240は、音波受信部220が音波信号を受信すると、受信した音波信号を解釈して伝送データを復元する。制御部240は、復元した伝送データがリモートコントローラ100および制御対象装置の少なくとも一方の設定値を含む場合、設定値を表示画面に表示することができる。
【0034】
制御部240は、リモートコントローラ100および制御対象装置の少なくとも一方の設定を受け付けるための設定画面を表示する。制御部240は、設定画面に対する入力が行われると、設定画面を用いて入力された設定データを含む伝送データを生成し、生成した伝送データを音波送信部230に入力する。
【0035】
表示操作部250は、制御部240が生成した画面を表示する機能と、表示した画面に対する操作を受け付ける機能とを有する。表示操作部250は、例えば、表示装置にタッチセンサを重畳したタッチパネルである。
【0036】
図6は、
図5に示す携帯端末200が表示する設定画面の一例を示す図である。制御部240は、表示操作部250を用いて、
図6に示す設定画面を出力することができる。設定画面を用いて設定することができる項目は、基本設定、表示設定、運転設定、省エネ設定、タイマー・スケジュール設定、メンテナンス設定、サービス設定などである。
【0037】
また、この設定画面を用いて、携帯端末200は、リモートコントローラ100から設定データを取得することもできる。操作者が設定画面を用いて、設定データを取得するための操作を行うと、制御部240は、リモートコントローラ100に設定値を要求するための要求データを生成する。要求データは、取得する設定値の項目を示す情報を含む。また要求データは、設定値の要求先であるリモートコントローラ100を識別する識別情報を含んでもよい。制御部240は、音波送信部230を用いて、生成した要求データに基づいて搬送音波を周波数変換した音波信号である要求信号をリモートコントローラ100に送信させる。
【0038】
図7は、
図5に示す携帯端末200が表示する表示設定画面の一例を示す図である。制御部240は、表示操作部250を用いて、
図7に示す表示設定画面を出力することができる。表示設定画面は、
図6に示す設定画面の「表示設定」を選択する操作が行われると、表示される。表示設定画面を用いて設定することができる項目は、メイン画面表示設定、リモコン表示設定、言語表示設定、コントラスト・輝度調整設定、CO
2表示設定などである。
【0039】
続いて、携帯端末200の動作について説明する。
図8は、
図5に示す携帯端末200の動作を示すフローチャートである。携帯端末200の制御部240は、操作者が設定アプリケーションを起動する操作を行うと、設定アプリケーションを起動する(ステップS101)。
【0040】
制御部240は、
図6に示す設定画面を表示し、操作者の入力操作を受け付ける(ステップS102)。操作者が入力操作を行うと、制御部240は、入力操作が設定データの送信を指示しているのか、設定データの取得を指示しているのかを判断する(ステップS103)。
【0041】
設定データの送信が指示された場合(ステップS103:送信)、制御部240は、設定画面に対する入力操作に基づいて、設定データを生成する(ステップS104)。音波送信部230は、制御部240から設定データが入力されると、設定データに基づいて、音波信号を生成する(ステップS105)。
【0042】
設定データの取得が指示された場合(ステップS103:取得)、制御部240は、設定画面に対する入力操作に基づいて、要求する設定データの項目を指示する要求データを生成する(ステップS106)。音波送信部230は、制御部240から要求データが入力されると、要求データに基づいて、音波信号を生成する(ステップS107)。
【0043】
音波送信部230は、ステップS105またはステップS107で生成された音波信号を送信する(ステップS108)。
【0044】
続いて、リモートコントローラ100の動作について説明する。
図9は、
図2に示すリモートコントローラ100の動作を示すフローチャートである。リモートコントローラ100の制御部140は、ポートbへの入力に基づいて、スタート信号を検知したか否かを判断する(ステップS201)。
【0045】
スタート信号を検知した場合(ステップS201:Yes)、制御部140は、音波信号の周波数解析処理を開始する(ステップS202)。スタート信号を検知しない場合(ステップS201:No)、制御部140は、スタート信号を検知するまでステップS201の処理を繰り返す。
【0046】
制御部140は、周波数解析処理の解析結果が設定データであるか否かを判断する(ステップS203)。ここでは、携帯端末200から送信される音波信号は設定データまたは要求データであることを前提とする。
【0047】
解析結果が設定データである場合(ステップS203:Yes)、制御部140は、解析結果に従って、制御対象装置およびリモートコントローラ100の少なくとも一方の設定処理を行う(ステップS204)。
【0048】
解析結果が要求データである場合(ステップS203:No)、制御部140は、要求データに基づいて、設定データを音波生成用データに変換した伝送データを生成する(ステップS205)。音波送信部230は、伝送データに基づいて音波信号を生成する(ステップS206)。音波送信部230は、生成した音波信号を送信する(ステップS207)。
【0049】
なお、携帯端末200は、複数のリモートコントローラ100のうちの一部に伝送データを送信したい場合、音波信号に宛先を付加してもよい。この場合、リモートコントローラ100は、自身宛でない音波信号を受信しても、設定処理および設定データの送信処理を行わない。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、リモートコントローラ100は、外部装置である携帯端末200から音波を用いて設定データを受信し、リモートコントローラ100および制御対象装置の少なくとも一方への設定を行うことができる。このような構成をとることで、音波到達範囲に設置される複数のリモートコントローラ100に同時に設定データを伝送することができるため、データの設定作業を携帯端末200から容易に行うことが可能になる。音波を用いることで、ルータなどの通信機器を設置する必要がなく、また、複数のリモートコントローラ100のそれぞれと1台ずつペアリング作業を行う必要もない。また、音波の到達距離は、NFCなどの近距離無線の通信距離よりも長いため、離れた場所からでもリモートコントローラ100に設定データを伝送することができるようになる。
【0051】
音波通信に可聴域の音波を使用した場合、データの送信または受信が行われていることを操作者が耳で確認することができ、操作者は、リモートコントローラ100と携帯端末200との間の通信接続を容易に判断することができ、データの設定または取得が可能なリモートコントローラ100を容易に特定することが可能になる。
【0052】
音波通信に超音波を用いる場合、可聴域の音波と比較してより大きなデータ圧縮率を実現することができる。このため、データの取得または設定にかかる時間を短縮することが可能になる。
【0053】
また、リモートコントローラ100は、スタート信号を検知するまでは、音波信号の周波数解析処理を停止している。このため、リモートコントローラ100は、携帯端末200からの音波通信が行われていないときには、周波数解析処理を停止しており、MCU141に備わるCPU(Central Processing Unit)のリソース消費を低減することが可能になる。
【0054】
また、制御部140は、複数のスタート信号を検知すると、周波数解析処理を開始することができる。つまり、制御部140は、予め定められた2以上の数のスタート信号を検知するまでは、周波数解析処理を停止することができる。この場合、スタート信号と同一周波数のノイズで周波数解析処理が誤って開始してしまうことを防ぐことができ、音波通信のノイズ耐性を向上することができる。
【0055】
また、リモートコントローラ100は、携帯端末200から要求信号を受信すると、要求信号が示す項目の設定値を含む音波信号を携帯端末200に送信する機能を有する。このような構成をとることで、携帯端末200は、リモートコントローラ100から、リモートコントローラ100および制御対象装置の現在の設定値を取得することが可能になる。したがって、既にリモートコントローラ100および制御対象装置に設定された値を確認することが容易になる。例えば、保守・点検業務、制御対象装置を利用するユーザからの問い合わせ対応を行う際には、実作業に入る前の準備作業として、制御対象装置の動作を確認したり現在の設定値を確認したりすることがある。従来であれば、専用のメンテナンスツールを接続したり、リモートコントローラの複雑な操作を行ったりして、準備作業を行っていた。これに対して、本実施の形態にかかるリモートコントローラ100を使用することで、容易な操作で、リモートコントローラ100から制御対象装置およびリモートコントローラ100に設定された値を取得することができ、上記の準備作業が容易になる。
【0056】
また、携帯端末200が、設定済みのリモートコントローラ100および制御対象装置から設定値を取得し、他のリモートコントローラ100に取得した設定値を音波通信で送信することで、設定値を装置間でコピーすることができるようになる。したがって、リモートコントローラ100および制御対象装置の設定を容易に行うことが可能になる。例えば、オフィスビルなどの建物のレイアウト変更に伴って、リモートコントローラを増設したり、リレイアウトしたりする際に、既存の設定と同じ値を使用したい場合がある。従来であれば、既存の設定値を確認し、確認した設定値をひとつひとつのリモートコントローラに入力する操作が必要であった。これに対して、本実施の形態にかかるリモートコントローラを使用することで、携帯端末200は、設定済みの第1のリモートコントローラ100から設定値を取得して、第2のリモートコントローラ100にそのまま設定値をコピーしたり、一部の設定値のみを変更してから第2のリモートコントローラ100に設定値を送信したりすることができる。このような動作は、携帯端末200にインストールされたアプリケーションプログラムの画面上から操作を行うことで実行される。このため、設定作業が容易となり、設定の誤りを抑制することが可能になる。
【0057】
また、実施の形態1において、用いられる音波通信は、伝送データに基づいて搬送音波が周波数変換された音波信号を用いる。このような音波信号は、予め定められた周波数帯域を使用し、既知のパターンを使用してデータを伝送しているため、音声解析よりも伝送データを正確に伝送することが可能になる。また、受信側における周波数解析処理は、音声解析処理よりも処理負荷が低い。
【0058】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 機器設定システム、100,100A,100B リモートコントローラ、110,210 音波通信部、120,220 音波受信部、121 集音装置、122 A/D変換回路、123 フィルタ回路、124 包絡線検波回路、125 スタート信号検知部、130,230 音波送信部、131 D/A変換回路、132 発音装置、141 MCU、140,240 制御部、200 携帯端末、250 表示操作部。