(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】酸化カルシウム(CaO)の再生方法および再生装置
(51)【国際特許分類】
C01F 11/06 20060101AFI20221216BHJP
C01B 3/40 20060101ALI20221216BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20221216BHJP
【FI】
C01F11/06 ZAB
C01B3/40
B09B3/40
(21)【出願番号】P 2019021986
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】奥村 諭
(72)【発明者】
【氏名】上原 慧
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭祐
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-516294(JP,A)
【文献】特開2020-128327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/06
C01B 3/40
B09B 3/40
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記発電設備から排出される発電排ガスの少なくとも一部を前記燃焼装置に供給し、前記燃焼装置にて、前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する、酸化カルシウム再生方法。
【請求項2】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記燃焼装置から排出された燃焼ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する第1再生工程と、
前記第1再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、
を含む酸化カルシウム再生方法。
【請求項3】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記改質装置から排出された改質ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する第2再生工程と、
前記第2再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、
を含む酸化カルシウム再生方法。
【請求項4】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電設備から排出される発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する第3再生工程と、
前記第3再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、
を含む酸化カルシウム再生方法。
【請求項5】
前記設備は、水素の製造に使用される、請求項1~4の何れか1項に記載の酸化カルシウム再生方法。
【請求項6】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、
前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、
前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、
前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備え、
前記燃焼装置に、前記発電設備から排出される発電排ガスが供給される、酸化カルシウム再生装置。
【請求項7】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、
前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、
前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、
前記熱分解装置にて生成された熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する再生炉と、を備え、
前記再生炉に、前記燃焼装置から排出された燃焼ガス、または前記改質装置から排出された改質ガスが供給される、酸化カルシウム再生装置。
【請求項8】
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、
前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、
前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、
前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、
前記熱分解装置にて生成された熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する再生炉と、を備え、
前記再生炉に、前記発電設備から排出される発電排ガスが供給される、酸化カルシウム再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化カルシウム(CaO)の再生方法および再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子状の酸化カルシウム(CaO)の再生方法として、例えば特許文献1に開示された方法が挙げられる。特許文献1に開示された技術では、石灰石若しくは炭酸カルシウムをカ焼して得られた粒子状酸化カルシウム(粒子径0.2~0.8mm)を使用している。そして、当該粒子状酸化カルシウムを、水と反応させ、
CaO+H2O→Ca(OH)2 …(A)
で表される反応をさせるに際して、1気圧以上で650~700℃の水蒸気条件で反応(A)を進行させることにより、圧縮破壊強度が25kg/cm2以上で粒子状を保持したままCa(OH)2を生成させ、次いで、850~900℃で熱分解している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、前記式(A)を進行させるための反応条件を満たすために、熱源等といった設備が別途必要となる。このため、コストが掛かるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、熱源等の設備を別途必要とせず、コストが掛からない酸化カルシウム(CaO)の再生方法、および酸化カルシウム(CaO)再生装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウムの再生方法は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、前記発電設備から排出される発電排ガスの少なくとも一部を前記燃焼装置に供給し、前記燃焼装置にて、前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する。
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウムの再生方法は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記燃焼装置から排出された燃焼ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する第1再生工程と、前記第1再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、を含む。
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウムの再生方法は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記改質装置から排出された改質ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する第2再生工程と、前記第2再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、を含む。
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウムの再生方法は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電設備から排出される発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する第3再生工程と、前記第3再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、を含む。
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウム再生装置は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備え、前記燃焼装置に、前記発電設備から排出される発電排ガスが供給される。
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウム再生装置は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記熱分解装置にて生成された熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する再生炉と、を備え、前記再生炉に、前記燃焼装置から排出された燃焼ガス、または前記改質装置から排出された改質ガスが供給される。
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸化カルシウム再生装置は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、前記熱分解装置にて生成された熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する再生炉と、を備え、前記再生炉に、前記発電設備から排出される発電排ガスが供給される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、酸化カルシウムの再生のために設備を別途設ける必要がなく、コストを掛けずに酸化カルシウム(CaO)を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態3に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態4に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。尚、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、「質量」と「重量」は同義語であると見なす。
【0016】
[実施形態1]酸化カルシウムの再生方法
本実施形態に係る酸化カルシウムの再生方法および再生装置は、水素製造装置の各種設備を酸化カルシウム再生のために利用することを特徴としている。これにより、酸化カルシウムの再生のために設備を別途設ける必要がなく、水素製造装置の各種設備を有効利用しているので、コストを掛けずに酸化カルシウム(CaO)を再生することができる。
【0017】
〔水素製造装置〕
本発明の一実施の形態にて利用される水素製造装置は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えている。
【0018】
前記水素製造装置に供給されるリン含有バイオマスとしては、例えば、下水処理場で発生する下水汚泥、し尿処理場で発生するし尿汚泥、肉骨粉、畜糞等のリン含有バイオマスが挙げられる。リン含有バイオマスに含まれるリンの形態としては、例えば、生体由来の有機性リン、リン酸態リン等が挙げられる。但し、リン含有バイオマスは、前記例示のリン含有バイオマスに限定されない。尚、以下の説明においては、リン含有バイオマスとして、下水汚泥やし尿汚泥である汚泥スラリーを例に挙げることとする。
【0019】
本発明の一実施の形態における水素製造装置は、
図1に示すように、混合装置を兼ねている脱水装置1、乾燥装置2、水分調整装置を兼ねている熱分解装置3、改質装置4、燃焼装置5、および灰分分離装置6を少なくとも備えている。各装置は、リンの回収を連続的に行うことができるように、搬送機能を具備した装置(図示しない)で互いに連結されている。つまり、前記水素製造装置は、リンの回収を連続的に行うことができるように、複数の流動層装置から構成されている。但し、前記水素製造装置は、流動床式の回収装置に限定されない。
【0020】
以下、本発明の一実施の形態にて利用される水素製造装置を構成する各装置に関して、
図1を参照しながら説明する。
【0021】
<脱水装置1>
脱水装置1は、汚泥スラリー供給路11を通じて供給される汚泥スラリー(リン含有バイオマス)から水分を含む分離液を除去して脱水汚泥とした後、得られた脱水汚泥を、脱水汚泥供給路12を通じて乾燥装置2に供給する。
【0022】
脱水装置1は、汚泥スラリーから水分を含む分離液を除去することができる装置であればよく、例えば、ベルトプレス等の加圧式脱水機、または遠心脱水機等の機械的脱水機が挙げられる。また、リン含有バイオマスの含水率が所望の量である場合には、脱水装置1は必ずしも設ける必要は無い。その場合には、前記リン含有バイオマスを、直接乾燥装置2および熱分解装置3に供給すればよい。
【0023】
さらに、脱水装置1は、汚泥スラリーに、無機カルシウム化合物供給路(図示しない)から供給される無機カルシウム化合物を混合する混合装置としての機能を兼ね備えているのが好ましい。その場合、乾燥装置2に供給される脱水汚泥は、汚泥スラリーと無機カルシウム化合物との混合物である。
【0024】
汚泥スラリーに無機カルシウム化合物を混合する時期は、汚泥スラリーから分離液を除去する前であってもよく、除去する途中の段階であってもよく、除去した後であってもよく、さらに、これら時期を複数組み合わせてもよい。但し、以下に示すように、無機カルシウム化合物は脱水助剤として作用することから、分離液を除去する前に、汚泥スラリーに無機カルシウム化合物を混合することがより好ましい。
【0025】
(無機カルシウム化合物)
無機カルシウム化合物は、リン酸三カルシウム「Ca3(PO4)2」のカルシウム源になると共に、汚泥スラリーの脱水を促進する脱水助剤としても作用する。従って、汚泥スラリーに無機カルシウム化合物を添加することにより、通常の脱水方法よりも脱水性を向上させることができる。
【0026】
無機カルシウム化合物は、炭酸カルシウム「CaCO3」、消石灰「Ca(OH)2」、生石灰「CaO」、およびドロマイト「Ca・Mg(CO3)2」から選択される少なくとも一つであることが好ましい。無機カルシウム化合物の粒径は、200μm~500μmであることが好ましい。
【0027】
無機カルシウム化合物は、脱水助剤として作用する他に、流動媒体、二酸化炭素吸収媒体、ガス化プロセスの熱源(顕熱媒体および二酸化炭素吸収反応熱)およびリン溶融防止剤等の複数の役割を果たす。さらに、無機カルシウム化合物は、高濃度の水素の製造にも寄与するという二次的な機能も併せ持つ。
【0028】
前記無機カルシウム化合物は、水素製造装置に供給される全量が脱水装置1に供給されてもよく、その一部が、後述するように、熱分解装置3、改質装置4、燃焼装置5の何れに供給されてもよい。
【0029】
汚泥スラリーに混合する無機カルシウム化合物の添加量W(モル/kg-乾燥重量(DS))は、量論的には下記式(1)の通りである。つまり、当該添加量Wは、汚泥スラリー中のリンおよび硫黄分を、リン酸三カルシウム「Ca3(PO4)2」および石膏「CaSO4」として回収することができる量以上であればよい。
【0030】
W(モル/kg-DS) ≧ (3/2)×P(モル/kg-DS) + S(モル/kg-DS) …(1)
従って、汚泥スラリーに混合する無機カルシウム化合物の添加量は、式(1)を満足する量であればよく、特に限定されない。具体的には、汚泥スラリー(リン含有バイオマス)乾燥重量1kg当たり、0.06kg~0.8kg、より好ましくは0.1kg~0.5kgの無機カルシウム化合物を混合すればよい。特に、汚泥スラリーに対して無機カルシウム化合物を過剰に混合することによって、リン化合物の溶融による焼却炉への付着およびそれに伴う焼却炉の閉塞をより効果的に防止することができる。
【0031】
<乾燥装置2>
乾燥装置2は、脱水装置1から供給された脱水汚泥を加熱し、水分を蒸発させて乾燥汚泥とする。そして、乾燥装置2は、乾燥汚泥を、乾燥汚泥供給路13を通じて熱分解装置3に供給する。また、乾燥装置2は、必要に応じて、乾燥汚泥の一部を、熱源用乾燥汚泥供給路14を通じて燃焼装置5に供給する。燃焼装置5に供給された乾燥汚泥は、熱源として燃焼される。
【0032】
乾燥装置2は、前記脱水汚泥を乾燥させることができる装置であればよく、その構成は特に限定されない。また、脱水装置1で得られる混合物中の水分量が少ない場合には、乾燥装置2は必ずしも設ける必要は無い。その場合には、前記混合物を、脱水装置1から熱分解装置3に供給すればよい。
【0033】
<熱分解装置3>
熱分解装置3には、ガス化用蒸気が供給されている。熱分解装置3は、乾燥汚泥を、水蒸気の存在下、400℃~900℃、より好ましくは600℃~800℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間滞留させることにより、熱分解する。熱分解装置3は、熱分解して得た熱分解生成物を、熱分解生成物供給路15を通じて燃焼装置5に供給する。そして、熱分解装置3は、熱分解して得た熱分解生成物のうち、熱分解ガスである可燃性ガスを、可燃性ガス供給路19を通じて改質装置4に供給する。また、熱分解装置3には、改質装置4から、供給路18を通じて酸化カルシウム「CaO」が供給(循環)されると共に、必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物の一部が供給される。
【0034】
熱分解装置3は、前記乾燥汚泥を熱分解することができる装置であればよく、その構成は特に限定されない。
【0035】
前記熱分解装置3においては、下記反応により熱分解が行われ、可燃性ガスが生成する。即ち、乾燥汚泥は、下記式(2)に示す反応によって、水蒸気の存在下で熱分解され、熱分解ガスと、固体残渣とに転換される。熱分解ガスは、水素「H2」、一酸化炭素「CO」、二酸化炭素「CO2」、硫化水素「H2S」およびアンモニア「NH3」、並びに、メタン「CH4」、炭化水素系ガスおよびタール成分を含有する炭化水素系ガス「CmHn」を主成分として含む。固体残渣は、炭(charcoal)および灰分を含む。
【0036】
乾燥汚泥(C,H,O,N,S) + H2O → 熱分解ガス(H2,CO,CO2,CmHn,H2S,NH3) + C(charcoal) + 灰分 …(2)
ここで、灰分は、P,Si,Al,Fe,Mg,Ca,NaおよびK等を含有する化合物である。
【0037】
また、炭(charcoal)の一部は、水蒸気と反応し、下記式(3)に示すように、二酸化炭素および水素に転換される。
【0038】
C(charcoal) + 2H2O → CO2 + 2H2 …(3)
さらに、熱分解ガスに含まれる一酸化炭素は、水蒸気と反応し、下記式(4)に示すように、二酸化炭素に転換される。
【0039】
CO + H2O → CO2+ H2 …(4)
前記熱分解ガスに含まれる硫化水素の大部分は、乾燥汚泥中の無機カルシウム化合物や、主に加熱によって生じた酸化カルシウムと反応し、下記式(5)に示すように、硫化カルシウムとなり、固定化される。このように熱分解ガスに含まれる硫化水素の大部分が硫化カルシウムとなって固定化されることにより、結果的に熱分解ガス中の水素濃度が高まる。
【0040】
CaO + H2S → CaS + H2O …(5)
そして、前記式(2)~(4)に示す反応によって発生した二酸化炭素は、酸化カルシウムと反応し、下記式(6)に示すように、炭酸カルシウム「CaCO3」となり、固定化される。式(6)に示す反応によって熱分解ガスから、二酸化炭素のみが酸化カルシウムに吸収されて引き抜かれるため、式(2)~(4)に示す反応において右向きの平衡移動が起こり、結果的に高濃度の水素を含む可燃性ガスが生成される。
【0041】
CaO + CO2→ CaCO3 …(6)
一方、固体残渣の灰分に含まれるリンは、熱分解装置3内で、無機カルシウム化合物と反応してリン酸三カルシウム「Ca3(PO4)2」となる。本実施の形態においては、汚泥スラリーに混合する無機カルシウム化合物の添加量が極めて多く、熱分解装置3内(反応場)により多くのカルシウムが存在する。それゆえ、リンを、融点が1390℃の高融点リン化合物であるリン酸三カルシウムまで転換することができる。
【0042】
従って、熱分解装置3における熱分解によって、前記乾燥汚泥から、固体成分(固体残渣)として、リン酸三カルシウム、硫化カルシウム、炭(charcoal)、炭酸カルシウム、未反応の無機カルシウム化合物、および灰分等を含む熱分解生成物が得られる。
【0043】
前記リン酸三カルシウムは、リン鉱石資源の主成分であるため、鉱石資源として再利用することができる。また、リン酸三カルシウムの融点は1390℃と高いため、熱分解装置3および燃焼装置5における、リン化合物の溶融による焼却炉への付着およびそれに伴う焼却炉の閉塞を防止することができる。それゆえ、リン回収装置をより安定して連続運転することが可能となる。
【0044】
<改質装置4>
改質装置4は、熱分解装置3から供給された可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質を行うことによって、当該可燃性ガスよりも水素濃度を高めた第二の可燃性ガスを製造し、当該第二の可燃性ガスを、可燃性ガス排出路22を通じて排出する。このような高濃度の水素を含む第二の可燃性ガスは、例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)またはガスエンジン等といった発電設備7に供給され、発電に利用される。
【0045】
また、改質装置4には、灰分分離装置6から、循環酸化カルシウム供給路17を通じて酸化カルシウム「CaO」が供給(循環)されると共に、必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物の一部が供給される。さらに、改質装置4は、供給路18を通じて熱分解装置3に、酸化カルシウムを供給(循環)する。
【0046】
改質装置4は、前記可燃性ガスを水蒸気改質することができる装置であればよく、その構成は特に限定されない。
【0047】
前記改質装置4においては、下記反応により可燃性ガスの水蒸気改質が行われ、高濃度の水素が生成する。即ち、可燃性ガスは、水素および一酸化炭素、並びに、メタン「CH4」、炭化水素系ガスおよびタール成分を含有する炭化水素系ガス「CmHn」を含んでいる。可燃性ガスに含まれる炭化水素系ガスは、前記式(4)および下記式(7)に示すように、酸化カルシウムを触媒として、水蒸気改質によって水素および二酸化炭素に改質される。
【0048】
CmHn+ H2O → H2 + CO2 …(7)
生成した二酸化炭素は、前記式(6)に示すように、酸化カルシウムに吸収される。これにより、可燃性ガスから、水素の濃度がさらに高められた第二の可燃性ガス(改質ガス)、即ち、高濃度の水素を含むガスが得られる。
【0049】
<燃焼装置5>
燃焼装置5は、熱分解装置3から供給された熱分解固体生成物を燃焼する。燃焼装置5は、燃焼して得た燃焼生成物のうち、燃焼固体生成物を、燃焼固体生成物供給路16を通じて灰分分離装置6に供給する。燃焼装置5には、空気が外部から供給される。また、熱分解装置3には、必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物の一部が供給される。
【0050】
燃焼装置5は、熱分解装置3から供給された熱分解固体生成物を、850℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは1100℃程度で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、燃焼する。
【0051】
さらに、燃焼装置5には、必要に応じて、乾燥装置2から熱源用乾燥汚泥供給路14を通じて乾燥汚泥が供給される。当該乾燥汚泥は、燃焼装置5において前記燃焼用ガスの燃焼による熱量だけで熱分解固体生成物の燃焼を行うことが困難である場合に、熱源として燃焼される。乾燥汚泥を燃焼させることにより、外部から供給される燃焼用ガスの量を削減することができるので、エネルギーの使用量を削減することができる。
【0052】
燃焼装置5は、前記熱分解固体生成物を燃焼させることができる装置であればよく、その構成は特に限定されない。
【0053】
前記燃焼装置5においては、下記反応により燃焼固体生成物および燃焼ガスが生成する。即ち、下記式(8)に示すように、空気または酸素含有ガスによって、熱分解固体生成物に含まれる炭(charcoal)は燃焼して二酸化炭素になる。また、下記式(9)に示すように、熱分解固体生成物に含まれる炭酸カルシウムは酸化カルシウムになることにより再生される。また、下記式(10)に示すように、空気または酸素含有ガスによって、熱分解固体生成物に含まれる硫化カルシウムは石膏(硫酸カルシウム)「CaSO4」となる。
【0054】
C(charcoal) + O2 → CO2 …(8)
CaCO3 → CaO + CO2 …(9)
CaS + 2O2→ CaSO4 …(10)
前記式(8)および式(10)に示す反応は発熱反応であり、当該反応で生じた反応熱は、循環される酸化カルシウムの顕熱となって、熱分解装置3、改質装置4および燃焼装置5の熱源として利用される。
【0055】
燃焼装置5においては、前記式(8)~(10)に示す反応、および、必要に応じて乾燥装置2から供給された乾燥汚泥の燃焼によって、酸化カルシウム、リン酸三カルシウム、石膏および灰分等を含む固体成分である燃焼固体生成物が得られる。また、当該燃焼固体生成物と共に、高濃度の二酸化炭素が含まれた燃焼ガスが得られる。燃焼装置5は、燃焼して得た燃焼生成物のうち、燃焼ガスを、燃焼ガス排出路20を通じて排出する。
【0056】
<灰分分離装置6>
灰分分離装置6は、燃焼装置5から供給された燃焼固体生成物から、酸化カルシウムを主成分として含む粒子と、リン酸三カルシウム、石膏および灰分等を含む固体成分であるリン含有灰(酸化カルシウム以外の燃焼固体生成物)とを分離する。そして、灰分分離装置6は、前記リン含有灰を、リン含有灰排出路21を通じて排出する。前記リン含有灰には、リン酸カルシウム化合物として、リン酸三カルシウム「Ca3(PO4)2」の他に、P2O5,CaPO4,Ca(PO3)2,Ca2P2O7,CaHPO4等が含まれている。尚、リン含有灰は、酸化カルシウムを主成分として含む粒子よりも粒度が小さい。
【0057】
一方、灰分分離装置6は、酸化カルシウムを主成分として含む粒子を、循環酸化カルシウム供給路17を通じて改質装置4に供給する。これにより、酸化カルシウムは、改質装置4、熱分解装置3、燃焼装置5および灰分分離装置6を循環し、繰り返し利用され、上述した複数の役割を果たす。
【0058】
灰分分離装置6は、燃焼固体生成物を、酸化カルシウムを主成分として含む粒子と、それ以外の燃焼固体生成物とに分離することができる装置であればよく、例えばサイクロンが挙げられるものの、その構成は特に限定されない。
【0059】
本実施の形態に係る水素製造装置は、リン酸三カルシウムを含むリン含有灰を回収してもよい。そのため、本実施の形態に係る水素製造装置は、リン含有灰排出路21から供給された、リン酸三カルシウムを含むリン含有灰に酸を添加して、リン酸三カルシウムと反応させ、リン酸およびリン酸二水素カルシウム等の溶解性リン酸化合物を製造するリン酸製造装置(図示しない)をさらに備えていてもよい。
【0060】
〔酸化カルシウムの再生装置〕
本実施形態に係る酸化カルシウムの再生装置(以下、再生装置と記す)は、上述した水素製造装置の各種設備を利用して、酸化カルシウムを活性のある酸化カルシウム、より具体的には、熱分解装置や改質装置における反応促進効果の大きい粒子状酸化カルシウム(以下、活性酸化カルシウムと記す)に再生する装置である。
【0061】
図1に示されるように、本実施形態に係る再生装置は、小型の再生炉8を備えている。本実施形態では、熱分解装置3は、熱分解して得た熱分解生成物の一部を再生炉8に供給するように構成されている。また、燃焼装置5は、高濃度の二酸化炭素が含まれた燃焼ガスを、燃焼ガス排出路20に分岐する燃焼ガス供給路23を通じて再生炉8に供給する。再生炉8は、燃焼装置5から供給された燃焼ガスを、燃焼ガス返送路25を通じて、燃焼ガス排出路20へ返送する。また、再生炉8には、燃料供給路24を通じて、外部から燃料が供給される。
【0062】
再生炉8は、熱分解して得た熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する。より具体的には、再生炉8は、熱分解装置3から供給された熱分解固体生成物を、600℃~1200℃、より好ましくは750℃~1100℃、さらに好ましくは800~950℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。また、再生炉8内部は、燃焼装置5から供給された燃焼ガスにより、二酸化炭素を多く含む雰囲気となっている。
【0063】
再生炉8において、供給される熱分解固体生成物に含まれる炭酸カルシウムが、二酸化炭素雰囲気下で焼成されることにより、活性酸化カルシウムに再生される。そして、再生炉8にて再生された活性酸化カルシウムは、熱分解装置3へ返送される。尚、本実施形態に係る再生装置は、
図1に示された構成に限定されず、再生炉8にて再生された活性酸化カルシウムが熱分解装置3、改質装置4、および燃焼装置5の少なくとも一つに返送される構成であればよい。
【0064】
本実施形態に係る再生装置では、熱分解装置3にて生成された熱分解固体生成物の一部を再生炉8により活性酸化カルシウムに再生している。そして、この活性酸化カルシウムの再生に、燃焼装置5にて排出される燃焼ガスが利用されている。それゆえ、酸化カルシウムの再生のために設備を別途設ける必要がなく、水素製造装置の各種設備を有効利用しているので、コストを掛けずに酸化カルシウム(CaO)を再生することができる。
【0065】
〔酸化カルシウム再生方法〕
本実施形態における酸化カルシウム再生方法(以下、単に、再生方法と記す)では、例えば、上述の水素製造装置での各種設備を利用して酸化カルシウムを再生している。本実施形態に係る再生方法に利用する設備は、上述の水素製造装置に限定されず、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備え、前記燃焼装置から酸化カルシウムの再生に利用し得る燃焼ガスを排出可能な設備であればよい。
【0066】
本実施形態に係る再生方法は、例えば、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下にて熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程にて得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼工程と、前記熱分解工程にて得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度を高めた改質ガスを製造する改質工程と、を含む水素製造方法を利用する方法であって、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記燃焼工程から排出された燃焼ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する再生工程Aと、前記再生工程Aにて再生された酸化カルシウムを前記熱分解工程、前記燃焼工程および前記改質工程の少なくとも一つの工程に返送する返送工程と、を含む。
【0067】
より具体的には、本実施形態にて利用される水素製造方法は、主に、混合工程、脱水工程、乾燥工程、熱分解工程、改質工程、燃焼工程、および灰分分離工程を含んでいる。また、前記水素製造方法は、水素の製造を連続的に行うことができるように、各工程の間に、搬送工程を含んでいる。
【0068】
以下、本実施形態にて利用される水素製造方法および再生方法を構成する各工程に関して説明する。但し、上述した水素製造装置および再生装置において説明した内容と重複する内容に関しては、その説明を簡略化または省略することとする。
【0069】
<混合工程および脱水工程>
混合工程では、汚泥スラリー(リン含有バイオマス)に、上述した無機カルシウム化合物を混合する。混合工程と脱水工程とを行う順序は、特に限定されないものの、脱水工程の前に混合工程を行うことにより、通常の脱水方法よりも脱水性を向上させることができる。汚泥スラリーに混合する無機カルシウム化合物の添加量は、上述した通りである。尚、混合工程および脱水工程は、乾燥工程および水分調整工程よりも前に行われる。
【0070】
脱水工程では、前記混合工程で得られた汚泥スラリーと無機カルシウム化合物との混合物を脱水する。即ち、汚泥スラリーから水分を含む分離液を除去する。分離液を除去した混合物は、次の乾燥工程に供される。
【0071】
尚、汚泥スラリーと無機カルシウム化合物とを混合する具体的な混合方法、並びに、汚泥スラリーと無機カルシウム化合物との混合物を脱水する具体的な脱水方法は、特に限定されない。
【0072】
尚、水素製造方法が脱水工程を含まない場合、上述した混合物の含水率の範囲の含水率である汚泥スラリーを用いることが好ましい。
【0073】
<乾燥工程>
乾燥工程では、脱水工程を経て得た前記混合物の一部を取り出し、取り出した混合物に含まれる水分の一部を蒸発させる。蒸発させた水分(乾燥水蒸気)の一部は、冷却されることによって凝縮し、除去水として排出される。残りは、乾燥工程および燃焼工程において熱源として利用される。
【0074】
尚、混合物を乾燥させる具体的な乾燥方法は、特に限定されないものの、間接加熱型乾燥機を用いた方法であることが好ましい。間接加熱型乾燥機を用いることにより、改質工程および燃焼工程で生じた高温の水蒸気を熱媒として利用することができるため、熱効率を高めることができる。
【0075】
<熱分解工程>
熱分解工程では、乾燥工程を経て得た混合物を、水蒸気の存在下、400℃~900℃、より好ましくは600℃~800℃、さらに好ましくは700℃程度で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、熱分解する。即ち、熱分解工程での混合物の加熱温度は400℃~900℃、より好ましくは600℃~800℃、さらに好ましくは700℃程度であり、滞留時間は0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間である。
【0076】
熱分解工程においては、上述した反応により熱分解を行い、熱分解固体生成物および熱分解ガスである可燃性ガスを生成する。熱分解して得た熱分解固体生成物は、燃焼工程に供される。そして、熱分解して得た可燃性ガスは、次の改質工程に供される。また、熱分解工程においては、改質工程で用いられた酸化カルシウム「CaO」が供給(循環)されると共に、必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物の一部が供給される。
【0077】
尚、水分調整物を熱分解させる具体的な熱分解方法は、特に限定されない。
【0078】
熱分解固体生成物に含まれるリン酸三カルシウムの融点は1390℃と高いため、熱分解工程および下記燃焼工程における、リン化合物の溶融による焼却炉への付着およびそれに伴う焼却炉の閉塞を防止することができる。それゆえ、水素製造方法をより安定して連続運転することが可能となる。
【0079】
<改質工程>
改質工程では、熱分解工程で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質を行うことによって上述した反応を行い、当該可燃性ガスよりも水素濃度を高めた第二の可燃性ガスを製造する。製造した第二の可燃性ガスは、冷却され、高濃度の水素を含むガスとして回収される。第二の可燃性ガスから回収された熱は、燃焼工程に供給される。
【0080】
改質工程では、熱分解工程を経て得た可燃性ガスを、800℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは950℃程度で加熱しながら、0.5時間~3.0時間、より好ましくは1.0時間~2.5時間、滞留させることにより、水蒸気改質を行う。即ち、改質工程での可燃性ガスの加熱温度は800℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは950℃程度であり、滞留時間は0.5時間~3.0時間、より好ましくは1.0時間~2.5時間である。
【0081】
また、改質工程においては、灰分分離工程にて分離された酸化カルシウム「CaO」が供給(循環)されると共に、必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物の一部が供給される。さらに、改質工程で用いられた酸化カルシウムは、熱分解工程に供給(循環)される。
【0082】
尚、前記可燃性ガスを水蒸気改質する具体的な改質方法は、特に限定されない。
【0083】
<燃焼工程>
燃焼工程では、熱分解工程で得られた熱分解固体生成物を燃焼させることによって上述した反応を行い、燃焼生成物として、燃焼固体生成物および燃焼ガスを得る。燃焼固体生成物および燃焼ガスは、次の灰分分離工程に供給する。燃焼ガスには、高濃度の二酸化炭素が含まれる。燃焼工程においては、空気または酸素含有ガスと共に、熱源となる燃焼用ガスが、外部から供給される。また、燃焼工程においては、必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物の一部が供給される。
【0084】
燃焼工程では、熱分解工程を経て得た熱分解固体生成物を、850℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは1100℃程度で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、燃焼する。即ち、燃焼工程での熱分解固体生成物の加熱温度は850℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは1100℃程度であり、滞留時間は0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間である。
【0085】
さらに、燃焼工程においては、必要に応じて、乾燥工程から上述した混合物が供給される。当該混合物は、燃焼工程において前記燃焼用ガスの燃焼による熱量だけで熱分解固体生成物の燃焼を行うことが困難である場合に、熱源として燃焼される。混合物を燃焼させることにより、外部から供給される燃焼用ガスの量を削減することができるので、エネルギーの使用量を削減することができる。
【0086】
尚、前記熱分解固体生成物を燃焼させる具体的な燃焼方法は、特に限定されない。
【0087】
<灰分分離工程>
灰分分離工程では、燃焼工程で得られた燃焼固体生成物から、酸化カルシウムを主成分として含む粒子と、リン酸三カルシウム、石膏および灰分等を含む固体成分であるリン含有灰(酸化カルシウム以外の燃焼固体生成物)とを分離する。
【0088】
一方、酸化カルシウムを主成分として含む粒子は、改質工程に供給される。これにより、酸化カルシウムは、改質工程、熱分解工程、燃焼工程および灰分分離工程を循環し、繰り返し利用され、上述した複数の役割を果たす。
【0089】
尚、燃焼固体生成物を、酸化カルシウムを主成分として含む粒子と、それ以外の燃焼固体生成物とに分離する具体的な分離方法は、特に限定されないものの、例えばサイクロンを用いた分離方法が好ましい。
【0090】
<再生工程A>
再生工程Aでは、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記燃焼工程から排出された燃焼ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する。
【0091】
再生工程Aでは、熱分解工程から供給された熱分解固体生成物を、600℃~1200℃、より好ましくは750℃~1100℃、さらに好ましくは800~950℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。また、前記燃焼工程から排出された燃焼ガスには、高濃度の二酸化炭素が含まれる。再生工程では、当該燃焼ガスにより、二酸化炭素を多く含む雰囲気下で熱分解固体生成物が焼成される。
【0092】
ここで、炭酸カルシウムは、高温の二酸化炭素の存在下にて焼成することによって、熱分解され、活性酸化カルシウムが生成することが知られている。
【0093】
よって、前記再生工程Aにおいて、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、高温の条件下にて、前記燃焼工程から排出された燃焼ガス、すなわち、二酸化炭素を含むガスの存在下にて、焼成することによって、前記炭酸カルシウムが熱分解され、活性酸化カルシウムが再生される。
【0094】
<返送工程>
返送工程では、前記再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解工程、前記燃焼工程および前記改質工程の少なくとも一つの工程に返送する。そして、前記返送工程にて返送された酸化カルシウムは、前記熱分解工程、前記燃焼工程および前記改質工程の間を循環する。
【0095】
[実施形態2]
以下、本発明の他の実施形態について、詳細に説明する。尚、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図2は、本実施形態に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0096】
〔酸化カルシウムの再生装置〕
図2に示されるように、本実施形態に係る再生装置は、酸化カルシウムの再生に、改質装置4から排出される第二の可燃性ガス、即ち、高濃度の水素を含む改質ガスを利用する点が前記実施形態1と異なる。より具体的には、本実施形態に係る再生装置は、熱分解装置3と、燃焼装置5と、改質装置4と、再生炉8と、を備え、改質装置4から排出された第二の可燃性ガス、即ち、高濃度の水素を含む改質ガスが再生炉8に供給される構成である。
【0097】
本実施形態に係る再生装置では、改質装置4は、高濃度の水素を含む第二の可燃性ガスを、可燃性ガス排出路22から分岐する第二可燃性ガス供給路26を通じて再生炉8に供給する。再生炉8は、改質装置4から供給された第二の可燃性ガスを、第二可燃性ガス返送路27を通じて、可燃性ガス排出路22へ返送する。
【0098】
再生炉8は、熱分解装置3から供給された熱分解固体生成物を、600℃~1200℃、より好ましくは750℃~1100℃、さらに好ましくは800~950℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。また、再生炉8内部は、改質装置4から供給された第二の可燃性ガス(改質ガス)により、水素を多く含む雰囲気となっている。
【0099】
再生炉8において、供給される熱分解固体生成物に含まれる炭酸カルシウムが、水素雰囲気下で焼成されることにより、水素が還元ガスとして機能して酸化カルシウムに再生される。再生された酸化カルシウムは、活性酸化カルシウムである。そして、再生炉8にて再生された活性酸化カルシウムは、熱分解装置3へ返送される。
【0100】
本実施形態に係る再生装置では、活性酸化カルシウムの再生に、改質装置4にて排出される第二の燃焼ガスが利用されている。それゆえ、酸化カルシウムの再生のために設備を別途設ける必要がなく、水素製造装置の各種設備を有効利用しているので、コストを掛けずに酸化カルシウム(CaO)を再生することができる。
【0101】
〔酸化カルシウムの再生方法〕
本実施形態に係る再生方法に利用する設備は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備え、前記改質装置から酸化カルシウムの再生に利用し得る可燃性ガスを排出可能な設備であればよい。
【0102】
本実施形態に係る再生方法は、例えば、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下にて熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程にて得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼工程と、前記熱分解工程にて得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度を高めた改質ガスを製造する改質工程と、を含む水素製造方法を利用する方法であって、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記改質工程から排出された改質ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する再生工程Bと、前記再生工程Bにて再生された酸化カルシウムを前記熱分解工程、前記燃焼工程および前記改質工程の少なくとも一つの工程に返送する返送工程と、を含む。
【0103】
<再生工程B>
再生工程Bでは、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記改質工程にて得られた改質ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する、再生工程Bを含む。
【0104】
再生工程Bでは、熱分解工程から供給された熱分解固体生成物を、600℃~1200℃、より好ましくは750℃~1100℃、さらに好ましくは800~950℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。
【0105】
ここで、炭酸カルシウムの熱分解反応は、還元雰囲気下にて好適に進行することが知られている。また、前記改質ガスは、還元ガスである水素「H2」ガスを高濃度で含んでいる。
【0106】
よって、前記再生工程Bにおいて、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、高温高圧の条件下にて、還元ガスである水素を高濃度で含む前記改質ガスの存在下にて、焼成することによって、前記炭酸カルシウムが熱分解され、酸化カルシウムが再生される。
【0107】
[実施形態3]
以下、本発明のさらに他の実施形態について、詳細に説明する。尚、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図3は、本実施形態に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0108】
〔酸化カルシウムの再生装置〕
図3に示されるように、本実施形態に係る再生装置は、酸化カルシウムの再生に、発電設備7から排出される発電排ガスを利用する点が前記実施形態1と異なる。より具体的には、本実施形態に係る再生装置は、熱分解装置3と、燃焼装置5と、改質装置4と、発電設備7と、を備え、発電設備7から排出された発電排ガスが燃焼装置5に供給される構成である。
【0109】
本実施形態に係る再生装置は、発電設備7から排出された発電排ガスを供給するための発電排ガス供給路28を備えている。この発電排ガス供給路28は、燃焼装置5に接続する分岐路29と、燃焼ガス排出路20に接続する分岐路30と、を有している。発電設備7は、排ガスを、発電排ガス供給路28から分岐路29を通じて燃焼装置5に供給する。また、発電設備7型排出される排ガスは、発電排ガス供給路28から分岐路30を通じて燃焼ガス排出路20を介して外部に排出される。
【0110】
燃焼装置5は、熱分解装置3から供給された熱分解固体生成物を、850℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは1100℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。また、燃焼装置5内部は、発電設備7から供給された発電排ガスにより、二酸化炭素および水蒸気を多く含む雰囲気となっている。
【0111】
燃焼装置5において、供給される熱分解固体生成物に含まれる炭酸カルシウムが、二酸化炭素および水蒸気を含む雰囲気下で焼成されることにより、酸化カルシウムに再生される。再生された酸化カルシウムは、活性酸化カルシウムである。そして、燃焼装置5は、生成された活性酸化カルシウムを、燃焼固体生成物供給路16を通じて灰分分離装置6に供給する。
【0112】
本実施形態に係る再生装置では、活性酸化カルシウムの再生に、発電設備7にて排出される発電排ガスが利用されている。それゆえ、酸化カルシウムの再生のために設備を別途設ける必要がなく、水素製造装置の各種設備を有効利用しているので、コストを掛けずに酸化カルシウム(CaO)を再生することができる。
【0113】
〔酸化カルシウムの再生方法〕
本実施形態に係る再生方法に利用する設備は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備え、前記発電設備から酸化カルシウムの再生に利用し得る発電排ガスを排出可能な設備であればよい。
【0114】
本実施形態に係る再生方法は、例えば、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下にて熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程にて得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼工程と、前記熱分解工程にて得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度を高めた改質ガスを製造する改質工程と、前記改質工程にて得られた前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電工程と、を含む水素製造方法を利用する方法であって、前記発電工程から排出される発電排ガスの少なくとも一部を前記燃焼工程に供給し、前記燃焼工程にて、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を前記発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する方法である。
【0115】
燃焼工程では、熱分解工程から供給された熱分解固体生成物を、850℃~1200℃、より好ましくは900℃~1150℃、さらに好ましくは1100℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。
【0116】
<発電工程>
前記発電工程では、前記改質工程にて得られた前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う。具体的には、前記改質ガス、より詳細には、前記改質ガスに含まれる水素ガスを燃焼させて得られる熱量を用いてタービンを回転させ、当該熱量を電気に変換する工程である。
【0117】
前記発電工程において、発電排ガスが生成される。前記発電排ガスには、水素が燃焼してなる水蒸気「H2O」が含まれる。また、前記発電工程に供給される改質ガスには、炭素「C」が含まれ得ることから、前記発電排ガスには、二酸化炭素が含まれ得る。
【0118】
前記発電工程にて使用される発電設備7としては、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)またはガスエンジン(GE)が挙げられる。
【0119】
[実施形態4]
以下、本発明のさらに他の実施形態について、詳細に説明する。尚、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図4は、本実施形態に係る酸化カルシウム再生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0120】
〔酸化カルシウムの再生装置〕
図4に示されるように、本実施形態に係る再生装置は、酸化カルシウムの再生に、発電設備7から排出される発電排ガスを利用する点が前記実施形態1と異なる。また、再生炉8を備えた点が実施形態3と異なる。より具体的には、本実施形態に係る再生装置は、熱分解装置3と、燃焼装置5と、改質装置4と、再生炉8と、発電設備7と、を備え、発電設備7から排出された発電排ガスが再生炉8に供給される構成である。
【0121】
本実施形態に係る再生装置では、発電設備7は、発電排ガスを、発電排ガス排出路31を通じて、燃焼ガス排出路20から外部へ排出する。また、発電設備7は、発電排ガスを、発電排ガス排出路31と分岐する発電排ガス供給路32を通じて、再生炉8に供給する。再生炉8は、発電設備7から供給された発電排ガスを、発電排ガス返送路33を通じて、発電排ガス排出路31へ返送する。
【0122】
再生炉8は、熱分解装置3から供給された熱分解固体生成物を、600℃~1200℃、より好ましくは750℃~1100℃、さらに好ましくは800~950℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。また、再生炉8内部は、発電設備7から供給された発電排ガスにより、二酸化炭素および水蒸気を多く含む雰囲気となっている。
【0123】
再生炉8において、供給される熱分解固体生成物に含まれる炭酸カルシウムが、二酸化炭素および水蒸気を含む雰囲気下で焼成されることにより、酸化カルシウムに再生される。再生された酸化カルシウムは、活性酸化カルシウムである。そして、再生炉8にて再生された活性酸化カルシウムは、熱分解装置3へ返送される。
【0124】
本実施形態に係る再生装置では、活性酸化カルシウムの再生に、発電設備7から供給された発電排ガスが利用されている。それゆえ、酸化カルシウムの再生のために設備を別途設ける必要がなく、水素製造装置の各種設備を有効利用しているので、コストを掛けずに酸化カルシウム(CaO)を再生することができる。
【0125】
尚、本実施形態では、
図4に示された構成において、さらに、発電設備7が発電排ガスを燃焼装置5に供給していてもよい。このような構成では、酸化カルシウムの再生は、再生炉8および燃焼装置5の少なくとも一つにて行われる。この場合、再生炉8での酸化カルシウムの再生および燃焼装置5での酸化カルシウムの再生を切り替える切替部を備えることが好ましい。
【0126】
〔酸化カルシウムの再生方法〕
本実施形態に係る再生方法に利用する設備は、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備え、前記発電設備から酸化カルシウムの再生に利用し得る発電排ガスを排出可能な設備であればよい。
【0127】
本実施形態に係る再生方法は、例えば、リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下にて熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程にて得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼工程と、前記熱分解工程にて得られた燃焼ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記燃焼ガスよりも水素濃度を高めた改質ガスを製造する改質工程と、前記改質工程にて得られた前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電工程と、を含む水素製造方法を利用する方法であって、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電工程から排出される発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する再生工程Cと、前記再生工程Cにて再生された酸化カルシウムを前記熱分解工程、前記燃焼工程および前記改質工程の少なくとも一つの工程に返送する返送工程と、を含む。
【0128】
<再生工程C>
再生工程Cでは、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電工程から排出される発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する。
【0129】
再生工程Cでは、熱分解工程から供給された熱分解固体生成物を、600℃~1200℃、より好ましくは750℃~1100℃、さらに好ましくは800~950℃で加熱しながら、0.1時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間、滞留させることにより、焼成する。
【0130】
ここで、炭酸カルシウムを熱分解して酸化カルシウムを生成(再生)する熱分解反応において、水蒸気および任意で二酸化炭素を含むガスの存在下にて、その反応を好適に促進することが知られている。また、前記発電排ガスには、水蒸気が含まれ、二酸化炭素が含まれ得る。
【0131】
よって、前記再生工程Cにおいて、前記熱分解工程で生成した炭酸カルシウムの少なくとも一部を、高温の条件下にて、水蒸気および任意で二酸化炭素を含む前記発電排ガスの存在下にて、焼成することによって、前記炭酸カルシウムが熱分解され、酸化カルシウムが再生される。
【0132】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0133】
〔まとめ〕
本発明には、以下の構成が包含されている。
【0134】
<1>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記発電設備から排出される発電排ガスの少なくとも一部を前記燃焼装置に供給し、前記燃焼装置にて、前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する、酸化カルシウム再生方法。
【0135】
<2>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記燃焼装置から排出された燃焼ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する第1再生工程と、
前記第1再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、
を含む酸化カルシウム再生方法。
【0136】
<3>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記改質装置から排出された改質ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムに再生する第2再生工程と、
前記第2再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、
を含む酸化カルシウム再生方法。
【0137】
<4>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備えた設備を利用して酸化カルシウムを再生する酸化カルシウム再生方法であって、
前記熱分解装置にて生成された炭酸カルシウムの少なくとも一部を、前記発電設備から排出される発電排ガスの少なくとも一部の存在下にて焼成し、酸化カルシウムを再生する第3再生工程と、
前記第3再生工程にて再生された酸化カルシウムを前記熱分解装置、前記燃焼装置および前記改質装置の少なくとも一つに返送する返送工程と、
を含む酸化カルシウム再生方法。
【0138】
<5>
前記設備は、水素の製造に使用される、<1>~<4>の何れかに記載の酸化カルシウム再生方法。
【0139】
<6>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、
前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、
前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、
前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、を備え、
前記燃焼装置に、前記発電設備から排出される発電排ガスが供給される、酸化カルシウム再生装置。
【0140】
<7>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、
前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、
前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、
前記熱分解装置にて生成された熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する再生炉と、を備え、
前記再生炉に、前記燃焼装置から排出された燃焼ガス、または前記改質装置から排出された改質ガスが供給される、酸化カルシウム再生装置。
【0141】
<8>
リン含有バイオマスと無機カルシウムとの脱水混合物を水蒸気の存在下で熱分解する熱分解装置と、
前記熱分解装置で得られた熱分解生成物を燃焼する燃焼装置と、
前記熱分解装置で得られた可燃性ガスから、酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、前記可燃性ガスよりも水素濃度が高い改質ガスを製造する改質装置と、
前記改質ガスに含まれる水素を燃料として発電を行う発電設備と、
前記熱分解装置にて生成された熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムを酸化カルシウムに再生する再生炉と、を備え、
前記再生炉に、前記発電設備から排出される発電排ガスが供給される、酸化カルシウム再生装置。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の一実施の形態に係る酸化カルシウムの再生方法および再生装置は、例えば、下水処理場で発生する下水汚泥、し尿処理場で発生するし尿汚泥、肉骨粉、畜糞等のリン含有バイオマスを原料とする水素の製造において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0143】
1 脱水装置(混合装置)
2 乾燥装置
3 熱分解装置
4 改質装置
5 燃焼装置
6 灰分分離装置