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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019026226
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020131855
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月24日にマツダ株式会社に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 拓志
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和己
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189793(JP,A)
【文献】特開2004-155263(JP,A)
【文献】特開2008-265447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器を収容し、内部で空調風を生成する空調ケーシングと、
前記空調ケーシングの内部に形成されたベント通路を開閉するベントダンパとを備えた車両用空調装置において、
前記ベントダンパは、車幅方向に延びる支軸と、当該支軸に設けられ、ベント通路を開閉する閉塞板部とを備え、
前記空調ケーシングの車幅方向一側に配置される側壁部には、前記ベントダンパの前記支軸が車幅方向他側から挿入可能な支持孔が形成され、
前記空調ケーシングには、前記ベント通路における前記側壁部から車幅方向他側に離れて配置されるブリッジ部が一体成形され、
前記閉塞板部は、前記空調ケーシングの前記側壁部と前記ブリッジ部との間に配置され、
前記閉塞板部における前記ブリッジ部と対向する部位には、前記ベントダンパが閉状態にあるときに空調風を前記ベント通路の下流側へ漏らすための切欠部が形成され、
前記閉塞板部の前記切欠部における前記ブリッジ部と対向するように配置される縁部には、弾性材からなる風量調整部が前記ブリッジ部に接近する方向へ突出するように設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記風量調整部は、前記ブリッジ部に接近する方向へ突出する板状に形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
前記風量調整部はエラストマーで構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記閉塞板部は樹脂材で構成されており、
前記風量調整部は、前記閉塞板部に一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
前記閉塞板部の周縁部には、閉状態のときに前記空調ケーシングの内面に接触するシール部が設けられ、
前記シール部は、前記風量調整部を構成するエラストマーからなり、当該風量調整部と一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記ベント通路は、車幅方向中央部に位置するセンタベント通路と、当該センタベント通路の車幅方向両側にそれぞれ位置するサイドベント通路とを有し、
前記ブリッジ部は、前記センタベント通路と前記サイドベント通路との間に配置されて当該センタベント通路と当該サイドベント通路とを仕切る仕切部であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用空調装置において、
前記閉塞板部は、前記サイドベント通路に配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項6に記載の車両用空調装置において、
前記ブリッジ部は前記センタベント通路及び前記サイドベント通路の延びる方向に延びる板状をなしていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用空調装置において、
前記閉塞板部の前記切欠部における前記ブリッジ部と対向するように配置される縁部は、前記ブリッジ部の延びる方向に沿うように形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置においては、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器と、空調用空気を加熱する加熱用熱交換器と、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過する空調用空気の量を変更するエアミックスダンパとが空調ケーシング内に収容されており、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過した冷風及び温風を混合させて所望温度の調和空気が生成されるように構成されている。そして、空調ケーシング内で生成された調和空気は、デフロスタ通路、ベント通路、ヒート通路等から車室の各部に供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の車両用空調装置は、デフロスタ通路を開閉するデフロスタダンパ、ベント通路を開閉するベントダンパ、ヒート通路を開閉するヒートダンパ等の吹出方向切替用ダンパを備えている。これら吹出方向切替用ダンパは、空調ケーシングに支持される支軸と閉塞板部とが一体化されてなるものであり、吹出方向切替用ダンパを回動させることによって各通路を開閉し、例えば、デフロスタモード、ベントモード、ヒートモード、バイレベルモード等の中から任意の吹出モードに切り替えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-144532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ベントダンパを空調ケーシングに組み付ける場合を想定すると、ベントダンパの支軸を空調ケーシングに形成された支持孔に挿入するとともに、閉塞板部をベント通路の所定位置に配置する必要がある。このとき、特許文献1のベントダンパの支軸は車幅方向に延びているので、ベントダンパを空調ケーシングに対して車幅方向一方側に配置した後、他方側に移動させることによって支軸を空調ケーシングの支持孔に挿入することができる。
【0006】
しかしながら、空調ケーシングのベント通路には、空調ケーシングの変形を抑制する等の目的で、空調ケーシングと一体成形されたブリッジ部が配置されることがある。ブリッジ部がベント通路に配置されていると、ベントダンパの組み付け時にベントダンパを車幅方向に移動させようとした際に、ベントダンパの閉塞板部がブリッジ部に接触して干渉してしまい、ベントダンパの組み付けが困難になることが考えられる。
【0007】
また、例えばヒートモード時においてもベント通路に少量の空調風を流通させるべく、ベントダンパの閉塞板部の一部に切欠部を形成してベントダンパが閉状態にあるときに、ベント通路に空調風を漏らすように構成する場合がある。これにより、例えばサイドガラスを曇りにくくする等の効果が期待できる。この場合、空調風の漏らし量が多すぎると乗員が違和感を覚えることになるので、切欠部の大きさを適切な大きさに設定する必要がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、閉状態にあるときにベント通路に適切な量の空調風を漏らすことが可能に構成されたベントダンパを、空調ケーシングのベント通路内に配置されるブリッジ部との干渉を防止しながら、当該空調ケーシングに容易に組み付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、熱交換器を収容し、内部で空調風を生成する空調ケーシングと、前記空調ケーシングの内部に形成されたベント通路を開閉するベントダンパとを備えた車両用空調装置において、前記ベントダンパは、車幅方向に延びる支軸と、当該支軸に設けられ、ベント通路を開閉する閉塞板部とを備え、前記空調ケーシングの車幅方向一側に配置される側壁部には、前記ベントダンパの前記支軸が車幅方向他側から挿入可能な支持孔が形成され、前記空調ケーシングには、前記ベント通路における前記側壁部から車幅方向他側に離れて配置されるブリッジ部が一体成形され、前記閉塞板部は、前記空調ケーシングの前記側壁部と前記ブリッジ部との間に配置され、前記閉塞板部における前記ブリッジ部と対向する部位には、前記ベントダンパが閉状態にあるときに空調風を前記ベント通路の下流側へ漏らすための切欠部が形成され、前記閉塞板部の前記切欠部における前記ブリッジ部と対向するように配置される縁部には、弾性材からなる風量調整部が前記ブリッジ部に接近する方向へ突出するように設けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、例えばヒートモード時にベントダンパが閉状態にされると、空調風がベントダンパの閉塞板部に形成された切欠部からベント通路の下流側へ漏れるので、例えばサイドガラスの曇りを抑制する等の効果が期待できる。閉塞板部の切欠部の縁部には、風量調整部が設けられているので、空調風の漏らし量が多すぎないようにして適切な量に設定することが可能になる。
【0011】
一方、ベントダンパを空調ケーシングに組み付ける際には、支軸を空調ケーシングの支持孔に対して車幅方向他側から一側へ移動させて支持孔に挿入することになる。このとき、ベント通路にはブリッジ部が配置されているので、このブリッジ部と側壁部との間にベントダンパの閉塞板部を配置する必要があり、ベントダンパの組み付け時における車幅方向の移動量がブリッジ部の存在によって確保できないことが考えられる。
【0012】
本発明では、閉塞板部の切欠部におけるブリッジ部と対向する縁部には、弾性材からなる風量調整部が設けられているので、この風量調整部を例えばブリッジ部に押し当てて弾性変形させることで、ベントダンパの組み付け時における車幅方向の移動量が増え、これにより、ベントダンパの支軸を空調ケーシングの支持孔に容易に挿入することが可能になる。支軸を支持孔に挿入することで閉塞部材がブリッジ部から離れる方向に移動して所定の組付位置に配置され、これにより、風量調整部の形状が復元する。
【0013】
第2の発明は、前記風量調整部は、前記ブリッジ部に接近する方向へ突出する板状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、風量調整部が板状をなしているので、空調風の漏らし量の調整が容易に行えるようになる。また、風量調整部を例えばブリッジ部に押し当てた際に風量調整部が簡単に撓み変形ないし屈曲変形するようになる。
【0015】
第3の発明は、前記風量調整部はエラストマーで構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、風量調整部が容易に変形してベントダンパの組付作業性が向上する。また、変形後の風量調整部の形状が復元して所期の風量を確保する効果が得られる。
【0017】
第4の発明は、前記閉塞板部は樹脂材で構成されており、前記風量調整部は、前記閉塞板部に一体成形されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、閉塞板部と風量調整部とを一体成形することで部品点数が削減される。また、閉塞板部と風量調整部との間に隙間が無くなり、空調風の無用な漏れが抑制される。
【0019】
第5の発明は、前記閉塞板部の周縁部には、閉状態のときに前記空調ケーシングの内面に接触するシール部が設けられ、前記シール部は、前記風量調整部を構成するエラストマーからなり、当該風量調整部と一体成形されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、閉塞板部のシール部と風量調整部とが一体成形されることで、部品点数が削減される。また、成形時には、シール部と風量調整部とを一工程で成形することが可能になる。この場合、2色成形法等を利用して成形することができる。
【0021】
第6の発明は、前記ベント通路は、車幅方向中央部に位置するセンタベント通路と、当該センタベント通路の車幅方向両側にそれぞれ位置するサイドベント通路とを有し、前記ブリッジ部は、前記センタベント通路と前記サイドベント通路との間に配置されて当該センタベント通路と当該サイドベント通路とを仕切る仕切部であることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ブリッジ部を利用してセンタベント通路とサイドベント通路とを仕切ることが可能になる。
【0023】
第7の発明は、前記閉塞板部は、前記サイドベント通路に配置されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、空調風が閉塞板部の切欠部によってサイドベント通路の下流側に漏れるようになるので、空調風がサイドガラスの近傍に達し易くなる。
【0025】
第8の発明は、前記ブリッジ部は前記センタベント通路及び前記サイドベント通路の延びる方向に延びる板状をなしていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、ブリッジ部によってセンタベント通路とサイドベント通路とを確実に仕切ることが可能になる。
【0027】
第9の発明は、前記閉塞板部の前記切欠部における前記ブリッジ部と対向するように配置される縁部は、前記ブリッジ部の延びる方向に沿うように形成されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、ベントダンパの組み付け時に風量調整部をブリッジ部に押し当てた際、切欠部の縁部がブリッジ部の延びる方向に沿っているので、風量調整部をブリッジ部と切欠部の縁部との間で容易に撓ませることが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、ベントダンパの閉塞板部におけるブリッジ部と対向する部位に空調風を漏らすための切欠部が形成され、切欠部におけるブリッジ部と対向する縁部に、弾性材からなる風量調整部がブリッジ部に接近する方向へ突出するように設けられているので、閉状態にあるときにベント通路に適切な量の空調風を漏らすことができるようにしながら、ベントダンパを空調ケーシングに容易に組み付けることができる。
【0030】
第2の発明によれば、風量調整部を板状に形成したので、空調風の漏らし量の調整を容易に行うことができるとともに、組み付け時に風量調整部を簡単に撓み変形させてベントダンパの組み付け時における車幅方向の移動量を増やすことができる。
【0031】
第3の発明によれば、風量調整部を容易に変形させて組付作業性を向上させることができるとともに、形状の復元性を高めて所期の風量調整効果を得ることができる。
【0032】
第4の発明によれば、樹脂材で構成された閉塞板部に、エラストマーで構成された風量調整部を一体成形したので、部品点数を削減することができるとともに、閉塞板部と風量調整部との間からの空調風の漏れを抑制することができる。
【0033】
第5の発明によれば、シール部と風量調整部とを一体成形することで、部品点数を削減することができるとともに、成形時の工程数も削減することができ、ベントダンパのコストを低減することができる。
【0034】
第6の発明によれば、ブリッジ部がセンタベント通路とサイドベント通路との間に配置される仕切部であるので、ブリッジ部を利用してセンタベント通路とサイドベント通路とを仕切ることができる。
【0035】
第7の発明によれば、閉塞板部の切欠部がサイドベント通路に配置されることになるので、空調風がサイドガラスの近傍に達し易くなり、サイドガラスの曇り抑制効果を高めることができる。
【0036】
第8の発明によれば、仕切部によってセンタベント通路とサイドベント通路とを確実に仕切ることができる。
【0037】
第9の発明によれば、閉塞板部の切欠部の縁部がブリッジ部の延びる方向に沿っているので、ベントダンパの組み付け時に風量調整部をブリッジ部に押し当てた際に容易に撓ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の正面図である。
図2】車両用空調装置の背面図である。
図3】車両用空調装置の左側面図である。
図4】車両用空調装置の右側面図である。
図5図2におけるV-V線断面図である。
図6】前席用ベントダンパを回動中心線の径方向から見た図である。
図7】左側ケーシング部材を右側から見た側面図である。
図8】左側ケーシング部材に前席用ベントダンパを挿入する前の状態を示す斜視図である。
図9図7におけるIX-IX線断面図であり、左側ケーシング部材に前席用ベントダンパを挿入する前の状態を示す。
図10】左側ケーシング部材に前席用ベントダンパを挿入した状態を示す図9相当図である。
図11】左側ケーシング部材に前席用ベントダンパを挿入した状態を示す図7相当図である。
図12】左側ケーシング部材の支持孔の軸線と前席用ベントダンパの軸線とを一致させた状態を示す図7相当図である。
図13】左側ケーシング部材の支持孔の軸線と前席用ベントダンパの軸線とを一致させた状態を示す図9相当図である。
図14図12のXIV-XIV線断面図である。
図15】風量調整部の屈曲方向が異なる場合の図14相当図である。
図16】前席用ベントダンパの支軸を左側ケーシング部材の支持孔に挿入した状態を示す図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を車両前側から見た図であり、図2は、車両用空調装置1を車両後側から見た図であり、図3は、車両用空調装置1を車両左側から見た図であり、図4は、車両用空調装置1を車両右側から見た図である。
【0041】
車両用空調装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されて車室の空調を行うものであり、図5に示すように、空調ケーシング2と、冷却用熱交換器3と、加熱用熱交換器4と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とを備えている。
【0042】
また、図示しないが、車両用空調装置1は送風ユニットを備えている。送風ユニットは、送風ケーシングと、送風機とを有しており、車室の助手席側に配設されている。送風機は、シロッコファン及び該シロッコファンを回転駆動するためのモータで構成されている。送風ケーシングは、車室内の空気と車室外の空気のいずれかを選択して空調用空気として導入することができるように構成されており、送風ケーシングに導入された空調用空気は送風機によって空調ケーシング2に送られるようになっている。空調用空気の送風量は、モータに印加される電圧によって変更可能になっている。送風ケーシングには、車室内の空気と車室外の空気との両方を同時に導入することが可能に構成されていてもよい。
【0043】
空調ケーシング2と送風ケーシングとは車幅方向(車両左右方向)に並ぶように配置されて車室の前端部に設けられているインストルメントパネル(図示せず)の内部に収容されている。空調ケーシング2と送風ケーシングとは一体に構成されていてもよいし、別体に構成されていてもよい。空調ケーシング2と送風ケーシングとが車幅方向に並ぶことなく、車幅方向中央部に配置されるように構成されていてもよい。また、空調ケーシング2と送風ケーシングとは接続されている。また、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0044】
尚、図示しないが、車両の車室よりも前にはエンジンが搭載されるエンジンルームが設けられている。エンジンルームには、冷凍サイクルを構成する圧縮機や凝縮器等が配設されている。また、エンジンの代わりに車両走行用のモータが搭載されていてもよい。
【0045】
(車両用空調装置の構成)
空調ケーシング2は、例えば複数の樹脂製部材を組み合わせて構成されており、冷却用熱交換器3と、加熱用熱交換器4と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とを収容する部材である。空調ケーシング2の分割構造は、特に限定されるものではないが、例えば、前後方向や上下方向とすることができる。この実施形態では、図1図4に示すように、空調ケーシング2が、前側ケーシング部材2Aと後側ケーシング部材2Bとに分割されるとともに、前側ケーシング部材2Aが上下方向に、後側ケーシング部材2Bが左右方向にそれぞれ分割されている。後側ケーシング部材2Bは、当該後側ケーシング部材2Bの左側を構成する左側ケーシング部材2Cと、当該後側ケーシング部材2Bの右側を構成する右側ケーシング部材2Dとで構成されている。従って、4つの部材を組み合わせることによって空調ケーシング2が構成されている。また、左側ケーシング部材2Cと右側ケーシング部材2Dとの合わせ部には、上下方向に延びる仕切板(図示せず)が配設されている。
【0046】
図4に示すように、空調ケーシング2の前部の右側壁部には、送風ユニットから送られてきた空調用空気を空調ケーシング2の内部に導入するための空気導入口2aが形成されている。車両用空調装置1は、空気導入口2aから導入された空調用空気を、冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4により温度調節可能に構成されている。詳細は後述するが、冷却用熱交換器3を通過した空気のうち、加熱用熱交換器4を通過する空気量が、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7によって設定される。
【0047】
空調ケーシング2における空気導入口2aの周縁部には、中間ダクト部2Eが一体成形されている。図2に示すように、中間ダクト部2Eは、右側へ突出するように形成されている。この中間ダクト部2Eの右端部に送風ケーシングが接続されており、送風ケーシングから送風された空調用空気が中間ダクト部2Eを介して空気導入口2aに流入するようになっている。尚、空気導入口2aは、送風ケーシングが配設されている側に形成されているが、空調ケーシング2の前部の左側壁部及び右側壁部のいずれに形成されていてもよい。
【0048】
図5に示すように、空調ケーシング2の上壁部の前側には、車両のフロントガラスの内面に向けて空調風を供給するためのデフロスタ吹出口2bが形成されている。このデフロスタ吹出口2bは左右方向に長い形状とされている。デフロスタ吹出口2bには図示しないデフロスタダクトが接続されている。デフロスタダクトの下流端部は、インストルメントパネルの前端部に形成されたデフロスタ口(図示せず)に接続されている。
【0049】
空調ケーシング2の上壁部におけるデフロスタ吹出口2bよりも後側には、前席に着座している乗員(前席乗員)の上半身に向けて空調風を供給するための前席用ベント吹出口2cが形成されている。図2に示すように、前席用ベント吹出口2cは、空調ケーシング2の車幅方向中央部に位置するセンタベント吹出口2c1と、当該センタベント吹出口2c1の車幅方向両側にそれぞれ位置するサイドベント吹出口2c2、2c2とを有している。センタベント吹出口2c1及びサイドベント吹出口2c2には、それぞれ、図示しないベントダクトが接続されている。センタベント吹出口2c1に連通するベントダクトの下流端部は、インストルメントパネルの車幅方向略中央部に形成されたセンタベント口(図示せず)に接続されている。サイドベント吹出口2c2に連通するベントダクトの下流端部は、インストルメントパネルの車幅方向両側にそれぞれ形成されたサイドベント口(図示せず)に接続されている。デフロスタ吹出口2bと前席用ベント吹出口2cとは前後方向に並ぶように配置されている。
【0050】
図4に示すように、空調ケーシング2の後壁部の下側には、乗員の足下近傍に向けて空調風を供給するためのヒート吹出口2dが形成されている。ヒート吹出口2dには図示しないヒートダクトが接続されている。ヒートダクトは、前席乗員の足下近傍まで延びるフロントヒートダクトと、後席乗員の足下近傍まで延びるリヤヒートダクトとからなり、前席乗員及び後席乗員の足下近傍に空調風を供給することができるようになっている。尚、ヒートダクトはフロントヒートダクトのみで構成されていてもよい。また、ヒート吹出口2dは複数設けることができる。
【0051】
図5に示すように、空調ケーシング2の内部には、空気導入通路R1と、上側温風生成通路R2aと、下側温風生成通路R2bと、デフロスタ通路R3と、前席用ベント通路R4と、ヒート通路R5と、上側通路R6aと、下側通路R6bとが形成されている。空気導入通路R1は、空調ケーシング2の内部において前側部分に形成されている。空気導入通路R1の上流端部は空気導入口2aに接続されている。空気導入通路R1は空気導入口2aから後側へ延びている。空気導入通路R1の下流端部に冷却用熱交換器3が配設されている。
【0052】
冷却用熱交換器3は、空気導入通路R1を流通する空調用空気を冷却するためのものである。冷却用熱交換器3は、空調ケーシング2の内部において前側に位置しており、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。冷却用熱交換器3の上部及び下部が空調ケーシング2によって保持されている。
【0053】
この実施形態では冷却用熱交換器3が、ヘッダタンク、チューブ及びフィン(図示せず)を有するエバポレータ(冷媒蒸発器)で構成されている。エバポレータは、従来から周知の冷凍サイクル装置の構成要素である。冷却用熱交換器3の内部を流通する低温の冷媒と冷却用熱交換器3の外部を通過する空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が冷却される。このときに冷却用熱交換器3の表面に発生した凝縮水は、図1図4に示すドレン管部2fから空調ケーシング2の外部に排出されるようになっている。空気導入通路R1は、冷風を生成する冷風生成通路でもある。
【0054】
加熱用熱交換器4は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向下流側(後側)において空調ケーシング2の上下方向中間部に配置されている。従って、冷却用熱交換器3は、加熱用熱交換器4よりも前方に配置されることになる。加熱用熱交換器4は冷却用熱交換器3から後側に離れて配置されており、加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には空間が設けられている。加熱用熱交換器4は、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。
【0055】
加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には、隔壁部21が上下方向に延びるように設けられている。隔壁部21よりも後側に、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bが形成されている。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bは、空調ケーシング2の内部において前後方向の中間部、かつ、上下方向の中間部に形成されることになり、上側温風生成通路R2aの下に下側温風生成通路R2bが位置することになる。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bは、隔壁部21から後側へ延びるように形成される。図示しないが、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの間に前後方向に延びる区画板を配設するようにしてもよい。
【0056】
上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bには、加熱用熱交換器4が配設されている。加熱用熱交換器4の略上半部が上側温風生成通路R2aに配置され、加熱用熱交換器4の略下半部が下側温風生成通路R2bに配置される。加熱用熱交換器4は、ヘッダタンク、チューブ及びフィン(図示せず)を有するヒータコアで構成されている。加熱用熱交換器4には、車両に搭載されているエンジン(図示せず)を循環するエンジン冷却水が供給パイプ4a(図1及び図3に示す)を介して供給されるようになっている。加熱用熱交換器4に供給されたエンジン冷却水と、加熱用熱交換器4の外部を通過する空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。加熱用熱交換器4に供給されたエンジン冷却水は、排出パイプ4b(図1及び図3に示す)によってエンジンに戻されるようになっている。供給パイプ4a及び排出パイプ4bの前側は、空調ケーシング2の前部に設けられたブラケット2g(図1及び図3に示す)によって保持されている。加熱用熱交換器4の上部及び下部は、空調ケーシング2に保持されている。また、加熱用熱交換器4の前後方向の寸法(外部空気の通過方向の寸法)は、冷却用熱交換器3の前後方向の寸法よりも短く設定されている。尚、加熱用熱交換器4は冷凍サイクルの凝縮器で構成されていてもよい。
【0057】
加熱用熱交換器4の上下方向の寸法は冷却用熱交換器3の上下方向の寸法よりも短く設定されており、空調ケーシング2の内部には、加熱用熱交換器4の上方に空間が形成されるとともに、加熱用熱交換器4の下方にも空間が形成される。これら空間は通路となるものであり、具体的には、空調ケーシング2の加熱用熱交換器4の上方には、冷却用熱交換器3を通過した冷風が流通する上側通路R6aが形成されており、また、空調ケーシング2の加熱用熱交換器4の下方には、冷却用熱交換器3を通過した冷風が流通する下側通路R6bが形成されている。
【0058】
上側通路R6aの上流端部は、冷却用熱交換器3における空気流れ方向下流側の面の上側と対向するように配置され、空気導入通路R1の下流端部の上側部分に連通している。上側通路R6aは、加熱用熱交換器4の上部よりも上方へ向けて延びている。また、上側通路R6aの中途部は、上側温風生成通路R2aの上流端部に連通可能となっている。上側通路R6aの中途部と、上側温風生成通路R2aの上流端部との間に、上側エアミックスダンパ6が配設されている。
【0059】
上側エアミックスダンパ6は、上側温風生成通路R2aの上流端部の開度を変更することによって上側温風生成通路R2aを流通する空気量を調整するためのものである。上側エアミックスダンパ6は、左右方向に延びる支軸6aと、支軸6aから径方向に延出する閉塞板部6bとを備えている。支軸6aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。支軸6aは、加熱用熱交換器3の上部近傍に配置されている。閉塞板部6bは、上側温風生成通路R2aの上流端部を全閉にした状態(図5に示す)から上方へ回動して上側温風生成通路R2aの上流端部を全開にした状態(図示せず)に切り替えられるとともに、全閉状態と全開状態との間の任意の位置に停止させることができるようになっている。上側エアミックスダンパ6が上側温風生成通路R2aの上流端部を全開にすると、上側通路R6aの下流側が閉塞板部6bによって遮断されて上側通路R6aの冷風が上側温風生成通路R2aに流入することになる。これがフルホット状態である。また、上側エアミックスダンパ6が上側温風生成通路R2aの上流端部を全閉にすると、上側通路R6aの下流側が閉塞板部6bによって全開にされて上側通路R6aの冷風が上側温風生成通路R2aに流入しなくなる。これはフルコールド状態である。
【0060】
また、下側通路R6bの上流端部は、冷却用熱交換器3における空気流れ方向下流側の面の下側と対向するように配置され、空気導入通路R1の下流端部の下側部分に連通している。従って、空気導入通路R1から流出した冷風は、上側通路R6a及び下側通路R6bの両方に流入することになる。下側通路R6bは、冷却用熱交換器3の後側から加熱用熱交換器4の下方を通って加熱用熱交換器4よりも後側へ向けて延びており、空調ケーシング2の下部後側に達している。下側通路R6bは、空調ケーシング2の下部後側から上方へ湾曲しながら延び、空調ケーシング2の後壁部に沿って該空調ケーシング2の上部に達するまで延びている。
【0061】
下側通路R6bの中途部は、下側温風生成通路R2bの上流端部に連通可能となっている。下側通路R6bの中途部と、下側温風生成通路R2bの上流端部との間に、下側エアミックスダンパ7が配設されている。
【0062】
下側エアミックスダンパ7は、下側温風生成通路R2bの上流端部の開度を変更することによって下側温風生成通路R2bを流通する空気量を調整するためのものである。下側エアミックスダンパ7は、左右方向に延びる支軸7aと、支軸7aから径方向に延出する閉塞板部7bとを備えている。支軸7aの左右両端部が、上側エアミックスダンパ6の支軸6aから下方に離れており、空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。支軸7aは、加熱用熱交換器3の下部近傍に配置されている。閉塞板部7bは、下側温風生成通路R2bの上流端部を全閉にした状態(図5に示す)から下方へ回動して下側温風生成通路R2bの上流端部を全開にした状態(図示せず)に切り替えられるとともに、全閉状態と全開状態との間の任意の位置に停止させることができるようになっている。下側エアミックスダンパ7が下側温風生成通路R2bの上流端部を全開にすると、下側通路R6bが閉塞板部7bによって遮断されて下側通路R6bの冷風が下側温風生成通路R2bに流入することになる。これがフルホット状態である。また、下側エアミックスダンパ7が下側温風生成通路R2bの上流端部を全閉にすると、下側通路R6bが閉塞板部7bによって全開にされて下側通路R6bの冷風が下側温風生成通路R2bに流入しなくなる。これがフルコールド状態である。
【0063】
上側エアミックスダンパ6と下側エアミックスダンパ7とは、周知のリンク機構を使用することで連動させることができ、例えばエアミックスアクチュエータ等によって駆動される。エアミックスアクチュエータは、図示しないが空調制御装置に接続されている。空調制御装置は、乗員による設定温度や車室外温度、車室内温度等に基づいて上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7の開度を演算し、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7がその開度となるように、エアミックスアクチュエータを制御する。
【0064】
エアミックスアクチュエータによって上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの開度が大きくされると、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bへ流入する冷風量が増えるので、温風の生成量が増えることになり、調和空気の温度が上昇する。一方、エアミックスアクチュエータによって上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの開度が小さくされると、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bへ流入する冷風量が減るので、温風の生成量が減ることになり、調和空気の温度が低下していく。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7を回動させることによって調和空気の温度を狙いの温度とすることができるように構成されている。
【0065】
上述のようにして生成された調和空気によって空調ケーシング2の内部に空調風が形成される。空調風は、フルホット時には加熱用熱交換器4で生成された温風のみとなり、また、フルコールド時には冷却用熱交換器3で生成された冷風のみとなり、また、フルホットとフルコールドの間の時には温風と冷風が混合したものになる。
【0066】
デフロスタ通路R3は、空調ケーシング2の内部において上側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。デフロスタ通路R3の下流端部は、デフロスタ吹出口2bに接続されている。デフロスタ通路R3は、デフロスタ吹出口2bを介して車室に連通している。
【0067】
デフロスタダンパ8は、デフロスタ通路R3を開閉するためのものであり、左右方向に延びる支軸8aと、支軸8aから径方向に延出する閉塞板部8b、8bとを備えている。支軸8aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。支軸8aは、デフロスタ通路R3の前後方向中間部に配置されている。デフロスタダンパ8が支軸8a回りに回動することにより、閉塞板部8b、8bによってデフロスタ通路R3が全閉状態(図5に示す)から全開状態(図示せず)、及びその反対にも切り替えられるとともに、その中間開度にも切り替えられるようになっている。
【0068】
空調ケーシング2の上側には、乗員の上半身に空調風を供給するための前席用ベント通路R4が上側通路R6aの下流側及び下側通路R6bの下流側に連通するように形成されている。すなわち、前席用ベント通路R4は、空調ケーシング2の内部の上側においてデフロスタ通路R3よりも後側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。また、前席用ベント通路R4は、加熱用熱交換器4の上方において前側に形成されている。
【0069】
図8に示すように、前席用ベント通路R4は、車幅方向中央部に位置するセンタベント通路R4aと、当該センタベント通路R4aの車幅方向両側にそれぞれ位置するサイドベント通路R4bとを有している。センタベント通路R4aの断面積は、1つのサイドベント通路R4bの断面積よりも大きく設定されている。
【0070】
センタベント通路R4aの下流端部は、センタベント吹出口2c1に接続されている。また、サイドベント通路R4bの下流端部は、サイドベント吹出口2c2に接続されている。前席用ベント通路R4は、前席用ベント吹出口2cを介して車室に連通することになる。
【0071】
前席用ベント通路R4の左側壁部は、空調ケーシング2の左側壁部(車幅方向一側に配置される側壁部)2Fで構成されている。前席用ベント通路R4には、ブリッジ部40が配置されている。すなわち、空調ケーシング2には、前席用ベント通路R4における左側壁部2Fから右側(車幅方向他側)に離れて配置されるブリッジ部40が一体成形されている。ブリッジ部40は、前後方向に延びるとともに、上下方向にも延びる板状部分を有している。前席用ベント通路R4は上下方向に延びているので、ブリッジ部40は、センタベント通路R4a及びサイドベント通路R4bの延びる方向に延びる板状をなす部分となる。
【0072】
ブリッジ部40の前端部は前席用ベント通路R4の前壁部と一体成形され、ブリッジ部40の後端部は前席用ベント通路R4の後壁部と一体成形されている。これにより、前席用ベント通路R4の前壁部と後壁部とをブリッジ部40によって連結することができ、成形後の空調ケーシング2の変形を抑制することができる。また、ブリッジ部40は、センタベント通路R4aとサイドベント通路R4bとの間に配置されて上下方向に延びているので、センタベント通路R4aとサイドベント通路R4bとを仕切る仕切部にもなる部分である。ブリッジ部40の上端部は、空調ケーシング2の上端部に達しており、これにより、センタベント吹出口2c1とサイドベント吹出口2c2とをブリッジ部40によって仕切ることが可能になる。ブリッジ部40の形状は任意の形状にすることができ、例えば棒状であってもよいし、リブ状であってもよい。
【0073】
図7図9に示すように、空調ケーシング2の左側壁部2Fには、前席用ベントダンパ9の支軸9a(後述する)が右側から挿入可能な支持孔2Gが形成されている。支持孔2Gは、空調ケーシング2の左側壁部2Fを左右方向に貫通するように形成されており、空調ケーシング2の内面に開口するとともに、外面にも開口している。
【0074】
前席用ベントダンパ9は、前席用ベント通路R4を開閉するためのものであり、左右方向に延びる支軸9a、9aと、当該支軸9a、9aに設けられ、前席用ベント通路R4を開閉する部分となる閉塞板部9b、9bとを備えている。支軸9a、9aは、前席用ベントダンパ9の左右両側にそれぞれ設けられている。閉塞板部9b、9bは、支軸9a、9aの間において左右方向に間隔をあけて並ぶように配置されている。
【0075】
閉塞板部9b、9bと支軸9a、9aとは、硬質な樹脂材により一体成形されている。左側に位置する支軸9aは、空調ケーシング2の左側壁部2Fに形成された支持孔2Gに挿入された状態で回動可能に支持される。右側に位置する支軸9aは、空調ケーシング2の仕切板(図示せず)に形成された支持孔(図示せず)に挿入された状態で回動可能に支持される。尚、図8図9に示す前席用ベントダンパ9は、空調ケーシング2の仕切板よりも左側に配設される左用のものである。この空調ケーシング2には、仕切板よりも右側に配設される右用の前席用ベントダンパ(図示せず)も設けられている。左右の前席用ベントダンパは同じ構造とすることができる。
【0076】
前席用ベントダンパ9が支軸9a回りに回動することにより、閉塞板部9bによって前席用ベント通路R4が全開状態(図5に示す)から全閉状態(図示せず)、及びその反対にも切り替えられるようになっている。
【0077】
前席用ベントダンパ9の左側の閉塞板部9bは、空調ケーシング2の左側壁部2Fとブリッジ部40との間に配置されており、左側のサイドベント通路R4bを開閉する部分である。前席用ベントダンパ9の右側の閉塞板部9bは、ブリッジ部40よりも右側に配置されており、センタベント通路R4aの左右方向中央部よりも左側を開閉する部分である。
【0078】
前席用ベントダンパ9の左側の閉塞板部9bにおけるブリッジ部40と対向する部位には、当該ベントダンパ9が閉状態にあるときに空調風を左側のサイドベント通路R4bの下流側へ漏らすための切欠部9cが形成されている。切欠部9cの形成により、前席用ベントダンパ9よりも上流の空調風が切欠部9cの内方を流通して前席用ベントダンパ9よりも下流側へ流れるようになる。切欠部9cの大きさによって空調風の漏れ量を変えることができる。閉塞板部9bの切欠部9cにおけるブリッジ部40と対向するように配置される縁部は、ブリッジ部40の延びる方向に沿うように形成されている。
【0079】
前席用ベントダンパ9の左側の閉塞板部9bの切欠部9cにおけるブリッジ部40と対向するように配置される縁部には、弾性材からなる風量調整部9dがブリッジ部40に接近する方向へ突出するように設けられている。風量調整部9dは、ブリッジ部40に接近する方向へ突出するとともに、閉塞板部9bに沿って延びる板状に形成されている。風量調整部9dとブリッジ部40との間には空調風が流通可能な隙間が形成されている。この隙間を流通した空調風は下流側へ漏れることになる。風量調整部9dの突出量や寸法を変更することで、空調風の漏れ量を変えることができる。風量調整部9dは、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等で構成されており、閉塞板部9bに一体成形されている。
【0080】
また、閉塞板部9bの周縁部には、前席用ベントダンパ9が閉状態のときに空調ケーシング2の内面に接触するシール部9eが設けられている。シール部9eは、閉塞板部9bの周縁部から突出するリップ形状をなしている。シール部9eは、風量調整部9dを構成するエラストマーからなり、当該風量調整部9dと一体成形されている。
【0081】
図5に示すように、ヒート通路R5は、空調ケーシング2の内部において前席用ベント通路R4よりも下側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。ヒート通路R5の下流端部は、ヒート吹出口2dに接続されている。ヒート通路R5は、ヒート吹出口2dを介して車室に連通している。
【0082】
ヒートダンパ10は、ヒート通路R5を開閉するためのものであり、左右方向に延びる支軸10aと、支軸10aから径方向に延出する閉塞板部10b、10bとを備えている。支軸10aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。支軸10aは、ヒート通路R5の上流端部の上部近傍に配置されている。ヒートダンパ10が支軸10a回りに回動することにより、支軸10aよりも下に位置する閉塞板部10bによってヒート通路R5が全閉状態(図5に示す)になる。この全閉状態から閉塞板部10b、10bが前後方向に延びる姿勢となるまでヒートダンパ10を回動させると、全開状態(図示せず)に切り替えられる。ヒートダンパ10を反対方向に回動させることで全開状態から全閉状態にすることができる。図5に示すように、ヒートダンパ10が全閉状態にあるときには、閉塞板部10bは上下方向に延びることになる。一方、ヒートダンパ10が全開状態にあるときには、閉塞板部10bが前後方向に延びる姿勢となる。これにより、ヒートダンパ10よりも下側の空調用空気がヒートダンパ10の上方へ流れなくなる。
【0083】
また、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10は、周知のリンク機構を使用することで連動させることができ、例えば吹出方向切替用アクチュエータ等によって駆動される。吹出方向切替用アクチュエータは、図示しないが空調制御装置に接続されている。空調制御装置は、乗員による設定温度や車室外温度、車室内温度等に基づいてデフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10の開度を演算し、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10がその開度となるように、吹出方向切替用アクチュエータを制御する。これにより、例えば、ベントモード、デフロスタモード、ヒートモード、バイレベルモード、デフヒートモード等に切り替えることができる。
【0084】
(前席用ベントダンパ9の組付要領)
次に、前席用ベントダンパ9の組付要領について説明する。この説明では左側の前席用ベントダンパ9の組付要領について説明するが、右側の前席用ベントダンパも同様に組み付けることができる。
【0085】
まず、図8及び図9に示すように、左側ケーシング部材2Cの開放側である右側に、前席用ベントダンパ9を配置する。そして、図10及び図11に示すように、前席用ベントダンパ9を左側ケーシング部材2Cの内部へ挿入する。このとき、閉塞板部9bが左側ケーシング部材2Cのブリッジ部40よりも下に位置するように、前席用ベントダンパ9を配置する。これにより、図10に示すように、閉塞板部9とブリッジ部40との干渉が回避される。この位置関係にあるときには、前席用ベントダンパ9の支軸9aが空調ケーシング2の支持孔2Gよりも下に位置しており、前席用ベントダンパ9をそのまま左側へ移動させても支軸9aを支持孔2Gに挿入することができない。
【0086】
その後、図12及び図13に示すように、前席用ベントダンパ9を上方へ移動させ、左右方向から見たときに、前席用ベントダンパ9の支軸9aの軸線と、空調ケーシング2の支持孔2Gの軸線とを一致させる。これにより、左側の閉塞板部9が空調ケーシング2の左側壁部2Fとブリッジ部40との間に配置されることになり、図14に示すように、前席用ベントダンパ9の風量調整部9dがブリッジ部40に押し当てられて弾性変形する。図14では、風量調整部9dが同図の右側へ屈曲するように変形した場合を示しているが、これに限らず、図15に示すように、風量調整部9dが同図の左側へ屈曲するように変形してもよい。つまり、風量調整部9dがブリッジ部40に押し当てられて弾性変形することで、左側の閉塞板部9を空調ケーシング2の左側壁部2Fとブリッジ部40との間に配置することができ、支軸9aの軸線と支持孔2Gの軸線とを一致させることができる。風量調整部9dは屈曲変形していてもよいし、撓み変形していてもよい。
【0087】
次いで、前席用ベントダンパ9を左側へ移動させて支軸9aを空調ケーシング2の支持孔2Gに挿入し、前席用ベントダンパ9の組付が完了する。これにより、風量調整部9dがブリッジ部40から左側へ離れて風量調整部9dの形状が復元するので、空調風の漏らし量を所期の量とすることができる。
【0088】
(車両用空調装置1の動作)
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。まず、図5に示すベントモードについて説明すると、このベントモードは、デフロスタ通路R3とヒート通路R5とを閉じて、前席用ベント通路R4を開くモードである。図5では、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全閉状態にしているので、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側通路R6a及び下側通路R6bを流通する。このように、上側通路R6a及び下側通路R6bを設けていることで、通路断面積を増やすことができ、通気抵抗が低減される。
【0089】
前席用ベント通路R4が開いているので、冷風は前席用ベント通路R4に流入して前席用ベント吹出口2cから車室の各部に供給される。
【0090】
仮に、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを半開状態にしていれば、上側温風生成通路R2aと下側温風生成通路R2bとで温風が生成され、この温風と冷風とが混合して調和空気となり、車室の各部に供給される。
【0091】
次に、ヒートモードについて説明する。このヒートモードは、前席用ベント通路R4を閉じて、デフロスタ通路R3とヒート通路R5とを開くモードである。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全開状態にすると、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通する間に加熱用熱交換器4によって加熱される。上側温風生成通路R2aを流通した温風は、主に上方へ向かって流れてデフロスタ通路R3に流入してデフロスタ吹出口2bから車室に供給される。下側温風生成通路R2bを流通した温風は、主にヒート通路R5へ向かって流れてヒート吹出口2dからから車室に供給される。前席用ベントダンパ9に切欠部9cが形成されているので、ヒートモードであっても、空調風がサイドベント吹出口2c2、2c2から吹き出すことになる。
【0092】
次に、デフロスタモードについて説明すると、このデフロスタモードは、デフロスタ通路R3を開き、前席用ベント通路R4及びヒート通路R5を閉じるモードである。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全開状態にすると、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通する間に加熱用熱交換器4によって加熱される。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通した温風は、主に上方へ向かって流れてデフロスタ通路R3に流入してデフロスタ吹出口2bから車室に供給される。前席用ベントダンパ9に切欠部9cが形成されているので、デフロスタモードであっても、空調風がサイドベント吹出口2c2、2c2から吹き出すことになる。
【0093】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、最大冷房時には、冷却用熱交換器3により生成された冷風が加熱用熱交換器4に向けて流れないように、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7を作動させることができる。これにより、冷却用熱交換器3により生成された冷風が、上側通路R6a及び下側通路R6bを流れてベント通路R4に流入するので、通路の断面積がトータルで大きくなり、通気抵抗が低くなる。
【0094】
また、ベントダンパ9の閉塞板部9bにおけるブリッジ部40と対向する部位に空調風を漏らすための切欠部9cが形成され、切欠部9cにおけるブリッジ部40と対向する縁部に、弾性材からなる風量調整部9dがブリッジ部40に接近する方向へ突出するように設けられているので、閉状態にあるときにサイドベント吹出口2c2、2c2に適切な量の空調風を漏らすことができるようにしながら、ベントダンパ9を空調ケーシング2に容易に組み付けることができる。
【0095】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば自動車等に搭載される空調装置として利用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 車両用空調装置
2 空調ケーシング
3 冷却用熱交換器
4 加熱用熱交換器
9 ベントダンパ
9a 支軸
9b 閉塞板部
9c 切欠部
9d 風量調整部
9e シール部
40 ブリッジ部
R4 ベント通路
R4a センタベント通路
R4b サイドベント通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16