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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】接点部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 1/06 20060101AFI20221216BHJP
   H01H 11/04 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01H1/06 H
H01H11/04 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019033827
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020140805
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 和房
(72)【発明者】
【氏名】荻野 勉
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/082420(WO,A1)
【文献】特開2005-63945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126024(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106393873(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06
H01H 11/04
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点として機能する側からみて方向性が規定されているゴム状弾性体と、
前記ゴム状弾性体の前記方向性を規定している一方の面において所定方向に向かって延びるように配置されると共に、前記一方の面から露出し前記一方の面からその側方の面に折れ曲がって前記ゴム状弾性体に埋設している1または2以上の金属線と、
前記ゴム状弾性体の前記一方の面と反対側に位置する他方の面に固定され、前記金属線の端部を埋没させている固定部材と、
を備え
前記ゴム状弾性体は、少なくとも、金属接着性のシリコーンゴムからなる第1のゴム状弾性体と、発泡シリコーンゴムからなり前記第1のゴム状弾性体に密着する第2のゴム状弾性体と、を有し、
前記金属線は、前記第1のゴム状弾性体に埋設されている接点部材。
【請求項2】
前記ゴム状弾性体の前記一方の面は、縦横比を異ならせた形状を有する請求項1に記載の接点部材。
【請求項3】
前記ゴム状弾性体の前記一方の面は、多角形状を有する請求項1または2に記載の接点部材。
【請求項4】
前記金属線は、前記一方の面に互いに隙間をあけて平行になるように複数本備えられている請求項1から3のいずれか1項に記載の接点部材。
【請求項5】
前記金属線は、その表層に貴金属めっきが施されている請求項1からのいずれか1項に記載の接点部材。
【請求項6】
接点として機能する側からみて方向性が規定されている第1のゴム状弾性体における当該方向性を規定している一方の面に、1または2以上の金属線を露出させて埋設配置して金属線付き第1のゴム状弾性体を形成する配置工程と、
一方を開口する金型内に、前記金属線の側を前記金型の底面および側面に向けて前記金属線付き第1のゴム状弾性体を敷く敷設工程と、
前記金属線付き第1のゴム状弾性体の前記第1のゴム状弾性体の側から、硬化して第2のゴム状弾性体となる未硬化組成物を前記金型内に供給するゴム状弾性体形成工程と、
前記未硬化組成物の硬化前若しくは硬化後に、前記未硬化組成物若しくは前記第2のゴム状弾性体に固定部材を接着すると共に、前記固定部材の内方に前記金属線の端部を埋没させる接着工程と、
前記接着工程の後に、前記第1のゴム状弾性体と前記第2のゴム状弾性体とを含むゴム状弾性体に前記金属線および前記固定部材を固定した接点部材を、前記金型から分離する離型工程と、
を含む接点部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用の接点部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、押釦スイッチ用の接点部材として、洋白、ニッケル、ステンレス等に耐食性や導電性を高めるために貴金属めっきを施した金属箔(板)を、エラストマーと一体成型したものが広く用いられている。このような接点部材は、金属箔(板)の剛性が高いことから変形し難く、接点と基板の固定電極との間に異物が介在してしまった場合には、接点と固定電極との接触不良による導通不良やチャタリングの虞があった。このような導通不良やチャタリングの対策として、金網や金属スポンジを使用した接点部材(例えば、特許文献1を参照)や金属線を配線した接点部材(例えば、特許文献2を参照)等が提案されている。
【0003】
図8は、基本的な構成の押釦スイッチの縦断面図を示す。図9は、従来から公知の接点部材の接点として機能する側からみた正面図および縦断面図を示す。図10中、(a)は、金網を使用した接点部材の正面図を示す。(b)は、(a)のX1-X1断面図を示す。(c)は、金属線を配線した接点部材の正面図を示す。(d)は、(c)のX2-X2断面図を示す。
【0004】
押釦スイッチ用の公知の接点部材を説明する前に、押釦スイッチの基本的な構成を説明する。図8に示す基本的な構成の押釦スイッチSWは、略円柱形状のキートップKTの下端に、キートップKTの径方向外側にドーム状に拡径するドーム部DMを備える。押釦スイッチSWは、ドーム部DMの下方開口部より径方向外側に延出するベース部BSを備える。ベース部BSは、押釦スイッチSWを配置する基板S上に固定される部分である。押釦スイッチSWは、ドーム部DMの内方空間でキートップKTの直下に貼り付けられており、表面に導電性部材を有する接点部材CNを備える。接点部材CNは、キートップKTが押し込まれることで、ドーム部DMが変形し、基板S上の電極EL1と電極EL2と接触するまで降下することができる。接点部材CNは、導電性部材を固定電極EL1と固定電極EL2とに同時に接触することで、固定電極EL1と固定電極EL2とを電気的に接続させることができる。
【0005】
次に、押釦スイッチ用の公知の接点部材を説明する。図9の(a)および(b)に示す従来から公知の金網を使用した接点部材801は、図8に示すような押釦スイッチSWの接点部材CNの部分に用いられる。金網を使用した接点部材801は、円板形状のゴム状弾性体810と、ゴム状弾性体810の一方の面に埋設されて接点として機能する平織り等の金網820と、を備えている。図9の(c)および(d)に示す従来から公知の金属線を配線した接点部材901は、図8に示すような押釦スイッチSWの接点部材CNの部分に用いられる。金属線を配線した接点部材901は、円板形状のゴム状弾性体910と、ゴム状弾性体910の一方の面に埋設されて接点として機能する金属線920と、を備えている。金網を使用した接点部材801や金属線を配線した接点部材901は、金属箔(板)を接点とする接点部材と異なり、柔軟かつ表面が凹凸状になる。このため、接点と基板の固定電極との間に異物が介在してしまった場合に、異物が凹部に入り、導通不良やチャタリングのリスクを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-73467号公報
【文献】実開昭57-109532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金網を使用した接点部材801は、図9の(b)に示すように、金網820を形成する緯線820Hと経線820Vが繰り返し凹凸状になっている。このため、ゴム状弾性体810から露出した凸状部の頂部でしか基板上の固定電極に接触できない。この結果、金網を使用した接点部材801は、固定電極との接触面積が小さく、安定した導通特性を得難いという問題がある。
【0008】
一方、上述のような従来から公知の金属線を配線した接点部材901は、金属線920が長手方向に真っ直ぐでゴム状弾性体910から露出部を多くできる。このため、固定電極との接触面積を大きくできる。しかし、金属線920がゴム状弾性体910の表層に一本ずつ接着される構造となるため、ゴム状弾性体910と金属線920との接着性が弱い、という問題がある。また、接点部材901は、円板形状のゴム状弾性体910に方向性がなく、ゴム状弾性体910から金属線920の向きが把握できない。このため、使用する基板の固定電極形状に方向性がある場合に、接点部材901は、配置された金属線920の向きによっては一方の固定電極EL1と他方の固定電極EL2とを導通させることができない問題がある。この問題について、図面を参照してさらに説明する。
【0009】
図10は、基板上の固定電極形状の例を示す。図10中、(a)~(d)は、方向性のない固定電極形状の例である。(e)~(f)は、方向性のある固定電極形状の例である。(a)~(f)の各図においては、接点部材901を重ね合わせて示している。(a)~(f)の各図では、両矢印を挟み、金属線920の向きを90度異ならせて接点部材901を示している。
【0010】
(a)~(d)に示すような方向性のない固定電極形状において、金属線920は、その向きに関わらず固定電極EL1と固定電極EL2との間を橋渡すように、固定電極EL1および固定電極EL2に接触可能である。一方、(e)~(f)に示すような方向性のある固定電極形状において、金属線920は、図10において左側に示す金属線920の向きでは、固定電極EL1と固定電極EL2との間を橋渡すように接触可能である。しかし、図10において右側に示す金属線920の向きでは、金属線920は、固定電極EL1と固定電極EL2との間を橋渡すように接触することができない。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、耐異物性、電極との安定接触性および金属線の接着性に優れ、加えて電極形状に方向性がある場合でも確実に電極間の導通を実現できる接点部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る接点部材は、接点として機能する側からみて方向性が規定されているゴム状弾性体と、前記ゴム状弾性体の前記方向性を規定している一方の面において所定方向に向かって延びるように配置されると共に、前記一方の面から露出し前記一方の面からその側方の面に折れ曲がって前記ゴム状弾性体に埋設している1または2以上の金属線と、前記ゴム状弾性体の前記一方の面と反対側に位置する他方の面に固定され、前記金属線の端部を埋没させている固定部材と、を備える。
(2)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記ゴム状弾性体の前記一方の面は、縦横比を異ならせた形状を有する。
(3)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記ゴム状弾性体の前記一方の面は、多角形状を有する。
(4)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記金属線は、前記一方の面に互いに隙間をあけて平行になるように複数本備えられている。
(5)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記金属線は、線径方向において1/2以上1/3以下の長さ分を前記ゴム状弾性体から露出させている。
(6)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記金属線は、その表層に貴金属めっきが施されている。
(7)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記ゴム状弾性体は、少なくとも、金属接着性のシリコーンゴムからなる第1のゴム状弾性体と、発泡シリコーンゴムからなり前記第1のゴム状弾性体に密着する第2のゴム状弾性体と、を有し、前記金属線は、前記第1のゴム状弾性体に埋設されている。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係る接点部材の製造方法は、接点として機能する側からみて方向性が規定されている第1のゴム状弾性体における当該方向性を規定している一方の面に、1または2以上の金属線を露出させて埋設配置して金属線付き第1のゴム状弾性体を形成する配置工程と、一方を開口する金型内に、前記金属線の側を前記金型の底面および側面に向けて前記金属線付き第1のゴム状弾性体を敷く敷設工程と、前記金属線付き第1のゴム状弾性体の前記第1のゴム状弾性体の側から、硬化して第2のゴム状弾性体となる未硬化組成物を前記金型内に供給するゴム状弾性体形成工程と、前記未硬化組成物の硬化前若しくは硬化後に、前記未硬化組成物若しくは前記第2のゴム状弾性体に固定部材を接着すると共に、前記固定部材の内方に前記金属線の端部を埋没させる接着工程と、前記接着工程の後に、前記第1のゴム状弾性体と前記第2のゴム状弾性体とを含むゴム状弾性体に前記金属線および前記固定部材を固定した接点部材を、前記金型から分離する離型工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐異物性、電極との安定接触性および金属線の接着性に優れ、加えて電極形状に方向性がある場合でも確実に電極間の導通を実現できる接点部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る接点部材を三方向からみた各状態を示す。
図2図2は、図1の接点部材の縦断面図を示す。
図3図3は、図1の接点部材を構成する金属線の径方向の断面図を示す。
図4図4は、本発明の実施形態に係る接点部材の製造方法のフローチャートを示す。
図5図5は、図4のフローチャートの各工程の説明図を示す。
図6図6は、接点部材の変形例を示す。
図7図7は、本発明の変形例を、接点として機能する面から見た図を示す。
図8図8は、基本的な構成の押釦スイッチの縦断面図を示す。
図9図9は、従来から公知の接点部材の接点として機能する側からみた正面図および縦断面図を示す。
図10図10は、基板上の固定電極形状の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、各図面は、特徴がわかるようにした模式図であり、実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0016】
本発明の実施形態に係る接点部材について説明する。
【0017】
(1.実施形態に係る接点部材の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る接点部材を三方向からみた各状態を示す。図1中、(a)は正面図を示す。(b)は底面図を示す。(c)は右側面図を示す。図2は、図1の接点部材の縦断面図を示す。図2中、(a)は、図1中の(b)のH-H断面図を示す。(b)は、図1中の(b)のV-V断面図を示す。図3は、図1の接点部材を構成する金属線の径方向の断面図を示す。
【0018】
実施形態に係る接点部材1は、図7に示すような押釦スイッチ(SW)の接点部材(CN)として用いられ、接点として機能する面を基板(S)上の固定電極(EL1,EL2)に対向させて配置される。接点部材1は、従来の接点部材と同様に、基板(S)の表面に対して垂直方向に往復移動することで基板(S)と接触/非接触となり、基板(S)上の固定電極(EL1,EL2)間の導通/非導通を切り換える役割を果たす。
【0019】
接点部材1は、ゴム状弾性体10と、ゴム状弾性体10の接点として機能する側の一方の面に配置される1または2以上の金属線20と、ゴム状弾性体10の一方の面とは反対側の他方の面に固定される固定部材30と、を備える。金属線20は、好ましくは、2本以上を所定間幅おきに配置される。なお、図1および図2において、複数の金属線20の内の一部のみに符号が付されている。これは、図3以降の図面でも同様である。
【0020】
ゴム状弾性体10は、柔軟性を有するエラストマーであり、この実施形態ではブロック形状を有する。ゴム状弾性体10は、図1の(b)に示すように、接点として機能する側(すなわち、底面側)からみて略長方形状をしている。換言すると、ゴム状弾性体10の一方の面は、縦横比を異ならせた多角形状を有する。このように、ゴム状弾性体10は、接点として機能する側からみて方向性が規定されている。ここで、「方向性が規定されている」とは、再現性をもって意図する向きで配置可能な形態を有していることを意味する。ゴム状弾性体10は、縦横比の違いや、外形の辺や頂点の向きによって、意図する向きで配置可能である。ゴム状弾性体10は、図1の(c)に示すように、好ましくは、接点として機能する側((c)の左側)の表皮となる第1のゴム状弾性体11と、内側のコアとなる第2のゴム状弾性体12と、を有する。
【0021】
第1のゴム状弾性体11は、金属と接着する成分を有する。具体的には、第1のゴム状弾性体11は、シート状の金属接着性のシリコーンゴムからなる。第1のゴム状弾性体11は、図2の(a)および(b)に示すように、好ましくは、第2のゴム状弾性体12を内包するように、一方に開口する容器形状を有する。
【0022】
第2のゴム状弾性体12は、好ましくは、発泡シリコーンゴムからなり、第1のゴム状弾性体11に密着する。第2のゴム状弾性体12は、略直方体形状で、第1のゴム状弾性体11の内側を埋めるように形成されている。ゴム状弾性体10は、第1のゴム状弾性体11と第2のゴム状弾性体12とが一体となり、全体的には略直方体形状に構成されている。
【0023】
金属線20は、導電性に優れ、好ましくは円形状の径方向断面を有する細線である。ただし、金属線20の当該断面の形状は、略長方形でもよい。金属線20は、図3に示すように、芯線21の表層に、下地めっき層22、表面めっき層23を順に備える。表面めっき層23は、耐食性や導電性を高めるための貴金属めっき層である。芯線21は、下地めっき層22と異なる材料でなり、銅、洋白、真鍮、ベリリウム銅、ニッケル、鉄、ステンレススチール、またはそれらの1以上を含む合金から成る細線である。下地めっき層22は、好ましくは、ニッケルめっき層である。表面めっき層23は、好ましくは、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)またはオスミウム(Os)の一種若しくは複数から成り、より好ましくは金(Au)から成る。ただし、下地めっき層22は、金属線20にとって必須の構成要素ではない。金属線20は、芯線21に表面めっき層23を備えるものでも良い。一例として、芯線21をステンレススチール若しくはニッケルで構成する場合に、当該芯線21の表面に金めっきを施した金属線20を製造しても良い。
【0024】
金属線20は、図1および図2に示すように、ゴム状弾性体10の方向性を規定している一方の面において所定方向に向かって延びるように配置されている。この実施形態では、「所定方向」は、ゴム状弾性体内の接点として機能する側の面(一方の面)であって長方形の面を形成する短辺に平行の方向を意味する。このため、金属線20は、該長方形の短辺に平行に複数本配置されている。ただし、複数本の金属線20は、該長方形の長辺と平行に備えられてもよい。金属線20は、ゴム状弾性体10一方の面から露出しその一方の面からその側方の面に折れ曲がってゴム状弾性体10に埋設している。さらに詳しくは、金属線20は、ゴム状弾性体10の表皮となる第1のゴム状弾性体11に沿った門形状をしており、全長方向全体に亘って径方向の一部が第1のゴム状弾性体11に埋没している。金属線20は、好ましくは、線径方向において1/2以上1/3以下の長さ分をゴム状弾性体10から露出させている。金属線20は、好ましくは、ゴム状弾性体10の一方の面に互いに隙間をあけて平行になるように複数本備えられている。この実施形態では、金属線20は、複数本備えられているが、1本であってもよい。なお、本願において、「所定方向に向かって延びるように配置される」とは、その配置される物の全体形状における長手方向が定められた方向を向いて配置されることを意味する。この実施形態の金属線20は、一定の太さで一直線状に延びているが、必ずしも一定の太さで一直線状に延びていなくともよい。例えば、金属線は、ジグザグ形状や波形状で、延びる方向を変化させながらも全体的には一定方向に延びていてもよく、あるいは線幅を変動させながらも全体的には一定方向に延びていてもよい。
【0025】
固定部材30は、好ましくは、シリコーンゴム製のブロック状部材である。固定部材30は、ゴム状弾性体10の一方の面と反対側に位置する他方の面に固定されている。固定部材30は、金属線20の端部を埋没させて、保持している。このため、金属線20の端部は、腐食しにくい。加えて、金属線20は、接点部材1から剥離しにくい。
【0026】
(2.実施形態に係る接点部材の製造方法)
図4は、本発明の実施形態に係る接点部材の製造方法のフローチャートを示す。図5は、図4のフローチャートの各工程の説明図を示す。図5中、(a)は、配置工程ST1を示す。(b)は、敷設工程ST2を示す。(c)は、ゴム状弾性体形成工程ST3を示す。(d)は、接着剤塗布工程ST4を示す。(e)は、接着工程ST5を示す。(f)は、離型工程ST6を示す。
【0027】
接点部材1は、図4に示すように、配置工程ST1、敷設工程ST2、ゴム状弾性体形成工程ST3、接着剤塗布工程ST4、接着工程ST5、および離型工程ST6を順に実施することにより製造される。なお、以下の説明においては、各構成要素の材質、形状、特性等については、上述した接点部材1の構成要素と同様であり、図5において上述と同じ符号を付して説明を省略する。
【0028】
配置工程ST1では、接点として機能する側からみて方向性が規定されている第1のゴム状弾性体11における方向性を規定している一方の面に、複数本の金属線20を露出させて埋設配置して金属線付き第1のゴム状弾性体25を形成する。配置工程ST1では、金属線20を所定方向に向かって延びるように配置するとともに、線径方向において1/2以上1/3以下の長さ分を第1のゴム状弾性体11から露出させるように埋設した上で接着する。配置工程ST1では、図5の(a)に示すように、金属線付き第1のゴム状弾性体25は、複数個の金属線付き第1のゴム状弾性体26を打ち抜くように大判のシートであってもよいし、1個の金属線付き第1のゴム状弾性体26に対応させたシートでもよい。
【0029】
敷設工程ST2では、図5の(b)に示すように、一方を開口する金型J内に、金属線20の側を金型Jの底面および側面に向けて金属線付き第1のゴム状弾性体26を敷く。このとき、第1のゴム状弾性体11および金属線20は、金型Jの底面および対向する2側面に沿わせて、両縁部および両端部が金型Jの開口に向けて折り曲げられる(折り曲げラインVLは図5の(a)参照)。なお、金属線付き第1のゴム状弾性体26の両端部または金属線20の両端は、金型Jの開口より僅かに突出させることが好ましい。
【0030】
ゴム状弾性体形成工程ST3では、図5の(c)に示すように、金属線付き第1のゴム状弾性体26の第1のゴム状弾性体11の側から、硬化して第2のゴム状弾性体12となる未硬化組成物を金型J内に供給する。ゴム状弾性体形成工程ST3では、未硬化組成物を硬化させて第2のゴム状弾性体12を形成することにより、金属線付き第1のゴム状弾性体26と第2のゴム状弾性体12とを一体化させたゴム状弾性体10を形成する。なお、ゴム状弾性体形成工程ST3では、前述のようにゴム状弾性体10を形成してもよいが、あらかじめ第2のゴム状弾性体12の形状に対応させた成形済みの硬化体を、接着剤を介して第1のゴム状弾性体11の内側にしてゴム状弾性体10を形成してもよい。
【0031】
接着剤塗布工程ST4では、図5の(d)に示すように、金型Jの開口から露出するゴム状弾性体10の表面および金属線20の端面に接着剤31を塗布する。接着剤31は、硬化後に固定部材30の一部を構成する。なお、本願では、接着剤は、硬化前後を問わず、「接着剤31」と称する。
【0032】
接着工程ST5では、図5の(e)に示すように、接着剤塗布工程ST4で塗布した接着剤31の上に、固定部材30の一部となる硬化体32を接着する。このとき、固定部材30としての接着剤31の内方に金属線20の端部を埋没させるようにする。
【0033】
離型工程ST6では、図5の(f)に示すように、第1のゴム状弾性体11と第2のゴム状弾性体12とを含むゴム状弾性体10に金属線20および固定部材30を固定した接点部材1を、金型Jから分離する。
【0034】
(3.実施形態による作用・効果)
接点部材1は、接点として機能する側からみて方向性が規定されているゴム状弾性体10と、ゴム状弾性体10の方向性を規定している一方の面において所定方向に向かって延びるように配置される金属線20と、を備える。このため、接点部材1は、ゴム状弾性体10の向きと金属線20の延びる向きとの関係が明確で使用する基板の固定電極に対して適切な向きで配置可能である。このような接点部材1によれば、使用する基板の固定電極形状に方向性があっても確実に導通させることができる。「方向性が規定されているゴム状弾性体10」は、接点として機能する側からみて、90度自転させたときに元の状態と重ならない形状のゴム状弾性体10と読み替えてもよい。また、「方向性が規定されているゴム状弾性体10」は、真円、正方形、正8角形等の正4・n角形(nは1以上の整数)を除外した形状の面を有するものと読み替えてもよい。
【0035】
また、接点部材1は、金属線20が一方の面から露出し当該一方の面からその側方の面に折れ曲がってゴム状弾性体10に埋設しているとともに、ゴム状弾性体10の一方の面と反対側に位置する他方の面に固定され、金属線20の端部を埋没させている固定部材30を備える。このため、金属線20は、ゴム状弾性体10の一方の面だけでなくゴム状弾性体10の側面にも埋設させて接着されるとともに、端部が固定部材30に埋没させて固定される。金属線20が剥離方向以外の方向においても固定されるため、金属線20が接点部材1から外れ難くなる。
【0036】
その結果、実施形態に係る接点部材1は、金属線20が長期間の使用に耐え、使用する基板の固定電極形状に方向性があっても確実に導通させることができ、安定した導通特性を得やすい。
【0037】
また、接点部材1においては、ゴム状弾性体10の一方の面は、縦横比を異ならせた形状(長方形)を有するため、この縦横比の違いにより方向性が明確になる。したがって、ゴム状弾性体10を押釦スイッチに取り付ける際に、誤って電極同士を接続不可な向きに取り付けるリスクを低減できる。
【0038】
また、接点部材1においては、ゴム状弾性体10の一方の面は、多角形状を有するため、多角形状の辺や頂点の位置により方向性が明確になることから、上記リスクをさらに低減できる。
【0039】
また、接点部材1においては、金属線20は、一方の面に互いに隙間をあけて平行になるように複数本備えられているため、より多くの箇所およびより広い面積で電極同士を接続できる。したがって、より安定した導通特性を発揮することができる。
【0040】
また、接点部材1においては、金属線20は、線径方向において1/2以上1/3以下の長さ分をゴム状弾性体10から露出させているため、露出させている部分が凹凸状になることで異物が入り込む余地のある凹部が形成される。したがって、接点部材1の耐異物性を高め、より安定した導通特性を発揮することができる。
【0041】
また、接点部材1においては、金属線20は、その表層に貴金属めっきが施されている。このため、接点部材1は、耐食性や導電性に優れ、より安定した導通特性を発揮することができる。
【0042】
また、接点部材1においては、ゴム状弾性体10は、少なくとも、金属接着性のシリコーンゴムからなる第1のゴム状弾性体11と、発泡シリコーンゴムからなる第2のゴム状弾性体12と、を有し、金属線20は、第1のゴム状弾性体11に埋設されている。このため、ゴム状弾性体10は、第1のゴム状弾性体11によって金属線20を強固に保持できるとともに、その反対側に位置する第2のゴム状弾性体20によって十分な柔軟性を発揮できる。
【0043】
実施形態に係る接点部材1の製造方法においては、接点として機能する側からみて方向性が規定されている第1のゴム状弾性体11に、金属線20を露出させて埋設配置して金属線付き第1のゴム状弾性体26を形成する配置工程ST1と、第1のゴム状弾性体11と第2のゴム状弾性体12とを一体化させてゴム状弾性体10を形成するゴム状弾性体形成工程ST3と、を備える。これにより、接点として機能する側からみて方向性が規定されているゴム状弾性体10に所定方向に向かって延びるように配置される金属線20を配線できる。このように方向性が規定されているゴム状弾性体10に金属線20が配線された接点部材1は、ゴム状弾性体10の向きと金属線20の延びる向きとの関係が明確になり、基板上の電極同士を確実接続できる。このように、この実施形態の製造方法によれば、使用する基板の電極形状に方向性があっても、確実に導通させることが可能な接点部材を製造することができる。
【0044】
この実施形態に係る接点部材1の製造方法においては、一方を開口する金型J内に、金属線20の側を金型Jの底面および側面に向けて金属線付き第1のゴム状弾性体26を敷く敷設工程ST2と、固定部材30の内方に金属線20の端部を埋没させるように固定部材30を接着する接着工程ST5と、を備える。これにより、金属線20を、一方の面から露出し当該一方の面からその側方の面に折れ曲がって第1のゴム状弾性体11に埋設するとともに、端部を固定部材30に埋没するように固定できる。このように金属線20が固定された接点部材1は、金属線20が剥離方向以外の方向においても保持されることから、金属線20が剥がれ難い接点部材となる。
【0045】
以上により、この実施形態に係る接点部材の製造方法によれば、耐異物性、電極との安定接触性、金属線の接着性に優れ、加えて電極形状に方向性がある場合でも確実に電極の導通を実現できる接点部材を提供できる。
【0046】
(4.その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0047】
上記実施形態において記載した構成要素の数、形状、位置、大きさ、材質等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0048】
上記実施形態において、ゴム状弾性体10については第1のゴム状弾性体11と第2のゴム状弾性体12といった特性の異なる二部分を有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ゴム状弾性体は、一の特性をもったブロック形状の弾性体であってもよい。また、ゴム状弾性体は、特性の異なる三以上の部材から構成されていてもよい。
【0049】
上記実施形態において、ゴム状弾性体10の形状は、接点として機能する側からみて略長方形であるが、接点として機能する側からみて方向性が規定されている形状であれば、略長方形に限定されるものではない。図6は、接点部材の変形例を示す。例えば、ゴム状弾性体の形状は、(a)に示すように、台形であってもよい。また、ゴム状弾性体の形状は、(b)に示すように、菱形であってもよい。また、ゴム状弾性体の形状は、(c)に示すように、六角形であってもよい。また、ゴム状弾性体の形状は、(d)に示すように、五角形であってもよい。また、ゴム状弾性体の形状は、(e)に示すように、楕円形のような縦横比の異なる非多角形であってもよい。
【0050】
上記実施形態において、ゴム状弾性体10および固定部材30については、シリコーンゴムを採用しているが、ゴム状弾性体および固定部材の材質は、柔軟性を有するゴム材料であればシリコーンゴムに限定されるものではない。ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー;ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いても良い。
【0051】
また、接点部材1は、透光性を有するものでもよい。具体的には、ゴム状弾性体や固定部材に透明または半透明のゴム部材を採用し、金属線20の配線ピッチを調整することで、透過性を持たせることもできる。この結果、基板上に配置した照明光をキートップに導光することが可能な接点部材を構成することができる。
【0052】
上記実施形態に係る接点部材の製造方法において、ゴム状弾性体形成工程ST3により未硬化組成物を硬化させた第2のゴム状弾性体12に対し、接着剤塗布工程ST4により塗布した接着剤31を用いて、接着工程ST5により固定部材30を接着している。しかし、固定部材30の接着方法は、これに限定されるものではない。例えば、ゴム状弾性体形成工程ST3において未硬化組成物を硬化させず、かつ接着剤塗布工程ST4を行わないで接着工程ST5に進み、接着工程ST5において未硬化組成物に固定部材30を載せてもよい。この場合、未硬化組成物は、接着工程ST5において、硬化して第2のゴム状弾性体12となるとともに、固定部材30と第2のゴム状弾性体12とを一体化させる接着剤として機能する。
【0053】
図7は、本発明の変形例を、接点として機能する面から見た図を示す。
【0054】
図7の(a)に示すように、略円の形状であって一部に当該円の内部方向に窪む凹部15を備えたゴム状弾性体10に複数の金属線20をならべた接点部材1を製造しても良い。また、図7の(b)に示すように、略円の形状であって一部に当該円の外部方向に突出する凸部16を備えたゴム状弾性体10に複数の金属線20をならべた接点部材1を製造しても良い。上記の凹部15または凸部16を備えたゴム状弾性体10は、「接点として機能する側からみて方向性が規定されているゴム状弾性体」の概念に含まれる。
【0055】
なお、ゴム状弾性体10を「接点として機能する側からみて方向性が規定されているゴム状弾性体」とすると共に、あるいはこれに代えて、固定部材30の形状を、接点として機能する側からみて方向性が規定されている形状としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る接点部材は、例えば、自動車の車載用機器の他、工業用ロボット、家庭用電化製品、PCなどの各種機器に利用される押釦スイッチの接点に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1‥接点部材、10‥ゴム状弾性体、11‥第1のゴム状弾性体、12‥第2のゴム状弾性体、20‥金属線、26‥金属線付き第1のゴム状弾性体、30‥固定部材、31‥接着剤(固定部材の一部)、32‥硬化体(固定部材の一部)、ST1‥配置工程、ST2‥敷設工程、ST3‥ゴム状弾性体形成工程、ST5‥接着工程、ST6‥離型工程、J‥金型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10