(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/28 20060101AFI20221216BHJP
B29C 51/04 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B65D1/28
B29C51/04
(21)【出願番号】P 2019036346
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】村田 憲俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰紀
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166828(JP,A)
【文献】登録実用新案第3024995(JP,U)
【文献】特開昭57-174221(JP,A)
【文献】特開2004-001797(JP,A)
【文献】特開2007-269385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/28
B29C 51/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質かつ減容変形可能な有底筒状の容器本体部
と、
前記容器本体部の上端開口部に固定され、シール部が取り付けられることで前記容器本体部の内部がシールされる口部材と、を備え、
前記容器本体部は、樹脂層と、前記樹脂層よりも外側に位置する金属層と、を有し、
前記樹脂層の延伸倍率が1.5倍以上2.6倍以下であ
り、
前記口部材は樹脂により形成されており、かつ前記樹脂層に固定されている、容器。
【請求項2】
前記金属層は蒸着膜である、請求項1に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有底筒状の容器本体部を備えた容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の容器では、樹脂のシート材を延伸成形することにより容器本体部を形成する場合がある。ここで、延伸成形の程度が小さいと、容器本体部の深さが小さくなってしまい、容器本体部の容積を確保できない。一方、延伸成形の程度が大きすぎると、容器本体部が破れてしまう場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、容器本体部の容積を確保しつつ、容器本体部の破れを抑制した容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る容器は、軟質かつ減容変形可能な有底筒状の容器本体部と、前記容器本体部の上端開口部に固定され、シール部が取り付けられることで前記容器本体部の内部がシールされる口部材と、を備え、前記容器本体部は、樹脂層と、前記樹脂層よりも外側に位置する金属層と、を有し、前記樹脂層の延伸倍率が1.5倍以上2.6倍以下であり、前記口部材は樹脂により形成されており、かつ前記樹脂層に固定されている。
【0007】
上記態様の容器によれば、樹脂層の延伸倍率が1.5倍以上であるため、容器本体部の深さがある程度大きくなっており、容器本体部の容積を確保することができる。また、樹脂層の延伸倍率が2.6倍以下であり、大きすぎないため、樹脂層が過剰に引き延ばされて容器本体部の破れが生じることを抑制できる。
さらに、樹脂層よりも外側に位置する金属層により、容器本体部のバリア性を確保することができる。
【0008】
ここで、前記金属層は蒸着膜であってもよい。
【0009】
この場合、樹脂層の外側の表面に、均一な厚みで金属層を形成することができる。従って、金属層による容器本体部のバリア性をより安定させることができる。
【0010】
また、上記態様の容器は、前記容器本体部の上端開口部に固定され、シール部が取り付けられることで前記容器本体部の内部がシールされる口部材をさらに備え、前記口部材は樹脂により形成されており、かつ前記樹脂層に固定されている。
【0011】
この場合、例えば口部材が金属層に固定されている場合と比較して、口部材の容器本体部への固定の強度を高めることができる。また、口部材が樹脂により形成されているため、例えば容器本体部をインサート品として口部材をインサート成形し、口部材の成形および容器本体部への固定を同時に行うことができる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る容器の製造方法は、軟質かつ減容変形可能な有底筒状の容器本体部を備える容器の製造方法であって、樹脂のシート材を延伸成形して前記容器本体部の樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層の外側の表面に、蒸着によって金属層を形成する工程と、を有する。
【0013】
上記態様の製造方法によれば、容器本体部の樹脂層を形成した後で蒸着により金属層を形成するため、金属層の厚みを均一にすることができ、かつ金属層が延伸されてクラックなどが生じることを抑制できる。したがって、金属層による容器本体部のバリア性をより確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、容器本体部の容積を確保しつつ、容器本体部の破れを抑制した容器を提供することことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るコンパクト容器の平面図である。
【
図4】本実施形態に係る容器の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態の容器および当該容器を備えたコンパクト容器について、図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、コンパクト容器1Aは、内容物が収容される容器2Aと、容器2Aの内部を封止するシール部3と、内容物を吐出させる吐出孔45aが形成された中蓋40と、弁部材5と、外容器7と、を備えている。
容器2A、シール部3、中蓋40、および弁部材5は、外容器7の内部に収容されている。外容器7は、回転軸R回りに相対的に回転可能な蓋部材50および底部材60を備えている。
【0017】
(方向定義)
本実施形態では、容器2Aの中心軸線を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向という。また、容器2Aにおける容器本体部2の底部側を下方といい、容器本体部2の開口部側を上方という。また、容器軸Oに沿う断面を縦断面という。
上下方向から見た平面視で、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。径方向に沿って容器軸Oに接近する方向を径方向内側といい、容器軸Oから離間する方向を径方向外側という。径方向のうち、回転軸Rに平行な方向を左右方向と呼び、回転軸Rに直交する方向を前後方向という。前後方向に沿って、容器軸Oから回転軸Rへ向かう方向を後方と呼び、回転軸Rから容器軸Oへ向かう方向を前方という。
【0018】
(容器)
図2に示すように、容器2Aは、有底筒状の容器本体部2と、容器本体部2の上端開口部に固定された口部材80と、を備えている。容器本体部2は薄肉かつ軟質に形成されている。口部材80は、厚肉かつ硬質に形成されている。
容器本体部2は扁平な有底円筒状に形成されている。容器本体部2には、上端開口部から径方向外側に向けて延びる縁部2aが形成されている。容器本体部2は、可撓性を有しており、容器本体部2内の圧力の低下に伴って減容変形可能である。容器本体部2の内部には、流動性を有する内容物が収容されている。内容物は、液状であっても、ゲル状であっても、ゼリー状であってもよい。内容物は、例えば、リキッドファンデーション等の化粧品である。
【0019】
図3は、容器本体部2の口部近傍の拡大図である。
図3に示すように、容器本体部2は、樹脂層L1と、樹脂層L1よりも外側に位置する金属層L2と、を有している。樹脂層L1は、厚さが均一のシート材M(
図4参照)が延伸成形されることで形成されている。このため、延伸の程度が小さい部分(厚みt1)と、延伸の程度が大きい部分(t2)とで、厚みが異なっている。一方、金属層L2は蒸着によって形成されているため、厚み(t3)が略均一となっている。
【0020】
容器本体部2の縁部2aにおいて、樹脂層L1は金属層L2よりも上方に位置している。
樹脂層L1の材質としては、例えばPP(ポリプロピレン)などを用いることができる。金属層L2の材質としては、水などの液体および空気のバリア性に優れた金属、例えばアルミニウムなどを用いることができる。また、本実施形態では液体またはゲル状の内容物を収容するため、金属層L2は、特に水分の透過を規制する水分バリア性を有していることが重要である。ただし、樹脂層L1および金属層L2の材質は適宜変更可能である。
【0021】
なお、容器本体部2は、樹脂層L1および金属層L2以外の層を有していてもよい。例えば、金属層L2の外側にコート層が設けられていてもよい。この場合、金属層L2を覆うコート層によって、金属層L2を保護することができる。コート層の材質としては、例えばUV硬化型樹脂を用いることができる。
【0022】
口部材80は、平面視で環状に形成された環状部81と、環状部81の内周縁から上方に向けて延びる取付筒部82と、を有している。環状部81は、容器本体部2の縁部2aの上面に固定されている。すなわち、口部材80は縁部2aにおける樹脂層L1に固定されている。口部材80は、容器本体部2にシール部3を取り付ける役割を有する。
【0023】
(外容器)
図2に示すように、底部材60は、容器軸Oと同軸に配置された円板状の底板部61と、底板部61の外周縁から上方に延びる円筒状の筒状壁部62と、を備え、有底筒状に形成されている。底部材60の後端部には、前方に向けて窪む凹部63が設けられている。
筒状壁部62の前端部には、後方に向けて窪む係合空間7aが設けられている。係合空間7aは、前方および上方に向けて開口している。係合空間7aは、前方を向く後壁部65と、上方を向く底壁部64と、により画成されている。
【0024】
後壁部65のうち左右方向の中央に位置する部分には、前方に向けて突出したガイド壁部68が形成されている。ガイド壁部68の上面は、前方に向かうにしたがい下方に向けて傾斜する傾斜面とされている。後壁部65のうちガイド壁部68よりも上方に位置する部分には、前方に向けて突出した第1係合部69が形成されている。後壁部65のうちガイド壁部68よりも下方に位置する部分には、後壁部65を前後方向に貫通する逃げ孔66が形成されている。
【0025】
図2に示すように、蓋部材50は、容器軸Oと同軸に配置された円板状の天板部51と、天板部51の外周縁から下方に延びる円筒状の筒部52と、を備える。蓋部材50の後端部には、筒部52から下方に向けて突出する連結部54が形成されている。連結部54は、底部材60の凹部63内に位置しており、凹部63内で回転軸R回りに回動可能となっている。この構成により、蓋部材50は、底部材60に対して回転軸R回りに回動可能であり、底部材60の上端開口を開閉可能に閉塞する。
【0026】
蓋部材50の天板部51の下面には、鏡70が固定される。蓋部材50とシール部3との間には、不図示の塗布具(パフなど)が配置される。塗布具は、中蓋40の後述する操作部46上に載置される。
【0027】
蓋部材50のうち前端部には、下方に向けて係合片53が突設されている。係合片53は、筒部52における内周面から下方に向けて突出するとともに左右方向に延びた板状に形成され、係合空間7a内に上方から入り込んでいる。
係合片53の下端部には、後方に向けて突出するとともに、底部材60の第1係合部69に対して離脱可能にアンダーカット嵌合される第2係合部53aが形成されている。第1係合部69に対して第2係合部53aが下方から係合することによって、蓋部材50は閉状態でロックされる。
【0028】
係合空間7a内には、第1係合部69と第2係合部53aとの係合を解除するプッシュピース8が設けられている。
プッシュピース8は、係合片53よりも前方に配置された操作壁部8aと、操作壁部8aから後方に向けて突設され、ガイド壁部68の傾斜面上に位置する解除突起8bと、操作壁部8aの下端部から後方に向けて突設され、底壁部64に載置されるベース部8cと、を備える。プッシュピース8は、後方に向けて押し込まれたときに、底部材60および蓋部材50に対して後方へ移動可能である。
【0029】
解除突起8bは、プッシュピース8の後方への移動にともなってガイド壁部68の傾斜面に沿って後方に移動し、第2係合部53aを下方から押し上げて、第1係合部69から離脱させる。これにより、第1係合部69と第2係合部53aとの係合を解除することができ、蓋部材50を開操作可能な状態とすることができる。
なお、プッシュピース8は、後方に移動したときに、解除突起8bの復元変形によって、前方に向けて復元移動する。
【0030】
ベース部8cは、プッシュピース8の後方への移動にともなって、後壁部65に形成された逃げ孔66内に前方から入り込む。また、ベース部8cには、下方に向けて突出し、底壁部64に形成された係止凹部67に係止する係止凸部が形成されている。これにより、プッシュピース8は、前方への抜け止めがされた状態で、外容器7に組み合わされている。
【0031】
なお、コンパクト容器1Aはプッシュピース8を備えていなくてもよい。例えば指先等によって、係合片53の下端部を前方に向けて僅かに撓ませるように変形させることで、第1係合部69と第2係合部53aとの係合を解除し、蓋部材50の閉状態のロックを解除してもよい。
【0032】
(シール部)
シール部3は、容器本体部2の上方に配設されている。シール部3は、容器本体部2の上方の開口を塞ぎ、容器本体部2の内部を封止している。シール部3は、容器本体部2に口部材80を介して装着された下部材10と、下部材10を介して容器本体部2に装着された上部材20と、を備えている。
【0033】
下部材10は、容器本体部2の上方の開口を覆う下側環状部11と、下側環状部11の内周縁から上方に向けて延びる嵌合筒部12と、下側環状部11の外周縁から上方に向けて延びる内側筒部13と、内側筒部13の上端部から径方向外側に向けて延びる環状の接続部14と、接続部14の外周縁から下方に向けて延びる外側筒部15と、を有している。下側環状部11、嵌合筒部12、内側筒部13、接続部14、および外側筒部15は、容器軸Oと同軸上に配置されている。
【0034】
下側環状部11の下面には、下方に向けて突出するリブ11aが形成されている。外側筒部15は、内側筒部13よりも径方向外側に位置している。外側筒部15と内側筒部13との間には、口部材80の取付筒部82が嵌合されている。これにより、口部材80を介して、容器本体部2とシール部3とが密に固定されている。
【0035】
上部材20は、平面視で環状の支持部21と、支持部21の外周縁から上方および下方に向けて延びる内筒部22と、内筒部22の上端部から径方向外側に向けて延びる頂壁部23と、頂壁部23の外周縁から下方に向けて延びる外周筒部24と、外周筒部24の下端部から径方向外側に向けて延びる下フランジ部25と、を備える。さらに上部材20は、支持部21の内周縁から上方に向けて延びる連通筒部21bと、連通筒部21bの上端部から径方向内側に延びる環状の弁座部21cと、を備えている。
支持部21、連通筒部21b、弁座部21c、内筒部22、頂壁部23、外周筒部24、および下フランジ部25は、容器軸Oと同軸上に配置されている。
【0036】
支持部21は、弁部材5を下方から支持している。弁座部21cの内周面は、後述する空間Sと容器本体部2内とを連通させる連通孔21aとされている。連通孔21aは、容器軸Oと同軸の円孔状に形成されている。内筒部22は、下部材10の嵌合筒部12内に嵌合している。
頂壁部23は、平坦面23aと、平坦面23aから下方に向けて窪む凹部23bと、を有している。平坦面23aは、頂壁部23の前端部に位置している。凹部23bは、頂壁部23のうち、平坦面23aを除く部分である。
【0037】
(中蓋)
中蓋40は、有頂筒状に形成されている。中蓋40は、シール部3の上方に設けられて、シール部3との間に、連通孔21aに連通する空間Sを画成する。中蓋40は、上端部同士が連結された内筒41および外筒42を有する二重円筒状に形成されている。外筒42の内周面の下部には、径方向内側に向けて突出する嵌合部42aが形成されている。嵌合部42aが口部材80にアンダーカット嵌合することで、口部材80および容器本体部2の中蓋40に対する下方移動が規制されている。
【0038】
中蓋40の外周面には、径方向外側に向けて延びる環状の載置部44が設けられている。載置部44は、中蓋40の外周面に、全周にわたって設けられている。載置部44の下面は、底部材60の筒状壁部62の上面に対して、その上方から接触する。載置部44は、中蓋40のうち、底部材60に載置される部分である。
以上の構成により、容器2Aが中蓋40を介して底部材60に装着されている。
【0039】
本実施形態では、容器2A、シール部3、および中蓋40が、レフィル容器を構成している。レフィル容器は、外容器7に対して着脱自在に設けられている。これにより、使用者は、容器本体部2内の内容物を使い切った後に、内容物が充填された新しいレフィル容器と交換することができる。
【0040】
中蓋40の上面には、上方に突出する環状の隆起部43が形成されている。隆起部43の内周面は、上方に向かうにしたがい径方向外側へ向けて延びる曲面状に形成されている。隆起部43により、後述する吐出孔45aから吐出された内容物を塗布具で掬う操作が容易となる。また、隆起部43は、吐出された内容物を堰き止めて、例えばこの内容物が中蓋40の外側に垂れることを抑止したり、中蓋40上に載置された塗布具の位置を安定させたりする役割なども有する。
【0041】
中蓋40の頂壁の少なくとも一部は、弾性膜45とされている。弾性膜45は、シール部3の上部材20とともに空間Sを画成している。弾性膜45には、この弾性膜45を上下方向に貫通する吐出孔45aが形成されている。弾性膜45のうち、吐出孔45aの近傍に位置する部分は、シール部3の頂壁部23における平坦面23aに対して、その上方から当接している。
弾性膜45のうち、シール部3の頂壁部23における凹部23bと上下方向で対向する部分には、弾性変形可能な操作部46が設けられている。操作部46は、凹部23bから上方に離間しており、凹部23bとの間に空間Sを画成している。
【0042】
操作部46は、上下方向に弾性変形可能に形成されている。操作部46は、弾性変形することで空間Sの内圧を増減させる。操作部46の材質は、例えばエラストマー、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、軟質ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、およびウレタン等(以下、単に「エラストマー等」という)の軟材質である。
操作部46の下面には、下方に向けて突出する突起46aが形成されている。操作部46が押下されると、操作部46は下方に向けて弾性変形する。突起46aにより、操作部46が下方に弾性変形したとき、操作部46の下面と弁部材5の上面とが密着することが抑制される。
【0043】
弾性膜45のうち、頂壁部23の平坦面23aに当接している部分は、第2弁体として機能する。第2弁体は、上下方向に弾性変形可能となっている。これにより、第2弁体は吐出孔45aを開放可能に閉塞している。
【0044】
(弁部材)
弁部材5は、シール部3の連通孔21aと空間Sとの連通、およびその遮断を切り替える役割を有する。弁部材5は、容器本体部2内から空間Sへの内容物の流れを許容し、空間Sから容器本体部2内への内容物の流れを遮断する逆止弁である。
図2に示すように、弁部材5は、弁筒部5aと、弁本体部5bとを有し、各部が一体に形成されている。
【0045】
弁本体部5bは、弁筒部5aの内側に位置し、弁筒部5aに接続されている。弁本体部5bは、弁座部21cにその上方から当接しており、連通孔21aの上方を覆っている。弁本体部5bは、円板状に形成されている。弁本体部5bの外径は、連通孔21aの内径よりも大きい。
弁筒部5aは、シール部3の内筒部22内に嵌合している。これにより、弁筒部5aおよび弁本体部5bはシール部3に固定されている。弁筒部5aの下端は、支持部21に対して、その上方から当接している。
【0046】
本実施形態では、弁部材5として三点弁を用いている。すなわち、弁本体部5bと弁筒部5aとの間には、複数の弾性脚5cが設けられている(
図1参照)。弾性脚5cが弾性変形することで、弁本体部5bは、弁筒部5aに対して上下方向に移動可能である。
なお、容器本体部2に収容する内容物の性状などに応じて、例えば、三点弁の形状を適宜変更したり、三点弁とは異なる構成の逆止弁を弁部材5として採用したりすることができる。
【0047】
次に、本実施形態におけるコンパクト容器1Aの作用について説明する。
【0048】
コンパクト容器1Aが未使用状態の場合、内容物は、容器本体部2内にのみ収容されており、空間Sには例えば空気が充填されている。
使用者は、プッシュピース8を操作して、外容器7の蓋部材50を開く。次に、操作部46を上方から押圧して、下方に窪ませるように弾性変形させる。このとき、操作部46は下方に弾性変形する。操作部46が下方に弾性変形すると空間Sの容積が小さくなるため、空間Sの内圧が上昇する。これにより、弾性膜45のうち、頂壁部23における平坦面23aに当接した部分(第2弁体)が上方に移動し、吐出孔45aが開放され、吐出孔45aから空間S内の空気が排出される。
【0049】
吐出孔45aから空気が吐出されて、空間Sの内圧が下がると、再び吐出孔45aが閉塞される。操作部46に加えられた押圧力が解除されると、弾性変形していた操作部46が元の状態に復元変形する。これにより、空間Sの容積が増加して、空間S内が負圧となる。このとき、弾性膜45が平坦面23aに当接することで吐出孔45aは閉塞されているため、外部から空間Sへ空気が入ることが抑制される。その一方で、空間Sが負圧となると、この負圧によって弁本体部5bに上方に向けた力が作用する。この結果、弁本体部5bが上方に弾性変位して連通孔21aと空間Sとが連通し、容器本体部2内の内容物が、連通孔21aを通じて空間S内に吸い上げられる。
【0050】
上述した操作部46の弾性変形および復元変形が繰り返し行われると、空間S内の空気が外部に排出されるとともに、空間S内に内容物が充填される。なお、容器本体部2は薄肉かつ軟質であり、可撓性を有しているため、内容物が連通孔21aを通して空間S等に流出すると、容器本体部2内の圧力の低下にともない減容変形する。これにより、内容物が空間S等に流入して容器本体部2内の内容物の総量が減った場合であっても、容器本体部2内から空間Sへと安定して内容物を送ることが可能である。
【0051】
空間Sに内容物が充填された状態で、操作部46を下方に弾性変形させると、弾性膜45のうち平坦面23aに当接している部分が上方に向けて弾性変形し、吐出孔45aが開放され、吐出孔45aから内容物が吐出される。
【0052】
以上の作用により、使用者は、操作部46の押下およびその解除を繰り返すことで、内容物を吐出させることができる。なお、内容物は隆起部43の内側に吐出されるため、隆起部43によって中蓋40の上面から垂れることが抑制される。使用者は、パフ等によって中蓋40の上面を拭い、内容物をパフ等に付着させて、これを使用することができる。
【0053】
(容器の製造方法)
次に、容器2Aの製造方法について説明する。
本実施形態における容器2Aの製造方法では、容器本体部2の樹脂層L1となるシート材Mを用いる。シート材Mとしては、CPP(Cast PolyPolypropylene:無軸延伸ポリプロピレン)を好適に用いることができる。ただし、シート材Mの材質は適宜変更可能である。
本実施形態では、シート材Mを延伸成形して樹脂層L1を得た後、樹脂層L1の表面に、蒸着によって金属層L2を形成する。
以下、
図4(a)~(c)を用いてより詳しく説明する。
【0054】
図4(a)~(c)に示すように、本実施形態では、共通の金型100を用いて口部材80および容器本体部2の樹脂層L1を形成する。金型100は、キャビティ101およびコア102を備えている。コア102は、第1コア部103と第2コア部104とを有している。コア102は、キャビティ101に対して上下方向で移動可能となっている。第2コア部104は、コア102内で、第1コア部103に対して上下方向で移動可能となっている。
【0055】
キャビティ101には、下側保持面101aと、下側形成面101bと、エア流路101cと、が形成されている。下側保持面101aは、シート材Mのうち、延伸成形の程度が小さい部分を保持するための平坦面である。下側形成面101bは、下側保持面101aから下方に向けて窪む凹部である。下側形成面101bは、容器本体部2の樹脂層L1の外面を形成するための面である。エア流路101cは上下方向に延びている。エア流路101cの上端部は、下側形成面101b内に開口している。エア流路101cの下端部は、不図示の吸引装置(バキューム)に接続されている。なお、エア流路101cの下端部は、吸引装置に接続されず、単に外部に連通していてもよい。
【0056】
第1コア部103には、上側保持面103aと、外側形成面103bと、が形成されている。上側保持面103aは平坦面であり、下側保持面101aに対して上下方向で対向している。
図4(b)に示すように、コア102が下降したとき、上側保持面103aと下側保持面101aとがシート材Mを挟持することで、シート材Mが保持される。外側形成面103bは、口部材80の外形の一部と同様の形状を有する面である。
【0057】
第2コア部に104は、延伸成形面104aと、内側形成面104bと、ランナー104cと、ゲート104dと、が形成されている。延伸成形面104aは、シート材Mを延伸成形して、容器本体部2の樹脂層L1の内面を形成するための面である。
図4(c)に示すように、第2コア部104が下側形成面101b内に進入したとき、シート材Mの一部が下側形成面101bと延伸成形面104aとの間で挟まれることで、容器本体部2の樹脂層L1が形成される。
【0058】
内側形成面104bは、口部材80の外形の一部と同様の形状を有する面である。ランナー104cは、口部材80となる溶融樹脂を流動させるための流路である。ランナー104cは上下方向に延びており、上端部は不図示の樹脂溶融部等に接続されている。ゲート104dは、ランナー104c内を流動した溶融樹脂の出口であり、ランナー104cの下端部に位置している。ゲート104dは、内側形成面104b内またはその近傍に開口している。
【0059】
金型100を用いて容器2Aを製造する場合、まず
図4(a)に示すように、キャビティ101とコア102との間にシート材Mを配置する。
次に、
図4(b)に示すように、第1コア部103を下降させて、上側保持面103aと下側保持面101aとの間でシート材Mを保持する。
【0060】
次に、シート材Mを延伸成形する。具体的には、例えば以下の3通りの方式を採用することができる。なお、シート材Mを延伸成形する前に、シート材Mが変形しやすいように、シート材Mを予め加熱しておいてもよい。シート材Mを加熱するためのヒーターは、第2コア部104内に設けられていてもよいし、金型100におけるその他の部位に設けられていてもよい。あるいは、金型100の外部でシート材Mを加熱した後、加熱されたシート材Mを金型100内に搬送してもよい。
【0061】
第1の方式としては、シート材Mを吸引することで容器本体部2を形成する。より詳しくは、上側保持面103aと下側保持面101aとの間でシート材Mを保持した状態で、エア流路101cに接続された吸引装置を作動させる。これにより、下側形成面101bとシート材Mとにより形成された空間内が負圧となり、シート材Mが下側形成面101bに吸着される。このとき、シート材Mが延伸成形されるとともに、下側形成面101bの形状に沿って樹脂層L1が形成される。なお、第1の方式による場合、金型100は第2コア部104を備えていなくてもよい。
【0062】
第2の方式としては、シート材Mをプレス加工することで容器本体部2を形成する。より詳しくは、上側保持面103aと下側保持面101aとの間でシート材Mを保持した状態で、
図4(c)に示すように、第2コア部104を下降させる。これにより、シート材Mがプレス加工され、延伸成形面104aに接したシート材Mが延伸成形される。そして、シート材Mのうち、延伸成形面104aと下側形成面101bとの間で挟まれた部分が、容器本体部2の樹脂層L1となる。
なお、第2の方式による場合、エア流路101cは、シート材Mと下側形成面101bとの間の空気を、金型100の外部に排出するために用いられる。この場合、エア流路101cは吸引装置に接続されていなくてもよい。
【0063】
第3の方式としては、シート材Mを吸引すること、およびシート材Mをプレス加工することで容器本体部2を形成する。より詳しくは、上記第1の方式において、第2コア部104を下降させて、シート材Mを延伸成形面104aと下側形成面101bとの間でプレス加工する。この方式によれば、吸引およびプレス加工の両方によって、シート材Mが下側形成面101bの表面により確実に密接する。したがって、樹脂層L1の形状をより安定させることができる。
【0064】
本実施形態では、上記した第1~第3のいずれの方式においても、シート材Mの延伸倍率を1.5倍以上2.6倍以下とする。本明細書において「延伸倍率」は、延伸成形前におけるシート材Mの厚み(延伸前厚みT1という)と、延伸成形後におけるシート材M(樹脂層L1)の最も薄い部分の厚み(延伸後最小厚みT2という)と、により算出される。例えば延伸倍率が1.5倍の場合には、T2=T1/1.5であることを意味する。なお、樹脂層L1が延伸成形によって形成されているか否か、および延伸成形されている場合の延伸倍率は、製造された容器本体部2を分析することで判別可能である。
【0065】
一例として、CPPのシート材Mの厚みを100μmとし、樹脂層L1の最も薄い部分の厚みが58μmとなるように、延伸成形を行った。すなわち、T1=100μm、T2=58μmであり、延伸倍率は100÷58=1.72である。この条件では、樹脂層L1に破れは生じなかった。
一方、CPPのシート材Mの厚みを100μmとし、樹脂層L1の最も薄い部分の厚みが38μm(つまり延伸倍率が2.63倍)となるように延伸成形を行ったところ、樹脂層L1に破れが生じた。
【0066】
図4(c)に示すように第2コア部104を下降させると、内側形成面104b、外側形成面103b、およびシート材Mによって囲まれた空間が、口部材80と同様の形状となる。また、ゲート104dは当該空間に向けて開口する。この状態でゲート104dから溶融した樹脂を注出することで、口部材80を射出成形することができる。このとき、溶融した樹脂はシート材Mにも接するため、樹脂が冷却されて固化すると、口部材80はシート材Mに固定された状態となる。つまり、本実施形態では、口部材80が形成されると同時に、樹脂層L1に口部材80が固定される。
【0067】
口部材80が固定された状態の樹脂層L1の外側の表面に、蒸着によって金属層L2を形成することで、容器本体部2が得られる。その後、必要に応じて、金属層L2を覆うコート層を形成してもよい。
また、口部材80を樹脂層L1に固定する前に、金属層L2およびコート層を形成してもよい。
【0068】
また、
図4(a)~(c)に示した製造方法以外に、容器本体部2を真空成形によって形成する製造方法を用いることもできる。より具体的には、キャビティ101と同様の型を用いて、真空引きによって樹脂層L1を形成し、当該樹脂層L1の表面に蒸着によって金属層L2を形成する。このようにして得られた容器本体部2をインサート品として、口部材80をインサート成形してもよい。このように口部材80をインサート成形する場合、仮に口部材80が金属層L2に接しているとすると、樹脂である口部材80と金属である金属層L2との固定の強度が比較的低くなる。したがって、本実施形態のように、樹脂層L1と口部材80とが接する構成とすることが好適である。また、容器本体部2の製造方法として、真空成形に変えて、従来から知られる圧空成形など、その他の容器の製造方法を採用してもよい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の容器2Aは、軟質かつ減容変形可能な有底筒状の容器本体部2を備えており、容器本体部2は、樹脂層L1と、樹脂層L1よりも外側に位置する金属層L2と、を有し、樹脂層L1の延伸倍率が1.5倍以上2.6倍以下となっている。このように、樹脂層L1の延伸倍率が1.5倍以上であるため、容器本体部2の深さがある程度大きくなっており、容器本体部2の容積を確保することができる。また、樹脂層L1の延伸倍率が2.6倍以下であり、大きすぎないため、樹脂層L1が過剰に引き延ばされて容器本体部2の破れが生じることを抑制できる。
さらに、樹脂層L1よりも外側に位置する金属層L2により、容器本体部2のバリア性を確保することができる。
【0070】
また、容器2Aは、容器本体部2の上端開口部に固定され、シール部3が取り付けられることで容器本体部2の内部がシールされる口部材80をさらに備えている。そして、口部材80は樹脂層L1に固定されている。この構成によれば、例えば口部材80が金属層L2に固定されている場合と比較して、口部材80の容器本体部2への固定の強度を高めることができる。また、口部材80が樹脂により形成されているため、容器本体部2をインサート品として口部材80をインサート成形し、口部材80の成形および容器本体部2への固定を同時に行うことができる。
【0071】
また、金属層L2は蒸着膜であるため、樹脂層L1の外側の表面に、均一な厚みで金属層L2を形成することができる。従って、金属層L2による容器本体部2のバリア性をより安定させることができる。
【0072】
また、本実施形態の容器2Aの製造方法は、樹脂のシート材Mを延伸成形して容器本体部2の樹脂層L1を形成する工程と、樹脂層L1の外側の表面に、蒸着によって金属層L2を形成する工程と、を有する。この構成によれば、シート材Mを延伸成形して樹脂層L1を形成した後で金属層L2を形成するため、金属層L2の厚みを均一にすることができ、かつ金属層L2が延伸されてクラックなどが生じることを抑制できる。したがって、金属層L2による容器本体部2のバリア性を確保することができる。
【実施例】
【0073】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
下記表1には、容器本体部の構成を異ならせた試験例1~3についての、水分透過率の試験結果を示している。試験例1は、容器本体部がCPPの樹脂層L1のみで構成されている。試験例2は、容器本体部がアルミニウムの金属層L2のみで構成されている。試験例3は、容器本体部がCPPの樹脂層L1およびアルミニウムの金属層L2によって構成されている。
【0074】
【0075】
試験例1の容器本体部は、CPPのシート材を延伸成形することで形成した。試験例2の容器本体部は、アルミニウムのシート材を延伸成形することで形成した。試験例3の容器本体部は、CPPのシート材を延伸成形した後、表面にアルミニウムの蒸着膜を形成した。試験例1~3の容器本体部の上端開口部の内径は、それぞれφ50.9mmで共通である。しかしながら、試験例2はアルミニウムの延伸成形であるためクラックが生じやすく、試験例1、3と比較して容器本体部の延伸倍率を大きくすることができず、容器本体部の容量が小さくなっている。
【0076】
試験例1~3について、各容器本体部に水を充填し、CPP製のシール材で密封した後、1週間ごとに重量を測定した。表1に示す「水分透過率(%)」は、前記重量の測定結果から得られた、水の減少率を示している。例えば、試験例1の4週間後の水分透過率は4.07%であるが、これは充填した水のうち4.07%相当分が減少したことを意味している。シール材の材質は試験例1~3で同じであるため、水分透過率の値が大きいほど、容器本体部を透過した水分の量が比較的大きいこと(すなわち水分バリア性が低いこと)を表す。
【0077】
表1に示す通り、試験例2は試験例1よりも水分透過率が小さい。これは、アルミニウムの水分バリア性がCPPよりも大きいためである。一方、試験例2は試験例1よりも容器本体部の容量が小さい。これは前述の通り、アルミニウムとCPPとで延伸可能な倍率が異なるためである。
これに対して試験例3は、試験例1と容量が同等であり、かつ試験例1、2よりも水分透過率が低いという非常に有利な結果が得られた。
【0078】
以上より、CPPのシート材を延伸成形した後、その表面にアルミニウムの蒸着膜を形成することで、容器本体部の容量を確保しつつ、水分バリア性を高めることが可能であることが確認された。なお、CPPをその他の種類の樹脂に置換し、アルミニウムをその他の種類の金属に置換しても、同様の効果が得られると考えられる。
【0079】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0080】
例えば、上記した実施形態の容器2Aは外容器7に収容され、コンパクト容器として用いられているが、コンパクト容器以外に本実施形態を適用することも可能である。例えば、容器本体部2と、容器本体部2の上端開口部をシールする膜状のシール材と、を備えるカップ容器を採用してもよい。この場合でも、容器本体部2が樹脂層L1および金属層L2を有し、樹脂層L1の延伸倍率が1.5倍以上2.6倍以下であることで、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0081】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
2…容器本体部 2A…容器 3…シール部 80…口部材 L1…樹脂層 L2…金属層 M…シート材