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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】分光器
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20221216BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G01J3/18
G02B5/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019053558
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153863
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】小島 学
(72)【発明者】
【氏名】金子 力
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-221922(JP,A)
【文献】特開2005-069971(JP,A)
【文献】特開平07-098250(JP,A)
【文献】特開2009-175038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-G01J 3/52
G02B 5/00-G02B 5/32
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した被測定光を分光する分光器であって、
回折格子と、
入射した光を平行光化するコリメータと、前記コリメータによって平行光化されて前記回折格子に入射した前記光の前記回折格子からの戻り光が焦点を結ぶ位置に配置され、前記戻り光の少なくとも一部を通過させる光学素子と、をそれぞれ有する複数の分光系と、
隣り合う2つの前記分光系のうちの一の前記分光系において発生した前記戻り光を、他の前記分光系に向けて折り返すように導く少なくとも1つの折り返し光学系と、
を備え、
前記折り返し光学系は、一の前記分光系において発生した前記戻り光を平行光化する第1レンズと、前記第1レンズによって平行光化された前記戻り光を他の前記分光系の前記コリメータとの間で集光する第2レンズと、前記戻り光を前記回折格子の刻線の延在方向に向けて反射させて前記第1レンズまで導く第1ミラーと、前記第2レンズによって集光された前記戻り光を前記回折格子に向けて反射させる第2ミラーと、を有する、
分光器。
【請求項2】
一の前記分光系が有する前記光学素子は、一の前記分光系が有する前記コリメータと前記第1レンズとの間で、前記回折格子からの戻り光が該コリメータによって焦点を結ぶ位置に配置されている、
請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
4つの前記分光系と、2つの前記折り返し光学系と、を備え、
一の前記折り返し光学系は、前記分光器に入射する前記被測定光が最初に通過する第1分光系において発生した前記戻り光を、前記第1分光系と隣り合う第2分光系に向けて折り返すように導き、
他の前記折り返し光学系は、前記第2分光系と隣り合う第3分光系において発生した前記戻り光を、前記第3分光系と隣り合う第4分光系に向けて折り返すように導く、
請求項1又は2に記載の分光器。
【請求項4】
前記回折格子からの前記戻り光が入射するミラー素子を備え、
前記ミラー素子に入射した前記戻り光は、前記ミラー素子で反射して前記回折格子に再度入射し、前記コリメータを介して前記光学素子まで導かれる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば波長領域において高い分解能又はシャープなフィルタ特性を得るために、被測定光を回折格子に複数回入射させると共に複数のスリットを通過させるマルチパス方式の分光器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マルチパス方式の分光器であって、最終の分光系より前の分光系において生じた散乱光の一部が最終の分光系での回折光と同一光路をたどる場合に生じる、分光特性上の分解能及びダイナミックレンジの悪化を抑制する分光器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-175038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術を用いたマルチパス方式の分光器のフィルタ特性では、近年のめまぐるしい技術発展により新たに開発されてきた光デバイスの分光特性を測定する上で、性能不足となる恐れがあった。
【0006】
本開示は、マルチパス方式の分光器において、フィルタ特性が向上する分光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る分光器は、入射した被測定光を分光する分光器であって、回折格子と、入射した光を平行光化するコリメータと、前記コリメータによって平行光化されて前記回折格子に入射した前記光の前記回折格子からの戻り光が焦点を結ぶ位置に配置され、前記戻り光の少なくとも一部を通過させる光学素子と、をそれぞれ有する複数の分光系と、隣り合う2つの前記分光系のうちの一の前記分光系において発生した前記戻り光を、他の前記分光系に向けて折り返すように導く少なくとも1つの折り返し光学系と、を備え、前記折り返し光学系は、一の前記分光系において発生した前記戻り光を平行光化する第1レンズと、前記第1レンズによって平行光化された前記戻り光を他の前記分光系の前記コリメータとの間で集光する第2レンズと、を有する。このような分光器によれば、マルチパス方式の分光器において、フィルタ特性が向上する。したがって、このような分光器は、近年の光デバイスを測定する上で要求されるフィルタ特性を満たすことも可能である。
【0008】
一実施形態において、一の前記分光系が有する前記光学素子は、一の前記分光系が有する前記コリメータと前記第1レンズとの間で、前記回折格子からの戻り光が該コリメータによって焦点を結ぶ位置に配置されていてもよい。これにより、分光系と折り返し光学系とが完全に分離される。折り返し光学系は、一の分光系によって分散分光された光を他の分光系に戻すことができる。
【0009】
一実施形態において、4つの前記分光系と、2つの前記折り返し光学系と、を備え、一の前記折り返し光学系は、前記分光器に入射する前記被測定光が最初に通過する第1分光系において発生した前記戻り光を、前記第1分光系と隣り合う第2分光系に向けて折り返すように導き、他の前記折り返し光学系は、前記第2分光系と隣り合う第3分光系において発生した前記戻り光を、前記第3分光系と隣り合う第4分光系に向けて折り返すように導いてもよい。これにより、分光器のフィルタ特性の帯域幅が広くなるように設定される場合には、4つの分光系と、3つの折り返し光学系と、を備える分光器と比較して、分光器全体によって得られるフィルタ特性の劣化が抑制される。
【0010】
一実施形態において、前記回折格子からの前記戻り光が入射するミラー素子を備え、前記ミラー素子に入射した前記戻り光は、前記ミラー素子で反射して前記回折格子に再度入射し、前記コリメータを介して前記光学素子まで導かれてもよい。これにより、被測定光は、各分光系において、回折格子により2回分散分光されて各光学素子を通過する。したがって、分光器によって得られるフィルタ特性がよりシャープになる。
【0011】
一実施形態において、前記折り返し光学系は、前記第1レンズによって平行光化された前記戻り光を前記回折格子の刻線の延在方向に向けて反射させる第1ミラーと、前記第1ミラーで反射した前記戻り光を前記回折格子に向けて反射させ、前記第2レンズまで導く第2ミラーと、を有してもよい。これにより、折り返し光学系は、一の分光系によって分散分光された光を他の分光系に戻すことができる。
【0012】
一実施形態において、前記折り返し光学系は、前記戻り光を前記回折格子の刻線の延在方向に向けて反射させて前記第1レンズまで導く第1ミラーと、前記第2レンズによって集光された前記戻り光を前記回折格子に向けて反射させる第2ミラーと、を有してもよい。これにより、回折格子の刻線の延在方向と直交する光の伝搬方向における分光器の全長を短くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、マルチパス方式の分光器において、フィルタ特性が向上する分光器を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る分光器の構成を示す模式図である。
図2】第2実施形態に係る分光器の構成を示す模式図である。
図3図2の分光器によって得られるフィルタ特性の一例を示すグラフ図である。
図4】第3実施形態に係る分光器の構成を示す模式図である。
図5図4の分光器によって得られるフィルタ特性の一例を示すグラフ図である。
図6】第4実施形態に係る分光器の構成を示す模式図である。
図7図6の分光器によって得られるフィルタ特性の一例を示す、図5に対応するグラフ図である。
図8】第4実施形態に係る分光器の変形例を示す、図6に対応する模式図である。
図9A】折り返し光学系の第1変形例を示す模式図である。
図9B】折り返し光学系の第2変形例を示す模式図である。
図10】従来のダブルパス分光器によって得られるフィルタ特性の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例えば光スペクトラムアナライザ等に用いられる従来のマルチパス方式の分光器としては、特許文献1に記載のようなリトロー型のダブルパス分光器が知られている。このようなダブルパス分光器は、回折格子と、2つのコリメータと、2つのスリットと、を有している。ダブルパス分光器は、例えば光ファイバ等の導光部品から出射した被測定光を第1コリメータにより平行光化して回折格子に入射させる。ダブルパス分光器は、回折格子による回折光を第1コリメータにより集光して第1スリットを通過させる。ダブルパス分光器は、第1スリットを通過した回折光を第2コリメータにより再度平行光化して回折格子に入射させる。ダブルパス分光器は、その回折光を第2コリメータにより集光して第2スリットを通過させる。
【0016】
このように、従来のダブルパス分光器は、導光部品直後の光路から第1スリットまでを含む第1分光系と、第1スリット後の光路から第2スリットまでを含む第2分光系と、を有し、第1分光系及び第2分光系の順に被測定光を通過させる。このような構成を有する従来のダブルパス分光器では、第1分光系において被測定光が分散分光され、第1分光系により分散分光された被測定光が第2分光系においてさらに分散分光される。したがって、被測定光の光路に2段の光学フィルタを直列に配置した場合と同様のフィルタ特性が得られる。フィルタ特性は、例えば、中心波長、帯域幅、抑圧比、波長傾斜幅、及び阻止域等のフィルタに関する任意の指標に基づいて定められる。
【0017】
図10は、従来のダブルパス分光器によって得られるフィルタ特性の一例を示すグラフ図である。図10の縦軸は、光の減衰率(単位:dB)を示す。図10の横軸は、被測定光の中心波長からのオフセット(単位:nm)を示す。図10において、細い実線は、被測定光が有する光スペクトルを示す。一点鎖線は、第1分光系によって得られるフィルタ特性の一例を示す。破線は、第2分光系によって得られるフィルタ特性の一例を示す。太い実線は、第1分光系によるフィルタ特性と第2分光系によるフィルタ特性とを合成したときの、ダブルパス分光器全体によって得られるフィルタ特性の一例を示す。従来のダブルパス分光器によれば、2段の光学フィルタを直列に配置した場合と同様のフィルタ特性が得られ、図10に示すようなフィルタ特性が得られる。
【0018】
例えば、従来のダブルパス分光器によって得られるフィルタ特性では、第1分光系によるフィルタ特性と第2分光系によるフィルタ特性とが合成されることで抑圧比が増大する。すなわち、合成後のフィルタ特性では、合成される前の各フィルタ特性と比較して、中心波長からのオフセットが大きくなるに従って、光の減衰量がより顕著に増大する。
【0019】
一方で、従来のダブルパス分光器のフィルタ特性の帯域幅は、第1スリットの幅によって算出される第1分光系のフィルタ特性の帯域幅により決定され、第2分光系の第2スリットの幅には依存しない。すなわち、従来のダブルパス分光器のフィルタ特性の帯域幅は、第2分光系の第2スリットの幅をいくら狭くしたとしても、第1分光系によって得られるフィルタ特性の帯域幅により制限される。なぜなら、第1分光系で分散分光された被測定光が第2分光系で減算的に分散分光され、第2スリットにおいて分散量がキャンセルされるためである。より具体的には、第1スリット上での回折光のビームスポットの位置は、回折格子の回動に応じて変動するが、第2スリット上での回折光のビームスポットの位置は、回折格子が回動しても変動せず、一定であるためである。
【0020】
例えば、近年の光ファイバ通信市場における光デバイスの技術発展はめまぐるしく、発光デバイスの光雑音レベルは極限まで低く抑えられている。例えば、信号対雑音比の特性は、80dB以上となっている。また、このような光デバイスの内部構造を解析するために、発光波長近傍の光スペクトルを測定することも重要となっている。しかしながら、従来の技術を用いたマルチパス方式の分光器のフィルタ特性では、近年の光デバイスを測定する上で、性能不足となる恐れがある。例えば、図10に示すとおり、被測定光の光スペクトルが従来のマルチパス方式の分光器のフィルタ特性に完全に埋もれている。したがって、このような分光器を用いてフィルタの中心波長を掃引しながら被測定光を測定すると、得られる光スペクトルは、従来のマルチパス方式の分光器のフィルタ特性が反映されたものとなる。すなわち、従来のマルチパス方式の分光器では、被測定光が有する光スペクトルの本来の線幅及びサイドバンド構造等を測定することが困難である。
【0021】
本開示は、上記の問題点を解決するために、マルチパス方式の分光器において、フィルタ特性が向上する分光器を提供することを目的とする。
【0022】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る分光器1の構成を示す模式図である。図1を参照しながら、第1実施形態に係る分光器1の構成について主に説明する。
【0024】
第1実施形態に係る分光器1は、例えば光ファイバ等の導光部品2から出射して分光器1に入射した被測定光L1を分光する。分光器1は、回折格子11と、複数の分光系Sと、少なくとも1つの折り返し光学系Tと、を有する。第1実施形態に係る分光器1は、2つの分光系Sと、1つの折り返し光学系Tと、を有する。以下では、2つの分光系Sを互いに区別する場合には、第1分光系S1及び第2分光系S2と表記する。
【0025】
回折格子11は、一定間隔で平行に延在している複数の刻線Cを有する反射板である。回折格子11は、回折格子11に入射する光を分散分光してその回折光を戻り光として出射させる。回折格子11は、任意の駆動機構により、刻線Cの延在方向Yと平行に延在する回折格子11の中央部の回転軸Rを中心にして回動可能である。回折格子11は、入射する光に対する刻線Cの見かけ上の間隔を任意に変更可能である。
【0026】
複数の分光系Sは、分光系Sに入射した光を平行光化するコリメータ12をそれぞれ有する。コリメータ12は、コリメータ12によって平行光化されて回折格子11に入射した光の回折格子11からの戻り光を集光する。コリメータ12は、分光系Sの入射側と回折格子11との間に配置されている。コリメータ12は、例えばコリメーションレンズを含む。
【0027】
複数の分光系Sは、コリメータ12によって平行光化されて回折格子11に入射した光の回折格子11からの戻り光が焦点を結ぶ位置に配置され、戻り光の少なくとも一部を通過させる光学素子13をそれぞれ有する。例えば、光学素子13は、回折格子11からの戻り光がコリメータ12によって焦点を結ぶ位置に配置されている。光学素子13は、例えばスリット、ピンホール、及びアパーチャ等の任意の光学素子を含む。
【0028】
第1分光系S1は、刻線Cの延在方向Yにおいて最も導光部品2側に配置されている。すなわち、第1分光系S1は、導光部品2から出射して分光器1に入射した被測定光L1を、複数の分光系Sの中で最初に通過させる。第1分光系S1は、第1コリメータ121と、第1光学素子131と、を有する。加えて、第1分光系S1は、導光部品2を出射した直後の被測定光L1の光路部分から、第1光学素子131までの光路を含む。
【0029】
導光部品2から出射して拡散しながら第1分光系S1に入射した被測定光L1は、第1コリメータ121によって平行光となる。第1コリメータ121によって平行光となった被測定光L1は、回折格子11に入射する。このとき、回折格子11からの戻り光として、回折光L2が、回折格子11に入射した被測定光L1に基づき発生する。回折光L2は、第1コリメータ121を通過して、第1光学素子131が配置されている位置において焦点を結ぶ。回折光L2の少なくとも一部は、第1光学素子131を通過する。
【0030】
第2分光系S2は、刻線Cの延在方向Yにおいて第1分光系S1よりも導光部品2の反対側に配置されている。第2分光系S2は、第1分光系S1及び折り返し光学系Tから出射した光L3を通過させる。第2分光系S2は、第2コリメータ122と、第2光学素子132と、を有する。加えて、第2分光系S2は、折り返し光学系Tを出射した直後の光L3の光路部分から、第2光学素子132までの光路を含む。
【0031】
第2分光系S2に入射した光L3は、第2コリメータ122によって平行光となる。第2コリメータ122によって平行光となった光L3は、回折格子11に入射する。このとき、回折格子11からの戻り光として、回折光L4が、回折格子11に入射した光L3に基づき発生する。回折光L4は、第2コリメータ122を通過して、第2光学素子132が配置されている位置において焦点を結ぶ。回折光L4の少なくとも一部は、第2光学素子132を通過する。
【0032】
折り返し光学系Tは、隣り合う2つの分光系Sのうちの一の分光系Sにおいて発生した戻り光を、他の分光系Sに向けて折り返すように導く。折り返し光学系Tは、一の分光系Sにおいて発生した戻り光を平行光化する第1レンズ14と、第1レンズ14によって平行光化された戻り光を他の分光系Sのコリメータ12との間で集光する第2レンズ15と、を有する。
【0033】
例えば、折り返し光学系Tは、隣り合う第1分光系S1及び第2分光系S2のうちの第1分光系S1において発生した回折光L2を、第2分光系S2に向けて折り返すように導く。折り返し光学系Tでは、例えば、第1レンズ14、第1ミラー16、第2ミラー17、及び第2レンズ15が回折光L2の入射側から出射側に向けて順番に配置されている。
【0034】
第1レンズ14は、第1分光系S1において発生した回折光L2を平行光化する。第1レンズ14は、第1分光系S1が有する第1光学素子131を、第1分光系S1が有する第1コリメータ121と共に挟むように配置されている。第1ミラー16は、第1レンズ14によって平行光化された回折光L2を回折格子11の刻線Cの延在方向Yに向けて反射させる。第2ミラー17は、第1ミラー16で反射した回折光L2を回折格子11に向けて反射させ、第2レンズ15まで導く。第2レンズ15は、第1レンズ14によって平行光化された回折光L2を第2分光系S2の第2コリメータ122と第2レンズ15との間で集光する。
【0035】
回折光L2は、第1分光系S1の第1光学素子131が配置されている位置において一度焦点を結んだ後、拡散しながら第1レンズ14に入射する。回折光L2は、第1レンズ14によって平行光となり、平行光のまま第1ミラー16及び第2ミラー17で反射する。回折光L2は、第2レンズ15に入射して、第2分光系S2の第2コリメータ122と第2レンズ15との間で焦点を結ぶ。
【0036】
第1実施形態に係る分光器1によれば、被測定光L1の光路に2段の光学フィルタを直列に配置した場合と同様のフィルタ特性が得られる。より具体的には、分光器1全体のフィルタ特性は、第1分光系S1によるフィルタ特性と第2分光系S2によるフィルタ特性との合成によって得られる。例えば、第1分光系S1によるフィルタ特性の帯域幅BW1及び第2分光系S2によるフィルタ特性の帯域幅BW2は、それぞれ以下の式1及び式2により表される。
【0037】
[数1]
BW1 = ε1・d/(m・f)・cos(β) (式1)
[数2]
BW2 = ε2・d/(m・2f)・cos(β) (式2)
【0038】
ここで、ε1、ε2はそれぞれ、第1光学素子131及び第2光学素子132において光が通過可能な幅である。例えば、光学素子13がスリットである場合、ε1、ε2はそれぞれ対応するスリットのスリット幅である。dは回折格子11の溝の間隔、mは回折次数、fはコリメータ12の焦点距離、βは回折格子11の法線と回折光の出射方向とがなす角度である。例えば、スリット幅ε1、ε2は、各フィルタ特性の帯域幅が帯域幅BW1>帯域幅BW2となるように決定される。
【0039】
以上のような第1実施形態に係る分光器1によれば、従来のダブルパス分光器と比較して、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅及び波長傾斜幅が狭くなり、よりシャープなフィルタ特性が得られる。分光器1では、第1分光系S1で分散分光された被測定光L1が第2分光系S2でも加算的に分散分光される。したがって、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、第1分光系S1及び第2分光系S2によって得られるフィルタ特性の帯域幅のうちより狭い帯域幅によって決定される。例えば、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、上記の帯域幅BW2によって決定される。上記の式2を参照すると、コリメータ12の焦点距離fが実効的に2倍となって分母に含まれていることで、帯域幅BW2は、従来のダブルパス分光器の場合と比較してより狭くなる。したがって、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅が狭くなる。
【0040】
例えば、第1実施形態に係る分光器1によって得られるフィルタ特性では、第1分光系S1によるフィルタ特性と第2分光系S2によるフィルタ特性とが合成されることで抑圧比が増大する。すなわち、合成後のフィルタ特性では、合成される前の各フィルタ特性と比較して、中心波長からのオフセットが大きくなるに従って、光の減衰量がより顕著に増大する。
【0041】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る分光器1の構成を示す模式図である。図2を参照しながら、第2実施形態に係る分光器1の構成について主に説明する。
【0042】
第2実施形態に係る分光器1は、3つの分光系Sと、2つの折り返し光学系Tと、を有する点で第1実施形態と相違する。以下では、3つの分光系Sを互いに区別する場合には、第1分光系S1、第2分光系S2、及び第3分光系S3と表記する。同様に、2つの折り返し光学系Tを互いに区別する場合には、第1折り返し光学系T1及び第2折り返し光学系T2と表記する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第2実施形態に係る分光器1においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0043】
第1分光系S1、第1折り返し光学系T1、及び第2分光系S2は、第1実施形態における第1分光系S1、折り返し光学系T、及び第2分光系S2とそれぞれ同一である。第1折り返し光学系T1は、第1実施形態における折り返し光学系Tと同様に、第1レンズ141、第2レンズ151、第1ミラー161、及び第2ミラー171を有する。第2実施形態に係る分光器1では、第2折り返し光学系T2及び第3分光系S3が付加的に配置されている。
【0044】
例えば、第2折り返し光学系T2は、隣り合う第2分光系S2及び第3分光系S3のうちの第2分光系S2において発生した回折光L4を、第3分光系S3に向けて折り返すように導く。第2折り返し光学系T2では、例えば、第1レンズ142、第1ミラー162、第2ミラー172、及び第2レンズ152が回折光L4の入射側から出射側に向けて順番に配置されている。
【0045】
第1レンズ142は、第2分光系S2において発生した回折光L4を平行光化する。第1レンズ142は、第2分光系S2が有する第2光学素子132を、第2分光系S2が有する第2コリメータ122と共に挟むように配置されている。第1ミラー162は、第1レンズ142によって平行光化された回折光L4を回折格子11の刻線Cの延在方向Yに向けて反射させる。第2ミラー172は、第1ミラー162で反射した回折光L4を回折格子11に向けて反射させ、第2レンズ152まで導く。第2レンズ152は、第1レンズ142によって平行光化された回折光L4を後述する第3分光系S3の第3コリメータ123と第2レンズ152との間で集光する。
【0046】
回折光L4は、第2分光系S2の第2光学素子132が配置されている位置において一度焦点を結んだ後、拡散しながら第1レンズ142に入射する。回折光L4は、第1レンズ142によって平行光となり、平行光のまま第1ミラー162及び第2ミラー172で反射する。回折光L4は、第2レンズ152に入射して、後述する第3分光系S3の第3コリメータ123と第2レンズ152との間で焦点を結ぶ。
【0047】
第3分光系S3は、刻線Cの延在方向Yにおいて第2分光系S2よりも導光部品2の反対側に配置されている。第3分光系S3は、第2折り返し光学系T2から出射した光L5を通過させる。第3分光系S3は、第3コリメータ123と、第3光学素子133と、を有する。加えて、第3分光系S3は、第2折り返し光学系T2を出射した直後の光L5の光路部分から、第3光学素子133までの光路を含む。
【0048】
第3分光系S3に入射した光L5は、第3コリメータ123によって平行光となる。第3コリメータ123によって平行光となった光L5は、回折格子11に入射する。このとき、回折格子11からの戻り光として、回折光L6が、回折格子11に入射した光L5に基づき発生する。回折光L6は、第3コリメータ123を通過して、第3光学素子133が配置されている位置において焦点を結ぶ。回折光L6の少なくとも一部は、第3光学素子133を通過する。
【0049】
第2実施形態に係る分光器1では、第1分光系S1にて被測定光L1が分散分光され、第1分系S1により分散分光された被測定光L1が第2分光系S2にてさらに分散分光される。さらに、第2実施形態に係る分光器1では、第2分光系S2により分散分光された被測定光L1が第3分光系S3にて分散分光される。したがって、被測定光L1の光路に3段の光学フィルタを直列に配置した場合と同様の良好なフィルタ特性が得られる。
【0050】
図3は、図2の分光器1によって得られるフィルタ特性の一例を示すグラフ図である。図3の縦軸は、光の減衰率(単位:dB)を示す。図3の横軸は、被測定光L1の中心波長からのオフセット(単位:nm)を示す。図3において、細い実線は、被測定光L1が有する光スペクトルを示す。一点鎖線は、第1分光系S1によって得られるフィルタ特性の一例を示す。破線は、第2分光系S2によって得られるフィルタ特性の一例を示す。点線は、第3分光系S3によって得られるフィルタ特性の一例を示す。太い実線は、第1分光系S1、第2分光系S2、及び第3分光系S3によるフィルタ特性を全て合成したときの、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の一例を示す。
【0051】
分光器1全体のフィルタ特性は、第1分光系S1、第2分光系S2、及び第3分光系S3によるフィルタ特性を全て合成することで得られる。例えば、第1分光系S1によるフィルタ特性の帯域幅BW1及び第2分光系S2によるフィルタ特性の帯域幅BW2は、上述した式1及び式2によりそれぞれ表わされる。第3分光系S3によるフィルタ特性の帯域幅BW3は、以下の式3により表される。
【0052】
[数3]
BW3 = ε3・d/(m・3f)・cos(β) (式3)
【0053】
ここで、ε3は、第3光学素子133において光が通過可能な幅である。例えば、第3光学素子133がスリットである場合、ε3は対応するスリットのスリット幅である。d、m、f、及びβのそれぞれは、式1及び式2において説明したものと同一である。例えば、スリット幅ε1、ε2、ε3は、各フィルタ特性の帯域幅が帯域幅BW1>帯域幅BW2>帯域幅BW3となるように決定される。
【0054】
以上のような第2実施形態に係る分光器1によれば、第1実施形態と比較して、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅及び波長傾斜幅がさらに狭くなり、よりシャープなフィルタ特性が得られる。第2実施形態に係る分光器1では、第1分光系S1で分散分光された被測定光L1が第2分光系S2及び第3分光系S3でも加算的に分散分光される。したがって、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、第1分光系S1、第2分光系S2、及び第3分光系S3によって得られるフィルタ特性の帯域幅のうち最も狭い帯域幅によって決定される。例えば、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、上記の帯域幅BW3によって決定される。上記の式3を参照すると、コリメータ12の焦点距離fが実効的に3倍となって分母に含まれていることで、帯域幅BW3は、第1実施形態の場合と比較してもより狭くなる。したがって、第2実施形態に係る分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅がさらに狭くなる。
【0055】
例えば、図3に示すとおり、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、被測定光L1の光スペクトルにおける中心ピークと隣接するサイドバンドピークとの間の波長間隔よりも十分に狭い。したがって、第2実施形態に係る分光器1を用いてフィルタの中心波長を掃引しながら被測定光L1を測定すると、得られる光スペクトルは、分光器1のフィルタ特性の帯域幅を反映しつつも、被測定光L1の光スペクトルにおけるサイドバンド構造を明確に示す。例えば、光デバイスの内部構造を解析するために、発光波長近傍の光スペクトルを測定することも可能となる。このように、第2実施形態に係る分光器1は、近年の光デバイスを測定する上で要求されるフィルタ特性を満たすことも可能である。
【0056】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係る分光器1の構成を示す模式図である。図4を参照しながら、第3実施形態に係る分光器1の構成について主に説明する。
【0057】
第3実施形態に係る分光器1は、4つの分光系Sと、3つの折り返し光学系Tと、を有する点で第1実施形態及び第2実施形態と相違する。以下では、4つの分光系Sを互いに区別する場合には、第1分光系S1、第2分光系S2、第3分光系S3、及び第4分光系S4と表記する。同様に、3つの折り返し光学系Tを互いに区別する場合には、第1折り返し光学系T1、第2折り返し光学系T2、及び第3折り返し光学系T3と表記する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、対応する説明が、第3実施形態に係る分光器1においても当てはまる。以下では、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0058】
第1分光系S1、第1折り返し光学系T1、第2分光系S2、第2折り返し光学系T2、及び第3分光系S3は、第2実施形態における構成と全く同一である。第3実施形態に係る分光器1では、第3折り返し光学系T3及び第4分光系S4が付加的に配置されている。
【0059】
例えば、第3折り返し光学系T3は、隣り合う第3分光系S3及び第4分光系S4のうちの第3分光系S3において発生した回折光L6を、第4分光系S4に向けて折り返すように導く。第3折り返し光学系T3では、例えば、第1レンズ143、第1ミラー163、第2ミラー173、及び第2レンズ153が回折光L6の入射側から出射側に向けて順番に配置されている。
【0060】
第1レンズ143は、第3分光系S3において発生した回折光L6を平行光化する。第1レンズ143は、第3分光系S3が有する第3光学素子133を、第3分光系S3が有する第3コリメータ123と共に挟むように配置されている。第1ミラー163は、第1レンズ143によって平行光化された回折光L6を回折格子11の刻線Cの延在方向Yに向けて反射させる。第2ミラー173は、第1ミラー163で反射した回折光L6を回折格子11に向けて反射させ、第2レンズ153まで導く。第2レンズ153は、第1レンズ143によって平行光化された回折光L6を後述する第4分光系S4の第4コリメータ124と第2レンズ153との間で集光する。
【0061】
回折光L6は、第3分光系S3の第3光学素子133が配置されている位置において一度焦点を結んだ後、拡散しながら第1レンズ143に入射する。回折光L6は、第1レンズ143によって平行光となり、平行光のまま第1ミラー163及び第2ミラー173で反射する。回折光L6は、第2レンズ153に入射して、後述する第4分光系S4の第4コリメータ124と第2レンズ153との間で焦点を結ぶ。
【0062】
第4分光系S4は、刻線Cの延在方向Yにおいて第3分光系S3よりも導光部品2の反対側に配置されている。第4分光系S4は、第3折り返し光学系T3から出射した光L7を通過させる。第4分光系S4は、第4コリメータ124と、第4光学素子134と、を有する。加えて、第4分光系S4は、第3折り返し光学系T3を出射した直後の光L7の光路部分から、第4光学素子134までの光路を含む。
【0063】
第4分光系S4に入射した光L7は、第4コリメータ124によって平行光となる。第4コリメータ124によって平行光となった光L7は、回折格子11に入射する。このとき、回折格子11からの戻り光として、回折光L8が、回折格子11に入射した光L7に基づき発生する。回折光L8は、第4コリメータ124を通過して、第4光学素子134が配置されている位置において焦点を結ぶ。回折光L8の少なくとも一部は、第4光学素子134を通過する。
【0064】
第3実施形態に係る分光器1では、第1分光系S1にて被測定光L1が分散分光され、第1分系S1により分散分光された被測定光L1が第2分光系S2にてさらに分散分光される。さらに、第3実施形態に係る分光器1では、第2分光系S2により分散分光された被測定光L1が第3分光系S3にて分散分光され、第3分光系S3により分散分光された被測定光L1が第4分光系S4にて分散分光される。したがって、被測定光L1の光路に4段の光学フィルタを直列に配置した場合と同様の良好なフィルタ特性が得られる。
【0065】
分光器1全体のフィルタ特性は、第1分光系S1、第2分光系S2、第3分光系S3、及び第4分光系S4によるフィルタ特性を全て合成することで得られる。例えば、第1分光系S1によるフィルタ特性の帯域幅BW1、第2分光系S2によるフィルタ特性の帯域幅BW2、及び第3分光系S3によるフィルタ特性の帯域幅BW3は、上述した式1、式2、及び式3によりそれぞれ表わされる。第4分光系S4によるフィルタ特性の帯域幅BW4は、以下の式4により表される。
【0066】
[数4]
BW4 = ε4・d/(m・4f)・cos(β) (式4)
【0067】
ここで、ε4は、第4光学素子134において光が通過可能な幅である。例えば、第4光学素子134がスリットである場合、ε4は対応するスリットのスリット幅である。d、m、f、及びβのそれぞれは、式1、式2、及び式3において説明したものと同一である。例えば、スリット幅ε1、ε2、ε3、ε4は、各フィルタ特性の帯域幅が帯域幅BW1>帯域幅BW2>帯域幅BW3>帯域幅BW4となるように決定される。
【0068】
以上のような第3実施形態に係る分光器1によれば、第1実施形態及び第2実施形態と比較して、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅及び波長傾斜幅がさらに狭くなり、よりシャープなフィルタ特性が得られる。第3実施形態に係る分光器1では、第1分光系S1で分散分光された被測定光L1が第2分光系S2、第3分光系S3、及び第4分光系S4でも加算的に分散分光される。したがって、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、第1分光系S1、第2分光系S2、第3分光系S3、及び第4分光系S4によって得られるフィルタ特性の帯域幅のうち最も狭い帯域幅によって決定される。例えば、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅は、上記の帯域幅BW4によって決定される。上記の式4を参照すると、コリメータ12の焦点距離fが実効的に4倍となって分母に含まれていることで、帯域幅BW4は、第1実施形態及び第2実施形態の場合と比較してもより狭くなる。したがって、第3実施形態に係る分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅がさらに狭くなる。
【0069】
このように、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅がより狭くなるように設定される場合の他に、例えば、光スペクトラムアナライザの用途によっては、分光器1のフィルタ特性の帯域幅が広くなるように設定される場合もある。このような場合に第3実施形態に係る分光器1によって得られるフィルタ特性を図5に示す。
【0070】
図5は、図4の分光器1によって得られるフィルタ特性の一例を示すグラフ図である。図5の縦軸は、光の減衰率(単位:dB)を示す。図5の横軸は、被測定光L1の中心波長からのオフセット(単位:nm)を示す。図5において、一点鎖線は、第1分光系S1によって得られるフィルタ特性の一例を示す。破線は、第2分光系S2によって得られるフィルタ特性の一例を示す。点線は、第4分光系S4によって得られるフィルタ特性の一例を示す。太い実線は、第1分光系S1、第2分光系S2、及び第4分光系S4によるフィルタ特性を全て合成したときの、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の一例を示す。
【0071】
なお、第3実施形態に係る分光器1は、良好なフィルタ特性が十分に維持されるのであれば、例えば第2光学素子132及び第3光学素子133のいずれか一方のみを有してもよい。図5では、第3実施形態に係る分光器1において、例えば第3光学素子133が省略された場合のフィルタ特性を例示している。
【0072】
例えば、分光器1のフィルタ特性の帯域幅が広くなるように設定される場合、帯域幅BW1>帯域幅BW2>帯域幅BW4の関係を成立させようとすると、図5に示すような各フィルタ特性が得られ、分光器1全体によって得られるフィルタ特性が劣化しやすくなる。より具体的には、分光器1全体によって得られるフィルタ特性において減衰スロープが波打ち、中心波長からのオフセットが大きくなるに従って光の減衰量が滑らかに増大しない。
【0073】
以上のように、第3実施形態に係る分光器1によれば、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の帯域幅がより狭くなるように設定される場合、第1実施形態及び第2実施形態と比較しても、よりシャープなフィルタ特性が得られる。しかしながら、分光器1のフィルタ特性の帯域幅が広くなるように設定される場合に、フィルタ特性が劣化しやすくなる。以下の第4実施形態に係る分光器1は、このような新たな問題点を解決する。
【0074】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係る分光器1の構成を示す模式図である。図6を参照しながら、第4実施形態に係る分光器1の構成について主に説明する。
【0075】
第4実施形態に係る分光器1は、第2折り返し光学系T2に代えて、第1折り返しミラー191及び第2折り返しミラー192を有する点で、第3実施形態と相違する。すなわち、第4実施形態に係る分光器1は、4つの分光系Sと、2つの折り返し光学系Tと、を有する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第3実施形態と同様であり、対応する説明が、第4実施形態に係る分光器1においても当てはまる。以下では、第3実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第3実施形態と異なる点について主に説明する。
【0076】
例えば、第1折り返しミラー191は、第2分光系S2の第2コリメータ122と第2光学素子132との間に配置されている。第2折り返しミラー192は、第2分光系S2の第2光学素子132と第3分光系S3の第3コリメータ123との間に配置されている。
【0077】
第1折り返しミラー191は、第2分光系S2において発生し、かつ第2コリメータ122によって集束している回折光L4を、回折格子11の刻線Cの延在方向Yに向けて反射させる。第2光学素子132は、第1折り返しミラー191と第2折り返しミラー192との間で、回折格子11からの回折光L4が第2コリメータ122によって焦点を結ぶ位置に配置されている。第2折り返しミラー192は、第1折り返しミラー191で反射し、第2光学素子132の位置で焦点を結んだ後拡散している回折光L4を回折格子11に向けて反射させる。
【0078】
第4実施形態に係る分光器1では、第1分光系S1にて被測定光L1が分散分光され、第1分系S1により分散分光された被測定光L1が第2分光系S2にて加算的に分散分光される。一方で、第4実施形態に係る分光器1では、第1分光系S1及び第2分光系S2により加算的に分散分光された被測定光L1が、第3分光系S3及び第4分光系S4により減算的に分散分光される。したがって、第3光学素子133及び第4光学素子134において分散量がキャンセルされる。より具体的には、第1光学素子131及び第2光学素子132上での回折光L2及び回折光L4のビームスポットの位置は、回折格子11の回動に応じてそれぞれ変動するが、第3光学素子133及び第4光学素子134上での回折光L6及び回折光L8のビームスポットの位置は、回折格子11が回動してもそれぞれ変動せず、一定である。
【0079】
図7は、図6の分光器1によって得られるフィルタ特性の一例を示す、図5に対応するグラフ図である。図7における縦軸、横軸、及び各線が示す内容は、図5と同一である。なお、図7では、第2分光系S2によって得られるフィルタ特性の一例を示す破線と、第4分光系S4によって得られるフィルタ特性の一例を示す点線とは、互いに重畳している。
【0080】
図7に示すとおり、第4実施形態に係る分光器1のフィルタ特性の帯域幅は、式2のε2によって算出される第2分光系S2のフィルタ特性の帯域幅BW2により決定され、第4分光系S4の第4光学素子134において光が通過可能な幅ε4には依存しない。すなわち、第4実施形態に係る分光器1のフィルタ特性の帯域幅は、第4光学素子134において光が通過可能な幅ε4をいくら狭くしたとしても、第2分光系S2によって得られるフィルタ特性の帯域幅BW2により制限される。
【0081】
例えば、第4実施形態に係る分光器1のフィルタ特性は、第3実施形態と同様に分光器1のフィルタ特性の帯域幅が広くなるように設定される場合であっても、図5に示すような帯域幅と同一の帯域幅を維持したまま、滑らかな減衰スロープを示す。したがって、分光器1のフィルタ特性の帯域幅が広くなるように設定される場合には、第3実施形態と比較して、分光器1全体によって得られるフィルタ特性の劣化が抑制される。
【0082】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0083】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0084】
図8は、第4実施形態に係る分光器1の変形例を示す、図6に対応する模式図である。図8では、第4実施形態に係る分光器1に対する変形例が示されているが、以下と同様の説明が第1実施形態乃至第3実施形態に対しても当てはまる。
【0085】
例えば、上記の第1実施形態乃至第4実施形態における分光器1は、リトロー型であるとして説明したがこれに限定されない。例えば、分光器1は、回折格子11からの戻り光が入射するミラー素子18をさらに有してもよい。ミラー素子18は、例えば平面ミラーであってもよい。回折格子11から出射した戻り光は、一度ミラー素子18に入射し、ミラー素子18で反射して回折格子11に再度入射する。回折格子11に再度入射した戻り光は、コリメータ12を介して光学素子13まで導かれる。
【0086】
このような変形例に係る分光器1によれば、被測定光L1は、各分光系Sにおいて、回折格子11により2回分散分光されて各光学素子13を通過する。したがって、分光器1によって得られるフィルタ特性がよりシャープになる。
【0087】
図9Aは、折り返し光学系Tの第1変形例を示す模式図である。図9Aに示す第1変形例は、第1実施形態乃至第4実施形態に係る分光器1の全てに当てはまる。
【0088】
例えば、上記の第1実施形態乃至第4実施形態における分光器1では、分光系Sの光学素子13から出射した光が折り返し光学系Tの第1レンズ14に入射するとして説明したが、これに限定されない。上記の第1実施形態乃至第4実施形態における分光器1のように分光系Sと折り返し光学系Tとが完全に分離しているような態様に代えて、分光系Sの中に折り返し光学系Tが含まれるような態様も可能である。より具体的には、図9Aに示すとおり、折り返し光学系Tは、分光系Sのコリメータ12と光学素子13との間に配置されていてもよい。このとき、光学素子13は、回折格子11からの戻り光が折り返し光学系Tの第2レンズ15によって焦点を結ぶ位置に配置されている。
【0089】
コリメータ12を通過した光は、折り返し光学系Tの第1レンズ14とコリメータ12との間で焦点を結んだ後、第1レンズ14に入射する。第1レンズ14に入射した光は、折り返し光学系T内を平行光のまま通過し、第2レンズ15まで導かれる。第2レンズ15を通過した光は、光学素子13が配置されている位置において焦点を結ぶ。
【0090】
図9Bは、折り返し光学系Tの第2変形例を示す模式図である。図9Bに示す第2変形例は、第1実施形態乃至第4実施形態に係る分光器1の全てに当てはまる。
【0091】
例えば、上記の第1実施形態乃至第4実施形態における分光器1では、分光系Sの光学素子13から出射した光が折り返し光学系Tの第1レンズ14に入射するとして説明したが、これに限定されない。上記の第1実施形態乃至第4実施形態における分光器1のように分光系Sと折り返し光学系Tとが完全に分離しているような態様に代えて、分光系Sの一部と折り返し光学系Tの一部とが互いに重畳するような態様も可能である。より具体的には、図9Bに示すとおり、折り返し光学系Tの一部は、分光系Sのコリメータ12と光学素子13との間に配置されていてもよい。このとき、光学素子13は、回折格子11からの戻り光が折り返し光学系Tの第2レンズ15によって焦点を結ぶ位置に配置されている。
【0092】
より具体的には、折り返し光学系Tの第1レンズ14及び第2レンズ15は、第1ミラー16と第2ミラー17との間に配置されていてもよい。このとき、第1ミラー16は、分光系Sにおいて発生した戻り光を回折格子11の刻線Cの延在方向Yに向けて反射させて第1レンズ14まで導く。第2ミラー17は、第2レンズ15によって集光され、分光系Sの光学素子13を通過した戻り光を回折格子11に向けて反射させる。
【0093】
コリメータ12を通過した光は、折り返し光学系Tの第1ミラー16で反射して焦点を結んだ後、第1レンズ14に入射する。第1レンズ14に入射した光は、折り返し光学系T内を平行光のまま通過し、第2レンズ15まで導かれる。第2レンズ15を通過した光は、分光系Sの光学素子13が配置されている位置において焦点を結ぶ。光学素子13を通過した光は、第2ミラー17で反射して回折格子11に向けて伝搬する。
【0094】
例えば、上記の第1実施形態乃至第4実施形態における分光器1では、回折格子11が回動することで波長掃引が行われるとして説明したが、波長掃引の方法はこれに限定されない。例えば、回折格子11の配置角度は固定され、図8のミラー素子18が回動することで波長掃引が行われてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 分光器
11 回折格子
12 コリメータ
121 第1コリメータ
122 第2コリメータ
123 第3コリメータ
124 第4コリメータ
13 光学素子
131 第1光学素子
132 第2光学素子
133 第3光学素子
134 第4光学素子
14、141、142、143 第1レンズ
15、151、152、153 第2レンズ
16、161、162、163 第1ミラー
17、171、172、173 第2ミラー
18 ミラー素子
191 第1折り返しミラー
192 第2折り返しミラー
2 導光部品
C 刻線
L1 被測定光
L2、L4、L6、L8 回折光
L3、L5、L7 光
R 回転軸
S 分光系
S1 第1分光系
S2 第2分光系
S3 第3分光系
S4 第4分光系
T 折り返し光学系
T1 第1折り返し光学系
T2 第2折り返し光学系
T3 第3折り返し光学系
Y 延在方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10