(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20221216BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221216BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04 Z
H01M8/0438
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2019058855
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】御堂 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】上野山 覚
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-194196(JP,A)
【文献】特開2017-188368(JP,A)
【文献】特開2018-170198(JP,A)
【文献】特開2016-223690(JP,A)
【文献】特開2018-81848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転により発生した電力を電力負荷部に供給できると共に、運転により発生した熱を熱負荷部に供給できる固体酸化物形燃料電池と、当該固体酸化物形燃料電池に供給される燃料の流量を計測する質量式流量計測部と、前記固体酸化物形燃料電池の運転を制御する運転制御部と、を有する燃料電池装置と、
前記固体酸化物形燃料電池及び他の燃料消費機器に燃料供給路を介して供給される燃料の合計流量を計測する体積式流量計測部と、当該体積式流量計測部で計測された前記合計流量に基づいて前記燃料供給路の異常の有無を判定する異常判定部と、を有する燃料計と、を備え、
前記運転制御部は、前記固体酸化物形燃料電池に所定量の燃料を供給する異常判定運転モードを実行するとき、前記合計流量が所定範囲内となるように前記所定量を補正する補正モードを有し、
前記異常判定部は、前記合計流量が前記所定範囲内にある累積時間が所定期間中に所定時間以上であるとき、前記累積時間をリセットし、前記累積時間が前記所定期間中に前記所定時間未満であるとき、前記燃料供給路が異常であると判定する燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池装置は、外気温を計測する温度計測部をさらに有し、
前記運転制御部は、前記補正モードにおいて、前記外気温が高くなるほど前記所定量が小さくなるように補正する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記補正モードにおいて、現在の季節に基づいて前記所定量を補正する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記所定量として、燃料の流量が異なる複数の流量パターンを組み合わせて前記異常判定運転モードを実行する請求項2又は3に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転により発生した電力を電力負荷部に供給できると共に、運転により発生した熱を熱負荷部に供給できる固体酸化物形燃料電池を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を備えた発電効率の高い燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、改質器において原燃料を改質して生成された水素と酸素を含む空気とを反応させて発電した電力を電力負荷部に供給し、該反応により発生した熱を給湯用途や暖房用途である熱負荷部に供給する。この熱負荷部には、固体酸化物形燃料電池の運転により発生した熱を用いて加温された湯水が供給される。また、燃料電池システムは、該湯水の温度が熱負荷部で要求される湯水の温度よりも低いとき、燃焼装置を駆動して、熱負荷部へ供給される湯水の温度が所望の温度となるように制御している。
【0003】
これら固体酸化物形燃料電池の改質器、及び、上記燃焼装置やガスコンロ等のガス機器には商用ガス(例えば都市ガス13A)が供給されており、この商用ガスは、一般的に、ガスの漏洩を検知して警報やガス遮断動作等を行う保護機能を備えたガス漏洩検知装置を介して供給される。従来、ガス漏洩検知装置としては、ガス供給管に設けられたマイコン機能付きのガスメータ(以下、「マイコンメータ」と称する)が用いられている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
マイコンメータには種々の安全機能が搭載されているが、その1つに「所定時間ガスが流れ続けたときに警報を発する機能」が備わっている。これは、例えばゴム管やガス管に損傷がありガスが微量に漏れ続けた場合にガス漏れを検出することが目的とされている機能であり、一定時間以上(例えば30日間)の連続したガスの微流出を検知して警報を発するという機能である。
【0005】
この警報が発せられると、警報の解除のため、ガス供給事業者による点検が必要となる場合が多く、また警報の解除には所定時間(例えば3分以上)、ガス流量の無い状態が必要となる。この解除作業はユーザーへの負担であることに加え、連続的にガスを使用している燃料電池システムを一時的に停止させる措置が必要となる。一旦、燃料電池システムの運転が停止してしまうと定常運転の状態に戻るまでに時間がかかり、特に固体酸化物形燃料電池の場合、停止行程に10時間、再起動行程に2~3時間程度必要となることもある。このため、その間の電力負荷を発電により補うことができず、燃料電池システムを導入したメリットが充分に活かされない。そこで、特許文献1~3には、マイコンメータの保護機能を無効にすることなく、マイコンメータによる警報の発生を回避して、燃料電池システムの運用効率の低下を抑制する制御方法が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の燃料電池システムは、燃料電池システムの運転停止の候補日を複数設け、予め記憶した電力需要や給湯需要のパターンから演算を行い、最適な停止日を選ぶ技術である。しかし、運転停止期間を長く設定すると燃料電池システムを導入したメリットが薄れ、運転停止期間を短く設定するとガスコンロ等のガス機器の作動によりガス漏れの誤判定を招くおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の燃料電池システムは、発電停止期間を短くするための季節判定手段を備えており、ガス機器の使用率の低い夏場の発電停止期間を短縮している。これにより、ガス漏れの誤判定を防止すると共に、燃料電池システムを導入したメリット損失を軽減している。
【0008】
また、特許文献3に記載の燃料電池システムは、電力負荷に追従したガス流量で運転を行う負荷追従運転モードの実行中に、ガス流量が口火登録機能の固定流量範囲付近にある場合には、固定流量運転モードで連続運転を行っている。これにより、固定流量運転モードにおける連続運転の累積時間が基準時間以上であれば、ガス漏れと判断しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-353292号公報
【文献】特開2016-223690号公報
【文献】特開2012-209137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~2に記載の燃料電池システムにあっては、燃料電池システムの運転を一時的に停止させる必要があるため、特に、定常運転の状態に戻るまで時間を要する固体酸化物形燃料電池の場合、燃料電池システムを導入したメリットが薄れ、改善の余地がある。また、特許文献3に記載の燃料電池システムにあっては、負荷追従運転モードから固定流量運転モードに移行するための制御が複雑であるばかりか、負荷追従運転モードと固定流量運転モードとが頻繁に切り替わるおそれがあり運転時間の管理も煩雑である。
【0011】
一般的に、マイコンメータでは原燃料を計測するために体積流量計が用いられ、固体酸化物形燃料電池に供給される原燃料の流量は質量流量計により計測される。このため、季節や時間帯などにより変動する外気温により燃料の体積が膨張又は縮小して、体積流量計で計測される体積流量と質量流量計で計測される質量流量とが異なるおそれがある。その結果、特許文献3に記載の燃料電池システムのように、運転を停止せずに口火登録機能の固定流量範囲を閾値として異常判定した場合、質量流量計で認識している固定流量範囲と体積流量計で認識している固定流量範囲とが異なるおそれがあり、正確な判定が行われないという問題がある。
【0012】
そこで、運転を停止させることなくガス漏れ判定を正確にできる燃料電池システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、運転により発生した電力を電力負荷部に供給できると共に、運転により発生した熱を熱負荷部に供給できる固体酸化物形燃料電池と、当該固体酸化物形燃料電池に供給される燃料の流量を計測する質量式流量計測部と、前記固体酸化物形燃料電池の運転を制御する運転制御部と、を有する燃料電池装置と、前記固体酸化物形燃料電池及び他の燃料消費機器に燃料供給路を介して供給される燃料の合計流量を計測する体積式流量計測部と、当該体積式流量計測部で計測された前記合計流量に基づいて前記燃料供給路の異常の有無を判定する異常判定部と、を有する燃料計と、を備え、前記運転制御部は、前記固体酸化物形燃料電池に所定量の燃料を供給する異常判定運転モードを実行するとき、前記合計流量が所定範囲内となるように前記所定量を補正する補正モードを有し、前記異常判定部は、前記合計流量が前記所定範囲内にある累積時間が所定期間中に所定時間以上であるとき、前記累積時間をリセットし、前記累積時間が前記所定期間中に前記所定時間未満であるとき、前記燃料供給路が異常であると判定する点にある。
【0014】
本構成では、固体酸化物形燃料電池に所定量の燃料を供給する異常判定運転モードを実行する。この異常判定運転モードは、固体酸化物形燃料電池に所定量の燃料を供給するため、他の燃料消費機器で燃料を使用していない限り、燃料計で計測される燃料の合計流量は所定範囲内となるはずである。そして、異常判定部は、合計流量が所定範囲内にある累積時間が所定期間中に所定時間以上であるとき、燃料供給路が正常であると判定し、累積時間をリセット(誤検知を防止)する。一方、燃料供給路からガス漏れが発生している場合は、異常判定運転モードにおいて燃料計で計測される燃料の合計流量は所定範囲外となる。そして、合計流量が所定範囲内にある累積時間が所定期間中に所定時間未満であるとき、判定部は燃料供給路が異常であると判定する。つまり、燃料電池装置を停止させること無く、燃料供給路からのガス漏れ判定ができる。しかも、合計流量が所定範囲内にある累積時間が所定期間中に所定時間以上であることを条件としているので、燃料供給路からのガス漏れを確実に検出することができる。
【0015】
このとき、燃料の体積流量(体積式流量計測部の計測値、以下「体積流量」という場合がある)は温度等に応じて変動するため、燃料電池装置で計測された燃料の質量流量(質量式流量計測部の計測値、以下「質量流量」という場合がある)と一致しないおそれがある。例えば、燃料が都市ガスの場合、20℃を基準温度としたとき、温度が20℃上下すると体積流量と質量流量との誤差が7%程度となる。この誤差によって、固体酸化物形燃料電池に所定量の燃料を供給しているにも関わらず、体積式流量計測部で計測された合計流量が所定範囲内とならず、異常判定部は、燃料供給路からガス漏れが発生していると誤判定するおそれがある。しかしながら、本構成のように、異常判定モードにおいて合計流量が所定範囲内となるように、質量式流量計測部を介して固体酸化物形燃料電池に供給される燃料量である所定量を補正すれば、誤差を吸収することが可能となり、燃料供給路からのガス漏れを確実に検出することができる。よって、運転を停止させることなくガス漏れ判定を正確にできる燃料電池システムを提供できた。
【0016】
他の特徴構成は、前記燃料電池装置は、外気温を計測する温度計測部をさらに有し、前記運転制御部は、前記補正モードにおいて、前記外気温が高くなるほど前記所定量が小さくなるように補正する点にある。
【0017】
本構成のように、外気温に基づいて所定量をリアルタイムに補正すれば、特に超音波式の燃料計を用いている場合に、外気温に応じた精度の高い合計流量を把握することができる。よって、燃料供給路からのガス漏れをより確実に検出することができる。
【0018】
他の特徴構成は、前記運転制御部は、前記補正モードにおいて、現在の季節に基づいて前記所定量を補正する点にある。
【0019】
本構成のように、季節に基づいて所定量を補正すれば、例えば夏場は燃料の体積膨張を加味して、所定量を基準流量よりも小さくし、冬場は燃料の体積縮小を加味して、所定量を基準流量よりも大きくするといった運用が可能となる。その結果、特に膜式の燃料計を用いている場合に、簡便な構成で精度の高い合計流量を把握することができる。よって、燃料供給路からのガス漏れを確実に検出することができる。
【0020】
他の特徴構成は、前記運転制御部は、前記所定量として、燃料の流量が異なる複数の流量パターンを組み合わせて前記異常判定運転モードを実行する点にある。
【0021】
本構成のように、燃料の流量が異なる複数の流量パターンを組み合わせて異常判定運転モードを実行すれば、固体酸化物形燃料電池に供給された燃料の体積が所定範囲内となる確率が高まり、燃料計で計測された燃料の合計流量の変動誤差を吸収することができる。よって、燃料供給路からのガス漏れをより確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】燃料電池装置における流量制御の一例を示す図である。
【
図5】燃料電池装置における流量制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る燃料電池システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、燃料電池システムの一例として、固体酸化物形燃料電池1(SOFC)を有する燃料電池装置Xを備えた燃料電池システムについて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
図1は、燃料電池装置Xを含む燃料電池システムの構成を示す図である。燃料電池システムは、燃料電池装置Xと燃料計Yとを備えている。
【0025】
〔燃料電池装置X〕
燃料電池装置Xは、運転により発生した電力を電力負荷部3に供給すると共に運転により発生した熱を熱負荷部4に供給する固体酸化物形燃料電池1と、固体酸化物形燃料電池1を含む燃料電池装置Xの運転を制御する運転制御装置C(運転制御部の一例)と、外気温を計測する外気温度センサT1(温度計測部の一例)とを備える。電力負荷部3は、固体酸化物形燃料電池1から供給される電力に加えて、商用電源15から供給される電力も消費することが可能である。また、熱負荷部4は、固体酸化物形燃料電池1から発生する熱に加えて、原燃料を燃焼して熱を発生する補助熱源装置11から供給される熱を消費することもできる。運転制御装置Cは、情報処理機能,情報記憶機能及び情報通信機能等を有するハードウェア及びソフトウェアで構成される。
【0026】
固体酸化物形燃料電池1は、供給される改質用水を蒸発させる気化器1bと、原燃料(炭化水素を含むガス、例えば都市ガス13A)を水蒸気改質して燃料ガス(水素を含むガス)を生成する改質器1aと、改質器1aで生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルSを有するセルスタックと、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cと、を容器1Aの内部に備える。この容器1Aは、断熱性を有する材料を用いて構成されていることが好ましい。セルスタックはインバータ12に電気的に接続される。
【0027】
セルスタックは、改質器1aで生成された燃料ガスが通流する燃料通流部(図示せず)を有するアノード50と、酸素(空気)が通流する空気通流部(図示せず)を有するカソード60とを備えた燃料電池セルSを、複数個電気的に直列接続した状態で備えている。図示は省略するが、燃料電池セルSは、アノード50とカソード60との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。燃料通流部を燃料ガスが通流することでアノード50に燃料ガスが供給され、空気通流部を空気が通流することでカソード60に酸素が供給される。セルスタックは、複数の燃料電池セルSが燃料通流部の燃料ガス排出口50a及び空気通流部の空気排出口60aが上向きになる姿勢で横方向に並ぶ状態で、容器1Aの内部に設置されている。
【0028】
セルスタックの下部には、改質器1aから燃料ガス流路L4を通して供給される燃料ガスを受け入れるガスマニホールド1eが設けられる。複数の燃料電池セルSは、ガスマニホールド1eの上方側に上述のように並ぶ状態で配置され、ガスマニホールド1eと複数の燃料電池セルSにおける燃料通流部の下端のガス導入口(図示せず)とが連通接続されている。そして、ガスマニホールド1eに供給された燃料ガスが複数の燃料電池セルSの夫々の燃料通流部に対して下端のガス導入口から供給されて、各燃料通流部に対して燃料ガスが下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排出燃料ガスは、上端の燃料ガス排出口50aから排出される。
【0029】
固体酸化物形燃料電池1には、空気導入部70が設けられる、その空気導入部70には空気供給流路L5が接続される。空気供給流路L5の途中には、エアフィルタ21とエアブロア22とエア流量計23とが設けられる。エアブロア22の作動により、空気が空気供給流路L5を通して容器1A内に供給される。エアフィルタ21は、エアブロア22によって空気供給流路L5に吸い込まれた空気中の塵などの異物を捕らえる。エア流量計23は、容器1A内に供給される空気の単位時間当たりの流量を測定する。複数の燃料電池セルSの夫々における空気通流部の下端部近傍には、容器1A内と空気通流部内とを連通する空気供給孔(図示せず)が設けられている。複数の燃料電池セルSの夫々の空気通流部には容器1A内の空気がこの空気供給孔を通して供給されて、各空気通流部に対して空気が下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排空気は、上端の空気排出口60aから排出される。エア流量計23の測定結果は運転制御装置Cに伝達され、エアブロア22の動作は運転制御装置Cが制御する。
【0030】
セルスタックの上方には、燃料ガス排出口50aから排出される発電反応に用いられなかった水素を含む排出燃料ガスと、空気排出口60aから排出される排空気と、を燃焼させる燃焼空間が形成される。これら排出燃料ガスと排空気とが、セルスタックからのオフガスとなる。この燃焼空間には点火器1dも設けられる。つまり、セルスタックの上方の燃焼空間によって、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cが実現される。加えて、一体で構成された気化器1bと改質器1aとが、燃焼部1cとして機能するセルスタックの上方の燃焼空間に隣接して設けられている。点火器1dの動作は運転制御装置Cが制御する。燃焼温度センサT4は燃焼部1cの温度を測定し、その測定結果は運転制御装置Cに伝達される。そして、燃焼部1cでの燃焼が適正に行われているか否かの判定などに用いられる。
【0031】
容器1Aには、燃焼部1cにて発生した燃焼排ガスを、熱交換器Eを経由させて外部に排出するための排気部80が下部に形成されている。そして、容器1A内には、排気部80から外部に排出される燃焼排ガス中の一酸化炭素ガス等を除去する燃焼触媒部90(例えば、白金系触媒)が設けられている。雰囲気温度センサT5は容器1A内部の温度、例えば、セルスタックの側方の温度を測定し、その測定結果は運転制御装置Cに伝達される。
【0032】
気化器1bは、供給される改質用水を、燃焼部1cから伝えられる燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。改質用水タンク24に貯えられている改質用水は、改質用水タンク24に連結される改質用水流路L2を介して気化器1bに供給される。具体的には、改質用水ポンプPが動作することで改質用水タンク24に貯えられている改質用水が改質用水流路L2を通流して気化器1bの内部に流入する。改質用水ポンプPの動作は運転制御装置Cが制御する。このように、改質用水ポンプPは、改質器1aに供給する改質用水の単位時間当たりの流量を調節する水流量調節部として機能する。
【0033】
気化器1bには原燃料流路L1を介して原燃料も供給される。原燃料流路L1の途中には質量流量計Fa(質量式流量計測部の一例)と原燃料ブロアBとが設けられている。質量流量計Faには例えば原燃料の熱拡散作用を利用して測定を行う熱式質量流量計が用いられる。さらに、原燃料ブロアBの下流側の原燃料流路L1には、原燃料(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物を取り除くための脱硫器20が設けられている。そして、原燃料ブロアBが動作することで、原燃料が原燃料流路L1を通流し且つ脱硫器20で脱硫された後で気化器1bの内部に流入する。質量流量計Faは、気化器1bに供給される原燃料の単位時間当たりの流量を測定し、その測定結果は運転制御装置Cに伝達される。質量流量計Faが熱式質量流量計である場合、運転制御装置Cは、記憶している供給原燃料熱量の値を参照して、原燃料の質量流量を決定する。運転制御装置Cは、質量流量計Faを用いて測定される原燃料の流量が目標の流量になるように原燃料ブロアB及び後述する開閉バルブV1の動作を制御する。このように、原燃料ブロアB及び開閉バルブV1は、改質器1aに供給する原燃料の単位時間当たりの流量を調節する原燃料流量調節部として機能する。以上のようにして、気化器1bでは、運転制御装置Cによって単位時間当たりの供給量が制御された原燃料及び水蒸気が混合された混合ガスが生成され、混合ガス流路L3を介して改質器1aに供給される。
【0034】
改質器1aは、気化器1bから供給される混合ガスに含まれる原燃料の水蒸気改質処理を行う。図示は省略するが、改質器1aの内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料が改質処理される。また、気化器1bと同様に、改質器1aにも、燃焼部1cで発生した燃焼熱が伝達される。改質温度センサT3は改質器1aの温度(例えば、改質触媒の温度)を測定し、その測定結果は運転制御装置Cに伝達される。そして、改質器1aの温度が適正か否かの判定などに用いられる。
【0035】
〔電力負荷部3への電力の供給〕
固体酸化物形燃料電池1の発電電力はインバータ12に供給される。インバータ12は、固体酸化物形燃料電池1の発電電力を商用電源15から受電する受電電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。インバータ12の動作は運転制御装置Cが制御する。インバータ12は、発電電力供給ライン13を介して受電電力供給ライン14に電気的に接続される。そして、固体酸化物形燃料電池1からの発電電力がインバータ12,発電電力供給ライン13及び受電電力供給ライン14を介して電力負荷部3に供給される。この受電電力供給ライン14は商用電源15に接続されている。つまり、電力負荷部3には、固体酸化物形燃料電池1及び商用電源15の少なくとも何れか一方から電力が供給される。
【0036】
受電電力供給ライン14には、電力負荷部3の電力負荷を計測する電力負荷計測部16が設けられ、その計測結果が運転制御装置Cに伝達される。そして、運転制御装置Cは、インバータ12により、固体酸化物形燃料電池1から受電電力供給ライン14に供給される発電電力が、電力負荷計測部16で検出される電力負荷と等しくなるような制御を行う(負荷追従運転モード)。また、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1を定格出力(固体酸化物形燃料電池1に供給されるガス流量が120~130L/h)で動作させることも可能である(定格出力運転モード)。また、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1をアイドリング状態(固体酸化物形燃料電池1に供給されるガス流量が50L/h以下)で動作させることも可能である(アイドリング運転モード)。ただし、負荷追従運転モードにおいて、電力負荷計測部16で計測される電力負荷が、固体酸化物形燃料電池1の最低発電電力(インバータ12により受電電力供給ライン14に供給される最低発電電力)よりも小さい場合、余剰電力が発生する。また、定格出力運転モードにおいて、固体酸化物形燃料電池1を定格出力で動作させ、インバータ12からの出力電力が電力負荷よりも大きい場合にも、余剰電力が発生する。商用電源15への電力の逆潮流が可能な場合には、その余剰電力を商用電源15へ供給しても良い。商用電源15への電力の逆潮流が認められていない場合には、その余剰電力を熱に代えて回収する余剰電力消費用の電気ヒータ9で消費してもよい。
【0037】
電気ヒータ9は、複数の抵抗加熱器から構成され、排熱回収用ポンプ7の作動により排熱回収路6を通流する湯水を加熱する。電気ヒータ9のON/OFFは、インバータ12の出力側に接続された作動スイッチ10により切り換えられる。また、作動スイッチ10は、固体酸化物形燃料電池1の余剰電力の大きさが大きくなるほど、電気ヒータ9の消費電力が大きくなるように切り換えられる。この作動スイッチ10の動作は運転制御装置Cが制御する。
【0038】
なお、電力負荷部3にどのような装置を含めるのかは適宜設定可能である。例えば、固体酸化物形燃料電池1を運転するために用いられる補機や、熱負荷部4へ供給する湯水の凍結を防止する凍結防止用ヒータ等を、電力負荷部3から除外するような設定も可能である。また、電力負荷部3の待機電力を、電力負荷計測部16で計測する電力負荷から減算してもよい。
【0039】
〔熱負荷部4への熱の供給〕
貯湯タンク2には、固体酸化物形燃料電池1で発生した熱が湯水の形態で蓄えられる。つまり、貯湯タンク2は、固体酸化物形燃料電池1の運転により発生した熱を用いて加温された湯水が貯留される。貯湯タンク2の下部には、給水路17を介して上水が供給される。この給水路17には、上水温度を計測する上水温度センサT2が設けられている。本実施形態における貯湯タンク2には、温度成層を形成する状態で湯水が貯えられる。つまり、貯湯タンク2の内部では、相対的に低温の湯水がその下部に貯えられ、相対的に高温の湯水がその上部に貯えられるように構成されている。貯湯タンク2に貯えられている湯水は、排熱回収路6を通って固体酸化物形燃料電池1の燃焼排ガスが流通する熱交換器Eと貯湯タンク2との間で循環する。排熱回収路6における湯水の流動は、排熱回収用ポンプ7によって行われる。排熱回収用ポンプ7の動作は運転制御装置Cが制御する。例えば、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1の運転を開始して、固体酸化物形燃料電池1から排出される熱の回収を行う必要が生じると、排熱回収用ポンプ7を動作させて、貯湯タンク2の下部に貯えられている相対的に低温の湯水を排熱回収路6に流す。そして、排熱回収路6を流れる相対的に低温の湯水は、固体酸化物形燃料電池1から排出される熱を回収し(固体酸化物形燃料電池1の排熱によって湯水は昇温され)、相対的に高温の湯水となって貯湯タンク2の上部へと流入する。
【0040】
排熱回収路6の途中には、排熱回収路6を通って貯湯タンク2から熱交換器Eへと流れる湯水からの放熱を行うための放熱器8が設置されている。運転制御装置Cは、貯湯タンク2から熱交換器Eへと流れる湯水の温度が設定上限温度未満の場合には、この放熱器8の動作を停止させている。一方、運転制御装置Cは、貯湯タンク2から熱交換器Eへと流れる湯水の温度が設定上限温度以上である場合には、この放熱器8を放熱作動させて湯水の温度を低下させる。また、電気ヒータ9に通電することで発生したジュール熱は、排熱回収路6の途中の、熱交換器Eから貯湯タンク2へと流れる湯水によって回収されるように構成されている。
【0041】
貯湯タンク2の上部に貯留されている相対的に高温の湯水は、貯湯タンク2の上部に接続されている湯水供給路5及び補助熱源装置11を介して熱負荷部4に供給される。
【0042】
熱負荷部4は、給湯用途や暖房用途等である。熱負荷部4が給湯用途の場合、湯水は貯湯タンク2へ帰還しない。熱負荷部4が暖房用途の場合、湯水が保有している熱のみが消費されて、湯水は貯湯タンク2へと帰還することもある。湯水供給路5には、その湯水供給路5を流れる湯水を加熱するための補助熱源装置11が設けられている。運転制御装置Cは、貯湯タンク2の上部から流出した湯水の温度が、熱負荷部4で要求される湯水の温度よりも低いとき、補助熱源装置11を運転して、熱負荷部4へ供給される湯水の温度が所望の温度となるような制御を行う。運転制御装置Cは、補助熱源装置11の運転を制御する。
【0043】
〔燃料計Y〕
燃料計Yは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1(燃料供給路の一例)を介して供給される原燃料(燃料)、及び、補助熱源装置11やガスコンロK等で構成される他の燃料消費機器に原燃料流路L6(燃料供給路の一例)を介して供給される原燃料(燃料)の合計体積(合計流量の一例、固体酸化物形燃料電池1及び他の燃料消費機器で消費される原燃料の体積流量の合計値、以下単に「合計体積」と言う)を計測する体積流量計Fb(体積式流量計測部の一例)を備える。この体積流量計Fbは、少なくとも「所定時間ガスが流れ続けたときに警報を発する機能」を含む安全機能を有するマイコンメータで構成される。この安全機能の1つとして、所定の期間中(例えば30日間)に、ごく微量以下の流量(合計体積)となる累積時間が所定の時間(例えば1時間)に達していないときに警報を発し、所定の時間に達していれば累積時間をリセットする(累積時間をゼロにする)機能を備えている。また、安全機能の1つとして、所定の期間中(例えば30日間)に、口火登録可能な範囲内で設定された設定流量(例えば、30L/h)に対して所定の範囲(例えば、±10%)にある流量(合計体積)となる累積時間が所定の時間(例えば1時間)に達していないときに警報を発し、所定の時間に達していれば累積時間をリセットする(累積時間をゼロにする)機能を備えている。
【0044】
燃料計Yは、体積流量計Fbで計測された原燃料の合計体積に基づいて原燃料流路L1,L6の異常の有無を判定する異常判定部Hを備える。体積流量計Fbは、2つの計量室を仕切る可動式の膜の動作回数から原燃料の使用量(合計体積)を計測する膜式ガスメータ、又は、超音波センサによりガスの流速を測定して原燃料の使用量(合計体積)を計測する超音波式ガスメータで構成される。体積流量計Fbを超音波式ガスメータで構成した場合、装置を小型にできると共に、原燃料の使用量を瞬時に計測することができる。
【0045】
固体酸化物形燃料電池1に原燃料を供給する原燃料流路L1には、燃料計Yと質量流量計Faとの間に原燃料の流通を遮断可能な電磁式の開閉バルブV1が設けられている。補助熱源装置11に原燃料を供給する原燃料流路L6には、原燃料の供給量を調整可能な電磁バルブV2が設けられている。ガスコンロK等で構成される複数の燃料消費機器に原燃料を供給する各原燃料流路L6には、原燃料の供給量を調整可能な電磁バルブV3が夫々設けられている。
【0046】
〔運転形態〕
上述したように運転制御装置Cは、複数の運転モード(負荷追従運転モード、定格出力運転モード、アイドリング運転モード等)を実行可能に構成されている。本実施形態における運転制御装置Cは、何れの運転モードを実行しているかに関らず、実行している運転モードに代えて、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1を介して所定量(例えば45L/h)の原燃料を供給する異常判定運転モードを強制的に実行する(
図3参照)。つまり、運転制御装置Cは、何れかの運転モードに代えて、原燃料流路L1を流れる原燃料が所定量となるように原燃料ブロアB等の動作を制御する。この所定量の設定にあたっては、口火登録可能な範囲内(50L/h以下)で、ユーザー又はガス供給事業者が任意に設定できるように構成しても良いし、固体酸化物形燃料電池1の運転実績に基づいて機械学習した人工知能により設定しても良い。
【0047】
また、運転制御装置Cは、設定された運転時間(例えば、10日毎に6時間連続、又は、毎日20分間等)に基づいて異常判定運転モードを実行する。この運転時間の設定にあたっては、ユーザー又はガス供給事業者が任意に設定できるように構成しても良いし、固体酸化物形燃料電池1の運転実績に基づいて機械学習した人工知能により設定しても良い。
【0048】
燃料計Yの異常判定部Hは、体積流量計Fbで計測した原燃料の合計体積が所定範囲内(例えば45L/h±5%)にある累積時間が、所定期間中(例えば30日間)に所定時間(例えば1時間)以上である所定の条件を満足していないとき、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生している(異常である)と判定し、ガス漏れの警報を発する。また、異常判定部Hは、体積流量計Fbで計測した原燃料の合計体積が所定範囲内(例えば45L/h±5%)にある累積時間が、所定期間中(例えば30日間)に所定時間(例えば1時間)以上である所定の条件を満足しているとき、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生していない(正常である)と判定し、累積時間をリセットして次回の所定期間となるまで異常判定運転モードの実行を停止する。
【0049】
上述した原燃料流路L1,L6からのガス漏れ判定にあたり、原燃料の体積流量は温度や装置劣化等に応じて変動するため、体積流量計Fbで計測された合計体積と質量流量計Faで計測された質量流量とが一致しないおそれがある。例えば、原燃料が都市ガスの場合、20℃を基準温度としたとき、温度が20℃上下すると体積流量と質量流量との誤差が7%程度となる。この誤差によって、固体酸化物形燃料電池1に所定量(例えば45L/h)の原燃料を供給しているにも関わらず、体積式流量計測部で計測された合計体積が所定範囲内(例えば45L/h±5%)とならず、異常判定部Hは、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生していると誤判定するおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態における運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1に所定量(例えば45L/h)の原燃料を供給する異常判定運転モードを実行するとき、体積流量計Fbで計測した原燃料の合計体積が所定範囲内(例えば45L/h±5%)となるように所定量を補正する補正モードを有している。
【0051】
外気温が高くなるほど原燃料が膨張して体積流量が大きくなり体積流量計Fbの計測値が大きくなるので、質量流量計Faの計測値に基づいてフィードバック制御された固体酸化物形燃料電池1への供給量が例えば45L/hであると、体積流量計Fbの計測値が例えば48L/hとなるおそれがある。その結果、固体酸化物形燃料電池1への供給量を45L/hで制御しても、体積流量計Fbで計測した原燃料の合計体積が所定範囲内(45L/h±5%)とならず、異常判定部Hは、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生していると誤判定するおそれがある。
【0052】
そこで、補正制御の一例として、
図4の流量比(基準温度20℃のガス流量に対する比)に示すように、運転制御装置Cは、外気温度センサT1で計測した外気温が高くなるほど、固体酸化物形燃料電池1に供給する原燃料の所定量が小さくなるように補正する。つまり、体積流量計Fbで計測した原燃料の合計体積が所定範囲内(例えば45L/h±5%)となるように、固体酸化物形燃料電池1への供給量を小さくする(例えば43L/h)ことにより、質量流量計Faの計測値と体積流量計Fbの計測値との間の誤差を吸収することができる。その結果、特に超音波式ガスメータで構成される燃料計Yを用いている場合、リアルタイムに精度の高い合計体積を把握することができる。なお、
図4に示すガス流量と温度とのマップは、原燃料の組成に応じ、温度毎の体積流量と質量流量との誤差に基づいて設定される。
【0053】
また、20℃を基準温度としたとき、原燃料(都市ガス)の合計体積が所定範囲内(例えば45L/h±5%)とならない温度差は概ね±15℃以上であるため、運転制御装置Cは、燃料電池装置X内部のカレンダー設定に従って季節毎に所定量を補正しても良い。つまり、他の補正制御の一例として、運転制御装置Cは、記憶されたカレンダー設定による現在の季節に基づいて所定量を補正する。例えば、基準温度よりも低いと推測される10月~3月(冬季)と基準温度よりも高いと推測される4月~9月(夏季)の2シーズンに1年を区分し、夫々基準温度±10℃とした仮想基準温度を設定し、この仮想基準温度に対応する体積流量と質量流量との誤差に基づいて所定量を設定する。つまり、夏季は1よりも小さい係数を乗算し(例えば45L/h×0.97)、冬季は1よりも大きい係数を乗算し(例えば45L/h×1.03)、仮想基準温度に対応する所定量として設定する。
【0054】
このように、季節に基づいて所定量を補正すれば、夏場は原燃料の体積膨張を加味して、所定量を基準流量よりも小さくし、冬場は原燃料の体積縮小を加味して、所定量を基準流量よりも大きくするといった運用が可能となる。その結果、膜式ガスメータで構成される燃料計Yを用いている場合であっても、簡便な構成で精度の高い合計体積を把握することができる。
【0055】
他の補正制御の変形例として、
図5の流量比(基準温度20℃のガス流量に対する比)に示すように、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1に供給する原燃料の所定量として、原燃料の流量が異なる複数の流量パターンを組み合わせて異常判定運転モードを実行しても良い。
図5には、複数の流量パターンとして、夏季において45L/h×0.945,45L/h×0.97及び45L/h×0.995を組み合わせ、冬季において45L/h×1.005,45L/h×1.03及び45L/h×1.055を組み合わせ、複数の流量パターンを1時間毎に切替える一例が示されている。これにより、固体酸化物形燃料電池1に供給された原燃料の体積が所定範囲内となる確率が高まり、燃料計Yで計測された原燃料の合計体積の変動誤差を吸収することができる。よって、原燃料流路L1,L6からのガス漏れをより確実に検出することができる。なお、この複数の流量パターンは、朝、昼、夕、夜中といった気温が異なる時間帯に応じて切替えても良いし、1時間毎に切替えても良い。
【0056】
図2には、運転制御装置C及び燃料計Yの制御形態の一例が示される。まず、運転制御装置Cは、複数の運転モード(負荷追従運転モード、定格出力運転モード、アイドリング運転モード等)のうち何れかの運転モードで固体酸化物形燃料電池1を制御する(#21)。そして、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1による設定された運転時間に基づいて異常判定運転モードを実行するか否かを判定する(#22)。
【0057】
#22の判定の結果、何れかの運転モードから異常判定運転モードに移行すると判定されたとき(#22Yes)、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1を介して所定量(45L/h)の原燃料を供給する異常判定運転モードを強制的に実行する(#23)。このとき、運転制御装置Cは、体積流量計Fbで計測した原燃料の合計体積が所定範囲内(45L/h±5%)となるように所定量を補正する(#23)。そして、質量流量計Faで原燃料流路L1に供給される原燃料の流量を測定し、運転制御装置Cは、質量流量計Faの測定値が目標の流量になるように原燃料ブロアB等の動作を制御する(#24)。
【0058】
次いで、燃料計Yの体積流量計Fbは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1を介して供給される原燃料、及び、補助熱源装置11やガスコンロK等で構成される他の燃料消費機器に原燃料流路L6を介して供給される原燃料の合計体積を計測する(#25)。次いで、
図3に示すように、燃料計Yの異常判定部Hは、体積流量計Fbの計測値(合計体積)が所定範囲内(45L/h±5%)にある累積時間が、所定期間中(30日間)に所定時間(1時間)以上である所定の条件を満足しているか否かを判定する(#26)。
【0059】
固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1を介して所定量の原燃料を供給する異常判定運転モードにおいて、他の燃料消費機器が使用されることがある。この場合、
図3に示すように、体積流量計Fbの計測値(合計体積)が所定範囲外となるため、本実施形態では、ガス漏れがない限り、異常判定運転モードの累積運転時間が所定期間中(30日間)に所定時間(1時間)となるように、余裕を持って運転時間が設定されている。これにより、原燃料流路L1,L6からのガス漏れを確実に検出できる。しかも、異常判定部Hの異常判定における所定の条件として、体積流量計Fbの計測値(合計体積)が所定範囲内にある累積時間で規定しているため、電力負荷部3の電力負荷が小さいときに異常判定運転モードを実行することが可能となり、燃料電池装置Xの効率的な運転を実現できる。
【0060】
#26の判定の結果、体積流量計Fbの計測値(合計体積)が所定範囲内(45L/h±5%)にある累積時間が所定時間(1時間)に到達していなければ(#26No)、異常判定部Hは、所定期間(30日間)が経過しているか否かを判定する(#27)。所定期間(30日間)が経過していなければ(#27No)、#22~#26の行程を繰り返し、所定期間(30日間)が経過していれば(#27Yes)、異常判定部Hは、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生している(異常である)と判定する(#28)。異常判定部Hは、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生していると判定した場合、ガス漏れの警報を発し、ガス遮断動作を実行する。
【0061】
#26の判定の結果、体積流量計Fbの計測値(合計体積)が所定範囲内(45L/h±5%)にある累積時間が所定時間(1時間)に到達していれば(#26Yes)、異常判定部Hはガス漏れがないと判定し、累積時間をリセット(累積時間をゼロに)して次回の所定期間となるまで異常判定運転モードの実行を停止する(#29)。
【0062】
このように、本実施形態では、運転制御装置Cが何れの運転モードを実行しているかに関らず、固体酸化物形燃料電池1に所定量の原燃料を供給する異常判定運転モードを実行する。この異常判定運転モードは、固体酸化物形燃料電池1に所定量の原燃料を供給するため、他の燃料消費機器で原燃料を使用していない限り、燃料計Yで計測される原燃料の合計体積は所定範囲内となる。一方、原燃料流路L1,L6からガス漏れが発生している場合は、異常判定運転モードにおいて燃料計Yで計測される原燃料の合計体積は所定範囲外となる。その結果、異常判定部Hは、所定の条件を満足していないとして、原燃料流路L1,L6が異常であると判定する。
【0063】
つまり、燃料電池装置Xの通常運転により発電を継続している最中に、異常判定運転モードを強制的に実行することにより、原燃料流路L1,L6からのガス漏れを検知することが可能となる。しかも、本実施形態では、燃料計Yの体積流量計Fbで計測される原燃料の合計体積が所定範囲内となるように所定量を補正しているので、計測誤差を吸収することが可能となり、原燃料流路L1,L6からのガス漏れを確実に検出することができる。よって、運転を停止させることなくガス漏れ判定を正確にできる燃料電池システムを提供できた。
【0064】
〔別実施形態〕
<1>
図1に示すように、燃料計Yは、運転制御装置Cに設けられた通信インターフェース(通信機構)と有線又は無線で各種データを送受信可能な通信部I(通信機構)を備えたスマートメータで構成されていても良い。この場合、異常判定部Hは、通信部Iを介して異常判定運転モードを検出する。このように、燃料電池装置Xと燃料計Yとの間で通信機構を備えれば、燃料電池装置Xの流量情報を燃料計Yで取得することが可能となり、異常判定運転モードをリアルタイムに検出できる。その結果、燃料計Yは、燃料電池装置Xが異常判定運転モードであるときに異常判定部Hを機能させることにより、原燃料流路L1,L6からのガス漏れをより確実に検出することができる。
【0065】
<2>
運転制御装置Cは、上記通信機構を介して異常判定部Hによる判定結果を取得し、運転制御装置Cは、所定期間中(例えば30日間)に所定時間(例えば1時間)以上である所定の条件を満足した肯定結果を取得したとき、異常判定運転モードを解除しても良い。本実施形態のように、所定の条件を満足した肯定結果を取得した時点で燃料電池装置Xの異常判定運転モードを解除すれば、解除時から次回の判定までの間は通常運転が可能となり、燃料電池装置Xの効率的な運転を実現できる。
【0066】
<3>
上記実施形態では、具体的な数値を挙げて燃料電池システムで行われる制御例について説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0067】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を備えた燃料電池システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 :固体酸化物形燃料電池
3 :電力負荷部
4 :熱負荷部
11 :補助熱源装置(他の燃料消費機器)
C :運転制御装置(運転制御部)
Fa :質量流量計(質量式流量計測部)
Fb :体積流量計(体積式流量計測部)
H :異常判定部
K :ガスコンロ(他の燃料消費機器)
L1 :原燃料流路(燃料供給路)
L6 :原燃料流路(燃料供給路)
T1 :外気温度センサ(温度計測部)
X :燃料電池装置
Y :燃料計