(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】未燃ガス監視方法及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20221216BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221216BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221216BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04014
H01M8/04029
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2019061455
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185265(JP,A)
【文献】特開2016-225102(JP,A)
【文献】特開2012-38502(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109028025(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸素含有ガスを含む混合ガスを用いて発電を行う燃料電池部と、
前記燃料電池部から排出される未燃ガスを燃焼する燃焼ユニットと、
前記燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器とを備える燃料電池システムにおける、未燃ガス監視方法であって、
前記熱交換器における前記燃焼排ガスと前記熱媒との間の単位時間あたりの熱交換量の変化に基づいて、前記未燃ガスの未燃ガス量を監視する監視ステップを備える、未燃ガス監視方法。
【請求項2】
前記燃焼ユニットは、
前記燃料電池部から排出される未燃ガスを燃焼する燃焼部と、
前記燃焼部から排出される燃焼排ガス中の燃焼成分である未燃ガスを燃焼する燃焼触媒部とを有しており、
前記熱交換器は、前記燃焼触媒部から排出される触媒燃焼排ガスを前記燃焼排ガスとして、当該触媒燃焼排ガスと前記熱媒との間で熱交換を行う、請求項1に記載の未燃ガス監視方法。
【請求項3】
前記熱交換器における前記熱媒の熱媒入口温度と熱媒出口温度との差分と、前記熱交換器に導入される前記熱媒の熱媒流量とに基づいて、前記熱交換器に導入される前記熱媒の熱媒熱量を算出する熱媒熱量算出ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記熱交換量として前記熱媒の熱媒熱量を用いる、請求項1又は2に記載の未燃ガス監視方法。
【請求項4】
前記熱交換器における前記熱媒の熱媒入口温度及び熱媒出口温度と、前記熱交換器に導入される前記熱媒の熱媒流量と、前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス流量とに基づいて、前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス入口温度を推定する燃焼排ガス入口温度推定ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記熱交換量として前記燃焼排ガス入口温度を用いる、請求項1~3のいずれか1項に記載の未燃ガス監視方法。
【請求項5】
前記燃料電池システムは、
前記熱媒を前記熱交換器を経由して循環させる熱媒循環路と、
前記熱媒循環路に設けられ、前記熱交換器における熱媒出口温度に基づいて、前記熱交換器に導入される前記熱媒の単位時間当たりの熱媒流量を調整する熱媒流量調整器とを備え、
前記熱媒出口温度を所定の目標値とするように、前記熱媒流量調整器を制御して前記熱媒流量を調整する熱媒流量調整ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記熱交換量として前記熱媒の熱媒流量を用いる、請求項1~4のいずれか1項に記載の未燃ガス監視方法。
【請求項6】
前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス流量は、前記燃料電池部が概ね一定で発電を行っている場合は一定流量であると推定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の未燃ガス監視方法。
【請求項7】
前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス流量は、前記燃料電池部が発電する発電電力量に応じて変動する、請求項1~5のいずれか1項に記載の未燃ガス監視方法。
【請求項8】
燃料ガス及び酸素含有ガスを含む混合ガスを用いて発電を行う燃料電池部と、
前記燃料電池部から排出される未燃ガスを燃焼する燃焼ユニットと、
前記燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器における前記燃焼排ガスと前記熱媒との間の単位時間あたりの熱交換量の変化に基づいて、前記未燃ガスの未燃ガス量を監視する未燃ガス監視部と、
を備える、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未燃ガス監視方法及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置に設けられている燃料電池セルが例えば固体酸化物形燃料電池セルの場合は、その運転温度が比較的高い。燃料電池セルの温度が過剰に上昇すると、発電量の低下、セルの破損、セルの劣化等の問題が生じる。そこで、特許文献1の燃料電池装置では、比較的高温の燃料電池セルの近傍に、熱電対からなる温度センサが設けられている。そして、熱電対で検出した温度に基づいて燃料電池装置の状態の判断及び温度管理等が行われている。
【0003】
例えば、燃料電池セルには燃料ガス及び空気が供給され、燃料ガス及び空気が反応することで発電が行われる。反応に用いられなかった燃料ガスは燃焼部で燃焼され、燃焼排ガスが排出される。燃焼排ガスは熱交換器に導入され、高温の燃焼排ガスと水との間で熱交換が行われる。この熱交換により温度が低下した燃焼排ガスは排気され、一方、熱交換により温度が上昇した温水は貯湯タンクに導入される。燃焼排ガスが排出される燃焼部の出口、つまり熱交換器の入口につながる部分には熱電対が設けられており、熱電対により燃焼排ガスの温度を検出している。そして、検出した燃焼排ガスの温度は、燃料電池セルにおいて燃料ガスが発電のための反応に正常に用いられているかについての判断、つまり、燃料電池セルから未燃ガスが異常に排出されていないかについての判断に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱電対は耐熱性に優れており、燃焼部の出口でも正常に作動するが、一般的に高価であり、燃料電池装置全体のコストアップを招いている。一方で、燃料電池セルにおいて発電に用いられない未燃ガスが異常に発生することは、投入した燃料ガスに対する発電効率の観点等から問題がある。よって、燃料電池セルでの発電の反応後に、未燃ガスが残存しているか否かを監視することが必要である。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、コストアップを抑制可能な未燃ガス監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る未燃ガス監視方法の特徴構成は、
燃料ガス及び酸素含有ガスを含む混合ガスを用いて発電を行う燃料電池部と、
前記燃料電池部から排出される未燃ガスを燃焼する燃焼ユニットと、
前記燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器とを備える燃料電池システムにおける、未燃ガス監視方法であって、
前記熱交換器における前記燃焼排ガスと前記熱媒との間の単位時間あたりの熱交換量の変化に基づいて、前記未燃ガスの未燃ガス量を監視する監視ステップを備える点にある。
【0008】
燃料電池部から排出された未燃ガスは、燃焼ユニットにおいて燃焼される。未燃ガスの量(未燃ガス量)が増加すると燃焼ユニットでの未燃ガスの燃焼量が増加し、燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスの温度(燃焼排ガス温度)が上昇する。つまり、燃料電池部から排出された未燃ガスの量(未燃ガス量)の変化が燃焼排ガス温度の変化となって現れる。燃焼排ガス温度が変化すると、熱交換器において熱媒と熱交換される燃焼排ガスの熱量(燃焼排ガス熱量)も変化し、当該燃焼排ガス熱量と概ね一致すると推定される熱交換器を通流する熱媒の熱量(熱媒熱量)も変化すると推定される。
【0009】
よって、上記特徴構成のように燃焼排ガスと熱媒との間の単位時間あたりの熱交換量の変化に基づいて、未燃ガス量を監視できる。例えば、熱交換器で熱交換される熱媒熱量が増加すると、燃料電池部から排出される未燃ガスの未燃ガス量が増加することが分かる。そのため、燃焼ユニットから排出された燃焼排ガスの温度を検出しなくても、熱交換された熱媒熱量に基づいて燃焼排ガス熱量を把握することができ、ひいては、未燃ガス量を監視できる。そのため、燃焼排ガス温度を検出するために燃焼ユニットの出口に熱電対を設ける必要がなく、熱電対を設けることによるコストアップを抑制できる。
【0010】
本発明に係る未燃ガス監視方法の更なる特徴構成は、
前記燃焼ユニットは、
前記燃料電池部から排出される未燃ガスを燃焼する燃焼部と、
前記燃焼部から排出される燃焼排ガス中の燃焼成分である未燃ガスを燃焼する燃焼触媒部とを有しており、
前記熱交換器は、前記燃焼触媒部から排出される触媒燃焼排ガスを前記燃焼排ガスとして、当該触媒燃焼排ガスと前記熱媒との間で熱交換を行う点にある。
【0011】
燃料電池部で発電反応に用いられなかった未燃ガスは、燃焼部で燃焼される。さらに、燃焼部から排出される燃焼排ガス中の燃焼成分である未燃ガスは、燃焼触媒部で燃焼される。燃焼触媒部からは、触媒燃焼排ガスが排出される。つまり、燃料電池部で発電反応に用いられなかった未燃ガスは燃焼部で燃焼されるが、さらに燃焼部で燃焼されなかった未燃ガスは燃焼触媒部で燃焼される。そして、燃焼部から排出された燃焼排ガス中の未燃ガスの量(未燃ガス量)の変化は、燃焼触媒部から排出された触媒燃焼排ガスの温度(触媒燃焼排ガス温度)の変化となって現れる。触媒燃焼排ガス温度が変化すると、熱交換器において熱媒と熱交換される触媒燃焼排ガスの熱量(触媒燃焼排ガス熱量)も変化し、熱交換器を通流する熱媒の熱量(熱媒熱量)も変化すると推定される。
【0012】
よって、上記特徴構成のように燃焼触媒部から排出される触媒燃焼排ガスと熱媒との間の熱交換量の変化に基づいて、燃焼部から排出された燃焼排ガス中の未燃ガス量を監視できる。そのため、燃焼触媒部から排出された触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス温度を検出しなくても、熱交換された熱媒熱量に基づいて触媒燃焼排ガス熱量を把握することができ、ひいては、未燃ガス量を監視できる。そのため、触媒燃焼排ガスの温度を検出するために燃焼触媒部の出口に熱電対を設ける必要がなく、熱電対を設けることによるコストアップを抑制できる。
【0013】
本発明に係る未燃ガス監視方法の更なる特徴構成は、
前記熱交換器における前記熱媒の熱媒入口温度と熱媒出口温度との差分と、前記熱交換器に導入される前記熱媒の熱媒流量とに基づいて、前記熱交換器に導入される前記熱媒の熱媒熱量を算出する熱媒熱量算出ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記熱交換量として前記熱媒の熱媒熱量を用いる点にある。
【0014】
熱交換器において熱交換された燃焼排ガスの燃焼排ガス熱量は、当該燃焼排ガスと熱交換された熱媒の熱媒熱量と概ね一致している推定できる。よって、上記特徴構成のように熱交換器に導入される熱媒の熱媒熱量を算出することで、燃焼排ガスと熱媒との間の熱交換量を把握することができる。これにより、熱交換量の変化を把握し、未燃ガス量を監視できる。
【0015】
例えば、熱媒熱量が定常時よりも上昇すると、燃焼排ガス熱量が増加しており、定常時よりも多くの未燃ガスが燃焼ユニットにおいて燃焼し熱交換量が増加していると推定でき、未燃ガス量を監視できる。
【0016】
本発明に係る未燃ガス監視方法の更なる特徴構成は、
前記熱交換器における前記熱媒の熱媒入口温度及び熱媒出口温度と、前記熱交換器に導入される前記熱媒の熱媒流量と、前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス流量とに基づいて、前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス入口温度を推定する燃焼排ガス入口温度推定ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記熱交換量として前記燃焼排ガス入口温度を用いる点にある。
【0017】
例えば、熱交換器における燃焼排ガス入口温度が高いとは、燃焼ユニットでの未燃ガスの燃焼量が増加し、燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスの燃焼排ガス温度が上昇していることを意味する。よって、燃焼排ガス入口温度が定常時よりも上昇した場合に、燃焼ユニットでの未燃ガスの燃焼量の増加により燃焼排ガス温度が上昇していることが分かり、これにより、未燃ガス量が増加していると判断できる。よって、上記特徴構成のように燃焼排ガス入口温度の変化に基づいて、未燃ガス量を監視できる。
【0018】
本発明に係る未燃ガス監視方法の更なる特徴構成は、
前記燃料電池システムは、
前記熱媒を前記熱交換器を経由して循環させる熱媒循環路と、
前記熱媒循環路に設けられ、前記熱交換器における熱媒出口温度に基づいて、前記熱交換器に導入される前記熱媒の単位時間当たりの熱媒流量を調整する熱媒流量調整器とを備え、
前記熱媒出口温度を所定の目標値とするように、前記熱媒流量調整器を制御して前記熱媒流量を調整する熱媒流量調整ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記熱交換量として前記熱媒の熱媒流量を用いる点にある。
【0019】
熱交換器に導入される燃焼排ガスの燃焼排ガス温度が変化すると、熱交換器における燃焼排ガスと熱媒との熱交換量が変化する。熱媒入口温度は概ね一定であり、熱媒出口温度が所定の目標値に設定されているため、熱交換器に導入される熱媒の熱媒流量を調整することで熱交換量の変化に対応させることができる。例えば、燃焼排ガス温度が上昇すると、熱交換器において熱交換される熱媒の熱媒熱量が増加し、結果として熱媒流量が増加する。つまり、燃焼排ガス温度の変化と熱媒流量の変化とは関係を有している。よって、熱媒流量の変化に基づいて燃焼排ガス温度(熱交換器における燃焼排ガス入口温度と同等)の変化を監視でき、ひいては未燃ガス量の変化を監視できる。
【0020】
本発明に係る未燃ガス監視方法の更なる特徴構成は、
前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス流量は、前記燃料電池部が概ね一定で発電を行っている場合は一定流量であると推定される点にある。
【0021】
上記特徴構成のように、燃焼排ガス流量を一定流量と推定することで、未燃ガス量の増減の推定を容易に行える。
【0022】
本発明に係る未燃ガス監視方法の更なる特徴構成は、
前記熱交換器に導入される前記燃焼排ガスの燃焼排ガス流量は、前記燃料電池部が発電する発電電力量に応じて変動する点にある。
【0023】
上記特徴構成のように、燃焼排ガス流量を発電電力量に応じて変動させることで、未燃ガス量の増減の推定をより正確に行える。
【0024】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、
燃料ガス及び酸素含有ガスを含む混合ガスを用いて発電を行う燃料電池部と、
前記燃料電池部から排出される未燃ガスを燃焼する燃焼ユニットと、
前記燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器における前記燃焼排ガスと前記熱媒との間の単位時間あたりの熱交換量の変化に基づいて、前記未燃ガスの未燃ガス量を監視する未燃ガス監視部と、
を備える点にある。
【0025】
燃料電池部から排出された未燃ガスは、燃焼ユニットにおいて燃焼される。未燃ガスの量(未燃ガス量)が増加すると燃焼ユニットでの未燃ガスの燃焼量が増加し、燃焼ユニットから排出される燃焼排ガスの温度(燃焼排ガス温度)が上昇する。つまり、燃料電池部から排出された未燃ガスの量(未燃ガス量)の変化が燃焼排ガス温度の変化となって現れる。燃焼排ガス温度が変化すると、熱交換器において熱媒と熱交換される燃焼排ガスの熱量(燃焼排ガス熱量)も変化し、当該燃焼排ガス熱量と概ね一致すると推定される熱交換器を通流する熱媒の熱量(熱媒熱量)も変化すると推定される。
【0026】
よって、上記特徴構成のように燃焼排ガスと熱媒との間の単位時間あたりの熱交換量の変化に基づいて、未燃ガス量を監視できる。例えば、熱交換器で熱交換される熱媒熱量が増加すると、燃料電池部から排出される未燃ガスの未燃ガス量が増加することが分かる。そのため、燃焼ユニットから排出された燃焼排ガスの温度を検出しなくても、熱交換された熱媒熱量に基づいて燃焼排ガス熱量を把握することができ、ひいては、未燃ガス量を監視できる。そのため、燃焼排ガス温度を検出するために燃焼ユニットの出口に熱電対を設ける必要がなく、熱電対を設けることによるコストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態に係る未燃ガス監視方法を実行可能な燃料電池システムについて、
図1を用いて説明する。
【0029】
〔実施形態〕
【0030】
(1)燃料電池システムの構成
燃料電池システム100は、
図1に示すように、燃料電池発電装置1を備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池発電装置1に燃料ガス、改質水及び酸素含有ガスを供給するために、燃料ガス供給用の昇圧ポンプ5及び脱硫器3と、改質水供給用の改質水タンク9と、酸素含有ガス供給用のブロア15とを備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池発電装置1から排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器17と、熱交換器17との間で循環させる水等の熱媒を収容する貯湯タンク19とを備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池システム100の全体を制御する制御部70を備えており、制御部70は、燃料電池システム100の運転を制御する運転制御部71と、未燃ガスを監視する未燃ガス監視部72とを有している。
【0031】
都市ガス(例えば、都市ガス13A)等の炭化水素系の原燃料は、昇圧ポンプ5の作動により原燃料供給路41を通して脱硫器3に供給される。
【0032】
脱硫器3は、原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器3を備えることにより、硫黄化合物による改質器28あるいは燃料電池発電装置1に対する影響を抑制することができる。
【0033】
改質水タンク9からは、改質水ポンプ7の作動により改質水供給路43を通して燃料電池発電装置1に改質水が供給される。
【0034】
改質水タンク9は、後述の触媒燃焼排ガスから凝縮水を回収する。また、本実施形態では、改質水タンク9に供給される凝縮水を水精製器(図示せず)により精製するようになっており、具体的には、熱交換器17の出口から排出路51を介して排出される後述の触媒燃焼排ガスから、凝縮水回収路45を介して凝縮水を水精製器(図示せず)に回収する。そして、水精製器(図示せず)により精製された凝縮水が改質水タンク9に回収される。
【0035】
また、改質水タンク9には、凝縮水とは独立に、水供給部13から水を供給可能になっている。
【0036】
燃料電池発電装置1は、収納容器40内に収納されており、燃料電池モジュール23、気化器27、改質器28及び燃焼部(燃焼ユニットの一部)29を備えている。
【0037】
気化器27には、改質水供給路43を介して改質水タンク9から改質水が供給され、原燃料供給路41を介して脱硫された原燃料が供給される。原燃料供給路41は脱硫器3よりも下流側の部位で、改質水供給路43に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが気化器27に供給される。改質水及び原燃料が供給された気化器27は、改質水から水蒸気を生成する。気化器27にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路31を通して改質器28に供給される。
【0038】
改質器28は、気化器27にて生成された水蒸気を用いて、脱硫器3において脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素ガスを主成分とする燃料ガス(還元性成分を有するガス)を生成する。このとき、改質器28は、後述の燃焼部29での燃料成分ガス(未燃ガスの一例)の燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の水蒸気改質を行う。
【0039】
なお、燃料電池モジュール23では、燃料ガスと空気とを電気化学反応させて発電しているが、この発電に用いられずに残存している燃料成分を燃料成分ガス(未燃ガスの一例)と言う。また、後述するが、燃焼部29は当該燃料成分ガス(未燃ガスの一例)を燃焼するが、燃焼部29から排出されるセル燃焼排ガスには、燃焼部29において燃焼されなかった燃料成分である未燃ガスが含まれる。
【0040】
改質器28にて生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路33を通して燃料電池モジュール23のガスマニホールド25に供給される。
【0041】
ガスマニホールド25に供給された燃料ガスは、燃料電池モジュール23を構成する複数の燃料電池セル(燃料電池部の一例)21に対して分配され、燃料電池セル21とガスマニホールド25との接続部である下端から燃料電池セル21に供給される。
【0042】
燃料電池モジュール23は、改質器28から供給された燃料ガスと、ブロア15から供給された酸素含有ガスとを用いて、電気化学反応させて発電する。より具体的には、燃料電池モジュール23は、複数の燃料電池セル21とガスマニホールド25とを有する。複数の燃料電池セル21は互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、燃料電池セル21の一方の端部(下端部)がガスマニホールド25に固定されている。燃料電池セル21は、ガスマニホールド25を通じて供給される燃料ガスと、ブロア15から供給された酸素含有ガスとを電気化学反応させて発電する。
【0043】
各燃料電池セル21は、例えば、燃料ガスが供給されるアノードと、酸素含有ガスが供給されるカソードと、アノードとカソードとの間に介在させる電解質とを有しており、燃料ガス及び酸素含有ガスを反応させて発電する。
【0044】
燃焼部29には、燃料電池モジュール23における発電反応に用いられずに排出される燃料成分ガスが供給される。燃焼部29は、供給された燃料成分ガスを燃焼する。燃焼部29からは、燃料成分ガスの燃焼により生じたセル燃焼排ガスが排出される。
【0045】
セル燃焼排ガスは改質器28に供給されるとともに、燃焼触媒部(燃焼ユニットの一部)35を介してガス出口37から収納容器40の外部に排出される。改質器28は、前述の通り、セル燃焼排ガスの熱、つまり燃料成分ガスの燃焼により生じた燃焼熱を用いて水蒸気改質を行う。
【0046】
ガス出口37には、燃焼触媒部(燃焼ユニットの一部)35が配置され、セル燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分である未燃ガスを燃焼除去する。燃焼触媒部35は、例えば、白金系触媒等から構成されている。
【0047】
ガス出口37からは、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼により生じた触媒燃焼排ガスが排出される。触媒燃焼排ガスは、排出路52を介して熱交換器17に送られる。
【0048】
ガス出口37から排出される触媒燃焼排ガスが、触媒燃焼排ガス入口Ginから熱交換器17に導入され、熱交換器17内を通過し、触媒燃焼排ガス出口Goutから排出路51に排出される。また、熱交換器17には、触媒燃焼排ガスと熱交換を行う水等の熱媒が供給される。つまり、貯湯タンク19から排出される熱媒が、熱媒入口Winから熱交換器17に導入され、熱交換器17内を通過し、熱媒出口Woutから排出される。触媒燃焼排ガス入口Ginと熱媒出口Woutとは、触媒燃焼排ガス又は熱媒の通流方向において対向している。同様に、触媒燃焼排ガス出口Goutと熱媒入口Winとは、触媒燃焼排ガス又は熱媒の通流方向において対向している。つまり、
図1に示すように、熱交換器17において、触媒燃焼排ガスの通流方向と熱媒の通流方向とは反対方向である。
【0049】
熱交換器17を出た触媒燃焼排ガスは、触媒燃焼排ガス出口Goutから排出路51に排出される。熱交換器17を出た熱媒は、熱媒循環路61に排出され貯湯タンク19に導入される。さらに、貯湯タンク19を出た熱媒循環路61を通流して再び熱交換器17に導入される。よって、熱媒循環路61によって、熱交換器17と貯湯タンク19との間で熱媒が循環する。
【0050】
熱交換器17では、触媒燃焼排ガス入口Ginから導入された触媒燃焼排ガスと、熱媒入口Winから導入された熱媒との間で熱交換が行われる。例えば、熱媒が水である場合、触媒燃焼排ガスと水との間で熱交換が行われ温水が生成され、貯湯タンク19に収容される。触媒燃焼排ガスは、水との熱交換により温度が低下した状態で排出路51に排出される。
【0051】
なお、貯湯タンク19に収容された温水は、お風呂及び洗面等への供給に用いることが可能であり、燃料電池発電装置1からの触媒燃焼排ガスの排熱を再利用することができる。
【0052】
なお、熱媒循環路61には、循環ポンプ63と、ラジエータ65と、熱媒流量調整器67とが備えられている。循環ポンプ63は、回転数を制御し、所望の回転数で貯湯タンク19からの熱媒を熱交換器17に供給する。ラジエータ65は、熱媒循環路61を通流する熱媒の熱を放熱させるための放熱ファン65aと、図示しない温度センサとを有する。
【0053】
熱媒流量調整器67は、運転制御部71からの制御に応じて、熱交換器17から排出される熱媒の熱媒出口温度(熱媒出口温度Twout)に基づいて、熱交換器17に導入される熱媒の単位時間当たりの熱媒流量(熱媒流量Fw)を調整する。さらに説明すると、熱交換器17の熱媒出口温度Twoutは、概ね一定の所定の目標値に固定されている。熱媒流量調整器67は、運転制御部71からの制御に応じて、熱媒出口温度Twoutを前記目標値とするように、熱交換器17に導入される熱媒流量Fwを調整する。例えば、熱媒流量調整器67は、循環ポンプ63の回転数を調整することで熱媒流量Fwを調整する。
【0054】
上記のような熱媒流量調整器67としては、例えばバイメタルサーモスタットを挙げることができる。
【0055】
なお、貯湯タンク19には、貯湯タンク19中の湯水を出湯するための出湯路19a、及び、湯水の出湯に応じて貯湯タンク19に給水するための給水路19bが設けられている。
【0056】
また、収納容器40のガス出口37から触媒燃焼排ガス入口Ginに延びる排出路52には、熱交換器17に導入される触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス入口温度Tginを検出する温度センサSginが設けられている。また、熱交換器17の触媒燃焼排ガス出口Goutから延びる排出路51には、熱交換器17から排出される触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス出口温度Tgoutを検出する温度センサSgoutが設けられている。
【0057】
また、熱媒循環路61には、熱媒循環路61を流れる熱媒の流れ方向の上流側に、熱交換器17の熱媒入口Winに導入される熱媒の熱媒入口温度Twinを検出する温度センサSwinが設けられている。また、熱媒循環路61には、熱交換器17の熱媒出口Woutから排出される熱媒の熱媒出口温度Twoutを検出する温度センサSwoutが設けられている。
【0058】
なお、図示していないが、燃料電池システム100には、燃料電池発電装置1が発電した発電電力を取り出す電力変換装置が備えられており、燃料電池発電装置1の発電電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧および同じ周波数にする。
【0059】
(2)未燃ガス監視方法
次に、本実施形態に係る未燃ガス監視部72が行う、未燃ガス量の監視方法について説明する。
【0060】
燃料電池モジュール23における発電反応に用いられずに排出された燃料成分ガス(未燃ガスの一例)は、燃焼部(燃焼ユニットの一部)29で燃焼される。燃焼部29から排出されたセル燃焼排ガスには、燃焼部29において燃焼されなかった燃料成分である未燃ガスが含まれる。燃焼触媒部(燃焼ユニットの一部)35は、燃焼部29において燃焼されなかった未燃ガスを燃焼し、触媒燃焼排ガスを排出する。ここでは、燃焼部29において燃焼されなかった未燃ガスの未燃ガス量を監視する
当該未燃ガス量を監視する方法として、燃焼触媒部35において未燃ガスの燃焼により生成された触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス温度を監視する方法がある。また、未燃ガス量を監視する方法として、他に、熱交換器17に導入される熱媒の熱媒流量Fw及び熱媒熱量Qwを監視する方法等が挙げられる。
【0061】
まず、触媒燃焼排ガス温度により未燃ガス量を監視する方法について説明する。
【0062】
(2-1)触媒燃焼排ガス温度による未燃ガス量の監視
燃料電池セル21では、水蒸気改質された燃料ガスと空気との供給を受けて、これらが反応することで発電が行われる。そして、燃料電池セル21における発電において用いられなかった燃料成分ガスは、燃焼部29(燃焼ユニットの一例)において燃焼される。ここで、燃料成分ガスとは、燃料電池セル21に供給された燃料ガスと空気との混合ガスのうち、発電反応において用いられなかった燃料ガスである。燃焼部29において燃料成分ガスが燃焼すると、セル燃焼排ガスを含むセル燃焼排ガスが排出される。
【0063】
燃焼部29から排出されたセル燃焼排ガスは、燃焼触媒部35(燃焼ユニットの一例)に送られる。燃焼触媒部35は、セル燃焼排ガスのうち未燃ガスを燃焼する。ここで、未燃ガスとは、セル燃焼排ガスを含むセル燃焼排ガスのうち、燃焼部29において燃焼されなかった燃料成分ガスである。
【0064】
未燃ガスの量が増加すると、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼量が増加し、燃焼触媒部35から排出される触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス温度(燃焼排ガス温度の一例)が上昇する。つまり、未燃ガス量(未燃ガス量の一例)の変化が触媒燃焼排ガス温度の変化となって現れる。よって、触媒燃焼排ガス温度を検出することで、未燃ガスの未燃ガス量(未燃ガス量の一例)を推定することができる。
【0065】
ここで、熱交換器17において熱交換された触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス熱量Qg(燃焼排ガス熱量の一例)は、当該触媒燃焼排ガスと熱交換された熱媒の熱媒熱量Qwと概ね一致すると推定できる。よって、触媒燃焼排ガス温度を測定できない場合であっても、熱媒熱量Qwと、触媒燃焼排ガスの熱交換器17での出口温度である触媒燃焼排ガス出口温度Tgoutと、熱交換器17に導入される触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス流量Fgとに基づいて、触媒燃焼排ガスの熱交換器17での入口温度である触媒燃焼排ガス入口温度Tginを推定することができる。そして、触媒燃焼排ガス入口温度Tginは、燃焼触媒部35の出口での触媒燃焼排ガス温度と概ね一致する。このような関係から触媒燃焼排ガス温度の変化を推定し、未燃ガス量の変化を推定することができる。あるいは、触媒燃焼排ガス温度と未燃ガス量との間の所定の関係性を導出すれば、触媒燃焼排ガス温度に基づいて、未燃ガス量を推定することもできる。
【0066】
例えば、触媒燃焼排ガス温度が上昇している場合には、燃料電池発電装置1において未燃ガス量が増加していると判断できる。この場合、燃料電池発電装置1において燃料ガスが適正に発電反応に用いられておらず、燃料電池発電装置1の外部に排出されていることがわかる。
【0067】
触媒燃焼排ガス温度と概ね一致し、未燃ガス量の増減を監視可能な触媒燃焼排ガス入口温度Tginの推定方法について以下に説明する。
【0068】
熱交換器17を触媒燃焼排ガス入口Ginから触媒燃焼排ガス出口Goutまで通流する触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス熱量Qgは次式(1)により表される。
【0069】
Qg=Fg×(Tgin-Tgout) ・・・(1)
ここで、Fgは、熱交換器17に導入される触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス流量であり、
Tgoutは、触媒燃焼排ガスの熱交換器17での触媒燃焼排ガス出口温度である。
【0070】
なお、触媒燃焼排ガス流量Fgは、燃料電池セル21が概ね一定で発電を行っている場合は一定流量であり、一定の所定値と推定できる。よって、触媒燃焼排ガス流量Fgは、予め把握することができる一定値とすることができる。
【0071】
ただし、触媒燃焼排ガス流量Fgは、燃料電池セル21が発電する発電電力量に応じて変動させた値とすることもできる。例えば、発電電力量が大きい場合は、触媒燃焼排ガス流量Fgも所定の係数をかけ所定値として推定できる。
【0072】
また、触媒燃焼排ガス出口温度Tgoutは、熱交換器17に導入される熱媒の熱媒入口温度Twinと概ね一致していると推定できる。
【0073】
あるいは、触媒燃焼排ガス出口温度Tgoutは、温度センサSgoutから取得することもできる。
【0074】
以上より、触媒燃焼排ガス熱量Qgが分かれば、触媒燃焼排ガス流量Fg及び触媒燃焼排ガス出口温度Tgoutの推定値から触媒燃焼排ガス入口温度Tginを算出可能である。
【0075】
次に、熱交換器17を熱媒入口Winから熱媒出口Woutまで通流する熱媒の熱媒熱量Qwは次式(2)により表される。
【0076】
Qw=Fw×(Twout-Twin) ・・・(2)
ここで、Fwは、熱交換器17に導入される熱媒の熱媒流量であり、
Twoutは、熱媒の熱交換器17での熱媒出口温度であり、
Twinは、熱媒の熱交換器17での熱媒入口温度である。
【0077】
熱媒流量Fwは、循環ポンプ63から流量そのものを取得することもできるし、あるいは回転数から流量を取得することもできる。
【0078】
また、熱媒出口温度Twoutは、温度センサSwoutから取得することができる。同様に、熱媒入口温度Twinは、温度センサSwinから取得することができる。
【0079】
なお、熱媒入口温度Twinは、熱媒が水等の液体であるため短期間では概ね一定である。また、熱媒出口温度Twoutは、概ね一定の目標値に設定されている。そして、前述の通り熱媒流量調整器67によって熱媒流量Fwを調整することで、熱媒出口温度Twoutは概ね一定の目標値になるように制御されている。
【0080】
熱交換器17において、触媒燃焼排ガスと熱媒との間における熱交換が十分に行われる場合、触媒燃焼排ガス熱量Qgと熱媒熱量Qwの関係は次式(3)により表される。
【0081】
Qg≒Qw ・・・(3)
同様に、熱交換器17の触媒燃焼排ガス入口Ginにおいて高温の触媒燃焼排ガスは、触媒燃焼排ガス出口Goutにおいて、熱交換器17の熱媒入口Winでの熱媒の熱媒入口温度Twinまで低下すると推定する。よって、触媒燃焼排ガス出口温度Tgoutと熱媒入口温度Twinとの関係は次式(4)により表される。
【0082】
Tgout=Twin ・・・(4)
式(1)~(4)に基づいて、触媒燃焼排ガス入口温度Tginは次式(5)により表される。
【0083】
Tgin=(Fw/Fg)×(Twout-Twin)+Twin ・・・(5)
式(5)において、熱媒流量Fw、触媒燃焼排ガス流量Fg、熱媒出口温度Twout及び熱媒入口温度Twinは、上述の通り検出値又は推定できる値である。よって、式(5)の右辺においてこれらの値を代入することで、触媒燃焼排ガス入口温度Tginを算出することができる。
【0084】
収納容器40のガス出口37から触媒燃焼排ガス入口Ginに触媒燃焼排ガスが導入されるため、触媒燃焼排ガス入口温度Tginは触媒燃焼排ガス温度と概ね一致すると推定できる。
【0085】
上述のこれらの関係に基づいて、触媒燃焼排ガス温度を推定することで、未燃ガス量を推定することができる。
【0086】
例えば、熱交換器17における触媒燃焼排ガス入口温度Tginが高いとは、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼量が増加し、燃焼触媒部35からの触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス温度が上昇していることを意味する。よって、触媒燃焼排ガス入口温度Tginが定常時よりも上昇した場合に、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼量が増加して触媒燃焼排ガス温度が増加していることが分かり、これにより、未燃ガス量が増加していると判断できる。逆に、触媒燃焼排ガス入口温度Tginが定常時よりも下降した場合に、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼量が減少して触媒燃焼排ガス温度が減少していることが分かり、これにより、未燃ガス量が減少していると判断できる。
【0087】
このように、上記方法によれば、触媒燃焼排ガス温度を熱電対等の温度センサで検出しなくても、未燃ガス量を監視することができる。よって、燃料電池セル21において燃料ガスが発電のための反応に正常に用いられているかについての判断、同様に、燃料電池セル21から未燃ガスが異常に排出されていないかについての判断を行うことができる。なお、触媒燃焼排ガス温度を検出するために燃焼ユニットの出口に熱電対を設ける必要がないため、熱電対を設けることによるコストアップを抑制できる。
【0088】
なお、燃焼触媒部35と接触する未燃ガス量が増加すると、増加後の未燃ガスが燃焼触媒部35において短期間で燃焼するため、未燃ガスの燃焼による触媒燃焼排ガス温度も短期間で上昇する。未燃ガス量が減少する場合も同様であり、燃焼触媒部35と接触する未燃ガス量が減少すると、減少後の未燃ガスが燃焼触媒部35において短期間で燃焼するため、未燃ガスの燃焼による触媒燃焼排ガス温度も短期間で下降する。つまり、未燃ガス量の増減が即座に触媒燃焼排ガス温度に反映される。よって、触媒燃焼排ガス温度を算出して推定することで、未燃ガス量を監視することができる。
【0089】
(2-2)熱媒流量Fwによる未燃ガス量の監視
次に、熱媒流量Fwにより未燃ガス量を監視する方法について説明する。
【0090】
前述のとおり、熱交換器17の熱媒出口温度Twoutは、概ね一定の所定の目標値に固定されている。熱媒流量調整器67は、運転制御部71からの制御に応じて、熱媒出口温度Twoutを前記目標値とするように、熱交換器17に導入される熱媒流量Fwを調整する。例えば、熱交換器17に導入される未燃ガス量の増加により触媒燃焼排ガス温度が上昇し、触媒燃焼排ガス入口温度Tginが上昇すると、熱媒出口温度Twoutが目標値よりも上昇する。この場合、熱媒流量調整器67は、熱媒出口温度Twoutを目標値に向けて下降させるために、熱交換器17に導入される熱媒流量Fwを増加させる。
【0091】
逆に、熱交換器17に導入される未燃ガス量の減少により触媒燃焼排ガス温度が下降し、触媒燃焼排ガス入口温度Tginが下降すると、熱媒出口温度Twoutが目標値よりも下降する。この場合、熱媒流量調整器67は、熱媒出口温度Twoutを目標値に向けて上昇させるために、熱交換器17に導入される熱媒流量Fwを減少させる。
【0092】
よって、熱媒流量Fwの変化を監視することで、触媒燃焼排ガス温度を監視することができ、ひいては未燃ガス量を監視することができる。
【0093】
なお、熱媒流量Fwの変化は循環ポンプ63の回転数の変化に対応しているため、循環ポンプ63の回転数の変化を監視することで、未燃ガス量を監視することもできる。
【0094】
(2-3)熱媒熱量Qwによる未燃ガス量の監視
次に、熱媒熱量Qwにより未燃ガス量を監視する方法について説明する。前述の通り、熱交換器17に導入される未燃ガス量の変化によって熱媒流量Fwが変化する。これにより、式(2)で表される熱媒熱量Qwも変化する。よって、熱媒熱量Qwの変化を監視することで、未燃ガス量を監視することができる。
【0095】
なお、熱媒熱量Qwが変化すると、熱交換器17において熱媒と熱交換される触媒燃焼排ガスの触媒燃焼排ガス熱量Qgも変化する。熱媒熱量Qwの変化を監視することは、熱媒と触媒燃焼排ガスとの間での熱交換量の変化を監視することと同じである。よって、熱交換器17における触媒燃焼排ガスと熱媒との間の熱交換量の変化に基づいて、未燃ガス量を監視することもできる。
【0096】
〔他の実施形態〕
上記実施形態では、燃焼部29は、燃料電池モジュール23における発電反応に用いられずに排出された燃料成分ガスを燃焼し、燃料成分ガスが燃焼されたセル燃焼排ガスを排出する。そして、このセル燃焼排ガスは改質器28に供給される。さらに、セル燃焼排ガスは、燃焼触媒部35に供給される。燃焼触媒部35は、セル燃焼排ガスのうち燃焼部29で燃焼されずに排出された未燃ガスを燃焼し、燃焼後の触媒燃焼排ガスを熱交換器17に導入する。
【0097】
そして、上記実施形態では、未燃ガス監視部72は、触媒燃焼排ガス温度、熱媒流量Fw、熱媒熱量Qw及び熱交換量の変化等を監視することで、燃焼触媒部35で燃焼される未燃ガスの未燃ガス量を監視している。
【0098】
しかし、燃焼触媒部35が省略されている場合には、燃焼部29から排出されたセル燃焼排ガスが熱交換器17に導入され、熱媒と熱交換されてもよい。なお、セル燃焼排ガスには、燃焼部29で燃焼されずに排出された未燃ガスが含まれている。
【0099】
この場合には、未燃ガス監視部72は、熱交換器17におけるセル燃焼排ガスと熱媒との熱交換量の変化、熱交換器17に投入された熱媒の熱媒熱量及び熱媒流量Fw、熱交換器17に導入されたセル燃焼排ガスのセル燃焼排ガス入口温度Tgin等に基づいて、燃焼部29で燃焼される未燃ガスの未燃ガス量を検出してもよい。燃焼部29で燃焼される未燃ガスは、燃料電池セル21に導入されたものの、発電反応に用いられずに排出される燃料成分である。なお、セル燃焼排ガス入口温度Tginは、燃焼部29の出口でのセル燃焼排ガスのセル燃焼排ガス温度に対応している。
【0100】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
17 :熱交換器
21 :燃料電池セル
29 :燃焼部(燃焼ユニットの一部)
35 :燃焼触媒部(燃焼ユニットの一部)
63 :循環ポンプ
67 :熱媒流量調整器
72 :未燃ガス監視部
100 :燃料電池システム