(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20221216BHJP
G06T 7/254 20170101ALI20221216BHJP
【FI】
H04N5/232 290
G06T7/254 Z
(21)【出願番号】P 2019065873
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 純
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-167282(JP,A)
【文献】特開2003-271972(JP,A)
【文献】特開2009-104279(JP,A)
【文献】国際公開第2009/005141(WO,A1)
【文献】特開2015-089019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G06T 7/254
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置により所定空間を順次撮影した撮影画像のうち所定の対象画像から移動体の画像領域を示す移動体領域を検出する画像処理装置であって、
前記対象画像と前記所定空間の背景を撮影した背景画像とを比較して抽出された第1差分領域、及び、前記対象画像と前記対象画像の前又は後に撮影された前記撮影画像とを比較して抽出された第2差分領域、を比較し、判定期間において前記第2差分領域は抽出されず前記第1差分領域が抽出された画像領域を前記移動体領域として検出しない安定領域として設定する画像処理手段を備え、
前記判定期間は、前記撮影画像上の位置に応じて異なる長さに設定されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記判定期間は、前記撮影画像における消失点に近い位置ほど長く設定されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記判定期間は、前記撮影装置の設置高が前記移動体の高さに応じた基準値よりも高い場合、前記設置高が前記基準値の場合より、短く設定されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記判定期間は、前記撮影装置の俯角が小さいほど長く設定されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記撮影装置の設置高に基づいて、前記撮影画像全体を床面と仮定して前記撮影装置の光学中心から当該撮影画像の各領域又は各画素に対応する前記床面の位置までの距離を算出し、当該距離が大きい領域又は画素ほど長い前記判定期間を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
撮影装置により所定空間を順次撮影した撮影画像のうち所定の対象画像から移動体の画像領域を示す移動体領域を検出する画像処理プログラムであって、
コンピュータを、
前記対象画像と前記所定空間の背景を撮影した背景画像とを比較して抽出された第1差分領域、及び、前記対象画像と前記対象画像の前又は後に撮影された前記撮影画像とを比較して抽出された第2差分領域、を比較し、判定期間において前記第2差分領域は抽出されず前記第1差分領域が抽出された画像領域を前記移動体領域として検出しない安定領域として設定する画像処理手段として機能させ、
前記判定期間は、前記撮影画像上の位置に応じて異なる長さに設定されることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの設置状況に応じて移動体を検出するための判定期間を設定する画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定空間を監視する画像処理装置では、記憶した背景画像を時間経過とともに随時更新する処理が行われている(特許文献1)。しかしながら、背景画像の更新間隔が長いと、ドアの開閉や蛍光灯の点消灯等のように検出対象である人物以外の要因によって生じた変化領域を抽出したままとなり、その変化領域が人と同サイズの場合等において人以外のものを人と誤判定してしまうおそれがある。そのため、背景差分で抽出された変化領域であっても、背景画像の更新間隔よりも短い判定期間において移動のない画像領域(フレーム間差分画像において抽出されない画像領域)は移動体領域とみなさない安定領域と判定し、その安定領域では変化領域が抽出されてもその領域を移動体の検出処理から除外することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、監視空間を撮影するためのカメラの設置状況によって検出対象となる人等の移動体が写された画像領域を安定領域として誤判定してしまう問題がある。例えば、カメラの鉛直下方に伸ばした線から放射線上を移動する移動体が存在すると、実際には移動しているが撮影画像上では移動しておらず静止しているように写され、安定領域と誤判定されてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、人等の移動体が写された画像領域を誤って安定領域と判定してしまうことを防止すると共に、移動体以外による変化領域を精度良く安定領域と判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、撮影装置により所定空間を順次撮影した撮影画像のうち所定の対象画像から移動体の画像領域を示す移動体領域を検出する画像処理装置であって、前記対象画像と前記所定空間の背景を撮影した背景画像とを比較して抽出された第1差分領域、及び、前記対象画像と前記対象画像の前又は後に撮影された前記撮影画像とを比較して抽出された第2差分領域、を比較し、判定期間において前記第2差分領域は抽出されず前記第1差分領域が抽出された画像領域を前記移動体領域として検出しない安定領域として設定する画像処理手段を備え、前記判定期間は、前記撮影画像上の位置に応じて異なる長さに設定されることを特徴とする画像処理装置である。
【0007】
本発明の別の態様は、撮影装置により所定空間を順次撮影した撮影画像のうち所定の対象画像から移動体の画像領域を示す移動体領域を検出する画像処理プログラムであって、コンピュータを、前記対象画像と前記所定空間の背景を撮影した背景画像とを比較して抽出された第1差分領域、及び、前記対象画像と前記対象画像の前又は後に撮影された前記撮影画像とを比較して抽出された第2差分領域、を比較し、判定期間において前記第2差分領域は抽出されず前記第1差分領域が抽出された画像領域を前記移動体領域として検出しない安定領域として設定する画像処理手段として機能させ、前記判定期間は、前記撮影画像上の位置に応じて異なる長さに設定されることを特徴とする画像処理プログラムである。
【0008】
ここで、前記判定期間は、前記撮影画像における消失点に近い位置ほど長く設定されることが好適である。
【0009】
また、前記判定期間は、前記撮影装置の設置高が前記移動体の高さに応じた基準値よりも高い場合、前記設置高が前記基準値の場合より、短く設定されることが好適である。
【0010】
また、前記判定期間は、前記撮影装置の俯角が小さいほど長く設定されることが好適である。
【0011】
また、前記撮影装置の設置高に基づいて、前記撮影画像全体を床面と仮定して前記撮影装置の光学中心から当該撮影画像の各領域又は各画素に対応する前記床面の位置までの距離を算出し、当該距離が大きい領域又は画素ほど長い前記判定期間を設定することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、人等の移動体が写された画像領域を誤って安定領域と判定してしまうことを防止すると共に、移動体以外による変化領域を精度良く安定領域と判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態における警備システムの構成概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態における画像処理装置の構成概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態における撮影部の設置状況について説明する図である。
【
図4】本発明の実施の形態における判定期間の設定処理を説明する図である。
【
図5】本発明の実施の形態における第1差分領域の抽出処理を説明する図である。
【
図6】本発明の実施の形態における安定領域の設定処理を説明する図である。
【
図7】本発明の実施の形態における判定期間設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態における侵入者判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る警備システム10の構成概略図である。警備システム10は、店舗、オフィス、マンション、倉庫、家屋などの各監視対象物件12に設置される警備装置14、公衆電話回線などの通信網16を介して各警備装置14と接続される警備センタ装置18、及び利用者装置20とを含んで構成される。さらに、警備システム10は、監視対象物件12の監視領域を撮影した監視画像に基づいて監視対象物件12の異常を検出するための1以上の画像処理装置としての画像処理装置22、及び、画像処理装置22により撮影された監視画像を記録する録画装置24を含んで構成される。画像処理装置22及び録画装置24は警備装置14と通信可能に接続される。
【0016】
警備装置14は、構内LANなどを介してそれ自体に接続された画像処理装置22からアラーム信号を受信すると、そのアラーム信号及び警備装置14自体の識別信号、又は、監視対象物件12あるいは異常を検出した画像処理装置22の識別信号を警備センタ装置18へ送信する。そのために、警備装置14は、画像処理装置22と通信するための通信インターフェースと、警備センタ装置18及び利用者装置20と通信するための通信インターフェースと、それらを制御するための制御ユニットを有する。
【0017】
警備センタ装置18は、いわゆるコンピュータで構成され、通信網16を介して警備装置14と通信するための通信インターフェースと、液晶ディスプレイなどの表示装置と、ブザーやLEDなどで構成される報知部を備える。警備センタ装置18は、警備装置14から通信網16を介してアラーム信号を受信すると、そのアラーム信号を送信した警備装置14が設置された監視対象物件12及び検出された異常の内容を報知部及び表示装置を通じて監視員に報知する。
【0018】
利用者装置20も、いわゆるコンピュータで構成され、通信網16を介して警備装置14と通信するための通信インターフェース、液晶ディスプレイなどの表示装置、及び、キーボードやマウスなど、警備装置14を遠隔操作するための操作コマンドを入力するためのユーザインターフェースを備える。利用者装置20は、ユーザインターフェースを介して予め登録されている監視対象物件12を観察する操作がなされると、登録されている監視対象物件12に設置された警備装置14に対して、現在撮影中の監視画像又は録画装置24に記録されている監視画像を利用者装置20に送信することを要求する各種の画像要求信号を送信する。そして、警備装置14から監視画像を受信すると、利用者装置20は要求された監視画像を表示装置に表示する。
【0019】
録画装置24は、HDDなどの磁気ディスク装置、DATなどの磁気テープ、DVD-RAMなどの光記録媒体のように、録画装置24に着脱自在となる記録媒体と、それら記録媒体にアクセスしてデータの読み書きを行う装置で構成される。録画装置24は、画像処理装置22が撮影した監視画像を警備装置14から受け取り、撮影時刻と関連付けて記録する。
【0020】
【0021】
通信部30は、画像処理装置22と警備装置14との間で構内LANなどの通信ネットワークを介して各種の設定信号及び制御信号などを送受信する入出力インターフェースであり、イーサネット(登録商標)などの各種の通信インターフェース回路及びそれらを駆動するドライバソフトウェアなどで構成される。具体的には、通信部30は、後述の制御部38によって侵入者が検出された場合に、侵入者を検出したことを示す侵入アラーム信号を警備装置14に出力する。
【0022】
撮影部32は、CCDなどの、可視光などに感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系などで構成される。撮影部32は、監視領域を撮影することによって撮影画像を取得する。本実施形態では撮影部32は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮影を行うが、撮影部32の撮影方法はこれには限られない。取得された撮影画像46は記憶部34に記憶される。
【0023】
監視領域に侵入者が存在する場合、撮影部32が取得した撮影画像46には、当該人物(侵入者)に相当する人領域が含まれることとなる。
【0024】
記憶部34は、半導体メモリ、磁気ディスク(HDD)、又はCD-ROM、DVD-RAMなどの光ディスクドライブ及びその記録媒体で構成される、記憶手段である。記憶部34には、画像処理装置22の各部を動作させるための画像処理プログラムが記憶される。また、
図2に示される通り、記憶部34には、撮影部32の設置状況40、安定領域42、背景画像44及び撮影画像46が記憶される。これによって、記憶部34は、設置状況40を記憶する設置状況記憶手段、安定領域42を記憶する安定領域記憶手段、背景画像44を記憶する背景画像記憶手段、撮影画像46を記憶する撮影画像記憶手段として機能する。
【0025】
設置状況40は、撮影部32が設置されている状況を示す情報である。例えば、画像処理装置22を設置する作業員は、
図3に示すように撮影部32が設置されている設置高H及び俯角θを計測し、設置高H及び俯角θを画像処理装置22に入力して設置状況40として記憶部34に記憶させる。また、俯角θ及び設置高Hは、自動計測によって取得するようにしてもよい。例えば、距離センサ等のセンサを使用して俯角θ及び設置高Hを計測してもよい。設置高Hは、例えば、床面から画像処理装置22までの高さを示し、俯角θは、例えば、水平面と画像処理装置22の光軸との傾き(画像処理装置22の垂直方向の角度情報)を示す。
【0026】
安定領域42は、後述する安定領域判定手段54において検出対象である人が存在しないと判定された画像領域を示す。背景画像44は、撮影画像46との背景差分を行うための基準となる画像であって、監視領域内に人物が存在していないときの撮影画像46に基づいて制御部38により作成される。背景画像44は1枚であってもよいが、複数枚の背景画像44が作成されてもよい。
【0027】
制御部38は、組み込み型のマイクロプロセッサユニットと、ROM、RAMなどのメモリと、その周辺回路とを有し、画像処理装置22の各種信号処理を実行する。
図2に示されるように、制御部38は、判定期間設定手段50、抽出手段52、安定領域判定手段54、人判定手段56及び背景画像更新手段58としての機能を発揮する。制御部38がこれらの手段を発揮することで、撮影画像46において検出対象物である人に相当する画像領域である人領域が検出される。以下、制御部38が有する各手段について説明する。
【0028】
判定期間設定手段50は、設置状況40に基づいて安定領域42と判定するための判定期間を設定する処理を行い、撮影画像上の位置に応じて設定される判定期間を異ならせる。制御部38は、記憶部34に予め記憶された設置状況40を読み出し、撮影部32によって撮影された撮影画像全体を床面と仮定して、撮影部32の設置高H及び俯角θから撮影部32の光学中心と床面との距離Lを画素毎に算出する。例えば、逆透視変換を用いて設置高、俯角、画角とから距離Lを算出する。撮影部32と床面との距離Lの算出方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。そして、設置状況40の設置高H及び俯角θと算出された撮影部32の光学中心と床面との距離Lから撮影画像46の画素毎に安定領域と判定するための判定期間を設定する。このとき、俯角θが小さいほど判定期間を長く設定する。また、設置高Hが検出対象物の高さに応じた基準値に近づくほど判定期間を長く設定する。検出対象物の高さに応じた基準値は、検出対象物が人であれば人の身長程度の値とし、例えば200cmに設定すればよい。また、撮影部32と仮定した床面との距離Lが離れるほど判定期間を長く設定する。なお、設置高は通常、検出対象物よりも低い高さに設置されることはないが、低く設置された場合は、判定期間を設定する際、基準値で設置されたものとみなしてもよい。なお、判定期間は、画素毎ではなく、画像領域毎に設定しても良い。
【0029】
例えば、数式(1)に基づいて判定期間を設定する。本実施の形態では、判定期間は、10フレームを基準として、各画素に俯角θ、設置高H及び距離Lに基づいて設定される係数Wに応じた調整値を加えた値に設定する。
判定期間=10[フレーム]+10[フレーム]×係数W・・・(1)
【0030】
ここで、係数Wは、俯角θに応じた係数X、設置高Hに応じた係数Y及び撮影部32と床面との距離Lに応じた係数Zに基づいて算出される。例えば、係数Xは、俯角θが36°~45°の範囲を1~0の数値に変換した値とする。具体的には、例えば、係数Xは、俯角θが36°未満であれば1とし、45°より大きければ0とし、36°以上45°以下の範囲において1から0に減少する値とする。また、例えば、係数Yは、設置高Hが200cm~350cmの範囲を1~0の数値に変換した値とする。具体的には、例えば、係数Yは、設置高Hが200cm未満であれば1、350cmより大きければ0とし、200cm以上350cm以下の範囲において1から0に減少する値とする。また、例えば、係数Zは、撮影部32と床面との距離Lが500cm~1000cmの範囲を0~1に変換した値とする。具体的には、例えば、係数Zは、距離Lが500cm未満であれば0とし、1000cmより大きければ1とし、500cm以上1000cm以下の範囲において0から1に増加する値とする。このようにして算出した係数X、係数Y及び係数Zを乗算して、係数W(=X×Y×Z)を算出する。
【0031】
このような処理によって、
図4に示すように、撮影画像46の各画素に対応させて判定期間を設定することができる。
図4では、撮影部32に近い撮影画像の画像領域では判定期間が10フレームに設定され、撮影部32から離れるにしたがって11~19フレーム、20フレームと判定期間が長く設定されている。すなわち、撮影画像上における消失点に近い画素ほど、判定期間を長く設定する。撮影画像において、消失点よりも手前側の領域の判定期間は、消失点に近づくにつれて長く設定し、消失点よりも遠方の領域の判定期間は、消失点と同じ長さでよい。例えば、
図4に示すように、撮影部32に近い画像領域(画像上の下方の領域)は、撮影部32から離れるにしたがい判定期間がだんだん長くなり、消失点以降の判定期間(画像の上方の領域)は同じ長さに設定されている。なお、消失点は、撮影画像上に存在する場合や撮影画像上に存在せず撮影面に存在する場合があるが、いずれの場合でも消失点に近い画素ほど判定期間を長く設定すればよい。また、上述した数式(1)に基づく判定期間の算出をせずに、撮影画像における消失点の位置から判定期間の長さを画素毎に異ならせて設定してもよい。
【0032】
ただし、判定期間の設定方法は、上記方法に限定されるものではなく、俯角θが小さいほど、設置高Hが検出対象物の高さに応じた値に近いほど、撮影部32と床面との距離Lが離れるほど判定期間が長くなるような方法であればよい。すなわち、俯角θが小さい場合は大きい場合よりも、判定期間が長く設定されている画像領域の面積が多く、設置高Hが検出対象物の高さに応じた基準値よりも高くなるほど、判定期間が短く設定された画像領域の面積が多く、撮影部32と床面との距離Lが近い画像領域よりも遠くの画像領域ほど、判定期間が長く設定される。なお、設置高Hのみで判定する場合、撮影する監視領域は同じ領域を撮影したまま設置高Hの高さを変更した場合に本処理は有効である。なお、判定期間は、俯角θのみ、又は、設置高Hのみ、又は、距離Lのみを用いて設定してもよい。
【0033】
また、撮影部32のレンズに歪みがある場合、俯角θに対する基準範囲をレンズの歪みを考慮して設定することが好適である。例えば、係数Xを求めるための基準範囲である36°~45°をレンズの歪みに応じて変更してもよい。また、俯角θや設置高Hのみならず、撮影部32の画角やズーム率等に基づいて判定期間を設定するようにしてもよい。また、監視空間の地形データ(監視空間の3Dデータなど)から取得した床面の傾斜情報等に基づいて判定期間を設定するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施の形態では判定期間をフレーム数で設定したが、時間として設定してもよい。例えば、判定期間=10[秒]+10[秒]×係数Wとして設定してもよい。
【0035】
抽出手段52は、撮影画像46と背景画像44との背景差分に基づいて第1差分領域を抽出する。順次撮影された撮影画像46のうち1つを対象画像として、対象画像と記憶部34に予め記憶された背景画像44とを比較して、両画像間で相違する画素からなる変化領域を抽出して二値画像(変化領域画像)を求める。ここで「両画像間で相違する画素」とは、撮影画像46と背景画像44との間で輝度値又は色成分の差が所定値以上である撮影画像46の画素を意味する。
【0036】
そして、抽出された変化領域が、記憶部34に記憶された安定領域42の画像領域であるか否かを判定する。変化領域が安定領域42であると判定された場合には第1差分領域として抽出せず、変化領域が安定領域42でないと判定された場合には第1差分領域として抽出する。
【0037】
例えば、
図5に示すように、背景画像44には閉められたドアを写した領域A1が含まれており、撮影画像46には開けられて外部の光が漏れたドアを写した領域B1と監視空間に侵入した人を写した領域B2が含まれているとする。当該撮影画像46を対象画像とした場合、背景画像44との背景差分処理によって領域B1及び領域B2とに対応する画像領域がそれぞれ変化領域C1及び変化領域C2として抽出される。ここで、変化領域C1がすでに安定領域42として記憶部34に記憶されていた場合、変化領域C1は第1差分領域として抽出されず、人を写した領域B2に対応する変化領域C2のみが第1差分領域D2として抽出される。
【0038】
安定領域判定手段54は、抽出手段52にて第1差分領域が抽出された場合に安定領域42か否かを判定する処理を行う。対象画像の直前又は直後に撮影された撮影画像46と対象画像とを比較して第2差分領域(フレーム間差分領域)を抽出する。第2差分領域が抽出された場合には、第1差分領域と第2差分領域とを比較し、判定期間設定手段50にて設定された判定期間に亘って第1差分領域として抽出された画素であって、判定期間に亘って第2差分領域として抽出されなかった画素を安定領域42として設定する。設定された安定領域42は記憶部34に記憶させ、人判定手段56での処理対象から除外する。第2差分領域が抽出されなかった場合には安定領域42として設定せず、移動する人等による移動体領域として人判定手段56での処理に移行する。なお、第2差分領域を抽出するために対象画像と比較する撮影画像46は、対象画像が撮影された時刻から離れすぎてなければ、2フレーム以上前又は2フレーム以上後を対象としてもよい。また、対象画像の後に撮影された画像とは、侵入者判定処理をリアルタイムではなくリアルタイムより数秒前の撮影画像である対象画像を用いて侵入者判定処理を行う場合の対象画像よりも時間的に後に撮影された撮影画像のことである。
【0039】
例えば、
図5において変化領域C1が安定領域42とされていなかった場合、
図6に示すように変化領域C1、C2が第1差分領域D1、D2として抽出される。対象画像である撮影画像46と前後に撮影された撮影画像46とのフレーム間差分画像では動かないドアを写した変化領域C1に対応する画像領域は第2差分領域として抽出されず、移動する人を写した変化領域C2に対応する画像領域は第2差分領域E2として抽出される。そこで、判定期間設定手段50において設定された判定期間を基準の時間として、第1差分領域D1として抽出されたとしても当該判定期間を超えて第2差分領域として抽出されない領域は移動しない物体に起因するものとして安定領域42として設定する。一方、第1差分領域D2として抽出され、さらに当該判定期間を超えて第2差分領域E2として抽出された領域は移動する人等に起因する移動体領域として人判定手段56の処理対象とする。
【0040】
ここで、判定期間設定手段50において撮影部32の設置状況40に応じて判定期間を設定することで、実際には移動しているが撮影画像46では移動しておらず静止しているようにみえる画像領域を誤って安定領域42と設定することを防ぐことができる。すなわち、撮影画像上において、撮影部32の近くを撮影している画像領域よりも遠くを撮影している画像領域ほど、撮影画像の画素毎に設定される前記判定期間を長く設定することで、誤って安定領域42と設定することを防ぐことができる。例えば、撮影部32からの俯角θが小さいほど、設置高Hが検出対象物の高さに応じた値に近いほど、撮影部32と床面との距離Lが離れるほど動いている物体が静止しているようにみえ易くなるので、判定期間をより長く設定することによって動いている物体を写した画像領域を安定領域42として設定され難くしている。これによって、人等の移動する物体を写した画像領域を安定領域42と誤判定することを抑制し、さらに精度良く安定領域42を設定することができる。
【0041】
人判定手段56は、抽出手段52において抽出された第1差分領域が人であるか否かを判定する。人判定手段56における人の判定方法は、公知の様々な方法を適用することができる。例えば、予め検出対象となる人の特徴を表す特徴情報を記憶部34に記憶させておき、第1差分領域が当該特徴情報で表される特徴を満たすか否かによって当該第1差分領域が人であるか否かを判定することができる。特徴情報は、例えば、人らしい大きさ又は形状の画像領域であるか等の情報とすればよい。また、例えば、第1差分領域に識別子(ラベル)を付与するラベリング処理を行い、複数のフレームに亘って同一のラベルが付された第1差分領域の動きが人の動きの特徴を満たすか否かによって当該変化領域が人であるか否かを判定することもできる。
【0042】
人判定手段56は、第1差分領域が人であると判定された場合は通信部30を介して異常を報知して侵入者検出処理を終了し、人でないと判定された場合は報知を行うことなく侵入者検出処理を終了する。
【0043】
背景画像更新手段58は、背景画像44を更新する条件を満たしたときに撮影画像46に基づいて背景画像44を更新する。背景画像44を更新する条件は、例えば、予め設定した更新基準期間を超えて背景画像44の更新が行われず、更に対象画像の前又は後に撮影された撮影画像46と対象画像とを比較して抽出された第2差分領域(フレーム間差分領域)が当該更新基準期間に亘って閾値以下である場合に対象画像を背景画像44として更新する。
【0044】
ここで、判定期間設定手段50で設定された判定期間に応じて更新基準期間の長さを設定してもよい。例えば、判定期間が10フレームの画像領域がある場合には更新基準期間は30フレームとし、判定期間が20フレームの画像領域がある場合には更新基準期間は60フレームとすればよい。
【0045】
以下、
図7に示すフローチャートにしたがって判定期間設定処理の流れを説明する。
【0046】
ステップS10において、設置状況40に含まれる俯角θ及び設置高Hに基づいて撮影部32と床面との距離Lを算出する。そして、ステップS12において、俯角θ及び設置高Hと算出された距離Lとに基づいて撮影画像46の画素毎に安定領域42を判定するための判定期間を設定する。
【0047】
以下、
図8に示すフローチャートにしたがって侵入者判定処理の流れを説明する。
【0048】
ステップS20において、対象画像と背景画像44とを用いて背景差分して第1差分領域を抽出する。ステップS22では、ステップS20において第1差分領域が抽出されたらステップS24に処理を移行させ、抽出されなかったら侵入者判定処理を終了する。ステップS24では、フレーム間差分によって第2差分領域を抽出する。ステップS26において、第1差分領域と第2差分領域とを比較し、上記判定期間設定処理において設定された判定期間に亘って第1差分領域が抽出され、第2差分領域が抽出されなかった画素を安定領域42と判定する。ステップS28において、安定領域42と判定されなかった第1差分領域が残存しているか否かを判定する。第1差分領域が残存している場合にはステップS30に処理を移行させ、残存していない場合には侵入者判定処理を終了する。ステップS30において、安定領域42と判定されなかった第1差分領域を対象として人を写した画像領域であるか否かの判定を行い、人であった場合は警報を発報する。人でなかった場合は、侵入者判定処理を終了する。
【0049】
なお、撮影部32を、全方位(360度)を撮影領域(監視領域)とすることができる全方位カメラとしてもよい。全方位カメラは、例えば監視対象物件12の天井などに設置され、監視領域を下方とし、略鉛直下方向を光学中心とする。全方位カメラである撮影部32で撮像された撮影画像46は全方位画像であり、全体として円形の像となっており、円形の中心が光学中心に対応する位置となっている。そして、撮影画像46においては、監視領域の鉛直上方向が、撮影画像46の径方向であって光学中心から外側へ向かう方向となり、監視領域の水平方向が撮影画像46の周方向となる。監視領域に設置する際、俯角を固定(例えば、90度)して天井に設置し、光学中心が床面と垂直になる全方位カメラを適用した場合、俯角θを除いた設置高Hと距離Lに基づいて判定期間を設定すればよい。なお、光学中心が床面と垂直になるよう全方位カメラを設置した場合、判定期間は、撮影画像46の中心付近の画像領域よりも円周付近の画像領域のほうが長く設定される。
【0050】
なお、画像処理装置22は、自装置内の記憶部34に記憶された画像を画像処理するものに限定されない。例えば、他の外部装置から読み出した画像を画像処理したり、外部のカメラから受信した画像を画像処理したりする構成としてもよい。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば人等の検出対象となる移動体を写した画像領域を安定領域42と誤判定することを抑制し、精度良く安定領域42を設定することができる。
【0052】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 警備システム、12 監視対象物件、14 警備装置、16 通信網、18 警備センタ装置、20 利用者装置、22 画像処理装置、24 録画装置、30 通信部、32 撮影部、34 記憶部、38 制御部、40 設置状況、42 安定領域、44 背景画像、46 撮影画像、50 判定期間設定手段、52 抽出手段、54 安定領域判定手段、56 人判定手段、58 背景画像更新手段。