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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】成形機及び給湯装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/02 20060101AFI20221216BHJP
   B22D 17/04 20060101ALI20221216BHJP
   B22D 17/30 20060101ALI20221216BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20221216BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20221216BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B22D17/02 B
B22D17/04
B22D17/30 D
B22D17/32 A
B22D17/20 Z
B22D17/32 Z
B22D18/02 Q
B22D18/02 S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019070637
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020168640
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】野田 三郎
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131265(JP,A)
【文献】特開2014-91159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/02
B22D 17/04
B22D 17/30
B22D 17/32
B22D 17/20
B22D 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を保持する保持炉と、
前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、
前記スリーブ内を摺動するプランジャと、
一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、
を有しており、
前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、
前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、
前記連通管のうち前記保持炉から延び出ている部分を覆うとともに前記保持炉に連結されて前記隙間及び前記保持炉の内部を密閉するベローズを更に有している
成形機。
【請求項2】
溶湯を保持する保持炉と、
前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、
前記スリーブ内を摺動するプランジャと、
一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、
を有しており、
前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、
前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、
前記スリーブは、横射出式のものであり、
前記連通管内の流路の上端が、前記スリーブの側方かつ前記スリーブの内面の最下部よりも上方に位置する給湯口を介して、前記スリーブ内につながっており、これにより、前記スリーブ内の溶湯のうち前記給湯口の下方縁部よりも上方に位置する部分の前記スリーブから前記連通管への逆流が許容されており、
前記給湯口の下方縁部は、前記スリーブの中心線よりも上方に位置している
形機。
【請求項3】
溶湯を保持する保持炉と、
前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、
前記スリーブ内を摺動するプランジャと、
一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、
を有しており、
前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、
前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、
前記スリーブは、横射出式のものであり、
前記連通管内の流路の上端が、前記スリーブの側方かつ前記スリーブの内面の最下部よりも上方に位置する給湯口を介して、前記スリーブ内につながっており、これにより、前記スリーブ内の溶湯のうち前記給湯口の下方縁部よりも上方に位置する部分の前記スリーブから前記連通管への逆流が許容されており、
前記スリーブ内の湯面が前記スリーブの内面の最下部と前記給湯口の下方縁部との間の所定高さに到達したことを検出するセンサが設けられている
形機。
【請求項4】
溶湯を保持する保持炉と、
前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、
前記スリーブ内を摺動するプランジャと、
一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、
を有しており、
前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、
前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、
前記スリーブは、横射出式のものであり、
前記スリーブの内面の最下部と最上部との間の所定高さに臨んでおり、前記スリーブ内の溶湯が前記所定高さに到達したことを検出するセンサが設けられている
形機。
【請求項5】
前記保持炉内から前記連通管を介して前記スリーブへ溶湯を移送する駆動力を生じる給湯駆動部と、
前記センサによって前記スリーブ内の湯面が前記所定高さに到達したことが検出されたときに、前記連通管を流れる溶湯の速度の減速を開始するように前記給湯駆動部を制御する給湯制御部と、
を更に有している請求項3又は4に記載の成形機。
【請求項6】
前記スリーブの内部と外部との連通を許容及び禁止可能なガス抜装置と、
前記センサによって前記スリーブ内の湯面が前記所定高さに到達したことが検出されたときに、前記スリーブの内部と外部との連通を禁止するように前記ガス抜装置を制御するガス抜制御部と、
を更に有している請求項のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項7】
前記スリーブと前記連通管との連通位置よりも前記金型側の位置にて前記スリーブに開口している排気口を開閉可能なガス抜装置を更に有している
請求項1~のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項8】
前記保持炉内の気圧を上昇させることによって前記保持炉内から前記連通管を介して前記スリーブへ溶湯を移送する空圧装置を更に有している
請求項に記載の成形機。
【請求項9】
前記連通管内の溶湯を前記保持炉側から前記スリーブ側へ移送する電磁ポンプを更に有している
請求項1~のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項10】
前記連通管の前記一端側と前記スリーブとの連結によって前記連通管の前記一端側の内部と前記スリーブの内部とが前記スリーブの外面全体及び前記連通管の前記一端側の外面全体から気密に隔離されている
請求項1~9のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項11】
前記連通管のうち少なくとも前記保持炉内に位置する部分がセラミックスのみから構成されている
請求項1~10のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項12】
前記保持炉内から前記連通管を介して前記スリーブへ溶湯を移送する駆動力を生じる給湯駆動部と、
前記プランジャのチップが、前記連通管から前記スリーブへの給湯口を閉じる位置に到達したときに前記スリーブ内の溶湯の充填率が90%以上となる量の溶湯を前記スリーブへ供給するように前記給湯駆動部を制御する給湯制御部と、
を更に有している請求項1~11のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項13】
前記プランジャを駆動する射出駆動部と、
射出開始から1m/s未満の速度で前記プランジャを前進させ、前記プランジャのチップが前記給湯口を閉じる位置に到達したときに、1m/s以上の速度に向けて前記プランジャの速度が切り換えられるように前記射出駆動部を制御する射出制御部と、
を更に有している請求項12に記載の成形機。
【請求項14】
金型に通じているスリーブ及び当該スリーブ内の溶湯を前記金型内へ押し出すプランジャが、溶湯を保持する保持炉の外部に位置している成形機に用いられる給湯装置であって、
前記保持炉と、
一端側が前記スリーブに通じ、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、
を有しており、
前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止され、
前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、
前記連通管のうち前記保持炉から延び出ている部分を覆うとともに前記保持炉に連結されて前記隙間及び前記保持炉の内部を密閉するベローズを更に有している
給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形機及び当該成形機用の給湯装置に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるセミホットチャンバ式のダイカストマシンが知られている(例えば特許文献1~9)。セミホットチャンバ式では、コールドチャンバ式と同様に、金型に通じるスリーブ、及び当該スリーブ内の溶湯を金型内へ押し出すプランジャが、溶湯を貯留している保持炉の外部に設けられている。ただし、セミホットチャンバ式では、コールドチャンバ式とは異なり、ラドルによって保持炉内の溶湯を汲み上げてスリーブに注湯するのではなく、保持炉とスリーブとを連通する連通管を介してスリーブへ溶湯が供給される。
【0003】
特許文献1では、スリーブと給湯管との接合部が射出時の摩耗や振動によって破損することを防止するために、振動吸収部を備えた中継管を介して給湯管をスリーブの給湯口に連結させ、当該給湯管からスリーブへ注湯する技術を開示している。上記中継管は、ベローズによって密閉されている。また、特許文献2では、特許文献1と同様の構成において、連通管のうちの保持炉側の部分を保持炉に対して移動可能に保持する機構を設けた技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-66896号公報
【文献】特開2016-32835号公報
【文献】特開2016-22510号公報
【文献】特開2012-223778号公報
【文献】特開平4-258357号公報
【文献】特開平7-155924号公報
【文献】特開2002-113567号公報
【文献】特開2012-218048号公報
【文献】特開平9-216042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、スリーブの開口(給湯口)と給湯管との間に隙間があるから、当該隙間から溶湯が流れ出ないように、給湯口の位置は、スリーブの上面に限定される。その結果、例えば、給湯管からスリーブ内へ溶湯が注がれた時に、溶湯が跳ねやすい。さらに、特許文献1の技術では、その跳ねた溶湯が給湯管とスリーブとの間の隙間から、給湯管の外面、スリーブの外面及び/又はベローズの内面に付着するおそれがある。
【0006】
そこで、射出時に給湯管に付与される力を低減しつつ、スリーブ内の溶湯の充填率(スリーブ充填率)を高めることができる成形機及び給湯装置が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る成形機は、溶湯を保持する保持炉と、前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、前記スリーブ内を摺動するプランジャと、一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、を有しており、前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されている。当該成形機は、前記連通管のうち前記保持炉から延び出ている部分を覆うとともに前記保持炉に連結されて前記隙間及び前記保持炉の内部を密閉するベローズを更に有している。
【0008】
本開示の一態様に係る成形機は、溶湯を保持する保持炉と、前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、前記スリーブ内を摺動するプランジャと、一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、を有しており、前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、前記スリーブは、横射出式のものであり、前記連通管内の流路の上端が、前記スリーブの側方かつ前記スリーブの内面の最下部よりも上方に位置する給湯口を介して、前記スリーブ内につながっており、これにより、前記スリーブ内の溶湯のうち前記給湯口の下方縁部よりも上方に位置する部分の前記スリーブから前記連通管への逆流が許容されており、前記給湯口の下方縁部は、前記スリーブの中心線よりも上方に位置している。
【0009】
本開示の一態様に係る成形機は、溶湯を保持する保持炉と、前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、前記スリーブ内を摺動するプランジャと、一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、を有しており、前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、前記スリーブは、横射出式のものであり、前記連通管内の流路の上端が、前記スリーブの側方かつ前記スリーブの内面の最下部よりも上方に位置する給湯口を介して、前記スリーブ内につながっており、これにより、前記スリーブ内の溶湯のうち前記給湯口の下方縁部よりも上方に位置する部分の前記スリーブから前記連通管への逆流が許容されており、前記スリーブ内の湯面が前記スリーブの内面の最下部と前記給湯口の下方縁部との間の所定高さに到達したことを検出するセンサが設けられている。
【0010】
本開示の一態様に係る成形機は、溶湯を保持する保持炉と、前記保持炉の外部に位置しており、金型内に通じるスリーブと、前記スリーブ内を摺動するプランジャと、一端側が前記スリーブに通じており、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、を有しており、前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止されており、前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されており、前記スリーブは、横射出式のものであり、前記スリーブの内面の最下部と最上部との間の所定高さに臨んでおり、前記スリーブ内の溶湯が前記所定高さに到達したことを検出するセンサが設けられている。
【0011】
一例において、前記成形機は、前記保持炉内から前記連通管を介して前記スリーブへ溶湯を移送する駆動力を生じる給湯駆動部と、前記センサによって前記スリーブ内の湯面が前記所定高さに到達したことが検出されたときに、前記連通管を流れる溶湯の速度の減速を開始するように前記給湯駆動部を制御する給湯制御部と、を更に有している。
【0012】
一例において、前記成形機は、前記スリーブの内部と外部との連通を許容及び禁止可能なガス抜装置と、前記センサによって前記スリーブ内の湯面が前記所定高さに到達したことが検出されたときに、前記スリーブの内部と外部との連通を禁止するように前記ガス抜装置を制御するガス抜制御部と、を更に有している。
【0013】
一例において、前記成形機は、前記スリーブと前記連通管との連通位置よりも前記金型側の位置にて前記スリーブに開口している排気口を開閉可能なガス抜装置を更に有している。
【0014】
一例において、前記成形機は、前記保持炉内の気圧を上昇させることによって前記保持炉内から前記連通管を介して前記スリーブへ溶湯を移送する空圧装置を更に有している。
【0015】
一例において、前記成形機は、前記連通管内の溶湯を前記保持炉側から前記スリーブ側へ移送する電磁ポンプを更に有している。
【0016】
一例において、前記連通管の前記一端側と前記スリーブとの連結によって前記連通管の前記一端側の内部と前記スリーブの内部とが前記スリーブの外面全体及び前記連通管の前記一端側の外面全体から気密に隔離されている。
【0017】
一例において、前記連通管のうち少なくとも前記保持炉内に位置する部分がセラミックスのみから構成されている。
【0019】
一例において、前記成形機は、前記保持炉内から前記連通管を介して前記スリーブへ溶湯を移送する駆動力を生じる給湯駆動部と、前記プランジャのチップが、前記連通管から前記スリーブへの給湯口を閉じる位置に到達したときに前記スリーブ内の溶湯の充填率が90%以上となる量の溶湯を前記スリーブへ供給するように前記給湯駆動部を制御する給湯制御部と、を更に有している。
【0020】
一例において、前記成形機は、前記プランジャを駆動する射出駆動部と、射出開始から1m/s未満の速度で前記プランジャを前進させ、前記プランジャのチップが前記給湯口を閉じる位置に到達したときに、1m/s以上の速度に向けて前記プランジャの速度が切り換えられるように前記射出駆動部を制御する射出制御部と、を更に有している。
【0021】
本開示の一態様に係る給湯装置は、金型に通じているスリーブ及び当該スリーブ内の溶湯を前記金型内へ押し出すプランジャが、溶湯を保持する保持炉の外部に位置している成形機に用いられる給湯装置であって、前記保持炉と、一端側が前記スリーブに通じ、他端側が前記保持炉内に挿入される連通管と、を有しており、前記連通管の前記一端側と前記スリーブとは、接触及び固定の少なくとも一方によって相対変位が禁止され、前記連通管の前記他端側と前記保持炉とは、両者の間に隙間が介在して非接触であり、相対変位が許容されている。当該給湯装置は、前記連通管のうち前記保持炉から延び出ている部分を覆うとともに前記保持炉に連結されて前記隙間及び前記保持炉の内部を密閉するベローズを更に有している
【発明の効果】
【0022】
上記の構成によれば、射出時に連通管に付与される衝撃を低減しつつ、給湯口の位置の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るダイカストマシンの構成を示す模式図。
図2図1のダイカストマシンの給湯装置を示す断面図。
図3図2のIII-III線における断面図。
図4図2のIV-IV線における断面図。
図5図1のダイカストマシンにおける信号処理系の構成を示すブロック図。
図6図6(a)、図6(b)及び図6(c)は、図1のダイカストマシンにおける射出動作の一例を説明する図。
図7図1のダイカストマシンの制御装置が実行するサイクル処理の手順の一例を示すフローチャート。
図8】第2実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、紙面上下方向は鉛直方向であり、紙面左右方向及び紙面貫通方向は水平方向である。
【0025】
ダイカストマシン1は、溶融状態(液状)の金属材料(溶湯)を金型101の内部(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、金属材料を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
【0026】
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
【0027】
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
【0028】
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。また、マシン本体3は、射出装置9に溶湯を供給する給湯装置13(図1では図示省略。図2図4を参照)を有している。マシン本体3において、射出装置9及び給湯装置13以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、公知の種々の構成と同様とされて構わない。
【0029】
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。型締めが完了すると、給湯装置13は、射出装置9に1ショット分の溶湯を供給する。射出装置9は、供給された溶湯をキャビティCaへ射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際、又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
【0030】
ダイカストマシン1は、いわゆる横型締横射出式とされている。従って、例えば、金型101は、水平方向において型開閉及び型締めがなされる。また、溶湯は、後述するスリーブ21内で水平方向に流れて金型101内に充填される。なお、横型締横射出は、水平方向に傾斜する方向において型締め及び射出がなされるものを含んでよい。その場合の傾斜角は、例えば、45°以下、30°以下又は10°以下とされてよい。
【0031】
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置27(図5参照)と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17と、画像を表示する表示装置15と、を有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
【0032】
制御装置27は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置27は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置27は、型締装置7、射出装置9、押出装置11及び給湯装置13毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
【0033】
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、図示の例では、型締装置7の固定ダイプレート(符号省略)に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
【0034】
なお、制御ユニット5及びその構成要素(制御装置27等)は、マシン本体3の各装置に着目したときに、その装置の制御ユニット及び構成要素と捉えられても構わない。例えば、制御ユニット5及び制御装置27は、給湯装置13の制御ユニット及び制御装置と捉えられても構わない。
【0035】
(射出装置の概略構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側を前方、その反対側を後方ということがある。射出装置9は、スリーブ21の構成及びその動作を除いて、公知の種々の構成と同様とされて構わない。
【0036】
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状(例えば円筒状)の部材である。スリーブ21は、本開示において特に言及しない点については、基本的に、公知の種々の構成と同様とされて構わない。プランジャ23は、例えば、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
【0037】
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、給湯装置13によって1ショット分の溶湯がスリーブ21内へ供給される。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
【0038】
射出駆動部25は、液圧式のものであってもよいし、電動式のものであってもよいし、液圧式と電動式とを組み合わせたハイブリッド式のものであってもよい。液圧式の駆動部は、例えば、プランジャ23に直列に連結された射出シリンダを有している。電動式の駆動部は、例えば、回転式の電動機と、電動機の回転を直線(並進)運動に変換してプランジャ23に伝達する伝達機構とを有している、又はプランジャ23に直列に連結されたリニアモータを有している。伝達機構は、例えば、ねじ機構を含む。ハイブリッド式の駆動部は、液圧式の駆動部と電動式の駆動部とが並列に又は直列に連結(着脱可能であってもよい)されたものを有している。
【0039】
(給湯装置の概要)
図2は、給湯装置13を中心としてダイカストマシン1の一部を示す模式的な断面図である。図3は、図2のIII-III線における断面図である。図2では、給湯完了時(射出開始直前)のスリーブ21内の溶湯Mを2点鎖線のハッチングで示している。図3では、給湯完了時のスリーブ21内の溶湯Mの湯面を2点鎖線で示している。
【0040】
給湯装置13は、複数ショット分の溶湯を保持する保持炉29を有している。そして、保持炉29に貯留されている溶湯から1ショット分の溶湯がスリーブ21内に供給されて射出が行われる。保持炉29の基本的な構成(後述する連通管31との連結に係る構成を除く)は、公知の種々の構成と同様とされて構わない。保持炉29は、耐熱性の材料からなる容器を含んで構成されており、容器内の金属材料を加熱して液状に保つ。なお、保持炉29は、溶解炉を兼ねるものであってもよい。
【0041】
ダイカストマシン1(給湯装置13)は、いわゆるセミホットチャンバ式のものとされている。具体的には、スリーブ21及びプランジャ23は、コールドチャンバ式におけるものと同様に、保持炉29の外部に位置している。ただし、スリーブ21への溶湯の供給は、コールドチャンバ式とは異なり、ラドルによってなされるのではなく、スリーブ21と保持炉29とを連通する連通管31を介してなされる。
【0042】
スリーブ21及び保持炉29には、種々の部材が連結されている。このうち、連通管31は、保持炉29からスリーブ21までの溶湯の流路31aを構成し、かつ全体として基本的に剛体とみなせる部分(可撓性でない部分)を指すものとする。図示の例では、連通管31は、主として、保持炉29の外部から内部へ挿通されている給湯管33と、この給湯管33とスリーブ21とを連結しているマウスピース35とによって構成されている。給湯管33及び/又はマウスピース35に対して固定(変位が拘束)されている、基本的に剛体とみなせる部材も給湯管33の一部とみなされて構わない。換言すれば、後述するベローズ37は、連通管31に含まれない。
【0043】
給湯装置13は、上記の給湯管33及びマウスピース35の他、これらの周囲又は内部に、ベローズ37(図3)、カバー39、第1加熱具41(図3)及び第2加熱具43(図3)を有している。ベローズ37は、保持炉29内を密閉する。カバー39は、ベローズ37等を塵から保護する。第1加熱具41は給湯管33内の溶湯を加熱する。第2加熱具43はマウスピース35内の溶湯を加熱する。
【0044】
また、給湯装置13は、保持炉29の周辺に設けられる構成として、図2に示すように、空圧装置45及び湯面センサ47を有している。空圧装置45は、溶湯が保持炉29からスリーブ21へ流れるための力を溶湯に付与する。湯面センサ47は、保持炉29内の溶湯の湯面を検出する。
【0045】
さらに給湯装置13は、スリーブ21に設けられる構成として、図2に示すように、溶湯センサ49及びガス抜装置51を有している。溶湯センサ49は、スリーブ21内の溶湯の湯面が所定高さに到達したことを検知する。ガス抜装置51は、溶湯がスリーブ21内に供給されているときにスリーブ21内の気体の外部への排出を許容する。
【0046】
(給湯管)
給湯管33は、連通管31のうち保持炉29側の部分を構成する管状の部材である。給湯管33の内部は、流路31aの保持炉29側の部分を構成している。給湯管33の横断面の形状、縦断面の形状、屈曲の有無及び各種の寸法等は適宜に設定されてよい。給湯管33の内部と、マウスピース35の内部又は保持炉29の内部とを通じさせる開口(符号省略)も、給湯管33の適宜な位置(端面及び側面)に形成されてよい。図示の例では、給湯管33の大部分は、一定の内径及び外径で直線状に延びる円筒形状とされている。両端面には、開口が形成されている。上端には、マウスピース35との連結のためのフランジ(符号省略)が設けられている。下端においては、下方側ほど内径(保持炉29内に通じる開口の径)が大きくされている。
【0047】
給湯管33は、既述のように、保持炉29の外部から内部へ挿通されている。そして、下端は、保持炉29内の溶湯にその湯面から挿入されている。この給湯管33が保持炉29内の溶湯に挿入されている状態は、例えば、成形サイクルが繰り返されている間は、常時、維持されている。ただし、理論上は、少なくとも保持炉29からスリーブ21内へ溶湯を供給する間、湯面が給湯管33の下端よりも上方に位置していればよい。
【0048】
給湯管33は、より詳細には、保持炉29が有している開口29hに挿入されている。開口29hは、湯面よりも上方に位置していれば、保持炉29のいずれの位置及び/又は方向に開口していてもよい。図示の例では、開口29hは、保持炉29の上面部にて上方に開口している。なお、溶湯を連通管31内へ送り出す方法等にもよるが、例えば、保持炉29に上面部を設けずに、保持炉29の内部を上方に開放して給湯管33を溶湯に挿入したり、保持炉29の壁部のうち湯面よりも上方の部分に開口を形成して給湯管33を上記開口に挿通したりすることも可能である。
【0049】
給湯管33は、例えば、スリーブ21側の端部から下方(鉛直方向に平行とは限らない)へ延びて、保持炉29内の溶湯に至っている。給湯管33の、開口29hに挿入される部分及び/又は湯面を通過する部分は、鉛直方向に平行に延びていてもよいし、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、給湯管33は、湯面下において適宜な方向に延びていてよい。図示の例では、給湯管33は、既述のように全体が直線状に延びており、そして、鉛直方向に平行になるように配置されている。
【0050】
給湯管33は、溶湯等の熱によって短期間に溶解してしまわない限り、適宜な材料によって構成されてよい。例えば、給湯管33は、その全体がセラミックスのみから構成されている。セラミックスの具体的な種類は、公知のダイカストマシンに用いられている種々のものとされてよい。なお、給湯管33は、セラミックスと金属との複合管によって構成されても構わない。
【0051】
(マウスピース)
マウスピース35は、連通管31のうちスリーブ21側の部分を構成する中空状の部材である。マウスピース35の内部は、流路31aのスリーブ21側の部分を構成している。マウスピース35の外形(外面)の形状及び寸法は適宜に設定されてよく、図示の例では、流路31aの一部が形成された塊状(管状とは捉え難い形状)とされている。ただし、マウスピース35は、管状とされても構わない。また、マウスピース35の空間(流路31aの一部)の形状も適宜なものとされてよい。図示の例では、マウスピース35の空間の下端の形状は、給湯管33の空間の上端の形状と同じ(ここでは円形)である。マウスピース35の空間の上端の形状(給湯口32の形状)は、図2に示すように矩形である。
【0052】
スリーブ21とマウスピース35とは、両者の間に隙間が生じないように連結されている。すなわち、スリーブ21とマウスピース35とは、スリーブ21の内部及びマウスピース35の内部がスリーブ21の外面全体及び連通管31の外面全体から気密に隔離されるように連結されている。従って、溶湯がいずれの方向に流れたり、飛散したりしても、スリーブ21の外面及び/又はマウスピース35の外面には溶湯は触れない。
【0053】
スリーブ21の軸回りの面には空所21b(切欠き。図3)が形成されている。マウスピース35は、この空所21bに嵌合する部分を含み、スリーブ21と共にプランジャ23が摺動する摺動面を構成している。なお、マウスピース35は、スリーブ21の一部に兼用されていると捉えられてもよいが、本実施形態の説明では、スリーブ21とマウスピース35とは別の部材として説明する。
【0054】
空所21bの位置、形状及び寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、空所21bは、スリーブ21の側面にてスリーブ21の後端を切り欠く切欠きとされている。その大きさは、例えば、スリーブ21の軸回りの180°の範囲よりは狭く、空所21bの全体は、スリーブ21の中心線CL(図3)よりも側方に位置している。また、図示の例では、空所21bの軸回りの大きさは、比較的大きくされている。例えば、スリーブ21の内面において、空所21bは、90°以上又は150°以上とされてよい。
【0055】
なお、特に図示しないが、上記とは異なり、空所21bは、比較的小さくされてもよい。また、空所21bは、切欠きではなく、孔によって構成されていてもよい。換言すれば、空所21bは、スリーブ21の後端よりも前方に位置していてもよい。また、スリーブ21は、マウスピース35が嵌合する空所21bを有さない構成であってもよい。例えば、マウスピース35は、スリーブ21の外面に当接するだけの、スリーブ21の摺動面を構成しない構成であってもよい。
【0056】
マウスピース35の材料は、溶湯等の熱によって短期間に溶解してしまわない限り、適宜な材料によって構成されてよい。例えば、マウスピース35は、金属のみによって構成されていてもよいし、セラミックスのみによって構成されていてもよいし、金属とセラミックスとを組み合わせて構成されていてもよい。金属及びセラミックスの具体的な種類は、公知のダイカストマシンに用いられている種々のものとされてよい。
【0057】
マウスピース35の外面は、断熱層53(図3)によって覆われていてよい。この断熱層53は、マウスピース35の一部と捉えられてもよいが、本実施形態の説明では、便宜上、マウスピース35とは別の部材であるものとする。断熱層53は、例えば、無機材料を用いた板又は布(繊維)とされてよい。
【0058】
(連通管の連結構造及び連通管と保持炉との隙間)
連通管31(より詳細には給湯管33)と、保持炉29との間には隙間G(図3)が介在しており、両者は非接触である。すなわち、両者の相対変位は許容されている。従って、例えば、射出時の衝撃がスリーブ21から連通管31(マウスピース35)に伝わったときに、連通管31は、保持炉29から反力を受けて変形する代わりに、保持炉29に対して変位する。その結果、連通管31に加えられる力が低減され、連通管31の破損の蓋然性が低下する。
【0059】
より詳細には、例えば、連通管31は、一端側部分(マウスピース35)がスリーブ21に固定されており、片持ち梁のように支持されている。すなわち、連通管31の一端側部分は固定端とされており、連通管31の他端側部分(給湯管33)は自由端とされている。これにより、連通管31の保持炉29に対する非接触状態での挿入が実現されている。
【0060】
隙間Gの大きさは適宜に設定されてよい。例えば、隙間Gの大きさは、連通管31の開口29h内の部分の、成形サイクル中に生じ得る変位よりも大きくなるように、実験等に基づいて設定されてよい。
【0061】
スリーブ21とマウスピース35との固定(変位の禁止)は、適宜な方法によりなされてよい。図3の例では、まず、既述のように、マウスピース35がスリーブ21の空所21bに嵌合(別の観点では接触)することによって両者の相対変位は禁止されている。さらに、マウスピース35に挿通されたボルト55(図3)がスリーブ21に形成された雌ねじ(符号省略)に螺合することによって、マウスピース35とスリーブ21とは固定されている。
【0062】
なお、マウスピース35とスリーブ21との間に耐熱性のパッキンを介在させることなどによって両者を互いに当接しないようにすることも可能である。また、断熱層53は、座金の代替物として機能してよい。上記のようなパッキン及び座金の代替物は、厳密には、その変形によってマウスピース35とスリーブ21との微小な変位を許容し得る。本実施形態の説明では、そのような微小な変位が生じる態様も、マウスピース35とスリーブ21とが互いに固定されている(両者の変位が禁止されている)という概念に含まれるものとする。ここでいう微小な変位は、例えば、射出時の衝撃によって生じる変位よりも小さい変位である。後述するマウスピース35と給湯管33との固定(両者の変位の禁止)、並びに他の部材同士の固定についても、同様であるものとする。
【0063】
マウスピース35と給湯管33との固定(変位の禁止)も適宜な方法によりなされてよい。図3の例では、特に符号を付さないが、マウスピース35に形成された凹部に給湯管33の上端が嵌合されて、両者は互いに接触している。また、給湯管33のフランジ(符号省略)に対して下方から係合する固定部材57に下方から挿通されたボルト59がマウスピース35に設けられた雌ねじ(符号省略)に螺合することによって、マウスピース35と給湯管33とは固定されている。
【0064】
固定部材57は、例えば、環状の部材である。また、固定部材57は、例えば、給湯管33のフランジが嵌合する凹部を有しており、フランジの周囲を囲んでいる。固定部材57の材料は適宜なものとされてよく、例えば、金属、セラミックス又は両者の組み合わせである。マウスピース35と給湯管33のフランジとの間、マウスピース35と固定部材57との間には、断熱層53及び耐熱性のパッキン61が介在している。パッキン61は、例えば、無機材料からなる板又は布(繊維)によって構成されている。なお、マウスピース35と給湯管33との間に耐熱性の材料を介在させることなどによって両者を当接しないようにすることも可能である。
【0065】
(溶湯の流路及び堰)
連通管31内の流路31aの経路は適宜に設定されてよい。例えば、図3の例では、流路31aは、保持炉29内(より詳細には湯面下)の適宜な位置からスリーブ21に到達するまで、上方(鉛直方向とは限らない)及び水平方向の少なくとも一方へのみ延びている。換言すれば、流路31aは、その上端が給湯口32を介してスリーブ21内に通じている構成である。より詳細には、流路31aは、その下端から鉛直方向に平行に上方へ延び、スリーブ21の高さに到達した後に曲がり、水平方向に少し延びて給湯口32に至っている。ただし、図示の例とは異なり、流路31aの適宜な位置に、下方(鉛直方向とは限らない)へ延びる部分を設けることも可能である。
【0066】
連通管31(流路31a)とスリーブ21との境界の給湯口32は、図示の例では、マウスピース35に形成されている。ただし、給湯口32は、スリーブ21に形成されていてもよい。本実施形態の説明では、給湯口32のスリーブ21に対する位置を説明するときに、便宜上、給湯口32がスリーブ21に設けられているかのように表現することがある。給湯口32は、スリーブ21の上方、側方及び下方のいずれに開口していてもよい。図示の例では、給湯口32は、スリーブ21の側方に位置しており、より詳細には、内面の最下部よりも上方に位置している。
【0067】
この場合、例えば、スリーブ21内の湯面高さが給湯口32の下方縁部よりも上方に位置するまでスリーブ21に溶湯を供給し、その後、流路31a内の湯面高さを給湯口32の下方縁部よりも低くすると、スリーブ21内の溶湯は流路31a内に流れ落ち(逆流し)、スリーブ21内の湯面は給湯口32の下方縁部の高さと同一になる。それ以上の逆流は、給湯口32の下方縁部が堰として機能して規制される。従って、予め給湯口32の下方縁部の高さを適宜な高さにしておくことにより、1ショット分の溶湯を計量することができる。
【0068】
より詳細には、図2に示すように、プランジャ23を給湯口32の少なくとも一部よりも後方の待機位置に位置させた状態で、スリーブ21内に溶湯を供給する(給湯する。)。このとき、上記のようにスリーブ21内の溶湯の湯面が給湯口32の下方縁部に一致するようにして溶湯を計量した場合においては、スリーブ21内の溶湯の量は、主として、給湯口32の下方縁部の高さ、スリーブ21の径及びスリーブ21の長さによって決まる。これらの値は、金型101の形状に応じた湯量が実現されるように適宜に設定されてよい。上記のスリーブ21の長さは、厳密には、移動金型105のスリーブ21側の面から、スリーブ21内へ給湯しているときのプランジャチップ23aの前面までの距離である。当該距離は、射出駆動部25によるプランジャ23の位置制御によって目標の湯量に応じて調整されてもよい。
【0069】
給湯口32の形状及び寸法は、適宜な形状とされてよい。既に述べたように、図2の例では、給湯口32は矩形とされている。別の観点では、給湯口32の下方縁部は水平である。この場合、スリーブ21内の湯面の高さと給湯口32の下方縁部の高さとの差に対する溶湯の流量を大きくしやすい。
【0070】
給湯口32の下方縁部の高さは適宜に設定されてよい。例えば、給湯口32の下方縁部の位置は、比較的高い位置とされてよく、一例として、スリーブ21の中心線CLよりも上方の位置とされてよい。別の観点では、スリーブ21内の溶湯の湯面の高さが給湯口32の下方縁部の高さと同一になったときのスリーブ21における充填率(スリーブ21のうちのプランジャ23よりも前方の容積に溶湯が占める割合)は比較的高くされてよい。例えば、当該充填率は、50%以上、70%以上、80%以上又は90%以上とされてよい。なお、このような充填率と所望の湯量とが実現されるように、給湯口32の下方縁部の位置だけでなく、スリーブ21の径及びスリーブ21の長さ(プランジャ23の位置)が調整されてよいことはもちろんである。
【0071】
上記のようにスリーブ21内の溶湯の湯面が給湯口32の下方縁部に一致するようにして溶湯を計量した後、図2の位置からプランジャ23を前進させると、移動金型105のスリーブ21側の面からプランジャ23までの距離が短くなることなどによって、スリーブ21内の湯面が上昇する。その結果、スリーブ21内の溶湯が流路31a内に逆流する。給湯口32の下方縁部の位置、スリーブ21の径及びスリーブ21の長さ(プランジャ23の位置)は、この逆流による減少が生じたときに所望の湯量となるように調整されてもよい。また、流路31a内の湯面を給湯口32の下方縁部以上の高さにして逆流を低減してもよい。
【0072】
さらにプランジャ23が前進すると、プランジャチップ23aによって給湯口32は閉じられる。プランジャ23の前進によってスリーブ21内の湯面は上昇しているから、このときのスリーブ21内の充填率は、上述したスリーブ21内の溶湯の湯面の高さが給湯口32の下方縁部の高さと同一になったときの充填率よりも高い。このときの充填率は、例えば、60%以上、80%以上、90%以上又は(略)100%とされてよい。
【0073】
なお、プランジャチップ23aが給湯口32を閉じるという場合、例えば、プランジャチップ23aの摺動面(外周面)の前方(金型101側)縁部が給湯口32の前方縁部に到達することを指すと捉えられてよい。プランジャチップ23aの前後方向の長さが給湯口32の前後方向の径よりも大きくされ、プランジャチップ23aの摺動面が給湯口32の全体に対向することは必ずしも必要ではない。
【0074】
(ベローズ)
図3に示すベローズ37は、例えば、金属により構成されており、また、比較的薄く形成されていること、蛇腹状に形成されていることから、伸縮及び撓みに係る弾性域における変形量が比較的大きくなっている。また、別の観点では、ベローズ37は、連通管31(給湯管33)に比較して、伸縮又は撓みに係るばね定数が十分に小さい。ベローズ37の具体的な材料、形状及び寸法は適宜に設定されてよい。
【0075】
ベローズ37は、連通管31(給湯管33)のうち保持炉29から延び出ている部分を覆っている。ベローズ37の一端(上端)は、連通管31の保持炉29から離れた部分(マウスピース35)に対して気密に(ベローズ37の内部が密閉されるように)固定されている。ベローズ37の他端(下端)は、開口29hを囲むように保持炉29に対して気密に(ベローズ37の内部が密閉されるように)固定されている。これにより、給湯管33の周囲(ベローズ37の内部)から隙間Gを介して保持炉29内に至る空間は密閉されている。
【0076】
ベローズ37の連通管31に対する固定位置は、適宜な位置とされてよい。ただし、当該固定位置は、連通管31の下端から離れるほど、ベローズ37が連通管31の保持炉29に対する変位に影響を及ぼす蓋然性が低下する。図示の例では、ベローズ37は、給湯管33の上端及びマウスピース35の下端に対して固定されている。
【0077】
ベローズ37の連通管31及び保持炉29に対する固定方法は、適宜なものとされてよい。図示の例では、ベローズ37は、両端にフランジ(図示省略)を有している。フランジは、例えば、蛇腹部分の厚みよりも厚くされている。上端のフランジには、既述のボルト59が挿通されている。これにより、上端のフランジは、固定部材57と共にマウスピース35に締結されている。上端のフランジと固定部材57との間には、耐熱性のパッキン63が配置されてもよい。また、下端のフランジには、ボルト65が挿通されて、保持炉29に螺合されている。下端のフランジと保持炉29との間には、耐熱性のパッキン67が配置されてもよい。
【0078】
(カバー)
カバー39は、例えば、金属又はセラミックスによって構成された筒状の部材である。カバー39は、例えば、保持炉29の外部において、連通管31のうちの適宜な部位を覆ってよく、図示の例では、給湯管33のうちの保持炉29の外部に延び出ている部分の大部分を覆っている。カバー39は、例えば、連通管31に固定されている一方で、保持炉29に対しては固定されていない。より詳細には、図示の例では、カバー39は、上端が固定部材57に固定されている。カバー39の連通管31に対する固定方法は、締結、係合又は接合等の適宜なものとされてよい。
【0079】
(加熱具)
第1加熱具41及び第2加熱具43は、例えば、金属製の線材が流路31aの回りに巻き回されて構成されたコイルによって構成されており、誘導加熱によって流路31a内の溶湯を加熱する。これにより、例えば、溶湯が保持炉29からスリーブ21へ流れる過程における溶湯の温度低下が低減される。第1加熱具41は、例えば、給湯管33のうち保持炉29から延び出ている部分を囲むように設けられている。ベローズ37は、第1加熱具41を覆っており、第1加熱具41の保護にも寄与している。第2加熱具43は、例えば、マウスピース35に埋設されている。
【0080】
(空圧装置及び湯面センサ)
空圧装置45は、密閉されている保持炉29に気体を供給して保持炉29内を加圧する。これにより、保持炉29内の溶湯の湯面(給湯管33内を除く。以下、特に断りが無い限り同様。)には大気圧よりも高い圧力が付与される。一方、連通管31内は、スリーブ21及びガス抜装置51等を介して外部に通じており、連通管31内の溶湯の湯面における圧力は概ね大気圧と同等とされている。従って、保持炉29内の溶湯の湯面が空圧装置45からの気体によって加圧されると、連通管31内の湯面は上昇し、給湯口32に至る。これにより、溶湯がスリーブ21内へ供給される。
【0081】
空圧装置45は、例えば、特に図示しないが、空圧源、空圧源から保持炉29への気体の流れを制御するバルブ、保持炉29からの気体の排出を制御するバルブ、気体の圧力を検出する不図示の圧力センサ等を含んで構成されている。空圧源は、例えば、ポンプ、アキュムレータ及び/又はボンベを含む。気体は、窒素等の不活性ガスであってもよいし、空気であってもよい。なお、上記の気体の種類から理解されるように、本実施形態の説明では、気体が空気でない場合においても、一般に広く用いられている空圧の語を用いている。
【0082】
湯面センサ47は、保持炉29内の湯面高さを計測できる限り、適宜な構成とされてよい。図示の例では、湯面センサ47は、湯面の上方から湯面高さを検出する非接触式のものとされている。非接触式の湯面センサとしては、例えば、光学式又は超音波式のものを挙げることができる。もちろん、湯面センサ47は、接触式のものであってもよい。接触式の湯面センサとしては、溶湯に浮かぶフロートと、フロートに連結された位置センサ又は角度センサとによって構成されるものを挙げることができる。
【0083】
湯面センサ47は、種々の用途に用いられてよい。例えば、制御装置27は、湯面センサ47によって検出される湯面高さによって、保持炉29から連通管31及びスリーブ21へ移送された溶湯の量を特定することができる。また、溶湯をスリーブ21の高さまで押し上げる力は、給湯前の保持炉29内の湯面の高さによって変化する。従って、例えば、制御装置27は、湯面センサ47の検出値に基づいて、給湯前の保持炉29内の湯面の高さの変化に応じて、空圧装置45によって保持炉29内の圧力を上昇させるときの圧力の目標値を更新してよい。又は、制御装置27は、給湯前の保持炉29内の湯面の高さが複数の成形サイクルに亘って一定になるように、湯面センサ47の検出値に基づいて、不図示の装置によって、保持炉29の湯面下の容積を縮小したり、又は金属材料を保持炉29内に補給したりしてよい。
【0084】
(溶湯センサ)
図4は、図2のIV-IV線における断面図である。
【0085】
図2及び図4に示すように、溶湯センサ49は、例えば、スリーブ21の内部の最下部から最上部までの間の所定高さの位置に対して臨んでおり(例えば露出しており)、溶湯が溶湯センサ49の高さに到達したことを検出することにより、スリーブ21内の溶湯の湯面が所定高さに到達したことを検出する。この高さは、例えば、給湯口32の下方縁部よりも下方の位置である。図4では、給湯口32の下方縁部の位置と、溶湯センサ49によって検出される湯面高さとをそれぞれ2点鎖線で示している。
【0086】
このような溶湯センサ49の構成は適宜なものとされてよい。例えば、溶湯センサ49は、1対の電極からなり、溶湯が到達することによって通電して信号を出力するものとされてよい。また、溶湯センサ49は、温度が所定値を超えたときに信号を出力する温度センサとされたり、圧力が所定値を超えたときに信号を出力する圧力センサとされたりすることも可能である。なお、本実施形態とは異なり、溶湯センサ49は、湯面センサ47のように、任意の湯面高さを計測可能なものとされてもよい。
【0087】
溶湯センサ49は、例えば、マウスピース35(連通管31)に設けられている。これにより、溶湯センサ49は、スリーブ21に対して固定的に設けられている。なお、溶湯センサ49は、スリーブ21に直接に設けられていてもよい。スリーブ21は、射出装置9の一部であるが、溶湯センサ49は、スリーブ21に設けられている場合も、給湯装置13の一部と捉えられてよい。
【0088】
(ガス抜装置)
ガス抜装置51は、例えば、給湯口32よりも金型101側の位置にてスリーブ21の内部と外部との連通を許容及び禁止する。より詳細には、例えば、図4に示すように、スリーブ21及びマウスピース35(いずれか一方とされてもよい。)は、スリーブ21の内部と外部とを連通する排気口69を有している。そして、ガス抜装置51は、排気口69を閉塞可能な弁体71と、当該弁体71を駆動するアクチュエータ73とを有している。
【0089】
排気口69は、例えば、スリーブ21の内面の最上部に位置している。これにより、例えば、スリーブ21内の溶湯の充填率が比較的高くなるまでスリーブ21内の排気を行うことができる。
【0090】
弁体71の形状は適宜なものとされてよい。図示の例では、弁体71は、排気口69に挿入されて嵌合する形状とされている。この他、弁体71は、公知のバルブの種々の形状の弁体とされてよい。
【0091】
アクチュエータ73は、排気口69及び弁体71の構成に応じた適宜なものとされてよい。図示の例では、アクチュエータ73は、排気口69の開口方向における直線運動を弁体71に伝えて、弁体71の排気口69に対する挿入及び引抜きを行うものとされている。アクチュエータ73の構成は適宜なものとされてよく、例えば、ソレノイド(モータ)又は空圧シリンダによって構成されてよい。
【0092】
(信号処理系の構成)
図5は、ダイカストマシン1における信号処理系の構成を模式的に示すブロック図である。
【0093】
制御装置27は、例えば、特に図示しないが、CPU、RAM、ROM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の制御乃至は演算を担う複数の機能部(27a~27d)が構築される。
【0094】
複数の機能部のうち、成形条件設定部27aは、入力装置17からの信号に基づいて、射出速度等の種々の成形条件を設定する。給湯制御部27bは、給湯装置13のうちの給湯を直接的に担う部分(例えば空圧装置45)を制御する。ガス抜制御部27cは、ガス抜装置51を制御する。射出制御部27dは、射出駆動部25を制御する。これらの制御の詳細については、後述する動作の説明(図7等)において説明する。
【0095】
ダイカストマシン1は、制御装置27に信号を入力する要素として、既述の入力装置17、湯面センサ47及び溶湯センサ49の他、プランジャ23の位置を検出する位置センサ75を有している。位置センサ75の構成は、公知の種々のダイカストマシンにおける位置センサの構成と同様とされてよい。例えば、位置センサ75は、光学式又は磁気式のリニアエンコーダによって構成されてよい。位置センサ75又は制御装置27は、概念的には、プランジャ23の位置の微分によってプランジャ23の速度を取得(検出)することが可能である。従って、位置センサ75は、速度センサと捉えられてもよい。
【0096】
(射出動作の一例)
図6(a)は、ダイカストマシン1における射出動作の一例を示す線図である。また、図6(b)及び図6(c)は、射出動作中におけるスリーブ21内の様子を示す模式的な断面図である。
【0097】
図6(a)において、横軸は時間を示しており、矢印で示すように、時間が経過するほど、プロットされる点は紙面左側に位置する。紙面右側の縦軸は、射出速度(プランジャ23の速度)を示している。紙面左側の縦軸は、スリーブ21内の溶湯の充填率を示している。線Lvは、射出速度の経時変化を示している。線Lrは、スリーブ21内の溶湯の充填率の経時変化を示している。
【0098】
図6(a)の時点t0は、図6(b)に示すように、スリーブ21内への給湯が完了した時点である。このとき、溶湯Mの湯面は、例えば、給湯口32の下方縁部に一致している。図示の例では、給湯口32の下方縁部は、スリーブ21に対して比較的高い位置に位置しており、このときのスリーブ21内の溶湯の充填率rは比較的高い。
【0099】
プランジャ23の前進開始時(時点t0~t1)においては、制御装置27(射出制御部27d)は、比較的低速でプランジャ23を前進させるように射出駆動部25を制御する。このときのプランジャ23の速度は、例えば、1m/s未満である。このように射出速度Vを比較的低速にすることにより、例えば、溶湯によるスリーブ21内の気体の巻き込みが低減される。このときのプランジャ23の速度は、図示の例のように、時点t0~t1に亘って上昇していてもよいし、図示の例とは異なり、所定の時点で一定速度になってもよい。
【0100】
図6(a)の時点t1は、図6(c)に示すように、プランジャ23によって給湯口32が閉じられた時点である。このとき、図示の例では、スリーブ21内の溶湯の充填率rは比較的高い。例えば、充填率rは、概ね100%となっている。別の観点では、射出速度を高速にしても、溶湯による気体の巻き込みは生じ難い状態となっている。
【0101】
そして、時点t1において、制御装置27(射出制御部27d)は、射出速度Vを比較的高速かつ一定の高速射出速度Vに切り換える。高速射出速度Vは、例えば、1m/s以上である。このように射出速度Vを比較的高速にすることにより、例えば、溶湯の凝固に遅れずに溶湯をキャビティCaに充填することができる。
【0102】
その後の動作は、公知の種々のダイカストマシンにおける動作と同様とされてよい。例えば、時点t2では、溶湯がキャビティCaに概ね充填されることによってプランジャ23は溶湯から反力を受ける。その結果、射出速度Vは急激に低下し、その後、停止する(時点t3)。なお、時点t2以後の所定期間に亘って減速制御が行われてもよい。特に図示しないが、時点t2以後においては、プランジャ23が溶湯に付与する圧力(射出圧力)は急激に上昇し、やがて所定の鋳造圧力に到達する。そして、その鋳造圧力が維持されるように射出駆動部25が制御される。
【0103】
射出制御部27dは、例えば、入力装置17からの信号に基づいて、プランジャ23が給湯口32を閉じる位置の情報を取得してよい。高速射出速度V及びそれ以前の速度の値等は、入力装置17に対する信号に基づいて制御装置27(成形条件設定部27a)が設定する。
【0104】
プランジャ23の速度は、例えば、位置センサ75の検出値に基づいてフィードバック制御されてよい。このフィードバック制御は、プランジャ23の速度自体の偏差に基づく通常の速度フィードバック制御であってもよいし、所定の時間刻みで時々刻々と更新される目標位置と現時点の位置との偏差に基づく位置フィードバック制御によって実現される速度フィードバック制御であってもよい。
【0105】
速度フィードバック制御が、速度自体の偏差に基づいて行われる場合、射出制御部27dは、例えば、位置センサ75の検出するプランジャ23の位置に基づいて、プランジャ23が給湯口32を閉じる位置に到達したか否か判定し、到達したと判定したときに目標速度を変更する。また、前進開始(時点t0)から高速射出(時点t1~t2)へ引き続き、時々刻々と更新される目標位置に対する位置フィードバック制御によって実質的に速度フィードバック制御が行われる場合においては、例えば、目標位置の時系列データに基づいて制御がなされた結果として、プランジャ23が給湯口32を閉じる位置に到達したときに、プランジャ23の速度が切り換えられる。換言すれば、プランジャ23が給湯口32を閉じたか否かの判定はなされない。
【0106】
(フローチャート)
図7は、制御装置27が実行するサイクル処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、鋳造サイクル毎に行われる。ここでは、スリーブ21内への給湯から高速射出まで(時点t1~t2)までの動作についてのみ示す。すなわち、給湯よりも前における型閉じ及び型締め、並びに高速射出の後における昇圧・保圧、型開き、押出し等については基本的に説明を省略する。説明が省略された動作は、公知の動作と同様とされて構わない。
【0107】
所定の給湯開始条件が満たされると、制御装置27(給湯制御部27b)は、スリーブ21内への給湯を開始する(ステップST1)。具体的には、本実施形態では、給湯制御部27bは、保持炉29内に気体を供給して保持炉29内の溶湯の湯面を加圧するように空圧装置45を制御する。給湯開始条件は、例えば、型締めが完了したことなどである。
【0108】
このときの連通管31を流れる溶湯の速度は適宜に制御されてよい。例えば、給湯制御部27bは、湯面センサ47の検出値から溶湯の速度を特定し、この速度に基づくフィードバック制御を行ってよい。また、例えば、給湯制御部27bは、保持炉29内の圧力を溶湯の所望の速度に応じた変化率で上昇させていくオープン制御(ただし、圧力自体はフィードバック制御されてもよい。)によって所望の速度で給湯が行われるようにしてもよい。溶湯の速度(ステップST1~ST5)は、例えば、入力装置17に対する操作に基づいて設定されてよい。
【0109】
ここでは図示していないが、少なくともステップST1以後、制御装置27(ガス抜制御部27c)は、スリーブ21内からの気体の排出を許容するようにガス抜装置51を制御している。これにより、保持炉29からの溶湯の供給に伴い、連通管31及びスリーブ21の内部の気体は、ガス抜装置51を介してスリーブ21から排出される。
【0110】
ステップST2では、給湯制御部27bは、溶湯センサ49によってスリーブ21内の湯面が所定高さに到達したことが検出されたか否か判定する。否定判定のときは、給湯制御部27bは、現在の溶湯の速度を維持する、又は速度の上昇を維持する。肯定判定のときは、給湯制御部27bは、ステップST3に進む。
【0111】
ステップST3では、給湯制御部27bは、連通管31を流れる溶湯の速度を減じる減速を開始するように空圧装置45を制御する。既述のように、本実施形態では、溶湯センサ49は、湯面が給湯口32の下方縁部よりも下方の所定高さに到達したことを検出するから、減速は、湯面が給湯口32の下方縁部に到達する前に開始される。減速は、具体的には、本実施形態では、保持炉29内の圧力の上昇の変化率を低減することによって実現される。減速の加速度等は、入力装置17に対する操作によって設定されてもよいし、制御装置27が適宜な情報に基づいて設定してもよい。
【0112】
ステップST4では、制御装置27(ガス抜制御部27c)は、スリーブ21からの気体の排出を禁止するようにガス抜装置51を制御する。なお、ステップST4は、ステップST3と同様に、ステップST2の肯定判定を条件に開始される処理である。図7では、ステップST3の後にステップST4が示されているが、両者の順序は任意である。
【0113】
所定の給湯停止条件が満たされると、給湯制御部27bは、保持炉29からスリーブ21への給湯を停止する(ステップST5)。給湯停止条件は、例えば、湯面センサ47の検出値に基づく溶湯の供給量が所定値に到達したこととされてよい。当該所定値は、例えば、入力装置17に対する操作に基づいて制御装置27によって設定されてよく、また、スリーブ21内の湯面の高さが給湯口32の下方縁部よりも若干高い位置となるように設定されている。給湯の停止は、本実施形態では、空圧装置45による保持炉29内の圧力の上昇を停止して圧力を一定に保つことによって実現される。
【0114】
ステップST6では、給湯制御部27bは、連通管31内の湯面を下げ、スリーブ21内の溶湯の連通管31内への逆流を許容する。これにより、スリーブ21内の湯面は給湯口32の下方縁部の高さに一致し、溶湯の再計量が行われる。連通管31内の湯面を下げる動作は、本実施形態では、空圧装置45によって保持炉29内の圧力を下げることによって実現される。
【0115】
ステップST7では、制御装置27(射出制御部27d)は、射出を開始する。すなわち、プランジャ23の前進を開始するように射出駆動部25を制御する。このときの速度は、図6(a)を参照して説明したように、比較的低速である。
【0116】
ステップST8では、射出制御部27dは、プランジャ23が給湯口32を閉じる位置へ到達したか否か判定し、否定判定のときは比較的低速の速度を維持し、肯定判定のときは(時点t1)、ステップST9に進む。
【0117】
ステップST9では、射出制御部27dは、図6(a)を参照して説明したように、プランジャ23の速度を高速射出速度Vに切り換えて高速射出を行う。なお、既述のように、概念的には、ステップST8で肯定判定がなされたときに高速射出が開始されるが、実際には、そのような判定はなされなくてもよい。
【0118】
以上のとおり、本実施形態では、ダイカストマシン1は、保持炉29と、スリーブ21と、プランジャ23と、連通管31とを有している。保持炉29は、溶湯を保持する。スリーブ21は、保持炉29の外部に位置しており、金型101内に通じる。プランジャ23は、スリーブ21内を摺動する。連通管31は、一端側(マウスピース35)がスリーブ21内に通じており、他端側(給湯管33)が保持炉29内に挿入される。連通管31(マウスピース35)とスリーブ21とは、接触及び固定の少なくとも一方(本実施形態では双方)によって相対変位が禁止されている。連通管31(給湯管33)と保持炉29とは、両者の間に隙間Gが介在して非接触であり、相対変位が許容されている。
【0119】
従って、例えば、既述のように、射出時の衝撃がスリーブ21から連通管31(マウスピース35)に伝わったときに、連通管31は、保持炉29から反力を受けて変形する代わりに、保持炉29に対して変位する。その結果、連通管31に作用する力が低減され、連通管31の破損の蓋然性が低下する。
【0120】
このように、連通管31の保持炉29側において衝撃に対する対策がなされることから、連通管31のスリーブ21側においては、衝撃に備えて連通管31とスリーブ21との間に隙間を設ける必要性は低い。本実施形態とは異なり、連通管31とスリーブ21との間に隙間を構成するためには、隙間から溶湯が流れ出ないように、スリーブ21の上面に給湯口を設けなければならない。しかし、本実施形態では、そのような制約は無く、給湯口32は、スリーブ21の上面、側面及び下面のいずれに設けられてもよい。このように、本実施形態では、連通管31のスリーブ21側の設計の自由度が向上する。
【0121】
また、本実施形態では、スリーブ21及び連通管31の連結によってスリーブ21の内部と連通管31(マウスピース35)の内部とは、スリーブ21の外面全体及び連通管31の外面全体から気密に隔離されている。
【0122】
換言すれば、本実施形態では、連通管31とスリーブ21との間に隙間は構成されておらず、溶湯がそのような隙間に流れ出たり、飛散したりすることを考慮した設計は不要である。その結果、例えば、既述のように、給湯口32をスリーブ21に対して任意の位置に設けることができる。
【0123】
また、本実施形態では、連通管31のうち保持炉29内に位置する部分(給湯管33)は、セラミックスのみから構成されてよい。
【0124】
この場合、例えば、金属を含む給湯管33が溶湯に浸される態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して溶損の課題が生じ難い。従来は、射出時の衝撃に耐えるために、給湯管33は、セラミックスと金属との複合管によって実現されていた。本実施形態では、上記のように、給湯管33を保持炉29に対して非接触とし、射出時の衝撃を逃がすことができることから、給湯管33をセラミックスのみから構成することができる。
【0125】
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、連通管31のうち保持炉29から延び出ている部分を覆うとともに保持炉29に連結されて隙間G及び保持炉29の内部を密閉するベローズ37を更に有している。
【0126】
従って、例えば、隙間Gから塵などが保持炉29内に入る蓋然性を低減できる。保持炉29内の湯面上に不活性ガスを満たして溶湯の酸化を低減することもできる。さらに、保持炉29が密閉されることから、溶湯の湯面を気体によって加圧する空圧式の給湯方法を採用することができる。
【0127】
また、本実施形態では、スリーブ21は、横射出式のものである。連通管31内の流路31aの上端が給湯口32を介してスリーブ21内につながっている。給湯口32は、スリーブ21の側方かつスリーブ21の内面の最下部よりも上方に位置している。これにより、スリーブ21内の溶湯のうち給湯口32の下方縁部よりも上方に位置する部分のスリーブ21から連通管31への逆流が許容されている。給湯口32の下方縁部は、スリーブ21の中心線CLよりも上方に位置している。
【0128】
従って、堰として機能する給湯口32の下方縁部によって溶湯の計量の精度を向上させつつ、計量直後におけるスリーブ21内の溶湯の充填率を比較的高くすることができる。充填率を高くすることによって、例えば、溶湯による気体の巻き込みを低減し、製品の品質を向上させることができる。射出時の衝撃を連通管31の保持炉29側において逃がすこととし、連通管31とスリーブ21との連通位置の自由度を向上させたことから、このような構成の採用が容易化される。
【0129】
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、横射出式のスリーブ21の内面の最下部と最上部との間の所定高さに臨んでおり、スリーブ21内の溶湯が前記所定高さに到達したことを検出する溶湯センサ49を有している。
【0130】
この場合、例えば、スリーブ21内の溶湯の湯面を正確に検出することができる。ひいては、例えば、スリーブ21内の溶湯の湯面に基づいて行われる処理の精度を向上させることができる。このような溶湯センサ49は、適宜な用途で用いられてよく、また、その溶湯に応じて、検出すべき湯面高さが設定されてよい。
【0131】
また、本実施形態では、スリーブ21内の溶湯のうち給湯口32の下方縁部よりも上方に位置する部分のスリーブ21から連通管31への逆流が許容されている。そして、ダイカストマシン1は、スリーブ21内の湯面がスリーブ21の内面の最下部と給湯口32の下方縁部との間の所定高さに到達したことを検出する溶湯センサ49を有している。
【0132】
この場合、例えば、湯面が給湯口32の下方縁部に到達するタイミングを事前に検知して、以後の供給量を制御できるから、必要以上にスリーブ21に溶湯を供給する蓋然性が低減される。より詳細には、例えば、給湯制御部27bは、溶湯センサ49によってスリーブ21内の湯面が所定高さに到達したことが検出されたときに、連通管31を流れる溶湯の速度の減速を開始するように給湯駆動部(空圧装置45)を制御してよい。これにより、湯面が給湯口32の下方縁部を超えてから早期に湯面の上昇を停止して、サイクルタイムを短縮することができる。
【0133】
また、例えば、本実施形態では、ガス抜制御部27cは、溶湯センサ49によってスリーブ21内の湯面が所定高さに到達したことが検出されたときに、スリーブ21の内部と外部との連通を禁止するようにガス抜装置51を制御する。
【0134】
この場合、例えば、溶湯センサ49が設けられていることにより、湯面が所定高さに到達するタイミングに対する、排気口69が閉じられるタイミングを正確に制御できる。ひいては、溶湯が排気口69から溢れてしまう蓋然性が低減される。その結果、例えば、給湯完了時(射出開始直前)のスリーブ21内の溶湯の充填率を高くすることが容易化される。
【0135】
また、本実施形態では、ガス抜装置51は、スリーブ21と連通管31との連通位置(給湯口32)よりも金型101側の位置にてスリーブ21に開口している排気口69を開閉する。
【0136】
このようなガス抜装置51は、例えば、金型101から気体の排出を許容及び禁止する構成に比較して、スリーブ21内の気体を直接的に排出することから、連通管31及びスリーブ21内の気体が溶湯に置換される速度に遅れずに速やかに気体をスリーブ21内から排出することが容易化される。すなわち、スリーブ21内の気圧上昇を速やかに解消することが容易である。
【0137】
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、給湯駆動部(空圧装置45)と、給湯制御部27bとを有している。空圧装置45は、保持炉29内から連通管31を介してスリーブ21へ溶湯を移送する駆動力を生じる。給湯制御部27bは、プランジャチップ23aが、スリーブ21から連通管31への給湯口32を閉じる位置に到達したときにスリーブ21内の溶湯の充填率が90%以上となる量の溶湯をスリーブ21へ供給するように空圧装置45を制御する。
【0138】
この場合、溶湯による空気の巻き込みを低減することができる。ここで、本実施形態とは異なり、スリーブ21と非接触の連通管31から、スリーブ21の上方に開口する給湯口へ溶湯を注ぐ場合においては、溶湯のスリーブ21の外部への飛散を低減するために、スリーブ21内の溶湯の湯面を高くすることが困難であり、ひいては、充填率を高くすることは困難である。一方、本実施形態では、既述のように、射出時の衝撃を連通管31の保持炉29側において逃がすようにして、連通管31とスリーブ21とを気密に固定していることから、比較的高い充填率の実現が容易化されている。
【0139】
なお、上記のような比較的高い充填率は、溶湯を連通管31へ逆流させて計量する動作を行う場合においては、給湯口32の下方縁部が比較的上方に位置していることが前提となる。しかし、そのような逆流による計量を行わない場合においては、給湯口32は、スリーブ21の下方、側方及び上方のいずれに位置していてもよい。
【0140】
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、射出駆動部25と、射出制御部27dとを有している。射出駆動部25は、プランジャ23を駆動する。射出制御部27dは、射出開始から1m/s未満の速度でプランジャ23を前進させ(時点t0~t1)、プランジャチップ23aが給湯口32を閉じる位置に到達したときに(時点t1)、1m/s以上の速度に向けてプランジャ23の速度が切り換えられる(それ以前よりも加速される)ように射出駆動部25を制御する。
【0141】
一般に、ダイカストマシンでは、プランジャチップ23aが給湯口32を過ぎてからも溶湯による気体の巻き込みを低減するために1m/s未満の低速射出速度でプランジャ23を前進させる。そして、溶湯が概ねゲートに到達したときに高速射出が開始される。本実施形態では、これよりも早期に高速射出が開始されることから、溶湯の凝固に遅れずに溶湯をキャビティCaに充填することができる。その一方で、プランジャチップ23aが給湯口32を閉じたときには、スリーブ21内の溶湯の充填率が比較的高いことから、溶湯による気体の巻き込みが低減される。
【0142】
<第2実施形態>
以下の第2実施形態の説明では、基本的に、第1実施形態との相違部分についてのみ述べる。特に言及がない事項については、第1実施形態と同様とされてよい。また、第1実施形態の構成に相当(類似)する構成については、第1実施形態の構成との相違があっても、便宜上、第1実施形態の構成に付した符号を付すことがある。
【0143】
図8は、第2実施形態に係るダイカストマシン201の要部の構成を示す模式図であり、第1実施形態の図3に相当している。
【0144】
第1実施形態では、空圧装置45によって保持炉29内の溶湯の湯面を加圧して保持炉29からスリーブ21内へ溶湯を移送した。これに対して、第2実施形態では、電磁ポンプ(277A及び277B)によって保持炉29からスリーブ21内へ溶湯を移送する。また、気体によって湯面を加圧しないことから、保持炉29の密閉は必須ではなく、ベローズ37は設けられていない(設けられてもよい。)。第1実施形態では、連通管31は、主として、マウスピース35と給湯管33とによって構成された。これに対して、第2実施形態では、連通管231は、電磁ポンプの構成要素を収容する部材(279及び281)も含んでいる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0145】
(電磁ポンプ)
電磁ポンプの数、位置及び構成は、適宜に設定されてよい。図示の例では、給湯装置213は、連通管231の長手方向の互いに異なる位置に、第1電磁ポンプ277A及び第2電磁ポンプ277B(以下、単に「電磁ポンプ277」といい、両者を区別しないことがある。)を有している。なお、電磁ポンプは、1つのみとすることも可能である。
【0146】
より詳細には、第1電磁ポンプ277Aは、給湯管33のうちの保持炉29の内部に位置している(溶湯に挿入されている)部分に対して設けられている。第2電磁ポンプ277Bは、給湯管33のうちの保持炉29の外部に位置している部分に対して設けられている。
【0147】
保持炉29内の気圧と、給湯管33内の気圧とは、例えば、大気圧とされて互いに同一である。従って、保持炉29内の溶湯は、給湯管33内の湯面高さが保持炉29内(給湯管33の外部)の湯面高さと同等になるまで給湯管33に流れ込む。第1電磁ポンプ277Aは、この給湯管33内の溶湯を第2電磁ポンプ277Bの位置まで移送する。第2電磁ポンプ277Bは、移送された溶湯をスリーブ21内へ移送し、溶湯がスリーブ21内へ流れる速度等を直接に制御する。
【0148】
電磁ポンプ277は、電磁力を溶湯に作用させて溶湯を移送するものであり、その基本的な構成については、公知の電磁ポンプ277の構成が適用されてよい。例えば、電磁ポンプ277は、給湯管33を囲んでいるコイル283と、給湯管33内に位置しているコア285(鉄心)とを有している。コイル283は、例えば、特に図示しないが、長尺状の導体が不図示の磁性体に巻き回されるように配置されて構成されている。コア285は、金属からなる棒状部材である。なお、コア285は、省略可能である。
【0149】
(連通管)
連通管231は、マウスピース35及び給湯管33に加えて、コイル283を収容しているケース279と、コア285を収容している保護管281とを有している。なお、これらは、第1実施形態の説明で言及したように、流路231aを直接に構成しているマウスピース35及び給湯管33に対して固定されている剛体であることから、第1実施形態のベローズ37とは異なり、連通管231の一部として捉えられてよい。
【0150】
ケース279の形状は、全体として筒状であるとともに、筒の内面と筒の外面との間にコイル283を収容する空間を有している形状である。ケース279が構成する筒には、給湯管33及び第1加熱具41が挿通されている。ケース279は、例えば、第1電磁ポンプ277Aのコイル283及び第2電磁ポンプ277Bのコイル283の双方を収容している。コイル283を収容している空間は、少なくとも保持炉29内に位置する部分が気密に構成されている。ケース279は、保持炉29の外部から内部へ挿通されている。
【0151】
ケース279の具体的な形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、上端はマウスピース35に至り、下端は、給湯管33の下端と概ね同一の位置に位置している。ケース279のうち上方側部分は、第1加熱具41が挿通されることなどから、下方側部分よりも内径及び外径が大きくされている。
【0152】
ケース279は、複数の部材が適宜に組み合わされて構成されてよい。また、ケース279の材料は、例えば、セラミックス、金属又はこれらの組み合わせとされてよい。ケース279のうち、少なくとも溶湯に浸される部分は、セラミックスのみから構成されてもよい。
【0153】
ケース279(連通管231)と保持炉29との間には、隙間Gが介在しており、ケース279は、保持炉29に対して非接触となっている。これにより、第1実施形態において連通管31と保持炉29とが非接触であったことによって奏される種々の効果と同様の効果が奏される。
【0154】
ケース279は、給湯管33と同様に、その上端側において(マウスピース35を介して)スリーブ21に固定されて支持されており、これにより、保持炉29に対する非接触状態での挿入が実現されている。ケース279とマウスピース35との固定方法は適宜な方法とされてよい。図示の例では、ケース279の上端に第1実施形態の固定部材57に相当する部分が形成されており、当該部分に挿通されたボルト59がマウスピース35に螺合されることにより、ケース279はマウスピース35に固定されている。
【0155】
保護管281の形状は、全体として筒状であり、その内部にはコア285が収容されている。保護管281は、例えば、第1電磁ポンプ277Aのコア285及び第2電磁ポンプ277Bのコア285の双方を収容している。コア285が収容されている空間は密閉されている。保護管281は、給湯管33に挿通されている。保護管281の外径は、給湯管33の内径よりも小さく、保護管281の外面と給湯管33の内面との間に溶湯が流れる流路231aの一部が構成される。
【0156】
保護管281の具体的な形状、内部の密閉方法及びスリーブ21に対する固定方法等は適宜なものとされてよい。図示の例では、保護管281は、互いに仕切られているとともに両端に開口する2つの空間を有しており、それぞれの空間に1つのコア285を収容している。各空間は、保護管281の端部に設けられた閉塞部材(符号省略)によって密閉されている。また、保護管281の上端にはフランジ(符号省略)が設けられている。このフランジは、マウスピース35に設けられた凹部(符号省略)に嵌合しているとともに、マウスピース35と給湯管33の先端とによって挟まれて固定されている。このフランジには流路231aの一部を形成する開口が形成されている。保護管281の材料は、例えば、セラミックス、金属又はこれらの組み合わせとされてよい。
【0157】
なお、第2実施形態における信号処理系の構成及び動作は、空圧装置45に代えて電磁ポンプ277が用いられることを除いて、第1実施形態と同様とされてよい。連通管31を流れる溶湯の速度は、電磁ポンプ277に供給される電力によって制御される。
【0158】
以上の第2実施形態においても、連通管231(ケース279)と保持炉29とは、両者の間に隙間Gが介在して非接触であり、相対変位が許容されている。その結果、第1実施形態と同様に、種々の効果が奏される。例えば、射出時の衝撃を逃がすことができる。
【0159】
以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例である。空圧装置45及び電磁ポンプ277は、それぞれ給湯駆動部の一例である。
【0160】
本開示に係る技術は、上述した実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0161】
成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。
【0162】
連通管は、給湯管とマウスピースとを含むものに限定されず、その全体が一体的に形成されたものであってもよい。逆に、連通管は、その長さ方向において、3部材以上の中空部材(管状部材)が組み合わされて構成されたものであってもよい。
【0163】
給湯が完了したとき(射出開始直前)のスリーブ内の溶湯の充填率は、公知のダイカストマシンと同様に、比較的低くてもよい。また、射出の動作も、公知のダイカストマシンと同様に、溶湯がゲートに概ね到達したときに低速から高速へ切り換えるものであってもよいし、いわゆる層流充填を行うものであってもよい。溶湯センサ及びガス抜装置等は設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0164】
1…ダイカストマシン(成形機)、9…射出装置、13…給湯装置、21…スリーブ、23…プランジャ、29…保持炉、31…連通管、101…金型。
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