(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】焼却灰加湿装置、及び焼却灰加湿方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20221216BHJP
F23J 1/02 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B09B5/00 N ZAB
F23J1/02 A
(21)【出願番号】P 2019078490
(22)【出願日】2019-04-17
(62)【分割の表示】P 2018163530の分割
【原出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】前田 典生
(72)【発明者】
【氏名】井藤 宗親
(72)【発明者】
【氏名】永吉 俊介
(72)【発明者】
【氏名】安榮 健
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047356(JP,A)
【文献】特開2005-052776(JP,A)
【文献】実開昭50-044081(JP,U)
【文献】特表平11-508026(JP,A)
【文献】特開平10-017946(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143491(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
F23J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留部と、
前記焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰を
間欠的に排出する焼却灰排出手段と、
前記焼却灰排出手段によって排出される焼却灰を搬送する焼却灰搬送手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し冷却水を
、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、噴射する冷却水噴射手段と、
前記冷却水噴射手段によって冷却水が噴射された焼却灰の水分率(W)を測定する水分率測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量(Q)を測定する噴射水量測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量(Q)を制御する噴射水量制御手段と、
を備え、
前記噴射水量制御手段は、前記水分率測定手段によって測定される水分率(W)と前記噴射水量測定手段によって測定される噴射水量(Q)とに基づいて、前記焼却灰搬送手段によって搬送されている焼却灰の量を搬送灰量(M)として下記式(1)により演算し、算出された前記搬送灰量(M)に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率(W
T)となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量(Q
T)として下記式(2)により演算し、算出された前記目標噴射水量(Q
T)に一致するように前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量を制御する焼却灰加湿装置。
【数1】
【請求項2】
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留部と、
前記焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰を間欠的に排出する焼却灰排出手段と、
前記焼却灰排出手段によって排出される焼却灰を、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、搬送する焼却灰搬送手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し冷却水を噴射する冷却水噴射手段と、
前記冷却水噴射手段によって冷却水が噴射された焼却灰の水分率(W)を測定する水分率測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量(Q)を測定する噴射水量測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量(Q)を制御する噴射水量制御手段と、
を備え、
前記噴射水量制御手段は、前記水分率測定手段によって測定される水分率(W)と前記噴射水量測定手段によって測定される噴射水量(Q)とに基づいて、前記焼却灰搬送手段によって搬送されている焼却灰の量を搬送灰量(M)として下記式(1)により演算し、算出された前記搬送灰量(M)に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率(W
T
)となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量(Q
T
)として下記式(2)により演算し、算出された前記目標噴射水量(Q
T
)に一致するように前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量を制御する焼却灰加湿装置。
【数2】
【請求項3】
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留部と、
前記焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰を間欠的に排出する焼却灰排出手段と、
前記焼却灰排出手段によって排出される焼却灰を、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、搬送する焼却灰搬送手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し冷却水を、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、噴射する冷却水噴射手段と、
前記冷却水噴射手段によって冷却水が噴射された焼却灰の水分率(W)を測定する水分率測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量(Q)を測定する噴射水量測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量(Q)を制御する噴射水量制御手段と、
を備え、
前記噴射水量制御手段は、前記水分率測定手段によって測定される水分率(W)と前記噴射水量測定手段によって測定される噴射水量(Q)とに基づいて、前記焼却灰搬送手段によって搬送されている焼却灰の量を搬送灰量(M)として下記式(1)により演算し、算出された前記搬送灰量(M)に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率(W
T
)となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量(Q
T
)として下記式(2)により演算し、算出された前記目標噴射水量(Q
T
)に一致するように前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量を制御する焼却灰加湿装置。
【数3】
【請求項4】
前記冷却水噴射手段は、前記焼却灰搬送手段に配設される複数の冷却水噴射ノズルを含む
請求項1~3の何れか一項に記載の焼却灰加湿装置。
【請求項5】
前記焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰は、前記焼却炉と外気とを遮断するように前記焼却灰排出手段から排出される
請求項1~4の何れか一項に記載の焼却灰加湿装置。
【請求項6】
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類安定化薬剤を直接噴射することにより、又は前記重金属類安定化薬剤を前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水に混合することにより、前記焼却灰に前記重金属類安定化薬剤が付着するように構成される
請求項1~5の何れか一項に記載の焼却灰加湿装置。
【請求項7】
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留工程と、
前記焼却灰貯留工程によって貯留される焼却灰を
焼却灰排出手段によって間欠的に排出する焼却灰排出工程と、
前記焼却灰排出工程によって排出される焼却灰を搬送する焼却灰搬送工程と、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対し冷却水を
、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、噴射する冷却水噴射工程と、
前記冷却水が噴射された焼却灰の水分率(W)を測定する水分率測定工程と、
前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量(Q)を測定する噴射水量測定工程と、
前記水分率測定工程によって測定される水分率(W)と前記噴射水量測定工程によって測定される噴射水量(Q)とに基づいて、前記焼却灰搬送工程において搬送されている焼却灰の量を搬送灰量(M)として下記式(1)により演算する搬送灰量演算工程と、
前記搬送灰量演算工程によって算出された前記搬送灰量(M)に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率(W
T)となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量(Q
T)として下記式(2)により演算する目標噴射水量演算工程と、
前記目標噴射水量演算工程によって算出された前記目標噴射水量(Q
T)に一致するように前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量を制御する噴射水量制御工程と、
を包含する焼却灰加湿方法。
【数4】
【請求項8】
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留工程と、
前記焼却灰貯留工程によって貯留される焼却灰を焼却灰排出手段によって間欠的に排出する焼却灰排出工程と、
前記焼却灰排出工程によって排出される焼却灰を、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、搬送する焼却灰搬送工程と、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対し冷却水を噴射する冷却水噴射工程と、
前記冷却水が噴射された焼却灰の水分率(W)を測定する水分率測定工程と、
前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量(Q)を測定する噴射水量測定工程と、
前記水分率測定工程によって測定される水分率(W)と前記噴射水量測定工程によって測定される噴射水量(Q)とに基づいて、前記焼却灰搬送工程において搬送されている焼却灰の量を搬送灰量(M)として下記式(1)により演算する搬送灰量演算工程と、
前記搬送灰量演算工程によって算出された前記搬送灰量(M)に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率(W
T
)となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量(Q
T
)として下記式(2)により演算する目標噴射水量演算工程と、
前記目標噴射水量演算工程によって算出された前記目標噴射水量(Q
T
)に一致するように前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量を制御する噴射水量制御工程と、
を包含する焼却灰加湿方法。
【数5】
【請求項9】
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留工程と、
前記焼却灰貯留工程によって貯留される焼却灰を焼却灰排出手段によって間欠的に排出する焼却灰排出工程と、
前記焼却灰排出工程によって排出される焼却灰を、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、搬送する焼却灰搬送工程と、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対し冷却水を、前記焼却灰排出手段の間欠稼働に合わせて連動するように、噴射する冷却水噴射工程と、
前記冷却水が噴射された焼却灰の水分率(W)を測定する水分率測定工程と、
前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量(Q)を測定する噴射水量測定工程と、
前記水分率測定工程によって測定される水分率(W)と前記噴射水量測定工程によって測定される噴射水量(Q)とに基づいて、前記焼却灰搬送工程において搬送されている焼却灰の量を搬送灰量(M)として下記式(1)により演算する搬送灰量演算工程と、
前記搬送灰量演算工程によって算出された前記搬送灰量(M)に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率(W
T
)となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量(Q
T
)として下記式(2)により演算する目標噴射水量演算工程と、
前記目標噴射水量演算工程によって算出された前記目標噴射水量(Q
T
)に一致するように前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量を制御する噴射水量制御工程と、
を包含する焼却灰加湿方法。
【数6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物等を焼却する焼却炉から排出される焼却灰を冷却水によって冷却・加湿する焼却灰加湿装置、及び焼却灰加湿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却炉から排出される焼却灰には、まだ燃えているゴミが含まれることがあるため、焼却灰を冷却し、完全に消火してから場外に搬出する必要がある。焼却灰の冷却には、一般的に、焼却灰が投入される水槽内に押出装置を備えた構造の灰押出装置が用いられる。灰押出装置において、水槽の底面は大きく湾曲した形状に形成され、水槽の出口部分には狭窄部が設けられている。また、押出装置は、水槽の湾曲形状の底面に沿って往復移動するプッシャーを備えている。
【0003】
灰押出装置においては、焼却炉からの焼却灰が水槽内に投入されて消火され、水槽内に堆積した焼却灰が押出装置のプッシャーにより順次に水槽の出口部分に設けられた狭窄部を通して押し出され、狭窄部を通過することで圧縮された焼却灰が、水面より上側に持ち上げられて水切りされた後に排出される。
【0004】
このようにして消火・冷却された焼却灰は、場外搬出されて、埋立処分又は再資源化により処理される。いずれも処理費用は重量あたりで清算されるため、焼却灰の水分率が高いと、処理費用が高額となる。一方で、焼却灰の水分率が低い場合や、加湿が均一でない場合には、輸送中や積み込み、積み下ろし中に焼却灰が飛散する虞れがある。そのため、焼却灰の冷却・加湿は、飛散を防止できる範囲で極力低い水分率に保ち、且つ均一に行う必要がある。
【0005】
しかし、上記の灰押出装置による冷却では、冷却後の焼却灰は一般的に20~30%程度の水分を含み、より低い水分率とすることは構造的に困難である。また、上記の灰押出装置には、水分率を調整するような機構が設けられておらず、焼却灰を完全に水没させた後に圧縮し水面より露出させることで水切りするため、焼却灰の水分率は水切り時間等に影響されて成り行きとなり、思うように水分率を調整することができない。
【0006】
このような灰押出装置の問題点を解消し得る焼却灰排出装置が特許文献1にて提案されている。この特許文献1に係る焼却灰排出装置は、ごみ焼却炉から灰排出シュートを介して排出される焼却灰を受ける冷却室が形成された冷却槽と、冷却槽の一端側に冷却室に連通されて灰出口が形成された灰押出ダクトと、灰排出シュートから投下されて冷却室に堆積する焼却灰に冷却水を噴射する冷却水ノズルと、冷却槽の他端部に配設されて冷却槽内の焼却灰を灰押出ダクトに押し出す灰排出手段とを備え、冷却水ノズルから噴射される冷却水で焼却灰の表面を加湿し、加湿された焼却灰を灰排出手段により灰押出ダクトへと押し出し加圧・圧縮することで水分率を低減するように構成されている。
【0007】
また、搬送される焼却灰に散水することによって焼却灰を冷却するようにした焼却灰冷却搬送装置が特許文献2にて提案されている。この特許文献2に係る焼却灰冷却搬送装置は、搬送手段によって搬送されている焼却灰に対して散水する散水手段と、散水手段によって散水を受けた焼却灰の含水率を計測する水分率計測手段と、散水手段による散水量を制御する制御装置とを備えて構成されている。この焼却灰冷却搬送装置においては、搬送手段によって搬送されている焼却灰に対して散水し、含水率の計測値が所定範囲よりも高いときには散水量を減少させ、所定範囲よりも低いときには散水量を増加させるように、散水手段による散水量を制御する。したがって、含水率が好適な所定範囲に収められることになり、焼却灰の搬送の際に、焼却灰の飛散や水の浸出が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-55341号公報
【文献】特開2017-47356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記の特許文献1に係る焼却灰排出装置は、水分率の測定・調節機構を備えていないため、水分率を一定値以内に制御することができないという問題点がある。また、焼却灰は、冷却室に堆積された焼却灰の上部表面のみが冷却水ノズルによって加湿されるため、焼却灰を均一に加湿することができないという問題点がある。
【0010】
一方、特許文献2に係る焼却灰冷却搬送装置では、水分率計測手段によって計測される焼却灰の含水率に基づくフィードバック制御によって散水量が制御されているため、焼却灰の搬送量が変動した場合、その搬送灰量の変動の影響によって焼却灰の水分率が変化しそれを水分率計測手段が計測して初めて散水量の訂正動作が始まることになり、測定される水分率に搬送灰量の変動の影響が反映されるまでにタイムラグがあり、精確なフィードバック制御の実施が難しく、焼却灰の水分率を好適な所定範囲に収めることができないという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、焼却灰の搬送量が変動したとしても、焼却灰の水分率を目標水分率に確実に近づけることができる焼却灰加湿装置、及び焼却灰加湿方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る焼却灰加湿装置の特徴構成は、
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留部と、
前記焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰を排出する焼却灰排出手段と、
前記焼却灰排出手段によって排出される焼却灰を搬送する焼却灰搬送手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し冷却水を噴射する冷却水噴射手段と、
前記冷却水噴射手段によって冷却水が噴射された焼却灰の水分率を測定する水分率測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量を測定する噴射水量測定手段と、
前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量を制御する噴射水量制御手段と、
を備え、
前記噴射水量制御手段は、前記水分率測定手段によって測定される水分率と前記噴射水量測定手段によって測定される噴射水量とに基づいて、前記焼却灰搬送手段によって搬送されている焼却灰の量を搬送灰量として演算し、算出された前記搬送灰量に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量として演算し、算出された前記目標噴射水量に一致するように前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水の噴射水量を制御することにある。
【0013】
本構成の焼却灰加湿装置によれば、水分率測定手段によって測定される水分率と噴射水量測定手段によって測定される噴射水量とに基づいて搬送灰量が演算され、算出された搬送灰量に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率となるのに必要な目標噴射水量が演算され、算出された目標噴射水量に一致するように冷却水の噴射水量が制御されるので、焼却灰の搬送量が変動したとしても、焼却灰の水分率を目標水分率に確実に近づけることができる。
【0014】
本発明に係る焼却灰加湿装置において、
前記冷却水噴射手段は、前記焼却灰搬送手段に配設される複数の冷却水噴射ノズルを含むことが好ましい。
【0015】
本構成の焼却灰加湿装置によれば、焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対して複数の冷却水噴射ノズルから冷却水が噴射されるので、焼却灰をより均一に加湿することができる。
【0016】
本発明に係る焼却灰加湿装置において、
前記焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰は、前記焼却炉と外気とを遮断するように前記焼却灰排出手段から排出されることが好ましい。
【0017】
本構成の焼却灰加湿装置によれば、焼却炉内と外部雰囲気とは、焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰によって隔絶されることになり、焼却炉内に外部からの空気が流入するのを確実に防ぐことができる。したがって、炉内温度の低下や、燃焼状態の悪化等を未然に防ぐことができる。
【0018】
本発明に係る焼却灰加湿装置において、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類安定化薬剤を直接噴射することにより、又は前記重金属類安定化薬剤を前記冷却水噴射手段によって噴射される冷却水に混合することにより、前記焼却灰に前記重金属類安定化薬剤が付着するように構成されることが好ましい。
【0019】
本構成の焼却灰加湿装置によれば、焼却灰に均一に重金属類安定化薬剤が付着されるので、焼却灰からの重金属類の溶出を確実に防ぐことができる。
【0020】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る焼却灰加湿方法の特徴構成は、
焼却炉から排出される焼却灰を貯留する焼却灰貯留工程と、
前記焼却灰貯留工程によって貯留される焼却灰を排出する焼却灰排出工程と、
前記焼却灰排出工程によって排出される焼却灰を搬送する焼却灰搬送工程と、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対し冷却水を噴射する冷却水噴射工程と、
前記冷却水が噴射された焼却灰の水分率を測定する水分率測定工程と、
前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量を測定する噴射水量測定工程と、
前記水分率測定工程によって測定される水分率と前記噴射水量測定工程によって測定される噴射水量とに基づいて、前記焼却灰搬送工程において搬送されている焼却灰の量を搬送灰量として演算する搬送灰量演算工程と、
前記搬送灰量演算工程によって算出された前記搬送灰量に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率となるのに必要な冷却水の噴射水量を目標噴射水量として演算する目標噴射水量演算工程と、
前記目標噴射水量演算工程によって算出された前記目標噴射水量に一致するように前記冷却水噴射工程において噴射される冷却水の噴射水量を制御する噴射水量制御工程と、
を包含することにある。
【0021】
本構成の焼却灰加湿方法によれば、水分率測定工程によって測定される水分率と噴射水量測定工程によって測定される噴射水量とに基づいて搬送灰量演算工程において搬送灰量が演算され、算出された搬送灰量に基づいて、焼却灰の水分率が予め設定した目標水分率となるのに必要な目標噴射水量が目標噴射水量演算工程において演算され、算出された目標噴射水量に一致するように、噴射水量制御工程において冷却水の噴射水量が制御されるので、焼却灰の搬送量が変動したとしても、焼却灰の水分率を目標水分率に確実に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿装置の概略システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿装置において用いられる焼却灰排出手段の概略構造を示す模式図で、(a)はプッシャー式灰排出装置、(b)はスクリュー式灰排出装置、(c)は二重ダンパ式灰排出装置である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿装置において用いられる焼却灰搬送手段の概略構造を示す模式図で、(a)はベルトコンベヤ式灰搬送装置、(b)はフライトコンベヤ式灰搬送装置である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿方法を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿装置における噴射水量制御手段の処理内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0024】
<全体構成>
図1に示される焼却灰加湿装置1は、廃棄物等を焼却する焼却炉2から排出される焼却灰(乾灰)を貯留する焼却灰貯留部(12,32,44(
図2(a)~(c)参照))と、焼却灰貯留部(12,32,44)に貯留されている焼却灰を排出する焼却灰排出手段3と、焼却灰排出手段3によって排出される焼却灰を搬送する焼却灰搬送手段4と、焼却灰搬送手段4によって搬送される焼却灰に対し冷却水を噴射する冷却水噴射手段5と、冷却水噴射手段5によって冷却水が噴射された焼却灰の水分率を測定する水分率測定手段6と、冷却水噴射手段5によって噴射される冷却水の噴射水量を測定する噴射水量測定手段7と、冷却水噴射手段5によって噴射される冷却水の噴射水量を制御する噴射水量制御手段8とを備えている。なお、焼却灰搬送手段4によって搬送され、後述する冷却水による加湿動作後に、焼却灰搬送手段4から排出された焼却灰は、焼却灰貯留設備9において一旦貯留される。
【0025】
<焼却灰排出手段>
焼却灰排出手段3としては、例えば、
図2(a)に示されるプッシャー式灰排出装置10、
図2(b)に示されるスクリュー式灰排出装置30、
図2(c)に示される二重ダンパ式灰排出装置40等が挙げられ、これらの中から適宜に選択することができる。
【0026】
[プッシャー式灰排出装置]
図2(a)に示されるプッシャー式灰排出装置10は、焼却炉2で発生した焼却灰を排出するための排出口に設けられるシュート11の下部に連設される焼却灰貯留部12と、焼却灰貯留部12の一側に配設される押出装置13と、焼却灰貯留部12の他側に設けられた貯留部排出口14を開閉する開閉ゲート15とを備えて構成されている。
【0027】
焼却灰貯留部12における貯留部排出口14近傍下部には、焼却灰の押出し方向に向けて、焼却灰貯留部12の基底面16から連なる反り上がり形状面17が形成されている。貯留部排出口14の開口縁には、シュート18が連設されている。
【0028】
押出装置13は、アクチュエータとして例えば油圧シリンダや電動シリンダ等のような伸縮力を発揮するシリンダ20と、基底面16上を往復摺動できるようにシリンダ20のロッド先端に取り付けられるプッシャー21とを備えて構成されている。
【0029】
開閉ゲート15は、貯留部排出口14の上縁部近傍に設けられた枢支軸周りに開閉可能に配設されている。この開閉ゲート15は、平板形状に形成され、焼却灰貯留部12に焼却灰が貯留されていないときには鉛直向きに垂下された状態を維持し、焼却灰貯留部12に焼却灰が貯留されると貯留部排出口14の上縁部側へ開くように構成されている。
【0030】
図2(a)に示されるプッシャー式灰排出装置10において、焼却炉2の運転立ち上げ時には、焼却灰貯留部12に焼却灰が貯留されていない。このような場合には、開閉ゲート15は鉛直方向に垂下された状態となり、開閉ゲート15と反り上がり形状面17とで貯留部排出口14を塞ぎ、焼却炉2内への空気の流入を防ぐことができる。したがって、焼却炉2の運転立ち上げ時における炉内温度の低下や、燃焼状態の悪化等を未然に防ぐことができる。
【0031】
通常運転時には、焼却炉2から排出される焼却灰は焼却灰貯留部12に次々と貯留される。このため、焼却炉2と外部雰囲気とは焼却灰により隔絶され焼却炉2内への空気の流入を防ぐことができる。この間は、開閉ゲート15は貯留部排出口14の上縁側へ開き、焼却灰の排出を阻害しない構造となっている。また、反り上がり形状面17が形成されていることにより、貯留部排出口14付近に貯留される焼却灰の貯留形状を安定的に保つことができる。したがって、貯留形状の崩壊に起因して焼却灰が流動化するというフラッシング現象を防止し、フラッシング現象の発生で焼却灰が必要以上に排出されることによる瞬時排出量の増加及び焼却炉2内への空気の流入も防止することができる。
【0032】
焼却灰貯留部12において、焼却灰が貯留焼却灰量の上限位置まで貯留されると、押出装置13が駆動されて、プッシャー21が基底面16上を往復摺動する。これにより、焼却灰貯留部12に貯留されている焼却灰が下部から順に貯留部排出口14の方へ押し出され、焼却灰をほぼ連続的にシュート18を介して排出することができる。
【0033】
焼却灰貯留部12内の焼却灰が排出されていき、貯留されている焼却灰の量が下限位置に達すると、押出装置13の作動が停止し、焼却灰は排出されなくなり、焼却炉2から排出される焼却灰が焼却灰貯留部12に貯留される。
【0034】
[スクリュー式灰排出装置]
図2(b)に示されるスクリュー式灰排出装置30は、焼却炉2で発生した焼却灰を排出するための排出口に設けられるシュート31の下部に連設される焼却灰貯留部32と、焼却灰貯留部32と図示されない焼却灰搬送手段とを連通状態に接続する筒状のトラフ33と、トラフ33内に配設された、回転軸34にスクリュー羽根35が取り付けられてなる軸付スクリュー羽根36とを備え、軸付スクリュー羽根36を回転させることにより、焼却灰貯留部32に貯留されている焼却灰を軸付スクリュー羽根36によって焼却灰搬送手段へと押進して搬送するように構成されている。
【0035】
スクリュー式灰排出装置30においては、焼却炉2と外部雰囲気とを、焼却灰貯留部32に貯留されている焼却灰とトラフ33内を移動する焼却灰とにより隔絶して焼却炉2内への空気の流入を防ぎながら、焼却灰を軸付スクリュー羽根36により連続的に下流側へと排出することができる。
【0036】
[二重ダンパ式灰排出装置]
図2(c)に示される二重ダンパ式灰排出装置40は、焼却炉2で発生した焼却灰を排出するための排出口に設けられるシュート41の内部にダンパ42,43をそれぞれ上下に並列配置して構成されるものである。なお、シュート41は、焼却炉2からの焼却灰の落下通路を形成する役目をするものであるが、ダンパ42,43上に堆積した焼却灰を貯留する焼却灰貯留部44としての役目も兼ねる。
【0037】
ダンパ42,43は、それぞれの回動が干渉しないように、シュート41の内部に上下に並列配置されており、一端部に配される枢支軸を中心に水平位置から鉛直下方まで回動できるようにされるとともに、水平位置においてシュート41の内部の上下空間を仕切る弁形状とされている。そして、ダンパ42,43が水平位置にあるときにはそのダンパ42,43上に焼却灰が堆積され、その水平位置から下方に向けて、枢支軸を中心に回動されたときには、焼却灰がダンパ42,43上から落下される。
【0038】
二重ダンパ式灰排出装置40においては、上下のダンパ42,43のうちの少なくとも一方のダンパ42,43上に焼却灰が堆積された状態を維持しつつ(勿論、
図2(c)に示されるように両方のダンパ42,43に焼却灰が同時に堆積した状態もある。)、ダンパ42,43上に堆積された焼却灰を落下させる動作を上下のダンパ42,43が交互に行って段階的に焼却灰を落下させることにより、焼却炉2と外部雰囲気とをダンパ42,43及びダンパ42,43上に堆積された焼却灰により隔絶して焼却炉2内への空気の流入を防ぎながら、所定量堆積した焼却灰を間欠的に下流側へと排出することができる。
【0039】
<焼却灰搬送手段>
焼却灰排出手段としては、例えば、
図3(a)に示されるベルトコンベヤ式灰搬送装置50、
図3(b)に示されるフライトコンベヤ式灰搬送装置60、図示されない振動フィーダ、傾斜シュート等が挙げられ、これらの中から適宜に選択することができる。以下においては、代表例として、
図3(a)に示されるベルトコンベヤ式灰搬送装置50と、
図3(b)に示されるフライトコンベヤ式灰搬送装置60とについてその概略構造を説明する。
【0040】
[ベルトコンベヤ式灰搬送装置]
図3(a)に示されるベルトコンベヤ式灰搬送装置50は、搬送方向に延びる四角筒状のケーシング51と、ケーシング51内に配設されるベルトコンベヤ52とを備えて構成されている。ケーシング51は、焼却排出手段3(
図1参照)から排出された焼却灰が投入される投入口53を一方側に有するとともに、ベルトコンベヤ52によって搬送された焼却灰を焼却灰貯留設備9(
図1参照)へと排出するための排出口54を他方側に有している。ベルトコンベヤ52は、搬送方向に所定間隔を存して配設される駆動輪55及び従動輪56と、これら駆動輪55及び従動輪56に無端状に巻き掛け装着される無端ベルト57とを備え、駆動輪55の作動にて周回運動する無端ベルト57により、ケーシング51の投入口53を介して投入された焼却灰をケーシング51の排出口54へと搬送することができるようになっている。
【0041】
[フライトコンベヤ式灰搬送装置]
図3(b)に示されるフライトコンベヤ式灰搬送装置60は、搬送方向に延びる四角筒状のケーシング61と、ケーシング61内に配設されるフライトコンベヤ62とを備えて構成されている。ケーシング61は、前述したケーシング51と同様に、焼却灰排出手段3(
図1参照)から排出された焼却灰が投入される投入口63を一方側に有するとともに、フライトコンベヤ62によって搬送された焼却灰を焼却灰貯留設備9(
図1参照)へと排出するための排出口64を他方側に有している。フライトコンベヤ62は、搬送方向に所定間隔を存して配設される駆動輪65及び従動輪66と、これら駆動輪65及び従動輪66に無端状に巻き掛け装着される無端チェーン67と、ケーシング61の底板に対し近接して移動可能となるように無端チェーン67に所定間隔で取り付けられる複数のスクレーパ68とを備え、駆動輪65の作動にて無端チェーン67が周回運動し、無端チェーン67に取り付けられたスクレーパ68によってケーシング61の底板上に堆積した焼却灰を掻き取ってケーシング61の排出口64へと搬送することができるようになっている。
【0042】
<冷却水噴射手段>
図1に示されるように、冷却水噴射手段5は、搬送される焼却灰に対して冷却水を均等に噴射できるように、例えば、ケーシング51,61(
図3(a)及び(b)参照)に配設された複数の冷却水噴射ノズル71(
図1並びに
図3(a)及び(b)のそれぞれにおいて1個のみ示す。)と、冷却水供給源から圧送される冷却水を冷却水噴射ノズル71へと導くことができるように冷却水噴霧ノズル71に接続される冷却水供給管72とにより構成されている。
【0043】
<水分率測定手段>
水分率測定手段6としては、例えば、冷却水噴射ノズル71によって冷却水が噴射された焼却灰の水分率を測定することができるようにケーシング51,61(
図3(a)及び(b)参照)に配設された水分計73が挙げられる。水分計73としては、搬送される焼却灰に対して非接触でその焼却灰に含まれる水分率を連続的に測定できるものが好ましく、例えば、焼却灰に照射されたマイクロ波の水分による減衰等の電気的変化量を水分値に置き換えて水分率を測定するマイクロ波式水分計や、焼却灰に照射された近赤外線を含む光の反射率から水分率を測定する近赤外線式水分計等を好適に用いることができる。水分計73の測定信号は、後述する制御装置76へと送られる。
【0044】
<噴射水量測定手段>
噴射水量測定手段7としては、例えば、冷却水噴射ノズル71によって噴射される冷却水の噴射量を測定することができるように、冷却水供給管72における冷却水噴射ノズル71と後述する流量調節弁75との間に介設される流量計74が挙げられる。流量計74の測定信号は、後述する制御装置76へと送られる。
【0045】
<噴射水量制御手段>
噴射水量制御手段8は、冷却水供給管72を流れる冷却水の流量を調節できるように冷却水供給管72に介設される流量調節弁75と、マイクロコンピュータを主体に構成される制御装置76とを備え、制御装置76からの流量制御信号に応じて流量調節弁75の弁開度が制御されることにより、冷却水噴射ノズル71によって噴射される冷却水の噴射水量が制御されるように構成されている。
【0046】
<搬送灰量及び目標噴射水量の計算方法>
焼却灰搬送手段4によって搬送されている焼却灰(乾灰)の量(以下、「搬送灰量」と称する。)をMとし、水分率測定手段(水分計73)によって測定される水分率(%)をWとし、噴射水量測定手段(流量計74)によって測定される噴射水量(L/h)をQとし、予め設定される焼却灰の目標水分率(%)をWTとし、焼却灰の実際の水分率(水分計73の測定水分率W)が目標水分率WTとなるのに必要な冷却水の噴射水量(以下、「目標噴射水量」と称する。)をQTとした場合、搬送灰量Mは、下記式(1)によって求められ、目標噴射水量QTは、下記式(2)によって求められる。
【0047】
【0048】
<作動説明>
図4には、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿方法を説明するフローチャートが示されている。焼却灰加湿装置1においては、
図4のフローチャートに示される複数の工程が実施される。主に
図1及び
図4を参照しながら焼却灰加湿装置1の作動について以下に説明する。
【0049】
まず、焼却炉2から排出された焼却灰を焼却灰排出手段3の焼却灰貯留部12,32,44(
図2(a)~(c)参照)に貯留する(焼却灰貯留工程)。次いで、焼却灰貯留部12,32,44に貯留されている焼却灰を焼却灰排出手段3によって排出する(焼却灰排出工程)。次いで、焼却灰排出手段3によって排出される焼却灰を焼却灰搬送手段4によって搬送する(焼却灰搬送工程)。次いで、焼却灰搬送手段4によって搬送される焼却灰に対し冷却水噴射手段5により冷却水を噴射する(冷却水噴射工程)。
【0050】
冷却水が噴射された焼却灰の水分率を水分計73によって測定する(水分率測定工程)とともに、冷却水の噴射水量を流量計74によって測定する(噴射水量測定工程)。測定された水分率及び噴射水量とに基づいて、焼却灰搬送手段4による搬送灰量を演算し(搬送灰量演算工程)、算出された搬送灰量に基づいて、焼却灰の実際の水分率が目標水分率となるのに必要な目標噴射水量を演算する(目標噴射水量演算工程)。そして、算出された目標噴射水量に一致するように噴射水量制御手段8によって冷却水の噴射水量を制御する(噴射水量制御工程)。
【0051】
<制御装置の処理内容>
図5には、本発明の一実施形態に係る焼却灰加湿装置における噴射水量制御手段の処理内容を説明するフローチャートが示されている。噴射水量制御手段8において、制御装置76のROMには、
図5に示されるフローチャートに示されるアルゴリズムに従って作成された所定プログラムが格納されており、所定プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、所定の動作が行われる。制御装置76の処理内容について、
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、
図5中記号「S」はステップを表す。また、
図5のフローチャートに示される処理は、所定サイクルタイム毎に繰り返し実行される。
【0052】
まず、水分計73によって測定される水分率と流量計74によって測定される噴射水量とを読み込み、読み込んだ水分率及び噴射水量に基づいて、上記式(1)により搬送灰量Mを演算する(S1)。次いで、算出された搬送灰量Mに基づいて、上記式(2)により目標噴射水量QTを演算する(S2)。そして、算出された目標噴射水量QTに応じた流量制御信号を流量調節弁75へと送り、流量計74によって測定される冷却水噴射ノズル71からの実際の噴射水量が目標噴射水量QTに一致するように冷却水の噴射水量を制御する(S3~S4)。これにより、焼却灰搬送手段4によって搬送される焼却灰の搬送量が変動したとしても、焼却灰の水分率を目標水分率WTに確実に近づけることができる。
【0053】
上記実施形態において、焼却灰搬送手段4によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類安定化薬剤を前述した冷却水噴射ノズル71とは別に用意した専用ノズル(図示省略)から直接噴射する、又は重金属類安定化薬剤を冷却水噴射ノズル71によって噴射される冷却水に混合して、焼却灰に重金属類安定化薬剤が付着するようにしてもよい。これにより、焼却灰に均一に重金属類安定化薬剤が付着されるので、焼却灰からの重金属類の溶出を確実に防ぐことができる。
【0054】
また、上記実施形態において、消費電力の削減のために、焼却灰排出手段3を間欠稼働とし、焼却灰排出手段3の稼働に合わせて、焼却灰搬送手段4の搬送動作と冷却水噴射手段5の冷却水噴射動作とを連動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の焼却灰加湿装置、及び焼却灰加湿方法は、焼却灰の搬送量が変動したとしても、焼却灰の水分率を目標水分率に確実に近づけることができるという特性を有することから、廃棄物等の焼却炉から排出される焼却灰を冷却する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 焼却灰加湿装置
2 焼却炉
3 焼却灰排出手段
4 焼却灰搬送手段
5 冷却水噴射手段
6 水分率測定手段
7 噴射水量測定手段
8 噴射水量制御手段
12,32,44 焼却灰貯留部
71 冷却水噴射ノズル
73 水分計
74 流量計
75 流量調節弁
76 制御装置