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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】使用済み燃料収納容器
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20221216BHJP
   G21F 5/008 20060101ALI20221216BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G21C19/32 040
G21F5/008
G21F9/36 501H
G21F9/36 501G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019085985
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180945
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】根布 景
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智
(72)【発明者】
【氏名】平沼 健
(72)【発明者】
【氏名】細井 秀章
(72)【発明者】
【氏名】石井 佳彦
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016323(JP,A)
【文献】特開2006-349469(JP,A)
【文献】特開2017-072471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器本体と、
前記収納容器本体内に設けられ、使用済み燃料集合体を1体ごとに収納する区画部が複数設けられたバスケットと、を備え、
前記バスケットは、複数のバスケットプレートを格子状に組み付けることで構成されており、
前記バスケットプレートは、前記収納容器本体の軸方向に開口する水ギャップを形成して対向配置される一対のプレートで構成されており、
平行に設置される前記バスケットプレートの複数にまたがって前記収納容器本体の軸に対して垂直方向に貫通する切り込みを有しており、
前記バスケットプレートは、バスケットプレート同士を直交させて差し込むことで格子状に組み付けるためのスリットを有し、
一対の前記スリットの間にある前記バスケットプレートに前記切り込みが形成されている
ことを特徴とする使用済み燃料収納容器。
【請求項2】
収納容器本体と、
前記収納容器本体内に設けられ、使用済み燃料集合体を1体ごとに収納する区画部が複数設けられたバスケットと、を備え、
前記バスケットは、複数のバスケットプレートを格子状に組み付けることで構成されており、
前記バスケットプレートは、前記収納容器本体の軸方向に開口する水ギャップを形成して対向配置される一対のプレートで構成されており、
平行に設置される前記バスケットプレートの複数にまたがって前記収納容器本体の軸に対して垂直方向に貫通する切り込みを有しており、
前記切り込みを通して、前記バスケットプレートの長手方向に延在する補強部材が配置されている
ことを特徴とする使用済み燃料収納容器。
【請求項3】
収納容器本体と、
前記収納容器本体内に設けられ、使用済み燃料集合体を1体ごとに収納する区画部が複数設けられたバスケットと、を備え、
前記バスケットは、複数のバスケットプレートを格子状に組み付けることで構成されており、
前記バスケットプレートは、前記収納容器本体の軸方向に開口する水ギャップを形成して対向配置される一対のプレートで構成されており、
平行に設置される前記バスケットプレートの複数にまたがって前記収納容器本体の軸に対して垂直方向に貫通する切り込みを有しており、
前記収納容器本体の最上部では、補強部材が、前記バスケットプレートの上側の前記切り込みと前記収納容器本体の上部内面との間に固定されているか、または、
前記収納容器本体の最下部では、補強部材が、前記バスケットプレートの下側の前記切り込みと前記収納容器本体の下部内面との間に固定されているかのうちの少なくとも何れかである
ことを特徴とする使用済み燃料収納容器。
【請求項4】
収納容器本体と、
前記収納容器本体内に設けられ、使用済み燃料集合体を1体ごとに収納する区画部が複数設けられたバスケットと、を備え、
前記バスケットは、複数のバスケットプレートを格子状に組み付けることで構成されており、
前記バスケットプレートは、前記収納容器本体の軸方向に開口する水ギャップを形成して対向配置される一対のプレートで構成されており、
平行に設置される前記バスケットプレートの複数にまたがって前記収納容器本体の軸に対して垂直方向に貫通する切り込みを有しており、
前記バスケットプレートの前記切り込みを通して、前記バスケットプレートの長手方向に延在する補強部材が配置され、
前記補強部材は、断面形状がH型であり、ウェブ部と前記ウェブ部の両端部に設けられるフランジ部とを有し、
使用済み燃料収納容器の水平姿勢での落下によって前記補強部材に生じる曲げ応力を前記フランジ部で受ける
ことを特徴とする使用済み燃料収納容器。
【請求項5】
収納容器本体と、
前記収納容器本体内に設けられ、使用済み燃料集合体を1体ごとに収納する区画部が複数設けられたバスケットと、を備え、
前記バスケットは、複数のバスケットプレートを格子状に組み付けることで構成されており、
前記バスケットプレートは、前記収納容器本体の軸方向に開口する水ギャップを形成して対向配置される一対のプレートで構成されており、
平行に設置される前記バスケットプレートの複数にまたがって前記収納容器本体の軸に対して垂直方向に貫通する切り込みを有しており、
前記バスケットプレートの前記切り込みを通して、前記バスケットプレートの長手方向に延在する補強部材が配置され、
前記補強部材の端部が、前記収納容器本体の内周面に沿った形状に加工されている
ことを特徴とする使用済み燃料収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み燃料収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所施設の原子炉炉心で一定期間使用された燃料は、炉心から取り出される。取り出された炉心は、使用済み燃料集合体を貯蔵する燃料ピットなどに一時保管される。その後、所定期間冷却された使用済み燃料集合体は、最終的に再処理工場に搬入されて再処理される。再処理により、使用済み燃料集合体からウランとプルトニウムが取り出される。ウランとプルトニウムは、再資源として利用される。
【0003】
原子力発電所の敷地内または敷地外において使用済み燃料集合体を管理し貯蔵する方式として、金属キャスク貯蔵、コンクリートキャスク貯蔵、ボールト貯蔵などの乾式貯蔵方式と、水プールなどの湿式貯蔵方式がある。
【0004】
貯蔵コスト、電源が喪失したときの安全性や長期にわたる貯蔵安定度を考慮した場合、電源を使用せず、空気で冷却可能な乾式貯蔵方式が有利である。乾式貯蔵方式のうち、現在国内で実用化されているものは、金属製キャスクに使用済み燃料を収納する金属キャスク貯蔵方式である。
【0005】
金属製キャスクは下記のように用いられる。
金属製の円筒型の容器内に格子状のバスケットが構成される。そして、各格子に使用済み燃料集合体が1体ごとに挿入される。そして、二重構造の金属製の蓋で密閉される構造である。バスケットは、中性子吸収材を含んだ材料を用いて構成される。バスケット内に使用済み燃料集合体を装荷した際に、使用済み燃料集合体から発生する中性子をバスケットで十分に吸収して未臨界性を確保するように設計されている。
【0006】
使用済み燃料集合体は、崩壊熱を発生するが、バスケットを介して、内部の熱が金属製キャスクの表面に伝わる。金属製キャスクの表面からは、周囲へのふく射による放熱や空気の自然対流による冷却によって熱が逃がされる。また、金属製キャスクは、輸送中の万一の落下の際に受ける高い衝撃荷重に対しても、破損しないように十分な構造強度を有している。
【0007】
キャスクに使用済み燃料集合体を装荷する際には、放射線を遮蔽するために水中で実施する。加圧水型原子炉(PWR)に使用される燃料集合体は、沸騰水型原子炉(BWR)の燃料集合体に比べて幅が大きい。そのため、水中でバスケット内に装荷された加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料集合体が相互に近付き過ぎると臨界になる可能性がある。そのため、加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料集合体は、沸騰水型原子炉(BWR)の使用済み燃料集合体に比べて、隣り合う燃料集合体同士の間隔を離して配置する必要がある。以下、この間隔を水ギャップと称す。
【0008】
加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料集合体を収容するバスケットとしては、大別して2種類ある。
1つは、例えば、特許文献1に開示されているような、使用済み燃料集合体が入る間隔を離した複数の角パイプによってバスケットを構成するものである。
【0009】
他の1つは、特許文献2の図2に開示されているような、スリットを有する中空のバスケットプレートを直交させて差し込み、バスケットを構成するものである。後者の場合、バスケットプレートを順に積み上げてバスケットを製作するため、間隔精度の高いバスケットを製作しやすい。
【0010】
バスケット構造としては、特許文献3、4に開示されたものも知られている。
特許文献3のバスケット構造では、部品を組み合わせることで中空としたバスケットプレート(図3図5)を用いて、プレートに形成したスリットによって格子状のバスケット(図6)を形成している。
【0011】
特許文献4のバスケット構造では、2枚のプレートをH型に連結したバスケットプレートに対して、組み合わせるためのスリットを加工し(図4)、格子状のバスケット(図1図2)を製作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001―108788号公報(図1図3図4
【文献】特開2006―200939号公報(図2
【文献】特許第5894877号(図3図5図6
【文献】特開2004-271254号公報(図1図2図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1では、沸騰水型原子炉(BWR)の使用済み燃料集合体よりも重く幅の広い加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料集合体を対象とした場合に、より重い荷重を支持するためにバスケットプレートをより厚く構成してバスケットに十分な強度を持たせる必要がある。このため、使用済み燃料収納容器の重量が増大するという課題がある。
【0014】
特許文献2では、バスケットプレートの中空部分が水ギャップとして作用する。この中空部分は、容器の軸方向と直交する方向に開口(図5図6)しているため、燃料ピット内で使用済み燃料集合体をバスケット内に装荷した後に水を排出する際に、水の排出に時間を要する可能性がある。
【0015】
特許文献3および特許文献4では、水ギャップとして設けた中空部分が、容器の軸方向と直交する方向に開口している。そのため、燃料ピット内で使用済み燃料集合体をバスケット内に装荷した後に水を排出する際に、水の排出に時間を要する可能性がある。
【0016】
また、特許文献3および特許文献4では、対向する2枚のバスケットプレート間をつなぐ部材を、成型または接続しており、バスケットプレートの加工工数が増える問題がある。
本発明は、バスケットの製作が容易で経済的に水ギャップを形成可能かつ収納容器本体の重量を抑制する経済的な使用済み燃料格納容器を提供することを目的とする。
【0017】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、製作容易で低重量の使用済み燃料格納容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、本発明の使用済み燃料収納容器は、収納容器本体と、 前記
収納容器本体内に設けられ、使用済み燃料集合体を1体ごとに収納する区画部が複数設けられたバスケットと、を備え、 前記バスケットは、複数のバスケットプレートを格子状
に組み付けることで構成されており、前記バスケットプレートは、前記収納容器本体の軸
方向に開口する水ギャップを形成して対向配置される一対のプレートで構成されており、
平行に設置される前記バスケットプレートの複数にまたがって前記収納容器本体の軸に
対して垂直方向に貫通する切り込みを有しており、前記バスケットプレートは、バスケットプレート同士を直交させて差し込むことで格子状に組み付けるためのスリットを有し、一対の前記スリットの間にある前記バスケットプレートに前記切り込みが形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製作容易で低重量の使用済み燃料格納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る使用済み燃料収納容器の概略構造の一部切断斜視図。
図2】第1実施形態に係る使用済み燃料収納容器の上面視の模式横断面図。
図3】バスケットの構成の一部を示す拡大斜視図。
図4】バスケットの構成の一部の拡大斜視図。
図5】第2実施形態に係る組立て前のバスケットの構成の一部を示す拡大斜視図。
図6】第2実施形態に係る組立て前のバスケットの構成の一部を示す拡大斜視図。
図7】第2実施形態に係る組立て後のバスケットの構成の一部を示す拡大斜視図。
図8】第3実施形態に係るバスケットの構成の一部の拡大斜視図。
図9】第4実施形態に係る補強部材の一部の拡大斜視図。
図10】第5実施形態に係るバスケットの構成の一部拡大斜視図。
図11】第6実施形態に係る使用済み燃料収納容器の上面視の模式横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、原子力発電所から発生する使用済み燃料集合体の輸送や貯蔵に用いる使用済み燃料収納容器に係る。
特に、本発明は、加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料の輸送や貯蔵に用いるのに好適な使用済み燃料収納容器に関する。
【0022】
以下、本発明に係る使用済み燃料収納容器の実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態において、同様の部分には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。以下の各実施形態においては、本発明の使用済み燃料収納容器に収納される燃料集合体を加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料集合体とした場合について説明する。なお、一部の図面において断面を示すハッチングを省略している。
【0023】
<<第1実施形態>>
図1に、本発明の第1実施形態に係る使用済み燃料収納容器1の概略構造の一部切断斜視図を示す。
第1実施形態の使用済み燃料収納容器1の全体構成を説明する。
【0024】
使用済み燃料収納容器(キャスク)1は、使用済み燃料集合体100の貯蔵または輸送に使用するものである。
使用済み燃料収納容器1は、筒状の収納容器本体(内筒)10の内側に、バスケット12を備えている。
【0025】
バスケット12には、使用済み燃料集合体100を装荷するための区画部11が複数設けられている。区画部11は、上下に長い断面矩形の使用済み燃料集合体100が装荷される上下に長い空間である。
【0026】
バスケット12に入れられる使用済み燃料集合体100を覆う収納容器本体10は、使用済み燃料集合体100から発生するγ線を遮蔽する機能を有している。収納容器本体10は、例えば、合金鋼製の円筒状容器である。収納容器本体10の側面外周には外筒13が配置されている。収納容器本体10と外筒13とは、伝熱経路にもなる伝熱フィン14で連結されている。
【0027】
また、収納容器本体10と外筒13および伝熱フィン14で囲われる空間部には、中性子遮へい材15が充填されている。本第1実施形態では、中性子遮へい材15としてレジンが使用されている。中性子遮へい材15により、使用済み燃料集合体100から発生する中性子が遮へいされる。中性子遮へい材15は、例えば、中性子吸収能力の高いホウ素(ボロン)を含む樹脂で形成されている。
【0028】
収納容器本体10の上部開口は、内側から使用済み燃料集合体100に直接対向する一次蓋16、二次蓋17および三次蓋18で塞がれている。各蓋(16、17、18)は図示しないボルトを締結して取り付けられている。
【0029】
<バスケット12>
次に、バスケット12について説明する。
図2に、第1実施形態に係る使用済み燃料収納容器1の上面視の模式横断面図を示す。図3にバスケット12の構成の一部を示す拡大斜視図を示す。
バスケット12は、図2図3に示すように、板状のバスケットプレート200を複数直交させて格子状に組み付けることで、使用済み燃料集合体100を1体ごとに収納する複数の区画部11を形成している。
【0030】
図2に示すように、各区画部11は、上面視で四角筒状の開口11aを備えている。開口11aは使用済み燃料集合体100を収納可能な大きさを有している。
バスケットプレート200は、一対のプレート200a、200bで構成される。一対のプレート200a、200bは、平板状の金属板である。プレート200a、200bは、収納容器本体10の軸方向に開口する水ギャップ201を形成して対向配置されている。水ギャップ201は、隣り合う使用済み燃料集合体100の間に位置しており、使用済み燃料集合体100の未臨界性を担保している。
【0031】
図2に示すように、収納容器本体10は、内壁10nに鉛直軸方向(図2の紙面表裏面方向)に延在する溝204を有している。バスケットプレート200の端部200tを溝204に挿入することで、バスケット12の全体が収納容器本体10内で回転することを抑制できる。
バスケットプレート200の材料としては、強度あるいは熱伝導率、またはその両方が高い材料が好ましい。
【0032】
本実施形態では、バスケットプレート200を炭素鋼板で形成してあるが、ホウ素含有アルミニウム合金などの熱伝導率が高い材料の板を貼りあわせた二層構造としてもよい。また、隣り合うプレート200a、200bで材料を異ならせてもよい。例えば、ホウ素含有ステンレス鋼からなるプレート200aと熱伝導率の高いアルミニウム合金からなるプレート200bとを隣り合わせに配置してもよい。また、炭素鋼からなるプレート200aと、アルミニウム合金もしくはホウ素含有アルミニウム合金からなるプレート200bとを隣あわせに配置することも可能である。
【0033】
また、図2に示すバスケットプレート200の板厚さを、それぞれ寸法公差の範囲内で同じとしたが、プレート200a、200bごとに板厚さが異なってもよい。
【0034】
図3に示すバスケットプレート200である一対のプレート200c、200dも、上述の一対のプレート200a、200bと同様である。
バスケットプレート200(200a、200b、200cまたは200d)の上部および下部の所定位置には、それぞれ組み付け用のスリット301、302が形成されている。スリット301、302は、上下方向に延びる長形の形状を有している。
【0035】
スリット301、302は、上下方向に延びて所定の間隔で形成されている。スリット301およびスリット302は、収納容器本体10の軸c0方向(図1参照)に延在しており、図3に示すように、組付け時に対応するバスケットプレート200を差し込むことができる幅を有している。
【0036】
バスケット12(図2参照)を作成する際には、図3に示すように、上下方向にバスケットプレート200のスリット301およびスリット302と、バスケットプレート200のスリット302およびスリット301同士がそれぞれ合致するように直交させて差し込む。これにより、バスケットプレート200同士を上下方向(収納容器本体10の軸c0方向(図1参照))に嵌め合わせる。
【0037】
図4に、バスケット12の構成の一部の拡大斜視図を示す。
バスケットプレート200の端部200tを収納容器本体10の溝204に上方から配置し、図4に示すように、収納容器本体10の軸c0(図1参照)方向に順次積み重ねて全体が格子状(図2参照)となるように組み立てる。これにより、板材のバスケットプレート200で水ギャップ201(図2参照)を形成することができる。
【0038】
図3に示すように、バスケットプレート200には、上端が凹む形状の切り込み303aと下端が凹む形状の切り込み303bが形成されている。
切り込み303a、303bの空間を形成することで、バスケットプレート200の重量を低減することができる。
【0039】
また、切り込み303aによって、水ギャップ201内に存在する水の体積を切り込み303aの空間分増加させることができる。同様に、切り込み303bによって、水ギャップ201内に存在する水の体積を切り込み303bの空間分増加させることができる。そのため、燃料集合体100の未臨界性を向上することができる。
【0040】
使用済み燃料収納容器1が水平となった場合、水平となったプレート200c、プレート200dおよび燃料集合体100の重量は、スリット301(図3参照)を介してバスケットプレート200に伝えられ、バスケットプレート200によって支持される。このとき、バスケットプレート200における対向するスリット301間のバスケットプレート200の一部を切り込み303a、303bのように切り欠いても、重量による荷重は残った部位によってバスケットプレート200に伝達される。そのため、強度上の問題を生じることなくバスケットプレート200の重量を低減できる。図3に示すバスケットプレート200とプレート200c、200dとを嵌め合わせた状態は、図4のようになる。
【0041】
また、図3および図4の切り込み303a、303bのように、一対のスリット301の間の位置に切り込みを形成する場合、バスケットプレート200の中央に貫通孔状の切り込みを形成することに比べて、加工が容易となる特徴がある。つまり、スリット301の加工と同時に、切り込み303a、303bをそれぞれ製作できる。そのため、他の位置に切り込みを形成するのに比べて、加工時間および加工費を低減できる特徴がある。
また、水ギャップ201が収納容器本体10の軸c0方向(図1参照)に開口しているので、燃料ピット内で使用済み燃料集合体100をバスケット12に装荷した後の水の排出性に優れる。
また、使用済み燃料集合体100を装荷した後に使用済み燃料収納容器1を図1に示すように立てて貯蔵する場合には、水ギャップ201が鉛直方向(収納容器本体10の軸c0方向)に開口している。このため、収納容器本体10の内部で気体が自然対流する効果を利用でき、除熱性能の向上も期待できる。
【0042】
以上より、バスケット12の製作が容易で経済的に水ギャップ201(図2参照)を形成可能であり、収納容器本体10で覆われる構造体の重量を抑制できる経済的な使用済み燃料格納容器1を提供できる。
【0043】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を、図5図6および図7を用いて説明する。
図5に、第2実施形態に係る組立て前のバスケット12の構成の一部を示す拡大斜視図を示す。
使用済み燃料収納容器1が水平姿勢で落下して衝撃力を受ける場合、燃料集合体100の質量に由来する荷重は、水平となったバスケットプレート200、例えば図5のバスケットプレート200cで受ける。この時バスケットプレート200cは曲げ応力を受ける。この時、バスケットプレート200cと対向するバスケットプレート200dで形成される水ギャップ201の間に、補強部材401を、収納容器本体10の軸c0方向と垂直に配置することで、曲げ応力をバスケットプレート200c、補強部材401およびバスケットプレート200dの3部品で受け持つことができる。このことにより、バスケットプレート200cの板厚を薄くしても、水平荷重を受け持つことができる。このため、バスケットプレートの重量を低減することが可能となる。補強部材401とバスケットプレート200の固定には、例えばネジによる固定などが可能であるが、他の方法でもよい。
次に、補強部材401を、収納容器本体10の軸c0方向と垂直に配置する場合の簡便な方法を示す。
図6に、第2実施形態に係る組立て前のバスケット12の構成の一部を示す拡大斜視図を示し、図7に、本発明の第2実施形態に係る組立て後のバスケットの構成の一部を示す拡大斜視図を示す。
第2実施形態のバスケットプレート200には、上部の切り込み303aと下部の切り込み303bとが形成されている。切り込み303aと切り込み303bは、バスケットプレート200と平行に並ぶすべてのバスケットプレート200に、収納容器本体10の軸c0(図1参照)の垂直方向に貫通するように形成される。そのため、図7に示すように、上部の切り込み303aと下部の切り込み303bとを通して、補強部材401を設置することが可能となる。
【0044】
図6の場合、補強部材401は、バスケットプレート200の上側に形成された切り込み303aに設置される。また、バスケットプレート200と垂直に組み合わされるプレート200cとプレート200dとが形成する水ギャップ201内に、補強部材401が設置されることになる。図6に示すバスケットプレート200を、格子状に組み付けた結果を図7に示す。補強部材401は、バスケットプレート200の上部に形成された切り込み303aと、バスケットプレート200の上部に組み付けられるプレート200eの下部に形成される切り込み303bとによって挟まれることで、上下方向の移動が拘束される。
【0045】
こうして、補強部材401が収納容器本体10の軸c0(図1参照)の垂直方向に配置される。使用済み燃料収納容器1が水平姿勢で落下して衝撃力を受ける場合、燃料集合体100の質量に由来する荷重は、水平となったバスケットプレート200、例えば図7のプレート200cまたはプレート200dに負荷され、バスケットプレート200には曲げ応力が生じる。
【0046】
バスケットプレート200はこの曲げ応力によって破壊されないことが要求されるが、補強部材401を設置することで、曲げ応力を補強部材401でも受け持つことができる。また、補強部材401を通して、バスケットプレート200と対向に設置されるバスケットプレート200(例えばプレート200cに対するプレート200d)によっても曲げ応力を受け持つことができる。
【0047】
バスケットプレート200はスリット301を介して組み合わせるため、スリット302を有する部分は上記の曲げ応力を受け持つことができない欠点があった。この欠点を補うように、強度を保つためにバスケットプレート200の板厚を厚くすることは、使用済み燃料収納容器1の重量が増加することにつながり、運搬上不利となる。
【0048】
これに対して、第2実施形態の補強部材401を設置することで、バスケットプレート200の全体の板厚を薄くし、使用済み燃料収納容器1の総重量を低減できる可能性がある。
このため、使用済み燃料収納容器1を運搬するクレーン容量に余裕が生まれる。この重量低減によって、強度以外の性能、例えば遮蔽や伝熱の性能を向上させる部品を付加する設計も可能となり、使用済み燃料収納容器1の性能向上も期待できる。
【0049】
<バスケット12の組立順序>
バスケット12の組立順序を、図7を用いて説明する。
まず、バスケットプレート200を使用済み燃料収納容器1の内部に挿入して固定する。固定には、収納容器本体10の内面10n(図1参照)に鉛直方向に溝204(図2参照)を形成することで、バスケットプレート200の長手方向端部200tを溝204に嵌合して固定する方法が挙げられるが、他の方法を用いてもよい。
【0050】
なお、収納容器本体10の内面10n(図1参照)に設けられた鉛直方向の溝204に、バスケットプレート200の長手方向端部200tを嵌合して組立てられるので、組立てが容易である。
次に、プレート200cおよびプレート200dをバスケットプレート200のスリット301に各々挿入し、スリット301を介してバスケットプレート200と嵌め合わせることで固定する。
【0051】
その後、プレート200cとプレート200dとの間の水ギャップ201内に、補強部材401を挿入する。バスケット200の上部に切り込み303aがあるため、補強部材401を上から挿入することが可能となる。
その後、プレート200eのスリット302をプレート200cおよび200dのスリット301に挿入し、プレート200eをプレート200cおよび200dに嵌め合わせる。
【0052】
プレート200eの下側に切り込み303b(図7参照)があるため、バスケットプレート200の上側から問題なく補強強材401をバスケットプレート200間に組み込むことが可能となっている。このように、バスケットプレート200の上部および下部に、補強部材401を挿入するための切り込み303aと切り込み303bとを形成することで、組立て時の加工が不要な簡便な組立てが可能となる。
【0053】
また、収納容器本体10内部の最上部では、バスケットプレート200の上辺が一次蓋16(図1参照)の内面に接する。また、バスケットプレート200にスリット301を介して嵌め合わされるプレート200cおよびプレート200dは、他のバスケットプレート200の下半分のみで構成される。
【0054】
このような場合、補強部材401は、バスケットプレート200の上部の切り込み303aと、一次蓋16の内面によって固定される。また、補強部材401の高さ寸法は、切り込み303aの形状に合わせた寸法とする。また、補強部材401および切り込み303aの各寸法を、必要に応じて強度を保つことができる寸法を確保できるように設計段階で調整することは容易である。
【0055】
同様に、収納容器本体10内部の最下部では、バスケットプレート200の下辺が収納容器本体10の内面に接する。また、バスケットプレート200にスリット301を介して嵌め合わされるプレート200cおよびプレート200dは、他のバスケットプレート200の上半分のみで構成される。
【0056】
このような場合、補強部材401は、バスケットプレート200の下部の切り込み303bと、収納容器本体10の内面によって固定される。また、補強部材401の高さ寸法は、切り込み303bの形状に合わせた寸法とする。また、補強部材401および切り込み303bの各寸法を、必要に応じて強度を保つことができる寸法を確保できるように設計段階で調整することは容易である。
【0057】
このようにして、バスケットプレート200の長手方向に延在する補強部材401が、複数本、収納容器本体10の軸c0方向に並んで配置されていることで、バスケット12全体の強度が向上する。
なお、収納容器本体10内部の最上部と最下部に補強部材401を設ければ、バスケット12の上部と下部の補強が行える。
【0058】
ここで、補強部材401は収納容器本体10内部の最上部または最下部の何れかに設ける構成としてもよい。
【0059】
<<第3実施形態>>
図8に、第3実施形態に係るバスケット200の構成の一部の拡大斜視図を示す。
第3実施形態を、図8を用いて説明する。
図8は、第2実施形態のバスケットプレート200(200c、200d、200e)を菓子折り状に組み付けた状態である。
【0060】
このとき、切り込み303aおよび切り込み303bに挿入された補強部材401は、図8に示す補強部材401a、401bのように、使用済み燃料収納容器1の軸c0(図1参照)方向に複数あってもよい。補強部材401a、401bは、それぞれ横断面H字形状を有し、使用済み燃料収納容器1の軸c0に垂直な方向に延びる形状を有している。
【0061】
補強部材401a、401bは必要な強度を受け持つために、荷重によって必要となる断面寸法が決まるが、必要寸法を満たすために補強部材401a、401bを一体化する必要はない。また、第2実施形態と同様に、組立時には、補強部材401a、401bを使用済み燃料収納容器1の上部からバスケットプレート200cとバスケットプレート200dの間に挿入し、最後にバスケットプレート200eを組み付けることで、簡便な組立が可能である。
【0062】
<<第4実施形態>>
図9に、第4実施形態に係る補強部材401の一部の拡大斜視図を示す。
【0063】
第4実施形態を、図9を用いて説明する。
第4実施形態は、第2実施形態および第3実施形態に示した補強部材401の断面形状を示している。補強部材401は、使用済み燃料収納容器1が水平姿勢で落下した場合には、使用済み燃料集合体100やバスケットプレート200の重量によって、曲げ応力が発生する。第4実施形態では、補強部材401の横断面をH型とし、曲げの中立軸にはH断面のウェブ部403を配し、曲げ応力が高くなる位置にはフランジ402aおよび402bを配置する。
【0064】
補強部材401の断面形状は、想定される曲げ応力に耐え得る形状であればよいため、強度上は形状を制限する必要はない。
しかし、図9に示すような断面とすることにより、曲げ応力を受ける位置に部材の質量を集中することができるため、補強部材401の強度質量比が向上するメリットがある。ひいては使用済み燃料収納容器1全体の強度質量比が向上することを意味する。
【0065】
また、補強部材401を、H型断面とする利点は、長方形断面の部材から削り出しで補強部材を製作する場合に、加工冶具を部材側面に当てることで加工できるため、他の断面形状、例えば中空断面に比較して加工が容易となり、加工費を低減できる。
【0066】
<<第5実施形態>>
図10に、第5実施形態に係る補強部材401の構成の一部拡大斜視図を示す。
図10を用いて第5実施形態を説明する。
第5実施形態は、補強部材401のウェブ部403に、貫通孔404を形成したものである。
【0067】
使用済み燃料収納容器1に使用済み燃料集合体(燃料棒)100を装荷する場合、冷却水で満たされた燃料貯蔵プール内で行われる。その際、収納容器本体10の内部の水を排水する必要がある。
【0068】
第5実施形態の貫通孔404は、収納容器本体10の軸c0の向きにウェブ部403を貫通している。そのため、貫通孔404が無い場合に比べて、収納容器本体10からの排水時間を短縮することができる。
また、図9に示したような補強部材401の断面がH型の場合、ウェブ部403の中心は、収納容器水平落下時に受ける曲げ応力が低い位置であり、補強部材401の強度特性を著しく失うことは無い。そのため、ウェブ部403に貫通孔を設けることで、他の位置に貫通孔404を設けるよりも強度特性を向上できる。
【0069】
<<第6実施形態>>
図11に、第6実施形態に係る使用済み燃料収納容器1の上面視の模式横断面図を示す。
図11を用いて、第6実施形態を説明する。
第6実施形態は、補強部材401がバスケットプレート200に組み込まれた状態を示す。
【0070】
ここで、補強部材401の端部401tは、収納容器本体10の内面10nに沿う形に加工されている。これにより、補強部材401が自身の軸方向(補強部材401の長手方向)に動くことを抑制できる。
【0071】
また、最外周に位置するバスケットプレート205は、バスケットプレート205を下方として使用済み燃料収納容器1が水平姿勢で落下した場合、燃料集合体100の荷重をバスケットプレート205のみで受け持つため、強度上必要とする板厚とすることが望ましい。
【0072】
<<その他の実施形態>>
1.前記実施形態では、様々な構成を説明したが、少なくとも一部を採用してもよい。例えば、説明した構成を、適宜を組み合わせて構成してもよい。
【0073】
2.前記実施形態で説明した構成は、本発明の一例であり、特許請求の範囲で記載した範囲内でその他の様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 使用済み燃料収納容器
10 収納容器本体
10n 内壁面(内周面)
11 区画部
12 バスケット
16 一次蓋
100 使用済み燃料集合体
200 バスケットプレート
200a、200b、200c、200d、200e プレート
201 水ギャップ
204 収納容器本体の溝
301、302 バスケットプレートのスリット
303a バスケットプレートの切り込み(上側の切り込み)
303b バスケットプレートの切り込み(下側の切り込み)
401 補強部材
401a 位置決め板の突出部
401t 補強部材の端部
402 補強部材のフランジ部
403 補強部材のウェブ部
404 補強部材の貫通孔
c0 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11