(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】山留壁用の芯材、及び、上側芯材の撤去方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/20 20060101AFI20221216BHJP
E02D 17/04 20060101ALI20221216BHJP
E02D 9/02 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
E02D5/20
E02D17/04 Z
E02D9/02
(21)【出願番号】P 2019130265
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】安永 正道
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-63813(JP,A)
【文献】特開2004-238998(JP,A)
【文献】特開2005-336897(JP,A)
【文献】特開2015-63812(JP,A)
【文献】特開2010-236178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
7/00-13/10、17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソイルモルタル山留壁に建て込まれる芯材であって、
下側芯材と、
前記下側芯材の上端部に隙間を空けて下端部を相対させた上側芯材と、
前記下側芯材と前記上側芯材とに跨がる形で配置される添接板と、
前記添接板の下部と前記下側芯材とを固定する第1の固定手段と、
前記添接板の上部と前記上側芯材とを固定する第2の固定手段と、
を含み、
前記第2の固定手段は、前記上側芯材と前記添接板との接合面を貫通してこれらを締め付けるボルトであり、このボルトは、前記上側芯材と前記添接板との接合面の位置に断面欠損部を有することを特徴とする、山留壁用の芯材。
【請求項2】
前記ボルトは少なくとも上下方向に複数設けられ、
前記複数のボルトに対応して前記上側芯材に複数設けられるボルト挿通孔は、上下方向に長い長孔であり、
前記各ボルトと、対応する前記各長孔の上端縁との距離は、ボルト毎に異ならせてあることを特徴とする、請求項1記載の山留壁用の芯材。
【請求項3】
前記上側芯材におけるボルト挿通孔は、上下方向に長い長孔であり、
前記上側芯材におけるボルト頭部の載置面に一体化されて、前記上側芯材が前記下側芯材の側に移動したときに、前記ボルト頭部の座面の下に進入するクサビ部材を更に含むことを特徴とする、請求項1記載の山留壁用の芯材。
【請求項4】
前記ボルトは少なくとも上下方向に複数設けられ、
前記複数のボルトに対応して、前記クサビ部材も複数設けられ、
前記各ボルトと、対応する前記各クサビ部材との距離は、ボルト毎に異ならせてあることを特徴とする、請求項3記載の山留壁用の芯材。
【請求項5】
前記長孔は、その一端が前記上側芯材の下端部に達して開口する溝孔であることを特徴とする、請求項3又は請求項4記載の山留壁用の芯材。
【請求項6】
ソイルモルタル山留壁に建て込まれた請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の芯材から、前記下側芯材を残して、前記上側芯材を撤去する方法であって、
前記上側芯材の上端部に下方向の打撃を加えることにより、前記断面欠損部を有するボルトを破壊して、前記上側芯材と前記添接板との固定を解除する工程と、
前記固定を解除した後に、前記上側芯材を上方向に引き抜いて撤去する工程と、
を含むことを特徴とする、上側芯材の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側芯材及び上側芯材により構成される山留壁用の芯材(特に施工後に上側芯材を撤去可能な芯材構造)、及び、山留壁からの上側芯材の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SMW(Soil Mixing Wall)工法やTRD(Trench Cutting Re-Mixing Deep Wall)工法による山留壁(山留遮水壁)では、造成されたソイルモルタル製の壁体の中に、芯材(H形鋼)が配置される。ソイルモルタルが遮水壁、芯材が山留材(応力部材)となっており、地山側の土圧、水圧に抵抗し、地下水の浸入を防止しつつ、山留壁の内側を掘削し、地下構造物を構築することができる。地下構造物の構築後は、埋め戻しを行う。
【0003】
この種の山留工において、埋め戻し完了後に、地表面から所定深さまでの芯材の撤去を求められる場合がある。
【0004】
このような場合、特許文献1などに示されるように、山留壁用のH形鋼からなる芯材を下側芯材と上側芯材との連結構造としておき、埋め戻し時に下側芯材から上側芯材を分離して撤去可能とすることが行われている。
【0005】
特に特許文献1に記載の下側芯材と上側芯材との連結構造では、下側芯材と上側芯材とに跨がる形で、掘削側フランジの外面及び地山側フランジの外面にそれぞれ当接する添接板(接合板)を設け、長ボルトを、掘削側から、掘削側添接板、掘削側フランジ、地山側フランジ、及び、地山側添接板に貫通させ、地山側の長ボルト先端を地山側添接板に固定のナットに螺合して締め付けている。
【0006】
かかる連結構造では、埋め戻し時に(詳しくは、下側芯材と上側芯材との連結位置付近まで埋め戻した時点で)、掘削側から長ボルトの頭部を回動して、ナットとの螺合を解除した後、長ボルトを引き抜くことで、下側芯材と上側芯材との連結を解除することができる。これにより、ソイルモルタルから上側芯材を引き抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、次のような問題点がある。
埋め戻しの途中、すなわち、外側からの土圧、水圧が作用している時点で、下側芯材と上側芯材との連結を解除することから、曲げモーメントに抵抗できず、芯材が破損する恐れがある。
【0009】
切り離し深度が1~2mと浅い場合は、土圧、水圧が小さく、長ボルトを引き抜いても芯材は安定していることがあるが、切り離し深度が5~6mあるいは7~8mと深い場合は、土圧、水圧が大きく、長ボルトの引き抜き後に(切り離し後に)、上側芯材が不安定化することが懸念される。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑み、埋め戻し中ではなく、埋め戻し後に、しかも、かなりの深さの切り離し深度でも、上側芯材を安全に撤去することができる、山留壁用の芯材、及び、上側芯材の撤去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る山留壁用の芯材(構造)は、下側芯材と、前記下側芯材の上端部に隙間を空けて下端部を相対させた上側芯材と、前記下側芯材と前記上側芯材とに跨がる形で配置される添接板と、前記添接板の下部と前記下側芯材とを固定する第1の固定手段と、前記添接板の上部と前記上側芯材とを固定する第2の固定手段と、を含む。
ここにおいて、前記第2の固定手段は、前記上側芯材と前記添接板との接合面を貫通してこれらを締め付けるボルトであり、このボルトは、前記上側芯材と前記添接板との接合面の位置に断面欠損部を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る上側芯材の撤去方法は、ソイルモルタル山留壁に建て込まれた上記構造の芯材から、前記下側芯材を残して、前記上側芯材を撤去する方法であって、
前記上側芯材の上端部に下方向の打撃を加えることにより、前記断面欠損部を有するボルトを破壊して、前記上側芯材と前記添接板との固定を解除する工程と、
前記固定を解除した後に、前記上側芯材を上方向に引き抜いて撤去する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上側芯材の上部に打撃を加えることと、引き抜くことのみで、撤去できるので、埋め戻し中ではなく、埋め戻し後に安全に撤去することができる。
また、上側芯材と添接板とを固定しているボルトを破壊して、添接板は残置するので、上側芯材のみを単に引き抜くだけでよく、かなりの深さの切り離し深度の要求にも応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】第1実施形態での芯材の連結部(
図1のX部)の正面図及び側面図
【
図7】第2実施形態での芯材の連結部(
図1のX部)の正面図及び側面図
【
図10】第3実施形態での芯材の連結部(
図1のX部)の正面図及び側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は山留壁を用いた施工例を示す図である。
【0016】
地盤1の下に地下構造物(埋設躯体)を構築施工するに際し、これに先立って、施工場所に対する山留(及び止水)を行うことを目的として、地中の不透水層2に達する深さまで、掘削側(掘削予定領域)と地山側(非掘削領域)とを仕切るように、山留壁3が構築される。
【0017】
山留壁3の構築方法として、SMW工法を用いる場合は、多軸混練オーガ機で地盤を平面視で数珠繋ぎ状に削孔(削溝)し、その先端より固化材としてセメントミルクを吐出し、掘削土と混合・撹拌して、ソイルモルタル製の壁体4を造成し、これを繰り返して、地中に柱列式の連続壁を造成する。
【0018】
また、TRD工法を用いる場合は、地中に建て込んだチェーンソー型のカッターポストを横方向に移動させて、削溝しつつ、セメントミルクの注入、掘削土との混合・撹拌を行って、ソイルモルタル製の壁体4(この場合は等厚式の連続壁)を造成する。
【0019】
山留壁3には、SMW工法やTRD工法によるソイルモルタル製の壁体4の内部に、ソイルモルタルの硬化前に、壁体4の連続方向に所定の間隔で並べて、芯材(杭)5の建て込みがなされる。
従って、山留壁3は、ソイルモルタル製の壁体4と、その内部に配置される複数の芯材5とを含んで構成される。
【0020】
芯材5は、基本的にH形鋼からなる、従って、芯材5は、前後一対の互いに平行なフランジと、両フランジの中央部をつなぐウェブとを有している。尚、H形鋼と類似のものとしてI型鋼がある。これはH形鋼に比べ、フランジが相対的に短いだけである。従って、「I形鋼」と呼称されるものであっても、前後一対の互いに平行なフランジと、両フランジの中央部をつなぐウェブとを有しているものであれば、本明細書でいう「H形鋼」に含まれる。
【0021】
H形鋼からなる芯材5は、その前後一対のフランジ同士が、山留壁3の幅方向にて互いに対向するように、山留壁3内に設置される。従って、山留壁3の連続方向に隣合う2つの芯材5については、互いのウェブ同士が山留壁3の連続方向にて対面するようになる。
【0022】
ここにおいて、ソイルモルタル製の壁体4は、遮水壁として機能するように、地中の不透水層2に達する深さまで造成されるのに対し、芯材5は、掘削予定深度(床付面)6より下方で、応力部材として必要な機能を果たすように、建て込み深さが決定される。
【0023】
山留壁3の構築後は、山留壁3の内側(掘削予定領域)を掘削し、所定深さ掘削するごとに、腹起し7及び切梁8を設置し、これらを繰り返して、掘削予定深度(床付面)6まで掘削する(
図1の状態)。
その後は、床付面6上に地下構造物(図示せず)を構築し、その上を埋め戻して、施工を終了する。
【0024】
このような山留壁3を用いた施工では、施工後に、地表面側での将来の道路工事や各種埋設工事に備え、山留壁3内に設置されている芯材5の上側部分、具体的には、地表面側から、所定深度(例えば8m)までの範囲の撤去を求められる場合がある。
【0025】
本発明は、このような場合に、芯材5を予め下側芯材11と上側芯材12との連結構造としておき、施工後に下側芯材11を残して上側芯材12を撤去可能とする。
かかる芯材5の構造について、以下に説明する。
【0026】
芯材5は、下側芯材(下側H形鋼)11と、上側芯材(上側H形鋼)12とに分割されていて、下側芯材11と上側芯材12とを添接板13を用いて連結する構造となっている。より詳しくは、下側芯材11の上端部と上側芯材12の下端部とを隙間を空けて相対させた状態で、添接板13を用いて連結する構造となっている。
【0027】
ここで、上側芯材12の長さ(下側芯材11と上側芯材12との連結位置)については、芯材5に関し撤去が要求される深さに基づいて設定される。
【0028】
次に、下側芯材11、上側芯材12、及び、これらの連結構造(添接板13等)について、
図2により、詳しく説明する。
【0029】
図2は第1実施形態での芯材の連結部(
図1のX部)の構造を示しており、
図2(A)は正面図、
図2(B)は側面図である。また、
図2(C)は添接板を取外した状態で上側芯材及び下側芯材のボルト挿通孔を示す側面図である。
【0030】
下側芯材11は、H形鋼であり、左右一対の互いに平行なフランジ11a、11aと、両フランジ11a、11aの中央部をつなぐウェブ11bとから構成される。
上側芯材12は、下側芯材11と同一断面形状のH形鋼であり、左右一対の平行なフランジ12a、12aと、両フランジ12a、12aの中央部をつなぐウェブ12bとから構成される。
【0031】
ここにおいて、下側芯材11と上側芯材12とは、下側芯材11の上端部と上側芯材12の下端部との間に、50mm程度の隙間Cを開けて、相対させてある。
【0032】
下側芯材11と上側芯材12との連結手段は、下側芯材11と上側芯材12とに跨がる形で配置される少なくとも2枚の添接板13と、添接板13の下部と下側芯材11とを固定する第1の固定手段(15、16)と、添接板13の上部と上側芯材12とを固定する第2の固定手段(17、18)とを含んで構成される。
【0033】
添接板13は、下側芯材11と上側芯材12とに跨がる形で、フランジ11a、12aの外面にあてがわれる。
尚、添接板13について、図では平板状に示すが、強度向上のため、適宜の補強リブ等を有していてもよい。
【0034】
第1の固定手段は、添接板13の下部と下側芯材11(フランジ11a)の上部とを固定するボルト15及びナット16により構成される。
但し、下側芯材11と添接板13とは、切り離す必要はないので、第1の固定手段については、どのようなものであってよく、溶接固定するようにしてもよい。
【0035】
第2の固定手段は、添接板13の上部と上側芯材12(フランジ12a)の下部とを固定するボルト17及びナット18により構成される。
ボルト17は、添接板13と上側芯材12(フランジ12a)とを貫通し、これらを、ボルト17の頭部とナット18との間で、締め付けるものであり、添接板13及び上側芯材12(フランジ12a)にはボルト挿通孔が形成されている。
【0036】
ここにおいて、前記第2の固定手段については、上側芯材12と添接板13との間で切り離し可能とするため、ボルト17として、通常のボルトではなく、上側芯材12と添接板13との接合面の位置に断面欠損部を有するボルト、具体的にはスリット付きボルトを使用する。
【0037】
スリット付きボルト17は、
図3に示すように、ボルト17の軸部の適当な位置(上側芯材12と添接板13との接合面の位置)にスリット(環状溝)17sを有する。このスリット17sは、例えば、M22のボルトの場合、深さ2.5mmとする。この場合、スリット17s部の直径は17mmで、残存断面積はボルト軸部の断面積の60%程度となる。
【0038】
実験によると、断面欠損部を有するボルトは残存断面積60%程度までは引張強度はほとんど低下しないが、せん断強度は断面積に比例し60%程度となる。
【0039】
従って、上側芯材12の上部に下方向への打撃力(衝撃荷重)を加えることで、前記隙間Cの分、
図4に示すように、上側芯材12が添接板13に対し相対移動し、スリット付きボルト17を破断(せん断破壊)することができ、これにより上側芯材12の引き抜きが可能となる。
【0040】
しかし、ボルト17は、1枚の添接板13に、例えば3×2=6本設けられ、全体では12本と、多数設けられており、これらを全て同時に破壊することは難しい。
【0041】
そこで、本実施形態では、少なくとも上下方向の列で、ボルト17を1本ずつ、あるいは少本数ずつ、時間差を持って破壊できるように工夫している。
【0042】
図2(C)では、上側芯材12に設けられるボルト挿通孔19a~19fについて、上下方向に長い長孔にすると共に、1個ずつ、長孔の長さ、特に上端縁の位置を、例えば10mmずつ変えている。但し、19aは丸孔でよい。
【0043】
これにより、上側芯材12の上部に下方向への打撃力を与えて、上側芯材12を添接板13に対し相対移動させると、
図2(C)のボルト挿通孔19a→19b→19c→19d→19e→19fの順で、対応するボルト17を次々とせん断破壊することができる。
【0044】
図5はこの様子を示し、
図5(A)→(B)で上側のボルト17がせん断破壊され、
図5(B)→(C)で下側のボルト17がせん断破壊されることがわかる。
【0045】
図6は、施工後の上側芯材の撤去方法を示している。
図6(A)の状態から、
図6(B)に示すように、上側芯材12の上端部から下方向に打撃(衝撃荷重)を加える。打撃は圧入機などを用いて与えることができる。これにより、上側芯材12の下端部と添接板13の上部とを固定しているスリット付きボルト17をせん断破壊して、上側芯材12と添接板13との固定を解除する。
【0046】
次に、
図6(C)に示すように、上側芯材12を上方向に引き抜いて撤去する。引き抜きは、引抜機(圧入機を逆利用)、ジャッキ、ワイヤ牽引などを用いて行うことができる。下側芯材11及び添接板13は残置される。
【0047】
完全に埋め戻しが終わってからの、打撃による接続解除、上側芯材の引き抜きであり、作業が容易であると共に、安全である。当然、従来の方法に比較し効率的に作業を進めることができる。
また、ボルトを1本ずつ、あるいは少本数ずつ(グループ単位で)、順番に、破壊していくことができるので、大きな衝撃荷重を必要とせずに、接続機構を破壊することができる。
【0048】
また、衝撃荷重は5~8m深度まで十分に伝わることから、深い深度での上側芯材の切り離し、撤去が容易である。
また、下側芯材11及び添接板13を残して、上側芯材12のみ、すなわち上から下まで同一断面形状のH形鋼のみを引き上げればよいので、引き抜き抵抗を極めて小さく抑えることができる。
【0049】
次に第2実施形態について説明する。
図7は第2実施形態での芯材の連結部(
図1のX部)の構造を示しており、
図7(A)は正面図、
図7(B)は側面図である。また、
図7(C)は添接板を取外した状態で上側芯材及び下側芯材のボルト挿通孔を示す側面図である。
また、
図8(A)は
図7(A)のY部の拡大図、
図8(B)は
図8(A)の右側面図である。
【0050】
本実施形態では、上側芯材12におけるボルト挿通孔19a~19fは、全て同じ、上下方向に長い長孔である。
そして、上側芯材12におけるボルト17頭部の載置面(本例ではフランジ内面)に一体化されて、上側芯材12が下側芯材11の側に移動したときに、ボルト17頭部の座面の下に進入するクサビ部材20(20a~20f)が設けられる。
【0051】
各クサビ部材20a~20fは、ボルト挿通孔(長孔)19a~19fの両側部に沿って各一対設けられる。
【0052】
また、複数のボルト17a~17fに対応して、クサビ部材20a~20fも複数設けられ、各ボルト17a~17fと、対応する各クサビ部材20a~20fとの距離は、ボルト毎に異ならせてある。
【0053】
従って、本実施形態の場合は、上側芯材12の上部に下方向への打撃力を与えて、上側芯材12を添接板13に対し相対移動させると、先ず
図9(A)→(B)に示すように、クサビ部材20aがボルト17a頭部の座面の下に進入する。これにより、スリット付きボルト17aに引張力が作用し、ボルト17aを破断(引張破壊)することができる。
その後、次々と
図8のクサビ部材20b、20c、20d、20e、20fの順で、対応するボルト17b、17c、17d、17e、17fを引張破壊することができる。
【0054】
尚、各クサビ部材20a~20fの最大高さは10mm程度とする。これは、2枚の鋼板幅(ボルト・ナット内内の離れ)が40mm程度のボルトは、5mm程度の伸びで破断するからである。
【0055】
次に第3実施形態について説明する。
図10は第3実施形態での芯材の連結部(
図1のX部)の構造を示しており、
図10(A)は正面図、
図10(B)は側面図である。また、
図10(C)は添接板を取外した状態で上側芯材及び下側芯材のボルト挿通孔(溝孔)を示す側面図である。
また、
図11(A)は
図10(A)のZ部の拡大図、
図11(B)は
図10(A)の右側面図である。
【0056】
本実施形態では、クサビ部材20a、20c、20eは、段違いに高さを変えて一体化してある。また、クサビ部材20b、20d、20fも同様に、段違いに高さを変えて一体化してある。これに対応して、ボルト17a~17fの長さを変えてある。作用については同じである。クサビ部材20a、20c、20e、及び、クサビ部材20b、20d、20fは、独立していても、連続していてもよい。
【0057】
本実施形態では、また、第1及び第2実施形態でのボルト挿通孔(長孔)19a~19fに代えて、ボルト挿通孔(溝孔)21a、21bを設けている。
【0058】
ボルト挿通孔21aは、ボルト挿通孔19a、19c、19eを一列につなげた上下方向に長い長孔であると共に、その一端(下端)が上側芯材12の下端部に達して開口する溝孔となっている。
ボルト挿通孔21bは、ボルト挿通孔19b、19d、19eを一列につなげた上下方向に長い長孔であると共に、その一端(下端)が上側芯材12の下端部に達して開口する溝孔となっている。
【0059】
かかる溝孔方式とすれば、クサビ部材20a~20fによりボルト17a~17fを破断せずとも、引張作用でボルト17a~17fを緩めるだけ、上側芯材12の引き抜きが可能となる。
【0060】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を概略的に例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1 地盤
2 不透水層
3 山留壁
4 ソイルモルタル製の壁体
5 芯材(H形鋼)
6 床付面
7 腹起し
8 切梁
11 下側芯材
12 上側芯材
13 添接板
15 ボルト
16 ナット
17(17a~17f) スリット付きボルト
17s スリット
18 ナット
19a~19f ボルト挿通孔
20(20a~20f) クサビ部材
21a、21b ボルト挿通孔(溝孔)