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特許7195248カム装置、ワーク供給装置及び切り出し装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】カム装置、ワーク供給装置及び切り出し装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 27/02 20060101AFI20221216BHJP
   F16H 27/06 20060101ALI20221216BHJP
   F16H 25/14 20060101ALI20221216BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20221216BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F16H27/02 A
F16H27/06
F16H25/14
B23Q7/04 R
B23Q7/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019235767
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105407
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北辻 秀人
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼本 力
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-130421(JP,A)
【文献】特開2010-167513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 27/02
F16H 27/06
F16H 25/14
B23Q 7/04
B23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部の回転運動を従動側の直線運動に変換するカム装置であって、
上記駆動部に駆動され、回転軸を中心に所定の角度範囲内で正逆方向に往復回転動作する駆動カムと、
上記駆動カムにより間欠的に往復直線動作する一対の第1フォロワ及び第2フォロワと、
上記駆動カムの往復回転動作と共に上記回転軸を中心に回転一体に駆動され、該駆動カムに対向する側が非連続な円弧状外周面を有する保持カムと、
上記第1フォロワに設けられ、上記保持カムに当接することで該第1フォロワが移動するのを規制する第1規制ローラと、
上記第2フォロワに設けられ、上記保持カムに当接することで該第2フォロワが移動するのを規制する第2規制ローラと、を備え、
上記第1フォロワ及び第2フォロワは、
上記駆動カムの回転中心を中心とした両側対向位置において直線移動可能に配置されるとともに、
上記駆動カムが第1フォロワと係合状態にあるときは、該駆動カムは第2フォロワとは係合解除状態となると共に、上記保持カムは、上記第2規制ローラと当接して上記第2フォロワを所定位置に保持する一方、上記第1規制ローラと離れて上記第1フォロワと保持解除状態となり、
上記駆動カムが第2フォロワと係合状態にあるときは、該駆動カムは第1フォロワとは係合解除状態となると共に、上記保持カムは、上記第1規制ローラと当接して上記第1フォロワを所定位置に保持する一方、上記第2規制ローラと離れて上記第2フォロワと保持解除状態となるように、
それぞれ交互に連続し、かつ相互に独立して上記駆動カムとカム係合可能な構成とされている
ことを特徴とするカム装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカム装置において、
上記第1フォロワ及び上記第2フォロワは、付勢部材によって直線移動方向に付勢されないように構成されている
ことを特徴とするカム装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカム装置において、
上記保持カムの半径方向外側には、同心の円弧状内周面を有する外側保持カムがさらに形成されており、
上記外側保持カム及び上記保持カムによって待機側の上記第1フォロワ又は上記第2フォロワが上記第1規制ローラ又は上記第2規制ローラに上下動を規制されるように構成されている
ことを特徴とするカム装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のカム装置を有し、
上記第1フォロワ及び第2フォロワは、ワークチャックが設けられたアームであり、該ワークチャックで掴んだワークをハンドリングするように構成されている
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載のワーク供給装置において、
共通の上記回転軸を中心に複数の上記駆動カムが往復回転動作し、複数対の第1フォロワ及び第2フォロワが往復直線運動するように構成されている
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項6】
駆動部の回転運動を従動側の直線運動に変換するカム装置であって、
上記駆動部に駆動され、回転軸を中心に所定の角度範囲内で正逆方向に往復回転動作する駆動カムと、
上記駆動カムにより間欠的に往復直線動作する1つのフォロワと、
上記駆動カムの往復回転動作と共に上記回転軸を中心に回転一体に駆動され、該駆動カムに対向する側が非連続な円弧状外周面を有する保持カムと、
上記フォロワに設けられ、上記保持カムに当接することで該フォロワが移動するのを規制する規制ローラと、を備え、
上記フォロワは、上記駆動カムの回転中心から所定距離離れた位置において直線移動可能に配置されるとともに、上記駆動カムがフォロワと係合状態にあるときは、上記保持カムは、上記規制ローラと離れて保持解除状態となるように、上記駆動カムとカム係合可能な構成とされている
ことを特徴とするカム装置。
【請求項7】
請求項6に記載のカム装置を有し、
上記フォロワは、パレットの一部を構成し、
上記パレットは、上記駆動カムによって送り方向に搬送されるように構成されている
ことを特徴とする切り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部の回転運動を従動側の直線運動に変換するカム装置、それを備えたワーク供給装置及びカム装置を備えた切り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカム装置として、所定の角度範囲内で正逆方向に往復回転動作する駆動カムと、この駆動カムの往復回転動作により間欠的に往復直線動作する第1及び第2の従動カムとを備えるカム装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12に示すように、この従来のカム装置601において、これら従動カム606a,607aは、駆動カム605の回転中心を中心とした両側対向位置において互いに平行に直線移動可能に配置されるとともに、駆動カム605とそれぞれカム係合可能とされている。
【0004】
このカム装置601では、待機側のアーム(図12のタイミングではアーム606)を上昇端で保持するためにスプリング621の弾発力を利用している。アーム606,607には鉛直方向の穴621aがあり、スプリング621が挿入されている。穴621aの上端は上スプリング受け628により塞がれており、スプリング621の上向きの弾発力を受けることでアーム606,607を支えている。スプリング621の下端はアーム606,607の穴621a内を上下に移動可能な下スプリング受け623により支持されており、下スプリング受け623は下方より調整ボルト622によって支えられている。調整ボルト622はアーム下面の開口を通って下方へ延び、ベース612の下端に設けられたブラケット625により支持される。調整ボルト622はネジ調整式で、下スプリング受け623を上下に移動させることでスプリング621の弾発力を調整する。アーム606,607の上方には上ストッパ624がベース612に取り付けられている。図13に例示するように、スプリング621によって上方へ持ち上げられた待機側アーム606は、上昇端位置で保持される。この構造ではアーム606,607の下降のたびにスプリング621が圧縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-130421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のカム装置では、繰り返し圧縮負荷により、スプリングが折損する故障などでスプリングの寿命が2~3年と短いという問題がある。またその他にも、スプリングの弾発力の調整が必要であり、待機側アームの支持剛性が低く、チャック等のアタッチメントやワークの可搬質量に制約があり、アーム下降時にスプリングを圧縮するため、エネルギー損失が大きく、スプリングの弾発力に抗して組立が必要など多くの問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構造で回転運動を直線運動に変換できるカム機構を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、第1及び第2フォロワの移動を規制する保持カムを設けた。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
駆動部の回転運動を従動側の直線運動に変換するカム装置であって、
上記駆動部に駆動され、回転軸を中心に所定の角度範囲内で正逆方向に往復回転動作する駆動カムと、
上記駆動カムにより間欠的に往復直線動作する一対の第1フォロワ及び第2フォロワと、
上記駆動カムの往復回転動作と共に上記回転軸を中心に回転一体に駆動され、該駆動カムに対向する側が非連続な円弧状外周面を有する保持カムと、
上記第1フォロワに設けられ、上記保持カムに当接することで該第1フォロワが移動するのを規制する第1規制ローラと、
上記第2フォロワに設けられ、上記保持カムに当接することで該第2フォロワが移動するのを規制する第2規制ローラと、を備え、
上記第1フォロワ及び第2フォロワは、
上記駆動カムの回転中心を中心とした両側対向位置において直線移動可能に配置されるとともに、
上記駆動カムが第1フォロワと係合状態にあるときは、該駆動カムは第2フォロワとは係合解除状態となると共に、上記保持カムは、上記第2規制ローラと当接して上記第2フォロワを所定位置に保持する一方、上記第1規制ローラと離れて上記第1フォロワと保持解除状態となり、
上記駆動カムが第2フォロワと係合状態にあるときは、該駆動カムは第1フォロワとは係合解除状態となると共に、上記保持カムは、上記第1規制ローラと当接して上記第1フォロワを所定位置に保持する一方、上記第2規制ローラと離れて上記第2フォロワと保持解除状態となるように、
それぞれ交互に連続し、かつ相互に独立して上記駆動カムとカム係合可能な構成とされている。
【0010】
上記の構成によると、駆動カムを回転させることで、その回転運動が、確実に第1フォロワ及び第2フォロワの直線運動に変換される。また、直線動作中のフォロワに対して反対側のフォロワは、保持カムによって定位置で支持され続ける。そして、駆動カムが係合状態になると、対応する規制ローラが保持カムから離れて保持解除状態となるので、駆動カムの動作にしたがって直線運動可能となる。このため、従来のようにスプリングでフォロワを付勢して定位置に保持する必要がなくなり、部品点数が減って組立が容易になると共に、スプリングを圧縮する際に発生するエネルギー損失が減り、スプリングの劣化によるメンテナンスの手間が減る。また、スプリングの付勢力の微調整の手間が省ける。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記第1フォロワ及び上記第2フォロワは、付勢部材によって直線移動方向に付勢されないように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、特許文献1のようなスプリングを設けなくてもよく、また、重力による鉛直下向きの力を支持する保持カムによって、第1フォロワ及び第2フォロワが落下せず、定位置で支持され続ける。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記保持カムの半径方向外側には、同心の円弧状内周面を有する外側保持カムがさらに形成されており、
上記外側保持カム及び上記保持カムによって待機側の上記第1フォロワ又は上記第2フォロワが上記第1規制ローラ又は上記第2規制ローラに上下動を規制されるように構成されている。
【0014】
上記の構成によると、外側保持カムの内周面によって待機側のフォロワの動きが半径方向外側からも規制されるので、重力によって待機側フォロワの動きを制約する必要がなくなって重力方向の制約を受けなくなるので、フォロワの移動方向を水平方向などにすることもできる。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記第1フォロワ及び第2フォロワは、ワークチャックが設けられたアームであり、該ワークチャックで掴んだワークをハンドリングするように構成されている。
【0016】
上記の構成によると、駆動カムの回転運動を利用してワークのハンドリングを効率的に行える。
【0017】
第5の発明では、第4の発明において、
共通の上記回転軸を中心に複数の上記駆動カムが往復回転動作し、複数対の第1フォロワ及び第2フォロワが往復直線運動するように構成されている。
【0018】
上記の構成によると、複数の駆動カムを同時に回転できるので、複数のワークの同時搬送や、長物ワークを複数のチャックで掴んで搬送する場合などに利用できる。
【0019】
第6の発明では、
駆動部の回転運動を従動側の直線運動に変換するカム装置であって、
上記駆動部に駆動され、回転軸を中心に所定の角度範囲内で正逆方向に往復回転動作する駆動カムと、
上記駆動カムにより間欠的に往復直線動作する1つのフォロワと、
上記駆動カムの往復回転動作と共に上記回転軸を中心に回転一体に駆動され、該駆動カムに対向する側が非連続な円弧状外周面を有する保持カムと、
上記フォロワに設けられ、上記保持カムに当接することで該フォロワが移動するのを規制する規制ローラと、を備え、
上記フォロワは、上記駆動カムの回転中心から所定距離離れた位置において直線移動可能に配置されるとともに、上記駆動カムがフォロワと係合状態にあるときは、上記保持カムは、上記規制ローラと離れて保持解除状態となるように、上記駆動カムとカム係合可能な構成とされている。
【0020】
上記の構成によると、駆動カムを回転させることで、その回転運動が、確実にフォロワの直線運動に変換される。そして、駆動カムが係合状態になると、規制ローラが保持カムから離れて保持解除状態となるので、駆動カムの動作にしたがって直線運動可能となる。このため、フォロワを片側のみにして待機時に駆動カムの回転を外部装置の駆動力として利用することもできる。
【0021】
第7の発明では、第6の発明において、
上記フォロワは、パレットの一部を構成し、
上記パレットは、上記駆動カムによって送り方向に搬送されるように構成されている。
【0022】
上記の構成によると、フォロワを片側のみに設けた場合、駆動カムを360°回転させることもできるので、ローラコンベアと組合わせて、パレット搬送装置の速度制御付き切り出し機構として利用することができる。具体的には、規制ローラが保持カムに接している間は、所定位置で停止され、駆動カムが係合したときには、規制ローラと保持カムとの係合が解除され、パレットが送り方向に搬送される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、駆動カムと共に回転し、駆動カムに駆動されていない側のフォロワを保持する保持カムを設けたので、スプリングを設ける必要がなくなり、簡単な構造で回転運動を直線運動に変換できるカム機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の実施形態に係るカム装置を示す正面図である。
図1B】本発明の実施形態に係るカム装置を示す側面図である。
図2】カム装置の動作を説明する正面図であり、(a)が待機位置を示し、(b)が第2アームが下降する様子を示す。
図3】カム装置の動作を示す正面図であり、(a)が第1アームが下降端にある状態を示し、(b)が第1アームへ切り換えられる状態を示し、(c)が第1及び第2アームが上昇端にあり、駆動カムが中立位置にある状態を示し、(d)が第2アームへ切り換えられる状態を示し、(e)が第2アームが下降端にある状態を示す。
図4】駆動カム及び保持カムを含むカム円板を示し、(a)が平面図で、(b)が正面図で、(c)が側面図である。
図5A】ワークの供給排出サイクルの概要を示す背面図であり、(a)が加工前ワークの受け渡し工程を示し、(b)が加工済ワークの取り出し工程を示し、(c)が加工前ワークの投入工程を示し、(d)が加工済ワークの受け渡し工程を示す。
図5B】ワークの供給排出サイクルの概要を示す平面図である。
図6】実施形態1の変形例1に係るカム装置の概要を示す斜視図である。
図7】実施形態1の変形例2に係るカム装置の概要を示す正面図である。
図8】実施形態1の変形例3に係るカム装置の概要を示す正面図である。
図9】本発明の実施形態2に係るカム装置の概要を示す平面図である。
図10】本発明の実施形態2に係るカム装置の動作を示す平面図であり、(a)が待機状態を示し、(b)がパレット捕捉状態を示し、(c)が送り速度制御状態を示し、(d)が送り出し及び次のパレットの捕捉状態を示す。
図11】実施形態2の変形例に係るカム装置の概要を示す正面図である。
図12】従来のカム装置を示す正面図である。
図13】従来のカム装置の動作の概略を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施形態1)
-カム装置の構成-
図1A図3に本発明の実施形態1に係るカム装置1を示し、このカム装置1は、駆動部の回転運動を従動側の直線運動に変換するものである。具体的には、カム装置1は、例えば、図5A図5Bに示す縦型両頭平面研削盤2のワーク供給装置3の主要部を構成している。
【0027】
このカム装置1は、所定の角度範囲内で正逆方向に往復回転動作する駆動カム5と、この駆動カム5の往復回転動作により間欠的に往復直線動作する一対の第1フォロワ及び第2フォロワとしての第1及び第2アーム6,7とを主要部として備えている。
【0028】
カム装置1は、図4にも示すように、回転中心つまり回転軸10を中心として正逆方向へ回転可能に軸支された回転円板の形態のカム円板9を有し、回転軸10から所定距離だけ離れた外周縁部に駆動カム5を構成する円柱状のカムローラ5aが自由回転可能に軸支されている。図示の実施形態においては、カム円板9の水平に延びる回転軸10が、フレーム状の装置本体12の上部中央に回転可能に軸支されると共に、回転駆動源である駆動部としての駆動装置13に駆動連結されている。
【0029】
この駆動装置13は、サーボモータ14を主要部として備え、このサーボモータ14は、装置本体12に設けられると共に、その出力軸がウォーム減速機15を介してカム円板9の回転軸10に連結されている。したがって、サーボモータ14が正逆方向へ回転駆動することで、この回転がウォーム減速機15を通じて回転軸10に伝達されて、カム円板9がサーボモータ14の回転量に見合う分だけ正逆方向へ往復回転するようになっている。なお、ウォーム減速機15はなくてもよい。
【0030】
図4に拡大して示すように、カムローラ5aは、カム円板9にボルト等よりなるローラ軸5bを中心に回転可能に支持されており、駆動カム5の主要部品を構成している。カムローラ5aがカム円板9の回転中心の垂直上方にあるときを中立位置とする。なお、このカムローラとしては、図4に示す自由回転可能なカムローラ5aの他、目的に応じて、駆動カム5に円柱形状のカム軸部材が一体的に固定される構造でもよい。駆動カム5を回転可能なカムローラ5aで構成することで、摩擦による摩耗、焼き付き、こじれ等の問題を軽減することができる。
【0031】
さらに、カム円板9には、駆動カム5の往復回転動作と共に回転軸10を中心に回転一体に駆動され、第1及び第2アーム6,7を上昇端で待機させる保持カム8が形成されている。この保持カム8は、カム円板9の回転軸10を中心とした、駆動カム5に対向する側が非連続な円弧状外周面を有する円弧状リブで構成されている。例えば、図4に示すように駆動カム5側に所定の回転範囲(角度α)にわたって開口8aが形成され、正面視でC字型に突出形成されている。保持カム8は、少なくとも円弧状外周面を有していればよく、円弧状リブには限定されない。
【0032】
図1A及び図1Bに示すように、第1及び第2アーム6,7は、左右対称の同一構造のものが互いに平行に設けられ、装置本体12上に平行に設けた一対のガイドレール20にそれぞれ取り付けられ、鉛直方向へ直動案内されるように構成されている。なお、第1及び第2アーム6,7は、必ずしも平行でなくてもよく、互いに傾いていてもよい。図1Bに示すように、第1及び第2アーム6,7にはワークWを保持するためのチャック50が水平方向に延びるチャック取付ブラケット51を介してそれぞれ設けられている。本実施形態では、1本のアームに2つのチャック50を設けているが、1つのみ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。これら第1及び第2アーム6,7に設けたチャック50は、例えば、エアシリンダによって適宜開閉される開閉式のチャック爪50aを有し、これらチャック爪50aが垂直下向きに設けられている。チャック50は、真空吸着式であってもよい。なお、チャック爪50aは垂直下向きに設けられている必要はなく、水平向きに設けられていてもよい。また、図1Aでは簡略化のためにチャック50及びチャック取付ブラケット51は省略している。
【0033】
第1アーム6は、装置本体12にスライド機構17により上下方向にスライド可能に設けられたスライド本体16を備え、このスライド本体16の上部が、駆動カム5のカムローラ5aと係脱可能に係合するフォロワを構成している。具体的には、スライド本体16は、その背面上下部位にガイド部材17a,17b(図1B参照)がそれぞれ固設されると共に、これらガイド部材17a,17bが、装置本体12に上下方向へ直線状に延びて設けられたガイドレール20に沿ってスライド可能とされている。つまり、ガイド部材17a,17bとガイドレール20からスライド機構17が構成され、このスライド機構17により、スライド本体16が上下方向へ安定した状態で円滑にスライド走行されるように構成されている。
【0034】
第1アーム6は、スライド本体16の上端部の上記カム円板9側に取付固定された支持ブラケット19に、上下に所定の間隔を隔てて設けられた上下片6a,6bを備えている。これら上下片6a,6bは、その間に形成される係合溝6cに、駆動カム5のカムローラ5aが摺動可能にかつ係脱可能に係合するように、カムローラ5aの形状寸法や回動軌道等を考慮して配置構成されている。同様に、第2アーム7は、スライド本体16の上端部の上記カム円板9側に取付固定された支持ブラケット19に、上下に所定の間隔を隔てて設けられた上下片7a,7bを備えている。これら上下片7a,7bは、その間に形成される係合溝7cに、駆動カム5のカムローラ5aが摺動可能にかつ係脱可能に係合するように、カムローラ5aの形状寸法や回動軌道等を考慮して配置構成されている。
【0035】
一方、第1アーム6には、保持カム8の円弧状外周面に当接することで、第1アーム6が移動するのを規制する第1規制ローラ21が設けられている。同様に、第2アーム7には、保持カム8の円弧状外周面に当接することで、第2アーム7が移動するのを規制する第2規制ローラ22が設けられている。言い換えれば、保持カム8が、カム円板9の所定の回転範囲で、第1規制ローラ21又は第2規制ローラ22を下方から支えることで、第1アーム6又は第2アーム7を上昇端で支持するように構成されている。
【0036】
これら第1規制ローラ21及び第2規制ローラ22を回転可能なローラで構成することで、摩擦による摩耗、焼き付き、こじれ等の問題を軽減することができる。上記保持カム8の開口8aの切り欠き範囲(角度α)は、カム円板9が回転を始めると回転方向側のアームの第1規制ローラ21又は第2規制ローラ22が保持カム8から解除されるように設定されている。
【0037】
このことで、第1及び第2アーム6,7は、駆動カム5が第1アーム6と係合状態にあるときは、駆動カム5は第2アーム7とは係合解除状態となると共に、保持カム8は、第2規制ローラ22と当接して第2アーム7を所定位置に保持する一方、第1規制ローラ21と離れて保持解除状態となり、駆動カム5が第2アーム7と係合状態にあるときは、駆動カム5は第1アーム6とは係合解除状態となると共に、保持カム8は、第1規制ローラ21と当接して第1アーム6を所定位置に保持する一方、第2規制ローラ22と離れて保持解除状態となるように、それぞれ交互に連続し、かつ相互に独立して駆動カム5とカム係合可能な構成とされている。この保持カム8が設けられることで、第1及び第2アーム6,7は、付勢部材によって直線移動方向に付勢する必要がなくなり、第1及び第2アーム6,7の自重は、保持カム8によって保持されるように構成されている。第1及び第2アーム6,7の昇降ストロークSは駆動カム5の回転半径とカム円板9の回転角によって決定され、昇降速度はカム円板9の回転速度により決定される。下降時、上昇時、ワーク保持の有無で速度は自在に設定可能である。また、第1及び第2アーム6,7のどちらを駆動するかは駆動カム5が中立位置から左回転するか右回転するかで切り換えることができるようになっている。さらに、昇降中のアームと逆側のアームは第1規制ローラ21又は第2規制ローラ22が保持カム8により定位置で支持され続けるので、上昇端すなわち待機位置で保持されるようになっている。
【0038】
また、図1Aにおいて、装置本体12のカム円板9の下部に対応する位置には、カムローラ5aに当接可能なカムストッパ11が設けられている。また、装置本体12の下部には、スライド本体16の下端部と当接係合するネジ式の下ストッパ23が設けられている。同様に装置本体12の上部には、スライド本体16の上端部と当接係合するネジ式の上ストッパ24が設けられている。ただし、これらのストッパ11,23,24は第1及び第2アーム6,7又はカム円板9に当接してストロークSを決定するためのものではなく、万が一、駆動カム5が折損したりサーボモータ14が故障した場合に備えたものである。また、装置本体12の上端部には、第1及び第2アーム6,7用の近接センサ25が設けられており、この近接センサ25によって第1及び第2アーム6,7を検知することで、第1及び第2アーム6,7が直線移動初期位置U(図1B等に示す)に上昇配置されたことが判断できるように構成されている。
【0039】
-ワーク供給装置の構成-
次に、このカム装置1を有するワーク供給装置3の構成について具体的に説明する。図5A図5Bに示すように、ワーク供給装置3は、平面研削盤2にワークWを供給するローディング部35及びワークWを排出するアンローディング部36の駆動部として、カム装置1を備えている。なお、図5Aは背面図であり、見やすくするためにカム装置1の背面側は適宜省略して描いている。
【0040】
平面研削盤2は、図5Bに示すように、ワークWの上下両面を同時に研削する上下一対の砥石車26,27を備え、縦型両頭タイプのものである(図面では下側の砥石車27のみを図示している)。これら両砥石車26,27は、ワークWの高さ位置を挟んで上下位置にそれぞれ回転駆動可能に配置されると共に、ベッド55上のワーク供給排出位置P2と砥石車26,27との間でワークWを搬入出するキャリア56が水平移動可能に設けられている。
【0041】
このキャリア56は、中心軸56aを中心として回転又は揺動される構造とされると共に、その両端部には、ワークWを上下方向から挿入保持可能なワークポケット56bが形成されている。このキャリア56の回転又は揺動により、その両端部のワークポケット56b内のワークWが、ワーク供給排出位置P2と、砥石車26,27間の加工位置との間で180°水平往復回転されるように構成されている。
【0042】
搬入コンベア30及び搬出コンベア31は、ワーク供給装置3を通じてワークWを平面研削盤2に搬入出するためのもので、例えばベルトコンベア装置からなる。これら両コンベア30,31のベルト搬送面30a,31aは、ベッド55上のワーク供給排出位置P2とほぼ同一高さに設定されると共に、搬入コンベア30の先端部位及び搬出コンベア31の後端部位がそれぞれワーク搬入位置P1及びワーク搬出位置P3に設定されている。なお、入口出口の搬送装置30,31は、受け渡し位置にてワークWを搬入搬出できるものであれば、コンベアやシャトル、ロボットなど特に限定されることはない。また、ワークWの搬送方向が図5Aと逆(右から左)の場合でも装置の動きを左右反転するだけで対応可能である。
【0043】
ワーク供給装置3は、図1Bに示すように、平面研削盤2の側部に設けられた装置基台40に、上述したカム装置1が水平移動装置41を介して水平移動可能に設けられている。
【0044】
水平移動装置41は、固定側である装置基台40に、上下一対の移動レール42が水平方向へ延びて設けられ、これら移動レール42に、可動側であるワーク供給装置3に取付固定された移動ガイド43が移動走行可能に設けられると共に、ワーク供給装置3を水平方向へ移動させる駆動源44を備えている。この駆動源44は、具体的には図示しないが、ワーク供給装置3と移動レール42との間において移動レール42と平行に延びて設けられたボールネジ機構44aと、このボールネジ機構44aを回転駆動するサーボモータ(図示省略)とを備えている。
【0045】
そして、この水平移動装置41により、図5Bに示すように、ワーク供給装置3のローディング部35とアンローディング部36が、水平方向に配置された、搬入コンベア30によりワークWが搬入されるワーク搬入位置P1と、平面研削盤2のワーク供給排出位置P2と、搬出コンベア31によりワークWが搬出されるワーク搬出位置P3との間で、それぞれ、水平移動して位置決め停止されるように構成されている。
【0046】
図示の実施形態においては、カム装置1の第2アーム7がワーク供給装置3のローディング部35の作動体を構成する一方、第1アーム6がアンローディング部36の作動体を構成している。
【0047】
そして、ワーク供給装置3は、水平移動装置41により水平移動して、ワーク供給装置3のローディング部35とアンローディング部36のいずれか一方が、ワーク搬入位置P1、ワーク供給排出位置P2及びワーク搬出位置P3に位置決めされると共に、これら各位置P1,P2,P3において、上死点(つまり直線移動初期位置)である作動待機位置Uと,下死点である作動位置Dとの間(移動ストロークS)で昇降運動(往復直線運動)して、チャッキング動作するように駆動制御されるように構成されている。
【0048】
-カム装置の作動-
次いで、上述したカム装置1の作動について説明する。
【0049】
本実施形態では、図1A及び図1Bに示すように、カムローラ5aが最上方位置にある状態を中立基準位置とする。図3(c)に示すように、カム円板9が中立位置にあるとき、保持カム8と第1及び第2規制ローラ21,22とが係合し、第1及び第2アーム6,7とも上昇端すなわち待機位置にて保持される。
【0050】
まず、第1アーム6を昇降させる場合について説明する。最初に、カム円板9が中立位置より左方向に回転を始めると、図3(b)に示すように、カム円板9のカムローラ5aが第1アーム6の上下片6a,6b間の係合溝6cに係合する。これとほぼ同時にカム円板9の保持カム8と第1アーム6の第1規制ローラ21との接触が解除される。
【0051】
次いで、図3(a)に示すように、カム円板9の回転に従って第1アーム6が所定の位置まで下降する。
【0052】
次に、カム円板9が逆方向(右方向)へ回転を始めると、第1アーム6が上昇を開始する。
【0053】
その後、図3(c)に示すように、カム円板9が中立位置まで回転すると保持カム8の外周面に第1アーム6の規制ローラ21が接触し、第1アーム6は上昇端で保持される。これにより、第1アーム6の1ストロークS分の昇降動作が行われる。
【0054】
次いで、第2アーム7を昇降させる場合について説明する。まず、カム円板9が中立位置より右方向に回転を始めると、図3(d)に示すように、カム円板9のカムローラ5aが第2アーム7の上下片7a,7b間の係合溝7cに係合する。これとほぼ同時にカム円板9の保持カム8の外周面と第2アーム7の第2規制ローラ22との接触が解除される。
【0055】
次に、図3(e)に示すように、カム円板9の回転に従って第2アーム7が所定の位置まで下降する。
【0056】
次いで、カム円板9が逆方向(左向)へ回転を始めると、第2アーム7が上昇を開始する。
【0057】
その後、図3(c)に示すように、カム円板9が中立位置まで回転すると保持カム8の外周面に第2アーム7の第2規制ローラ22が接触し、第2アーム7は上昇端で保持される。これにより、第2アーム7の1ストロークS分の昇降動作が行われる。
【0058】
なお、駆動カム5の回転角度を上記半円軌道の範囲内で調節することで、第1及び第2アーム6,7の昇降ストロークSを適宜設定することが可能である。
【0059】
カム装置1は、サーボモータ14により駆動カム5が図1において第1アーム6側と第2アーム7側に交互に往復回転制御されることで、上述した工程が繰り返されて、第1及び第2アーム6,7がそれぞれ間欠的に往復直線動作(本実施形態においては上下昇降動作)することとなる。このように本実施形態では、図12及び図13に示すようなスプリング621を設けなくてもよく、また、保持カム8によって、第1アーム6及び第2アーム7が落下せず、定位置で支持され続ける。
【0060】
-ワーク供給装置によるワークWの供給及び排出動作-
以上のように構成された平面研削盤2において、ワーク供給装置3によるワークWの供給及び排出動作は以下のように行われる。
【0061】
(ステップS01)加工前ワークの受け渡し工程では、図5A(a)に示すように、ワーク供給装置3が、ローディング部35が搬入コンベア30のワーク搬入位置P1に位置決めされ、その第2アーム7がワーク搬入位置P1に搬送されてきた加工前のワークWを掴む。すなわち、ローディング部35の第2アーム7は、前述したカム装置1のカム動作により、作動待機位置Uから作動位置Dへと下降し、そのチャック50のチャック爪50aがワーク搬入位置P1のワークWを掴んで保持する。この後、第2アーム7は、前述したカム装置1のカム動作により、作動位置Dから作動待機位置Uへ上昇復帰する。
【0062】
(ステップS02)加工済ワークの取り出し工程では、ワーク供給装置3がワーク搬出位置P3方向へ水平移動して、アンローディング部36が平面研削盤2のワーク供給排出位置P2に位置決めされる。そして、図5A(b)に示すように、第1アーム6がワーク供給排出位置P2に排出された加工後のワークWを掴む。すなわち、アンローディング部36の第1アーム6は、前述したカム装置1のカム動作により、作動待機位置Uから作動位置Dへと下降して、そのチャック50のチャック爪50aが、ワーク供給排出位置P2に停止待機するキャリア56のワークポケット56b内の加工済のワークWを掴んで保持する。その後、第1アーム6は、前述したカム装置1のカム動作により、作動位置Dから作動待機位置Uへ上昇復帰する。
【0063】
(ステップS03)加工前ワークの投入工程では、図5A(c)に示すように、ワーク供給装置3がワーク搬出位置P3方向へ再び水平移動して、ローディング部35がワーク供給排出位置P2に位置決めされ、その第2アーム7がワーク供給排出位置P2に加工前のワークWを載置供給する。すなわち、ステップS01と同様、ローディング部35の第2アーム7は、作動待機位置Uから作動位置Dへと下降して、そのチャック50のチャック爪50aが、保持していたワークWを解放し、ワーク供給排出位置P2上に停止待機するキャリア56の空のワークポケット56b内に載置した後、第2アーム7は、再び作動位置Dから作動待機位置Uへ上昇復帰する。
【0064】
(ステップS04)加工済ワークの受け渡し工程では、図5A(d)に示すように、ワーク供給装置3がワーク搬出位置P3方向へ再び水平移動して、アンローディング部36が搬出コンベア(搬出装置)31のワーク搬出位置P3に位置決めされ、その第1アーム6がカム装置1のカム動作により、作動待機位置Uから作動位置Dへと下降し、そのチャック50のチャック爪50aが、保持していた加工後のワークWをワーク搬出位置P3上に載置する。その後、第1アーム6は、作動待機位置Uへ上昇復帰する。
【0065】
(ステップS05)ワーク供給装置3が図5A(a)において左方向(復帰方向)へ水平移動してワーク搬入位置P1に復帰し、以後ステップS01~S04の工程が順次連続して繰り返される。一方、ステップS03により、ワーク供給排出位置P2に供給された加工前のワークWは、図5Bに示すように、キャリア56の回転又は揺動により、砥石車26,27間の加工位置へ移動されると共に、その上下両面に回転駆動する砥石車26,27による平面研削が施される。研削を完了したワークWは、再びキャリア56の回転又は揺動により、ワーク供給排出位置P2に排出されると共に、ステップS02により搬出コンベア31へ搬出される。
【0066】
このように、本実施形態におけるカム装置1においては、単一の駆動カム5により一対の第1及び第2アーム6,7が直線動作する構造を採用することで、第1及び第2アーム6,7の作動領域が駆動カム5の昇降ストロークSとほぼ同じであることから、カム装置1の装置構造の小型簡素化が可能となる。この結果、ワーク供給装置3のローディング部35及びアンローディング部36の作動領域も小さくてよく、ワーク供給装置3の小型簡素化により設置空間も小さくできる。しかも、ローディング部35及びアンローディング部36の第1及び第2アーム6,7の駆動源が単一の共用のものであり、この点からもワーク供給装置3の小型化と装置コストの低減化を図ることができ、第1及び第2アーム6,7の駆動制御も機械的に同期して行われて、制御系統の簡素化が可能である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、駆動カム5を回転させることで、その回転運動が、確実に第1及び第2アーム6,7の直線運動に変換される。直線動作中のアームに対して反対側のアームは、保持カム8によって定位置で支持され続ける。そして、駆動カム5が係合状態になると、対応する規制ローラが保持カム8から離れて保持解除状態となるので、駆動カム5の動作にしたがって直線運動可能となる。このため、図12及び図13に示す従来のようにスプリング621でアームを付勢して定位置に保持する必要がなくなり、部品点数が減って組立が容易になると共に、スプリング621を圧縮する際に発生するエネルギー損失が減り、スプリング621の劣化によるメンテナンスの手間が減る。また、スプリング621の付勢力の微調整の手間が省ける。
【0068】
したがって、本実施形態に係るカム装置1によると、簡単な構造で回転運動を直線運動に変換できるカム機構を実現することができる。また、カム装置1は、特許文献1のようなスプリング621を有するものに比べて構成部品が少なく、組立及び調整が容易であると共に、省スペースかつ軽量で、低コストである。また、カム装置1は、カム円板9の回転方向及び速度を制御するだけでよく、電気制御系統がシンプルで低コストかつ省エネである。さらに、カム装置1は、確動カム駆動のため、信頼性が高く、高剛性高精度かつ長寿命である。
【0069】
なお、図示しないが、待機側のアームは、他方のアームが昇降動作中に上方へ引き抜くことができる。また、カム円板9を180°以上回転させることで、駆動カム5がアームの係合溝6c,7cから抜けるので、アームを下方へ引き抜くことも可能である。これを利用してアームの交換を行うこともできる。
【0070】
-変形例1-
図6は本発明の実施形態1の変形例1に係るカム装置101を示し、このカム装置101では、カム装置1の並列化が図られている。具体的には、1本の回転軸10で複数のカム円板9が回動する点が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の変形例及び実施形態では、図1A図5Bと同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0071】
本変形例では、共通の回転軸10を中心に複数の駆動カム5が往復回転動作し、複数対の第1及び第2アーム6,7が往復直線運動するように構成されている。それぞれのカム装置1の作動は上記実施形態1と同様である。
【0072】
本実施形態は、複数の駆動カム5を同時に回転できるので、複数のワークWの同時搬送や、長物ワークを複数のチャック50で掴んで搬送する場合などに利用できる。
【0073】
-変形例2-
図7は、本発明の実施形態1の変形例2に係るカム装置201を示し、このカム装置201では、カム装置1の多軸化が図られている。
【0074】
具体的には、本実施形態は、回転軸10を中心に回転されるプーリ111に掛けられたベルト112を介して他の駆動カム5を同時に駆動し、複数対の第1及び第2アーム6,7が往復直線運動するように構成されている。
【0075】
本実施形態では、複数の第1アーム6,6又は第2アーム7,7の同時制御が可能であるため、例えば、複数の工作機械へのワークWの同時搬送などに利用できる。
【0076】
-変形例3-
図8は、本発明の実施形態1の変形例3に係るカム装置301を示し、保持カム8の半径方向外側には、同心の円弧状内周面を有する外側保持カム308がさらに形成されている。この外側保持カム308及び保持カム8によって、待機側の第1アーム6又は第2アーム7が第1規制ローラ21又は第2規制ローラ22に上下動を規制されるように構成されている。
【0077】
本実施形態では、外側保持カム308の内周面と保持カム8の外周面によって第1規制ローラ21及び第2規制ローラ22が挟まれて待機側のアームの動きが規制されるので、自重を利用して待機側アームの動きを制約する必要がなくなって重力方向の制約を受けなくなる。このため、第1及び第2アーム6,7の移動方向を水平方向などにすることもできる。また、アーム待機時に下方から反力を受けるような場合の対応が可能となる。なお、外側保持カム308は、円弧状内周面を有していればよく、円弧状リブに限定されない。
【0078】
(実施形態2)
図9及び図10は本発明の実施形態2に係るカム装置401を示し、1つのフォロワ407のみ備える点で、上記実施形態1と異なる。
【0079】
本実施形態でも、駆動装置13の回転運動を従動側の直線運動に変換するカム装置401を有する点は同じであるが、本実施形態では、一対のフォロワではなく、1つのフォロワとしてのフォロワ407のみを備えている。カム装置401は、上記実施形態1と同様に保持カム8及び規制ローラ422を備えている。
【0080】
本実施形態では、フォロワ407は、駆動カム5の回転中心から所定距離離れた位置において搬送方向に直線移動可能に配置されるとともに、駆動カム5がフォロワ407と係合状態にあるときは、保持カム8は、規制ローラ422と離れて保持解除状態となるように、駆動カム5とカム係脱可能な構成とされている。
【0081】
フォロワ407は、パレット411の一部を構成し、このパレット411には、上記実施形態1と同様に駆動カム5が係合する係合溝418cが形成されている。これにより、本実施形態のカム装置401では、駆動カム5によってパレット411が送り方向に搬送されるように構成されている。
【0082】
続いて、本実施形態のカム装置401の作動について説明する。
【0083】
まず、図9に示すように、複数のパレット411をローラコンベア430上に設置する。
【0084】
図10(a)に示すように、パレット411がローラコンベア430上を移動してくると、図10(b)に示すように、流れてきたパレット411の規制ローラ422が保持カム8の円弧状外周面に当接するので、パレット411は、その場で一旦捕捉され、ローラコンベア430上で停止する。
【0085】
その後、図10(c)に示すように、駆動カム5が係合溝418cに嵌まり込むときには、規制ローラ422と保持カム8との係合が解除され、カム円板9の回転速度を制御することで、その搬送速度を調整されながら、パレット411が送り出される。
【0086】
図10(d)に示すように、次のパレット411は、前のパレット411の送り出し動作中に捕捉することが可能である。
【0087】
このように、規制ローラ422が保持カム8の外周面に接している間は、パレット411が所定位置で停止され、駆動カム5が係合したときには、規制ローラ422と保持カム8との係合が解除され、パレット411が送り方向に搬送される。このことで、ストッパと送り出し機構を1つのカム装置401でまかなえる利点がある。
【0088】
本実施形態のようにフォロワ407を片側のみに設けた場合、駆動カム5を360°回転させることもできるので、ローラコンベア430と組合わせて、パレット搬送装置の速度制御付き切り出し機構として利用することができる。また、駆動カム5がパレット411の係合溝418cに係合している間、パレット411を駆動カム5の回転に伴って搬送方向に確実に所望の速度等で搬送することができる。
【0089】
-変形例-
図11は、本発明の実施形態2の変形例に係るカム装置501を示し、外部装置の駆動力として利用する点が上記実施形態2と異なる。
【0090】
本変形例では、フォロワ507が片側にのみ設けられているため、このフォロワ507の規制ローラ522が保持カム8の外周面に当接してフォロワ507が待機しているとき、駆動カム5の回転を図示しない外部装置の駆動力として利用することもできる。なお、ここでいう外部装置は、特に限定されない。
【0091】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0092】
すなわち、上記実施形態1においては、カム装置1が縦型両頭平面研削盤2のワーク供給装置3に採用されているが、本発明のカム装置は横型平面研削盤を含めた他の工作機械のワーク供給装置の他、同様な動作を行う他の加工機や組立装置、あるいはこれら各種装置の構成部位にも採用可能である。
【0093】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0094】
1,101,201,301,401,501 カム装置
2 平面研削盤
3 ワーク供給装置
5 駆動カム
6 第1アーム(第1フォロワ)
7 第2アーム(第2フォロワ)
8 保持カム
10 回転軸
12 装置本体
13 駆動装置(駆動部)
21 第1規制ローラ
22 第2規制ローラ
308 外側保持カム
407 フォロワ(1つのフォロワ)
422 規制ローラ
430 ローラコンベア
507 フォロワ(1つのフォロワ)
522 規制ローラ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13