(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】蒸留生成物を最大化するための炭化水素の変換プロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 65/10 20060101AFI20221216BHJP
B01J 23/28 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C10G65/10
B01J23/28 M
(21)【出願番号】P 2019515611
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2017055691
(87)【国際公開番号】W WO2018055520
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】201621032243
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】317004494
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ、 カヌーパーシー ナーガ
(72)【発明者】
【氏名】プディ、サチャナラヤナ マーティ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、バベシュ
(72)【発明者】
【氏名】ペディ、 ベンカタ チャラパティ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ネッテム、 ベンカテスワルル チョーダリー
(72)【発明者】
【氏名】ガンダム、 スリガネッシュ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0221709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275676(US,A1)
【文献】特表2008-540773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素から軽質蒸留生成物への変換プロセスであって、以下の工程:
i 水素及び第一の触媒の下で、温度範囲300℃~500℃、優先的に320℃~480℃、圧力範囲2bar~80bar、優先的に15bar~50barで前記の炭化水素を水素化分解して、第一の水素化分解生成物を得る工程であって、
前記水素化分解は、15分から4時間掛けて実行さ
れる工程、
ii 前記の第一の水素化分解生成物を分画し、沸点180℃以下の第一の上層生成物、沸点180℃超370℃以下の中層留分、沸点370℃超の下層留分を得る工程、
iii 前記の下層留分を分画し、沸点370℃超540℃未満の真空軽油と沸点540℃以上の真空残留物を得る工程、
iv 工程(iii)で得た前記の真空残留物の第一の部分を水素と第二の触媒の下で温度範囲300℃~500℃、優先的に320℃~480℃及び圧力範囲2bar~250bar、優先的に2bar~150barで水素化分解して第二の水素化分解生成物を得る工程、
v 第二の部分前記の真空残留物を工程(i)へ還流する工程、
vi 前記の第二の水素化分解生成物を分画し、沸点180℃以下の炭化水素留分を含む第二の上層生成物、沸点180℃未満の炭化水素留分を含む第一の生成物、沸点180℃超370℃以下の炭化水素留分を含む第二の生成物、沸点370℃超の炭化水素留分を含む第三の生成物を得る、ここに沸点370℃以下の炭化水素の総歩留まりは50%~80%の範囲である工程で構成され、
前記工程viで得られた第三の生成物を分画し、沸点440℃超の留分を前記の第三の生成物から分離し、
前記の分離した沸点440℃超の留分を工程(i)に投入し、
工程(i)へリサイクルされる前記の分離した留分の量は、新鮮な炭化水素材料の50wt%を超えない、
プロセス。
【請求項2】
前記の炭化水素は原油、油砂、瀝青油、瀝青油砂、シェールオイルからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記の第一の触媒と前記の第二の触媒は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群からそれぞれ別個に選択される少なくとも一つの金属または前記金属の化合物からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(i)における前記の第一の触媒の量は前記の炭化水素のうち0.001wt%~10wt%を占め、プロセス(iv)において前記の第二の触媒の量は前記の炭化水素の0.01wt%~10wt%を占める、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(iv)における水素化分解は30分から6時間掛けて実行される、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は軽質蒸留生成物の歩留まり向上を実現する原油の水素化分解の統合プロセスに関する。
【0002】
用語の定義
本発明で使用される以下の用語は一般的に次の定義の意味を持つものとして意図されており、文脈上別段の意味を示す場合を除く。
【0003】
SIMDISTとは、石油製品の定性を行うためにガスクロマトグラフィー(GC)を利用した方式である蒸留シミュレーションを意味する。
ASTM D-7169 は高温ガスクロマトグラフィーを利用した原油及び残留物の沸点分布と留分境界点の間隔を決定するテストである。
軽質蒸留生成物とは沸点が370 ℃以下の炭化水素から成る蒸留留分を指す。
バスラ原油はイラク産原油である。
カスティリャ原油は南米産原油である。
【0004】
発明技術の背景
従来、石油精製所において蒸留装置を使用して原油を異なる沸点留分の貴重な燃料製品に点検する。これらの直接転換された製品を様々なプロセスで分離して処理し、市販可能な製品品質を得ている。従来のプロセスでは原油の変換は蒸留塔などの処理装置数を増やすことで増産してきた。しかしこれではプロセス全体の複雑度が増す。
【0005】
軽質蒸留生成物に対する世界需要は指数的に急増している。こうした蒸留生成物の歩留まりを最大化するため、水素化分解プロセスを通して重質炭化水素を付加価値のある蒸留生成物に水素雰囲気下で変換する。水素化処理あるいは水素化分解は原油を直接投入可能な製品まで分離した後に蒸留塔などの下流処理施設で実行している。水素化処理においては、ナフサや軽油、サイクルオイルなどの炭化水素を処理して硫黄と窒素成分を炭化水素から除去したり改質してオクタン価の高い軽質炭化水素を取得する。
【0006】
従来、精製所では、原油を様々な留分に分離し、留分をその他の下流工程で変換しているので、必要なエネルギー消費が増大し、全工程が不経済となっている。さらに、環境基準が厳格になったので省エネ製品を取得するための水素化処理技術に焦点が集まる。
【0008】
さらに、独立型精製コンビナートで生産されるオレフィン類はごく限られる。石油化学工場にとって、オレフィン類の生産は必須であり、ナフサ等の材料を蒸気で分解して生産する。この工程が工場を複雑化し、資本コストを増大させる。
このため前記の課題に対処して、貴重な石油留分の歩留まりを高めるプロセスが必要であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の目的
本発明の目的の一部は少なくとも1つの実施例を本明細書において取り上げることでじゅうぶんであるが、以下のものである。
先行技術の持つ一つまたは複数の課題を改善するかまたは少なくとも有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
軽質蒸留生成物の歩留まりを高める炭化水素の水素化処理用プロセスを提供することが本発明のもう一つの目的である。
簡素かつ経済的な統合プロセスを提供することが本発明のさらにもう一つの目的である。
本発明のその他の目的と優位性は本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない次の悦明によってさらに明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約:
本発明は炭化水素から軽質蒸留生成物への変換用プロセスを提供する。 このプロセスは水素及び第一の触媒の下で、温度範囲300 ℃ ~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃、圧力範囲2 bar~80 bar、優先的に15 bar~50 barでの炭化水素の水素化分解により第一の水素化分解生成物を得る。第一の水素化分解生成物を分画して沸点180 ℃以下の第一の上層生成物、沸点180 ℃超370 ℃以下の中層留分、沸点370 ℃超の下層留分を得る。下層留分を分画して沸点370 ℃以上540 ℃未満の真空軽油及び沸点540 ℃以上の真空残留物を得る。
【0011】
下層留分の分画工程で得た真空残留物の第一の部分を水素と第二の触媒の下で温度範囲300 ℃~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃及び圧力範囲2 bar~250 bar、優先的に2 bar~150 barで水素化分解して第二の水素化分解生成物を得る。真空残留物の第二の部分を炭化水素の水素化分解工程(第一のプロセスに)へ回収する。第二の水素化分解生成物を分画して沸点180 ℃以下の炭化水素留分を含む第二の上層生成物、沸点180 ℃超370 ℃以下の炭化水素留分を含む第二の生成物及び沸点370 ℃超の炭化水素留分を含む第三の生成物を得る。沸点370 ℃以下の炭化水素の総歩留まりは範囲50 % ~80 %である。
【0012】
炭化水素は原油、油砂、瀝青油、瀝青油砂、シェールオイルからなる群から選択する。
第一の触媒と第二の触媒は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群からそれぞれ別個に選択する少なくとも一つの金属または前記金属の化合物からなる。
第一の触媒量は炭化水素に占める範囲0.001 wt%から10 wt%、第二の触媒量は炭化水素に占める範囲0.01 wt%から10 wt%である。
炭化水素の水素化分解工程は時間範囲15分から4時間実行する。第一の部分真空残留物の水素化分解工程時間範囲30分から6時間実行する。
第一の上層生成物に含まれる水素量は投下する新鮮な材料の範囲0.2 wt%~17 wt%である。
この工程はさらに第一の上層生成物に発生した水素の分離及び炭化水素の水素化分解工程への水素還流から成る。
この工程はさらに第三生成物の分画及び第三生成物から沸点440 ℃超の留分を分離することから成る。沸点440 ℃超の分離した留分を炭化水素の水素化分解工程に導入する。
水素化分解の第一の処理ステップに還流する沸点440 ℃超の分離した留分の量は新鮮な材料の50 wt%を超えない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
炭化水素を蒸留生成物に変換するプロセスを付帯図面を用いて説明する。図面は以下の通りである:
【0014】
【
図1】
図1は本発明による炭化水素の蒸留生成物への変換を示すフローチャートである。
【0015】
参照番号凡例
第一の水素化分解装置 1
第一の水素化分解生成物 1A
第一の触媒 2
水素 3
第一の分留装置 4
第一の上層生成物 4A
中層留分 4B
下層留分 4C
第二の分留装置 5
真空軽油 5A
真空残留物 5B
第二の水素化分解装置 6
第二の水素化分解生成物 6A
第三の分留装置 7
第二の上層生成物 7A
第二の生成物 7B
第三の生成物 7C
炭化水素 8
分離した留分 10
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
従来、精製所では、原油を原油蒸留装置(CDU)で処理して多種多様な炭化水素製品を得てきた。しかしこれらのプロセスが複雑で従来方式で得る製品はさらに精製/変換ステップを要した。
【0017】
従って、本発明は上記の不利な点を克服する軽質蒸留生成物を取得するための炭化水素の変換用プロセスを提供する。
【0018】
このプロセスを
図1に示すフローチャートを参照しつつ下記に説明する。
炭化水素(8)を第一の水素化分解装置(1)の中で、水素(3)と第一の触媒(2)の下で温度範囲300 ℃~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃、圧力範囲2 bar~80 bar、優先的に15 bar~50 barで水素化分解し、第一の水素化分解生成物(1a)を得る。本発明の一実施形態に従い、第一の水素化分解装置(6)に投入する前にポリメチルシロキサン、腐食阻害剤、スルホン酸系生体界面活性剤等のシリコーン系消泡剤を炭化水素(8)に添加することができる。水素化分解工程を15分~4時間の範囲で実行する。本発明の一実施形態に従い、炭化水素(8)を350 ℃未満で予熱ゾーンにおいて予熱してから、炭化水素(8)を第一の水素化分解装置(1)に投入する
。
炭化水素(8)は原油、油砂、瀝青油、瀝青油砂、シェールオイルからなる群から選択する。
【0019】
本発明の一実施形態に従い、変換の際に使用した炭化水素(8)のAPI (American Petroleum Institute)度は範囲7°~50°、優先的に10°~40°である。炭化水素(8)の硫分は0.05 wt%~5 wt%、優先的に0.1 wt%~3.5 wt%である。炭化水素(8)の窒素成分は0.1 wt%~1 wt%、優先的に0.2 wt%~0.5 wt%である。炭化水素(8)の全酸価(TAN)は範囲0.01 mg~0.1 mg KOH/g、優先的に0.12 mg~0.5 mg KOH/gである。炭化水素(8)の水分は1.5 wt%未満、優先的に0.1 wt%未満であり、炭化水素(8)のコンラドソン残留炭素分(CCR)は1 wt%~30 wt%、優先的に1 wt%~20 wt%である。
【0020】
第一の触媒(2)はコロイド分散触媒、スラリー相分散触媒、油溶性触媒、水素化処理触媒からなる群から選択する少なくとも一つの形態を成す。第一の触媒(2)はクロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群からそれぞれ別個に選択する少なくとも一つの金属またはその化合物からなる。第一の触媒(2)の量範囲は炭化水素(8)に占める割合が0.001 wt%~10 wt%である。
【0021】
第一の水素化分解装置(1)は連続攪拌タンク反応器(CSTR)、固定床反応器、気ほう塔反応器、沸騰床反応器あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択する少なくとも一つである。本発明の一実施形態に従い、第一の水素化分解装置(1)は直列、並列、直並列からなる群から選択する少なくとも一つの構成の反応器から成る。
【0022】
第一の水素化分解生成物 (1a)を第一の分留装置(4)に投入する、ここに第一の水素化分解生成物 (1a)を分画して沸点180 ℃以下の第一の上層生成物(4a)、沸点180 ℃超370 ℃以下の中層留分(4b)、沸点370 ℃超の下層留分 (4c)を得る。
【0023】
第一の上層生成物(4a)は生産された水素、乾性ガス、液化石油ガス(LPG)、ナフサを含む。水素を第一の上層生成物(4a)から分離し、浄化し、第一の水素化分解装置(1)に投入する。本発明の一実施形態に従い、第一の上層生成物で生産される水素量は投下する新鮮な材料の範囲0.2 wt%~17 wt%である。生産された水素は水素化分解の第一のプロセスへ還流する。オレフィン類も水素化分解の工程で生産されるが、ここにオレフィン類は炭素原子数が範囲C
2
~C
5
に及ぶ。
【0024】
本発明に従い、ナフサを水素処理装置または異性化装置または触媒改質装置へ送る。中層留分(4b)には灯油及びディーゼルが含まれ、これらは下流処理装置へ送られて硫黄、窒素等の他核を含む不純物を除去する。本発明の一実施形態に従い、第一の分留装置(4)は少なくとも一つの常圧蒸留塔である。
【0025】
下層留分(4c)は第二の分留装置(5)に投入されるが、ここに、下層留分(4c)を分画して沸点370 ℃超540 ℃未満の真空軽油(5a)及び沸点540 ℃以上の真空残留物(5b)を得る。本発明に従い、真空軽油(VGO)を流動接触分解装置(FCCU)、VGO水素処理装置、VGO水素化分解装置、潤滑油処理装置からなる群から選択する少なくとも一つの処理装置に投入してさらに変換または処理する。本発明の一実施形態に従い、第二の分留装置(5)は少なくとも一つの真空分画塔である。
【0026】
上記の工程で得た真空残留物の第一の部分(5b)を、水素と第二触媒の入った第二水素分解装置(6)により温度範囲300 ℃~500 ℃、優先的に320 ℃~480 ℃及び圧力範囲2 bar~250 bar、優先的に2 bar~150 barで、水素化分解して第二の水素化分解生成物(6a)を得る。本発明の一実施形態に従い、ポリメチルシロキサン、腐食阻害剤、スルホン酸系生体界面活性剤等のシリコーン系消泡剤を真空残留物の第一の部分(5b)に添加し、次に、真空残留物の第一の部分(5b)を第二水素分解装置(6)に投入する。水素化分解工程を30分~6時間の範囲で実行する。
【0027】
第二の触媒はコロイド分散触媒、スラリー相分散触媒、油溶性触媒、水素化処理触媒からなる群から選択する少なくとも一つの形態を成す。第二の触媒はクロム、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、ルテニウム、ロジウム、錫、タンタルからなる群から選択する少なくとも一つの金属または金属化合物からなる。第二の触媒の量範囲は投入した原材料(8)に占める割合が0.01 wt%~10 wt%である。さらに、真空残留物の第二の部分(5b)は第一の水素化分解装置(1)へ還流する。
【0028】
第二の水素化分解生成物(6a)を第三の分留装 (7)に投入し、ここで、第二の水素化分解生成物(6a)を分画して沸点180 ℃以下の炭化水素留分を含む第二の上層生成物(7a)及び沸点180 ℃超370 ℃以下の炭化水素留分を含む第二の生成物(7b)、さらに沸点370 ℃超の炭化水素留分を含む第三の生成物(7c)を得る。第三の生成物(7c)をさらに流動接触分解装置、VGO水素化分解装置、重質油熱分解装置、ビスブレーカー、ビチューメンブロー装置等の別の処理装置で処理する。第二の上層生成物(7a)は各種ガス、LPG、ナフサを含み、第二の生成物(7b)には灯油及びディーゼルを含む。本発明に従い、ナフサを蒸気の下で改質して水素を生成するか異性化する。第二の生成物(7b)には灯油及びディーゼルを含むがこれを下流処理装置へ送り、硫黄、窒素等の他核を含む不純物をさらに除去する。本発明の一実施形態に従い、第三の分留装置(7)は一種の常圧蒸留塔である。第三の生成物(7c)は第一の水素化分解装置(1)へ還流してもよい。
【0029】
この工程はさらに第三の生成物分画及び第三の生成物から沸点440 ℃超の留分(10)を分離することから成る。分離した留分(10)は第一の水素化分解装置(1)へ還流する。本発明の一実施形態に従い、第一の水素化分解装置へ還流する分離した留分(10)の量は第一の水素化分解装置(1)に投入される新鮮な材料の50 wt%を超過しない。
【0030】
本発明のプロセスによると、水素化分解装置内の分留装置で得る床処理により歩留まりが改善した軽質炭化水素(軽質蒸留生成物)を取得できる。ある実施形態において、沸点370 ℃以下の炭化水素の総歩留まり範囲は50 %~80 %である。さらに、本発明のプロセスからは硫黄、窒素等の他核を含む不純物成分が少ない炭化水素を得ることができる。
【0031】
本発明を以下の実験室規模の実験に基づいてさらに説明する。但し、以下の例は説明のためにのみ既述されており、本発明の範囲を限定するものとは解釈されてはならない。以上のラボスケールの実験を工業/商業スケールに大規模化することができ、得られる結果は工業/商業スケールまで外挿することができる。
【0032】
実験内容:
実験1:原油の水素化分解(バスラ原油)
水素化分解実験装置(バッチリアクター)に原油100 gと1000 ppmのモリブデン含有触媒スラリーを投入した。水素化分解実験装置を窒素でパージして内部から気泡を除去する。窒素でパージ後、水素化分解実験装置を水素で15 barに加圧する。
原油を420 ℃で水素及び触媒スラリーの存在下で1000 rpmで20分連続攪拌し水素化分解し、水素化分解生成物を得る。
水素化分解生成物を実験的常圧蒸留塔に投入し、ここに各種の留分を沸別に分離し、ASTM D86に従って沸点180 ℃以下の上層生成物、沸点180 ℃超370 ℃以下の中層留分、沸点370 ℃超の下層留分を得る。
下層留分をASTM D5236にいう実験要真空分画塔に投入し、沸点370 ℃超540 ℃未満の 真空軽油と沸点540 ℃以上の真空残留物を得る。
第一の部分真空残留物を水素及び、10000 ppmのモリブデンを含む触媒スラリーの存在下で450 ℃、100 barで3時間水素化分解し、第二の水素化分解生成物を得る。
第二の水素化分解生成物をASTM D86とASTM D5236に従い異なる留分境界点に分離する。実験的分留装置から得た液体生成物を別個に回収し、GC-SIMDISTを使用してASTM D-7169に従い分析する。
【0033】
本発明のプロセスを使用せずに軽質炭化水素の歩留まりがいかに異なるかを特定するため、原油を実験的常圧蒸留塔に直接投入する。原油を実験的常圧蒸留塔で加熱し、異なる留分を沸点別に分離する。実験的常圧蒸留塔から得た液体生成物を別個に回収し、を使用してASTM D-7169に従い分析する。
【0034】
本発明のプロセスを使用するか使用しないことによる軽質炭化水素の歩留まり格差を表1にまとめた。
【0035】
【0036】
表1より、 本発明のプロセスを使用して得た軽質蒸留生成物(沸点 370 ℃以下の炭化水素)の歩留まりのほうが従来プロセスで得られた分量より多いことは明白である。表1、従来プロセスを使用した場合、沸点 180 ℃超370 ℃以下の留分の歩留まりが30.63 wt%、沸点370 ℃超の留分歩留まりが29.59 wt%であることが読み取れる。しかし、本発明のプロセスを使用した場合、沸点180 ℃以下と 180 ℃超 370 ℃以下の留分歩留まりは従来より多い。すなわち本発明のプロセスを使用すると軽質蒸留生成物の歩留まりが改善することを示している。
【0037】
実験2:原油の水素化分解(カスティリャ原油)
水素化分解実験装置(バッチリアクター)に原油100 gと3000 ppmのモリブデン含有触媒スラリーを投入した。水素化分解実験装置を窒素でパージして内部から気泡を除去する。窒素でパージ後、水素化分解実験装置を水素で15 barに加圧する。
原油を450 °Cで水素及び触媒スラリーの存在下で1000 rpmで20分連続攪拌し水素化分解し、水素化分解生成物を得る。
水素化分解生成物をASTM D86に従い実験的常圧蒸留塔に投入し、ここに各種の留分を沸別に分離し、ASTM D86に従って沸点180 ℃以下の上層生成物、沸点180 ℃超370 ℃以下の中層留分、沸点370 ℃超の下層留分を得る。
下層留分をASTM D5236の実験要真空分画塔に投入し、沸点370 ℃超540 ℃未満の 真空軽油と沸点540 ℃以上の真空残留物を得る。
第一の部分真空残留物を水素及び、10000 ppmのモリブデンを含む触媒スラリーの存在下で440 °C、120 barで3時間水素化分解し、第二の水素化分解生成物を得る。
第二の水素化分解生成物をASTM D86に従う別の実験的常圧蒸留塔に投入する。実験的分留装置から得た液体生成物を別個に回収し、GC-SIMDISTを使用してASTM D-7169に従い分析する。
【0038】
本発明のプロセスを使用せずに軽質炭化水素の歩留まりがいかに異なるかを特定するため、原油を実験的常圧蒸留塔に直接投入する。原油を実験的常圧蒸留塔で加熱し、異なる留分を沸点別に分離する。実験的常圧蒸留塔から得た液体生成物を別個に回収し、を使用してASTM D-7169に従い分析する。
【0039】
本発明のプロセスを使用するか使用しないことによる軽質炭化水素の歩留まり格差を表2にまとめた。
【表2】
【0040】
表2より、 本発明のプロセスを使用して得た軽質蒸留生成物(沸点 370 ℃以下の炭化水素)の歩留まりのほうが、従来プロセスで得られた分量より多いことは明白である。表2から、従来方式を使用すると、沸点180 ℃超370 ℃以下の留分の歩留まりが23.9 wt%、沸点 370 ℃超の留分の歩留まりは67.1 wt%であることが読み取れる。一方、本発明のプロセスを使用したとき沸点180 ℃以下、180 ℃~370 ℃の留分歩留まりが比較的増加した。すなわち本発明のプロセスを使用すると軽質炭化水素の歩留まりが改善することを示している。
【0044】
技術的進歩と経済的意義
上記に説明された本発明は以下の特性を有するプロセスの実現に限らず、これを含む数個の技術的進歩を有する:
・高歩留まりの軽質炭化水素取得
・重質炭化水素から軽質炭化水素(軽質蒸留生成物)への変換効率改善
・水素及びオレフィン類をこのプロセスで生産できる
・分離あるいは分画ステップの前に炭化水素を水素化分解して石油精製所全体の効率を改善でき、さらに
・簡素かつ経済的である。
【0045】
本明細書を一貫して用語「成す」「構成する」やその類語としての「組成する」または「なしている」は記載されている要素、整数または手順または要素、整数または手順の群を含むがその他の要素、整数または手順またはその他の要素、整数または手順の群を除くことことなくこれらを含むことを含意している。
【0046】
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために、本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。本発明のいくつかの実施形態が説明されたが、これらの実施形態は例までとしてのみ記載されているのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の調製に関する処方または変更は、本発明の範囲内である限り、本発明を検討すれば直ちに、当分野に関する技能を有する者には可能でありうる。このような変種や変更は本発明の意図する範囲に含まれる。
【0047】
異なる物理パラメータ、寸法や数量を表す数値は概数であって、物理パラメータ、寸法や数量に代入された数値より高い値は本発明の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に逆の記載がなされている場合はこの限りではない。
【0048】
本発明の特定の特長を相当強調してきたが、異なる修正を行うことができ、また、発明の原理から乖離することなく優先実施形態には多くの追加が可能である。本発明または優先実施形態の特質を修正できることは、本発明分野の専門的技能を有する者には明らかであって、この際、以上の説明内容が単に本発明を説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されてはならないことを明確に理解する必要がある。