(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】基礎速度滴定のためのスターターキット
(51)【国際特許分類】
G16H 20/17 20180101AFI20221216BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20221216BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G16H20/17
A61M5/168 510
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2019528702
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017080682
(87)【国際公開番号】W WO2018099912
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-10
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オルデン, ブラッド ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】アーラドッティル, ティナ ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513626(JP,A)
【文献】特表2012-513221(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075925(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0313674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
A61M 5/168
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の治療のための装置(250)であって、1つ又は複数のプロセッサ(274)及びメモリ(192/290)を備え、前記メモリが、1つ又は複数の前記プロセッサ(274)によって実行されると、以下:
A)第1の時間経過にわたる前記被験者の複数の自律的グルコース測定値と、前記複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)前記第1の時間経過にわたる前記被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
前記第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
前記第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)前記被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して前記被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)前記それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、前記被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットを使用して、前記第1の時間経過の間の前記被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及びインスリン感受性因子(235)を計算すること;
D)前記被験者の少なくとも前記第1の糖血症リスク尺度及び前記インスリン感受性因子を使用して、
(i)前記被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)であって、前記第2の時間経過が前記第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、
(ii)前記対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に基づいた、前記被験者についての前記第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、前記第2の時間経過の間に前記被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、前記被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)前記対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)を、(i)前記被験者、(ii
)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を前記被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)前記被験者に関連した医療実施者、(iv)前記装置のユーザ及び/又は(v)前記被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行する命令を格納し、
ステップBにおける前記それぞれのインスリン薬物投与イベントが、前記被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ(522)を使用するインスリン薬物注入イベント(335)であり、前記インスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)が、それぞれの前記インスリン薬物注入イベント(335)に対するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ(338)である、装置。
【請求項2】
前記方法がさらに、
F)前記第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、前記第3のデータセットが、前記被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、前記第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)前記対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、前記第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを前記第3のデータセットに対して検証することを含み、
ここで、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、前記方法が、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記方法がさらに、
F)前記第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、前記第3のデータセットが、前記被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、前記第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセット(302)であって、ここで、前記第2の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(304)が、(i)前記被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して前記被験者に投与されるインスリン薬物の量(308)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)、(ii)前記それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ(310)、及び(iii)基礎インスリン薬物である、前記被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(312)を含む、前記第4のデータセットを取得すること;及び
H)前記第4のデータセット内の前記第2の複数の
インスリン薬物記録に基づいて、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、前記第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を前記第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が検証されていないと見なされる場合、前記方法は、前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を調整することをさらに含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ステップGにおいて、前記それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)が、(i)前記被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペン(521)を使用して前記被験者に注射されるインスリン薬物の量(341)を含むインスリン薬物注射イベント(340)、(ii)それぞれの前記インスリン薬物注射イベントについて対応するインスリン薬物注射イベントタイムスタンプ(342)、及び(iii)基礎インスリン薬物である注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類(333)を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
ステップD)において、前記被験者の少なくとも前記第1の糖血症リスク尺度及び前記インスリン感受性因子を使用することが、複数の治療群のうちの第1の治療群(316)を特定することを含み、ここで、
前記複数の治療群のうちの各それぞれの治療群が、独立して、複数の教師付き分類指標の中の対応する教師付き分類指標(318)と関連付けられ、かつ、
前記第1の治療群の前記教師付き分類指標を使用して、前記被験者の前記第2の時間経過についての前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル及び前記対応する基礎速度滴定スケジュールを計算し、それによって、前記対応する基礎速度滴定スケジュール及び前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得する、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の治療群における前記第1の治療群を特定することが、少なくとも前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットから得られたメトリックのベクトル(320)を前記複数の治療群における各治療群に対して共クラスタ化し、それにより前記複数の治療群における各治療群に対するそれぞれの距離スコアを得ることを含み、ここで、
前記メトリックのベクトルが、前記被験者の前記第1の糖血症リスク尺度及び前記インスリン感受性因子を含み、かつ、
前記第1の治療群が、前記第1の治療群の前記距離スコアが信頼閾値を満たすときに、前記複数の治療群の中から特定される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の時間経過の間の前記被験者の前記第1の糖血症リスク尺度を計算するために、前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットを使用することが、
(i)前記複数の自律的グルコース測定値にわたって観察された総グルコース値の変動性、
(ii)前記複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値、
(iii)前記複数の自律的グルコース測定値において観察された最小グルコース測定値、
(iv)前記複数の自律的グルコース測定値において観察された最大グルコース測定値、
(v)前記複数の自律的グルコース測定値及び前記第2のデータセットを使用して計算された前記インスリン感受性因子の変化率、
(vi)(a)前記定常インスリンレジメンによって指示されたときに前記被験者によって行われたインスリン薬物投与イベントの数を、(b)前記第1の時間経過における前記定常インスリンレジメンによって指示される基礎インスリン薬物投与イベントの総数で割ることによって計算される前記第1の時間経過にわたる基礎順守スコア、
(vii)前記被験者のグルコース値が前記複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を上回っている時間の割合、
(viii)前記被験者のグルコース値が前記複数の自律的グルコース測定値にわたって前記第1の目標範囲を下回っている時間の割合、
(ix)前記被験者の前記グルコース値が前記複数の自律的グルコース測定値にわたって前記第1の目標範囲外にある時間の割合、又は
(x)前記複数の自律的グルコース測定値の広がりの尺度
を決定することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の糖血症リスク尺度が、前記複数の自律的グルコース測定値から計算された前記空腹時グルコース値を含み、ここで、前記空腹時グルコース値が、前記複数の自律的グルコース測定値にわたって分散σ
k
2の移動期間を計算すること、ここで:
であり、式中、
G
iは、前記複数の自律的グルコース測定値のうちの部分kにおけるi番目の自律的グルコース測定値であり、
Mは、前記複数の
自律的グルコース測定値における自律的グルコース測定値の数であり、かつ前記第1の時間経過内のそれぞれの連続する所定の期間を表し、
は、前記複数の自律的グルコース測定値から選択された前記自律的グルコース測定値の平均であり、
kは前記それぞれの連続する所定の時間の範囲内である;
前記第1の時間経過における絶食期間を、最小分散
を示すそれぞれの連続する所定の期間と関連付けること;及び
空腹時グルコース値を、前記絶食期間中の前記複数の自律的グルコース測定値における自律的グルコース測定値を使用して計算すること
によって計算される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記空腹時グルコース値が、
(i)前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値における最小自律的グルコース測定値、
(ii)前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値にわたる中心傾向の尺度、
(iii)前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値によって示される範囲、
(iv)前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値にわたる四分位範囲、
(v)前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値にわたる分散、
(vi)以下のように計算される、前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値の平均(μ)からの前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値にわたる平均二乗差(σ
2):
[式中、
m
iは、前記絶食期間中のi番目の自律的グルコース測定値であり、かつ
Pは、前記絶食期間中の自律的グルコース測定値の数である]、及び
(vii)√σ
2として計算される、前記絶食期間中の前記自律的グルコース測定値にわたる前記自律的グルコース測定値の標準偏差
を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記方法がさらに、
第5のデータセット(322)を取得することを含み、ここで、前記第5のデータセットが、前記第1の時間経過における前記被験者に関連した補助データ(324)を含み、前記補助データが、前記第1の時間経過の間の、前記被験者によって及ぼされるエネルギー、前記被験者の体重、前記被験者の年齢、及び前記被験者の食事活動のうちの1つ又は複数を含む、第5のデータセット(322)を取得することを含み;かつ
ステップD)において、前記第5のデータセットが、前記第2の時間経過にわたって前記対応する基礎速度滴定スケジュール及び前記対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために、前記被験者の前記第1の糖血症リスク尺度及び前記インスリン感受性因子と併せて使用される、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の時間経過にわたる前記被験者の前記定常インスリンレジメンが、前記第1の時間経過内の複数のエポック(n)、及び前記複数のエポックの各それぞれのエポックについての異なる1日の総基礎インスリン薬物投与量を指定し、かつ
前記インスリン感受性因子(ISF)が、
[式中、
iは、前記複数のエポックへの第1のインデックスであり、
jは、前記複数のエポックへの第2のインデックスであり、
ΔFG
i,jは、エポックiとエポックjとの間の前記被験者の平均空腹時グルコース値の差であり、かつ
ΔU
i,jは、前記定常インスリンレジメン又は前記第2のデータセットによって決定される、エポックiとエポックjとの間の前記被験者の1日のインスリン用量サイズの差である]によって計算される
請求項8から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
1つ又は複数のプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステムにおいて、前記コンピュータシステムを使用して、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、前記複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)前記第1の時間経過にわたる前記被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
前記第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
前記第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)前記被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して前記被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)前記それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、前記被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットを使用して、前記第1の時間経過の間の前記被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及びインスリン感受性因子(235)を計算すること;
D)前記被験者の少なくとも前記第1の糖血症リスク尺度及び前記インスリン感受性因子を使用して、
(i)前記被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)であって、前記第2の時間経過が前記第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、
(ii)前記対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に基づいた、前記被験者についての前記第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、前記第2の時間経過の間に前記被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、前記被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)前記対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)を、(i)前記被験者、(ii)前記対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を前記被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)前記被験者に関連した医療実施者、(iv)
請求項1に記載の被験者の治療のための装置のユーザ及び/又は(v)前記被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行すること
を含む方法であって、
ステップBにおける前記それぞれのインスリン薬物投与イベントが、前記被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ(522)を使用するインスリン薬物注入イベント(335)であり、前記インスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)が、それぞれの前記インスリン薬物注入イベント(335)に対するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ(338)である、方法。
【請求項13】
1つ又は複数のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータによって実行されたときに、請求項12に記載の方法を実行する命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを格納しているコンピュータ可読データ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、概して、滴定スケジュールにある間に必要とされるグルコース測定値の量を最小にする、糖尿病患者のためのロバスト基礎速度滴定スケジュールを開発するためのシステム、方法に関する。本開示はさらに、その方法を実行するためのコンピュータプログラム、及びそのコンピュータプログラムを格納しているコンピュータ可読データ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
2型真性糖尿病は、正常な生理的インスリン分泌の進行性の中断によって特徴付けられる。健康な個体では、膵臓β細胞による基礎インスリン分泌は、食事の合間に長期間にわたって安定したグルコース値を維持するために継続的に起こる。健康な個体においても、食事に反応して最初の第1相スパイクでインスリンが急速に放出され、続いて2-3時間後に基礎レベルに戻る長期のインスリン分泌が続く食事による分泌がある。
【0003】
インスリンは、インスリン受容体に結合して、骨格筋及び脂肪へのグルコース、アミノ酸、及び脂肪酸の細胞取り込みを促進し、肝臓からのグルコースの排出を抑制することによって、血中グルコースを下げるホルモンである。正常な健康な個体では、生理的な基礎インスリン分泌及び食事によるインスリン分泌は正常血糖を維持し、これは空腹時血漿グルコース及び食後血漿グルコース濃度に影響を及ぼす。基礎及び食事によるインスリン分泌は2型糖尿病では損なわれており、早期食後反応が見られない。これらの有害事象に対処するために、2型糖尿病を有する被験者には、インスリン薬物治療レジメンが与えられる。1型糖尿病を有する被験者にも、インスリン薬物治療レジメンが提供される。これらのインスリン薬物治療レジメンの目標は、低血糖症及び高血糖症の推定されるリスクを最小にするであろう所望の空腹時血中グルコース目標値を維持することである。
【0004】
伝統的なインスリン薬物送達システムは、インスリン薬物の頻繁な反復投与を提供するポンプシステムの使用を含んでいる。さらに最近では、インスリンペンなどのさらなる種類の送達システムが開発されており、これは、より少ない頻度のインスリン薬物注射の形態で、インスリン薬物治療レジメンを自己投与するために使用することができる。そのような送達システムを用いた糖尿病治療への一般的なアプローチは、1つのインスリンペンを使用して、食事イベントに反応して又はそれを見越して、被験者の定常インスリンレジメンに従って、単回短時間作用型インスリン薬物(ボーラス)投与量を注射することである。そのようなアプローチでは、そのような食事から生じるグルコース値を低下させるために、被験者は毎日1回又は複数回の食事の直前又は直後に、短時間作用型インスリン薬物投与量を注射する。さらに、被験者は、食事イベントとは無関係に、定常インスリンレジメンに従って長時間作用型インスリン薬物(基礎)投与量を注射して、食事イベントと無関係に血糖コントロールを維持する。
【0005】
糖尿病研究は厳格な血糖コントロールの重要性を示唆しており、現在の治療ガイドラインは2型糖尿病患者における早期インスリン治療を求めている。しかしながら、長時間作用型基礎インスリンの最適な開始及び滴定方法はまだ解明中である。証拠は、多くの患者は、多くの場合、グルコースの目標値を達成するために十分に滴定されたインスリン用量を得ていないことを示唆している。そのような患者は、最適以下のインスリン用量のままであり、治療目標に到達することができない。
【0006】
次第に明らかになってきたことは、患者のエンパワーメントが、治療目標に到達するための動機付けにとって重要であるということである。自己滴定レジメンは、患者のエンパワーメントを促進し、患者が自らの治療により深く関与することを可能にし、それは改善された血糖コントロールをもたらすことができる。Blonde et al., 2009, “Patient-directed titration for achieving glycaemic goals using a once-daily basal insulin analogue: an assessment of two different fasting plasma glucose targets - the TITRATETM study,” Diabetes, Obesity and Metabolism 11:623-631を参照のこと。
【0007】
インスリンの自己滴定は、治療がグルコース値を目標とすることを可能にし、同時に医療実施者の作業負荷を軽減することができるので、大きな可能性を有することは明らかである。しかしながら、患者の自己滴定は、自己滴定アルゴリズムにおいて対処されなければならないいくつかの安全性及び有用性の懸念をもたらす。特に過剰摂取に関連する危険性-アルゴリズムが安全であるよりも高用量のインスリン薬物を示唆している場合、低血糖症や潜在的に危険な状況につながる可能性がある。
【0008】
図6は、従来技術に従ってインスリン薬物を経時的に使用して、被験者を目標HbA1c値にする(被験者によって毎日行われる単回空腹時血中グルコース測定による)、被験者の従来の滴定曲線を示す。II型糖尿病(T2)患者などの被験者が基礎インスリン薬物を開始するとき、最初の安全な提案(典型的には10U)から空腹時血中グルコースを目標値まで下げる最適な1日用量(II型糖尿病患者の典型的範囲は40-70[U/day])までの滴定が達成される。残念なことに、II型糖尿病患者の50%以上が滴定は困難であると感じており、医師の診察の間に自分自身で用量を変更することに消極的である。さらに、患者の日誌に不適切又は誤解を招くような投薬及びグルコースデータがある場合には、医師は、それに基づいて滴定のアドバイスを行うためのデータをほとんど持っていない。その結果、多くの患者がHbA1c治療目標に到達せず、それが後期合併症をより頻繁に引き起こす。
【0009】
図6に示す滴定のような従来の自己滴定アルゴリズムは、典型的には、入力が朝食前又は少なくとも食事前に取られた空腹時血中グルコース測定値であると仮定する。例えば、食事後の血中グルコース測定値が患者によって誤って使用された場合、滴定アルゴリズムがより大きくかつ潜在的に危険な用量のインスリン薬物を計算する可能性があるというリスクがある。
【0010】
さらに、血中グルコース測定値は、付随する不確実性を有する。例えば、ユーザが、測定を行う前に手を洗わない場合、そのような測定の結果は実際の血中グルコースよりもはるかに高くなり得る。血中グルコース測定値の不確実性が考慮されていない場合、滴定アルゴリズムはより大きな、かつ潜在的に危険な用量のインスリン薬物を計算する可能性がある。
【0011】
さらに、ほとんどの滴定アルゴリズムは、朝食前に測定された空腹時血中グルコースを目標血中グルコース値として設定する。しかしながら、実際には、例えば夜明け現象のような状況に起因して、患者がその日に経験する最も低い血中グルコースではないというリスクがある。
【0012】
さらに、滴定アルゴリズムが過剰に滴定せず、かつ多すぎる用量のインスリン薬物を計算しないことが重要である。これは、患者において、低血糖症や潜在的に危険な状況につながる可能性がある。また、滴定アルゴリズムは、医師の監督なしに、滴定プロセスにおける異常なパターンや潜在的な問題を認識できることも重要である。例えば、そのような滴定アルゴリズムは、インスリン測定が不正確に行われたか全く行われなかった時に、血中グルコース測定が不正確に行われたことを認識することができなければならない。
【0013】
従来の自己滴定アルゴリズムは、通常、紙面の上で実施される。これは、患者が最初に血中グルコースを測定し、次に紙面を使用して次のインスリン薬物用量を計算することを必要とする。このアプローチでは、紙面が正しく使用されていない場合、又は間違った用量が入力されている場合は、問題が生じる可能性がある。さらにまた、自己滴定アルゴリズムの最良の設定は、患者を治療するために使用されるインスリンの種類及び適用レジメンに多少依存する。
【0014】
ロシュ・ダイアグノスティックス・オペレーションズ社に対する「収集装置上で実行される構造化収集手順の実施、実行、データ収集、及びデータ分析のための管理方法及びシステム」と題する米国特許出願公開第20120089893号は、インスリン投与量の滴定を最適化し、それによってバイオマーカーレベルを所望の範囲内に維持するインスリンの投与量を得るための構造化収集プロトコルを開示している。一実施形態では、滴定されたインスリンは基礎インスリンであり得る。構造化収集を開始する際、インスリンの投与量は典型的には初期処方投与量である。刊行物に記載されているように、構造化収集は、最適化されたインスリン値を得るために使用されてもよく、又はインスリン投与量が依然として最適であることを検証するための最適化後として使用されてもよいと考えられる。構造化収集プロトコルは、バイオマーカーデータの収集を開始する前に、参加基準の考慮を任意に要求してもよい。糖尿病の人、医療提供者、又はその両方が、参加基準が満たされるかどうかを判断することができることがさらに熟考される。参加基準が満たされる場合、糖尿病患者は構造化収集プロトコルを開始することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、糖尿病患者がバイオマーカーの収集又はインスリンの投与の前に、順守基準を満たすこともまた必要とされ得る。順守基準は、構造化収集プロトコルを実施する時に、糖尿病患者が従わなければならない手続き上の要件である。バイオマーカーの読み取りのための適切なベースラインを得るためには、全ての読み取りが均一に取得されることを確実にすること、すなわち各サンプリング事例について日のほぼ同じ時刻に取得されることが有益であり得る、従って、順守基準は、バイオマーカー収集又はインスリン投与が毎日同じ時間に行われることを明示してもよい。順守基準はまた、糖尿病の人が正しい投与量のインスリンを服用しているかどうかを決定することに向けられ得る。上記の開示にもかかわらず、米国特許出願公開第20120089893号は手動で収集されたデータに適しており、収集手順によって必要とされるときにデータを収集するユーザの能力に大きく頼ることなく、インスリン用量を最適化するロバストな方法に関する満足な教示を提供していない。さらに、米国特許出願公開第20120089893号は、目標グルコース値への滴定において被験者をどのように指導するかについての教示を提供していない。
【0015】
Shayaの「血中グルコースに影響を与える糖尿病感受性因子を計算するための方法及び装置」と題する国際公開WO2009/075925は、患者の血中グルコース測定値、炭水化物摂取量及びインスリン用量の記録を使用して、糖尿病患者のインスリンに対する炭水化物の比率(CIR)、血中グルコースに対する炭水化物の比率(CGR)、及びインスリン感受性因子(ISF)を決定するための方法及び装置を開示している。方法は、適切に変換された変数の線形回帰によって、患者の観察された血中グルコース変化を最もよく説明する感受性因子を提供する。本発明に従って血中グルコース測定値、インスリン投与量、及び炭水化物摂取量データを収集及び保存し、これらのデータを処理することができる装置は、最適ボーラスインスリン投与量に関して糖尿病患者に助言するための統計的に特徴付けられる感受性因子を生成し得る。
【0016】
自己滴定スキームのこれらの異なる特徴とインスリン滴定方法の一般的な分野を考えると、当該技術分野において必要とされているものは、目標グルコース値を達成する、よりロバストで使いやすいインスリン滴定方法を提供するシステム及び方法である。
【発明の概要】
【0017】
概要
本開示は、目標グルコース値を達成する、よりロバストで使いやすいインスリン滴定方法を提供するためのシステム及び方法に対する当該技術分野における必要性に対処する。第1の時間経過にわたる被験者のタイムスタンプ付き自律的グルコース測定値を含む第1のデータセットが取得される。第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメンに関連し、インスリン薬物記録を含む第2のデータセットもまた取得される。各記録は、インスリン送達装置によって被験者に投与されるインスリン薬物の量及び種類を含むタイムスタンプ付き投与イベントを含む。第1及び第2のデータセットは、第1の時間経過の間に被験者の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を計算するのに役立ち、これらは、被験者についてのその後の第2の時間経過にわたって基礎速度滴定スケジュール及び空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために使用される。基礎速度滴定モデルは、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール及び/又は対応するボーラスインスリン薬物滴定スケジュールに基づくか、又はそれと一致する。このモデルは、被験者に投与される基礎インスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0018】
本開示の一態様は、被験者の治療のための装置を提供する。装置は、1つ又は複数のプロセッサ及びメモリを備える。メモリは、1つ又は複数のプロセッサによって実行されたときに方法を実行する命令を格納する。方法において、第1のデータセットが取得される。第1のデータセットは、第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプとを含む。方法において、第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメンに関連した第2のデータセットもまた取得される。第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ、及び(iii)インスリン薬物の種類がボーラスインスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含む。方法において、第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を計算する。
【0019】
次いで、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用して、被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールを取得し、ここで、第2の時間経過は第1の時間経過に続いて起こる。第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性をさらに使用して、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールに基づいて、被験者の第2の時間経過にわたって対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得する。対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールは次に、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達される。いくつかの実施形態では、それぞれのインスリン薬物投与イベントは、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプを使用して被験者に注入されるインスリン薬物の基礎注入速度を含むインスリン薬物注入イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物注入イベントについて対応するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ、及び(iii)ボーラスインスリン薬物を含む、注入されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含む。さらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注入されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0020】
さらなる態様において、いくつかの実施形態では、ステップBにおけるそれぞれのインスリン薬物投与イベントは、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプを使用するインスリン薬物注入イベントであり、インスリン薬物投与イベントタイムスタンプは、それぞれのインスリン薬物注入イベントに対するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプである。
【0021】
さらなる態様において、いくつかの実施形態では、方法はさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセットであって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値について、測定時間とを含む、第3のデータセットを取得すること;及び
G)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む。
【0022】
さらなる態様において、いくつかの実施形態では、方法はさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセットであって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値について、測定時間とを含む、第3のデータセットを取得すること;及び
G)第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセットであって、ここで、第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ、及び(iii)被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(ここで、インスリン薬物の種類は基礎インスリン薬物である)
を含む、第4のデータセットを取得すること;及び
H)第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、それぞれのインスリン薬物投与イベントは、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペンを使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量を含むインスリン薬物注射イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物注射イベントについて対応するインスリン薬物注射イベントタイムスタンプ、及び(iii)基礎インスリン薬物を含む注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含む。さらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注射されたインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセットを取得することをさらに含む。第3のデータセットは、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値について、測定時間とを含む。そのような実施形態では、対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが第3のデータセットに対して検証される。対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法はさらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することを含む。
【0025】
いくつかの代替の実施形態では、第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセットが取得される。第3のデータセットは、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値について、測定時間とを含む。さらに、第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセットが取得される。第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含む。そのような実施形態では、第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが第3のデータセットに対して検証される。対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法はさらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、第4のデータセット内のそれぞれのインスリン薬物投与イベントは、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプを使用して被験者に注入されるインスリン薬物の基礎注入速度を含むインスリン薬物注入イベント、及び(ii)それぞれのインスリン薬物注入イベントについて対応するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ、及び(iii)ボーラスインスリン薬物を含む、注入されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含む。さらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注入されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0027】
いくつかの実施形態では、第4のデータセット内のそれぞれのインスリン薬物投与イベントは、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペンを使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量を含むインスリン薬物注射イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物注射イベントについて対応するインスリン薬物注射イベントタイムスタンプ、及び(iii)基礎インスリン薬物を含む注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含む。さらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注射されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0028】
いくつかの実施形態では、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用することは、複数の治療群のうちの第1の治療群を特定することを含む。複数の治療群のうちの各それぞれの治療群は、独立して、複数の教師付き分類指標の中の対応する教師付き分類指標と関連付けられる。第1の治療群の教師付き分類指標を使用して、被験者の第2の時間経過についての対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル及び対応する基礎速度滴定スケジュールを計算し、それによって、対応する基礎速度滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得する。いくつかのそのような実施形態では、複数の治療群における第1の治療群を特定することは、少なくとも第1のデータセット及び第2のデータセットから得られたメトリックのベクトルを複数の治療群における各治療群に対して共クラスタ化し(co-clustering)、それにより複数の治療群における各治療群に対するそれぞれの距離スコアを得ることを含む。そのような実施形態では、メトリックのベクトルは、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を含む。第1の治療群は、第1の治療群についての距離スコアが信頼閾値を満たすときに、複数の治療群の中から特定される。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の時間経過の間に被験者の第1の糖血症リスク尺度を計算するために第1のデータセット及び第2のデータセットを使用することは、(i)複数の自律的グルコース測定値にわたって観察された総グルコース値の変動性、(ii)複数の自律的グルコース測定値から計算された複数の空腹時グルコース値、(iii)複数の自律的グルコース測定値において観察された最小グルコース測定値、(iv)複数の自律的グルコース測定値において観察された最大グルコース測定値、(v)複数の自律的グルコース測定値及び第2のデータセットを使用して計算されたインスリン感受性因子の変化率、(vi)(a)定常インスリンレジメンによって指示されたときに被験者によって行われたインスリン薬物投与イベントの数を、(b)第1の時間経過における定常インスリンレジメンによって指示される基礎インスリン薬物投与イベントの総数で割ることによって計算される第1の時間経過にわたる基礎順守スコア、(vii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を上回っている時間の割合、(viii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を下回っている時間の割合、(ix)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲外にある時間の割合、又は(x)複数の自律的グルコース測定値の広がりの尺度を決定することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の糖血症リスク尺度は、複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値を含み、ここで、空腹時グルコース値は、複数の自律的グルコース測定値にわたって分散σ
k
2の移動期間を計算することによって計算され、ここで、
である。
【0031】
そのような実施形態では、G
iは、複数の自律的グルコース測定値のうちの部分kにおけるi番目の自律的グルコース測定値であり、Mは、複数のグルコース測定値における自律的グルコース測定値の数であり、かつ第1の時間経過内のそれぞれの連続する所定の期間を表し、
は、複数の自律的グルコース測定値から選択された自律的グルコース測定値の平均であり、kはそれぞれの連続する所定の時間の範囲内である。第1の時間経過における絶食期間は、最小分散
を示すそれぞれの連続する所定の期間に関連付けられる。次いで、空腹時グルコース値は、絶食期間中の複数の自律的グルコース測定値における自律的グルコース測定値を使用して計算される。例えば、いくつかの実施形態では、空腹時グルコース値は、(i)絶食期間中の最小自律的グルコース測定値、(ii)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる中心傾向の尺度、(iii)絶食期間中の自律的グルコース測定値の範囲、(iv)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる四分位範囲、(v)絶食期間中のグルコース測定値にわたる分散、(vi)以下のように計算される、絶食期間中のグルコース測定値の平均(μ)からの絶食期間中のグルコース測定値にわたる平均二乗差(σ
2)
[式中、m
iは、絶食期間中のi番目の自律的グルコース測定値であり、Pは、絶食期間中の自律的グルコース測定値の数である]、及び(vii)√σ
2として計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる自律的グルコース測定値の標準偏差として計算される。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、第5のデータセットを取得することをさらに含み、ここで、第5のデータセットは、第1の時間経過における被験者に関連した補助データを含み、かつここで、補助データは、第1の時間経過の間の、被験者によって及ぼされるエネルギー、被験者の体重、被験者の年齢、及び被験者の食事活動のうちの1つ又は複数を含む。そのような実施形態では、第5のデータセットは、第2の時間経過にわたって対応する基礎速度滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子と併せて使用される。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメンは、第1の時間経過内の複数のエポック(n)、及び複数のエポックの各それぞれのエポックについての異なる1日の総基礎インスリン薬物投与量を指定し、インスリン感受性因子(ISF)は、
によって計算され、式中、iは、複数のエポックへの第1のインデックスであり、jは、複数のエポックへの第2のインデックスであり、ΔFG
i,jは、エポックiとエポックjとの間の被験者の平均空腹時グルコース値の差であり、ΔU
i,jは、定常インスリンレジメン又は第2のデータセットによって決定される、エポックiとエポックjとの間の被験者の1日のインスリン用量サイズの差である。
【0034】
いくつかの実施形態では、予測空腹時血中グルコースプロファイルが、第2の時間経過中のある時点で検証されていないと見なされるときに、方法は繰り返される。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2のデータセット内の複数の自律的グルコース測定における連続測定は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、又は7日の間隔速度で行われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、対応する基礎速度滴定スケジュールは、以下のように計算される空腹時血中グルコース目標(FGL)を有し、
式中、wは、スケーリング重みであり、ISFは、第1の時間経過にわたって第1及び第2のデータセットから計算された被験者のインスリン感受性因子であり、c
iは、x
i番目の糖血症リスク尺度に適用されるi番目の重み付け定数であり、ここで、x
i番目の糖血症リスク尺度は、第1の糖血症リスク尺度を含む複数の糖血症リスク尺度にあり、iは、1とNとの間のインデックスであり、Nは、複数の糖血症リスク尺度のうちの糖血症リスク尺度の数であり、w及び各c
iは、血中グルコース目標に正しいディメンションを提供するというさらなる目的を果たす。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2のデータセット内の複数の自律的グルコース測定値における連続測定値は、5分以内、3分以内、又は1分以内の間隔速度で、被験者が装着している測定装置から取られる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ポンプは第1の時間経過の間に使用され、ポンプは第1の時間経過の間に使用される。メモリは、1つ又は複数のプロセッサによって実行されたときに、(i)第1の時間経過の間に基礎注入速度を変更する(ここで、注入速度は、第1の時間経過の間に指示によって決定されるステップ及び間隔で変更される)、(ii)第2の時間経過についてのボーラスインスリン薬物滴定スキームを決定する、(iii)第2の時間経過についてのボーラスインスリン薬物滴定スキームを第2の時間経過についての基礎インスリン薬物滴定スキームに変換するという命令を格納する。
【0039】
本開示の別の態様は、1つ又は複数のプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステムにおいて、コンピュータシステムを使用して、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及びインスリン感受性因子(235)を計算すること;
D)被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用して、
(i)被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)であって、第2の時間経過が第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、
(ii)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、第2の時間経過の間に被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行することを含む方法を提供する。
【0040】
さらなる態様において、1つ又は複数のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータによって実行されたときに、上記の方法を実行する命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0041】
さらなる態様において、上記のコンピュータプログラムを格納しているコンピュータ可読データ記憶媒体が提供される。
【0042】
さらなる態様において、被験者の治療のための装置であって、1つ又は複数のプロセッサ及びメモリを含み、メモリは、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプとを含む、第1のデータセットを取得すること;
B)第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメンに関連する第2のデータセットを取得すること、ここで、
第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類を含み;
C)第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及び第2の尺度を計算すること;
D)被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及び第2の尺度を使用して、
(i)被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールであって、第2の時間経過が第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール、
(ii)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールに基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルであって、第2の時間経過の間に被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得すること;及び
E)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールを、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行する命令を格納する、被験者の治療のための装置が提供される。
【0043】
さらなる態様において、被験者の第2の尺度は、滴定前のインスリン感受性因子又は測定された空腹時血中グルコースのうちの1つである。
【0044】
さらなる態様において、いくつかの実施形態では、ステップBにおけるそれぞれのインスリン薬物投与イベントは、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプを使用するインスリン薬物注入イベントであり、インスリン薬物投与イベントタイムスタンプは、それぞれのインスリン薬物注入イベントに対するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプである。
【0045】
さらなる態様において、方法はさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセットであって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値について、測定時間とを含む、第3のデータセットを取得すること;及び
G)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む。
【0046】
さらなる態様において、方法はさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセットであって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値について、測定時間とを含む、第3のデータセットを取得すること;及び
G)第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセットであって、ここで、第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ、及び(iii)基礎インスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類
を含む、第4のデータセットを取得すること;及び
H)第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の時間経過の間に被験者の第1の糖血症リスク尺度を計算するために第1のデータセット及び第2のデータセットを使用することは、(i)複数の自律的グルコース測定値にわたって観察された総グルコース値の変動性、(ii)複数の自律的グルコース測定値から計算された複数の空腹時グルコース値、(iii)複数の自律的グルコース測定値において観察された最小グルコース測定値、(iv)複数の自律的グルコース測定値において観察された最大グルコース測定値、(v)複数の自律的グルコース測定値及び第2のデータセットを使用して計算されたインスリン感受性因子の変化率、(vi)(a)定常インスリンレジメンによって指示されたときに被験者によって行われたインスリン薬物投与イベントの数を、(b)第1の時間経過における定常インスリンレジメンによって指示される基礎インスリン薬物投与イベントの総数で割ることによって計算される第1の時間経過にわたる基礎順守スコア、(vii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を上回っている時間の割合、(viii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を下回っている時間の割合、(ix)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲外にある時間の割合、又は(x)複数の自律的グルコース測定値の広がりの尺度を決定することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1の糖血症リスク尺度は、複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値を含み、ここで、空腹時グルコース値は、複数の自律的グルコース測定値にわたって分散σ
k
2の移動期間を計算することによって計算され、ここで、
である。
【0049】
そのような実施形態では、G
iは、複数の自律的グルコース測定値のうちの部分kにおけるi番目の自律的グルコース測定値であり、Mは、複数のグルコース測定値における自律的グルコース測定値の数であり、かつ第1の時間経過内のそれぞれの連続する所定の期間を表し、
は、複数の自律的グルコース測定値から選択された自律的グルコース測定値の平均であり、kはそれぞれの連続する所定の時間の範囲内である。第1の時間経過における絶食期間は、最小分散
を示すそれぞれの連続する所定の期間に関連付けられる。次いで、空腹時グルコース値は、絶食期間中の複数の自律的グルコース測定値における自律的グルコース測定値を使用して計算される。例えば、いくつかの実施形態では、空腹時グルコース値は、(i)絶食期間中の最小自律的グルコース測定値、(ii)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる中心傾向の尺度、(iii)絶食期間中の自律的グルコース測定値の範囲、(iv)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる四分位範囲、(v)絶食期間中のグルコース測定値にわたる分散、(vi)以下のように計算される、絶食期間中のグルコース測定値の平均(μ)からの絶食期間中のグルコース測定値にわたる平均二乗差(σ
2)
[式中、m
iは、絶食期間中のi番目の自律的グルコース測定値であり、Pは、絶食期間中の自律的グルコース測定値の数である]、及び(vii)√σ
2として計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる自律的グルコース測定値の標準偏差として計算される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための基礎滴定調整装置、患者データを収集するためのデータ収集装置、被験者からのグルコースデータを測定する1つ又は複数のグルコースセンサ、及びインスリン薬物を投与するために被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置を含む例示的なシステムトポロジーを示し、ここで、本開示の実施形態に従って、上記で特定された構成要素は、任意選択的に通信ネットワークを介して相互接続される。
【
図2】本開示の実施形態に従って、被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置を示す。
【
図3A】本開示の別の実施形態に従って、被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置をまとめて示す。
【
図3B】本開示の別の実施形態に従って、被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置をまとめて示す。
【
図3C】本開示の別の実施形態に従って、被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置をまとめて示す。
【
図4A】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図4B】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図4C】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図4D】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図4E】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図4F】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図4G】被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための装置のプロセス及び機能のフローチャートをまとめて提供し、ここで、本開示の様々な実施形態に従って、フローチャートの任意選択の要素は破線の箱で示されている。
【
図5】本開示の実施形態に従って、被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための、接続されたインスリン送達装置、連続グルコースモニタ、メモリ、及びプロセッサの統合システムの例を示す。
【
図6】従来技術に従ってインスリン薬物を経時的に使用して、被験者を目標HbA1c値にする、被験者の従来の滴定曲線を示す。
【
図7】経時的にインスリン薬物を使用して、被験者を目標HbA1c値にする被験者の滴定曲線を示し、ここでは、本開示の実施形態に従って、集中的データ収集期間があり、その後それほど集中的ではない測定が行われる期間が続く。
【
図8】本開示の実施形態に従って、任意選択的に被験者を分類することを含む、被験者の基礎速度滴定スケジュールの特定を決定するためのフローチャートを示す。
【
図9】本開示の実施形態に従って、第1の時間経過において収集された例示的なデータを示す。パネルAにおける各線は、第1の時間経過の間の対応する24時間の期間中の被験者のグルコース値を表す。パネルBは、パネルAのグルコースデータの平均連続4時間分散を示す。
【
図10】
図9のパネルBの特定された最小連続分散の前の4時間が、本開示の実施形態に従って、空腹時グルコース値の供給源としてどのように使用されるかを示す。この期間は、低血糖リスクを推定するために使用される。この場合、低血糖イベントが第1時間経過の間に一度起こった。
【
図11】本開示の実施形態に従って、第1の時間経過の間に行われたグルコース測定値の平均プロファイル及び標準偏差が、第1の時間経過の間の被験者の糖血症リスクを決定するためにどのように使用されるかを示す。
【
図12】第1の時間経過の間に3つの異なるインスリン薬物用量サイズが被験者にどのように与えられるかを示し、ここで、各期間中の平均グルコース値は、本開示の実施形態に従ってインスリン感受性を推定し、用量変化中のグルコース濃度の変化を予測するために使用される。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態に従って、どのように基礎速度滴定スケジュールの滴定野心値がインスリン感受性と最小空腹時グルコースの関数であるかを示す。
【
図14】本開示の実施形態に従って、一人の被験者の空腹時グルコース濃度を、一人の被験者の対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(パネルB)における基礎インスリン薬物の単位の関数として予測する、空腹時血中グルコースプロファイルモデル(パネルA)を示す。
【
図15】本開示の実施形態に従って、別の被験者の空腹時グルコース濃度を、一人の被験者の対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(パネルB)における基礎インスリン薬物の単位の関数として予測する、空腹時血中グルコースプロファイルモデル(パネルA)を示す。
【
図16】センサが4日の期間にわたってグルコースを連続的に読み取る、第1の時間経過の間に徐々に増加する基礎注入速度の第1のシナリオを示す。パネルBは、インスリンの基礎注入速度を提供する、ボーラスインスリン薬物滴定値を示す。パネルAは、血中グルコース濃度における対応する反応を示し、1606、1608は所望の血中グルコース範囲を示す。本開示の実施形態に従って、最適基礎注入速度を決定し、第2相においてインスリンペンを用いて適用される長時間作用型インスリンの対応する1日注射用量に変換することができる。
【
図17】センサが4日の期間にわたってグルコースを連続的に読み取る、第1の時間経過の間に徐々に増加する基礎注入速度の第2のシナリオを示す。パネルBは、インスリンの基礎注入速度を提供する、ボーラスインスリン薬物滴定値を示す。パネルAは、血中グルコース濃度における対応する反応を示し、1606、1608は所望の血中グルコース範囲を示す。本開示の実施形態に従って、最適基礎注入速度を決定し、第2相においてインスリンペンを用いて適用される長時間作用型インスリンの対応する1日注射用量に変換することができる。
【0051】
図面のいくつかの図を通して、同じ参照番号は対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
本開示は、被験者のためのロバスト基礎速度滴定スケジュールを開発するためのシステム及び方法を提供する。
図1は、本開示の実施形態に従ったそのような統合システム502の例を示し、
図5はそのようなシステム502のさらなる詳細を提供する。統合システム502は、1つ又は複数の接続されたインスリン送達装置104、1つ又は複数のグルコースモニタ102、メモリ506、及び被験者のためのロバスト基礎インスリン薬物滴定スケジュールを作成するためのプロセッサ(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、グルコースモニタ102は連続グルコースモニタである。
【0053】
統合システム502を用いて、定常インスリンレジメン224を被験者に適用するために使用される、1つ又は複数のインスリン送達装置104からのデータ540が、複数のインスリン薬物記録として取得される。各インスリン薬物記録は、被験者が定常インスリン薬物投薬レジメンの一部として受け取った投与されたインスリン薬物の量を指定するタイムスタンプ付きイベントを含む。また、被験者の自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値が取得される(520)。そのような実施形態では、自律的グルコース測定値がフィルタリングされ(504)、非一時的メモリ506に格納される。また、いくつかの実施形態では、追加の補助データ322が収集される。被験者の複数のインスリン薬物記録が、第1の時間経過にわたって取られ、そのインスリン薬物記録が、基礎インスリン薬物滴定スケジュールを決定するために使用される。このようにして、インスリン薬物記録及びグルコースデータは、本開示の方法510に従って分析及び視覚化される。
【0054】
統合システムを用いて、第1の時間経過にわたる被験者のタイムスタンプ付き自律的グルコース測定値を含む第1のデータセットが取得される。第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメンに関連し、インスリン薬物記録を含む第2のデータセットもまた取得される。各記録は、インスリン送達装置によって被験者に投与されるインスリン薬物の量及び種類を含むタイムスタンプ付き投与イベントを含む。いくつかの実施形態では、インスリン薬物は、第1の時間経過において、インスリンペン521又はインスリンポンプ522によって送達される。いくつかの実施形態では、インスリン薬物は、521とポンプの組み合わせによっても適用され得る。
【0055】
典型的な実施形態では、ペンが使用される場合、投与イベントのうちの少なくともいくつかは、基礎(長時間作用型)インスリン薬物の投与のためのものである。例えば、いくつかの実施形態では、投与イベントのいくつかは基礎インスリン薬物の注射を表し、一方、第2のデータセット内の他の注射イベントはボーラス(短時間作用型)インスリン薬物の注射を表す。第1及び第2のデータセットは、第1の時間経過の間に被験者の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を計算するのに役立ち、これらは、被験者についてのその後の第2の時間経過にわたって基礎速度滴定スケジュール及び空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために使用される。基礎速度滴定スケジュールは、空腹時に安定した血中グルコース値を維持するのに必要な基礎速度を指定するスケジュールであり、基礎速度滴定スケジュールは、ペンを使用して注射イベントとして適用される基礎インスリン薬物滴定スケジュールに基づくことができ、すなわち、基礎速度滴定スケジュールは基礎インスリン薬物滴定スケジュールによって提供される。いくつかの実施形態では、第1の時間経過は2週間の集中的測定期間であり、第2の時間経過は第1の時間経過が完了した後の日数、週数又は月数である。空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注射されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。このモデルは、基礎速度滴定スケジュールを検証するために時々使用することができる。つまり、モデルが最近服用したインスリン薬物の量に基づいて被験者の血中グルコース値を適切に予測できない場合、対応する基礎速度滴定スケジュールは検証されず、集中的な第1の時間経過が繰り返されて新しい基礎速度滴定スケジュールが得られ、かつ/又は基礎速度滴定スケジュールは、より高いグルコース目標及び減らされたインスリン薬物を用いる、より保守的なスケジュールに切り替えられる。
【0056】
典型的な実施形態では、ポンプが使用される場合、投与イベントはボーラス(短時間作用型)インスリン薬物の投与を含み、ここで、被験者に注入されるボーラスインスリン薬物の速度は基礎注入速度を含む。第2のデータセット内の他の注入イベントは、ボーラスインスリン薬物の注入を表し得、ここで、被験者に注入されるボーラスインスリン薬物の速度は、ボーラス注入速度、すなわち摂取された炭水化物からの血糖に対する影響を説明する比較的速い速度を含む。第1及び第2のデータセットは、第1の時間経過の間に被験者の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を計算するのに役立ち、これらは、被験者についてのその後の第2の時間経過にわたって基礎速度滴定スケジュール及び空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために使用される。基礎速度滴定スケジュールは、空腹時に安定した血中グルコース値を維持するのに必要な基礎速度を指定するスケジュールであり、基礎速度滴定スケジュールは、基礎注入速度でポンピングするポンプを使用して注入イベントとして適用されるボーラスインスリン薬物滴定スケジュールに基づくことができ、すなわち、基礎滴定速度は、ボーラスインスリン薬物滴定スケジュールによって提供される。いくつかの実施形態では、第1の時間経過は3日間の集中的測定期間であり、第2の時間経過は第1の時間経過が完了した後の日数、週数又は月数である。空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、第2の時間経過の間に被験者に注入されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。このモデルは、基礎滴定スケジュールを検証するために時々使用することができる。つまり、モデルが最近服用したインスリン薬物の量に基づいて被験者の血中グルコース値を適切に予測できない場合、対応する基礎速度滴定スケジュールは検証されず、集中的な第1の時間経過が繰り返されて新しい基礎速度滴定スケジュールが得られ、かつ/又は基礎速度滴定スケジュールは、より高いグルコース目標及び減らされたインスリン薬物を用いる、より保守的なスケジュールに切り替えられる。
【0057】
第2の時間経過において適用されることになる基礎速度滴定スケジュールは、ペン521、ポンプ522、又は2つの装置の組み合わせによって適用され得る。ペンの代わりにポンプを使用すると、第1の時間経過の期間が短くなる場合がある。
【0058】
短時間作用型インスリンの半減期は、長時間作用型インスリンの半減期の約20分の1である。従って、ポンプを使用して基礎速度のインスリン薬物を適用する場合、短時間作用型ボーラスインスリン薬物を使用することにより、被験者に対する基礎速度滴定スケジュールの決定は、長時間作用型インスリン薬物をペンによって注射した場合よりも約20倍速い。
【0059】
ここで実施形態を詳細に参照するが、その例は添付の図面に示されている。以下の詳細な説明において、本開示の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が述べられる。しかしながら、本開示がこれらの具体的な詳細なしで実施されてもよいことは当業者に明らかであろう。他の例において、周知の方法、手順、構成要素、回路、及びネットワークは、実施形態の態様を不必要に曖昧にしないようにするため、詳細には記述されていない。
【0060】
また、第1、第2などの用語は、様々な要素を記述するために本明細書で使用され得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことも理解されよう。これらの用語は、ある要素を他の要素と区別するためにのみ使用されている。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の被験者を第2の被験者と呼ぶことができ、同様に、第2の被験者を第1の被験者と呼ぶことができる。第1の被験者と第2の被験者は、両方とも被験者であるが、同じ被験者ではない。さらに、「被験者」、「ユーザ」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用される。インスリンペンという用語は、個別用量のインスリンを適用するのに適した注射装置を意味し、注射装置は用量関連データを記録し伝達するのに適している。
【0061】
本開示で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数形も含むことを意図する。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連して列挙された項目のうちの1つ又は複数のありとあらゆる可能な組み合わせを指し、それらを包含することも理解されよう。本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)」及び/又は「備える(comprising)」は、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明示するが、しかし、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「~の場合(if)」は、文脈に応じて、「~のときに(when)」又は「~の際に(upon)」又は「決定に応じて(in response to determining)」又は「検出に応じて(in response to detecting)」を意味すると解釈され得る。同様に、「決定された場合」又は「[述べられた条件又はイベントが検出された場合]」という句は、文脈に応じて、「決定時」又は「決定に応じて」又は「[述べられた条件又はイベント]を検出したとき」又は「[述べられた条件又はイベント]の検出に応じて」を意味すると解釈され得る。
【0063】
本開示に従って被験者の基礎速度滴定スケジュールを取得するためのシステム48の詳細な説明が、
図1から
図3と併せて記述される。従って、
図1から
図3は、本開示によるシステムのトポロジーをまとめて示している。トポロジーには、被験者の基礎速度滴定スケジュールを決定するための基礎滴定調整装置(「基礎滴定調整装置250」)(
図1、2、及び3)、データ収集のための装置(「データ収集装置200」)、被験者に関連した1つ又は複数のグルコースセンサ102(
図1及び
図5)、及び被験者にインスリン薬物を注射するための1つ又は複数のインスリン送達装置104(
図1及び
図5)がある。インスリン送達装置は、インスリンペン521又はインスリンポンプ522であり得る。本開示を通して、データ収集装置200及び基礎滴定調整装置250は、明確さの目的のためだけに別々の装置として参照されるであろう。すなわち、データ収集装置200の開示された機能性及び基礎滴定調整装置250の開示された機能性は、
図1に示されるように別々の装置に含まれる。しかし、実際には、いくつかの実施形態では、データ収集装置200の開示された機能性と基礎滴定調整装置250の開示された機能性とが単一の装置に含まれることを理解されるであろう。いくつかの実施形態では、データ収集装置200の開示された機能性及び/又は基礎滴定調整装置250の開示された機能性は、単一の装置に含まれており、この単一の装置はグルコースモニタ102又はインスリン送達装置104である。
【0064】
図1を参照すると、基礎滴定調整装置250は、被験者の基礎速度滴定スケジュールを取得する。これを行うために、基礎滴定調整装置250と電気的に通信しているデータ収集装置200は、第1の時間経過の間に被験者に取り付けられた1つ又は複数のグルコースセンサ102から生じるグルコース測定値を受信する。いくつかの実施形態では、データ収集装置200はまた、インスリン薬物を投与するために被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置104からインスリン薬物投与データを受信する。いくつかの実施形態では、データ収集装置200は、被験者によって使用されるグルコースセンサ102及びインスリン送達装置104からそのようなデータを直接受信する。例えば、いくつかの実施形態では、データ収集装置200は無線周波数信号を介してこのデータを無線で受信する。いくつかの実施形態では、そのような信号は、802.11(WiFi)、Bluetooth、又はZigBee規格に準拠している。いくつかの実施形態では、データ収集装置200は、そのようなデータを直接受信し、データを分析し、分析したデータを基礎滴定調整装置250に渡す。いくつかの実施形態では、グルコースセンサ102及び/又はインスリン送達装置104は、RFIDタグを含み、RFID通信を使用してデータ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250と通信する。いくつかの実施形態では、
図3A及び
図3Bを参照すると、データ収集装置200はまた、被験者の補助データ322を取得又は受信する(例えば、ウェアラブル生理学的測定装置から、データ収集装置200内の測定装置、例えば磁力計又はサーモスタットなどから)。
【0065】
いくつかの実施形態では、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250は、被験者に近接しておらず、かつ/又は無線能力を有しておらず、あるいは、そのような無線機能は、グルコースデータ、インスリン薬物投与データ、及び/又は生理学的測定データを取得する目的では使用されない。そのような実施形態では、通信ネットワーク106を使用して、グルコースセンサ102からのグルコース測定値をデータ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250へ、1つ又は複数のインスリン送達装置104からのインスリン薬物注射データをデータ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250へ、かつ/又は1つ又は複数の生理学的測定装置(図示せず)からの補助測定データをデータ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250へ伝達することができる。
【0066】
ネットワーク106の例には、限定されないが、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)、イントラネット、及び/又は無線ネットワーク、例えば、携帯電話ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)及び/又はメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、及び無線通信による他の装置が含まれる。無線通信は、任意選択的に、汎欧州デジタル移動電話方式(GSM)、拡張データGSM環境(EDGE)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)、高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)、Evolution,Data-Only(EV-DO)、HSPA、HSPA+、デュアルセルHSPA(DC-HSPDA)、ロング・ターム・エボリューション(LTE)、近距離無線通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、ブルートゥース、ワイヤレスフィデリティ(Wi-Fi)(例えば、IEEE802.11a、IEEE802.11ac、IEEE802.11ax、IEEE802.11b、IEEE802.11g、及び/又はIEEE802.11n)、ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル(VoIP)、Wi-MAX、電子メールのためのプロトコル(例えば、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)及び/又はポスト・オフィス・プロトコル(POP))、インスタントメッセージング(例えば、拡張可能メッセージング及びプレゼンスプロトコル(XMPP)、Session Initiation Protocol for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions(SIMPLE)、インスタントメッセージングとプレゼンスのサービス(IMPS))、及び/又はショート・メッセージ・サービス(SMS)、又は本開示の出願日の時点でまだ開発されていない通信プロトコルを含む、任意の他の適切な通信プロトコルを含むが、これらに限定されない複数の通信規格、プロトコル、及び技術のいずれかを使用する。
【0067】
いくつかの実施形態では、第1の時間経過の間に被験者に取り付けられた単一のグルコースセンサ102があり、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250はグルコースセンサ102の一部である。すなわち、いくつかの実施形態では、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250及びグルコースセンサ102は、単一の装置である。
【0068】
いくつかの実施形態では、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250は、インスリン送達装置の一部である。すなわち、いくつかの実施形態では、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250及びインスリン送達装置104は、単一の装置である。
【0069】
もちろん、システム48の他のトポロジーは可能である。例えば、通信ネットワーク106に頼るのではなく、1つ又は複数のグルコースセンサ102及び1つ又は複数のインスリン送達装置104は、情報を、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250に直接無線で送信することができる。さらに、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250は、携帯型電子装置、サーバーコンピュータを構成してもよく、あるいは実際には、ネットワーク中でリンクされているか又はクラウドコンピューティングの環境にある仮想マシンである複数のコンピュータを構成してもよい。従って、
図1に示される例示的なトポロジーは、当業者には容易に理解されるであろう方法で本開示の実施形態の特徴を記述するのに役立つにすぎない。
【0070】
図2を参照すると、典型的な実施形態では、基礎滴定調整装置250は1つ又は複数のコンピュータを含む。
図2に示す目的のために、基礎滴定調整装置250は、被験者の基礎速度滴定スケジュールを取得するための機能の全てを含む単一のコンピュータとして表されている。しかしながら、本開示はそのように限定されない。いくつかの実施形態では、被験者の基礎速度滴定スケジュールを取得するための機能性は、任意の数のネットワーク化されたコンピュータにわたって分散され、かつ/又は複数のネットワーク化されたコンピュータの各々に常駐し、かつ/又は通信ネットワーク106を介してアクセス可能な遠隔地にある1つ又は複数の仮想マシン上で提供されている。当業者には明らかなように、適用のために、多様な異なるコンピュータトポロジーのいずれかが使用され、そのようなトポロジーは全て本開示の範囲内である。
【0071】
前述のことを念頭に置いて
図2を見ると、被験者の基礎速度滴定スケジュールを取得するための例示的な基礎滴定調整装置250は、1つ又は複数の処理装置(CPU)274、ネットワーク又は他の通信インターフェース284、メモリ192(例えば、ランダムアクセスメモリ)、1つ又は複数のコントローラ288によって任意選択的にアクセスされる1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置及び/又は永続的装置290、前述の構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス213、ディスプレイ282及び入力280(例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン)を含むユーザインターフェース278、及び上述の構成要素に電力を供給するための電源276を備える。いくつかの実施形態では、メモリ192内のデータは、キャッシングなどの既知のコンピューティング技術を使用して、不揮発性メモリ290と途切れなく共有される。いくつかの実施形態では、メモリ192及び/又はメモリ290は、中央処理装置274に対して遠隔に配置されている大容量記憶装置を含む。言い換えれば、メモリ192及び/又はメモリ290に格納されたいくつかのデータは、実際には、基礎滴定調整装置250の外部にあるコンピュータ上で提供されてもよいが、ネットワークインターフェース284を使用して、インターネット、イントラネット、又は他の形態のネットワーク若しくは電子ケーブル(
図2の要素106として図示)を介して基礎滴定調整装置250によって電子的にアクセスすることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、被験者の基礎速度滴定スケジュールを取得するための基礎滴定調整装置250のメモリ192は、以下を格納する。
・ 様々な基本システムサービスを処理するための手順を含むオペレーティングシステム202;
・ 基礎滴定調整モジュール204;
・ 第1の時間経過を表し、かつ、第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値208について、それぞれのグルコース測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ210とを含む、第1のデータセット206;
・ 第1の時間経過の間の第1の複数のインスリン薬物記録を含む第2のデータセット212であって、第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録214が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置104を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量218を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント216、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ220、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類222を含む、第2のデータセット212;
図3Cに示すように、投与イベントは、いくつかの実施形態では、インスリン注射イベント330及び/又はインスリン注入イベント335を含み得る。インスリン注射イベント330は、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペン521を使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量331、それぞれのインスリン薬物注射イベント330に対応するタイムスタンプ332であって、かかるタイムスタンプが第1の時間経過の間に起こるタイムスタンプ332、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから被験者に注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類333を含む。インスリン注入イベント335は、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ522を使用して被験者に注入されるインスリン薬物の量336、それぞれのインスリン薬物注入イベントについて対応するタイムスタンプ338であって、かかるタイムスタンプが第1の時間経過の間に起こるタイムスタンプ338、及びボーラスインスリン薬物を含む、注入されるインスリン薬物の種類を含む。注入イベントの場合、使用されるインスリン薬物は、典型的にはボーラスインスリン薬物である;
・ 被験者の定常インスリンレジメン224であって、(ペンを使用して)注射により送達されるように指定された基礎(長時間作用型)インスリン薬物の1日(又は12時間などの他の反復期間)の量227を用いた基礎インスリン薬物投薬レジメン226を含む、定常インスリンレジメン224。定常インスリンレジメン224は、ペンを使用した注射によって送達されるように指定されたボーラスインスリン薬物の1日(又は食事ごと若しくは食事の種類ごと若しくは12時間ごとなどの他の反復期間)の量229を用い、あるいは、ポンプを使用した注入によって送達されるように指定されたボーラスインスリン薬物の反復量232を用いたボーラス(短時間作用型)インスリン薬物投薬レジメン228をさらに含むことができる。インスリン薬物は、基礎注入速度231又はボーラス注入速度232を使用して注入することができる;
・ 第1の時間経過にわたって被験者について計算された第1の糖血症リスク尺度234;
・ 第1の時間経過にわたって被験者について計算されたインスリン感受性因子235;
・ 注射によって適用される基礎インスリン薬物滴定スケジュール237を含む基礎速度滴定スケジュール236、及び/又は基礎注入速度を使用した注入によって適用される、ボーラスインスリン薬物滴定スケジュール238。基礎速度滴定スケジュールは、基礎滴定調整モジュール204によって計算され、第1の時間経過に続く第2の時間経過についての被験者へのインスリンの基礎速度送達を指定する。基礎速度滴定スケジュールは、空腹時血中グルコース目標239を任意選択的に含む。
・ 基礎滴定調整モジュール204によって計算された、第1の時間経過に続く第2の時間経過についての空腹時血中グルコースプロファイルモデル240;及び
・ 第2の時間経過の間に(自律的に又は手動で)取られた複数の空腹時血中グルコース測定値を含む任意選択の第3のデータセット242、
図3Bに示すように、各それぞれの空腹時血中グルコース測定値244は、それぞれの空腹時血中グルコース測定がいつ行われたかを示す付随する空腹時血中グルコースタイムスタンプ246を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、基礎滴定調整モジュール204は、任意のブラウザ(電話、タブレット、ラップトップ/デスクトップ)内でアクセス可能である。いくつかの実施形態では、基礎滴定調整モジュール204は、ネイティブデバイスフレームワーク上で動作し、Android又はiOSなどのオペレーティングシステム202を実行している基礎滴定調整装置250へのダウンロード用に利用可能である。
【0074】
いくつかの実施形態では、被験者の基礎インスリン薬物滴定スケジュールを取得するための基礎滴定調整装置250の1つ又は複数の上記で特定されたデータ要素又はモジュールが、1つ又は複数の前述のメモリ装置に格納され、上記の機能を実行するための一組の命令に対応する。上記で特定されたデータ、モジュール又はプログラム(例えば、命令のセット)は、別々のソフトウェアプログラム、手順又はモジュールとして実装される必要はなく、従って、これらのモジュールの様々なサブセットは、様々な実装において結合されるか又は別の方法で再編成され得る。いくつかの実施形態では、メモリ192お及び/又は290は任意選択的に、上記で特定されたモジュール及びデータ構造のサブセットを格納する。さらに、いくつかの実施形態では、メモリ192及び/又は290は、上記に記述されていない追加のモジュール及びデータ構造を格納する。
【0075】
いくつかの実施形態では、被験者の基礎インスリン薬物滴定スケジュールを取得するための基礎滴定調整装置250は、スマートフォン(例えば、iPHONE)、ラップトップ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、又は他の形態の電子機器(例えばゲーム機)である。いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250は移動式ではない。いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250は移動式である。
【0076】
図3A、
図3B及び
図3Cは、本開示に従った基礎滴定調整装置250の特定の実施形態のさらなる説明を提供する。
【0077】
図3Aに示す基礎滴定調整装置250は、1つ又は複数の処理装置(CPU)274、周辺機器インターフェース370、メモリコントローラ368、ネットワーク又は他の通信インターフェース284、メモリ192(例えば、ランダムアクセスメモリ)、ディスプレイ282及び入力280(例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン)を含むユーザインターフェース278、任意選択の加速度計317、任意選択のGPS319、任意選択の音声回路372、任意選択のスピーカ360、任意選択のマイクロフォン362、基礎滴定調整装置250上の接触の強度を検出するための1つ又は複数の任意選択の強度センサ364(例えば、基礎滴定調整装置250のタッチセンシティブディスプレイシステム282などのタッチセンシティブ表面)、任意選択の入力/出力(I/O)サブシステム366、1つ又は複数の任意選択の光学センサ373、前述の構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス213、上述の構成要素に電力を供給するための電源276を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、入力280は、タッチセンシティブ表面などのタッチセンシティブディスプレイである。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース278は、1つ又は複数のソフトキーボードの実施形態を含む。ソフトキーボードの実施形態は、表示されたアイコン上に標準(QWERTY)及び/又は非標準構成の記号を含むことができる。
【0079】
図3Aに示す基礎滴定調整装置250は、基礎滴定調整装置250の位置及び向き(例えば、縦方向又は横方向)に関する情報を取得するため、及び/又は被験者による身体運動量を決定するための加速度計317に加えて、磁力計(図示せず)、及びGPS319(又はGLONASS若しくは他のグローバルナビゲーションシステム)受信機を任意選択的に含む。
【0080】
図3Aに示される基礎滴定調整装置250は、被験者の基礎速度滴定スケジュール236を取得するために使用され得る多機能装置の一例にすぎず、かつ、基礎滴定調整装置250は、示されているよりも多い又は少ない構成要素を任意選択的に有し、2つ以上の構成要素を任意選択的に組み合わせ、又は構成要素の異なる構成若しくは配置を任意選択的に有することを理解すべきである。
図3に示す様々な構成要素は、1つ又は複数の信号処理及び/又は特定用途向け集積回路を含む、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせにおいて実装される。
【0081】
図3に示されている基礎滴定調整装置250のメモリ192は任意選択的に高速ランダムアクセスメモリを含み、かつ、任意選択的に、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置、又は他の不揮発性固体メモリ装置などの不揮発性メモリも含む。CPU274などの基礎滴定調整装置250の他の構成要素によるメモリ192へのアクセスは、任意選択的に、メモリコントローラ368によって制御される。
【0082】
いくつかの実施形態では、上記の
図2の装置250のメモリ192/290内の構成要素(モジュール、データ構造など)のうちのいずれか又は全てに加えて、
図3Aに示される基礎滴定調整装置250のメモリ192/290は任意選択的に、以下を含む。
・ 第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセット302であって、第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録304が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量308を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント306、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ310であって、かかるタイムスタンプ310が第2の時間経過の間に起こるタイムスタンプ310、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類312を含む。
図3Cに示すように、投与イベントは、いくつかの実施形態では、インスリン注射イベント340及び/又はインスリン注入イベント345を含み得る。インスリン注射イベント340は、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペン521を使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量341、それぞれのインスリン薬物注射イベント340に対応するタイムスタンプ342であって、かかるタイムスタンプが第2の時間経過の間に起こるタイムスタンプ342、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから被験者に注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類343を含む。インスリン注入イベント345は、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ522を使用して被験者に注入されるインスリン薬物の量346、それぞれのインスリン薬物注入イベントについて対応するタイムスタンプ348であって、かかるタイムスタンプが第2の時間経過の間に起こるタイムスタンプ348を含む。注入イベントの場合、使用されるインスリン薬物は、典型的にはボーラスインスリン薬物である;
・ 複数の治療群314(
図3A)であって、各それぞれの治療群316(
図3B)が、独立して、第1の時間経過の間に被験者から測定されたメトリックのベクトル320を使用して、被験者の第2の時間経過についての対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240及び対応する基礎速度滴定スケジュール236を計算するために使用される複数の教師付き分類指標内の対応する教師付き分類指標318と関連付けられる、複数の治療群314(
図3A)、及び
・ 第1の時間経過の間に行われた測定値326(例えば、被験者によって及ぼされるエネルギー、被験者の体重、被験者の年齢、及び被験者の食事活動)の形態で被験者に関連した補助データ324を含む第5のデータセット322。
【0083】
いくつかの実施形態では、補助データ324は被験者の体温を含む。いくつかの実施形態では、補助データ324は被験者の活動の測定値を含む。いくつかの実施形態では、第2の時間経過にわたって対応する基礎速度滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために、この補助データは、被験者の第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235と併せて追加の入力として役立つ。いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250の任意選択の加速度計317、任意選択のGPS319、及び/又は磁力計(図示せず)、あるいは任意選択で1つ若しくは複数のグルコースモニタ102及び/又は1つ若しくは複数のインスリンペン104内のそのような構成要素が、そのような補助データ324を取得するために使用される。
【0084】
周辺機器インターフェース370を使用して、装置の入力及び出力周辺機器を、CPU274及びメモリ192に結合することができる。1つ又は複数のプロセッサ274は、基礎滴定調整モジュール204など、メモリ192/290に格納されている様々なソフトウェアプログラム及び/又は命令セットを実行(run)又は実行し(execute)、基礎滴定調整装置250のための様々な機能を実行し(perform)、データを処理する。
【0085】
いくつかの実施形態では、周辺機器インターフェース370、CPU274、及びメモリコントローラ368は、任意選択的に、単一チップ上に実装される。いくつかの他の実施形態では、それらは別々のチップに実装される。
【0086】
ネットワークインターフェース284のRF(無線周波数)回路は、電磁信号とも呼ばれるRF信号を送受信する。いくつかの実施形態では、第1のデータセット206、第2のデータセット212、定常インスリンレジメン224、任意選択の第3のデータセット242、任意選択の第4のデータセット302、任意選択の治療群314、及び/又は任意選択の第5のデータセット322は、このRF回路を使用して、被験者に関連したグルコースセンサ102、被験者に関連したインスリンペン104、及び/又はデータ収集装置200などの1つ又は複数の装置から受信される。いくつかの実施形態では、RF回路108は、電気信号を電磁信号に/から変換し、電磁信号を介して、通信ネットワーク及び他の通信装置、グルコースセンサ102、インスリンペン104、及び/又はデータ収集装置200と通信する。RF回路284は任意選択的に、限定されないが、アンテナシステム、RFトランシーバ、1つ又は複数の増幅器、チューナ、1つ又は複数の発振器、デジタル信号プロセッサ、コーデックチップセット、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリなどを含む、それらの機能を実行するための周知の回路を含む。RF回路284は、任意選択的に通信ネットワーク106と通信する。いくつかの実施形態では、回路284は、RF回路を含まず、かつ実際には、1つ又は複数のハードワイヤ(例えば、光ケーブル、同軸ケーブルなど)を介してネットワーク106に接続される。
【0087】
いくつかの実施形態では、音声回路372、任意選択のスピーカ360、及び任意選択のマイクロフォン362は、被験者と基礎滴定調整装置250との間に音声インターフェースを提供する。音声回路372は、周辺機器インターフェース370から音声データを受信し、その音声データを電気信号に変換し、その電気信号をスピーカ360に送信する。スピーカ360は、電気信号を人間が聴取可能な音波に変換する。音声回路372はまた、マイクロフォン362によって音波から変換された電気信号を受信する。音声回路372は、電気信号を音声データに変換し、音声データを処理のための周辺機器インターフェース370に送信する。音声データは、任意選択的に、周辺機器インターフェース370によってメモリ192及び/若しくはRF回路284から検索され、かつ/又はメモリ192及び/若しくはRF回路284に送信される。
【0088】
いくつかの実施形態では、電源276は任意選択的に電力管理システム、1つ又は複数の電源(例えば、電池、交流(AC))、再充電システム、電力障害検出回路、電力変換器又はインバータ、電源状態インジケータ(例:発光ダイオード(LED))、及び携帯型装置における電力の生成、管理、配電に関連する任意の他の構成要素を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250は、任意選択的に1つ又は複数の光学センサ373も含む。光学センサ373は、任意選択的に、電荷結合素子(CCD)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)フォトトランジスタを含む。光学センサ373は、1つ又は複数のレンズを通して投影された環境から光を受け取り、その光を画像を表すデータに変換する。光学センサ373は、任意選択的に、静止画像及び/又はビデオを取り込む。いくつかの実施形態では、入力280が、静止画像及び/又はビデオ画像取得のためのビューファインダとしての使用が可能になるように、光学センサは、基礎滴定調整装置250の前面のディスプレイ282とは反対側の、基礎滴定調整装置250の裏側に配置される。いくつかの実施形態では、(例えば、被験者の健康又は状態を確認するため、被験者の身体活動レベルを決定するため、被験者の状態を遠隔で診断するのを助けるため、又は被験者の視覚の生理学的測定値312を取得するために、等)、被験者の画像が得られるように、別の光学センサ373が基礎滴定調整装置250の前面に配置される。
【0090】
図3Aに示すように、基礎滴定調整装置250は、好ましくは、様々な基本システムサービスを処理するための手順を含むオペレーティングシステム202を含む。オペレーティングシステム202(例えば、iOS、DARWIN、RTXC、LINUX、UNIX、OS X、WINDOWS、又はVxWorksなどの組み込みオペレーティングシステム)は、一般的なシステムタスク(例えば、メモリ管理、記憶装置制御、電力管理など)を制御及び管理するための様々なソフトウェア構成要素及び/又はドライバを含み、様々なハードウェアとソフトウェアの構成要素間の通信を容易にする。
【0091】
いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250はスマートフォンである。他の実施形態では、基礎滴定調整装置250はスマートフォンではなく、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、緊急車両用コンピュータ、又は他の形態、又は有線若しくは無線ネットワーク装置である。いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250は、
図2又は
図3に示す基礎滴定調整装置250に見られる、回路、ハードウェア構成要素、及びソフトウェア構成要素のいずれか又は全てを有する。簡潔さ及び明瞭さのために、基礎滴定調整装置250にインストールされる追加のソフトウェアモジュールをより強調するために、基礎滴定調整装置250の可能な構成要素のうちのほんのいくつかだけが示される。
【0092】
図1に開示されているシステム48はスタンドアローンで動作することができるが、いくつかの実施形態では、それは電子的医療記録とリンクされて任意の方法で情報を交換することもできる。
【0093】
被験者の基礎インスリン薬物滴定スケジュールを取得するためのシステム48の詳細が開示されたので、本開示の実施形態に従った、システムのプロセス及び特徴のフローチャートに関する詳細が、
図4Aから4Gを参照して開示される。いくつかの実施形態では、システムのそのようなプロセス及び特徴は、
図2及び
図3に示される基礎滴定調整モジュール204によって実施される。
【0094】
ブロック402。
図4Aのブロック402を参照すると、1型真性糖尿病又は2型真性糖尿病のいずれかを有する被験者におけるインスリン療法の目的は、空腹時及び食後の血漿グルコースを制御するために、できるだけ正常な生理的インスリン分泌に一致させることである。
図2に示すように、基礎滴定調整装置250は、一つ又は複数のプロセッサ274とメモリ192/290とを備える。メモリは、1つ又は複数のプロセッサによって実行されたときに方法を実行する命令を格納する。
【0095】
ブロック404-408。
図4Aのブロック404を参照すると、この方法において、第1のデータセット206が取得される。第1のデータセット206は、第1の時間経過にわたって取られた被験者の複数の自律的グルコース測定値を含む。被験者が手動で測定を行わないという意味で、グルコース測定は自律的である。むしろ、連続的グルコースモニタのような装置が、グルコース測定を行うために使用される。従って、第1の時間経過は、実質的な量のデータが被験者から取得されるデータ集中的期間を表す。ブロック406を参照すると、いくつかの実施形態では、この実質的な量のデータは、被験者が装着している測定装置から5分以内、3分以内、又は1分以内の間隔速度で取られた第1のデータセット206内の自律的グルコース測定値208の形態である。
【0096】
いくつかの実施形態では、複数の自律的グルコースは、1日以上、2日以上、1週間以上、2週間以上、1ヶ月以上の期間にわたって、又は1ヶ月未満、3週間未満、若しくは2週間以下の期間にわたって取られた、20個以上の自律的グルコース測定値、40個以上の自律的グルコース測定値、100個以上の自律的グルコース測定値、200個以上の自律的血糖測定値、又は1000個以上の自律的グルコース測定値を含む。
【0097】
典型的な実施形態では、自律的グルコース測定値は、1つ又は複数のグルコースセンサ102からのものである。
図2に示す。そのような各自律的グルコース測定値208は、それぞれの自律的グルコース測定がいつ行われたかを表すために、グルコース測定タイムスタンプ210によりタイムスタンプされる。従って、いくつかの実施形態では、自律的グルコース測定値は、人間の介入なしに測定される。すなわち、被験者は手動で自律グルコース測定を行わない。本開示の代替のあまり好ましくない実施形態では、被験者又は医療実施者は手動でグルコース測定を行い、そのような手動グルコース測定値が第1のデータセット206におけるグルコース測定値208として使用される。
【0098】
自律的グルコース測定値が、第1のデータセット206において使用される実施形態では、ABBOTTによるFRESETYLE LIBRE CGM(「LIBRE」)などの装置は、被験者の複数の自律的グルコース測定を行うためにグルコースセンサ102として機能し得る。LIBREは、皮膚上のコインサイズのセンサによりキャリブレーションフリーのグルコース測定を可能にし、これは、近接させると、近距離無線通信を介して最大8時間のデータをリーダー装置(例えば、データ収集装置200及び/又は基礎滴定調整装置250)に送信することができる。LIBREは、全ての日常生活活動の中で14日間装着することができる。いくつかの実施形態では、自律的グルコース測定値208は、1日以上、2日以上、1週間以上、又は2週間以上の期間(第1の時間経過)にわたって、5分以内、3分以内、又は1分以内の間隔速度で被験者から取られる。いくつかの実施形態では、グルコース測定値218は自律的に取られる(例えば、人間の努力なしに、人間の介入なしに、等)。
図4Aのブロック408を参照すると、いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250は無線受信機をさらに含み、第1のデータセット206は被験者に貼り付けられたグルコースセンサ102から無線で取得される(例えば、802.11、ブルートゥース、又はZigBee標準)。
【0099】
ブロック409。
図4Aのブロック409を参照すると、方法において、第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン224に関連した第2のデータセット212もまた取得される。第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含む。第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録214は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置104を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量218を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント216、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ220、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類222を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、第2のデータセット212内の1つ又は複数のインスリン薬物記録214によって指定される基礎インスリン薬物は、12から24時間の間である作用期間を有する単一のインスリン薬物、又は12から24時間の間である作用期間をまとめて有するインスリン薬物の混合物からなる。このような基礎インスリン薬物の例には、限定されないが、インスリンデグルデク(Tresibaの商標名でNOVO NORDISKによって開発されたもの)、NPH(Schmid, 2007, “New options in insulin therapy,” J Pediatria (Rio J). 83(Suppl 5): S146-S155)、グラルギン(LANTUS、2007年3月2日)、インスリングラルギン[rDNA由来]注射(Dunn et al. 2003, “An Updated Review of its Use in the Management of Diabetes Mellitus” Drugs 63: p. 1743)、及びデテミル(Plank et al., 2005, “A double-blind, randomized, dose-response study investigating the pharmacodynamic and pharmacokinetic properties of the long-acting insulin analog detemir,” Diabetes Care 28:1107-1112)が含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態では、第2のデータセット212内の1つ又は複数のインスリン薬物記録214によって任意選択的に指定されるボーラスインスリン薬物は、3から8時間の間である作用期間を有する単一のインスリン薬物、又は3から8時間の間である作用期間をまとめて有するインスリン薬物の混合物からなる。そのような基礎インスリン物の例には、限定されないが、リスプロ(ヒューマログ、2001年5月18日、インスリンリスプロ[rDNA由来]注射、インディアナ州インディアナポリス:Eli Lilly and Company)、アスパルト(ノボログ、2011年7月)、インスリンアスパルト [rDNA由来]注射、プリンストン、ニュージャージー州、NOVO NORDISK Inc.、2011年7月)、及びグルリジン(Helms Kelley, 2009, “Insulin glulisine: an evaluation of its pharmacodynamic properties and clinical application,” Ann Pharmacother 43:658-668)、及びレギュラー(Gerich, 2002, “Novel insulins: expanding options in diabetes management,” Am J Med. 113:308-316)が含まれる。
【0102】
ブロック412-420。本開示は、本開示のシステム及び方法が適用され得るいくつかのユーザシナリオを熟考する。
【0103】
そのようなユーザの一シナリオでは、滴定の改善を望み、かつ血中グルコースが低い被験者について、医療実施者は、被験者に第1の時間経過のためのインスリン薬物(例えば、基礎インスリン薬物、及び/又は基礎及びボーラスインスリン薬物の組み合わせ)を処方し、さらに、スマートフォンにダウンロードするための基礎調整モジュール204の一形態である「Connect and Control Pack」を処方する。このConnect and Control Packは、インスリン薬物を滴定する方法を患者に教えるために使用される。いくつかの実施形態では、基礎調整モジュール204の形態のConnect and Control Packは、基礎滴定調整装置250として機能する被験者のスマートフォン上のアプリケーションとして診療所又は自宅でダウンロードされる。自宅では、インスリン薬物の処方を受け取った後、被験者は基礎調整モジュール204を介してセンサ102をスマートフォンにペアリングし、バーコードを介して登録する。基礎調整モジュール204は、滴定プロセスについての指示及びデータを定期的に同期させることについての指示を患者に与える。定期的に(例えば、3日ごとに)、被験者は基礎滴定調整装置250からメッセージを受信し、装置102からの連続的なグルコース測定値をスキャンし、データに基づいてインスリン薬物の用量を調整する。インスリン薬物用量調整は、基礎調整モジュール204において自動的に行われる。いくつかの実施形態では、患者のデータは自動的にサーバにアップロードされるので、医療実施者はインターネットを介して患者のデータ(例えば、グルコース測定値及び新たに計算されたインスリン薬物投与量)を見ることができる。
【0104】
別のユーザのシナリオでは、血中グルコース値の制御が不十分である被験者について、医療実施者は、被験者を診て、トラブルシューティングして制御下の血中グルコース値を得るための基礎調整モジュール204の一形態である「Connect and Control Pack」を処方する。モジュールのデモンストレーションバージョンは、被験者にアプリケーションの使用方法を教えるために使用され、基礎調整モジュール204のフルバージョンは、診療所(又は被験者の自宅)で被験者のスマートフォンにダウンロードされる。そのようなシナリオでは、スマートフォンは基礎滴定調整装置250として機能する。自宅では、インスリン薬物の処方を受け取った後、被験者は1つ又は複数のグルコースセンサ102をアプリを介してスマートフォンにペアリングし、バーコードを介して登録する。基礎調整モジュール204は、データを定期的に同期させ、このデータを医療実施者に送信するように被験者に指示を与える。被験者は一定の期間(例えば1週間)連続的グルコースモニタを装着し、通常通りインスリン薬物を注射する。この期間の経過後、医師はデータを見て、インスリン薬物投与量について推奨を行う。被験者はこれらの推奨に従って治療を調整し、医療実施者は血中グルコースが制御されるまで進行を追跡する。次いで、被験者は、連続グルコースモニタの装着をやめ、血中グルコース値が制御されたときに、ペンの追加装置(ペンに装着される追加装置、基礎滴定調整装置250へ薬物記録を送信する)を取り外すことができる。
【0105】
有利なことに、本開示は上記ユーザシナリオに新しい要素を提供する。新しい要素は、データ収集を2つの部分、集中的データ収集期間とそれに続くそれほど集中的ではない期間とに分割することである。ブロック402から411は、
図7では集中的データ収集期間と呼ばれ、線702の左側の滴定曲線の領域を占める第1の時間経過の間の集中的データ収集期間を記述する。
図4Bのブロック412を参照すると、方法では、第1のデータセット206及び第2のデータセット212を使用して、線702の右側の、
図7の第2の時間経過に移行するために、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235を計算する。
【0106】
ブロック402から411において上にまとめたように、第1の時間経過は、血中グルコース及びインスリンデータのデータ収集が集中的であるスターター期間を構成する。一実施形態では、連続グルコースモニタを14日間、5分ごとに読み取りを行って、第1のデータセット206を生成する。このデータセットの結果は、ユーザの用量反応及び血中グルコースプロファイルのプロファイル並びに日差変動のシステム同定をロバストに可能にするのに十分なほど大きい。
図9に示す。
図9のパネルAは、14日の期間にわたるグルコース濃度を示し、ここでは各日からの自律的グルコース測定値が反復する24時間の期間にわたって重なり合ってプロットされる。
図9のパネルBは、平均連続4時間分散及び特定された最小分散の時間を示している。次いで、第2の期間、スターター期間(第1の時間経過)からのプロファイルである第2の時間経過が、目標グルコース値へ滴定することにおいて被験者を指導するために使用される。このあまり集中的でないデータ滴定期間(
図7の線702の右側)は、データ収集をはるかに低いレベルに減らすことを可能とし、治療を簡素化し、コンプライアンスの負担を軽減する。
【0107】
ブロック414及び
図9を参照すると、いくつかの実施形態では、第1のデータセット206及び第2のデータセット212は、(i)複数の自律的グルコース測定値にわたって観察された総グルコース値の変動性、(ii)複数の自律的グルコース測定値から計算された複数の空腹時グルコース値、(iii)複数の自律的グルコース測定値において観察された最小グルコース測定値902、(iv)複数の自律的グルコース測定値において観察された最大グルコース測定値904、(v)複数の自律的グルコース測定値及び第2のデータセット212を使用して計算されたインスリン感受性因子の変化率、(vi)(a)定常インスリンレジメン224によって指示されたときに被験者によって行われたインスリン薬物投与イベント216の数を、(b)第1の時間経過における定常インスリンレジメン224によって指示される基礎インスリン薬物投与イベント216の総数で割ることによって計算される第1の時間経過にわたる基礎順守スコア、(vii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲906-908(例えば、
図9を参照すると、目標範囲は線906と908の間にあるグルコース濃度である)を上回っている時間の割合、(viii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲906-908を下回っている時間の割合、(ix)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲906-908の外(上又は下)にある時間の割合、(x)複数の自律的グルコース測定値の広がりの尺度(例えば、第1の時間経過における最高グルコース測定値と最低グルコース測定値との間の差分)、又は(xi)第1の時間経過におけるグルコース測定値の平均プロファイル及び標準偏差を決定することによって第1の時間経過中の被験者の第1の糖血症リスク尺度を計算するために使用される。
図11は、第1の時間経過におけるグルコース測定値の平均プロファイル及び標準偏差を示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、第1の糖血症リスク尺度は、絶食期間中に起こる第1のデータセット内の自律的血中グルコース測定値に基づく。そのような絶食期間を確かめるために多くの方法がある。いくつかの実施形態では、絶食期間を特定することは、ウェアラブル装置から(例えば、ウェアラブル生理学的測定装置から、磁力計又はサーモスタットなどのデータ収集装置200内の測定装置から)第5のデータセット322を受信することを含み、第5のデータセットは、絶食期間を示す第1の時間経過の間のユーザの補助メトリックを示す。いくつかの実施形態では、補助データ324は被験者の体温である。いくつかの実施形態では、補助データ324は被験者の活動の測定値である。いくつかの実施形態では、基礎滴定調整装置250の任意選択の加速度計317、任意選択のGPS319、及び/又は磁力計(図示せず)、あるいは任意選択で1つ若しくは複数のグルコースモニタ102及び/又は1つ若しくは複数のインスリンペン104内のそのような構成要素が、そのような補助データ324を取得するために使用される。いくつかの実施形態では、以下のブロック416に開示されているものなどの自律的高速検出アルゴリズムと補助データ測定値の両方が、絶食期間を検出するために使用される。例えば、いくつかの実施形態では、絶食期間は(例えばブロック416を介して)自律的に検出され、補助データ324を使用して検証される。説明すると、絶食の期間がブロック416に開示されたもののようなアルゴリズムを使用して自律的に検出されるとき、それは時間的に補助データ324と一致しており(時間的に一致している)、これはさらに被験者が絶食していることを示す。この一致が成功すると、絶食期間が検証されたと見なされ、本開示のさらなるステップにおいて使用される。
【0109】
図4Cのブロック416を参照すると、いくつかの実施形態では、第1の糖血症リスク尺度は、複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値を含む。従って、いくつかの実施形態では、絶食期間を特定するために複数の自律的グルコース測定値が評価され、次いでこの絶食期間における自律的グルコース測定値が空腹時グルコース値を決定するために使用される。
【0110】
例えば、
図9及び
図10にプロットされた複数の空腹時グルコース測定値の場合を考える。空腹時グルコース測定値は、
図10において絶食期間1002によって示されている。空腹時グルコース値を検出するために、自律的グルコース測定値における最も低い分散の期間及び同じ日の平均グルコース測定値よりも低い平均値が求められる。
図9、10及び11のパネルBは、
図9のパネルA(第1の時間経過の例)にプロットされた、次式によって定義される、14日間にわたる自律的グルコース測定における連続4時間分散(第1の時間経過における暦日の分散の例)を示す。
【0111】
このように、第1の時間経過の間の空腹時グルコース値は、第1の時間経過の複数の自律的グルコース測定値にわたって分散σ
k
2の移動期間を計算することによって計算され、ここで、G
iは、複数の自律的グルコース測定値のうちの部分kにおけるi番目の自律的グルコース測定値であり、Mは、所与の期間(例えば、
図9にプロットされた24時間の期間にわたる連続した4時間のウィンドウ)における自律的グルコース測定値の数であり、24時間の期間におけるそれぞれの連続する所定の期間を表し、
は、それぞれの連続する所定の期間内の複数の自律的グルコース測定値から選択された自律的グルコース測定値の平均であり、kは、それぞれの連続する所定の期間内の測定である。第1の時間経過における絶食期間は、第1の時間経過内の最小分散
の期間に関連付けられる。空腹時グルコース値は、絶食期間中の複数の自律的グルコース測定値におけるグルコース測定値を使用して計算される。
図9の例において、午前8時前の4時間が最も低い分散と24時間の平均グルコース濃度よりも小さい平均値を有し、従って、
図10に示すように空腹期間1002と見なされる。4時間の期間におけるグルコースの平均値はまた、前の暦日の24時間である、先行する24時間の平均グルコース値、又は4時間の期間において比較的低いグルコース値の特定を可能にする基準値を提供する別の期間の平均グルコース値に対して評価することができる。従って、期間1002における自律的グルコース測定値は、第1の時間経過における絶食期間を表す空腹時グルコース値を決定するために使用される。この空腹時グルコース値は、次に、
図13に示され、以下により詳細に述べられるように、空腹時グルコース値が絶食期間における最小自律的グルコース測定値(min(FG))として計算される場合、基礎速度滴定スケジュールがどれくらい野心的であるべきかを決定するために使用される。この空腹時グルコース値はさらに、絶食期間内の血中グルコース測定値の最小値(例えば、低血糖症が起きたかどうか)及び絶食期間中の血中グルコース測定値の分散に基づいて、第2の時間経過の間に血中グルコース値がどのくらいの頻度で測定されるべきかを決定するために使用される。
【0112】
図4Cのブロック418を参照すると、いくつかの実施形態では、空腹時グルコース値は、(i)絶食期間中の自律的グルコース測定値からの最小グルコース値、(ii)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる中心傾向の尺度(例えば、絶食期間における、算術平均、加重平均、ミッドレンジ、ミッドヒンジ、トリムミーン(trimean)、ウィンザー化平均、中央値、又は自律的グルコース測定のモード)、(iii)絶食期間中の自律的グルコース測定値の範囲(例えば、絶食期間中の最高グルコース測定値と最低グルコース測定値との間の差分)、(iv)絶食期間中の自律的グルコース測定値わたる四分位範囲、(v)絶食期間中の自律的グルコース測定値の分散、(vi)以下のように計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値の平均(μ)からの絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる平均二乗差(σ
2):
[式中、m
iは、絶食期間中のi番目の自律的グルコース測定値であり、Pは、絶食期間中の自律的グルコース測定値の数である]、及び(vii)√σ
2として計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる標準偏差を含む。
【0113】
上述したように、第1のデータセット206及び第2のデータセット212を使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235を計算する。ブロック414から418は、いくつかの実施形態において第1の糖血症リスク尺度234が計算される方法を開示する。いくつかの実施形態では、インスリン感受性は、空腹時グルコース値及び対応するインスリン用量に基づいて決定され、
式中、ISFはインスリン感受性であり、FGは空腹時グルコースであり、Uはインスリン薬物用量サイズである。従って、ISFを計算するために、様々な用量のインスリン薬物を第1の時間経過の間に投与する必要がある。
図12は、第1の期間が3つの期間(投薬期間1202、投薬期間1204、及び投薬期間1206)に分割され、異なるインスリン投与量サイズが各投薬期間において処方される実施形態を示す。
図12において、24時間にわたる自律的グルコース測定値が各投薬期間についてプロットされている。各投薬期間における絶食期間中の平均グルコース値は、各投薬期間についてのインスリン薬物用量サイズと組み合わされて、インスリン感受性を計算するために使用される。
【0114】
ブロック420を参照すると、いくつかの実施形態では、第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン224は、第1の時間経過内の複数のエポック(n)(例えば投薬期間)、及び複数のエポックの各それぞれのエポックについて、異なる1日の(又は他の反復期間、例えば12時間、48時間、1週間の)総基礎インスリン薬物投与量を指定する。そのような実施形態では、インスリン感受性因子(ISF)は、
によって計算され、
式中、iは、複数のエポックへの第1のインデックスであり、jは、複数のエポックへの第2のインデックスであり、ΔFG
i,jは、エポックiとエポックjとの間の被験者の平均空腹時グルコース値の差であり、ΔU
i,jは、定常インスリンレジメン又は第2のデータセットによって決定される、エポックiとエポックjとの間の被験者の1日の(又は他の反復期間、例えば12時間、48時間、1週間の)インスリン用量サイズの差である。例えば、定常インスリンレジメンを使用してΔU
i,jを計算する場合、被験者による定常インスリンレジメンへの順守が仮定される。一方、第2のデータセットが、ΔU
i,jを決定又確認するために使用される場合、そのときは定常インスリンレジメンへの被験者による順守は仮定される必要はない。むしろ、被験者のインスリン用量サイズは、第2のデータセットから直接計算することができる。例えば、エポックの各々においてタイムスタンプ220を有するインスリン薬物記録214を使用して、各エポックについてのインスリン用量サイズを計算することができる。
【0115】
ブロック422-430。
図4Dのブロック422を参照すると、方法は、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235を使用することによって、(i)対応する基礎速度滴定スケジュール236であって、被験者の第2の時間経過について、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール237(又は基礎速度でインスリンポンプが使用される場合、ボーラスインスリン薬物滴定スケジュール)に基づくか又は一致する基礎速度滴定スケジュール236(ここで、第2の時間経過は第1の時間経過に続いて起こる)、及び(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240を取得することを継続する。対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注射される基礎インスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0116】
いくつかの実施形態では、
図13に示されるように、被験者の第2の時間経過についての基礎速度滴定スケジュール236は、被験者の第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235を使用して特定され、ここで、基礎速度滴定スケジュール236が異なる方法で定義された以下の野心値の関数としてカスタマイズされ、
滴定野心=f(x),
式中、
滴定野心=
[用量変更頻度、
用量変更ステップサイズ
FG測定頻度]
であり、これは、第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235の関数であるf(x)に基づいている。いくつかの実施形態では、追加の変数がxについて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、
x=[min(BG)、var(BG)、糖血症リスク、...]であって、
式中、BGは、第1のデータセット206内の複数の自律的グルコース測定値又は絶食期間中の自律的グルコース測定値を代替的に表し、ここで、
図13に示すように、滴定野心の異なる要因が、事前に定義された範囲内になるように制限されている。
【0117】
ブロック402から411に関連して上述したように、いくつかの実施形態では、集中的データ収集(第1の時間経過)期間におけるデータの入力は、ブロック410に示すように接続されたペン、ブロック411に示すように接続されたインスリンポンプ、又は手動入力(例えば、第2のデータセット212)、グルコース測定(空腹時グルコース測定、連続グルコース測定)(例えば、第1のデータセット206)、及びおそらくは測定(エネルギー測定)のためのウェアラブルセンサ、体重、年齢、食事データ、習慣(活動)、及び/又は高度な血液分析などを介したインスリンデータ収集である。例えば、ブロック424を参照すると、いくつかの実施形態では、第5のデータセット322が取得される。第5のデータセットは、第1の時間経過における被験者に関連した補助データ324を含む。補助データは、第1の時間経過の間の、被験者によって及ぼされるエネルギー、被験者の体重、被験者の年齢、及び被験者の食事活動のうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、第5のデータセットは、第2の時間経過にわたって対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール236及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240を取得するために、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子と併せて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、この補助データは、基礎インスリン薬物滴定スケジュールについての滴定野心を確認するためにベクトルxにおいて使用される。
【0118】
図14及び
図15はそれぞれ、第1の糖血症リスク尺度234について異なる値を有し、従って対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール237に基づいて異なる基礎速度滴定スケジュールを有する2人の異なる被験者に対応する。異なる基礎インスリン薬物滴定スケジュール237は、異なる滴定野心値を有する。
【0119】
図14のパネルBは、空腹時グルコース変動が大きく、かつ低血糖症のリスクが高い被験者の第2の時間経過にわたる、ゆっくりした注意深い基礎インスリン薬物滴定スケジュール237を示す。
図14のパネルAは、基礎インスリン薬物滴定スケジュール237における基礎インスリン薬物の単位の関数として被験者の空腹時グルコース濃度を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240を示す。第2の時間経過の間にこの基礎インスリン薬物滴定スケジュール237を検証するために、被験者は、目標に到達していると推定されるまで、最初の16週間を通して3日ごとに空腹時グルコースを測定するように指示される(
図14のパネルAに小さい×印で表示)。その後、被験者の空腹時グルコースが2週間ごとに測定され得る。
【0120】
図15のパネルBは、空腹時グルコース変動が少なく、インスリン感受性が低く、かつ低血糖症のリスクが低い被験者の第2の時間経過にわたる、野心的基礎インスリン薬物滴定スケジュール237を示す。
図15のパネルAは、基礎インスリン薬物滴定スケジュール237における基礎インスリン薬物の単位の関数として被験者の空腹時グルコース濃度を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240を示す。目標グルコース値は7週目に到達すると仮定され、第2の時間経過の間にこの基礎インスリン薬物滴定スケジュール237を検証するために、被験者は第2の時間経過の最初の2週間は3日毎に(
図15のパネルAに小さい×印で表示)、次の5週間は毎週、そして目標グルコース値に達した後は2週間に1回、例えば医療実施者によって滴定期間が停止されるまで、空腹時グルコースを測定するように指示される。
【0121】
滴定期間が開始され、患者が空腹時グルコースを測定すると、これらの測定値は第2の時間経過の間に滴定を監視するために使用される。測定値が空腹時グルコースの予測範囲内にある場合、滴定は計画通りに進められる。測定値が予想通りでない場合、滴定装置は、例えば、野心計画を減らし、それに従って滴定を調整する。いくつかの実施形態では、測定値が予想通りではない場合、被験者は、ブロック404から430が繰り返される第1の時間経過の集中的測定期間に再参加するように要求される。
図4Eのブロック426を参照すると、いくつかの実施形態では、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用することは、複数の治療群のうちの第1の治療群316を特定することを含む。
図3Bに示すように、複数の治療群のうちの各それぞれの治療群は、独立して、複数の教師付き分類指標の中の対応する教師付き分類指標318と関連付けられる。第1の治療群の教師付き分類指標を使用して、被験者の第2の時間経過についての対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240及び対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール237に基づく対応する基礎速度滴定スケジュール236を計算し、それによって、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得する。ブロック428を参照すると、いくつかの実施形態では、複数の治療群における第1の治療群を特定することは、少なくとも第1のデータセット及び第2のデータセットから得られたメトリックのベクトル320を複数の治療群における各治療群に対して共クラスタ化し、それにより複数の治療群における各治療群に対するそれぞれの距離スコアを得ることを含む。そのような治療群は、それ自体、被験者の集団からの第1の時間経過(例えば、第1及び第2のデータセット)における集中的データからメトリックのベクトルをクラスタ化することによって決定される。いくつかの実施形態では、メトリックのベクトルは、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を含む。メトリックのベクトルの他の例はxであり、上述され、以下で再現される。
x=[min(BG)、var(BG)、糖血症リスク、...]
【0122】
そのような実施形態では、第1の治療群は、第1の治療群についての距離スコアが信頼閾値を満たすときに、複数の治療群の中から特定される。
【0123】
クラスタリングは、Duda and Hart, Pattern Classification and Scene Analysis, 1973, John Wiley & Sons, Inc., New York(以下、「Duda 1973」)の211-256頁に記述されており、これはその全体が参照により本明細書に援用される。Duda 1973の6.7節において記述されているように、クラスタリング問題はデータセット内で自然なグループ化を見つけることの1つとして記述されている。自然なグループ化を特定するために、2つの問題が対処される。第1に、2つのサンプル間の類似性(又は非類似性)を測定する方法(メトリックのベクトル)が決定される。このメトリック(類似性尺度)は、1つのクラスタ内のサンプル(例えば、第1の複数の被験者からの第1の時間経過からのメトリックのベクトル)が、他のクラスタ内のサンプル(他の複数の被験者からの第1の時間経過からのメトリックのベクトル)に対するよりも互いに類似していることを保証するために使用される。第2に、類似性尺度を用いてデータをクラスタに分割するためのメカニズムが決定される。
【0124】
類似性尺度については、Duda 1973の6.7節で述べられており、そこでは、クラスタリング調査を開始する1つの方法は、距離関数を定義し、データセット内の全てのサンプルペア間の距離のマトリックス(被験者からの第1の時間経過からのメトリックのベクトル)を計算することであると述べている。距離が類似性の良い尺度である場合、同じクラスタ内のサンプル間の距離は、異なるクラスタ内のサンプル間の距離よりも有意に短いであろう。しかしながら、Duda 1973の215頁に述べられているように、クラスタリングは距離メトリックの使用を必要としない。例えば、非メトリック類似性関数s(x,x’)を用いて2つのベクトルxとx’を比較することができる。従来、s(x,x’)は、xとx’がどういうわけか「似ている」ときに、その値が大きい対称関数である。非メトリック類似性関数s(x,x’)の例は、1973年のDudaの216頁に提供されている。
【0125】
データセット内の点の間の「類似性」又は「非類似性」を測定する方法が選択されると、クラスタリングは、データの任意の分割のクラスタリング品質を測定する基準関数を必要とする。基準関数を極端化するデータセットの分割は、データをクラスタ化するために使用される。1973年のDudaの217頁を参照。基準関数は、Duda 1973の6.8節において述べられている。
【0126】
最近になって、Duda et al., Pattern Classification, 2nd edition, John Wiley & Sons, Inc. New Yorkが出版された。本参考文献の537-563頁には、クラスタリングが詳細に記載されている。クラスタリング技術に関するさらなる情報は、Kaufman and Rousseeuw, 1990, Finding Groups in Data: An Introduction to Cluster Analysis, Wiley, New York, NY; Everitt, 1993, Cluster analysis (3d ed.), Wiley, New York, NY;及びBacker, 1995, Computer-Assisted Reasoning in Cluster Analysis, Prentice Hall, Upper Saddle River, New Jerseyに見いだすことができる。ブロック428において使用することができる特定の例示的なクラスタリング技術には、限定されないが、階層的クラスタリング(最近傍アルゴリズム、最遠隣アルゴリズム、平均連結アルゴリズム、重心アルゴリズム、又は二乗和アルゴリズムを使用した凝集クラスタリング)、k-meansクラスタリング、ファジーk-meansクラスタリングアルゴリズム、Jarvis-Patrickクラスタリング、及び最急降下クラスタリングが含まれる。
【0127】
いくつかの実施形態では、ブロック428において、被験者の少なくとも第1のデータセット及び第2のデータセットから得られたメトリックのベクトル320が、各治療群316のメトリックのベクトル320に対してクラスタ化され、被験者の少なくとも第1のデータセット及び第2のデータセットから得られたメトリックのベクトル320に対する類似性スコア(例えば、距離メトリック)の最良の尺度を有する治療群の基礎インスリン薬物滴定スケジュール236(及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240)が選択される。
【0128】
図4Eのブロック430を参照すると、いくつかの実施形態では、基礎インスリン薬物滴定スケジュール236は、以下のように計算される空腹時血中グルコース目標(FGL)(239)を有する。
式中、wは、スケーリング重みであり、ISFは、第1の時間経過にわたって第1及び第2のデータセットから計算された被験者のインスリン感受性因子235であり、かつ、c
iは、第1の時間経過の間に観察される被験者のx番目の糖血症リスク尺度に適用されるi番目の重み付け定数であり、ここで、x番目の糖血症リスク尺度は、第1の糖血症リスク尺度234を含む複数の糖血症リスク尺度にあり、iは、1とNとの間のインデックスであり、かつ、Nは、複数の糖血症リスク尺度のうちの糖血症リスク尺度の数である。ISFに適用される重みw及び対応するx
iに適用される各それぞれのc
iは、方程式の左辺の空腹時血中グルコース目標のディメンションと一致するように、方程式の右辺に正しいディメンションを提供するというさらなる目的を果たす。すなわち、wは、
に対してISFを重み付けするだけでなく、それがFGLの適切なディメンション(例えば、mmol/L)と一致するようにISFに正しいディメンションも提供する。各c
iは、他の全ての糖血症尺度並びにISFに対して対応する糖血症リスク尺度x
iに重み付けする重み付け定数として働き、かつ対応する糖血症リスク尺度x
iに正しいディメンション(例えば、mmol/L)も提供する。いくつかの実施形態では、wは単位元(1)であり、それはISFに正しいディメンションを提供するだけであることを意味する。いくつかの実施形態では、wは、単位元(1)以外の他の何らかの値であり、これは、
に対してISFに重み付けすること意味する。いくつかの実施形態では、所与のc
iは1であり、それは対応するx
iに正しいディメンションを提供するだけであることを意味する。いくつかの実施形態では、所与のc
iは1ではなく、ISF及び他の全ての糖血症尺度に対して対応するx
iに重み付けすることを意味する。いくつかの実施形態では、Nは正の整数である。いくつかの実施形態では、Nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。FGLは、
図14及び
図15のパネルAにおいて、大きなXとして示されている。
【0129】
ブロック432。
図4Fのブロック432を参照すると、方法は、基礎速度滴定スケジュール236又は基礎インスリン薬物滴定スケジュール237(例えば、いくつかの実施形態では、空腹時血中グルコースプロファイルモデル240及び/又は空腹時血中グルコース目標239)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュール又は基礎インスリン薬物滴定スケジュールに従って(例えば、投与量調整指示として)、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置104、及び/又は(iii)被験者に関連した医療実施者に伝達することによって継続する。追加的又は代替的に、情報は装置のユーザ及び/又は被験者の親族に伝達される。
【0130】
ブロック434を参照すると、上述したように、いくつかの実施形態では、方法は、予測空腹時血中グルコースプロファイルが、第2の時間経過中のある時点で検証されていないと見なされるときに繰り返される。例えば、ブロック436を参照すると、いくつかの実施形態では、第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット242が取得される。第3のデータセットは、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値244について、測定時間246とを含む。いくつかの実施形態では、絶食期間は、
図9及び
図10と併せて上述したように、第1の時間経過からのデータを使用して決定される。例えば、1日の特定の時間が被験者の絶食期間であると決定され、1日のこの時間が第2の時間経過における空腹時グルコース値を取得するために使用される。
【0131】
ブロック438を参照すると、いくつかの実施形態ではブロック436に従って、次いで、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが第3のデータセットに対して検証される。
図14に示す。空腹時血中グルコースプロファイルモデル240は、パネルBにおける滴定スケジュールに基づいてパネルAにおける破線として示されている。被験者は、時間経過の間に空腹時グルコース測定値を取得する。それらが空腹時血中グルコースプロファイルモデルの予測と一致しない場合、空腹時血中グルコースプロファイルモデルは検証されていないと見なされ、方法はさらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整すること、及び/又は被験者に、集中的測定期間のデータ取得を繰り返し、新しい基礎インスリン薬物滴定スケジュール及び新しい対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを計算するように指示することを含む。
【0132】
ブロック440を参照すると、他の実施形態ではブロック436に従って、第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセット302が取得される。第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録304は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペンを使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量341を含む、それぞれのインスリン薬物注射イベント340、(ii)それぞれのインスリン薬物注射イベントについて対応するタイムスタンプ342、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから、被験者に注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類343を含む。そのような実施形態では、第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが第3のデータセットに対して検証される。対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法はさらに、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することを含む。このように、空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、滴定スケジュールよりもむしろ実際のインスリン薬物注射イベントの関数として空腹時血中グルコース測定値を予測することの失敗に基づいて拒絶される。いくつかの実施形態では、これは、被験者が滴定スケジュールを順守することができない場合に特に好ましい。
【0133】
ブロック409から410を再び参照すると、いくつかの実施形態では、第1の時間経過において使用されるインスリン送達装置はインスリンポンプであり、それぞれのインスリン薬物投与イベントはインスリン薬物注入イベント335である。この場合、第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含む。第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録214は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ522を使用して被験者に注入されるインスリン薬物の量336を含む、それぞれのインスリン薬物注入イベント335、(ii)基礎注入速度337、それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ338、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、被験者に注入されるインスリン薬物のそれぞれの種類339を含む。
【0134】
図4Bのブロック412を再び参照すると、方法においてインスリンポンプを使用するときに、
図7の線702の右側の第2の時間経過に移行するために、第1のデータセット206及び第2のデータセット212を使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235を計算する。
【0135】
図4Dのブロック422を再び参照すると、方法は、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度234及びインスリン感受性因子235を使用することによって、(i)対応する基礎速度滴定スケジュール236であって、被験者の第2の時間経過についての対応するボーラスインスリン薬物滴定スケジュール238に基づくか又は一致する基礎速度滴定スケジュール236(ここで、第2の時間経過は第1の時間経過に続いて起こる)、及び(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル240を取得することを継続する。対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルは、被験者に注入されるボーラスインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する。
【0136】
図4Fのブロック432を再び参照すると、方法は、基礎速度滴定スケジュール236又はボーラスインスリン薬物滴定スケジュール237(例えば、いくつかの実施形態では、空腹時血中グルコースプロファイルモデル240及び/又は空腹時血中グルコース目標239)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュール又は基礎インスリン薬物滴定スケジュールに従って(例えば、投与量調整指示として)、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置104、及び/又は(iii)被験者に関連した医療実施者に伝達することによって継続する。追加的又は代替的に、情報は装置のユーザ及び/又は被験者の親族に伝達される。
【0137】
いくつかの実施形態では、第1の時間経過におけるインスリン送達装置は、基礎速度滴定スケジュール236、及び空腹時血中グルコースプロファイルモデル240を迅速に取得するためにインスリンポンプである。基礎速度滴定スケジュール236が取得された後、それは第2の時間経過の間にインスリンペンによって適用される基礎インスリン薬物滴定スケジュール237に変換され、ここでインスリンペンは基礎インスリン薬物を充填される。実施形態は、第2の時間経過の間にペンを使用するという利点と共に、ポンプを使用して滴定スケジュールを迅速に決定するという利点を提供する。インスリンペンは、低いコストのために多くの患者に好まれており、2型糖尿病の治療は1型糖尿病より集中的ではないので、それは特に2型糖尿病の患者に好まれている。ペンを使用することのその他の利点は、ペンを装着する必要がないことであり、場合によっては、1日1回の適用のために使用することができる。第1の時間経過においてポンプを使用することによって、ユーザとの対話処理が最小限になる。
【0138】
他の実施形態では、基礎速度滴定スケジュール236は、第2の時間経過の間にインスリンポンプによって適用されるボーラスインスリン薬物滴定スケジュール238に変換され、ここでインスリンポンプはボーラスインスリン薬物を充填される。この場合、ボーラスインスリン薬物滴定スケジュールは、最小限のユーザとの対話処理により多かれ少なかれ自動的に適用され得る。
【0139】
図16及び
図17は、センサが4日間の期間にわたってグルコースを連続的に読み取る2つのシナリオを示している。ポンプが取り付けられ、2日目の朝に開始し、使用したアルゴリズムに応じてインスリン注入をゆっくり(
図16)又は速く(
図17)開始する。
図16及び17のパネルBは、ボーラスインスリン薬物の基礎注入速度を提供する、第1の時間経過の間のボーラスインスリン薬物の注入を示す。
図16及び17のパネルAは、血中グルコース濃度における対応する反応を示し、1606、1608、1706、1708は所望の血中グルコース範囲を示す。十分なグルコースデータが利用可能である期間、例えば24時間後に、ボーラスインスリン薬物による基礎注入速度が変更される。この場合の変更は増加であるが、しかし、その変更は使用されたアルゴリズムとグルコース値において測定された患者の反応に依存する。3日後、最適基礎注入速度が決定され、第2相においてインスリンペンを用いて適用される長時間作用型インスリンの対応する1日注射用量に変換することができる。言い換えれば、最適基礎注入速度は、ボーラス薬物滴定スキーム及び基礎薬物滴定スキームに変換することができる基礎速度滴定スキームを定義する。いくつかの実施形態では、第1の時間経過の間にポンプが使用されるとき、ポンプは第1の時間経過の間に使用される。基礎滴定調整装置250のメモリは、1つ又は複数のプロセッサによって実行されたときに、(i)第1の時間経過の間に基礎注入速度を変更する(ここで、注入速度は、第1の時間経過の間に指示によって決定されるステップ及び間隔で変更される)、(ii)第2の時間経過についてのボーラスインスリン薬物滴定スキームを決定し、(iii)第2の時間経過についてのボーラスインスリン薬物滴定スキームを第2の時間経過についての基礎インスリン薬物滴定スキームに変換するという命令を格納する。
【実施例】
【0140】
実施例1
基礎インスリン薬物滴定スケジュール237又はボーラスインスリン薬物滴定スケジュールによって提供される基礎速度滴定スケジュール236を取得する方法が開示されている。以下は、
図8を参照して
図4に従った実施例を提供する。スターターキット(例えば、
図2の基礎滴定調整モジュール204)は、ユーザがインスリンにどのように反応するかに関する大量のデータを収集する。データは、例えば14日間の期間(第1の時間経過)の連続的グルコースモニタリング及びインスリン薬物用量サイズ、並びに任意選択の他のデータに基づき得る。基礎速度を設定するためにインスリンポンプを使用してボーラスインスリン薬物が適用される場合、期間はさらに短く、例えば3日間であり得る。集中的データ収集を伴う第1の期間(第1の時間経過)の後、スターターキットシステムは、患者の用量反応、グルコースの変動、及び低/高血糖症のリスクを計算し分類し、ロバスト予測空腹時血中グルコースプロファイルモデル及び対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュールを含む治療スケジュールを作成する。いくつかの実施形態では、基礎インスリン薬物滴定スケジュールは、ブロック426及び428に関連して上述したように、「システム同定方法」及び「分類技術」を使用して作成される。
【0141】
治療スケジュールはまた、第1の時間経過の集中的なデータ取得後の第2の時間経過において、被験者の空腹時血中グルコースがどのように目標グルコース値に近づくかを推定し、被験者はその進行を追跡することができる。空腹時血中グルコースは、さらに少ない頻度で毎日測定することができ;第2の時間経過の間では、おそらくはわずか1週間に1回であろう。これは、ロバスト予測モデルの使用により、既存の方法のどれよりも安全な方法で、滴定中に被験者を指導することを可能にする。
【0142】
予測モデルのロバスト性は、誤ったデータ又は不十分な順守が発生したとき/場合に重要である。既存の滴定アルゴリズム/方法では、非空腹時血中グルコース測定及び見逃した注射を処理することは特に困難である。有利なことに、開示されたシステム及び方法は、これらのエラーの大部分を検出し、それらを訂正し、又は滴定へのそれらの影響を最小限に抑えることができる。
【0143】
予測滴定モデルは、推奨される1日用量をスケジュールし、滴定期間中の空腹時血中グルコース測定値に基づいて、用量のアドバイスを最適化するであろう。一般的な滴定期間は2から8週間とすることができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、基礎滴定調整モジュール204は、いくつかのパラメータ(例えば、インスリン感受性因子など)を有する糖尿病患者の用量反応モデルの一般的モデルに基づいており、システムパラメータは、MPC技術に基づく標準的なシステム同定技術によって同定される。そのため、いくつかの実施形態では、プロセスの第1のステップは、ストリーミングクラスタリングプロセスを使用して、第1の時間経過からの患者からの受信データを分析することであり、ここでは、個々の患者が治療に対して同様の反応を示す患者の亜集団に収まるようになるまで、教師なしクラスタリングモデル、又はロバスト回帰手法を組み込んだ多因子クラスタリングモデルによって、患者集団のグループ化境界が継続的に精密化される。これらは、
図3Bに示される治療群316の基礎として役立つ。新しい被験者は、患者が識別されたサブグループに適切に収まるという十分な確信が得られるまで、収集された治療データ(空腹時血中グルコース、注射順守、用量サイズ、インスリン感受性因子、血中グルコース変動、糖血症リスクなど)がクラスタリングモデルにストリーミングされるであろう、集中的データ収集の第1の時間経過を受けるであろう。クラスタリングが完了すると(例えば、
図4Eのブロック426及び428に記述されるように)、被験者は第2の時間経過に入り、各群内の個々の患者の治療反応は、回帰分析、マルチクラス分類、又は学習技術の組み合わせに基づく教師付き機械学習決定モデルを使用して継続的に処理されるであろう。モデルが、第2の期間中に、新たな患者の治療データに関して再教育されるたびに、治療に対する各患者の反応を予測するモデルの能力は向上するはずであり、各治療群316及びそれらの対応する空腹時血中グルコースプロファイル240及び基礎速度滴定スケジュール236の特徴付けは改善されるであろう。空腹時血中グルコース測定値の形での第2の時間経過における自己投与治療サーベイランスの頻度は、患者の今後の空腹時血中グルコース値を予測する上での予測モデルの継続的に監視された成功のレベルに従って、時間をかけて減少するであろう(例えば、1日1回から、1週間に2回まで、1週間に1回まで、2週間に1回まで)。進行中の自己投与空腹時血中グルコース測定値は、予測モデルのためのキャリブレーションチェックとして見ることができる。
【0145】
空腹時血中グルコースプロファイルモデル240が十分な正確さ又は精度で被験者の治療反応を予測することができなくなった場合、被験者の行動の変化によるものかどうかに関わらず、モニタリングアルゴリズムは、自己投与空腹時血中グルコースプロファイルモデル測定の頻度を高めるべきであるか、又は極端な場合には患者は再分類のために新たな開始期間を受けるべきであることを示すであろう。
【0146】
基礎滴定調整モジュール204の重要な要素は、第1の時間経過の集中的データ収集期間中に、基礎滴定調整装置250が、患者の予測モデルを生成するためにシステム同定プロセスに入力するのに十分なデータを収集することである。モデルは、i)用量反応予測モデル、ii)グルコース分散データに基づくリスクプロファイル、iii)最低グルコースデータ点を治療ゾーンに下げるであろう用量目標を計算すること、iv)滴定計画、リスクプロファイル、服用のための最適なタイミング、医師の診察のための最適な時間についての評価を医療実施者に知らせることからなる群から選択される1つ又は複数の機能を含むであろう。
【0147】
開示されたシステム及び方法は、i)被験者が治療にどのように反応するかのモデル、及び/又は目標への滴定方法のスケジュール;2)アルゴリズムと医療実施者が進める方法を決定するのを支援するためのリスク指標;3)進行中の予測を検証するのに必要な空腹時血中グルコース測定の最小数のスケジュール;4)第2の治療期間中の誤ったデータ入力に対してそれほど敏感ではない、安全かつロバストな用量指導;及び滴定スケジュールの表示プラットフォームを提供する。
【0148】
予測インスリン用量指導システムの結果は、いくつかの方法で表示することができる(医療実施者のコンピュータ、インターネット、紙のプリントアウト、ショートメッセージサービス(SMS)メッセージ、基礎滴定調整モジュール204内で直接、など)。
【0149】
前述を考慮して、低血糖症のリスクがより少ない、全体的により単純でより安全な滴定を可能にする自己滴定に対するよりインテリジェントなアプローチが提供される。本システムは、より優れたデータと集中的なデータ収集期間から生成された患者の用量反応プロファイルの推定により、安全性を向上させる。開示されたシステム及び方法は、滴定プロセスを変更する誤った血中グルコース測定のリスクを最小にする。開示されたシステム及び方法は、それらが、1日の空腹時血中グルコース値を測定することによって、予測された空腹時血中グルコースが実際の空腹時血中グルコースに近くなることを検証することを可能にすることによって、滴定指導が正しいことを被験者に保証する。開示されたシステム及び方法は、治療計画を順守するためにユーザが実行する必要がある1日の治療ステップの数を最小にする。開示されたシステム及び方法は、第1の時間経過において最低のグルコース値及び分散を検出し、ユーザのために最適である空腹時血中グルコースの許容範囲を決定する。開示されたシステム及び方法は、第1の時間経過のCGM支援開始期間からの学習に基づいて、空腹時血中グルコースを試験するための最適な時間を決定する。さらに、医療実施者は、従事者が最適な治療計画、滴定目標、及び追跡計画を決定することを可能にする包括的なデータパッケージ(ユーザ分類)を入手する。開示されたシステム及び方法は、被験者が、食物、活動、及び基礎インスリンがどのように血中グルコースに影響を与えるかを学習することを可能にする。
【0150】
実施例2
いくつかの実施形態では、糖血症リスク推定値及びインスリン感受性因子が決定されている場合、滴定計画(野心)は、例えば、現在のインスリン感受性及び血糖症リスクランクに応じて、表のレジメンを調べることによって決定される。糖血症リスク尺度は、例えば、低リスク、中リスク及び高リスクのランクカテゴリー内に分類される;
【0151】
表1は、糖血症リスクランク及びインスリン感受性因子によって定義されるマトリックスを示し、各フィールドの最初の行は、どの滴定アルゴリズムが使用され、どの頻度で用量を変更することができるか、例えば1週間に2回(TW)又は1週間に1回(OW)を示す。滴定アルゴリズムは、例えば、2-0-2滴定アルゴリズムであり得、ここで、空腹時血中グルコースが目標空腹時血中グルコースと比較して所望の範囲を超えている場合、最後の又は計画された用量は2単位増加し、空腹時血中グルコースが目標空腹時血中グルコースと比較して所望の範囲を下回っている場合、計画された用量は2単位減少する。2行目は、自己監視血漿グルコース(SMPG)の提案頻度を示す。例えば、糖血症リスクが低く、インスリン感受性が高い場合、SMPGは1週間に2回(SMPG 2/週)取得されるべきである。糖血症リスクが高い場合、用量を変更する頻度は1週間に1回しか許されないが、SMPGは1週間に5回取られるべきである。しかしながら、上の例における頻度の数は単なる例示的な数であり、表に指定された数とは異なっていてもよい。別の滴定アルゴリズムは段階的滴定であり、ここで、用量が変化する量はSMPGと目標血中グルコースとの間の差の大きさに依存する。例えば、>10.0mmol/Lの計算値に対しては、基礎インスリン用量を+8単位で調整することが推奨され得、9.1-10.0mmol/Lの計算値に対しては、基礎インスリン用量を+6単位で調整することが推奨され得、8.1-9.0mmol/Lの計算値に対しては、基礎インスリン用量を+4単位で調整することが推奨され得、7.1-8.0mmol/Lの計算値に対しては、基礎インスリン用量を+2単位で調整することが推奨され得、6.1-7.0mmol/Lの計算値に対しては、基礎インスリン用量を+2単位で調整することが推奨され得る。1つのBG測定値が3.1-4.0mmol/Lである場合、基礎用量を-2単位で調整することが推奨され得、1つのBG測定値が<3.1mmol/Lである場合、基礎インスリン用量を-4単位で調整することが推奨され得る。滴定前の空腹時血中グルコースの測定、並びに結果として得られた基礎インスリン用量調整は、患者自身によって又は患者によって供給されたBG値に基づいて医師/看護師によって実行され得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、糖血症リスク推定値及びインスリン感受性因子が決定されている場合、滴定計画(野心)は以下の式によって決定され、
ここで、「糖血症リスク」は数値である。滴定及びSMPG測定の提案頻度は表2で調べられており、これは糖血症リスクランクによって定義され、次の用量は上記の次の用量(Next dose)の式によって計算される。
【0153】
滴定の開始時の糖血症リスク推定値及び空腹時血中グルコースが決定されているいくつかの実施形態では、滴定計画(野心)は、現在の空腹時グルコース及び血糖症リスクランクに応じて、表のレジメンを調べることによって決定される:
【0154】
表3において、最初の行は、どの滴定アルゴリズムが使用され、どの頻度で用量を変更することができるか、例えば1週間に2回(TW)又は1週間に1回(OW)を示す。滴定アルゴリズムは、例えば、2-0-2滴定アルゴリズムであり得、ここで、空腹時血中グルコースが目標空腹時血中グルコースと比較して所望の範囲を超えている場合、最後の又は計画された用量は2単位増加し、空腹時血中グルコースが目標空腹時血中グルコースと比較して所望の範囲を下回っている場合、計画された用量は2単位減少する。2行目は、自己監視血漿グルコース(SMPG)の提案頻度を示す。例えば、糖血症リスクが低く、インスリン感受性が高い場合、SMPGは1週間に2回(SMPG 2/週)取得されるべきである。糖血症リスクが高い場合、用量を変更する頻度は1週間に1回しか許されないが、SMPGは1週間に5回取られるべきである。しかしながら、上の例における頻度の数は単なる例示的な数であり、表に指定された数とは異なり得る。別の滴定アルゴリズムは段階的滴定であり、ここで、用量が変化する量はSMPGと目標血中グルコースとの間の差の大きさに依存する。
【0155】
いくつかの実施形態では、糖血症リスク推定値が決定されており、滴定計画(野心)は以下の式によって決定され、
ここで、「糖血症リスク」は数値である。滴定及びSMPG測定の提案頻度が表4で調べられる。
【0156】
実施形態の一覧
1.被験者の治療のための装置(250)であって、1つ又は複数のプロセッサ(274)及びメモリ(192/290)を備え、メモリが、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及びインスリン感受性因子(235)を計算すること;
D)被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用して、
(i)被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)であって、第2の時間経過が第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、
(ii)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、第2の時間経過の間に被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行する命令を格納する、被験者の治療のための装置(250)。
【0157】
2.ステップBにおけるそれぞれのインスリン薬物投与イベントが、被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ(522)を使用するインスリン薬物注入イベント(335)であり、インスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)が、それぞれのインスリン薬物注入イベント(335)に対するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ(338)である、実施形態1に記載の装置。;
【0158】
3.方法がさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む、実施形態1-2のいずれか1項に記載の装置。
【0159】
4.方法がさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセット(302)であって、ここで、第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(304)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(308)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ(310)、及び(iii)基礎インスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(312)
を含む、第4のデータセットを取得すること;及び
H)第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を調整することをさらに含む、実施形態1-3のいずれか1項に記載の装置。
【0160】
5.ステップGにおいて、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペン(521)を使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量(341)を含むインスリン薬物注射イベント(340)、(ii)それぞれのインスリン薬物注射イベントについて対応するインスリン薬物注射イベントタイムスタンプ(342)、及び(iii)基礎インスリン薬物である注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類(333)を含む、実施形態4に記載の装置。
【0161】
6.ステップD)において、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用することが、複数の治療群のうちの第1の治療群(316)を特定することを含み、ここで、
複数の治療群のうちの各それぞれの治療群が、独立して、複数の教師付き分類指標の中の対応する教師付き分類指標(318)と関連付けられ、かつ、
第1の治療群の教師付き分類指標を使用して、被験者の第2の時間経過についての対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル及び対応する基礎速度滴定スケジュールを計算し、それによって、対応する基礎速度滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得する、実施形態1-5のいずれか1項に記載の装置。
【0162】
7.複数の治療群における第1の治療群を特定することが、少なくとも第1のデータセット及び第2のデータセットから得られたメトリックのベクトル(320)を複数の治療群における各治療群に対して共クラスタ化し、それにより複数の治療群における各治療群に対するそれぞれの距離スコアを得ることを含み、ここで、
メトリックのベクトルが、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を含み、かつ、
第1の治療群が、第1の治療群についての距離スコアが信頼閾値を満たすときに、複数の治療群の中から特定される、実施形態6に記載の装置。
【0163】
8.第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度を計算するために、第1のデータセット及び第2のデータセットを使用することが、
(i)複数の自律的グルコース測定値にわたって観察された総グルコース値の変動性、
(ii)複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値、
(iii)複数の自律的グルコース測定値において観察された最小グルコース測定値、
(iv)複数の自律的グルコース測定値において観察された最大グルコース測定値、
(v)複数の自律的グルコース測定値及び第2のデータセットを使用して計算されたインスリン感受性因子の変化率、
(vi)(a)定常インスリンレジメンによって指示されたときに被験者によって行われたインスリン薬物投与イベントの数を、(b)第1の時間経過における定常インスリンレジメンによって指示される基礎インスリン薬物投与イベントの総数で割ることによって計算される第1の時間経過にわたる基礎順守スコア、
(vii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を上回っている時間の割合、
(viii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を下回っている時間の割合、
(ix)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲外にある時間の割合、又は
(x)複数の自律的グルコース測定値の広がりの尺度
を決定することを含む、実施形態1-7のいずれか1項に記載の装置。
【0164】
9.第1の糖血症リスク尺度が、複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値を含み、ここで、空腹時グルコース値が、複数の自律的グルコース測定値にわたって分散σ
k
2の移動期間を計算すること、ここで:
であり、式中、
G
iは、複数の自律的グルコース測定値のうちの部分kにおけるi番目の自律的グルコース測定値であり、
Mは、複数のグルコース測定値における自律的グルコース測定値の数であり、かつ第1の時間経過内のそれぞれの連続する所定の期間を表し、
は、複数の自律的グルコース測定値から選択された自律的グルコース測定値の平均であり、
kはそれぞれの連続する所定の時間の範囲内である;
第1の時間経過における絶食期間を、最小分散
を示すそれぞれの連続する所定の期間と関連付けること;及び
空腹時グルコース値を、絶食期間中の複数の自律的グルコース測定値における自律的グルコース測定値を使用して計算すること
によって計算される、実施形態8に記載の装置。
【0165】
10.空腹時グルコース値が、
(i)絶食期間中の自律的グルコース測定値における最小自律的グルコース測定値、
(ii)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる中心傾向の尺度、
(iii)絶食期間中の自律的グルコース測定値によって示される範囲、
(iv)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる四分位範囲、
(v)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる分散、
(vi)以下のように計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値の平均(μ)からの絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる平均二乗差(σ
2):
[式中、
m
iは、絶食期間中のi番目の自律的グルコース測定値であり、かつ、
Pは、絶食期間中の自律的グルコース測定値の数である]、及び
(vii)√σ
2として計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる自律的グルコース測定値の標準偏差
を含む、実施形態8-10のいずれか1項に記載の装置。
【0166】
11.方法がさらに、
第5のデータセットが、第1の時間経過における被験者に関連した補助データ(324)を含み、ここで、補助データ(324)が、第1の時間経過の間の、被験者によって及ぼされるエネルギー、被験者の体重、被験者の年齢、及び被験者の食事活動のうちの1つ又は複数を含む、第5のデータセット(322)を取得することを含み;かつ
ステップD)において、第5のデータセットが、第2の時間経過にわたって対応する基礎速度滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得するために、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子と併せて使用される、実施形態1-11のいずれか1項に記載の装置。
【0167】
12.第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメンが、第1の時間経過内の複数のエポック(n)、及び複数のエポックの各それぞれのエポックについての異なる1日の総基礎インスリン薬物投与量を指定し、かつ
インスリン感受性因子(ISF)が、
[式中、
iは、複数のエポックへの第1のインデックスであり、
jは、複数のエポックへの第2のインデックスであり、
ΔFG
i,jは、エポックiとエポックjとの間の被験者の平均空腹時グルコース値の差であり、かつ
ΔU
i,jは、定常インスリンレジメン又は第2のデータセットによって決定される、エポックiとエポックjとの間の被験者の1日のインスリン用量サイズの差である]によって計算される
実施形態1-11のいずれか1項に記載の装置。
【0168】
13.1つ又は複数のプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステムにおいて、コンピュータシステムを使用して、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及びインスリン感受性因子(235)を計算すること;
D)被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用して、
(i)被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)であって、第2の時間経過が第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、
(ii)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、第2の時間経過の間に被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行することを含む方法。
【0169】
14.1つ又は複数のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータによって実行されたときに、実施形態13に記載の方法を実行する命令を含むコンピュータプログラム。
【0170】
15.実施形態14に記載のコンピュータプログラムを格納しているコンピュータ可読データ記憶媒体。
【0171】
16.被験者の治療のための装置(250)であって、1つ又は複数のプロセッサ(274)及びメモリ(192/290)を備え、メモリが、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及びインスリン感受性因子(235)を計算すること;
D)被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用して、
(i)第2の時間経過が第1の時間経過に続いて起こる、被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に一致し、かつ/又は被験者の第2の時間経過についての対応するボーラスインスリン薬物滴定スケジュール(238)に一致する対応する基礎速度滴定スケジュール(236)、
(ii)対応する基礎速度滴定スケジュール(236)に基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、第2の時間経過の間に被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)対応する基礎速度滴定スケジュール、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、及び/又は対応するボーラスインスリン薬物滴定スケジュール(238)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行すること
を含む、被験者の治療のための装置(250)。
【0172】
17.ステップBにおいて、それぞれのインスリン薬物投与イベントが、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ(522)を使用して被験者に注入されるインスリン薬物の基礎注入速度(337)を含むインスリン薬物注入イベント(335)、及び(ii)それぞれのインスリン薬物注入イベント(335)について対応するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ(338)、(iii)ボーラスインスリン薬物を含む、注入されるインスリン薬物のそれぞれの種類(339)を含み;
ここで、ステップDにおいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が、被験者に注入されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、実施形態16に記載の装置。
【0173】
18.ステップBにおいて、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペン(521)を使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量(331)を含むインスリン薬物注射イベント(330)、(ii)それぞれのインスリン薬物注射イベント(330)について対応するインスリン薬物注射イベントタイムスタンプ(332)、及び(iii)基礎インスリン薬物を含む、注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類(333)を含み;ここで、ステップDにおいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が、被験者に注射されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、実施形態16に記載の装置。
【0174】
19.方法がさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む、実施形態16-18のいずれか1項に記載の装置。
【0175】
20.方法がさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセット(302)であって、ここで、第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(304)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(308)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ(310)、及び(iii)(a)基礎インスリン薬物及び(b)ボーラスインスリン薬物のうちの1つから、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(312)を含む第4のデータセット(302)を取得すること;及び
H)第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を調整することをさらに含む、実施形態16-18のいずれか1項に記載の装置。
【0176】
21.ステップGにおいて、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンポンプのうちのそれぞれのインスリンポンプ(522)を使用して被験者に注入されるインスリン薬物の基礎注入速度(347)を含むインスリン薬物注入イベント(345)、及び(ii)それぞれのインスリン薬物注入イベントについて対応するインスリン薬物注入イベントタイムスタンプ(348)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物を含む、注入されるインスリン薬物のそれぞれの種類(339)を含み;ここで、ステップHにおいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が、被験者に注入されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、実施形態20に記載の装置。
【0177】
22.ステップGにおいて、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリンペンのうちのそれぞれのインスリンペン(521)を使用して被験者に注射されるインスリン薬物の量(341)を含むインスリン薬物注射イベント(340)、(ii)それぞれのインスリン薬物注射イベントについて対応するインスリン薬物注射イベントタイムスタンプ(342)、及び(iii)基礎インスリン薬物を含む、注射されるインスリン薬物のそれぞれの種類(333)を含み;ここで、ステップHにおいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が、被験者に注射されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、実施形態20に記載の装置。
【0178】
23.ステップD)において、被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を使用することが、複数の治療群のうちの第1の治療群(316)を特定することを含み、ここで、
複数の治療群のうちの各それぞれの治療群が、独立して、複数の教師付き分類指標の中の対応する教師付き分類指標(318)と関連付けられ、かつ、
第1の治療群の教師付き分類指標を使用して、被験者の第2の時間経過についての対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル及び対応する基礎速度滴定スケジュールを計算し、それによって、対応する基礎速度滴定スケジュール及び対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを取得する、実施形態16-22のいずれか1項に記載の装置。
【0179】
24.複数の治療群における第1の治療群を特定することが、少なくとも第1のデータセット及び第2のデータセットから得られたメトリックのベクトル(320)を複数の治療群における各治療群に対して共クラスタ化し、それにより複数の治療群における各治療群に対するそれぞれの距離スコアを得ることを含み、ここで、
メトリックのベクトルが、被験者の第1の糖血症リスク尺度及びインスリン感受性因子を含み、かつ、
第1の治療群が、第1の治療群についての距離スコアが信頼閾値を満たすときに、複数の治療群の中から特定される、実施形態23に記載の装置。
【0180】
25.第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度を計算するために、第1のデータセット及び第2のデータセットを使用することが、
(i)複数の自律的グルコース測定値にわたって観察された総グルコース値の変動性、
(ii)複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値、
(iii)複数の自律的グルコース測定値において観察された最小グルコース測定値、
(iv)複数の自律的グルコース測定値において観察された最大グルコース測定値、
(v)複数の自律的グルコース測定値及び第2のデータセットを使用して計算されたインスリン感受性因子の変化率、
(vi)(a)定常インスリンレジメンによって指示されたときに被験者によって行われたインスリン薬物投与イベントの数を、(b)第1の時間経過における定常インスリンレジメンによって指示される基礎インスリン薬物投与イベントの総数で割ることによって計算される第1の時間経過にわたる基礎順守スコア、
(vii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を上回っている時間の割合、
(viii)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲を下回っている時間の割合、
(ix)被験者のグルコース値が複数の自律的グルコース測定値にわたって第1の目標範囲外にある時間の割合、又は
(x)複数の自律的グルコース測定値の広がりの尺度を決定することを含む、実施形態16-24のいずれか1項に記載の装置。
【0181】
26.第1の糖血症リスク尺度が、複数の自律的グルコース測定値から計算された空腹時グルコース値を含み、ここで、空腹時グルコース値が、複数の自律的グルコース測定値にわたって分散σ
k
2の移動期間を計算すること、ここで:
であり、式中、
G
iは、複数の自律的グルコース測定値のうちの部分kにおけるi番目の自律的グルコース測定値であり、
Mは、複数のグルコース測定値における自律的グルコース測定値の数であり、かつ第1の時間経過内のそれぞれの連続する所定の期間を表し、
は、複数の自律的グルコース測定値から選択された自律的グルコース測定値の平均であり、
kはそれぞれの連続する所定の時間の範囲内である;
第1の時間経過における絶食期間を、最小分散
を示すそれぞれの連続する所定の期間と関連付けること;及び
空腹時グルコース値を、絶食期間中の複数の自律的グルコース測定値における自律的グルコース測定値を使用して計算すること
によって計算される、実施形態10に記載の装置。
【0182】
27.空腹時グルコース値が、
(i)絶食期間中の自律的グルコース測定値における最小自律的グルコース測定値、
(ii)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる中心傾向の尺度、
(iii)絶食期間中の自律的グルコース測定値によって示される範囲、
(iv)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる四分位範囲、
(v)絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる分散、
(vi)以下のように計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値の平均(μ)からの絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる平均二乗差(σ
2):
[式中、
m
iは、絶食期間中のi番目の自律的グルコース測定値であり、かつ、
Pは、絶食期間中の自律的グルコース測定値の数である]、及び
(vii)√σ
2として計算される、絶食期間中の自律的グルコース測定値にわたる自律的グルコース測定値の標準偏差
を含む、実施形態10-11のいずれか1項に記載の装置。
【0183】
28.被験者の治療のための装置(250)であって、1つ又は複数のプロセッサ(274)及びメモリ(192/290)を備え、メモリが、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、以下:
A)第1の時間経過にわたる被験者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値(208)について、それぞれの測定がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(210)とを含む、第1のデータセット(206)を取得すること;
B)第1の時間経過にわたる被験者の定常インスリンレジメン(224)に関連する第2のデータセット(212)を取得すること、ここで、
第2のデータセットは、第1の複数のインスリン薬物記録を含み、かつ、
第1の複数のインスリン薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(214)は、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置(104)を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(218)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(216)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するインスリン薬物投与イベントタイムスタンプ(220)、及び(iii)ボーラスインスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(222)を含み;
C)第1のデータセット及び第2のデータセットを使用して、第1の時間経過の間の被験者の第1の糖血症リスク尺度(234)及び第2の尺度を計算すること;
D)被験者の少なくとも第1の糖血症リスク尺度及び第2の尺度を使用して、
(i)被験者の第2の時間経過についての対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)であって、第2の時間経過が第1の時間経過に続いて起こる、対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)、
(ii)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)に基づいた、被験者の第2の時間経過にわたる対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)であって、第2の時間経過の間に被験者に投与されるインスリン薬物の量に基づいて、被験者の空腹時血中グルコース値を予測する、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を取得すること;及び
E)対応する基礎インスリン薬物滴定スケジュール(237)を、(i)被験者、(ii)対応する基礎速度滴定スケジュールに従って、基礎速度のインスリン薬物を被験者に送達するために充填された1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのインスリン送達装置、(iii)被験者に関連した医療実施者、(iv)装置のユーザ及び/又は(v)被験者の親族に伝達すること
を含む方法を実行する命令を格納する、被験者の治療のための装置(250)。
【0184】
29.被験者の第2の尺度が、滴定前のインスリン感受性因子又は測定された空腹時血中グルコースのうちの1つである、請求項28に記載の装置。
【0185】
30.方法がさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)対応する基礎速度滴定スケジュールに基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルが検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルを調整することをさらに含む、実施形態28-29のいずれか1項に記載の装置。
【0186】
31.方法がさらに、
F)第2の時間経過の全部又は一部を表す第3のデータセット(242)であって、第3のデータセットが、被験者からの複数の空腹時血中グルコース値と、複数の空腹時グルコース測定値における各それぞれの空腹時グルコース測定値(244)について、測定時間(246)とを含む、第3のデータセット(242)を取得すること;及び
G)第2の複数のインスリン薬物記録を含む第4のデータセット(302)であって、ここで、第2の複数の薬物記録内の各それぞれのインスリン薬物記録(304)が、(i)被験者によって使用される1つ又は複数のインスリン送達装置のうちのそれぞれのインスリン送達装置を使用して被験者に投与されるインスリン薬物の量(308)を含む、それぞれのインスリン薬物投与イベント(306)、(ii)それぞれのインスリン薬物投与イベントについて対応するタイムスタンプ(310)、及び(iii)基礎インスリン薬物である、被験者に投与されるインスリン薬物のそれぞれの種類(312)
を含む、第4のデータセットを取得すること;及び
H)第4のデータセット内の第2の複数の薬物記録に基づいて、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデルによって推定される空腹時血中グルコース値に対して、第3のデータセット内の空腹時血中グルコース値を一致させることによって、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を第3のデータセットに対して検証すること
を含み、ここで、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)が検証されていないと見なされる場合、方法は、対応する空腹時血中グルコースプロファイルモデル(240)を調整することをさらに含む、実施形態28-30のいずれか1項に記載の装置。
【0187】
引用文献及び代替の実施形態
本明細書に引用された全ての参考文献は、あたかもそれぞれの個々の出版物、特許又は特許出願が全ての目的のためにその全体が参照により援用されるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が全ての目的のために同程度に参照により本明細書に援用される。
【0188】
本発明は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に埋め込まれたコンピュータプログラム機構を備えるコンピュータプログラム製品として実施することができる。例えば、コンピュータプログラム製品は、
図1、2、3、5の任意の組み合わせにおいて示され、及び/又は
図4に記述されているプログラムモジュールを含むことができる。これらのプログラムモジュールは、CD-ROM、DVD、磁気ディスク記憶製品、USBキー、又は他の任意の非一時的コンピュータ可読データ若しくはプログラム記憶製品に格納することができる。
【0189】
当業者には明らかであるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正及び変更を行うことができる。本明細書に記述される特定の実施形態は、例としてのみ提供されている。実施形態は、本発明の原理及びその実際的な用途を最もよく説明するために選択され説明され、それによって、当業者が、考えられる特定の用途に適しているように、本発明及び様々な修正を伴う様々な実施形態を最もよく利用することを可能にする。本発明は、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。