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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20221216BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20221216BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20221216BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20221216BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20221216BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20221216BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L9/06
C08L7/00
C08K5/053
C08L57/02
C08K5/54
B60C1/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019558046
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2018038577
(87)【国際公開番号】W WO2019111546
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017234575
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄田 靖宏
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213129(JP,A)
【文献】特開平11-310009(JP,A)
【文献】特開平07-118457(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104231345(CN,A)
【文献】特開2016-006135(JP,A)
【文献】特開2016-003324(JP,A)
【文献】特開2016-003325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1つのブタジエン系ゴムと天然ゴムとを含み、前記ポリブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムの含有量の合計が40~65質量%であり、前記天然ゴムの含有量が35~60質量%であるゴム成分(A)と、
充填剤(B)と、
ゴム成分(A)100質量部に対して30~55質量部の軟化剤(C)と、
ゴム成分(A)100質量部に対して1~6質量部のソルビトール(D)と
を含有し、
軟化剤(C)中、軟化剤(C1)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して0質量部以上15質量部未満であり、軟化剤(C2)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上であり、
前記軟化剤(C1)が、Fedors法に従って算出される前記天然ゴムのSP値(SP1)と、前記軟化剤(C1)のSP値(SP2)との差(|SP1-SP2|)が0.30(cal/cm 1/2 以下である軟化剤であり、
前記軟化剤(C2)が、C9系樹脂及びビニル結合量が25%以下の液状ポリブタジエンゴムの中から選択される少なくとも1種であるゴム組成物。
【請求項2】
更にシランカップリング剤を配合し、充填剤(B)がシリカを含有する請求項に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分(A)がポリブタジエンゴムを含有する請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記軟化剤(C1)が、C5系樹脂、テルペン系樹脂、及び重量平均分子量50,000以下の液状ポリイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記軟化剤(C)が、パラフィンオイル、ナフテン系オイル、流動パラフィン、石油アスファルト及びアロマオイルの中から選択される1種以上である軟化剤(C3)を更に含み、前記軟化剤(C3)の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して15~25質量部である請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐摩耗性並びに湿潤路面および氷上での制動性能をバランス良く向上させたタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的として、(A)天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴム20~80重量%とブタジエンゴム80~20重量%で構成されるジエン系ゴムと、(B)前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して1~50重量部のテルペン系樹脂と、を含んで成るゴム組成物であって、前記テルペン系樹脂が-10℃以下のガラス転移温度を有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、冬季タイヤ用のトレッドとして有用であり且つジエンエラストマー、30phrよりも多い液体可塑剤および50phrと150phrとの間の補強用充填剤を少なくとも含むゴム組成物であって、5phrと40phrとの間の硫酸マグネシウム微小粒子を含むことを特徴とする前記ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-321093号公報
【文献】特表2011-528735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの氷上性能向上のために、ゴム組成物中の軟化剤を増量する手法が知られている。しかし、軟化剤を増量した配合では、低ロス性と耐亀裂性のバランスの両立に課題があった。
本発明は、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れる架橋ゴム組成物が得られるゴム組成物、及び低ロス性と耐亀裂性のバランスに優れる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤の量を少なくし、直鎖状多価アルコールを含有することで、軟化剤を増量した場合でも、タイヤの低ロス性と耐亀裂性のバランスを向上することができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<8>に関する。
<1> ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1つのブタジエン系ゴムと天然ゴムとを含み、前記天然ゴムを30質量%以上含有するゴム成分(A)と、充填剤(B)と、ゴム成分(A)100質量部に対して30~55質量部の軟化剤(C)と、ゴム成分(A)100質量部に対して1~6質量部の直鎖状多価アルコール(D)とを含有し、軟化剤(C)中、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して0質量部以上15質量部未満であり、前記ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上であるゴム組成物。
【0008】
<2> 多価アルコール(D)が4価以上である<1>に記載のゴム組成物。
<3> 多価アルコール(D)の融点が170℃以下である<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
【0009】
<4> 更にシランカップリング剤を配合し、充填剤(B)がシリカを含有する<1>~<3>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<5> ゴム成分(A)がポリブタジエンゴムを含有する<1>~<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
【0010】
<6> 前記軟化剤(C1)が、C5系樹脂、テルペン系樹脂、及び分子量50,000以下の液状ポリイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種である<1>~<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<7> 前記軟化剤(C2)が、C5C9樹脂、C9系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、フェノール樹脂、及びビニル結合量が25%以下の液状ポリブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
【0011】
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れる架橋ゴム組成物が得られるゴム組成物、及び低ロス性と耐亀裂性のバランスに優れる空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(B<Aの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
【0014】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1つのブタジエン系ゴムと天然ゴムとを含み、前記天然ゴムを30質量%以上含有するゴム成分(A)と、充填剤(B)と、ゴム成分(A)100質量部に対して30~55質量部の軟化剤(C)と、ゴム成分(A)100質量部に対して1~6質量部の直鎖状多価アルコール(D)とを含有し、軟化剤(C)中、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して0質量部以上15質量部未満であり、前記ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上である。
なお、本発明において「ブタジエン系ゴム」は、「ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1つ」を指し、後述する他の合成ゴムの例示として挙げるアクリロニトリル-ブタジエンゴム等のブタジエン由来の単位を含むゴムは含まない。
ゴム組成物が上記構成であることで、本発明のゴム組成物から得られる加硫ゴムは低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れ、また、本発明のゴム組成物から得られる空気入りタイヤは低ロス性と耐亀裂性のバランスに優れる。
かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
【0015】
従来、空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」と称することがある)の氷上性能向上のために、ゴム組成物中の軟化剤を増量する手法が用いられた。しかし、用いるゴム成分を考慮せずに、ただ軟化剤を増量した配合では、タイヤの低ロス性と耐亀裂性をバランスよく向上しにくかった。
例えば、特許文献1のように、ゴム組成物がテルペン系樹脂を含有する系は、テルペン系樹脂がイソプレン骨格を有し、天然ゴムと親和性があり、架橋ゴム組成物を柔軟にすることから、タイヤの氷上性能は向上する一方で、耐亀裂性が不十分であった。また、特許文献2のように、ゴム組成物がオイルを含有する系では、オイルの含有量がゴム成分100質量部に対して30質量部以上となるような多量である場合、ゴムの破壊特性が低下するため、耐亀裂性が不十分であった。
【0016】
これに対し、本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部に対して30質量部以上となる多量の軟化剤を含みつつも、軟化剤(C)中、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量を少量に抑え、ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)を取り入れることで、架橋ゴム組成物に柔軟性を得ながら、過度の柔軟性を抑制することができる。
本発明のゴム組成物は、詳細な機構は不明であるが、ゴム成分と共に直鎖状多価アルコール(D)を含有していることから、直鎖状多価アルコールの水酸基と、ゴム成分の天然ゴムとが相互作用していると推測される。多量の軟化剤を配合することで、ゴム成分中の天然ゴムと多価アルコールとの相互作用の低下が懸念される。しかし、ゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部に対して30質量部以上となる多量の軟化剤を含みつつも、軟化剤(C)中、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量を少量に抑え、ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)を取り入れている。その結果、天然ゴムと多価アルコールが相互作用による効果を確保でき、架橋ゴム組成物は、低発熱性及び耐亀裂性に優れると考えられる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
〔ゴム成分(A)〕
本発明のゴム組成物は、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1つのブタジエン系ゴムと天然ゴムとを含み、天然ゴムを30質量%以上含有するゴム成分(A)を含有する。
ゴム成分(A)が天然ゴムを30質量%以上含有しないと、架橋ゴム組成物の耐亀裂性と低発熱性に優れない。ゴム成分(A)中の天然ゴムの含有量は、35~60質量%が好ましく、35~50質量%がより好ましい。
ゴム成分(A)は、架橋ゴム組成物の耐亀裂性と低発熱性のバランスを両立する観点から、更に、ポリブタジエンゴム(BR)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1つのブタジエン系ゴムを含有する。
ゴム成分(A)は、更に、ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴム以外の合成ゴム(他の合成ゴムと称する)を含有していてもよい。
【0018】
他の合成ゴムは、架橋ゴム組成物及びタイヤに柔軟性及び弾力性を与える観点から、合成ジエン系ゴムを用いることが好ましい。合成ジエン系ゴムとしては、合成イソプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム等が例示される。これらの合成ジエン系ゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分(A)中のポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムの含有量は、両者の合計量として40~65質量%が好ましく、50~65質量%がより好ましい。
また、ゴム成分(A)が更に他の合成ゴムを含有する場合、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及び他の合成ゴムの合計量、すなわち、合成ゴムの全合計量が65質量%以下となることが好ましい。
【0019】
ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムは天然ゴムに対する親和性が低いため、ゴム成分(A)は、天然ゴム相とブタジエン系ゴム相とに相分離し易い。
本発明のゴム組成物は、ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)、すなわち、天然ゴムに対する親和性が低い軟化剤(C2)が、ゴム成分(A)中のブタジエン系ゴム相に分配され易い。軟化剤(C)中、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量を少量に抑え、ブタジエン系ゴム相に分配され易い軟化剤(C2)をゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上含有することで、架橋ゴム組成物の耐亀裂性と低発熱性のバランスを両立することができる。
ブタジエン系ゴムは、ポリブタジエンゴムを含んでいることが好ましい。
ゴム成分(A)が、他の合成ゴムを更に含む場合は、天然ゴムと親和性が低い合成ゴムを含有することが好ましい。具体的には、イソプレン骨格を有さない合成ゴムを用いることが好ましく、合成イソプレンゴム以外の、上記合成ジエン系ゴムを用いることが好ましい。
【0020】
ポリブタジエンゴムとしては、耐亀裂性を向上させる観点から、ハイシスポリブタジエンゴムが好ましい。ハイシスポリブタジエンゴムとは、FT-IRによる測定において、1,3-ブタジエン単位中のシス-1,4結合含有量が90%以上99%以下のハイシスポリブタジエンゴムのことである。ハイシスポリブタジエンゴムの1,3-ブタジエン単位中のシス-1,4結合含有量は、好ましくは95%以上99%以下である。
ハイシスポリブタジエンゴムの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造すればよい。例えば、ネオジム系触媒を用いてブタジエンを重合する方法が挙げられる。
ハイポリシスブタジエンゴムは市販されており、例えば、JSR(株)製の「BR01」、「T700」、宇部興産(株)製の「ウベポールBR150L」などが挙げられる。
【0021】
〔充填剤(B)〕
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤(B)を含有する。ゴム組成物が充填剤(B)を含有していないと、架橋ゴム組成物及びタイヤの耐亀裂性が得られない。
カーボンブラックは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものがより好ましい。
シリカは、特に限定されず、一般グレードのシリカ、シランカップリング剤などで表面処理を施した特殊シリカなど、用途に応じて使用することができる。シリカは、例えば、湿式シリカを用いることが好ましい。充填剤(B)がシリカを含有する場合、ゴム組成物は、架橋ゴム組成物及びタイヤの耐亀裂性をより向上する観点から、更にシランカップリング剤を配合することが好ましい。
充填剤(B)は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
ゴム組成物中の充填剤(B)の含有量は、充填剤全量として、ゴム成分100質量部に対して50~100質量部であることが好ましく、60~90質量部であることがより好ましい。
【0022】
〔軟化剤(C)〕
本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部に対して30~55質量部の軟化剤(C)を含有し、軟化剤(C)中、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対し0質量部以上15質量部未満であり、ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上である。
本発明において、軟化剤とは、従来樹脂及びゴムの軟化剤として慣用されているオイル、樹脂、及び平均重量分子量が50,000以下の液状重合体をいう。軟化剤は、具体的には、C5系樹脂、テルペン系樹脂、重量平均分子量50,000以下の液状ポリイソプレン等の、イソプレン骨格を主骨格とする化合物の他、C5C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、フェノール樹脂、ビニル結合量が25%以下の液状ポリブタジエンゴム等を含む。
【0023】
既述のとおり、ゴム組成物がゴム成分(A)100質量部に対して30質量部以上となる軟化剤を含有すると、従来は、耐亀裂性が低下し、架橋ゴム組成物の低発熱性(タイヤにあっては低ロス性)とのバランスがとれなかった。しかし、本発明では、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量をゴム成分(A)100質量部に対して15質量部未満に抑制し、ブタジエン系ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C2)を所定の量含有することで、架橋ゴム組成物の低発熱性及び耐亀裂性、ならびにタイヤの低ロス性及び耐亀裂性を両立することができる。
ゴム組成物中の軟化剤(C)の含有量が55質量部を超えると、架橋ゴム組成物及びタイヤが柔軟になりすぎて、耐亀裂性が低下する。ゴム組成物中の軟化剤(C)の含有量が30質量部未満であると、タイヤの氷上性能に優れない。
ゴム組成物中の軟化剤(C)の含有量は、架橋ゴム組成物の低発熱性及び耐亀裂性、ならびにタイヤの低ロス性及び耐亀裂性のバランスをより高める観点から、ゴム成分(A)100質量部に対して、30~52質量部であることが好ましく、32~50質量部であることがより好ましく、34~47質量部であることが更に好ましい。
【0024】
[軟化剤(C1)]
軟化剤(C)は、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)を含有していてもよいが、軟化剤(C)中の含有量はゴム成分(A)100質量部に対して15質量部未満である。軟化剤(C)中の軟化剤(C1)の含有量がゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上となると、架橋ゴム組成物の低発熱性及び耐亀裂性、ならびにタイヤの低ロス性及び耐亀裂性のバランスが得られない。軟化剤(C)中の軟化剤(C1)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、0質量部、すなわち、軟化剤(C1)を含有しないことが好ましい。
【0025】
ここで、天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)とは、天然ゴムの溶解性パラメータ(SP値;Solubility Parameter)に近いSP値を有する軟化剤をいう。互いのSP値が近いほど親和性が高くなる。
SP値差は、天然ゴムのSP値(SP1)と、軟化剤(C1)のSP値(SP2)との差(|SP1-SP2|)が0.30(cal/cm1/2以下であることが好ましく、0.15(cal/cm1/2以下であることがより好ましい。
天然ゴム及び軟化剤のSP値は、Fedors法に従って算出することができる。
【0026】
天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)としては、イソプレン骨格を主骨格とする化合物が挙げられ、具体的には、C5系樹脂、テルペン系樹脂、及び重量平均分子量50,000以下の液状ポリイソプレン、ミルセン(共)重合体、オレンジオイルからなる群より選択される少なくとも1種である。天然ゴムに対する親和性が高い軟化剤(C1)の含有量は少量であることが好ましいが、用いる場合は、以上の中でも、C5系樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
(C5系樹脂)
C5系樹脂としては、脂肪族炭化水素樹脂及び脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。
脂肪族炭化水素樹脂としては、C5系の石油留分を重合して製造された石油樹脂が挙げられる。高純度の1,3-ペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂としては、日本ゼオン(株)製の商品名「クイントン100」シリーズ(A100、B170、K100、M100、R100、N295、U190、S100、D100、U185、P195N等)が挙げられる。また、他のC5系の石油留分を重合して製造された石油樹脂としてはエクソンモビール社製の商品名「エスコレッツ」シリーズ(1102、1202(U)、1304、1310、1315、1395等)、三井化学(株)製の商品名「ハイレッツ」シリーズ(G-100X、-T-100X、-C-110X、-R-100X等)が挙げられる。
脂環式炭化水素樹脂としては、C5留分から抽出されたシクロペンタジエンを主原料に製造されたシクロペンタジエン系石油樹脂、C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として製造されたジシクロペンタジエン系石油樹脂等が挙げられる。例えば、高純度のシクロペンタジエンを主原料に製造されたシクロペンタジエン系石油樹脂としては、日本ゼオン(株)製の商品名「クイントン1000」シリーズ(1325、1345等)が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン系石油樹脂としては、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M-890A、M-845A、M-990A等)が挙げられる。
【0028】
(テルペン系樹脂)
テルペン系樹脂は、天然由来のテレピン油又はオレンジ油を主原料に製造された樹脂をいい、ヤスハラケミカル(株)製の商品名「YSレジン」シリーズ(PX-1250、TR-105等)、ハーキュリーズ社製の商品名「ピコライト」シリーズ(A115、S115等)が挙げられる。
【0029】
(液状ポリイソプレン)
液状ポリイソプレンとしては、重量平均分子量50,000以下のものであれば特に制限されいないが、天然ゴムに対する親和性の観点から、イソプレン骨格を主骨格とするイソプレンの単独重合体であることが好ましい。液状ポリイソプレンの重量平均分子量は、2,500以上であることが好ましく、8,000~40,000であることがより好ましい。
【0030】
[軟化剤(C2)]
軟化剤(C)は、ブタジエン系ゴム(ポリブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1つ)に対する親和性が高い軟化剤(C2)を、ゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上含有する。
軟化剤(C2)は、ブタジエン系ゴムに対する親和性が高く、つまり、天然ゴムに対する親和性が低い軟化剤であり、天然ゴムの溶解性パラメータ(SP値)から遠いSP値を有する軟化剤である。SP値差は、天然ゴムのSP値(SP1)と、軟化剤(C2)のSP値(SP3)との差(|SP1-SP3|)が0.30(cal/cm1/2を超えることが好ましく、0.50(cal/cm1/2を超えることがより好ましい。
軟化剤(C)中の軟化剤(C2)の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して10質量部未満であると、架橋ゴム組成物の低発熱性及び耐亀裂性、ならびにタイヤの低ロス性及び耐亀裂性のバランスが得られない。
かかる観点から、軟化剤(C)中の軟化剤(C2)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、10~55質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがより好ましく、12~35質量部であることが更に好ましく、13~28質量部であることがより更に好ましい。
【0031】
軟化剤(C2)としては、C5C9樹脂、C9系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、フェノール樹脂、ビニル結合量が25%以下の液状ポリブタジエンゴム等が挙げられる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)が、天然ゴムと合成ゴムとを含有していることが好ましく、合成ゴムとして、ポリブタジエンゴムを含有することがより好ましい。その場合、軟化剤(C2)は、合成ゴム相に分配されることが好ましく、ポリブタジエンゴム相に分配されることがより好ましい。
【0032】
(C5C9系樹脂)
C5C9系樹脂としては、芳香族変性脂肪族系石油樹脂及び脂肪族変性芳香族系石油樹脂から1種以上選ばれる石油樹脂が挙げられる。
C5C9系樹脂は、石油由来のC5~C11留分を重合して得られる固体重合体であり、その成分比率により、芳香族変性脂肪族系石油樹脂及び脂肪族変性芳香族系石油樹脂が含まれる。
芳香族変性脂肪族系石油樹脂は、質量基準で、C5~C11留分の内、芳香族系留分より脂肪族系留分の方が多いC5C9系樹脂をいう。また、脂肪族変性芳香族系石油樹脂は、質量基準で、C5~C11留分の内、脂肪族系留分より芳香族系留分の方が多いか又は脂肪族系留分と芳香族系留分とが等量であるC5C9系樹脂をいう。C5C9系樹脂の中でも、ブタジエン系ゴムに対する親和性の観点から、脂肪族変性芳香族系石油樹脂が好ましい。
【0033】
(C9系樹脂)
C9系樹脂としては、C9系合成石油樹脂が挙げられ、C9留分をAlCl 、BF などのフリーデルクラフツ型触媒を用い、重合して得られた固体重合体であり、インデン、メチルインデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0034】
(テルペン-芳香族化合物系樹脂)
テルペン-芳香族化合物系樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂が挙げられ、具体的には、ヤスハラケミカル(株)製の商品名「YSポリスター」シリーズ(U-130、U-115等のUシリーズ、T-115、T-130、T-145等のT-シリーズ、)、荒川化学工業(株)製の商品名「タマノル901」等が挙げられる。
【0035】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂などが好ましく、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
【0036】
(液状ポリブタジエンゴム)
液状ポリブタジエンゴムとしては、ビニル結合量が25%以下の液状ポリブタジエンゴムが挙げられる。ビニル結合量が25%以下であることで、架橋ゴム組成物及びタイヤに柔軟性を与えることができる。液状ポリブタジエンゴムのビニル結合量は5%以上であることが好ましい。液状ポリブタジエンゴムの重量平均分子量は50,000以下であることが好ましく、また、2,500以上であることが好ましく、更に、8,000~40,000であることがより好ましい。
【0037】
以上の中でも、軟化剤(C2)としては、C9系樹脂、及び液状ポリブタジエンゴムが好ましい。
【0038】
[他の軟化剤(C3)]
軟化剤(C)は、軟化剤(C1)及び軟化剤(C2)以外である軟化剤、すなわち、天然ゴムに対しても、ブタジエン系ゴムに対しても親和性が高くない他の軟化剤(C3)を含んでいてもよい。
他の軟化剤(C3)としては、例えば、オイルが挙げられる。
オイルとしては、プロセスオイルが挙げられ、パラフィンオイル、ナフテン系オイル、流動パラフィン、石油アスファルト、アロマオイル等が例示される。
他の軟化剤(C3)のゴム組成物中の含有量は、軟化剤(C)の含有量〔ゴム成分(A)100質量部に対して30~55質量部〕と、軟化剤(C1)及び軟化剤(C2)の含有量の差分の範囲内であればよいが、15~25質量部であることが好ましい。
【0039】
〔直鎖状多価アルコール(D)〕
本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部に対して1~6質量部の直鎖状多価アルコール(D)を含有する。
ここで、多価アルコールとは、1分子中に3以上の水酸基を有するアルコールを意味する。
ゴム組成物中の直鎖状多価アルコール(D)の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して1質量部未満であると、架橋ゴム組成物の低発熱性と耐亀裂性のバランスが得られない。また、ゴム組成物中の直鎖状多価アルコール(D)の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して6質量部を超えると、架橋ゴム組成物及びタイヤの耐亀裂性が低下したり、また、架橋ゴム組成物の低発熱特性及びタイヤの低ロス性が悪化し易い。
同様の観点から、ゴム組成物中の直鎖状多価アルコール(D)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して1.2~5.5質量部であることが好ましく、1.5~4.0質量部であることがより好ましく、1.5~3.5質量部であることが更に好ましい。
【0040】
直鎖状多価アルコール(D)は、ゴム組成物の混練中に、直鎖状多価アルコール(D)をゴム成分中に均一に分散させる観点から、融点が、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは145℃以下、より更に好ましくは130℃以下である。また、直鎖状多価アルコール(D)の融点は、50℃以上であることが好ましい。
直鎖状多価アルコール(D)は、架橋ゴム組成物及びタイヤの耐亀裂性を向上する観点からは、1分子中に有する水酸基の数が多いことが好ましく、具体的には4価以上であることが好ましい。一方、所望の融点を得る観点から10以下であることが好ましく、1分子中に有する水酸基の数は、4~10であることが好ましく、5~8であることがより好ましい。すなわち、直鎖状多価アルコール(D)は、4~10価であることが好ましく、5~8価であることがより好ましい。
直鎖状多価アルコール(D)は、炭素数が4~10の直鎖脂肪族炭化水素に3以上の水酸基が置換した化合物であることが好ましく、炭素数は5~8であることがより好ましい。脂肪族炭化水素は、飽和脂肪族炭化水素及び不飽和脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0041】
直鎖状多価アルコール(D)の沸点は、ゴム組成物の混練時及び架橋時に、直鎖状多価アルコール(D)の揮発を抑制する観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上である。また、特に上限は規定されないが、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
【0042】
直鎖状多価アルコール(D)としては、糖アルコール類が例示され、具体的には、エリスリトール(沸点=329~331℃、融点=121℃)、トレイトール(沸点=330℃、融点=88~90℃)等のテトリオール類;アラビトール、キシリトール(沸点=216℃、融点=92~96℃)、リビトール等のペンチトール類;ソルビトール(沸点=296℃、融点=95℃)、マンニトール(沸点=290~295℃、融点=166~168℃)、ガラクチトール(沸点:275~280℃、融点:98~100℃)等のヘキシトール類;ボレミトール等のヘプチトール類;D-エリスロ-D-ガラクトオクチトール等のオクチトール類;ノニトール類;デシトール類が挙げられる。
これらの糖アルコール類の立体配置には制限はなく、D体でもL体でもよく、D体とL体を任意の比率で有するDL体であってもよい。
これらの中でも、本発明において、マンニトール、ガラクチトール、キシリトール、ソルビトールが好ましく例示され、キシリトール、ソルビトールがより好ましく、ソルビトールが更に好ましい。
【0043】
〔その他の成分〕
本発明のゴム組成物は、上述した成分に加え、他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、特に限定されず、ゴム工業界で通常使用される添加剤、例えば、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤、加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸等の脂肪酸)、加硫遅延剤等を、本発明の目的を害しない範囲で適宜選択して配合してもよい。また、本発明のゴム組成物をスタッドレスタイヤの製造に用いる場合は、発泡剤、発泡助剤、短繊維等を更に含有していてもよい。
【0044】
<ゴム組成物の調製>
本発明のゴム組成物は、上述した各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を使用して混練りすることによって製造することができる。
ここで、ゴム成分(A)、充填剤(B)、軟化剤(C)、直鎖状多価アルコール(D)等の配合量は、ゴム成分中の含有量として既述した量と同じである。
各成分の混練は、全一段階で行ってもよく、二段階以上に分けて行ってもよく、例えば、第一段階において、ゴム成分(A)、直鎖状多価アルコール(D)、並びに加硫剤及び発泡剤以外のその他の配合成分を混練し、第二段階において、加硫剤及び発泡剤を混練する方法が挙げられる。
混練の第一段階の最高温度は、130~170℃とすることが好ましく、第二段階の最高温度は、90~120℃とすることが好ましい。
【0045】
<架橋ゴム組成物>
本発明の架橋ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなる。
ゴム組成物が発泡剤を含有する場合は、架橋時に発泡も同時に生じるため、架橋すると共に、内部に気泡を有する架橋ゴム組成物が得られる。
ゴム組成物の架橋方法は特に限定されず、公知の架橋方法を適用することができる。なお、未加硫のゴム組成物を成形後に架橋してもよく、予備架橋工程等を経て、一旦未架橋のゴム組成物から半架橋のゴムを得た後、これを用いて成形後、更に本架橋して得てもよい。
【0046】
<空気入りタイヤ>
なお、本発明のゴム組成物は、種々のゴム製品に使用され、タイヤのトレッド部材として好適である。空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の、又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが例示される。
なお、本発明のゴム組成物をタイヤに使用する場合、タイヤのトレッド部材に限定されるものではなく、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム、ビードフィラー等に用いてもよい。
また、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホース、モランなどに本発明のゴム組成物を使用することができる。
【実施例
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
<ゴム組成物の配合成分>
各実施例及び比較例のゴム組成物に配合される成分は、以下の通りである。
〔ゴム成分(A)〕
・天然ゴム:TSR20
・ポリブタジエンゴム:JSR(株)製、商品名「BR01」
〔充填剤(B)〕
・カーボンブラック:旭カーボン(株)製、SAF、ASAHI#105
・シリカ:東ソーシリカ(株)製、NIPSIL AQ
【0049】
〔軟化剤(C)〕
(軟化剤(C1))
・C5系樹脂:三井石油化学工業(株)製、HI-REZ G-100X
(軟化剤(C2))
・C9系樹脂:新日本石油化学(株)製、ネオポリマー140
・液状ポリブタジエンゴム:CrayValley社製、Ricon131
(軟化剤(C3))
・オイル:石油系炭化水素プロセスオイル(DAIHANA PROCESS OIL NS-28、出光興産(株)製)
【0050】
〔直鎖状多価アルコール(D)〕
・直鎖状多価アルコール(D):ソルビトール(関東化学(株)製、水酸基数6、炭素数6)
【0051】
〔その他〕
・加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ)
・加硫促進剤MBTS:大内新興化学工業(株)製、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(ノクセラーDM-P)
【0052】
<架橋ゴム組成物の作製及び評価>
(実施例1~5、及び比較例1~5)
表1に示す配合処方にて、バンバリーミキサーを用いて、上述したゴム組成物の配合成分を混練し、サンプルとなるゴム組成物を調製した。なお、混練の最終段階において、加硫剤である硫黄、及び加硫促進剤を配合した。
得られたゴム組成物を、160℃にて15分間加硫し、架橋(加硫)ゴム組成物を作製し、該架橋ゴム組成物を用いて、低発熱性、耐亀裂性、及び両者のバランスを評価した。なお、比較例1の評価を100として評価した。
【0053】
(1)低発熱性
ARES(TA Instruments社製)を用いた動的粘弾性試験において、試験周波数:15Hz、試験温度:50℃で試験を実施し、動ひずみ10%の損失正接(10%tanδ)を測定し、比較例1の10%tanδを100としたときの指数値として表示した。数値が大きい程、架橋ゴム組成物が低発熱性に優れることを示す。評価結果を表1に示す。
【0054】
(2)耐亀裂性
得られたそれぞれのゴム組成物のサンプルについて、加硫処理を施した後、引張試験装置((株)島津製作所)を使用し、JIS K6252に従い、トラウザ形で引き裂き強度を測定した。数値が大きい程、架橋ゴム組成物が耐亀裂性に優れることを示す。評価結果を表1に示す。
【0055】
(3)低発熱性と耐亀裂性のバランス
低発熱性指数と、耐亀裂性指数とを足して、2で割った値を、低発熱性と耐亀裂性のバランス指数として、表1に示した。指数が大きいほど、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れることを示す。
【0056】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れる架橋ゴム組成物が得られるゴム組成物を提供するとができる。更に、本発明よれば、低ロス性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを提供することができる。