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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】熱可塑性複合材
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20221216BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20221216BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08J5/04 CFD
C08L67/03
C08G63/672
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019558787
(86)(22)【出願日】2018-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061723
(87)【国際公開番号】W WO2018202917
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】1754004
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ アムドロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク コルパール
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジャッケル
(72)【発明者】
【氏名】ルネ サン-ルー
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102719059(CN,A)
【文献】特開2010-254735(JP,A)
【文献】特開2002-129035(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16、15/08-15/14、
C08J5/04-5/10、5/24、
B29C41/00-41/36、41/46-41/52、70/00-70/88、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
B32B1/00-43/00、
D06M13/00-15/715、
C08G63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性複合材であって、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む非晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性ポリマーマトリックスであって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.32及び最大で0.75であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び前記非晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%質量):オルト-ジクロロベンゼン(50%質量溶媒溶媒1lあたりポリエステル5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリマーマトリックス、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む半結晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー繊維であって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.05及び最大で0.30であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び前記半結晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%質量):オルト-ジクロロベンゼン(50%質量溶媒溶媒1lあたりポリエステル5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリマー繊維
を含む熱可塑性複合材であって、
前記非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・16~54%の範囲のモル量の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・5~30%の範囲のモル量の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55%の範囲のモル量のテレフタル酸単位(C)
を含み、
前記半結晶質熱可塑性ポリエステルは、
・2.5~15モル%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);・30~42.5モル%の範囲の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55モル%の範囲のテレフタル酸単位(C)
を含む、熱可塑性複合材
【請求項2】
前記脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール又は前記ジオールの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性複合材。
【請求項3】
前記非晶質及び半結晶質熱可塑性ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して1%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性複合材。
【請求項4】
(1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項5】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項6】
20~70重量%の非晶質熱可塑性ポリエステルマトリックスを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項7】
30~80重量%の半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材。
【請求項8】
熱可塑性複合材を製造する方法であって、
- ポリマーマトリックスであって、ポリマーは、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む非晶質熱可塑性ポリエステルであり、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.32及び最大で0.75であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び前記非晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%質量):オルト-ジクロロベンゼン(50%質量溶媒溶媒1lあたりポリエステル5g)は、50ml/gより大きい、ポリマーマトリックスを提供すること、
- ポリマー繊維であって、ポリマーは、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む半結晶質熱可塑性ポリエステルであり、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.05及び最大で0.30であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び前記半結晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%質量):オルト-ジクロロベンゼン(
50%質量溶媒溶媒1lあたりポリエステル5g)は、50ml/gより大きい、ポリマー繊維を提供すること、
- 前記マトリックス及び前記繊維から熱可塑性複合材を調製すること
を含む方法であって、
前記非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・16~54%の範囲のモル量の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・5~30%の範囲のモル量の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55%の範囲のモル量のテレフタル酸単位(C)
を含み、
前記半結晶質熱可塑性ポリエステルは、
・2.5~15モル%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);・30~42.5モル%の範囲の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55モル%の範囲のテレフタル酸単位(C)
を含む、方法
【請求項9】
前記脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール又は前記ジオールの混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して1%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含ことを特徴とする、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記調製ステップは、溶融による含浸、それに続いて圧縮/スタンピングによる、引抜きによる、減圧下での低圧力による、又は他フィラメント巻き取りによる形成のステップによって実行されることを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の分野に関し、且つリサイクルに関して特に適切である熱可塑性複合材及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
それらの機械的特性のため、プラスチック材料、特に熱可塑性ポリマーは、工業界で多くの製品の製造のために広く使用されている。したがって、製造業者は、既存のポリマーの特性の改善を可能にする新規方法又は改善された特性を有する新規ポリマーを常に探求している。
【0003】
この目的のため、ポリマーの機械的強度を増加させるために種々の化合物をその中に組み込み、改善された機械的特性を有する複合材材料を得ることが知られている。これらの種々の化合物は、強化材として作用し、それらが組み込まれたポリマーの機械的挙動を実質的に改善する。これらの強化材は、一般に、天然繊維、合成繊維、カーボン繊維又はガラス繊維などの繊維である。
【0004】
近年、複合材材料の市場は、絶え間ない成長を示している。したがって、医学、スポーツ、自動車又は他のグリーンエネルギーなどの多くの活動部門では、それらの製品の設計にこれらの材料が組み込まれている。
【0005】
複合材材料は、新たな革新源となり、産業の新たな成長の機会をもたらす。それらは、強化材及びマトリックスからなる材料として定義され、不変性及び低重量の特性により、それらがいくつかの場合に金属部品と置き換え可能となる特徴により、他の合成プラスチック製品と区別される。
【0006】
しかしながら、いずれの材料とも同様に、前記材料が大規模で製造される場合、リサイクルの問題が必然的に提起される。
【0007】
複合材材料のまさしくその特性と関連する異質性は、マトリックス及び繊維の特性の組み合わせを通してそれらに主要な利益を与えるが、それらのリサイクルを困難にさせるパラメーターでもある。加えて、複合材材料は、異方性であり、すなわち、特性は、全ての方向で同一ではなく、且つそれらは、気泡、挿入断片又は存在する場合にはセンサーさえも含有し得る。したがって、それらのリサイクルが複雑であり且つ費用がかかる、処理される種々の材料がある。
【0008】
数年間、熱硬化性マトリックスからなる複合材材料に焦点を合わせた努力がなされている。実際に、これらの「熱硬化性」複合材料は、産業で使用される複合材料の95%超を表す。代わりに、「熱可塑性」複合材料の開発が始まっている。これは、熱硬化性材料では不可能である溶融及び再形成が可能なマトリックスを有するという有意な利点を有し、それによってリサイクルの可能性が促進される。
【0009】
それにもかかわらず、これらの材料のリサイクルの観点で繊維をマトリックスから切り離すことが問題である場合、複合材料の両方の系統に関して、問題は、同じままである。マトリックスが繊維の劣化を生じずに分解する最も洗練された技術は、なおも大部分が実験段階にある。これらは、例えば、再利用可能な繊維を再生するための、加溶媒分解、化学、熱又は熱力学を伴う熱分解又は加熱分解などの技術である。
【0010】
現在、複合材料のリサイクルのための多数の技術的な選択肢がある。したがって、化学的方法、熱的方法(焼却を別とする)、機械的方法によるか、焼却によるか又は最後の手段として廃棄によってリサイクルを達成することが可能である。
【0011】
機械的技術は、それらの寿命の最後に複合材部分を研磨することを含み得、したがって粉末の形態で材料を回収することが可能となる。いくつかの場合、この材料は、それを使用して技術部品を作るためのプラスチック加工の分野に返されるが、一般に、これらの粉末は、例えば、特に砂又はタルクと競合して、コンクリート中に低コストで容積を作成するために使用される。
【0012】
焼却も十分に開発される代替であることが証明されている。この特定の場合、粉砕複合材材料を燃焼することにより、石油から誘導されたマトリックスから熱エネルギーを回収することが可能となるため、それは、リサイクル自体の問題ではなく、むしろ有価物を作り出すことの問題である。セメントプラントは、2000℃まで加熱可能である炉を有し、その理想的な消費者である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それにもかかわらず、実際には、現在埋め立て地に送られている複合材材料廃物の90%から有価物を作り出すために、代替物を見出し、且つ容易にリサイクル可能な新規複合材料を開発する必要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、有意な調査後、これまで達成されなかったリサイクルの容易さを有する全体的な熱可塑性複合材であって、マトリックスから繊維を分離することを必要とせずに全体的なリサイクルが可能である熱可塑性複合材を開発したことは、本出願人の功績である。
【0015】
したがって、本発明の第1の主題は、熱可塑性複合材であって、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む非晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性ポリマーマトリックスであって、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.32及び最大で0.75であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び非晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1lあたり5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリマーマトリックス、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む半結晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー繊維であって、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.05及び最大で0.30であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び半結晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1lあたり5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリマー繊維
を含む熱可塑性複合材に関する。
【0016】
第2の主題は、熱可塑性複合材を製造する方法であって、
a)上記のポリマーマトリックスを提供すること、
b)上記のポリマー繊維を提供すること、
c)前記マトリックス及び前記繊維から熱可塑性複合材を調製すること
を含む方法に関する。
【0017】
本発明による熱可塑性複合材は、マトリックス及び繊維強化材の両方で全体的に熱可塑性であり、特にこれまで達成されなかったリサイクルの容易さを得るという利点を有する。
【0018】
実際に、本発明による複合材の全体的に熱可塑性という特徴は、特に通常実行される分離ステップを行わずに排除することが可能となる。したがって、リサイクルは、より効率的であり、費用が低く、もはや複合材ではなく、多数のプラスチック用途のために使用可能である均一な熱可塑性材料を得ることが可能となる。したがって、材料からの有価物、特に熱可塑性材料のリサイクル及び作成に関して、本発明による熱可塑性複合材は、技術的躍進である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明の第1の主題は、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む非晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性ポリマーマトリックスであって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.32及び最大で0.75であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び非晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1lあたり5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリマーマトリックス、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む半結晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー繊維であって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.05及び最大で0.30であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び半結晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1lあたり5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリマー繊維
を含む熱可塑性複合材に関する。
【0020】
したがって、本発明による熱可塑性複合材は、非晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性マトリックスを含む。
【0021】
より特に、これは、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含み、(A)/[(A)+(B)]モル比が少なくとも0.32及び最大で0.75である熱可塑性ポリエステルである。
【0022】
熱可塑性ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又はわ
ずかなモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含む。
【0023】
「小モル量の脂肪族非環式ジオール単位」は、特に5%未満の脂肪族非環式ジオール単位のモルの量を意味するように意図される。本発明によれば、このモルの量は、場合によりポリエステルの全てのモノマー単位に対して同一であるか又は異なる脂肪族非環式ジオール単位の合計の比率を表す。
【0024】
有利には、脂肪族非環式ジオール単位のモル量は、1%未満である。好ましくは、ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有せず、より好ましくは、それは、いずれのエチレングリコールも含有しない。
【0025】
脂肪族非環式ジオールは、直鎖又は分枝鎖脂肪族非環式ジオールであり得る。それは、飽和又は不飽和脂肪族非環式ジオールであり得る。エチレングリコールを除き、飽和直鎖脂肪族非環式ジオールは、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール及び/又は1,10-デカンジオールであり得る。飽和分枝鎖脂肪族非環式ジオールの例としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールが挙げられ得る。不飽和脂肪族ジオールの例としては、例えば、シス-2-ブテン-1,4-ジオールが挙げられ得る。
【0026】
合成のために使用される脂肪族非環式ジオール、したがってエチレングリコールの少ない量にもかかわらず、溶液中の高い還元粘度を有し、且つイソソルビドが特に良好に組み込まれる熱可塑性ポリエステルが得られる。
【0027】
モノマー(A)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであり、且つイソソルビド、イソマンニド、イソヨージド又はその混合物であり得る。好ましくは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドである。
【0028】
イソソルビド、イソマンニド及びイソヨージドは、それぞれソルビトール、マンニトール及びイジトールの脱水によって入手され得る。イソソルビドに関して、商品名Polysorb(登録商標)Pで本出願人によって販売されている。
【0029】
脂環式ジオール(B)は、脂肪族環式ジオールとも呼ばれる。それは、特に1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール又はこれらのジオールの混合物から選択され得るジオールである。脂環式ジオール(B)は、非常に好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。脂環式ジオール(B)は、シス型立体配置であるか、トランス型立体配置であるか、又はシス及びトランス型立体配置におけるジオールの混合物であり得る。
【0030】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)及び1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比、すなわち(A)/[(A)+(B)]は、少なくとも0.32及び最大で0.75である。このように、熱可塑性ポリエステルは、非晶質であり、且つX線回折線の欠如及び示差走査型熱量測定(DSC)分析における吸熱溶融ピークの欠如により特徴付けられる。
【0031】
熱可塑性複合材に特に適切な非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・16~54%の範囲のモル量の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・5~30%の範囲のモル量の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55%の範囲のモル量のテレフタル酸単位(C)
を含む。
【0032】
ポリエステル中の異なる単位の量は、ポリエステルの完全加水分解又はメタノリシスから生じるモノマーの混合物の1H NMRにより、又はクロマトグラフィー分析により決定され得、量は、好ましくは、1H NMRにより決定される。
【0033】
当業者は、ポリエステルの単位のそれぞれの量を決定するための分析条件を容易に見つけることができる。例えば、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)のNMRスペクトルから、1,4-シクロヘキサンジメタノールに関連する化学シフトは、0.9~2.4ppm及び4.0~4.5ppmであり、テレフタレート環に関連する化学シフトは、7.8~8.4ppmであり、且つイソソルビドに関連する化学シフトは、4.1~5.8ppmである。それぞれのシグナルの積分により、ポリエステルのそれぞれの単位の量を決定することが可能になる。
【0034】
本発明に従って使用される非晶質熱可塑性ポリエステルは、116~200℃、例えば140~190℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0035】
ガラス転移温度は、慣用法、特に10℃/分の加熱速度を使用する示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される。実験プロトコルを以下の実施例の項目で詳細に説明する。
【0036】
非晶質熱可塑性ポリエステルは、特に40より大きい明度L*を有する。明度は、物体の表面発光性から得られるHunter明度の意味で理解される。有利には、明度L*は、55より大きく、好ましくは60より大きく、最も好ましくは65より大きく、例えば70より大きい。パラメーターL*は、CIE研究室モデルを介して、分光測光器を使用して決定され得る。
【0037】
最終的に、還元溶液粘度は、50ml/gより大きく、且つ120ml/g未満である。この粘度は、撹拌しながら、130℃において、導入されるポリマーの濃度が5g/lであるポリマーを溶解した後、フェノール及びオルトジクロロベンゼンの等値質量混合物中で25℃においてUbbelohde毛細管粘度計を使用して測定することができる。
【0038】
本発明に従って使用される熱可塑性ポリエステルの非晶質特徴は、X線回折線の欠如及び示差走査型熱量測定(DSC)分析における吸熱溶融ピークの欠如により特徴付けられる。
【0039】
特定の実施形態によれば、本発明による熱可塑性複合材は、20~70重量%、好ましくは30~60重量%の上記非晶質熱可塑性ポリエステルマトリックスを含む。
【0040】
一実施形態によれば、本発明による複合材の熱可塑性マトリックスは、非晶質熱可塑性ポリエステルから本質的になる。
【0041】
本発明による熱可塑性複合材は、半結晶質熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性繊維を含む。
【0042】
「繊維」という用語は、本発明で使用される場合、フィラメント及びヤーンという用語と類語であり、したがって連続又は不連続モノフィラメント又はマルチフィラメント、無
撚又は混在マルチフィラメント、ベースヤーンを含む。加えて、「繊維」という用語は、繊維が見られる形態にかかわらず、すなわち織物又は不織物の形態でも使用される。
【0043】
半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維は、本発明による熱可塑性複合材中で強化材として作用する。
【0044】
より特に、繊維を得るために使用される半結晶質熱可塑性ポリエステルは、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む熱可塑性ポリエステルであって、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.05及び最大で0.30であり、前記ポリエステルは、いずれの脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、又はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、及び熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1lあたり5g)は、50ml/gより大きい、熱可塑性ポリエステルである。
【0045】
モノマー(A)及び脂環式ジオール(B)は、非晶質熱可塑性ポリエステルに関して上記された通りである。
【0046】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)及び1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比、すなわち(A)/[(A)+(B)]は、少なくとも0.05及び最大で0.30である。有利には、この比率は、少なくとも0.1及び最大で0.28であり、より特に、この比率は、少なくとも0.15及び最大で0.30である。
【0047】
本発明に従って繊維を得るために特に適切である半結晶質熱可塑性ポリエステルは、
・2.5~15モル%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)のモルの量;
・30~42.5モル%の範囲の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)のモルの量;
・45~55モル%の範囲のテレフタル酸単位のモルの量(C)
を含む。
【0048】
上記の半結晶質熱可塑性ポリエステルによって得られる繊維は、有利には、210~295℃、例えば240~285℃の範囲の融点を有する。
【0049】
さらに、半結晶質熱可塑性ポリエステルは、85~120℃、例えば90~115℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0050】
ガラス転移温度及び融点は、従来法、特に10℃/分の加熱速度を使用する示差走査型熱量測定(DSC)法によって測定される。実験プロトコルの詳細は、以下の実施例部分でも説明する。
【0051】
有利には、半結晶質熱可塑性ポリエステルは、10J/gより大きい、好ましくは20J/gより大きい融解熱を有し、この融解熱の測定は、このポリエステルの試料に16時間にわたって170℃の加熱処理を受けさせ、次いで試料を10℃/分で加熱することにより、DSCによって融解熱を評価することを含む。
【0052】
本発明に従って使用される半結晶質熱可塑性ポリエステルは、特に40より大きい明度Lを有する。有利には、明度Lは、55より大きく、好ましくは60より大きく、最も好ましくは65より大きく、例えば70より大きい。パラメーターLは、CIE研究室モデルを介して分光測光器を使用して決定され得る。
【0053】
最終的に、前記半結晶質熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度は、50ml/gより大きく、好ましくは120ml/g未満であり、この粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/lである条件において、撹拌しながら130℃でポリマーを溶解した後、フェノール及びオルト-ジクロロベンゼンの機器質量混合物中で25℃においてUbbelohde毛細管粘度計を使用して測定することが可能である。
【0054】
熱可塑性マトリックスに関して以前に開発された通り、還元溶液粘度を測定するためのこの試験は、使用する溶媒及びポリマーの濃度の選択のため、半結晶質熱可塑性ポリマーの粘度を決定するために特に適切である。
【0055】
本発明に従って使用された熱可塑性ポリエステルの半結晶質性は、顕著であり、後者の場合、170℃における16時間の熱処理後にX線回折線を有するか、又は示差走査熱量測定(DSC)分析において吸熱溶融ピークを有する。
【0056】
上記の半結晶質熱可塑性ポリエステルから出発して、本発明による繊維は、当業者に既知の方法、例えば溶融スピニングの方法に従って又は溶液中プロセス(湿式又は乾式プロセスとも呼ばれる)によって得ることができる。好ましくは、繊維は、溶融スピニング法によって得られる。
【0057】
繊維は、織物繊維、不織物繊維又は織物及び不織物繊維のブレンドであり得る。不織物は、ウェブ、布、ラップ又は方向を有して若しくはランダムに分布された繊維の他のマットレスからなり得、この内部結合は、機械的、物理的若しくは化学的方法により、又はこれらの方法の組合せにより提供される。内部結合の例は、接着結合であり得、不織布が得られ、次いで前記不織布が繊維のマットの形態に製造され得る。
【0058】
特定の実施形態によれば、熱可塑性複合材の繊維は、織物繊維である。前記繊維を織ることは、タフタ、絢織り、サテン又は一方向織り交ぜにより、好ましくはタフタ織り交ぜにより実行され得る。
【0059】
別の実施形態によれば、熱可塑性複合材の繊維は、不織物である。繊維不織物は、乾式ルート、溶融ルート、湿式ルート又はフラッシュスピニングなどの当業者に既知の技術に従って入手され得る。例として、乾式ルートによる不織物繊維の形成は、特にカレンダリング又はエアレイドプロセスにより実行され得る。溶融ルートによる製造に関して、それは、押出成形(スピンボンディング技術又はスパンボンド繊維)により、又は押出ブロー成形(メルトブローン)により実行可能である。
【0060】
本発明によるポリエステル繊維は、機械的及び熱的観点の両方から非常に良好な特性を有し、熱可塑性複合材のために特に適切である選択肢の強化材を構成する。実際に、本発明による繊維は、従来のポリマー繊維と比較して例えば破断点伸び又は他の持続などの機械的特性の改善を有する。
【0061】
加えて、熱可塑性複合材の製造のための本発明による繊維の使用は、特定の天然繊維においてときに生じる可能性のある腐敗の現象を回避することも可能にするという点で特に有利である。
【0062】
一実施形態によれば、熱可塑性複合材は、30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%の上記半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維を含む。
【0063】
一実施形態によれば、本発明による複合材の熱可塑性繊維は、半結晶質熱可塑性ポリエステルから本質的になる。
【0064】
一実施形態によれば、熱可塑性複合材は、上記で定義された熱可塑性マトリックス及び上記で定義された熱可塑性繊維から本質的になる。
【0065】
本発明による熱可塑性複合材は、特に有利である。現行の複合材材料と異なり、本発明による熱可塑性複合材は、マトリックス及び繊維強化材の両方で全体的に熱可塑性であり、これまで達成されなかったリサイクルの容易さを得るという直接的な結果を有する。したがって、本発明者らは、完全に独創的な様式において、本発明によるマトリックス及び繊維の化学的類似性により、繊維の融点(Mp)を超える温度への加熱中、前記マトリックス及び前記繊維間のエステル交換反応を得ることが可能となり、したがって使用されるリサイクル条件次第で相溶性の相又は全体的に均質な相を含む熱可塑性材料がもたらされることを見出した。
【0066】
これまで、リサイクルに関して、それらのマトリックスが溶融し得るとしても、熱可塑性複合材料には、熱延性複合材料としての繊維/マトリックスの分離に関して同一の困難があった。ここで、本発明による複合材は、全体的に熱可塑性であるため、従来、実行される分離ステップが排除される。したがって、リサイクルは、より効率的であり、費用が低く、もはや複合材ではなく、多数のプラスチック用途のために使用可能である均一な熱可塑性材料を得ることが可能となる。したがって、材料からの有価物、特に熱可塑性材料のリサイクル及び作成に関して、本発明による熱可塑性複合材は、技術的躍進である。本発明による複合材は、これまで使用されてきた従来の強化剤から構成される熱可塑性複合材と少なくとも同一の機械的特性を有することが理解される。
【0067】
熱可塑性マトリックスを得るために特に適切な非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール(B)及び少なくとも1種のテレフタル酸(C)を含むモノマーを反応器中に導入するステップであって、モル比(A)/[(A)+(B)]は、少なくとも0.32及び最大で0.75であり、且つ比((A)+(B))/(C)は、1.05~1.5の範囲であり、前記モノマーは、いかなる脂肪族非環式ジオールも含有しないか、又は導入された全てのモノマーに対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含む、ステップ;
・反応器中に触媒系を導入するステップ;
・前記モノマーを重合してポリエステルを形成するステップであって、
・オリゴマー化の第1段階であって、その間に、反応媒体が265~280℃、有利には270~280℃の範囲の温度、例えば275℃で不活性雰囲気下において撹拌される、オリゴマー化の第1段階;
・オリゴマーの縮合の第2段階であって、その間に、形成されたオリゴマーが、ポリエステルを形成するように278~300℃、有利には280~290℃の範囲の温度、例えば285℃で減圧下において撹拌される、オリゴマーの縮合の第2段階
からなるステップ;
・熱可塑性ポリエステルを回収するステップ
を含む合成方法によって調製可能である。
【0068】
方法のこの第1の段階は、不活性雰囲気、すなわち少なくとも1種の不活性気体の雰囲気下で実行される。この不活性気体は、特にジニトロゲンであり得る。この第1の段階は
、気体流下で実行され得、且つそれは、圧力下、例えば1.05~8バールの圧力において実行され得る。
【0069】
好ましくは、圧力は、3~8バール、最も好ましくは5~7.5バールの範囲、例えば6.6バールである。これらの好ましい圧力条件下において、全てのモノマーの互いとの反応は、この段階中のモノマーの損失を制限することによって促進される。
【0070】
オリゴマー化の第1の段階前にモノマーの脱酸素化のステップが好ましくは実行される。それは、例えば、モノマーが反応器中に導入されると、減圧を生じることにより、次いでそれに窒素などの不活性気体を導入することにより実行することができる。この減圧-不活性気体導入サイクルは、数回、例えば3~5回にわたって繰り返すことができる。好ましくは、試薬及び特にジオールが完全に溶解するように、この減圧-窒素サイクルは、60~80℃の温度で実行される。この脱酸素化ステップは、方法の終了時に得られるポリエステルの着色特性を改善するという長所を有する。
【0071】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、減圧下で実行される。段階的に圧力減少勾配を使用することにより、又は代わりに圧力減少勾配及び階段の組合せを使用することにより、この第2の段階中に連続的に圧力を減少させ得る。好ましくは、この第2の段階の終了時、圧力は、10ミリバール未満、最も好ましくは1ミリバール未満である。
【0072】
重合ステップの第1の段階は、好ましくは、20分~5時間の範囲の継続時間を有する。有利には、第2の段階は、30分~6時間の範囲の継続時間を有し、この段階の開始は、反応器が減圧下、すなわち1バール未満の圧力に配置された時点を含む。
【0073】
この方法は、反応器中に触媒系を導入するステップも含む。このステップは、事前に実行され得るか、又は上記の重合ステップ中に実行され得る。
【0074】
触媒系は、任意選択的に不活性支持体上に分散又は固定された触媒又は触媒の混合物を意味するように意図される。
【0075】
触媒は、ポリマー組成物を得るための高粘度ポリマーを得るために適切な量で使用される。
【0076】
エステル化触媒は、オリゴマー化段階中に有利に使用される。このエステル化触媒は、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、マンガン、カルシウム及びストロンチウムの誘導体、パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)若しくはメタンスルホン酸(MSA)などの有機触媒又はこれらの触媒の混合物から選択することができる。このような化合物の例として、出願米国特許出願公開第2011282020A1号明細書のパラグラフ[0026]~[0029]及び出願国際公開第2013/062408A1号パンフレットの第5ページに記載されるものが挙げられ得る。
【0077】
好ましくは、亜鉛誘導体又はマンガン、スズ若しくはゲルマニウム誘導体がエステル交換の第1の段階中に使用される。
【0078】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマー化段階中の触媒系中に含有される10~500ppmの金属が使用され得る。
【0079】
エステル交換の終了時、第1のステップからの触媒は、亜リン酸又はリン酸を添加することにより、任意選択的にブロックされるか、又はスズ(IV)の場合、トリフェニルホスフィット若しくはトリス(ノニルフェニル)ホスフィット又は代わりに出願米国特許出
願公開第2011282020A1号明細書のパラグラフ[0034]に記載されるものなどのホスフィットによって還元され得る。
【0080】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、任意選択的に、触媒の添加によって実行され得る。この触媒は、有利には、スズ誘導体、好ましくはスズ、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、ハフニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、コバルト、鉄、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム若しくはリチウムの誘導体又はこれらの触媒の混合物から選択される。このような化合物の例は、例えば、特許欧州特許第1882712B1号明細書のパラグラフ[0090]~[0094]に記載されるものであり得る。
【0081】
好ましくは、触媒は、スズ、チタン、ゲルマニウム、アルミニウム又はアンチモン誘導体である。
【0082】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマーの縮合の段階中の触媒系中に含有される10~500ppmの金属が使用され得る。
【0083】
最も好ましくは、触媒系は、重合の第1の段階及び第2の段階中に使用される。前記系は、有利には、スズをベースとする触媒又はスズ、チタン、ゲルマニウム及びアルミニウムをベースとする触媒の混合物からなる。
【0084】
例として、重量による量として、導入されたモノマーの量に対して、触媒系中に含有される10~500ppmの金属が使用され得る。
【0085】
調製方法によれば、モノマーの重合のステップ中、酸化防止剤が有利に使用される。これらの酸化防止剤により、得られるポリエステルの着色を減少させることが可能である。酸化防止剤は、一次及び/又は二次酸化防止剤であり得る。一次酸化防止剤は、化合物Hostanox(登録商標)03、Hostanox(登録商標)010、Hostanox(登録商標)016、Ultranox(登録商標)210、Ultranox(登録商標)276、Dovernox(登録商標)10、Dovernox(登録商標)76、Dovernox(登録商標)3114、Irganox(登録商標)1010若しくはIrganox(登録商標)1076などの立体障害フェノール又はIrgamod(登録商標)195などのホスホネートであり得る。二次酸化防止剤は、Ultranox(登録商標)626、Doverphos(登録商標)S-9228、Hostanox(登録商標)P-EPQ又はIrgafos 168などの三価リン化合物であり得る。
【0086】
重合添加剤として、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又はテトラエチルアンモニウムヒドロキシドなど、望ましくないエーテル化反応を制限することが可能である少なくとも1種の化合物を反応器中に導入することも可能である。
【0087】
最終的に、この方法は、重合ステップの終了時にポリエステルを回収するステップを含む。次いで、そのようにして回収された熱可塑性ポリエステルは、本発明によって記載される方法において熱可塑性マトリックスとして機能することができる。
【0088】
熱可塑性繊維を得るために特に適切な半結晶質ポリエステルは、上記の合成方法によって調製され得るが、少なくとも0.05及び最大で0.30のモル比(A)/(A)+(B)]を用いるという変更点があり、また前記方法は、モル質量を増加させるステップも含む。
【0089】
モル質量を増加させるステップは、重合後に実行され、且つ半結晶質熱可塑性ポリエステルの固体状態重縮合(SSP)のステップ又は少なくとも1種の連鎖延長剤の存在下での半結晶質熱可塑性ポリエステルの反応性押出成形のステップからなり得る。
【0090】
したがって、第1の変形形態に従い、重合後のステップは、SSPによって実行される。
【0091】
SSPは、一般に、ガラス転移温度とポリマーの融点との間の温度で実行される。したがって、SSPを実行するために、ポリマーが半結晶質であることが必要である。好ましくは、後者は、10J/gより大きい、好ましくは20J/gより大きい融解熱を有する。この融解熱の測定は、溶液中のより低い還元粘度のこのポリマーの試料に16時間にわたって170℃の加熱処理を受けさせ、次いで試料を10K/分で加熱することにより、DSCによって融解熱を評価することを含む。
【0092】
有利には、SSPステップは、190~280℃、好ましくは200~250℃の範囲の温度において実行され、このステップは、必ず半結晶質熱可塑性ポリエステルの融点未満の温度で実行されなければならない。
【0093】
SSPステップは、不活性雰囲気下、例えば窒素下、又はアルゴン下、又は減圧下で実行され得る。
【0094】
第2の変形形態に従い、重合後のステップは、少なくとも1つの連鎖延長剤の存在下での半結晶質熱可塑性ポリエステルの反応性押出成形によって実行される。
【0095】
連鎖延長剤は、反応性押出成形において、半結晶質熱可塑性ポリエステルのアルコール、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステル官能基と反応することができる2個の官能基を含む化合物である。連鎖延長剤は、例えば、2個のイソシアネート、イソシアヌレート、ラクタム、ラクトン、カーボネート、エポキシ、オキサゾリン及びイミド官能基を含む化合物から選択され得、前記官能基は、同一であるか又は異なり得る。熱可塑性ポリエステルの連鎖延長は、溶融材料と反応器の気体のヘッドスペースとの間の良好な界面を確実にするために十分に発散性である、非常に粘着性の媒体を撹拌しながら混合することが可能である全ての反応器において実行され得る。特に、この処理ステップのために適切である反応器は、押出成形である。
【0096】
反応性押出成形は、いずれの種類の押出成形機でも、特に一軸スクリュー押出機、共回転二軸スクリュー押出機又は反対回転二軸スクリュー押出機で実行され得る。しかしながら、共回転押出器を使用してこの反応性押出成形を実行することが好ましい。
【0097】
反応性押出成形ステップは、
・押出成形機中にポリマーを導入して、前記ポリマーを溶融させること;
・次いで、溶融ポリマーに連鎖延長剤を導入すること;
・次いで、押出成形機中でポリマーを連鎖延長剤と反応させること;
・次いで、押出成形ステップで得られた半結晶質熱可塑性ポリエステルを回収すること
によって実行され得る。
【0098】
押出成形中、押出成形機中の温度は、ポリマーの融点より高くなるように調整される。押出成形機中の温度は、150~320℃の範囲であり得る。
【0099】
モル質量を増加させるステップ後に得られる半結晶質熱可塑性ポリエステルは、回収され、次いで、これは、本発明による熱可塑性繊維を得るために機能することができる。
【0100】
本発明の第2の主題は、熱可塑性複合材を製造する方法であって、
a)上記の熱可塑性ポリマーマトリックスを提供すること、
b)上記の熱可塑性ポリマー繊維を提供すること、
c)前記マトリックス及び前記繊維から熱可塑性複合材を調製すること
を含む方法に関する。
【0101】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、熱可塑性複合材が、30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%の上記半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維を含む様式で提供される。
【0102】
本発明によるステップc)は、前記マトリックス及び前記繊維から熱可塑性複合材を調製することを含む。
【0103】
この調製ステップは、ポリエステルマトリックス中に繊維を混合又は組み込むこと、それに続いて形成のステップによって実行され得る。本発明の目的に関して、「含浸」及び「湿式」という用語は、同意語である。組み込みは、非晶質熱可塑性ポリエステルマトリックスによる半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維の含浸を含み得る。本発明の方法による組み込みは、当業者に既知の技術、例えば溶融による含浸によって実行され得る。含浸後、形成ステップが実行され得、前記形成は、場合により、当業者に既知の技術、例えば圧縮/スタンピングにより、引抜きにより、減圧下での低圧力により、又は他のフィラメント巻き取りにより実行される。
【0104】
一実施形態によれば、組み込みは、溶融による含浸によって実行され、形成は、熱圧縮によって実行される。この実施形態によれば、半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維は、切断可能であり、且つ非晶質マトリックスの2つのシート間に配置可能であるタフタ織りの形態であり得る。次いで、アセンブリをプレスに配置し、マトリックスのTgより高く加熱され、プレートを得るためにプレスされ、その繊維は、マトリックスによって含浸される。
【0105】
次いで、アセンブリを再加熱し、冷たい型中に配置する。プレス及び冷却後、得られたアセンブリは、熱可塑性複合材を構成し、半結晶質熱可塑性ポリエステル繊維は、非晶質熱可塑性ポリエステルマトリックス中に完全に組み込まれ、前記複合材は、特に強力である。
【0106】
したがって、本発明による方法は、マトリックス及び繊維強化剤の両方で全体的に熱可塑性の複合材を得ることが可能となり、それにより、これまで達成されなかったリサイクルの容易さを得るという結果をもたらすため、特に有利である。
【0107】
したがって、本発明による熱可塑性複合材は、プラスチック物品又は対象物の製造において最も特に適用可能であり、したがって自動車、航空学、海軍、建築又はスポーツなどの活動の多くの部門で使用可能である。実際に、それらは、例えば、ドアインテリアなどの自動車取り付け部品、艇体を製造するため、又は建築材料を製造するために使用され得る。
【0108】
本発明による熱可塑性複合材料は、構造の全重量減少が求められる部分における部品の製造でも最も特に適用可能であろう。
【0109】
以下の実施例により、本発明は、より明らかに理解されるであろう。これは、純粋に例示的であり、且つ決して保護の範囲を限定しないように意図される。
【実施例
【0110】
ポリマーの特性は、次の技術によって調査した。
【0111】
還元溶液粘度
還元溶液粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/lである条件において、撹拌しながら130℃でポリマーを溶解した後、フェノール及びオルト-ジクロロベンゼンの機器質量混合物中、25℃においてUbbelohde毛細管粘度計を使用して評価する。
【0112】
DSC
ポリエステルの熱的特性は、示差走査型熱量測定(DSC)によって測定した。試料を最初に開放るつぼ中、窒素雰囲気下において10℃から320℃まで加熱し(10℃.分-1)、10℃まで冷却し(10℃.分-1)、次いで第1段階と同一条件下で320℃まで再加熱する。ガラス転移温度は、第2の加熱の中点において計られた。いずれの融点も、第1の加熱において吸熱ピーク(ピーク開始)上で決定される。
【0113】
同様に、融合のエンタルピー(曲線下面積)は、第1の加熱において決定される。
【0114】
以下に提示された説明例のために、次の試薬を使用した。
1,4-シクロヘキサンジメタノール(純度99%、シス及びトランス異性体の混合物)Roquette Freresからのイソソルビド(純度>99.5%)Polysorb(登録商標)P
Acrosからのテレフタル酸(純度99+%)
BASF AGからのIrganox(登録商標)1010
Sigma Aldrichからのジブチルスズオキシド(純度98%)
【0115】
熱可塑性複合材の調製
A.熱可塑性繊維の調製
1)重合
熱可塑性ポリエステルP1は、以下の手順に従って調製された半結晶質熱可塑性ポリエステルであり、少なくとも0.05及び最大で0.30の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/ジオールモノマーの合計、すなわち1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)が添加される(A)のモル比、すなわち(A)/[(A)+(B)]を有する。
【0116】
したがって、1432g(9.9モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノール、484g(3.3モル)のイソソルビド、2000g(12.0モル)のテレフタル酸、1.65gのIrganox 1010(酸化防止剤)及び1.39gのジブチルスズオキシド(触媒)を7.5l反応器に添加する。反応媒体の温度が60℃になったら4回の減圧-窒素サイクルを実行する。
【0117】
次いで、40%のエステル化度が得られるまで、反応混合物を6.6バールの圧力下、一定の撹拌(150rpm)を用いて240℃まで加熱する(4℃/分)。エステル化度は、回収した蒸留物の質量から概算する。このエステル化度に達したら、55%のエステル化度が得られるまで反応混合物の温度を250℃にする。このエステル化度に達したら、80%のエステル化度が得られるまで反応圧力を大気圧に減少させ、温度を260℃にする。次いで、対数勾配に従って120分間で圧力を0.7ミリバールまで減少させ、温度を280℃にする。
【0118】
初期の軸トルクと比較した12.1Nmの軸トルクの増加が得られるまで、これらの減
圧及び温度条件を維持する。
【0119】
最終的に、反応器の底部バルブを介してポリマーロッドをキャストし、15℃において熱調節水浴中で冷却し、且つ約15mgの果粒の形態で切断する。
【0120】
そのようにして得られた樹脂は、80.1ml/g-1の還元溶液粘度を有する。
【0121】
ポリエステルのH NMR分析では、最終ポリエステルは、ジオールと比較して17.0モル%のイソソルビドを含有することが示される。
【0122】
熱特性に関して、ポリマーは、23.2J/gの融解エンタルピーで96℃のガラス転移温度、253℃の融点を有する。
【0123】
モル質量を増加させるため、窒素流(1500l/時間)下、210℃において20時間にわたり、10kgのこれらの顆粒に対して固体状態縮合後ステップを実行した。固体状態縮合後の樹脂は、103.4ml・g-1の還元溶液粘度を有する。
【0124】
次いで、そのようにして得られたポリエステル顆粒は、熱可塑性繊維を得るように形成され得る。
【0125】
2)形成
300ppm未満、特に105ppm未満の顆粒の残留湿分含有量を達成するため、重合ステップ1)で得られたポリエステルP1の顆粒を窒素下140℃で乾燥させる。
【0126】
次いで、顆粒を、5つの加熱ゾーンを有する押出成形機中に導入する:顆粒導入ゾーンに関して300℃、ゾーン2において295℃、ゾーン3において290℃、ゾーン4において285℃、ゾーン5において280℃、並びに管、材料ドライブポンプ及びゲルを除去するためのフィルター及びスピニングヘッド(溶融材料の流れの循環方向)において278℃。
【0127】
本実施例に使用されるヘッドにより、モノフィラメント及びマルチフィラメントを形成することが可能となる。本実施例によれば、ダイヘッドは、0.5mmの毛細血管直径及び2000m/分のドライブ速度で1ホールあたり1.5g/分の材料のフロー速度を有するように調整されたフロー速度において10個のホールを含む。
【0128】
スピニングヘッドの出口において、集合点で組み立てられて、次いで巻取機によって巻き上げられる種々のフィラメントを25℃の気流によって冷却する。
【0129】
その後、タフタ織りを得るため、これらのリールを織機上に実質的に取り付ける。そのようにして、タフタ織りの織物熱可塑性繊維が得られる。
【0130】
B.熱可塑性マトリックスの調製
1.重合
熱可塑性マトリックスを得るため、ポリエステルP1と同一の手順に従って第2の熱可塑性ポリエステルP2を調製した。この第2のポリエステルP2は、非晶質熱可塑性ポリエステルである。使用される化合物の量を以下の表1に詳細に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
そのようにしてポリエステルP2を用いて得られた樹脂は、54.9ml/gの還元溶液粘度を有する。
【0133】
ポリエステルのH NMR分析によると、最終ポリエステルがジオールに対して44モル%のイソソルビドを含有することが示される。熱的特性に関して、ポリマーは、125℃のガラス転移温度を有する。
【0134】
分析後、ポリエステルP2は、170℃における16時間の熱処理後でもX線回折線の存在によって特徴付けられず、また示差走査熱量測定(DSC)分析において吸熱溶融ピークの存在によって特徴付けられない。したがって、ポリエステルP2は、非晶質である。
【0135】
2.形成
減圧下で4時間にわたり、110℃においてP2顆粒を乾燥させる。キャスト押出成形前の湿分含有量は、287ppmである。キャスト押出成形は、フラットダイを備えたCollin押出成形機を使用して実行される。
【0136】
これらの顆粒は、乾燥雰囲気で保持され、押出成形機のホッパーに直接運ばれる。織物熱可塑性繊維上でのポリマーP2の押出成形のために次の温度を使用する:230℃/225℃/225℃/220℃(4つの加熱ゾーン、ダイ→供給原料)。ねじの回転速度は、80rpmであり、カレンダー機のローラーの温度は、50℃である。
【0137】
得られたシートは、500μmの厚さを有する。
【0138】
C.熱可塑性複合材の形成
調製は、Carverプレス上でのプレスによって実行される。
【0139】
タフタ織りによって織られた熱可塑性繊維の正方形を、プレスのプレート間に整列された2つの押出成形されたシート間に固定する(部品の種類:プレート)。
【0140】
熱可塑性マトリックスによる熱可塑性繊維の良好な含浸を得るため、プレートの温度を160℃に設定し、材料に圧力を加える。織物熱可塑性繊維の重量は、タフタ織りされた熱可塑性繊維及び溶融材料の全重量の50重量%である。2分の接触後、プレートの温度
を50℃まで低下させた。
【0141】
そのようにして、熱可塑性複合材は、繊維及びマトリックスの熱可塑性にもかかわらず、その中で含浸が完全に達成されるプレートの形態で得られる。これは、熱可塑性繊維の半結晶質の外観及び非晶質熱可塑性マトリックスより高いそれらの融点のために特に説明される。そのようにして得られたプレートを加熱し、且つ例えばタブの形態で熱成形することもできる。
【0142】
そのようにして得られたプレートからバーを切断し、機械的特性を測定する。マトリックス単独に関する機械的特性の改良が特に引張特性に関して観察される。
【0143】
熱可塑性複合材のリサイクル
得られた複合材部品を粉砕し、減圧下において110℃で4時間にわたって乾燥させ(320ppmの湿分含有量)、100ppmのジブチルスズオキシドと混合し、次いで280℃の一定温度で押出成形し、その後、冷水浴中で冷却し、顆粒化する。
【0144】
そのようにして得られた顆粒の示差走査熱量測定分析により、253℃への溶融ピークの減少及び約110℃でのガラス転移の出現が示される。したがって、これらの観察は、熱可塑性繊維の融点より高い温度への加熱中の材料中におけるエステル交換反応の発生を証明する。したがって、前記温度におけるリサイクル中、相溶性の相又はさらに完全に均質な相を含む材料が得られる。
【0145】
したがって、本発明による熱可塑性複合材は、そのリサイクルのために繊維をマトリックスから分離することがもはや必要でないという点で特に有利である。単純に、熱可塑性繊維の温度より高い温度まで加熱するステップにより、多数の用途のために次いで再利用可能である熱可塑性材料を得ることが可能となる。