(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ロール型アルカリ金属電池及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20221216BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20221216BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20221216BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221216BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221216BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221216BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221216BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221216BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20221216BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0587
H01M4/13
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/60
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/36 E
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2019560642
(86)(22)【出願日】2018-05-07
(86)【国際出願番号】 US2018031363
(87)【国際公開番号】W WO2018208660
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-02-15
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チュエ
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512638(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/39
H01M 4/00- 4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属がLi、Na、K、又はそれらの組合せから選択され;前記電池が、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとを電子的に分離するアルカリ金属イオン伝導性セパレータと、前記アノード及び前記カソードにイオン接触するアルカリ金属イオン含有電解質とを含み、前記アノードが、あるアノードロール長、あるアノードロール幅、及びあるアノードロール厚さを有するアノード活性材料の巻回されたロールを含み、及び/又は前記カソードが、あるカソードロール長、あるカソードロール幅、及びあるカソードロール厚さ有するカソード活性材料の巻回されたロールを含み、前記アノードロール幅
及び前記カソードロール幅が、前記セパレータに対して実質的に垂直であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項2】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノードに接続される、若しくは前記アノードと一体となるアノードタブ、及び前記カソードに接続される、若しくは前記カソードと一体となるカソードタブをさらに含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項3】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、封止された電池を形成するために、前記アノード、前記カソード、前記セパレータ、及びそれらの中の前記電解質を封入するケーシングをさらに含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項4】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料の巻回されたロールが、(a)2つの主面を有する支持固体基材の層において、前記主面の一方又は両方のいずれかに前記アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤がコーティングされる、支持固体基材の層、又は(b)前記アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤が含浸される細孔を有する支持多孔質基材の層を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項5】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料の巻回されたロールが、(a)2つの主面を有する支持固体基材の層において、前記主面の一方又は両方のいずれかに前記カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤がコーティングされる、支持固体基材の層、又は(b)前記カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤が含浸される細孔を有する支持多孔質基材の層を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項6】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がリチウム金属電池、ナトリウム金属電池、又はカリウム金属電池であり、前記アノードが、固体若しくは多孔質の支持基材によって支持される、又は固体若しくは多孔質の支持基材の上にコーティングされるLi、Na、又はK金属の箔又はコーティングを含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項7】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がリチウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が:
(a)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ニードルコークス、炭素粒子、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノファイバの粒子;
(b)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd);
(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと別の元素との合金又は金属間化合物において、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物;
(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物;
(e)それらのプレリチウム化されたバージョン;
(f)プレリチウム化グラフェンシート;並びに
それらの組合せ、
からなる群から選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項8】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がナトリウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタネート、NaTi
2(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Na
2C
8H
4O
4、Na
2TP、Na
xTiO
2(x=0.2~1.0)、Na
2C
8H
4O
4、カルボキシレート系材料、C
8H
4Na
2O
4、C
8H
6O
4、C
8H
5NaO
4、C
8Na
2F
4O
4,C
10H
2Na
4O
8、C
14H
4O
6、C
14H
4Na
4O
8、又はそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有することを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項9】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がナトリウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が:
(a)ナトリウム又はカリウムがドープされたケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物;
(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム又はカリウムを含有する合金又は金属間化合物;
(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、並びにそれらの混合物又は複合物のナトリウム又はカリウムを含有する酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物;
(d)ナトリウム塩又はカリウム塩;並びに
(e)ナトリウム又はカリウムがあらかじめ充填されたグラフェンシート、
の材料の群から選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有することを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項10】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされたバナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸リチウム混合金属、金属硫化物、金属フッ化物、金属塩化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収性化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項11】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、NaFePO
4、Na
(1-x)K
xPO
4、KFePO
4、Na
0.7FePO
4、Na
1.5VOPO
4F
0.5、Na
3V
2(PO
4)
3、Na
3V
2(PO
4)
2F
3、Na
2FePO
4F、NaFeF
3、NaVPO
4F、KVPO
4F、Na
3V
2(PO
4)
2F
3、Na
1.5VOPO
4F
0.5、Na
3V
2(PO
4)
3、NaV
6O
15、Na
xVO
2、Na
0.33V
2O
5、Na
xCoO
2、Na
2/3[Ni
1/3Mn
2/3]O
2、Na
x(Fe
1/2Mn
1/2)O
2、Na
xMnO
2、λ-MnO
2、Na
xK
(1-x)MnO
2、Na
0.44MnO
2、Na
0.
44MnO
2/C、Na
4Mn
9O
18、NaFe
2Mn(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2、Cu
0.56Ni
0.
44HCF、NiHCF、Na
xMnO
2、NaCrO
2、KCrO
2、Na
3Ti
2(PO
4)
3、NiCo
2O
4、Ni
3S
2/FeS
2、Sb
2O
4、Na
4Fe(CN)
6/C、NaV
1-xCr
xPO
4F、Se
zS
y(y/z=0.01~100)、Se、ナトリウムポリスルフィド、硫黄、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物又はカリウムインターカレーション化合物を含有し、xが0.1~1.0であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項12】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記電解質が、液体溶媒及び/又はポリマー中に溶解したリチウム塩又はナトリウム塩を含み、前記液体溶媒が、水、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項13】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料のロールが500μm以上の幅を有し、前記アノード活性材料が、25mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも25重量%又は体積%を占め、及び/又は前記カソード中で前記カソード活性材料が、有機又はポリマー材料の場合に20mg/cm
2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に40mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも40重量%又は体積%を占めることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項14】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料のロールが1000μm以上すなわち1mm以上の幅を有し、及び/又は前記アノード活性材料が、30mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも30重量%又は体積%を占め、及び/又は前記カソード中で前記カソード活性材料が、有機又はポリマー材料の場合に25mg/cm
2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に50mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも50重量%又は体積%を占めることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項15】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料のロールが5mm以上の幅を有し、及び/又は前記アノード活性材料が、35mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも35重量%又は体積%を占め、及び/又は前記カソード中で前記カソード活性材料が、有機又はポリマー材料の場合に30mg/cm
2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に55mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも55重量%又は体積%を占めることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項16】
請求項4に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記支持多孔質基材の層が、金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択される導電性多孔質層を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項17】
請求項5に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記支持多孔質基材の層が、金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択される導電性多孔質層を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項18】
請求項7に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記プレリチウム化グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的若しくは化学的に活性化若しくはエッチングされたバージョン、又はそれらの組合せのプレリチウム化されたバージョンから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項19】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、無機材料、有機若しくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物又はアルカリ金属吸収性化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項20】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、遷移金属フッ化物、遷移金属塩化物、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項21】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項22】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記無機材料が、TiS
2、TaS
2、MoS
2、NbSe
3、MnO
2、CoO
2、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項23】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、VO
2、Li
xVO
2、V
2O
5、Li
xV
2O
5、V
3O
8、Li
xV
3O
8、Li
xV
3O
7、V
4O
9、Li
xV
4O
9、V
6O
13、Li
xV
6O
13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択された酸化バナジウムを含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項24】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、層状化合物LiMO
2、スピネル化合物LiM
2O
4、オリビン化合物LiMPO
4、ケイ酸塩化合物Li
2MSiO
4、タボライト化合物LiMPO
4F、ホウ酸塩化合物LiMBO
3、又はそれらの組合せから選択され、ここで、Mは、遷移金属、又は複数の遷移金属の混合物であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項25】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記無機材料が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド又はトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、又は遷移金属の硫化物、セレン化物、又はテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項26】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記有機材料又はポリマー材料が、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシ(dyhydroxy)アントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS
2)
3]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(hexaazatrinaphtylene)(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)
6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi
4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシ(dyhydroxy)アントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシ(dyhydroxy)アントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li
4C
6O
6、Li
2C
6O
6、Li
6C
6O
6、又はこれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項27】
請求項26に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項28】
請求項19に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項29】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、100nm未満の厚さ又は直径を有するナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態のニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物又はアルカリ金属吸収性化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項30】
内部で直列に接続される複数の請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池を含むことを特徴とする電池。
【請求項31】
内部で並列に接続される複数の請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池を含むことを特徴とする電池。
【請求項32】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:
(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤をコーティングした、又は含浸させた固体若しくは多孔質の支持基材の層を巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;
(b)カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤をコーティングした、又は含浸させた固体若しくは多孔質の支持基材の層を巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;
(c)前記アノードロール幅及び/又は前記カソードロール幅の方向が、セパレータの面に対して実質的に垂直となるように、前記アノードロール、前記カソードロール、及び前記アノードロールと前記カソードロールとの間のアルカリ金属イオン伝導性セパレータ層を配列しパッキングして電池アセンブリを形成するステップと;
(d)前記ロール型アルカリ金属電池を形成するために、前記電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、前記電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項33】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤を含むアノードを作製するステップと;(b)カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤をコーティングした、又は含浸させた固体若しくは多孔質の支持基材の層を巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)前記カソードロール幅の方向が、セパレータの面に対して実質的に垂直となるように、前記アノード、前記カソードロール、及び前記アノードと前記カソードロールとの間のアルカリ金属イオン伝導性セパレータ層を配列しパッキングして電池アセンブリを形成するステップと;(d)前記ロール型アルカリ金属電池を形成するために、前記電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、前記電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項34】
請求項1に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び第1の電解質を含浸させた多孔質支持基材の層を巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;b)カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び第2の電解質を含浸させた多孔質支持基材の層を巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)前記アノードロール幅及び/又はカソードロール幅の方向が、セパレータの面に対して実質的に垂直となるように、前記アノードロール、前記カソードロール、及び前記アノードロールと前記カソードロールとの間のアルカリ金属イオン伝導性セパレータをともに配列して、電池アセンブリを形成するステップと;(d)前記ロール型電池を形成するために、前記電池アセンブリを保護ケーシング中に封入するステップと、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項35】
ロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属がLi、Na、K、又はそれらの組合せから選択され;前記電池が、アノード活性材料を有するアノード、カソード、及びセパレータ-電解質層を含み、前記アノード及び前記カソードにイオン接触する第1の電解質単独、又は第1の電解質-多孔質セパレータアセンブリを含み、前記カソードが、(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散した前記カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、場合により、(iii)第2の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたカソードロールを含み、前記積層されて巻回されたカソードロールが、あるカソードロール長、あるカソードロール幅、及びあるカソードロール厚さを有し、前記カソードロール幅が、前記セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直であり、前記第1の電解質、前記液体若しくはゲルの電解質、及び前記任意選択の第2の電解質の組成が同一又は異な
り、
前記アノードが、(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散した前記アノード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、場合により、(iii)第3の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたアノードロールを含み、前記積層されて巻回されたアノードロールが、あるアノードロール長、あるアノードロール幅、及びあるアノードロール厚さを有し、前記アノードロール幅が、前記セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直であり、前記第1の電解質、前記液体若しくはゲルの電解質、及び前記第3の電解質の組成が同一又は異なることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項36】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノードに接続される、若しくは前記アノードと一体となるアノード集電体及び/又はアノードタブ、及び前記カソードに接続される、若しくは前記カソードと一体となるカソード集電体及び/又はカソードタブをさらに含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項37】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、封止された電池を形成するために、前記アノード、前記カソード、前記セパレータ、及びそれらの中の前記電解質を封入するケーシングをさらに含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項38】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がリチウム金属電池、ナトリウム金属電池、又はカリウム金属電池であり、前記アノードが、固体若しくは多孔質の支持基材によって支持された、固体若しくは多孔質の支持基材の上にコーティングされたLi、Na、又はK金属の箔又はコーティングを含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項39】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がリチウム金属電池、ナトリウム金属電池、又はカリウム金属電池であり、前記アノードが、場合によりアノード集電体に接続されたLi、Na、又はK金属の箔を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項40】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がリチウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が:
(g)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ニードルコークス、炭素粒子、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノファイバの粒子;
(h)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd);
(i)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと別の元素との合金又は金属間化合物において、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物;
(j)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物;
(k)それらのプレリチウム化されたバージョン;
(l)プレリチウム化グラフェンシート;並びに
それらの組合せ、
からなる群から選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項41】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がナトリウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタネート、NaTi
2(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Na
2C
8H
4O
4、Na
2TP、NaxTiO
2(x=0.2~1.0)、Na
2C
8H
4O
4、カルボキシレート系材料、C
8H
4Na
2O
4、C
8H
6O
4、C
8H
5NaO
4、C
8Na
2F
4O
4、C
10H
2Na
4O
8、C
14H
4O
6、C
14H
4Na
4O
8、又はそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項42】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アルカリ金属電池がナトリウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が:
(f)ナトリウム又はカリウムがドープされたケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物;
(g)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム又はカリウムを含有する合金又は金属間化合物;
(h)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、並びにそれらの混合物又は複合物のナトリウム又はカリウムを含有する酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物;
(i)ナトリウム塩又はカリウム塩;並びに
(j)ナトリウム又はカリウムがあらかじめ充填されたグラフェンシート、
の材料の群から選択されるアルカリインターカレーション化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項43】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされたバナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、金属硫化物、金属フッ化物、金属塩化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収性化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項44】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、NaFePO
4、Na
(1-x)K
xPO
4、KFePO
4、Na
0.7FePO
4、Na
1.5VOPO
4F
0.5、Na
3V
2(PO
4)
3、Na
3V
2(PO
4)
2F
3、Na
2FePO
4F、NaFeF
3、NaVPO
4F、KVPO
4F、Na
3V
2(PO
4)
2F
3、Na
1.5VOPO
4F
0.5、Na
3V
2(PO
4)
3、NaV
6O
15、Na
xVO
2、Na
0.33V
2O
5、Na
xCoO
2、Na
2/3[Ni
1/3Mn
2/3]O
2、Na
x(Fe
1/2Mn
1/2)O
2、Na
xMnO
2、λ-MnO
2、Na
xK
(1-x)MnO
2、Na
0.44MnO
2、Na
0.
44MnO
2/C、Na
4Mn
9O
18、NaFe
2Mn(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2、Cu
0.56Ni
0.
44HCF、NiHCF、Na
xMnO
2、NaCrO
2、KCrO
2、Na
3Ti
2(PO
4)
3、NiCo
2O
4、Ni
3S
2/FeS
2、Sb
2O
4、Na
4Fe(CN)
6/C、NaV
1-xCr
xPO
4F、Se
zS
y(y/z=0.01~100)、Se、ナトリウムポリスルフィド、硫黄、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物又はカリウムインターカレーション化合物を含み、xは0.1~1.0であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項45】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記第1、第2、又は第3の電解質が、液体溶媒及び/又はポリマー中に溶解したリチウム塩又はナトリウム塩を含み、前記液体溶媒が、水、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項46】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記第1、第2、又は第3の電解質が、10
-8S/cm~10
-2S/cmのリチウムイオン又はナトリウムイオンの伝導率を有する固体電解質又は擬固体電解質を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項47】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料の巻回されたロールが500μm以上の幅を有し、前記アノード活性材料が、25mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも25重量%又は体積%を占め、及び/又は前記カソード中で前記カソード活性材料が、有機又はポリマー材料の場合に20mg/cm
2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に40mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも40重量%又は体積%を占めることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項48】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料の巻回されたロールが1000μm以上すなわち1mm以上の幅を有し、前記アノード活性材料が、30mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも30重量%又は体積%を占め、及び/又は前記カソード中で前記カソード活性材料が、有機又はポリマー材料の場合に25mg/cm
2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に50mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも50重量%又は体積%を占めることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項49】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード活性材料の巻回されたロールが5mm以上の幅を有し、前記アノード活性材料が、35mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも35重量%又は体積%を占め、及び/又は前記カソード中で前記カソード活性材料が、有機又はポリマー材料の場合に30mg/cm
2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に55mg/cm
2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも55重量%又は体積%を占めることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項50】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード中の伝導性材料の前記離散層が、固体金属箔を含む、又は、金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択される導電性多孔質層を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項51】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記アノード中の伝導性材料の前記離散層が、固体金属箔を含む、又は、金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択される導電性多孔質層を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項52】
請求項40に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記プレリチウム化グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的若しくは化学的に活性化若しくはエッチングされたバージョン、又はそれらの組合せのプレリチウム化されたバージョンから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項53】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、無機材料、有機若しくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物又はアルカリ金属吸収性化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項54】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、遷移金属フッ化物、遷移金属塩化物、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項55】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、リチウムポリスルフィド、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項56】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記無機材料が、TiS
2、TaS
2、MoS
2、NbSe
3、MnO
2、CoO
2、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項57】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、VO
2、Li
xVO
2、V
2O
5、Li
xV
2O
5、V
3O
8、Li
xV
3O
8、Li
xV
3O
7、V
4O
9、Li
xV
4O
9、V
6O
13、Li
xV
6O
13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含み、0.1<x<5であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項58】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、層状化合物LiMO
2、スピネル化合物LiM
2O
4、オリビン化合物LiMPO
4、ケイ酸塩化合物Li
2MSiO
4、タボライト化合物LiMPO
4F、ホウ酸塩化合物LiMBO
3、又はそれらの組合せから選択され、ここで、Mは、遷移金属、又は複数の遷移金属の混合物であることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項59】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記無機材料が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド又はトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、又は遷移金属の硫化物、セレン化物、又はテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項60】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記有機材料又はポリマー材料が、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシ(dyhydroxy)アントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS
2)
3]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(hexaazatrinaphtylene)(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)
6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi
4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシ(dyhydroxy)アントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシ(dyhydroxy)アントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li
4C
6O
6、Li
2C
6O
6、Li
6C
6O
6、又はこれらの組合せから選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項61】
請求項60に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項62】
請求項53に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項63】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池において、前記カソード活性材料が、100nm未満の厚さ又は直径を有するナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態のニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物又はアルカリ金属吸収性化合物を含むことを特徴とするロール型アルカリ金属電池。
【請求項64】
内部で直列に接続される複数の請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池を含むことを特徴とする電池。
【請求項65】
内部で並列に接続される複数の請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池を含むことを特徴とする電池。
【請求項66】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:
a)(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散した前記アノード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、第1又は第2の電解質と組成が同一又は異なる第2の電解質の少なくとも1つの層とをともに積層し、巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;
b)(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散した前記カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、前記第1及び第3の電解質と組成が同一又は異なる第2の電解質の少なくとも1つの層とをともに積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;
c)前記アノードロール幅及び/又は前記カソードロール幅の方向が、セパレータ/電解質の層に対して実質的に垂直となるように、前記アノードロール、前記カソードロール、及び前記アノードロールと前記カソードロールとの間に配置されたセパレータ-電解質の層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;
d)場合により、前記ロール型アルカリ金属電池を形成するために、前記電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、前記電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項67】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:
A)前記アノード活性材料の少なくとも1つの離散層と、伝導性材料の少なくとも1つの離散層とを積層し、巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;
B)前記カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、伝導性材料の少なくとも1つの離散層とを積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;
C)前記アノードロール幅及び/又は前記カソードロール幅の方向が、セパレータ/電解質の層に対して実質的に垂直となるように、前記アノードロール、前記カソードロール、及び多孔質セパレータ若しくは固体電解質層を含み前記アノードロールと前記カソードロールとの間に配置されるセパレータ-電解質の層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;
D)場合により、前記ロール型アルカリ金属電池を形成するために、前記電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、前記電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項68】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤を含むアノードを作製するステップと;(b)前記カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、前記第1及び第3の電解質と組成が同一又は異なる前記第2の電解質の少なくとも1つの層とを積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)前記カソードロール幅の方向が前記セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直となるように、前記アノード、前記カソードロール、及び前記アノードと前記カソードロールとの間の前記セパレータ-電解質層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;(d)前記ロール型アルカリ金属電池を形成するために、前記電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、前記電池アセンブリ中に前記第1の電解質を含浸させるステップとを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項69】
請求項35に記載のロール型アルカリ金属電池の製造方法において:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤を含むアノードを作製するステップと;(b)前記カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層と、伝導性材料の少なくとも1つの離散層とを積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)前記カソードロール幅の方向が前記セパレータの面に対して実質的に垂直となるように、前記アノード、前記カソードロール、及び前記アノードと前記カソードロールとの間の前記セパレータ-電解質層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;(d)前記ロール型アルカリ金属電池を形成するために、前記電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、前記電池アセンブリ中に前記第1の電解質を含浸させるステップとを含むことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される2017年5月8日に出願された米国特許出願第15/589,629号明細書、及び2017年11月20日に出願された米国特許出願第15/817,942号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高エネルギー密度及び高電力密度を送給する新規構造及び形状を有する一次(再充電できない)及び二次(再充電可能)アルカリ金属電池及びアルカリイオン電池などのリチウム電池、ナトリウム電池、及びカリウム電池の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に見ると、今日最も好まれている充電式エネルギー貯蔵デバイス、すなわちリチウムイオン電池は、実際には、リチウム(Li)金属又はLi合金をアノードとして使用し、Liインターカレーション化合物をカソードとして使用する充電式「リチウム金属電池」から進化した。Li金属は、その軽量(最も軽い金属)、高い電気陰性度(標準水素電極に対して-3.04V)、及び高い理論的容量(3,860mAh/g)により、理想的なアノード材料である。これらの顕著な特性に基づいて、リチウム金属電池は、40年前に、高エネルギー密度用途に理想的なシステムとして提案された。1980年代半ば、充電式Li金属電池の幾つかのプロトタイプが開発された。注目すべき一例は、MOLI Energy,Inc.(カナダ)によって開発された、Li金属アノードと硫化モリブデンカソードとから構成された電池であった。この電池、及び様々な製造業者からの幾つかの他の電池は、後続の各再充電サイクル中に金属が再びめっきされるので、非常に不均一なLi成長(Liデンドライトの形成)によって一連の安全性の問題が引き起こされるため見限られた。サイクル数が増加するにつれて、これらのデンドライト又は樹枝状のLi構造は、最終的にセパレータを横切ってカソードに到達し、内部短絡を引き起こす可能性がある。
【0004】
これらの安全性の問題を克服するために、電解質又はアノードのいずれかを改良した幾つかの代替手法が提案された。1つの手法は、アノードとして黒鉛(別のLi挿入材料)によってLi金属を置換することを含む。そのような電池の動作は、2つのLi挿入化合物の間でLiイオンを往復させることを含み、したがって「Liイオン電池」という名称である。おそらく、金属状態ではなくイオン状態でLiが存在するので、Liイオン電池は、本来的にLi金属電池よりも安全である。
【0005】
リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー貯蔵、及びスマートグリッド用途のための第一候補のエネルギー貯蔵デバイスである。過去20年間で、リチウムイオン電池ではエネルギー密度、レート特性、及び安全性の面での継続的な改良が見られたが、どういうわけか、かなり高いエネルギー密度を有するLi金属電池にはほとんど目が向けられていなかった。しかし、Liイオン電池における黒鉛ベースのアノードの使用は、以下のような幾つかの大きな欠点を有する。低い比容量(Li金属に関する3,860mAh/gとは対照的に372mAh/gの理論的な容量);長い再充電時間(例えば、電気自動車の電池では7時間)を必要とする長いLiインターカレーション時間(例えば、黒鉛及び無機酸化物粒子の内外へのLiの低い固体拡散効率);高いパルス出力(電力密度<<1kW/kg)を送給することができないこと;及び、プレリチウム化されたカソード(例えば、コバルト酸リチウム)を使用する必要があり、それにより利用可能なカソード材料の選択が制限されること。さらに、これらの一般的に使用されるカソードは、比較的低い比容量(典型的には<200mAh/g)を有する。これらの因子は、今日のLiイオン電池の2つの主要な欠点、すなわち、低い重量及び体積エネルギー密度(典型的には150~220Wh/kg及び450~600Wh/L)、及び低い電力密度(典型的には<0.5kW/kg及び<1.0kW/L)の原因となっている(上記値は全て、総電池セル重量又は体積に基づく)。
【0006】
新興のEV及び再生可能エネルギー業界では、現在のLiイオン電池技術が提供できるものに比べてかなり高い重量エネルギー密度(例えば、>>250Wh/kg、及び好ましくは>>300Wh/kgを要求する)及び高い電力密度(より短い再充電時間)を有する充電式電池の利用可能性が要求される。さらに、マイクロエレクトロニクス業界では、より多くのエネルギーを貯蔵するより小さい体積のよりコンパクトなポータブルデバイス(例えば、スマートフォン及びタブレット)を消費者が求めているので、かなり大きな体積エネルギー密度(>650Wh/L、好ましくは>750Wh/L)を有する電池が必要とされている。これらの要件のために、より高い比容量、優れたレート特性、及び良好なサイクル安定性を有するリチウムイオン電池用の電極材料の開発に向けた多大な研究努力が成されている。
【0007】
周期表の第III族、第IV族、及び第V族からの幾つかの元素は、特定の所望の電圧でLiと共に合金を形成することができる。したがって、リチウムイオン電池には、そのような元素に基づく様々なアノード材料及び幾つかの金属酸化物が提案されている。それらの中で、シリコンは、高エネルギーリチウムイオン電池のための次世代アノード材料の1つと認識されている。なぜなら、シリコンは、黒鉛に比べて理論的な重量容量が約10倍であり(LiC6に関する372mAh/gに対して、Li3.75Siに基づくと3,590mAh/g)、体積容量が約3倍であるからである。しかし、リチウムイオン合金化及び脱合金化(セルの充電及び放電)中のSiの急激な体積変化(最大380%)は、しばしば激しい急速な電池性能劣化を招いた。性能の低下は、主に、Siが体積変化により粉末化すること、及び粉末化されたSi粒子と集電体との電気的接触を粘結剤/導電性添加剤が維持できないことに起因する。さらに、シリコンの固有の低い導電率が、対処する必要がある別の課題である。
【0008】
幾つかの高容量アノード活性材料(例えば、Si)が見付かったが、それに対応する利用できる高容量カソード材料はない。Liイオン電池で一般的に使用されている現在のカソード活性材料には、以下のような重大な欠点がある。
(1)現在のカソード材料(例えば、リン酸鉄リチウム及びリチウム遷移金属酸化物)で実現可能な実用上の容量は、150~250mAh/gの範囲、大抵の場合には200mAh/g未満に制限されている。
(2)これらの一般的に使用されているカソードへのリチウムの挿入及びそこからの取出しは、非常に低い拡散係数(典型的には10-8~10-14cm2/s)を有する固体粒子中での非常に遅いLiの固体拡散に依拠し、これは、非常に低い電力密度(今日のリチウムイオン電池の別の積年の問題)をもたらす。
(3)現在のカソード材料は、電気絶縁性及び断熱性であり、効果的且つ効率的に電子及び熱を輸送することができない。低い導電率は、高い内部抵抗、及び大量の導電性添加剤を加える必要性を意味し、既に容量が低いカソード内の電気化学的活性材料の割合を実質的に減少させる。また、低い熱伝導率は、熱暴走を受ける傾向がより高いことを意味し、これは、リチウム電池業界における主要な安全性の問題である。
【0009】
ナトリウムは豊富に存在し、ナトリウムの製造はリチウムの製造よりもはるかに環境に優しいので、完全に別個の種類のエネルギー貯蔵デバイスとして、ナトリウム電池はリチウム電池に対する魅力的な代替品と見なされている。さらに、リチウムが高コストであることは主要な問題となっており、Na電池は、場合によっては、はるかに低コストとなりうる。
【0010】
アノード活性材料としてNa金属又は合金を有するナトリウム金属電池と、アノード活性材料としてNaインターカレーション化合物を有するナトリウムイオン電池との、アノードとカソードとの間でナトリウムイオン(Na+)を往復させる少なくとも2種類の電池が存在する。ハードカーボン系アノード活性材料(Naインターカレーション化合物)と、カソードとしてのナトリウム遷移金属リン酸塩とを使用するナトリウムイオン電池は、幾つかの研究グループによって記載されており、例えばJ.Barker,et al.“Sodium Ion Batteries”、米国特許第7,759,008号明細書(2010年7月20日)に記載されている。
【0011】
しかしながら、これらのナトリウム系デバイスは、Liイオン電池よりもさらに低い比エネルギー及びレート特性を示す。Naインターカレーションのためのアノード活性材料及びNaインターカレーションのためのカソード活性材料は、それらのLi貯蔵容量よりも低いNa貯蔵容量を有する。例えば、ハードカーボン粒子は、最大300~360mAh/gのLiイオンを貯蔵可能であるが、同じ材料は最大150~250mAh/gのNaイオンを貯蔵することができ、Kイオンの貯蔵の場合100mAh/g未満となりうる。
【0012】
ハードカーボン又は別の炭質インターカレーション化合物の代わりに、ナトリウム金属をナトリウム金属セル中のアノード活性材料として使用することができる。しかしながら、アノード活性材料としての金属ナトリウムの使用は、デンドライト形成、界面のエージング、及び電解質の不適合性の問題のために、望ましくなく危険であると通常は考えられている。
【0013】
低容量のアノード又はカソード活性材料は、アルカリ金属イオン電池業界が直面している唯一の問題ではない。リチウムイオン電池業界が認識していないと思われる、又はほとんど無視している重大な設計上及び製造上の問題がある。例えば、公開されている文献及び特許文献で頻繁に主張されているように(アノード又はカソード活性材料の重量のみに基づく)電極レベルでの重量容量が高いにもかかわらず、これらの電極は、残念ながら、(総電池セル重量又はパック重量に基づく)電池セル又はパックレベルでの高い容量を電池に提供することができない。これは、これらの報告では電極の実際の活性材料質量負荷が低すぎるという見解によるものである。ほとんどの場合、アノードの活性材料質量負荷(面密度)は、15mg/cm2よりもかなり低く、大抵は<8mg/cm2である(面密度=電極の厚さ方向に沿った電極断面積あたりの活性材料の量)。カソード活性材料の量は、典型的にはアノード活性材料の1.5~2.5倍である。その結果、リチウムイオン電池におけるアノード活性材料(例えば、黒鉛又は炭素)の重量比は、典型的には12%~17%であり、カソード活性材料(例えば、LiMn2O4)の重量比は、17%~35%(大抵は<30%)である。カソード活性材料及びアノード活性材料の複合の重量分率は、典型的には、セル重量の30%~45%である。
【0014】
低い活性材料質量負荷は、主として、従来のスラリコーティング手順を使用して比較的厚い電極(100~200μmよりも厚い)を得ることができないことが原因である。これは、思うほど簡単な作業ではなく、現実には、電極の厚さは、セル性能を最適化するために任意に且つ自由に変えることができる設計パラメータではない。逆に、より厚い電極では、100μmの電極厚さの場合100メートルを超えうる過度に長いオーブン乾燥区域が必要となる。さらに低い面密度及び低い体積密度(薄い電極及び低い充填密度に関連する)により、電池セルの体積容量は比較的低く、体積エネルギー密度は低い。ナトリウムイオン電池及びカリウムイオン電池は同様の問題を有する。
【0015】
よりコンパクトでポータブルなエネルギー貯蔵システムに対する需要の高まりと共に、電池の体積の利用率を高めることに強い関心が持たれている。アルカリ金属電池のセルの体積容量及びエネルギー密度の改良を実現するために、高い体積容量及び高い質量負荷を可能にする新規の電極材料及び設計が不可欠である。
【0016】
したがって、電子及びイオン輸送速度を大幅に低下させることのない(例えば、高い電子輸送抵抗又は長いリチウムイオン又はナトリウムイオン拡散経路のない)高い電極体積、高い体積容量、及び高い体積エネルギー密度を有する、高い活性材料質量負荷(高い面密度)の活性材料を有するアルカリ金属電池の必要性は明白であり、急を要する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、アルカリ金属がLi、Na、K、又はそれらの組合せから選択されるロール型アルカリ金属電池を提供する。特に、電池は、リチウム電池、ナトリウム電池、又はカリウム電池であってよい。電池はあらゆる形状であってよいが、好ましくは円筒形、長方形、又は立方形である。
【0018】
この電池は、(a)アノードと、(b)カソードと、(c)アノードとカソードとを電子的に分離するアルカリ金属イオン伝導性セパレータと、(d)アノード及びカソードにイオン接触するアルカリ金属イオン含有電解質とを含むことができ、アノードが、あるアノードロール長、あるアノードロール幅、及びあるアノードロール厚さを有するアノード活性材料のロール(例えば単純に巻回された、又はスパイラル状に巻回されたロール)を含み、及び/又はカソードが、あるカソードロール長、あるカソードロール幅、及びあるカソードロール厚さを有するカソード活性材料のロールを含み、アノードロール幅及び/又はカソードロール幅は、セパレータに対して実質的に垂直である。この電池はあらゆる形状であってよいが、好ましくは円筒形、長方形、又は立方形である。
【0019】
幾つかの実施形態では、電池は、(a)アノード活性材料を有するアノードと、(b)カソード活性材料を含むカソードと、(c)アノード及びカソードにイオン接触する、第1の電解質単独又は第1の電解質-多孔質セパレータアセンブリ層(例えば、液体若しくはゲルの電解質でぬれた多孔質膜、又は追加のポリマー膜を有さない固体電解質単独)を含むセパレータ-電解質層とを含み、カソードは、(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散したカソード活性材料及び任意選択の粘結剤(樹脂)の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、第2の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたカソードロールを含み、積層されて巻回されたカソードロールは、あるカソードロール長、あるカソードロール幅、及びあるカソードロール厚さを有し、カソードロール幅はセパレータ-電解質層に対して実質的に垂直であり、第1の電解質、液体若しくはゲルの電解質、及び第2の電解質は、組成が同一であるか、又は組成が異なる。
【0020】
本発明によるロール型アルカリ金属電池セルは、一形態では、多孔質若しくはイオン伝導性のセパレータ又は固体電解質で分離された少なくとも2つのロールを含み:一方のロールは、アノード活性材料のみ(カソード活性材料なし)と、電解質及び任意選択の粘結剤樹脂とを含むアノードロールであり、他方のロールは、カソード活性材料のみ(アノード活性材料なし)と、電解質及び任意選択の粘結剤樹脂とを含むカソードロールである。典型的には、アノードロールの1つの末端(エッジ)面が存在する場合、これは、(例えば
図1(D)中に示されるように)セパレータ層に物理的に密接に接触する。また、カソードロールの1つの末端(エッジ)面は、セパレータ層に物理的に密接に接触する。対照的に、従来の円筒形電池(例えば18650型又は21700型)は、典型的には、積層され、次に互いに巻かれ、又は巻回されて1つのロールとなる、(セパレータ層を挟んで)アノード層及びカソード層の両方を含むただ1つの単純に巻回されたロールを含む。
図1(C)中に示されるように、カソード層及びアノード層の両方の面はセパレータ層の面に対して実質的に平行である。カソード活性材料及びアノード活性材料は、従来の(従来技術の)円筒形セル中の同じロールの内部に共存する。
【0021】
本発明によるロール型アルカリ金属電池は、好ましくは、アノードに接続される、若しくはアノードと一体となるアノード集電体及び/又はタブ、及びカソードに接続される、若しくはカソードと一体となるカソード集電体及び/又はタブをさらに含む。これらのタブは、このロール型電池によって電力供給される外部装置に電気的に接続するための端子である。好ましい一実施形態では、アノードは、ロール形状(例えば単純に巻回された、又はスパイラル状に巻回されたロール)も含む。この場合、アノードは、(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散したアノード活性材料及び任意選択の粘結剤樹脂の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、第3の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたアノードロールを含み、この積層されて巻回されたアノードロールは、あるアノードロール長、あるアノードロール幅、及びあるアノードロール厚さを有し、上記アノードロール幅は、セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直である。第1の電解質、液体若しくはゲルの電解質、及び第3の電解質は、組成が同一の場合も異なる場合もある。
【0022】
本発明によるロール型アルカリ金属電池は、好ましくは、アノードに接続される、若しくはアノードと一体となるアノードタブ、及びカソードに接続される、若しくはカソードと一体となるカソードタブをさらに含む。これらのタブは、このロール型電池によって電力供給される外部装置に電気的に接続するための端子である。
【0023】
ロール型アルカリ金属電池は、好ましくは、そして典型的には、封止された電池を形成するために、アノード、カソード、セパレータ、及びそれらの中の電解質を封入又は収容するパッケージケーシング又はハウジングをさらに含む。
【0024】
ロール型アルカリ金属電池では、アノード活性材料の巻回されたロールは、(a)2つの主面を有し、主面の一方又は両方のいずれかに、アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤がコーティングされる支持固体基材の層、又は(b)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤が含浸される細孔を有する支持多孔質基材の層を含むことができる。この支持固体基材又は多孔質基材は、アノード集電体として機能することができる。
【0025】
好ましい一実施形態では、アノードは、ロール形状(例えば単純に巻回された、又はスパイラル状に巻回されたロール)も含む。この場合、アノードは、(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散したアノード活性材料及び任意選択の粘結剤樹脂の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、第3の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたアノードロールを含み、積層されて巻回されたアノードロールは、あるアノードロール長、あるアノードロール幅、及びあるアノードロール厚さを有し、上記アノードロール幅は、セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直である。第1の電解質、液体若しくはゲルの電解質、及び第3の電解質は、組成が同一の場合も異なる場合もある。
【0026】
本発明によるロール型アルカリ金属電池セルは、一形態では、多孔質若しくはイオン伝導性のセパレータ又は固体電解質によって分離された少なくとも2つのロールを含み:一方のロールは、アノード活性材料のみ(カソード活性材料なし)と、電解質及び任意選択の粘結剤樹脂とを含むアノードロールであり、他方のロールは、カソード活性材料のみ(アノード活性材料なし)と、電解質及び任意選択の粘結剤樹脂とを含むカソードロールである。典型的には、アノードロールの1つの末端(エッジ)面が存在する場合、これは、(例えば
図1(D)中に示されるように)セパレータ層に物理的に密接に接触する。また、カソードロールの1つの末端(エッジ)面は、セパレータ層に物理的に密接に接触する。対照的に、従来の円筒形電池(例えば18650型又は21700型)は、典型的には、積層され、次に互いに巻かれて、又は巻回されて1つのロールとなる、(セパレータ層を挟んで)アノード層及びカソード層の両方を含むただ1つの単純に巻回されたロールを含む。
図1(C)中に示されるように、カソード層及びアノード層の両方の面はセパレータ層の面に対して実質的に平行である。カソード活性材料及びアノード活性材料は、従来の(従来技術の)円筒形セル中の同じロールの内部に共存する。
【0027】
本発明によるロール型アルカリ金属電池は、好ましくは、アノードに接続される、若しくはアノードと一体となるアノード集電体及び/又はタブ、及びカソードに接続される、若しくはカソードと一体となるカソード集電体及び/又はタブをさらに含む。これらのタブは、このロール型電池によって電力供給される外部装置に電気的に接続するための端子である。
【0028】
ロール型アルカリ金属電池は、好ましくは、そして典型的には、封止された電池を形成するために、アノード、カソード、セパレータ、及びそれらの中の電解質を封入又は収容するパッケージケーシング又はハウジングをさらに含む。
【0029】
ある実施形態では、アノードは、巻回されたロールではない。これらの場合、アルカリ金属電池はリチウム金属電池、ナトリウム金属電池、又はカリウム金属電池であり、アノードは、アノード集電体に場合により接続されたLi、Na、又はK金属の箔を含む。好ましくは、アノードは、(例えば集電体としての)固体若しくは多孔質の支持基材によって支持される又はそれらの上にコーティングされるLi、Na、又はK金属の箔又はコーティングを含む。これらに状況では、アノードはロール形状であってよいが、ロール形状である必要はない。アノードがロール形状ではない場合は、カソードがロール形状である必要がある。
【0030】
ある実施形態では、第1、第2、又は第3の電解質は、液体溶媒及び/又はポリマー中に溶解したリチウム塩又はナトリウム塩を含み、液体溶媒は、水、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物である。
【0031】
ある実施形態では、第1、第2、又は第3の電解質は、リチウムイオン又はナトリウムイオンの伝導率が10-8S/cm~10-2S/cm、好ましくは10-5S/cmを超え、より好ましくは10-3S/cmを超える固体電解質又は擬固体電解質を含む。
【0032】
アルカリ金属電池がリチウムイオン電池である幾つかの実施形態では、アノード活性材料は:(a)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素(例えばソフトカーボン又はハードカーボン)、ニードルコークス、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノファイバの粒子;(b)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd);(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと別の元素との合金又は金属間化合物において、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物;(e)それらのプレリチウム化されたバージョン;並びに(f)プレリチウム化グラフェンシート;並びにそれらの組合せからなる群から選択することができる。本発明を実施するのに使用することができるアノード活性材料又はカソード活性材料の種類に制限はない。しかし、好ましくは、アノード活性材料は、電池が充電されるときに、Li/Li+よりも(すなわち、標準電位としてのLi→Li++e-に対して)1.0ボルト未満(好ましくは0.7ボルト未満)だけ上の電気化学ポテンシャルでリチウムイオンを吸収する。Naイオン電池又はKイオン電池のアノード活性材料も同様に選択することができる。
【0033】
好ましい実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、又はそれらの組合せから選択されるグラフェンシートのプレナトリウム化又はプレカリウム化されたバージョンである。上記グラフェン材料の任意の1つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択することができる。グラフェン材料は、アルカリ金属電池のアノード活性材料及びカソード活性材料の両方の良好な導電性添加剤でもある。
【0034】
幾つかの実施形態では、アルカリ金属電池はナトリウムイオン電池であり、アノード活性材料は、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタネート、NaTi2(PO4)3、Na2Ti3O7、Na2C8H4O4、Na2TP、NaxTiO2(x=0.2~1.0)、Na2C8H4O4、カルボキシレート系材料、C8H4Na2O4、C8H6O4、C8H5NaO4、C8Na2F4O4、C10H2Na4O8、C14H4O6、C14H4Na4O8、又はそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有する。
【0035】
幾つかの実施形態では、アルカリ金属電池はナトリウムイオン電池又はカリウムイオン電池であり、アノード活性材料は:(a)ナトリウム又はカリウムがドープされたケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物;(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム又はカリウムを含有する合金又は金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物又は複合物の、ナトリウム又はカリウムを含有する酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物;(d)ナトリウム塩又はカリウム塩;並びに(e)ナトリウムイオン又はカリウムイオンがあらかじめ充填されたグラフェンシート、の材料の群から選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有する。
【0036】
幾つかの実施形態では、カソード活性材料は、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされた酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、金属硫化物、リチウムポリスルフィド、硫黄、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収性化合物を含有する。
【0037】
幾つかの実施形態では、カソード活性材料は、NaFePO4、Na(1-x)KxPO4、KFePO4、Na0.7FePO4、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、Na3V2(PO4)2F3、Na2FePO4F、NaFeF3、NaVPO4F、KVPO4F、Na3V2(PO4)2F3、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、NaV6O15、NaxVO2、Na0.33V2O5、NaxCoO2、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Nax(Fe1/2Mn1/2)O2、NaxMnO2、λ-MnO2、NaxK(1-x)MnO2、Na0.44MnO2、Na0.44MnO2/C、Na4Mn9O18、NaFe2Mn(PO4)3、Na2Ti3O7、Ni1/3Mn1/3Co1/3O2、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaxMnO2、NaCrO2、KCrO2、Na3Ti2(PO4)3、NiCo2O4、Ni3S2/FeS2、Sb2O4、Na4Fe(CN)6/C、NaV1-xCrxPO4F、SezSy(y/z=0.01~100)、Se、ナトリウムポリスルフィド、硫黄、アルオード石、又はそれらの組合せ(式中、xは0.1~1.0である)から選択されるナトリウムインターカレーション化合物又はカリウムインターカレーション化合物を含有する。
【0038】
アノードロール又はカソードロールに対する理論的な制限はない。好ましくは、それぞれのロールは、100μm~100cm、好ましくは500μm~50cm、さらに好ましくは1,000μm(1mm)~10cmのロール幅を有する。これらの所望のロール幅範囲は、出力電流又は充電量の要求に適合するように意図される。従来のリチウムイオン電池中の電極(アノード又はカソード)の典型的な厚さは、プロセス及びリチウムイオン拡散経路の制約のために、<200μm(より典型的には<100μm)であることを強調することは重要である。これらについては、本明細書の後の項でさらに議論される。従来のリチウム電池又はナトリウム電池に課せられるこの電極厚さの制限は、ロール幅(従来の電池の電極厚さに相当する)が、従来の電極厚さよりも数桁大きい数メートルの長さ(そのように希望する場合)になりうる本発明の電池では、もはや問題ではない。
【0039】
アノードロール又はカソードロールのいずれかの支持多孔質基材又は伝導性材料層は、固体の箔(例えば金属箔又は導電性ポリマーフィルム)であってよいし、又は金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択される多孔質層であってよい。
【0040】
電解質は、液体溶媒及び/又はポリマー中に溶解したリチウム塩又はナトリウム塩を含むことができ、液体溶媒は、水、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物であってよい。一般に、アノード中の電解質とカソード中の電解質とは1つの電池内で同一であるが、それらの組成は異なっていてもよい。液体電解質は、水性液体、有機液体、イオン液体(100℃よりも低い、好ましくは室温25℃よりも低い溶融温度を有するイオン性塩)、また1/100~100/1の比率のイオン液体と有機液体との混合物であってよい。有機液体が望ましいが、イオン液体が好ましい。ゲル電解質、擬固体電解質、ポリマー電解質、又は固体電解質を使用することもできる。ポリマー電解質又は固体電解質がアノードロールとカソードロールとの間に使用される場合、多孔質セパレータはもはや不要である。
【0041】
好ましい実施形態では、固化したアノード及び/又はカソード電極は500μm以上のロール幅を有し;アノード活性材料は、25mg/cm2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも25重量%又は体積%を占め;カソード中でカソード活性材料は、(カソード活性材料が有機又はポリマー材料の場合に)20mg/cm2以上、又は(カソード活性材料が無機及び非ポリマー材料の場合に)40mg/cm2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも40重量%又は体積%を占める。
【0042】
別の好ましい実施形態では、固化したアノード及び/又はカソード電極は1000μm以上又は1mmのロール幅を有し;アノード活性材料は、30mg/cm2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも30重量%又は体積%を占め、及び/又はカソード中のカソード活性材料は、有機又はポリマー材料の場合に25mg/cm2以上、又は無機及び非ポリマー材料の場合に50mg/cm2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも50重量%又は体積%を占める。
【0043】
より好ましくは、固化したアノード及び/又はカソード電極は5mm以上のロール幅を有し;及び/又はアノード活性材料は、35mg/cm2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも35重量%又は35体積%を占め、及び/又はカソード活性材料は、カソード内で、有機又はポリマー材料に関しては30mg/cm2以上、若しくは無機及び非ポリマー材料に関しては55mg/cm2以上の質量負荷を有し、及び/又は電池セル全体の少なくとも55重量%又は55体積%を占める。
【0044】
電極のロール幅、アノード活性材料の面積質量負荷又は電池セル全体に対する質量分率、又はカソード活性材料の面積質量負荷又は電池セル全体に対する質量分率に関する前述の要件は、従来のスラリコーティング及び乾燥法を使用する従来のリチウム又はナトリウム電池では可能でなかった。
【0045】
幾つかの実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的若しくは化学的に活性化若しくはエッチングされたバージョン、又はそれらの組合せから選択されるプレリチウム化されたバージョンのグラフェンシートである。意外にも、プレリチウム化がないと、得られるリチウム電池セルは十分なサイクル寿命を示さない(すなわち容量が急速に減衰し得る)。
【0046】
幾つかの実施形態では、このアルカリ金属電池中のカソード活性材料は、無機材料、有機若しくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物又はアルカリ金属吸収性化合物を含有する。例えば、金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸リチウム混合金属、遷移金属硫化物、及びそれらの組合せから選択されることがある。無機材料は、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択される。特に、無機材料は、TiS2、TaS2、MoS2、NbSe3、MnO2、CoO2、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択される。これらについては、後でさらに論じる。
【0047】
幾つかの実施形態では、カソード活性材料は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物を含有する。幾つかの実施形態において、カソード活性材料は、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態での、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物を含む。好ましくは、カソード活性材料は、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せ、から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートから選択されるリチウムインターカレーション化合物を含み、ここで、ディスク、プレートレット、又はシートは100nm未満の厚さを有する。
【0048】
幾つかの実施形態では、このアルカリ金属電池において、カソード活性材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS2)3]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li4C6O6、Li2C6O6、Li6C6O6、又はこれらの組合せから選択される有機材料又はポリマー材料である。
【0049】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0050】
好ましい実施形態では、カソード活性材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含む有機材料である。
【0051】
本発明は、内部で直列に接続される複数のロール型アルカリ金属電池を含む電池も提供する。これとは別に、又はこれに加えて、本発明は、内部で並列に接続される複数のロール型アルカリ金属電池を含む電池も提供する。
【0052】
本発明は、ロール型アルカリ金属電池の製造方法も提供する。
図1(B)中に示されるように、従来のリチウムイオン電池セルは、典型的には、アノード集電体(例えばCu箔)と、アノード集電体上にコーティングされるアノード活性材料層(通常は、Cu箔の2つの主面上にコーティングされる2つのアノード活性材料層)と、多孔質セパレータ及び/又は電解質成分と、カソード活性材料層(通常は、Al箔の2つの主面上にコーティングされる2つのカソード活性材料層)と、カソード集電体(例えばAl箔)とから構成される。アノードは、典型的には、(a)アノード活性材料粒子(例えば黒鉛又はSi粒子)、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)、及び樹脂粘結剤(例えばSBR又はPVDF)を液体媒体(例えば水又は有機溶媒、典型的にはNMP)中に分散させたスラリを調製するステップと;(b)このスラリを集電体(例えばCu箔)の一方又は両方の主面の上にコーティングするステップと;(c)コーティングしたスラリを乾燥させて乾燥アノードを形成するステップとによって製造される。カソード層も同様の方法で製造され、結果として得られる乾燥アノードは、カソード集電体(例えばAl箔)の上にコーティングされたカソード活性材料粒子(例えばLFP粒子)、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)、及び樹脂粘結剤(例えばPVDF)の1層又は2層から構成される。次に、従来の円筒形セルは、アノード、セパレータ、及びカソード層を積層して多層積層体を形成し、次にこの積層体を円筒形(ロール)に巻くことによって製造される。アノード及びカソードの両方を含むこのようなロールは電池セルを構成し、これが次にステンレス鋼ケーシング中に挿入され、液体電解質が注入され、次に封止される。
【0053】
対照的に、本発明のロール型アルカリ金属電池は、(a)アノード活性材料(任意選択の導電性添加剤及び任意選択の粘結剤樹脂を伴う)の1つ又は2つの層がコーティングされた固体若しくは多孔質の支持基材の層を巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;(b)カソード活性材料(任意選択の導電性添加剤及び任意選択の粘結剤樹脂を伴う)の1つ又は2つの層がコーティングされた固体若しくは多孔質の支持基材の層を巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)アノードロール幅及び/又はカソードロール幅の方向が、セパレータ面に対して実質的に垂直となるように、アノードロール、カソードロール、及び2つの電極ロールの間のアルカリ金属イオン伝導性セパレータをともに配列して電池アセンブリを形成するステップと;(d)ロール型電池を形成するために、アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップとによって製造することができる。この方法は、アノード層、セパレータ層、及びカソード層をともに積層し、次に、得られた積層体をともに巻いて電池を形成するステップを含まないことに留意されたい。その代わりに、個々のアノード層及びカソード層を別々に巻くことで、アノードロール及びカソードロールがそれぞれ形成される。これら2つのロールは、セパレータ層が間に配置されるように配列されて、1つの単位セル中に2つのロールを含む電池が形成される。
【0054】
対照的に、本発明のロール型アルカリ金属電池は:
(a)アノード活性材料の少なくとも1つの離散層、伝導性材料の少なくとも1つの離散層、及び第1若しくは第2の電解質と組成が同一若しくは異なる第3の電解質の少なくとも1つの層を積層し、巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;
(b)カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層、伝導性材料の少なくとも1つの離散層、並びに第1及び第3の電解質と組成が同一若しくは異なる第2の電解質の少なくとも1つの層を積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;
(c)アノードロール幅及び/又はカソードロール幅の方向が、セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直となるように、アノードロール、カソードロール、及びアノードロールとカソードロールとの間に配置されたセパレータ-電解質の層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;
(d)場合により、ロール型アルカリ金属電池を形成するために、電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、
を含む方法によって製造される。
【0055】
この電池は、1つの単位セル中に2つのロール(一方のアノードロール及び他方のカソードロール)を含む。
【0056】
ある実施形態では、本方法は:
(a)アノード活性材料の少なくとも1つの離散層、及び伝導性材料の少なくとも1つの離散層を積層し、巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;
(b)カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層、並びに伝導性材料の少なくとも1つの離散層を積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと(この段階では電解質は不要である);
(c)アノードロール幅及び/又はカソードロール幅の方向が、セパレータ/電解質層に対して実質的に垂直となるように、アノードロール、カソードロール、及びアノードロールとカソードロールとの間に配置された多孔質セパレータ若しくは固体電解質層を含むセパレータ-電解質の層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成し;ロール型アルカリ金属電池を形成するために、電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、
を含む。
【0057】
この場合も、電池は、1つの単位セル中に2つのロール(一方はアノードロール、他方はカソードロール)を含む。
【0058】
ある実施形態では、1つのみの電極(例えば、アノードではなく、カソードのみ)がロール形状である。したがって、本発明は、ロール型アルカリ金属電池の製造方法を提供する。この方法は:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤を含むアノードを作製するステップと(例えば、このようなアノードは、アノード活性材料、導電性添加剤、及び樹脂粘結剤の1つ又は2つの層がコーティングされたリチウム金属箔又はアノード集電体を単に含む);(b)カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤がコーティングされた、又は含浸された固体若しくは多孔質の支持基材の層を巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)カソードロール幅方向が、セパレータ面に対して実質的に垂直となるように、アノード、カソードロール、及びアノードとカソードロールとの間のアルカリ金属イオン伝導性セパレータ層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;(d)ロール型アルカリ金属電池を形成するために、電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入され前又は後に、電池アセンブリ中に電解質を含浸させるステップと、を含む。
【0059】
ある実施形態では、1つのみの電極(例えば、アノードではなく、カソードのみ)がロール形状である。ある実施形態では、本発明による方法は:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤を含むアノードを作製するステップと(これらの構成要素は積層されて巻回されたロールが形成されることはない);(b)カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層、伝導性材料の少なくとも1つの離散層、並びに第1及び第3の電解質と組成が同一若しくは異なる第2の電解質の少なくとも1つの層を積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)カソードロール幅方向が、セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直となるように、アノード、カソードロール、及びアノードとカソードロールとの間のセパレータ-電解質層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;(d)ロール型アルカリ金属電池を形成するために、電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、電池アセンブリ中に第1の電解質を含浸させるステップと、を含む。
【0060】
ある実施形態では、この方法は:(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤を含むアノードを作製するステップと;(b)カソード活性材料及び任意選択の粘結剤の少なくとも1つの離散層、並びに伝導性材料の少なくとも1つの離散層を積層し、巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)カソードロール幅方向が、セパレータ面に対して実質的に垂直となるように、アノード、カソードロール、及びアノードとカソードロールとの間のセパレータ-電解質層を配列しパッキングして、電池アセンブリを形成するステップと;(d)ロール型アルカリ金属電池を形成するために、電池アセンブリが保護ケーシング中に挿入される前又は後に、電池アセンブリ中に第1の電解質を含浸させるステップと、を含む。
【0061】
本発明の別の一実施形態では、ロール型アルカリ金属電池の製造方法は、(a)アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び第1の電解質を含浸させた多孔質支持基材の層を巻く、又は巻回することによってアノードロールを作製するステップと;(b)カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び第2の電解質(第1の電解質と組成が同じ又は異なる)を含浸させた多孔質支持基材の層を巻く、又は巻回することによってカソードロールを作製するステップと;(c)アノードロール幅及び/又はカソードロール幅の方向が、セパレータ面に対して実質的に垂直となるように、アノードロール、カソードロール、及び2つの電極ロールの間のアルカリ金属イオン伝導性セパレータをともに配列して、電池アセンブリを形成するステップと;(d)電池アセンブリを保護ケーシング中に封入して、そのようなロール型電池を形成するステップとを含む。この方法では、電解質がアノードの多孔質基材中に含浸され、別の電解質がカソードの多孔質基材中に含浸され、次に、2つの電極をセパレータとともに組み合わせることで、単位セルが形成される。この実施形態では、典型的には樹脂粘結剤は不要である。
【0062】
多孔質支持基材は、好ましくは、金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択される伝導性材料を含むことができる。このような多孔質基材は、集電体としての(電子伝導経路を提供する)機能を果たすこと、及び電解質を収容する細孔を提供すること(迅速なアルカリ金属イオンの移動が可能となる)の2つの役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1A】アノード集電体、アノード電極層(例えば、薄いSiコーティング層)、多孔質セパレータ、カソード電極層(例えば、硫黄層)、及びカソード集電体から構成された、従来技術のリチウムイオン電池セル(アルカリ金属電池の例として)の概略図である。
【
図1B】
図1(B)は、電極層が、活性材料の離散粒子(例えば、アノード層中の黒鉛又は酸化スズ粒子、又はカソード層中のLiCoO
2)から構成される、従来技術のリチウムイオン電池セル(アルカリ金属電池の一例として)の概略図である。
【
図1C】
図1(C)は、従来技術の円筒形リチウムイオン電池セルの内部構造の一部の概略図であり、ロールが、アノード集電体上にコーティングされたアノード層、多孔質セパレータ、及びカソード集電体上にコーティングされたカソード層の積層構造を含むことを示しており、これが巻回されて円筒形ロールが形成される。
【
図1D】
図1(D)は、本発明によるロール型アルカリ金属電池セルの概略図である。
【
図1E】
図1(E)は、アノード活性材料又はカソード活性材料がコーティングされた固体基材をマンドレル(30又は32)の周囲に巻回して、円筒形ロール28又は立方形ロール34を形成する方法の概略図である。
【
図1F】
図1(F)は、アノード活性材料又はカソード活性材料を含浸させた多孔質基材の本発明による製造方法を概略的に示す別の一例である(巻かれて、又は巻回されてアノードロール又はカソードロールになる前)。
【
図1G】
図1(G)、後に巻回してロール型アルカリ金属イオン電池セルのロールにすることができる、活性材料が含浸された、又はコーティングされた支持多孔質基材の本発明による連続製造方法の概略図である。
【
図1H】
図1(H)は、内部で直列に接続される複数のロール型セルを含む本発明による電池の概略図である。
【
図1I】
図1(I)は、内部で並列に接続される複数のロール型セルを含む本発明による電池の概略図である。
【
図2】
図2は、グラフェンシートの電子顕微鏡画像である。
【
図3A】
図3(A)は、伝導性多孔質層の例の金属グリッド/メッシュ及びカーボンナノファイバマットである。
【
図3B】
図3(B)は、伝導性多孔質層の例のグラフェン発泡体及び炭素発泡体である。
【
図3C】
図3(C)は、伝導性多孔質層の例のNi発泡体及びCu発泡体である。
【
図4】
図4は、剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク(厚さ>100nm)、及びグラフェンシート(厚さ<100nm、より典型的には<10nmであり、0.34nmまでの薄さになることが可能)の一般に使用される製造方法の概略図である。
【
図5】
図5は、アノード活性材料として黒鉛粒子を含み、カソード活性材料として炭素被覆LFP粒子を含むリチウムイオン電池セルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対エネルギー密度)である。5つのデータ曲線のうちの3つは、本発明の一実施形態により作製されたロール型セル(1つは電解質の追加の離散層を含む)に関するものであり、他の2つは電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。
【
図6】
図6は、どちらもアノード活性材料としてグラフェン包有Siナノ粒子を含み、カソード活性材料としてLiCoO
2ナノ粒子を含む2つのセルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対重量及び体積エネルギー密度の両方)である。実験データは、ロール型Liイオン電池セル及び従来のセルの両方から得た。
【
図7】
図7は、アノード活性材料としてリチウム箔、カソード活性材料(カソードロールが形成される)としてロジゾン酸二リチウム(Li
2C
6O
6)、及び有機液体電解質としてリチウム塩(LiPF
6)-PC/DECを含むリチウム金属電池のRagoneプロットである。データは、本発明による方法によって作製されたロール型リチウム金属セルと、電極の従来のスラリコーティングによって作製された従来のセルとの両方に関するものである。
【
図8】
図8は、アノード活性材料としてのハードカーボン粒子と、カソード活性材料としての炭素被覆Na
3V
2(PO
4)
2F
3粒子とを含有するNaイオン電池セルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対エネルギー密度)である。4つのデータ曲線のうちの2つは、本発明の一実施形態により作製されたセルの場合であり、他の2つは従来の電極のスラリコーティング(ロールコーティング)による場合である。
【
図9】
図9は、アノード活性材料としてのグラフェン包有Snナノ粒子と、カソード活性材料としてのNaFePO
4ナノ粒子とをどちらも含有する2つのセルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対重量及び体積エネルギー密度の両方)である。データは、本発明による方法によって作製されたナトリウムイオンセルの場合と、従来の電極のスラリコーティングによって作製されたナトリウムイオンセルの場合との両方のものである。
【
図10】
図10は、アノード活性材料としてのグラフェン担持ナトリウム箔と、カソード活性材料としてのロジゾン酸二ナトリウム(Na
2C
6O
6)と、有機液体電解質としてのナトリウム塩(NaPF
6)-PC/DECとを含有するナトリウム金属電池のRagoneプロットである。データは、本発明による方法によって作製されたナトリウム金属セルの場合と、従来の電極のスラリコーティングによって作製されたナトリウム金属セルの場合との両方のものである。
【
図11】
図11は、従来のスラリコーティング方法によって作製した一連のKイオンセル及び対応するロール型KイオンセルのRagoneプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は、同じ種類のアルカリ金属電池で従来全く実現できなかった非常に高い体積エネルギー密度を示すアルカリ金属電池を対象とする。このアルカリ金属電池は、一次電池であってよいが、好ましくは、リチウムイオン電池若しくは(例えばアノード活性材料としてリチウム金属を使用する)リチウム金属二次電池、ナトリウムイオン電池、ナトリウム金属電池、カリウムイオン電池、又はカリウム金属電池から選択される二次電池である。電池は、水性電解質、非水性若しくは有機電解質、ゲル電解質、イオン液体電解質、ポリマー電解質、固体電解質、又はそれらの組合せをベースとしている。アルカリ金属電池の最終形状は、円筒形、長方形 立方形などであってよい。本発明は、なんらかの電池形状及び構成に限定されるものではない。
【0065】
ある実施形態では、電池は、(a)アノード活性材料を有するアノードと、(b)カソード活性材料を含むカソードと、(c)アノード及びカソードとイオン接触する、第1の電解質単独を含むセパレータ-電解質層、又は第1の電解質-多孔質セパレータアセンブリ層(例えば、液体若しくはゲルの電解質でぬれた多孔質膜、又は追加のポリマー膜を有さない固体電解質単独)とを含む。
図1(E)中に概略的に示されるように、カソードは、(i)液体若しくはゲルの電解質中に分散したカソード活性材料及び任意選択の粘結剤樹脂の少なくとも1つの離散層(この層中に少なくとも2つ又は3つの材料を含み;導電性添加剤を加えることもできる)と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、第2の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたカソードロールを含む。積層されて巻回されたカソードロールは、あるカソードロール長、あるカソードロール幅、及びあるカソードロール厚さを有し、
図1(D)中に示されるように、カソードロール幅は、セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直である。
【0066】
アノードは、従来のアノード(単独のロール形状ではない)又は本発明によるロール型アノードを含むことができる。幾つかの実施形態では、アノードは、ロール形状(例えば単純に巻回された、又はスパイラル状に巻回されたロール)も含む。この場合、アノードは、(i)すべて液体若しくはゲルの電解質中に分散した、アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤樹脂の少なくとも1つの離散層と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層と、(iii)場合により、第3の電解質の少なくとも1つの層との積層されて巻回されたアノードロールを含み、積層されて巻回されたアノードロールは、あるアノードロール長、あるアノードロール幅、及びあるアノードロール厚さを有し、上記アノードロール幅は、セパレータ-電解質層に対して実質的に垂直である。第1の電解質、液体若しくはゲルの電解質、及び第3の電解質は、組成が同一の場合も異なる場合もある。
【0067】
本発明によるロール型アルカリ金属電池セルは、一形態(例えば
図1(D))では、多孔質若しくはイオン伝導性のセパレータ又は固体電解質で分離された少なくとも2つのロールを含み:一方のロールは、アノード活性材料のみ(カソード活性材料なし)と、電解質、任意選択の粘結剤樹脂、及び/又は任意選択の導電性添加剤とを含むアノードロールであり、他方のロールは、カソード活性材料のみ(アノード活性材料なし)と、電解質、任意選択の粘結剤樹脂、及び/又は任意選択の導電性添加剤とを含むカソードロールである。典型的には、アノードロールの1つの末端面(エッジ面)が存在する場合、これは、(例えば
図1(D)中に示されるように)セパレータ層に物理的に密接に接触する。また、カソードロールの1つの末端(エッジ)面は、セパレータ層に物理的に密接に接触する。
【0068】
対照的に、従来の円筒形電池(例えば18650型又は21700型)は、典型的には、互いに積層され、次にともに巻かれ、又は巻回されて1つのロールとなる、(セパレータ層を挟んで)アノード層及びカソード層の両方を含むただ1つの単純に巻回されたロールを含む。
図1(C)中に示されるように、カソード層及びアノード層の両方の面は、セパレータ層の面に対して実質的に平行である。カソード活性材料及びアノード活性材料は、従来の(従来技術の)円筒形セル中の同じロールの内部に共存する。
【0069】
実際には、好ましくは、これらすべての電解質は組成が同一である。しかし、可能性のあるリチウム/ナトリウムのデンドライトの貫入を阻止するために、(多孔質セパレータ膜の代わりに、又はこれに加えて)第1の電解質として固体電解質又は固体ポリマー電解質を組み込むことを選択可能である。さらに、カソードロール中の電解質と、アノード中の電解質とは、アノード材料-電解質及びカソード材料-電解質の界面安定性を最適化するために、組成が異なっていてよい。
【0070】
アノードロール幅とカソードロール幅とは、寸法が同じである必要はなく、実際にはこれらは、典型的にはサイズが異なり、その理由は、アノード活性材料とカソード活性材料とは比容量が異なるためである。アノード又はカソードのいずれかである2つの電極の一方は、ロール形状である必要がないことに留意されたい。例えば、リチウム金属二次セル又はナトリウム金属二次セルでは、アノードは単に、Cu箔上又はグラフェンシートのマットの表面上にコーティングされたリチウム箔又はナトリウム金属箔の層であってよい。しかし、リチウムイオンセル又はナトリウムイオンセルの場合、アノード又はカソードのいずれかである電極の少なくとも1つはロール形状である必要がある。より典型的で好ましくは、リチウムイオンセル又はナトリウムイオンセルの両方の電極がロール形状である。
【0071】
便宜上、本発明者らは、カソード活性材料の説明的な例としてリン酸鉄リチウム(LFP)、酸化バナジウム(VxOy)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、ロジゾン酸二リチウム(Li2C6O6)、及び銅フタロシアニン(CuPc)、並びにアノード活性材料の例として黒鉛、SnO、Co3O4、及びSi粒子などの選択された材料を使用する。ナトリウム電池の場合、本発明者らは、カソード活性材料の説明的な例としてNaFePO4及びλ-MnO2粒子、並びにNaイオンセルのアノード活性材料の例としてハードカーボン及びNaTi2(PO4)3粒子などの選択された材料を使用する。同様の方法をKイオン電池にも適用できる。意図される集電体としての導電性多孔質層の例として、ニッケル発泡体、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、及びステンレス鋼繊維ウェブが使用される。これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0072】
図1(A)、
図1(B)、及び
図1(C)中に示されるように、従来のリチウムイオン電池セルは、典型的には、アノード集電体(例えばCu箔)、アノード集電体上にコーティングされたアノード電極(アノード活性材料層)、多孔質のセパレータ及び/又は電解質成分、カソード集電体の2つの主面上にコーティングされたカソード電極(カソード活性材料層)、及びカソード集電体(例えばAl箔)から構成される。ただ1つのアノード層が示されているが、アノード集電体の2つの主面上にコーティングされた2つのアノード活性材料層が存在することができる。同様に、カソード集電体の2つの主面上にコーティングされた2つのカソード活性材料層が存在することができる。
【0073】
より一般的に使用されるセル構成(
図1(B))において、アノード層は、アノード活性材料(例えば、黒鉛又はSi)、導電性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子)、及び樹脂粘結剤(例えば、SBR又はPVDF)の粒子から構成される。カソード層は、カソード活性材料(例えば、LFP粒子)、導電性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子)、及び樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子から構成される。アノード層及びカソード層はどちらも典型的には100~200μmまでの厚さであり、単位電極面積当たりでおそらく十分な量の電流を生じさせる。この厚さ範囲は、電池設計者が通常的に作業を行う、業界で受け入れられている制約と考えられる。この厚さの制約は、以下のような幾つかの理由によるものである:(a)既存の電池電極コーティング機は、非常に薄い又は非常に厚い電極層をコーティングするようには装備されていない;(b)リチウムイオン拡散経路長の短縮を考慮すると、より薄い層が好ましい;しかし、層が薄すぎると(例えば、<100μm)、十分な量の活性リチウム貯蔵材料を含まない(したがって、不十分な電流出力となる);(c)より厚い電極は、ロールコーティング後の乾燥又は取扱い時に層間剥離又は亀裂が生じやすい;及び(d)最小オーバーヘッド重量及び最大リチウム貯蔵容量、したがって最大エネルギー密度(セルのWk/kg又はWh/L)を得るために、電池セル内の全ての非活性材料層(例えば、集電体及びセパレータ)を最小に保たなければならない。
【0074】
あまり一般的に使用されていないセル構成では、
図1(A)に示されるように、アノード活性材料(例えば、Si又はLi金属)又はカソード活性材料(例えば、リチウム遷移金属酸化物)が、銅箔又はAl箔などの集電体上に直接、薄膜の形態で堆積される。しかし、厚さ方向の寸法が非常に小さい(典型的には500nmよりもはるかに小さく、しばしば必要であれば100nmよりも薄い)そのような薄膜構造は、(電極又は集電体の表面積を同じと仮定して)電極に少量の活性材料しか組み込むことができないことを示唆し、総リチウム貯蔵容量を低減し、単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量を低減する。そのような薄膜は、(アノードに関する)サイクリングにより誘発される割れに対する耐性をより高くするため、又はカソード活性材料の完全な利用を容易にするために、厚さを100nm未満にしなければならない。そのような制約は、総リチウム貯蔵容量、及び単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量をさらに減少させる。そのような薄膜電池は、適用範囲が非常に限られている。
【0075】
アノード側では、100nmよりも厚いSi層は、電池の充放電サイクル中に割れ抵抗性が低いことが判明している。わずか数サイクルで電極は破砕されてしまう。カソード側では、100nmよりも厚いリチウム金属酸化物のスパッタ層は、リチウムイオンが完全に浸透してカソード層全体に達することを可能にせず、カソード活性材料利用率が低くなる。望ましい電極厚さは少なくとも100μmであり、個々の活性材料コーティング又は粒子は、望ましくは100nm未満の寸法を有する。したがって、集電体上に直接堆積されたこれらの薄膜電極(<100nmの厚さを有する)は、必要な厚さに3桁足りない。さらなる問題として、カソード活性材料は全て、電子とリチウムイオンの両方に対して伝導性ではない。大きな層厚さは、非常に高い内部抵抗、及び低い活性材料利用率を示唆する。
【0076】
すなわち、材料のタイプ、サイズ、電極層の厚さ、及び活性材料の質量負荷の面で、カソード又はアノード活性材料の設計及び選択に際して同時に考慮しなければならない幾つかの相反する因子がある。これまでのところ、これらのしばしば相反する問題に対して任意の先行技術の教示によって提供されている有効な解決策は存在していない。本明細書に開示されるように、本発明者らは、ロール型アルカリ金属電池及びそのような電池の製造方法を開発することによって、電池設計者及びまた電気化学者を30年超にわたって悩ませてきたこれらの難題を解決した。
【0077】
従来技術のリチウム電池セルは、典型的には、以下のステップを含む方法によって製造される:(a)第1のステップは、アノード活性材料(例えば、Siナノ粒子又はメソカーボンマイクロビーズ、MCMB)、導電性フィラー(例えば、黒鉛フレーク)、及び樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して、アノードスラリを形成することを含む。それとは別に、カソード活性材料(例えば、LFP粒子)、導電性フィラー(例えば、アセチレンブラック)、及び樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して分散させて、カソードスラリを形成する。(b)第2のステップは、アノード集電体(例えば、Cu箔)の一方又は両方の主面にアノードスラリをコーティングし、溶媒(例えば、NMP)を蒸発させることによってコーティングされた層を乾燥させて、Cu箔上にコーティングされた乾燥アノード電極を形成することである。同様に、カソードスラリをコーティングして乾燥させて、Al箔上にコーティングされた乾燥カソード電極を形成する。実際の製造状況では、スラリコーティングは通常、ロールツーロール方式で行われる;(c)第3のステップは、アノード/Cu箔シート、多孔質セパレータ層、及びカソード/Al箔シートを積層し合わせて、3層又は5層アセンブリを形成し、これを所望のサイズに切断して又は細く裂いて積層し、(形状の一例として)矩形の構造を形成するか、又は巻いて円筒形のセル構造にすることを含む。(d)次いで、矩形又は円筒形の積層構造を、アルミニウムプラスチック積層エンベロープ又はスチールケーシングに収容する。(e)次いで、液体電解質を積層構造に注入して、リチウム電池セルを製造する。
【0078】
従来方法及び結果として得られるリチウムイオン電池セル又はナトリウムイオンセルに関連する幾つかの重大な問題がある。
1)200μm(Al箔などの固体集電体のそれぞれの側で100μm)よりも厚い電極層(アノード層又はカソード層)を製造することは非常に難しく、したがって、単位電池セル中に含むことができる活性材料の量が制限される。その理由は幾つかある。厚さ100~200μmの電極は、典型的には、スラリコーティング施設において長さ30~50メートルの加熱区域を必要とし、これは、時間がかかりすぎ、エネルギーを消費しすぎ、費用対効果が良くない。金属酸化物粒子など幾つかの電極活性材料に関しては、100μmよりも厚い良好な構造的完全性を備える電極を実際の製造環境で連続的に製造することはできていない。得られる電極は、非常に壊れやすくて脆い。より厚い電極は、層間剥離及び割れが生じる傾向が高い。
2)
図1(A)に示されるような従来の方法では、電極の実際の質量負荷、及び活性材料に関する見掛けの密度は、200Wh/kgを超える重量エネルギー密度を実現するには低すぎる。大抵は、比較的大きい黒鉛粒子に関してさえ、電極のアノード活性材料質量負荷(面密度)は25mg/cm
2よりもかなり低く、活性材料の見掛けの体積密度又はタップ密度は典型的には1.2g/cm
3未満である。電極のカソード活性材料質量負荷(面密度)は、リチウム金属酸化物系の無機材料に関しては45mg/cm
2よりも実質的に低く、有機又はポリマー材料に関しては15mg/cm
2よりも実質的に低い。さらに、電池容量に寄与せずに電極に追加の重量及び体積を加える非常に多くの他の非活性材料(例えば、導電性添加剤及び樹脂粘結剤)が存在する。これらの低い面密度及び低い体積密度は、比較的低い重量エネルギー密度及び低い体積エネルギー密度をもたらす。
3)従来の方法は、電極活性材料(アノード活性材料又はカソード活性材料)を液体溶媒(例えば、NMP)中で分散させてスラリにする必要があり、集電体表面にコーティングした後に液体溶媒を除去して電極層を乾燥させなければならない。アノード及びカソード層をセパレータ層と共に積層し合わせて、ハウジング内にパッケージングしてスーパーキャパシタセルを形成した後、セル内に液体電解質を注入する。実際には、2つの電極を濡らし、次いで電極を乾燥させ、最後に再び濡らす。そのような湿潤-乾燥-湿潤プロセスは、良好なプロセスとは思えない。
4)現在のリチウムイオン電池は、重量エネルギー密度が比較的低く、体積エネルギー密度が低いという欠点が依然としてある。市販のリチウムイオン電池は、約150~220Wh/kgの重量エネルギー密度及び450~600Wh/Lの体積エネルギー密度を示す。
【0079】
文献では、活性材料重量のみ又は電極重量に基づいて報告されたエネルギー密度データから、実用的な電池セル又はデバイスのエネルギー密度を直接導くことはできない。「オーバーヘッド重量」、すなわち他のデバイス構成要素(粘結剤、導電性添加剤、集電体、セパレータ、電解質、及びパッケージング)の重量も考慮に入れる必要がある。従来の製造法では、リチウムイオン電池中のアノード活性材料(例えば、黒鉛又はカーボン)の重量比は典型的には12%~17%であり、カソード活性材料(例えば、LiMn2O4)の重量比は20%~35%である。
【0080】
従来技術の円筒形リチウムイオン電池セルの内部構造の一部が
図1(C)中に概略的に示されており、それぞれの電池セルが、アノード集電体108上にコーティングされたアノード層110と、多孔質セパレータ112と、カソード集電体116上にコーティングされたカソード層114との積層体から構成されるロールを含むことが示されている。それぞれのロールは、その中にアノード及びカソード活性材料層の両方を含む。1つの単位セル中に1つのみのロールが存在する。
【0081】
対照的に、本発明によるロール型アルカリ金属電池(
図1(D))では、1つの単位セルが少なくとも2つの別個のロールであるカソードロール20及びアノードロール24を含み、これらは多孔質膜又はアルカリ金属イオン伝導性セパレータ層22によって分離される。このセパレータ層は、
図1(D)中に示されるような正方形である必要はなく;典型的には、セパレータは、アノードロール又はカソードロールよりも大きいものなどの、同等のサイズ及び形状である。
図1(E)中に概略的に示されるように、円形30又は長方形32などの所望の断面形状を有するマンドレルの周囲に複数の層の積層シート26を巻回して、円筒形のロール28又は立方形のロール34をそれぞれ形成することによって、アノードロールを形成することができる。アノードは、(i)すべて液体若しくはゲルの電解質中に分散したアノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び任意選択の粘結剤樹脂の少なくとも1つの離散層(ここでは2つの活性材料層が
図1(E)中に示されている)と、(ii)伝導性材料の少なくとも1つの離散層(中央に1層が示されている)と、(iii)場合により、第3の電解質の少なくとも1つの層(2つの離散層が示されている)との積層されて巻回されたアノードロールを含む。アノード活性材料層は、アノード活性材料、導電性添加剤、及び樹脂粘結剤の粒子を含むことができる。実際には、例えば、この層を固体Cu箔又は多孔質グラフェン/カーボンナノチューブマットの一方又は両方の主面の上に堆積(コーティング又は噴霧)することができる。次に、それぞれの活性材料層の上にそれぞれの電解質層(液体若しくはゲルの電解質の場合)を噴霧又はキャストすることができる。電解質が固体電解質(例えば固体ポリマー)である場合、同等のサイズ及び形状の固体電解質の断片をそれぞれの活性材料層の上に置くことができる。積層されたシートは、必要であれば、所望の幅に切り開く/切断することができる(これが、コーティングされたフィルム/層を巻回してロールにした後のロール幅となる)。積層したシート26は、次に巻く、又は巻回することによって、所望の形状のアノードロールになる。
【0082】
同様の方法でカソードロールを製造することができる。1つのアノードロール、多孔質セパレータ(又は固体電解質)の1つのシート、及び1つのカソードロールを互いに組み立てて、
図1(D)中に示されるようなロール幅がセパレータ面に対して垂直となる1つのロール型電池セルを形成することができる。
【0083】
セパレータに対して垂直にロール層幅を配置することによって、電極層中のイオン伝導を促進するように、離散液体/ゲル電解質層(例えば本来はCu箔又は多孔質グラフェン/CNT層に対して平行である)を配列することができる。本発明は、大きなロール幅(従来の電極の厚さに対応)を有し、したがって高い活性材料質量負荷を有するロール型アルカリ金属電池セルを提供する。このセルは、小さいオーバーヘッド重量及び体積、高い体積容量、及び高い体積エネルギー密度をも有する。さらに、本発明による方法によって製造される本発明によるロール型アルカリ金属電池の製造コストは、従来方法によるコストよりも大幅に低くすることができる
【0084】
概略
図Bでは、湿潤活性材料混合物層312a、312bを支持する2つの保護フィルム314a、314bを連続的に繰り出すために2つのフィーダーローラー316a、316bが使用される。これらの湿潤活性材料混合物層312a、312bは、多岐にわたる手順(例えば、当技術分野においてよく知られている印刷、噴霧、キャスティング、コーティングなど)を用いて、保護(支持)フィルム314a、314bに送給することができる。導電性多孔質層110が2組のローラー(318a、318b、318c、318d)の間の間隙を通って移動するときに、湿潤活性混合物材料が多孔質層310の細孔中に含浸して、2つの保護フィルム314a、314bで覆われた活性材料電極320(アノード又はカソード電極層)が形成される。保護フィルムは後に除去すべきである。
【0085】
別の例として概略
図Cを用いると、導電性多孔質層322の2つの反対側の多孔質表面に湿潤活性材料混合物(325a、325b)を供給するために、2つの噴霧装置324a、324bを使用した。1組又は2組のローラーを用いて両側から多孔質層中に湿潤活性材料混合物を含浸させることで、含浸させた活性電極326(アノード又はカソード)が形成される。同様に、概略
図Dでは、導電性多孔質層330の2つの反対側の多孔質表面に湿潤活性材料混合物(333a、333b)を供給するために、2つの噴霧装置332a、332bを使用した。1組又は2組のローラーを用いて両側から多孔質層中に湿潤活性材料混合物を含浸させることで、含浸させた活性電極338(アノード又はカソード)が形成される。
【0086】
結果として得られる電極層(アノード又はカソード電極)は、固化の後に、好ましくは1~500μm(より好ましくは50~200μm)の厚さを有する。固化は、(ローラーから)圧縮応力を加えて、湿潤活性材料混合物成分を伝導性多孔質層の細孔中に浸透させることによって実現される。次に、適切な幅の固化した層は巻回されてロールになる。
【0087】
図1(G)の概略
図E中に示されるような別の例では、電極製造プロセスは、フィーダーローラー340から導電性多孔質層356を連続的に供給するステップによって開始する。ローラー342によって、多孔質層356を容器344中の湿潤活性材料混合物346(スラリ、懸濁液、ゲルなど)中に浸漬させる。ローラー342bに向かって移動するときに、活性材料混合物は多孔質層356の細孔中に含浸され始め、容器から出て2つのローラー348a、348bの間の間隙中に供給される。2つの保護フィルム350a、350bが2つのそれぞれのローラー352a、352bから同時に供給されて、含浸させた多孔質層354を覆い、これは回転ドラム(巻き取りローラー355)上に連続的に収集することができる。このプロセスは、アノード及びカソード電極の両方に適用可能である。
【0088】
図1(D)中に示されるように、多孔質セパレータに分離された1つのアノードロール及び1つのカソードロールが組み立てられて単位セルが形成される。
図1(H)中に示されるように、複数の単位セル(それぞれがアノードロール20、セパレータ22、及びカソードロール24を含む)を内部で直列に接続し、ケーシング64(例えば円筒形のステンレス鋼ハウジング)内部に封入して、増加した出力電圧レベル、又は大幅に高い出力電圧レベルの電池を形成することができる。例えば、電圧V
1を有する単位セル1、電圧V
2を有する単位セル2など(電圧V
nを有する単位セルnまで)を内部で接続して、出力電圧V=V
1+V
2+...+V
nを得ることができる。V
1=V
2=V
3=...=V
nの場合、全体の出力電圧はV
n=nV
1になる。1つの単位電池セル(例えば黒鉛アノード及びリチウム酸化コバルトカソード)が3.8ボルトの出力電圧を有すると仮定すると、直列に接続された6つの単位セルを含む1つの円筒によって、22.8ボルトの電池出力電圧が得られる。4.0ボルトを超える電池電圧を送給できる18650型円筒形電池(直径18mm及び長さ165mm)を特徴とするものは、電池産業には存在しない。さらに、本発明によって、実質的にあらゆる出力電圧を有することができる電池の設計及び構成が可能となる。これらは、本発明によるロール型アルカリ金属セルの一部のさらなる驚くべき有用な特徴である。
【0089】
或いは、複数の単位セルを内部で並列に接続して、大量の電力及びエネルギーを送給可能なアルカリ金属電池を形成することができる。このような電池の好ましく独特の構成の1つを
図1(I)中に示しており、互いに並列の複数のカソードロール124が一緒にまとめられて、大量電力電池のほぼ半分126を形成している。複数のアノードロール120の対応する組も互いに並列に配置されて、電池の別の半分118を形成している。これら2つの組が互いに組み合わせられるが、多孔質の又はアルカリ金属イオン伝導性セパレータ122によって分離されることで、完全な電池が形成される。このような電池中のアノードロール又はカソードロールの数に理論的な制限はない。出力電圧は、典型的には、構成セルの出力電圧と同じである(これらの単位セルの組成及び構造が同一の場合)。しかし、このような電池中に含まれる活性材料が大量に存在するため、出力電流が大きくなりうる。
図1(I)中には円形で示されているが、アノードロール又はカソードロールは、あらゆる断面形状(例えば正方形、長方形など)を想定できることに留意されたい。
【0090】
以上は、本発明によるロール型アルカリ金属電極及びロール型アルカリ金属電池を、自動化された方法で連続的に製造できる方法を説明するための単なる幾つかの例である。これらの例は、本発明の範囲を限定するために使用すべきではない。
【0091】
伝導性材料の離散層は電子伝導性材料を意味することができ、電解質の離散層によって、アルカリ金属イオン伝導性チャネルが得られる。伝導性材料の層は、固体金属箔(例えば薄いCu箔又はAl箔、厚さ4~20μm)であってよいし、又は金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、若しくはそれらの組合せから選択される導電性多孔質層であってもよい。多孔質層は、炭素、黒鉛、金属、金属被覆繊維、導電性ポリマー、又は導電性ポリマー被覆繊維などの導電性材料でできている必要があり、これは多孔質のマット、スクリーン/グリッド、不織布、発泡体などの形態である。このような層は、通常は可撓性であり、それによってロール形状にする巻回作業が可能となる。
【0092】
導電性多孔質層は、金属発泡体、金属ウェブ若しくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、又はそれらの組合せから選択することができる。多孔質層は、高多孔質のマット、スクリーン/グリッド、不織布、発泡体などの形態の、炭素、黒鉛、金属、金属被覆繊維、導電性ポリマー、又は導電性ポリマー被覆繊維などの導電性材料でできている必要がある。導電性多孔質層の例を
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、及び
図3(D)に示している。多孔率レベルは、少なくとも70体積%、好ましくは80体積%を超え、さらに好ましくは90体積%を超えるのが好ましい。主鎖又は発泡体壁は電子伝導経路のネットワークを形成する。
【0093】
実質的に導電性多孔質層の全ての細孔が、電極(アノード又はカソード)活性材料、任意選択の導電性添加剤、及び液体電解質(粘結剤樹脂は不要)を充填されることが好ましい。細孔壁又は導電経路(1~20%)に対して細孔の量が多い(80~99%)ので無駄な空間がほとんどなく(「無駄」とは、電極活性材料及び電解質が占有していないことを意味する)、その結果、多量の電極活性材料-電解質区域(高い活性材料負荷質量)が得られる。
【0094】
このような電池電極の構成(
図1(F)~
図1(G))では、細孔壁が集電体全体(さらにはアノード層全体)のあらゆるところに存在するので、電子は、集電体(細孔壁)によって収集される前に、短い距離(平均で孔径の半分;例えば数マイクロメートル)しか移動する必要がない。これらの細孔壁は、最小限の抵抗を有する相互接続された電子輸送経路の3Dネットワークを形成する。さらに、それぞれのアノード電極又はカソード電極層において、すべての電極活性材料粒子は液体電解質中にあらかじめ分散し(ぬれ性の問題がない)、湿式コーティング、乾燥、パッキング、及び電解質注入の従来方法によって作製される電極中に一般に存在する乾燥ポケットが存在しなくなる。したがって、本発明による方法は、従来の電池セル製造法に勝る全く予想外の利点を生み出す。
【0095】
好ましい実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、又はそれらの組合せから選択されるプレリチウム化された又はプレナトリウム化されたバージョンのグラフェンシートである。上記のグラフェン材料の任意の1つを製造するための出発グラフェン材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択することができる。グラフェン材料は、アルカリ金属電池のアノード活性材料とカソード活性材料の両方のための良好な導電性添加剤でもある。
【0096】
面間ファンデルワールス力を克服することができると仮定して、天然又は人造黒鉛粒子中の黒鉛結晶の構成グラフェン面を剥離し、抽出又は単離して、六角形を成す炭素原子の個々のグラフェンシートを得ることができ、これらのシートは単原子厚である。炭素原子の単離された個々のグラフェン面は、一般に、単層グラフェンと呼ばれる。厚さ方向で約0.3354nmのグラフェン面間隔でファンデルワールス力によって結合された複数のグラフェン面の積層は、一般に多層グラフェンと呼ばれる。幾つかの単層グラフェンシートを例として
図2中に示している。多層グラフェンプレートレットは、最大300層のグラフェン面(100nm未満の厚さ)、しかしより典型的には最大30層のグラフェン面(10nm未満の厚さ)、さらにより典型的には最大20層のグラフェン面(7nm未満の厚さ)、及び最も典型的には最大10層のグラフェン面(科学界では一般に数層グラフェンと呼ばれる)を有する。本明細書において使用される場合、「単層グラフェン」という用語は、1つのグラフェン面を有するグラフェン材料を含む。「数層グラフェン」という用語は、2~10のグラフェン面を有するグラフェン材料を含む。「純粋なグラフェン」という用語は、実質的にゼロ%の非炭素元素を有するグラフェン材料を含む。「不純グラフェン」という用語は、0.001重量%~25重量%、好ましくは<5重量%の非炭素元素を有するグラフェン材料を含む。「ドープされたグラフェン」という用語は、10%未満の非炭素元素を有するグラフェン材料を含む。この非炭素元素は、水素、酸素、窒素、マグネシウム、鉄、硫黄、フッ素、臭素、ヨウ素、ホウ素、リン、ナトリウム、及びそれらの組合せを含むことができる。単層グラフェン及び多層グラフェンシートは、総称して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンシート/プレートレット(総称してNGP)は、0Dフラーレン、1D CNT又はCNF、及び3D黒鉛とは異なる新しいクラスのカーボンナノ材料(2Dナノカーボン)である。特許請求の範囲を定義する目的で、また当技術分野で一般に理解されるように、グラフェン材料(単離されたグラフェンシート)は、カーボンナノチューブ(CNT)又はカーボンナノファイバ(CNF)ではない(それらを含まない)。
【0097】
1つの方法では、
図4に示されるように、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸及び/又は酸化剤でインターカレーションして黒鉛インターカレーション化合物(GIC)又は酸化黒鉛(GO)を得ることによって得られる。GIC又はGO中のグラフェン面間の間隙空間に化学種又は官能基が存在することが、グラフェン間隔(d
002;X線回折によって決定される)を増加させる働きをし、それにより、通常であればc軸方向に沿ってグラフェン面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に減少させる。GIC又はGOは、硫酸、硝酸(酸化剤)、及び別の酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウム又は過塩素酸ナトリウム)の混合物中に天然黒鉛粉末を浸漬することによって生成されることが最も多い。インターカレーション手順中に酸化剤が存在する場合、得られるGICは、実際には、ある種の酸化黒鉛(GO)粒子である。次いで、このGIC又はGOを繰り返し洗浄し、水中ですすいで余剰の酸を除去すると、酸化黒鉛懸濁液又は分散液が得られ、これは、水中に分散された、離散した視覚的に区別可能な酸化黒鉛粒子を含む。グラフェン材料を製造するために、このすすぎステップ後に2つの処理ルートの一方をたどることができ、以下に簡単に説明する。
【0098】
ルート1は、本質的に乾燥GIC又は乾燥酸化黒鉛粒子の塊である「膨張黒鉛」を得るために懸濁液から水を除去することを含む。膨張黒鉛を典型的には800~1,050℃の範囲内の温度に約30秒~2分間曝すと、GICは、30~300倍に急速に体積膨張して、「黒鉛ワーム」を形成する。黒鉛ワーム(104)はそれぞれ、剥離されてはいるがほとんど分離されておらず、相互接続されたままの黒鉛フレークの集合である。
【0099】
同一出願人の米国特許出願第10/858,814号明細書(2004年3月6日)(現在は米国特許第2005/0271574号明細書)に開示されているように、剥離された黒鉛は、(例えば、超音波装置、高せん断ミキサ、高強度エアジェットミル、又は高エネルギーボールミルを使用した)高強度の機械的せん断を受けて、分離された単層及び多層グラフェンシート(総称してNGPと呼ぶ)を形成する。単層グラフェンが0.34nmの薄さであり得る一方、多層グラフェンは、最大100nm、しかしより典型的には10nm未満の厚さを有することがある(一般に数層グラフェンと呼ばれる)。複数のグラフェンシート又はプレートレットが、製紙法を使用して1枚のNGP紙として形成されることがある。このNGP紙は、本発明による方法で利用される多孔質グラフェン構造層の一例である。
【0100】
ルート2は、個々の酸化グラフェンシートを酸化黒鉛粒子から分離/単離する目的で、酸化黒鉛懸濁液(例えば、水中に分散された酸化黒鉛粒子)を超音波処理することを含む。これは、グラフェン面の離間距離が天然黒鉛での0.3354nmから高度に酸化された酸化黒鉛での0.6~1.1nmに増加されており、隣接する面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に弱めるという見解に基づいている。超音波出力は、完全に分離された、単離された、又は離散した酸化グラフェン(GO)シートを形成するために、グラフェン面シートをさらに分離するのに十分なものでよい。次いで、これらの酸化グラフェンシートを化学的又は熱的に還元して、「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができ、これは、典型的には、0.001重量%~10重量%、より典型的には0.01重量%~5重量%の酸素含有量を有し、最も典型的には且つ好ましくは2重量%未満の酸素を含む。
【0101】
本出願の特許請求の範囲を定義する目的で、NGP又はグラフェン材料は、単層及び多層(典型的には10層未満)の純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープされた(例えば、B又はNをドープされた)グラフェンの離散シート/プレートレットを含む。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは、典型的には0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOを含む)は、0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェンを除き、全てのグラフェン材料が、非炭素元素(例えば、O、H、N、B、F、Cl、Br、Iなど)を0.001重量%~50重量%含む。本明細書では、これらの材料を不純グラフェン材料と呼ぶ。
【0102】
より小さな離散グラフェンシート(典型的には0.3μm~10μm)の純粋なグラフェンは:(A)黒鉛材料への非酸化性物質のインターカレーションの後、非酸化性環境中の熱的又は化学的剥離処理;(B)グラフェン層間の浸透及び剥離のための黒鉛材料の超臨界流体環境への曝露;又は(C)粉末形態の黒鉛材料を界面活性剤又は分散剤を含有する水溶液に分散させて懸濁液を得て、その懸濁液に対して直接超音波処理を行ってグラフェン分散体を得ること、の3つの方法の1つによって製造することができる。
【0103】
手順(A)では、特に好ましいステップは、(i)アルカリ金属(例えば、カリウム、ナトリウム、リチウム、又はセシウム)、アルカリ土類金属、又はアルカリ又はアルカリ金属の合金、混合物、若しくは共晶から選択される非酸化性物質により黒鉛材料にインターカレーションを行うステップと;及び(ii)化学的剥離処理(例えば、カリウムがインターカレートした黒鉛をエタノール溶液中に浸漬することによる)とを含むことができる。
【0104】
手順(B)では、好ましいステップは、黒鉛材料を二酸化炭素(例えば、温度T>31□C及び圧力P>7.4MPaにおける)及び水(例えば、T>374□C及びP>22.1MPaにおける)などの超臨界流体に、グラフェン層間の浸透(一時的なインターカレーション)に十分な時間浸漬するステップを含む。このステップに続いて、個別のグラフェン層を剥離するために急激に減圧する。別の適切な超臨界流体としては、メタン、エタン、エチレン、過酸化水素、オゾン、水酸化(高濃度で溶存酸素を含む水)、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0105】
手順(C)では、好ましいステップは、(a)界面活性剤又は分散剤を中に含有する液体媒体中に黒鉛材料の粒子を分散させて懸濁液又はスラリを得るステップと;(b)液体媒体(例えば水、アルコール、又は有機溶媒)中に分散した分離グラフェンシート(非酸化NGP)のグラフェン分散液を得るのに十分な時間の長さで、あるエネルギーレベルの超音波に、この懸濁液又はスラリを曝露するステップ(超音波処理と一般に呼ばれる方法)とを含む。
【0106】
酸化グラフェン(GO)は、反応容器内で、ある期間(出発材料の性質及び使用される酸化剤のタイプに応じて典型的には0.5~96時間)にわたって所望の温度で、出発黒鉛材料の粉末又はフィラメント(例えば、天然黒鉛粉末)を酸化性液体媒体(例えば、硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウムの混合物)中に浸漬することによって得ることができる。上述したように、次いで、得られた酸化黒鉛粒子に熱剥離又は超音波誘発剥離を施して、単離GOシートを生成することができる。次いで、これらのGOシートは、OH基を他の化学基(例えば、-BrやNH2など)で置換することによって様々なグラフェン材料に変換することができる。
【0107】
本明細書では、ハロゲン化グラフェン材料群の一例として、フッ素化グラフェン又はフッ化グラフェンが使用される。フッ素化グラフェンを生成するために採用されている2つの異なる手法がある。(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この手法は、機械的剥離又はCVD成長によって用意されたグラフェンをXeF2又はFベースのプラズマなどのフッ素化剤で処理することを必要とする。(2)多層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離と液相剥離の両方を容易に達成することができる。
【0108】
低温で黒鉛インターカレーション化合物(GIC)CxF(2≦x≦24)が生成されるのに対し、高温でのF2と黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)n又は(C2F)nをもたらす。(CF)nでは、炭素原子はsp3混成であり、したがって、フルオロカーボン層は波形であり、トランスリンクされたシクロヘキサンのいす型立体配座からなる。(C2F)nでは、C原子の半分のみがフッ素化され、隣接する炭素シートの対はどれもC-C共有結合により結合される。フッ素化反応に関する系統的研究から、得られたF/C比が、フッ素化温度、フッ素化ガス中のフッ素の分圧、並びに黒鉛前駆体の物理的特性、例えば黒鉛化度、粒度、及び比表面積に大きく依存することが示された。フッ素(F2)に加え、他のフッ素化剤も使用することができるが、入手できる文献のほとんどは、時としてフッ化物の存在下で、F2ガスによるフッ素化を含む。
【0109】
層状の前駆体材料を個々の層又は数層の状態に剥離するためには、隣接する層間の引力を克服すること、及び層をさらに安定させることが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によって、又は特定の溶媒、界面活性剤、ポリマー、若しくはドナー-アクセプタ芳香族分子を使用する非共有結合修飾によって実現されることがある。液相剥離のプロセスは、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理を含む。
【0110】
グラフェンの窒素化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)でアンモニアに曝すことによって行うことができる。窒素化グラフェンは、水熱法によって、より低温で生成することもできる。これは、例えば、オートクレーブ内にGO及びアンモニアを封止し、次いで温度を150~250℃に上昇させることによって行われる。窒素ドープされたグラフェンを合成する他の方法は、グラフェンに対する窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件下での酸化グラフェンのアンモノリシス、及び様々な温度での酸化グラフェン及び尿素の水熱処理を含む。
【0111】
本発明の実施に使用できるアノード活性材料又はカソード活性材料の種類に対する制限は存在しない。好ましくは、本発明によるロール型電池またはその製造方法では、電池が充電される場合、Li/Li+(すなわち標準電位としてのLi→Li++e-を基準として)Na/Na+基準よりも、1.0ボルト未満(好ましくは0.7ボルト未満)高い電気化学ポテンシャルにおいて、アノード活性材料はアルカリイオン(例えばリチウムイオン)を吸収する。好ましい一実施形態では、アノード活性材料は:(a)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、及び炭素(ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンナノファイバ、及びカーボンナノチューブを含む)の粒子;(b)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)(Si、Ge、Al、及びSnは、それらの高い比容量のために最も望ましい);(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと別の元素との合金又は金属間化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物(例えばSiAl、SiSn);(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCd、並びにそれらの混合物又は複合物の酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物(例えばSnO、TiO2、Co3O4など);(e)それらのプレリチウム化されたバージョン(例えばチタン酸リチウムであるプレリチウム化TiO2);(f)プレリチウム化グラフェンシート;並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0112】
別の好ましい実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、又はそれらの組合せから選択されるグラフェンシートのプレナトリウム化又はプレカリウム化されたバージョンである。上記グラフェン材料の任意の1つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択することができる。グラフェン材料は、アルカリ金属電池のアノード活性材料及びカソード活性材料の両方のための良好な導電性添加剤でもある。
【0113】
充電式アルカリ金属電池では、アノードは、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属又はアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、又はそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含有することができる。石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、ハードカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタネート、NaTi2(PO4)3、Na2Ti3O7(チタン酸ナトリウム)、Na2C8H4O4(テレフタル酸二ナトリウム)、Na2TP(テレフタル酸ナトリウム)、TiO2、NaxTiO2(x=0.2~1.0)、カルボキシレート系材料、C8H4Na2O4、C8H6O4、C8H5NaO4、C8Na2F4O4、C10H2Na4O8、C14H4O6、C14H4Na4O8、又はそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有するアノード活性材料が特に望ましい。
【0114】
一実施形態では、アノードは2又は3種類のアノード活性材料の混合物(例えば活性炭+NaTi2(PO4)3の混合粒子)を含有することができ、カソードは、ナトリウムインターカレーション化合物単独(例えばNaxMnO2)、電気二重層コンデンサ型カソード活性材料単独(例えば活性炭)、擬似容量のためのλ-MnO2/活性炭の酸化還元対であってよい。
【0115】
多様なカソード活性材料を使用して、本発明による方法を実施することができる。カソード活性材料は、典型的には、電池が放電されたときにはアルカリ金属イオンを貯蔵し、再充電されたときにはアルカリ金属イオンを電解質に解放することが可能なアルカリ金属インターカレーション化合物又はアルカリ金属吸収化合物である。カソード活性材料は、無機材料、有機若しくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物(最も望ましいタイプの無機カソード材料)、又は以下のようなそれらの組合せから選択することができる。
【0116】
コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム遷移金属酸化物、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、及びそれらの組合せからなる金属酸化物、金属リン酸塩、及び金属硫化物の群。特に、バナジウム酸リチウムは、VO2、LixVO2、V2O5、LixV2O5、V3O8、LixV3O8、LixV3O7、V4O9、LixV4O9、V6O13、LixV6O13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択されることがある(ここで、0.1<x<5)。リチウム遷移金属酸化物は、層状化合物LiMO2、スピネル化合物LiM2O4、オリビン化合物LiMPO4、ケイ酸塩化合物Li2MSiO4、タボライト化合物LiMPO4F、ホウ酸塩化合物LiMBO3、又はそれらの組合せから選択されることがある(ここで、Mは、遷移金属、又は複数の遷移金属の混合物である)。
【0117】
アルカリ金属セル又はアルカリ金属イオンセルでは、カソード活性材料は、NaFePO4(リン酸鉄ナトリウム)、Na0.7FePO4、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、Na3V2(PO4)2F3、Na2FePO4F、NaFeF3、NaVPO4F、Na3V2(PO4)2F3、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、NaV6O15、NaxVO2、Na0.33V2O5、NaxCoO2(コバルト酸ナトリウム)、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Nax(Fe1/2Mn1/2)O2、NaxMnO2(ナトリウムマンガンブロンズ)、λ-MnO2、Na0.44MnO2、Na0.44MnO2/C、Na4Mn9O18、NaFe2Mn(PO4)3、Na2Ti3O7、Ni1/3Mn1/3Co1/3O2、Cu0.56Ni0.44HCF(銅及びニッケルのヘキサシアノ鉄酸塩)、NiHCF(ヘキサシアノ鉄酸ニッケル)、NaxCoO2、NaCrO2、Na3Ti2(PO4)3、NiCo2O4、Ni3S2/FeS2、Sb2O4、Na4Fe(CN)6/C、NaV1-xCrxPO4F、SeySz(セレン及びセレン/硫黄、z/yは0.01~100)、Se(Sを含有せず)、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物(又はそれらのカリウムに対応するもの)を含有することができる。
【0118】
カソード活性材料として使用するための他の無機材料は、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることがある。特に、無機材料は、TiS2、TaS2、MoS2、NbSe3、MnO2、CoO2、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択される。これらについては、後でさらに論じる。
【0119】
特に、無機材料は、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択されることがある。
【0120】
或いは、カソード活性材料は、電解質と直接接触するアルカリ金属イオン捕捉官能基又はアルカリ金属イオン貯蔵表面を有する機能性材料又はナノ構造材料から選択することができる。好ましくは、この官能基は、アルカリ金属イオンと可逆的に反応する、アルカリ金属イオンと酸化還元対を形成する、又はアルカリ金属イオンと化学複合体を形成する。機能性材料又はナノ構造材料は、(a)ソフトカーボン、ハードカーボン、ポリマー炭素若しくは炭化樹脂、メソフェーズカーボン、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセルラー炭素発泡体、又は部分黒鉛化炭素から選択されるナノ構造又は多孔質の不規則炭素材料;(b)単層グラフェンシート又は多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;(c)単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤ若しくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、又はそれらの組合せ;(e)カルボニル含有有機又はポリマー分子;(f)カルボニル基、カルボキシル基、又はアミン基を含有する機能性材料;並びにそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0121】
機能性材料又はナノ構造材料は、ポリ(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン-3,6-メチレン)、NaxC6O6(x=1~3)、Na2(C6H2O4)、Na2C8H4O4(テレフタル酸Na)、Na2C6H4O4(trans-trans-ムコン酸Li)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)スルフィドポリマー、PTCDA、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラキノン(anthraquinon)、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。望ましくは機能性材料又はナノ構造材料は、-COOH、=O、-NH2、-OR、又はCOORから選択される官能基を有し、ここでRは炭化水素基である。
【0122】
有機材料又はポリマー材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS2)3]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li4C6O6、Li2C6O6、Li6C6O6、又はこれらの組合せから選択されることがある。
【0123】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0124】
有機材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物から選択されることがある。
【0125】
リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることがある。好ましくは、リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態での、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択される。
【0126】
本発明者らは、本発明による直接活性材料-電解質注入法によって用意された本発明によるリチウム電池におけるカソード活性材料として、多様な2次元(2D)無機材料を使用することができることを発見した。層状材料は、予想外の電子的特性、及びリチウムイオンに対する良好な親和性を示すことができる2D系の種々の提供源となる。黒鉛は最もよく知られている層状材料であるが、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)、遷移金属酸化物(TMO)、並びにBN、Bi2Te3、及びBi2Se3などの広範な他の化合物も、2D材料の供給源となり得る。
【0127】
好ましくは、リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せ、から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートから選択され、ここで、ディスク、プレートレット、又はシートは100nm未満の厚さを有する。リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、(i)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(ii)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(iii)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(iv)窒化ホウ素、又は(v)それらの組合せ、から選択される化合物のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートを含むことがあり、ここで、ディスク、プレートレット、コーティング、又はシートは100nm未満の厚さを有する。
【0128】
単層又は数層(最大20層)の非グラフェン2Dナノ材料は、以下のような幾つかの方法によって製造することができる。機械的切断、レーザーアブレーション(例えば、レーザパルスを使用してTMDを単一層までアブレーションする)、液相剥離、及び薄膜技法の合成、例えば、PVD(例えば、スパッタリング)、蒸着、気相エピタキシ、液相エピタキシ、化学蒸着エピタキシ、分子線エピタキシ(MBE)、原子層エピタキシ(ALE)、及びそれらのプラズマ型。
【0129】
広範な電解質を本発明の実施に使用することができる。非水性有機及び/又はイオン液体電解質が最も好ましい。本明細書で採用される非水電解質は、電解質塩を非水溶媒に溶解することによって生成されることがある。リチウム二次電池の溶媒として採用されている任意の既知の非水溶媒を採用することができる。主として、炭酸エチレン(EC)と、上記炭酸エチレンよりも融点が低く、ドナー数が18以下の非水溶媒の少なくとも1種とを含む混合溶媒からなる非水溶媒(本明細書では以後、第2の溶媒と呼ぶ)を好ましくは採用することができる。この非水溶媒は、(a)黒鉛構造で良好に生じた炭質物を含む負電極に対して安定であり、(b)電解質の還元又は酸化分解を抑制するのに効果的であり、且つ(c)導電率が高いという利点がある。炭酸エチレン(EC)のみから構成される非水電解質は、黒鉛化炭質物による還元により、分解に対して比較的安定であるという利点がある。しかし、ECの融点は39~40℃と比較的高く、ECの粘度も比較的高く、そのためECの導電率は低く、したがって、EC単独では、室温以下で動作させる二次電池用電解質として使用するには不適切である。ECとの混合物中で使用される第2の溶媒は、溶媒混合物の粘度をEC単独の粘度よりも低くし、それにより混合溶媒のイオン導電率を高める働きをする。さらに、ドナー数が18以下(炭酸エチレンのドナー数は16.4)の第2の溶媒を用いると、上記炭酸エチレンを容易に且つ選択的にリチウムイオンで溶媒和することができ、したがって、十分に黒鉛化して生成された炭質物との第2の溶媒の還元反応は抑制されると仮定される。さらに、第2の溶媒のドナー数が18以下に制御されるとき、リチウム電極への酸化分解電位を4V以上に容易に上昇させることができ、それにより高電圧のリチウム二次電池を製造することが可能になる。
【0130】
好ましい第2の溶媒は、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、蟻酸プロピル(PF)、蟻酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、及び酢酸メチル(MA)である。これらの第2の溶媒は、単独で採用されても、2種以上の組合せで採用されてもよい。より望ましくは、この第2の溶媒は、16.5以下のドナー数を有するものから選択されるべきである。この第2の溶媒の粘度は、好ましくは、25℃で28cps以下にすべきである。
【0131】
混合溶媒中の上記炭酸エチレンの混合比は、好ましくは、10~80体積%にすべきである。炭酸エチレンの混合比がこの範囲外になる場合、溶媒の導電率が低下されることがあり、又は溶媒がより分解しやすくなる傾向があり、それにより充放電効率が悪化する。炭酸エチレンのより好ましい混合比は、20~75体積%である。非水溶媒中の炭酸エチレンの混合比が20体積%以上に増加されるとき、リチウムイオンに対する炭酸エチレンの溶媒和効果が促進され、溶媒分解抑制効果を向上させることができる。
【0132】
好ましい混合溶媒の例は、EC及びMECを含む組成物;EC、PC、及びMECを含む組成物;EC、MEC、及びDECを含む組成物;EC、MEC、及びDMCを含む組成物;並びにEC、MEC、PC、及びDECを含む組成物であり、MECの体積比は30~80%の範囲内で制御される。MECの体積比を30~80%、より好ましくは40~70%の範囲から選択することによって、溶媒の導電率を向上させることができる。溶媒の分解反応を抑制する目的で、二酸化炭素を溶解した電解質を採用し、それにより電池の容量とサイクル寿命の両方を効果的に改良することができる。非水電解質中に取り込まれる電解質塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]などのリチウム塩から選択されることがある。それらの中でも、LiPF6、LiBF4、及びLiN(CF3SO2)2が好ましい。非水溶媒中の上記電解質塩の含有量は、0.5~2.0mol/lであることが好ましい。
【0133】
イオン液体はイオンのみから構成されている。イオン液体は、所望の温度を超えたときには融解状態又は液体状態になる低融解温度の塩である。例えば、塩は、その融点が100℃未満である場合にイオン液体とみなされる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温イオン液体(RTIL)と呼ばれる。IL塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せによる弱い相互作用によって特徴付けられる。これは、可撓性(アニオン)及び非対称性(カチオン)による結晶化の傾向を低減する。
【0134】
典型的なよく知られているイオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI)カチオンと、N,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって形成される。この組合せにより、最大約300~400℃で、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率、並びに低い分解性及び低い蒸気圧を有する流体が得られる。これは、一般に低い揮発性及び非引火性、したがって電池に関してはるかに安全な電解質を示唆する。
【0135】
イオン液体は、基本的には、多様な成分の調製が容易であることにより、本質的に無制限の数の構造変化を生じる有機イオンから構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、所与の用途に合わせて所望の特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、とりわけ、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウム、及び第四級アンモニウム塩と、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、及びヘキサフルオロホスフェートとを含む。それらの組成に基づいて、イオン液体は、基本的には非プロトン性型、プロトン性型、及び双性イオン型を含む異なるクラスに入り、それぞれが特定の用途に適している。
【0136】
室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンとしては、限定はしないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、及びテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、並びにトリアルキルスルホニウムが挙げられる。RTILの一般的なアニオンとしては、限定はしないが、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-などが挙げられる。相対的に言えば、イミダゾリウム又はスルホニウムベースのカチオンと、AlCl4
-、BF4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、NTf2
-、N(SO2F)2
-、又はF(HF)2.3
-などの錯体ハロゲン化物アニオンとの組合せが、良好な動作伝導率を有するRTILをもたらす。
【0137】
RTILは、高い固有のイオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実質的にゼロの)蒸気圧、非引火性、室温よりも上及び下の広い温度範囲で液体を維持する機能、高い極性、高い粘度、及び広い電気化学的窓など、典型的な特性を有することができる。高い粘度を除いて、これらの特性は、スーパーキャパシタにおける電解質成分(塩及び/又は溶媒)としてRTILを使用する際に望ましい特性である。
【0138】
本発明の実施に使用できる固体電解質の種類に関する制限はない。固体電解質は、固体ポリマー型、金属酸化物型(例えばLIPON)、固体硫化物型(例えばLi2S-P2S5)、ハロゲン化物型、水素化物型、及び窒化物型などから選択することができる。使用できる主要な無機固体電解質は、ペロブスカイト型、NASICON型、ガーネット型、及び硫化物型の材料である。代表的なペロブスカイト固体電解質はLi3xLa2/3-xTiO3であり、これは室温において10-3S/cmを超えるリチウムイオン伝導率を示す。
【0139】
NASICON型化合物は、一般にAM2(PO4)3の式で表され、A部位はLi、Na、又はKが占める。M部位は、通常、Ge、Zr、又はTiが占める。特に、LiTi2(PO4)3系が特に有用である。LiZr2(PO4)3のイオン伝導率は非常に低いが、Hf又はSnの置換によって改善可能である。これは、置換によりLi1+xMxTi2-x(PO4)3(M=Al、Cr、Ga、Fe、Sc、In、Lu、Y、又はLa)を形成することでさらに向上させることができ、Alの置換が最も有効である。
【0140】
ガーネット型材料は、一般式A3B2Si3O12で表され、式中、A及びBのカチオンは、それぞれ8配位及び6配位を有する。幾つかの代表的な系は、Li5La3M2O12(M=Nb又はTa)、Li6ALa2M2O12(A=Ca、Sr、又はBa;M=Nb又はTa)、Li5.5La3M1.75B0.25O12(M=Nb又はTa;B=In又はZr)、並びに立方晶系のLi7La3Zr2O12及びLi7.06M3Y0.06Zr1.94O12(M=La、Nb、又はTa)である。Li6.5La3Zr1.75Te0.25O12の室温イオン伝導率は1.02×10-3S/cmである。
【0141】
以下では、本発明を実施する最良の形態を示すために、多数の異なるタイプのアノード活性材料、カソード活性材料、及び導電性材料層(例えば、Cu箔、Al箔、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、及び金属発泡体)の例を提供する。これらの例示的な実施例、並びに本明細書及び図面の他の箇所は、個別に又は組み合わせて、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分すぎるものである。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0142】
実施例1:電子伝導性支持多孔質基材の説明的な例
様々な種類の金属発泡体及び微細金属ウェブ/スクリーンは、アノード又はカソード中の導電性支持多孔質層として使用するために市販されており;例えばNi発泡体、Cu発泡体、Al発泡体、Ti発泡体、Niメッシュ/ウェブ、ステンレス鋼繊維メッシュなどである。金属被覆ポリマー発泡体及び炭素発泡体も集電体として使用される。これらの導電性支持多孔質基材層の最も望ましい厚さ範囲は、1000μm、好ましくは10~500μm、より好ましくは50~200μmである。
【0143】
実施例2:Ni発泡体テンプレートから得られたNi発泡体及びCVDグラフェン発泡体ベースの多孔質層
CVDグラフェン発泡体を製造するための手順は、以下の公開されている文献で開示されるものから適合した:Chen,Z.et al.“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapor deposition,” Nature Materials,10,424-428(2011)。ニッケル発泡体、ニッケルの相互接続された3D足場を有する多孔質構造を、グラフェン発泡体の成長のためのテンプレートとして選択した。簡潔には、周囲圧力下にて1000℃でCH4を分解することによって炭素をニッケル発泡体に導入し、次いでニッケル発泡体の表面にグラフェンフィルムを堆積させた。ニッケルとグラフェンの熱膨張係数の相違により、グラフェンフィルムに波形や皺が生じた。この実施例で形成された4つのタイプの発泡体、すなわちNi発泡体、CVDグラフェン被覆Ni発泡体、CVDグラフェン発泡体(Niはエッチング除去される)、及び導電性ポリマー結合CVDグラフェン発泡体を、本発明によるリチウム電池での集電体として使用した。
【0144】
支持Ni発泡体からグラフェン発泡体を回収(分離)するために、Niフレームをエッチング除去した。Chenらによって提案された手順では、高温HCl(又はFeCl3)溶液によってニッケル骨格をエッチング除去する前に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の薄層を支持体としてグラフェンフィルムの表面に堆積して、ニッケルエッチング中にグラフェンネットワークが崩壊するのを防止した。高温のアセトンによってPMMA層を注意深く除去した後、脆弱なグラフェン発泡体試料が得られた。PMMA支持層の使用は、グラフェン発泡体の自立フィルムの作製に重要であると考えられていた。その代わりに、粘結剤樹脂として導電性ポリマーを使用して、グラフェンを一体に保持するとともに、Niをエッチングで除去した。グラフェン発泡体又はNi発泡体の厚さ範囲は35μm~600μmであった。
【0145】
本明細書において使用されるNi発泡体又はCVDグラフェン発泡体の層は、本発明のロール型電池のアノード又はカソード又はその両方の成分(アノード又はカソード活性材料+任意選択の導電性添加剤+液体電解質)を収容するための伝導性支持多孔質層又は電子伝導性層として意図されている。同じ発泡体層は、上にコーティングされる電極活性材料、樹脂粘結剤、及び導電性添加剤の層を支持するために、従来のアルカリ金属セル中の集電体としても使用される。
【0146】
例えば、有機液体電解質(例えばPC-EC中に溶解させた1~4.0MのLiPF
6)中に分散させたSiナノ粒子からゲル状材料を形成した(アノード活性材料の離散層)。このアノード活性材料層を、Ni発泡体の表面上にコーティングした。次に、同じ電解質のさらなる離散層を活性材料層の上に噴霧した。得られた3層積層体を巻回してアノードロールを得た。同じ液体電解質中に分散させたグラフェン担持LFPナノ粒子からカソードスラリを形成し、これをNi発泡体層の2つの表面上に噴霧した。同じ電解質をそれぞれのアノード活性材料層の上に噴霧した。この結果得られた5層積層体を巻回してカソードロールを形成した。Siナノ粒子ベースのアノードロール、多孔質セパレータ層、及びLFPベースのカソードロールを次に互いに積み重ねて、
図1(D)中に概略的に示されるようなロール型リチウムイオン電池セルを形成した。比較のため、同じカソード材料又はアノード材料を用いて従来の電池セルを作製した。
【0147】
実施例3:ピッチベースの炭素発泡体からの黒鉛発泡体ベースの導電性多孔質層
ピッチパウダー、顆粒、又はペレットを、発泡体の所望の最終形状を有するアルミニウム鋳型に入れる。Mitsubishi ARA-24メソフェーズピッチを利用した。試料を1トール未満に排気し、次いで約300℃の温度に加熱する。この時点で、真空を解放して窒素ブランケットとし、次いで1,000psiまでの圧力を加えた。次いで、系の温度を800℃に上昇させた。これは2℃/分の速度で行った。温度を少なくとも15分間保って浸漬を実現し、次いで炉の電力を切って約1.5℃/分の速度で室温まで冷却し、それと共に約2psi/分の速度で圧力を解放した。最終的な発泡体の温度は、630℃及び800℃であった。冷却サイクル中、圧力は大気条件まで徐々に解放される。次いで、発泡体を窒素ブランケット下で1050℃まで熱処理(炭化)し、次いで、黒鉛るつぼ内で、アルゴン中で2500℃及び2800℃(黒鉛化)まで別々に熱処理した。黒鉛発泡体層は20~50μm及び75~500μmの厚さ範囲で利用可能である。
【0148】
実施例4:天然黒鉛粉末からの酸化グラフェン(GO)及び還元酸化グラフェン(RGO)ナノシートの調製
Huadong Graphite Co.(中国、青島)製の天然黒鉛を出発材料として使用した。よく知られているmodified Hummers法に従うことによってGOが得られた。この方法は、2つの酸化段階を含んでいた。典型的な手順において、以下の条件で第1の酸化を実現した。1100mgの黒鉛を1000mLの沸騰フラスコに入れた。次いで、K2S2O8、20gのP2O5、及び400mLの濃縮H2SO4水溶液(96%)をフラスコに加えた。混合物を還流下で6時間加熱し、次いで室温で20時間安置した。酸化黒鉛を濾過し、中性pHになるまで多量の蒸留水ですすいだ。この最初の酸化の終わりに、ウェットケーキ状物質が回収された。
【0149】
第2の酸化プロセスでは、前に収集されたウェットケーキを、69mLの濃縮H2SO4水溶液(96%)を含む沸騰フラスコに入れた。9gのKMnO4をゆっくりと加えながら、フラスコを氷浴内で保った。過熱を避けるように注意した。得られた混合物を35℃で2時間撹拌し(試料の色が暗い緑色に変わった)、続いて140mLの水を加えた。15分後、420mLの水及び15mLの30wt%H2O2水溶液を加えることによって反応を停止させた。この段階での試料の色は、明るい黄色に変わった。金属イオンを除去するために、混合物を濾過し、1:10HCl水溶液ですすいだ。収集した物質を2700gで穏やかに遠心分離し、脱イオン水ですすいだ。最終生成物は、乾燥抽出物から推定されるように、1.4wt%のGOを含むウェットケーキであった。その後、脱イオン水で希釈したウェットケーキ物質を軽く超音波処理することによって、GOプレートレットの液体分散液を得た。
【0150】
純水の代わりに界面活性剤水溶液でウェットケーキを希釈することによって、界面活性剤で安定化されたRGO(RGO-BS)を得た。Sigma Aldrichによって提供されているコール酸ナトリウム(50wt%)とデオキシコール酸ナトリウム(50wt%)の塩の市販の混合物を使用した。界面活性剤の重量画分は、0.5wt%であった。全ての試料に関してこの画分を一定に保った。13mmステップディストラクタホーンと、3mmテーパ付きマイクロチップとを備え、20kHzの周波数で動作するBranson Sonifier S-250Aを使用して超音波処理を行った。例えば、0.1wt%のGOを含む水溶液10mLを10分間超音波処理し、その後、2700gで30分間遠心分離して、溶解していない大きな粒子、凝集物、及び不純物を除去した。0.1wt%のGO水溶液10mLを50mL沸騰フラスコに入れることを含む方法に従うことによって、RGOを生成するために、上記のようにして得られたGOの化学的還元を行った。次いで、界面活性剤によって安定化させた混合物に、35wt%のN2H4(ヒドラジン)水溶液10μL及び28wt%のNH4OH(アンモニア)水溶液70mLを加えた。溶液を90℃に加熱し、1時間還流させた。反応後に測定されたpH値は約9だった。還元反応中、試料の色は暗黒色に変わった。
【0151】
RGOからグラフェン紙のシートを作製し、これを、幾つかのロール型リチウム電池中のアノード活性材料及びカソード活性材料のいずれか又は両方の中の導電性添加剤又は離散電子伝導性層として使用した。プレリチウム化RGO(例えばRGO+リチウム粒子、又はリチウム被覆をあらかじめ堆積したRGO)は、選択されたリチウムイオンセルの湿潤アノード活性材料混合物を形成するために液体電解質と混合されるアノード活性材料としても使用した。選択されたカソード活性材料(それぞれTiS2ナノ粒子及びLiCoO2粒子)及び非リチウム化RGOシートを液体電解質中に分散させて、湿潤カソード活性材料混合物を調製した。アノード層及びカソード層をそれぞれ形成するために、湿潤アノード活性混合物及びカソード活性混合物をCu箔及び黒鉛発泡体の表面に送給した。これらの層を別々に巻回して、それぞれアノードロール及びカソードロールを得た。電極ロール、及び2つの乾燥電極ロールの間の配置されたセパレータを次に組み立てて、Al-プラスチック積層パッケージングエンベロープ内に入れ、続いて液体電解質を注入して、リチウム電池セルを形成した。比較の目的で、スラリコーティング及び乾燥の手順を行って、従来の電極及びセルを作製した。
【0152】
実施例5:純粋なグラフェンのシート(酸素0%)の調製
GOシート中の高欠陥集団が個々のグラフェン面の導電率を低下させるように作用する可能性を認識して、本発明者らは、純粋なグラフェンのシート(例えば、酸化されておらず、酸素を含まない、ハロゲン化されておらず、ハロゲンを含まない)を使用することで、高い導電率及び熱伝導率を有する導電性添加剤を得ることができるかどうか研究することにした。プレリチウム化された純粋なグラフェン及びプレナトリウム化された純粋なグラフェンも、それぞれリチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池のアノード活性材料として使用した。直接超音波処理又は液相製造法を使用することによって、純粋なグラフェンのシートを製造した。
【0153】
典型的な手順では、約20μm以下のサイズに粉砕した5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散剤を含む。DuPont社製のZonyl(登録商標)FSO)中に分散させて、懸濁液を得た。グラフェンシートの剥離、分離、及びサイズ減少のために、85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450 Ultrasonicator)を15分~2時間の期間にわたって使用した。得られたグラフェンシートは、一度も酸化されておらず、酸素を含まず、比較的欠陥のない純粋なグラフェンである。純粋なグラフェンは、非炭素元素を本質的に含まない。
【0154】
導電性添加剤としての純粋なグラフェンシートと、アノード活性材料(又はカソード中のカソード活性材料)とから、スラリコーティング、乾燥、及び積層の従来手順を用いて、厚さ約100μmの別々のアノード層及びカソード層を作製した。本発明のロール型電池を作製するために、アノード層を巻回してアノードロールを得て、これとは別に、カソード層を巻回してカソード層を得た。次にアノードロール、セパレータ、及びカソードロールを配列して、ステンレス鋼ケーシング中に挿入し、次にこれに液体電解質を充填した。比較のため、アノードをコーティングしたCu箔、セパレータ、及びカソードをコーティングしたAl箔をともに積層して積層体を形成し、これを巻回してロールに得て、18650型セルを作製することによって、従来のセルを作製した。リチウムイオン電池とリチウム金属電池の両方を調べた。ナトリウムイオンセルについても調べた。
【0155】
実施例6:リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池のアノード活性材料としてのプレリチウム化及びプレナトリウム化されたグラフェンフッ化物シートの調製
GFを製造するために幾つかの方法を使用したが、ここでは一例として1つの方法のみを述べる。典型的な手順では、インターカレート化合物C2F・xClF3から、大きく剥離された黒鉛(HEG)を調製した。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化された大きく剥離された黒鉛(FHEG)を生成した。予冷されたテフロン(Teflon)反応器に20~30mLの予冷された液体ClF3を充填し、反応器を閉じ、液体窒素温度まで冷却した。次いで、ClF3ガスが反応炉の内部に入り込めるようにする穴を有する容器に、1g以下のHEGを入れた。7~10日で、近似式C2Fを有するグレーベージュの生成物が形成された。
【0156】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶媒(別々に、メタノールとエタノール)と混合し、超音波処理(280W)を30分間行って、均質な黄色っぽい分散液を生成した。溶媒の除去後、分散液は茶色っぽい粉末になった。液体電解質中で、グラフェンフッ化物粉末を表面安定化されたリチウム粉末と混合し、アノード集電体の細孔への含浸前又は後にプレリチウム化を生じさせた。めっき手順と実質的に同様の手順を用いて、フッ化グラフェンのプレナトリウム化を電気化学的に行った。
【0157】
実施例7:リチウム金属電池のリン酸鉄リチウム(LFP)カソード
無被覆の又は炭素被覆されたLFP粉末が、幾つかの供給元から市販されている。LFP粉末を圧密して焼結することによって、スパッタリング用のLFPターゲットを調製した。グラフェンフィルム上、及びそれとは別にカーボンナノファイバ(CNF)マット上で、LFPのスパッタリングを行った。次いで、LFP被覆グラフェンフィルムを破砕して粉末化して、LFP被覆グラフェンシートを形成した。含浸、圧縮、及び巻回の本発明による手順を用いて、炭素被覆LFP粉末及びグラフェン担持LFPの両方を、別々に、液体電解質とともに、多孔質基材中に組み込んで、カソードロールを形成した。同様の方法で、黒鉛アノードロールを作製した。次に、アノードロール、セパレータ、及びカソードロールを積み重ねてロール型電池を形成した。比較のため、スラリコーティング、乾燥、及び積層の従来手順により、従来技術の円筒形セルを作製した。
【0158】
実施例8:ナトリウムイオン電池のアノード活性材料としてのテレフタル酸二ナトリウム(Na2C8H4O4)の調製
再結晶方法によって、純粋なテレフタル酸二ナトリウムを得た。テレフタル酸をNaOH水溶液に加えて水溶液を調製し、次にその混合物にエタノール(EtOH)を加えて、テレフタル酸二ナトリウムを水/EtOH混合物中に沈殿させた。共鳴安定化のため、テレフタル酸(terephtalic acid)は比較的低いpKa値を有し、そのためNaOHによって容易に脱プロトンして、酸塩基化学によってテレフタル酸二ナトリウム(Na2TP)を得ることができる。典型的な手順において、テレフタル酸(3.00g、18.06mmol)を、室温においてEtOH(60mL)中の水酸化ナトリウム(1.517g、37.93mmol)で処理した。24時間後、懸濁した反応混合物を遠心分離し、上澄み溶液をデカンテーションした。得られた沈殿物をEtOH中に再分散させ、次に再び遠心分離した。この手順を2回繰り返して、白色固体を得た。生成物を真空中150℃で1時間乾燥させた。別の試料において、GOをNaOH水溶液に加えて(5重量%のGOシート)、類似の反応条件下でグラフェン担持テレフタル酸二ナトリウムのシートを作製した。
【0159】
次に、(i)アノード集電体の発泡体の細孔中にスラリを含浸させ、圧縮し、ロール形状に巻回してカソードロールを作製する本発明による方法(Na箔ベースのアノードと組み合わせてロール型Na金属セルが形成される)と;(ii)スラリコーティング、乾燥、及び(セパレータ及びNa箔との)積層により従来のナトリウム金属セルを形成する従来手順との両方を用いて、炭素-テレフタル酸二ナトリウム混合粉末及びグラフェン担持テレフタル酸二ナトリウムを、別々に、それぞれ液体電解質とともに、電池中に組み込んだ。
【0160】
実施例9:リチウム電池の遷移金属酸化物カソード活性材料の一例としてのV2O5
V2O5粉末が単独で市販されている。典型的な実験において、グラフェン担持V2O5粉末試料の調製のために、LiCl水溶液にV2O5を混合することによって五酸化バナジウムゲルを得た。LiCl溶液(Li:Vのモル比を1:1に保った)との相互作用によって得られたLi+交換ゲルをGO懸濁液と混合し、次いでテフロンライニングされたステンレス鋼35mlオートクレーブに入れて封止し、12時間180℃に加熱した。そのような水熱処理後、未処理の固体を収集し、十分に洗浄し、2分間超音波処理し、70℃で12時間乾燥させ、その後、水中でさらなる0.1%GOと混合し、超音波処理してナノベルトサイズを破砕し、次いで200℃で噴霧乾燥させて、グラフェン包有複合粒子を得た。
【0161】
次に、本発明による方法(コーティング、乾燥、圧縮、及びカソードロールへの巻回)により、V2O5粉末(導電性添加剤としてのカーボンブラック粉末を有する)とグラフェン担持V2O5粉末との両方を、別々に、液体電解質とともに用いて、カソードロールを作製した。Li金属箔をアノード層として使用した。従来のセルを作製するために、スラリコーティング、乾燥、及び積層の従来手順にも従った。
【0162】
実施例10:リチウムイオン電池のリチウム遷移金属酸化物カソード活性材料の一例としてのLiCoO2
市販のLiCoO2粉末、カーボンブラック粉末、及びPVDF樹脂粘結剤をNMP溶媒中に分散させてスラリを形成し、これをAL箔集電体の両側の上にコーティングし、次に真空乾燥させてカソード層を形成した。このカソード層を巻回してカソードロールを得た。黒鉛粒子及びPVDF樹脂粘結剤をNMP溶媒中に分散させてスラリを形成し、これをCu箔集電体の両側の上にコーティングし、次に真空乾燥させて、アノード層を形成した。このアノード層を巻回してアノードロールを得た。次に、アノードロール、多孔質セパレータ、及びカソードロールを配列して、ケーシング内に入れ、液体電解質を充填して、ロール型リチウムイオンセルを形成した。比較のため、アノード層、セパレータ、及びカソード層を積層し、Al-プラスチックハウジング内に入れ、これに液体電解質を注入して、従来のリチウムイオン電池を形成した。
【0163】
実施例11:リチウムイオン電池のリチウム遷移金属酸化物カソード活性材料の一例としてのLiCoO2
市販のLiCoO2粉末、カーボンブラック粉末、及びPVDF樹脂粘結剤をPC-EC/LiPF6電解質中に分散させてスラリを形成し、これをAL箔集電体の両側の上にコーティングして、2つのカソード活性材料層及び離散電子伝導性層を含む3層構造を形成した。それぞれのカソード活性材料層の上にポリマーゲル層を噴霧して5層積層体を形成し、これを巻回してカソードロールを得た。黒鉛粒子、PVDF樹脂粘結剤、及び液体電解質の混合物層をCu箔の両側の上にコーティングして3層構造を形成した。このアノード活性材料層に、ポリマー電解質の離散層をそれぞれコーティングした。得られた5層構造を巻回してアノードロールを得た。アノードロール、多孔質セパレータ、及びカソードロールを配列して、ケーシング内に入れ、液体電解質を充填して、ロール型リチウムイオンセルを形成した。比較のため、アノード層、セパレータ、及びカソード層を積層し、Al-プラスチックハウジング内に入れ、これに液体電解質を注入して、従来のリチウムイオン電池を形成した。
【0164】
実施例12:混合遷移金属酸化物ベースのカソード活性材料
例として、Na1.0Li0.2Ni0.25Mn0.75Oδ、Ni0.25Mn0.75CO3、又はNi0.25Mn0.75(OH)2のカソード活性材料の合成のために、Na2CO3、及びLi2CO3を出発化合物として使用した。適切なモル比の材料を互いに粉砕し、最初に空気中500℃で8時間、次いで最終的に空気中800℃で8時間の熱処理を行い、炉中冷却した。
【0165】
従来の手順を用いた電極作製のために、アルミニウム箔のシートにカソード混合物のN-メチルピロリジノン(NMP)スラリをコーティングした。電極混合物は、82重量%の活性酸化物材料、8重量%の導電性カーボンブラック(Timcal Super-P)、及び10重量%のPVDF粘結剤(Kynar)から構成される。Na1.0Li0.2Ni0.25Mn0.75Oδ粉末(導電性添加剤としてのカーボンブラック粉末を有する)及びグラフェン担持Na1.0Li0.2Ni0.25Mn0.75Oδ粉末の両方を別々に使用した。キャスティング後、電極を最初に70℃で2時間乾燥させ、続いて80℃で少なくとも6時間の動的真空乾燥を行った。本発明のロール型電池を作製するため、5-層カソード積層体(中央の伝導性層としてのCNT/グラフェンマット、2つの表面の上にカソード活性材料-粘結剤-電解質の2つの別々の層がコーティングされ、次にこれに液体電解質の2つの別々の離散層を噴霧した)を巻回してカソードロールを得た。アノード用に、ヘキサンを用いて油を除去し、次に圧延し、打ち抜いたナトリウムチャンク(Aldrich、99%)からナトリウム金属箔を切り取った。次にカソードロール、セパレータ、及びNa箔アノードを配列し、電解質としてのPC/EC中の1MのNaClO4)を有するロール型セルを形成した。比較の目的で従来の電池セルも作製した。セルについて、Na/Na+に対して4.2Vのカットオフまで定電流条件でサイクルを行い(15mA/g)、次いで種々の電流レートで2.0Vのカットオフ電圧まで放電させた。
【0166】
作製したすべての電池セルで、充電貯蔵容量を定期的に測定し、サイクル数の関数として記録した。本明細書に言及される比放電容量は、複合カソードの単位質量(カソード活性材料、導電性添加剤又は支持体、粘結剤、及びあらゆる任意選択の添加剤を合わせた重量が考慮されるが、集電体は除かれる)当たりの放電中にカソード中に挿入される全電荷である。比充電容量は、複合カソードの単位質量当たりの充電量を意味する。この項で示される比エネルギー及び比出力の値は、すべてのパウチセルで全セル重量を基準としている。所望の数だけ繰り返した充電及び再充電のサイクル後の選択された試料の形態的又は微細構造的変化を透過型電子顕微鏡法(TEM)及び走査型電子顕微鏡法(SEM)の両方を用いて観察した。
【0167】
実施例13:Na3V2(PO4)3/C及びNa3V2(PO4)3/グラフェンのカソード
以下の手順による固相反応によってNa3V2(PO4)3/C試料を合成した:NaH2PO4・2H2O(99.9%、Alpha)及びV2O3(99.9%、Alpha)粉末の化学量論量の混合物を前駆体としてメノウジャーに入れ、次いでその前駆体をステンレス鋼容器中の遊星ボールミル中400rpmで8時間ボールミル粉砕した。ボールミル粉砕中、炭素被覆試料用に、糖(99.9%、Alpha)も炭素前駆体、及びV3+の酸化を防止する還元剤として加えた。ボールミル粉砕後、混合物をペレットにプレス成形し、次いでAr雰囲気中900℃で24時間加熱した。これとは別に、Na3V2(PO4)3/グラフェンカソードを同様の手順で、糖の代わりに酸化グラフェンを使用して作製した。これらのカソード活性材料を、電解質としてPC+DOL中の1MのNaPF6塩を含む数個のNa金属セル中に使用した。従来のNa金属セル及び本発明のロール型セルの両方を作製した。
【0168】
実施例14:リチウム金属電池のカソード活性材料としての有機材料(Li
2C
6O
6)
ロジゾン酸二リチウム(Li
2C
6O
6)を合成するために、ロジゾン酸二水和物(以下の式では種1)を前駆体として使用した。両方のエネジオール酸機能を中和するために、塩基性リチウム塩Li
2CO
3を水性媒体中で使用することができる。厳密な化学量論量の両方の反応物、すなわちロジゾン酸と炭酸リチウムを10時間反応させて90%の収率を実現した。ロジゾン酸二リチウム(種2)は少量の水にさえ容易に溶解可能であり、水分子が種2に存在することを示唆する。水を真空中において180℃で3時間除去し、無水形(種3)を得た。
【0169】
カソード活性材料(Li2C6O6)と導電性添加剤(カーボンブラック、15%)との混合物を10分間ボールミル加工し、得られたブレンドを研磨して複合物粒子を製造した。電解質は、PC-EC中で1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)であった。
【0170】
式Li2C6O6中の2つのLi原子は固定構造の一部であり、可逆的なリチウムイオンの貯蔵及び解放に関与しないことに留意されたい。これは、リチウムイオンがアノード側から来なければならないことを示唆する。したがって、アノードにはリチウム源(例えば、リチウム金属又はリチウム金属合金)が存在しなければならない。アノード集電体(Cu箔)には、(例えば、スパッタリング又は電気化学めっきによって)リチウムの層が堆積される。これはリチウム被覆層(又は単にリチウム箔)、多孔質セパレータ、及び含浸させたカソードロールを組み立ててケーシングに収容する前に行うことができる。圧縮力下で、導電性多孔質層の細孔に、液体電解質でぬれたカソード活性材料及び導電性添加剤(Li2C6O6/C複合粒子)を浸透させる。比較のため、対応する従来のLi金属セルを、従来のスラリコーティング、乾燥、積層、パッケージング、及び電解質注入の手順によっても作製した。
【0171】
実施例15:ナトリウム金属電池のカソード活性材料としての有機材料(Na
2C
6O
6)
ロジゾン酸二ナトリウム(Na
2C
6O
6)を合成するために、ロジゾン酸二水和物(以下の式中の種1)を前駆体として使用した。両方のエンジオール酸官能基を中和するために、塩基性ナトリウム塩のNa
2CO
3を水性媒体中で使用することができる。厳密な化学量論量のロジゾン酸及び炭酸ナトリウムの両方の反応物を10時間反応させて80%の収率を実現できた。ロジゾン酸二ナトリウム(種2)は、少量の水にさえも容易に溶解可能であり、水分子が種2に存在することを示唆している。水を真空中180℃で3時間除去し、無水型(種3)を得た。
【0172】
カソード活性材料(Na2C6O6)と導電性添加剤(カーボンブラック、15%)との混合物を10分間ボールミル粉砕し、得られたブレンドを粉砕して複合粒子を形成した。電解質は、PC-EC中の1Mのヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)であった。
【0173】
式Na2C6O6中の2つのNa原子は固定された構造の一部であり、これらは可逆的なリチウムイオンの貯蔵及び放出には関与しない。ナトリウムイオンは、アノード側から得られる必要がある。したがって、ナトリウム源(例えばナトリウム金属又はナトリウム金属合金)がアノードに存在する必要がある。アノード集電体(Cu箔)には、ナトリウム層が(例えばスパッタリング又は電気化学的めっきによって)堆積された。これは、ナトリウム被覆層又は単にナトリウム箔と、多孔質セパレータと、カソードロールから乾電池を組み立てる前に行われた。カソード集電体の細孔には、液体電解質中に分散されたカソード活性材料と導電性添加剤(Na2C6O6/C複合粒子)の懸濁液が浸潤している。この層を巻くことでカソードロールを作製した。比較のために、従来のスラリコーティング、乾燥、積層、パッケージング、及び電解質注入の手順によって、対応する従来のNa金属セルも製造した。
【0174】
実施例16:リチウム金属電池の金属ナフタロシアニン-RGOハイブリッドカソード
RGO-水懸濁液のスピンコーティングから調製されたグラフェンフィルム(5nm)と共にチャンバ内でCuPcを気化させることによって、CuPc被覆グラフェンシートを得た。得られた被覆されたフィルムを切断し粉砕してCuPc被覆グラフェンシートを製造し、これらをAl箔上にコーティングして、リチウム金属電池用のカソードロールを作製した。この電池は、アノード活性材料としてリチウム金属箔を有し、電解質としてプロピレンカーボネート(PC)溶液中の1~3.6MのLiClO4を有する。比較のため、従来のリチウム金属セルを作製して試験を行った。
【0175】
実施例17:リチウム金属電池のカソード活性材料としてのMoS2/RGOハイブリッド材料の調製
この実施例では、多様な無機材料を調べた。例えば、200℃で、酸化された酸化グラフェン(GO)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中での(NH4)2MoS4とヒドラジンとの1段階のソルボサーマル反応により、超薄MoS2/RGOハイブリッドを合成した。典型的な手順では、10mlのDMF中に分散された10mgのDMFに22mgの(NH4)2MoS4を加えた。混合物を、室温で約10分間、透明で均質な溶液が得られるまで超音波処理した。その後、0.1mlのN2H4・H2Oを加えた。反応溶液をさらに30分間超音波処理した後、テフロンライニングされた40mLのオートクレーブに移した。オーブン内で、系を200℃で10時間加熱した。生成物を8000rpmで5分間の遠心分離によって収集し、DI水で洗浄し、遠心分離により再収集した。ほとんどのDMFが確実に除去されるように、洗浄ステップを少なくとも5回繰り返した。最後に、生成物を乾燥させ、液体電解質と混合して、活性カソード含浸用の混合物スラリを形成した。
【0176】
実施例18:2次元(2D)層状のBi2Se3カルコゲナイドナノリボンの調製
(2D)層状のBi2Se3カルコゲナイドナノリボンの調製は、当技術分野でよく知られている。例えば、蒸気-液体-固体(VLS)法を用いてBi2Se3ナノリボンを成長させた。本明細書で製造されるナノリボンは、平均で厚さが30~55nmであり、幅及び長さが数百ナノメートル~数マイクロメートルの範囲である。比較的大きいナノリボンにはボールミル加工を施し、横方向寸法(長さ及び幅)を200nm未満に減少させた。リチウム金属電池のカソード活性材料として、(グラフェンシート又は剥離された黒鉛フレーク有り又は無しの)これらの手順によって調製されたナノリボンを使用した。ロール型セル及び従来のセルの両方を前述の手順により作製したが、それらについて本明細書では繰り返さない。
【0177】
実施例19:グラフェン担持MnO2カソード活性材料の調製
MnO2粉末を2つの方法(それぞれグラフェンシート有り又は無し)によって合成した。1つの方法では、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解することによって、0.1mol/LのKMnO4水溶液を調製した。一方、高純度のビス(2-エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムの界面活性剤13.32gを300mLのイソオクタン(油)中に加え、よく撹拌して、光学的に透明な溶液を得た。次いで、その溶液中に、0.1mol/LのKMnO4溶液32.4mLと、選択された量のGO溶液とを加え、それを30分間超音波処理して、暗褐色の沈殿物を調製した。生成物を分離し、蒸留水及びエタノールで数回洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。試料は、粉末形態のグラフェン担持MnO2であり、これを液体電解質中で混合してカソード活性材料混合物スラリを形成した。ロール型セル及び従来のセルの両方を前述の手順により作製したが、それらについて本明細書では繰り返さない。
【0178】
実施例20:リチウムイオン電池のアノード活性材料としてTEOSから製造されたグラフェン強化ナノシリコン
1wt%のN002-PSをDI水によって希釈して0.2wt%のN002-PSにし、希釈したPS溶液を超音波浴に入れ、30分間超音波処理する。PS溶液を撹拌しながらTEOS(0.2wt%のN002-PS:TEOS=5:2)を徐々に添加する。次いで、24時間撹拌を続けて、TEOSを完全に加水分解する。ゲルが生成されるまで10%NH3・H2Oを滴下して加える。このゲルは、TPゲルと呼ぶことができる。TPゲルを粉砕して小さな粒子にする。120℃で2時間、さらに150℃で4時間、オーブンで乾燥させる。乾燥したTP粒子を、10:7の比でMgと混合する。20倍の量の7mmのSSボールを使用し、アルゴン保護下でボールミル加工し、回転速度を徐々に250rpmまで上げる。特定量のTPM粉末をニッケルるつぼに入れ、680℃で熱処理する。特定量の2M HCl溶液を調製する。次いで、熱処理したTPM粉末を酸溶液に徐々に加える。反応を2~24時間続け、その後、混濁液体を超音波浴に入れ、1時間超音波処理する。懸濁液を濾過システムに注ぎ入れる。底部の大きな粒子を捨てる。DI水を使用して3回すすぐ。黄色のペーストを乾燥させ、黄色のペーストを粉末に混ぜる。そのように調製したナノ粒子は、異なるグラフェン含有率により、30m2/g~200m2/gのSSA値範囲を有する。次に特定量の乾燥したTPM粒子をマッフル炉に入れ、空気パージ下で400℃~600℃で2時間焼成して、ナノコンポジットから炭素含有分を除去し、グラフェンを含まない黄色のシリコンナノ粉末を生成する。Siナノ粉末と、グラフェンで包まれたSiナノ粒子との両方を高容量アノード活性材料として使用した。ロール型セル及び従来のセルの両方を前述の手順により作製したが、それらについて本明細書では繰り返さない。
【0179】
実施例21:アノード活性材料としての酸化コバルト(Co3O4)微粒子
LiCoO2はリチウムイオン電池のカソード活性材料であるが、Co3O4はアノード活性材料である。なぜなら、LiCoO2は、Li/Li+に対して約+4.0ボルトの電気化学ポテンシャルであり、Co3O4は、Li/Li+に対して約+0.8ボルトの電気化学ポテンシャルであるからである。適切な量の無機塩Co(NO3)2・6H2O、続いてアンモニア溶液(NH3・H2O、25wt%)をGO懸濁液にゆっくり加えた。完全な反応が確実に生じるように、得られた前駆体懸濁液をアルゴン流下で数時間撹拌した。得られたCo(OH)2/グラフェン前駆体懸濁液を2つの部分に分けた。1つの部分を濾過し、70℃で真空乾燥して、Co(OH)2/グラフェン複合前駆体を得た。この前駆体を空気中にて450℃で2時間焼成して、層状Co3O4/グラフェン複合体を形成した。これは、互いに重なり合うCo3O4被覆グラフェンシートを有することを特徴とする。これらのCo3O4被覆グラフェンシートは別の高容量アノード活性材料である。ロール型セル及び従来のセルの両方を前述の手順により作製したが、それらについて本明細書では繰り返さない。
【0180】
実施例22:アノード活性材料としてのグラフェン強化酸化スズ微粒子
以下の手順を使用して、制御下でのSnCl4・5H2OとNaOHの加水分解によって酸化スズ(SnO2)ナノ粒子、アノード活性材料を得た:SnCl4・5H2O(0.95g、2.7m-mol)とNaOH(0.212g、5.3m-mol)をそれぞれ50mLの蒸留水中に溶解した。激しく撹拌しながら塩化スズ溶液にNaOH溶液を1mL/分の速度で滴下して加えた。この溶液を、超音波処理により5分間均質化した。その後、得られたヒドロゾルをGO分散液と3時間反応させた。この混合溶液に0.1MのH2SO4を数滴加えて生成物を凝集させた。沈殿した固体を遠心分離によって収集し、水及びエタノールで洗浄し、真空乾燥させた。この乾燥した生成物を、Ar雰囲気下において400℃で2時間熱処理した。ロール型セル及び従来のセルの両方を前述の手順により作製したが、それらについて本明細書では繰り返さない。
【0181】
実施例23:グラフェン担持MnO2及びNaMnO2のカソード活性材料の調製
MnO2粉末を2つの方法(それぞれグラフェンシート有り又は無し)で合成した。一方の方法では、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解させることによって0.1mol/LのKMnO4水溶液を調製した。一方、13.32gの界面活性剤の高純度ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを300mLのイソオクタン(油)中に加え、十分に撹拌して、光学的に透明な溶液を得た。次いで、その溶液中に、0.1mol/LのKMnO4溶液32.4mLと、選択された量のGO溶液とを加え、それを30分間超音波処理して、暗褐色の沈殿物を調製した。生成物を分離し、蒸留水及びエタノールで数回洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。試料を、粉末状のグラフェン担持MnO2として、これを液体電解質中に分散させてスラリを生成し、発泡集電体の細孔中に含浸させた。さらに、グラフェンシートを使用し、又は使用せずに、Na2CO3及びMnO2(1:2のモル比)の混合物を12時間ボールミル粉砕し、続いて870℃で10時間加熱することによって、NaMnO2及びNaMnO2/グラフェン複合物を合成した。
【0182】
実施例24:カリウム金属セル用電極の作製
カリウム被覆グラフェンフィルムのシートをアノード活性材料として使用し、一方、Angstron Materials,Inc.(Dayton,Ohio)より供給されるPVDFが結合した還元酸化グラフェン(RGO)シートをカソード活性材料として使用した。使用した電解質は、プロピレンカーボネートとDOLとの混合物(1/1の比率)中に溶解させた1MのKClO4塩であった。異なるCレートに対応する数種類の電流密度(50mA/g~50A/g)を充電-放電曲線を求め、得られるエネルギー密度及び電力密度のデータを測定し計算した。
【0183】
実施例25:様々なアルカリ金属電池セルの用意と電気化学的試験
調べたアノード及びカソード活性材料のほとんどについて、本発明による方法と従来の方法との両方を使用して、アルカリ金属イオンセル又はアルカリ金属セルを用意した。
【0184】
従来の方法では、典型的なアノード組成物は、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)中に溶解された、85wt%の活性材料(例えば、Si又はCo3O4被覆グラフェンシート)と、7wt%アセチレンブラック(Super-P)と、8wt%ポリフッ化ビニリデン粘結剤(PVDF、5wt%固形分)とを含む。Cu箔上にスラリをコーティングした後、電極を120℃で2時間真空乾燥させて溶媒を除去した。この方法により、典型的には、粘結剤樹脂が必要とされず、又は使用されず、8重量%節約する(非活性材料の量が減少する)。カソード層も、従来のスラリコーティング及び乾燥手順を使用して、(カソード集電体としてAl箔を使用して)同様に形成される。次いで、アノード層、セパレータ層(例えば、Celgard 2400膜)、及びカソード層を積層し合わせて、プラスチックAlエンベロープ内に収容する。次いで、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1M LiPF6電解質溶液をセルに注入する。幾つかのセルでは、液体電解質としてイオン液体を使用した。アルゴン充填グローブボックス内にセルアセンブリを形成した。
【0185】
Arbin電気化学ワークステーションを使用して、1mV/sの典型的な走査速度でサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を行った。さらにまた、定電流充電/放電サイクルによって、様々なセルの電気化学的性能を50mA/g~10A/gの電流密度で評価した。長期のサイクル試験には、LAND製のマルチチャネル電池テスタを使用した。
【0186】
リチウムイオン電池業界では、電池のサイクル寿命を、所要の電気化学的形成後に測定された初期容量に基づいて電池が20%の容量減衰を受ける充放電サイクル数と定義するのが一般的な慣例である。
【0187】
実施例26:リチウムセルの典型的な試験結果
各試料ごとに、電気化学的応答を決定するために幾つかの電流密度(充電/放電速度を表す)を課し、Ragoneプロット(電力密度対エネルギー密度)の構築に必要なエネルギー密度及び電力密度値の計算を可能にした。
図5に、アノード活性材料として黒鉛粒子を含み、カソード活性材料として炭素被覆LFP粒子を含むリチウムイオン電池セルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対エネルギー密度)が示されている。5つのデータ曲線のうちの3つは、本発明の一実施形態により作製されたロール型セル(1つは電解質の追加の離散層を含む)に関するものであり、他の2つは電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。これらのデータから以下のような幾つかの重要な観察を行うことができる。
【0188】
本発明による方法(図の凡例では「ロール型セル」と表される)によって用意されたリチウムイオン電池セルの重量及び体積エネルギー密度及び電力密度は、従来のロールコーティング法(「従来の」と表される)によって用意された相当物のものよりもかなり高い。重量エネルギー密度は、従来のセル165Wh/kgからロール型セルの203Wh/kgまで増加している。また驚くべきことに、体積エネルギー密度は412.5Wh/Lから568Wh/Lまで増加している。この後者の値568Wh/Lは、黒鉛アノードとリン酸鉄リチウムカソードとを使用する従来のリチウムイオン電池では以前達成されていなかった。
【0189】
これらの相違は、おそらくは、本発明によるロール型セルに関連する非常に高い活性材料質量負荷(単なる質量負荷ではない)、活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少、電極活性材料の驚くべき良好な利用率(全てではないにしてもほとんどの黒鉛粒子及びLFP粒子がリチウムイオン貯蔵容量に寄与し;特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケット又は非効果的なスポットがない)、及び多孔質導電性層(発泡集電体)の細孔中に活性材料粒子をより効率的に充填するための本発明による方法の驚くべき能力のためである。これらは、リチウムイオン電池の分野で、教示も、示唆も、さらにはわずかな暗示も行われていない。さらに、最大電力密度は、621W/kgから1446W/kgまで増加する。これは、電子の輸送及びリチウムイオンの輸送に対する内部抵抗が非常に低いためと思われる。
【0190】
電解質の追加の離散層を含むことで、セルの電力密度が大幅に増加することが分かった。これは、研究した実質的にあらゆる種類のアルカリ金属セルに適用できる。
【0191】
図6は、アノード活性材料としてグラフェン包有Siナノ粒子を含み、カソード活性材料としてLiCoO
2ナノ粒子を含む2つのセルのRagoneプロット(重量及び体積エネルギー密度に対する重量及び体積電力密度)を示す。実験データは、本発明による方法によって用意されたロール型Liイオン電池セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意された従来のセルとから得られた。
【0192】
これらのデータは、本発明による方法によって用意された電池セルの重量及び体積エネルギー密度及び電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも相違は大きい。従来のやり方で形成されたセルは、265Wh/kgの重量エネルギー密度及び689Wh/Lの体積エネルギー密度を示すが、本発明によるセルは、それぞれ401Wh/kg及び1,162Wh/Lを送給する。セルレベルのエネルギー密度1,162Wh/Lは、従来の充電式リチウム電池では以前達成されていない。1976W/kg及び5,730W/Lの高い電力密度も、リチウムイオン電池で前例のないものである。本発明による方法によって作製したセルの電力密度は、従来方法によって作製した対応するセルの電力密度よりも常にはるかに高い。
【0193】
これらのエネルギー密度及び電力密度の相違は、主として以下のことによる。本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(アノードでは>25mg/cm2、及びカソードでは>45mg/cm2);活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;活性材料粒子をより良く利用することができ(全ての粒子が液体電解質に接近可能であり、高速のイオン及び電子運動速度)、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の機能。
【0194】
図7に、アノード活性材料としてリチウム箔、カソード活性材料としてロジゾン酸二リチウム(Li
2C
6O
6)、及び有機液体電解質としてリチウム塩(LiPF
6)-PC/DECを含むリチウム金属電池のRagoneプロットが示されている。データは、本発明による方法によって用意されたリチウム金属セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたリチウム金属セルとの両方に関するものである。これらのデータは、本発明による方法によって用意されたリチウム金属セルの重量及び体積エネルギー密度及び電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも、相違は大きく、おそらく以下のことに起因する。本発明によるセルに関連するかなり高い活性材料質量負荷(単なる質量負荷ではなく);活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;電極活性材料の驚くほど良い利用率(全てではないにせよほとんどの活性材料がリチウムイオン貯蔵容量に寄与する。特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケット又は非効果的なスポットがない);及び、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の意外な機能。
【0195】
本発明によるリチウム金属有機カソードセルの重量エネルギー密度は421Wh/kgと高く、これまでに報告されている全ての充電式リチウム金属又はリチウムイオン電池の重量エネルギー密度(現在のリチウムイオン電池は、総セル重量に基づいて150~220Wh/kgを貯蔵することを想起されたい)よりも高いという観察結果は、かなり注目に値し、意外である。そのような有機カソードベースの電池の体積エネルギー密度は、842Wh/Lと高く、今までに報告された従来の全てのリチウムイオン及びリチウム金属電池の体積エネルギー密度を上回るこれまでにない高い値であるという観察結果もまた非常に意外なものである。さらに、有機カソード活性材料ベースのリチウム電池では、1,763W/kgの重量電力密度、及び5,112W/Lの最大体積電力密度は考えられなかった。
【0196】
多くの研究者が行っているようなRagoneプロット上での活性材料のみの重量当たりのエネルギー及び電力密度の報告は、組み立てられたスーパーキャパシタセルの性能の現実的な状況を示さないことがあることを指摘しておくことは重要であろう。他のデバイス構成要素の重量も考慮に入れなければならない。集電体、電解質、セパレータ、粘結剤、コネクタ、及びパッケージングを含むこれらのオーバーヘッド構成要素は、非活性材料であり、電荷蓄積量に寄与しない。これらの構成要素は、デバイスに重量及び体積を追加するだけである。したがって、オーバーヘッド構成要素の重量の相対比を減少し、活性材料の割合を増加させることが望ましい。しかしながら、従来の電池製造法を使用してこの目的を達成することは可能でなかった。本発明は、リチウム電池の技術分野におけるこの長年にわたる最も重大な問題を克服する。
【0197】
100~200μmの電極厚さを有する市販のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池におけるアノード活性材料(例えば、黒鉛や炭素)の重量比は、典型的には12~17%であり、カソード活性材料の重量比(LiMn2O4など無機材料に関して)は22%~41%であり、又は有機又はポリマー材料に関しては10%~15%である。したがって、活性材料重量のみに基づく特性から、デバイス(セル)のエネルギー又は電力密度を外挿するために、係数3~4が頻繁に使用される。大抵の科学論文では、報告されている特性は、典型的には活性材料重量のみに基づいており、電極は典型的には非常に薄い(<<100μm、及び大抵は<<50μm)。活性材料重量は、典型的には総デバイス重量の5%~10%であり、これは、対応する活性材料重量ベース値を係数10~20で割ることによって実際のセル(デバイス)エネルギー又は電力密度を得ることができることを示唆する。この係数が考慮された後では、これらの論文で報告されている特性は、商用電池の特性よりも良いものとは思えない。したがって、科学論文及び特許出願で報告されている電池の性能データを読んで解釈するに当たっては非常に慎重でなければならない。
【0198】
アノード及びカソードの活性材料を合わせた重量が、パッケージングされた商用リチウム電池の総質量の最大約30%~50%を占めるので、活性材料単独の性能データからデバイスのエネルギー又は電力密度を外挿するために係数30%~50%を使用しなければならない。したがって、黒鉛とNMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)との合計重量の500Wh/kgのエネルギー密度は、パッケージングされたセルの約150~250Wh/kgに換算される。しかし、この外挿は、市販の電極(黒鉛アノードの150μm又は約15mg/cm2、及びNMCカソードの30mg/cm2)のものと同様の厚さ及び密度を有する電極に対してのみ有効である。より薄い又はより軽い同じ活性材料の電極は、セル重量に基づいてさらに低いエネルギー又は電力密度を意味する。したがって、高い活性材料比率を有するリチウムイオン電池セルを製造することが望ましい。残念ながら、大半の商用リチウムイオン電池では、45重量%を超える総活性材料比率を実現することは従来可能でなかった。
【0199】
本発明による方法は、調べられた全ての活性材料に関してリチウム電池がこれらの限界を十分に上回ることを可能にする。事実、本発明は、望みであれば活性材料比率を90%超に高めることを可能にする。しかし、典型的には45%~85%、より典型的には40%~80%、さらにより典型的には40%~75%、最も典型的には50%~70%である。
【0200】
実施例27:ナトリウム金属セル及びカリウム金属セルの代表的な試験結果
ハードカーボン粒子をアノード活性材料として、炭素被覆Na
3V
2(PO
4)
2F
3粒子をカソード活性材料として含有するNaイオン電池セルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対エネルギー密度)を
図8に示している。4つのデータ曲線のうちの2つは、本発明の一実施形態により作製されたロール型セルの場合であり、他の2つは従来の電極のスラリコーティング(ロールコーティング)による場合である。これらのデータから以下のような幾つかの重要な観察を行うことができる。
【0201】
本発明による方法(図の凡例では「ロール型セル」と表される)によって作製したナトリウムイオン電池セルの重量及び体積エネルギー密度及び電力密度の両方は、従来のロールコーティング法(「従来」と表される)によって作製した相当物のものよりもかなり高い。従来のNaイオンセルの重量エネルギー密度は115Wh/kgであるが、ロール型Naイオンセルでは155Wh/kgである。また驚くべきことに、本発明による方法を用いることによって、体積エネルギー密度が241Wh/Lから496Wh/Lまで増加する。この後者の値の496Wh/Lは、ハードカーボンアノード及びナトリウム遷移金属リン酸塩型カソードを使用する従来のナトリウムイオン電池では例外的である。
【0202】
これらの大きな差は、おそらくは、本発明によるセルに関連する非常に高い活性材料質量負荷(他の材料と比較して)、活性材料質量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少、電極活性材料の驚くべき良好な利用率(全てではないにしてもほとんどのハードカーボン粒子及びNa3V2(PO4)2F3粒子がナトリウムイオン貯蔵容量に寄与し;特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケット又は非効果的なスポットがない)、及び伝導性多孔質層(発泡集電体)の細孔中に活性材料粒子をより効率的に充填するための本発明による方法の驚くべき能力のためである。
【0203】
本発明によるナトリウムイオンセルは、従来のセルよりもはるかに高い力密度をも送給する。これも予期せぬことである。
【0204】
図9は、アノード活性材料としてのグラフェン包有Snナノ粒子と、カソード活性材料としてのNaFePO
4ナノ粒子とをどちらも含有する2つのセルのRagoneプロット(重量及び体積電力密度対重量及び体積エネルギー密度の両方)を示している。本発明による方法によって作製したNaイオン電池セル及び従来の電極のスラリコーティングによって作製したNaイオン電池セルから、実験データを得た。
【0205】
これらのデータは、本発明による方法によって作製したナトリウム電池セルの重量及び体積エネルギー密度及び電力密度の両方が、従来方法によって作製したそれらの相当物よりもはるかに高いことを示している。ここでも相違は大きい。従来通り作製したセルは、185Wh/kgの重量エネルギー密度及び407Wh/Lの体積エネルギー密度を示すが、本発明によるセルはそれぞれ288Wh/kg及び633Wh/Lを送給する。633Wh/Lのセルレベルの体積エネルギー密度は、あらゆる従来の充電式ナトリウム電池で以前達成されていなかった。1444W/kg及び4,187W/Lの高い電力密度は、ナトリウムイオン電池の場合は言うまでもなく、典型的な高エネルギーリチウムイオン電池の場合でも前例がない。
【0206】
これらのエネルギー密度及び電力密度の相違は、主として、本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(アノード中で>25mg/cm2及びカソード中で>45mg/cm2)、活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少、粘結剤樹脂を有する必要がないこと、活性材料粒子をより十分に利用する本発明の方法の能力(すべての粒子が液体電解質に到達可能であり、速いイオン及び電子の運動速度)、及び発泡集電体の細孔中への活性材料粒子のより効率的な充填のためである。
【0207】
アノード活性材料としてのナトリウム箔と、カソード活性材料としてのロジゾン酸二ナトリウム(Na
2C
6O
6)と、有機液体電解質としてのリチウム塩(NaPF
6)-PC/DECとを含有するナトリウム金属電池のRagoneプロットを
図10に示している。これらのデータは、本発明による方法によって作製したロール型ナトリウム金属セルの場合と、従来の電極のスラリコーティングによって作製したナトリウム金属セルの場合との両方のものである。これらのデータは、本発明による方法によって作製したナトリウム金属セルの重量及び体積エネルギー密度及び電力密度の両方が、従来方法によって作製したそれらの相当物よりもはるかに高いことを示している。
【0208】
ここでも相違は大きく、これはおそらくは、本発明によるセルに関連する非常に高い活性材料質量負荷、活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少、電極活性材料の驚くべき良好な利用率(全てではないにしてもほとんどの活性材料がナトリウムイオン貯蔵容量に寄与し;特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケット又は非効果的なスポットがない)、及び発泡集電体の細孔中に活性材料粒子をより効率的に充填するための本発明による方法の驚くべき能力のためである。
【0209】
本発明によるナトリウム金属有機カソードセルの重量エネルギー密度は268Wh/kgと高く、これまでに報告されている従来の全ての充電式ナトリウム金属電池又はナトリウムイオン電池の重量エネルギー密度(現在のNaイオン電池は、総セル重量に基づいて100~150Wh/kgを貯蔵することを想起されたい)よりも高いという観察結果は、かなり注目に値し、予想外である。さらに、有機カソード活性材料ベースのナトリウム電池の場合(さらには対応するリチウム電池の場合)、1,188W/kgの重量電力密度及び3,445W/Lの体積電力密度は考えられなかった。
【0210】
多くの研究者が行っているようなRagoneプロット上でのアルカリ金属電池の電極活性材料のみの重量当たりのエネルギー及び電力密度の報告は、組み立てられた電池セルの性能の現実的な状況を示さないことがあることを指摘しておくことは重要であろう。他のデバイス構成要素の重量も考慮に入れなければならない。集電体、電解質、セパレータ、粘結剤、コネクタ、及びパッケージングを含むこれらのオーバーヘッド構成要素は、非活性材料であり、電荷蓄積量に寄与しない。これらは、デバイスの重量及び体積を増加させるだけである。したがって、オーバーヘッド構成要素の重量の相対比を減少させ、活性材料の割合を増加させることが望ましい。しかしながら、従来の電池製造法を使用してこの目的を達成することはできなかった。本発明は、リチウム電池の技術分野におけるこの長年にわたる最も重大な問題を克服する。
【0211】
150μmの電極厚さを有する市販のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池中のアノード活性材料(例えば、黒鉛又は炭素)の重量比は、典型的には12%~17%であり、カソード活性材料の重量比(LiMn2O4などの無機材料の場合)は22%~41%であり、有機又はポリマー材料の場合は10%~15%である。アノード活性材料及びカソード活性材料の両方が、2種類の電池の間で物理的密度が類似しており、カソード比容量のアノード比容量に対する比率も類似しているので、Naイオン電池中の対応する重量分率は非常に類似すると予想される。したがって、活性材料重量のみに基づく特性から、ナトリウムセルのエネルギー又は電力密度を外挿するために、係数3~4を使用することができる。大抵の科学論文では、報告されている特性は、典型的には活性材料重量のみに基づいており、電極は典型的には非常に薄い(<<100μm、及び大抵は<<50μm)。活性材料重量は、典型的には総デバイス重量の5%~10%であり、これは、対応する活性材料重量ベースの値を係数10~20で割ることによって実際のセル(デバイス)エネルギー又は電力密度を得ることができることを示唆している。この係数が考慮された後では、これらの論文で報告されている特性は、市販の電池の特性よりも良いものとは思えない。したがって、科学論文及び特許出願で報告されている電池の性能データを読んで解釈するに当たっては非常に慎重でなければならない。
【0212】
従来のスラリコーティング方法によって作製した一連のKイオンセルのRagoneプロット、及び本発明による方法によって作製した対応するKイオンセルのRagoneプロットを
図11中にまとめ、対比させている。これらのデータも、本発明によるアノードロール及びカソードロールの方法によって、リチウム金属電池だけでなく、Na及びK金属電池でも、超高エネルギー密度及び高電力密度の送給が可能であることを裏付けている。