(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】仕上げ工具の特徴パラメーターの測定
(51)【国際特許分類】
B23F 23/12 20060101AFI20221216BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20221216BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20221216BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20221216BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20221216BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B23F23/12
B23Q17/22 D
B23Q17/24 Z
B24B49/10
B24B49/12
G01B11/08 Z
(21)【出願番号】P 2019563479
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2018061775
(87)【国際公開番号】W WO2018210607
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テオフィル ハグ
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ヤーコブ
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0231702(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101641175(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 23/12;
B23Q 17/09,17/22-17/24;
B24B 19/02,49/10-49/12,
53/00,55/06;
G01B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯付きワークの仕上げを行う機械であって、前記機械は、
工具キャリア(20)と、
前記工具キャリアに取り付けられ、仕上げ工具(31)を固定する工具スピンドル(30)と、
前記工具スピンドル(30)を工具スピンドル軸(B)の周りに回転するように駆動する工具スピンドル駆動部(32)と、
少なくとも1つの距離センサー(60)と、
制御装置(71)と、
を備え、
前記制御装置(71)は、
前記距離センサー(60)を用いて、
前記距離センサーと前記工具スピンドル(30)に固定された仕上げ工具(31)
との間の距離についての少なくとも1つの距離測定を行う
ことと、
少なくとも一つの前記距離測定から、前記仕上げ工具(31)の
外径(d)の寸法を求める
ことと、
前記工具スピンドル(30)が、求められた前記外径(d)に応じて変化し得る回転速度で回転するように、前記工具スピンドル駆動部(32)を作動させること、又は、前記工具スピンドル(30)が、求められた前記外径(d)に応じて変化し得る許容可能な最大の回転速度よりも低い回転速度で駆動しているか否かを監視することと、
を行うように構成されたことを特徴とする、機械。
【請求項2】
前記距離センサーは、非接触式に動作する距離センサーである、請求項1に記載の機械。
【請求項3】
前記距離センサーは、光学式に動作し、測定光ビームを発生させるように構成された距離センサーである、請求項2に記載の機械。
【請求項4】
前記工具スピンドル及び前記距離センサーは、ビーム方向が前記工具スピンドル軸に交差するように相互に整合させることが可能に配置される、請求項3に記載の機械。
【請求項5】
前記距離センサーは、接触式に動作するセンサーである、請求項1に記載の機械。
【請求項6】
前記距離センサーは、ばね付勢される、請求項5に記載の機械。
【請求項7】
前記工具スピンドル(30)は、研削ウォームを固定するように構成され、前記制御装置(71)は、前記工具スピンドル(30)の複数の回転角度に関して
前記距離測定を行い、前記距離測定から、前記研削ウォームのねじ山の条数及び/又は角度位置を求めるように構成される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の機械。
【請求項8】
前記制御装置(71)は、前記距離センサー(60)を用いて、前記工具スピンドル軸(B)に沿った複数の位置に関して、及び前記仕上げ工具(31)の複数の回転角度に関して距離測定を行い、前記仕上げ工具(31)の表面領域の画像を得るように構成される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の機械。
【請求項9】
前記制御装置(71)は、前記表面領域の求められた前記画像と、前記表面領域の想定される外観との差異を特定するように構成される、請求項
8に記載の機械。
【請求項10】
前記工具スピンドル(30)及び前記距離センサー(60)は、前記工具スピンドル軸(B)に沿った異なる位置に関して距離測定を行うように、前記工具スピンドル軸(B)に沿って互いに相対的に変位可能である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の機械。
【請求項11】
前記距離センサー(60)は、ビーム平面を画定するラインレーザーを備える、請求項
1~
10のいずれか1項に記載の機械。
【請求項12】
前記工具スピンドル(30)及び前記距離センサー(60)は、前記ビーム平面が前記工具スピンドル軸(B)を含むように相互に位置を合わせることが可能であり、前記工具スピンドル軸(B)に沿った複数の位置に関して同時に距離測定を行うように構成される、請求項
11に記載の機械。
【請求項13】
前記機械は、機械ベッド(10)に対して複数の位置の間で可動である可動キャリア(40)を備え、前記距離センサー(60)は、前記可動キャリア(40)上に配置される、請求項1~
12のいずれか1項に記載の機械。
【請求項14】
加工対象のワーク(51)を固定する少なくとも1つのワークスピンドル(50)、及び/又は目立て装置(80)が、前記可動キャリア(40)に配置される、請求項
13に記載の機械。
【請求項15】
前記工具キャリア(20)は、前記工具スピンドル(30)の位置を前記距離センサー(60)に対して揃えるように、軸の周りに可動、特に旋回可能である、請求項1~
14のいずれか1項に記載の機械。
【請求項16】
前記機械は、前記距離センサー(60)を収納するハウジング(41)を備え、
前記ハウジング(41)は、前記距離センサー(60)のための開窓部(42)を有し、
前記距離センサー(60)を周囲環境の影響から保護するために、前記開窓部(42)は、閉鎖装置によって閉鎖可能であり、及び/又は、前記ハウジング(41)の内部は、密閉空気が供給されるように構成される、請求項1~
15のいずれか1項に記載の機械。
【請求項17】
歯付きワークの仕上げを行う機械の動作方法であって、前記機械は、仕上げ工具(31)が工具スピンドル軸(B)の周りに回転することができるように、
工具スピンドル(30)と前記工具スピンドル(30)に固定された前記仕上げ工具(31)
とを
備え、前記方法は、
距離センサー(60)を用いて、
前記距離センサー(60)と前記仕上げ工具(31)
との間の距離についての少なくとも1つの距離測定を行うことと、
少なくとも1つの
前記距離測定から、前記仕上げ工具(31)
の外径(d)の寸法を求めることと、
前記工具スピンドル(30)を、求められた前記外径(d)に応じて変化する回転速度で駆動すること、又は、前記工具スピンドル(30)が、求められた前記外径(d)に応じて変化し得る許容可能な最大の回転速度よりも低い回転速度で駆動しているか否かを監視することと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記距離センサー(60)は、光学式に動作し、測定光ビーム(61)を発生させる距離センサーであり、前記方法は、
前記測定光ビーム(61)によって規定されるビーム方向が前記工具スピンドル軸(B)に交差するように、前記測定光ビーム(61)の位置を前記仕上げ工具(31)に合わせることを含む、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上げ工具の少なくとも1つの特徴パラメーター、特に仕上げ工具の外径を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギアホイールのハードフィニッシュ加工(hard finishing)に際して、加工対象のギアホイールにウォームギアと同様の方法で研削ウォームを係合させるか、又は成形研削ホイール(成形ホイール)をギアホイールに係合させる。
【0003】
幾何学的な観点において、研削ウォームは、複数の特徴パラメーターによって特徴付けることができる。重要な特徴パラメーターとして、特に、外径、ウォーム幅、モジュール、ピッチ、及び条数が挙げられる。成形研削ホイールも、同様に外径及びホイール幅を含む様々な特徴パラメーターによって特徴付けることができる。
【0004】
多くの場合で、目立て可能(dressable)な研削工具、特にコランダムをベースにした研削工具が用いられる。このタイプの研削工具は、時折、目立て/修正(形直し)が必要である。通常、この目立ては、例えば2つの加工プロセスの合間に、目立て工具を用いて機械内で直接行われる。研削工具は、この目立てプロセスによって摩耗するが、研削プロセス自体によっても摩耗する。特に、外径の大きさは絶えず減少する。
【0005】
研削工具は、摩耗によって、又は別のギアホイールを研削する必要によって、時には交換が必要となる。大抵の場合、研削工具の特徴パラメーターは、工具の交換の際に、操作者によって機械制御システムに手動で入力される。しかしながら、誤った特徴パラメーターが機械制御システムに入力されてしまうリスクが常にある。誤入力のリスクは、特に外径についての場合に存在する。なぜなら、外径は、上記で説明したように、加工の過程で変化し得るからである。
【0006】
外径の自動特定のために、目立て工具を用いて機械的に接触する方法が、特許文献1から既知である。このために、回転する研削工具において、目立て工具と研削工具との間の距離を、目立て工具が研削工具の外周に接触するまで連続的に減少させる。この接触動作は、音によって確認される。
【0007】
この方法では、研削工具の外径が工具の交換の際に正しく入力されたか否かは確かめられないので、この方法は、研削工具の損傷を回避するために細心の注意を払って用いる必要がある。以下の手法を用いることができる。まず、この機械は、研削工具と目立て工具との間の距離を、外径の誤入力があった場合でも衝突のおそれがない安全距離まで高速で減少させる。その後、この機械は、研削工具が回転している間に、非常に低減した速度で、接触が検出されるまで、研削工具と目立て工具との間の距離を減少させる。
【0008】
その後、研削工具の更なる特徴パラメーターを任意で決定することができる。特に研削工具が研削ウォームである場合、研削工具は、次の工程において、再度接触が検出されるまで、側方から目立て工具に向かって変位することができる。その結果、研削ウォームの端面の位置を確立することができる。研削ウォームが回転することにより、研削ウォームのねじ山の位置に対応して周期的に接触が起こる。ねじ山の数及び角度位置は、このようにして特定される。研削ウォームは、目立て工具を、先行の工程において検出された研削ウォームの最初の歯溝に押し込むようにして、目立て工具に対して変位させることができる。歯溝の2つのフランクは、第1の歯たけにおいて、接触動作を検出することによって測定することができる。続いて、第2の歯たけにおいて再び同じ測定手順を実行することができる。研削ウォームのフランクのこの測定は、研削ウォームの各ねじ山に対して繰り返すことができる。最後に、研削ウォームを目立て工具に更に近付けて、谷径を求めることができる。
【0009】
成形研削ホイールも、このタイプの接触方法を用いて測定することができる。しかしながら、このタイプの接触方法は、研削工具を測定するには比較的多くの時間を要する。
【0010】
したがって、研削工具の特徴パラメーター、特に研削工具の外径を、信頼性をもって迅速かつ精密に求めることを可能にする装置及び方法が必要とされている。
【0011】
特許文献2は、ラインレーザーを用いて、工具に対してワークを位置決めする方法を開示している。ラインレーザーのビーム平面は、ワーク軸に対して垂直である。上記ビーム平面を、このビーム平面がワークの端面のうちの一方に合致するまで、ワークに対して変位させる。このようにして、ワークの端面の位置が求められる。
【0012】
特許文献3は、レーザーを用いて歯面を測定することによって、加工対象のギアホイールの寸法を求める方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】独国特許出願公開第19910747号
【文献】独国特許出願公開第10012647号
【文献】欧州特許出願公開第2284484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、1つ又は複数の特徴パラメーター、特に仕上げ工具の外径を、単純かつ短時間で求めることができる仕上げ機を提供する。仕上げ工具は、特に研削工具(研削ウォーム又は成形研削ホイール)とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このタイプの仕上げ機は、請求項1に提示されている。更なる実施形態は、従属請求項に提示されている。
【0016】
したがって、歯付きワークの仕上げを行う機械であって、この機械は、
工具キャリアと、
工具キャリアに取り付けられ、仕上げ工具を固定する(chucking)工具スピンドルと、
工具スピンドルを工具スピンドル軸の周りに回転するように駆動する工具スピンドル駆動部と、
を備え、
機械は、
少なくとも1つの距離センサーと、
距離センサーを用いて、仕上げ工具の少なくとも1つの特徴パラメーターを求めるように構成された制御装置と、
を備えることを特徴とする、機械が提示される。
【0017】
距離センサーは、特に、非接触式に動作する距離センサーとすることができる。距離センサーは、光学式に動作し、測定光ビームを発生させる距離センサーであることが好ましい。本明細書における工具スピンドル及び距離センサーは、特に、距離測定によって工具の外径を信頼性をもって求めることができるように、ビーム方向が工具スピンドル軸に交差するように相互に整合させることが可能に配置することができる。しかし、距離センサーは、ビーム方向が工具スピンドル軸に対して平行に延びるように揃えることができることも考えられる。この例では、工具の外径は、例えば、距離センサーが、工具スピンドル軸に対して径方向の複数の位置に関する距離を求めることで特定することができ、工具の外径は、こうして求められる距離が、工具の外径に対応する径方向位置において急激に変化することで特定される。
【0018】
他の実施形態において、距離センサーは、例えば、誘導式に動作する距離センサーとすることができる。非接触式に動作する他のタイプの距離センサーも考えられる。特徴パラメーターは、非接触式に動作するこのタイプの距離センサーを用いて、非常に迅速かつ信頼性をもって求めることができる。
【0019】
非接触式に動作するセンサーの代わりに、接触式に動作するセンサー、例として機械検知変位センサーを用いることもできる。この機械検知変位センサーは、広い検知面、例えば、工具スピンドル軸に沿って5mmを超える幅、好ましくは10mmを超える、更には20mmを超える幅を有する検知面を有することができ、最大モジュールの場合でも常に外径に接触するようになっている。このセンサーは、高い検知速度の場合でも研削工具が損傷しないように、ばね付勢されて具現され得ることが好ましい。
【0020】
仕上げ工具の少なくとも1つの特徴パラメーターは、距離センサーを用いて求められる。特徴パラメーターは、特に外径とすることができる。代替的又は付加的に、仕上げ工具のタイプ及び距離センサーのタイプに応じて、更なる特徴パラメーターを求めることもできる。仕上げ工具が研削ウォームである場合、対応する特徴パラメーターとして、例えば、研削ウォームのねじ山の数、角度位置、及び深さ、研削ウォームの端面の位置、研削ウォームの幅、モジュール、ピッチ等を挙げることができる。仕上げ工具が成形研削ホイールである場合、対応する特徴パラメーターとして、例えば、成形研削ホイールの側面の長さ及び形状、成形研削ホイールの幅等を挙げることができる。
【0021】
距離測定を行い、距離測定から特徴パラメーターを求め、また必要に応じて更なる計算を行うために、制御装置は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサによって実行される対応するソフトウェアとを備える。制御装置は、必ずしも単一のユニットである必要はない。例えば、仕上げ機は、CNCコントローラーを備えることが好ましい。制御装置の少なくとも一部は、例えば、共通のハウジング内に距離センサーと一緒に配置することができ、及び/又は、制御装置の少なくとも一部は、仕上げ機のCNCコントローラー内に距離センサーとは別個に構成することができる。
【0022】
仕上げ工具は、特に、目立て可能な仕上げ工具とすることができる。しかし、本発明に係る仕上げ機は、目立て可能でない工具の場合でも、こうした工具の特徴パラメーターを求めるのに有用であり得ることから、目立て可能ではない工具に関しても有利である。
【0023】
目立て可能な工具の場合、本発明に係る仕上げ機は、目立てのための準備時間を大幅に短縮することが可能である。外径は、特に非接触式の、例えば光学式の測定によって、非常に迅速に求めることができる。同じことが、程度は劣るが、適切にばね付勢された機械式距離センサーにも当てはまる。外径がわかると、仕上げ工具と目立て工具との間の距離は、目立て工具が仕上げ工具にほぼ接触しようというところまで、非常に迅速に減少させることができる。研削ウォームのねじ山の位置も更に求められた場合、特に光学式又は誘導式のセンサーによって可能であるように、目立て工具を研削ウォームのねじ山に直接挿入することができる。
【0024】
通常、研削による仕上げ動作には、高い切削速度が望ましい。研削対象のギアホイールのバッチ内の切削速度は、研削工具の外径が摩耗及び目立て手順に起因して次第に減少する場合でも、実質的に一定となるように維持されることが理想である。これには、工具の直径が減少するにつれて、研削工具の回転速度を増大させることが必要である。しかしながら、操作者がそのような調整を怠るか、又は、回転速度が、所与の直径における研削工具の許容可能な最大回転速度を超えて誤って設定されてしまうというリスクがある。極端な場合、これは研削工具の破損につながるおそれがある。このことは、重要な安全性の問題を表している。
【0025】
したがって、1つの改良形態において、制御装置は、求められた外径に応じて工具スピンドルの回転速度が変化するように、工具スピンドル駆動部を作動させるように構成される。特に、制御装置は、対応するソフトウェアを備えることができる。このようにして、特に、仕上げ工具の外径が経時的に変化しても、仕上げ工具の外周における表面速度が実質的に一定を保つように、回転速度を制御することが可能になる。このようにして、実質的に一定の切削速度でワークの加工を行う。こうして、仕上げ工具が繰り返し目立てされる場合でも、一定の品質を確保することができる。同時に、回転速度が誤って過度に高速に設定されるおそれがないため、安全性が向上する。安全性の向上は、工具スピンドルが、求められた外径に応じて変化し得る許容可能な最大回転速度を超えないように、工具スピンドル駆動部を作動させるように、制御装置を構成することでも達成することができる。このために、例えば外径の選択値に対してそれぞれ許容可能な最大回転速度を、制御装置内にルックアップテーブルの形式で記憶することができる。制御装置は、このテーブルを参照することができ、そこから、許容可能な最大回転速度を補間することができる。
【0026】
仕上げ工具が研削ウォームである場合、研削ウォームのねじ山の条数及び角度位置を、特に、研削ウォームの様々な回転角度に関して、好ましくは非接触式の距離測定から求めることができる。制御装置は、このためにも対応するソフトウェアを備えることができる。これにより、目立て工具又はバッチの第1のワークを、研削ウォームのねじ山に挿入することが容易になる。
【0027】
目立て手順又は研削手順の間に研削工具の損傷(いわゆる研削ホイールのこぼれ)があった場合、従来技術では通常、そのことが自動的に特定されることはない。そのため、冒頭に述べたような目立て工具を用いる研削ウォームの接触式測定は、通常、ウォームの全幅に対して非常に小さな幅の範囲でしか実行されない。したがって、信頼性をもって損傷を特定することは、通常不可能である。したがって、研削工具は、各研削サイクルの前に、操作者が損傷を目視によって検査する必要がある。ここでは、損傷が確認されるか否かは、目視検査での操作者の入念さにかかっている。
【0028】
研削ホイールのこぼれをより容易に特定することができるように、1つの改良形態における制御装置は、仕上げ工具の表面の少なくとも1つの領域の画像を得るために、距離センサーを用いて、工具スピンドル軸に沿った複数の位置に関して、及び仕上げ工具の複数の回転角度に関して距離測定を行うように構成される。例えば、制御装置は、工具スピンドル軸に対して平行な仕上げ工具の表面の形状を、複数の回転角度に関してそれぞれ検出することができる。こうして求められた画像を、表面領域の想定される外観と比較することで、研削ホイールのこぼれをより容易に特定することができる。この比較は、自動で行うことができ、すなわち、制御装置は、比較を自動的に行う対応するソフトウェアを備えることができる。
【0029】
工具スピンドル軸に沿った様々な位置に関して距離測定を行うために、様々な手段を提供することができる。特に、このために、工具スピンドル及び距離センサーは、工具スピンドル軸に沿って互いに相対的に変位可能であることを意図することができる。代替的又は付加的に、距離センサーは、いわゆるプロファイルスキャナーとして構成することができ、すなわち、この距離センサーは、外形方向に沿った距離プロファイルを得るために、所定の外形方向に沿った、特に工具スピンドル軸に対して平行な外形方向に沿った複数の位置に関して距離測定を行うように構成することができる。このために、距離センサーは、特にラインレーザー(すなわち、ビーム平面において扇形のビームを発生させる光学系を備えるレーザーであり、この扇形のビームは、平面に当たると線として現れる)を備えることができる。この例における工具スピンドル及び距離センサーは、ラインレーザーのビーム平面が、工具スピンドル軸を含むように相互に位置を合わせることが可能に配置されることが好ましい。他の実施形態において、ラインレーザーは、測定線を含むビーム平面が、工具スピンドル軸に対して任意の角度で延びるような位置に合わせることが可能であるように配置することができる。特に、ビーム平面が工具スピンドル軸に対して垂直になるように延在することも考えられる。
【0030】
代替的に、距離センサーは、スポットレーザーとして構成することもできる。2つ以上の距離センサーが設けられ、例として、これらのセンサーのうちの一方をスポットレーザーとすることができ、もう一方のセンサーをラインレーザーとすることができることも考えられる。スポットレーザー又はラインレーザーに基づく距離センサーは、従来技術から既知であるとともに、市販されている。
【0031】
1つの改良形態において、制御装置は、整合性検査を行うように構成され、すなわち、求められた少なくとも1つの特徴パラメーターを1つ又は複数の対照特徴パラメーターと比較し、不整合を特定するように構成される。対照特徴パラメーターは、特に、制御装置に予め記憶されているパラメーター、例えば、機械コントローラーに手動で入力した又は別の方法で入力されたパラメーターとすることができる。このために、制御装置は、ここでも対応するソフトウェアを備えることができる。特に、不整合が確認された場合には、機械のCNCコントローラー及び/又は操作者に対し、対応するアラーム信号を発することができる。このようにして、研削工具の交換の際に不適切な工具を誤って挿入してしまった場合、又は操作者が不適切な特徴パラメーターを入力してしまった場合に、可能性として起こり得る深刻な結果が回避される。動作上の安全性は、これによって著しく向上する。
【0032】
測定に際して、距離センサーを仕上げ工具に対する好適な位置に移動させるために、機械は、可動な、特に変位可能又は旋回可能なキャリアを備えることができ、このキャリアは、機械ベッドに対して複数の位置に動かすことが可能であり、この例における距離センサーは、可動キャリア上に配置することができる。可動キャリアは、特に、回転板又は回転タレットとすることができる。
【0033】
可動キャリアは、距離センサーを仕上げ工具に対して動かす役目を果たすだけでなく、この可動キャリアは、更なる役割も果たすことが好ましい。したがって、さらに、加工対象のワークを固定する少なくとも1つのワークスピンドル、及び/又は目立て装置を、可動キャリア上に配置することができる。有利な実施形態において、少なくとも2つのワークスピンドルが可動キャリア上に配置され、ワークスピンドルのうちの一方を、ワークが他方のワークスピンドルにおいて加工されている間に、着脱することができる。可動キャリアが旋回式である場合、この例における距離センサーは、旋回キャリアの周方向に関して、2つのワークスピンドルの間に位置する。
【0034】
代替的な実施形態において、工具キャリアは、工具スピンドルの位置を距離センサーに対して合わせるように、可動とすることができ、特に、変位可能とするか又は軸の周りに旋回可能とすることができる。したがって、距離センサーを仕上げ工具に対して動かす代わりに、仕上げ工具を距離センサーに対して動かすと言うこともできる。距離センサーを周囲環境の影響から保護するために、距離センサーをハウジング内に収納することができる。ハウジングは、周囲環境の影響から保護するために、閉鎖装置(例えば、フラップ又はスライド)によって閉鎖可能である開窓部を有することができる。代替的又は付加的に、ハウジングの内部には、密閉空気、すなわち、周囲圧力に対して僅かに正圧となる空気を供給することができる。密閉空気は、例えば油滴等の汚染物が、距離センサー上に蓄積することを防ぐ。
【0035】
本発明は、距離センサーを用いて仕上げ工具を測定する方法を更に提供する。工具スピンドル軸の周りに回転するように仕上げ機の工具スピンドル上に固定された仕上げ工具を測定する対応する方法は、
距離センサーを用いて、仕上げ工具に対して少なくとも1つの距離測定を行うことと、
少なくとも1つの距離測定から、仕上げ工具の少なくとも1つの特徴パラメーターを求めることと、
を含む。
【0036】
既に上記でより詳細に説明したように、仕上げ工具の外径の寸法は、特に特徴パラメーターとして求めることができる。既に述べたように、距離センサーは、特に、光学式に動作する距離センサーとすることができる。上記方法は、光学式距離センサーの測定光ビームの位置を仕上げ工具に対して合わせることを含むことができる。この位置合わせは、特に、単純な距離測定によって外径を求めることができるように、測定光ビームによって規定されるビーム方向が工具スピンドル軸に交差するようにして行うことができる。工具スピンドル軸の回転速度は、求められた外径に応じて変化することができる。仕上げ工具が研削ウォームである場合、研削ウォームの複数の回転角度に関して距離測定を行うことができ、この距離測定から、研削ウォームのねじ山の条数及び角度位置を求めることができる。距離測定は、仕上げ工具の表面の少なくとも1つの領域の画像を得るために、工具スピンドル軸に沿った複数の位置に関して、及び仕上げ工具の複数の回転角度に関して行うことができる。ここでは、表面領域の求められた画像と、表面領域の想定される外観との間の差異を求めることができる。工具スピンドル軸に沿った複数の位置に関して距離測定を行うために、工具スピンドル及び距離センサーは、工具スピンドル軸に沿って互いに相対的に変位させることができる。例えば、仕上げ工具、特に研削ウォーム又は成形研削ホイールの始端及び終端、並びに工具スピンドル軸におけるこの始端及び終端の位置を、ここで確立することができる。求められた特徴パラメーターは、コントローラーに予め記憶されている対照特徴パラメーターと比較し、不整合を特定することができる。特徴パラメーターは、加工プロセスにおける学習モードにおいて求めることができることも有利である。この例では、コントローラーがこの特徴パラメーターを利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、第1の実施形態による仕上げ機の概略図である。
【
図2】
図2は、回転タレットを
図1に対して90度回転させた、
図1の機械の細部の拡大図である。
【
図4】
図4は、距離センサーとCNCコントローラーとの間のインタラクションを強調した概略図である。
【
図5】
図5は、ワークスピンドル軸に対する距離センサーのビーム方向を強調した概略図である。
【
図6】
図6は、単一の距離センサーによる研削ウォームの測定を強調した概略図である。
【
図7】
図7は、相互に角度を付けて配置された2つの距離センサーによる研削ウォームの測定を強調した概略図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態による仕上げ機の概略図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態による仕上げ機の概略図である。
【
図11】
図11は、工具キャリアが測定位置に旋回された位置にある、
図10の仕上げ機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を用いて説明する。図面は、単に例示目的のものであり、限定するものとして解釈すべきではない。
【0039】
研削を行うことによって、ギアホイールのハードフィニッシュ加工を行う仕上げ機が、
図1に示されている。この機械は、機械ベッド10を備え、機械ベッド10の上に、工具キャリア20が、水平作動方向Xに沿って変位可能であるように配置される。Z方向スライド21が、工具キャリア20上に、鉛直方向Zに沿って変位可能であるように配置される。Y方向スライド22が、Z方向スライド21上に配置され、このY方向スライド22は、Z方向スライド21に対し、一方ではX軸に対して平行な旋回軸Aの周りに旋回可能であり、他方では変位方向Yに沿って変位可能である。Y方向スライド22は、工具スピンドル30を保持し、工具スピンドル30に、研削ウォーム31の形態の仕上げ工具が固定される。工具スピンドル30は、研削ウォーム31を工具スピンドル軸Bの周りに回転するように駆動する、工具スピンドル駆動部32を備える。
【0040】
回転タレット40の形態の旋回式キャリアが、機械ベッド10の上に配置される。回転タレット40は、複数の回転位置の間で鉛直軸C3の周りに旋回可能である。この回転タレット40は、それぞれ1つのワーク51を固定することができる、2つのワークスピンドル50を保持する。ワークスピンドル50のそれぞれは、ワークスピンドル軸の周りに回転するように駆動することができる。回転タレット上の2つのワークスピンドルは、正反対の位置(すなわち、回転タレットの旋回軸に関して180度オフセットした位置)にある。このようにして、2つのワークスピンドルのうちの一方を、ワークが他方のワークスピンドル上で研削ウォーム31によって加工されている間に着脱することができる。その結果、望ましくないダウンタイムが大幅に回避される。このタイプの機械の構想は、例えば、国際公開第2000/035621号から既知である。
【0041】
図1において回転タレット40の後側に位置するため、
図1の図では見ることができない目立て装置80が、回転タレット上に、例えば、ワークスピンドルに関して90度オフセットされるように配置される。
【0042】
距離センサー60は、回転タレット40上に、目立て装置とは正反対の位置に、すなわち、同様に、例えば、ワークスピンドルに関して90度オフセットされるように配置される。本例におけるこの距離センサー60は、光学式距離センサーである。この距離センサー60は、筐体41によって汚染物から保護される。距離センサー60を用いた測定を可能にするために、筐体41は、開窓部42を有し、開窓部42は、必要に応じてスライド又はフラップによって閉鎖可能とすることができる。距離センサー60を汚染物から保護するために、筐体41の内部に密閉空気(すなわち、周囲圧力に対していくらか正圧となる空気)を供給し、開窓部42を通して空気流を生じさせることが有利である。空気流は、距離センサー60を吹き抜け、例えば、油滴等の汚染物が距離センサー60に蓄積するのを防ぐ。
【0043】
この機械は、複数の制御モジュール71及び操作盤72を含むCNCコントローラー70を備える。制御モジュール71のそれぞれは、1つの機械軸を作動し、及び/又は関連するセンサーからの信号を受信する。本例では、制御モジュール71のうちの1つが、距離センサー60とのインタラクションのために設けられる。このモジュールは、距離センサー60の内部コントローラーと通信し、距離センサー60の測定結果を処理する。本明細書に関して、距離センサー60の内部コントローラー及びこの内部コントローラーとインタラクトする制御モジュール71は、協働して制御装置を形成する。
【0044】
図1の機械の拡大部分が
図2に示されている。
図3は、その同じ部分を部分的に断面で示しており、ここでは、筐体41の内部の距離センサー60が見えるように筐体41の一部が切り欠かれている。この図における回転タレットは、
図1の向きに対して、例えば、この回転タレットの鉛直旋回軸C3の周りに90度旋回しており、そのため、距離センサー60は、ここでは研削ウォーム31に対向して位置している。本明細書における距離センサー60は、この距離センサー60によって放射される測定光ビームのビーム方向が、工具スピンドル軸Bに垂直に交差するような位置に合わされている。
【0045】
図4は、また、距離センサー60と対応する制御モジュール71とのインタラクションを強調している。
【0046】
研削ウォーム31に対する距離センサー60の配置が、
図5及び
図6に示されている。測定光ビーム61は、水平に進み、研削ウォームの回転軸、すなわち工具スピンドル軸Bに対して垂直になるように整合されていることを見て取ることができる。ただし、距離センサーの以下の代替的な構成も考えられる。
-測定光ビーム61を軸Bに対して水平に揃える必要はない。
-測定光ビーム61を軸Bの位置に直接合わせる必要はない。
-測定光ビーム61が軸Bに対して垂直になるように進む必要はない。
-測定光ビーム61を、特に、B軸に対しておおよそ平行になるように揃え、それにより、側方から工具に当てることができる。この例において、工具の直径は、距離センサーの径方向位置のどこで急激な距離変化が測定されるかを確かめることによって求めることができる。
-測定光ビーム61は、工具の後ろに配置された反射板に当たることができる。
-送信器及び受信器としてそれぞれ機能する2つのセンサーを用いて測定を行うこともできる。
【0047】
光学式距離センサーの測定原理は、以下のとおりである。距離センサー60によって発生される測定光ビーム61は、測定対象物(ここでは研削ウォーム31)の表面に当たり、そこから散乱光として反射され、距離センサーに戻る。反射されたビームは、距離センサー60によって検出され、反射ビームの特性から、距離センサー60と測定対象物の表面との間の間隔を、距離センサー60の内部コントローラーによって計算する。
【0048】
このタイプの距離センサーの様々な動作モードが、従来技術から既知である。
【0049】
第1の既知の動作モードによれば、飛行時間測定が行われる。このために、測定光ビームの励起光を高周波によって変調し、距離センサーによって検出された反射光と励起光との間の、光の飛行時間に起因する位相変位を測定する。位相変位から、飛行時間を導出し、そこから測定対象物に対する距離センサーの距離を導出する。
【0050】
第2の既知の動作モードによれば、距離測定は、三角測量法に基づく。この方法の場合、測定光ビームを測定対象物に集束させ、生じた光点を、光源に対して側方にオフセットするように、距離センサー内に配置されたカメラ(例えば、ラインセンサーを備えるカメラ)によって観察する。光点が観察される角度は、測定対象物の距離に応じて変化し、カメラのセンサーにおける光点の像の位置も対応して変化する。測定対象物の距離センサーからの距離は、三角関数を用いて計算する。
【0051】
同じ測定原理を用いて、測定対象物の表面上の軸に沿った距離プロファイルを求めることもできる。この例における距離センサーは、プロファイルスキャナーとも呼ばれる。測定のために、特殊な光学系を用いてレーザービームを扇形になるように拡大し、それにより、測定対象物上に輝線を生じさせる。このレーザー線の反射光は、センサーマトリックス上に再現される。レーザー線の各点について、センサーマトリックス上に生じる像から、一方では距離が、また他方ではレーザー線に沿った位置が計算される。レーザー線に沿った距離プロファイルは、このようにして求められる。
【0052】
代替的に、工具の外形は、スポットレーザーと、軸方向におけるセンサーに対する工具の相対移動とを用いて求めることもできる。
【0053】
上述した原理のうちの1つに従って動作する好適な距離センサーが市販されている。したがって、使用可能な距離センサーに関するより詳細な説明は、省略することができる。測定距離に関して、10マイクロメートル範囲の測定精度又はそれ以上の測定精度を得ることができる。
【0054】
工具スピンドル軸の周りでの工具の回転を更に行うと、工具表面全体の画像を得ることができる。
【0055】
工具スピンドル軸Bに対する距離センサー60の位置が既知であり、研削ウォームが回転する場合、研削ウォーム31の外径dは、回転期間にわたって測定された最小距離から求めることができる。また、例えば、研削ウォームのねじ山の条数、角度位置、及び深さ等の更なる特徴パラメーターを求めることができる。上記角度位置は、目立て工具又はワークを、研削ウォームのねじ山に正しく挿入するのに利用することができる。
【0056】
求められた特徴パラメーターについて、整合性検査又は一致検査を行うことができる。このために、求められた特徴パラメーターを、機械のCNCコントローラーに予め記憶されている対照特徴パラメーターと比較する。差異がある場合、操作者は、好適な信号によって、それについての警告を受けることができる。
【0057】
研削ウォーム31の表面全体の画像又は表面の特定の領域の画像は、必要に応じて、距離センサー60を用いて作成することができる。このために、例えば、工具スピンドル軸Bの周りでの研削ウォーム31の複数の回転角度について、ウォーム幅bに沿って、工具スピンドル軸Bに対して平行な距離プロファイルを作成することができる。このような距離プロファイルを作成するために、距離センサーは、上記で説明したようなプロファイルスキャナーとして構成することができ、及び/又は、研削ウォーム31は、Y方向スライドによって、距離センサー60に対して工具スピンドル軸Bに沿って変位させることができる。
【0058】
そうした表面領域の画像から、更なる特徴パラメーター、例えば、研削ウォームのねじ山の側面の形状を表す特徴パラメーターを求めることができる。
【0059】
研削ウォームの表面又は表面領域の画像を用いて、特に、研削ウォームが損傷しているか否か、例えば、いわゆる研削ウォームのこぼれが存在するか否かをチェックすることもできる。傷のない研削ウォームの場合、表面領域の画像は、全く特別な性質を有することが想定される。すなわち、例えば、研削ホイールの外径は、各研削ウォームのねじ山に沿って急激に変化することはなく、一定であるか又は僅かに段階的に変化し得る、回転角度の一貫した関数を示すことが想定される。一方、ウォームホイールのねじ山のこぼれがある場合、外径には急激な変化が生じる。表面領域の画像の想定される外観からのこの種の差異は、自動で容易に特定することができる。パターンを特定する対応するアルゴリズムは、それ自体既知である。研削ホイールのこぼれ等の損傷は、このようにして自動的に特定することができる。そのような損傷が存在する場合、操作者は、これに対応して、例えば、可聴及び/又は視覚的なアラーム信号が発されることで、警告を受けることができる。さらに、CNCコントローラー70は、特別なソフトウェアにより、研削及び目立て中の損傷を制限するための自動化手順の開始信号を自主的に発生させることができる。例えば、周縁領域にごく僅かな研削ホイールのこぼれが確認された場合、研削による加工を、場合によっては、更新された自動目立てによって、品質を損なうことなく続行することもできる。
【0060】
図7は、単一の距離センサーの代わりに、2つ以上の距離センサー60、60’を用いることができることを示している。特に、上記距離センサーの測定光ビームは、
図7に示されているように、相互に角度を付けて仕上げ工具に当たることができる。この図における2つの距離センサー60、60’の測定光ビーム61、61’は、工具スピンドル軸Bの位置に合わされているが、工具スピンドル軸に対して垂直に進むのではなく、例えば、この工具スピンドル軸の平面の法線に対して±1度~20度の角度で進む。その結果、研削ウォームのねじ山の側面は、特に、工具スピンドル軸に対して垂直に工具に当たる、単一の測定光ビームのみが用いられる場合に比べて、より精密に測定することができる。
【0061】
仕上げ機の第2の実施形態が
図8及び
図9に示されている。この第2の実施形態は、接触センサー60を備える。センサー60は、この例において、研削ウォーム31の外径を測定する。このために、センサー60は、研削ウォームの隣り合うねじ山の距離よりも広い、大きな支持面を画定する。これにより、センサー60が研削ウォームの外径に常に当接することが確実になる。この構成は、
図1の機械の構成に概ね対応する。しかし、
図1の機械とは対照的に、距離センサー60は、仕上げ工具の表面に接触することができるように、筐体41の開窓部42から突出する。この実施形態におけるセンサーは、任意には、上記センサーを必要に応じて開窓部42から展開させることができるように、自動的に後退及び展開可能に設計することができる。ここでも、距離センサーの保護のために、開窓部に対する閉鎖具を設けることができ、及び/又は、筐体41の内部に、密閉空気を供給することを意図することができる。
【0062】
仕上げ工具の第3の実施形態が、
図10及び
図11に示されている。この実施形態では、機械ベッド10の上に位置を固定されるように配置された、1つのみのワークスピンドル50が存在する。工具キャリア20全体は、鉛直軸(いわゆるC1軸)の周りで、機械ベッド10に対する様々な位置に旋回可能であり、第1の実施形態と同様に、いわゆるX軸に沿ってワークスピンドル50に対して径方向に変位可能である。第1の実施形態と同様に、工具スピンドル30は、鉛直のZ軸に沿って、及びワークスピンドル軸に沿ったY方向において、工具キャリア20に対して変位可能であり、また、水平軸(いわゆるA軸)の周りに旋回可能である。研削ウォームは、
図10の加工位置において、ワークに係合することができる。工具キャリア20は、この加工位置に対して、C1軸の周りに、例えば180度旋回することができる。この目立て位置(図面には示されていない)において、目立て装置80によって、研削ウォームに目立てを行うことができる。このような機械構想を有する機械は、独国特許第19625370号から既知であり、更なる詳細についてはこの文献を参照されたい。
【0063】
この実施形態における距離センサー60は、ホルダー62によって機械ベッド10に位置を固定されて取り付けられる。
図11の位置では、工具キャリア20は、距離センサー60が研削ウォーム31に対向するまで旋回されている。研削ウォーム31は、この位置において、距離センサー60によって測定することができる。
【0064】
本発明は、上記の例示的な実施形態に限定されない。むしろ、本発明の範囲から逸脱することなく複数の変更形態が可能であることが、上記説明から明らかとなる。特に、全ての実施形態において、研削ウォームの代わりに、成形研削ホイール、研削ウォームと成形研削ホイールとの組合せ、又は他の任意のタイプの仕上げ工具を用いることができる。また、距離センサーは、第1の実施形態及び第2の実施形態の場合のように、旋回式の回転タレットの代わりに、変位可能なスライド上に配置することができる。このスライドは、1つ又は2つのワークスピンドルを保持することができる。第3の実施形態の場合のように、ワークキャリアは、距離センサーに向かって旋回せず、ワークキャリアは、距離センサーに向かって変位することも考えられる。
【符号の説明】
【0065】
10 機械ベッド
20 工具キャリア
21 Z方向スライド
22 Y方向スライド
30 工具スピンドル
31 研削ウォーム
32 工具スピンドル駆動部
40 回転タレット
41 筐体
42 開窓部
50 ワークスピンドル
51 ワーク
60 距離センサー
61 測定光ビーム
62 センサーホルダー
70 CNCコントローラー
71 制御モジュール
72 操作盤
80 修正装置
X、Y、Z 機械軸
A 工具の旋回軸
B 工具スピンドル軸
C1 工具キャリアの旋回軸
C3 回転タレットの旋回軸
b ウォーム幅
d 外径