(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 1/226 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
F16K1/226 F
(21)【出願番号】P 2019564698
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2019000232
(87)【国際公開番号】W WO2019139006
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018001831
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上村 忍文
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180742(JP,A)
【文献】特開2006-234169(JP,A)
【文献】特開昭62-002074(JP,A)
【文献】実開昭60-002061(JP,U)
【文献】特開2017-190814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/16 - 1/228
F16K 27/00 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路軸線方向に延びる内部流路が形成されている弁本体と、前記内部流路内に前記流路軸線と垂直な回動軸線周りに回動可能に支持され且つ外周部に球面状の弁座面を有する円盤状の弁体と、前記弁本体の前記流路軸線方向側面の前記内部流路周りに形成される環状凹部と、内周縁部に弁座部を有し且つ該弁座部が前記内部流路内に突出するように前記環状凹部に取り付けられる環状のシートリングとを備え、前記弁体の回動により前記弁座面と前記シートリングの前記弁座部とを接離させて前記内部流路の開閉を行うバタフライバルブであって、
前記弁座部は、三角形状の断面を有し、前記弁座部の頂点と前記弁座面とが当接する点における前記弁座面の接線に対して前記弁座部の三角形状の前記断面の頂角の二等分線が垂直となるように形成されていることを特徴とするバタフライバルブ。
【請求項2】
前記バタフライバルブは、リテーナキャップと、リテーナ本体とをさらに備え、前記環状凹部が前記流路軸線と垂直に延びる凹部壁面を有しており、前記凹部壁面上に配置される前記リテーナキャップと前記環状凹部に固定される前記リテーナ本体との間に、
前記弁座部が前記内部流路側へ突出するように、前記シートリングを挟持することにより、前記シートリングが前記環状凹部に保持される、請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記リテーナ本体と前記リテーナキャップの内部流路に面する表面によって構成される内周面は、閉弁時に、前記弁体の前記弁座面と平行に且つ離間して延びるように形成されている、請求項2に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
前記リテーナキャップが環状のキャップ本体部と
該キャップ本体部から前記流路軸線方向に突出して延びる環状壁部とを含み、前記シートリングに設けられた環状嵌合溝に前記環状壁部を嵌合させた状態で、前記シートリングが前記リテーナキャップと前記リテーナ本体との間に挟持される、請求項2
又は請求項3に記載のバタフライバルブ。
【請求項5】
前記シートリングの前記弁座部の三角形状断面の頂角が110度から120度の範囲である、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のバタフライバルブ。
【請求項6】
前記リテーナキャップと前記弁本体とが一体的に形成されている、請求項2に記載のバタフライバルブ。
【請求項7】
前記回動軸線が、前記弁座面から前記流路軸線方向に偏心して位置し且つ前記内部流路の中心から偏心して位置するように定められている、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のバタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業における流体輸送配管ラインに使用され、弁体を回動させることにより流路の開閉を行うバタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場、半導体製造分野、食品分野、バイオ分野などの各種産業において、種々の流体が流通する流路の開閉、制御を行うバタフライバルブが使用されている。バタフライバルブでは、弁本体内に形成された管状の内部流路内に、弁軸によって弁本体に回動可能に支持された円盤形状の弁体が配置されており、弁軸に接続されたハンドルやアクチュエータによって弁軸を回動させて内部流路の内周面や弁本体と弁体の外周縁部との間に設けられた環状のシート部材の弁座部に対して弁体の外周縁部の弁体弁座面を接離させることにより、流路の開閉を行う。
【0003】
バタフライバルブには、弁軸の回動軸線がシート部材の弁座部と弁体の弁体弁座面とが当接して形成されるシール面の中心から流路軸線方向に偏心して位置し且つ内部流路の中心から偏心して位置する二重偏心型のバタフライバルブが存在する。このような二重偏心型のバタフライバルブでは、弁体の弁体弁座面を球面状(球面の一部をなすよう形状)に形成すると共に、弁本体の流路軸線方向側面において内部流路を取り囲むように形成された環状凹部に、環状のシート部材を取り付け、弁体の球面状の弁体弁座面をシート部材の内周縁部に形成された弁座部に圧接させてシール面を形成することにより、弁体の外周縁部と内部流路の内周面との間をシールして閉弁状態とするようになっている。また、特許文献1や特許文献2に開示されているバタフライバルブのように、環状の弁座シートは、外周縁部に設けられた固定部と内周縁部に設けられ凸状湾曲面を有したシール部とを含み、弁本体に設けられた収容部にリテーナにより固定部を押圧して固定したり、固定部を弁本体に設けられた閉じた環状の溝に挿入して固定したりして、流路軸線と垂直な方向にシール部を内部流路内に突出させて弁座シートを弁本体に固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-169845号公報
【文献】特開2006-234169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、二重偏心型バタフライバルブでは、弁本体に固定されたシート部材の内周縁部の突状湾曲面を有した弁座部に対して弁体の外周縁部に設けられた球面状の弁体弁座面を当接させて、シート部材を押し潰して変形させ、弁体の外周縁部と内部流路の内周面との間をシールするようになっている。このため、シート部材の弁座部と弁体の弁体弁座面との圧接時の面圧を高くしてシール性能を向上させるためには、シート部材の弁座部の内部流路への突出量を増加させて弁座部の変形量を増大させる必要がある。しかしながら、弁座部の内部流路への突出量を増加させると、弁座部が球面状の弁体弁座面に押されて倒れやすくなり、弁座部の摩耗や弁座部の一部の千切れなどの破損が発生しやすくなるという問題があった。
【0006】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解決して、シートリングと弁体との間のシール性能を向上させると共にシートリングの摩耗や破損の発生を抑制することができるバタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み、本発明は、流路軸線方向に延びる内部流路が形成されている弁本体と、前記内部流路内に前記流路軸線と垂直な回動軸線周りに回動可能に支持され且つ外周部に球面状の弁座面を有する円盤状の弁体と、前記弁本体の前記流路軸線方向側面の前記内部流路周りに形成される環状凹部と、内周縁部に弁座部を有し且つ該弁座部が前記内部流路内に突出するように前記環状凹部に取り付けられる環状のシートリングとを備え、前記弁体の回動により前記弁座面と前記シートリングの前記弁座部とを接離させて前記内部流路の開閉を行うバタフライバルブであって、前記弁座部は、三角形状の断面を有し、前記弁座部の頂点と前記弁座面とが当接する点における前記弁座面の接線に対して前記弁座部の三角形状の前記断面の頂角の二等分線が垂直となるように形成されているバタフライバルブを提供する。
【0008】
上記バタフライバルブでは、内部流路内に突出するシートリングの弁座部が三角形状の断面を有し、弁座部の頂点と弁座面とが当接する点における球面状の弁座面の接線に対して弁座部の三角形状の断面の頂角の二等分線が垂直となるように形成されている。したがって、シートリングの弁座部と弁体の弁座面との圧接時に弁座部の変形を少なくすることができ、摩耗や破損の発生を抑制することができる。また、弁座部が弁体弁座面に垂直(法線方向)に力を作用させるので、面圧が高くなり、シール性能も向上される。
【0009】
前記バタフライバルブは、リテーナキャップと、リテーナ本体とをさらに備え、前記環状凹部が前記流路軸線と垂直に延びる凹部壁面を有しており、前記凹部壁面上に配置される前記リテーナキャップと前記環状凹部に固定される前記リテーナ本体との間に、前記弁座部が前記内部流路側へ突出するように、前記シートリングを挟持することにより、前記シートリングが前記環状凹部に保持されることが好ましい。この場合、前記リテーナ本体と前記リテーナキャップの内部流路に面する表面によって構成される内周面は、閉弁時に、前記弁体の前記弁座面と平行に且つ離間して延びるように形成されていることがさらに好ましい。
【0010】
また、前記リテーナキャップが環状のキャップ本体部と該キャップ本体部から前記流路軸線方向に突出して延びる環状壁部とを含み、前記シートリングに設けられた環状嵌合溝に前記環状壁部を嵌合させた状態で、前記シートリングが前記リテーナキャップと前記リテーナ本体との間に挟持されることが好ましい。
【0011】
一つの実施形態として、前記シートリングの前記弁座部の三角形状断面の頂角が110度から120度の範囲とすることができる。
【0012】
さらに、前記リテーナキャップと前記弁本体とが一体的に形成されているようにしてもよい。
【0013】
また、前記回動軸線が、前記弁座面から前記流路軸線方向に偏心して位置し且つ前記内部流路の中心から偏心して位置するように定められていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバタフライバルブによれば、シートリングの弁座部の形状の工夫により、シートリングの弁座部と弁体の弁体弁座面との圧接時に弁座部の変形を少なくすることができ、摩耗や破損の発生を抑制することができる。また、弁座部が弁体弁座面に垂直に力を作用させるので、面圧が高くなり、シール性能も向上される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるバタフライバルブの全体構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示されているバタフライバルブを右側から見た側面図である。
【
図3】
図1に示されているバタフライバルブの弁体の斜視図である。
【
図4A】
図3に示されている弁体を
図1における右側から見た平面図である。
【
図5】
図4Aの線IV-IVに沿って上方から見た矢視断面図である。
【
図6A】
図1に示されているバタフライバルブの弁体を軸支する下側の第2の弁軸の斜視図である。
【
図6B】
図1に示されているバタフライバルブの弁体を軸支する下側の第2の弁軸を矢印Aの方向から見た側面図である。
【
図7】
図1に示されているバタフライバルブの弁体を軸支する上側の第1の弁軸を示すバタフライバルブの部分縦断面図である。
【
図8A】
図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
【
図8B】
図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
【
図8C】
図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
【
図8D】
図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
【
図8E】
図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
【
図9】
図1に示されているバタフライバルブのシートリング及びシート押えの詳細な構造を示す拡大図である。
【
図10】
図1に示されているバタフライバルブの変形例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明によるバタフライバルブ11の実施の形態を説明する。
最初に
図1及び
図2を参照して、本発明によるバタフライバルブ11の全体構成について説明する。
【0017】
バタフライバルブ11は、流路軸線方向に延びる内部流路13aが形成されている中空円筒状の弁本体13と、内部流路13a内に配置され弁本体13に回動可能に軸支されている概略円盤形状の弁体15と、内部流路13aの内周に取り付けられている環状のシートリング17と、シートリング17を弁本体13に固定するための環状のシート押え19とを備えており、弁体15の外周縁部とシートリング17上に形成される弁座部17aとを接離させることにより、内部流路13aの開閉を行うことができるようになっている。
【0018】
弁本体13の内部流路13aの流路軸線方向の下流側端部の周縁部、すなわち弁本体13の流路軸線方向の下流側の側面における内部流路13aの外周部には、環状のシート押え19の外径と概略同径まで径方向に延びる環状凹部21が形成されており、この環状凹部21にシートリング17及びシート押え19が嵌合される。シート押え19は、環状のリテーナ本体19aと環状のリテーナキャップ19bとからなる。リテーナ本体19aには、段差部23(
図7参照)が形成されており、段差部23には、リテーナキャップ19bとの間にシートリング17の固定部17bを配置するようにリテーナキャップ19bとシートリング17の固定部17bとが収納される。このような構成により、リテーナ本体19aを適宜の方法で環状凹部21に固定して、環状凹部21の流路軸線方向の側面上に配置されるリテーナキャップ19bとリテーナ本体19aとの間にシートリング17の固定部17bを挟持することにより、環状凹部21にシートリング17を保持、固定することができる。
【0019】
なお、リテーナキャップ19bは、その内周縁端が内部流路13a内に突出するように配置される。また、内部流路13aに面するリテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bの内周縁端の表面は、球面の一部のような形状となっている。
【0020】
リテーナ本体19aを環状凹部21に固定する方法としては、例えば、特開平11-230372に開示されているようなバイヨネット方式を採用することができる。この場合、リテーナ本体19aの弁本体13側の外周面に径方向に突出する複数の円弧状突起部を周方向に等間隔で形成すると共に、環状凹部21の外周部に円弧状突起部を収容可能に形成される円弧状切欠き部と、円弧状切欠き部の流路軸線方向側面側から円弧状突起部を周方向に案内するように延びる係合溝とを設け、リテーナ本体19aの円弧状突起部を環状凹部21の円弧状切欠き部に嵌合させて円弧状突起部を環状凹部21の流路軸線方向側面に当接させた状態で、リテーナ本体19aを周方向に回動させ、円弧状突起部を係合溝に沿って案内して円弧状突起部と係合溝とを係合させることにより、リテーナ本体19aを環状凹部21に固定することができる。
【0021】
シートリング17は、弾性材料から形成されており、弁座部17aと固定部17bとを有している。弁座部17aは、固定部17bがリテーナ本体19aとリテーナキャップ19bとの間に挟持された状態でシートリング17が環状凹部21に取り付けられたときに、内部流路13a内に突出するように形成されている。シートリング17を形成する好適な弾性材料としては、ブチルゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FRM)等のゴム弾性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、PTFE等のフッ素樹脂被覆ゴム弾性体が挙げられる。
【0022】
弁体15は、対向する二つの主面15a、15bと、二つの主面15a、15bの間を接続するように環状に延びる外周縁部15cとを有している。弁体15の一方の主面15aには、
図3によく示されているように、回動軸線Rと交差する方向(好ましくは直交する方向)に貫通して延びる溝部25が設けられている。溝部25の両側壁25a,25bは、
図2や
図4Aに示されているように、回動軸線Rに向かって互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面となるように形成されている。また、弁体15の一方の主面15aに上述のような溝部25が形成されることにより、溝部25を挟んで回動軸線R方向の両側には、外縁残留部27(27a,27b)が形成される。外縁残留部27は、
図4B及び
図4Cに示されているように、回動軸線Rから離れる方向に凸状に延びる凸状湾曲面を有していることが好ましい。
【0023】
上述のような溝部25を設けることにより、弁体15を全開状態まで回動したときに、溝部25の分だけ、内部流路13a内の開口面積が増加し、容量係数Cvが増加する。また、本発明者は、溝部25の両側壁25a,25bを回動軸線Rに向かって互いに凸状に延びる凸状湾曲面として形成して絞り部のようにすることや、溝部25の両側に形成される外縁残留部27a,27bが回動軸線Rから離れる方向に凸状に延びる凸状湾曲面を有するように形成することにより、渦の発生が抑制されて、圧力損失を低減させることを見出した。これにより、容量係数Cvの向上効果を得ることが可能となる。
【0024】
また、弁体15の他方の主面15bの中央部には、
図5に示されているように、球面状の窪み部(以下、「ディンプル」とも記載する。)29が形成されている。このような球面状の窪み部29を設けることにより、同様に、渦の発生が抑制されて、圧力損失の低減による容量係数の向上効果を得ることができる。
【0025】
弁体15の外周縁部15cには、弁体弁座面15dが形成されており、回動軸線R周りに弁体15を回動させて弁体弁座面15dをシートリング17の弁座部17aに圧接させることにより、弁体弁座面15dと弁座部17aとの間をシールするシール面を形成し、内部流路13aを閉鎖して閉弁状態にさせるようになっている。また、弁体弁座面15dは、内部流路13aに面するリテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bの内周縁端の球面状の表面と所定の間隔をおいて平行に延びる球面の一部のような形状となっている。
【0026】
図示されている実施形態のバタフライバルブ11では、弁体15は、第1の弁軸31と第2の弁軸33とによって弁本体13に回動可能に支持されており、弁体15の回動軸線R方向の対向する位置には、第1の弁軸31と連結するための嵌合穴35と第2の弁軸33と連結するための係止溝37とが設けられている。
【0027】
第1の弁軸31は、回動軸線Rに沿って延びるように弁本体13に形成された第1の軸穴39に回動可能に挿通されて支持されており、第2の弁軸33は、回動軸線Rに沿って内部流路13aを介して第1の軸穴39と対向して形成された第2の軸穴41に挿入され、回動可能に支持されている。
【0028】
第1の軸穴39は外部から回動軸線R方向に弁本体13を内部流路13aまで貫通して延びる貫通軸穴であり、両端部が第1の軸穴39から突出するように第1の弁軸31が第1の軸穴39に回動可能に挿通されている。外部に突出する第1の弁軸31の一端部(
図1における上端部)には、弁体15の操作や駆動のために、図示されていないハンドルや駆動部を取り付けることができるようになっている。また、内部流路13aに突出する第1の弁軸31の他端部(
図1における下端部)には、嵌合穴35と相補的形状の嵌合部31aが形成されており、弁体15の嵌合穴35と嵌合部31aとが回動軸線R周りに回動不能に嵌合されるようになっている。例えば、弁体15の嵌合穴35と第1の弁軸31の嵌合部31aとを多角形状を有するように形成することにより、嵌合穴35と嵌合部31aとを回動不能に連結することができる。
【0029】
一方、第2の軸穴41は弁本体13の内部流路13aから回動軸線R方向に延びる有底軸穴(すなわち貫通していない軸穴)となっており、一方の端部が第2の軸穴41から突出するように第2の弁軸33が第2の軸穴41に挿入され、回動可能に支持されている。第2の弁軸33は、第2の軸穴41内に回動可能に支持される軸部33aと第2の軸穴41から突出するように軸部33aに接続されて形成されている係止部33bとを含んでおり、係止部33bが係止溝37に嵌合されるようになっている。詳細には、係止部33bは、
図6A及び
図6Bに示されているように、回動軸線Rと垂直な方向に延びるレール状部分として形成され、レール状部分の一端が軸部33aの外周面から回動軸線Rと垂直な方向に突出して延びており、第2の弁軸33は概略L字形状を有している。また、弁体15の係止溝37は、
図4Aに示されているように、レール状部分と相補形状となるように形成されており、弁体15と第2の弁軸33とは、回動軸線Rと垂直な方向に弁体15の係止溝37にレール状部分である係止部33bを挿入することにより、回動軸線R周りに回動不能に連結されるようになっている。レール状部分である係止部33bは、軸部33aとの接続部である根元から先端に向かって広がるくさび形状断面を有していることが好ましい。このようなくさび形状を有していることにより、第2の弁軸33からの回動軸線R方向への弁体15の抜けを防止することができる。しかしながら、係止部33bの断面形状は、弁体15と第2の弁軸33とを回動不能に連結することができるようになっていれば限定されるものではなく、多角形状、円形状、楕円形状などとしてもよい。
【0030】
なお、
図1に示されているように、内部流路13a内の流体が有底の穴である嵌合穴35や第2の軸穴41内へ侵入することを防ぐために、第1の弁軸31や第2の弁軸33の軸部33aの外周面には、嵌合穴35の内周面の内部流路13aへの開口部付近や第2の軸穴41の内周面の内部流路13aへの開口部付近に相対する位置に設けられた環状溝に環状シール部材43,45が配置され、嵌合穴35の内周面と第1の弁軸31の外周面との間並びに第2の軸穴41の内周面と第2の弁軸33の軸部33aの外周面との間をシールするようになっている。また、内部流路13a内の流体が貫通軸穴である第1の軸穴39を通して外部に流出することを防止するために、第1の弁軸31の外周面には、第1の軸穴39の内部流路13aへの開口部付近に相対する位置を含めた複数の位置(図示されている実施形態では3箇所)に設けられた環状溝に、ゴム弾性材料からなるOリングなどの環状シール部材47a,47b,47cが配置され、第1の軸穴39の内周面と第1の弁軸31の外周面と間をシールするようになっている。さらに、
図7に詳しく示されているように、第1の弁軸31の嵌合部31aと反対側の端部付近にフランジ部31bが設けられていると共に、弁本体13の第1の軸穴39の外部への開口部の周囲にフランジ部31bを収容するための環状凹部13bが設けられ、環状凹部13bにおいてフランジ部31bと対向する面(以下、底面と記載する。)に設けた環状溝に、ゴム弾性材料からなる環状の平面シール部材47dが嵌合されている。このように配置されたシール部材47dにより、フランジ部31bと環状凹部13bの底面との間をシールし、万が一、内部流路13a内の流体が第1の軸穴39内に侵入しても、第1の軸穴39から外部に漏出しないようになっている。このようなシール構造は、内部流路13aを有害な流体が流通する場合に特に有効である。
【0031】
図示されている実施形態のバタフライバルブ11は、二重偏心構造を有する二重偏心型バタフライバルブとなっている。
図1及び
図2を参照すると、二重偏心型のバタフライバルブ11では、閉弁時に弁体15の弁体弁座面15dとシートリング17の弁座部17aとの間に形成されるシール面の流路軸線方向の中心が弁体15の回動軸線Rから流路軸線方向に偏心して位置するように、シートリング17の弁座部17a、弁体弁座面15d、第1の弁軸31及び第2の弁軸33が設けられている。さらに、
図2に詳しく示されているように、弁体15の回動軸線Rが内部流路13aの横断面の中心を通るように回動軸線Rと平行に延びる中心軸線Oから同横断面内で距離dだけ離間して位置するように弁体15に第1の弁軸31及び第2の弁軸33
が接続されている。このような構成とすることにより、バルブの開閉時に、偏心によるカム作用により弁体15が僅かな回転角度でシートリング17から離脱するため、シートリング17と弁体15との摩擦が少なく、シートリング17の摩耗を減少させると共に、操作トルクを低減させることが可能となる。
【0032】
また、上述のように、二重偏心型バタフライバルブ11は、回動軸線Rが内部流路13aの中心軸線Oから偏心して位置するように構成されているので、弁体15の回動軸線R方向の最大幅は、回動軸線Rを挟んで半径方向の一方側と他方側とで異なっている。このことを利用して、図示されている実施形態の二重偏心型バタフライバルブ11では、内周縁端が内部流路13a内に突出するようにリテーナキャップ19bを配置している。これにより、閉弁状態から開弁状態に弁体15を回動させる際に、回動軸線R周りの一方の方向への回動では外周縁部15cがリテーナキャップ19bと干渉せずに弁体15が回動でき且つ回動軸線R周りの他方の方向への回動では外周縁部15cがリテーナキャップ19bと干渉して弁体15が回動できなくするように、リテーナキャップ19bの内部流路13aへの突出量を設定することで、全閉状態からの弁体15の回動方向を規制することを可能とさせている。
【0033】
なお、弁本体13、弁体15、シート押え19、第1の弁軸31、第2の弁軸33は、用途に応じて、金属材料、樹脂材料、樹脂材料で被覆された金属材料、射出成形法にてインサート成形された金属材料などから形成することができる。
【0034】
次に、
図8Aから
図8Eを参照して、バタフライバルブ11の組み立て方法について説明する。
【0035】
最初に、
図8Aに示されているように、弁本体13の第2の軸穴41に第2の弁軸33の軸部33aを回動可能に挿入する。このとき、第2の弁軸33の係止部33bのレール状部分が流路軸線方向に延び且つ軸部33aの周面から回動軸線Rと垂直な方向に突出する側がシートリング17の装着側(環状凹部21側)へ向くように、第2の弁軸33が配置される。
【0036】
次に、
図8Bに示されているように、環状凹部21と流路軸線方向の反対側から、弁体15の係止溝37を弁本体13側へ向けた状態で流路軸線方向に弁体15を弁本体13の内部流路13a内へ挿入することによって、第2の弁軸33の係止部33bと弁体15の係止溝37とを嵌合させ、係止部33bが係止溝37の端部に到達するまで係止部33bを係止溝37内に収容させる。さらに、
図8Cに示されているように、第1の軸穴39に第1の弁軸31を挿入することにより、第1の弁軸31の嵌合部31aを回転不能に弁体15の嵌合穴35に嵌合させる。これにより、弁体15が回動軸線R周りに回動可能に弁本体13の内部流路13a内に支持される。
【0037】
上述した向きに第2の弁軸33を配置した状態で弁体15を内部流路13a内に挿入することで、第2の弁軸33に近い側から弁体15を挿入することが可能となり、作業がしやすくなる。
【0038】
次に、
図8Dに示されているように、内部流路13a内で弁体15を回動軸線R周りに180°だけ回動させ、
図8Eに示されているように、弁体15の弁体弁座面15dを、シートリング17が装着される側すなわち環状凹部21側へ向けて、配置させる。その後、環状凹部21にシート押え19によってシートリング17が取り付けられ、バタフライバルブ11の組み立てが完了する。
【0039】
次に、
図9を参照して、バタフライバルブのシートリング17及びシート押え19の詳細な構造をさらに説明する。
【0040】
シート押え19は、上述したように、リテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bによって構成されており、内部流路13aに面するリテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bの内周縁端の表面は、閉弁時に、弁体15の外周縁部15cに形成される球面状の弁体弁座面15dと所定の間隔をあけて球面状に延びるようになっている。また、シートリング17の弁座部17aは、リテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bの内周縁端の球面状の表面から内部流路13aへ向かって突出して延びるようになっている。このような構成により、弁体15が回動軸線R周りに回動されて閉弁状態になったときに、リテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bの内周縁端の球面状の表面から突出するシートリング17の弁座部17aが弁体15の弁体弁座面15dに当接してシール面を形成し、内部流路13aをシールすることができる。さらに、リテーナ本体19a及びリテーナキャップ19bの内周縁端の球面状の表面は、閉弁状態になった弁体15の球面状の弁体弁座面15dと所定の間隔をあけて配置されるようになっているので、弁体15の弁体弁座面15dとの接触によりシートリング17の弁座部17aが圧縮されて側方に変形したときの逃げ場が確保される。
【0041】
また、シートリング17の環状の弁座部17aは、三角形状の断面を有しており、弁座部17aの頂点部と閉弁時の弁体15の弁体弁座面15dとが当接する点における球面状の弁体弁座面15dの接線49に対して弁座部17aの三角形状断面の頂角の二等分線51が垂直となるように形成されている。シートリング17の弁座部17aをこのような形状とすることにより、弁座部17aは、弁体15を開弁方向に回動させたときと閉弁方向に回動させたときに弁体弁座面15dと同じ当たり方をし、倒れを生じにくくすることができる。この結果、弁座部17aの摩耗及び破損を低減させることが可能となる。弁座部17aの三角形状断面の頂角の角度は、90°前後まで小さくなると弁体弁座面15dとの当接の際に倒れが生じやすくなるので、100°から150°の範囲とすることが好ましく、110°から120°の範囲とすることが特に好ましい。
【0042】
さらに、リテーナキャップ19bは、環状のキャップ本体部から流路軸線方向に突出して延びる環状壁部53を有し、リテーナ本体19aとリテーナキャップ19bとの間にシートリング17が挟持されるときに環状壁部53がシートリング17の固定部17bに設けられた環状嵌合溝55に嵌合するようになっている。このような構造により、シートリング17の弁座部17aが弁体15の弁体弁座面15dに当接するときに、シートリングの環状嵌合溝55に嵌合するリテーナキャップ19bの環状壁部53からの反力で弁座部17aを圧潰させて十分なシール面圧が得られるようにしている。
【0043】
図9に示されている実施形態では、リテーナキャップ19bが独立した部品として示されているが、リテーナキャップ19bは
図10に示されているように弁本体13と一体的に形成されていてもよい。このようにリテーナキャップ19bを弁本体13と一体的に形成することにより、部品点数を減らすことができ、コストダウンが可能となる。また、シール性を要求される箇所を減らすことができるため、外部漏れのリスクを低減させることも可能となる。さらに、バタフライバルブ11の組み立ても容易となる。
【0044】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明によるバタフライバルブ11を説明したが、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、弁体15に溝部25が設けられているが、溝部25が設けられていない弁体15を備えるバタフライバルブにも適用が可能である。また、上記実施形態では、二重偏心型バタフライバルブ11に本発明が適用された実施形態に基づいて本発明を説明しているが、本発明の適用は二重偏心型のバタフライバルブに限定されるものではなく、一重偏心型や二重偏心型以外の多重偏心型のバタフライバルブなどに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
11 バタフライバルブ
13 弁本体
13a 内部流路
15 弁体
15c 外周縁部
15d 弁体弁座面
17 シートリング
17a 弁座部
19 シート押え
19a リテーナ本体
19b リテーナキャップ
49 接線
51 二等分線
53 環状壁部
55 環状嵌合溝