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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ペプチドPAC1アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20221216BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
A61P25/06
A61K38/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019565520
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018035597
(87)【国際公開番号】W WO2018222991
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】62/514,440
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スウ
(72)【発明者】
【氏名】ハリントン,エッサ・フー
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ファン-ツァオ
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ジェイソン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ミランダ,レスリー・ピー
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06462016(US,B1)
【文献】特開2010-209035(JP,A)
【文献】特開平08-333392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式:
CDATC QFRKA IDDCX 15 16 17 18 19 20 SNVPG SVFKX 30 CMKQK KKEX 39 K AGX 43
ここで、X はG又は存在せず;X 15 はA、V、L、D又は存在せず;X 16 はK、R、 L又は存在せず;X 17 はQ、A、R又は存在せず;X 18 はA、S又は存在せず;X 19 はW、H、Y又は存在せず;X 20 はH、F又は存在せず;X 30 はA、S又は存在せず; 39 はW、F又は存在せず;X 43 はH、Y又は存在せず;アミノ酸配列NVPG又はSNVPGSVFは存在しなくてもよい、
により表されるペプチド又はその薬学的に許容される塩であって、
配列番号1、151、180、163、86、88、85、94、65、56、152及び448からなる群から選択されるペプチド又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物。
【請求項3】
請求項1記載のペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む、片頭痛を治療するための医薬組成物
【請求項4】
前記片頭痛は急性片頭痛である、請求項3に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/514,440号の利益を主張するものであり、その出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を包含し、その配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2018年5月30日に作成された、コンピュータが読むことができるフォーマットの配列表のコピーは、名称がA-2135-WO-PCT_Sequence_Listing_ST25.txtであり、サイズは271KBである。
【背景技術】
【0003】
片頭痛は激しい痛みを伴い得る頭痛を特徴とし、しばしば、吐き気、嘔吐、並びに光に対する極度の過敏(光恐怖症)及び音に対する極度の過敏(音声恐怖症)を伴い、時には、感覚警告症状又は徴候(前兆)が先行する。これは、世界中で非常に流行している疾患であり、欧州人口の約12%、及び米国の女性の18%、男性の6%が片頭痛発作に苦しんでいる(Lipton et al,Neurology,Vol.68:343-349,2007;Lipton et al.,Headache,Vol.41:646-657,2001)。さらに、片頭痛は、うつ病及び血管障害などの多くの精神医学的及び医学的併存疾患に関係している(Buse et al.,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry,Vol.81:428-432,2010;Bigal et al.,Neurology,Vol.72:1864-1871,2009)。片頭痛の有効な治療について未だ満たされていない大きな要求が存在する。現在の片頭痛治療の大部分は忍容性が良好ではないか、又は効果がないかのいずれかであり(Loder et al.,Headache,Vol.52:930-945,2012;Lipton et al.,2001);したがって、片頭痛には未だ満たされていない医学的要求がある。
【0004】
偏頭痛の病態生理学の正確なメカニズムは17世紀以来議論されてきたが、科学者たちがそれを理解するにあたって多くの進歩を遂げてきたにもかかわらず、まだ完全には明らかにされていない。偏頭痛の病因の主要な構成要素は、三叉神経血管系の活性化を含む。血管周囲神経線維からの三叉神経及び副交感神経伝達物質の放出(Sanchez-del-Rio et al.,Curr.Opin.Neurol.,Vol.17(3):289-93,2004)は頭蓋血管の血管拡張をもたらし、偏頭痛の発症と関連することが示唆されている(Edvinsson,Cephalagia,Vol.33(13):1070-1072,2013;Goadsby et al.,New Engl J Med.,Vol.364(4):257-270,2002)。
【0005】
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)及びその受容体(PAC1、VPAC1及びVPAC2)は、片頭痛における重要な回路である三叉神経血管系に関連する感覚ニューロン及び血管平滑筋に存在する。最近のデータは、偏頭痛の病態生理学におけるPACAP、特にPAC1受容体の関与を指摘している(Rahmann A,et al.Cephalalgia 2008;28:226-36)。PAC1受容体は、アデニルシクラーゼ活性及びcAMPシグナル伝達を調節するクラスII Gタンパク質共役受容体である。血管作動性腸ペプチドとPACAPは、ほぼ等しい親和性でVPAC1受容体及びVPAC2受容体を介してそれらの効果を媒介するが、PACAPはPAC1受容体に対してはるかに高い親和性を有する。PACAP-38が片頭痛発作の誘因であることを考慮すると、PAC1受容体は、したがって、片頭痛治療の推定標的であり得る(Edvinsson L.,Br J Pharmacol 2014)。さらに、最近の臨床研究は、PACAPの静脈内投与が片頭痛を有する被験体と健康な被験体の両方において、中硬膜動脈血管拡張及び頭痛を誘発し得ることを実証した。同文献。
【0006】
マキサディランはPAC1受容体のアゴニストである(Banki E.et al.,Neuropharmacology 2014;85:538-4)。最近の研究は、マキサディランによるPAC1受容体の活性化が急性神経性動脈血管拡張及び細静脈からの血漿タンパク質放出を阻害し得ることを示した。PACAPによる片頭痛発作誘発を実証した知見を考慮すると、PAC1受容体は、治療標的として有望な候補となり得る(Rainero I.et al., J Headache Pain 2013;14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Lipton et al,Neurology,Vol.68:343-349,2007
【文献】Lipton et al.,Headache,Vol.41:646-657,2001
【文献】Buse et al.,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry,Vol.81:428-432,2010
【文献】Bigal et al.,Neurology,Vol.72:1864-1871,2009
【文献】Loder et al.,Headache,Vol.52:930-945,2012
【文献】Lipton et al,2001
【文献】Sanchez-del-Rio et al.,Curr.Opin.Neurol.,Vol.17(3):289-93,2004
【文献】Edvinsson,Cephalagia,Vol.33(13):1070-1072,2013
【文献】Goadsby et al.,New Engl J Med.,Vol.364(4):257-270,2002
【文献】Rahmann A,et al.Cephalalgia 2008;28:226-36
【文献】Edvinsson L.,Br J Pharmacol 2014
【文献】Banki E.et al.,Neuropharmacology 2014;85:538-4
【文献】Rainero I.et al.,J Headache Pain 2013;14
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、片頭痛の治療のためのPAC1受容体のアンタゴニストである新規ペプチドを含む。
【0009】
式Iのペプチド又はその薬学的に許容される塩は、本発明によって意図される。
1011121314151617181920212223242526272829303132333435363738394041424344(式I)
【0010】
以下に列挙するすべての変異は、互いに独立しているものとする。
【0011】
一態様では、Xは、Gly、Ser、Gly-Ser-、Ala、Met、[Pra]、Gly-Met-であるか、又は欠損している。
【0012】
例えば、Xは、XがCysである場合にはCysであり得、或いはXは、XがSer、Thrであるか、又は欠損している場合にはSerであり得る。Xは、Asp、Glu、若しくは酸性アミノ酸残基であるか、又は欠損であり得る。別の態様では、Xは、Ala、Pro、Ser、[Aib]、若しくは疎水性アミノ酸残基であるか、又は欠損している。別の例では、Xは、Thr、Ser、Val、Tyr、又は中性、親水性若しくは疎水性アミノ酸残基から選択されるか、或いは欠損であり得る。Xは、XがCysである場合にはCysであり得;或いはXは、XがSerであるか、又は欠損であり得る場合にはSerである。さらに、Xは、Lys、[Cit]、His、Arg若しくは他の塩基性アミノ酸残基、又はGln、Asn、Phe若しくは他の中性アミノ酸残基、又はGlu若しくは他の酸性アミノ酸残基であるか、或いは欠損であり得る。一態様では、Xは、Phe、Tyr、His、又は中性若しくは疎水性アミノ酸残基であるか、或いは欠損しており;Xは、Lys、Arg、又は塩基性アミノ酸残基であるか、或いは欠損しており;Xは、Lys、Arg、又は塩基性アミノ酸残基であるか、或いは欠損しており、X10は、Ala、Cys、Gly、Leu、Gln、Val、又は中性アミノ酸残基であるか、或いは欠損している。
【0013】
本発明は、X11が、Ile、Leu、Met、[Aib]若しくは疎水性アミノ酸残基であるか、又は欠損しており;X12が、Asp、Glu若しくは酸性アミノ酸残基、又はAla、Val若しくは他の中性アミノ酸残基であるか、或いは欠損であり得る、PAC1アンタゴニストペプチドを提供する。さらに、X13が、Asp、Glu若しくは酸性アミノ酸残基、又はAla、Val、[Aib]若しくは他の中性アミノ酸残基、又はLysであるか、或いは欠損であり得る。一態様では、X14は、Cys、Trp、Ile、Met、Ser、又は欠損であり;X15は、Gln、Ala、Phe、Ile、Leu、Met、Ser、Val、Trp、Tyr、又は他の中性アミノ酸残基、或いはAsp、[Cit]、又は中性若しくは酸性アミノ酸残基、或いはHis、Lys、又は他の塩基性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X16は、Lys、Arg、His、又は他の塩基性アミノ酸残基、或いはPhe、Ile、Leu、[Aib]、Gln、Met、Thr、Val、[Pra]、Trp、Tyr、Gly、His、Asn、又は他の中性若しくは[hGlu]酸性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X17は、Ala、Gln、[Aib]、Phe、Ile、Leu、Ser、Val、Trp、Tyr、Thr若しくは他の中性アミノ酸残基、又は[Cit]、Lys、Arg若しくは他の塩基性アミノ酸残基、又はAsp若しくは他の酸性アミノ酸残基、又は欠損であり得;X18は、Ala、Leu、[Aib]、[Pra]、Ser若しくは他の中性アミノ酸残基、又はGlu若しくは他の酸性アミノ酸残基、又はLys若しくは他の塩基性アミノ酸残基、又は欠損であり得;X19は、His、Lys、Arg、又は他の塩基性アミノ酸残基、或いはAla、Phe、Ile、Leu、Met、Gln、Ser、Val、Trp、Tyr、[Aib]、又は他の中性若しくは疎水性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X20は、Ala、[Aib]、Tyr、又は他の中性若しくは疎水性アミノ酸残基、或いはHis、又は他の塩基性アミノ酸残基、或いは欠損であり得る。
【0014】
本発明はまた、X21が、Ala、Met、Ser、Val、[Aib]、若しくは中性アミノ酸残基、又は欠損であり得;X22が、Asn、His、Gln、又は塩基性若しくは中性アミノ酸残基、或いはGlu、又は他の酸性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X23が、Gly、Val、Thr若しくは中性アミノ酸残基、又はGlu若しくは他の酸性アミノ酸残基、又はLys若しくは他の塩基性アミノ酸残基、又は欠損であり得;X24が、欠損であるか、或いはPro、[Pip]、[Sar]、[Hyp]、[DHP]若しくは中性アミノ酸残基、又はArg若しくは他の塩基性アミノ酸残基であり得;X25が、欠損、Ala、Gly、Tyr、[Pra]、又は中性アミノ酸残基であり得;X26が、欠損、Asn、Gln若しくは中性アミノ酸残基、又は-Leu-Gln-Thr-Val-であり得;X27が、Ala、Gly、Ser、[Aib]、又は中性若しくは親水性アミノ酸残基、或いはAsp、又は他のアミノ酸残基であり得るか、或いは欠損であり;X28が、欠損、Val、Thr、Ala、又は中性若しくは親水性アミノ酸残基、又はLys若しくは他の塩基性アミノ酸残基であり得;X29が、欠損であり得るか、或いはPhe、Trp、Tyr、[Aib]、又は中性若しくは疎水性アミノ酸残基であり得;X30が、Lys、[Aib]、Ala若しくは[d-Ala](aとしても表記される)、又は塩基性若しくは中性アミノ酸残基、又はGlu若しくは他の酸性アミノ酸残基、又は欠損であり得るものを提供する。
【0015】
別の態様では、X31は、Glu、[Aib]、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、又は酸性若しくは中性アミノ酸残基、Lys又は他の塩基性アミノ酸残基、又は欠損であり得;X32は、Cys、Leu、Serであり得るか、又は欠損、又はArgであり;X33は、Ala、Phe、Ile、Leu、Ser、Val、[SeMet]、Met、[Nle]、又は疎水性アミノ酸残基であり得るか、又は欠損であり:X34は、Lys、[Aib]、Ala、Leu、Val、又は塩基性若しくは中性アミノ酸残基、或いはGlu、又は他の酸性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X35は、Gln、Phe、Asn、Thr、[Aib]、Ala、Pro、Cys若しくは中性アミノ酸残基、又はGlu若しくは酸性アミノ酸残基、又はArg若しくは他の塩基性アミノ酸残基、又は欠損であり得;X36は、Lys、[d-Lys](kとしても表記される)、[Orn]、Glu、Gly、Gln、His、Ala、[Aib]、[NMeLys]、Cys、Arg、Leu、又は塩基性若しくは中性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X37は、Lys、Ala、Gln、[Aib]、Phe、Arg、又は塩基性若しくは中性アミノ酸残基、或いは欠損であり得;X38は、欠損、Lys、Ala、[Aib]、Glu、[Orn]、Gln、Gly、[d-Lys](kとしても表記される)、[NMeLys]、Phe、Leu、Asn、Arg、Thr、又は酸性若しくは塩基性若しくは中性アミノ酸残基であり得;X39は、欠損であるか、或いはGlu、Ala、[Aib]、Leu、Val、又は酸性若しくは中性アミノ酸残基、又はArg若しくは他の塩基性アミノ酸残基であり得;X40は、欠損であるか、或いはPhe、[AMEF]、Trp、[d-Phe](fとしても表記される)、[hPhe]、Tyr、[Aib]、[pI-Phe]、又は中性若しくは疎水性アミノ酸残基、又はGlu若しくは他の酸性アミノ酸残基であり得;X41は、欠損、Lys、[NMeLys]、[d-Lys](kとしても表記される)、Gln、Glu、His、Ala、[Aib]、Leu、Arg、又は塩基性若しくは酸性若しくは中性アミノ酸残基であり得;X42は、欠損であるか、或いはAla、Glu、[Aib]、Pro、Cys、又は酸性若しくは中性アミノ酸残基であり得;X43は、欠損であるか、或いはGly、Glu、Ala、[Aib]、Asn、Gln、Trp、Cys、又は中性若しくは酸性アミノ酸残基、又はHis、Arg若しくは他の塩基性アミノ酸残基であり得;X44は、欠損、Lys、His、[d-Lys](kとしても表記される)、[Orn]、Ala、Phe、Asn、Gln、Arg、Trp、Tyr、又は塩基性若しくは中性アミノ酸残基、或いは-Gly-Ser、-Gly-Gly-Gly-Ser、-His-His-His-His-His、又は-His-His-His-His-His-His、又はGlu若しくは他の酸性アミノ酸残基であり得;但し、11個のアミノ酸残基のみが同時に欠損であり得る。
【0016】
本発明の一態様では、X及びXは、任意選択により、ジスルフィド結合を形成し得る。別の態様では、X14及びX32が、任意選択により、ジスルフィド結合を形成し得る。本発明はさらに、アミノ末端残基が、任意選択により、アセチル化され得;且つカルボキシ末端残基が、任意選択により、アミド化され得る、PAC1アンタゴニストペプチドを提供する。
【0017】
本発明は、Xが、G、アセチル、A、M、S、G-S-、[Pra]、G-M-、又は欠損;例えば、G、又は欠損である、ペプチド又はその薬学的に許容される塩を提供する。また、XはC又はSであり得る。一例では、XはD又はEであり得る。別の態様では、XはA、P又は[Aib]であり得るものを提供する。次の例では、XはT、Y、S、V又は欠損であり得る。さらなる例では、XはC又はSである。一態様では、X及びXはいずれもCであり、ジスルフィド結合によって結合され得る。一態様では、Xは、Q、H、F、K、[Cit]、E、N又はSである。別の態様では、Xは、F又はYであり得る。本発明は、XがR若しくはKであり得、又はXがK若しくはRであるものを提供する。一例では、X10は、A、G、V、C又はLであり得る。別の例では、X11は、I、[Aib]又はLであり得る。さらなる例では、X12は、D、V又はEであり得る。さらに、X13は、D、E、A又は[Aib]であり得る。本発明は、X14がC又はWであり得るペプチドを提供する。X15は、Q、D、K、A、L、Y、F、V、W、S、M、H又はIであり得る。一例では、X15は、A、D、V又はLであり得;X16は、K、R、Y、V、W、I、L、T、F、M、T、[Pra]、W、Q、[Aib]又は[hGlu]、H、G、特に、R、K又はLであり得る。別の例では、X17は、Q、A、R、[Aib]、[Cit]、W、L、S、Y、F、W、V、D、I、K若しくはV;又は、例えば、Q若しくはRであり得る。さらなる態様では、X18は、A、S、[Pra]、K、E、L又は[Aib]であり得る。別の例では、X19は、H、W、R、K、Y、M、A、I、L、S、Q、V、F、又は欠損、特に、H、W又はYであり得る。さらなる例では、X20は、H、Y、[Aib]、A又は欠損であり得る。
【0018】
本明細書で提供される本発明のペプチドには、X21がS、A、M、[Aib]又はVであり得る例が含まれる。一例では、X22は、N、Q、E、H又は欠損、特にN又は欠損であり得る。別の例では、X23は、V、G、K、E、T又は欠損、例えば、V又は欠損であり得る。別の例では、X24は、P、[DHP]、R、[Sar]、[Hyp]、[Pip]又は欠損であり得る。例えば、X25は、G、[Pra]、A、Y又は欠損であり得る。本発明のさらなる態様では、X26は、N、-LQTSV-、Q又は欠損であり得る。本発明は、X27が、S、[Aib]、A、G、D又は欠損であり得るものを提供する。本発明はさらに、X28が、V、K、T、A又は欠損であり得るものを提供する。一例では、X29は、F、W、Y、[Aib]又は欠損である。別の例では、X30は、K、[Aib]、A、[d-a](aとしても表記される)、又はEであり得る。
【0019】
本発明は、X31がE、S、A、L、[Aib]、T、V又はKであり得るPAC1アンタゴニストペプチドを提供する。一例では、X32はC又はRであり得る。次の例では、X33はM、[SeMet]、L、F、I、S、[Nle]又はVであり得る。次の例では、X34はK、V、L、[Aib]、A又はEであり得る。一態様では、X35はQ、E、R、F、[Aib]、A、T、N又はPであり得る。一態様では、X36はK、R、H、L、C、A、[d-k](kとしても表記される)、[Orn]、Q、[Aib]、E、G又は[NMeLys]であり得る。別の態様では、X37は、K、R、F、A、[Aib]又はQであり得る。さらなる態様では、X38は、K、R、L、F、T、N、[Aib]、A、[Orn]、E、Q、G、[d-k](kとしても表記される)、又は[NMeLys]であり得る。なおさらなる例では、X39は、E、R、L、V、A又は[Aib]であり得る。一態様では、X40は、F、W、Y、[d-f](fとしても表記される)、[AMEF]、[Aib]、[hPh]、E又は[pI-Phe]、特に、W又はFであり得る。別の態様では、X41は、K、L、R、Q、[d-k](kとしても表記される)、[Aib]、[NMeLys]、E、A、H又は欠損であり得る。さらなる態様では、X42は、A、[Aib]、C、E、P又は欠損であり得る。さらなる態様では、X43は、G、N、R、H、A、Q、W、[Aib]、E又は欠損であり得る。一態様では、X44は、K、H、Y、N、-His、-GS、R、W、A、Q、F、-His、E、-G-S、[d-k](kとしても表記される)、[Orn]又は欠損、特に、H、Y又は欠損であり得る。本発明は、X14及びX32がいずれもCであり、ジスルフィド結合によって結合され得るペプチドを提供する。
【0020】
本発明によって意図されるペプチドには、ペプチドのN末端がアセチル化され、ペプチドのC末端はアミド化されている、式1のPAC1アンタゴニストペプチドが含まれる。一態様では、ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、配列番号1~配列番号451のものである。本発明はさらに、本発明のペプチド、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0021】
本発明はまた、本発明のペプチドのいずれか、又はその薬学的に許容される塩を使用して片頭痛を治療する方法を意図する。一態様では、本発明は、上記のいずれかの方法であって、急性治療を含む方法を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の開示は、一般に、PAC1受容体アンタゴニストである新規合成ペプチド、及び偏頭痛、特に急性偏頭痛を治療するためのそれらの使用に関する。
【0023】
本明細書では、別段の定義がない限り、本出願と関連して使用される科学用語及び専門用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0024】
一般に、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びに本明細書に記載のタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及び技術は当該技術分野でよく知られ、且つ一般に使用されているものである。別段の記載がない限り、本出願の方法及び手法は、一般に、当該技術分野においてよく知られる通常の方法に従って実施され、こうした方法及び手法は、本明細書を通して引用及び議論される様々な一般の参考文献及び特定性の高い参考文献に記載されるものである。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。酵素反応及び精製手法は、製造者の説明に従って実施されるか、当該技術分野において一般に達成されるように実施されるか、又は本明細書に記載のように実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、並びに医薬品化学及び製薬化学と関連して使用される専門用語、並びにそれらの実験室的な手順及び手法は、よく知られているものであり、当該技術分野において一般に使用されるものである。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤化及び送達並びに患者の治療に標準的な手法が使用され得る。
【0025】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール及び試薬などに限定されず、したがって、変わり得るものであると理解されるべきである。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するように意図されてはおらず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0026】
実施例又は別の形で記載される場合を除き、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を示す数はすべて、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。「約」という用語は、割合と関連して使用されるとき、±10%を意味し得る。
【0027】
定義
「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、また、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然起源のアミノ酸の類似体又は模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然起源のアミノ酸ポリマーにも適用される。これらの用語は、また、例えば、糖タンパク質を形成するための糖質残基の付加、又はリン酸化によって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含し得る。ポリペプチド及びタンパク質は、天然起源及び非組換え細胞により、又は遺伝子操作若しくは遺伝子組換え細胞により産生することができ、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、或いは天然の配列からの1つ又は複数のアミノ酸の欠失、それへの付加及び/又はその置換を有する分子を含む。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は特に、抗体、例えば、抗PAC1抗体(aka PAC1抗体)、PAC1結合タンパク質、抗体、或いは抗原結合タンパク質からの1つ又は複数のアミノ酸の欠失、それへの付加、及び/又はその置換を有する配列を包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、全長タンパク質と比較して、アミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失及び/又は内部の欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片は、全長タンパク質と比較して改変されたアミノ酸も含み得る。
【0028】
「単離タンパク質」又は「単離ポリペプチド」という用語は、対象のタンパク質又はポリペプチドが、それが通常見出されるほとんどの他のタンパク質を含まず、且つ少なくとも約50パーセントの、それが天然において関連するポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は他の物質から分離されていることを意味する。一般的には、「単離タンパク質」又は「単離ポリペプチド」は、所与の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、又は少なくとも約50%を構成する。ゲノムDNA、cDNA、mRNA、若しくは合成起源の他のRNA、又はそれらの任意の組み合わせにより、そのような単離されたタンパク質はコードされ得る。単離されたタンパク質、ポリペプチド又は抗体は、その治療、診断、予防、研究又は他の使用を妨害するであろう、その天然環境において見出される他のタンパク質若しくは他のポリペプチド又は他の汚染物質を実質的に含まないことが好ましい。
【0029】
「ヒトPAC1」、「ヒトPAC」、「hPAC1」及び「hPAC」、「ヒトPAC1受容体」、「ヒトPAC受容体」、「hPAC1受容体」及び「hPAC受容体」という用語は、互換的に使用され、ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチドI型受容体を指す。hPAC1は、UniProtKB/Swiss-Protデータベースにおいて、P41586(PACR_HUMAN)として指定されている、468個のアミノ酸からなるタンパク質であり、ADCYAP1R1遺伝子によってコードされる。PACAP-27及びPACAP-38は、PAC1の主要な内因性アゴニストである。「PAC1」は、別段の指定がない限り、又はこの用語が使用される文脈から明らかでない限り、ヒトPAC1を指す。
【0030】
「断片」、「誘導体」、及び「改変体」という用語は、本発明のポリペプチドを指す場合、以下にさらに説明するように、このようなポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性を保持するポリペプチドの断片、誘導体、及び改変体を意味する。本発明のポリペプチドの断片、誘導体、又は改変体は、(i)1つ以上のアミノ酸残基が保存された若しくは保存されていないアミノ酸残基(例えば、保存されたアミノ酸残基)で置換されており、このような置換されたアミノ酸残基は遺伝子コードによってコードされているものであってもなくてもよいもの、或いは(ii)1つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、或いは(iii)成熟ポリペプチドがポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール若しくはPEG)などの別の化合物と融合しているもの、或いは(iv)さらなるアミノ酸が成熟ポリペプチドに融合しているもの、例えば、リーダー若しくは分泌配列、又は成熟ポリペプチドの精製に使用される配列、又はプロポリペプチド配列、或いは(v)ポリペプチド配列がより大きなポリペプチド(例えば、ヒトアルブミン、抗体又はFc、効果の持続時間の増大のため)と融合しているものであり得る。このような断片、誘導体、並びに改変体及び類似体は、本明細書の教示から、当業者の範囲内であると考えられる。
【0031】
「機能的等価物」及び「実質的に同じ生物学的機能又は活性」はそれぞれ、各ポリペプチドの生物学的活性が同じ手順によって決定される場合に比較されるポリペプチドによって示される生物学的活性の約30%~約100%又はそれ以上である生物学的活性の程度を意味する。
【0032】
ポリペプチドの「改変体」は、別のポリペプチド配列と比較して、アミノ酸配列に1つ又は複数のアミノ酸残基の挿入、欠失及び/又は置換が生じたアミノ酸配列を含む。改変体には、変異誘発によりアミノ酸配列が異なるポリペプチドが含まれる。PAC1アンタゴニストとして機能する改変体は、PAC1アンタゴニスト活性について本発明のポリペプチドの変異体(例えば、トランケーション変異体)のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定し得る。
【0033】
ポリペプチドの「誘導体」は、挿入、欠失、又は置換改変体とは異なる何らかの様式で、例えば、別の化学的部分への結合により、化学的に改変されたポリペプチドである。誘導体は、本明細書に開示される機能を実質的に保存するポリペプチドに対するすべての改変を含み、また、さらなる構造及び付随する機能(例えば、より長い半減期を有するPEG化ポリペプチド)、標的特異性を付与する融合ポリペプチド、又は意図する標的に対する毒性などのさらなる活性を含む。本発明の誘導体は、1つ以上の予測される、例えば、非必須アミノ酸残基でなされる保存的アミノ酸置換(以下でさらに定義される)を含み得る。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を変化させずにタンパク質の野生型配列から変化させることができる残基であるが、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要である。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0034】
「断片」は、本明細書中に開示されるモデルに記載されるように、実質的に類似の機能的活性を保持するポリペプチドの一部である。断片、又は生物学的に活性な部分には、医薬としての使用、抗体を生成するための使用、研究試薬としての使用などに好適なポリペプチド断片が含まれる。断片には、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するか、又はそれに由来し、そのポリペプチドの少なくとも1つの活性を示すアミノ酸配列が含むが、本明細書に開示される全長ポリペプチドよりも少ないアミノ酸を含むペプチドが含まれる。一般的には、生物学的に活性な部分は、ポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するドメイン又はモチーフを含む。ポリペプチドの生物学的に活性な部分は、例えば5以上のアミノ酸長のペプチドであり得る。このような生物学的に活性な部分は、合成的に又は組換え技術によって調製することができ、そして、本明細書に開示される手段及び/又は当該技術分野でよく知られた手段によって、本発明のポリペプチドの機能的活性の1つ以上について評価することができる。
【0035】
「類似体」には、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をその中に含むプロポリペプチドが含まれる。本発明の活性ポリペプチドは、プロポリペプチド分子を完成させる追加のアミノ酸から、自然のインビボプロセスにより、又は酵素的若しくは化学的開裂などの当該技術分野でよく知られた手順で分割することができる。
【0036】
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然の精製ポリペプチド、又は合成ポリペプチドであり得る。
【0037】
ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物学的材料に関連して本明細書を通して使用される「天然起源」という用語は、天然に見出される材料を指す。
【0038】
本発明はまた、キメラポリペプチド、又は融合ポリペプチドを提供する。標的配列は、潜在的な副作用を最小限にするために、ポリペプチドの送達を局在化するように設計される。本発明のポリペプチドは、ペプチド結合又は改変ペプチド結合(すなわち、ペプチドイソスター)によって互いに連結されたアミノ酸から構成され得、そして20個の遺伝子コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスによって、又は当該技術分野でよく知られた化学修飾技術によって修飾することができる。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシ末端を含む、ポリペプチドのどこでも起こり得る。同じタイプの修飾が、所与のポリペプチド中のいくつかの部位において、同じ程度又は異なる程度で存在し得ることが理解されよう。また、所与のポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含み得る。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分岐され得、そしてそれらは、分岐の有無に関わらず、環状であり得る。環状、分岐、及び分岐環状ポリペプチドは、翻訳後天然プロセスから生じるか、又は合成方法によって作製され得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、フォーミュレーション(formulation)、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレン化、硫酸化、アルギニル化などのトランスファーRNAの媒介によるアミノ酸のタンパク質への付加、及びユビキチン化が含まれる(例えば、Proteins,Structure and Molecular Properties,2nd ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,ed.,Academic Press,New York,pp.1-12(1983);Seifter,et al.,Meth.Enzymol 182:626-646,1990;Rattan,et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48-62,1992を参照されたい)。
【0039】
PEG化の場合、本発明のペプチドのPEGへの融合は、当業者に知られた任意の手段によって達成され得る。例えば、PEG化は、まず、システイン変異をペプチドに導入して、PEGを結合するリンカーを提供し、続いて、PEG-マレイミドで部位特異的に誘導体化することによって達成することができる。或いは、N末端の修飾は、上記に開示されたN末端修飾化合物のアミン基、メルカプト基、又はカルボキシレート基によって例示されるように、PEGにカップリングするための反応性部分を組み込んでもよい。例えば、PEG化は、まず、N末端修飾基を介してメルカプト部分をポリペプチドに導入して、PEGを結合するリンカーを提供し、続いて、例えば、Nektar Therapeutics(San Carlos,Calif.,USA)及び/又はNOF(東京、日本)によって供給されるメトキシ-PEG-マレイミド試薬で部位特異的に誘導体化することによって達成することができる。マレイミドに加えて、ハロゲン化アルキル及びビニルスルホンの使用など、多くのCys反応基がタンパク質架橋の当業者に知られている(例えば、Proteins,Structure and Molecular Properties,2nd ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York,1993を参照されたい)。さらに、PEGは、C末端カルボキシレート基に、又はCys、Lys、Asp、若しくはGluなどの内部アミノ酸に、又は類似の反応性側鎖部分を含有する非天然アミノ酸への直接結合によって導入することができる。
【0040】
以下に限定されるものではないが、例えば、約5kDa~約43kDaのPEGポリマーなど、様々な大きさのPEG基を使用することができる。PEG修飾は、単一の線状PEGを含んでもよい。例えば、マレイミド又は他の架橋性基に結合した線状の5、20、又は30kDaのPEGは、Nektar及び/又はNOFから入手可能である。また、修飾は、Nektar及びNOFから入手可能な、マレイミド又は他の架橋性基に結合した2つ以上のPEGポリマー鎖を含む分岐PEGを含んでもよい。
【0041】
PEGとペプチド架橋性基との間のリンカーは変わり得る。例えば、Nektar(Huntsville,Ala.)から市販されているチオール反応性40kDa PEG(mPEG2-MAL)は、Cysへの結合にマレイミド基を使用し、マレイミド基が、Lysを含有するリンカーを介してPEGに結合する。第2の例として、NOFから市販されているチオール反応性43kDa PEG(GL2-400MA)は、Cysへの結合にマレイミド基を使用し、マレイミド基は、二置換アルカンリンカーを介してPEGに結合する。さらに、Nektar Therapeutics(Huntsville,Ala.)から入手可能な分子量5kDa及び20kDaのPEG試薬などのPEGポリマーは、マレイミドに直接結合し得る。
【0042】
本発明のポリペプチドは、例えば、配列番号1~配列番号451)のポリペプチド、並びにそれらから配列において実質的でない変異を有する配列を含む。「実質的でない変異」は、本発明のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的機能、例えば本明細書に示すPAC1アンタゴニスト活性を実質的に維持する任意の配列の付加、置換、又は欠失を有する改変体を含む。これらの機能的等価物は、例えば、本発明のポリペプチドに対して少なくとも約90%の同一性、又は本発明のポリペプチドに対して少なくとも95%の同一性、又は本発明のポリペプチドに対して少なくとも97%の同一性を有するポリペプチドを含み得、また、実質的に同じ生物学的活性を有するこのようなポリペプチドの部分を含み得る。しかし、本明細書にさらに記載するような機能的等価性を示す本発明のポリペプチド由来の、アミノ酸配列において実施的でない変異を有するポリペプチドは、本発明の説明に含まれる。
【0043】
本明細書を通して使用される特定の用語を以下に定義する。特定のアミノ酸の一文字の略語、その対応するアミノ酸、及び三文字の略語は、以下の通りである:A、アラニン(ala);C、システイン(cys);D、アスパラギン酸(asp);E、グルタミン酸(glu);F、フェニルアラニン(phe);G、グリシン(gly);H、ヒスチジン(his);I、イソロイシン(ile);K、リシン(lys);L、ロイシン(leu);M、メチオニン(met);N、アスパラギン(asn);P、プロリン(pro);Q、グルタミン(gin);R、アルギニン(arg);S、セリン(ser);T、トレオニン(thr);V、バリン(val);W、トリプトファン(trp);Y、チロシン(tyr)。さらに、以下の略語が使用されている:a又は[d-a]又は[d-Ala]、D-アラニン;[Aib]、2-アミノイソ酪酸;[AMEF]、アルファ-メチルフェニルアラニン;[Cit]、シトルリン;[DHP]、3,4-デヒドロプロリン;f又は[d-f]、[d-Phe]、D-フェニルアラニン;k又は[d-k]又は[d-Lys]、D-リシン;G-M、グリシン-メチオニン断片;G-S、グリシン-セリン断片;;GS、グリシン-グリシン-グリシン-セリン;[hGlu]、ホモグルタミン酸;His5、ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン;His6、ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン-ヒスチジン;[hPhe]、ホモフェニルアラニン;[Hyp]、4-ヒドロキシプロリン(又はヒドロキシプロリン);LQTSV、ロイシン-グルタミン-トレオニン-セリン-バリン;[Nle]、ノルロイシン;[NMeLys]、N -メチルリシン;[Orn]、オルニチン;[Pip]、ピペコリン酸;[pI-Phe]、パラ-ヨードフェニルアラニン(又は4-ヨードフェニルアラニン);[Pra]、プロパルギルグリシン又は2-プロパルギルグリシン;[Sar]、サルコシン;[SeMet]、セレノメチオニン。
【0044】
当技術分野で知られているように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。このような保存的置換には、上記、及びDayhoff(The Atlas of Protein Sequence and Structure 5,1978)によって記載されたもの、またArgos(EMBO J.8:779-785,1989)によって記載されたものが含まれる。例えば、以下の群の1つに属するアミノ酸は、保存的変化を示す:
・ala、pro、gly、gln、asn、ser、thr;
・cys、ser、tyr、thr;
・val、ile、leu、met、ala、phe;
・lys、arg、his;
・phe、tyr、trp、his;及び
・asp、glu。
【0045】
また、化学模倣体、有機模倣体、又はペプチド模倣体などの、当業者の理解の範囲内の関連化合物も提供される。本明細書で使用される場合、「模倣体」、「ペプチド模倣体(peptide mimetic)」、「ペプチド模倣体(peptidomimetic)」、「有機模倣体」、及び「化学模倣体」という用語は、本発明のペプチドと三次元配向の原子の配列が等価であるペプチド誘導体、ペプチド類似体、及び化学化合物を包含するものとする。本明細書中で使用される「~と等価である」という語句は、本発明のペプチドの生物学的機能を有するために、前記ペプチド中の特定の原子又は化学部分の置換が、模倣化合物において、前記原子及び部分と同じか又は十分に類似した配置又は配向を形成する、結合長、結合角、及び配置を有する化合物を包含することを意図していると理解される。本発明のペプチド模倣体において、化学的構成要素の三次元配置は、ペプチド中のペプチド骨格及び要素アミノ酸側鎖の三次元配置と構造的に且つ/又は機能的に等価であり、実質的な生物学的活性を有する本発明のペプチドのこのようなペプチド模倣体、有機模倣体、及び化学模倣体を生じる。これらの用語は、例えば、Fauchere,(Adv. Drug Res.15:29,1986);Veber & Freidinger,(TINS p.392,1985);及びEvans,et al.,(J.Med.Chem.30:1229,1987)で説明されているように、当該技術分野における理解に従って使用される。
【0046】
本発明の各ペプチドの生物学的活性のためにファーマコフォアが存在すると理解される。当該技術分野においては、ファーマコフォアは、生物学的活性のための構造的要件の理想化された三次元定義を含むと理解される。ペプチド模倣体、有機模倣体、及び化学模倣体は、各ファーマコフォアを現在のコンピュータモデリングソフトウェア(コンピュータ支援による薬物設計)に適合するように設計することができる。前記模倣体は、本発明のペプチド中の置換原子の位置情報に基づき、構造-機能分析によって生成することができる。
【0047】
本発明によって提供されるペプチドは、当該技術分野で知られた化学合成技術、特に固相合成技術により、例えば市販の自動ペプチド合成装置を使用して有利に合成することができる。本発明の模倣体は、ペプチドの合成に従来から使用されている固相法又は液相法によって合成することができる(例えば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149-54,1963;Carpino,Acc.Chem.Res.6:191-98,1973;Birr,Aspects of the Merrifield Peptide Synthesis,Springer-Verlag:Heidelberg,1978;The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Vols.1,2,3,and 5,(Gross & Meinhofer,eds.),Academic Press:New York,1979;Stewart,et al.,Solid Phase PeptideSynthesis,2nd.ed.,Pierce Chem.Co.:Rockford,Ill.,1984;Kent,Ann.Rev.Biochem.57:957-89,1988;及びGregg,et al.,Int.J.Peptide Protein Res.55:161-214,1990を参照されたい。これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0048】
固相法も利用することができる。簡単に述べると、N保護C末端アミノ酸残基を、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレン、ポリアクリルアミド樹脂、珪藻土/ポリアミド(pepsyn K)、細孔性ガラス、セルロース、ポリプロピレン膜、アクリル酸被覆ポリエチレンロッドなどの不溶性支持体に結合させる。一連の保護アミノ酸誘導体の脱保護、中和、及びカップリングのサイクルを用いて、アミノ酸配列に従ってC末端からアミノ酸を連結する。いくつかの合成ペプチドでは、酸感受性樹脂を使用するFMOCストラテジーを使用し得る。これに関する固体支持体の例は、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂であり、これは様々な官能化形態で市販されており、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、パラアセトアミドメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂、4-メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂、オキシム樹脂、4-アルコキシベンジルアルコール樹脂(Wang樹脂)、4-(2’,4’-ジメトキシフェニルアミノメチル)-フェノキシメチル樹脂、2,4-ジメトキシベンズヒドリルアミン樹脂、及び4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-FMOC-アミノ-メチル)-フェノキシアセトアミドノルロイシル-MBHA樹脂(RinkアミドMBHA樹脂)が挙げられる。さらに、酸感受性樹脂は、所望すれば、C末端酸も提供する。アルファアミノ酸の1つの保護基は、塩基に不安定な9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)であり得る。
【0049】
BOC(t-ブチルオキシカルボニル)基及びFMOC基と化学的に適合するアミノ酸の側鎖官能性に好適な保護基は、当該技術分野でよく知られている。FMOC化学を使用する場合、以下の保護アミノ酸誘導体が好ましい:FMOC-Cys(Trit)、FMOC-Ser(But)、FMOC-Asn(Trit)、FMOC-Leu、FMOC-Thr(Trit)、FMOC-Val、FMOC-Gly、FMOC-Lys(Boc)、FMOC-Gln(Trit)、FMOC-Glu(OBut)、FMOC-His(Trit)、FMOC-Tyr(But)、FMOC-Arg(PMC(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル))、FMOC-Arg(BOC)、FMOC-Pro、及びFMOC-Trp(BOC)。アミノ酸残基は、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、又はオキシマ(シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル)とDIC、又はDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、BOP(ベンゾトリアゾリル-N-オキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBrOP(ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)による直接カップリングなどの当該技術分野で知られた種々のカップリング剤及び化学を使用することにより;実施された対称無水物を介して;ペンタフルオロフェニルエステルなどの活性エステルを介して;又は実施されたHOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)活性エステルを介して、或いはFMOC-アミノ酸フッ化物及び塩化物を使用することによって、或いはFMOC-アミノ酸-N-カルボキシ無水物を使用することによって、カップリングされ得る。HOBt又はHOAt(7-アザヒドロキシベンゾトリアゾール)又はTATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)の存在下、HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)、1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)又はHATU(2-(1H-7-アザ-ベンゾトリアゾール-1-イル)、1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)を用いて活性化することができる。
【0050】
固相法は手動で実施してもよく、市販のペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems 431Aなど;Applied Biosystems,Foster City,Calif.)による自動合成であってもよい。一般的な合成では、第1の(C末端)アミノ酸をクロロトリチル樹脂上にロードする。連続脱保護(20%ピペリジン/NMP(N-メチルピロリドン)による)及びABI FastMoc プロトコール(Applied Biosystems)によるカップリングサイクルを用いてペプチド配列を生成することができる。無水酢酸によるキャッピングを伴うダブル及びトリプルカップリングもまた使用し得る。
【0051】
合成模倣ペプチドを樹脂から切断し、適切なスカベンジャーを含有するTFA(トリフルオロ酢酸)で処理することによって脱保護することができる。試薬K(Reagent K)(0.75gの結晶性フェノール、0.25mLのエタンジチオール、0.5mLのチオアニソール、0.5mLの脱イオン水、10mLのTFA)などの多くのこのような切断試薬を使用し得る。ペプチドを濾過により樹脂から分離し、エーテル沈殿により単離する。ゲル濾過及び逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などの従来の方法によってさらなる精製を行ってもよい。本発明による合成模倣体は、薬学的に許容される塩、特に有機塩基及び無機塩基の塩を含む塩基付加塩の形態であってもよい。酸性アミノ酸残基の塩基付加塩は、当業者によく知られた手順に従って、ペプチドを適切な塩基若しくは無機塩基で処理することによって調製されるか、又はこの所望の塩は適切な塩基の凍結乾燥によって直接得ることができる。
【0052】
当業者は、本発明のペプチドが本発明の非修飾ペプチドと実質的に同じ活性を有し、任意選択により他の望ましい特性を有するペプチドを生成するために、種々の化学的手法によって修飾し得ることを認識していよう。一態様では、ペプチドのカルボン酸基は、薬学的に許容されるカチオンの塩の形態で提供され得る。ペプチド内のアミノ基は、HCl、HBr、酢酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸、及び他の有機塩などの薬学的に許容される酸付加塩の形態であってもよく、アミドに変換されてもよい。チオールは、アセトアミド基などの多くの十分に認識された保護基のいずれか1つで保護され得る。当業者はまた、天然の結合配置がより近似されるように、本発明のペプチドに環状構造を導入する方法を認識していよう。例えば、カルボキシル末端又はアミノ末端システイン残基をペプチドに付加することができ、その結果、酸化された場合、ペプチドがジスルフィド結合を含み、それによって環状ペプチドを生成する。他のペプチド環化方法には、チオエーテル、並びにカルボキシル末端及びアミノ末端アミド及びエステルの形成が含まれる。
【0053】
具体的には、対応するペプチド化合物と同じ又は類似の所望の生物学的活性を有するが、溶解性、安定性、並びに加水分解及びタンパク質分解に対する感受性に関してそのペプチドよりも好ましい活性を有するペプチド誘導体及び類似体を構築するために、種々の手法が利用可能である。このような誘導体及び類似体には、N末端アミノ基、C末端カルボキシル基で修飾され、且つ/又はペプチド中のアミド結合の1つ以上を非アミド結合に変化させるペプチドが含まれる。2つ以上のこのような修飾が1つのペプチド模倣構造においてカップリングされ得ることが理解されよう(例えば、C末端カルボキシル基での修飾、及びペプチド中の2つのアミノ酸間の-CH-カルバメート結合の包含)。
【0054】
アミノ末端修飾には、アルキル化、アセチル化、カルボベンゾイル基の付加、スクシンイミド基の形成、及び1つ以上のアミノ酸の結合が含まれる。具体的には、N末端アミノ基を反応させて、式RC(O)NHのアミド基を形成することができる(ここで、Rはアルキル、例えば低級アルキルであり、酸ハロゲン化物、RC(O)Cl又は酸無水物との反応により添加される)。一般的には、反応は、好ましくは過剰(例えば、約10当量)のジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミンを含有する不活性希釈剤(例えば、ジクロロメタン)中で、約等モル又は過剰量(例えば、約5当量)の酸ハロゲン化物をペプチドに添加し、反応中に生成される酸を除去することによって行うことができる。反応条件は他の点では従来と同じである(例えば、室温で30分間)。末端アミノをアルキル化して低級アルキルN-置換を与え、続いて、上記のように酸ハロゲン化物と反応させると、式RC(O)NR-のN-アルキルアミド基が得られる。或いは、アミノ末端を無水コハク酸と反応させて、スクシンイミド基に共有結合させてもよい。ほぼ等モル量の、又は過剰の無水コハク酸(例えば、約5当量)を使用し、Wollenberg,et al.(米国特許第4,612,132号明細書)に記載されるような、適切な不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン)中のジイソプロピルエチルアミンなどの第三アミンの過剰(例えば、10当量)の使用を含む、当該技術分野でよく知られた方法によって、末端アミノ基をスクシンイミドに変換する。上記文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。コハク酸基は、例えば、C~Cアルキル又は-SR置換基で置換され得、これらは従来の方法で調製されて、ペプチドのN末端に置換されたスクシンイミドを提供することもまた理解されよう。このようなアルキル置換基は、低級オレフィン(C~Cアルキル)と無水マレイン酸との反応によって、Wollenberg,et al.(上記)に記載される方法で調製され得、-SR置換基はRSHと無水マレイン酸との反応によって調製され得る(ここで、Rは上記で定義された通りである)。別の態様では、このアミノ末端は、ベンジルオキシカルボニル-NH-又は置換ベンジルオキシカルボニル-NH-基を形成するように誘導体化されてもよい。この誘導体は、ほぼ等量の又は過剰のベンジルオキシカルボニル塩化物(CBZ-Cl)又は置換CBZ-Clと、好ましくは反応中に生成する酸を除去する第三アミンを含有する好適な不活性希釈液(例えば、ジクロロメタン)中で反応させることによって生成することができる。さらに別の誘導体では、好適な不活性希釈剤(ジクロロメタン)中で等量又は過剰(例えば、5当量)のR-S(O)Clと反応させて、末端アミンをスルホンアミドに変換することによって、N末端にスルホンアミド基を含む(ここで、Rはアルキルであり、好ましくは低級アルキルである)。一態様では、不活性希釈剤は、反応中に生成した酸を除去するために、ジイソプロピルエチルアミンなどの過剰の第三級アミン(例えば、10当量)を含有する。反応条件は他の点では従来と同じである(例えば、室温で30分間)。カルバメート基は、好適な不活性希釈剤(例えば、ジクロロメタン)中で等量又は過剰(例えば、5当量)のR-OC(O)Cl又はR-OC(O)OC-p-NOと反応させて、末端アミンをカルバメートに変換することによって、アミノ末端に生成され得る(ここで、Rはアルキルであり、好ましくは低級アルキルである)。例えば、不活性希釈剤は、反応中に生成する酸を除去するために、過剰(例えば、約10当量)のジイソプロピルエチルアミンなどの第三アミンを含み得る。反応条件は他の点では従来と同じである(例えば、室温で30分間)。尿素基は、好適な不活性希釈剤(例えば、ジクロロメタン)中で等量又は過剰(例えば、5当量)のR-N=C=Oと反応させて、末端アミンを尿素(すなわち、RNHC(O)NH-)基に変換することによって、アミノ末端に形成し得る(ここで、Rは、上記で定義された通りである)。一態様では、不活性希釈剤は、過剰(例えば、約10当量)のジイソプロピルエチルアミンなどの第三アミンを含有する。反応条件は他の点では従来どおりであり得る(例えば、室温で約30分間)。アミノ末端における1つ以上の残基の結合は、当該技術分野で知られた化学合成技術のいずれかの技術によって達成され得る。固相合成技術を用いて、例えば、任意の配列のアミノ末端の設置後に、保護アミノ酸誘導体の脱保護、中和、及びカッププリングのサイクルを継続することによって、追加の残基を付加し得る。
【0055】
ペプチド模倣体を調製する場合、C末端カルボキシル基を、追加のアミノ酸で伸長し得る。伸長は、当該技術分野で知られた化学合成技術のいずれかの技術によって達成することができる。固相合成技術を用いて、例えば、保護アミノ酸誘導体の脱保護、中和、及びカッププリングのサイクルによってまず樹脂に残基を添加し、続いて任意の配列を含むアミノ酸を設置することによって、C末端に追加の残基を合成し得る。
【0056】
C末端カルボキシル基がエステル(例えば、-C(O)OR(式中、Rはアルキルであり、一態様では低級アルキルである))によって置換され得るペプチド模倣体の調製においては、ペプチド酸を調製するために使用される樹脂が使用され得、側鎖保護ペプチドは塩基及び適切なアルコール(例えば、メタノール)で切断され得る。所望のエステルを得るために、側鎖保護基は、フッ化水素で処理することにより、通常の方法で除去することができる。C末端カルボキシル基がアミド-C(O)NRで置換され得るペプチド模倣体の調製においては、ベンズヒドリルアミン樹脂をペプチド合成の固体支持体として使用することができる。合成が完了したなら、フッ化水素処理によって、支持体結果からペプチドを遊離ペプチドアミドで直接放出させることができる(すなわち、C末端は-C(O)NHである)。或いは、支持体から側鎖保護ペプチドを切断するためにアンモニアとの反応と組み合わせたペプチド合成の間のクロロメチル化樹脂の使用は、遊離ペプチドアミドを生じ、アルキルアミン又はジアルキルアミンとの反応は側鎖保護アルキルアミド又はジアルキルアミドを生じる(すなわち、C末端は-C(O)NRRであり得る(式中、R及びRは低級アルキなどのアルキルである))。次いで、通常の方法で、フッ化水素で処理することによって、側鎖保護を除去して、遊離アミド、アルキルアミド、又はジアルキルアミドを得ることができる。
【0057】
別の態様では、C末端カルボキシル基又はC末端エステルが、カルボキシル基又はエステルそれぞれの-OH又はエステル(-OR)をN末端アミノ基で置換して環状ペプチドを形成することによって、環化するように誘導することができる。例えば、合成及び切断によってペプチド酸を得た後、遊離酸を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの適切なカルボキシル基活性剤によって活性化エステルへ、溶液中で、例えば塩化メチレン(CHCl)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はその混合物中で変換することができる。次いで、活性化エステルをN末端アミンで置換することによって環状ペプチドを形成することができる。重合ではなく環化は、当該技術分野でよく知られた方法に従って、非常に希釈した溶液を使用することによって促進することができる。
【0058】
ペプチド模倣体は本発明のペプチドに構造的に類似し得るが、以下からなる群から選択される結合により任意選択的に置換される1つ以上のペプチド結合を有する:-CHNH-、-CHS-、-CHCH-、-CH=CH-(シス配座異性体及びトランス配座異性体の両方)、-COCH-、-CH(OH)CH-、及び-CHSO-。この置換方法は当該技術分野で知られており、以下の参考文献にさらに記載されている:Spatola,Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,(Weinstein,ed.),Marcel Dekker:New York,p.267,1983;Spatola,Peptide Backbone Modifications 1:3,1983;Morley,Trends Pharm.Sci.pp.463-468,1980;Hudson,et al.,Int.J.Pept.Prot.Res.14:177-185,1979;Spatola,et al.,Life Sci.38:1243-1249,1986;Hann,J.Chem.Soc.Perkin Trans.I307-314,1982;Almquist,et al.,J.Med.Chem.23:1392-1398,1980;Jennings-White,et al.,Tetrahedron Lett.23:2533,1982;Szelke,et al.,欧州特許出願公開第045665A号明細書;Holladay,et al.,Tetrahedron Lett.24:4401-4404,1983;及びHruby,Life Sci.31:189-199,1982。このようなペプチド模倣体は、例えば、より経済的な製造、より大きな化学的安定性又は増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、有効性など)、抗原性の低下、及び他の特性を含む、ポリペプチド実施形態に対して有意な利点を有し得る。
【0059】
本発明のペプチドの模倣類似体はまた、従来の又は合理的な薬物設計の原理を使用して得ることができる(例えば、Andrews,et al.,Proc.Alfred Benzon Symp.28:145-165,1990;McPherson,Eur.J.Biochem.189:1-24,1990;Hol,et al.,in Molecular Recognition:Chemical and Biochemical Problems,(Roberts,ed.);Royal Society of Chemistry;pp.84-93,1989a;Hol,Arzneim-Forsch.39:1016-1018,1989b;Hol,Agnew Chem.Int.Ed.Engl.25:767-778,1986を参照されたい)。
【0060】
所望の模倣分子は、従来の薬物設計の方法に従い、その構造が「天然」ペプチドの構造と共通の属性を有する分子をランダムに試験することによって得ることができる。結合分子の特定の基における変化から生じる定量的寄与は、ペプチドの活性と比較して推定模倣体の生物学的活性を測定することにより決定し得る。合理的な薬物設計の一実施形態では、模倣体はペプチドの最も安定な三次元立体配座の属性を共有するように設計される。したがって、例えば、模倣体は、本明細書に開示されるように、本発明のペプチドが示すのと同様のイオン性、疎水性、又はファンデルワールス相互作用を十分に引き起こすことができる方法で配向する化学基を有するように設計され得る。
【0061】
合理的模倣設計を実施する1つの方法では、ペプチドの三次元構造を表示することができるコンピュータシステムを利用する。本発明のペプチドのペプチド模倣体、有機模倣体、及び化学模倣体の分子構造は、当該技術分野で市販のコンピュータ支援設計プログラムを使用して作製することができる。このようなプログラムの例としては、SYBYL 6.5(登録商標)、HQSAR(商標)、及びALCHEMY 2000(商標)(Tripos);GALAXY(商標)及びAM2000(商標)(AM Technologies,Inc.,San Antonio,Tex.);CATALYST(商標)及びCERIUS(商標)(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,Calif.);CACHE PRODUCTS(商標)、TSAR(商標)、AMBER(商標)、及びCHEM-X(商標)(Oxford Molecular Products,Oxford,Calif.)、及びCHEMBUILDER3D(商標)(Interactive Simulations,Inc.,San Diego,Calif.)、及びMolecular Operating Environment(Chemical Computing Group,Quebec,Canada)、及びPymol,Maestro,Desmond & BioLuminate(Schrodinger,New York,NY)、及びDiscovery Studio(BIOVIA,San Diego,CA)が挙げられる。
【0062】
例えば、当該技術分野で認識されている分子モデリングプログラムを使用して、本明細書に開示のペプチドを用いて製造されるペプチド模倣体、有機模倣体、及び化学模倣体は、従来の化学合成技術、コンビナトリアル化学法を含む、ハイスループットスクリーニングに適応するように設計された方法を使用して製造することができる。本発明のペプチド模倣体、有機模倣体、及び化学模倣体の製造に有用なコンビナトリアル法には、ファージディスプレイアレイ、固相合成、及びコンビナトリアル化学アレイが含まれる。本発明のペペプチド模倣体、有機模倣体、及び化学模倣体のコンビナトリアル化学製造は、以下に限定されないが、Terreft,(Combinatorial Chemistry,Oxford University Press,London,1998);Look,et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.6:707-12,1996;Ruhland,et al.,J.Am.Chem.Soc.118:253-4,1996;Gordon,et al.,Acc.Chem.Res.29:144-54,1996;Pavia,“The Chemical Generation of Molecular Diversity”,Network Science Center,www.netsci.org,1995;Adnan,et al.,“Solid Support Combinatorial Chemistry in Lead Discovery and SAR Optimization,”Id.,1995;Davies and Briant,“Combinatorial Chemistry Library Design using Pharmacophore Diversity,”Id.,1995;Pavia,“Chemically Generated Screening Libraries:Present and Future,”Id.,1996;並びに米国特許第5,880,972号明細書;同第5,463,564号明細書;同第5,331,573号明細書;及び同第5,573,905号明細書に開示される技術を含む、当該技術分野で知られた方法に従って製造され得る。
【0063】
新たに合成されたポリペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィーによって実質的に精製し得る(例えば、Creighton,Proteins:Structures And Molecular Principles,W H Freeman and Co.,New York,N.Y.,1983を参照されたい)。本発明の合成ポリペプチドの組成は、例えば、エドマン分解手順(Creighton、上記)によるアミノ酸分析又はシークエンシングによって確認することができる。さらに、ポリペプチドのアミノ酸配列の任意の部分を、直接合成の間に改変し、且つ/又は化学的方法を使用して他のタンパク質の配列と組み合わせて、改変体ポリペプチド又は融合ポリペプチドを製造し得る。
【0064】
「治療(treating)」という用語は、損傷、病態、若しくは状態の治療又は改善における成功の任意の兆候を指し、こうした兆候には、症状の軽減、寛解、縮小、又は損傷、病態、若しくは状態の患者耐容性の向上;悪化速度又は衰退速度の鈍化;悪化終点の衰弱軽減;患者の身体的又は精神的な健全性の改善など、任意の客観的又は主観的なパラメーターが含まれる。症状の治療又は改善は、身体検査、神経精神医学的検査及び/又は精神医学的評価の結果を含む、客観的又は主観的なパラメーターに基づき得る。例えば、本明細書で提示される特定の方法は、偏頭痛を予防的に又は急性治療として首尾よく治療し、偏頭痛の頻度を減少させ、偏頭痛の重症度を減少させ、且つ/又は偏頭痛に関連する症状を改善する。
【0065】
「有効量」は一般に、症状の重症度及び/又は頻度を減少させ、症状及び/又は根底にある原因を排除し、症状及び/又はその根底にある原因の発生を予防し、且つ/或いは片頭痛に起因するか又は関連する損傷を改善又は修復するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、治療的に有効な量又は予防的に有効な量である。「治療的に有効な量」は、病状(例えば、片頭痛)又は症状、具体的には、病状と関連する状態又は症状の治療に十分な量、或いは方法は何であれ、病状又は疾患と関連する任意の他の望ましくない症状の進行の予防、防止、遅延、又は好転に十分な量である。「予防的に有効な量」は、対象に投与されると、意図した予防効果、例えば、片頭痛の発症(若しくは再発)の予防若しくは遅延、又は片頭痛若しくは片頭痛症状の発症(若しくは再発)の可能性の低減を有することになる医薬組成物の量である。完全な治療効果又は予防効果は必ずしも1回用量の投与によって生じる必要はなく、一連の用量の投与の後にのみ生じてもよい。したがって、治療的に有効な量又は予防的に有効な量は、1回又は複数回の投与で投与し得る。
【0066】
「アミノ酸」は、当該技術分野におけるその通常の意味を含む。20種の天然起源のアミノ酸及びそれらの略語は、従来の使用法に従う。Immunology-A Synthesis,2nd Edition,(E.S.Golub and D.R.Green,eds.),Sinauer Associates:Sunderland,Mass.(1991)を参照されたい。この文献は任意の目的で参照により本明細書に組み込まれる。20種の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、α-,α-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、及び他の非従来型のアミノ酸もまた、ポリペプチドに好適な構成成分であり得、語句「アミノ酸」に含まれる。非従来型アミノ酸の例には、以下のものが含まれる:4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリシン、ε-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、σ-N-メチルアルギニン、並びに他の類似のアミノ酸及びイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)。本明細書で使用されるポリペプチド表記法では、標準的な使用法及び慣例に従って、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシル末端方向である。
【0067】
天然起源のアミノ酸は、下記の共通の側鎖特性に基づくクラスに分類し得る:
1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:His、Lys、Arg;
5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro、Ala
6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0068】
保存的アミノ酸置換は、こうしたクラスの1つのメンバーと、同じクラスの別のメンバーとの交換を伴い得る。保存的アミノ酸置換は、非天然起源のアミノ酸残基も包含し得、こうした非天然起源のアミノ酸残基は、一般的には、生物学的な系における合成によってではなく、化学的なペプチド合成によって組み込まれる。こうしたものには、ペプチド模倣体及びアミノ酸部分が逆転又は反転した他の形態が含まれる。
【0069】
非保存的置換は、上記のクラスの1つのメンバーと、別のクラスのメンバーとの交換を伴い得る。そのような置換残基は、抗体におけるヒト抗体と相同的な領域に導入されるか、又はその分子の非相同的な領域に導入され得る。
【0070】
特定の実施形態によれば、そのような変更を実施する場合、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮され得る。タンパク質のハイドロパシープロファイルは、各アミノ酸に数値(「ハイドロパシー指数」)を割り当てた後、ペプチド鎖に沿ってこうした値を反復して平均化することによって計算される。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいてハイドロパシー指数が割り当てられている。それらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。
【0071】
タンパク質に対して相互作用的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシープロファイルの重要性は、当該技術分野において理解されている(例えば、Kyte et al.,1982,J.Mol.Biol.157:105-131を参照されたい)。特定のアミノ酸は、類似のハイドロパシー指数又はハイドロパシースコアを有する他のアミノ酸の代わりとなり得、依然として類似の生物学的活性を保持し得ることが知られている。特定の実施形態では、ハイドロパシー指数に基づく変更を実施する場合、ハイドロパシー指数が±2以内のアミノ酸の置換が含められる。いくつかの態様では、±1以内のものが含められ、他の態様では、±0.5以内のものが含められる。
【0072】
同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効率的に実施できることも当該技術分野において理解されており、特に、それによって創出される生物学的機能性タンパク質又はペプチドの意図が、今回の場合のように免疫学的な実施形態における使用である場合、当該技術分野においてそのように理解されている。特定の実施形態では、タンパク質の局所的な最大平均親水性は、その隣接アミノ酸の親水性によって支配されており、その免疫原性及び抗原結合又は免疫原性、すなわちタンパク質の生物学的特性と相関する。
【0073】
以下のアミノ酸残基には、以下の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5)及びトリプトファン(-3.4)。特定の実施形態では、類似の親水性値に基づく変更を実施する場合、その親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が含められる。他の実施形態では、±1以内のものが含められ、さらに他の実施形態では、±0.5以内のものが含められる。いくつかの場合、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定し得る。
【0074】
表1に例示的な保存的アミノ酸置換を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
当業者であれば、よく知られる手法を使用して、本明細書に示すポリペプチドの好適な改変体を決定することができるであろう。活性に重要ではないと考えられる領域を標的とすることによって活性を損なうことなく変更し得る分子の好適な領域を当業者であれば同定し得る。類似のポリペプチドの間で保存されている分子の残基及び部分も当業者であれば同定することができるであろう。さらなる実施形態では、生物学的活性又は構造に重要であり得る領域でも、生物学的活性を損なわずに、又はポリペプチド構造に有害な影響を及ぼさずに、保存的アミノ酸置換に供し得る。
【0077】
さらに、類似のポリペプチドにおける活性又は構造に重要な残基を同定する構造-機能試験を当業者であれば評価することができる。そのような比較を考慮することで、類似のタンパク質における活性又は構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基のタンパク質における重要性を予測することができる。そのような重要であると予測されるアミノ酸残基に対して化学的に類似のアミノ酸置換を当業者であれば選択し得る。
【0078】
類似のポリペプチドにおける三次元構造及びその構造に関するアミノ酸配列も当業者であれば分析することができる。そのような情報を考慮することで、その三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基のアライメントを当業者であれば予測し得る。タンパク質の表面に存在すると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関与し得るため、そのような残基に根本的な変化が生じない選択を当業者であればなし得る。さらに、それぞれの所望のアミノ酸残基の位置に単一アミノ酸置換を含む試験改変体を当業者であれば生成し得る。その後、こうした改変体は、PAC1拮抗活性のためのアッセイを使用してスクリーニングされ、(以下の実施例を参照)したがって、どのアミノ酸を変更することができ、どのアミノ酸を変更してはならないかということに関する情報を得ることができる。換言すれば、そのような日常的な実験から集まる情報に基づき、単独の置換又は他の変異と組み合わせた置換の追加実施を避けるべきアミノ酸位置を当業者であれば容易に決定することができる。
【0079】
標識及びエフェクター基
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1つ以上の標識を含む。「標識基」又は「標識」という用語は、任意の検出可能な標識を意味する。好適な標識基の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチン基、又は二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体向けの結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介してペプチドにカップリングされる。タンパク質の標識方法は、当該技術分野において様々なものが知られており、そうしたものを適切となるように使用し得る。
【0080】
「エフェクター基」という用語は、ペプチドにカップリングされ、細胞毒性物質として作用する任意の基を意味する。好適なエフェクター基の例は、放射性同位体又は放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)である。他の好適な基には、毒素、治療基、又は化学療法基が含まれる。好適な基の例には、カリチアマイシン、アウリスタチン、ゲルダナマイシン及びマイタンシンが含まれる。いくつかの実施形態では、エフェクター基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介して抗体にカップリングされる。
【0081】
一般に、標識は、それが検出されることになるアッセイに応じて様々なクラスに分類される:a)同位体標識(放射性又は重同位体であり得る);b)磁性標識(例えば、磁性粒子);c)酸化還元活性部分;d)光学色素;酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);e)ビオチン化された基;及びf)二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体向けの結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介してペプチドにカップリングされる。タンパク質の標識方法は、当該技術分野において様々なものが知られている。
【0082】
特定の標識には、光学色素が含まれ、こうした光学色素には、限定はされないが、発色団、リン光体及びフルオロフォアが含まれ、後者は多くの場合に特異的である。フルオロフォアは、「小分子」蛍光体又はタンパク質性蛍光体であり得る。
【0083】
「蛍光標識」は、その固有の蛍光特性によって検出され得る任意の分子を意味する。好適な蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルーJ、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red 640、Cy5、Cy5.5、LC Red 705、オレゴングリーン、Alexa-Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、カスケードブルー、カスケードイエロー及びR-フィコエリトリン(PE)(Molecular Probes,Eugene,OR)、FITC、ローダミン及びテキサスレッド(Pierce,Rockford,IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science,Pittsburgh,PA)が挙げられるが、これらに限定されない。フルオロフォアを含む好適な光学色素は、MOLECULAR PROBES HANDBOOK by Richard P.Hauglandに記載されている。
【0084】
好適なタンパク質性蛍光標識にはまた、限定はされないが、ウミシイタケ(Renilla)、ヒロバネウミエラ(Ptilosarcus)又はオワンクラゲ(Aequorea)種のGFP(Chalfie et al.,1994,Science 263:802-805)、EGFP(Clontech Labs.,Inc.,Genbankアクセッション番号U55762)を含む緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質(BFP,Quantum Biotechnologies,Inc.,Quebec,Canada;Stauber,1998,Biotechniques 24:462-471;Heim et al.,1996,Curr.Biol.6:178-182)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP、Clontech Labs.,Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichiki et al.,1993,J.Immunol.150:5408-5417)、βガラクトシダーゼ(Nolan et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2603-2607)及びウミシイタケ(国際公開第92/15673号パンフレット、国際公開第95/07463号パンフレット、国際公開第98/14605号パンフレット、国際公開第98/26277号パンフレット、国際公開第99/49019号パンフレット、米国特許第5292658号明細書、同第5418155号明細書、同第5683888号明細書、同第5741668号明細書、同第5777079号明細書、同第5804387号明細書、同第5874304号明細書、同第5876995号明細書、同第5925558号明細書)が含まれる。
【0085】
特定の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントと共に、本発明の1つ又は複数のPAC1アンタゴニストを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。本発明の医薬組成物には、液体、凍結及び凍結乾燥組成物を含まれるが、これらに限定されない。「薬学的に許容される」は、使用する用量及び濃度でヒトレシピエントに対して毒性がなく、且つ/又はヒトに投与したときにアレルギー又は有害な反応を生じない分子、化合物、及び組成物を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌状態、安定性、溶解又は放出速度、吸着又は浸透性を修正、維持又は保存するための製剤材料を含有してもよい。そのような実施形態では、好適な製剤材料として、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色、香味及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパールなど);安定性促進剤(スクロース又はソルビトールなど);等張化促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又はカリウム、マンニトールソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤及び/又は医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。治療的使用のための分子を製剤化するための方法及び好適な材料は薬学分野において知られており、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyに記載されている。
【0086】
組成物、送達方法、治療方法
いくつかの態様では、本発明の医薬組成物は、無菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水などの標準的な医薬担体を含む。種々の水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどを使用することができ、また、穏やかな化学修飾などに供されるアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどの安定性を高めるための他のタンパク質を含むことができる。
【0087】
製剤中の本発明のペプチドの例示的濃度は、約0.1mg/ml~約200mg/ml、又は約0.1mg/mL~約50mg/mL、又は約0.5mg/mL~約25mg/mL、又は代替的に約2mg/mL~約10mg/mLの範囲であり得る。抗原結合タンパク質の水性製剤は、例えば、約4.0~約7.5、又は約4.8~約5.5の範囲、又は代替的に約5.0のpHのpH緩衝液中で調製することができる。この範囲のpHに適した緩衝剤の例としては、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、塩化水素、塩化水素/水酸化ナトリウム、PBS及び他の有機酸緩衝剤が挙げられる。緩衝剤濃度は、例えば、緩衝剤及び製剤の所望の等張性に応じて、約1mM~約200mM、又は約10mM~約60mMであり得る。
【0088】
抗原結合タンパク質を安定化させることも可能な等張化剤を製剤に含めることができる。例示的な等張化剤には、マンニトール、スクロース又はトレハロースなどのポリオールが含まれる。水性製剤は、高張又は低張溶液も好適であり得るが、等張であることが好ましい。製剤中のポリオールの例示的な濃度は、約1w/v%~約15w/v%の範囲であり得る。
【0089】
界面活性剤を本発明の製剤に添加して、製剤化ペプチドの凝集を減少させ、且つ/又は製剤中の粒子の形成を最小限にし、且つ/又は吸着を減少させることもできる。例示的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20若しくはポリソルベート80)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤の例示的な濃度は、約0.001w/v%~約0.5w/v%、又は約0.005w/v%~約0.2w/v%、又は代替的に約0.004w/v%~約0.01w/v%の範囲であり得る。
【0090】
一例では、製剤は上記の薬剤(すなわち、抗原結合タンパク質、緩衝剤、ポリオール、及び界面活性剤)を含有し、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及び塩化ベンゼトニウムなどの1種又は複数の防腐剤を実質的に含まない。別の実施形態では、防腐剤は製剤中に、例えば、約0.1%~約2%、又は代替的に約0.5%~約1%の範囲の濃度で含まれ得る。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyに記載されているような、1種又は複数の他の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤を、製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさない限り、製剤に含めることができる。
【0091】
本発明のペプチドの治療用製剤は、所望の純度を有するペプチドを、任意選択の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Company)と、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で混合することによって、貯蔵用に調製することができる。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用する用量及び濃度でレシピエントに対して毒性がなく、そしてそれらには、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、マルトース又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体);並びに/或いはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0092】
例えば、特許請求される本発明の好適な製剤は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、又はTRIS緩衝液などの等張性緩衝液を、ポリオール、ソルビトール、スクロース、又は塩化ナトリウムなどの、等張化し安定化する等張化剤と組み合わせて含有し得る。このような等張化剤の一例は、5%ソルビトール又はスクロースである。さらに、製剤は、任意選択により、例えば、凝集の防止又は安定性の改善に、界面活性剤を0.01重量/体積%~0.02重量/体積%含むことができる。製剤のpHは、4.5~6.5又は4.5~5.5の範囲であり得る。PAC1アンタゴニストペプチドのための医薬製剤の他の例示的な説明は、米国特許出願公開第2003/0113316号明細書及び米国特許第6,171,586号明細書に見出すことができる。ペプチドの懸濁液及び結晶形態も意図される。懸濁液及び結晶形態を作製する方法は、当業者に知られている。
【0093】
インビボでの投与に使用される製剤は無菌でなければならない。本発明の組成物は、従来のよく知られた滅菌技術によって滅菌することができる。例えば、滅菌は、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。得られた溶液は使用のために包装されるか、又は無菌条件下で濾過されて凍結乾燥され得、凍結乾燥された調製物は投与の前に滅菌溶液と組み合わされる。
【0094】
凍結乾燥プロセスは、特にポリペプチドが液体組成物中で比較的不安定である場合に、ポリペプチドを長期保存に対し安定化するためにしばしば使用される。凍結乾燥サイクルは、通常、3つの工程:凍結、一次乾燥、及び二次乾燥からなる(Williams and Polli,Journal of Parenteral Science and Technology,Volume 38,Number 2,pages48-59,1984を参照されたい)。凍結工程では、溶液を十分に凍結されるまで冷却する。溶液中のバルク水が、この段階で氷を形成する。氷は、真空を用いて氷の蒸気圧未満にチャンバー圧力を低下させることによって行われる一次乾燥段階で昇華する。最後に、吸着又は結合した水が、第2の乾燥段階において、減圧したチャンバー圧力及び高い棚温度下で除去される。このプロセスで、凍結乾燥ケーキとして知られる物質が生成する。その後、ケーキを使用前に再構成することができる。
【0095】
凍結乾燥物質の標準的な再構成の方法は、ある量の純水(通常、凍結乾燥中に除去された量に等しい)を添加することであるが、非経口投与用の医薬の製造では抗菌剤の希釈溶液が時に使用される(Chen,Drug Development and Industrial Pharmacy,Volume 18:1311-1354,1992を参照されたい)。
【0096】
場合によっては、賦形剤が凍結乾燥製品の安定剤として作用することが知られている(Carpenter et al.,Volume 74:225-239,1991を参照されたい)。例えば、知られている賦形剤としては、ポリオール(マンニトール、ソルビトール及びグリセロールを含む);糖(グルコース及びスクロースを含む);及びアミノ酸(アラニン、グリシン及びグルタミン酸を含む)が挙げられる。さらに、ポリオール及び糖類はまた、凍結及び乾燥により誘発される損傷からポリペプチドを保護し、乾燥状態での貯蔵の間の安定性を高めるためにもよく使用される。一般に、糖類、特に二糖類は、凍結乾燥プロセス及び貯蔵中の両方において有効である。単糖類及び二糖類、並びにPVPなどのポリマーを含む他のクラスの分子も、凍結乾燥製品の安定剤として報告されている。
【0097】
注射には、本発明の医薬製剤及び/又は薬剤は、上記のような適切な溶液による再構成に好適な粉末であり得る。これらの例としては、凍結乾燥、回転乾燥若しくは噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物、又は微粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射用の製剤では、任意選択により、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤、及びこれらの組み合わせを含有し得る。
【0098】
徐放性製剤を調製し得る。徐放性製剤の好適な例としては、抗原結合タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態を有する。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L-グルタミン酸とy エチル-L-グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニルコポリマー、Lupron Depot(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及びロイプロリド酢酸塩から構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは100日間を超えて分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間しかタンパク質を放出できない。カプセル化されたポリペプチドが長時間体内に残存する場合、37℃の水分に曝露される結果としてそれらは変性又は凝集し、生物学的活性の消失及び免疫原性の可能な変化が生じ得る。関与している機構に応じた安定化のための合理的な戦術を立てることができる。例えば、凝集メカニズムがチオ-ジスルフィド交換による分子間のS-S結合の形成であるとわかったなら、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液の凍結乾燥、水分含量の制御、適切な添加剤の使用、及び特定のポリマーマトリックス組成物の開発によって安定化を達成することができる。
【0099】
本発明の製剤は、本明細書に記載のように、短時間作用性、速放性、長時間作用性、又は持続放出性であるように設計することができる。したがって、医薬製剤はまた、制御放出又は徐放用に製剤化することができる。
【0100】
具体的な用量は、疾患の状態、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事、用量間隔、投与経路、排出速度、並びに薬物の組み合わせに応じて調節することができる。有効量を含有する上記剤形のいずれも、十分に日常的な実験の範囲内であり、したがって、十分に本発明の範囲内である。
【0101】
本発明のペプチドは、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内を含む任意の好適な手段によって投与され得、また、局所治療で所望されるなら、病変内投与によって投与され得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内又は皮下投与が含まれる。さらに、本発明のペプチドは、パルス注入によって、特にペプチドの用量を減少させて、好適に投与することができる。一態様では、投与は、投与が短期間であるか長期に亘るかにいくらか依存して、静脈内注射又は皮下注射などの注射によって与えられ得る。局所投与、特に経皮、経粘膜、直腸、経口又は局所投与(例えば、所望の部位の近くに配置したカテーテルによる)を含む、他の投与方法が意図される。本発明のペプチドは、0.01mg/kg~100mg/kgの範囲の用量で、毎日~毎週~毎月(例えば、毎日、1日おき、3日おき、又は週に2、3、4、5若しくは6回)の範囲の頻度で、好ましくは、0.1mg/kg~45mg/kg、0.1mg/kg~15mg/kg、又は0.1mg/kg~10mg/kgの範囲の用量で、週に1回、2週に1回、又は月に1回の頻度で、生理溶液で静脈内又は皮下に投与され得る。
【0102】
本発明の新規ペプチドPAC1アンタゴニストは、それを必要とする患者の、PACAPの生物学的活性に関係する状態の治療又は改善に有用である。本明細書で使用される場合、「治療(treating)」又は「治療(treatment)」という用語は、障害の発生を予防するか、又は障害の病態を改変することを意図して行われる介入である。したがって、「治療(treatment)」は、治療的治療及び予防的又は抑止的手段の両方を指す。治療を必要とする者には、障害又は状態と既に診断されているか、又はそれを患っている者、及び障害又は状態が予防されるべき者が含まれる。「治療(treatment)」は、損傷、病態、又は状態の改善における成功の任意の兆候を含み、こうした兆候には、症状の軽減、寛解、縮小、又は損傷、病態、若しくは状態の患者耐容性の向上、悪化速度又は衰退速度の鈍化、悪化終点の衰弱軽減、又は患者の身体的又は精神的な健全性の改善など、任意の客観的又は主観的なパラメーターが含まれる。症状の治療又は改善は、身体検査、患者による自己申告、神経精神医学的検査及び/又は精神医学的評価の結果を含む、客観的又は主観的なパラメーターに基づき得る。
【0103】
したがって、いくつかの態様では、本発明は、PAC1受容体の不活性化などの、PACAPの生物学的活性に関係する状態を、それを必要とする患者において治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の新規ペプチドの有効量をその患者に投与することを含む方法を提供する。「患者」という用語は、ヒト患者を含む。PACAP生物学的活性は、心臓血管機能、代謝及び内分泌機能、炎症、ストレス応答、並びに自律神経系の調節、特に交感神経系と副交感神経系との間のバランスを含む種々の生理学的プロセスに関係している。例えば、Tanida et al.,Regulatory Peptides,Vol.161:73-80,2010;Moody et al.,Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes Obes.,Vol.18:61-67,2011;及びHashimoto et al.,Current Pharmaceutical Design,Vol.17:985-989,2011を参照されたい。
【0104】
「有効量」は、一般に、症状の重症度及び/又は頻度を減少させ、症状及び/又は根底にある原因を排除し、症状及び/又はその根底にある原因の発生を予防し、且つ/或いは特定の状態(例えば、慢性痛、頭痛若しくは片頭痛)に起因するか又は関連する損傷を改善又は修復するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、治療的に有効な量又は予防的に有効な量である。「治療的に有効な量」は、病状(例えば、頭痛、片頭痛若しくは慢性痛)又は症状、具体的には、病状と関連する状態又は症状の治療に十分な、或いは方法は何であれ、病状又は疾患と関連する任意の他の望ましくない症状の進行の予防、防止、遅延、又は好転に十分な(すなわち、「治療効果」を提供する)量である。「予防的に有効な量」は、対象に投与されると、意図した予防効果、例えば、状態(例えば、頭痛若しくは片頭痛)の発症(若しくは再発)の予防若しくは遅延、又は状態(例えば、頭痛、片頭痛若しくは頭痛症状)の発症(若しくは再発)の可能性の低減を有することになる医薬組成物の量である。完全な治療効果又は予防効果は必ずしも1回用量の投与によって生じる必要はなく、一連の用量の投与の後にのみ生じてもよい。したがって、治療的に有効な量又は予防的に有効な量は、1回又は複数回の投与で投与し得る。
【0105】
特定の態様では、本発明は、有効量の本発明のペプチドを患者に投与することを含む、頭痛状態を有する患者のPAC1受容体の活性化を阻害する方法を提供する。例えば、本方法は、患者の頭痛状態の症状を治療又は予防することができる。したがって、本発明はまた、本明細書に記載のPAC1阻害ペプチドの有効量を患者に投与することを含む、それを必要とする患者の頭痛状態、特に片頭痛を治療又は予防する方法を含む。
【0106】
本発明のいくつかの方法では、治療、予防又は改善すべき頭痛状態は片頭痛である。片頭痛は、片側性、拍動性、及び/若しくは中度から重度の痛み、並びに/又は身体活動によって悪化する痛みを特徴とする、約4時間~約72時間持続する再発性の頭痛である。片頭痛はしばしば、吐き気、嘔吐、及び/又は光に対する過敏(光恐怖症)、音に対する過敏(音声恐怖症)、又は匂いに対する過敏を伴う。一部の患者では、片頭痛の発症に先立って前兆がある。前兆は、一般的には、頭痛がまもなく起こることを知らせる視覚障害、感覚障害、言語障害、又は運動障害である。本明細書に記載の方法は、ヒト患者における前兆のある片頭痛及び前兆のない片頭痛の1つ以上の症状を予防、治療、又は改善する。
【0107】
PACAP38は、その受容体を活性化することによって、血管拡張、特に硬膜血管系の血管拡張を誘導する(Schytz et al.,Neurotherapeutics,Vol.7(2):191-196,2010)。PACAP38/PAC1受容体シグナル伝達カスケードは、特に、片頭痛の病態生理学に関係している(Amin et al.,Brain,Vol.137:779-794,2014)。VPAC1及びVPAC2受容体よりもPAC1受容体に対して高い親和性を有するPACAP38の注入は、片頭痛患者において片頭痛様頭痛を引き起こす(Schytz et al.,Brain 132:16-25、2009;Amin et al.,Brain,Vol.137:779-794,2014)。さらに、片頭痛発作を経験している患者の頭蓋循環ではPACAP38レベルが上昇し、トリプタンによる片頭痛症状の治療後にはPACAP38レベルが低下する(Tuka et al.,Cephalalgia,Vol.33,1085-1095,2013;Zagami et al.,Ann.Clin.Transl.Neurol.,Vol.1:1036-1040,2014)。これらの報告は、PACAP38の内因性放出が偏頭痛の重要な誘因であり、その影響が主にPAC1受容体の活性化により媒介されることを示唆する。
【0108】
本発明のいくつかの態様では、本発明の方法により治療される患者は、反復性片頭痛を有するか、患っているか、又は診断されている。偏頭痛歴(例えば、これまでに少なくとも5回の片頭痛の発作)のある患者が、1ヶ月に14日以下の偏頭痛日を有する場合、反復性又は急性偏頭痛と診断される。「片頭痛日」は、前兆の有無に関わらず、患者が30分を超えて続く「片頭痛」の発症、継続、又は再発を経験する任意の暦日を含む。「片頭痛」は、吐き気若しくは嘔吐、又は光若しくは音に対する過敏と関連する頭痛、及び/或いは以下の痛みの特徴のうちの少なくとも2つを特徴とする頭痛である:片側性の痛み、ズキズキする痛み、中度から重度の痛みの強さ、又は身体活動によって悪化する痛み。特定の実施形態では、反復性片頭痛を有するか、患っているか、又は診断された患者は、平均して1ヶ月あたり少なくとも4日で15日未満の片頭痛日を有する。関連する実施形態では反復性片頭痛を有するか、患っているか、又は診断された患者は、平均して1ヶ月あたり15日未満の頭痛日を有する。本明細書で使用される場合、「頭痛日」は、患者が本明細書で定義される偏頭痛、又は30分を超えて持続するか、若しくは急性頭痛治療を必要とする任意の頭痛を経験する暦日である。
【0109】
他の態様では、本発明は、それを必要とする患者の群発性頭痛を治療又は改善する方法であって、本明細書に記載される新規ペプチドの有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。群発性頭痛は、その最も顕著な特徴として、頭部の片側、一般的には眼の周りに再発性の重篤な頭痛を伴う状態である(Nesbitt et al.,BMJ,Vol.344:e2407,2012を参照されたい)。一部の医師や科学者は、群発性頭痛に起因する痛みは、出産、火傷又は骨折よりも酷い、ヒトが耐え得る最も強い痛みであると述べている。群発性頭痛はしばしば周期的に起こり、自然寛解が痛みの活動期間を中断する。群発性頭痛はしばしば、涙、鼻閉、眼瞼下垂、縮瞳、顔面紅斑、発汗、及び眼の周りの腫脹などの頭部自律神経症状を伴い、しばしば痛みが頭部の側部に限定される。群発性頭痛発症の平均年齢はほぼ30歳~50歳である。それは男性においてより一般的であり、男性対女性の比は約2.5:1~約3.5:1である。群発頭痛の治療に翼口蓋神経節(SPG)への刺激が使用されている。低レベル(しかし、高頻度、生理学的遮断)の電気刺激をSPGに送達する神経刺激システムが、最近の臨床試験において、群発性頭痛の急性消耗性の痛みの軽減に有効であることが示された(Schoenen J et al.,Cephalalgia,Vol.33(10):816-30,2013を参照されたい)。この証拠を考慮すると、PACAPはSPGにおける主要な神経伝達物質の1つであるので、本明細書に記載のPAC1アンタゴニストによるPACAPシグナル伝達の阻害は、ヒトにおける群発性頭痛の治療に有効であると予想される。
【0110】
本発明の方法に従って治療され得るPACAP生物学的活性に関連する他の状態としては、酒さなどの炎症性皮膚状態(米国特許出願公開第2011/0229423号明細書を参照されたい)、神経障害性疼痛などの慢性疼痛症候群(Jongsma et al.,Neuroreport,Vol.12:2215-2219,2001;Hashimoto et al.,Annals of the New York Academy of Sciences,Vol.1070:75-89,2006を参照されたい)、緊張性頭痛、片麻痺性片頭痛、網膜性片頭痛、心的外傷後ストレス障害などの不安障害(Hammack and May,Biol.Psychiatry,Vol.78(3):167-177,2015を参照されたい)、過敏性腸症候群、及び閉経に関連するものなどの血管運動症状(例えば、ほてり、顔面紅潮、発汗、及び寝汗)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、状態は慢性疼痛である。別の実施形態では、状態は神経障害性疼痛である。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、治療は予防的治療を含み得る。予防的治療とは、患者の症状(例えば、片頭痛又は群発性頭痛)の頻度、重症度、及び/又は長さを低減するために、状態又は発作の発症前(例えば、片頭痛発作前、又は群発性頭痛症状の発現前)に行われるように設計された治療を指す。
【実施例
【0111】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のみのために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0112】
実施例1
一般的なペプチド合成
以下の一般的な手順に従い、本発明のペプチドを合成した。ペプチド合成は、適切な直交保護及び樹脂リンカー戦略を用いたNα-Fmoc固相ペプチド合成(SPPS)法を用いて行った。
【0113】
以下の材料を使用した。Nα-Fmoc保護アミノ酸は、Advanced ChemTech(Louisville,KY)、Midwest BIO-TECH(Fishers,IN)、Chem-Impex International(Wood Dale,IL)、Novabiochem(San Diego,CA)、Protein Technologies(Tucson,AZ)、Combi-Blocks(San Diego,CA)、Chem-Impex International(Wood Dale,IL)、Bachem(Torrance,CA)、又はGL Biochem(Shanghai,China)から購入した。AG 1-X2イオン交換樹脂(200~400、アセテート)は、Chem-Impex Internationalから購入した。リンクアミドMBHA樹脂は、Peptides International(100~200メッシュ、1% DVB、RFR-1063-PI、0.52ミリ当量/g初期ローディング、Peptides International,Louisville,KY)から購入した。SP Sepharose高性能樹脂は、GE Healthcare Life Sciencesから購入した。以下の化学物質を購入し、さらに精製することなく直接使用した:N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、2,2,2-トリフルオロエタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、酢酸、無水酢酸、ギ酸、ピペリジン、4-メチル-ピペリジン、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(6-Cl-HOBt)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(オキシマ)、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT)、トリイソプロピルシラン(TIS)、システイン、シスチン(Sigma-Aldrich,Milwaukee,WI);ジクロロメタン(DCM、Mallinckrodt Baker,Inc.);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、Fisher Scientific);HPLC品質の水及びアセトニトリル(Burdick and Jackson);1.0Mトリス-HCl、pH=8.0(Teknova)。
【0114】
標準的なアミノ酸残基について、以下の側鎖保護戦略を使用した:Asn(Trt)、Asp(OBu)、Arg(Pbf)、Cys(Trt)、Gln(Trt)、Glu(OBu)、His(Trt)、Lys(Nε-Boc)、Orn(Nε-Boc);Ser(OBu)、Thr(OBu)、Trp(Boc)、及びTyr(OBu)。記載されるペプチドは、種々の自動ペプチド合成装置を使用して種々の温度で合成され得る。
【0115】
ペプチド合成は、固相ペプチド合成(SPPS)によって行った。アミノ酸カップリングは、種々の自動合成装置:Intavis Multipep Rsi又はCS Bio 336Xでの室温カップリング、及びTribute又はCEM Libertyでの高温カッププリングを用いて行った。合成が完了した後、ペプチドを脱保護し、樹脂から切断した。いくつかの類似体については、ペプチドのN末端を、脱保護及び樹脂からの切断後に修飾した(例えば、N-アシル化により)。ペプチドを酸化的にフォールディングし、逆相クロマトグラフィーにより精製した。場合によっては、試験前にイオン交換樹脂を用いて塩交換を行った。
【0116】
以下の非限定的な実施例は、本発明のペプチドの合成に使用し得る異なるカップリング方法の適用を例示する。
【0117】
カップリング方法1-自動ペプチド合成装置Intavis Multipep Rsi(INTAVIS Bioanalytical Instruments AG,Cologne,Germany)を用いたペプチドの室温カップリングを、以下に詳細に記載するように行った。レジンローダー(Radley)を用いて、乾燥樹脂(0.012mmol、1ウェル当たり)をPhenomenexディープウェルタンパク質沈殿プレート(CEO-7565、38710-1)に加えた。アミノ酸(5mol当量、DMF中0.5M)を、オキシマ(5mol当量、DMF中0.4M)及びDIC(7.5mol当量、DMF中1.0M)で予め活性化した(1分)。予め活性化したアミノ酸を適切なウェルに移した。樹脂を30分間インキュベートし、排液し、このサイクルを繰り返した。2回目のアミノ酸のインキュベーション後、プレートを排液し、DMFで複数回洗浄した。次いで、DMF中に20%のピペリジンを含む溶液による2回のインキュベーションの繰返しによってFmoc基を除去した。樹脂を排出し、DMFで10回洗浄した(8ウェルカラム1個あたり4mL)。最後のFmoc保護基を除去した後、樹脂をDCMで複数回洗浄し、風乾した。
【0118】
カップリング方法2-自動ペプチド合成装置CS Bio 336X単一チャネル固相ペプチド合成装置(Menlo Park,CA)を用いて、ペプチドの室温カップリングを、以下のように行った。乾燥樹脂(0.2mmolのリンクアミド又は予めロードした酸Wang樹脂)を、CSバイオ反応容器中に秤量した。反応容器を反応チャンバー内の反応容器ホルダーに接続した。樹脂をDMF(約10mL)中で15分間膨潤させた。Fmoc-アミノ酸(1.0mmol、Midwest Biotech又はNovabiochem)を2.5mLの6-Cl-HOBt(DMF中1.0M)に溶解した。この溶液に1.0mLのDIC(DMF中1.0M)を添加し、混合物全体を窒素でバブリングしながら15分間撹拌して予備活性化し、次いで樹脂上に移した。この混合物を2時間振盪し、樹脂を濾過し、洗浄した(3×DMF、2×DCM、及びその後に3×DMF)。Fmoc除去は、20%のピペリジン(又は4-メチルピリジン)を含むDMF(5mL、2×15分)で処理することによって達成された。樹脂を濾過し、洗浄した(3×DMF)。すべての残基を、上記のFmoc-アミノ酸カップリング及びFmoc除去工程の繰り返しによってシングルカップリングした。
【0119】
カップリング方法3-自動ペプチド合成装置Tribute(Protein Technologies,Inc.,Tucson,AZ)を用いて、赤外線(IR)加熱による高温カップリングを、本明細書に記載のように行った。乾燥樹脂(0.3mmol)を反応容器にロードし、次いで30%のDMFを含むDCM(約5mL)で濡らし、30分間膨潤させた。Fmocアミノ酸(4当量~5当量)を、6-Cl-HOBt(又はオキシマ)及びDIC(4当量)で予め活性化した。予備活性化した溶液を樹脂に加え、75℃で5分間ボルテックスする。Fmoc脱保護工程を、4×30秒間、50℃にて、同様の方法で加速した。
【0120】
カップリング方法4-自動ペプチド合成装置CEM Liberty Blue(CEM Corporation,Matthews,NC)を用いて、マイクロ波加熱による高温カップリング(0.2mmol)を、以下のように行った。合成には、上記と同様の脱保護試薬及びカップリング試薬を、合成装置の仕様に適合させるためにわずかな変更を加えて使用することができる。典型的な反応カップリング及び脱保護条件は、使用するアミノ酸に応じて、50℃、75℃、又は90℃の温度で生じ得る。アミノ酸カップリング反応は、5倍過剰のFmoc-アミノ酸を用い、DIC(DMF中1.0M)及びオキシマ(DMF中0.5M、0.05MのDIEAを含む)の存在下で行った。過剰量のピペリジン(又は4-メチルピペリジン)20%を含むDMFによって90℃で数回、Fmoc基除去を行った。
【0121】
ペプチドのN-アシル化:最後のFmoc保護基を除去した後、ペプチド-樹脂(0.2mmol)を固相抽出(SPE)フィルターチューブに移し、DMF(×3)、DCM(×3)で洗浄し、真空下で乾燥させた。樹脂を過剰の無水酢酸(DMF中10%、10mL×2)で処理し、続いてDMF(×3)で洗浄して、N-アシル化ペプチドを生成した。
【0122】
カップリング方法1の後の脱保護及び樹脂からの切断:フィルタープレートの底部にドレンポートシーリングマット(ArcticWhite、AWSM-1003DP)を取り付けた。各ウェル中の樹脂(0.012mmol)に、マルチチャンネルピペットを用いて、トリイソプロピルシラン(100μL)、DODT(100μL)、及び水(100μL)を加えた。Dispensette Organicディスペンサーを用いて、各ウェル中の樹脂にTFA(1.0mL)を加えた。プレートの頂部を、別のドレンポートシーリングマットで覆った。混合物をプレートシェーカー上で2時間撹拌した。頂部マットを除去し、底部マットを除去し、真空の助けを借りて、プレートから固体ボトム96ウェルプレートに排出させた。このプレートをgenevacで8時間蒸発させた。この96ウェルプレートの各ウェルに、Dispensette Organicディスペンサーを使用して1.8mLの冷ジエチルエーテルを添加し、沈殿物が形成され、各混合物を、広いボアチップを備えたマルチチャンネルピペットを使用して新しい96ウェルフィルタープレートに移し、排出させた。プレート中の粗ペプチドを1時間風乾し、フィルタープレートの底に蓋をした。このプレートに、1mlの50/50アセトニトリル/水を各ウェルに添加し、プレートを一晩ボルテックスした。さらに1mlの水を各ウェルに加え、ピペットでウェルを混合した。次いで、得られた溶液(1ウェルあたり合計で約2.0mL)を新しい96ウェルプレートに濾過し、取っておいた。
【0123】
カップリング方法2~方法4の後の脱保護及び樹脂からの切断:最後のFmoc保護基を除去した後、ペプチド-樹脂(0.2mmol)を25mL固相抽出(SPE)フィルターチューブに移し、DMF(×3)、DCM(×3)で洗浄し、真空下で乾燥させた。1mLのTIS、1mLのDODT、1mLのHO、及び20mLのTFAを用いてペプチドを樹脂から切断し、得られた懸濁液を室温で3.5時間やさしく撹拌した。樹脂を濾過し、追加のTFA(10mL)で洗浄し、溶液全体を最終体積が約10mLになるまで減圧下で濃縮した。残った残渣を冷シクロプロピルメチルエーテル(50mL)で沈殿させた。得られた白色懸濁液を濾過し、冷tert-ブチルメチルエーテル(25mL)で洗浄し、得られた白色懸濁液を再び濾過した。回収した物質をデシケーター中、減圧下で一晩乾燥させて、オフホワイト色の固体として粗線状ペプチドを得た。
【0124】
カップリング方法1からの切断ペプチドのペプチド酸化的フォールディング:96ペプチドアレイの酸化的フォールディングを、以下の方法で、50mL遠心管のアレイを使用して、並行して、高希釈で行った。4Lボトルに、アセトニトリル175mL、水3125mL、pH8のトリス-HCl 350mL、0.1Mシスチン23.45mL、1.0Mシステイン3.5mLを添加し、フォールディング原液を生成した。各チューブに上記フォールディング溶液35mLを添加し、続いてTecan自動液体ハンドラーを用いて溶解したペプチド溶液を添加し、得られたフォールディング反応物を室温で一晩放置した。アレイ中の各チューブに氷酢酸1mLを加えて反応を停止させた。1.0mLのSP Sepharose High Performance樹脂(0.2M酢酸ナトリウム/20%エタノール中のスラリー、GE Biosciences)及び2.0mLの酢酸ナトリウム(×3、20mM、pH=4)を各ウェルにピペッティングすることによって、96ウェルイオン交換フィルタープレートを調製し、次いで、ゆっくりと排出させた。このプレートに、Tecan液体ハンドラーを使用して、上で調製した50mL遠心管中のペプチドフォールディング溶液を添加した。樹脂を洗浄し(2.0mL、20mM酢酸ナトリウム、pH=4.0)、ペプチドを、真空マニホールドを用いて2.0mL(1.0M塩化ナトリウム、20mM酢酸ナトリウム、pH=4)により、固体ボトム96ウェルプレートに手動でペプチドを樹脂から溶出した。
【0125】
カップリング方法2~4からの切断ペプチドのペプチド酸化的フォールディング:乾燥したPAC1ペプチド粗製物(通常、0.2mmol反応物から乾燥重量で0.8g~1.2g)に、40mL~60mLの50:50の水/アセトニトリルを添加し、混合物をボルテックスし、透明な溶液が得られるまで超音波処理した。溶液全体を濾過し、取っておいた。分離した1Lボトル中で、850mLのDI水、48mLのアセトニトリル、95mLの1.0Mトリス-HCl(pH=8.0)、6.4mLの0.15M~0.17Mシスチン水溶液、及び0.96mLの1.0Mシステイン水溶液を混合して、フォールディング緩衝液を調製した。上記で調製した粗PAC1ペプチド溶液を、最終ペプチド濃度が0.3mMとなるようにフォールディング緩衝液にゆっくり注ぎ、室温で一晩放置した。フォールディング混合物の反応を過剰量の酢酸(25mL)で停止させ、濾過して(0.45μmポリエチレン)、無色溶液を得た。
【0126】
或いは、フォールディングは上記よりも高い最終濃度で行うことができる。粗ペプチドを最初に90:10の水/アセトニトリル溶液に約5.6mg/mLで可溶化した。次いで、システイン溶液(1.0M、0.6mL)及びシスチン溶液(0.17M、4mL)を、それぞれ0.1Mの最終濃度になるように添加し、得られた溶液を十分に混合した。最後に、1MのトリスHCl(pH8.0、60mL)溶液を添加して、最終ペプチド濃度1.4mMを達成した。フォールディング混合物を室温で一晩インキュベートし、TFAで反応停止させてpH約3.0とした。次いで、混合物を0.45μフィルターユニットで濾過した。
【0127】
精製:上記からの濾過されたフォールドペプチド溶液を、質量トリガー分取HPLCによって精製した。回収した画分をプールし、凍結乾燥した。最終的なQC及びペプチド定量は、上記のように化学発光窒素検出(CLND)によって行った。>90%の純度及び正確なm/z比を有するペプチドをアッセイに供した。
【0128】
トリフルオロ酢酸塩-酢酸塩交換:凍結乾燥後、50mLのFalconチューブ中のPAC1ペプチドトリフルオロ酢酸塩をDI水(100~150 L/1mgペプチド)に再溶解し、取っておいた。別のFalconチューブに、濡れたAG 1-X2イオン交換樹脂(ペプチド1mgあたり25mg)を加え、1.6Nの酢酸で3回、0.16Nの酢酸(ドライペプチド1mgあたり0.6mL~1.0mL)で3回洗浄した。ペプチド溶液を予備洗浄した樹脂に注いだ(残留ペプチドを移すために追加の水を使用し、1mgの乾燥ペプチドあたり合計約200 LのDI水を使用した)。Falconチューブに蓋をし、Eppendorf ThermoMix上のチューブホルダーに入れ、20℃で一晩撹拌した(400rmp)。得られた懸濁液を濾過し、樹脂をさらにDI水(×3、ペプチド1mg当たり200 LのDI水)で洗浄した。水相をまとめて凍結し、凍結乾燥して、所望のペプチド酢酸塩を白色固体として得た。
【0129】
実施例2
PAC1ペプチドアンタゴニスト機能スクリーニング
PAC1受容体におけるペプチドアンタゴニストの効力を決定するために、PAC1ペプチドのアゴニスト及びアンタゴニスト活性を測定するLANCE Ultra cAMPアッセイキットを使用する機能的cAMP蓄積アッセイを使用した。SHSY-5Y(ヒト神経芽細胞腫細胞株)及びRG-2(ラット神経膠腫細胞株)細胞は、それぞれヒト及びラットPAC1受容体を内因的に発現する。PAC1ペプチドのアゴニスト活性を、1ウェルあたり2,000個のSHSY-5Y細胞、又は1ウェルあたり5,000個のRG-2細胞と共に室温で15分間インキュベートすることによって試験した。PAC1受容体アゴニストPACAP38又はマキサディランを陽性対照として含めた。検出混合物、ユーロピウム(Eu)キレート標識cAMPトレーサー、及びULight(商標)色素で標識したcAMP特異的モノクローナル抗体を全ウェルに添加して反応を停止させ、続いて、室温で60分間インキュベートした。次いで、このアッセイプレートを、EnVision装置により、665nm及び615nmの発光波長で読み取り、データを、Genedata Screener又はGraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した。同様の手順を、固定濃度のPAC1アゴニストを使用することによって、アンタゴニストアッセイにおいて使用した。アゴニストの濃度は、SHSY-5Y細胞又はRG-2細胞のPAC1受容体でのEC80値に基づいて選択した。SHSY-5Y細胞又はRG-2細胞を96ウェルハーフエリアホワイトプレートに添加した。10の濃度で連続希釈したPAC1ペプチドを添加し、室温で30分間インキュベートした。次いで、EC80濃度のPAC1アゴニストを添加し、さらに室温で15分間インキュベートした。検出混合物をすべてのウェルに添加することによって反応を停止させ、続いて、室温で60分間インキュベートした。アッセイプレートを読み取り、アゴニストアッセイと同じ方法で分析した。細胞、アゴニスト、及びPAC1ペプチドを、新たに作製したアッセイ緩衝液(F-12、0.5mM IBMX、0.1又は0.4% BSA(pH7.4))中で調製した。検出混合物は、cAMP検出緩衝液によるEu-cAMPトレーサー原液の1/50希釈液と、cAMP検出緩衝液によるULight-抗cAMP原液の1/150希釈液とを混合して作製された。ユーロピウム(Eu)キレート標識cAMPトレーサー、ULight(商標)色素で標識したcAMP特異的モノクローナル抗体、BSA、及び検出緩衝液は、PerkinElmerからのLANCE Ultra cAMPキットで提供された。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
【表8】
【0137】
【表9】
【0138】
【表10】
【0139】
【表11】
【0140】
【表12】
【0141】
【表13】
【0142】
【表14】
【0143】
【表15】
【0144】
【表16】
【0145】
実施例3
また、PAC1ペプチドアンタゴニストを、インビボ薬力学モデル(マキサディラン誘発血流増加モデル)で評価した。マキサディランは、関連するGPCRのVPAC1及びVPAC2で活性がなく、PAC1に高い選択性を有するアゴニストであるので、PAC1ペプチドを、それらのマキサディラン効果の阻害に基づいて評価した。
【0146】
インビボPDモデル(MIIBF)
本報告におけるすべての手順は、動物福祉法(Animal Welfare Act)、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)、及び実験動物福祉部門(Office of Laboratory Animal Welfare)に準拠して実施した。
【0147】
試験の時点で8週齢~12週齢のナイーブ雄Sprague Dawley(登録商標)ラットをCharles River Laboratoriesから購入した。動物は、Amgen Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Committee(AAALAC)認定施設の無菌換気micro-isolatorハウジングにおいて集団で飼育した。動物は、自動給水システムによりペレット飼料(Harlan Teklad 2020X,Indianapolis,IN)及び水(現場生成逆浸透)に自由にアクセスした。
【0148】
すべてのPAC1ペプチドを、ラットマキサディラン誘発血流増加(MIIBF)薬力学(PD)モデルにおいて、レーザードップラーイメージングを用いて試験した。マキサディラン(Bachem、H6734.0500)の投薬溶液を、1×PBS中に希釈したマキサディラン原液(0.5mg/mL)によって、最終濃度0.5μg/mLに毎日新たに調製した。試験したペプチドはすべて、実験に必要な用量に応じて異なる濃度で1×PBSで調製し、単回ボーラスi.v.又はs.c.注射で与えた。レーザードップラーイメージャー(LDI-2、Moor Instruments,Ltd,Wilmington,DE)を使用して、633nmヘリウムネオンバルブによって生成された低出力レーザービームを用いてラット腹部の剃毛した皮膚の皮膚血流(DBF)を測定した。測定分解能は0.2mm~2mmであり、機器開口部と組織表面との間の走査距離は30cmであった。本報告では、DBFを測定し、ベースラインからの変化%[100×(個々のCAP後の流束-個々のベースライン流束)/個々のベースライン流束]として表し、さらに、阻害%を計算して、薬物効果の大きさを定量化した[BLからのビヒクル変化%の平均-BLからの個々の薬物処置ラット変化%)/BLからのビヒクル変化%の平均]。
【0149】
試験日に、プロポフォールで麻酔した後、ラットの腹部領域を剃毛し、各動物を温度制御循環温水パッド上に仰臥位に置いて、試験中、安定した体温を維持した。10分~15分の安定化期間の後、ラバーOリング(内径0.925cm、O-Rings West,Seattle,WA)を、ラット腹部上に、それが目に見える血管上に直接位置しないように置き、一方、ラットを温度制御循環温水パッド上に仰臥位に置いて、試験中、安定した体温を維持した。選択された領域上にOリングを配置した後、ベースライン(BL)DBF測定を行った。i.v.でBLスキャンの5分後、又はs.c.で15分後にPAC1ペプチドを投与し、次いで、Oリングの中心にマキサディランを20μL(0.5μg/mLで)皮内注射した。マキサディラン後のDBFを30分で測定し、ペプチド後の時間は、それぞれi.v.で35分、s.c.で45分であった。Oリングは、DBFがOリング内で分析される関心領域として機能する。
【0150】
すべてのDBF結果を平均±SEMとして表した。一元配置分散分析、続いてダネットの多重比較検定(MCT)を用いて、試験内のビヒクルに対するPAC1ペプチド効果の統計的有意性を評価した。p<0.05を用いて、任意の2群間の有意性を決定した。
【0151】
MIIBFにおけるPAC1ペプチド治療の単回ボーラス静脈内(i.v.)投与
マキサディランチャレンジ(0.5μg/mL中20μl)の5分前のペプチドによる0.03mg/kg~0.7mg/kgの用量範囲での前処理は、MIIBFを防止した。ペプチド治療の35分後に、0.1mg/kgの最低用量で、配列番号283、253、250、249、233、190、180、179、183、181において統計的に有意な阻害があった。
【0152】
MIIBFにおけるPAC1ペプチド治療の単回ボーラス皮下(s.c.)投与
マキサディランチャレンジの15分前のペプチドによる0.1mg/kg~2mg/kgの用量範囲での前処理は、DBFのマキサディラン誘導性増加を防止した。ペプチド治療の45分後に、0.3mg/kgの最低用量で、統計的に有意な阻害配列、配列番号156、151、180、105、163、86、88、85、77、94、152、56、58、65が存在した。
【0153】
実施例4
酵母ディスプレイ親和性成熟
活性が改善された抗PAC1ペプチドに変更するために、対照ペプチド変異体の酵母ディスプレイライブラリーを構築し、蛍光励起セルソーティング(FACS)を用いてヒトPAC1の細胞外ドメイン(ECD)に対する結合改善のための選別をすることによって、親和性成熟を行った。3つの変異体ライブラリーを設計して、点変異が以前に中程度の効力改善をもたらしたペプチドの領域における変異の組み合わせを包括的にクエリーした。ECDと接触する可能性が最も高い表面露出残基を飽和変異誘発の標的とした。隣接する表面露出側鎖の提示に影響を及ぼし得るさらなる部分的に埋もれた残基もまた、限定された保存的変異誘発のために選択した。各コンビナトリアルライブラリーの理論的多様性を酵母ディスプレイの管理可能な数に制限するために、変異誘発のために選択された残基を二次構造要素によってグループ分けし、3つの別々のライブラリーを構築してこれらの領域を探索した。さらなるライブラリーを、ペプチドの疎水性コアの再パッキングを介して、表面に露出した側鎖の全体的な提示が微妙に変化するように設計した。
【0154】
4つの設計されたライブラリーの各々について、設計されたアミノ酸多様性をコードするオリゴヌクレオチドを、PCRを用いて完全長ペプチド遺伝子に構築し、得られたPCR産物を、HA及びc-mycタグをペプチドのN末端及びC末端にそれぞれ遺伝子学的に融合させた酵母ディスプレイベクターと共に酵母に同時形質転換した。4つの構築された酵母提示ペプチドライブラリーはサイズが1.2E08~1.7E08の範囲であり、設計された理論的多様性を少なくとも10倍カバーした。
【0155】
FACSを用いて、各酵母ディスプレイペプチドライブラリーで結合選択を3ラウンド行った。各ラウンドでは、酵母ライブラリープールを、ビオチン化ヒトPAC1 ECDと共にインキュベートした0.5%ウシ血清アルブミンを補充したリン酸緩衝生理食塩水中に再懸濁し、選別の前に、抗HA抗体-AlexaFluor647(ディスプレイ用)及びストレプトアビジン-フィコエリスリン(PE)コンジュゲート(PAC1結合用)で染色した。同様に処理したペプチド対照と比較して結合(ディスプレイ1単位当たり)の改善を示したAlexaFluor647/PE二重陽性細胞を収集し、飽和するまで増殖させた。次の選択ラウンドに入るために、前のラウンドの選別から回収された数に対して10倍過剰の細胞をディスプレイのために誘導した。各連続ラウンドでの選択ストリンジェンシーを増加させるために、ビオチン化PAC1 ECDの濃度を少なくとも5倍(例えば、1nMから0.2nMへ)低下させるか、より少ないパーセンテージのトップ結合細胞を収集するか、又は最も遅い結合オフレートを示す変異体を濃縮する選択戦略を実施した。
【0156】
各ライブラリーでの3ラウンドの選別が完了した後、4つのライブラリーすべてからの800を超える個々の酵母コロニーをプレーティングし、酵母ディスプレイペプチドベンチマークと比較して優れたヒトPAC1結合のスクリーニングのために選別した。よりストリンジェントな条件下で行われるフローサイトメトリー結合スクリーニングの第2ラウンドにおいて、ペプチドのラットPAC1 ECDに対する結合及びPAC1に対する特異性を試験した。0.05nMのヒト及びラットPAC1 ECDへの結合が最も改善され、5nMの無関係なタンパク質への結合が検出されなかった上位変異体の配列を、実施例1に記載するペプチド合成のために送達した。
【0157】
実施例5
ペプチド安定性のインビトロアッセイ
血液中での分解をモデル化するために、本願のPAC1ペプチドをラット血漿と共にインビトロでインキュベートした。安定性分析は、Souverain et al., (J.of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,35(2004)913-920)によって以前に報告されたのと同様の方法で行った。
【0158】
簡単に述べると、PAC1ペプチドをラット血漿中にスパイクし、37℃で6時間までインキュベートした。種々の時点で逆安定性技術を用いて、内部標準(IS)を含有する過塩素酸水溶液を添加することによって血漿試料をクエンチし、ボルテックスしてタンパク質濃縮抽出(PPE)を行った。ボルテックスミックスに続いて、試料を遠心分離し、PAC1ペプチドとISとを含有する上清物質を、その後、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)システム(Sciex(登録商標)API 5500)を用いて分析した。無傷のPAC1ペプチドのISに対するピーク面積比を、各時点で決定した。ペプチド安定性を、ベースライン試料(プレインキュベーション)のピーク面積比に対する各時点でのピーク面積比のパーセンテージとして報告した。
【0159】
代表的な安定性データを表4に示す。
【0160】
【表17】
【0161】
評価したペプチドの大部分は6時間良好な安定性を示した(>90%)。
【配列表】
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