(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】硫黄ポリベンゾオキサジンでコーティングされた表面を有する金属または金属プレーティングされた補強材
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20221216BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221216BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20221216BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20221216BHJP
C08G 14/067 20060101ALI20221216BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C23C26/00 A
B60C1/00 C
B60C9/00 K
C08G65/40
C08G14/067
C23C28/00 A
(21)【出願番号】P 2019569380
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 FR2018051369
(87)【国際公開番号】W WO2018229417
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-09
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】フェデュルコ ミラン
(72)【発明者】
【氏名】リベッツォ マルコ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520136(JP,A)
【文献】特表2015-533843(JP,A)
【文献】特開2005-272743(JP,A)
【文献】特表2020-523459(JP,A)
【文献】POORTEMAN M. et al.,Thermal curing of para-phenylenediamine benzoxazine for barrier coating applications on 1050 aluminum alloys,Progress in Organic Coatings,2016年,Vol.97,p.99-109,URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0300944016301096
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 26/00-30/00
B60C 1/00-19/12
C08G 65/00-67/04
C08G 4/00-16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその表面が少なくとも部分的に金属であり、少なくとも前記金属部分がポリベンゾオキサジンスルフィドでコーティングされており、このポリベンゾオキサジンスルフィドの繰返し単位が、式(I)または(II)
の少なくとも1個の
構造を含む、金属のまたは金属化された補強材。
(式中、2つのオキサジン環は、中央の芳香族基を介して一緒に接続されており、前記中央の芳香族基のベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基(式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素を表すか、または1~10個の炭素原子を含み且つO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持しており、
前記中央の芳香族基のベンゼン環は、-S
x-R以外の置換基を更に保持していてもよ
く、且つ式(II)における2つの記号「*」は、同じでも異なっていてもよく、炭素原子またはヘテロ原子への単位の任意の結合を表す)
【請求項2】
中央のベンゼン環が、式-S
x-Rの2つの基を保持する、請求項1に記載の補強材。
【請求項3】
繰返し単位が、式(I-ビス)または(II-ビス)
の少なくとも1個の
構造を含む、請求項1に記載の補強材。
(式中、2つのオキサジン環は、中央の芳香族基を介して一緒に接続されており、前記中央の芳香族基のベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基(式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素を表すか、または1~10個の炭素原子を含み且つO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持しており、且つ前記中央の芳香族基のベンゼン環は、-S
x-R以外の置換基を更に保持していてもよい)
【請求項4】
繰返し単位が、式(I-a)または(II-a)
の少なくとも1個の
構造を含む、請求項3に記載の補強材。
(式中、2つのオキサジン環は、中央の芳香族基を介して一緒に接続されており、前記中央の芳香族基のベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基(式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素を表すか、または1~10個の炭素原子を含み且つO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持しており、且つ前記中央の芳香族基のベンゼン環は、-S
x-R以外の置換基を更に保持していてもよい)
【請求項5】
繰返し単位が、式(I-a-1)、(I-b-1)、(II-a-1)または(II-b-1)
の少なくとも1個の
構造を含む、請求項4に記載の補強材。
【請求項6】
繰返し単位が、以下の式(I-1)または(II-1)の少なくとも1つ
である、請求項1に記載の補強材。
(式中、
- 2つのオキサジン環は、それらの間にある芳香族基を介して一緒に接続されており、前記芳香族基のベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基(式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素を表すか、または1~10個の炭素原子を含み且つO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持しており、且つ前記芳香族基のベンゼン環は、-S
x-R以外の置換基を更に保持していてもよく、
- X
1およびX
2は、同じでも異なっていてもよく、OまたはSを表し、
- Ar
1およびAr
2は、同じでも異なっていてもよく、芳香族基を表し
、
- Zは、Oまたは(S)
nを表し、記号「n」は1以上の整数を表す)
【請求項7】
繰返し単位が、以下の式(I-1ビス)または(II-1ビス)の少なくとも1つ
である、請求項6に記載の補強材。
(式中、
- 2つのオキサジン環は、それらの間にある芳香族基を介して一緒に接続されており、前記芳香族基のベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基(式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素を表すか、または1~10個の炭素原子を含み且つO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持しており、且つ前記芳香族基のベンゼン環は、-S
x-R以外の置換基を更に保持していてもよく、
- X
1およびX
2は、同じでも異なっていてもよく、OまたはSを表し、
- Ar
1およびAr
2は、同じでも異なっていてもよく、芳香族基を表し
、
- Zは、Oまたは(S)
nを表し、記号「n」は1以上の整数を表す)
【請求項8】
スチールで作製された、
糸、フィルム、テープまたはコードの形態である、請求項1から7のいずれか1項に記載の補強材。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の少なくとも1種の補強材で補強されたゴム製品。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の少なくとも1種の補強材で補強された自動車タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、特に金属とゴムとの接着接合を目的とする接着剤系において、とりわけ使用することができる熱硬化性樹脂に関する。
本発明は、さらに特に、ゴム製品、例えば、自動車用の空気入りまたは非空気入りタイヤなどの製造を目的とする金属/ゴム複合体の接着剤層として使用することができるポリマーコーティングされた金属のまたは金属化された補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術
特に自動車タイヤ用の金属/ゴム複合体が周知である。これらの金属/ゴム複合体は普通、不飽和ゴム、一般的にジエンゴム(硫黄と架橋することができる)で作製されたマトリックスで構成され、金属の補強要素(または「補強材」)例えば、カーボンスチールで作製された糸、フィルム、テープまたはコードなどを含む。
これらの複合体は、タイヤの回転中、非常に高い応力、とりわけ、繰り返される圧縮作用、曲げまたは曲率の変化の対象下におかれるため、これらは、公知の方式で、時には矛盾する多くの技術的基準、例えば、均一性、柔軟性、曲げ強度および圧縮強度、引張り強度、耐摩耗性および耐食性などを満たさなくてはならず、これらの性能品質を非常に高レベルでできるだけ長期間維持しなければならない。
【0003】
ゴムと補強材との間の接着性界面相は、これらの性能品質の耐久性において主要な役割を果たしていることは容易に理解される。ゴム組成物をカーボンスチールに接続するための従来のプロセスは、スチールの表面を黄銅(ブラス/brass(銅/亜鉛合金))でコーティングすること、スチールとゴムマトリックスとの間の接合が、加硫またはゴム硬化中の黄銅の硫化により提供されることにある。加えて、接着性を改善するために、有機酸塩または金属錯体、例えば、コバルト塩などを、接着促進添加物としてこれらのゴム組成物に使用することが一般的に行われている。
しかし、遭遇する様々な応力、とりわけ機械的応力および/または熱応力の作用下で形成される硫化物のゆっくりとした発生の結果、カーボンスチールとゴムマトリックスとの間の接着は時間の経過と共に弱まる傾向があり、上記分解プロセスは水分の存在下で加速される可能性があることは公知である。さらに、コバルト塩の使用は、酸化および経年劣化に対するゴム組成物の感受性をより高め、そのコストを有意に増加させる。このタイプの金属塩に関する欧州の規制が最近変更されたことにより、長期的には、ゴム組成物におけるこのようなコバルト塩の使用は排除されることが望ましいことは言うまでもない。
上記に提示されたすべての理由により、金属/ゴム複合体の製造業者、特に自動車タイヤ製造業者は、上記弱点を少なくとも部分的に克服しながら、金属補強材をゴム組成物に接着接合させるための新規接着溶液を探し求めている。
【0004】
よって、本出願法人により出願された、最近公開の特許出願WO2014/063963、WO2014/063968、WO2014/173838およびWO2014/173839は、ウレア、ウレタンまたはチオウレア単位を保持する新規ポリマー、さらに上記目的を満たすこれらの出発モノマーについて記載している。とりわけ、金属/ゴム複合体において金属上の接着プライマーとして使用される場合、これらのポリマーは、その後、「RFL」(レゾルシノール/ホルムアルデヒドラテックス)接着剤などの単純な繊維接着剤または他の同等の接着組成物などを使用することによって、金属をゴムマトリックスに接着接合すること、さもなければこれらのゴムマトリックスが、例えばエポキシ化エラストマーなどの適当な官能化不飽和エラストマーを含有する場合、これらのゴムマトリックスに直接(すなわち、このような接着剤を利用することなく)接着接合することを非常に有利にする。よって、とりわけ、コバルト塩(または他の金属塩)は、黄銅コーティングされた金属補強材に接続させることを目的としたゴム組成物から外すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願法人の継続した研究において、本出願法人は、金属およびゴムに関して、室温で上記ポリマーと同じ接着性能を有し、しかも、一度熱硬化(架橋)すると、さらに改善された熱的および化学的安定性を有する、熱硬化タイプの新規ポリマーを見出した。さらに、その特定のミクロ構造により、標的とする特定の用途に応じて分子の柔軟性を非常に有利に調節することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.発明の簡単な説明
よって、本発明は、少なくともその表面が少なくとも部分的に金属である金属のまたは金属化された補強材であって、少なくとも前記金属部分が、式(I)または(II)に対応する少なくとも1個の単位を含む、少なくとも繰返し単位を含むポリベンゾオキサジンでコーティングされた金属のまたは金属化された補強材に関する。
【0007】
【化1】
(式中、2つのオキサジン環は、中央の芳香族基を介して一緒に接続されており、そのベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基[式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素、または1~10個の炭素原子を含み、ならびにO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持する)
【0008】
本発明は、少なくともその表面の一部がスチール、特にカーボンスチールで作製された糸、フィルム、テープまたはコードの形態のそのような補強材に特に関し、前記スチールは、ブライトスチール、すなわちコーティングされてないスチールであることが可能であり、またはさもなければ、前記スチールは、表面金属と呼ばれる、少なくとも1種の第2の金属でコーティングされていることも可能であり、第2の金属は、アルミニウム、銅、亜鉛、およびこれらの金属の少なくとも1種と少なくとも1種の他の金属との合金からなる群から優先的に選択される。
上記ポリベンゾオキサジンのおかげで、本発明の補強材は、とりわけ、これらのポリマーマトリックスにコバルト塩を使用することを必要とせず、ゴムなどのエチレン性不飽和ポリマーのマトリックスを接着接合することが可能である。
本発明はまた、ゴム製品、特に空気入りまたは非空気入り自動車タイヤの補強のためのこのような補強材の使用に関する。
本発明はまた、未硬化の(非架橋)状態または硬化した(架橋)状態の任意のゴム製品、特に、少なくとも1種のこのような補強材で補強された、任意の空気入りまたは非空気入り自動車タイヤに関する。
本発明およびその利点は、以下に続く詳細な説明および実施例、さらに、以下を表すまたは描写する
図1~12を考慮して、容易に理解されよう:
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】3種の化合物、すなわち、フェノール、ホルムアルデヒドおよびアミン(R=アミン残基)から出発する、ベンゾオキサジン化合物の合成に対する一般的原理である(
図1a);加熱インプットにより、このようなベンゾオキサジン化合物のオキサジン環を開環する(開環)ための機序である(
図1b);
【
図2】特定のフェノール(記号「G」は後で詳細に記載される)、パラホルムアルデヒドおよび特定の芳香族硫化ジアミンから出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンスルフィドの合成に使用することができる式(A-0)のベンゾオキサジン(「M-0」で表されるモノマー)の合成に対する一般スキームである;
【
図3】ハロゲン化フェノール(記号「Hal」はハロゲンを表す)、p-ホルムアルデヒドおよび先行する特定の芳香族硫化ジアミンから出発する、本発明の補強材に対して適切な別のポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-1)の特定のハロゲン化ベンゾオキサジン(M-1で表されるモノマー)の合成に対する可能なスキームである;
【
図4】別の特定のフェノール(記号「A」は後で詳細に記載される)、p-ホルムアルデヒドおよび先行する特定の芳香族硫化ジアミンから出発する、本発明の補強材に対して適切な別のポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-2)の別のベンゾオキサジン(M-2で表されるモノマー)の合成に対する別の可能なスキームである;
【
図5】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよび芳香族硫化ジアミンの特定の例から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる特定の式(A-3)のハロゲン化ベンゾオキサジンの別の例(M-3で表されるモノマー)の合成に対する別の可能なスキームである;
【
図6】別の特定のフェノール、p-ホルムアルデヒドおよび芳香族硫化ジアミンの先行する具体例から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-4)のベンゾオキサジンの別の例(M-4で表されるモノマー)の合成に対する別の可能なスキームである;
【
図7】フェノールの特定の例(化合物1:エチレン性不飽和を保持するメトキシフェノール)、p-ホルムアルデヒド(化合物2)および芳香族ジアミンジスルフィドの先行する特定の例(化合物3)から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンスルフィドの合成に使用することができる式(A-5)のベンゾオキサジンの別の例(M-5で表されるモノマー)の合成に対する別の可能なスキームである;
【
図8】式(A-6)の先行するハロゲン化ベンゾオキサジン(モノマーM-6)から、および芳香族ジオールまたはチオールタイプの一般式(B)の別のモノマー(Nで表されるモノマー)から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンスルフィド(P-1で表されるポリマー)の例の一般的合成に対するスキームであり、さらにポリマーP-1の加熱処理後にそのオキサジン環が開環している、この本発明によるポリベンゾオキサジンスルフィド(ここではP-1’で表されるポリマー)の例である;
【
図9】式(A-5)の先行する特定のハロゲン化ベンゾオキサジン(モノマーM-5)の単独重合から得た、そのオキサジン環が開環している、本発明の補強材に対して適切な別のポリベンゾオキサジン(ポリマーP-2’)の合成に対するスキームである;
【
図10】臭素化フェノール(化合物4)、p-ホルムアルデヒド(化合物2)および特定の芳香族ジアミンジスルフィド(化合物3)から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジン(
図11のポリマーP-3およびP-3’)の合成に使用することができる式(A-7)の特定の臭素化ベンゾオキサジン(M-7で表されるモノマー)の合成の例である;
【
図11】最後に、式(A-7)の先行する特定のハロゲン化ベンゾオキサジン(モノマーM-7)から、および硫黄ベースの芳香族ジオールタイプ(チオエーテル官能基を保持)の式(B-1)の別の特定のモノマー(モノマーN-1)から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンスルフィド(P-3によるポリマー)の合成の例であり、さらにそのオキサジン環が開環してからのこのポリマーの構造(P-3’で表されるポリマー)である;
【
図12】本発明による補強材を組み込んだ、本発明によるタイヤの一例の半径方向の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
4.発明の詳細な説明
最初に、ベンゾオキサジンが一般式:
【化2】
の化合物であることに注目されたい。
付随する
図1aは、この事例では、2個の水分子の脱離を伴う、1個のフェノール分子から、2個のホルムアルデヒド分子から、およびアミンから(Rはアミンの残基を意味する)出発する(縮合反応)、ベンゾオキサジンの合成の一般的原理に注目するものである。
図1bは、この部分について、加熱インプット(記号Δで表される)中のこのような化合物のオキサジン環を開環する(開環)ための機序に注目するものである。
【0011】
よって、多くのベンゾオキサジン化合物またはモノマーは、これらの置換基のタイプに従い様々なフェノールおよびアミンを使用して合成することができる。これらの置換基は、重合可能な部位をその後提供することができ、様々なベンゾオキサジンポリマー(またはポリベンゾオキサジン)の合成を可能にすることができる。
【0012】
それから生成されるベンゾオキサジンおよびポリベンゾオキサジンは、現在では当業者に周知の生成物であり、いくつかの刊行物の例を言及すると、論文"Polybenzoxazines - New high performance thermosetting resins: synthesis and properties"; N.N. Ghosh et al., Prog. Polym. Sci., 32 (2007), 1344-1391、または"Recent Advancement on Polybenzoxazine - A Newly Developed High Performance Thermoset", Y. Yaggi et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.: Vol. 47 (2009), 5565-5576、さらに、例えば、US5543516およびWO2013/148408の特許または特許出願を挙げることができる。
【0013】
上記文献で詳細に説明されているように、ポリベンゾオキサジンは、高温(例えば、これらの特定のミクロ構造に応じて、通常150℃より高い、または200℃よりさらに高い)で、これらのオキサジン環を開環し、よって熱硬化性ポリフェノール樹脂構造をもたらす顕著な能力を有する。
本発明の補強材に対して適切な特定のポリベンゾオキサジンは、以下の一般式(A)に対応する硫化物タイプのベンゾオキサジン(本出願ではモノマーMと呼ばれている)から誘導される。
【0014】
【化3】
(式中、2つのオキサジン環の各ベンゼン核は、少なくとも1つの(すなわち1つまたは複数の)ラジカルGを保持し、よって、ベンゾオキサジンそれ自体は、少なくとも2つのラジカルGを保持する)
【0015】
(少なくとも)2つのラジカルGは、同じでも異なっていてもよく、以下からなる群から選択される:
- ハロゲン;
- -OR1、-SR1、-NR2R3基;R1、R2およびR3は、同じでも異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含有するアルキルを表す;ならびに
- 1~8個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素ベースの基、または3~8個の炭素原子を含む環状脂肪族の炭化水素ベースの基、または6~12個の炭素原子を含む芳香族炭化水素ベースの基;これらの飽和またはエチレン性不飽和の炭化水素ベースの基はまた、O、S、NおよびPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい。
本発明の補強材に対して適切な式(I)および(II)のポリマーに対して以前に記載されたように、この式(A)において、2つのオキサジン環は、中央の芳香族基を介して一緒に接続されており、そのベンゼン環または核(中央のベンゼン環または核とも呼ばれる)は、1、2、3または4つの式-Sx-Rの基(式中、「x」は、1~8の整数であり、Rは、水素、または1~10個の炭素原子を含み、ならびにO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)およびP(リン)から選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持する。
【0016】
同様に、この式(A)において、オキサジン環の2個の窒素原子が、互いに対して、中央のベンゼン核上の任意の位置(すなわちオルト、メタまたはパラ)にあることに注目することができる。しかし、好ましくは、これらの2個の窒素原子は、互いに対してメタ位にある。よって、言い換えると、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンをもたらす出発ベンゾオキサジン(この場合M-0で表されるモノマー)は、以下の一般式(A-0)に優先的に対応する:
【化4】
付随する
図2は、加熱インプットおよび水の脱離を伴う、少なくとも1つの(すなわち1つまたは複数の)G基を保持する特定のフェノール、パラホルムアルデヒドおよび、最後に、式:
【化5】
(式中、言うまでもなく、ベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x-Rの基(前に定義された通り)を保持し、他の任意選択の置換基(例として、メチルまたはエチル基)を保持してもよい)の特定の芳香族硫化ジアミンから出発する、この式(A-0)のベンゾオキサジンの一般的合成に対するスキームを付与している。
【0017】
この式(A)または(A-0)のベンゾオキサジンでは、本発明の補強材に対して適切な式(I)および(II)のポリマーの場合のように、中央のベンゼン核は、2つの式-Sx-Rの基を優先的に保持し、これらの2つの基は、ベンゼン核上で互いに対してより優先的にはメタ位にある。別の優先的な実施形態によると、「x」は1~4の範囲内にあり、より優先的には1または2と等しい。Rは、優先的にアルキルであり、より優先的には1~5個の炭素原子を含有し、さらにより優先的にはメチルまたはエチルであり、特にメチルである。
【0018】
よって、以前に記載した式(A)のベンゾオキサジンから誘導される、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジン(ポリマーP)は、以下の式(I)(オキサジン環の開環前)または式(II)(開環後)に対応する少なくとも1個の単位を含む構造的繰返し単位を含むという主要な特徴を有する。
【化6】
【0019】
「ポリマー」という用語は、本特許出願において、上記式(I)または(II)の少なくとも1個の単位を含む構造的繰返し単位を有する任意のホモポリマーまたはコポリマー、とりわけブロックコポリマーを意味し、言うまでもなく、ポリマーは式(I)の単位と式(II)の単位の両方を含んでもよいことを理解されたい。
【0020】
上記式(II)において、2つの記号「*」(同じでも異なっていてもよい)は、炭素原子またはヘテロ原子(好ましくはO、S、NおよびPから選択される)への単位の任意の結合を表し、この結合または接合は、十分な加熱インプット(Δ)中にオキサジン環の開環から生成したものであることを当業者は直ちに理解する。
加えて、上記式(I)および(II)において、式(A)のモノマーの場合のように、2つのオキサジン環の少なくとも1つのまたはそれぞれのベンゼン核の1個または複数の水素原子、さらに中央のベンゼン環のものはまた、様々な置換基(例としてメチルまたはエチル基)で置換されていてもよく、とりわけポリマーの、金属および/またはゴムへの接着を促進することが可能な官能基(例としてビニル基)で置換されていてもよい。
同様に、式(A)の先行するモノマーの場合のように、式(I)および(II)のオキサジン環の2個の窒素原子は、それらを分離する中央のベンゼン核上の互いに対して任意の位置(すなわちオルト、メタまたはパラ)にあってもよいことに注目することができる。
【0021】
しかし、好ましくは、これらの2個の窒素原子は、互いに対して、中央のベンゼン核上のメタ位にある。よって、言い換えると、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンは、以下の式(I-ビス)(オキサジン環の開環前)または式(II-ビス)(環の開環後)に対応する(少なくとも)1個の単位を含む、少なくとも構造的繰返し単位を含む。
【0022】
【化7】
先行する式(A)または(A-0)において、好ましくは、2つのオキサジン環の各ベンゼン核は、ラジカルGを1つのみまたは最大でも2つ、より優先的にはラジカルGを1つのみ保持する。
【0023】
このラジカル(ラジカルG)は、さらにより優先的には、オキサジン環の酸素に対してパラ位に位置する。よって、このような場合、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンは、以下の式(I-a)(オキサジン環の開環前)または式(II-a)(開環後)に対応する(少なくとも)1個の単位を含む少なくとも構造的繰返し単位を含むという主要な特徴を有することを理解されたい。
【化8】
さらにより優先的に、「x」は1と等しく、Rはメチルを表す。
【0024】
よって、式(A)または(A-0)(式中、特に優先的な実施形態によると、「x」は1と等しく、Rはメチルを表す)のベンゾオキサジンの合成に対して適切な芳香族硫化ジアミンの例として、特に、以下の式(a)および(b)にそれぞれ対応する化合物3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミンおよびその混合物が記載される。
【0025】
【0026】
言い換えると、特に優先的な実施形態によると、式(A-0)のベンゾオキサジンが、上記2つの異性体の少なくとも1つからまたはその混合物から誘導される場合、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンは、以下の式(I-a-1)または(I-b-1)(オキサジン環の開環前)、(II-a-1)または(II-b-1)(開環後)に対応する少なくとも1個の単位を含む繰返し単位を含む。
【化10】
優先的な実施形態によると、(少なくとも2つの)ラジカルGは、同じでも異なっていてもよく、ハロゲン、例えば、臭素、塩素、フッ素またはヨウ素などを表す。
【0027】
付随する
図3は、少なくとも1つの(すなわち1個または複数の)ハロゲン(記号「Hal」で表される)を保持するハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよび先行する
図2の特定の芳香族硫化ジアミンから出発する、加熱の供給および水の脱離を伴う、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-1)の特定のハロゲン化ベンゾオキサジン(M-1で表されるモノマー)の一般的合成のスキームである。このハロゲン(Hal)はより優先的には臭素または塩素であり、さらにより優先的には臭素であり、後者はさらにより優先的には各オキサジン環の酸素に対してパラ位にある。
【0028】
別の優先的な実施形態によると、(少なくとも2つの)ラジカルGは、同じでも異なっていてもよく、-OR1、-SR1、-NR2R3から選択される基を表し、R1、R2およびR3は、同じでも異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含有するアルキルを表す。
【0029】
別の優先的な実施形態によると、(少なくとも2つの)ラジカルGは、同じでも異なっていてもよく、1~8個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素ベースの基(記号「A」で表される)、または3~8個の炭素原子を含む環状脂肪族の炭化水素ベースの基、または6~12個の炭素原子を含む芳香族炭化水素ベースの基を表し、この飽和したまたはエチレン性不飽和の炭化水素ベースの基「A」は、O、S、NおよびPから選択される(少なくとも1個の)ヘテロ原子を含んでもよい。
【0030】
付随する
図4は、少なくとも1個の(すなわち1個または複数の)このような基「A」を保持するハロゲン化フェノール、パラホルムアルデヒドおよび先行する
図2および3の特定の芳香族硫化ジアミンから出発する、加熱の供給および水の脱離を伴う、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-2)の特定のベンゾオキサジン(M-2で表されるモノマー)の一般的合成のスキームである。
図5は、ハロゲン化フェノール、パラホルムアルデヒドおよび芳香族ジアミンジスルフィドの具体例、すなわち、先行する式(b)の3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミンから出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-3)の特定のハロゲン化ベンゾオキサジンの別の例(M-3で表されるモノマー)の合成に対する別の可能なスキームである。
【0031】
図6は、別のフェノール(記号「A」は以前に記載した)、パラホルムアルデヒドおよび先行する式(b)の3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミンから出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンの合成に使用することができる式(A-4)のベンゾオキサジンの別の例(M-4で表されるモノマー)の合成に対する別の可能なスキームである。
優先的実施形態によると、(少なくとも2つの)基「A」は、同じでも異なっていてもよく、1~6個、特に1~4個の炭素原子を含む飽和したまたはエチレン性不飽和の脂肪族炭化水素ベースの基を表し、これは、O、S、NおよびPから選択される少なくとも1個の(すなわち1個または複数の)ヘテロ原子を含んでもよい。
【0032】
よって、別の特定のおよび優先的な実施形態によると、本発明の補強材に対して適切なポリマーは、以下の2つの式(A-5)および(A-5ビス)の1つに少なくとも部分的に対応するベンゾオキサジンジスルフィド(M-5およびM-5ビスでそれぞれ表されるモノマー)から誘導される。
【化11】
【0033】
図7は、今回は、このような優先的な定義に対応するフェノールの特定の例(化合物1)(この場合、エチレン性不飽和およびメトキシル基を保持するフェノール)、パラホルムアルデヒド(化合物2)および先行する芳香族ジアミンジスルフィドの特定の例(化合物3)から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンスルフィドの合成に使用することができる、式(A-5)のベンゾオキサジンの別の例(M-5で表されるモノマー)の合成に対する別のスキームを記載している
図6の特定の事例である。
【0034】
当業者であれば、フェノール(ラジカル(複数可)Gを保持する)および硫化ジアミン(式-Sx-Rの基(複数可)を保持する)の式をとりわけ変化させることにより、本発明の補強材のポリベンゾオキサジンの合成に対する出発モノマーとしての役割を果たす、特定の式(A)または(A-0)のベンゾオキサジンをどのように幅広く適応させるか十分認識している。
優先的な芳香族硫化ジアミンの例として、とりわけ化合物3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、およびその混合物についての記載がすでになされている。
【0035】
1~6個、特に1~4個の炭素原子を含み、O、S、NおよびPから選択される少なくとも1個の(すなわち1個または複数の)ヘテロ原子を含んでもよい、飽和したまたはエチレン性不飽和の脂肪族炭化水素ベースタイプの基「A」を保持するフェノール化合物(この場合、例えば、メトキシフェノール)の例として、言及され得る例は、以下の化合物を含む。
【0036】
【0037】
優先的な実施形態によると、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンポリマーは、以前に詳細に記載されているような式(A)または(A-0)のベンゾオキサジンを第1のモノマーとして、および芳香族ジオールまたはチオール化合物を第2のモノマーとして重縮合することにより得ることができる。
この芳香族ジオールまたはチオール化合物は、式(B)により優先的に対応する。
【化13】
(式中、
- X
1およびX
2は、同じでも異なっていてもよく、OまたはSを表し、
- Ar
1およびAr
2は、同じでも異なっていてもよく、芳香族基を表し、好ましくはフェニレンを表し、
- Zは、Oまたは(S)
nを表し、記号「n」は1より大きいまたは等しい整数を表す)
よって、1つの特に好ましい実施形態によると、本発明の補強に対して適切なポリベンゾオキサジンは、特定の式(I-1)(オキサジン環の開環前)または(II-1)(開環後)に対応する少なくとも1個の単位を含む繰り返し単位を特徴とする。
【0038】
【化14】
またこの場合、上記式において、オキサジン環の2個の窒素原子は、互いに対して、それらを分離する中央のベンゼン核上の任意の位置(すなわちオルト、メタまたはパラ)にあることが明確に指摘されている。
【0039】
しかし、さらにより優先的には、上記式(I-1)および上記(II-1)において、それらの2個の窒素原子は、互いに対して、それらを分離する中央のベンゼン核上のメタ位にある。よって、言い換えると、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンは、以下の式(I-1ビス)(オキサジン環の開環前)または式(II-1ビス)(開環後)に対応する(少なくとも)1個の単位を含む構造的繰返し単位を含む。
【0040】
【0041】
上記式(I-1)、(II-1)、(I-1ビス)および(II-1ビス)において、少なくとも1つのまたはそれぞれの芳香族核Ar1およびAr2の1個または複数の水素原子は、様々な置換基(同じでも異なっていてもよい)、例えば、ポリマーの、金属および/またはゴムへの接着を促進することが可能な官能基で置換することができる。
【0042】
図8は、式(A-6)の先行するハロゲン化ベンゾオキサジン(モノマーM-6)から、および芳香族ジオールまたはチオールタイプの一般式(B)の別のモノマー(「N」で表されるモノマー)から出発する、本発明の補強材に対して適切な、上記式(I-1ビス)のポリベンゾオキサジンスルフィド(P-1で表されるポリマー)の一般的合成に対するスキームであり、またこのポリベンゾオキサジンスルフィドの例(ここで式II-1ビスのP-1’で表されるポリマー)では、ポリマーP-1の加熱処理後にそのオキサジン環が開環している。
【0043】
上記一般式(I-1)、(II-1)、(I-1ビス)または(II-1ビス)において、以下の特徴の少なくとも1つが優先的に満たされる:
- Ar1およびAr2は、非置換のフェニレン基をそれぞれ表す;
- X1およびX2は、硫黄原子、または酸素原子のいずれかをそれぞれ表す;
- Zは、OまたはSを表し(すなわち「n」は1と等しい)、より優先的にはSを表す。
より優先的には、上記特徴のすべては、同時に満たされる優先的特徴である。
優先的な例として、先行する式(B)の化合物は、以下の特定の式(B-1)、(B-2)または(B-3)の少なくとも1つに対応する。
【0044】
【化16】
別の特定のおよび優先的な実施形態によると、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンポリマーは、上に記載されているような式(A)または(A-0)のベンゾオキサジンの単独重合により得ることができる。
よって、
図9は、先行する式(A-5)の特定のハロゲン化ベンゾオキサジン(モノマーM-5)の単純な単独重合により今回得られた、本発明の補強材に適切な別のポリベンゾオキサジン(式II-2のポリマーP-2’)の、そのオキサジン環の開環を伴う合成に対するスキームを例示している。
【0045】
別の特定のおよび優先的な実施形態によると、本発明の補強材に対して適切なポリマーは、以下の2つの式(A-7)および(A-7ビス)(それぞれ、M-7およびM-7ビスにより表されるモノマー)の1つに少なくとも部分的に対応する臭素化ベンゾオキサジンポリスルフィドから誘導される。
【化17】
【0046】
図10は、臭素化フェノール(化合物4)、p-ホルムアルデヒド(化合物2)および3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン(化合物3)から出発する、本発明による補強材に対して適切なポリベンゾオキサジン(
図11のポリマーP-3およびP-3’)の合成に使用することができる式(A-7)のこの臭素化ベンゾオキサジンポリスルフィド(M-7で表されるモノマー)の合成の例を正確に付与する。
図10のこれらの例において、先行する
図7~9の場合のように、特に、すでに示された、特に優先的な実施形態によると、式(A)のベンゾオキサジンの2つのオキサジン環の各ベンゼン核は、ハロゲン(Hal)を1つのみ保持し、より優先的には、オキサジン環の酸素に対してパラ位に位置する臭素を保持することが指摘される。
【0047】
最後に、
図11は、上記式(A-7)の特定のハロゲン化ベンゾオキサジン(モノマーM-7)から、および硫黄ベースの芳香族ジオールタイプ(チオエーテル官能基を保持する)の式(B-1)の別の特定のモノマー(モノマーN-1)から出発する、本発明の補強材に対して適切なポリベンゾオキサジンスルフィド(ポリマーP-3)の合成、さらにそのオキサジン環が開環してしまってからのこのポリマーの構造(P-3’で表されるポリマー)について記載している。
図10および11の合成は、以下に続く実施例においてより詳細に記載される。
通常、本発明の補強材のポリベンゾオキサジンは、式(I)および/または(II)の単位を保持する、十から数百の構造単位、好ましくは50~300の構造単位、特に
図8、9および11の例として表された構造単位を含むことができる。
以前に記載したポリベンゾオキサジンは、本発明の補強材をコーティングし、後者をゴムに接着するための接着プライマーまたは唯一の接着剤層として有利に使用することができる。
【0048】
ゴムをポリベンゾオキサジン層に接着させるため、任意の公知の接着剤系、例えば、天然ゴムなどの少なくとも1種のジエンエラストマーを含む「RFL」タイプの従来の繊維接着剤、またはゴムと、従来のポリマー、例えば、ポリエステルもしくはポリアミドとの間の満足な接着を付与することが知られている任意の同等の接着剤、例えば、特許出願WO2013/017421、WO2013/017422、WO2013/017423、WO2015/007641、およびWO2015/007642に記載されている接着組成物を使用することができる。
【0049】
上記接着コーティングプロセス前に、ポリベンゾオキサジン層の表面を、例えば、物理的におよび/または化学的に活性化させて、接着剤のその取り込みおよび/またはゴムへのその最終接着を改善させることが有利となり得る。物理的処理は、例えば、電子ビームなどの放射による、またはプラズマによる処理からなり得る。化学的処理は、例えば、エポキシ樹脂および/またはイソシアネート化合物を事前に槽に通すことからなり得る。
当業者であれば、そのポリベンゾオキサジン層を備えた本発明の補強材と、これが接触しているゴム層との間の接続は、対象のゴム製品の最終硬化(架橋)中に明確に提供されることを容易に理解している。
【0050】
以前に記載したポリベンゾオキサジンは、任意のタイプの金属補強材を目的とし、通常、糸状タイプ、例えば、スチール、とりわけカーボンスチールで作製された、ワイヤー、フィルム(慣例により、5cmより大きい幅を有する)、テープ(慣例により、最大でも5cmと等しい幅を有する、より細いフィルム)、またはコードであり、特に、天然ゴムなどの不飽和ゴムのマトリックスの補強用であることを目的とする。
スチール、とりわけカーボンスチールは、ブライトスチール、すなわちコーティングされてないスチールであってもよいし、またはさもなければ表面金属と呼ばれる、少なくとも1つの第2の金属の層(したがって、スチールとポリベンゾオキサジン層との間に位置する中間層)で少なくとも部分的にコーティングされていてもよく、この表面金属は、アルミニウム、銅、亜鉛、およびこれらの金属の少なくとも1種と少なくとも1種の他の金属(この族に属していてもいなくてもよい)との合金からなる群から優先的に選択される。より優先的な例として、表面金属は黄銅である。
【0051】
カーボンスチールは、優先的に、例えば、自動車タイヤ用の「スチールコード」タイプのコードで通常使用されている。しかし、当然、他のスチール、例えばステンレススチールを使用することは可能である。カーボンスチールが使用される場合、その炭素含有量は好ましくは0.4%~1.2%の間、特に0.5%~1.1%の間である。本発明は、特に普通の張力(「NT」)、高張力(「HT」、超高度の張力(「SHT」)または極高度の張力(「UHT」)のスチールコードタイプのうちの任意のスチールに適用される。
本発明はまた、本発明による補強材を含む、未硬化(すなわち非架橋)状態または硬化した(架橋)状態の任意のゴム製品、特に任意の空気入りまたは非空気入り自動車タイヤに関する。この本発明のタイヤは、すべてのタイプの自動車、特に乗用車または工業用車両、例えば、重荷重用車両、土木作業用車両、および他の輸送用または運送作業用車両を目的とすることができる。
例として、
図12は、例えば、乗客車両タイプの自動車または重荷重用車両用の本発明によるタイヤの半径方向の断面を非常に概略的に(特定のスケールに忠実ではない)表している。
【0052】
このタイヤ1は、クラウン補強またはベルト6で補強されたクラウン2、2つの側壁3および2つのビーズ4を含み、これらのビーズ4のそれぞれはビーズ線5で補強されている。クラウン2は、この概略図に示されていないトレッドを載せている。骨組み補強7は各ビーズ4の中の2本のビーズ線5で捲回されており、この補強7の折返し8は、例えば、タイヤ1の外側に向けて位置しており、この図では、そのホイールの縁9上に取り付けられているのが表されている。
骨組み補強7は、それ自体公知の方式で、例えば、「半径方向」補強材と呼ばれる補強材で補強された少なくとも1つのゴムプライから形成され、すなわちこれらの補強材は、実質的には互いに並行して位置し、1つのビーズから他のビーズへと延びて、中央の外周面(2つのビーズ4の真ん中に位置し、クラウン補強6の中央を通過するタイヤの回転軸に垂直の面)と、80°~90°の間の角度を形成する。
【0053】
ベルト6は、またそれ自体公知の方式で、例えば、少なくとも2つの重ね合わせた、交差するゴムプライで構成され、これらは「ワーキングプライ」または「三角プライ」として公知であり、互いに実質的に並行して位置し、中央の外周面に対して傾斜している金属補強材で補強されており、これらのワーキングプライは、他のゴムプライおよび/または織物と組み合わせてもよい可能性がある。これらのワーキングプライの主要な役割は、空気入りタイヤに高いコーナリングスティフネスを付与することである。ベルト6は、例えば、「外周の」補強用糸と呼ばれる補強用糸で補強された「フーピングプライ」と呼ばれる、ゴムプライを含むことができ、すなわち、これらの補強用糸は、実質的には互いに並行して位置し、空気入りタイヤの周りを実質的に円周方向に延びて、好ましくは中央の外周面と0°~10°の範囲内の角度を形成する。これらの外周補強用糸の主要な役割は、クラウンが高速での遠心分離に耐えるためであることに注目されたい。
本発明のタイヤ1は、例えば、少なくともそのベルト(6)および/またはその骨組み補強(7)が本発明による補強材を含むという主要な特徴を有する。本発明の別の可能な実施例によると、このような補強材で補強することができるのはビーズゾーンである。それは、例えば、本発明によるこのような補強材で全体的または部分的に形成され得るビーズ線(5)である。
【実施例】
【0054】
5.発明の実施例
本特許出願において、他に明示的に示されていない限り、示されているすべてのパーセンテージ(%)は質量パーセンテージである。
以下の試験は、最初に、ベンゾオキサジン化合物(モノマーM-5およびM-7)の2つの合成例について、次いで、モノマーM-7から出発する、本発明による補強材に対して適切な優先的なポリベンゾオキサジン(ポリマーP-3)の合成例について記載している。最後に、接着試験を実施して、本発明による補強材の優れた接着性能を例示する。
5.1.ベンゾオキサジンスルフィド(モノマーM-5)の合成
この合成に対して、温度計、窒素注入口、磁気撹拌機および冷却器を備えた、100mlの3口丸底フラスコを準備する。
【0055】
合成は、
図7に示されている手順により、以下に詳細に説明されているように、2種の溶媒(無水トルエンおよび無水エタノール)の存在下で、3種の化合物から出発して実施する:メトキシル基を保持する特定のエチレン性不飽和フェノール(化合物1;オイゲノール;Aldrich製品E51791)、パラホルムアルデヒド(化合物2;Aldrich製品158127)および芳香族ジアミンジスルフィド(化合物3;3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン)。
化合物3は、茶色がかった色の比較的に粘性の液体の形態で入手可能な、製品Ethacure300(製造元:Albemarle、Belgium)からシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより単離した。これは、およそ96%まで、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミンおよび3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン異性体の混合物で構成されている(クロマトグラフィー分析による質量比はおよそ4/1)。
【0056】
化合物1(2当量、4.93g、すなわち30mmol)、次いでエタノール(51ml)を、丸底フラスコに注ぎ入れる。不安定なトリアジン-タイプの中間体生成物の形成を阻止するエタノールの存在はこの事例に重要である。化合物3(1当量、3.215g、すなわち15mmol)、化合物2(4当量、1.80g、すなわち60mmol)および最後にトルエン(102ml)を撹拌しながら引き続いて導入する。反応媒体を4時間加熱還流し(およそ75℃)、エタノールを約100℃で16時間にわたり蒸留した後、次いで溶媒および揮発性残渣を最後に40℃(20mbarの真空下)で蒸留して、蒸発させる。次いで、最終生成物を(100mlのメタノール)で洗浄し、乾燥させる。
【0057】
この粉末をメタノール(粉末4g当たり50ml)に入れ、混合物を(65℃)で30分間加熱還流する。次いで、溶液を室温(およそ20℃)に冷却させて、モノマーを結晶化する。得た固体生成物を濾過(ブフナーフィルター)で単離する。真空オーブン内で、50℃で終夜乾燥した後、粉末をこうして得る。その1H NMRスペクトル(500MHz)(溶媒:d8-THF)により、こうして合成したモノマーM-5の化学構造を確認した。以下が結果である:
2.07 (s, 3H), 2.38 (s, 6H), 3.25 (t, 4H), 3.71 (s, 6H), 3.94-4.01 (t, 2H), 4.58-4.64 (dd, 2H), 4.81-4.86 (dd, 2H), 4.96-5.05 (m, 6H), 5.85-5.97 (m, 2H), 6.37-6.40 (d, 2H), 6.55 (s, 2H), 6.72 (s, 1H).
5.2.ハロゲン化ベンゾオキサジンスルフィド(モノマーM-7)の合成
この合成のため、温度計、窒素注入口、磁気撹拌機および冷却器を備えた100mlの3口丸底フラスコを準備する。
【0058】
合成は、
図10に示されている手順により、以下に詳細に説明されているように、2種の溶媒(無水トルエンおよび無水エタノール)の存在下で、3種の化合物から出発して実施する:ハロゲン化フェノール(化合物4;4-ブロモフェノール;Aldrich製品B75808)、p-ホルムアルデヒド(化合物2;Aldrich製品158127)および芳香族ジアミンジスルフィド(化合物3;3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン)。
化合物3は、茶色がかった色の比較的に粘性の液体の形態で入手可能な製品Ethacure300(製造元:Albemarle、Belgium)からシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより単離した。これは、およそ96%まで、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミンおよび3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン異性体の混合物で構成されている(クロマトグラフィー分析による質量比はおよそ4/1)。
【0059】
化合物4(2当量、2.6g、すなわち15mmol)、次いでエタノール(23ml)を丸底フラスコに注ぎ入れる。不安定なトリアジン-タイプの中間体生成物の形成を阻止するエタノールの存在はこの事例に重要である。化合物3(1当量、1.6g、すなわち7.5mmol)、化合物2(4当量、0.90g、すなわち30mmol)および最後にトルエン(46ml)を撹拌しながら続いて導入する。反応媒体を(およそ75℃)で16時間加熱還流し、次いで、溶媒および揮発性残渣を減圧下(1mbar)、110℃で蒸留して、蒸発させる。
次いで、最終生成物をメタノール(生成物4.5g当たり50ml)中に入れ、混合物を還流(65℃)で30分間加熱する。次いで、溶液を室温(およそ20℃)に冷却させて、モノマーを結晶化させる。得た固体生成物を濾過(ブフナーフィルター)で単離する。真空オーブン内で、50℃で終夜乾燥させた後、黄色の粉末をこうして得る(反応収率はおよそ82%と等しい)。
【0060】
重水素化溶媒に溶解した、こうして合成したモノマーM-7の1H NMRスペクトル(500MHz)により、その化学構造を確認した。以下が結果である:
-d8-THF中:
2.06 (s, 3H), 2.39 (s, 6H), 4.03-4.14 (t, 2H), 4.59-4.63 (d, 2H), 4.87-4.91 (dd, 2H), 5.01-5.05 (dd, 2H), 6.71-6.74 (d, 2H), 6.81 (s, 1H), 7.15-7.21 (m, 4H) ;
-CD2Cl2中:
2.06 (s, 3H), 2.39(s, 6H), 4.03-4.14 (t, 2H), 4.53-4.58 (dd, 2H), 4.92-4.95 (dd, 2H), 5.00-5.04 (dd, 2H), 6.68 (s, 1H), 6.74-6.77(d, 2H), 7.14-7.15 (d, 2H), 7.21-7.24 (dd, 2H).
【0061】
5.3.ポリベンゾオキサジンポリスルフィド(ポリマーP-3)の合成
この合成は、
図11に示されている手順により、以下に詳細に記載されているように、2種のモノマーから出発して実施する:先行するステップで得たベンゾオキサジン(モノマーM-7)および式(B-1)の硫黄を保持する芳香族ジオール(4,4’-チオジフェノール;モノマーN-1)。この合成は、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3;SIGMA Aldrich製品13418)、および(無水)溶媒DMA(N,N-ジメチルアセトアミド;SIGMA Aldrich製品38839)およびトルエン(Acros Organics製品番号364411000)の存在下で行う。これらの2種のモノマー(M-7およびN-1)は、事前に減圧下(10mbar)、60℃で終夜乾燥させ、炭酸ナトリウムに対しても同様に、ただし、150℃の温度で乾燥させる。
【0062】
合成は、窒素注入口、温度計、磁気撹拌機、ならびに冷却器および蒸留ブリッジ(加熱マントルを備えた)を搭載したDean-Stark分離体を備えた100mlの4口丸底フラスコで実施する。熱風ガンを使用して、温度計が反応フラスコ内で少なくとも100℃の温度に到達するまで、装置を減圧下で乾燥させる。システムを室温(20℃)に冷却させ、次いで、装置を、合成全体を通して窒素流下に置く。
【0063】
最初に、式(A-7)のモノマーM-7(1当量、1.5g、すなわち2.79mmol)、次いで式(B-1)のモノマーN-1(1当量、0.61g、すなわち2.79mmol)を丸底フラスコに次いで導入する。これに続いて、20mlのDMA(両方のモノマーの溶媒)を加え、次いで、塩基として、トルエン4ml中に懸濁したNa
2CO
3(3当量、0.89g、すなわち8.36モル)を加える。システムをN
2下で5分間パージし、次いで反応媒体を105℃に加熱する。この温度に到達したら(およそ115℃の加熱マントル温度)、Dean-Stark装置の蒸留ブリッジを110℃(加熱マントルで)に加熱して、およそ90分間実施する共沸蒸留(水/トルエン蒸留)を促進させる。次いで、30分ごとに10℃の段階で、130℃に到達するまで反応媒体の温度を徐々に増加させる。反応媒体をこの温度で17時間放置し、次いで室温(20℃)まで冷却させる。反応混合物を90℃(真空3mbar)で続いて蒸留して、溶媒および揮発性残渣を除去し、こうして得た固体沈殿物を次いで250mlの蒸留水で洗浄する。この洗浄中に、カーボネートを抽出するため、中性のpHに到達するまで、酸(1%の水性HCl)を滴下添加する。沈殿物を100mlの蒸留水で再度洗浄し、減圧下、80℃で終夜(およそ12時間)乾燥させる。
1H NMR分析(500MHz)により証明されたように、溶媒d8-THF中の
図11のポリマーP-3をこうして得た。これによって、以下の結果が得られた:
1.92 (s, 3H), 2.26 (s, 6H), 3.74-3.81 (m, 4H), 4.01-4.03 (t, 2H), 4.75-5.01 (m, 2H), 6-15-6.75 (m, 4H), 6.90-7.45 (br, 11H).
【0064】
薄黄色の粉末の形態のこのポリマーP-3はまた、10℃/分のつり上げを用いて(Mettler Toledo DSC「822-2」機器;窒素大気)、-80℃~+350℃の間のDSC(示差走査熱量測定)で分析した。分析は、初回通過(-80℃~+350℃の間)において、163℃での明らかなガラス転移(Tg)を示し、これに続いて200℃より上での発熱性(オキサジン環の開環およびポリマーの架橋に対応)、およそ270℃および299℃での2つの最高点を示した。第2のおよび第3のDSC通過は、-80℃~+350℃の間で実施し、明らかなガラス転移は目視で確認できなかった。
【0065】
5.4.金属/ゴム複合体における接着試験
上記で調製したポリマーP-3の一部分(325mg)を、8mlのDMPU(1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン;SIGMA Aldrich製品41661)に、10質量%の「DY 9577 ES」促進剤(Huntsman製品)と共に溶解し、これによって、溶液を形成し、続いてその1画分(0.6ml)を寸法10cm×2.5cmおよび厚さ0.5mmの黄銅テープ(フィルム)上に均一に堆積させた。この集合体を175℃(空気換気)のオーブン内に5分間、次いで減圧下、230℃で追加の5分間配置して、第1に、任意の微量の溶媒を除去し、第2に、ポリマーのオキサジン環を少なくとも部分的に(すなわち、完全にまたは部分的に)開環させたが、この最後のステップは、ポリマーの顕著な変色を伴い、色が暗いオレンジ色に変化している。
【0066】
室温まで冷却後、こうして形成されたポリベンゾオキサジンのその薄い(厚さ5~10μm)層の表面上に提供されたテープを、続いて、慣例的な2段階接着コーティング作業(2つの槽の接着コーティング)の対象下においた。最初に、エポキシ樹脂(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、およそ1%)およびイソシアネート化合物(カプロラクタム遮断したイソシアネート化合物、およそ5%)に基づく第1の水槽(およそ94%水)内に浸し、この第1の接着コーティングステップの後に、乾燥(100℃で2分間)および次いで加熱処理(200℃で5分間)が続いた。次いで、こうして処理されたテープを、レゾルシノール(およそ2%)、ホルムアルデヒド(およそ1%)およびゴムラテックス(およそ16%のNR、SBRおよびVP/SBRゴム)に基づくRFL接着剤の第2の水槽(およそ81質量%の水)に浸した。最後に、これを乾燥器内で、130℃で2分間乾燥させ、次いで200℃で5分間加熱処理した。
【0067】
ポリベンゾオキサジンフィルムをこうしてコーティングし、次いで接着剤でコーティングされた黄銅テープを、続いて乗客車両タイヤのベルト補強用の従来のゴム組成物の2つの層の間に配置した。この組成物は、天然ゴム、充填剤としてカーボンブラックおよびシリカ、ならびに加硫系(硫黄およびスルフェンアミド促進剤)に基づくものであった。この組成物はコバルト塩を含まなかった。よって、こうして調製した金属/ゴム複合体試験試料をプレスの下に置き、全体を20barの圧力下、150℃で30分間硬化した(加硫処理した)。
ゴムマトリックス中にコバルト塩が含まれていなかったにもかかわらず、ゴムの加硫後、ゴムマトリックスと本発明の金属テープとの間の優れた接着接合を得た。これは、剥離試験(20℃で)中に、金属とゴムとの界面相間ではなく、ゴムマトリックスそれ自体に系統的に不具合が生じたことが判明したからである。他の接着接合試験をブライト(コーティングされてない)スチールテープ上で実施した。これらもまたゴムへの優れた接着を示した(ゴムマトリックスにおける系統的不具合)。
【0068】
結論として、本特許出願に詳細に記載されている特定のポリベンゾオキサジンは、本発明の金属補強材を提供し、主要な利点は、RFL接着剤などの単純な繊維接着剤を使用して、ゴムマトリックスに続いて接着接合できること、またはさもなければこれらのゴムマトリックスが、例えばエポキシ化エラストマーなどの適当な官能化不飽和エラストマーを含有する場合、これらのゴムマトリックスに直接(すなわち、このような接着剤を利用することなく)接着接合できることである。よって、黄銅などの接着金属層、さらに金属塩、特にコバルト塩を含まない周囲ゴムマトリックスでコーティングされていてもよい金属基材を使用することができる。
【0069】
さらに、これは、本発明の文書の序文に記載されている他の公知のポリマーと比較して、著しい利点を構成する、つまり、本発明によるポリベンゾオキサジンは、高温で、これらのオキサジン環を開環し、よって熱硬化性ポリフェノールの樹脂構造を付与する注目すべき能力を有する。これは、ポリマーにより良い加熱安定性を付与する。最後に、これらの特定のミクロ構造は、非常に有利なことに、標的とする特定の用途により、分子の柔軟性を調節することを可能にする。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕少なくともその表面が少なくとも部分的に金属であり、少なくとも前記金属部分がポリベンゾオキサジンスルフィドでコーティングされており、このポリベンゾオキサジンスルフィドの繰返し単位が、式(I)または(II)に対応する少なくとも1個の単位を含む、金属のまたは金属化された補強材。
(式中、2つのオキサジン環は、中央の芳香族基を介して一緒に接続されており、そのベンゼン環は、1、2、3または4つの式-S
x
-Rの基(式中、「x」は1~8の整数であり、Rは、水素、または1~10個の炭素原子を含み、ならびにO、S、NおよびPから選択されるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素ベースの基を表す)を保持する)
〔2〕中央のベンゼン環が、式-S
x
-Rの2つの基を保持する、前記〔1〕に記載の補強材。
〔3〕式-S
x
-Rの2つの基が、互いに対して、中央のベンゼン環上のメタ位にある、前記〔2〕に記載の補強材。
〔4〕「x」が1~4の範囲にあり、好ましくは1または2と等しい、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の補強材。
〔5〕Rが好ましくは1~5個の炭素原子を含有するアルキルである、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の補強材。
〔6〕Rが、メチルまたはエチルを表し、好ましくはメチルを表す、前記〔5〕に記載の補強材。
〔7〕「x」が1と等しく、Rがメチルを表す、前記〔4〕および〔6〕に記載の補強材。
〔8〕繰返し単位が、式(I-ビス)または(II-ビス)に対応する少なくとも1個の単位を含む、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の補強材。
〔9〕繰返し単位が、式(I-a)または(II-a)に対応する少なくとも1個の単位を含む、前記〔8〕に記載の補強材。
〔10〕繰返し単位が、式(I-a-1)、(I-b-1)、(II-a-1)または(II-b-1)に対応する少なくとも1個の単位を含む、前記〔9〕に記載の補強材。
〔11〕繰返し単位が、以下の式(I-1)または(II-1)の少なくとも1つに対応する、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の補強材。
(式中、
- X
1
およびX
2
は、同じでも異なっていてもよく、OまたはSを表し、
- Ar
1
およびAr
2
は、同じでも異なっていてもよく、芳香族基を表し、好ましくはフェニレンを表し、
- Zは、Oまたは(S)
n
を表し、記号「n」は1以上の整数を表す)
〔12〕繰返し単位が、以下の式(I-1ビス)または(II-1ビス)の少なくとも1つに対応する、前記〔11〕に記載の補強材。
〔13〕スチールで作製された、好ましくは、カーボンスチールで作製された糸、フィルム、テープまたはコードの形態である、前記〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載の補強材。
〔14〕スチールがブライトスチールである、前記〔13〕に記載の補強材。
〔15〕スチールが、表面金属と呼ばれる第2の金属で少なくとも部分的にコーティングされ、第2の金属が、アルミニウム、銅、亜鉛、およびこれらの金属の少なくとも1種と少なくとも1種の他の金属との合金からなる群から優先的に選択される、前記〔13〕に記載の補強材。
〔16〕表面金属が黄銅である、前記〔15〕に記載の補強材。
〔17〕ゴム製品の補強のための、前記〔1〕から〔16〕のいずれか1項に記載の補強材の使用。
〔18〕ゴム製品が空気入りまたは非空気入り自動車タイヤである、前記〔17〕に記載の使用。
〔19〕前記〔1〕から〔16〕のいずれか1項に記載の少なくとも1種の補強材で補強されたゴム製品。
〔20〕前記〔1〕から〔16〕のいずれか1項に記載の少なくとも1種の補強材で補強された自動車タイヤ。