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特許7195286繊維製品処理用物品及び繊維製品処理剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】繊維製品処理用物品及び繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/402 20060101AFI20221216BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20221216BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20221216BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20221216BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
D06M13/402
D06M13/463
D06M13/148
D06M13/188
D06M13/224
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019572298
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005691
(87)【国際公開番号】W WO2019160114
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2018025929
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 景子
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 寛也
(72)【発明者】
【氏名】桶田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】柿木 智宏
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0275870(US,A1)
【文献】特開2011-137256(JP,A)
【文献】特開2012-097377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0166818(US,A1)
【文献】特表2006-524200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品を乾燥機で乾燥する際に使用される繊維製品処理用物品であって、
基材と、前記基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、
前記繊維製品処理剤組成物が、
(B)成分:ディート、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31~120℃で溶融可能であり、
前記(A)成分が、
(A1)ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルベンゼンメチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルベンジルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、及びジココナッツアルキルジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A2)ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、水添牛脂アルキルトリメチルアンモニウム塩、水添牛脂アルキルベンゼンジメチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ステアリルトリヒドロキシエチルアンモニウム塩、オレイルトリメチルアンモニウム塩、及びココナッツアルキルトリメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A3)ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、及びドコサン酸から選択される少なくとも1種と、
(A4)グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、及びソルビタンモノステアレートから選択される少なくとも1種と、
を含み、
前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1~10であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して5~90質量%である、繊維製品処理用物品。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して10~90質量%である請求項1に記載の繊維製品処理用物品。
【請求項3】
前記(A)成分の総質量に対する前記(A1)及び前記(A2)の割合が、1~90質量%である請求項1又は2に記載の繊維製品処理用物品。
【請求項4】
前記(A3)の質量に対する前記(A1)及び前記(A2)の質量比が0.1~5である請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維製品処理用物品。
【請求項5】
(B)成分:ディート、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31~120℃で溶融可能である、繊維製品処理剤組成物であり、
前記(A)成分が、
(A1)ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルベンゼンメチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルベンジルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、及びジココナッツアルキルジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A2)ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、水添牛脂アルキルトリメチルアンモニウム塩、水添牛脂アルキルベンゼンジメチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ステアリルトリヒドロキシエチルアンモニウム塩、オレイルトリメチルアンモニウム塩、及びココナッツアルキルトリメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A3)ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、及びドコサン酸から選択される少なくとも1種と、
(A4)グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、及びソルビタンモノステアレートから選択される少なくとも1種と、
を含み、
前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1~10であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して5~90質量%である、繊維製品処理剤組成物
【請求項6】
前記(A)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して10~90質量%である請求項5に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の総質量に対する前記(A1)及び前記(A2)の割合が、1~90質量%である請求項5又は6に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項8】
前記(A3)の質量に対する前記(A1)及び前記(A2)の質量比が0.1~5である請求項5~7のいずれか一項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品を乾燥機で乾燥する際に使用される繊維製品処理用物品、及び繊維製品処理剤組成物に関する。
本願は、2018年2月16日に、日本に出願された特願2018-025929号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
吸血害虫の吸血により生じる感染症を予防するため、一般に、忌避成分(ディート等)を含む薬液を皮膚に直接塗布することが行われる。
しかし、皮膚に薬液を直接塗布した場合、皮膚に付着した忌避成分が、汗と一緒に流れたり、体温によって揮散したりする。そのため、忌避効果の持続時間が比較的短く、吸血被害を長時間受けないようにするためには、頻繁に薬液を皮膚に塗布する必要があり、不便である。
吸血害虫の中でも蚊は、衣類の上からでも吸血行動を起こすことができる。そこで、薬液で衣類を処理する方法が提案されている(特許文献1~3)。薬液を衣類に塗布又は含浸させて処理することにより、薬液を皮膚に直接塗布するよりも、忌避効果の持続時間を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-346373号公報
【文献】特開2013-237636号公報
【文献】特表2007-524773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、家庭の一般消費者が薬液で衣類を処理するのは手間がかかる。例えば、薬液を皮膚に直接塗布する場合と同様に薬液を衣類に塗布する場合、必要な時に必要な量だけの薬液を衣類一枚一枚に塗布しなければならず、大変不便である。また、吸血害虫は必要量の忌避成分が付着していない箇所から吸血することができるため、薬液の塗布ムラをなくすことは重要であるが、一般消費者が薬液を衣類にムラのないように塗布するのには大変な労力がかかる。
忌避成分を洗液中に添加して洗濯を行えば、忌避成分を一度に沢山の衣類へ付着させ得ると考えられる。しかしこの場合、洗液に添加した忌避成分のほとんどが流れ出てしまうことで衣類に残留しにくく、効率よく衣類に付着できない。そのため、衣類に充分な忌避効果を付与するためには、洗液中において高濃度の忌避成分の存在が必要となり、実用的ではない。
【0005】
ところで近年、洗濯した衣類を乾燥する乾燥機の使用者が増加している。
本発明者らは、忌避成分を基材に保持させることで表面積を拡大し、洗濯した衣類を乾燥機内で乾燥する際に衣類と接触させれば、基材に保持された忌避成分を、複数枚の衣類に一度に均一に付着させ得ると考えた。しかし、検討を進めたところ、所望の忌避効果を得るのに充分な量の忌避成分を基材に保持させると、べたつきが生じることがわかった。忌避成分を保持させた基材にべたつきがあると、この基材を手で持って乾燥機内に投入したときに手がべたつく等、使用性が悪く、忌避成分の付着量のムラ(ムラ付き)も起こる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、複数枚の繊維製品に忌避成分を効率良く付着させることができ、かつ忌避成分に起因するべたつきが抑制された繊維製品処理用物品、及び前記繊維製品処理用物品に好適に用いられる繊維製品処理剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕繊維製品を乾燥機で乾燥する際に使用される繊維製品処理用物品であって、
基材と、前記基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、
前記繊維製品処理剤組成物が、
(B)成分:ディート、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31~120℃で溶融可能である、繊維製品処理用物品。
〔2〕前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1~999であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して0.1~99質量%である前記〔1〕の繊維製品処理用物品。
〔3〕前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して1~100質量%である前記〔1〕又は〔2〕の繊維製品処理用物品。
〔4〕前記(A)成分が、カチオン性界面活性剤を含む前記〔1〕~〔3〕のいずれかの繊維製品処理用物品。
〔5〕(B)成分:ディート、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31~120℃で溶融可能である、繊維製品処理剤組成物。
〔6〕前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1~999であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して0.1~99質量%である前記〔5〕の繊維製品処理剤組成物。
〔7〕前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して1~100質量%である前記〔5〕又は〔6〕の繊維製品処理剤組成物。
〔8〕前記(A)成分が、カチオン性界面活性剤を含む前記〔5〕~〔7〕のいずれかの繊維製品処理剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維製品処理用物品によれば、複数枚の繊維製品に忌避成分をムラなく効率良く付着させることができる。また、本発明の繊維製品処理用物品は、忌避成分に起因するべたつきが抑制されている。そのため、使用性に優れ、忌避成分のムラ付きも抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維製品処理用物品は、基材と、前記基材に担持された繊維製品処理剤組成物(以下、「処理剤組成物」ともいう。)とを含む。
【0010】
(処理剤組成物)
処理剤組成物は、以下の(A)成分と(B)成分とを含む。
処理剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分及び(B)成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0011】
処理剤組成物は、1atm、30℃において固体状である。処理剤組成物がこの条件において固体状であれば、繊維製品処理用物品のべたつきを抑制できる。
1atm、30℃において固体状であるとは、1atm、30℃の条件下で静置したときに流動しない(変形しない)ことを示す。
【0012】
また、処理剤組成物は、31~120℃で溶融可能である。処理剤組成物が31~120℃で溶融可能であれば、繊維製品を乾燥機で乾燥する際の温度で処理剤組成物が溶融し、溶融した処理剤組成物又は処理剤組成物中の(B)成分が繊維製品に付着する。
処理剤組成物は、31~110℃で溶融可能であることが好ましく、40~100℃で溶融可能であることがより好ましい。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分である。処理剤組成物が(A)成分を含むことによって、1atm、30℃において液状である(B)成分を含む処理剤組成物を、1atm、30℃において固体状とすることができ、((B)成分に起因する)繊維製品処理用物品のべたつきを抑制できる。
【0014】
(A)成分の融点は、31~130℃が好ましく、40~120℃がより好ましく、40~90℃がさらに好ましく、50~90℃が特に好ましく、50~80℃が最も好ましい。(A)成分の融点が前記範囲の下限値以上であれば、処理剤組成物を前記した条件において固体状としやすい。(A)成分の融点が前記範囲の上限値以下であれば、処理剤組成物を120℃以下で溶融するものとしやすい。また、加熱によって溶融した(A)成分を含む処理剤組成物を基材に付着させ、冷却して繊維製品処理用物品を製造する場合に、溶融した(A)成分が冷却時に素早く固まり、(B)成分が基材から流れ落ちることを抑制できる。
(A)成分は、1種単独で用いても、2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。処理剤組成物が30℃において固体状であり、40~120℃で溶融可能となるように、後述する(B)成分の種類、配合量に応じて(A)成分を選択し、2種以上を組み合わせたり、処理剤組成物中の(A)成分の配合量を調整したりすることができる。
(A)成分が2種以上の化合物の混合物である場合、(A)成分の融点は、混合物としての融点である。混合物としての融点が前記した好ましい範囲内であるときに、混合物が、融点が前記した好ましい範囲外である化合物を含んでいてもよい。
(A)成分を構成する化合物の少なくとも一部は、融点が前記した好ましい範囲内である化合物であることが好ましい。
【0015】
(A)成分の融点は、油化学便覧(第四版、日本油化学会編)、化学大辞典(共立出版)、化学便覧(改訂5版基礎編、日本化学会編)、又は理化学辞典(第5版)に記載されている化合物については、上記便覧、辞典等に記載の値を採用する。
ただし化合物に不純物が含まれている場合や、油化学便覧(第四版、日本油化学会編)に記載のとおり多形がある場合は、融点に幅がある。この場合、本発明では油化学便覧(第四版、日本油化学会編)に記載の最も高い融点を採用し、油化学便覧にない場合は、化学大辞典(共立出版)に記載の最も高い融点を採用する。また、上記辞典、便覧等に融点が記載されていない化合物の場合は、分析化学便覧(社団法人 日本分析化学会編、改訂二版)、有機化学ハンドブック(社団法人 有機合成化学協会編 全訂改版 技報堂出版)、又は基準油脂分析試験法(社団法人 日本油化学協会)に記載の融点測定方法に準じる方法で測定した値を採用する。なお、本発明における融点とは、混合物における融点も含まれている。
【0016】
(A)成分を構成する化合物としては、例えば、上記条件を満たす、界面活性剤、油脂、炭化水素ワックス、糖、及びポリエチレングリコール(例えば平均分子量5000~20000のもの)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤等が挙げられる。
【0017】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、以下の(1)~(4)が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(1)下記式1で表されるジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
[R11121314N] ・・・式1
(式中、R11及びR12は、各々独立して、炭素数が12~26、好ましくは14~18のアルキル基を示す。R13及びR14は、各々独立して、炭素数が1~4、好ましくは1~2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2~4、好ましくは2~3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。Xは、対イオンを示す。)
【0019】
上記式1で表されるジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウム塩や、ジ水添牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルベンゼンメチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルベンジルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、ジココナッツアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
(2)下記式2で表されるモノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
[R15161718N] ・・・式2
(式中、R15は、炭素数が12~26、好ましくは14~18のアルキル基を示す。R16、R17及びR18は、各々独立して、炭素数が1~4、好ましくは1~2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2~4、好ましくは2~3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。Xは、対イオンを示す。)
【0021】
上記式2で表されるモノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩や、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、水添牛脂アルキルトリメチルアンモニウム塩、水添牛脂アルキルベンゼンジメチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ステアリルトリヒドロキシエチルアンモニウム塩、オレイルトリメチルアンモニウム塩、ココナッツアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
(3)下記式3で表されるテトラ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
[R19202122N] ・・・式3
(式中、R19、R20、R21及びR22は、各々独立して、炭素数が1~4、好ましくは1~2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2~4、好ましくは2~3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。Xは、対イオンを示す。)
【0023】
上記式3で表されるテトラ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0024】
(4)下記式4で表されるトリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
[R23242526N] ・・・式4
(式中、R23、R24及びR25は、各々独立して、炭素数が12~26、好ましくは14~18のアルキル基を示す。R26は、炭素数が1~4、好ましくは1~2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2~4、好ましくは2~3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。Xは、対イオンを示す。)
【0025】
上記式4で表されるトリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、トリラウリルメチルアンモニウムクロライド、トリステアリルメチルアンモニウムクロライド、トリオレイルメチルアンモニウムクロライド、トリココナッツアルキルメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0026】
これらのカチオン性界面活性剤における対イオン(X)としては、ハロゲン化物イオン、CHSO 、CSO 、1/2SO 2-、OH、HSO 、CHCO 、CH-C-SO 等が挙げられる。ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等が挙げられる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、乾燥機庫内の腐食リスクがない点で、対イオンが塩化物イオン以外のアニオンであるものが好ましく、対イオンがCHSO であるもの(メチルサルフェート塩)がより好ましい。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、以下の(5)~(16)が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(5)α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩。
α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩としては、例えば、下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
-CH(SOM)-COOR・・・(a)
式(a)中、Rは、炭素数8~20、好ましくは炭素数14~16の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、または炭素数8~20の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。Rは炭素数1~6のアルキル基であり、炭素数1~3であることが好ましい。
Mは、対イオンを表し、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩;アンモニウム塩等が挙げられる。なかでもアルカリ金属塩が好ましい。
α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩として、α-スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム塩(MES)が好ましい。
(6)炭素数8~18のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS又はABS)。
(7)炭素数10~20のアルカンスルホン酸塩。
(8)炭素数10~20のα-オレフィンスルホン酸塩(AOS)。
(9)炭素数10~20のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩(AS)。
(10)炭素数2~4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比EO/PO=0.1/9.9~9.9/0.1)を、平均0.5~10モル付加した炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩(AES)。
(11)炭素数2~4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比EO/PO=0.1/9.9~9.9/0.1)を、平均3~30モル付加した炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル硫酸塩。
(12)炭素数2~4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比EO/PO=0.1/9.9~9.9/0.1)を、平均0.5~10モル付加した炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテルカルボン酸塩。
(13)炭素数10~20のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
(14)炭素数10~20のアルキル基を有するモノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキルリン酸塩。
(15)ポリオキシエチレンモノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキルリン酸塩。
(16)炭素数10~20の高級脂肪酸塩(石鹸)。
【0030】
油脂としては、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
高級アルコールは、具体的には、炭素数が14以上、好ましくは18以上の鎖式アルコールである。高級アルコールの炭素数は、好ましくは24以下である。高級アルコールの具体例としては、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-イコサノール、1-ドコサノール等が挙げられる。これらの高級アルコールはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸は、具体的には、炭素数12以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上の鎖状飽和モノカルボン酸である。高級脂肪酸の炭素数は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下である。高級脂肪酸の具体例としては、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸等が挙げられる。これらの高級脂肪酸は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸エステルとしては、高級脂肪酸と炭素数1~4の1価アルコールとのエステル、高級脂肪酸と炭素数1~6の多価アルコールとのモノ又はポリエステル、高級脂肪酸と炭素数1~6の多価アルコールのエチレンオキシド付加物とのモノ又はポリエステル等が挙げられる。
高級脂肪酸と炭素数1~6の多価アルコールとのモノ又はポリエステルとしては、例えば高級脂肪酸グリセリンエステルが挙げられる。高級脂肪酸グリセリンエステルとしては、例えば、炭素数16以上の飽和脂肪酸とグリセリンとのモノ-、ジ-又はトリエステル、具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート等が挙げられる。このうち、グリセリンモノステアレートが好ましい。これらの脂肪酸グリセリンエステルはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
油脂として、高級アルコール、高級脂肪酸及び脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる2種又は3種の混合物を使用することもできる。混合物としては、高級アルコールと高級脂肪酸との混合物が好ましい。
【0032】
炭化水素ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油精製ワックス、セレシンワックス、合成ワックス等が挙げられる。これらの炭化水素ワックスはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(A)成分の含有量は、処理剤組成物の総質量に対して1~99質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、20~80質量%がさらに好ましい。
【0034】
(A)成分は、(B)成分に起因する繊維製品処理用物品のべたつきの抑制効果がより優れる点、乾燥機での乾燥時に(B)成分が繊維製品に付着しやすい点から、カチオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、べたつきの抑制効果と、(B)成分の繊維製品への付着性がより優れる点から、前記した(1)が好ましい。
(A)成分がカチオン性界面活性剤を含む場合、(A)成分の総質量に対するカチオン性界面活性剤の割合は、1~90質量%が好ましく、5~85質量%がより好ましく、10~70質量%がさらに好ましく、15~50質量%が特に好ましい。カチオン性界面活性剤の割合が前記範囲内であると、(B)成分の繊維製品への付着性がより優れる。
(A)成分がカチオン性界面活性剤を含む場合、(B)成分の繊維製品への付着性とべたつき抑制効果を高めるために、カチオン性界面活性剤以外の(A)成分を併用することが好ましい。具体的には、カチオン性界面活性剤として、ジステアリルジメチルアンモニウム塩や、ジ水添牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルベンゼンメチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルベンジルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、ジココナッツアルキルジメチルアンモニウム塩等のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型アンモニウム塩と、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸等の高級脂肪酸とを併用するのが好ましい。高級脂肪酸の質量に対するカチオン性界面活性剤の質量比(カチオン性界面活性剤/高級脂肪酸)は、0.1~5が好ましく、0.2~2がより好ましい。
【0035】
<(B)成分>
(B)成分は、ディート(別称:N,N-ジエチル-m-トルアミド)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(別称:IR3535)、p-メンタン-3,8-ジオール、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル(別称:イカリジン、CAS 119515-38-7、)、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の害虫忌避成分である。これらの害虫忌避成分はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、常圧常温(例えば1atm、30℃)で液状であるため、(B)成分を単独で担持させると、基材から流れ落ちたり物品がべたついたりする場合がある。
【0036】
ピレスロイド系化合物としては、アレスリン、イミプロトリン、エムペントリン、シフェノトリン、トランスフルトリン、フェノトリン、ペルメトリン、ピレトリン、メトフルトリン、エムペントリン、シフルトリン等が挙げられる。
【0037】
(B)成分はカプセル化されていてもよい。
壁物質としては、カプセル化材料として一般的に用いられているものを特に制限なく用いることができる。例えば、ゼラチンや寒天等の天然系高分子、油脂やワックス等の油性膜形成物質、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質等が挙げられる。これらの壁物質はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。壁物質としては、乾燥機の温度と機械力に耐えられるものが好ましい。
カプセルの粒径は特に限定されないが、衣類への付着性及び衣類の外観を変化させないという観点から、300μm以下が好ましい。
【0038】
(B)成分の含有量は、処理剤組成物の総質量に対して0.1~99質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましく、10~80質量%がさらに好ましく、20~50質量%が特に好ましい。
【0039】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、(B)成分以外の害虫忌避成分が挙げられる。
(B)成分以外の害虫忌避成分としては、害虫忌避効果を有する成分であればよく、公知の害虫忌避剤に有効成分として使用されている公知の害虫忌避成分が適用可能である。
(B)成分以外の害虫忌避成分の具体例としては、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、害虫忌避効果を有する香料等が挙げられる。
【0040】
害虫忌避効果を有する香料としては、リモネン等のモノテルペン系炭化水素、メントン、イソメントン、カルボン、プレゴン、カンファー等のモノテルペン系ケトン、シトラール、シトロネラール、テルピネオール、ネラール、ペリラアルデヒド等のモノテルペン系アルデヒド、シンナミルフォーメート、ゲラニオール、ゲラニルフォーメート等のエステル化合物、リナロール、シトロネロール等のモノテルペンアルコール、フェニルエチルアルコール、さらには、酢酸メンチル、酢酸シンナミル、ローズマリーオイル、上記香料成分を含む種々の精油類、例えば、ハッカ油、ラベンダー油、フェニルアセトアルデヒド、サンダルウッド、トナリド、アセチルオイゲノール、ミリスチン酸イソプロピル、ボルニルシクロヘキサノール、サンタリノール、インドール、フェニルアセトアルデヒド、オキサヘキサデカノリド、イソブチルキノリン、パラメチルキノリン、ムスクオイル、γ-ウンデカラクトン、γ-デカラクトン、ボルニルシクロヘキサノール、スペアミント油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモン油、シトロネラ油、レモングラス油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、タイム油、タイムホワイト油、タイムレッド油、パチョウリ油等が挙げられる(特開2003-138290号公報参照)。これらの中でも、シトロネラール、ゲラニオール、テルピネオール、メンタンジオールが好ましい。
害虫忌避効果を有する香料は、カプセル香料でもよい。
(B)成分と害虫忌避効果を有する香料との混合物をカプセル化してもよい。
【0041】
乾燥機で衣類等の繊維製品を乾燥する際に異臭が発生することがある。このような異臭の原因として、繊維製品に残存した皮脂等の汚れや、洗濯時に使用した洗剤や仕上げ剤等の基剤が加熱により変化することが考えられる。害虫忌避効果を有する香料を含むと、(B)成分とは異なる作用機序の害虫忌避効果が得られ、忌避効果が高まるだけでなく、マスキング効果によって、乾燥時に発生する繊維製品の異臭を抑制できる。
【0042】
他の成分として、害虫忌避効果を有しない香料を用いてもよい。害虫忌避効果を有しない香料は、カプセル香料でもよい。
(B)成分と害虫忌避効果を有しない香料との混合物をカプセル化してもよい。
【0043】
香料を配合する場合、香料の含有量は、処理剤組成物の総質量に対して0.01~2質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましく、0.2~0.8質量%がさらに好ましい。
【0044】
他の成分として、キレート剤や防腐剤等を用いてもよい。
【0045】
(B)成分の質量に対する(A)成分の質量比(以下、「(A)/(B)」ともいう。)は、0.1~999が好ましく、0.1~500がより好ましく、0.15~350がさらに好ましい。(A)/(B)は0.1~15であってもよく、0.1~10であってもよく、0.1~8であってもよく、0.1~5であってもよい。(A)/(B)が前記範囲内であると、繊維製品処理用物品のべたつきを抑制できるとともに、乾燥時の繊維製品への処理剤組成物の付着性、ひいては(B)成分の付着性が優れる。
【0046】
(A)成分と(B)成分との合計量は、処理剤組成物の総質量に対して1~100質量%が好ましく、5~100質量%がより好ましく、10~100質量%がさらに好ましく、50~100質量%以上が特に好ましく、70~100質量%が最も好ましくい。(A)成分と(B)成分との合計量が前記範囲内であることで、維製品処理用物品の単位面積当たりの(B)成分の質量を所定量(例えば1g/m以上)とするために基材に担持させる処理剤組成物の量を少なくできる。
【0047】
(基材)
基材とは、(A)成分及び(B)成分を含む処理剤組成物を担持させるものである。基材としては、処理剤組成物を担持できるものであればよく、例えば、吸液性を有する基材が挙げられる。吸液性を有する基材としては、例えば紙、織物、編物、不織布、スポンジ等が挙げられる。
【0048】
基材の素材としては、特に限定するものではないが、紙、コットン、キュプラ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アセテート、ポリエステル、ウール、麻、カシミヤ、珪藻土、レーヨン、リヨセル、ナイロン、アクリル、ウレタン、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ゴム、ポリスチレン、シリコーン樹脂等が挙げられる。繊維製品を処理した際に基材に処理剤組成物が残りにくい点、ムラ付きをより抑制できる点から、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。
【0049】
基材の形状としては、特に限定するものではないが、シート状、球状、長方体状、スポンジ状等が挙げられる。中でも最少のコストで繊維製品に接触する表面積を大きくできる点で、シート状が好ましい。
【0050】
シート状の基材としては、紙、不織布、織物、編物、タフト、縮絨フェルト等の繊維基材、スポンジ等の多孔質基材、樹脂フィルム、樹脂シート等が挙げられる。乾燥時に基材に担持された成分が全て溶出して、衣類へ付着させることができる点から、繊維基材が好ましく、安価である点、乾燥機内で嵩張ることなく複数の衣類と接しやすくなり、担持された成分が効率よく複数の衣類に付着できる点から、不織布が特に好ましい。
ここで、「不織布」の定義はJIS-L-0222による定義に準じる。すなわち、「繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨(しゅくじゅう)フェルトを除く。」を意味する。
【0051】
不織布の坪量は、10~150g/mが好ましく、15~120g/mがより好ましい。坪量が前記範囲の下限値以上であると、繊維製品処理用物品の単位面積当たりの(B)成分の質量を所定量以上(例えば1g/m以上)としやすい。また、繊維製品処理用物品に充分な腰があり、取り扱い性に優れる。坪量が前記範囲の上限値以下であると、乾燥時、繊維製品処理用物品から(B)成分が溶出しやすく、所望の効果を充分に得られやすい。また、乾燥時に、繊維製品処理用物品から乖離する不織布の繊維が少なく、乾燥機のフィルターの目詰まりといった不具合が生じにくい。
なお、不織布の坪量は、不織布の単位面積当たりの不織布の質量である。不織布の坪量は、JIS L 1906:2000「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定できる。不織布として市販品を用いる場合は、各メーカーにより「坪量」、「目付け」又は「米坪」として表される値を坪量として採用できる。これらの値の単位はいずれもg/mである。
【0052】
シート状の基材の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1~3mmが好ましく、0.1~2mmがより好ましい。
シート状の基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基材の厚さは、ABSデジマチックインジケーター 543-250BS ID-C112BS(ミツトヨ社製)を用いて測定される平均厚さである。
シート状の基材の強度としては、引張強さが縦方向50N/50mm以上、横方向15N/50mm以上であることが望ましい。強度が高いと乾燥中の基材の変形が抑えられ、処理剤組成物が剥がれ落ちにくいことからムラ付きを抑制できる。縦方向は、製造時の長軸の方向、つまりMD(Machine Direction)である。横方向は、縦方向と直交する方向、つまりTD(Traverse Direction)である。引張強さは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0053】
本発明の繊維製品処理用物品において、基材に担持された処理剤組成物の量は、例えばシート状の基材である場合には、繊維製品処理用物品の単位面積当たりの(B)成分の質量に換算して、1g/m以上が好ましく、2~50g/mがより好ましく、4~40g/mがさらに好ましい。
単位面積当たりの(B)成分の質量が前記下限値以上であると、乾燥機での乾燥時に繊維製品処理用物品と接触した繊維製品に、充分な量の(B)成分が付着し、充分な忌避効果を発揮させることができる。また、単位面積当たりの(B)成分の質量が多いほど、繊維製品に任意の量の(B)成分を付着させるために使用する繊維製品処理用物品の量を少なくできる。
単位面積当たりの(B)成分の質量が前記上限値以下であると、処理剤組成物を基材に担持させやすい。
【0054】
本発明の繊維製品処理用物品の好ましい一態様は、シート状の基材と、前記シート状の基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、前記繊維製品処理剤組成物が、(A)成分と(B)成分とを含み、(A)/(B)が0.1~3であり、繊維製品処理用物品の単位面積当たりの(B)成分の質量が1g/m以上である繊維製品処理用物品である。
【0055】
本発明の繊維製品処理用物品の他の好ましい一態様は、シート状の基材と、前記シート状の基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、前記繊維製品処理剤組成物が、(A)成分と(B)成分と他の化合物とを含み、(A+他の化合物)/(B)が0.1~3であり、繊維製品処理用物品の単位面積当たりの(B)成分の質量が1g/m以上である繊維製品処理用物品である。
【0056】
本発明の繊維製品処理用物品の他の好ましい一態様は、シート状の基材と、前記シート状の基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、繊維製品と接触させた状態で、1atm、40~120℃で加熱したときに、前記繊維製品処理剤組成物又は前記(B)成分が前記繊維製品に付着するよう構成されている繊維製品処理用物品である。
【0057】
本発明の繊維製品処理用物品の製造方法は特に限定されず、公知の方法を利用できる。
例えば以下の方法により繊維製品処理用物品を製造できる。
(A)成分の融点以上の温度で(A)成分を加熱溶融し、溶融した(A)成分に対して(B)成分、及び必要に応じて他の成分を添加して液状の処理剤組成物を調製し、前記処理剤組成物をシート状の基材に塗布し、(A)成分の融点未満の温度に冷却する方法。
(A)成分の融点以上の温度としては、(A)成分の融点+5℃以上、かつ(A)成分の融点+10℃以下が好ましい。
【0058】
本発明の繊維製品処理用物品は、繊維製品を乾燥機で乾燥する際に使用される、乾燥機投入型の繊維製品処理用物品である。乾燥機での乾燥時に、本発明の繊維製品処理用物品と接触した繊維製品に処理剤組成物が付着し、(B)成分による害虫忌避効果が発揮される。
繊維製品としては、特に制限はなく、例えば衣類、カーテン、ソファーカバー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツ、毛布等が挙げられる。
害虫忌避効果の対象となる害虫としては、例えば蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニ、ツツガムシ、アリ、ゴキブリ、クモ、ヤスデ、ムカデ等が挙げられる。
【0059】
本発明の繊維製品処理用物品による繊維製品の処理は、例えば、乾燥機内に、洗濯、すすぎ、及び脱水を行った後の繊維製品とともに、繊維製品処理用物品を投入し、乾燥を行うことにより実施できる。または、洗濯開始時に、繊維製品処理用物品を繊維製品と一緒に投入し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥まで行うことにより実施できる。または、左記の各工程のいずれかに繊維製品処理用物品を投入しても実施することができる。
乾燥機としては、従来、衣類等の乾燥に用いられているものを使用でき、典型的には、衣類等を回転させながら加熱するものを使用する。乾燥機の具体例としては、電気衣類乾燥機、ガス衣類乾燥機、ドラム式洗濯乾燥機、洗濯乾燥機、タンブル乾燥機、回転式乾燥機等が挙げられる。
乾燥機での乾燥時の温度は、一般に用いられている温度であってよく、通常、家庭用乾燥機では約80℃、業務用乾燥機では約115℃である。
乾燥時間は、特に制限はないが、好ましくは30分~360分、より好ましくは60分~300分である。乾燥時間が短いと、繊維製品の乾燥が不充分で、繊維製品に生乾き臭が生じるおそれがある。乾燥時間が長すぎると、繊維製品が傷む可能性がある。
本発明の繊維製品処理用物品による繊維製品の処理は上記の方法だけでなく、洗濯処理の不要な乾いた衣類等を用いて、乾燥機内で短時間(1~30分)で前記成分を付着させる方法でもよい。左記方法により、長時間乾燥による前記成分のロスも最小限に抑えられ、効率よく衣類へ付着することができる。
また、処理する衣類の量に応じて、使用する繊維製品処理用物品の数を適宜変えてもよい。例えば、処理する衣類が多い場合は、繊維製品処理用物品を複数(例えば2~5個)使用することで、1個使用する場合に比べて、衣類へ充分量の(B)成分を均一に付着することができる。
【0060】
以上説明した本発明の繊維製品処理用物品にあっては、基材と、前記基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、前記繊維製品処理剤組成物が、(A)成分と(B)成分とを含み、1atm、30℃において固体状であり、40~120℃で溶融可能であるので、複数枚の繊維製品に(B)成分を効率良く付着させることができる。そのため、本発明の繊維製品処理用物品で処理された繊維製品は、優れた害虫忌避効果を発揮する。また、本発明の繊維製品処理用物品は、単位面積当たりの(B)成分の質量が多くても、(B)成分に起因するべたつきが抑制されている。そのため、使用性に優れ、忌避成分のムラ付きも抑制できる。
【実施例
【0061】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0062】
(使用材料)
(A)成分:ジステアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点:37℃):ステアリン酸(融点:72℃):ソルビタンモノステアレート(融点:49~65℃):ラウリルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点:40℃未満)=28:38:28:6(質量比)の混合物。混合物としての融点:55~57℃。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製。
ラウリルアルコール((A)成分比較品):融点24℃、富士フィルム和光純薬社製。
香料:特開2011-132640の表2記載の香料組成物。
【0063】
(実施例1~8、比較例1~3)
<繊維製品処理用物品の製造>
以下の手順で繊維製品処理用物品を製造した。
まず、HOTTING BATH(ADVANTEC社製)に水道水をいれ(A)成分の融点+5~10℃に設定した。次に、(A)成分を300mLビーカーに入れ、HOTTING BATH内にて加熱溶融した。次に、表1~2に示す組成のように(B)成分及び香料を添加し、加熱溶解混合して処理剤組成物を調製した。ただし、比較例1では(B)成分を添加しなかった。比較例2においては、(B)成分をそのまま処理剤組成物とした。
表1~2中、各成分の含有量(%)は質量%である。表中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す。
【0064】
別途、下記の不織布を23×28cm(0.0644m)に裁断した。
実施例1~6、比較例1~3:ポリエチレン-ポリプロピレン複合繊維不織布、坪量20g/m、厚さ0.1mm、フラット2次加工。
実施例7:ポリエチレン-ポリプロピレン複合繊維不織布、坪量20g/m、厚さ0.3mm、加工なし。
実施例8:ポリエチレン-ポリプロピレン複合繊維不織布、坪量20g/m、厚さ0.2mm、エンボス1次加工。
裁断した不織布に、2mLポリスポイトを用いて、表1~2に示す量(g)の前記処理剤組成物を塗布した。塗布後、25℃で1日放置して繊維製品処理用物品を得た。
裁断した不織布に、2mLポリスポイトを用いて、表1に示す量(g)の前記処理剤組成物を塗布した。塗布後、25℃で1日放置して繊維製品処理用物品を得た。その後、以下の操作を行って繊維製品処理用物品を評価した。
ただし、(B)成分をそのまま、裁断した不織布に塗布した比較例3においては、塗布した(B)成分は固体にならず、目的の繊維製品処理用物品をうまく製造できなかった。そのため、比較例3については以下の操作は行わなかった。
【0065】
<繊維製品の処理>
「繊維製品の前処理」
繊維製品として、市販のB.V.D肌シャツ(綿100%、フジボウアパレル社製)2枚を二槽式洗濯機(三菱電機社製、CW-C30A1-H)にて市販洗剤「消臭ブルーダイヤ」(ライオン社製)を用いて、以下の条件で前処理を行った。
洗剤標準使用量、浴比30倍、50℃の水道水、洗浄15分、脱水5分の工程を2回、その後流水すすぎ15分、脱水5分の工程を5回繰り返す。
【0066】
「洗浄処理」
前処理した2枚の繊維製品(B.V.D肌シャツ)を縦型全自動式洗濯機(AW-8V2 TOSHIBA社製)に入れ、洗浄10分すすぎ1回、脱水5分を行った。
【0067】
「乾燥処理」
脱水終了直後の2枚の繊維製品と一緒に、上記方法で作製した繊維製品処理用物品1枚を電気乾燥機(ED-45C TOSHIBA社製)に入れ、50~80℃で1時間乾燥処理を行った。ブランクとして、繊維製品処理物品は入れずに上記と同様に乾燥処理を行った。
【0068】
<繊維製品処理用物品のべたつきの無さの評価>
上記方法で作製した繊維製品処理用物品のべたつきの無さを以下の手順で評価した。結果を表1~2に示す。
25℃の条件下で、評価者(n=5)により対象品(比較例1の繊維製品処理用物品)と比較した際のべたつきの無さを下記3段階で点数付けし、評価者の平均点数を算出した。
平均点数は、2点以上が好ましく、2.5点以上がより好ましい。
なお、評価が1点の繊維製品処理用物品は実用的でないと判断し、下記の害虫忌避効果は評価しなかった。
3点:対象品と比較してべたつきが改善。
2点:対象品と同等。
1点:対象品と比較してべたつきが悪化。
【0069】
<害虫忌避効果の評価>
上記方法で処理した繊維製品(以下、「処理品」ともいう。)について、害虫忌避効果(防蚊性)を以下の手順で評価した。結果を表1~2に示す。
【0070】
「試験条件」
天気:晴れ、気温:34.9℃、湿度:58%、試験実施場所:ヒトスジシマカが棲息する屋外土壌上。
「試験方法」
実地忌避効力試験:
無処理品(ブランク)及び処理品のB.V.D肌シャツを着用し、3分間当たりに全身に寄って来るヒトスジシマカの数をカウントした。無処理品着用時に蚊に刺された数をA、処理品着用時に蚊に刺された数をBとした。
試験後、ヒトスジシマカによる刺咬数を調査し、下記式により刺咬阻止率を算出した。
刺咬阻止率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
刺咬阻止率(%)={(A-B)/A}×100
【0071】
<ムラ付きの無さの評価>
ブロモフェノールブルー0.4gを95%エタノール200gに溶解し、純水で1Lにメスアップし染色液とした。
処理品を染色液に完全に浸し、染色液から取り出して絞ったのち、色が出なくなるまで水道水ですすいだ。
処理品の腹部中央部15cm×15cmの範囲を目視で観察し、その中にある濃青斑点の数を数えた。斑点の数から以下の基準でムラ付きの無さを評価した。ブロモフェノールブルーは、処理剤組成物中のカチオン(カチオン性界面活性剤)を染色する。斑点の数が少ないほど、処理剤組成物のムラ付き、ひいては(B)成分のムラ付きの発生が抑制されていることがわかる。
○:斑点が20個未満。
△:斑点20個以上40個未満。
×:斑点が40個以上。
【0072】
<引張強さの評価>
JIS L 1913:2010記載の引張強さ及び伸び率の試験(標準時)に従い、繊維製品処理用物品の縦方向及び横方向の引張強さを測定した。試験片の幅は50.0mmで試験を行った。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1~8の繊維製品処理用物品は、べたつきが少なかった。また、複数枚の繊維製品を乾燥機で乾燥する際に実施例1~8の繊維製品処理用物品を用いて繊維製品を処理することにより、複数枚の繊維製品に(B)成分を効率良く付着させることができた。特に実施例1~6の繊維製品処理用物品を用いた場合には、複数枚の繊維製品に(B)成分をムラ無く付着させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の繊維製品処理用物品によれば、複数枚の繊維製品に(B)成分を効率良く付着させることができる。また、本発明の繊維製品処理用物品は使用性に優れる。