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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20221216BHJP
   B66B 23/22 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B66B31/00 A
B66B31/00 E
B66B23/22 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020013306
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021119095
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 直輝
(72)【発明者】
【氏名】金山 翔平
(72)【発明者】
【氏名】坂上 充
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113206(JP,A)
【文献】特開2006-143412(JP,A)
【文献】特開平06-144765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0344270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
B66B 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗口と降口の間で、複数の踏段を循環駆動する乗客コンベアにおいて、
前記乗口もしくは前記降口において、前記踏段が櫛板に出入りするタイミングを表示する表示装置と、
前記表示装置の表示および非表示を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記踏段に乗る利用者による負荷状態に応じて、前記表示装置の表示および非表示の周期を変更することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記制御装置は、前記負荷状態に基づき前記利用者の混雑度を算出し、前記混雑度が大きくなるほど、前記周期を大きくすることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記複数の踏段はモータによって駆動され、
前記制御装置は、前記負荷状態を示す前記モータのモータ電流に基づき前記混雑度を算出することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記踏段を検出する近接センサを備え、
前記制御装置は、前記近接センサの出力信号に基づいて、前記タイミングを算出し、算出した前記タイミングに基づいて前記表示装置を制御することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項4に記載の乗客コンベアにおいて、
前記制御装置は、前記近接センサの出力信号に基づいて前記踏段の速度を算出し、算出した前記速度に基づいて前記タイミングを算出し、算出した前記タイミングに基づいて前記表示装置を制御することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記表示装置が発光装置であり、
前記発光装置は、前記乗口もしくは前記降口において、前記櫛板から出る前記踏段と、前記櫛板と、乗降板における前記櫛板に隣接する部分とを含む領域内に光を当て、
前記発光装置は、前記光の点滅によって、前記踏段が前記櫛板に出入りする前記タイミングを表示することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項7】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記表示装置がプロジェクタであり、
前記プロジェクタは、前記乗口もしくは前記降口において、前記櫛板から出る前記踏段に所定の映像を投影し、
前記プロジェクタは、前記映像の投影および非投影によって、前記踏段が前記櫛板に出入りする前記タイミングを表示することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項8】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記表示装置がディスプレイ装置であり、
前記ディスプレイ装置は、前記乗口もしくは前記降口において、欄干パネルに設けられ、
前記ディスプレイ装置は、所定の画像の表示および非表示によって、前記踏段が前記櫛板に出入りする前記タイミングを表示することを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道のような乗客コンベアに係り、特に、乗降のタイミングを表示する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野における従来技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。この従来技術では、隣接する踏段間の隙間が櫛板から出てくることをセンサにより検出し、検出信号に応じて、乗降口においてスカートガードに設けられるランプを点滅させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-157259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術によれば、乗客コンベアの利用者のスムーズな乗り込みが可能になり、安全性が向上する。しかし、混雑時には、踏段に乗る利用者の過密な状態が助長される恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、利用者が多い混雑時において踏段に乗る利用者が過密にならないように利用者に対して乗降のタイミングを表示することができる乗客コンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による乗客コンベアは、乗口と降口の間で、複数の踏段を循環駆動するものであって、乗口もしくは降口において、踏段が櫛板に出入りするタイミングを表示する表示装置と、表示装置の表示および非表示を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、踏段に乗る利用者による負荷状態に応じて、表示装置の表示および非表示の周期を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、混雑時において踏段に乗る利用者が過密にならないように、乗降のタイミングを表示することができる。
【0008】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態であるエスカレータの外観図である。
図2図1における踏段の駆動機構を示す縦方向断面図である。
図3】本実施形態における乗降タイミング表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図4図3におけるエスカレータ制御装置における、発光装置の点滅制御手段を示すフローチャートである。
図5】近接センサの出力信号およびエスカレータ制御装置が作成する発光装置への点滅指令信号のタイミングを示すタイムチャートの一例である。
図6】発光装置以外の乗降タイミング表示装置の例を示す、図2と同様の縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図において、参照符号が同一のものは、同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態であるエスカレータの外観図である。
【0012】
本実施形態のエスカレータは、図示しない建物の上下階床間に設置される。なお、図1は、下階床における乗降口付近の外観構成を示す。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のエスカレータは、複数の踏段2を備える。踏段2は、下階床から上階床へ向かって、もしくは上階床から下階床に向かって移動する。また、複数の踏段の左右両側には(図1では片側のみ図示)、欄干パネル3と、欄干パネル3の周辺部に位置するハンドレール4とから構成される欄干部が設けられる。ハンドレール4は、踏段2の動きに同期して、踏段2の移動方向と同じ方向に移動する。
【0014】
乗降口部においては、建物内から踏段2に向かって、乗降板1と、櫛板6とが設けられる。乗降板1は、床面内に位置する機械室の蓋であるとともに、エスカレータの利用者用の通路となる。櫛板6は、いわば踏段2が機械室へ出入りするための出入口であり、踏段表面の凹凸部(クリートおよび溝)と噛み合う櫛歯部を有する。このような櫛板6により、出入口部において利用者の履物が挟み込まれることが防止される。
【0015】
なお、乗降板1上の空間であって、かつ踏段2の左右両側に位置する欄干パネル3間の空間、すなわち、利用者が、踏段2に乗り込む直前および踏段2から降りた直後に歩を進める空間、いわばエスカレータの間口を、乗降口または乗降部と称する。
【0016】
乗降板1と櫛板6との間には、利用者に乗降位置を明示する発光部7が設けられる。発光部7は、水平方向、かつ利用者の乗降方向に垂直な方向に沿って、等間隔に配置される、複数の点状の発光体(例えば、LED)を有する。
【0017】
なお、発光体は繰り返し点滅させてもよい。これにより、乗降位置を確実に明示することができる。
【0018】
欄干パネル3およびハンドレール4の下部はスカートガード5によって覆われる。これにより、上下階床間で、踏段2の駆動機構や、駆動機構などが組み込まれるフレームなどの構造体が外部に露出せず、安全性が確保される。
【0019】
スカートガード5における、乗降板1および櫛板6に隣接する部分のスカートガードパネル9には、発光装置8が設けられる。発光装置8は、図示しない発光体(例えばLED)と、光を拡散するとともに、意匠部材でもあるカバーと、を有する。発光装置8としては、例えば、利用客の足元を照らす照明装置が適用できる。
【0020】
発光装置8は、櫛板6から出る踏段2と、櫛板6と、発光部7と、乗降板1における櫛板6に隣接する部分とを含む領域内に光を当てる。また、発光装置8は、後述するように、踏段2が櫛板6出るタイミングで、発光体を点灯および消灯することにより、点滅する。さらに、後述するように、踏段2に乗る利用者数による負荷状態に応じて、発光装置8を点滅する周期を変更する。これにより、混雑時において踏段2に乗る利用者が過密にならないようなタイミングで、利用者が乗降するように、利用者を誘導することができる。
【0021】
なお、図1に示す構成は、図示されない、上階床における乗降口部においても、また図1とは左右反対側においても、同様である。
【0022】
図2は、図1における踏段2の駆動機構を示す縦方向断面図である。なお、図2は、上階床側の構成を示す。また、図2に示すエスカレータは下り用であり、踏段2は、利用者が乗る側において、上階床から下階床に向かって移動する。
【0023】
図2に示すように、各踏段2は、無端状の踏段チェーン(図示せず)に係合する。踏段チェーンが巻き掛けられるスプロケット12が、乗降板1の直下における機械室内に設けられる駆動機10によって回転駆動されると、踏段チェーンが駆動される。これにより、各踏段2は、ガイドレール11に案内されて、上下階床間において循環駆動される。
【0024】
なお、駆動機10は、誘導機や同期機などの交流モータを備えており、制御盤20に格納されるインバータ装置によって交流電動機が駆動されると、スプロケット12を回転駆動する。交流モータは、単相交流モータおよび三相交流モータのいずれでもよい。
【0025】
なお、図2において、スプロケット12は、図中、左回りに回転する(矢印参照)。これにより、本実施形態のエスカレータは、下り用エスカレータとして動作する。
【0026】
踏段2およびその駆動機構が配置されるフレーム内には、近接センサ30が設けられる。
近接センサ30は、踏段2の所定の部位(例えば、踏段軸)が近接センサ30と対向すると、検出信号を出力する。すなわち、移動する踏段2が、近接センサ30が設けられた位置を通過する時点が検出される。後述するように、近接センサ30の検出信号と、エスカレータの負荷状態を示す、駆動機10が備える交流モータのモータ電流(もしくはインバータ出力電流)に基づいて、制御盤20に格納されるエスカレータ制御装置によって、発光装置8(図1)の点滅および点滅周期が制御される。
【0027】
なお、近接センサ30としては、誘導電流型(例えば渦電流型)、静電容量型、光電型などの非接触型センサが適用できる。
【0028】
図3は、本実施形態において、発光装置8を点滅する乗降誘導装置の概略構成を示すブロック図である。
【0029】
制御盤20(図2参照)は、駆動機10(図2)の交流モータ50(M)を駆動するインバータ21と、インバータ21および発光装置8を制御するエスカレータ制御装置22とを格納する。エスカレータ制御装置22は、交流モータ50のモータ電流を検出する電流センサ23の検出信号と、近接センサ30(図2参照)の検出信号とに基づいて、発光装置8の点滅を制御する。
【0030】
電流センサ23としては、CT(Current Transformer)などが適用される。なお、電流センサ23は、制御盤20内に設けて、インバータ21の出力電流を検出するようにしてもよい。
【0031】
図4は、図3におけるエスカレータ制御装置22における、発光装置8の点滅制御手段を示すフローチャートである。ここでは、下り用エスカレータ(図2)の乗り口における利用者に対し、発光装置8の点滅によって乗り込みタイミングを表示することにより利用者の乗りこみを誘導する場合の制御手段について説明する。なお、エスカレータ制御装置22は、マイクロコンピュータなどのコンピュータ装置を備え、コンピュータ装置が所定のプログラムを実行することによって、図4に示すように発光装置8の点滅を制御する。
【0032】
ステップS1において、エスカレータ制御装置22は、電流センサ23および近接センサ30からセンサ情報(モータ電流、踏段2の所定位置(近接センサ30の設置位置)通過)を取得する。エスカレータ制御装置22は、ステップS1を実行後、次にステップS3を実行する。
【0033】
ステップS2において、エスカレータ制御装置22は、ステップS1で取得したモータ電流等の負荷情報に基づいて、エスカレータに乗っている利用者の混雑度(乗込率)αを算出する。例えば、搭乗可能な利用者の最大人数を所定速度で運搬する場合のモータ電流値で、取得したモータ電流の値を除算することにより、混雑度(乗込率)が算出される。エスカレータ制御装置22は、ステップS2を実行後、次にステップS3を実行する。
【0034】
ステップS3において、エスカレータ制御装置22は、ステップS1で取得した、近接センサ30からのセンサ情報(踏段2の所定位置(近接センサ30の設置位置)通過)に基づいて、踏段2が移動する速度vを算出する。例えば、近接センサ30の検出信号の時間周期で、1周期当たりの踏段2の走行距離dを除算することにより算出される。この場合、踏段2の走行距離dは、踏段の駆動機構の構成から算出され、予めエスカレータ制御装置22に設定される。エスカレータ制御装置22は、ステップS3を実行後、次にステップS4を実行する。
【0035】
ステップS4において、エスカレータ制御装置22は、ステップS3で算出した速度vに基づいて、櫛板6から踏段2が出るタイミングtを算出する。ここで、櫛板6から踏段2が出るタイミングとは、踏段2の移動方向における踏段の先端部、後端部、先端部と校端部の間の内の、いずれかの部位が出るタイミングであり、適宜設定される。
【0036】
タイミングtは、例えば、踏段2が近接センサ30の位置を通過した時点から、この時点で次に櫛板6から出る踏段2が櫛板6から出る時点までに走行する距離Lを、ステップS3で算出した速度vで除算することにより、算出される。なお、走行距離Lは、ステップS3における走行距離dと同様に、踏段の駆動機構の構成から算出され、予めエスカレータ制御装置22に設定される。エスカレータ制御装置22は、ステップS4を実行後、次にステップS5を実行する。
【0037】
ステップS5において、エスカレータ制御装置22は、ステップS2で算出した混雑度αに応じて、発光装置8の点滅間隔(点滅の時間間隔(点滅周期))nを設定する。本実施形態では、点滅間隔nは、ステップS4で算出されるタイミングごとに点滅する場合にはn=1とし、m時点おきのタイミングで点滅する場合にはn=m+1(m:整数、m≧1)とする。したがって、α(0<α≦1)が大きくなるほど、nが大きくなるように、予め、混雑度αと点滅間隔nの関係が、数式もしくはテーブルにより、エスカレータ制御装置22に設定される。エスカレータ制御装置22は、このような数式もしくはテーブルを用いて、ステップS2で算出した混雑度αに対する時間間隔nを求める。エスカレータ制御装置22は、ステップS5を実行後、次にステップS6を実行する。
【0038】
ここで、時間間隔を表す「n」と、タイミングtの添え字「n」は、無関係であり、便宜上、同じ文字を使っている。
【0039】
ステップS6において、エスカレータ制御装置22は、ステップS2で算出した混雑度αが所定の閾値αth(0<αth<1)よりも小さいか否かを判定する。閾値αthは、踏段2に乗る利用者が過密状態になり得るような混雑状態(以下、単に「混雑状態」と記す)であることを示す指標であり、エスカレータの利用状況や最大搭乗人数などを考慮して予めエスカレータ制御装置22に設定される。
【0040】
エスカレータ制御装置22は、混雑度αが所定の閾値αth(0<αth<1)よりも小さいと判定すると(ステップS6のYES)、エスカレータに乗っている利用者が混雑状態ではないとして、次に、ステップS7を実行する。また、エスカレータ制御装置22は、混雑度αが所定の閾値αth以上であり、αが所定の閾値αthよりも小さくはないと判定すると(ステップS6のNO)、エスカレータに乗っている利用者が混雑状態であるとして、次に、ステップS8を実行する。
【0041】
ステップS7において、エスカレータ制御装置22は、発光装置8の光源の発光色を平常時用発光色として、ステップS4で算出したタイミングで、かつステップS5で設定した点滅間隔nで、光源を点灯および消灯することにより、発光装置8を点滅する。
【0042】
また、ステップS8において、エスカレータ制御装置22は、発光装置8の光源の発光色を混雑時用発光色として、ステップS4で算出したタイミングで、かつステップS5で設定した点滅間隔nで、光源を点灯および消灯することにより、発光装置8を点滅する。
【0043】
なお、平常時用発光色および混雑時用発光色は、互いに異なる発光色であればよい。例えば、平常時用発光色、および混雑時用発光色を、それぞれ、白色および赤色(または青色など)とする。
【0044】
なお、エスカレータ制御装置22は、エスカレータが稼働中、図4に示す点滅制御を繰り返し実行する。
【0045】
図5は、近接センサ30の出力信号およびエスカレータ制御装置22が作成する発光装置8への点滅指令信号のタイミングを示すタイムチャートの一例である。
【0046】
エスカレータ制御装置22は、櫛板6から踏段2が出るタイミングt図4のステップS4)で、かつ混雑度αに応じた点滅間隔n(図4のステップS5)で、点滅指令信号を作成する。
【0047】
近接センサ30の出力信号パルスの立ち上がり時点から、この時点で次に櫛板6から出る踏段2が櫛板6から出るまでに要する走行時間、すなわち、前述の走行距離Lを踏段の速度vで除算して求められる時間(L/v)が経過した時点が、櫛板6から踏段2が出るタイミングtである。このタイミングで、点滅指令信号パルスが立ち上がり、発光装置8の光源が点灯され、所定時間点灯後、消灯される。
【0048】
図5では、平常時において点滅間隔はn=1であり、エスカレータ制御装置22は、順次算出されるタイミング(…,t,tn+1,tn+2,…)ごとに、点滅指令を作成して、発光装置8を点滅させる。
【0049】
また、図5では、混雑時において点滅間隔はn=2であり、エスカレータ制御装置22は、順次算出されるタイミング(…,t,tn+1,tn+2,…)において、一つ置きのタイミングで、点滅指令を作成して、発光装置8を点滅させる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、利用者が多い混雑時には、乗りこみタイミングを表示する発光装置8の点滅時間間隔が平常時よりも大きくなる。このような発光装置8の点滅により利用者の乗りこみが誘導されることにより、エスカレータの複数の踏段上に乗る利用者間の間隔が広がり、エスカレータに乗る利用者の過密状態が防止される。
【0051】
上述の実施形態では、発光装置8の点滅によって乗降タイミングを表示しているが、発光装置8に限らず、他の表示装置を適用してもよい。
【0052】
図6は、発光装置8以外の乗降タイミング表示装置の例を示す、前述の図2と同様の縦方向断面図である。
【0053】
図6においては、乗降タイミング表示装置として、上階床の天井部60に、プロジェクタ100が設けられる。プロジェクタ100は、櫛板6から出た踏段2の踏面上に、所定の映像として靴底形パターン101を投影する。プロジェクタ100の光源が前述の発光装置8と同様に点滅されることにより、すなわち映像の投影および非投影により、乗降タイミングが表示される。
【0054】
なお、プロジェクタ100が投影する映像は、靴底形パターン101に限らず、任意の形状パターンでよい。また、プロジェクタ100は、文字映像を投影してもよい。
【0055】
また、図6においては、乗降タイミング表示装置として、ディスプレイ装置110が、櫛板6から出る踏段2と、櫛板6と、発光部7と、乗降板1における櫛板6に隣接する部分とを含む領域内の任意の領域上に位置する欄干パネル3の部位に設けられる。ディスプレイ装置110は、乗降タイミングを示すための文字や図形などの所定の画像を表示する。ディスプレイ装置110による画像の表示および非表示が、前述の発光装置8の点滅と同様に制御されることにより、乗降タイミングが表示される。
【0056】
ディスプレイ装置110としては、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどが適用できる。
【0057】
なお、図6は、便宜上、一つのエスカレータが、プロジェクタ100およびディスプレイ装置110の両方を備えているように、描かれている。しかしながら、一つのエスカレータが備える乗降タイミング表示手段としては、プロジェクタ100およびディスプレイ装置110のどちらか一方のみでよい。
【0058】
なお、上述の実施形態(乗口での乗り込みタイミング表示)は、櫛板6と櫛板6に入る踏段2と乗降板1とを含む領域内に光を当てたり、パターンを投影したりすれば、降口における降りるタイミング表示にも適用できる。これにより、適切なタイミングで踏段から降りるように利用者を誘導することができる。
【0059】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0060】
例えば、上述の乗降タイミング表示装置は、エスカレータに限らず、動く歩道にも適用できる。
【0061】
また、駆動機10用のモータは直流モータでもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 乗降板、2 踏段、3 欄干パネル、4 ハンドレール、
5 スカートガード、6 櫛板、7 発光部、8 発光装置、
9 スカートガードパネル、10 駆動機、11 ガイドレール、
12 スプロケット、20 制御盤、21 インバータ、
22 エスカレータ制御装置、23 電流センサ、30 近接センサ、
50 交流モータ、60 天井部、100 プロジェクタ、
101 靴底形パターン、110 ディスプレイ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6