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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ダイカスト製品の取り出しハンド装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20221216BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B22D17/22 L
B22D17/22 P
B22D17/32 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020190023
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079069
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】加戸 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】望月 潤
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-021938(JP,A)
【文献】特開平08-108262(JP,A)
【文献】特開平02-055654(JP,A)
【文献】特開平08-094309(JP,A)
【文献】特開平06-328213(JP,A)
【文献】特開平06-023504(JP,A)
【文献】特開平08-294763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な一対の金型内に形成されたキャビティ内に溶解した金属溶湯を射出注入し、当該金属溶湯を冷却硬化させることで成形されるダイカスト製品を、開放された前記一対の金型のいずれか一方から取り出すために用いられるダイカスト製品の取り出しハンド装置であって、
鋳造された前記ダイカスト製品を確認するためのセンサと、
前記センサを収納するセンサボックスと、
を備え、
前記センサボックスは、当該センサボックス内をエアパージするエアパージ機構として機能し、
前記センサは、ダイカスト製品の取り出しハンド装置の上方側に配置される2つの製品確認センサと、ダイカスト製品の取り出しハンド装置の下方側に配置される2つの型内在籍センサと、を備えており、下方側に配置された2つの前記型内在籍センサは、1つの前記センサボックスに収納されており、
前記製品確認センサは、前記ダイカスト製品を開放された前記一対の金型のいずれか一方から取り出す際に湯道部を検知可能であり、
前記型内在籍センサは、前記ダイカスト製品の膨出部を検知可能な位置に配置されているとともに、前記膨出部は前記ダイカスト製品を前記一対の金型のいずれか一方から取り出す際に、前記一対の金型のいずれか他方に向けて突出した場所に位置する形状を有することを特徴とするダイカスト製品の取り出しハンド装置。
【請求項2】
開閉可能な一対の金型内に形成されたキャビティ内に溶解した金属溶湯を射出注入し、当該金属溶湯を冷却硬化させることで成形されるダイカスト製品を、開放された前記一対の金型のいずれか一方から取り出すために用いられるダイカスト製品の取り出しハンド装置であって、
鋳造された前記ダイカスト製品を確認するためのセンサと、
前記センサを収納するセンサボックスと、
鋳造された前記ダイカスト製品を開放された前記一対の金型のいずれか一方から取り出す取り出し動作の実行時以外の装置待機時において前記センサの異常の有無を確認するセンサ異常有無確認手段と、
を備え
前記センサは、ダイカスト製品の取り出しハンド装置の上方側に配置される2つの製品確認センサと、ダイカスト製品の取り出しハンド装置の下方側に配置される2つの型内在籍センサと、を備えており、下方側に配置された2つの前記型内在籍センサは、1つの前記センサボックスに収納されており、
前記製品確認センサは、前記ダイカスト製品を開放された前記一対の金型のいずれか一方から取り出す際に湯道部を検知可能であり、
前記型内在籍センサは、前記ダイカスト製品の膨出部を検知可能な位置に配置されているとともに、前記膨出部は前記ダイカスト製品を前記一対の金型のいずれか一方から取り出す際に、前記一対の金型のいずれか他方に向けて突出した場所に位置する形状を有することを特徴とするダイカスト製品の取り出しハンド装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイカスト製品の取り出しハンド装置であって、
前記センサボックスには、センサ穴が設けられており、
前記センサボックスに収納された前記型内在籍センサは、前記センサ穴を通して前記ダイカスト製品の膨出部を検知可能であり、さらに、
前記センサボックスでは、前記ダイカスト製品の検知を行うタイミング以外の時には、エアシリンダを動作させて蓋体により前記センサ穴を塞ぐことで、前記センサボックスを密封した状態に保つように構成されていることを特徴とするダイカスト製品の取り出しハンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト製品の取り出しハンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉可能な一対の金型内に形成されたキャビティ内に溶解した金属溶湯を射出注入し、当該金属溶湯を冷却硬化させることでダイカスト製品を成形するダイカスト法が公知である。このようなダイカスト法で成形されたダイカスト製品を金型から取り出す方法としては、取り出しハンドを備えたロボット等を用いることが行われている。
【0003】
また、鋳造されたダイカスト製品を金型から取り出す際に、ダイカスト製品が正しく取り出されたか否かを確認するための手段として、製品検知センサを用いることが従来から提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-21938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の技術分野で使用されるセンサは、ダイカスト製品を金型から取り出す度に確実に動作する必要がある。しかしながら、ダイカスト法が実行される金型周辺は、離型剤やほこり等の多数の塵芥が存在しており、従来の技術では、センサを確実かつ安定して動作させる点において改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、鋳造されたダイカスト製品を金型から取り出す際に用いられるダイカスト製品の取り出しハンド装置が備えるセンサを確実かつ安定して動作させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)は、開閉可能な一対の金型(61,62)内に形成されたキャビティ内に溶解した金属溶湯を射出注入し、当該金属溶湯を冷却硬化させることで成形されるダイカスト製品(W)を、開放された前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出すために用いられるダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)であって、鋳造された前記ダイカスト製品(W)を確認するためのセンサ(41,42)と、前記センサ(41,42)を収納するセンサボックス(43)と、を備え、前記センサボックス(43)は、当該センサボックス(43)内をエアパージするエアパージ機構(43)として機能し、前記センサ(41,42)は、ダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)の上方側に配置される2つの製品確認センサ(41)と、ダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)の下方側に配置される2つの型内在籍センサ(42)と、を備えており、下方側に配置された2つの前記型内在籍センサ(42)は、1つの前記センサボックス(43)に収納されており、前記製品確認センサ(41)は、前記ダイカスト製品(W)を開放された前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出す際に湯道部(W1)を検知可能であり、前記型内在籍センサ(42)は、前記ダイカスト製品(W)の膨出部(W2)を検知可能な位置に配置されているとともに、前記膨出部(W2)は前記ダイカスト製品(W)を前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出す際に、前記一対の金型(61,62)のいずれか他方に向けて突出した場所に位置する形状を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る別のダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)は、開閉可能な一対の金型(61,62)内に形成されたキャビティ内に溶解した金属溶湯を射出注入し、当該金属溶湯を冷却硬化させることで成形されるダイカスト製品(W)を、開放された前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出すために用いられるダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)であって、鋳造された前記ダイカスト製品(W)を確認するためのセンサ(41,42)と、前記センサ(41,42)を収納するセンサボックス(43)と、鋳造された前記ダイカスト製品(W)を開放された前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出す取り出し動作の実行時以外の装置待機時において前記センサ(41,42)の異常の有無を確認するセンサ異常有無確認手段と、を備え、前記センサ(41,42)は、ダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)の上方側に配置される2つの製品確認センサ(41)と、ダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)の下方側に配置される2つの型内在籍センサ(42)と、を備えており、下方側に配置された2つの前記型内在籍センサ(42)は、1つの前記センサボックス(43)に収納されており、前記製品確認センサ(41)は、前記ダイカスト製品(W)を開放された前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出す際に湯道部(W1)を検知可能であり、前記型内在籍センサ(42)は、前記ダイカスト製品(W)の膨出部(W2)を検知可能な位置に配置されているとともに、前記膨出部(W2)は前記ダイカスト製品(W)を前記一対の金型(61,62)のいずれか一方から取り出す際に、前記一対の金型(61,62)のいずれか他方に向けて突出した場所に位置する形状を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置(10)では、前記センサボックス(43)には、センサ穴が設けられており、前記センサボックス(43)に収納された前記型内在籍センサ(42)は、前記センサ穴を通して前記ダイカスト製品(W)の膨出部(W2)を検知可能であり、さらに、前記センサボックス(43)では、前記ダイカスト製品(W)の検知を行うタイミング以外の時には、エアシリンダ(44)を動作させて蓋体(46)により前記センサ穴を塞ぐことで、前記センサボックス(43)を密封した状態に保つように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋳造されたダイカスト製品を金型から取り出す際に用いられるダイカスト製品の取り出しハンド装置が備えるセンサを確実かつ安定して動作させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の正面図であり、左右に配置された2個の外側アーム部が開いた状態が示されている。
図2】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の正面図であり、左右に配置された2個の外側アーム部が閉じた状態が示されている。
図3】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の側面図である。
図4】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の要部構成を説明するための正面図である。
図5】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の要部構成を説明するための側面図である。
図6】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の動作説明を行うための図である。
図7】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の動作説明を行うための図である。
図8】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の動作説明を行うための図である。
図9】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の動作説明を行うための図である。
図10】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の動作説明を行うための図である。
図11】本実施形態に係るセンサボックスを説明するための図であり、図中の分図(a)、(b)によって、センサボックスが実行可能な一連の動作が示されている。
図12】本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置が装置待機時に行うセンサ異常有無確認動作を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
まず、図1図3を用いて、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10の基本構成を説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の正面図であり、左右に配置された2個の外側アーム部が開いた状態が示されている。また、図2は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の正面図であり、左右に配置された2個の外側アーム部が閉じた状態が示されている。さらに、図3は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の側面図である。図1図3において、符号Wで示された部材が、取り出し対象となるダイカスト製品Wを示している。
【0016】
本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10は、縦方向に延びた縦長の外観を有する装置である。装置上方には、図示を省略した駆動系の機構が配置されており、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10が開閉可能な一対の金型である可動型62と固定型61の間と外部との領域とを効率良く空間移動できるように構成されている。
【0017】
装置中央部には、2個のダイカスト製品Wの間に挿入される中央把持部11と、2個のダイカスト製品Wのそれぞれの外方側を押圧して把持する2個の外側アーム部21と、が配置されている。つまり、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10は、同一形状を有し、かつ、分離して成形された2個のダイカスト製品Wを同時に金型(可動型62)から取り出す作業を行うことを想定して構成されている。
【0018】
中央把持部11は、ダイカスト製品Wを取り出す際に、2個のダイカスト製品Wの間に挿入される部材である。この中央把持部11は、上方側に向けて延びる軸状部材12を備えており、この軸状部材12には、上方側と中央部の左右位置に水平方向に延びる軸部材を介して取り付けられた弾性体としてのコイルばね13が4個配置されている。4個のコイルばね13は、強固な弾性力を有してダイカスト製品の取り出しハンド装置10本体に取り付けられている。したがって、中央把持部11は、4個のコイルばね13と1本の軸状部材12を介して移動(揺動もしくはスライド移動)可能な状態で吊り下げられた構成を有している。かかる構成によって、本実施形態に係る中央把持部11は、2個のダイカスト製品Wの間で移動(揺動もしくはスライド移動)可能な状態で配置されている。
【0019】
一方、外側アーム部21は、図1および図2を対比参照して明らかな通り、2個のダイカスト製品Wのそれぞれの外方側を押圧して把持する構成を有している。本実施形態に係る外側アーム部21は、ダイカスト製品Wに向けて傾動可能なアーム部材として構成されるものであり、2個のダイカスト製品Wのそれぞれの外方側に1個ずつ、合計2個配置された部材である。2個の外側アーム部21のそれぞれには、ダイカスト製品Wの外方側を押圧するための2個の外側爪部21aが配置されている。つまり、2個のダイカスト製品Wのそれぞれは、内側の側面を中央把持部11で押圧されるとともに、外方側の側面を2個の外側爪部21aによって押圧されることとなる。このような構成は、ダイカスト製品Wを三点支持する機構であるので、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10によれば、いわゆる複数個取りのダイカスト法によって同時に複数個成形されるダイカスト製品Wであっても、金型から確実かつ安全に取り出すことが可能となっている。
【0020】
なお、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10の装置下方には、図1図3で示すように、下方に延びる8本の噴出ノズル31が配置されている。この8本の噴出ノズル31を用いて、2個のダイカスト製品Wが取り除かれた金型(可動型62)のキャビティ形成部等に対して離型剤を噴出したり、エアーを噴出したりすることで、金型を用いた連続的なダイカスト法を実施することが可能となる。
【0021】
以上、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10の基本構成を説明した。次に、図4および図5を参照図面に加えて、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10の特徴的な要部構成を説明する。ここで、図4は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の要部構成を説明するための正面図である。また、図5は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の要部構成を説明するための側面図である。
【0022】
本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10は、上述した基本構成に加えて、図4および図5において示すように、上方側に2つの製品確認センサ41を備えるとともに、下方側に2つの型内在籍センサ42を備えている。また、下方側に配置された2つの型内在籍センサ42は、1つのセンサボックス43に収納されている。
【0023】
製品確認センサ41は、鋳造されたダイカスト製品Wに付随する湯道部W1を検知するセンサであり、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10がダイカスト製品Wを中央把持部11と2個の外側爪部21aによって押圧して三点支持した際に、湯道部W1に対向する位置に配置されている。この製品確認センサ41は、ダイカスト製品Wを開放された一対の金型61,62のいずれか一方(後述する可動型62)から取り出す際に湯道部W1を検知可能であるので、例えば、鋳造されたダイカスト製品Wを金型61,62から取り出す際に、ダイカスト製品Wの一部である湯道部W1が欠損して金型(後述する可動型62)内に残留してしまう不具合の発生の有無を確実に検出することが可能となっている。
【0024】
また、型内在籍センサ42は、万一、開放された一対の金型61,62のいずれか他方(後述する固定型61)にダイカスト製品Wが型残りした場合に、この型残りしたダイカスト製品Wを検知するセンサである。特に、本実施形態に係る型内在籍センサ42は、ダイカスト製品Wの膨出部W2を検知可能な位置に配置されている。このダイカスト製品Wの膨出部W2は、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10がダイカスト製品Wを中央把持部11と2個の外側爪部21aによって押圧して三点支持する箇所となっており、ダイカスト製品Wを可動型62から取り出す際に、固定型61に向けて突出した場所に位置する形状である。したがって、型内在籍センサ42によってダイカスト製品Wの膨出部W2の位置や有無を確認することで、金型61,62から取り出す際のダイカスト製品Wの位置を確実に把握することができ、例えば、固定型61にダイカスト製品Wが型残りした場合にダイカスト製品の取り出しハンド装置10の動作を停止させるなど、異常時におけるトラブルの発生を好適に防止することが可能となっている。なお、本実施例においては、溶湯注入時に金型61,62が回転する傾斜重力鋳造であり、図示しない加圧ピンが膨出部W2を加圧するよう構成されるものである。
【0025】
ここで、図11を参照図面に加えて、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10が備えるセンサボックス43の具体的な構成を説明する。図11は、本実施形態に係るセンサボックスを説明するための図であり、図中の分図(a)、(b)によって、センサボックスが実行可能な一連の動作が示されている。
【0026】
本実施形態に係るセンサボックス43は、概略立方体形状をした箱形の部材であり、その内部には2つの型内在籍センサ42が収納されている。センサボックス43は、左右側面のそれぞれにエアシリンダ44を備えており、このエアシリンダ44は、供給されるエアーによって駆動するシリンダアーム45を備えている。さらに、シリンダアーム45の先端には、蓋体46が配置されている。
【0027】
本実施形態に係るセンサボックス43の下面側には、不図示のセンサ穴が2箇所設けられており、このセンサ穴を通して2つの型内在籍センサ42はレーザ等の距離計測手段を放出することで、ダイカスト製品Wの膨出部W2を検知することができるようになっている。ただし、2つの型内在籍センサ42によるダイカスト製品Wの検知は、常時行う必要はなく、開放された一対の金型61,62のいずれか他方(後述する固定型61)にダイカスト製品Wが型残りしていないかどうかを判別する時のみ必要となる。したがって、ダイカスト製品Wの検知を行うタイミング以外の時には、エアシリンダ44を動作させて蓋体46により不図示のセンサ穴を塞ぎ、センサボックス43を密封した状態に保つように構成されている。もっとも実際には、センサボックス43内が過度に高圧になるのを防ぐために若干の隙間が設けられており、センサボックス43からはいくらかのエアーが流出しながらボックス内は高圧に保たれている。
【0028】
そして、図11(a)で示すように、エアシリンダ44が有する蓋体46により不図示のセンサ穴を塞いだ状態のときには、センサボックス43内をエアパージすることで、外気よりもセンサボックス43内を高圧とし、外部からエアボックス43内への離型剤や粉塵等の塵芥の侵入を好適に防止することが可能となる。さらに、エアパージの際にセンサボックス43内に供給されるエアーを冷却することで、センサボックス43内に配置された2つの型内在籍センサ42を冷却することができる。かかる構成の採用によって、2つの型内在籍センサ42に対する塵芥の付着を防止しつつ、高温による誤動作等の不具合発生を防止することが可能となる。
【0029】
また、図11(a)→(b)の一連の分図に示すように、エアシリンダ44に対するエアーの供給によって稼働するシリンダアーム45と蓋体46は、水平面に対して回転しながら下方に移動して不図示のセンサ穴を開放し、また、図11(b)→(a)の一連の分図に示すように、シリンダアーム45と蓋体46は、水平面に対して回転しながら上方に移動して不図示のセンサ穴を塞ぐように構成されている。つまり、シリンダアーム45と蓋体46の移動範囲はセンサボックス43の周辺近傍の位置に限定されているので、他の部材に衝突して故障するリスクが低く、かつ、効率よい開閉動作が可能となっている。
【0030】
以上、図4図5および図11を参照して、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10の特徴的な要部構成を説明した。次に、図6図10を用いて、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10の動作説明を行う。ここで、図6図10は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置の動作説明を行うための図である。なお、説明の便宜のために、図6図10では、本実施形態のセンサボックス43に関係する部材は図示を省略してある。
【0031】
図6には、開閉可能な一対の金型である固定型61と可動型62の合わせ面内部に形成されたキャビティ内に溶解した金属溶湯を射出注入し、当該金属溶湯を冷却硬化させることでダイカスト製品Wが成形され、その状態から可動型62を開くことで、固定型61と可動型62が離れて開放されるとともに、可動型62に対して成形されたダイカスト製品Wが残った状態が示されている。なお、図6図10では、側面視が示されているためにダイカスト製品Wは1個のみ描かれているが、図6図10では紙面奥側と手前側に重なるように2個のダイカスト製品Wが配置されている。
【0032】
図6の状態で示される可動型62からダイカスト製品Wを取り出すために、図7で示すように、開放された固定型61と可動型62の間にダイカスト製品の取り出しハンド装置10が移動する。
【0033】
このとき、万一、固定型61に対してダイカスト製品Wが型残りした場合には、開放された固定型61と可動型62の間にダイカスト製品の取り出しハンド装置10が移動すると、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10と型残りしたダイカスト製品Wが衝突してしまい、装置破壊等のトラブル発生となってしまう。しかし、本実施形態では、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10に設置された型内在籍センサ42によってダイカスト製品Wの膨出部W2の位置を確認することで、金型61,62から取り出す際のダイカスト製品Wの位置を確実に把握することができるようになっている。具体的には、本実施形態では、可動型62側にあるダイカスト製品Wの膨出部W2の位置を型内在籍センサ42によって検知し、正常な状態であることを確認した上で、開放された固定型61と可動型62の間にダイカスト製品の取り出しハンド装置10が移動するようになっている。また、この検知タイミングの時だけ、エアシリンダ44に対するエアーの供給によって稼働するシリンダアーム45と蓋体46は、水平面に対して回転しながら下方に移動して不図示のセンサ穴を開放する。
【0034】
そして、ダイカスト製品Wが正常な状態にあることを検知できない場合には、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10の移動が停止することになる。つまり、万一、固定型61に対してダイカスト製品Wが型残りした場合には、正常状態であれば存在するはずのダイカスト製品Wの膨出部W2が型内在籍センサ42によって検知できないので、開放された固定型61と可動型62の間にダイカスト製品の取り出しハンド装置10が移動する動作を停止させ、トラブルの発生を好適に防止することができる。一方、上述したような固定型61に対するダイカスト製品Wの型残りが発生していない場合には、型内在籍センサ42によってダイカスト製品Wの膨出部W2が所定の位置にあることを確認できるので、図7で示すような、開放された固定型61と可動型62の間にダイカスト製品の取り出しハンド装置10が移動する通常動作が実行されることとなる。なお、通常動作が実行されたときには、中央把持部11が左右に残された2個のダイカスト製品Wの間に位置する高さとなるように、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10の位置調整も同時に行われる。
【0035】
次に、図8で示すように、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10が2個のダイカスト製品Wに向けて移動し、2個のダイカスト製品Wの間に中央把持部11が挿入される。また、2個のダイカスト製品Wの間に中央把持部11が挿入された後、2個の外側アーム部21がダイカスト製品Wに向けて傾動し、2個の外側アーム部21のそれぞれが備える2個の外側爪部21aが2個のダイカスト製品Wの外方側の側面を押圧する。これらの動作によって、2個のダイカスト製品Wは三点支持され、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10による確実な把持状態が実現する。なお、2個のダイカスト製品Wに対する三点支持は、ダイカスト製品Wの膨出部W2に対して実行されている。
【0036】
ダイカスト製品の取り出しハンド装置10による2個のダイカスト製品Wに対する確実な把持状態が実現すると、図9に示すように、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10が固定型61の方向に水平移動し、可動型62から2個のダイカスト製品Wが完全に取り外される。
【0037】
このとき、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10に設置された製品確認センサ41は、鋳造されたダイカスト製品Wに付随する湯道部W1を検知するので、万一、鋳造されたダイカスト製品Wを可動型62から取り出す際に、ダイカスト製品Wの湯道部W1が欠損して可動型62内に残留してしまう不具合が発生した場合には、湯道部W1の検出位置情報に基づき当該不具合の発生を確実に検出することが可能となっている。このように、製品確認センサ41によって、ダイカスト製品Wの湯道部W1が欠損して可動型62内に残留してしまう不具合の発生が検出された場合には、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10の動作を停止して、不具合の除去等の対策を取ることが可能となる。
【0038】
上述したような湯道部W1の欠損などの不具合が発生せず、製品確認センサ41が所定の位置に湯道部W1が存在することを検出し続けている状態のときには、異常は発生していないと判断することができるので、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10は、動作を継続し、図10に示すように上方へ向けて移動することで開放された固定型61と可動型62の間から退避する。さらにこの退避の途中で、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10の装置下方に延びる8本の噴出ノズル31を可動型62に対向する位置に配置し、8本の噴出ノズル31を用いて、2個のダイカスト製品Wが取り除かれた可動型62のキャビティ形成部等に対して離型剤を噴出したり、エアーを噴出したりしてもよい。かかる動作を行うことで、金型61,62を用いた連続的なダイカスト法を実施することが可能となる。このように、移動(揺動もしくはスライド移動)する中央把持部11と外側アーム部21により、2個のダイカスト製品Wを均等な力で把持することができる。
【0039】
なお、図6および図7で示した型内在籍センサ42によるダイカスト製品Wの膨出部W2の検知タイミング以外の時には、シリンダアーム45と蓋体46は、不図示のセンサ穴を塞ぐ位置に配置されている。したがって、型内在籍センサ42が非稼働の時には、センサボックス43が密封されてエアパージと冷却が行われるので、本実施形態によれば、型内在籍センサ42に塵芥が付着したり、熱によるセンサの誤動作等が発生したりといった不具合を好適に防止することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置10では、図6図10で示した一連のダイカスト製品Wの取り出し動作の実行時以外の装置待機時において、センサ(製品確認センサ41および型内在籍センサ42)の異常の有無を確認するセンサ異常有無確認動作が実行される。このセンサ異常有無確認動作について、図12を用いて説明を行う。ここで、図12は、本実施形態に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置が装置待機時に行うセンサ異常有無確認動作を説明するためのフローチャート図である。
【0041】
図12に示す本実施形態のセンサ異常有無確認動作は、鋳造完了後、金型61,62が開き、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10がダイカスト製品Wを取り出し(ステップS10)、装置待機位置に移動することで開始される(ステップS11)。
【0042】
まず、装置待機位置に移動したダイカスト製品の取り出しハンド装置10は、センサボックス43が密閉されている状態で型内在籍センサ42をONし、型内在籍センサ42が蓋体46を検知しているか否かを確認する(ステップS12)。
【0043】
センサボックス43が密閉されている状態で型内在籍センサ42が蓋体46を検知していない場合(ステップS12のNo)には、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10は異常発生と判断して警報を発報し(ステップS13)、鋳造機を停止させる(ステップS14)。
【0044】
センサボックス43が密閉されている状態で型内在籍センサ42が蓋体46を検知している場合(ステップS12のYes)には、装置は正常に動作していると判断できるので、次の工程に移行する。
【0045】
次に、エアシリンダ44を駆動して蓋体46による不図示のセンサ穴を開放した状態にし、この状態で型内在籍センサ42をONし、型内在籍センサ42が蓋体46を検知しているか否かを確認する(ステップS15)。
【0046】
センサボックス43が密閉解除されている状態で型内在籍センサ42が蓋体46を検知している場合(ステップS15のNo)には、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10は異常発生と判断して警報を発報し(ステップS16)、鋳造機を停止させる(ステップS17)。
【0047】
センサボックス43が密閉解除されている状態で型内在籍センサ42が蓋体46を検知していない場合(ステップS15のYes)には、装置は正常に動作しており異常なしと判断できる(ステップS18)。
【0048】
以上説明した工程を経てダイカスト製品の取り出しハンド装置10が異常無しであると判断できた場合(ステップS18)には、センサ異常有無確認動作は終了し、次回のダイカスト製品の取り出し動作を実行するまで待機状態となる。
【0049】
本実施形態によれば、図12を用いて説明したセンサ異常有無確認動作を実行することで、特に、型内在籍センサ42の異常発生を未然に検知できるので、安全で安定したダイカスト製品Wの鋳造が可能となる。なお、図12を用いて説明したセンサ異常有無確認動作を実行するセンサ異常有無確認手段については、例えば、ダイカスト製品の取り出しハンド装置10に設置されるパソコンやマイコン機器等の電子計算機を用いることが可能である。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、2個のダイカスト製品Wを可動型62から同時に取り出す場合の装置構成を説明したが、本発明に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置は、3個以上のダイカスト製品Wを金型の一方側から同時に取り出す装置として構成することが可能である。
【0052】
また例えば、上述した実施形態では、2個のダイカスト製品Wが湯道で繋がっておらず分離した形式の場合を想定して説明したが、本発明に係るダイカスト製品の取り出しハンド装置は、複数個のダイカスト製品Wが湯道で繋がった状態のものに対しても好適に用いることができる。
【0053】
また例えば、上述した実施形態では、溶湯注入時に金型61,62が回転する傾動重力鋳造からなるダイカスト法を想定していたが、本発明の適用範囲は傾動重力鋳造に限られるものではなく、金型の回転しない形式のダイカスト法に対しても適用することが可能である。
【0054】
また例えば、上述した実施形態では、図12を用いて説明したセンサ異常有無確認動作を型内在籍センサ42に対して実行した場合を例示して説明したが、本実施形態のセンサ異常有無確認動作については、製品確認センサ41など、その他のあらゆるセンサに対して用いることが可能である。
【0055】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
10 ダイカスト製品の取り出しハンド装置、11 中央把持部、12 軸状部材、13 コイルばね、21 外側アーム部、21a 外側爪部、31 噴出ノズル、41 製品確認センサ(センサ)、42 型内在籍センサ(センサ)、43 センサボックス(エアパージ機構)、44 エアシリンダ、45 シリンダアーム、46 蓋体、61 固定型(金型)、62 可動型(金型)、W ダイカスト製品、W1 湯道部、W2 膨出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12